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【殺し合いは】バトルROワイアル 七冊目【佳境へ】

1名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/05(木) 17:55:56 ID:xaD3t9sA
ここはどんなスレ?

各職男女と無作為に選ばれたROのキャラクターが
生き残る為にバトルロワイヤルする様子を描いた
リレー小説を扱っているスレッドです。


・まとめサイト
ttp://www6.atwiki.jp/battleroyale/

・前スレ
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1132052401/

・萌え板全体のルールは此方
ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1063859424/


書き手のルール

先ず一番最初に。
このリレー小説内では、各登場人物は生きている人間であり、
いきなり投げ込まれた現実に各人様々複雑な感情を抱いている事を肝に銘じてください。
完全に現実的に書く必要は皆無ですが、バトロワの死の気配というものを忘れないで欲しいです。

次に、書く前に纏めサイトで作品の流れを把握してください。
流れの中では先に発表された作品が優先します。
競り負けても泣かない。
但し、荒し煽りはこの中に含まない。
(前触れの無い突然の心臓停止や全員即死等)

もし、執筆を続けていく内で、致命的な矛盾を過去の自分の作品に発見した場合、
スレにて申告の上、速やかに修正作品を仕上げて下さい。
どうしても音沙汰が無い場合は他の書き手が修正せざるを得なくなりますが、
原則として本人がその作品を修正しなければいけません。

それから、一人の書き手が連投を続けるのはイクナイ!!
最低でも三日程待って見ましょう。
止むを得ず連投する場合は、スレで意見を聞いてみると尚goodです。

本文の内容についてですが、RO内の設定と言うよりも、文章での説得力が重視されます。
但し、リレー小説という形式上、何よりもまず、キャラクタ間でのバランスを崩し過ぎないように気をつけてください。

作品の一番最後にはそれに登場した人物の
<氏名、所持品、死亡等の状態>及びに死亡者が出た場合<残り○○人>という表記をお忘れなく。
任意規定ですが、登場した人物については1)これまで描かれたプロフィール、2)これまで描かれたスキルを
下記の書式で記入していただけると更にgood.

<例:♂アコ>
1…描かれたプロフィールをその都度追加
 ・髪:呪いのカツラで逆毛に変更<023話>
 ・口調:wWw<023話>
 ・性格:少々潔癖、説教癖、不幸<071話>

2…描かれたスキルをその都度追加
 ・ヒール<065話>
 ・殴りアコ<071話>

最後に書き手の方は、現段階ではコテハンを名乗る事はご遠慮ください。
2名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/05(木) 17:56:35 ID:xaD3t9sA
読み手のルール

叩き荒しはスルー推奨。反応は彼等の栄養源です。放置して枯死した後で削除依頼を。
又、過剰な擁護やNG議論も荒しの同類です。出来る限り自重していただけると幸いです。
もし、読み進めていく内に、作品内に矛盾を発見した場合、遠慮なく速やかに申し出てもらえると幸いです。

面白い、と思ったときには積極的に感想を。
首を捻った時には積極的に批評を。
又、暇だなーと思った時なんかは遠慮なく雑談を。
勿論、イラスト、まとめテンプレ、まとめサイト編集さん。
それぞれ大歓迎です。

感想は書き手の活力に、批評は書き手の技術向上に、
雑談は常にネタに飢えている書き手にとって格好の息抜き(兼、ネタ探し)になります。

勿論、読み手から書き手への転進も歓迎です。
その際の留意点は書き手のルールを参照してください。
3名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/05(木) 17:57:00 ID:xaD3t9sA
◆◆バトルROワイアル2 ルール◆◆

登場人物

ノービス+一次職+二次職(スパノビ含む)の男女四十名+特別枠十名
以上の五十名。

但し、以下の規定があります。
一次職、二次職、ノビ、スパノビは固有の名前をつけないこと。

特別枠は良識の範囲において、
ゲーム内部、萌え掲示板、LiveROのどんなスレ、場面からでも出演者を選出してよい。
余りにチョイ役の名無しや知名度の低すぎるキャラクタ、盗蟲、ポリンなど知能を明白に持たない者、荒し目的の出演者は含まない。
但し、出来うる限り前回のバトROワに未出演の人物である事が好ましい。
NPCもこの範囲に含む。
出典はNPC、mob、小説、スレを問わないが
スレ、小説の場合は同じ出展元からは原則二人までの出演とする。
また、特別枠十名の内訳はNPC枠、その他枠(mob、他小説・スレキャラ)にそれぞれ三名分の最低人数確保枠を設ける。
残りの四名分はどちらのものとして消費しても構わない。

それぞれの出演者で通常の冒険者については、髪形、外見などについては最初に執筆した人物の選択による。
但し、ピクミン、おにぎりetrなどと言った叩き目的が客観的に明白である場合、
執筆した者はその事に対しての異議へ正当な反論をする事を要す。
それをしない場合は、その話で語られたキャラクタの外見はNGであるとして無効であるものとする。
但し、作品を通じてその反論とする事も可能だが、その場合は相当程度の説得力が必要であるとする。

追加事項として、同じ髪型は原則として大量に氾濫してはならない。目安としては最大で三名まで。
イメージが被る為に同系統の職、例えば騎士-クルセなどでは別の髪型が望ましい。
更に、ドットの髪型は基本的に参考程度であり、執筆による説得力とスレ内部の同意が得られれば、
モヒカン、スキンヘッド等も可である。但し、その取り扱いには注意を要す。
また、ストーリー上の髪型の変更も可である。但しこちらも、その取り扱いは慎重に行うこと。

キャラクターの性格については、話の流れ、及び個々の執筆者に一任する事。
但し、執筆側は、それまでのキャラクタの性格について熟知するべし。

出演者は、前回同様その能力について制限を受けているものとする。
例えば、ヒールは止血や実際の治療の助け程度の効力しか無く、リザレクションは無効であり、
ファイアーボルトやあらゆる大魔法、モンクのスキルについても、それのみで殺害できる程の威力は失われている。
Mobやその他特別枠出演者についても同じであり、更に彼等は超人的能力を有する場合、普通の冒険者と同等程にそれは低下している。

また、カプラさんは、アンソロなどで見られる様な超人的能力を有するのではなく、
一般人、或いは一次職と同等(生涯一次は除く)くらいの能力であるとする。
精錬工の面々については良識に任せるけれども、彼らは直接的に武具を破壊する能力は持っていない。
又、二次職を超える様な戦闘力も持ってはいない。

ポタ、テレポについては参加者は使用は原則不可能。
インティミデイトについても、仕様変更に伴い、テレポート機能は無いものとする。

スキルに関する規定は以上に書かれたものであるとする。


舞台

マップがまとめサイトに上がっている事から、亀島に似ているが違う島である。
上がっているマップ自体にはまだ何も地形や設備が書き込みされてはいないが、
これは、執筆が進むにつれて順次設備などが記載されるものとする。
(例えば、家屋や市街地、灯台、教会、百貨店や廃墟など。但し、進行の都合上自由に出入り出来る地下洞穴は存在しない)
その広さについては、50人の人間が動き回るのに狭く無い程度である。
尚、全力で移動すれば、数時間程度で中央から島の端まで移動が可能である。

魔法発動時の音響については、至近〜やや中距離程度までならば響くが、
島の端など、余りに離れている場所であれば聞こえない。
気候については、書き手の便宜上、元祖バトロワに準じ日本の初夏程度とする。

そして、舞台に伴い放送に付いては、午前十時を基準として朝夜一回づつ放送されるものとする。
又、転職については、そもそも転職の舞台は島の中に存在せず、各職業ギルドの認証も得られない為、不能である。
但し、これはゲームのRO内部で一般的な『ノビ=>一次、及び一次=>二次』といった転職を示す意味での言葉であり、
例えば、各キャラクタの成長を示す演出的な効果における『転職』は含まないものとする。

原則Wis、ギルドチャット等については、これはゲーム内部での便宜的な機能であり、バトROワ内では存在しないものとする。


支給品

開始時手渡される鞄の中身には主に

支給品(武装or防具orハズレetcが入った青箱を模したケース)が二つ。弓の場合は通常の矢も付いている。
水、食料、大まかな地形だけが記された地図(前述まとめサイトの地図参照)、コンパスが入っている。
また、ランダムで5名に特別支給として古いカード帖が配られる。
ただし、当たりアイテムとはいえカード帖の中身も全て有用なカードとは限らない。
各出演者が元々所持していた武器防具や道具等に付いては取り上げられてしまっている。

又、この劇中においては登場人物はどんな武器防具であろうと使用する事はできるが
本職が用いるのに比べれば、扱いなれていない為に、普段使用する武器と異なった種類であるほど威力や命中率は落ちる。
(例:騎士はカタールならば多少は使えるが、弓に関しては鈍器として使わざるを得ない、など)
但し器用さが高い人間については、ある程度まではどんな武器でも使用する事が出来る。
長柄や斧に付いては器用さ以外にも筋力が必要となる。
更に宗教上の理由から殺人者でない、狂っていない、特別な事情の無いアコライト系に限っては刃物で戦闘は出来ない。
防具の効能は現実的に考えて頂けると幸いです。

また、完全にキャラクタ間のバランスを崩壊させる装備については、入手を禁止とする。
(神器全般や有効すぎる廃装備)

カードについては、特別支給のカード帖から得る他に、既にカードが刺さった武器防具か、
特別枠のmobの死亡、殺害によって出現、入手する事が可能である。
但し、後者については作者は進行と流れの都合上、執筆の前に十分な熟考をする義務を負うものとする。


主催

ミッドガッツ王国主体の非人道的イベントであり、国法のもと運営されている。
また、開催に関しては国家の他各職業ギルドも秘密裏に協力している。
詳しくはまとめサイトのプロローグ参照。

彼等が使用しているのは、前回と同じく外せば即死の呪いの首輪であるが
爆発力については、本人のみが死亡する程度である。前回ほどの威力は無い。
開始時には、彼等からルール、目的、勝利条件等が告げられる。
その辺りの細かい規定は第一話の作者とその後の流れによる。
4名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/05(木) 17:59:12 ID:xaD3t9sA
追記

 【連投規制A】 投下は1日1本(1採用)まで
 【連投規制B】 書いたことのある人物が含まれる話を書く場合は、該当する前回投下日から中2日開けてから
※規制B発動中も、規制Aに触れなければ関係ないパートを投下可能
※NG話、アナザー・番外編については連投規制はA・Bともに適用しない。


議論について

422 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2005/11/15(火) 19:13:13 ID:bK71eV2.
議論は薬だ。多すぎると投薬された相手を殺すことになる
だからほどほどにな


サブタイトル横の時間表記と最下部の状態欄について

296 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ[sage] 投稿日:2005/11/25(金) 19:07:19 ID:FmGMqShU
>>293
任意だから義務じゃないんですが、まとめ時や続き書く時に便利なので
次から他の人のようにタイトル横の時間と最下部の状態欄付けてもらえたらやりやすいなと思います。
逆にF6惨劇部隊のように大人数の場合はその時だけ簡潔に書いてもいいかと。
5名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/08(日) 01:25:05 ID:GfqvYgzU
137.姉妹[第2回放送前]

どうしようもないほどの悪夢。ううん、違う。これは現実。忘れようとしても忘れられないあたしの過去。

首を鎖につながれ、翼をもがれた一羽のあわれな大鷲がオリの中で好奇の視線にさらされている。
人の姿をしているのに口から出る言葉はたどたどしく、鳥と話すときにだけその口はなめらかに動いた。
サーカスの観客はそんな大鷲の一挙手一挙動に沸き返る。けれどそれは決して喝采ではなくて、嘲笑に過ぎない。
そう、あたしはただの見世物だった。

観客の受けが悪ければその日の食事はパンのひとかけらすら与えられず、鞭打たれ、
団員の虫の居所が悪ければ、熱湯をかけられ、蹴られ、唾を吐き捨てられた。
そのうちにあたしは人をまともに見ることができなくなり、
月日が流れ、あたしは人を見るだけで知らずガクガクと震えるようになっていた。

そんなある日のこと、誰かが鍵を閉め忘れたのだろうか。あたしは偶然にもオリから外の世界へ逃げ出すことに成功する。
予期せぬ自由を手に入れたあたしは夢中になって大地を、草原を駆けた。
けれど人間のにおいが髪から肌までべったりと染みついてしまったあたしには帰る場所などなく、
人間の世界で暮らしていくことを余儀なくされたあたしは風の民、アーチャーとしての生活を送ることとなった。

人との生活はそれでも決して慣れることなどなく、あたしはいつも怯えていた。
いつまたあの生活に戻されてしまうんだろうか。そう思うだけであたしの体はガクガクと震えた。
気がつけばさらに幾年かの歳月が過ぎ、あたしはハンターになっていた。

ハンターになったあたしが最初に行ったこと、それが鷹との契約。それがふぁるとの出会い。
ふぁるとの出会いであたしは少しづつだけど元気になっていった。それはもう、自分でも良く分かるくらいに。
でも、どんなに月や星が空を流れても、あたしが心を許せる友だちはやっぱり鳥たちで。
いつまでたっても人間は恐怖の対象でしかなくて。

───ふぁる…会いたいよ……

自分がこぼした寝言で目を覚ました。
目の前にはあたしを心配そうな顔で覗き込む♀スパノビの顔。
その幼いながらも優しさと力強さを湛えた彼女の顔を目にしてあたしの体は───どうしようもなく震えだした。

怖い。目に飛び込んでくる少女の顔が怖い。
あたしを見る少女の目が怖い。
あたしに囁きかける少女の声が怖い。
人間の言葉を声に変えて奏で出す少女の口が怖い。
あたしに差し伸ばされた少女の手が怖い。
あたしに触れようとする指先が怖い。

怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。

体はガタガタと震え、目は恐怖に凍り、両腕も、その指先も自分の意志がまるで通わない。
歯はうまく噛みあわず、ただガチガチと音を立てるだけで少しの声を発することもできない。

そんな異常とも言えるあたしの行動を前にして、それでも心配そうな表情のままでふわりと抱き締めてくる彼女。

あたしは人間とここまで接したことも初めてなら、人間から抱き締められたことも初めてだった。
今まであたしが出会った人間はあたしを好奇心の目で見るか、無関心に無視するか、そのどちらかしかいなかったのだ。
6名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/08(日) 01:26:29 ID:GfqvYgzU
「おどろかせてごめんなさい。大丈夫。大丈夫ですよ。
 私はこのゲームから生きて帰りたいって思っていますから。
 貴女と一緒に生きて帰りたいって思っていますから」

不思議と落ち着きを取り戻せたのか、彼女の言葉があたしの耳に届く。
小鳥の唄い声に似た彼女の胸をくすぐるような声にあたしの目から涙がこぼれ出す。
淡い金色の彼女の髪がほんのり甘い香りを鼻に運んでくれる。

「大丈夫。大丈夫ですよ」

包みこむように優しくあたしを抱き締めてくれる彼女の両手から暖かさが伝わってくる。
記憶の彼方にある暖かさ。あたしを育ててくれた大鷲。

「───おかあさん」

いつの間にか体の震えはおさまっていたあたしに♀スパノビがもう一度微笑みかける。
何故だかその顔は先ほどまで感じていた恐怖がどこかへ逃げていってしまったかのように怖くなかった。
だからあたしは自分の過去を、そして鳥と話すことができることを♀スパノビに話すことにした。

すべてを聞いたあとで♀スパノビはやっぱり笑った。おかあさんのように優しく微笑んでくれたのだ。

「あ───」

不意に♀スパノビが少しだけ不満そうな表情を浮かべる。

「…どうせなら、おねえちゃんにして下さい。他の人が見ればどう見ても私の方が妹ですけどね」

あたしと♀スパノビは目を合わせて笑う。確かにその通りで、見た目にはあたしの方がおねえちゃんだ。

「こんなに大きな妹でゴメンね」

「いいですよ。おねえちゃんに任せなさい〜」

ふぁる、あたしね、初めて人間の友だちができたんだ。
しかも、しかもね。その友だちはなんとあたしのおねえちゃんなんだよ。
え、なんのことだかわからないって?
待っててねふぁる、今にわかるから。絶対絶対もう一度会いに行くからね。


<♀ハンター 現在位置・・・D-6>
<所持品:スパナ 古い紫色の箱>
<スキル:ファルコンマスタリー ブリッツビート スチールクロウ>
<備考:対人恐怖症 鳥と会話が出来る ステ=純鷹師 弓の扱いは??? 島にいる鳥達が味方>
<状態:♀スパノビと野営。♀スパノビを信頼。>


<♀スパノビ 現在位置・・・D-6>
<外見:csf:4j0610m2>
<所持品:S3ダマスカス シルクリボン(無理矢理装着) 古いカード帖(本人気付いていない) オリデオコンの矢筒>
<スキル:集中力向上>
<備考:外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型)>
<状態:♀ハンターと野営。♀ハンターの生い立ち、鳥との会話能力を知る。>
7名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/11(水) 09:10:06 ID:xYymnezg
ちょっと話の筋が良く判らない。

♀ハンターは生まれつき鳥と話せた人間で、それ故サーカスの見世物になっていた。
(「翼をもがれた一羽のあわれな大鷲」は比喩表現で、別に本当に大鷲だったわけではない)
見世物になる前は、その特異能力から動物の世界で暮らしていたが、
人の匂いが染み付いてしまったためそれも不可能になり、逃げたあとはアーチャーになった?
8名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/11(水) 09:54:01 ID:gzNXespk
>>7
伝えたいことを伝えきれない未熟な書き手で申し訳ありません。
推測の通りであっています。

♀ハンターがどうして鳥と話せて人が怖いんだろうと悩んで、
生まれつき鳥と話せたというよりはむしろ大鷲に育てられたので最初は鳥としか話せなかったという設定を作らせてもらいました。
ジャングルブックの狼が鷲になったと思ってもらえると助かります。

無理矢理設定でゴメンなさい、ゴメンなさい、ゴメンなさい。
♀スパノビが♀ハンターの心をあっさり開かせすぎな急展開で・・・
錯乱した♀ハンターにスパナで殴られても必死に抱きしめ続けるとかそういう愛あふれるシーンにしたかったはずなのになんだかうまく書けなくて猛省。
9名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/12(木) 00:55:21 ID:OIhWQtyg
俺は面白く読めたぜ。
5の人GJ。
♀スパノビ萌えす(*´Д`)♀ハンタm(ry


♀スパノビの所持品、S3ダマスカスっていうのは…?
10名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/12(木) 10:45:40 ID:pYZ6QxuI
>S3ダマスカス
読み返してみたら♀スパノビ初登場のときからS3だw
誰もここまで気付いてなかった罠・・・

Wiki上で該当部分を全部S2に修正しておきます。
11名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/17(火) 00:12:30 ID:m/ho2gIg
保守
12名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/17(火) 12:20:07 ID:IySth4rY
前スレ435
面白かったよ!
バトロワならではの姦計と裏切りがお約束でいいですね。

今回は姦計を駆使して生き抜こうとしているキャラが♀ケミくらいしかいないから
もっとねちっこいかけひきを書きたい悪人サイド応援派。
13名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/18(水) 02:41:24 ID:2H3tx9gw
ちと、疑問なのですが、♂WIZはこの島で人体の研究をする気なのでしょうか?
研究材料はたくさん居ても、研究している時間がなさそうな・・・。
それとも、材料を回収して、生きて出てからするのかな?
駄文ですみません。

それから、皆さん物語がすごくうまいです。
つい、時間を忘れて読みふけってしまいます。
これからも、皆さん頑張ってください。
14名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/19(木) 06:08:44 ID:eIoS84Yo
んにゃ。
わかり易く言うと、覚書なしの蛙の解剖実験。
自らの知識欲を埋める為に、実験台になる人物を求めてる、と言う感じと思われ。
ただ、完全にイッてる人ではまだない予感なので注意。
15名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/19(木) 23:17:09 ID:PP1FJPUk
138.彼女は弱みを見せはしない


黒焦げの燃え滓となった♂BSの死骸に土を被せながら、♀アルケミストは素早く胸中で計算を始めていた。
(これならまだ、初心者用ガードの方がマシだったわね……)
使えないにも程がある。俺は戦闘専門だから任せておけとか大口を叩いていたくせに、あんなひ弱そうな♂剣士に殺されて、なんて情けない男なのだろうか。
しかも、死体の後始末を私にやらせるなんて何様のつもりだろう無能のくせに。
人目が無かったら、蹴りの一つでも入れてやりたいところだ。
これならお預けにしておいて正解だったかもしれない。愚図を飼っていられるほど、今の状況に余裕はないのだし。
そう……余裕は無い。私の盾として使える人間が、一気に二人も減ってしまったのだから。
♂BSを埋めた穴の隣に、これまた似たような穴を掘っていた♀BSがダンサーだったモノへ丁寧に土を被せていた。♀BSの顔を盗み見たが、彼女の顔には悲しみよりも悔しさが滲んでいた。
こういう表情のことを『悲痛』とでも言うのか。
(まぁ、貴女達がどんな関係だったかは知らないけどね……)
言えることはただひとつ――

(あなたは今、私に弱みを見せているのよ?)

ダンサーの墓前に黙祷を捧げる♀BSにならい、煉獄の灼熱で溶けた汚い短剣を見つめながら♀アルケミストはお気に入りのティーカップを割った時のことを思い出して、とりあえず泣いておいた。


* * *


「でもアタイは仲間の血を吸った武器は使うのは嫌さねぇ!」
煉獄の魔槍を渾身の一撃で叩き折り、豪快に笑った♀BSは♂スパノビを背負いなおして歩き始めた。
その背中をじっと見つめ、♀アルケミストが暗い笑みを浮かべたことを淫徒プリは気づかなかった。


<♀ケミ>
位置:F-6から東に向かい始める
所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物)
外見:絶世の美女
状態:軽度の火傷
備考:策略家 製薬ステ やっぱり悪


<♀BS>
位置:F-6(まばらな木立のある草原地帯)から東へ進路をとる。
所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品)
外見:むちむち 、カートはない
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。決意に漲る。
備考:ボス、筋肉娘


<♂スパノビ>
位置:F-6
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。眠っている。


<淫徒プリ>
位置:F-6
所持品:女装用変身セット一式 青箱1
外見:女性プリーストの姿 美人
状態:軽度の火傷 魔法力の連続行使による疲労困憊
備考:策略家 Int>Dexの支援型



<残り33名>
1615sage :2006/01/19(木) 23:21:56 ID:PP1FJPUk
ちと短いけど投下させていただきました。
やっぱ♀ケミにはエロス&悪の道を貫いてほしーなーと願ったり。
17名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/20(金) 16:43:05 ID:/A30U3BQ
139 殺せっ [第2回放送前]

この島に来て、はじめての夜が明けた。
気になったことといえばどこからか梟の鳴く声が聞こえたくらいで、
それ以外はバトルROワイアルの名にふさわしくない、本当に平和な夜だった。
けれどローブの中に隠し持ったスティレット、刀身を浸食した赤黒い色が俺に現実を、
この島における絶対不可侵なルールを俺に教えてくれる。

スティレットを右手に握り締めたまま、獲物を狙う蛇のようにゆっくりと視線を左隣りに流す。
疲れ果てているのであろう、貪るように眠り込んでいる俺と同職の女がひとり。

つるんと長くのびたまつげが閉じきった目蓋に、けして起こさぬようにと自己主張しているように見える。
お世辞にも色気があるとは言えない体つき、
短くまとまった薄い褐色の髪がこの魔導師の少女にまるで年端もいかぬ少年のような印象を与えている。

しかし、彼女はおそらく異端学派の魔導師である。

魔力感受性を飛躍的に増幅させ暗視能力すらも持たせるという異端学派の象徴、
真理の目隠しをなんの躊躇もなく俺に渡してきたことからそのことはうかがい知れた。
真理の目隠しを身に着けるということがなにを意味するか、魔導師で知らないものなどいない。
それほどに異端学派は魔導師の間では忌み嫌われる存在なのだ。

おそらく彼女がこの殺戮ゲームに参加させられたのも異端学派だということが知られたためであろう。
どうにもこの少女には警戒心というものが欠如しているように思えた。
現に今も彼女はこうしてほとんど素性を知らない俺を前にして無防備な肢体をさらしている。

こんなやつと一緒に行動したところで足手まといになるだけじゃないのか?

心の中のもうひとりの俺が俺に疑問を投げかける。
確かに俺は仲間を欲していた。この境遇から抜け出すための仲間を。
だが目の前の少女が仲間として足りえるのかどうか、それは大きな疑問であった。

「無力・・・。俺もこいつも、なんて無力なんだ・・・」

抗えようのないほどの圧倒的な現実という暴力、殺し合いという世界が俺の心を押し潰していく。

「ぐぐっ・・・」

目頭を涙で滲ませながら、俺はほんの少しの間その場にうずくまった。
湧きあがってくるのはGMジョーカーへの怒りと悔しさ。

『あなた方の首に嵌めてある首輪は、逆らったり、無理矢理外したり、
 島から逃げ出したりすると爆発する仕掛けになっておりますので気をつけてくださいねぇ♪ 』

とどのつまり、あいつはいつでも俺たちを殺せるってことじゃねえか・・・
なんだよそれ・・・
俺たちがなにをしようと、どれだけ抵抗しようと、どれだけ殺そうと・・・
ごくろうさまでしたって・・・

なんか・・・なんか・・・あくどいっていうか・・・調子良すぎる・・・・

「なんだよ・・・このBR法ってやつは・・・!!」

───絶望

そう、そこにあるのはまさに絶望。バトルROワイアルという絶望。
この島に送り出された瞬間から、決して生きては帰れぬ絶望の世界。
18名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/20(金) 16:45:46 ID:/A30U3BQ
   ざわ…


          ざわ…

「殺さなければ・・・殺される・・・それだけがこの島の現実、そして唯一の希望」

もう一度自分の目ですやすやと寝息をたてながら眠っている彼女を確認する。
断崖絶壁の縁で眠る赤子のように無力な魔導師の少女。

殺せっ。殺さなければいつかこっちが殺される。だから殺せっ。

視線をスティレットの刃に戻す。
赤黒い刃が俺を狂気へと駆り立てていくのが麻薬のように心地良い。

殺せ、その無力な少女を。
殺せ、その現実を知らぬ少女を。
殺せ、その少女の仮面を被った殺人鬼を。

殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ。

自分が自分でなくなる感覚に、視界が白で覆いつくされていく。
まるで誰かにあやつられているような、不思議な感覚。

スティレットを少女の首元へ近づけ、最後にもう一度だけ少女の顔を覗き込む。
今から殺されるだなんて夢にも思っていないであろうしあわせそうな少女の顔。
こんな島でこんな境遇に置かれているのにありえないほどのしあわせそうな寝顔。

けど・・・

殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ、殺せっ。

けど・・・俺は・・・

そして俺はスティレットを握った右手を振り上げ、思い切り振り下ろした。

「殺さないっ・・・!」

突き貫いたのは自分の左手。
俺は左手の甲にスティレットを突き刺したことで狂気から逃れようとあがく。

「殺さないっ・・・!!」

殺さなければ・・・殺される・・・・・・けど‥‥‥‥‥‥殺さないっ‥‥‥!
殺さない‥‥‥‥
殺さない‥‥‥‥
殺さないんだっ‥‥!
殺さないっ‥‥‥!

「俺は・・・殺さないっ・・・!」

俺の出した声に驚いたのか、飛び起きた♀マジシャンが俺の左手を見て悲鳴をあげる。
無理もない。なぜなら俺の左手からは血が噴水のようにあふれだしているからだ。

「なんで?! なんでそんな怪我してるわけっ!?
 わわわっ、ボク、マジシャンだから治療なんて無理だからね。
 どうしよう、近くに誰か治療できそうな人いるかな」

言うが早いか飛び起きた少女は寝癖もそのままに駆け出す。

「お、おい・・・この島で誰かに会うってことが分かってるのか!?・・・」

けれど俺の声はもはや少女には届かない。まったく、なんていう早さだろう。
そういえば最初にぶつかってきたときも、とんでもない早さだったか。
あわてて俺は彼女のあとを追った。
左手に走る痛みを忘れてしまったかのように俺は、彼女に追いつくことだけを考えて走った。


<♂マジ>
現在位置…C-6から走る
所持品…ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個 青箱1個 スティレット
備考…JOB50 ♀マジと一緒にいる 殺さないことを決意 左手をスティレットで貫き出血中


<♀マジ>
現在位置:C-6から走る
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♂マジと一緒にいる
   ♂マジを治療できる人を探す。 薄い褐色の髪(ボブっぽいショート)
19名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/20(金) 16:51:44 ID:/A30U3BQ
カイジ♂マジを初挑戦。
橋渡り編の「押せっ」にインスパイアされて書きました。

ぐぐっ、ぐっ・・・カイジ♂マジ・・・書くの難しいっ・・・難しいんだっ・・・!!

>>15
ひゃっほう、僕らのアイドル、黒い♀ケミが帰ってきたゼ!
お気に入りのティーカップうんぬんのくだりが最高デスよ! 最高ッ!
20名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/20(金) 19:27:47 ID:1tAo4q0E
最新話分までの話と詳細情報保管完了っ!
と・・・言おうとしたらっ・・・!
新話がっ・・・投稿されているっ・・・!

というわで人物詳細138話分まで修正しました
139話は後ほどor他の人よろしく
あと一覧表はパーティーごとに分けてみたわけだが、
ちょっとPT名やりすぎた気がしないでもないとか言ってみたり
21名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/24(火) 19:02:47 ID:9SA1GXv6
140 ♂WIZの思考(嗜好) [第2回定時放送後]

GMジョーカーによる2回目の茶番が終わる。
1回目は9人、2回目は8人。一昼夜で、すでに17人もの人間が還らぬ魂となってこの島をさまよっていた。

方眼鏡(モノクル)を左目に煌めかせた黒髪の男が、ふぅーっと大きなため息をつく。
ため息の理由など推して測れよう。彼にとってみれば貴重な実験体が17体も失われたのである。
魔術師ギルドが、ただ禁じられている研究内容であるという理由だけで稀少な異端学派の書物を焚書にしたときも大いに嘆いた彼ではあったが、
今回の失望はそれ以上であった。

未だひとつの献体も入手できず、無為な時間を過ごしたことに気付いた彼は苛立ちを消すためであろうか、
左手のスティックキャンディをぺろり、ぺろりと舐めながら、なにかを思案しているようであった。

おそらくはこれから先の方針を考えているのであろう。

初日に死んだ人間は言うなれば弱者である。しかし生き残っている人間は、すでに弱者ではない。
彼らは人の死を乗り越えてきた者たちなのだ。
まともに殺し合えば、勝てる保障はどこにもない。
ましてやウィザードである彼は、殺し合いを日常としていたわけではない。
これから先を生き抜き、彼が自身の目的を果たすためには、なんらかの策が必要であることは明らかであった。

「殺しを本職としている人間が、まさかアレほどの力を持っているとは思いませんでした・・・」

不意に♂WIZの口からこぼれ出た、弱音ともとれる言葉。けれどそれは弱音ではない。
半刻ほど前に起こった殺し屋による戦いを彼は見ていた。
一切の武器を持たず、素手で♂クルセイダーと互角に渡り合い、
それどころか、冷静に♀ノービスという罠を仕込み、
あと一歩というところまで♂クルセイダーを追い詰めた♂アサシンの戦いぶりを彼は見ていたのだ。

もし、彼らの実力を知らずに彼らと遭遇していたら。
想像するだけでも恐ろしい。それほどの差が自分と彼らとの間にあることを♂WIZは知ったのだ。

それでも♂WIZは立ち止まるわけにはいかない。
今の♂WIZにとって生きたまま人を献体として自分が有している知識を確認し、組み立てあげた仮説を立証することは、
なによりも優先しなければならないことである。
人の複製を作りあげる。そのために必要なこと、そのすべてが許されるのは、この楽園でしかありえないのだ。

この島で、どの程度魔法力が制限されるかを♂WIZは検証し終えていた。
そして、今の自分が使える最大級の魔法を使おうとも、単発で人を殺すことが困難であることも、♂WIZはすでに把握していた。
だからこそ♂WIZは考えていた。いかにして人を生きたまま無力化させることができるのか、その方法を。

「それにしても、あの♀ノービス。あの娘は素晴らしかったですね。
 実験体となるにふさわしい若さに満ち溢れていました」

♂WIZはぺろり、とスティックキャンディを舐める。
頭に浮かぶのは♀ノービスの張りのある肌、みずみずしくふくよかな体、血色の良い手足、そして彼女に良く似た金色の髪。

「あの♂アサシンをどうするか、それが問題ですね」

真向勝負を捨て、♂WIZは搦め手を探す。♂アサシンと♀ノービスを引き離す方法。
♂アサシンを孤立させ、♀ノービスをも孤立させる方法。
けれど♂WIZの魔術方面には冴え渡る頭脳も、計略という方面ではうまく働かない。

ぺろぺろ、ぺろぺろと舐められ続けるスティックキャンディが形を崩し始めた頃、♂WIZはようやく重い腰をあげた。

「ある程度の策は練りました。あとは彼らをつけて、第三者の登場でも待つことに致しましょう」

そう言って♂WIZはゆっくりと歩き出し、森の中へと姿を消していった。


<♂Wiz>
現在位置:E-7付近 ♂アサシン、♀ノービスのあとをつけている
所持品:コンバットナイフ、片目眼鏡、+10スティックキャンディー
備考:「研究」のために他者を殺害。黒髪。土気色肌。丁寧口調。マッド。♀ノービスに執着(実験体として)
22名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/24(火) 19:21:22 ID:9SA1GXv6
というわけで動きのなかった♂WIZ話をば。
美味しいキャラが多くて殺しづらいけど、♂WIZさまならきっとやってくれると信じてます。

それにしても、あれほど居た書き手さんたちはどこにいってしまったんだろう(涙)
第1回のときの中盤もこんな感じだったのかなぁ・・・
23名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/24(火) 22:51:16 ID:Nuq4adEA
前回もこんなもんだった。そこを引っ張ってくれる人が居たからこそ完結まで漕ぎ着けたとも言える
でも今回は誰も引っ張る気はないっぽいな。前回あれだけ叩かれたわけだし尻込みするのも当然か
24名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/24(火) 23:19:08 ID:5A/It7UM
リアルが修羅場ってて手が離せないのだ。
復帰できるのは当分先ぽorz
25名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 00:22:22 ID:DD3sfsRc
141.この出会いは幸運か不運か


「ふむ……闇雲に歩いたところで器に辿り着けるわけでも無し、かと言って羽虫どもではアテにならぬ。難儀なものよな」
ミストレスは艶のある紫の髪の一房を指に絡めて、落胆を吐息に混ぜた。妙齢の美女が――しかも露出の高い♀WIZの姿で――憂いに顔を陰らせる光景は、普通の男ならば心奪われるに違いない。
さもありなん。彼女は人に近しい姿をとってはいるが、人を惑わす魔性の存在だ。もし能力低下の呪を受けてなければ、否、呪いがあろうとも彼女が真の器を得ていれば、人虫問わず異なる性をもつものたちを残らず虜にすることも出来よう。
それ故に、彼女の異能を常人並に押し込めた呪いの強大さが窺い知れた。
「道化めが」
憎々しさを吐き捨てて、髪をいらう指を解き、繊手を横一文字に振り払う。
バジィッ、と濡れた布を叩きつけたような異音が響き、ミストレスの横手にあった若木が中程から裂けた。指先からほとばしった天帝の雷撃が撃ち抜いたのだ。
きな臭い煙を昇らせる若木を眺め、ミストレスは苦笑に頬を歪めた。
「……これでは蚊の一刺しだの」
もちろん、常の彼女ならば倍以上の巨木さえも打ち倒す雷球を操ることも可能なのだが、能力を抑えられた今はこれが限界だった。
ますます道化が憎々しい。
よかろう。器を取り戻した暁には、道化殿に愛すべき我が眷属の餌となる栄誉を与えよう。先端から少しずつ身を刻み、己が喰われる様を見せ付けながら頭蓋の中身を啜ってくれようではないか。彼奴めの脳髄の味は如何なるものであろう。恐怖か、痛みか、憤怒か、狂気か、それとも歓喜か。いずれにしても極上のローヤルゼリーよりも味わい深いのは確かだろう。
舌の上で溶ける大脳新皮質の味わいを想像し、暗い愉悦をにじませて女王蜂は満足げに嗤った。
「ク……ククク……ん?」
前方彼方から微かに流れてくる話し声を聞きとがめ、ミストレスは歩みを止めた。怒号や罵声といった争いの雰囲気ではない。むしろ、この島には相応しくない団欒の喧騒のような声だった。
「気配は複数……二人以上は確実じゃろうな」
このような場所で談笑するような目出度い連中ならば器に害を与えることもないだろうが、状況が状況である。特にヒトという種族は己の命が助かるなら平気で同族すら食い物にする下種どもだ。今は目出度いかもしれないが、いずれ血に飢えたケダモノに成り果てるに違いない。
そのような連中に器を汚されることだけは、どうしても阻止したい。
だが抑えこまれた知覚では、これ以上を感知するのは無理だった。二人以上なのは確実だが、それが三人なのか四人なのか――はたまた五人なのか――個々では弱い人間も、群れれば魔神を凌ぐ力を出す。奴らを相手に無策に飛び込むは愚の骨頂だろう。
周りを飛ぶ羽虫に人にあらざる言葉で二言三言ささやき、斥候を命じるとミストレスは手近な草むらに腰を下ろした。

 * * *

「……なにか今、音がしなかったか?」
「奇遇ね。私にも聞こえたわ」
何かの弾ける音を聞きつけ、♂ハンターとジルタスは手にした武器を油断なく構えた。低木がまばらに生える砂地交じりの草原は見晴らしも良いが、逆に見つかりやすいデメリットもある。攻めるにしろ守にしろ、先に相手を見つけたほうが有利なのだ。
♂ハンターは音のした方向を油断なく睨んでアーバレストに矢をつがえ、ジルタスは別方向からの奇襲に備えて周囲に隙の無い視線を飛ばしている。
だが♀アーチャーは、
「お、王子様……」
武器を構えることもなく、ただ顔色を青褪めさせて震えているばかりだった。カチカチと並びの良い白い歯を打ち鳴らして、血の気の失せた顔色をしている。まるで突然、流行性感冒の重篤患者にでもなったかのようだ。
「ど、どうしたんだい?」
音の方向から目を離すことも出来ず、♂ハンターは尋常でない怯え方をする♀アーチャーに、ぎこちないながらも背中越しに優しく語りかけた。
「だ、大丈夫だよ。ほ、ほら、俺がついてるし、ジルタスさんもいるから……」
言いながら、♂ハンターは自分の顔が紅潮していくのを感じていた。同時に、気分がべっこりとへこんでいくのも。
……いったい自分は、この島に送り込まれて何度目のランドマインを踏みつけているのだろう。そんな自問すら浮かんでくる。
だが、使うたびに♂ハンターの魂を削る王子的セリフも、今回ばかりは通用しないようだった。
「い、嫌……っ!」
小さく、しかし強い口調で♀アーチャーは拒絶した。頭を抱え、腰が抜けたように彼女はその場にしゃがみこんだ。
「嫌あっ! あ、あいつ……あいつが来るのっ! やだ怖い助けて怖いのあいつが来るのパパもママもお兄ちゃんもみんなみんなあいつに殺さ――いやあああああああああああああああああっっ!!」
血を吐くような悲鳴が少女の唇から迸る。今までにも彼女の妄想癖を見てきて振り回されてきた♂ハンターだったが初めて見る彼女の反応に驚き、何者かが迫っていることも忘れて振り返っていた。

それが、隙となった。

振り返った背中に紫電の一撃を喰らい、♂ハンターは吹き飛んだ。地面を子供に蹴られた小石のように転がされ、ようやく止まったときには天地も左右も分からなくなるほどに脳をシェイクされた後だった。
「……が――っ!?」
息が上手く吸えない。吸い込んだ空気と吐き出したかった息が喉の奥でぶつかる。身体中の筋肉が好き勝手にビクンビクンと暴れまわって、起き上がることもままならない。
銅鑼でも耳元で鳴らされたみたいに耳鳴りがひどい。ジルタスと♀アーチャーの悲鳴じみた呼び声が聞こえたが、何を言ってるのかさっぱり分からない。唯一、無事に動く左目が、視界の端っこで紫色の人影を捉えていた。
(あれは……あれが――俺を撃ったのか……?)
紫色の影が、どういうわけか彼には巨大な肉食昆虫に見えた。

  * * *

「ふむ……礼を言うぞ、狩人よ」
バチバチと爆ぜる雷を指にまとわりつかせたまま、優雅にミストレスは進み出た。鞭を構える監獄の女妖魔のことなど眼中にもおかず、彼女はただ一つだけを見つめている。
「よくぞ、我が器を守っていてくれたのう」
絶望に震える♀アーチャーを満足そうに眺め、女王蜂は高々と哄笑した。


<♂ハンター>
現在地:G-5(G-6境界付近)
所持品:アーバレスト、大量の矢、ナイフ
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:ユピテルサンダーで感電。痺れて動けない。まだ生きている。

<♀アーチャー>
現在地:G-5(G-6境界付近)
所持品:プリンセスナイフ
備考:弓に対する怯えがあり、うまく扱えない 妄想癖あり ♂ハンターを慕う
状態:ミストレスの新たな器。家族をミストレスに殺されている。恐慌状態。

<ジルタス>
現在地:G-5(G-6境界付近)
所持品:種別不明鞭、ジルタス仮面
備考:首輪を付けられている
状態:ミストレスと対峙。

<ミストレス>
現在地:G-5(G-6境界付近)
容姿…髪は紫、長め
所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー(♀アサの遺品は拾わず)
備考:仮初の身(見た目はWIZ)だが、時々ミストレスの翼が背に現れる
備考:飛ぶ虫を操れる。蟲と話せる。器探しの協定?を結ぶ。
備考:GMの用意した体に入った(首輪ついた)ことで、各能力減退。
目的:「器」を探し出し、ついでにジョーカーを殺して山に帰る。
状態:ねんがんの うつわを はっけんした!

<残り33人>
26名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 00:29:55 ID:xikPO9bc
>>21
+10スティックキャンディが舌と唾液に負けただと!?

>>25
ころしてでも うばいとる!!

す、すげー熱い展開に…そうか器は♀アチャかっ
MOB同士のジルタス様とのやり取りにも期待が膨らみます(´∀`*)
おおおおもしれー
27名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 01:13:23 ID:sF9Sxhmc
(*'∀')-3 ムッハー、期待てんこ盛り
28名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/25(水) 12:08:06 ID:wtPjF33U
142. 目覚めは恐怖と共に


うおっともクホっとも取れる小さな悲鳴が浅い眠りの中の鼓膜を揺さぶり、枕代わりの敷石から頭をずり落として♂アコライトは目を覚ました。
一日目の夜は、合流したホルグレンと情報を交換しながら何とか安全そうな岩場を確保し、互いに見張りを交代しながら眠りについたのだが、この島で安全を約束してくれる場所なぞある筈もなかった、という事に彼等が気付くのは、少し遅過ぎた。
何が起きたのかと辺りを見回すと、♂アコライトから少し離れた岩陰の向こうで、見張りをしていたはずのホルグレンが、こもった声を上げながら転がりまわっている。悲鳴の主は彼のようだった。
夢でも見ているかのようにその光景を眺めていた♂アコライトだが、やがてぐったりとなりびくびくと痙攣を始めたホルグレンの姿で漸く理解した。何者かに、襲われているのだ。
「ホルグレンさん・・・!?」
――助けなければ!
「ひっ」
我に返るなり♂アコライトは慌ててホルグレンに走り寄ったが、そこで見たのは彼にとって信じられぬものであった。
何か巨大な異形の生物が、ホルグレンの喉元に喰らい付いている。全身が節に覆われた青い塊。グロテスクな蟲の化物。何だこいつは、この島には一体何が住み着いてるんだ、こいつは、こいつは・・・。
♂アコライトに気付いているのかいないのか、しゅるる、と蟲が鳴いた。その巨大な牙に咥えられているホルグレンの喉元はごぼごぼと湧き出る血でぐじゅぐじゅになっており、傷口自体はわからなかったが、誰がどう見ても致命傷である。抵抗をする力は、もう彼には残っていないようだった。
早く早く早くヒールをかけなければ死んでしまう、馬鹿どう見たってもうこれは手遅――
「いやあああああああああああああああああっっ!!!!!」
パニック寸前ながらも辛うじて彼を支えていた思考回路、その全てを吹き飛ばすかのように、遠くの方から女の悲鳴が上がる。
瞬間、何も見えなくなった。♂アコライトの身体を、頭を、恐怖だけが包み込んだ。
そしてぷっつりと途切れた思考回路は本能のまま、絶叫に彼の喉から溢れ出すように命じた。
「ぅ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああああああああああああああ!!!!!!!」
もう既に動かなくなっている鍛冶師の喉元を弄るように貪っていた怪蟲がぴくりと反応し、ようやくホルグレンを解放すると、その鎌首を♂アコライトの方に向けた。


<♂アコライト>
<現在地:G-6>
<外見:公式通り>
<所持品:なし>
<備考:支援型>
<状態:恐怖の限界を越え、錯乱>

<ホルグレン>
<現在地:G-6>
<所持品:ハンマー、タバコ、メイス、古いカード帖>
<備考:人の話を訊くのが苦手、♀BSの父>
<状態:死亡>

<蟲>
<現在地:G-6>
<備考:「器」を見つけたらミストレスに知らせる>
<状態:満腹度 35/100>


※♂アコライトの聴いた女の悲鳴は、少し離れたところでミストレスに強襲された♀アーチャーのものである。
当然、♂アコライトの絶叫も、彼女やジルタス達に届いてしまったはずだ。

<残り32人>
29名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 16:16:35 ID:jguYANGw
143 世界せーふくの才能 [2日目午前中]

「あーあ、とんだ無駄骨だったわね」

とげとげしい口調による悪ケミの攻撃が開始される。
忍者は彼女の苦情に対し軽く謝罪を済ませ、なだめると、先ほどまで自分たちが調査していた白い塔を見上げた。
ひゅーひゅーと吹きはじめた風の勢いにまかせるようにして、灰色の雲があわただしくこちらに近づいてくる。

「雨が降るかもしれないね」

嫌な色の雲を見て、そうこぼしながらも忍者の思考は別へ向かっていた。
風の音に混じった、けれど卓越した聴力を持つ忍者ならばこそ判別することのできるノイズ。
キーンと三半規管を不快に揺らす超高周波の音。
その音は忍者にとって聞き馴染みのある音であった。

(間違いない、これは訓練砦の制御装置が発する音だ。それもかなり強い)

けれど忍者はそのことを口に出して伝えることができない。
身振り手振りで悪ケミからマジックペンを受け取ると、ペン先を抜かないままで忍者は地面に文字を彫る。

『ここには訓練砦の制御装置がある』

忍者が書き示した文字を見て、特徴的な赤い目を大きく見開いた悪ケミは、忍者からマジックペンを奪い取ると、
忍者に習って文字を彫り始めた。

『なんでわかるのよ』

「教えておくよ。忍者はね、弱いからこそ耳がとても良いのさ。
 普通の人間ではとても聞き取れないような音だって忍者は聞き取って行動することができるんだよ」

穏やかでいて、それでいてどこか悲しそうに笑う忍者。
常人ではおよそ聞き取ることのできない音を聞くことができる。その力の代償に、彼はいったいなにを失ったのだろうか。

『それじゃ、ここをなんとかすればテレポもポタも使いたい砲台なわけ?』

悪ケミちゃんさまのツッコミどころ満載の誤字を無視して頭を横に振る忍者。つまり回答はNO。

「でも忍者はやっぱり弱いんだ。だからね、そんな弱い忍者が誰かと戦うときに一番最初に考えることはなんだと思う?
 答えは簡単だよ、数で有利になっておけば良いのさ。
 1人では心もとなくたって、3人、4人、もっと多ければどうだい?」

「負けっこないってわけね」

ちゃんさまの言葉に忍者は満足そうに頷く。そう、制御装置がここだけであるという保障などどこにもない。
だからこそ忍者はなにも気がつかなかったふりをして、灯台から外に出たのだ。

「結局はこの首輪がある限り、何人いたって一緒なんだけどね」

言いながら忍者は自分の首元にある枷を指差す。
死神の鎌は健在で、ふたりの命などいつ奪われようとおかしくはない。
忍者も悪ケミも困ったように顔を見合わせて、ふたり、ため息をついた。

「君の知識でなんとかなりそうなあてはあるかい?天才アルケミストなんだろう、君は」

「私にまかせておきなさい、と言いたいところだけど、こんなのは専門外なのよ」

悪ケミは腕組みをしながら、しょぼくれた顔をしてうつむく。ふたりの間にはしばらくの沈黙。
沈黙。沈黙。

「───あっ───」

時間にして数分が過ぎたのだろうか、悪ケミが声を発した。あわてて自らの口を塞ぎ、しゃがみこみ、
文字によるコミュニケーションが再開される。悪ケミによって書かれた文字はこうである。

『ユミルの爪角を使えば生きてるか、死んでるかがわかる』

「昔ね、私のしたぼくが教えてくれたことがあるのよ。たしか───」

悪ケミは語る。かつて仔バフォから聞いた巨人ユミルの話を。
血は海となり、肉は大地に、骨と歯は山脈に、毛は森林に、頭蓋骨は天空に、
そして脳は雲となったとされる、巨人ユミル、その伝説を。

「どう、素敵なお話でしょ」

得意気に語り終えた悪ケミはうれしそうな顔で忍者の瞳を覗き込む。

「それと首輪とどういう関係があるんだい?」

「うーん、なにか関係がありそうだと思ったんだけどなぁ」

言葉とは裏腹に悪ケミは文字を書き続ける。
盗聴されていると考えればこその行動ではあるが、それにしてもなかなかの役者ぶりである。
忍者は悪ケミの意外な才能に、右手で口もとを覆い隠し、少しだけ微笑んだ。

『ユミルの爪角による生死判定をくるわせる → 首輪がはずせる』

けれどそこまでを書き終えたところで悪ケミは頭を抱えた。
おそらくは生死判定をくるわせる方法が思いつかないのであろう。
あーでもない、こーでもない、と言いながら、悪ケミは地面を使ってなにかをしきりに考えている様子であった。
30名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 16:16:54 ID:jguYANGw
「じゃあ、仮の話をしてみよう。
 もし君がこういう首輪を作ろうとしたら、君ならどういう首輪を作るんだい?」

思いがけない質問が忍者の口から飛び出し、悪ケミはその悪趣味な質問に眉をひそめた。
ところが、何かに気付いたように彼女の目が次第に大きく開かれていく。
悪ケミは考える。

首輪に必要な条件。
無理に外すと爆発すること。でも死んだときは爆発しないこと。遠隔地から任意に爆発させることができること。
首輪に必要な要素。
生死の判定。起爆トリガー。爆発物。通信機能。

生死判定にはユミルの爪角。爆発物は殺傷能力があって小型なもの。
残ったのは爆発物を起爆させるトリガー、そして通信機能。

私なら───ジェムストーンを使うわ。
あれは反動の大きい魔法を行使したときに反動を逸らして流し込むためのもので、
つまり砕けるほどのエネルギーが注入されるまではエネルギーを蓄積できるってことだもの。
それに、セージがディスペルを使えた場合を考えたってジェムストーンに蓄積されたエネルギーは消えない。
それどころか、ディスペルをトリガーに溜め込んだエネルギーを放出するようにだってできる。

そうよ、そう考えてみれば首輪を作るための起爆トリガーにジェムストーン以外を使うことなんてありえないわ。
だってディスペルさえあれば、魔法を使ったシステムはどんなシステムだって無力化されちゃうもの。
ということは私たちのつけているこの首輪にはジェムストーンが埋め込まれている。これは間違いないはずね。

そしてジェムストーンは限界ギリギリまでエネルギーを溜め込んでいるというわけよ。
あとほんの少しでもエネルギーが加わったら砕けてしまうくらいにね。

問題は遠隔地からどうやって爆破させるか、よね。
ジェムストーン、通信、なにかがひっかかってる。なんだったかな。
通信・・・通信・・・

「お、思い出したわっ」

悪ケミによる突然の声に、忍者が目を丸くして驚く。
世界せーふくをたくらむ悪のアルケミストなら爆弾のひとつやふたつ、作ったことがあるだろうと思いたきつけた忍者ではあったが、
悪ケミの反応は予想を斜め上、はるかに超えて、まさに今、核心に辿り着こうとしていた。
いやはや、雨水岩をも穿つというが、目標をもって生きている人間の力というやつはおそろしい。

「週刊首都通信って知ってる?」

同時に悪ケミは地面に文字を刻む。記憶の片隅に残っている彼の記事、システムの名前は───振動リンク。

『ジェムストーンに限界までエネルギーを蓄積 → 砕けて放出されるエネルギーを利用して起爆
 振動リンクシステム → 同色なふたつのジェムストーンを遠隔で同期させるシステム』

「こーむ大臣さんの連載、大好きだったの。さっき彼の名前が呼ばれてたよね。
 彼までこの島で殺されてたなんて、ひどい。私サイン欲しかったのにー」

『振動リンクシステムの欠点 → 同期が外れたらそれまで蓄積していたエネルギー量に関係なくジェムが砕けてしまうこと』

忍者は口を大きく開けたまま、ぽかんとしているが無理もない。
首輪爆弾を作る方法を考えろといったところで悪ケミ以外の誰がここまで考えることができるであろう。
それもシステムの根幹部分までである。

離れた場所でリンクしているジェムストーン。リンク切れによるジェムストーンからのエネルギー放出。それをトリガーに爆発する爆薬。
そう、世界せーふくに特化した悪による悪のための頭脳によってすべての線は繋がったのだ。

けれど悪ケミはそこでがっくりとうなだれる。力ない手で書かれたへにょへにょした文字を忍者は目をこらして読んだ。

『あくまで推測 さらに問題あり』
『ジェムストーンに蓄積されたエネルギーをとりのぞく方法 → プロフェッサーによるソウルバーン』

文字に目を通し終えた忍者もまた、悪ケミと同じようにがくりと頭を垂らした。
この島に転生職はひとりも存在しない。つまり首輪が悪ケミの推測した通りだとしても解除する方法はないのである。

本当にそうであろうか?

雷でも落ちたかのようにふたりは同時にひらめく。
ふたりが思い出したのは昨日の戦闘でのこと。
といっても悪ケミは指弾を受けて気絶したことくらいしか覚えてはいないのだけれど。
ともかくふたりは気付いたのだ。
蓄積されたエネルギーを取り除くことのできるもうひとつの職業を。

戦っていなければ気付かなかったかもしれない。出会っていなければわからなかったかもしれない。
けれどふたりは気付いたのだ。首輪を解除することのできる可能性を持った職業が───モンクであることを。


〈悪ケミ>
現在位置:灯台(J-6)
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
参考スレッド:悪ケミハウスは三箱目


〈忍者>
現在位置:灯台(J-6)
所持品:グラディウス、黄ハーブティ
外見特徴:不明
思考:悪ケミについていく。殺し合いは避けたい
3129sage :2006/01/25(水) 16:30:19 ID:jguYANGw
いろいろと問題がありそうだけど首輪解決案を投げてみる。

悪ケミの推測は必ずしも正解とは限らないし、モンクが鍵とも限らない。
ついでに言えば鍵だと思ってるモンクが全滅しちゃってふりだしにもどって嘆くような展開も密かに期待。

あと、ひとつ提案なのですが、2日目の午後〜夕方のどこかで雨というのはどうでしょう?
天候はあらかじめ伝えておかないとそろえるのは難しそうなので。
雨だと、あの人の設定が活かせるんですよね。
32名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 20:16:34 ID:9eG8Cxco
143 Goodbye my princess


毎日の日課だった弓の練習。
それを終えて家に戻ると、家族みんながおいしいご飯を作って待っててくれた。
あたしはそのころはまだ弓が上手で、パパにもパパの友達にも、いつも褒めてもらってた。

厳しいけれど、強くてかっこよくてハンターのパパ。
優しくて、自慢できるくらいきれいなダンサーのママ。
弓の腕はからっきしだったけど、いつも綺麗な声で歌ってくれたバードのお兄ちゃん。
あたしはみんな、大好きだった。
なのに。
いきなり現れた綺麗なおねえさんが――綺麗で怖い女王蜂が、あたしのしあわせを全部奪っていった。

あんなに強かったパパは、虫の兵士たちに全身を刺された。
あんなに綺麗だったママは、あいつが撃った雷で、真っ黒になった。
最後まであたしを庇ってくれたお兄ちゃんは、虫に喉を食い破られた。大好きだった歌声も、もう聴けない。

あたしは何もできなかった。
こわくてこわくてたまらなくて。あんなに弓の練習をしてきたのに、それを嘲笑うみたいに体が動かなかった。
震えるあたしにあいつは言った。お前が次の我の器だ、って。
その言葉を聞いたあと、少しずつ意識がなくなっていって。

薄れる意識の中で最後にあたしが見たものは、血溜まりに浮かぶパパの弓だった。

――ああ、だからあたしは弓を持つと、血まみれの人が見えたんだ。
その人たちは知らない人なんかじゃなくて、あたしの家族だったんだ。

気がついたらこんな変な島に放り出されてて。わけがわからなくて、あたしは記憶を辿ろうとした。
でもその先に待ってるのは、こんな思い出だったから。
あたしはあたしの心を守るために、ありえない空想に逃げて、お姫様になろうとしたんだ――


+++++


「こんなところにおったとは…難儀したぞえ。我が器よ」
妖艶に微笑む女王蜂から、♀アーチャーは視線をそらすことができなかった。
少女は震えながら、空想で誤魔化し封印してきた過去を思い出していた。


「待ちなさい。お嬢ちゃんに手を出す前に、あたしの相手をなさい」
背後からの鋭い声に、ようやくミストレスが振り向く。
鞭を構えるジルタスに、ミストレスは余裕すら感じさせる微笑を向けた。
「おぬし、人間ではないな? どのように情報が伝わったのやら、蟲どもが噂しておったのを耳にしたことがある。
 とある古城の監獄に、我と同じように女王と呼ばれる女妖魔がおると」
「姿は変わっているけど…その口ぶりとさっきの電撃。あなた、『女王蜂』ね」
「いかにも。人間に与しているようじゃが…何ゆえにだ?
 人間のような下等な生物に与せずとも、おぬしほどの妖魔であれば生き残ることができるであろう」
「話にならないわね」
ふぅ、とため息をひとつつくと、ジルタスは気だるげに髪をかきあげた。
彼女の全てである『ご主人様』はもちろん人間。それを下に見るミストレスとはもとより考え方が違うのだ。


「相手が何であろうと、仲間に手を出されて黙って見過ごすわけにはいかないわ」
「愚かな…人間どもの飼い犬になりおって。ちょうどよい、目を覚まさせてやるわ!」
ジルタスの鞭がひゅん、と唸る。その音を合図に、二人の女王は動き出した。
小手調べ、とばかりにミストレスが電撃を放つ。
「遅い!」
横に飛んでかわし、振り向きもせずにジルタスは鞭をふるった。
それを予想できないミストレスではない。腰に下げた短剣を抜き、鞭を受け流す。
再び、二人の距離が離れる。
じりじりと距離を詰めながらも、互いに仕掛けない。
静寂を破り――ジルタスが動いた。
(何……!)
突然飛んできた矢に、ミストレスが体勢をわずかに崩す。
先ほど横に飛んだ時に、散らばった♂ハンターの矢を拾い、ジルタスはそれをダンサーの矢撃ちの要領で飛ばしたのだ。
その隙に一気にジルタスは距離を詰めた。
「もらった!」
鞭を振りかぶる。その鞭はミストレスの首元に寸分違わず絡まり、勝負を決する――かに見えた。

「ぅ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ああああああああああああああ!!!」

突然遠くから聞こえた叫び声。
聞き間違えるはずがない。最愛の主人の危機に瀕した声に、ジルタスは動揺した。
隙を突いて鞭を振るうはずの手が一瞬だけ止まる。
その一瞬が、命取りとなった。
「……あ…っ!」
ばちぃ、と大きな音が響き、ジルタスは先ほどの♂ハンターと同様に地へと転がった。
もちろん彼女の体は人間より丈夫だ。♂ハンターよりもかなり早く回復し、すぐに通常通り動けるようにはなるのだが――
この状況において、数分でも行動不能になることは許されなかった。ジルタスは悔やむように歯を食いしばった。
「我が本調子でないとはいえ、なかなか…よい戦いであったぞ」
薄く微笑むと、ミストレスが彼女に背を向ける。
隙だらけの背中。止められるのなら、止めたかった。
33名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 20:17:27 ID:9eG8Cxco
(やられちゃった…王子様も、お母様――ジルタスさんも……あたしのせいで!)
体の震えを、♀アーチャーは抑えることができなかった。
彼女を嘲笑うかのように、ミストレスが近づく。
それでも彼女は、震える手で地に転がる♂ハンターの弓を手に取った。
(王子様…あたしに、勇気をください……!)
矢を放つ。それはいつものように見当違いの方向ではなく、かつての彼女の腕のまま、まっすぐに飛んでいった。
恐怖に勝てた、と彼女は思った。
しかしそれは……ミストレスの手にする短剣によって弾かれ、地に落ちた。
「よい腕じゃ。器の身で我に逆らった勇気は褒めてやろう」
慈愛すら感じさせる微笑を浮かべながら、ミストレスは♀アーチャーの体をそっと抱いた。
「さあ、我に身を委ねよ……」
二人の体が紫色の光に包まれる。
ゆっくりとミストレス――いや、彼女の仮の肉体が霧のように消えていき、♀アーチャーの体へと吸い込まれていく。
「あ、あぁ……王子さ、ま……」
掠れた声で♂ハンターを呼び。少女は一粒の涙を流した。


(いったい、どうなって……)
♂ハンターは呆然とその光景を眺めていた。
桜色で、肩に届くほどだった♀アーチャーの髪は紫に染まり、腰ほどまでに伸びた。
そう、以前のミストレスの仮の肉体のように。
だがその身に溢れ出す魅力は全く別質のものだ。いや、本来のものに戻ったというべきか。
(あの顔は…確かに♀アーチャーだ。それなのに、何かが…全然違う)
元々♀アーチャーは美少女であった。だが今の彼女が漂わせる色香は、成熟した女性を思わせる。
何より目が違う、と♂ハンターは思った。底冷えするような冷たい目は…人間を感じさせない。


一方でミストレスは内心で歯噛みしていた。
器と同化した今、力は完全に取り戻したはずだ。
だが今の魔力は、転生したばかりで体が慣れないといった理屈では説明できないほど弱っている。
仮の肉体の中にいた時より数段ましとはいえ、これでは意味がないではないか。
(この首輪のせいか…忌々しい。器にも仮の肉体にかけたものと似たような呪をかけておったのだな。
 ジョーカーよ。おぬしはよほどくびり殺されたいとみえる)
ミストレスの中で、道化への殺意がさらに増す。
ふと視線を感じ、そちらに目をやると、先ほど彼女が電撃を食らわせた狩人が必死の形相を向けていた。
(……ふむ)
人間は愚かなものだという認識は彼女の中で変わらなかったが、この青年が器を守り続けてくれたことは事実らしい。
ならば少しばかりの情をかけてやってもよいだろう。何、ほんの気まぐれだ。
「よくぞ器を守り続けてくれたの。それに免じて命は助けてやろう」
無造作に♂ハンターの眼前に一振りの短剣を投げ捨てる。
プリンセスナイフ――転生する前に♀アーチャーが持っていたもの。今となっては遺品となろうか。
彼女がそれをわざわざ置いていったのは礼と言う名のただの気まぐれだった。
「ま…て……!」
ようやく口が動かせるようになったらしい♂ハンターが掠れた声で唸る。
ぶるぶると震えるその手は、ミストレスの器となった亡き♀アーチャーに伸ばそうとしているのだろうか。
「……哀れなものよな」
振り返りもせずに、女王蜂はその場を立ち去った。


「……大丈夫?」
ようやく体は動くようになったらしいジルタスに運ばれ、♂ハンターは木に寄りかかるようにして休んでいた。
「……ごめんなさい。あたしがあいつを止められていれば……」
「いや…いいんだ。それより…君は、君のやるべきことを、するんだ」
「え?」
♂ハンターはゆっくりと首だけをジルタスのほうへ向ける。
弱弱しいながらも真摯な視線を向け、彼は言葉を続けた。
「さっきの悲鳴…♂アコのものだった…ろう? 俺のことは、いいから…助けに、いって…やってくれ」
「でも、あなた体が動かないんでしょう? もし敵がきたら」
「いいから……君には、守るべき人を、守りきってほしい。できなかった、俺の、かわりに……」
「……!」
悲痛なその言葉にジルタスは息を呑んだ。
どのような思いで彼がその言葉を口にしたのかは想像に難くない。
「わかったわ……。ご主人様と一緒に必ず戻ってくるから。無事でいなさいよ!」
そう言い、ジルタスは♂ハンターの手を包むように握ると、悲鳴の聞こえた方向へと走り去っていった。
それを見送ると、♂ハンターは手元を見つめた。その手には、プリンセスナイフがそっと置かれている。
(『王子様』なんか気取ってたくせに……守ってやれなかったな)
王子様王子様と付きまとわれて、うっとおしいと思ったときもあった。
だがそれ以上に、彼女を守ってやりたいと感じていたのも確かだ。
責任感からか沸いてきた愛情からかは、今となっては確認する術も無い。
もっとも♀アーチャーは死んだわけではない。だがその意識は全くの別人にとってかわられている。
今の彼女は彼女ではない。人間ですらないのだ。
それはある意味死なれるより辛いかもしれない、と彼は思った。
彼女をできることなら元に戻してあげたいとも。
「情けねぇな、俺……」
そう呟くと♂ハンターは木に身を任せ、意識を手放した。
奇しくも彼の頭上では、彼自身が彫った×印が、少女との思い出を残すかのようにその存在を主張していた。


<♂ハンター>
現在地:G-5(G-6境界付近)
所持品:アーバレスト、大量の矢、ナイフ、プリンセスナイフ
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:ユピテルサンダーで感電。痺れて動けない。
睡眠中だが気絶に近く、よほどのことがなければ起きない。

<♀アーチャー>
状態:意識は消滅し、ミストレスとなる。実質死亡
彼女自身の意識が欠片でも残っているかどうかは微妙?

<ジルタス>
現在地:G-5(G-6境界付近)→G-6へ
所持品:種別不明鞭、ジルタス仮面
備考:首輪を付けられている
状態:やや麻痺の後遺症が残るが動ける。♂アコライトを助けにいく

<ミストレス>
現在地:G-5(G-6境界付近)→どこかへ
容姿:髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー
所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー(♀アサの遺品は拾わず)
備考:♀アーチャーの体を乗っ取る。器探しの目的は一応達成。
力は以前よりかなり増大しているが、封印は健在。力がどの程度戻ったかは後の書き手さんまかせ


<残り31人>
3432sage :2006/01/25(水) 20:25:00 ID:9eG8Cxco
ナンバリングミス。144話ですごめんなさい(;´Д`) 時刻は放送後で。

25さんの急展開に執筆欲が沸き上がり一気に書き上げ。ミストレスの口調難しい(ノ∀`)
俺が書きたかったぞこのunkめ! って方には申し訳ない_| ̄|○

ジョーカーヌッコロス状態の新生ミストレスですが、あても無いのにどこにいくつもりなんでしょうか(ぇ
いきなりボスクラスの能力に戻っちゃうのもバランスブレイカー気味なので、少し抑えるためにまたしても封印を。
書いた後気づいたのですが、ミストレスin♀アーチャーの場合首輪はどちらと判断するのでしょう。
ミストレスと判断して、♀アーチャーは死亡扱いっていう高性能ぶりを発揮するのが無難ですかね。


>>29
GJ! 悪ケミの天才的頭脳に燃え萌え。
そろそろ本格的に首輪解除の方法を考えるグループも出てこなきゃですもんね。これからの展開に期待。
雨の件、いいんじゃないでしょうか? 生かせる設定は最大限に生かすのがよいかと。
35名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 21:37:48 ID:8eDKPbU2
 145:鉄面皮

 面白く無し、と♂クルセイダーは鉄面皮の裏で考えていた。
 原因は目の前の二人、である。
 彼はさも当然の様に(彼にはそう見えた)声をかけて来た♂モンクに応じ、一時彼らと共に座り込んでいた。
 僧兵曰く、彼を治療したいと言った♀騎士に感謝しろ、と言う事らしかった。
 今更口にするまでも無いが、ここは殺戮の庭である。
 だと言うのにだ。これは一体なんたる偽善か、そうでなければ愚鈍であろうか。
 彼は勿論、冷静ではある。
 意識ははっきりとしているし、殊にこのゲームにおいてならば彼に勝る経験を積んだ者などいるまい。
 例えば、只殺すだけでは最後まで生き残る事は出来ない、と理解している点。
 他にも、諸々の生存論理がある。

 しかし──正直に言えば、彼は眼前の♂モンクと♀騎士が妬ましかった。

 直ぐにでも切りかかりたくはあったが、彼の経験と知恵は自らの衝動を愚かだ、と戒めた。
 手負いの一人では前衛二人を仕留め切れない。
 大方、返り討ちに会うだろう。足りないものが余りにも多すぎた。
 第一、今の状況は♂クルセにとって、とても都合が良い。
 それなりに深かった傷は、と言うと♂モンクによってある程度治癒されてもいるのだし。

「──すまないな。手間をかけさせた」
 ぞんざいに礼を言うと、♂モンクも彼に応じるように「ああ」とだけ言う。
 警戒されている、と思った方が良いのだろう。
 娘は愚かだが、僧兵は俺を疑っているらしい、と彼は認識していた。

 賢い。その選択は確かに最良とは言わないもののベターではある。
 だが、彼にとってそれはどうでも良い事。
 僧兵には娘と言う枷がある。今の問題は別にあった。

「所で──」
 そう切り出し、♂クルセは話題を持ちかける。

「少し情報を交換したい。お互い、生き残るにはその方が都合がいいだろう。…構わないか?」
 自身の真っ黒い腹の内を知っている♂クルセにとってそれはなんとも白々しい台詞であったけれども、
♂モンクと♀騎士にとってはそうではなかったのだろう。
 或いは、殺人鬼といえば直ぐにでも切りかかってくる人間を思い浮かべているのか。

 それから、♂クルセイダーはここまでで自分が♀ローグ、♀アコライトと刃を交えた事。
 その悉くが現状を理解できず狂っていただろう事などを簡潔に、しかし解り易く述べた。
 含んでいるのは六割の真実と四割の嘘。
 ♀騎士は蒼い顔をしていて、♂モンクがしきりにそれを落ち着かせている。
 彼はそれを見て、この二人が恐らくは現実に打ちのめされているのだろうな、と思った。
 何も生き残るのに必用なのは何も剣の力だけでは無い。

「済まない。いきなりだったとは言え…人を、危めてしまった」
 そして、俯き今殺せない事の鬱憤で手を震わせて見せつつ彼は告げた。

「そう…か。そりゃ、そうだよな。うん、うん」
 ほら見たことか。折角疑っていたのに異常な状況に放り込まれたショックで碌に判断が働かなくなってしまっている。
 生き残る事が困難になりそうなら乞食や騙りの真似事だってしてやるさ。
 ♂クルセイダーは、腹芸を見抜けぬまま騙される♂モンクに思う。
 (最も、彼は♀シーフや♀ノービスの事を知らないのだけれど)

「俺達の方は──すまない、まだアンタ以外には誰にも会って無いんだ。♀アコライトに会わないように注意するよ」
 済まなさそうに♂モンクは言うのを見て、♂クルセは頷く。

「あの、すみません。いいですか?」
 と、会話が一区切り付くや否や、傍らで聞いていた♀騎士が割って入る。
 暫しの間を空けて、♂クルセは返事を返した。

「悪いが、一緒に行けと言うなら駄目だ。一応、俺にも目的があってね」
「そう…ですか。すみません、勝手なお願いしようとして」
 勝手、と言うよりも不安から来る暗愚だろう、と♂クルセは思ったが勿論口には出さない。
 一人で居るのが嫌で、数合わせ(にんぎょうあつかい)の他人を近くに侍らせたいのか。
 じぐり、と心の深い部分が湿った音を立てるのを彼は聞いていた。
 実に不快だった。彼は、そう言う人間がこのゲームで最後に取る行動について良く知っている。

「落ち込むなよ…何だ。あんまり人数が増えても…その、な」
「……どうして。皆、こんなの嫌に決まってるわ。だから、皆で協力すればきっと──」
 きっと、ここから無事に帰れる、とでも思っているのか。
 内心せせら笑いながら、しかし助け舟を出してやる。

「ああ。俺だって本当は一緒に行きたい。けど探してる人が居るんだ。だから、行けない」
「探してる人…どんな?」
 答える為に、悲しげに顔を歪めた。
 ──不思議と、時間は過ぎたのにこれだけはどうしても嘘が付けない、と♂クルセイダーは思う。
 それが実際には故人である、と言う只一点を除いて。

「俺の、恋人だよ」
 飾る事無く短く答えた。どんな人だったのかは磨耗していてもう殆ど思い出せなかったけど。
 只、酷く懐かしいイメージだけは理解できた。
 何処にでも転がっていた懐かしいイメージ。彼はその残滓で、自己の保存によってそれに縋りつく事だけが生き甲斐だった。

 言うと、自分の荷物をしょって立ち上がる。
 引き止められるかもな、と一瞬彼は思ったが、台詞に面食らいでもしたかどちらの言葉も背中には無かった。

「じゃあ、俺は行くぞ。世話になった」

 さて、この二人は今殺すべきではないし、体力も戻っていないから。
 それにあれじゃあ、狂気に飲まれて遠からず死ぬ。
 少し何処かで休んで次の誰かを探しに行こう。
 ♂クルセイダーは相変わらずの鉄面皮の下でそんな事を考えていた。
36名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 21:38:26 ID:8eDKPbU2
♂モンクは、と言うと如何にも先程立ち去ったクルセイダーの男の顔が頭の中から薄れずにいた。
 勿論、それは戦場での恋、と言う訳では無いのであった。
 そうなるかも知れない相手は♀騎士の方が随分と優れているに違いなかったからだ。
 第一、そういう趣味は修道院所属であっても額面通りではない彼には一欠けらだって無い。

 さて、♂モンクはこの地獄の鍋底で、自分が一体何をすべきかと言う事について今の今まで状況に流されるままだった。
 当然ながら参加した以上生き残る事を希望している彼は、どちらかと言えば慎重に行動する事を望んでいたが、
先の一件でどうにも自らの連れ立った女性がそういった思慮に乏しいらしい、と無遠慮ながら考えざるを得なかった。
 さっきの判断保留は、一応信頼しての事だったが、見事にそれは裏切られた訳で。
 まるで一人でいる事が怖くて仕方が無いような、そんな怯えきった色が傍目から浮かんで見えたので。

 ──そりゃ、俺だって人物鑑定に自身なんか無いけどさぁ。アンデットみたいな目をした奴と同行したい、だなんて思わないよ。

 と言う事である。
 ♂クルセの言葉が何処まで真実なのか、と言う点はとりあえずうっちゃって少し離れた場所に座している♀騎士に目をやる。
 釣り目で、意思の強そうなイメージ。だけど、如何にも自分に自身が持てない性質なのだろうか、と思う。
 普段ならば、他人のそういう事に口出しをするのは苦手だが、今はそうも言ってられない。
 背中から撃たれるなんて♂モンクにとっては真っ平ごめんだった。

「あー、すまん。ちっといいか?」
「ん…どうしたの?」
「言いたく無いなら、喋らなくてもいいんだ。けど、一緒に行く以上互いの事は知っておくべきだろ?」

 幾つか適当な語彙を探してみるが、勿論彼はそういった文学作品とは無縁の野生児である。
 そも、そんな器用な真似が出来るならば、今頃目の前の不安定な少女と懇ろ(ねんごろ)になっていただろう。

「じゃあ、俺の聞きたい事って言うのはどうも君が──その、だ。自分に自信が無いと言うか。
 一人じゃどうしようもないような、そんな問題を抱えてるみたいに見えるんだ」
 切り出した言葉はどうやら♀騎士の傷口を器用に、しかし深く探り当てたようで、♂モンクは少し後悔していた。
 きりっ、とした表情が嘘だったみたいに俯いて、長い髪のかかった顔からは♀騎士が動揺しているのが見て取れた。
 少し、青ざめているかもしれない。

「私は──」
 勿論、♂モンクは知らない事だったが、彼女は真面目な騎士だった。
 だから、彼の言葉──と言うよりも、仲間である、少なくともそう彼女が思える相手に嘘をつく事は♀騎士には無理な相談だった。

「わたしは──っ」
 けれど、流石に人間の心の機微に疎い♂モンクも♀騎士が両腕で自分の肩を抱き子供みたいに震え始めたのを見て、
自分の言葉が彼女にとっては拷問にも等しいものなのだ、と気づいた。
 天秤のイメージが瞬間的に脳裏に投影されて浮かび上がる。
 それが示した結論は生き残りたいならこのまま彼女の傷を抉れ、と言う事だった。

 ──苦悩って言うのはこういう感覚だったっけ。
 と彼は思った。目の前の♀騎士は、と言うと今にも癇癪を起して泣き出しそうな顔で。

「あー、いや。うん。気にするなよ」
 だから結局、彼は自分の天秤に乗せるものを命の価値に摩り替えて言った。
 彼の内側にほんの少しばかり残っている矜持、と言うものは自分よりも目の前の泣きそうな女の子を選び取っていた。
 自分に言い聞かせる。これはきっと、ほんの少し俺の生き残る可能性を減らしただけさ。
 勿論、強がりだ。

 見れば、♀騎士はぽかん、とした顔で彼を見ている。
 冗談の一つでも♂モンクは口にしたい気分だったが、口が回らなかった。
 それから、♀騎士は戸惑った様な顔で、しかしすぐに「ごめんなさい、でもありがとう」と言った。

<♂モンク>
髪型:アサデフォ
所持品:黙示録・四葉のクローバー
備考:諸行無常思考、楽観的 刃物で殺傷 ♀騎士と同行
現在地:E-7 (F-7付近)

<♀騎士>
髪型:csf:4j0i8092
所持品:S1シールド、錐
備考:殺人に強い忌避感とPTSD。刀剣類が持てない 笑えない ♂モンクと同行 赤みを帯びた黒色の瞳
現在地:E-7 (F-7付近)

<♂クルセ>
髪型:csm:4j0h70g2。
所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) ソード
備考:最低限の傷の手当て済 更にヒールによる治療。体力消耗が激しいものの、傷は行動に多少支障が出る程度に回復。
現在地:E-7から出発。行き先未定。
37名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 22:16:42 ID:8eDKPbU2
投稿するのは久しぶり。
それはうっちゃってBJネオとかいう漫画を見たら
ゲシュタルト崩壊起こしそうになったよママン。
次は頑張って誰かの戦闘を書きたいな〜、っと。
それでは、また。
38名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 23:01:42 ID:WJYIyum2
ヒャッホウ、怒涛の急展開だぜ。

>>32
♀アーチャーの弓を撃つとき目を閉じちゃう伏線の回収お見事!
不幸体質な♂ハンターの今後に目が離せませんな。
王道ならもう一度♀アーチャーの出番はありそうなんだけど、表記はミストレスに一票。

>>35
♂クルセが情報交換で♂アサ・♀ノビの話をしていないのはわざとなのかが気になった。
誰にやられた傷なのか、くらいは♂モンクが聞きそうだけど、どうなのかな。
それにしても♂モンク・♀騎士ペアに死に気配をビンビン感じるのは俺だけだろうか・・・
39名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/25(水) 23:06:06 ID:8eDKPbU2
>>38
すまん。俺の確認ミスだ。orz
大体にして、出会った相手は殺人者ばかり、と言う印象を相手に与える意図だった、と思って欲しい。
ただ、これは本文では無いんで、その辺り別解釈で持っていってもOKです。
40名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 00:14:51 ID:62nrL/nM
146 ツインテール

 グラリスは、雷で木に叩き付けられた。
 本来の威力は弱まれど、人を弾き飛ばすには一番良い魔法である。
「人を殺める事はしたくはなかったのですが……命を狙うというのであれば……容赦しないわ」
 魔法を放った人物、すなわち♀WIZはグラリスを睨みつけて叫んだ。
 足元には右肩を斬られた♂シーフが横たわり、♂プリが手当てしていた。
「……傷は浅いですね、骨にも到達してませんから。ヒールで傷はふさがると思います。咄嗟に傷が深くならないように避けたんでしょうね。あの剣激をこの程度の傷で済むなんてすごいですよ」
 ♂セージのその言葉にホッとしながら、♀WIZは視線をグラリスから離さない。
 木に叩きつけられながらも、死ぬほどの威力がないことを確認してグラリスはずれた眼鏡を直しながら立ち上がった。
「威力が弱まっているとはいえ……さすがはオーラをまとったWIZね」
 木に叩きつけられたときに口の中を切ってしまったのか、地面に血の塊を吐き出して構える。
「死なないとはいえ、結構痛かったわ……よっ」
 地面を蹴り、♀WIZに斬りかかる。
 ♀WIZは眉も動かさずに、微動だにしないままクァグマイアを唱える。
 泥沼に着地してしまったグラリスは足を取られ、剣は♀WIZをかすりもせずに空を斬った。
「ユピテルサンダー!」
 更に詠唱して、♀WIZはグラリスを再度弾き飛ばして木に叩きつけた。
「近接戦闘ですと、あなたが有利のようですから。近づかれないようにしないと」
「……小ざかしいわね……魔法使いはっ」

―――そして、その様子を震えながら♀商人は木陰から見ていた。

 今から少し前のこと。
 ♀WIZの不思議な夢の話を息を詰めて聞いていたせいか、喉が渇いた。
「なんか、ホッとしたらのどかわいた……」
 ♀商人はそのツインテールを揺らしながら、♂セージを見上げる。
「小川が近くにありましたね。汲んできたらどうですか?」
 ♂シーフにそう言われて、♀商人は水を汲みに行った。
 帰ってきたら今の状況である。

 いつの間にグラリスは現れたのか。
 ♂シーフが怪我をしている。
 カプラさんが血のついた剣を振り回している。

 怖いこわいコワイ

―――恐怖で、♀商人は木陰から動くことができない。


 グラリスが、また♀WIZに斬りかかった。

 否。

 斬りかかるように見せて、グラリスはその剣の向きを♂セージに向けたのである。
 予想しなかった剣の動きに、♂セージの反応が遅れた。

 ザシュッ

 鈍い斬る音とともに♂セージの左足から血が流れる。
「……そういえば、お前だったなWを襲っていたのは。死になさい!」
 更に剣を横なぎにして切り払おうとしたその時。

「やめてーーーーーーーー!!」

 ♀商人は、あれだけ恐怖に駆られていたにもかかわらず、叫び声をあげ木陰から出てきてしまった。

「だ、W……じゃない……その髪型は……っ」

 ♀商人の姿に、グラリスは動きを止めた。
 その瞬間を♀WIZは見逃さず、雷を撃つ。グラリスは弾き飛ばされ、同じ木にまた叩きつけられる。
 叩きつけられた木はさすがに三度目の衝撃には耐えられず、砕けて倒れた。
 もうもうと立ち上る埃の後に残っていたのは、鞄がひとつ。

「案内要員の鞄……ですね」

 周囲を警戒しながら、♀WIZが拾い上げた。
 しかし肝心の グラリスの死体らしきものは残ってはいなかった。


未亡人PT(現在位置:E-3からF-3に向かう)
<♂プリースト>
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し)、でっかいゼロピ、多めの食料、赤ポーション5個
外見特徴:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない)、怖い顔
備考:殴りプリ 、♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
<♂シーフ>
所持品:青箱(未開封)、多めの食料
外見特徴:栗毛
備考:ハイディング所持
   ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
    盗作ローグ志望でちょっと頭が良い
    右肩負傷(軽傷なのでヒールで治りそう)
<♀WIZ>
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー 案内要員の鞄(DCカタール入)
外見特徴:WIZデフォの銀色
備考:LV99のAGIWIZ、GMに復讐、♂プリ、♂シーフと同行
<♂セージ>
所持:ソードブレイカー 青箱(開封済みの可能性アリ)
容姿:マジデフォ黒髪
備考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? ファイアウォール習得 GMジョーカーの弟疑惑
   ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
    左足負傷
<♀商人>
所持:青箱2(未開封)
容姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備考:割と戦闘型 ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
   ♂セージに少し特別な感情が……?

<グラリス>
位置:E-3から逃亡
容姿:カプラ=グラリス
所持品:TBlバスタードソード 普通の矢筒 メイルオブブリーディング
状態:左脇腹負傷 三度のJTを食らい極度のダメージを受けている
41名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 13:20:06 ID:GjjuOmUU
怒涛の急展開にワクドキ。
ROワ2一番の電波ッ娘が死んじゃったけどその分ミストレスが多少なりともパワーアップしたので良しとします。
42名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 13:48:46 ID:VFz9.VvY
>>39
> >>38
> すまん。俺の確認ミスだ。orz
> 大体にして、出会った相手は殺人者ばかり、と言う印象を相手に与える意図だった、と思って欲しい。
> ただ、これは本文では無いんで、その辺り別解釈で持っていってもOKです。

(最も、彼は♀シーフや♀ノービスの事を知らないのだけれど)
                  ↑
ここの♀ノービスの部分が問題になっちゃうので、修正お願いしむわーす。

あと、♂モンクさんが誰にも会っていないっていって♀剣士さんのことを伏せているのも意図的なのかどうかわかんないんだけど、
こっちは読み手におまかせってことでいいのかな?

重箱の隅をつついてるみたいでゴメンなさい。でも文章がうまいからこそ、気になるところが出てくるっていうことで許してくだされー。

>>40
どうしてグラリスが5人PTに単騎で挑んだのかは置いておいて、
私にはグラリスさんが熱血漢なのか冷酷なのか、よくわからなくなってきてしまいました。
もう少し各キャラクターの口調とか性格とか、それに伴う思考、行動も考えて書かれると、良くなるんじゃないかと思います。
43名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 14:30:12 ID:0.H2/8lQ
>>40
自分にも何でグラリスが無茶な戦いを挑んだのかがわかんないっす。
手負いの♂アルケミが意識を取り戻した途端、きびすを返すほどの慎重派だと思ってたのですが。
相手はオーラWIZ+セージ+プリーストの魔法職+一次職だから行けると思ったのかな。
殴り(しかも男性)の♂プリは見た目も結構油断できない部類なのではないかと思うけど…
魔法を使えない彼女が、どこで「スキル弱体化」のことを知ったのかも説明が必要かと。
あとはおおむね>>42氏の意見に同意&追加で、
「案内要員の鞄」って拾う前から一目で判るということは彼女の私物ってこと?
共通の支給品なら、持ち主を特定する材料は入っていないのではと思うのだけども。

>>42>>39
>最も、彼は♀シーフや♀ノービスの事を知らないのだけれど
♂クルセはモンクさんを見下しているけど、
♂モンクもそれなりに厳しい殺し合いの現実を見てるよ、ってことかなと思っていた。
でもそれなら♀剣士の名前も入るか…よく読めば読むほど
この一文がどういう意味なのかがわからなくなってきた…
44名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 19:34:22 ID:VFz9.VvY
番外編 とけてひとつに

月明かりに照らされたアメジストを連想させる紫色の生糸に包まれて、
彼女は目覚めのときを待ちわびているかのようにぷるぷると震えていた。
よほど急(せ)いているのか、震動の周期はひどく短く、そして激しい。

時おり発せられる、ん、あはぁっ、とあえぐ声が交わりの行為にも似てひどく艶かしく、
声を聞く私のからだまでおかしな方向にそれていくみたいで、すこし怖い。

ぶるぶる、ぶるぶる。ふるえる繭はさらに小刻みに、さらに激しく。
あえぐ声はさらに淫らに、さらに大きく。
ハヤク、ハヤクと絶頂のときへ向かい駆け登る。

そして───

んんっ、んぁぁぁっ、とひときわ大きな声をあげて彼女は達した。

ぴりぴりぴり、彼女を包む生糸が破れ、内側からは彼女そのものがあらわれる。
異性ならばひとめ見ただけで魂までも魅了されるであろう、妖艶なからだ。
妖しく色づいた唇が内に眠る欲望を喚起させ、たわわに実った白桃のような双丘が本能を駆り立てるのだ。
指に宿った白魚が気を狂わすほどの興奮を、下腹部からこぼれ落ちる蜂蜜が心を溶かすほどの快楽を与えるのだろう。

嬌艶なるアメジスト、まさにそう呼ぶにふさわしい宝石が目の前の彼女だった。

彼女は血のように紅い瞳で私を見るや、ぺろりと舌なめずりをした。
うれしそうに、両の頬を薄紅色に染めながら、しゅるしゅると私に近づく。
どうしてか私は動くこともできず、そんな私に彼女のしなやかな肢体がねっとりと絡みつく。

「さがしておったぞよ、我の新しい器。さぁ、ひとつになるのじゃ」
てらてらと濡れた唇が私の唇と重なる。私の咥内をにゅるりと入り込む彼女の舌。
「んっ、むぁ・・・ふぁっ」
にゅるにゅる、にゅるにゅると彼女の舌が私の舌を陵辱していく。
その腰が落ちそうになる快感と、肉感的な彼女の肌に、私の脳が真白く焼ける。

*** じしゅきせい ***

「どうじゃ、我慢できぬであろう。我とひとつになりたいであろう。
 あんずることなどないのじゃ。そなたと我ははじめからひとつになるべくこうしておるのじゃからの」
頭が快楽という名の泉で満ちる。それはあらがえようのないほどの本能。
どうすることもできない衝動に、私はただすがるような目で彼女を見てうなずいた。

溶けていく、私と彼女のからだが一つに交わっていく。
例えるなら砂漠で水を求め、数日間さまよった末に降りはじめた雨を全身で感じているような、暴力のような心地良さ。
一つになるということ以外が考えられなくなってしまうほどの、麻薬。

溶ける、溶けていく。私のこころが彼女のなかへ、ゆっくりと溶けていく。
こころが、自我が、誰かのために流した涙が、溶けていく。
あぁ、なんて───しあわせ

そして私は、ミストレスの転生のために用意された器に過ぎなかった私は、しあわせに満ち溢れて、消えた。
4532sage :2006/01/26(木) 19:58:43 ID:2Ll2RnMI
>>44
ちょ、テラエロス
規制してないのにこんなんじゃ自主規制部分はどんなに(ry
46名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 20:03:52 ID:2Ll2RnMI
なんか残ってるし…名前欄は見なかったことにorz
……自分が書いた話の裏でこんなことが起こってたとは…(*´Д`)
47名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/26(木) 21:11:25 ID:StINfazw
>>44
自分の家族殺した相手から快楽に飲まれていいのかアチャコー
しかしエロス。
48名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/27(金) 13:15:27 ID:i2q1fy3.
>>40について
グラリスが戦いを挑んだあたりフォローする文章書いていいかな?
理由が抜けているからその辺自由に書けると思うんだがいかがだろう?
49名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/27(金) 14:47:40 ID:sEJ19/8w
>>48
問題なし! というよりむしろ推奨。
お話が破綻さえしていなければむしろそうやって補間していくのがベストですよね。

まったく矛盾なく書くのって大変だし、
完璧な展開に縛られすぎて書き手さんが萎縮しちゃって、投稿が減っちゃう方が悲しいですもんね。

リレー小説の楽しさは、そうやって補い合えるところだと思ってますですー。
50名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/27(金) 17:54:34 ID:sr9QCb96
>>48
全然いいと思いますー。

が、私はグラリスが単騎挑んでったのはカプラW(実際は♀商人ですが)がいると勘違いして我を忘れた…と解釈してましたが。
実際本物のWは一体どこに…?(これから特別枠で出てくるもよし、実はGM.JKの嘘っぱち、どちらでも良さそうですが)
51名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/27(金) 22:05:29 ID:0FI2cG0Y
>>48
自分も上の方でツッコミ入れつつも「もしかしてこれはフォロー作品待ちなのかも?」と
思っていたのでフォロー書いてもらえるのはありがたいっす。
お互いに助け合えるのがリレーの良いところですよね。
勢い重視で書いて他の書き手さんのフォローをあてにするのはマズイすけど…
(そんな心配もいらないと思いますが)
>>50
自分はあの場面、セージを見て「お?そういやテメェW襲ってたな!」と突然怒りに燃え出したので
それはないかなーと思ってました。商人が戻ってきたのを見て、「W!?」って最初びっくりしてたし。
作品内であまり限定してないのでフォローで「W救出!」でも平気とは思いますが。
ただ特別枠はだいぶ前に埋まっているのでWの参戦はないと思います。
それでNG定時放送が投稿されたんだと思ったので。
5248sage :2006/01/29(日) 02:38:39 ID:vXbtBuCo
グラリスは勝機を焦ったための誤算に歯噛みした。
♂シーフは自らの誤算のために高い代償を払った。
♂プリーストは軽率な一言が招いた誤算を悔やんでいた。
♀ウィザードは気のゆるみからの誤算を打破しようとした。
そして、♂セージにとっての誤算は…。


147 Miscalculation


「小川が近くにありましたね。汲んできたらどうですか?」
「うん、そうするね?」

♂セージを見上げていた少女は♂シーフの提案を受けて小川の方向へと駆け出していった。
最初の同行者である♂セージに声を掛けてから駆け出すまでの時間、わずか数秒。
普段の♂セージならば諧謔の効いた一言も言おうものだが、♀ウィザードの話を反芻していた今の状態ではダメともいいとも応えることは出来なかった。
そして、はたと気づいた時には少女の背中は木立の中へと消えていった後であった。

「おぃおぃ、いいのかよ。保護者さん?あの子は♂シーフみたいに隠れるのがうまいわけじゃないだろう?」
「保護者、という言葉には賛同しかねますが、よろしくはないですね」

♂プリーストが揶揄するように言った言葉に♂セージはほんのわずか眉をしかめて答える。
たしかに、♀ウィザードたちとの交渉の間、独りにしたがために大泣きされてしまった♂セージとしてはよろしくないとも言いたくなるだろう。
もっとも、それ以前にこの殺し合いの島で単独行動をすること事体軽率であることは言うまでもないはずなのだが。

「すこし、気が緩んでいますわね」

その軽率さを鑑みて♀ウィザードがため息混じりに呟いた。
おそらく五人の共同体というものは現在の最大勢力であろう。
それにゆえに気が緩んでしまっては元も子もないのだ。
何しろ、彼女たちはただ生き残ろうとしているわけではない。
この悪趣味極まりないゲームを叩き潰そうとしているのだから。

「えぇ」「だな」

即答する男二人。

…二人?

「♂シーフさんは!?」
「なに!?」
「いませんね。まさか♀商人を追いかけていった?」
「どうして!?」
「俺たちの話を聞いてやばいって思ったのか…?ミイラ取りがミイラになるだろうが!」

吐き捨てる♂プリーストの悪い予感はほどなくして的中する。


――― 一方そのころ ―――


♂シーフは♂プリーストが考えたとおり、一人でかけだしてしまった♀商人の後を追っていた。

『あの子は♂シーフみたいに隠れるのがうまいわけじゃないだろう?』

その言葉に彼は自分基準で物事を考えていたことを思い知らされたのだ。
彼ならばもしマーダーに出会ってもハイディングでやり過ごすことが出来るかもしれない。
しかし、彼女ならばどうだ?隠れることは出来ない、だからといって逃げ切れるものなのか?

「どうしてあんなことをっ…」

彼自身の言った言葉を悔やみながら手近な木の幹に八つ当たりをして♂シーフは独り毒づく。
そして、足早に小川のほうへと歩を進める。
探すのは♀商人の姿。マーダーにとっては手ごろな獲物であろう少女の姿だ。

しかし、少年は失念していた。
彼もまた、狩られる側の人間であるということを。
そして、運の悪い事に狩人は少年のすぐそばにまで迫っていたのだ。

その狩人であるグラリスは小首をかしげていた。
森の下生えをかき分けて先を急ぐ風に見えるのはどう見ても一次職の少年だ。
激戦であった一日目を生き抜いた一次職である、おそらくは誰かとパーティを組んでいるのだろう。
そう思ったのだが、周囲に彼の仲間らしい人間はいない。
ならば、二次職にならないすきものかとも考えてみたが、その割には物腰に凄みがない。

身に付けた鎧が音を立てないよう息を潜めて観察を続け、彼女は得心したとばかりに笑む。
彼が先を急ぎながらも誰かを探すそぶりを見て取ったのだ。
つまり、あの少年は今まで共にいた仲間から捨てられたか喧嘩別れしたかはぐれたか。
いずれにせよ単独行動をしなくてはならない状況なのだと。

だとしたら話は簡単だ。斬って捨てるのみである。カプラWのために。
グラリスの決断は早かった。
彼女は身に付けた鎧が騒音を立てるの事も気にせず対人特化のバスタードソードを構えて駆け出す。

♂シーフが突如現れた金属音の方向に顔を向けるまでに8歩。
迫るグラリスへと身体を向ける間にさらに4歩。
普段そこにあるだろう短剣を掴もうとし空振りを繰り返す間にもう7歩。

「ハァアアアアアッ!」

気合の声も鋭く、最後の一歩を踏み込み、同時に剣を振り下ろす。
しぶく鮮血。肉を断つ感触。吹き飛ぶ♂シーフ。
グラリスは一見吹き飛んだように見える♂シーフがバックステップで必殺の一撃から逃れたことを知る。
肉を断つ感触があっても骨を砕く感触がなかったからだ。
彼女は冷ややかに♂シーフを見やると一言呟いた。

「死んでいただきます」
「嫌だ!」

即答した♂シーフは右肩の傷口を押さえながら懸命にバックステップで距離を稼ごうとする。
しかし、手負いの身では普段の軽快なステップが踏めようはずもない。
走り寄るグラリスとの差は徐々に縮まる。
まるで命の火を灯すろうそくであるかの如くに徐々に縮まる。
やがて♂シーフは失血と疲労、息切れでバランスを崩し後ろ向きに倒れる自分を感じた。

(殺されるッ!!)

そう硬く目を閉じた彼だが、更なる痛みはなかった。
ただ、あったのは傷口に翳された大きな暖かい手の感触と。
頭を打たぬよう背中に回された意外にしっかりとした腕の感触と。
玲瓏たる呪文の詠唱と共に彼の脇を駆け抜けて行った雷光が起こした風の感触だけであった。

そして、グラリスは、雷で木に叩き付けられた。

グラリスは勝機を焦ったため獲物の仲間の存在を失念するという誤算に歯噛みした。
♂シーフはマーダーなど大丈夫という自らの誤算のために高い代償を払った。
♂プリーストは軽率な一言が招いた誤算を悔やんでいた。
♀ウィザードは気のゆるみから出た誤算を打破しようとした。
そして、♂セージにとっての誤算は血に濡れたグラリスの剣から♀商人の安否を察して動揺してしまったことであった。
ただ、皆の誤算の大本である♀商人だけがこの場におらず、この場の出来事を知らない。
5348sage :2006/01/29(日) 02:43:40 ID:vXbtBuCo
補足事項。
キャラクター動向については>>40を参照してください。
その一つ前のフォロー話になります。必用ならば番号の付け替えもお願いします。
FCASのAgiセージがQM漬のグラリスの攻撃をかわし損ねていたので勝手に動揺させました。
被弾は心的作用の一つかもしれません。5%の壁が破れただけかもしれません。

こんな感じならグラリスがなし崩し的に大PTに戦いを挑んだ経緯が説明できたかなと思います。
お目汚しですが、楽しんでいただければ幸いです。
以上、突込みがなければ名無しに戻ります。
54名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/29(日) 15:33:52 ID:ElcFch12
>>52
うまく>>40に繋がってますね、素晴らしい。

グラリスさんの10人斬り達成はかなり厳しそうだけど、がんばって欲しいなぁ。
Wが助かるなら10人目は自分を、とか脳内妄想してたり。
55名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/29(日) 16:40:44 ID:wtDIhIZg
>>53
サマルトリア型って言うのは、剣も魔法もどっちもできるけどどっちつかずって言う
TOMが来そうな型だったはずだから、FCASでも避けないって言うのはわかるかも。
とはいえ、グラリスさんのレベルもセージのレベルもわからないけれど(´∇`)
56名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/01/30(月) 15:34:05 ID:hidx/7G6
149. 殺人者VSファルコン


「この・・・・・・トリ公が・・・!」

♂ローグは、全身に作った細かな傷口に苛々していた。どれも浅いものだし痛み自体は気になる程ではないが、相手ははじめに矢が一発掠ったきり無傷、自分はこの有り様。一方的にやられっぱなしなのが、彼にとっては癪だった。
とはいえ、彼の対峙している相手――ファルコンは、標的が小さい上に動きが素早く、何より空を自分の領域とするその攻撃は、360度立体的な軌道から成り、未だに掴めない。このまま攻撃を外し続けると、無駄撃ちしてしまった矢もバカにならない。
人間様より狩り辛いじゃねぇかよ、と♂ローグは吐き捨てた。
だが、こいつは野性の動きではない。自分を狙っている人間を恐れず、逃げるどころか挑発に乗るように攻撃を仕掛けてくるとは。
何より、野鳥は鳥のくせに滑稽なヘアバンドをつけていたりはしない。
「・・・・・・オイ、トリ公手前ェ・・・」
勿論、両足から曲形の棒、のようなものを提げていたりも。
「そいつぁ・・・弓だな? てこたやっぱハンター様の使い魔か、エエ」
答えないが、この鳥は頭が良い。言葉の意味は理解している筈だ。
♂ローグは考える。
まだ、死亡者名簿にハンターの名は挙がってはいなかった。
このままコイツを行かせて、その先でもし主人と合流でもされたら。鷹付きのハンター相手は、武器しか無ぇ今の俺じゃちぃときついかもしれねぇ。
逃がしてたまるか、コイツをここで仕留められりゃ、ハンターが一匹殺り易くなると同時に、武器まで手に入る。鷹が弓をしょってやって来てくれたからにゃ、折角のチャンス逃しちまうのは損だ。
「・・・ヘヘ、オイ」
あんまりだらだらしてると逃げられる。イチかバチかは嫌いじゃあ無ぇ。
「手前ェの御主人様ってのぁ、さっき俺が殺っちまった・・・・・・あの」
賭けだ。1/2。
「・・・・・・女か?」
ぴくり、と鷹が反応した。ばさっ、と威嚇するように羽を広げる。
次の瞬間、真っ直ぐに♂ローグ目掛けて突っ込んできた。
♂ローグは内心でかかった、と自分を賞賛し、口元を釣り上げる。ファルコンの攻撃力をなめてちゃ大怪我するが、一発くらい貰っちまうのは仕方が無ぇ、捕まえちまえば包丁一本突き刺すだけだ。
迫るファルコンを確実に視線で捉えながら、片手で懐の包丁に手を掛ける。
来る、と思った次の瞬間、♂ローグは素早く包丁を懐から引き抜き、攻撃を受け止めるために体勢を落とした。空いている手で、顔はガードする。
が。
ファルコンはそのまま♂ローグの首元すれすれを旋回すると、羽毛を撒き散らしながらあさっての方向へと飛んで行った。
衝撃が来る、とばかり思っていた♂ローグは反応が遅れ、慌てたように包丁を振り上げるが、当然のように手ごたえは無い。見上げた空には今まで戦っていた相手の影しかもう映っていなかった。
「・・・チィ、やっちまった」
考えを読まれたか、もしくは自分でこの状況がよろしくないと気付いたのか。
「賢いトリだぜ。こいつぁ殺り難いのが出来ちまったかな」
ぽりぽりと頭をかきながら、さしずめ中ボスってとこか、と♂ローグは皮肉めいた笑みを浮かべる。
そのまましばらくぼんやりと何をでもなく考えていたが、再び包丁を懐に仕舞うと、ぽつりと呟いた。
「・・・・・・飯だ。腹ァ、減った」

<♂ローグ>
<位置:I-6>
<所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、馬牌×2、青箱×1>
<外見:片目に大きな古傷>
<性格:殺人快楽至上主義>
<備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す>
<状態:全身に軽い切り傷>

<ふぁる>
<位置:I-6→???>
<所持品:+2バイタルシュールドボウ[3]、リボンのヘアバンド>
<スキル:ブリッツビート スチールクロウ>
<備考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない。ツンデレ?>
57名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/31(火) 03:18:02 ID:8yKlftdU
148話時点までの人物相関図なるものを作ってみた
画像保管庫に貼っておくのでよかったら活用してくれ

>>56
ふぁる頭いいな
58名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/31(火) 03:39:23 ID:KXRtWUu6
>>57
GJ!!
「踏む」ってあんた!
59名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/31(火) 17:31:55 ID:s0hIZoo.
150 騎士として [昼頃]


(本当に大丈夫か、こいつ)
ぼんやりとした様子で歩く♂アルケミストを見て、♂騎士は思った。
――こんな時に襲われたらどうするつもりなんだ。やっぱり俺が守ってやるしかないのか。
男を守る趣味はないんだが、先ほど守ってやるなんて言ってしまった手前そうするしかないんだろう。
しかし男としてどうなんだ、それは。男を守る俺も、男に守られるこいつも。
第一なんなんだこいつは。ぼーっとしやがって、騎士として守る気もおきないっての。


今から数時間ほど前。
二人はあの惨劇の起こった場所へ、♀クルセイダーを埋葬するために戻っていた。
安らかに眠る彼女はまるで笑っているかのようで。♂騎士は少しそれを羨ましく思った。
他でもない彼の手で殺された♀プリーストは、笑顔とは程遠い絶望に染まった表情をしていたから。

♀クルセイダーの体を♂アルケミストがそっと抱き起こす。
それを確認すると、♂騎士は彼らに背を向けた。ありがとう、という♂アルケミストの言葉が後ろから聞こえる。
(ばーか。二人の時間を邪魔するほど俺は無神経じゃねぇよ)
本当は立ち去ってやるのがよいのだろうけれど。敵がどこからくるかわからないこの状況でそれはできなかった。
だがせめて、彼が彼女にかける最後の言葉は聞こえないように。♂騎士は少しだけ距離をとり、腰を下ろした。

♂アルケミストが愛していた彼女にどんな言葉をかけたのか、♂騎士にはわからない。
泣き声がかすかに耳を通りすぎていったが、聞こえていないふりをした。二人の時間に自分はいないことになっているのだから。
ただひとつ、♂騎士は思う。♀クルセイダーはその最期の瞬間まで♂アルケミストのことを想っていたのだろうと。
命の灯火が消える時になっても、あんなに優しい笑顔を浮かべることができたのだから。

「……行こうか」
♂アルケミストに肩を叩かれ、♂騎士は立ち上がった。
「大丈夫か?」
♂騎士の問いかけに、彼は確かに頷いたのだけれども。
その暗い表情は、♂騎士に不安を覚えさせるに十分だった。


そして現在。♂騎士の不安は確信に変わった。
――あぁ、だから進むなって。そっちじゃない。第一前衛の俺より前を歩くな。妙に足早えし。
おまけにさっきから呼んでるのに聞きもしないでシカトしやがる。完全に呆けてるな、こいつ。
「おい、馬鹿!」
背後からかけられた怒鳴り声に♂アルケミストは振り返った。
いつのまにか前を歩いていることに彼は初めて気づいたようだった。
「馬鹿とはなんだよ」
口を尖らせて反論する♂アルケミストに、思わず♂騎士は頭を抱えた。

「本当に馬鹿なんだから仕方がないだろ。お前は自殺志願者か?」
「何言ってんだ、あんた」
「何言ってんだはこっちの台詞だ。さっきからピッピピッピ鳴ってるその音に気づかないほど耳が悪いのかよ」
♂アルケミストのほうへ、ため息をつきながら♂騎士が近づく。
まさに危険を知らせるといったふうなその電子音が二重に重なる。
再び距離をとると、また♂アルケミストから聞こえるひとつに戻る。

「おそらく禁止区域に首輪が反応してるんだ。地図を見てみろ、F−5の近くにきてるだろう」
「……本当だ」
「出発する前に言っただろ…禁止区域に近づいてきたら西に進路を変えるって。それなのにガンガン先に進みやがって」
「……言ったっけ?」
「言ったわ!」
思わず♂騎士は叫んだ。本当にだめだこいつ。あぁ、苛々する。
仕方がないとも思うのだ。自分も♀プリーストを手にかけてから、呆けた状態で長くいたわけだし。
一度は立ち直ったかに見えた♂アルケミストが、♀クルセイダーの遺体をもう一度見て再び落ち込むのもよくわかる。わかるのだが。

「あぁもう! しゃきっとしろしゃきっと! お前それでも男か!」
前時代的なことを言っていると自分でも思うのだが。そう言わざるを得ないほど♂騎士は苛立っていた。
「でも……♀クルセは俺を守って、俺のせいで死んだんだぜ。元気なんて出ねーよ……」
その言葉を聞いて、♂騎士は自分の苛立ちの正体に気づいた。
単に♂アルケミストが自衛を考えずに呆けているのが癇に障るからではない。
悲しみに沈み、その中で揺らぎ続けている姿が、かつての自分と重なるからだ。
「……情けねぇな」
「そんなのわかってる」
「違う。俺もお前も、だよ」
そう言うと、♂アルケミストはきょとんとした表情でこちらを見てきた。
――情けない。俺もお前もなんて情けないんだろう。
何よりも自分に苛立って、恥ずかしくなって、死にたくなるかもしれない。俺はそうだった。
でもな、それでも生きていかなきゃならないんだよ。
殺しちまった俺。守られてしまったお前。違いはあるが、好きだった人の命を背負ってるんだから。

「思い出してみろよ。あの娘の表情を」
♂騎士の言葉に、♂アルケミストは目を伏せた。
「♀クルセ……笑ってたな」
「ああ、笑ってた。死んだのがお前のせいだって思う奴が、あんな表情して死ねるか?」
はっと何かに気づいたような表情になる♂アルケミスト。
彼はもう一度目を伏せると、今にも泣き出しそうな声で呟いた。
「俺さ…♀クルセに言ったんだ。君の笑顔が好きだって。
 もし、もし最期まで……♀クルセがそれを覚えていてくれたんだとしたら、俺は……」
「そ。あの娘に責められてるんだって思い込んだ、大変な勘違い野郎だったってことだ」
♂アルケミストの瞳から一粒の涙が零れる。それを慌てて拭うと、彼は笑顔を浮かべた。
「……ありがとな」
その言葉が自分に向けられたものか、それとも♀クルセイダーへのものなのか――♂騎士にはわからなかった。
だが確かに♂アルケミストの立ち直りへの兆しをその言葉に感じ、彼は満足そうに笑い返した。

「しかし君の笑顔が好きだ、か。意外と気障なんだな、お前……」
「な……! いい話でまとまりそうな所で、あんたそういうこと言うのかよ!」
真っ赤に染まった♂アルケミストの顔。それを見て♂騎士は愉快そうに笑う。
「あぁ、やっぱお前はそうでなくちゃな」
「……? 何言ってんだ?」

――男を守るのは趣味じゃない。男としてそれは譲れない。
でも腑抜けた顔をやめた今のお前なら百歩譲って守り守られる関係、くらいにはなってやってもいいぜ。騎士として、な。

「背中預けてくれるってお前言ったよな?」
「あ、あぁ……それがどうしたんだよ」
「情けない顔のお前は嫌だったけど。これからのお前になら俺も預けてやってもいいぜ」
「なんだよ、今まで俺に預けさせっぱなしだったってことかよ。まぁ…礼を言っとくべきなのかな、これは」
「そ、おとなしく感謝しとけばいいんだよ」
そう言うと、さらに大きく笑い出す♂騎士。
わけがわからない、と♂アルケミストは首を傾げ、溜息をついた。


<♂騎士>
現在位置:F-4→E-4
所持品:S3ナイフ、ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:プロテインの効果で痛覚を失いつつある
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗を示す

<♂アルケミスト>
現在位置:F-4→E-4
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:♀クルセイダーの死の感傷から大分立ち直る
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型


<残り31人>
6059sage :2006/01/31(火) 17:34:08 ID:s0hIZoo.
ぼけっとした男をしゃっきりさせるには、好きな女のことを話すのが効く、ということで。(彼らの場合この世にいませんが)
♂ケミが急に気弱になってますが、やはり恋人の死からそう簡単に立ち直るのは難しいかなあと。
え、恋人にはなってないって? 嫌だなあ、同じようなものでしょう……などと言ってみる。
61名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/31(火) 17:38:06 ID:s0hIZoo.
連レスすみません。……59の「そう簡単に立ち直る」って日本語おかしかったぽ(´・ω・)

>>48
見事なフォローGJです。
♀商人とWを勘違いして暴走という線が51さんの指摘で微妙になり、どうまとめるのかと気になってたところでした。
素晴らしいまとめ方に惚れ惚れしつつ、自分の修行の足りなさを実感orz

>>56
ローグ兄さんの手段の選ばなさとふぁるの賢さに燃えました。
失敗しても大して落ち込まないところがローグ兄さんらしくて格好いいです。

>>57
同じく「踏む」に噴いたw
相関図って構成が難しいんですよね。GJです!
62名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/01/31(火) 17:40:15 ID:s0hIZoo.
59じゃなくて60だ……落ち着け自分。吊ってきますorz
63名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/02(木) 01:21:03 ID:HKoHn2NA
151.泣き出しそうな灰色の空を見上げて

「ちょっとぉ……本当にこっちで合ってるんでしょうね?」
ヨタヨタと傷ついた身体を引きずりながら、前を行く子犬に♀アコは問い掛けたが、子犬はあどけない顔で振り返って頭の上に『?』を浮かべただけだった。
「うぐっ……期待なんかしてないわよ……」
がっくりとうなだれながら♀アコは呟いた。
「てかさぁ、ここ、どこよ?」
打ち上げられた海岸から、叩き落とされた崖を目指して子犬に先導を任せたのだが、西の方角――だと思う――をかれこれ一時間以上歩いているのに、未だに目的の崖に辿り着けない。
どころか、何故か密林めいた森の中である。基本的に楽観思考の彼女だが、さすがにここまでくると不安も多少は浮き上がってくる。
なにしろ禁止区域を教えてくれる地図が手元にないのだ。知らぬ間に迷い込んでBANなんてゾッとしないことも起きえない。
そもそも、自分の今いる場所が禁止区域にならないとも限らない。早急に地図を取りに行かないことには、この島で生き延びることはおろか、あの糞ったれな♂クルセイダーに一撃をくれてやることさえ出来やしない。
「だってのにさ〜……あ、ううん。あんたを責めてるわけじゃないよ。あたしもツイてないな〜ってだけ」
こちらを見上げて悲しげに鳴く子犬の頭を撫でて、♀アコは愚痴の形に固まってた口角を緩めた。
子犬を責めても仕方が無い。こうなってしまったのも、あの時、アイツの澄み切った死人の眼に怯えて隙を見せた自分のミスだ。あの崖から突き落とされて、命があっただけ儲けものと言うべきだろう。
(そう考えなきゃバチ当たるわね。神様ありがとさん)
胸中とは裏腹に雑な十字を切って祈りを捧げ、♀アコは子犬をひょいと抱き上げた。
「ま、なるようになるってね」
子犬が向かっていた方角――だと思う――に足を向け、彼女は再び歩きはじめた。
64名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/02(木) 01:21:29 ID:HKoHn2NA
  * * *

しくじった――
全身を苛む雷撃の痺れと背中を走る痛みよりも、仲間の存在に気付けなかった己の凡ミスが口惜しくて、ひび割れた眼鏡の裏でグラリスは涙を零していた。
(なんて……なんてこと……)
擦り傷だらけの身体は、関節のあちこちから油の切れた機械のように軋みをあげている。一歩進むごとに全身が焼けた鉛を流し込まれたみたいに重さを増してゆく。
増してくる身体の重さに比例して意識にも段々と靄がかかる。恋人の抱擁めいた優しい睡魔に、疲労の溜まった膝が勝手に屈しそうになった。
(寝るなっ。シャンとしなさいっ!)
強く唇を噛み、グラリスは睡夢の園に堕ちかけた意識を強引に引きずり上げた。口内にじわりとにじむ血が粘っこい唾と混ぜ合わさって喉に絡み付く。熱を帯びた肺が野良犬みたいに荒く掠れた息を吐いた。
(……野良犬か。今の私に相応しい姿ですね)
自嘲を浮かべようとしたが、頬肉がユピテルサンダーを連続で受けた後遺症か上手く動かせない。
かわりに死霊(レイス)の衣擦れみたいな音がひび割れた唇から漏れた。
(あれはWでは……なかった……)
彼女が妹と思い込んでいたのは、髪形も年格好も良く似た――けれど決定的に異なる容貌の――商人の少女だった。
(つまり私は……まったくの他人を見て動じたわけか……)
そして冷静さを欠いた結果が、この姿だ。戦利品を入れた鞄を失い、切り札とも言えたメイルオブリーディングは度重なる魔術による打撃でひしゃげ、防具どころか拘束具同然だった。留め金を切って外さなければ、ここまで逃げ延びることが出来ただろうか。
(彼らが徒党を組んでいたのは幸いだった……)
例外もあるだろうが、優勝者以外の生存者を認めないこのゲームで、徒党を組むことは暗に『我々はゲームに乗ってません』と言っているようなものだ。
そんな連中がこちらを追い掛けてくるとは考え難く、また手負いが故の反撃や罠を恐れて追撃を仕掛けてくる確率は低い。
(早く……どこかに身を隠さないと……)
それでも万が一ということもあるし、他のゲームに積極的な参加者が彼女を見つけないとも限らない。
今のグラリスは虎の檻に放り込まれた四肢のない兎も同然。安全な隠れ家を探しだして傷の回復を――
(駄目よ。そんな時間は私には残されてない……っ!)
あと6人。6人なのだ。
それだけ殺せばWを助けられるのに、無駄に時間を浪費すればそれだけWの生き残れる確率が減っていく。いつWの名を、あの糞悪趣味なピエロが読みあげるのではないかと、定時放送の度に彼女は神経を擦り減らした。もしも名前が読み上げられたなら、発狂するのは間違いない。
それでも、放送に彼女の名が挙がらないことだけがグラリスの心に僅かな希望を燈していた。

――それもさっきまでの話だ。

(本当に……この島にWはいるの……?)
沸き上がる黒い疑念。混濁しかけた意識に浮かび上がる疑問。
Wと同じ髪型の少女を見たことが、彼女の希望を揺るがせていた。
(私は、あの広間でWの姿を見ていない……見えていたら何が何でも側に行く……)
憎まれていても、血が繋がってなくても、グラリスにとって最愛の妹の一人だ。少しでも姿を見たなら、ほんの数秒でも手をつないで励ましてやるくらいはしただろう。
だが、参加者たちが一堂に集められたあの場所で、グラリスはWの姿を見つけることが出来なかったのは紛れもない事実だ。
(……いいえ。姿が見えなかったことなど、どうとでも説明がつきますわ)
怯えてうずくまっていたとか、背の低い彼女のことだから人ごみに紛れて見えなかっただけだとか。
(だから、Wが最初から参加していないなんてあるわけないでしょう!)
胸中をドス黒く染める疑念を感情的に叩き潰す一方で、それは溺者が掴む藁のごとき希望だと、グラリスの中の冷静な部分が指摘する。考えてみればいい。GMジョーカーは特赦などと抜かしていたが、そんな特例をこの国の女王が許すだろうか。皆殺しを推奨するこのゲームを生み出したあの女が。
そもそも、あの道化に参加を強制され、この島に連れてこられるまで、グラリスは一度もWの顔を見ていない。
(うるさい……っ!)
グラリスは論理的に暴走する理性のベクトルを感情でねじ伏せた。
保証は無くても道化は『10人殺せばWを見逃す』と言ったではないか。助ける手だてがご丁寧にも提示されているのに、それを疑ってWを助けられなかったら、どうするというのだ。
(それに今更、私は立ち止まれないのですから)
既に己が手を血に染めても愛しい妹を救う道を選んだのだ。もはや、立ち止まることも退くことも叶わぬ。この屍山血河をただ突き進むのみ。
満身創痍だろうと、手足が千切れようと厭わない。出会った奴は必ず殺すだけ。
(問題などない。ただ、私は、Wを救うために、あと6人殺せばいいだけのこと……)
止まりかけた両足に喝を入れ、グラリスは再び歩き始め――

がさり。

草を踏み分ける音を聞き付け、手近な茂みの中へ蜥蜴のように伏せた。
(足音――誰か来るっ!?)
スカートの裏に仕込んだ長剣の柄に触れたまま、足音の主がこちらに近づいてくるのをグラリスは待った。
最接近まで、あと5メートル。
相手の姿は茂みが邪魔でよく見えない。だが、聞こえてくる歩幅と歩調が、接近する者の正体を女――それも少女であることを告げている。
あと3メートル。
相手に警戒している素振りは感じられない。容易い相手だ。剣の間合いに入った瞬間、喉笛めがけて刃を走らせればいい。
2メートル。
さっきの失敗は相手一人に時間をかけたこともあるだろう。奇襲とは初撃必殺。敵が体勢を立て直す前に制圧しなければ、先ほどと同じ手痛い反撃を食らうことになる。
1メートル。
グラリスの、間合いだ。
勢いよく茂みから飛び出し、突然の出現に戸惑う相手めがけて剣を叩き込――もうとした瞬間、グラリスの視界はワープポータルに突き落とされたようにぐにゃりと捻じ曲がった。
「あ――――」
裂帛の気を吐こうとした唇から、間の抜けた声が漏れる。肩口に鈍器のような硬い塊がぶつかるのを感じ、それが地面だったことに気づいたのは梢の間から灰色に染まりつつある空が見えたからだった。
「ああ――――Wぅ…………」
今にも泣きそうな空。
グラリスが斬り殺そうとした少女が、彼女の顔を心配そうに覗き込んでくる。おろおろと困惑する瞳にグラリスの泥で汚れた顔が映りこんでいる。
(不甲斐ない姉さんでごめんね……)
自分を抱きかかえて呼びかける少女に詫びながら、グラリスは張り詰めた糸が切れるがままに、意識を抗い難い睡魔の手に譲り渡した。

  * * *

「ちょ、ちょっと! しっかりしなさいよ、グラリスってばっ!」
茂みから飛び出してくるなり倒れたグラリスを抱きかかえ、少女――♀アコは困惑気味に呼びかけ続けたが、グラリスが目を覚ます気配は一向にない。
突然現れたグラリスは全身に様々な傷を負い、カプラサービスの制服も所々が焼かれたように汚されていた。その筋では高額で取引されているヘアバンドも失い、彼女のトレードマークである眼鏡さえもレンズにヒビが入ってしまっている。
「っていうか、何でグラリスまで、こんなゲームに参加させられてるわけ?」
それにはいろいろな事情があるのだが、INT1の♀アコに分かるわけがない。分かっていることといえば、彼女が重傷を負っているということだろう。
「……とにかく、このままにしちゃ置けないよね……っと! うわ。グラリスってば、見た目よりスタイルいい……」
♀アコは意識のないグラリスを肩に担ぎ上げると、徐々に青色を失って灰色に崩れてゆく空を見上げてつぶやいた。
「あちゃあ……さっきまであんなに晴れてたのに。もしかして、一雨来るのかなぁ?」
だとしたら、降られる前に雨をしのげる場所を探さねばならない。ようやく乾いたのに、またずぶ濡れにされるのはご免こうむりたいところである。
「……ま、なんとかなるでしょ。考えたってしょうがないしね」
あっけらかんと言い放ち、♀アコはまっすぐ歩きはじめた。


<♀アコライト>
現在位置:E-7と6の境(本人はわかっていない)
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ
状態:体力は半分まで回復

<グラリス>
現在位置:E-7と6の境
容姿:カプラ=グラリス
所持品:TBlバスタードソード 普通の矢筒
備考:メイルオブリーディングは破棄。剣はスカート裏の鞘に収めている。
状態:左脇腹負傷 全身に感電による軽度の火傷。気絶中。
65名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/04(土) 15:11:08 ID:OQ1nO/xo
>>59
GJ、もうお前たち二人は最後までそうやって背中を預けあってなさいw

>>63-64
♀アコとグラリスが出会い、グラリスの凶行を知らない♀アコがグラリスを助けようとする
みたいな流れはすごく面白くて、今後がドキドキなんですけど
E-3で戦闘していたグラリスが息も絶え絶えな状態なのにE-6とE-7の境界付近までワープするのは
私としてはちょっと苦しいかなと思いますが、どうなのでしょうか。

全力で走っても3時間くらいかかりますよね。
6663-64sage :2006/02/04(土) 23:14:15 ID:inekD56o
>>65
ID変わってますけど>>63-64を投稿した者です。

3マス移動ならギリギリでセーフかなーと思って投下しましたが、やっぱ違和感ありありでしたか(汗
これも全てグラリスを生き長らえさせて、葛藤と疑念の苦しい道に放り込みたい愛のせいです。

なのでこいつは潔くNGにして、他の方のグラリス話に期待しつつ別のキャラの話でも書きますわ〜ノシ
67名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/04(土) 23:43:57 ID:FvZZDuTE
本で読みたいといっていた人から連絡なくなって早3ヶ月。
もう宛にも出来なさそうなので、自分から編集始めました。

本日朝7時から今までかかって、終わったの目次の箇条書きと002話まで……。
横書きのものを縦書きにしようとすると、半角で書かれているものは
全て全角に直さなくちゃいけないのと、文法上おかしい点を直したりすると
(例: ・・・ → …… という風にちゃんと三点リーダーに直す)
一人じゃとても終わりそうにない遠い道のりな気がしてきました。
やっぱり、お手伝いの人を頼んだ方がイイのかなと思いつつ、
もうちょっとがんばってみたいと思います。・゚・(ノД`)・゚・。

なお、私はBルートしか収録する予定はありません。
アナザーや、Aルートはほぼ無視です。
挿絵も無し、表紙も文字のみという簡素な物になりますが、
その辺御了承ください。
68名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/05(日) 03:28:22 ID:7Jl/1YJk
>>67

無理に縦書きにする必要ないんでない?
横書きのままでも良いんじゃないかと思うのだけど
6967の人sage :2006/02/05(日) 06:28:26 ID:FfQX.3Pg
>>68
自己満足と、小説は縦書きで本として読みたい人なので。
横書きで小説本などと言いたくなかったのです。
その辺は物書きのこだわりなので譲れません。
70名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/05(日) 19:44:08 ID:QLLgCj2E
こう言っちゃ何だけど、スレと関係ないとこで一人でやりたいなら
報告もなしでいいから勝手にやってれば?
そんでそんなもんを大勢の書き手諸氏の承諾なしに世に出されても困るので、
一人で楽しんで終わりにして欲しい。
71名無したん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/05(日) 23:37:49 ID:Ej8R2y56
とまあ>>70はちとトゲトゲしい物言いだが
例えばそうだね、ルートBオンリーで他オールスルーとか
何か>>69の拘りだけで、他のスレ住人に配慮する気無いぞーってな気配が君のレスから感じられたから、少し角の立つ言い方をしてもーたんじゃないかなと思う
そうでは無く、画面をプリンターで印刷すれば小説のように紙媒体にする事が出来るような書き方に変えているという事なら
もしくは、印刷(またはコピー)を君がして、郵送等の手間をかけてくれる気があるというのなら
もう少し説明をして欲しいと思う

善意悪意はさておき、ここはROワの世界じゃないんだし、お互い誤解は無しで行きたいさーね
72名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 03:21:18 ID:Oy88X0ws
151 地図

例えば、
少しでも禁止区域に入れば即死に至るこの島において、

「ちょっとぉ……本当にこっちで合ってるんでしょうねぇ?」

その禁止区域を教えてくれる地図を持たずに歩き回る馬鹿が居るだろうか?

ヨタヨタと傷ついた身体を引きずりながら、前を行く子犬に♀アコは問い掛けたが、子犬はあどけない顔で振り返って頭の上に『?』を浮かべただけだった。
「うぐっ……期待なんかしてないわよ……」
がっくりとうなだれながら♀アコは呟いた。
「まぁ……あたしの方向感覚に比べるとマシ……なのよね?」
自分の方向感覚の無さにはほとほと呆れる。それ故に自分よりマシな方向感覚を持つであろう子犬に先導させて歩いていた。
荷物を残してきた崖の上を目指して何時間歩いたのだろうか。
あたりは砂浜から密林めいた景色へと変わっていた。
「ねぇ…あたし、こんなにも泳いだっけ?」
ビクッ!! と痙攣するかのように子犬の動きが止まった。続いて♀アコも動きを止める。
数秒の間。
子犬は何事も無かったかのように再び歩き出した。どうやら♀アコの言葉を完全に理解できるようである。
「………。」
主人が主人であればペットもペット。♀アコが方向音痴であるのと同じように、子犬もあまり方向感覚がいいわけではなかった。
「…ま、なるようになるって事ね」
♀アコが子犬の頭を撫で、ひょいと抱き上げる。
「さすがにあんたも歩き疲れたでしょ?だいぶ歩いたからね」
放送からかなりの時間がたった。砂浜にいた時はあの崖がもし禁止区域になっていたのなら残された時間は30分しか無いと思い、焦っていたが今となってはその30分を裕に過ぎているのである。今更急いだとしても仕方が無い。
もちろん、すべての荷物を♂クルセイダーに持っていかれているのではないかという心配も無いことは無いが。
それよりも体力の方が心配であった。ずっと歩き続けているのである。今、もしこの状態で襲撃されたとしても本気の半分も実力を出せないだろう。
(少しくらい休んだって構わないわよね)
「休憩!」
♀アコは近くにあった大木の根元へ座り込んだ。それでも耳だけは周りの音に集中させて。
子犬も同様に警戒しながら♀アコの腕の中にいた。
「しばらくしたらまた歩くわよ」

一人と一匹は周りの様子に警戒しながら休息を取る。
それが何の意味にもならないと知らずに。

例えば、一人と一匹以外、この区域には誰も居ないとしても
例えば、このゲームにおいて、地図を持たずに歩き回る馬鹿が居ると予想していなかったGM側も
例えば、一人と一匹が居る場所が、すでに禁止区域であったとしても
“禁止区域を表す地図を持っていない”♀アコライトは何も知らないのである。


<♀アコライト>
現在位置:D-7(本人はわかっていない)
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ
状態:体力回復中
7372sage :2006/02/06(月) 03:35:17 ID:Oy88X0ws
>>63-64の♀アコと子犬とのやり取りが良い感じだったにも関わらずNGとの事で思わず拝借(*ノノ)
気分害されていたらすみませぬ…orz

とりあえず“なぜ禁止区域に入ったという事が解るのか”
という解決に結びつければいいな〜と願いつつドキドキの初投稿
74名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 07:12:38 ID:jUrdqUjI
152.鷹の眼[2日目:昼〜夕方]

危機一髪で♂ローグの手から逃れたふぁるは空を東へ飛ぶ

(危ねえ危ねえ)

危うく鳥肉になるところを乗り切れたのは彼が♂ローグの嘘を見抜いたからだった
♂ローグが言葉に出す寸前の、男か女か、一瞬の思考。本当に殺したならそんなことはわざわざ考える必要が無いはず
その一瞬の違和感を野生の獣としてのカンが見逃さなかったというわけだ
そのうえで♂ローグの目的を……つまり『出会うかも知れないハンターの戦力を少しでも殺ぐ』ことまでをも瞬間で推理したのだ
……♂ローグの眼はそれだけではなかった気もしたが深くは考えないことにしておく

(見事なまでの洞察力。オレサマだってダテに対人恐怖症で手間ばっかりかけやがるアイツのお守りやってるわけじゃないんだよ)

可能性としては『両方とも♂ローグが殺した』ということも考えられたが……その可能性は考えないことにした

(けど万が一本当に殺されてたなら、今すぐでも舞い戻ってぶっ殺してやる)

殺意を胸に秘めながら砂漠(というか砂浜から続くだだっ広い砂丘)の上をぐるりと旋回し、探し人らしき影がないかを探す
暫く飛んだところで幾人かの人影らしきものを確認したが、どれも♀ハンターではなかったので森のほうへと向かう

(そうなると森の中に居るのか…やっかいだぜ)

この島は森が多いせいで、その中に居る人間まで探すのは、そのものズバリ鷹の眼を持ってしても難しかった
しかも見慣れぬ侵入者に対して警戒しているのか声をかけた鳥たちはみんな脱兎の勢いで逃げていってしまう
……まあ息を荒くした大型の肉食鳥類が声をかけてきたら大抵の鳥は食われると思って逃げてしまうのも当然なわけだが

(クッソこれだから田舎の閉鎖的なヤツらはよぉ!)

そんなことなど露知らずやり場の無い怒りを心の中でわめき散らす
ともかく一人でもやるしかない。あの手間のかかる相棒……もとい子分のためにと気合を入れてじっと地面に眼を凝らす
先ほどのような襲撃者を警戒しながら高度をギリギリまで下げて森の上を旋回、だが死体と他人ばかりで探し人は見つからない
死体の中に♀ハンターの姿がないのはせめてもの救いではあったが……それでも油断は出来ない
延々と森の上を探し続け、やがて時刻は夕刻。目の前に見えるのは夕日に赤く染まった岩山の群れ
そこを探そうと目の前に聳え立った大岩の上を高度を上げて通り過ぎようとしたその時

(…なんだ、ありゃ?)

大岩の上。本来なら岩肌が見えるべき場所にぽっかりと大きな穴が開いている
その中に、昔に偶然通りかかった時に見たギルド砦を縮小したような施設があったのだ
そして同じ服の人間が数人でその施設の周囲を監視しているようだった

(このゲームの管理者側の拠点か?)

見張りの兵士らしき人間達は付き合い程度に双眼鏡を時々覗き、非常にヒマそうに大あくびをしていた
それもそうだ、こんなところまでわざわざやってくる参加者など居ようはずもないのだから
一人や二人ならやってくる可能性はゼロではないが限りなく低い。ゼロに近い可能性は考えないのが人間のサガというものなのだ
その堕落しきった姿を横目にしながら彼はそこを通り過ぎて言った

(今はアイツを見つけることが先決だ)

GM側がどんな場所に居ようと今の彼にはそんなことは関係ない
時間をかければ♀ハンターの死亡率はその分高くなる。さっきのように誰かに関わっているヒマはないのだ
その施設のことは頭の片隅に追いやり、彼は相棒を求めて飛ぶ



<ふぁる>
<位置:E-5→???>
<所持品:+2バイタルシュールドボウ[3]、リボンのヘアバンド>
<スキル:ブリッツビート スチールクロウ>
<備考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない。ツンデレ?GM側の拠点を発見するも重要視せず無視>
[E−5:上空から見ないと判らない様大岩にカムフラージュされた施設有り、数人のGMの部下が居ると思われる]
75名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 07:20:35 ID:jUrdqUjI
解決のための布石を一つ投下してみるテスツ
一番妖しかった灯台が白(とまではいかない?)だったのでこんな場所にGM拠点を
まあ拠点が複数あるっぽいのでそのうちの一つ、ということで

>>73
よくよく考えたら地図が位置確認ってかなり大きな欠点ですよね…
まあ地図を置き去りにした地点が禁止区域になれば爆発なのでわかっててもそんなことする参加者はいないと思いますが
あとPT組んだ時に地図置き去りになったキャラがドカンすれば疑心暗鬼の種にもなると
76名無しさん(*´Д`)ハァハァdame :2006/02/06(月) 11:46:08 ID:W.4rhAt6
萌え要素がわかりません
77名無しさん(*´Д`)ハァハァage :2006/02/06(月) 14:57:24 ID:mbfcrrSc
だからってdameなくてもいいじゃまいか。どこに行ったのかと思ってびびったぞ。
まあ第一回の時からこのスレにいて、第二回は参加してみたりしてる一人だが
萌え板の一般的な空気に沿う内容ではないとは思うw(個人的には所々に萌えはあると思うけど)
でもここって荒れにくいしまたーりしてて好きなんだよなあ。
78名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 16:23:15 ID:3pn6Qnvc
♂ケミと♀クルセの献身契約とかロリアサと♀ノビの関係とか
ミストレスと♀アチャの融合とか♀アコと小デザの方向音痴とか
驚くほどの萌えに溢れているじゃまいか。

今流行の「彼女がツンデレ」設定のさらに一歩も二歩も先を行く「ペットがツンデレ」設定まであるんだぞ。

>>73
ということは首輪の爆破領域進入による電子音はGM側が地図情報を見て任意に鳴らしてるってこと?
首輪が危険領域進入で自動的に鳴るかどうかは結構ポイントなのではっきりさせておきたいです
79名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 18:55:33 ID:BJW5dWLY
>>73
例えば「地図を奪われた場合」とか、万が一「地図が風で飛ばされた場合」とか、
そんな時に位置関係がワケわかんない事になっちゃうけど・・・
GM側はそこまで考えなかったのかしら。別にいいやと思ったのかしら。
・・・でもやっぱりGM的思考をすると、わざわざ位置確認と爆破を分ける必要はないんじゃないかなぁ。
展開的には凄く面白いといふのにっ。
80名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/06(月) 23:51:13 ID:dzH4LGxY
>>79
技術的に分けざるをえなかった、ということでどうでしょう?
位置確認と爆破の両方を首輪に盛り込めなかったと大臣の話でありましたし。
8163-64sage :2006/02/06(月) 23:56:31 ID:u41fI5bU
>>73
使ってくれてありがとさん。掛け合いが良い感じと言われて嬉しいよ。

>>地図と首輪
警告音だけど「098 鍵の行方は」を読んだ限りでは、地図は管理本部の大地図盤と通信しているとあるし、その大地図が首輪管理用のジェムとリンクしているということなら問題ないのでは?
手元の地図が位置情報を大地図に送信して、それを首輪管理システムに転送して処理、ジェムを介して首輪に警告信号を送るって感じじゃないかな?
あと不慮の事故で地図を失った場合のGM側の対応だけど、このゲーム自体が女王の戴冠に合わせて作られた突貫工事的な代物だったし、完璧なシミュレートが出来てない状態じゃないかと思う。GM側にしてみれば、4日目までに参加者が1人にならなきゃ全員BANすればいいと思っているかも。
それに首輪と島のシステムを作った公務大臣もウッカリ属性というか、設計図と睨めっこばっかりの頭でっかちぽかったし、何よりも誰かがこのバグに気づくことがこの先の面白展開に繋がるのでは!?と思う自分がいるんだけどさ。
8273sage :2006/02/07(火) 00:41:20 ID:nKP0G44s
地図に関して混乱を招いてしまってスミマセン…

98話の大臣の話でもあったとおり『位置確認は配られた地図の方にある』設定を思い出したのと
>>29の143話の首輪に必要な条件を読んでいて
・無理に外すと爆発すること
・死んだ時には爆発しないこと
・遠隔地から任意に爆発させることができること
の3つは解決されたとしても禁止区域に入った場合に爆発する原理が無かったので書いてみました。
地図と首輪はリンク 地図=GPS 首輪=爆発するだけ
というイメージだったのでGM側が監視している位置情報はあくまで地図があるところであって
地図が禁止区域に入った場合は地図から直接首輪へ反応→自動的に首輪爆発ということを書こうとしてました。
説明不足で申し訳ございません(´・ω・`)

「地図を奪われた場合」や「地図が風で飛ばされた場合」などは書き手さん次第で面白いことになるんじゃないかなー…?
と何も考えていなかった人が言いワケしておきますorz
83名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/08(水) 00:45:20 ID:BLIziRRg
喪前様方、何も言わずに絵板保管庫の偉い人&某所の所に行ってくるべし。
いい物が見れまっせ。
84名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/09(木) 12:50:07 ID:Xhww9D/A
韓国公式サイトダウンロードページの「クラウン男」が
GMジョーカーに見えて仕方がない…
85名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/09(木) 15:58:19 ID:1w8FNYWQ
153.不幸なめぐり合わせ [午前中]

やってくる。アイツがやってくる。
ホルグレンさんを捕食したアイツが、今度はその口を僕に向けて、やってくる。

いやだ、死ぬのはいやだ。いやだ、痛いのはいやだ。いやだ、生きられないのはいやだ。
こんな死に方は───いやだ。

けれど、そんな♂アコライトの身をすくみあがらせ、絶叫させるほどの恐怖を与えた蟲は、♂アコライトの心の状態などに興味はなかった。
興味があるのは、かの者があまたの蟲を統べる女王ミストレスの器かどうか、それから美味しいのかどうか。それだけである。
では、♂アコライトは器なのか?

否定。

目の前の人間からは器の気配は感じられない。
とすると、蟲の取る行動はひとつしかなかった。空腹を満たすための食事である。

蟲にとってみれば、これまでの食事はとうてい満足のいくものではなかった。
生まれたときに食べた肉は、こってりと脂ばかりのった、味気のないぶよぶよの肉であったし、
先ほどやっとのことでありつけた二度目の肉は、かたく筋張っていて、しかもぱさぱさしていた。
そこへきてようやく、若くてみずみずしい肉に出会えたのである。

ためらう理由など、一片もない。

蟲は、その毒々しく青い体を♂アコライトへ向けると、驚くべき速さで♂アコライト目掛けて飛びかかった。
未成熟なためか人間の大人ほどの大きさではないにせよ、子供よりは大きい青い塊が跳ねたのだ。
ホルグレンが殺されたところを目撃してしまい恐慌状態にある♂アコライトが、あまりの恐怖に気を失うのも無理からぬことであった。

蟲は意図せず腰から崩れ倒れた♂アコライトの上に覆いかぶさるように落下する。
自らの力で倒す手間が省けたのである。これほど楽な狩りはない。
口をあけ、ふぞろいにならぶグロテスクな牙をむき出しにして、
人間の肉の中でも特に好みの部位である喉の肉にかぶりつこうとする。

ところが蟲は、♂アコライトの上に落ちることはできなかった。
ドンッ、と低い音を響かせて蟲は♂アコライトから離れること3メートルほどの位置に弾き飛ばされたのである。

からだの色と同じ、気味の悪いほどに青い体液を撒き散らしながら、蟲は大地をのたうつ。
そこへ先ほどと同じ低い音。さらにもう一度。
音とともに蟲はからだをえぐられ、青い雨を降らせた。

音が10回は続いただろうか、蟲はひくひくとからだをふるわせたまま、ついには声すらも出さなくなった。

「ひとりしか、救えなかったか」

男は岩場のかげからするりとあらわれ、気を失っている♂アコライトに近づき、息を確認する。
サングラスが向いた先には、恐怖に顔をゆがめたホルグレンが、蟲に食いかけられたままのあわれな姿で横たわっていた。

「またオレの目の前で、知っている人が死んだ」

男は喉の奥から絞り出すように、声を出す。組織に身を置いている男にとって死は日常であった。
けれど、ホルグレンは、首都に暮らす善良な民である。
本来ならば死とは無縁の生活を送っているはずの彼の死は、男に、このゲームの悲惨さをあらためて教えたのだ。

「大丈夫だ。絶対にお前を守ってやるからな」

気絶したままの♂アコライトをそのままに、男はすっくと立ち上がる。
独特の呼吸法で深呼吸すると、モンクのみが可能といわれる体外への気の放出を行う。
淡いかがやきを放つ気の塊を自身の周囲に浮遊させ、男はサングラス越しの視線を北の方角に向けた。

「蟲の次は女王様か。魔物が相手なら、遠慮なく殺(や)らせてもらうぞ」

はき捨てるように言って、男は指弾の体勢に入る。
男の視線が捉えるのは、こちらに向かい憤怒の表情を浮かべ、
サベージべべのごとく突進してくる翡翠色の長髪を持った仮面の女であった。

その者が魔物であることを男は知っている。
その者が油断ならぬ相手であることも男は知っている。
けれど男は知らなかった───その者が♂アコライトの従者であることを。

ジルタスもまた、知らなかった───その者が♂アコライトの命の恩人であることを。

こうして不幸なめぐり合わせによる戦いは始まったのである。


<蟲>
<現在地:G-6>
<備考:「器」を見つけたらミストレスに知らせる>
<状態:死亡 or 瀕死>

<♂アコライト>
<現在地:G-6>
<外見:公式通り>
<所持品:なし>
<備考:支援型>
<状態:気絶中>

<グラサンモンク>
<現在地:G-6>
<所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス>
<外見的特徴:csm:4r0l6010i2>
<備考:特別枠>
右心臓
ヒール、気功、白刃取り、指弾、金剛、阿修羅使用可能
助けを求める人達を守りたい
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
    作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)
<状態:ジルタスを敵と認識>

<ジルタス>
<現在地:G-6>
<所持品:種別不明鞭、ジルタス仮面>
<備考:首輪を付けられている>
<状態:やや麻痺の後遺症が残るが動ける。♂アコライトを助けにいく。 グラサンモンクが♂アコライトを襲ったと誤解>
86名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/09(木) 16:32:36 ID:1w8FNYWQ
>>73
首輪と地図のことばかりで言うのを忘れてた。GJ。
そして新たな書き手さんの誕生バンザイ。
この地図による位置情報取得を逆手にとって管理者側をあざむいてあんなことや、こんなことを!

>>74
管理者側の拠点キタ─(゚∀゚)─!!
やっぱり悪は中央でふんぞりかえっていてなんぼですね。
グラスワイン片手に、死にゆく参加者をながめて悦に入っちゃってるんですね!
ただ、一気に夕方になっちゃったので、ふぁるストーリーはここでしばらくストップですかね。
ふぁると♀ハンターとの合流、楽しみなんだけどなぁ。

>>84
ttp://img.ragnarok.co.kr/File/Wpap/Wpap_200628_1.jpg
これかっ!? たしかに・・・というか、もうGMジョーカーにしか見えなくなった俺ガイル。
87名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/09(木) 16:47:10 ID:1w8FNYWQ
あ、まとめサイト編集していて気がついたんですが、148話が存在しません・・・
というわけで以降のナンバリングが全部ずれています。

次の書き手さんは152話でお願いします。
88名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/09(木) 17:29:34 ID:Tm1XyWwM
>>83
見て来た!
絵師さんこっちには投下してくれないのかな…アラームスレにはあったのにっ

>>84
顔のメイクもイメージぴったりでいいな〜
俺もジョーカーにしか見えなくなった

>>85
グッジョブ!
アコが助かって一安心ながらも、どっちが勝ってもその後の展開が
熱いドラマになりそうな予感…
8988sage :2006/02/09(木) 17:33:33 ID:Tm1XyWwM
…っと思ったら向こうに貼ったのはおまいさんだったのか83w
90名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/12(日) 22:25:57 ID:uPlptZTg
152.誤解が生んだ赤い結末

ご主人様、無事でいて!!

そう願いながら駆けつけたわたしの視界に映ったのは、一人の男と地に伏せたご主人様。
あの男がご主人様を……!

ジルタスはその勢いのまま止まらずに鞭を振るう。
射程ギリギリで放たれたそれは、寸前まで男の居た地面に乾いた音と共に叩きつけられる。

グラサンモンクは予見していたように飛び退くと、即座に指弾を放つ。
男の周囲に浮かんでいた光の球の一つが一直線に飛んでくる。
ジルタスも走りながら返す鞭で軌道を逸らし華麗に受け流した。

そのまま再度鞭を振りかざす。今度は十分に男を捕らえられる距離だ。

――パシィッ!

手ごたえはあった。だが首を狙ったそれは惜しくも男の左腕に巻きついたのみに終わった。
それでも十分なダメージだ。巻きついた鞭は左腕にがっちりと食い込み、肘の先から地面に血が滴っている。
だが、男は表情一つ変えず何事もなかったかのようにこちらに向かってくる。
といってもその目はサングラスに覆われて全く見えないが。

ジルタスの鞭捌きと制限を受けている指弾とを比較し、瞬時に中距離を不利と感じたグラサンモンクは、
左腕を犠牲にしながらもジルタスの懐に入ることを優先したのだった。
そして、空いた右手から容赦ない一撃を繰り出す。
咄嗟に鞭を手放し回避を試みたジルタスだったが、反応が一瞬遅れて避けきれずにその拳を受けてしまった。

それは深く深くジルタスの腹部に突き刺さり、背中まで達していた。
ジルタスはグラサンモンクを力強く睨み付けていたが、力なくその場に倒れた。
彼女を包むワンピースとその下の地面があっという間に赤黒く染まっていく。
ジルタスはまだ意識を失ってはおらず、♂アコライトの方を向いて小さく呟いた。

「ご主人様……ごめんなさい、守れなかった……」
今まで怒りの色一色であったジルタスの表情が一気に崩れる。そして嗚咽と同時に血を吐いた。

「ご主人様?」

命乞いをされても止めを刺すつもりのグラサンモンクであったが、
監獄の女王ともあろう者が「ご主人様」と呟いたことに疑問を感じその手が止まる。
視線は♂アコライトに向けたまま、血を吐きながらジルタスが続ける。

「そうよ、そこの、♂アコライトが、わたしの、ご主人様よ。よく、も、たい、せつ、な、ごしゅじ……」

「待て!俺は何もしていない!♂アコは襲われて気を失っているだけだ!!」

思わずグラサンモンクが言葉を遮る。
そしてヒールを二度三度とかけるが、貫通した穴が塞がるわけもなく血は流れ続ける。
だが無駄なのはわかっていてもヒールせずにはいられなかった。
ジルタスは驚いて目を見開いたが、やがて自分の勘違いに気づいてすぐに満面の笑みになる。

「…………」

ジルタスは唇だけで何事か呟くと静かに目を閉じた。


『ご主人様を救ってくれてありがとう。早とちりしてごめんなさいね……』


なんてことだ、完全に誤解だった。
突然襲ってきたから思わず手にかけてしまったが、このジルタスは倒すべき敵ではなく、たった今救った♂アコライトの、♂アコライトの……。
そこであることに気づき、彼の思考が止まった。

この状況がそれまで落ち着いていた彼の心を完全に掻き乱した。
自ら手にかけたジルタスが守りきれなかったあの子と重なる。
俺に胸を貫かれ♂アコライトを慕いながら死んでいったジルタスと、胸を貫かれ血溜まりの中俺だけを信じて死んでいった少女。
そして倒れている♂アコライトとアコライトだった頃の非力な自分。
微妙な違いがあるが、彼にとってはあまりにも状況が酷似していた。

――助けてくれるって信じていたのに、どうして?

目の前のジルタスがあの少女の声で呟いた。声は小さいのに、頭の中に鮮明に響き渡る。
勿論、これはグラサンモンクの幻聴であるが。

――どうして私を殺したの?

「うああああああああああああああああああああああああああ!!!」

グラサンモンクは左腕の手当ても忘れて、闇雲に走り出した。


<ジルタス>
<現在地:G-6>
<所持品:ジルタス仮面>
<備考:首輪を付けられている>
<状態:グラサンモンクが♂アコライトを襲ったと誤解→誤解が解ける 死亡>

<グラサンモンク>
<現在地:G-6→?>
<所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭(左腕に食い込んだまま)>
<外見的特徴:csm:4r0l6010i2>
<備考:特別枠>
右心臓
ヒール、気功、白刃取り、指弾、金剛、阿修羅使用可能
助けを求める人達を守りたい
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
    作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)
<状態:左前腕負傷 恐慌 G-6からどこかへ>

<♂アコライト>
<現在地:G-6>
<外見:公式通り>
<所持品:なし>
<備考:支援型>
<状態:気絶中>
91名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 02:50:46 ID:y4qbn82M
そういえばふと思ったんだけどミストレスは仮の肉体消滅で♀アチャの身体を乗っ取ったわけで
ゲーム主催者側から見ると♀アチャじゃなくてミストレスが死亡なのかな?
92名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 05:48:14 ID:H3heBE9I
>>90
女王様死亡かー。
コレでお色気担当?は♀ケミだけになっちゃいましたな
とりあえず立派な乳の冥福をお祈りします(乳だけかいっ!

>>91
生死判定のシステム的にはそうなるだろうがGM側は会話もモニターしてるわけで。
つまるところGMも♀アチャ死亡、ミストレス生存と判断してると思われる
そもそも器の♀アチャも参加させてる時点で現在の状態になる可能性も予想できたはずだしなー
93名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 05:52:07 ID:ZPwYE.I2
GM側はミストレスが参加してるのは承知なんだから
ミストレス死亡でいいんじゃないかな
ただ、この場合でもGM側はミストレスが器を手に入れたのか仮の肉体で死亡したのか
判断は出来ないと思う
94名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 05:54:38 ID:ZPwYE.I2
ごめんっかぶった・・・
会話が盗聴されてたんだよね
95名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 09:31:04 ID:iVi1n/zk
ミストレスとの交渉とか器の件とかは全部ジョーカーが勝手に話を進めてた
と仮定したら、会話聞いてもさっぱり意味がわからないんじゃないだろうか。
もちろん部下は使ってるだろうけど、その部下たちが全体像を把握してるとは
限らないわけだし。
ジョーカーが何かフォロー入れるならともかく、何も言わないなら
変だなと思いつつも「ミストレス死亡」で通ってしまうんじゃないか。
迷ってジョーカーに判断を仰ごうものなら、むしろミストレス死亡で通せと
言われそうな気がする。

(以下本音)
そのほうが混乱して楽しそう
96名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 11:56:28 ID:4HUpleDs
>>90
ジルタスさんに合掌。
ただ個人的には雨の日のモンクなだけにグラサンモンクの恐慌におちいるシーンに雨を降らせて欲しかった。
それだけに惜しい。

153.器と女王蜂

「ミストレスはどこにいったんだ!? 消えちまったぞ」
自慢の筋肉を躍動させながら男が廊下を歩いている。声に品性は感じられない。

「なるほど、彼女が器だったというわけですか」
となりを歩く男の声はひどく冷たい。月の光を思わせる銀色の髪が同色の眼鏡の縁とあいまって、まとう空気すら銀を帯びているようだった。

GM森とGM橘である。

「器ってなんだよ?」
自分だけがわかっているような口ぶりで話すGM橘に、気にいらない感情でもあるのだろう。
GM森はその感情を隠そうともせずに、いや、むしろより一層の不快感をこめて、眼鏡の奥の瞳を睨む。

GM橘は、そんなGM森の視線をすまし顔のまま受け流すと、それでも彼なりに気をつかったのか、

「♀アーチャーはミストレスの器だったということです。女王蜂自身は永遠の魂を持っていますが、肉体は滅び行くもの。
 ミストレスが人の体を使って転生することくらい、知っていると思っていたのですけれどね」
口もとにうっすらと笑みを浮かべ、GM橘は目的であった部屋の扉を押し開く。
軽い音を立てて開いた扉の先には、どこまでも白い衣服を身にまとい、遠めにも目立つピエロの帽子をかぶったひとりの男が足を組んだ状態で椅子に腰掛けていた。

男はふたりの入室に気付いたのか、立ち上がり、うやうやしくも一礼する。
立場的にはふたりの上司である彼は、本来ならばそのような行為をする必要などまったくない。
それでも慇懃に振る舞うところが、つかみどころのないGMジョーカーの性格をあらわしていた。

「はてさて、いったいどのような用件ですかねぇ。次の放送まではまだ時間があると思っておりましたが、それとも労働環境の改善要求運動でも始めましたか?
 そういうのは私の管轄ではないのですけれど、一応私はあなた方に指示を送ることのできる立場ですので、ある程度の不満、要望は聞き入れま───」
「ミストレスのあつかいについて確認しておきたいのです」
GMジョーカーが得意とするおしゃべりを、厳しい口調でGM橘が制する。
放っておけばGMジョーカーが自分のペースで話を展開してしまうことをGM橘は知っていた。
話術もまたGMジョーカーの武器のひとつなのである。
立場的にはGMジョーカーの直近の部下であるGM橘だが、もうひとつの顔では対立関係であるといえる。
少しでも自分の思惑通りにことを進めるためには、GMジョーカーのペースにのせられるわけにはいかない。

「あれは♀アーチャーへの転生を果たしました。では我々はあれを♀アーチャーと呼称すればよろしいのでしょうか?
 それとも───ミストレスのままでよろしいのでしょうか?」
GM橘の鋭い目線がGMジョーカーにぶつけられる。
GM橘の声を受け止めて、GMジョーカーは思案するような素振りを見せはじめる。

道化め、なにを考えているのかは知りませんが、騙されはしませんよ。
ミストレスが実験であることくらいは、わかっているのです。
ルーンミッドガッツ王国は、軍事力として頼りにならない冒険者の変わりに、魔物を従えようとしている。
魔物の力を従えることができれば、それは一国の軍事力にも匹敵しますからね。

GM橘はGMジョーカーを前にした胸中で、そんなことを思っていた。

「あれはミストレスとして扱ってください。死んだのは♀アーチャー。参加者のみなさまにはミストレスのことなどなにも知らずに、殺し合いを続けていただきたいのですよ」

やはり、とGM橘は思う。

「わかりました。それでは以降、あの♀アーチャーはミストレスとして扱わせていただきます。
 用件はそれだけです。それでは失礼させていただきます」
心の色を出さず、すましたままGM橘は一礼し、退席しようとする。
ふたりの会話に入りこめずにただ立っているだけだったGM森もGM橘に続こうと、GMジョーカーに背を向けた。

「あぁ、そうそう。聞きたいことがあったのをすっかり忘れていました」

背中を向けているふたりに対し、GMジョーカーが声をかける。最初からこのタイミングで話しかけることを決めていたような絶妙なタイミングに、ふたりは仕方なしに振り返る。

「今回の大会では、誰が優勝すると思っているか、ぜひに聞いておきたかったのですよ」
いやらしく笑いながら、GMジョーカーはさぐるような目でふたりの男の顔を見ている。
戦慄がGM橘の背中を通り過ぎる。

まさか、私の正体に気がついているのか。

知らぬ間にごくりと唾を飲み込んだGM橘。それを見てGMジョーカーは目を三日月にゆがめ、笑う。

「おっと、これは失礼しました。GMたるもの、いかなるときでも公平でなければなりませんでしたね。
 引き止めて申し訳ありませんでした。どうぞ、退室してくださって結構ですよ」

なんのことだかわからない、といった様子で再び背を向けてずかずかと退席するGM森にならってGM橘も部屋をあとにした。
手にはべっとりと汗がにじみ、いつのまにかのどがからからに乾いていた。
計り知れぬGMジョーカーの才略を見せられて、GM橘は屈辱に唇を噛み締めながら、自室への廊下を歩いていった。
97名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 11:58:20 ID:4HUpleDs
♀アーチャー(ミストレス)をどう呼称するかの話を書いてみた。
GM橘とGMジョーカーの関係が、書いてて楽しすぎて困る。
98名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 14:57:45 ID:lVy9jSPI
初書き込みです。採用かNGかはみなさんで決めてください。よろしくお願いします。

154 誤算

♂WIZは慎重に後をつけていた。距離を十分に取り、姿を見られぬように木々を盾にする。
♂WIZが追いかけているのは、♂アサシンと♀ノービスである。慎重にならざるをえないだろう。

時折、♂アサシンと♀ノービスが話し合う。距離を空けているので、声は当然聞こえない。
口元もかすかに動いているのが分る程度である。だが、その度に立ち止まるので、
遅々として進まない。かれこれ一時間は彼らを追跡しているが、今だ森の中である。

「また、おしゃべりですか・・・。見た目よりも随分仲がいいのですね。」

♂WIZはつい一人ごちてしまう。だが、それも仕方ない。この殺しあうための島で、
一時間に6回も立ち止まって、しゃべっているのである。♂アサシンの戦闘力を見た後では、
この事は意外と言うほかない。

「しかし、このペースでは、あの二人が他の者たちと出会うのは、相当先になりそうですね・・・。」

1分ほど立ってから、二人が動き出す。♂WIZも少しため息をついて、後を追う。

今度は10分ほど移動しただろうか、またもや二人は話し始めたようだ。
♂WIZは多少いらつきながら、辺りを見渡す。右手側に少し開けた場所があるようだ。
薄暗い木々の合間から、草原が反射させる光が、垣間見える。
もう一度♂WIZは二人を見た。まだ話し合っているようだ。♂アサシンは木の陰で見えないが、
♀ノービスはいるであろう♂アサシンの方を向いて話しかけている。
99名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 14:59:00 ID:lVy9jSPI
「やれやれ・・・、本当に話し好きですねぇ・・・。」

自然にため息が出る。♀ノービスを見ているとふと彼女を思い出す。なんとなく似ている横顔。
出てくるため息は、失われた彼女と♀ノービスを重ねてしまっているためか。この島に来てから、
妙に感傷的になることがある。やれやれと思いながらまた、ため息をつく。

ふと見ると、♀ノービスはジェスチャーを交える様になった。口の動きも活発だ。
白熱した議論でもしているのだろうか。♂アサシンはいまだ木の陰にいるようだ。

「・・・・・・・おかしいですね・・・・。今まで2分を超える会話は無かったはず・・・・。
 それに♀ノービスのジェスチャーなどは今回が初めて・・・。」
ふと、湧き上がる疑問。何度も繰り返されていた会話。木陰で確認できない♂アサシンの姿。
言い争っているように見える♀ノービスの動き。そして、2分・・・・。

「もしかして、見抜かれていた?今までの立ち止まる会話は偽装?」
だとしたら、まずい。いくら距離があるとはいえ、見失わない程度には近づいている。
アサシンの技術なら、見えないように2分でここまで来ることは、不可能ではないだろう。

「くっ、アサシン相手に、森の中は危険ですね・・・。」
言うよりも早く、♂WIZは右側に見つけていた広場へと飛び出した。どうやら、ここで森は終わっていたようだ。
突如木々がなくなった先は、結構な広さを持った草原で、その先には山や家屋、小川などが見える。
♂WIZはすばやく木々から距離をとると、森の方に向きを変えた。だが、その前に一つだけ魔法を掛けておいた。
♂クルセイダーと♂アサシンの戦闘を見ていたからこその魔法の配置。魔法力が弱められており、
本来ジェムストーンが必要であるため、低い威力ででしか配置できないが・・・。
100名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 14:59:45 ID:lVy9jSPI
「あとは、私自身の勘に全てがかかってますね・・・。」
♂WIZはそう言ってコンバットナイフを右手に構えた。♂アサシンが♂WIZを追跡しているという疑念は、
たった今確信へと変わった。ナイフを構えた瞬間に、辺りの空気が変わったのだ。♂WIZは精神を集中させた。

(距離を保ったまま話しかけない私を、友好的な人間とは思っていないでしょう。
おそらく、一度捕縛して、真意を確かめるつもりだったのかもしれませんが、この私の反応で
考えを改めたようですね。危険を冒してまで捕縛するよりも、排除する方を選びましたか。)

しかし、♂WIZにとって完全に誤算であった。追跡していた二人に接触する人物がまさか自分とは!
正直に言って、勝算はかなり薄い。自分の読み通りに相手が動き、自分の勘が当たらなければ、
勝てないというのは、まるで勝負になってない。だが、もう始まってしまったのだ。
♂WIZは意識をある一方向に向ける。♂アサシンがそこから向かってくるという読みが、
当たるのが勝利条件の一つである以上、その他の方向を警戒しても、結果は同じである。
そして、♂アサシンの接近を勘で判断する。隠密行動を主とする彼らの接近を把握するのは、
現時点では不可能である。よって、紙のごときの頼りない勘でしか、もはや♂WIZには判断材料が
ないのである。♂WIZの過去を共にしている彼女が聞いたらどのような顔をするだろうか・・・。
101名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 15:00:39 ID:lVy9jSPI
(近づいてくる・・・。)
肌を切り裂くような冷たい殺気が、♂WIZを襲う。だが、これだけが頼りだ。彼の勘のよりどころである。
強い殺気がはじけた瞬間が、必殺の一撃を見舞ってくるときだろう。♂WIZはその瞬間に2つの魔法を
唱えなければならない。一つは鍵となる魔法、もう一つはここで勝利を得るための魔法・・・。

(だんだん強くなってきた・・・。)
いつの間にか汗があごをつたって地面に落ちる。森から飛び出して20秒も経っていないのに、
もう一時間は経過している気がする。そした・・・・。

(来た!!)
強くなった殺気が一気に上り詰めた。方向は♂WIZが想定した方角と一致する。コンバットナイフを持った
右手と体の中心の対角線上、つまり左後ろからである。
「サイト!!」
♂WIZは叫んだ。彼の左後ろから、首を狙ってとび蹴りを放っている♂アサシンの姿が、
映し出された。♂クルセイダーをも吹き飛ばしたあのとび蹴りである。♂WIZが喰らえば、
ただではすまない。だが、♂WIZは続けて叫んだ。
「・・フラッシャー!!」
作り出されたばかりの火の玉は、一瞬でロープのように伸び♂WIZの周りを囲うように端と端が繋がる。
そして、繋がったとたんに、爆炎があたりに撒き散らされた。結界の力で威力が落ちているとはいえ、
飛び掛った♂アサシンを追い返す力は残っている。現に♂アサシンは♂WIZの2メートルほど手前に、
弾かれる。すばやく受身を取ろうとした♂アサシンだったが、♂WIZが仕掛けていた魔法が発動した。
地面につけた右足を、突如火柱が襲ったのである。
「ぐあぁ・・。」
たまらず苦痛をもらし、そのまま後ろに倒れこむ。だが、ここまで来ても勝率は半々である。
おそらく♂アサシンは腕の力だけでも♂WIZを殺せるだろう。だが、治癒もまともに出来ないこの島で、
これ以上のダメージは避けるべきでもある。だから、♂WIZは判断を迫られている。
♂アサシンが隙を見せている間に、行動を選択しなければならない。
1つが襲い掛かってくることを想定して、自身の前にファイヤーウォールを張る。
1つが逃走すると想定して、退路である森への道筋にファイヤーウォールを張る。
1つがまだ対応できないと想定して、フロストダイバーでさらに動きを制限する。
(どれだ、どれにする・・・。)
102名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 15:01:23 ID:lVy9jSPI
迷ったのは一瞬。だが、出てきた答えは、三つのうちではなかった。
「クァグマイア!!」
魔法で作り出された泥沼が♂アサシンを包み込む。彼の動きは先ほどから見れば、ファブルのようだ。
♂WIZはクァグマイアを唱えた直後から♂アサシンに向かって、飛び出した。コンバットナイフを逆手に持ち、
思うように動けない♂アサシンの首筋を深々と切り裂いた。血が少し遅れてから、思い出したように吹き出て、
草原の一部を真っ赤に染める。♂WIZはすばやく♂アサシンから離れると、周囲を警戒した。
♀ノービスがどこかに潜んでいないとも限らない。が、その心配はないようだ。目の前の出来事が、
うそだとでも言うように、呆然として木の陰から顔を出していた。♂アサシンが薄れる意識の中で、
♀ノービスに向かって手を伸ばす。それを見て、♀ノービスが我に返り、♂WIZに視点を合わせてから、
脱兎のごとく森の中に消えていった。♂WIZはそれを確認してから、♂アサシンを見る。伸ばしていた腕は、
もはや力なく地についている。1%も無かった♂WIZの勝算。仕方なかったとはいえ、勝てたとはいえ、
背筋がいまでも凍る。♂WIZは頭を左右に振った。勝てない相手に勝てた、今はそれでいい。
逃げた♀ノービスの行方を追わなくてはならない。ゆっくりもしていられない。だが、この♂アサシンが
仕込んだ♀ノービスだ、油断はできない。

♂WIZは念のために♂アサシンの持ち物を漁ってみる。レッドジェムストーン1つと未開封の青箱2つ。
そして、血まみれのs1フード・・・。

「フードは一応持っていきましょう。小川で洗えば、使えなくもないでしょうし。」
そう言って、支給された袋にしまう。そして、青箱を一つ開けた。
「・・・・!」
つい言葉を失ってしまった。この島に来る前に愛用していた緑色の帽子が出てきたのだ。
「まあ、こんな勝負に挑んで、生き残ったご褒美だと、思っておきましょう。」
♂WIZは出てきたとんがり帽子を目深にかぶり、♀ノービスが消えていった森を眺めた。


〈♂WIZ〉
現在地 E-7
所持品 コンバットナイフ 片目眼鏡 +10スティックキャンディー とんがり帽子
     未開封青箱1つ レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
スキル サイト サイトフラッシャー ファイヤーピラー クァグマイア ファイヤーウォール
     フロストダイバー
備 考 「研究」のために他者を殺害 黒髪 土気色肌 丁寧口調 マッド
     ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
     フードを洗って使えるようにするか、♀ノービスを追うか思案中

〈♂アサシン〉
現在地 E-7
所持品 ♂WIZに奪われる
備 考 ♂WIZに殺害される ロリコン疑惑あり

〈♀ノービス〉
現在地 E-7
所持品 未開封青箱1つ
スキル しんだふり
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 E-7の森の中を逃走中
103名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/13(月) 16:41:03 ID:LjaHvq5E
>>98
GJ!!
アサの襲撃を待ち構えるWizの緊張感(*´Д`)イイヨイイヨー
SR→FPとはまた玄人コンボ。

あと、書き手様にこだわりがあったら気にしなくていいんだけど
つ[サイトラッシャー]
104名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 16:48:58 ID:tU8d1PK6
155 雫 [午後]


そこは城だった。
石造りで、どこか古めかしい…子供のころに聞かされた童話に出てくるような。
――ああ、これは夢だ。♂ハンターは確信した。
夢でなければ、自分が同じく童話に出てくる王子のような格好をしているはずがない。
ふいに後ろから誰かに抱きつかれる。そちらに視線をやると、ドレスを着た♀アーチャーが微笑んでいた。
これが彼女の理想だったんだな。そう思い彼は苦笑した。

場面は突然変わる。ドレスを着た『姫』の姿はそこにはない。
蹲り、必死に手を伸ばす彼を、美しく発光する虫の羽を生やした少女が嘲笑する。
同じ顔をしているのにそれは姫ではなく女王だ。先ほどまで彼の隣にいた少女ではない。
紫色の彼女が去っていく。叫ぶ。叫べない。手を伸ばす。動かない。届かない。そして、消えてゆく――


「……っ!」
♂ハンターは目を覚ました。慌てて周りを見回しても、いつもの島の風景が広がっているだけだ。
俺は何を焦ってる。夢だってわかってたじゃないか。
あれはもう終わったことだ。後悔したってあの娘は戻ってきやしないのに。
溜息をつき、頭を抱え込む。そこでようやく彼は自分の体が動くようになっているのに気づいた。
あたりはまだ明るさから見て昼のようだ。夜にある定時放送を聞き逃すほど眠っていたわけではなさそうだ。
それでも体の回復具合からそれなりの時間昏倒していたことがわかる。よく襲われなかったものだ、と彼は身震いした。

彼は一人考える。
自分はこれから何をすべきか。ジルタスと♂アコライトと共に行動し、自分の身を守って♀アーチャーの分まで生きるべきか。
――いや。彼は首を振った。もう答えは出ているじゃないか。
彼女は死んだわけじゃない。ならばミストレスを追って、彼女自身を取り戻すだけだろう。

しかし心の中でもう一人の自分が囁く。
ただ一日共に過ごしただけの娘の為に命を懸ける必要がどこにある? 今までだって散々引っ張り回されてきたじゃないか。

――何を今更。自分のいびつな考えに思わず彼は苦笑いを浮かべた。
命が惜しいなら、はじめから足手まといになりそうな少女なんて見捨てている。結局は人が言うようにお人よしなのだ…自分は。
ここまで来たら最後まで彼女の『王子様』でいてやろうじゃないか。
認めたくはなかったが、そうなりたい願望が自分の中のどこかにあったのだ、きっと。

だが、相手はミストレス――人間ではないのだ。自分の説得であっさり彼女が♀アーチャーに戻るなどと甘く考えてはいない。
言ってしまえば自分の我儘であるミストレス追跡に、ジルタスと♂アコライトを付き合わせていいものか。

「……ジルタス?」
そこまで考えて、彼は違和感を覚えた。
悲鳴が聞こえたのだから、♂アコライトはそう離れた位置にいるわけではないだろう。
それならなぜジルタスたちは戻ってきていない? それなりの時間があれから経っているというのに。
(これは…まずいんじゃないか……?)
何かあったのだ。二人のどちらか…あるいは両方に、その場から動けなくなる何かが。
微妙に思うように動かない体に顔を顰めながらも、♂ハンターは立ち上がった。
どうか無事でいてほしい。ただそう願い、重い体を引き摺るようにして彼は歩き出した。


あまりの状況に♂ハンターは言葉を失った。
腹部から血を流し、倒れ伏すジルタス。血の気の引いた顔は、彼女の生命の灯がとうに消えていることを示していた。
その傍に蹲り、泣き叫ぶ♂アコライト。
♂アコライトの傍には見知らぬ女プリーストが付き添い、彼を慰めていた。
さらに周囲には、状況に混乱しているのか、何をするわけでもなくぼんやりと立っているアルケミストの女性。
アルギオペに似た蟲の死骸と、その蟲に殺されたのであろうホルグレンの死体。
それに縋って泣く女鍛冶師と、彼女の傍でおろおろとしている大男の姿があった。

「一体何があったんだ?」
♂アコライトの傍に座っているプリーストに声をかける。彼女が一番冷静だと判断したからだ。
――実際は『彼女』ではないのだが、それに♂ハンターが気づくことはない。
「あなたは?」
「このアコライトと…ジルタスの仲間だ。ある事情で別行動をしていた」
♂アコライトに視線を向けるが、慟哭する彼は♂ハンターが来たことに気づいていないようだった。
いや、ずっと傍に居たプリーストの存在にさえも気づいてはいないのだろう。
「少し離れて話をしたい。いいかい?」
彼女は静かに頷いた。彼女も♂アコライトに何もすることができない無力さを感じていたのだろうか。

「……力になれなくてすみません」
申し訳なさそうにプリーストは頭を下げた。
彼女の話によると、♀BSが父親であるホルグレンの死体を発見したことがここに留まる理由となったのだという。
そこには敵らしき人物の姿はなく、来たときにはすでにホルグレンとジルタスは死亡しており、♂アコライトは気絶していた。
つまり彼女らにも何が起こったのかはわからないということだ。
「いや、少しでも話を聞けてありがたいよ。それより…気になることがあるんだ」
「ジルタスさんの傷……ですね?」
彼女の問いに♂ハンターは頷き、視線をホルグレンのほうへと向けた。

「ホルグレンを殺したのはあの蟲だってのはわかる。喉に噛まれたような傷があったしな。
 ♂アコを襲ったのもおそらくあいつだ。……だがジルタスの傷はおかしい」
「……ええ。腹部を貫くような傷――それも刃物によるものではないでしょう。大体…見当もついています」
「わかるのか!?」
プリーストの言葉に、♂ハンターは思わず彼女の肩を掴んだ。
驚いたように身を引こうとする彼女を見て、慌てて彼は手を離した。
「ご、ごめん。……見当って?」
「熟練したモンクならば、その拳を体を貫くまでの武器に昇華させることも可能です。
 あの潰れるような傷の付き方は、おそらくモンクの拳によるものでしょう」
「……くそっ!」
拳を握り締める♂ハンター。痛々しい彼の姿に、プリーストは目を伏せた。
「傷にヒールをかけた痕跡もありました。……間に合わなかったようですが。そのモンクにも、迷いがあったのかもしれませんね」
「そう……か」
ふぅ、と♂ハンターは溜息をつき、握り締めた拳を緩めた。怒りをどこに向けていいのかわからなくなったのだ。

「申し訳ないんだけど……君たちを信用できる人間だと見込んで頼みがあるんだ」
「……なんでしょう」
「♂アコを守ってやってくれないか」
告げられた♂ハンターの言葉に、プリーストは驚いた。
「あなたはあの子の仲間なのでしょう。共に行動するべきではないのですか?」
「俺は……ジルタスを殺したモンクを探そうと思ってる」
その言葉に彼女は再び悲しそうに目を伏せた。
「復讐をなさるつもりなのですか」
「わからない。素直に恨めたらいいんだろうけど、ジルタスが死んだのは俺のせいって面もあるから」
そう呟くと、彼は俯いた。プリーストはただ彼が言葉を続けるのを待っている。

「ジルタスを一人で行かせたの、俺だからさ。
 俺が下手なことを言わなければ、あの人は死ななかったのかもしれないって…どうしても思ってしまうんだ。
 ♂アコを俺に付き合わせることで、これ以上危険な目にあわせたくないから一人で行くんだ……なんて言ったら格好いいけど。
 本音を言えばさ…負い目があるから、一緒にいるのが耐えられないんだよ。……身勝手だろ」
「……そんなことは」
静寂がその場を包む。
痛いほどの静けさに耐えられなくなり、♂ハンターは静かに背を向けた。
「もう一つ一人で行きたい理由はある。
 守れなかった人を取り戻すために動こうと思ってたんだけどさ。危険が伴うそれに巻き込みたくなかったんだ……二人ともね。
 いつかはジルタスたちに別れを告げようと思ってた。こんなことになるとは思わなかったけど」
彼にかける言葉が見つからないのか、プリーストは黙っている。
「♂アコのこと……頼む」
「……はい」
その言葉を最後に、♂ハンターは歩き出した。
モンクがどんな人物かも、どこに行ったかもわからない。
もう一つの目的であるミストレスの所在もわからない。あてもない道へと彼は旅立った。
105名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 16:49:52 ID:tU8d1PK6
*****


去ってゆく♂ハンターの背中を、ぼんやりと淫徒プリは見つめていた。
悲しい人だ。彼はただそう思う。
だが嫌いな人物ではない。男の頼みごとを聞くのはこれで最後にしたいところではあるけれど。
とはいえ、預けられる人間が女性だったなら大歓迎していたのだけれど、と彼は苦笑した。
「……彼の者の往く道に祝福あれ」
彷徨う狩人に、聖職者は静かな祈りを捧げた。

ふと背後に感じた気配に淫徒プリは振り向いた。沈んだ顔の♂アコライトの姿がそこにはあった。
その手には血に塗れたジルタスの仮面が握られている。
彼は何をするでもなく、再びジルタスの遺体の元へと戻っていった。
どこから彼は♂ハンターとの話を聞いていたのだろう。何も聞いていないだろうと楽観視することはできる。
だが――沈んだ表情の中に見えた、どこか危うい輝きの♂アコライトの瞳を目の当たりにしておいてそれはできなかった。
おそらく彼は知ってしまったのだろう。ジルタスを殺したのが蟲ではなく、他の人間であることを。
(何か、嫌な予感が……)
純粋なはずの♂アコライトに感じた何かの影。よぎる不安を淫徒プリは拭い去ることができなかった。


*****


ぽつり、ぽつり。
「ん……?」
体を打つ小さな衝撃に、思わず♂ハンターは空を見上げた。その頬に雨の雫が当たる。
「雨か。やっぱりここも普通の島なんだな」
そう呟くと彼は目を閉じ、そのまま雨の中に佇んだ。

情けない自分への苛立ち、燻り続ける後悔。
♀アーチャーを消した女王蜂と、ジルタスを殺した誰かもわからないモンク――大切なものを奪っていった者たちへの憎しみ。
♂ハンターの心中には様々な、暗く澱んだ思いが渦巻いていた。――まるで彼の頭上に広がる空のような。
彼は思う。雨と共にそれらが全て流れ去ってしまえばいいのに、と。

――いや、違う。流してしまうんだ。
モンクをただ恨んでしまえば確かに楽にはなれる。
だがその人物が、ジルタスを殺しておきながら♂アコライトを殺さなかったことはどうも解せない。
それに傷にヒールをかけていたらしいことや、ジルタスの死に顔が驚くほど安らかだったというのもひっかかる。
何か理由があるのだと思いたい。ただの殺人鬼にジルタスが殺されたなどと信じたくない。
結局はそう思うことで自分が少しでも救われたいだけなのだけれど、と彼は自嘲した。
復讐に行くのではなく、理由を確かめに行くのだ。それからそのモンクをどうするかはその時決めればいい。

……♀アーチャーはどうしているだろうか。女王蜂に支配された意識の片隅で。
彼女はミストレスに両親と兄を殺されたと叫んでいた。いつもの電波がかった振る舞いからは考えられない様子で。
いや――今思うと、あれは彼女なりの自衛手段だったのだろう。辛い過去を思い出さないようにするための。
あんなに弓を持つことを避けていたのも、おそらく何か辛いことがあったからなのだろう。
それなのに無理矢理弓の練習をさせてしまった……思えばひどいことをしてしまった。
――彼女にはたくさん謝らなければいけないことがあるな。♂ハンターは溜息をついた。
♀アーチャー。勝手な俺を信じてくれるのなら、どうか待っていてほしい。俺は君が消えてなんかいないと信じているから。

そうだ、俺にはまだやることがたくさんある。こんな所でうだうだ言ってる場合じゃない、よな。
前向きなのが俺の取り柄だったはずだ。この島に送られて色々なことがあったけれど、それは変わらない。

雨が♂ハンターの体を静かに濡らしていく。迷いは振り切ったとばかりに、彼は閉じていた瞳を開けた。
開けた視界にはひたすらに降り注ぐ雨があるばかりだったが。
何故か彼にはその雫が、誰かの涙と被って見えていた。
それは最後に見た♀アーチャーの涙なのか、ジルタスの死に泣き叫ぶ♂アコライトの涙なのか。
(俺の…だったりしてな)
泣いているつもりはないけど、もしかしたら雨に誤魔化されているだけかもな。♂ハンターはぼんやりとそう思った。

まるでその雫に心を囚われたかのように。
しばらくの間歩くことも忘れ、彼は暗い空を見つめ続けていた。

雨は人の心を惑わせる。
――♂ハンターの探すモンクの男においても、それは例外ではない。


<♂ハンター>
現在地:G-6→?
所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢
外見:マジデフォ金髪
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。

<♂アコライト>
現在地:G-6
所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品)
外見:公式通り
備考:支援型
状態:ジルタスの死のショックにより内面に変化?

<淫徒プリ>
現在地:G-6
所持品:女装用変身セット一式 青箱1
外見:女性プリーストの姿 美人
備考:策略家。Int>Dexの支援型
状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。

<♀ケミ>
現在地:G-6
所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物)
外見:絶世の美女
備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪
状態:軽度の火傷

<♀BS>
現在地:G-6
所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品)
外見:むちむち。カートはない
備考:ボス、筋肉娘
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受けている

<♂スパノビ>
現在地:G-6
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。


<残り29人>
106104sage :2006/02/13(月) 16:53:44 ID:tU8d1PK6
♂ハンターはよほどのことじゃないと起きない睡眠状態、となっていたから悪夢くらいで起こしたのまずかったかもしれない。
一応時間の経過でそれなりに回復したってことにしてしまいましたがorz

淫徒プリの表現が『彼女』になってるところが多々ありますが仕様です。
♂ハンター視点にしてしまったせいか♀BSチームや♂アコの描写が足りない感があるので、
他の書き手さんのフォローが必要かもしれないです。

31さんの提案からとりあえず雨を降らせてみたんですがよかったですかね?
雨は某キャラの重要なキーワードのようなので。

>>96
食わせ物GM同士のやりとりが、戦闘とは別の意味で熱いです。
ジョーカー様素敵w

>>98
こちらもまた熱い。ロリアサの冥福を祈りつつWiz様に燃えてみる。
自分もうまい戦闘描写ができるようになりたいものだorz
107名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 17:23:03 ID:4HUpleDs
ちょwwwおまえらwwww描写ウマスギwwww

>>98
♂WIIIIZさま、ついにマーダーとして覚醒、ばんざい、ばんざい。
サイトラッシャーの描写、カッコヨス。
NGを心配していたのはジェムのない設置型ファイアピラーを作ってしまったからかな。
個人的にはセーフ、というか展開が燃え燃えだったので是非セーフになって欲しいけど、どうなんだろう。
稀代の天才WIIIIZさまなのでOKにならないかな。

♂アサシンを失った♀ノービスの今後がもう気になって気になって、目が離せないぜ。

>>104
素敵な文章と展開にノンストップで読んでしまった。ウラヤマシス。
1点気になったところはBSとゆかいな仲間たちがなんの警戒もなく♂ハンターを近寄らせたところかな。
♀BSか♀アルケミ視点によるフォローに期待しよう。

♂ハンターの今後、そして♂アコライトの今後が熱いよ!
108104sage :2006/02/13(月) 17:44:21 ID:tU8d1PK6
>>107
あー…今読み返してみたら確かにそうですね<♀BS組が♂ハンターの接近に警戒してない件
やっぱり描写不足ですねorz
ここはうまいフォローをお願いしておこうかな……(´・ω・)ゴメンナサイ
10998 :2006/02/13(月) 20:37:01 ID:CcAopYiY
あっ、サイトラッシャーでしたか・・・。純粋に間違えてました。
ジェムなしファイヤーピラーはレベル5設定のつまりでした。
レベル5以下なら、ジェムはいらないはずなので・・・。
そして、残り人数表記してません。申し訳ない。

♂ハンター、カッコイイですね。それと♂アコライトも、よさそうな雰囲気です。
いよいよ、面白くなってきましたね。
110名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 20:53:46 ID:D/s83bU6
雨いいなぁ。
ただ都合を合わせる必要があるのは、ふぁるたんの描写がもう夕方になってることですかね。
鳥さんだし、雨降ったら飛べなかったりで何らかの動きもあるだろうと思うし、
夕陽が出てる以上うまいこと繋ぎ合わせる必要があるんでないかなー、と。
11190sage :2006/02/13(月) 21:53:29 ID:ZN4bVcl6
>96
>恐慌におちいるシーンに雨を降らせて欲しかった

ごめんなさい。書いた本人も後から気になってました。
問題なければ以下のように差し替えさせて頂きたい。
112名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/13(月) 21:56:13 ID:ZN4bVcl6
『ご主人様を救ってくれてありがとう。早とちりしてごめんなさいね……』


なんてことだ、完全に誤解だった。
突然襲ってきたから思わず手にかけてしまったが、このジルタスはゲームに乗ったマーダーではないどころか、
なんとたった今救った♂アコライトの仲間、いやそれ以上に深い絆で結ばれた『従者』であった。

あまりのことにしばし愕然とする。しかし、真後ろで♂アコライトが気絶していたことを思い出し、再び考えを巡らす。
ここでオレがジルタスの命を奪ったことを彼が知ったらどうなるだろうか。

彼はあの蟲に襲われていたときオレの存在に気付かないまま気絶した。
彼が目を覚ましオレをジルタスの仇と認識して襲い掛かって来たとしたら、同じことの繰り返しになる。
そうなると、最悪の場合♂アコライトまでも殺さねばならなくなる。
オレが仇であるのは事実だが、それは避けなくてはならない。
だが、初対面であるオレが一切を説明したところで、その言葉を信じてくれるであろうか。
そしてまた、納得してくれるであろうか。
残念ながらその望みが限りなく薄いことは、自分が一番よく理解している。
この思いがそのように簡単に割り切れるものではないことを……。

それならばと、先程の戦闘を隠し通すことも考えた。
しかし、いつ♂アコライトが目覚めるとも、誰かが通りかかるともわからない中で、ジルタスの遺体と血の跡を隠すのは容易ではない。
それこそ途中で♂アコライトに目覚められたら、説明のしようがない。
仮にうまく隠せたとしても彼がアコライトである以上、腕の傷の治療を申し出ないとも限らない。
そうなった場合治療を断る理由がないし、傷をみれば鞭によるものであることは明らかだ。

結論、自分はこの場に居るべきではない。

未だ目を覚まさない♂アコライトを放置していくことに躊躇いを感じつつも、
他にどうしようもなかったグラサンモンクは、左腕の治療も後回しにしてその場を後にする。

オレは人を助けるどころか、お互いの誤解のせいとはいえジルタスを殺してしまった。
そして、あの♂アコライトが目覚めたときには、大切な人を失うというこの耐え難い苦痛を背負わせてしまうことだろう。


これも復讐者としての運命か――。


<ジルタス>
<現在地:G-6>
<所持品:ジルタス仮面>
<備考:首輪を付けられている>
<状態:グラサンモンクが♂アコライトを襲ったと誤解→誤解が解ける 死亡>

<グラサンモンク>
<現在地:G-6→?>
<所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭(左腕に食い込んだまま)>
<外見的特徴:csm:4r0l6010i2>
<所持スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 金剛 阿修羅覇王拳>
<備考:特別枠 右心臓>
<状態:左前腕負傷 助けを求める人達を守りたい→微妙に変化?>
<参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)>

<♂アコライト>
<現在地:G-6>
<外見:公式通り>
<所持品:なし>
<備考:支援型>
<状態:気絶中>
113名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 02:54:49 ID:JCrbGJSE
156 相容れぬ殺戮

何人もの手練れの暗殺者。
罠に加えてモンスターの放たれた大部屋。
壁の見えない複雑な迷宮。

アサシンギルドに存在するあらゆる障害を越え、3人の男がアサシンギルドマスターの前に立っていた。
鋭い眼光を3人に向け、まずギルドマスターが言葉を発する。

「……随分と派手にやってくれたようだが、女王の親衛隊がわざわざ何の用だ」

それを受け、そのうちの一人の男が一歩前に出る。
一礼し、胸に手を当て話す。

「いえ、我々はGM……親衛隊ではありません。 その使い走りとでもお考え下さい」

別の一人が前に出て、続ける。

「GMジョーカーの命により、昨日より♂アサシンのBR参加前の行動を調査しておりました」

もう一人が前に出て、同じように続ける。

「BRの機密を王国の者より聞き出した者がいます。 そして、その者の遺体はモロクで発見されていますが……」

最初に前に出た一人が話す。

「その遺体は偽装である疑いが強かったのです。 ではその遺体は何処の誰なのか……
いえ、誰なのかは問題ではありません、その遺体を誰が何処から何の為に用意したのか」

ギルドマスターは変わらぬ眼光を向け、静かにそれを聞いている。
動揺などは一切見られない。
そんなギルドマスターを無表情に見つめ、男は話し続ける。

「当初は調査にてこずったのですが、モロクを縄張りにしているローグの方々などからようやく情報が集まってきまして。
一人の男、それも今回BRに参加した♂アサシンに酷似した男が遺体を運んできたとの話しが聞けました。」

そこでギルドマスターは口を開く。

「つまり、♂アサシンが偽装の為の遺体を用意したことが王国への反逆に当たる、とでも言いたいわけか?」

それを聞くと、最初に話し始めた男が少し苦笑して話す。

「王国の知る限り、あの♂アサシンはギルドの仕事以外で一切人は殺していません。 BRに参加中の言動からもそのような人物であると見て取れます。
かと言って、無許可にこのギルドから遺体を持ち出しても問題になりますね。 となりますと……
……アサシンギルドから許可を受けて持ち出した、運営を統括する貴方がそれを知らないはずはない。
そして、貴方はそれを何の為に用意するのかを確かめた」

そこで、話していた男が手を挙げる。

「貴方は♂アサシンから聞いた依頼主が何者かを聞き
その行動を洗わせ、その遺体が何の為に用意されたのかを確認した」

それを合図とし、3人の背後からいくつもの弓や杖が
ギルドマスターに向けられ、3人もサーベルを抜く。
男はまた話し出す。

「……♂アサシンをわざわざ今回のBRに参加させたのは、その依頼主が今回参加しているから。
別のアサシンでは依頼主の信用を得られませんからね。
♂アサシンにその遺体を用意させた本当の目的を伝えて依頼主との接触を優先させなかったのは
暗殺者としての心構えが未熟な彼ではあからさまな行動をとりかねないからですね。
…………貴方は何故BRを潰そうとするのですか。反逆者を淘汰する素晴らしいシステムですのに」

そこまで聞き、ギルドマスターは嘲笑して言う。

「何にしても、それはほとんどが推測だ。
♂アサシンが黙って遺体を持ち出した可能性が無いわけではあるまい」

ふと、男も少し笑い。

「確定させるのはあとで構いません。我々は貴方を連行するために此処まで来たのですから」

「何でも構わん。貴様らがどんな拷問に出ようとも俺は潔白だ、期待されていることなど何も話しはしない」

「……アサシンギルドを守っていたアサシン達、彼らが人質でも?」

ギルドマスターの眼光がまた鋭くなり。

「手強い方々でしたよ、強力な薬物で肉体強化をせねば取り押さえられないような。
おかげでほとんどの人員が当分はロクに動けませんよ。
と、付け加えておきますと貴方を含めアサシンギルドの機能を奪うことで
この王国に多大な被害が出ることは承知しています。
ただ、それだけBRが重要であると御理解下さい」

「……汚い連中だ、本当に」

「何とでも……と、コレは貴方には伝えておくべきですか」

男は鋭い笑みを浮かべ。

「もう♂アサシンは死んでいますよ、別の参加者の手でね。」

「…………そうか」

ギルドマスターはそれを聞いても平然としている。
男にはそれが少しつまらないのだが、仕事に私情は挟まないよう努め
連行するよう指示を出した。


アサシンギルドマスターがBR制の崩壊を望む理由。
彼は憂いていた、こじつけの罪でBRに参加させられ無残に死んでいく人々を。
BRを恐れ、荒廃していく王国を。
アサシンギルドの殺しによる世の平定はとても保てず、混沌へと突き進む。
それを打ち破り、あるべき姿へ世界を戻したかった。

(……♂アサシンはただで死ぬ男じゃない。 あの男が何かを為せたと信じるしかない、な)
114名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 07:18:16 ID:eNUukdhY
>>113
♀WIZの古い友人ってロリアサだったのかっ
理由を知らないまま死んじゃったアサ南無(ノД`)
115名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 08:14:00 ID:wQOZS48k
今さらで悪いんだがロリアサPTの位置というか、行動がおかしい

101 覚悟と決意  草原地帯、小さな木の下(F-6)で西に向かう
121 再会     丘の木立(D-6)
ここまではいいんだが、次に♂クルセと戦った
132 人殺し達の戦い 小さな森(E-7)
なぜかココでE-7(南)に向かってる
ロリアサPTは島の南側から移動しているのでこのルートはちょっと不自然だ
多少の修正が必要だと思うんだがどうだろ?

>>98
♂アサ、ガチガチに警戒してる♂WIZ相手に不自然なほどに突っ込みすぎだよ(つд`)
とはいうものの、前述した位置以外は問題ないから
♂クルセからの話も合わせて場所を修正すればセーフでしょ
116名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 08:31:50 ID:vWYyJEOI
アサシンギルドが正義すぎて萎え
♀ノービスに役割を持たせたいという意思があるのかもしれないけど、
むりやりっぽいなぁ。
117名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 09:13:16 ID:EqcRoLkI
と言うよりもだ。
最大の問題は、外部組織、それも「反BR」を明確にしてないし、
する必要も無い、と思われるのLight-Lowの方向に持っていってる点だと思われ。
随分後半に来たのだし、前半との整合性も少し考えてほしい悪寒。

つーか、こう言う100%正義君は初期の♂騎士だけで十分だと。
や、ぶっちゃけて言うと使いづらい事この上ないし。
個人的には、こう言う後付の外付け設定は簡便してほしかったり。
バイアスが効きすぎてて何というかなー、
こうも露骨だと舞台の上での各キャラクタの奮闘を一切無視してるような錯覚がするのよな。

これまた個人の信条なんだが、キャラクタの魅力はその動きで出せ、と。
書くのが面倒だから、と言って第三者にスゲーと語らせて、
虎の威を借る狐よろしく、さもそのキャラがすごく見せかけるのは感心しねーです。
それに、その後の複線的な要素としても、極々単純なものにしかなりそうにないですし。
あからさま過ぎるのはアレですね。
11898 :2006/02/14(火) 09:59:32 ID:DQapL4lo
〉〉115
位置の問題というのは、♂クルセとの戦闘がE-7で行われているってことかな?
たしかに、♂アサは初め南の方から来ていて、D-6まで順調に来ていますが、
急に向きを変えて、E-7へ行ってしまってますね。やはり、理由付けは必要ですかね。

♂アサをあっさり殺してしまって、ごめんなさい。私の中では、対魔術師戦は
先手必勝でしたので、クローキングで背後に回り、一撃必殺を狙わせました。
とび蹴りにさせたのは、♂クルセ戦でのかっこよさから選びました。
これが森の中でしたら、チョークスリーパーでもよかったんですが・・・。
ま、そのときは♂WIZには別の結末が待っていたことでしょうけどね。

♂アサシンを雑魚のように殺していますが、これ以外に私の中では
殺しようがなかったからです。爆発力はあるものの、対人慣れしていない♂WIZと、
任務で慣れている♂アサシンでは、下済みが違いますので、持久戦になったら、
♂WIZでは無理でしょう。実力が拮抗している♂クルセくらいではないと、
勝負にならないと思います。なので、弱者が強者を下せるのは、一瞬の隙に
一気に畳み掛けるだけだと判断したので、♂アサシンの見せ場もなく死なせました。
見せ場作ったら、♂WIZが死んじゃうのでw

でも、対人慣れしている♂アサシンのはずですから、もっといい方法も、
あったかもしれませんね。勉強不足ですみません。
119名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 10:49:02 ID:kdKGFxdA
>>118
だったら、♂WIZ殺しちゃえば良かったジャンとか思った自分
120104sage :2006/02/14(火) 10:50:38 ID:MuNdYJVE
フォローをお願いしますと言っておいてなんですが……
武器を持ってる♂ハンター相手に一人離れた場所にノコノコついていく
淫徒プリの不用心さはフォローのしようがないことに気づいたのでorz
以下の文を差し替えってことで……


「一体何があったんだ?」
♂アコライトの傍に座っているプリーストに声をかける。彼女が一番冷静だと判断したからだ。
――実際は『彼女』ではないのだが、それに♂ハンターが気づくことはない。
「あなたは?」
「このアコライトと…ジルタスの仲間だ。ある事情で別行動をしていた」
♂アコライトに視線を向けるが、慟哭する彼は♂ハンターが来たことに気づいていないようだった。
いや、ずっと傍に居たプリーストの存在にさえも気づいてはいないのだろう。
「……そう、ですか」
訝しげな視線を向けてくるプリースト。誰が敵なのかわからないこの状況では無理もない、と♂ハンターは思う。
死体がいくつも転がっているような場所にいるのだからなおさらだ。
(♂アコが気づいてさえくれれば信用されるんだろうけど……この様子じゃ無理そうか)
そう考えた♂ハンターは、ひとつの賭けに出た。

「……一旦武器を捨てるよ。敵対する意思は本当にないんだ。信用してくれないか」
もし相手が危険な人物であったなら自殺行為になる。
だが♂アコライトを慰めてくれていたプリーストや、彼女の仲間らしき人物たちはそのような人間だとは感じられなかった。
自分の勘に全てを賭け、♂ハンターは矢と短剣を支給品の入った鞄の中に入れ、弓とともに彼女のほうへ差しだした。
プリーストはアルケミストの女性のほうへ視線を向けた。意見を伺っているようだ。
「……わかりました」
しばらくして、プリーストは彼の武器を受け取ると、腕の中に抱え込んだ。
「少し離れましょう。彼は……少しそっとしておいてあげたほうがいいかもしれませんし」
そう言うと彼女は立ち上がり、その場から離れた。♂ハンターもそれに続く。
彼女も密かに♂アコライトに何もすることができない無力さを感じていたのだろうか。


もうひとつ


「ジルタスを一人で行かせたの、俺だからさ。
 俺が下手なことを言わなければ、あの人は死ななかったのかもしれないって…どうしても思ってしまうんだ。
 ♂アコを俺に付き合わせることで、これ以上危険な目にあわせたくないから一人で行くんだ……なんて言ったら格好いいけど。
 本音を言えばさ…負い目があるから、一緒にいるのが耐えられないんだよ。……身勝手だろ」
「……そんなことは」
静寂がその場を包む。
痛いほどの静けさに耐えられなくなり、♂ハンターは再び口を開いた。
「もう一つ一人で行きたい理由はある。
 守れなかった人を取り戻すために動こうと思ってたんだけどさ。危険が伴うそれに巻き込みたくなかったんだ……二人ともね。
 いつかはジルタスたちに別れを告げようと思ってた。こんなことになるとは思わなかったけど」
彼にかける言葉が見つからないのか、プリーストは黙っている。
「じゃあ、そろそろ行くよ。♂アコのこと……頼む」
「……はい」
プリーストから荷物を受け取り、♂ハンターは歩き出した。
モンクがどんな人物かも、どこに行ったかもわからない。
もう一つの目的であるミストレスの所在もわからない。あてもない道へと彼は旅立った。


みなさんの指摘があると自分じゃ気づかないミスが見えてきますね。ありがたいです。
121名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 11:21:49 ID:ohcZ131U
>>119
そんな苦しい境遇の中で♂WIZが勝つことに面白さがあるんじゃないか(涙)

>>118つまり>>98の人
大丈夫です、♂アサシンが雑魚なんて思いませんとも。
♂クルセとのバトルがありましたし、♂WIZの心理がうまく書かれているからギリギリの中で勝った感が伝わってきました。

♂アサシンが素手でこれ以上強くてもそれはそれで問題だったので、いい落としどころだと思いますよ。


位置の問題ですけど、
140話E-7で♂WIZが♀ノビを狙って動きを開始しています。
145話E-7で♂クルセ、♂モンク、♀騎士が会合してます。

D-6(E-6付近)で♂クルセ、♂アサシン戦闘、E-6で♂クルセ刺されてE-7方面へ逃亡、
手負いの♂クルセを逃さないように♂アサシンは恐慌状態の♀ノービスを安心させてからふたりであとを追ったとかにすればなんとかなりませんか?
そうすれば修正は132話の位置だけで済むかなと。

これで♀ノービスが♂クルセと♂WIZに挟まれて大ピンチ、さらに♂モンクと♀騎士の動き次第ですごいことに!
122名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 11:54:42 ID:ohcZ131U
112、120の修正をしつつWikiを更新しておきました。
位置問題は保留にしておきます。
>>121内で提案した132話における位置の変更だけでよいと他の人の判断がでればそこであらためて修正します。

>>113に関しては様々な意見があるものの、とりあえず投稿上でのルール違反とかではありませんし、
また、展開に矛盾をはらんでいるということもありませんでしたので、仮採用しておきました。

リレー小説なのであるていどのズレは出来る限り吸収していく方向でいきたいのですが、どうでしょう。

もちろん、書き手さんは煽りではない批判について、しっかり受け止めて次に活かしていくことが前提ですけれど。


最後にナンバリングがやっぱりずれてしまって(私のミスです)、次は158になります。
ゴメンなさい。
123名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 12:17:25 ID:CPv7T9n2
>>118
私は全然、♂アサが雑魚だとは感じませんでした。以前にいいところ見せてますし。
かえってこの場合は、対人戦において不利な♂Wizを勝たせることによって、文に緊迫感や勢いが増したのではないかと感じました。
弱い方が強い方を如何に殺すかっていうのもBRの面白みだと思います。
とにかく♂Wizにハァハァな私にとっては、非常に嬉しい展開でした。
だって今までは、良い背景はあっても現実ではヘタレっぷりばかりが目に付いちゃって…(ノ_・。)

>>121
私はそれで良いと思います。
熱い場面が期待できそうで、今から楽しみかも。
124117sage :2006/02/14(火) 14:13:09 ID:EqcRoLkI
 すまん。前言を撤回させてくれ。
 >>117の発言については全面的に見当はずれだった。
 てっきりアサが生きたままだと思ってたんだ。
 どうも、♂騎士での事以来そう言うのに神経質になってるらしい。orz

 お詫び、と言う訳じゃないけどグラサンモンクのお話投下。
 ♂クルセもかかわって来るけど、時間軸的には雨が降り始めてから暫く経過したあたりで。
125名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 14:14:06 ID:EqcRoLkI
 157 涙雨

 ──彼は雨の日が嫌いだった。
 しとしと鬱陶しく降り注ぐそれは何時だって彼を責め立てるからだ。
 それを見ていると、嫌でも過去を思い出す。
 普段なら限界までアルコールを詰め込んだ後に後の事なんて考えず、死んだように眠るのが習慣だった。
 嫌な記憶はそれで全て薄靄の掛かった向こう側に追いやってしまう。
 無性に、その儀式めいた堕落に身を任せたい気分だった。

 ──こういう雨の時には、碌な事が無い。

 まるで、酒を流し込んだ後の意識みたいな光景だった。
 薄靄がかって、陰鬱で。一時の休息を木を雨避けにする事さえも許さない、とでも言いたいのか。
 勿論、今や真っ黒くなっている曇天は彼に答えなんて返しはしないのだが。
 しとしと。しとしとしと。
 それから、誰かを守る、なんて目標に関して彼はとことん天に見放されているらしい。
 そもそも柄じゃなかった。あの一瞬は、天津のニンジャみたいな格好をした男のせいだった。
 少し前だってそうだ。守る積りが殺してしまった。

 手を血で真っ赤に染めてる奴は、自分で自分の死刑執行礼状に署名している人間で。
 そんな人間がそんな真っ当な事を考える事自体、お門違い、と言う奴だったのだろう。
 そう言っていいのは罪を支払い終えた奴か、さもなくば狂人だけで俺はそのどちらでもない、と今更ながら彼は思う。
 ぴちゃんぴちゃん、と木の葉から雫が滴る音が聞こえる。

 ──つくづく、人間と言う奴は因果な生き物だ。何時だって世界の外側の狂人共の好き勝手に操られる。

 濡れた下草を踏む音が混じる。
 座して、只雨が上がる事を待ちながら瞑目していた彼にとって、それはサングラスが曇る事よりも簡単に認識できる事だった。
 立ち上がり、僅かずれていたサングラスを正す。ずきずきと腕が痛んでいたが、意思の力で押し殺した。
 どうやら、彼の門を新顔の死神が叩きに来たらしい。
 素面で過ごす雨の日は何時だってこうだ。けれど今日は珍しく彼自身がダンスのお相手。
 薄ぼんやりと落ち窪んで見える目が、彼を見ていた。

「やあ。始めまして、でいいか?」
 サングラスを掛けた彼が苦手なものは、眩しい場所と穏やかな空気。
 ぽぅ、と浮かびあがる気弾はウィル・オ・ウィスプ。
 迎え火の様に揺らめく。

「───」
 死神は、何も言わない。
 大鎌の代わりに提げた剣だけがぎらぎら光っている。

 結局、サングラスの男は骨の髄まで殺し屋家業に染まってしまっていて。
 その過酷な過去も、自傷行為と言える鍛錬でさえも。それを形作る為の物でしかなくなっていた。
 意思が伴わぬ偽悪であっても悪は悪。救いようの無い人間である事は代りが無い。
 そう。何時だって彼は殺し屋だったし、殺し屋でしかなかった。
 自分にそう言うと、慣れない『守る』なんて言葉から開放された様な気分になった。

「一応、言っておくと俺は殺し屋だ。…そう名乗るのも変な話なんだけどな」
 だから、この言葉は自分に役割を自覚させる為の引き金だった。
 俺は殺し屋。頼まれて人を殺す。今や、あの人たちに顔向けも出来ないクズ野朗。
 だけど、必用なら死神にさえあの世の渡し賃をくれてやる。
 それでいい。それだけでいい。
 気分は冴え渡り、九回の裏。守備投手は守る事よりも目の前のそれを叩きのめす事に専念する。

「ああ、そうだな。それじゃあ俺は殺人鬼だな」
 不思議と、そう言う♂クルセイダーに彼は嫌悪を感じなかった。
 きっと、彼の虚ろで割れたビー球みたいな目を彼もしているからだろう。
 ♂クルセイダーも同じ印象を受けているに違いない。
 要するに絶対的にお互いが相容れない存在なのだと気づいていた。

 傍目からすれば、殺し屋同士の争いには見えず。
 そもそも互いに名乗り合っている時点で、それではなく。
 雨が顔を濡らしていた。お互い髪を額に貼り付けて、まるで亡霊みたいな格好だった。

「さて、互いの目的をはっきりさせておこう。俺はお前を殺したい。お前は俺を殺したい。それでいいな」
「──なら、始めから俺を殺せばいいだろう」
「フェアじゃないからな」
「そうか。じゃあ仕方無いな」

 淡々としたやり取りが続く。
 単に、出合った時からそれは決闘以外の何者でもなかった。

 ──ぴちゃん。

 また何処かで雫が垂れ落ちる音が聞こえた。
 それが合図だった。

 ドウッ。
 重くくぐもった音を響かせて伸ばしたサングラスの男の指から、指弾が走った。
 互いの相対距離は凡そ10m。十分死神の剣の懐だったが、彼もこの距離からは外さない。
 越えようの無い距離であり、男の勝利は揺るがない筈だった。
 ──その、筈であった。

 かぃぃぃん、と世にも涼やかな衝突音が響く。
 見れば♂クルセイダーの前には薄緑色をした半透明の盾が一瞬現れていた。
 男の指弾と同じようにそれも弱体化しているのだが♂クルセは角度を付け、受け流す事で防いだのだ。
 最もそれがあろうと無かろうと、彼はまっすぐに男目掛けて走っただろうが。
 見事、と思う暇も無い。滑り込む様な足取りで近づいてきたそいつの脇に鋼の色が輝いていた。
 早い。そして冷静に相手の殺害を狙う剣だった。それにこちらは素手。身一つで回避を続けなければならない。
 腰を落としていない、指弾使い特有の構えのお陰もあって一度は回避できた。
 だが、二度目三度目はわからない。接近戦では明らかに相手に分があった。
 懐の外に逃れれば彼の勝ちであるのだろうが、残念ながら残影は習得していない。

「無いモノねだりだとは解ってるが──」
「そんな暇があるなら、神にでも祈ったらどうだ?」
 言葉と共に、びっ、と男の片腕に鋭い痛みが走った。
 生熱い血が流れ、滴る。
 おぼつかない回避を男が繰り返す度、傷ばかりが増えていく。

「がぁ……っ!!」
 そんな狂人に祈る言葉は無い、と口の中で怒鳴りながら男は死中の活、とでも呼ぶようなチャンスを探っていた。
 出血は遠からず彼の動きを鈍らせ、その命を奪うだろう。
 一刻も早く脱出しなければならなかった。
 死神に六文銭を叩き付けてやらなければいけない。

 ♂クルセイダーの剣が奔る。
 ぴっ、と彼の血が跳んだ。それが、足元の水溜りに落ちて消える。
 徐々に、剣筋が致命のそれへと変わっていく。
 一方的な死合展開。痛みが酷い。傷はまだ癒えているとは言いがたく。
 ああ。それでも。一撃だ。
 彼の指弾は大砲である。白兵を挑む兵士なぞ、紙切れの如く吹き飛ばして余りある。

 ぴちょん、と又水滴が滴った。
 雨に濡れた髪は額に張り付き──風も吹いていないと言うのに、勢い良く揺れた。
 サングラスの殺し屋が、一瞬の隙を突き、♂クルセイダーから飛びずさった。
 濡れたクルセイダーの装束は、酷く重い。元々、外気に曝す事を想定されていないのだ。
 対するモンクのそれは、その真逆。
 僅かな差だ。けれども、それが殺し屋に勝機を与えていた。

 ──笑う。
 殺し屋は、雨の日に。
 この死地においてこそ。
 さも愉快げに。まるで、熱に浮かされたみたいに、笑ってる。
 陰鬱な死神とは、まるで真逆みたいで。
 そうだ。頭が割れそうになるぐらい、こんな雨の日は嫌いだ。
 なら。全て忘れてしまうぐらい、自分を火にくべてしまえばいい。

「──くたばれ」
 嗤いながら、殺し屋は呟く。
 ──蒼白い光が指先に灯るのも、僅かな時間。
 鈍い破裂音を轟かせ、指弾が──

 かっ、とその瞬間、殺し屋は己の目を見開いた。
 どうした事か。彼が捕らえていた♂クルセイダーは彼を『追ってこない』。
 これは一体どういう事か。

 暗色に濁るサングラス越しの世界。そこで、その死神は弓みたいに自分の体を引き絞っていて。
 その手には、緩く曲線を描き煌く刃……ブレストシミター。まるで、それは矢の様だ。
 スローモーション。投擲姿勢を取った♂クルセイダーの腕が、唸りを上げる。

 ──そして、指弾と共に一閃の銀光が降りしきる雨を切り裂いた。
 彼自身にしても、それに気づいたのと、起していた撃鉄を無視して強引に体を捻った時のどちらが早かったのか理解できなかった。
 だずん、と大きな音を立てて殺し屋の真横、彼が雨宿りをしていた木の幹に突き立ち、途端に爆音を上げる。
 僅かに、早かった。コンマ数秒前の死を回避して、彼は地面を無様に転がる。勿論、放った指弾は外れたに違いない。

「ぐ…っ」
 立ち上がる。見れば、ごうごう音を立てて木が燃え上がっている。
 突き立っていた筈のシミターは──無い。♂クルセイダーの姿も見えない。
 それで、彼は死神は諦めて立ち去ったのだと悟った。
 決闘は、どちらの勝利でもなく物別れに終わったらしい。

 ──不意に空を見上げる。
 まるで、泣いている様に、相変らずしとしとと雨は降り続いていた。

<グラサンモンク 持ち物状態変化なし 場所F7>
<♂クルセイダー 同じく 場所 F7=>移動>
126117sage :2006/02/14(火) 14:23:19 ID:EqcRoLkI
言葉が足りてないので追記。
全面的に見当はずれ、
と言うのは♂アサが♂騎士の如き扱いになってるじゃねーか、と言う辺り。
彼はもう死んでますからね。
でも、アサギルドに関してはやっぱバイアスがかかってるなぁ、と。

ただ、彼にかかわった人物の中で、「アサギルド」の故に彼が英雄視、
或いは残された♀ノビが単純に悲劇のヒロインちっくに持て囃されたり、
そういったような事がなければその辺は割とどうでもいいかな、と。

あくまで外部の出来事ですし、いざとなれば後から変質させてしまうのもアリですしね。
127名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 16:06:55 ID:ohcZ131U
159.最低 [2日目午後 雨の降り出す前]

最低。

ひとめ見れば同性ならば誰もがうらやむほどの美しさを持った彼女は、
蟲にのどを食い殺されたあわれな鍛冶師のかたわらで、鍛冶師にすがりついて涙を流す女を見て、そう思った。

死んだ鍛冶師の名はホルグレン。いわずと知れたプロンテラの迷鍛冶師である。
その巧みな技術を前にして、涙を流した冒険者の数は星の数ほどいると言われているかの鍛冶師もまた、
この血で血を洗う無益な戦場に送り込まれていたのだ。

それにしてもなんなのよ、このくだらない茶番は。
ひとりしか生き残れない殺し合いの最中なのに、親が死んだからって。
今朝のときもそうよ。わざわざ死んだやつなんかのために墓まで作って、黙祷までして。
まったく、つきあう方の身にもなってもらいたいものだわ。

♀アルケミストは死者を前にして、誰が見ても哀しんでいると思わせる、およそ完璧な憂いの表情を作り、心中で悪態をつく。
彼女からしてみれば、平和な世界でぬくぬくと育ってきたとしか思えない♀BSの行動には嫌悪を覚えこそすれ、けして理解することなどできない。
いや、正確にいえばそういう類の感情があることを理解はしている。
理解しているからこそ彼女もまた哀しみにくれる同行者を演じているのだから。

ただ彼女はその感情を人に対していだいたことがないのだ。
なぜなら彼女が哀しみの対象とするものは、いつも自分自身の利に関係することのみであり、
たとえ血の繋がりのあるものだとしても、利とならない存在であれば、なんのためらいもなく切り捨てるだけなのであるから。
もっとも彼女と同じ血縁をもつものなど、この世のどこにもいないのではあるが。

彼女がそんな風にして、自分にとって哀しかった出来事と目の前の出来事をすり替えて涙を流すことに飽きはじめた頃、
同行者である淫徒プリが少しだけ喜びの声をあげた。献身的に看病していた♂アコライトが目覚めたのだ。
ところがである。
起き上がった♂アコライトは、ホルグレンと同じくすでに死んでいるジルタスを見つけるや、顔色を青く変えてジルタスのもとへ駆け寄ったのだ。
物言わぬジルタスを見た♂アコライトの少年の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。
少年のそんな様子に、ジルタスとの主従関係でも察したのか、淫徒プリは少年の側に近寄り、少年の肩を優しくそっと抱いた。

最低。

♀アルケミストは演技を続けなければならなくなったことに、ため息のひとつでもつきたいと思った。
けれどそんなことはできない。せっかくここまで演じ続けてきた役を途中で放棄することなどできようはずもない。
心を隠すこの仮面は腕力のない彼女にとっての数少ない武器なのだ。

しかたなしに彼女はあの白い夢を見ることにした。
自分がいったい誰なのか、なにをしたいのか。どこからきたのか、どこへ行くのか。
そんなとりとめのない思考。自分の心をゆっくりとゆっくりと時間をかけて切り刻む、狂気という名の刃。

彼女はぼんやりと立っていた。どこを見るでもなく、何をするでもなく、ただぼんやりとその場に立っていた。
それは警戒心の強く、策謀家である彼女にしてはめずらしく、ひどく間の抜けた行為であった。

そのタイミングで♂ハンターがあらわれたことは果たして幸運だったのだろうか?

そう、本来ならば誰かが周囲に警戒していなければいけなかったはずなのだが、その役をこなす人間が誰もいなかったのである。
もし♂ハンターが悪意ある殺人者であったなら、きっとまたたく間に全員が殺されていたであろう。
それほどの大失態であった。

しかし彼は、心に汚れなき人間であった。
ほんの少し、いや、かなり不幸な運命を背負ってはいたけれど、彼は運命に負けない程度には強い心を持った善人だったのである。

「一体何があったんだ?」

傷を負っているのだろうか、どこか体をかばうような立ち振る舞いをする彼は、哀しみを帯びた瞳で淫徒プリにそう話しかけた。


********


最低。

♀アルケミストは本日何度目になるか分からないその言葉を脳裏に浮かべた。
やっと自分の身を守ってくれそうな、たらしこみやすそうな男があらわれたにもかかわらず、彼を仲間にしそこなったからである。
それというのも彼が、別れの直前に見せた彼の瞳が、おどろくほどに悲壮な決意に満ちていたからであった。
甘言に富む彼女ですら思わず声をかけそびれてしまうほどに、彼の目はどこか遠くを見ていたのだ。

結局増えたのは戦力になりそうもない♂アコライトの坊やがひとり。
あれじゃ、ただの足手まといにしかならないわ。

そう思った彼女はある提案をすることにした。生き抜くために必要なことだと判断したのであろう。
提案の良し悪しを判断する気力は今の♀BSにはなかった。もちろん今の♂アコライトにもない。♂スパノビにはもとからそんな能力はない。
唯一、淫徒プリだけが冷静な思考を持っていたのだが、提案を聞いた彼女は───本当は彼と呼ぶべきなのだが───素直に賛同した。

こうして5人は簡易的な土葬と黙祷を済ませると、♂ハンターが去っていった方角に向けて歩きはじめた。
そのとき♀アルケミストの鞄の中には、土葬の際にこっそり着服したホルグレンの遺品、古いカード帖が加わっていたのだが、
そのことに気付いたものは誰もいなかった。


<♂ハンター>
現在地:G-6→?
所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢
外見:マジデフォ金髪
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。


<♂アコライト>
現在地:G-6→?
所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品)
外見:公式通り
備考:支援型
状態:ジルタスの死のショックにより内面に変化? ♂ハンターを追う


<淫徒プリ>
現在地:G-6→?
所持品:女装用変身セット一式 青箱1
外見:女性プリーストの姿 美人
備考:策略家。Int>Dexの支援型
状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。♂ハンターを追う。


<♀ケミ>
現在地:G-6→?
所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品)
外見:絶世の美女
備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪
状態:軽度の火傷。♂ハンターを追う。


<♀BS>
現在地:G-6→?
所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品)
外見:むちむち。カートはない
備考:ボス、筋肉娘
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。♂ハンターを追う。


<♂スパノビ>
現在地:G-6→?
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。♂ハンターを追う。
128名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 16:37:45 ID:ohcZ131U
というわけで♀BSパーティが♂ハンターの接近をあっさり許してしまった理由を考えてみたゾ、と。
絶世の美女兼知略家の♀アルケミストといえどイライラが頂点に達したら白昼夢に逃げるしかなくなるみたいです。

>>125
>気分は冴え渡り、九回の裏。守備投手は守る事よりも目の前のそれを叩きのめす事に専念する。

ここの文章だけ読んでてずっこけそうになった。
ルーンミッドガッツに野球あるんかいw


>>126
アサシンギルドが正義ギルドとして暴走しない程度には気をつけないといけませんね。

♀ノビにはバトROワみどころのひとつ、弱者がどのようにして生き延びるのかを期待しているので、
♂アサシンの遺志がどうこうとかで正義に目覚めて突然強くなったりさえしなければ、いいかなと。
129名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 18:15:05 ID:wQOZS48k
また今更感があり悪いが、何で淫徒プリPTのやつらはF-6とG-6付近を往復してるんだ・・・
130名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 18:38:32 ID:ohcZ131U
>>129
もともと淫徒プリは東へ行こうとしていた
F-6→G-6

ここで♀ケミに出会い、一旦♂ローグを避けるため西へ戻るよう説得される
G-6→F-6

♀BSパーティとはF-6で出会う

ここで一夜を明かし朝にvs♂剣士 一夜明けたのであらためて東へ(なぜ東に向かったのかはいまのところ不明)
F-6→G-6

♂アコ・ジルタス・ホルグレンを発見する

という流れでいいんじゃないかと思う。
131104sage :2006/02/14(火) 18:58:21 ID:MuNdYJVE
本当だw
138話のキャラ欄のところに東に進路をとると書いてあったからその通りに動かしちゃったんですが、
淫徒プリと♀ケミのふたりはG-6から来て、F-6で♀BSたちに出会ってますね。
確かに動きがおかしい(;´Д`)
132名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 19:10:01 ID:MuNdYJVE
っと、リロードしろ自分。
♂ローグが東にいたのは1日目の夜で、かなりの時間が経ってるから
彼も移動しているだろうと考えた…ってのは甘いだろうかorz
わざわざ東に向かうこともないもんな。難しい。
133名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 21:52:26 ID:rrbhRL.M
しばらく見ていなかった隙にかなり展開が進んでいて、背筋に鳥肌が。
グラサンモンクも、♂ハンターも、♀アルケミも頑張れよっ…とあげ連ねながら指折り数えてみましたが、
後半に差し掛かったなと感じてはいるものの結構人数残ってますね。
今のところ、ペア…は戦術次第かもしれませんが、トリオ以上を力でねじ伏せられるマーダラーはいないので、内部崩壊や混乱による分断ですかね。それも燃える。

ふぁると、♀ハンタじゃなくて♂ハンタが出会ったらどうなるのかなー、と思いましたが…位置的にちょっと難しいですかね。
♂ハンタは♀ハンタ関係の情報は持ってないわけですし、会ったとしてもツンデレふぁるはついていかなさそう…。(っていうか♂ハンタじゃふぁると会話できない!)
134名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 21:56:56 ID:dl6hMHoE
単純に138話の人がホルグレンとの父娘ドラマに持っていきたかっただけではないの?
135名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/14(火) 22:00:46 ID:dl6hMHoE
あ、>>134>>130の「東に進路を取った理由」についてね。
ってそんなことはわりかしどうでもよくて納得の行く理由を探してるとこだったら、すまそ。
136名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/15(水) 09:28:38 ID:sY.XvLvM
ぎゃー、ジルタスの鞭ってグラサンモンクが持っていったのかー!

新規テスト文書.txtを削除しますか? [[はい]] [いいえ]
137名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/15(水) 10:45:42 ID:SMivk0uU
>>136
つ [NGでも投稿する]
138名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/15(水) 20:59:26 ID:Xuy4.S.k
今のところ人数減らせそうなのは誰だろう。
○マーダラー
♂ローグ ♂クルセ ♂WIZ グラリス(はもう微妙か)
○マーダラー候補
♀アチャ(ミストレス混入)淫徒プリ ♀ケミ グラサンモンク(PKK?)
こんな所?

元WIZぽんスレ住人としては淫徒プリに頑張って欲しい!
一番好きなのは+激しく忍者+ですが…。
139名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/16(木) 00:39:17 ID:eTBQ0gDw
160 沈む心 [午後(雨の降り出す前)]


どうして。
♂アコライトの思考はただひとつの言葉で支配されていた。
蟲に襲われたところで記憶が途切れ。
それから目を覚ました彼がはじめに見たものは血に塗れた彼の従者であった。

どうして、どうして貴女が死ななければならないんですか。
貴女は僕の傍にずっといてくれるんじゃなかったんですか。
ジルタスさん。貴女は。あなたは……

初めて会ったときはひたすら恥ずかしかった。
色事に今まで縁がなかったものだから、彼女にどう接すればいいのかもわからなかったし、目のやり場にも困った。
しかし殺しあわなければいけないという極限の状況で、彼の精神を支えていたのは彼女だった。
♂ローグに襲われたときに、彼女が身を挺して彼を守ってくれた時から、彼自身もそれを実感するようになっていた。
だからはぐれてしまってからも、彼女との合流を願っていたのだ。
だが、再び♂アコライトが彼女を見たときにはすでに――

お願いです、ジルタスさん。起きてください。
僕がこれまでどれほど貴女に救われてきたか。どれだけ貴女が大切な存在だったか――今頃になって気づいたんです。
だからもう一度、僕をご主人様と呼んで、笑顔を見せてほしいんです。もう恥ずかしがったりなんかしませんから。

震える手で♂アコライトはジルタスの仮面に手をかけた。
仮面を取った彼女の顔は初めて見たが、とても美しいと♂アコライトは思った。
もっとも、その素顔で微笑んでくれる日はもう永遠にこないのだけれども。

しばらく呆然としていた♂アコライトが、♂ハンターと淫徒プリの会話に気がついたのは果たして運命なのだろうか。
彼は今まで二人の存在にすら気づいていなかったというのに。

吸い寄せられるように二人に近づく。気取られないぎりぎりの位置で彼は立ち止まった。
ジルタスの傷が蟲によるものではない。それを聞いた瞬間、彼の体を戦慄が走った。
ならば誰がやったのか。一言も聞き逃すこともしたくない。♂アコライトは神経を耳に集中させた。
――あの潰れるような傷の付き方は、おそらくモンクの拳によるものでしょう。
淫徒プリのその言葉が、彼の耳を、脳を雷光のように貫いた。
♂アコライトの思考が沈んでいく。
今までとは真逆に、それ以後の会話がまるで聞こえなくなるまでに――泥に飲まれたかのようにただ深く。

モンクが、モンクの奴が貴女を殺したんですね、ジルタスさん。
あいつら、神罰の代行者なんて言ってるけど口ばっかりだ。だって何も悪くない貴女を殺したんですから。
ああ、貴女を殺した罪深い奴なんか、地獄に落ちてしまえばいいのに。
ジルタスさんを殺しておいてのうのうと生きるそいつが憎い。憎い憎い憎い。

心の中で叫ぶ。自分の黒い感情に気づいたとき、彼の思考が凍りつく。
それが♂アコライトが以前の彼であった最後の瞬間だった。

そうだ……僕がそいつを殺せばいいんですよね。ふふ、こんなことに気づかなかったなんてどうかしてました。
そいつには、ジルタスさんの何十倍もの痛みと苦しみを与えてやります。そして最後は、僕の手で地獄に落とす。
そう、罪人は地獄に落ちて、煉獄の炎に焼かれる苦しみを永遠に味わえばいいんです。
神は復讐をお許しにはならないでしょうが、それでもいい。僕は結局は神の僕ではなく、人間なのですから。

どこかある意味では純粋な♂アコライトの思考。
だがその危険性は、暗い影となって彼の表情に表れる。
彼の瞳に宿る妖しい光を感じ取った淫徒プリは微かな寒気すら覚え、彼を視線で追う。
♂アコライトはジルタスのもとに戻っただけで何をするわけでもなかったのだが。
慟哭していた先ほどとは一転して、穏やかな表情でジルタスの傍に座る♂アコライトに、淫徒プリは底知れぬ不安を感じていた。

土葬の前に、ホルグレンから少し離れた場所に転がっていたメイスを手に取った彼を、誰も咎めようとはしなかった。
♀BSはそれに気づくことができるほど冷静ではなかったし、♂スパノビは咎めるようなことはしない。
♀アルケミストは自分の策略に思考を巡らせていた。
もし気づいたとしても彼女であれば、ただでさえ貧弱なのだから武器くらい持って少しはましになればいい、と思っただろう。
淫徒プリは微かな不安を覚えてはいたのだが、彼は♂アコライトの暗黒面が自分達に牙を剥くことはないだろうと考えていた。

♂ハンターを追うと決まったときに、♂アコライトは微かな笑みを浮かべた。
♂ハンターはジルタスを殺害した人間を追いにいったのだろうとは、彼も薄々感じていたからだ。

ジルタスさん、見ていますか? 僕、これから貴女を殺した奴を探しにいくんです。
途中で邪魔をされなければいいのだけれど。まぁ、邪魔をするような奴も死んでしまえばいいと思います。
貴女を殺したやつを見つけたら、目いっぱいの苦しみを与えてやりますね。ふふふ……楽しみだなぁ。
僕にもできますよね? ジルタスさん。――いえ、やってみせます。
僕、頑張りますから。どうか見守っていてくださいね。

少年は闇に堕ちた。皮肉にも彼を守ろうとした男が、彼を狂わせてしまったのだ。
それは♂アコライトのうかがい知れぬ、守りたいと思う心の衝突により生じた悲しい運命。
ジルタスとグラサンモンクの間で起きた誤解――それを知らない♂アコライトの心は、ただ闇に沈む。


<♂ハンター>
現在地:G-6→?
所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢
外見:マジデフォ金髪
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。

<♂アコライト>
現在地:G-6→?
所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) メイス
外見:公式通り
備考:支援型
状態:ジルタスの死のショックにより狂気を帯びる。♂ハンターを追う。

<淫徒プリ>
現在地:G-6→?
所持品:女装用変身セット一式 青箱1
外見:女性プリーストの姿 美人
備考:策略家。Int>Dexの支援型
状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。♂ハンターを追う。

<♀ケミ>
現在地:G-6→?
所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品)
外見:絶世の美女
備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪
状態:軽度の火傷。♂ハンターを追う。

<♀BS>
現在地:G-6→?
所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品)
外見:むちむち。カートはない
備考:ボス、筋肉娘
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。♂ハンターを追う。

<♂スパノビ>
現在地:G-6→?
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。♂ハンターを追う。
140139sage :2006/02/16(木) 00:45:21 ID:eTBQ0gDw
アコきゅん狂乱編。まずかっただろうか(;´Д`)
てか読み返してみたら、ホルグレンのメイスって元は♂アコのものだったんじゃないか。あの親父はw
時間軸は127さんの♀ケミの話と同じくらいです。

しかし……ここ数回での♂ハンターPTの急激な崩壊っぷりがなんか印象的だ。
彼らに限らず、今のところ女性の犠牲者が多いですね。

>>127
♀ケミさん悪女すぎて素敵だなあ。つくづく男性に恵まれないのが悲しいですが。
でもこれから大暴れしてくれそうでドキドキ。
141名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 00:09:07 ID:e4qpe3QE
さて、ss書くのが面倒なので久しぶりのキャラ寸評いってみよー
なお、この寸評は筆者の主観に基づいているため、イメージが異なっていても石を投げないでください

♂スパノビ
 ヘルファイアを携えた♂剣士との一戦で重傷を負った彼。かろうじて一命を取り留めるものの…うん、出番が少ない。
♂マジ
 BR黙示録マジ。♀マジを殺害しようとするものの思いとどまり、それが元で彼女とはぐれる。
 パーティ?…そんなもの、はじめからなかったんだ!幻想、幻想、…まさしく幻想!ざわ・・・ざわ・・・
♂アコ
 お姉さまに振り回される子犬系。だったのだけど、お姉さまの死に様を前にダークサイドに覚醒する。黒あこきゅん降臨!
♂シーフ
 グラリスに不意を打たれて初めて即死しなかった人。自分の失策で色々と不味い状況を作っちゃった彼、常識人らしいが今後どう動くか注目の的である。

♀ノービス
 年下系ロリータ。愛する…ちがった、保護者である♂アサを失って♂ロリコンWizに付けねらわれる彼女はモルモットかハムスターかはたまたヴォーパルラットか。今度の動向から目が離せない。
♀スパノビ
 しっかり系ロリータ。♀ハンターの信頼も得て士気は高い。でも出番がないよね。
♀マジ
 まな板系ボクっ子。♂マジを治療出来る人を探して独り彷徨う彼女に明日はあるのか?
♀アコ
 方向音痴の殴りアコ。禁止区域を突っ切るという暴挙を成し遂げた彼女。あるいみバトロワの歴史に残る偉業ではなかろうか。
♀商人
 得体の知れない(笑)♂セージにほのかな恋心を抱く彼女、それは吊り橋効果だと思うぞ?ところで、彼女が戦闘型だってことを忘れていた人、先生怒らないから手を上げなさい。

♂騎士
 バラの花を背負う男(力の)一号。♂ケミにとっつかまって無理矢理そっちに目覚める?
♂WIZ
 愛する人の復活をもくろみ人体実験の被験者を探す男。ついに♂アサシンを軍門に下しロリコン二代目を襲名…ちがう、マーダーへの階段を駆け上がる!マッド?ロリコン?なんとでも言え!
♂ハンター
 GoodByMyPrincessで♀アチャを失いミストレスを追うと決めた彼。彼の復讐は果たされるのか、請うご期待!
♂プリ
 逆毛に修道女のベールをかぶる殴りプリ。ソードブレイカーに恨まれていそうな人その1。
♂クルセ
 鉄壁の、なんてあだ名を付けたくなるような完璧な防御っぷりが目立つマーダー三本槍の一本。星こそ挙げていないものの膝を折らせた相手の数は結構多い。
♂セージ
 ソードブレイカーに恨まれていそうな人その2。♀商人から好意を寄せられているようだが、果たして彼自身はどう思っていることやら。
♂モンク
 内心疑問を抱きながらも♀騎士と一緒に♂クルセを助けた彼。その姿を見て思ったこと。もう尻にしかれて…(ry
♂ローグ
 快楽殺人狂。やった数は少ないが、そのエキセントリックな言動は見るものの目を飽きさせない。そんな彼でも空をゆく鳥には煮え湯を飲まされたようだ。
♂ケミ
 バラの花を背負う男(技の)二号。愛する♀クルセを目の前で失いそっちに目覚める?

♀騎士
 ♂クルセを助ける選択をした彼女。その判断が今後のBRにどんな影響を与えるのか、そのことを彼女が知ることが出来るのか。興味津々である。
♀WIZ
 未亡人。前作GMとのクロスオーバーを体現した彼女、それでもこのBRを打ち壊す手段には欠けている。というか早く筆記具を!
♀ハンター
 ついに♀スパノビと信頼関係(スールの契り)を結んだ彼女。ふぁるとの再会が成れば一気に戦闘力が跳ね上がる!
♀BS
 マッスルボディのクホルグレンの娘。オヤジの凄惨な死に様に茫然自失中。子分の前でそんな姿見せてていいのかい?
♀ケミ
 クールな悪女。出会う男をほぼ取り逃している彼女、女ばっかりが集まってくる彼女。不運に不運はかさなるものである。それでも彼女は弱みを見せない。

番外
グラサンモンク
 誤解からジルタスを殺め、♂クルセにぼこられた彼。黒あこきゅんと♂ハンターの標的となっている彼。そして、首輪解除の鍵を握るとして悪ケミと忍者からも追われる彼。…本人の意に反して結構人気者だな。
忍者
 ある意味伝説のアサシン。悪ケミの下僕(したぼく)として活躍が期待される。
淫徒プリ
 ♀BSと愉快な仲間たちにあって一番の切れ者の彼。痴れ者としての本領を発揮するのはいつのことか期待しているのは私だけはない…と思う。

グラリス
 ついに♀商人に見えたグラリス。Wの不在疑惑に鋼鉄の意志にもヒビが入る。10人切りの夢はかなうのか!本物のWはとらわれているのか!それは彼女のメガネをしても見通せない。
悪ケミ
 下僕(したぼく)忍者を連れて文句を探す彼女。首輪の仕掛けを見破ったのはさすが悪の親玉である。
ミストレス
 本体を取り戻した女王蜂。GMジョーカーに復讐をたくらむものの手段はあるのか?ギオペ様はもういないぞ?
 だが、筆者はそれ以上に♀アチャの今一度の覚醒を請い願う!
142名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/17(金) 01:22:13 ID:TLlhY2Rk
なんだか、マーダラーはソロで、まっとうな人達はPTになっちゃってますね。
これでは、戦いを挑むこと自体がむずかしいですね。
マーダラーに協定をどうにか組んでもらうしかないのかなあ。
それ以外だと、まっとうな人達の自滅待ちなっちゃいますよね。

グラリスのようにPTから孤立した人を各個撃破ってもの、ありだと思いますが、
下手すると、グラリスのように合流されて、打ちのめされてしまいますし。
難しいですね。
143名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 09:46:59 ID:IySth4rY
>>142
「5日目の朝がくれば、どうせ全員死んでしまうという状況で、残り2日ともなればPTの結束など、放っておいても瓦解する。
 だから今はPTを組んでいる連中と殺し合う必要などない。殺せる相手だけしっかりと殺して、3日目を待てば良いのさ」
と♂クルセイダーは胸中で考えている。

「弱ェやつらがいくら組んだところで、怖かねぇぜ。本当に怖ェのはPTの中で裏切るタイミングを虎視眈々と見計らってっるヤツだ。
 そんな連中腹にかかえるくれぇなら、ひとりで殺しを続けた方がマシだぁな」
と♂ローグはPTを皮肉った。

「そんな悠長なことを言っている時間などないのです。こうしている間にもWが。Wが殺されてしまうかもしれない。
 あぁW。私が、私が必ず救います。あと6人の遺体をそえて貴女を迎えに行きますから。どうかそれまで生きていて───」
グラリスはそうやって祈ることしかできない。

なんて感じになってるのではないかと妄想。
実際、トリオ以上で結束力のあるPTなんて未亡人'sくらいしかありませんしね。
その未亡人だって、大臣からの情報を話せずに秘めているわけですから結束が強固であるとはいえないですしね。


で、104話Lunaticを見返して気付いたんですが

>しかしそんなことを話す訳にもいかず、私は要領の得ない説明になり、結果的に友人の中では酒で失敗して
>行きずりの男と寝てしまったという結論に達したようだった。
>「手段については、俺に任せてもらう……ちょうどいいのがギルドに今あるからな」

というくだりで♀WIZの友人は大臣と寝た女がモロクで死んでいたことにしてアリバイ工作をしたことになっています。
これってつまり♀WIZの友人(♂アサシン?)はBR情報とかとは関係なく単に友人の失態を隠すために遺体を用意したってことですよね。
となると、157.相容れぬ殺戮でのアサシンギルドマスターは、♂アサシンの行動がBRと関連性があったことについて、本当に知らないということになって、
潔白なのに連行されていることに(涙)
144名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 16:01:47 ID:v6shhU3M
で、時に>>143氏、そんな各マーダー達の胸中を話の中に入れて
み ま せ ん か、と。

クレクレ厨ですまんが、実際に文章で見てみたくもあります。
後、そろそろ制限時間の問題とかで、動きが見えればいいなー、とか。
ジョーカーと絡めつつ、精神不安の人々を破滅へ導いていきましょう。
もちろん、脱出画策の人たちの動きにも期待だけど。

>>潔白なのに連行
まぁ、こういう題材には冤罪もつき物かと思われます。
癌呆よろしく免罪BRですね。うん。
145名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 16:04:10 ID:IySth4rY
161.忘れ去られた男 [雨の降り出す前]

「うーん、おかしいな。全然誰にも会えないよ」

少女がひとり、首をかしげながら丘の上を歩いていた。
身に着けている服はマジシャンの衣装である。
しかし、おしげもなく肌を露出させるマジシャンの衣装に反し、少女のからだはひかえめである。
『まったいら』という表現こそかろうじて避けられるものの、少年が女装しているように見えなくもないほどであった。

あれからどれくらいの時間がたったのだろうか。
♂マジシャンの怪我に動揺し、走り出した少女は、誰とも会うことができないままに時間だけを費やしたことで、いまや落ち着いていた。
あわててひとりになってしまったことは軽率だったかな、なんて思いながらも、はぐれてしまった♂マジシャンと再会することすらできず、
しかたなしに少女はひとりで丘の上を歩いていたのである。

それにしても♀マジシャンにとって、この状況は良くない。
まずなにより、ひとりであり続けることが良くない。
このゲームでひとりで居るということは、殺してくれと言っているようなものなのである。

もし♂ローグなどが彼女を見つけたとすれば、
「バカな嬢ちゃんもいたもんだなぁ、おい」と言って包丁片手にうすら笑いを浮かべて、♀マジシャンを殺害したことであろう。
さいわいにも、♂ローグはバカではない鷲と戦っていたため、この場にはいないのであるが。

そしてさらに良くないのが、殺人鬼ではない誰かと会った場合に、逆にこちらが殺人鬼だと思われてしまうことである。
すでに2日目である。生き残っている人間で、正常な思考の持ち主ならば、普通は出会った誰かと協力体制をとっていることであろう。
事実、♀マジシャンも今朝までは♂マジシャンと一緒に行動していたのだ。

「まいったなぁ。アイツにもう一度会えればいいんだけどな」

そうこぼした♀マジシャンの脳裏には♂マジシャンの顔が。そしてもうひとり別の男の顔がちらつく。
♂マジシャンと出会う前にすこしだけ行動をともにした、不健康そうな顔色をした、ウィザードの男である。

「なんで、あんなにまっすぐでいられるんだろう」

少女は♂ウィザードの目を思い出す。そこしれぬ感情をたたえた瞳が、少女には忘れられないのだ。
どれだけの人間を敵に回しても、なにかをなしとげようとする強い覚悟を感じたのだろう。
なにかを、ただひたすらになにかを追い求めているような、そしてそのためにはどのような苦難をもいとわない。
そんな錬鉄された刀身のような意思を、少女は♂ウィザードに感じたのだ。

だからこそ、少女は♂ウィザードのことが気にかかるのである。
するどく鍛え上げられた刀というものは、予期せぬ方向からの力には逆に、ひどくもろいものなのだから。

「なんにしたって、ボクひとりでいちゃダメだ。ひとりじゃ彼をとめることもできないし、自分を守ることだってあやしい」

♀マジシャンはそう思うと、地図を取り出して、現在地を確認する。場所は禁止区域であるD-7にほど近いD-6であった。

「これ以上南に進むと・・・死んじゃうんだよ、ね」

不安が思わず口に出た。少女が遠めに見る禁止区域は、一見なんの変哲もない普通の森であった。
ところがである。

「ワンワンッ」
「やったぁ。森を抜けたわよ。偉い偉い」

その禁止区域と思われる方向から、アコライトの法衣を着た少女と一匹の子犬が、平和な会話をしながら歩き出てきたのである。
これには異端学派の魔法使いである♀マジシャンも目を白黒させた。開いた口もふさがらなかった。

「ちょ、ちょっと、キミ。どんな魔法を使ったのさ」

大慌てで少女と話ができるところまで近づくと、警戒心も忘れて少女にそう質問した。

一方少女は突然走り寄ってきた♀マジシャンに気付くや、子デザートウルフを自分の後ろに下がらせて、
左足を一歩前へ、格闘術に向いているとされる半身の構えを取って、両の拳を胸の高さで軽く握った。
口ずさむ歌は、速度増加とブレッシングとなって、たちどころに少女のからだに神の力をみなぎらせる。
少女は左腕を軽く下げ、下げた腕で一定のリズムを取りはじめる。

「やるっていうなら相手になるわよっ」
「ま、待ってよ。まずボクの話を聞いてよ」

今にも襲いかかってきそうな少女の様子に、♀マジシャンは両手を広げ、ダンサーのスクリームのようなポーズで少女を制する。
そのまま自分が敵意を持っていないことを説明し、さらに少女と子犬が禁止区域からやってきたことも教え、少女の回答を待った。

「え・・・嘘でしょ。だってあたし、別になにもしてないわよ。普通に歩いてきたんだもん」
「そんなはずないよ。ほらこれ見てよ、この地図のここのところ」

そう言って♀マジシャンは♀アコライトに地図を見せて示す。
自分たちがいまいる場所がD-6のここで、彼女たちがやってきた方向がD-7であることを。

「もしかしてキミの首輪、壊れてるんじゃない?」
「そうなのかな。それならすごく嬉しいんだけど」
「ためしにもう一回、あの森まで行ってみる? ボクはぎりぎりで待たせてもらうけど」
「わ、わかったわ。いくわよ」

ふたりと一匹が森の入り口まで近づいていく。しかしD-7に入る直前に、その音は聞こえた。

ピッピ ピッピ

ふたりと一匹にとって聞きなれない音がどこからか鳴りはじめたのである。
はっとして顔を見合わせるふたりの少女は、耳を澄まして音源を探った。
音は♀マジシャンの首から発せられていた。

「ボクのだけ、鳴ってる。たぶんこれ、危険だぞって意味だよね」
「そう思うわ。それじゃやっぱりあたしの首輪が壊れてるってことなのかな」

ふたりはお互いに眉をひそめ、同時に首をかしげた。

「それにしてもキミは禁止区域を突っ切ってくるなんて正気なの? 地図が読めないわけ?」

ふいに思い出したように♀マジシャンが口開いた。当然の指摘に♀アコライトと子デザートウルフは肩を落とし、うなだれる。
しばらく沈黙が続き、重い空気が流れ始めた。
それからさらにしばらく沈黙が続き───

「だって、地図なくしちゃったんだもん。それにあたし、それからこの子も・・・方向音痴なのよ」

気まずそうな顔をして、ぼそぼそと事の詳細を小さな声で喋る♀アコライトの様子がおかしかったのか、♀マジシャンはぷっとふき出して笑った。

「うぐっ・・・だから言いたくなかったのよ」
「神の遣いのアコライトが地図を読めない。うくくっ。あはは」

笑われた♀アコライトはよほど恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして、少し目を涙でうるませて、♀マジシャンを見る。
「そんなに笑わなくてもいいじゃない」と目でうったえているのである。

「でもそれじゃ、自分の位置がわからなくて困るよね。良かったらボクと一緒にいかない?」

うったえに負けたのかどうかはわからなかったが、♀マジシャンの誘いに、
♀アコライトは子デザートウルフを抱きかかえ、顔を見合わせてなにやらぶつぶつと相談をし始める。
そして、相談が終わったのか、彼女はかかえていた子デザートウルフをおろし、♀マジシャンに向き直った。

「わかったわ、一緒に行きましょ。でもひとつだけお願いがあるんだけどいい?」

こくりと頷く♀マジシャンを見て、♀アコライトは言葉を続ける。

「D-8にあたしの荷物があるはずなのよ。そこまで連れていってくれない?
 あたしの食料も、この子の食料も、ぜんぶそこに置いてきちゃってるのよ」

こうしてふたりと一匹は、♀アコライトの荷物を回収するために、D-8を目指して歩きはじめたのである。
歩きはじめる前に、♀マジシャンが持っていた食料の一部を、よだれを垂らしながら見つめた♀アコライトと子デザートウルフに、
♀マジシャンが食料を分け与えざるをえなかったことは、言うまでもないことであった。


<♀アコライト&子犬>
現在位置:D-6
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 自分の首輪が危険区域で爆発しないことを知る(首輪が壊れていると思っている)
   ♀マジとともにD-8へ
状態:体力ほぼ回復


<♀マジ>
現在位置:D-6
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。♀アコとともにD-8へ。
   ♂マジを治療できる人を探すことはすっかり忘れている。 褐色の髪(ボブっぽいショート)
146名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 16:24:55 ID:IySth4rY
殺伐としたシナリオが続いたので息抜きのために少し軽めのお話を投入。
次々とパートナーを変えていく♀マジシャンが素敵。

>>139
仇をうちたい、でもジルタスさんはそんなことを望んでないかもしれない、そんな光と闇の狭間で揺れるのかなと思っていたら
あっさりダークサイドに落ちましたね。
はたして力なき支援アコライトは復讐をとげられるのだろうか。
>ただでさえ貧弱なのだから武器くらい持って少しはましになればいい な♀ケミにときめいてしまう私です。

>>141
♂クルセさんは♀ローグで星を拾ってますぜ。あまりにもローグらしくなかったから忘れられてるけもしれないけど。
でも♀商人さんが戦闘型なんてことは、きれいさっぱり忘れてましたので人のことはいえません・・・

>>144
そう言ってもらえると嬉しくもありますので、そのへんのお話は2日目夜の定時放送あたりで書いてみたいですね。
もちろん、書けるような展開になっていて、書ける機会があれば、という条件が必要ですけど。

>>癌呆よろしく免罪BR
春のBAN祭りふいた。
147名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 17:59:03 ID:Upk4ygdg
162.野良犬の往く先[二日目午後(雨の降り出す前)]


しくじった――
全身を苛む雷撃の痺れと背中を走る痛みよりも、仲間の存在に気付けなかった己の凡ミスが口惜しくて、ひび割れた眼鏡の裏でグラリスは涙を零していた。
(なんて……なんてこと……)
細かい裂傷だらけの身体は、関節のあちこちから油の切れた機械のように軋みをあげている。一歩進むごとに全身が焼けた鉛を流し込まれたみたいに痛みと重さを増してゆく。
増してくる身体の重さに比例して、意識にも段々と靄がかかる。恋人の抱擁めいた優しい睡魔に、疲労の溜まった膝が勝手に屈しそうになった。
(寝るなっ。シャンとしなさいっ!)
強く唇を噛み、グラリスは睡夢の園に堕ちかけた意識を強引に引きずり上げた。口内にじわりとにじむ血が粘っこい唾と混ぜ合わさって喉に絡み付く。熱を帯びた肺が野良犬みたいに荒く掠れた息を吐いた。
(……野良犬か。今の私に相応しい姿ですね)
自嘲を浮かべようとしたが、頬肉がユピテルサンダーを連続で受けた後遺症か上手く動かせない。
かわりに死霊(レイス)の衣擦れみたいな音がひび割れた唇から漏れた。
(あれはWでは……なかった……)
彼女が妹と思い込んでいたのは、髪形も年格好も良く似た――けれど決定的に異なる容貌の――商人の少女だった。
(つまり私は……まったくの他人を見て動じたわけか……)
そして冷静さを欠いた結果が、この姿だ。戦利品を入れた鞄を失い、切り札とも言えたメイルオブリーディングは度重なる魔術による打撃でひしゃげ、防具どころか拘束具同然だった。留め金を切って外さなければ、ここまで逃げ延びることが出来ただろうか。
(彼らが徒党を組んでいたのは幸いだった……)
例外もあるだろうが、優勝者以外の生存者を認めないこのゲームで、徒党を組むことは暗に『我々はゲームに乗ってません』と言っているようなものだ。
そんな連中がこちらを追い掛けてくるとは考え難く、また手負いが故の反撃や罠を恐れて追撃を仕掛けてくる確率は低い。
(早く……どこかに身を隠さないと……)
それでも万が一ということもあるし、他のゲームに積極的な参加者が彼女を見つけないとも限らない。
今のグラリスは虎の檻に放り込まれた四肢のない兎も同然。安全な隠れ家を探しだして傷の回復を――
(駄目よ。そんな時間、私には残されてない……っ!)
あと6人。6人なのだ。
それだけ殺せばWを助けられるのに、無駄に時間を浪費すればそれだけWの生き残れる確率が減っていく。いつWの名を、あの糞悪趣味なピエロが読みあげるのではないかと、定時放送の度に彼女は神経を擦り減らした。もしも名前が読み上げられたなら、発狂するのは間違いない。
それでも、放送に彼女の名が挙がらないことだけがグラリスの心に僅かな希望を燈していた。

――それもさっきまでの話だ。

(本当に……この島にWはいるの……?)
沸き上がる黒い疑念。混濁しかけた意識に浮かび上がる疑問。
Wと同じ髪型の少女を見たことが、彼女の希望を揺るがせていた。
(私は、あの広間でWの姿を見ていない……見えていたら何が何でも側に行く……)
憎まれていても、血が繋がってなくても、グラリスにとって最愛の妹の一人だ。少しでも姿を見たなら、ほんの数秒でも手をつないで励ましてやるくらいはしただろう。
だが、参加者たちが一堂に集められたあの場所で、グラリスはWの姿を見つけることが出来なかったのは紛れもない事実だ。
(……いいえ。姿が見えなかったことなど、どうとでも説明がつきますわ)
怯えてうずくまっていたとか、背の低い彼女のことだから人ごみに紛れて見えなかっただけだとか。
(だから、Wが最初から参加していないなんてあるわけないでしょう!)
胸中をドス黒く染める疑念を感情的に叩き潰す一方で、それは溺者が掴む藁のごとき希望だと、グラリスの中の冷静な部分が指摘する。考えてみればいい。GMジョーカーは特赦などと抜かしていたが、そんな特例をこの国の女王が許すだろうか。皆殺しを推奨するこのゲームを生み出したあの女が。
そもそも、あの道化に参加を強制され、この島に連れてこられるまで、グラリスは一度もWの顔を見ていない。
(うるさい……っ!)
グラリスは論理的に暴走する理性のベクトルを感情でねじ伏せた。
保証は無くても道化は『10人殺せばWを見逃す』と言ったではないか。助ける手だてがご丁寧にも提示されているのに、それを疑ってWを助けられなかったら、どうするというのだ。
(それに今更、私は立ち止まれないのですから)
既に己が手を血に染めても愛しい妹を救う道を選んだのだ。もはや、立ち止まることも退くことも叶わぬ。この屍山血河をただ突き進むのみ。
満身創痍だろうと、手足が千切れようと厭わない。出会った奴は必ず殺すだけ。
(問題などない。ただ、私は、Wを救うために、あと6人殺せばいいだけのこと……)
止まりかけた両足に喝を入れ、グラリスは再び歩き始め――見覚えある浜辺まで逃げてきたことに、ようやく気がついた。
「ここは……G−3?」
見覚えのある漁師小屋の前――砂地を汚した血色の足跡は、もちろんグラリスのものだ――で立ち止まり、迷う事なく中に滑り込む。
危険とは考えなかった。
自分がつけた足跡は消えずに残っていたし、新しく増えた形跡も無い。ローグやアサシンといった隠密スキルに長けた何者かが入り込んでいないとも限らなかったが、いかにも『中に死体があります』と言いたげな血みどろの小屋で待ち伏せする意味があるだろうか。
そもそも、殺す側なら待ち伏せするより歩き回った方が効率がいい。
「……お久しぶりですね。その後のお加減はいかがです?」
グラリスの予想通り、先客はただ一人。粗末な土間の上で倒れ伏した首のない女に、彼女は親しげに片手を挙げた。
部屋の奥に転がっていた頭を拾い上げ、恐怖と驚愕に固まったままの♀モンクに優しく微笑む。
「こんなことを貴女に頼むのは心苦しいのですけど、ちょっと協力してくださいね」

 * * *

――応急治療というスキルは、今でこそ多くの冒険者たちに知られているが、元々は治癒魔法を持たない一兵卒たちが、物資の少ない戦場で傷を治療するために開発された技術であり、冒険者に公開されているものはそれの初歩に過ぎない。
小屋の奥から煙草とマッチ、それに古ぼけたランタンを見つけだしたグラリスは壁にかけられた網から比較的綺麗な釣り針をむしり取った。
「……私は運がいい」
壁にマッチを擦りつけると、ボッと音を立ててリンが燃えた。長いこと放置されていたマッチが湿気ってなかったのは、やはり運がいい。直ぐさまランタンに火を移し、灯った炎で釣り針を慎重に炙りながら腰近くまで届く自慢の髪の毛を一本引き抜いた。炙って熱を帯びた釣り針に髪を結び、グラリスは床に散乱した♀モンクの支給品から赤ポーションを拾い上げた。
グラリスは雷撃で煤臭くなったカプラサービスの制服を脱いで、左脇腹の抉られた傷に赤ポーションの中身をぶちまけた。
「んぅ――っ!」
染み入る疼痛が、グラリスに声を上げさせた。脊髄を駆け上って脳を揺する痛みが意識を無理矢理クリアに磨き上げ、休息を欲していた肉体を引きずり起こす。
「こ……こんな……い……痛みなんて……ぅあ……こんな、の……っ!」
Wが味わっている恐怖や苦痛に比べたらなんてことない――喉から込上げる喘ぎを強引に奥歯で噛み潰し、グラリスは針を傷口に押し付けた。

* * *

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
手の届く範囲の傷をすべて縫い終えたグラリスは、壁にもたれたままランタンの灯りで薄っすらと浮かび上がる屋根の梁を眺めていた。
息は荒かったが、思考は非常に透き通っていた。先ほどまでの靄がわずかにも見当たらないほどに。
(……大丈夫。裂傷は全部塞いだ。打撲はあっても致命的な骨折はありませんし、電撃による火傷もそれほどひどくはない。あとは流しすぎた血をどうにかするだけ――)
軋む身体に鞭を打って、グラリスは立ち上がった。どうにかするアテはある。ただ、それを実行するか否かは――馬鹿馬鹿しい。いまさら何を言い出すのか。自分が選んだのは人の道じゃない。食いつくし、殺しあうケダモノの道程だ。
(ええ、まさに野良犬そのものですわね……)
自嘲を頬に浮かべてグラリスは得物のバスタードソードを杖に、ささくれた板壁を伝いながら入り口の首の無い死体の傍まで歩み寄った。
「……ご協力、感謝いたしますわ」
街先でカプラサービスを利用する者たちへ見せた微笑のままに、グラリスは♀モンクの死体に剣を突き立てた。

人体の中で血液を製造する唯一の臓器、肝臓を抉り取るために。


<グラリス>
現在位置:G-3(漁師小屋の中)
容姿:カプラ=グラリス
所持品:TBlバスタードソード 普通の矢筒
備考:メイルオブリーディングは破棄。
状態:裂傷等は治療済みだが、体力は赤ゲージ。
148名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/17(金) 17:59:45 ID:TKiaZqs6
>>145
♀アコは自分の荷物の場所を把握してませんよ

133 ミッシング・マップより
> 崖から落ちて・・・そうだ、あの崖は地図でいうとどのエリアに当たる場所だった?
>・・・・・・覚えてるはずがない。ただでさえ、人一倍方向感覚すっからかんなのに。
149147sage :2006/02/17(金) 18:06:50 ID:Upk4ygdg
結局、グラリス話を書いてしまった>>63-64です。
二週間待ってもグラリスのグの字も出なかったのでNG改訂で投下しました。

ちなみに、タイトルを『レバ刺し』にするかどうか迷ったのは、俺とみんなの秘密だぜw
150145sage :2006/02/17(金) 18:38:46 ID:IySth4rY
>>148
つっこみありがとう。うっかりしていたよ。

******以下修正******

「海岸沿いのどこかの崖に、あたしの荷物があるはずなのよ。一緒に探してくれない?
 あたしの食料も、この子の食料も、ぜんぶそこに置きっぱなしなのよ」

他の誰かが見つけて持っていっちゃったかもしれない。
♀マジシャンはそう思いながらも、♀アコライトが覚えていたわずかな情報と地図とを見比べ、地図上のC-7、C-8、D-8にあたりをつけた。
ここからそれほど離れていないことが、その場所を選んだ理由のひとつではあるが、
推測が違っていた場合にも、ある程度海岸線にそって歩くことで、♀アコライトが見覚えのある地形にでも出くわすのではないかと期待したのである。

そしてふたりと一匹は、♀アコライトの荷物を探すために、歩きはじめた。
歩きはじめる少し前に、♀マジシャンが軽くなにかを口にしておこうと荷袋から取り出した食料を、
よだれを垂らしながら見つめていた♀アコライトと子デザートウルフに分け与えざるをえなかったことは、言うまでもないことであった。

******修正終わり******
151139sage :2006/02/18(土) 00:10:38 ID:LhsN2gd2
>>146
仇を討ちたいけど、でも…な感情ですでに動いてる♂ハンターがいるので、
♂アコをそれと対照的な人物にしてもいいかなと思って書いちゃいました。
大人しい奴ほどキレると怖いって言いますし。でももう少し悩ませてもよかったかもですね。

パートナーを変えまくる♀マジも、方向音痴が極まってる♀アコもいい味出してますね。
♀アコ、やっと人間のパートナーと出会えてよかったね。忘れられた♂マジはカワイソスだけどw

>>147
痛みに耐えるグラリスさんがちょっとエr(ryとか思ったのは君と私との秘密だぞ。
これぞBR!って感じの殺伐さがすごく感じられてドキドキしました。
152名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/18(土) 05:10:08 ID:DcwXg4D.
自分でちょっと、NGって感じもしなくもないですが・・・。一応念のため。

163 強き想い

彼女は森の中を走っていた。時々、木の根に足を取られるが、なんとかバランスを保ち、
木々の間を走り抜けていく。彼女にはどうしても急がねばならない理由があった。


「歩きながらでいい、よく聞け。」
彼女は一瞬歩みを止めたが、すぐに歩き出した。そして、男の次の言葉を待つ。

「俺たちの後をつけている奴がいる。・・・、後ろは向くな、気づいていない振りをしろ。」
後ろを見てしまいそうな彼女を、男が鋭い口調で釘を刺す。

「奴の狙いを知る必要がある。あからさまな敵意は無いようだが、一定の距離を保ち続けているのが気に掛かる。俺たちが隙を作るのを待っているのかもしれん。」
「隙?」
男の推測に彼女は問いかける。
「ああ、例えば俺たちが離れ離れになる時や、このゲームに乗っている連中に遭遇したりする
時だな。そういった隙に付け込もうとしている可能性も考えられる。」
男はそう言うと立ち止まった。彼女も釣られて立ち止まる。
「どうかしたのですか?」
彼女が尋ねると、男は彼女の方に向きを変え、少し間をおいてから言った。
「・・・・・奴を捕らえよう。・・・あのクルセイダーを追うためには、不安要素を取り除く必要がある。」
「でも、どうやって捕らえるのですか?それなりに距離を空けて追ってきているのでしょう?」
「ああ、その通りだ。だが、距離を空けているからこそ、奴は俺たちに気づかれているとは、
思っていないだろう。もし気づいていたら、もっと離れるはずだからな。」
「なるほど、たしかにそうかもしれません。となると、追ってきている人に、気が付かれずに
近づく必要がありますね。」
彼女がそういうと、男は満足そうにうなずいた。
「その通りだ。距離を空けているがゆえに安心しているはずだ。そこを狙う。」
「どうやって近づきますか?」
彼女がそう尋ねると、男は前へと向きを変え、おもむろに歩き出す。彼女も弾かれたように後を追う。

「今みたいな立ち止まる会話を4,5回繰り返そう。そして、奴が焦れて注意力が散漫になったら、
俺が姿を隠して近づく。お前はその間、奴の注意を引き付けろ。」
歩きながら男が彼女に指示を出した。だが、彼女は疑問を返す。
「どうやって注意を引きますか?いくら注意力がなくなっても、あなたがいなくなれば、
どうやっても警戒されます。それでは私が何をしたところで、意味はありません。」
「たしかにな。俺が突然姿を消せば、どんな馬鹿でも警戒するだろう。
だが、初めから姿が見えない位置で会話をすれば、多少は誤魔化せる。」
男の提案に、しかし彼女は否定的だ。
「そうでしょうか?いくらなんでも、あなたが見えない位置にいれば、間違いなく警戒される
と思いますが・・・。」
男は「そうだな。」と短く答え、一呼吸してから、さらに続ける。
「初めてでその位置に行けば警戒されるだろう。だが、4回目5回目だったら、どうだろうか。
相手に『またか』と思わせられれば、疑われなくなる可能性は高くなる。」
男はそう言うと、ちらりと彼女を見た。彼女は男から言われたことを反芻し、「そうかもしれ
ませんね。」と答えた。

そうして、彼女たちは1時間近くゆっくり移動し、その間に布石とも言える立ち話を4回行った。
そして、ちょうど男が隠れられるほどの大きな木が現れた。男はゆっくりと木の陰に入る。
数秒気配を探ったが、追跡者は特に警戒していない。うまく騙せそうだ。男は彼女を自分が入った木の陰の隣に立たせると、何かをしゃべっている振りをさせた。そして、男は姿を隠し、
静かに追跡者に近づいていった。

一分少々経った。追跡者の風貌があきらかになってきた。黒髪で血色の悪そうな肌の色をしている。
魔術師のローブをまとい、左目に片眼鏡をつけている。

(追って来ていたのはウィザードだったか・・・。)
追跡の距離の保ち方は利口だったが、気配をまったく断っていない。知識はあるようだが、
経験は皆無とみていいだろう。男は慎重に近づいていった
153名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/18(土) 05:11:07 ID:DcwXg4D.
あと歩数にして30歩というところで、異変が起きた。ウィザードが落としていた腰を突如上げ、
猛然と走り出したのだ。距離はどんどん離れていき、ウィザードは森から出て行ってしまった。
一度姿を現し、森の切れ目まで一気に近づく。彼女も横目で見ていたのか、異変に気づいて、
森の淵に向かって移動している。
男はウィザードの様子を窺った。ウィザードは森から距離をとると、森の方に向き直り、
コンバットナイフを右手に構えた。それを見た男は考えを改める。

(気付かれたか、それとも、こちらの思惑に勘付いたか?しかし、やはり何か企んでいたようだな。
ウィザードが相手なら、下手に捕らえるより、速やかに排除した方が安全だな。)
男は再び姿を消して、ウィザードの背後に回るべく、森から出て行った。

彼女は森の淵まで移動した。追跡者が立っているのが見える。だが、まだ距離があったため、
淵沿いに近づいていった。追跡者の容貌がある程度分る距離に近づいたとき、追跡者の後ろに
とび蹴りを放っている男が見えた。その直後、追跡者の周りにオレンジ色の輪が出来て、
それがいきなり爆発した。すさまじい音とともに、オレンジ色の火炎があたりを埋め尽くす。
火炎が消えるか消えないか位のところで、新たに人の背丈ほどもある火柱が立ち上がった。
その火柱は男の右足を飲み込むように吹き上がり、瞬く間に消えていった。男の顔が苦痛に歪み、背中から後ろに倒れこむ。そこに追跡者はなにかを叫び、それとほぼ同時に男に飛び掛った。
緑色の何かに包まれた男は、何も出来ずに追跡者に『何か』をされた。追跡者は『何か』をした後、
即座に男から離れ、辺りを見渡す。
そして、男の首から赤い液体が吹き出た。男の周りを赤く染める。男が顔を上げながら、震える腕を彼女に伸ばす。彼女は呆然とそれらを見ていた。何も考えられず、何も信じられず、
何をするべきなのかも分らない。男の腕が震えながらゆっくりと降りていく。それを見て
彼女は思い出した。自分は何をするべきなのかを・・・。

追跡者の顔をしっかりと覚えて、速やかにこの場から逃げ出した。追跡者も彼女を見ていたが、
まだ追ってきている気配はない。この間にすこしでも距離をはなさなければ・・・。

(あの男、許さない。決して・・・。)
彼女の心に広がるすさまじい憎悪。だが、感情に捕らわれているだけではない。
(でも、今の私ではあの男には勝てない。今は退くしかない。だけど、必ず倒す。
力を手に入れ、武器を用意し、時が熟したら、私が私の手であの男を倒す。)

男が以前彼女に言った言葉を思い出す。俺がお前を必ず生かして帰すと、そしてアサシンに
してやると・・。そういってくれた男はもういないが、その言葉は彼女の中で生きている。

(見ていてください、あなたが生き残る価値があると言った私を・・・。あの男を倒し、
生き残って、アサシンとなり、あなたの後を継ぐことで、それを証明して見せます。
だから待っていてください、私がそれを証明するその時まで・・。)

彼女は走り続ける。木々を巧みにかわし、木の根に足を取られつつも、バランスを崩すことなく、
進んでいく。今は逃げることしか出来ない。だが、いつか戦うことができるようになるかもしれない。

彼女は強き想いと、憎悪を胸に、森の中を走っていった。


〈♀ノービス〉
現在地 E-7の森の中
所持品 未開封青箱1つ
スキル しんだふり
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 E-7の森の中からどこかへ行くかも。新たな想いを秘める?
154152 :2006/02/18(土) 05:13:07 ID:DcwXg4D.
さすがに、微妙ですかね・・・。ダメでしたらNGで保管してください。
よろしくお願いします。
155名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/18(土) 12:38:44 ID:oltRe7YI
>>152
まぁ、たしかに♀ノビが激情家になってて復讐を誓うのは多少違和感はあるけれど、
どこまでがOKでどこからがNGかを最初から人にまかせる姿勢はあんまりオススメしないかな。

人が書いた文章をNGだ!なんて否定するのは案外つらいことですし。

♀ノビは知らない間に♂アサシンに信頼を抱いていて、それを奪い去った♂WIZに対して復讐を決意する。
それはそれで良いと思います。
ただ実力は伴っていないので、それを急成長させて強くさせるなどのご都合主義な展開にさえならなければ良いのではないでしょうか?
156名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/18(土) 15:55:13 ID:UW5SOp9A
>152
これはこれでいいのでは。
余程の無理な展開や矛盾がない限り採用していく方向なんだから、NGになるかもと思っても黙って投下したほうがいいよ。
OKならスレはそのまま進行するし、まずい点があれば誰かしらが指摘するんだから。

そして、早速指摘するが>125の♂クルセって盾ないのにオートガード発動してないか?指弾受けた辺り。
157名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/18(土) 19:36:30 ID:Q87CpBtM
164 女王の往く道 [2日目午後(雨前)]


忌々しい道化が。どのようにして血祭りにあげてくれようか。
麗しき女王蜂は、苛立ちを隠すこともせずに歩を進めていた。
殺気と怒りの色に、彼女を取り巻く羽虫たちも脅えるように距離をとっていた。

「この狭くもない島の中で器を早々に見つけ出すとは。さすが貴女と言うべきですかねぇ」

背後から聞こえた声は間違えるはずもない。憎き道化のものである。
ミストレスの殺気が一気に膨れ上がる。常人ならば一目見ただけで脱兎のごとく逃げ出すだろう。
「道化よ。器にまで封呪を施すなどという姑息な手を使いおって……よほど殺されたかったとみえる。
 むざむざ殺されにくるとは都合がよいわ。おぬしには一瞬の死など生ぬるい。じわじわとなぶり殺しにしてくれようぞ」
ばちばちと音を立て、ミストレスの手に魔の雷が収束する。
それを見てもジョーカーは落ち着き払った様子で、両手を広げてみせた。

「おやおや、怒らせてしまいましたか。怒りの表情もまた美しい。
 ですが女性を怒らせてしまったことは紳士として反省せねばなりませんねぇ」
なにが紳士だ。ミストレスの視線がさらに鋭くなる。
針のように刺してくるそれを受けて、ジョーカーは肩を竦めた。

「まぁ、冗談はここまでにしておいて。ひとつ申し上げておきましょう。
 私を殺そうとしている所を見ると、貴女は勘違いをなさっているようだ」
「何?」
彼の言葉に、ミストレスは眉を顰めた。
彼女をなだめるような仕草をすると、彼は言葉を続けた。

「私を殺したところで、貴女にかけられた封呪は解けはしません。それどころかこの島から出ることが不可能になる。
 この島にいる限り、貴女はあの山脈にいた時の様に、比類なき力で弱きものを統べることはできない。
 その美しき羽はただの飾りとなり、貴女の身は地を這うばかり。
 いわば籠の中の鳥――いや女王蜂でしたか。それにすぎなくなるということです。永遠に、ね」
「……命乞いにしては嘘が稚拙に過ぎるぞ」
「心外ですねぇ。そんなに信用されてないだなんて涙が出そうです」
「日ごろの行いが悪いからであろう」
皮肉たっぷりのミストレスの言葉にも、ジョーカーはおどけた態度を崩すことはない。
「ならば嘘か真か確かめてみればよいでしょう…私を殺して」
しかしそこまでの賭けが貴女にできるのならば、ですが。そう言外に潜ませ、道化は嗤った。

面白くない。ミストレスは今までにないほど不機嫌だった。
殺すことなどできるはずもないと高をくくられていることもそうだが、彼女の選ぶ道を巧みに誘導されている感があるところ。
誰にも縛られず、その力で全てを叩き伏せて道を開いてきた女王にとって、それが屈辱的であることは言うまでもなかった。
だが……万が一道化の言うことが真実だった場合。島から出ることもかなわず、彼女は永遠に元の力を取り戻すことができなくなる。
つまり永遠の弱者となるのだ。それは人間よりも遥かに高いプライドを持つ彼女にとって一番の屈辱であった。

「ふん……つまり我がこの馬鹿馬鹿しい茶番の勝者となる以外に、力を取り戻す術はないと言いたいのじゃな」
「わかっておられるのならば話が早い。よい判断です」
「おぬしの手の上で踊らされるのは気に食わない。が、このまま人間共と同じように地を這うままでおるのも御免なのでな」
ミストレスのその言葉に満足気に頷き、ジョーカーは言葉を続けた。
「そう……貴女のおっしゃる通り、貴女がこの舞台の最後の一人になればいい。
 そうすればこの島から貴女は飛び立ち、美しく気高き女王蜂として再び君臨することができるでしょう」
封呪によって抑えられているとはいえ、正式な器に戻った女王蜂の魔力は人間の魔道師の及ぶところではない。
その力を持ってすれば容易きことでしょう。そう加え、道化は再び嗤ってみせた。

――ま、そう簡単にはいかないでしょうけどね。
口では女王蜂を持ち上げてはいたものの、ジョーカーは内心でそう呟いていた。
彼は知っているからだ。追い詰められた人間たちは、時には考えられないような力を見せるということを。

「では、活躍を期待しておりますよ。最後の一人として、貴女がその美しい姿を再び見せてくれることを願います」
「戯言を。……まあよい。その暁にはおぬしを血祭りにあげてくれる。その減らず口を二度と叩くことができぬようにな」
去ろうとするジョーカーの背に、ミストレスは吐き捨てた。
それは怖い、と冗談まじりに呟き、彼は芝居がかった仕草で頭を下げ――まるで始めから存在しなかったかのように、姿を消した。

全くもって面白くない……が、我にとってこのような弱き力のまま醜く地を這うことを超える屈辱はない。
ひとまずはおぬしのふざけた脚本に付き合ってやろう。それがおぬしを愉しませようともな。
しかし、我がおぬしの手の上で踊らされてやるのはこれが最初で最後じゃ。
全てが終われば――我が怒りは跡形もなくおぬしを滅ぼすだろう。覚悟しておくがよい、道化よ。

一人残され、ミストレスは心中で呟く。
女王の気高き魂は、人に近い身にまで堕ちてもその輝きを失うことはない。


<ミストレス>
現在地:F-6(E-6側寄り)
容姿:髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー
所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー
備考:本来の力を取り戻すため、最後の一人になることをはっきりと目的にする。つまり他人を積極的に殺しに行くことになる。
158名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/18(土) 19:38:51 ID:Q87CpBtM
163話に大きな矛盾はないと思うので、164話にしときました。

ミストレスが目的を失ってる感があるので動かしてみる。
ジョーカーが自分が死んでも呪いは解けないよーとか言ってるのは本当かもしれないし嘘かもしれません。
そもそも首輪で弱くなってんじゃなくて、他の冒険者と同じく島の装置のせいなんじゃないのか。それとも両方?
なんかよくわからなくなってまいりましたorz
しかしどっちにしてもミストレスは首輪のせいだと思い込んでるので話の進行に問題はない…はず。
159名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/19(日) 10:46:02 ID:eIoS84Yo
む。了解、早速手直しいれます。>♂クルセ
160名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/19(日) 11:03:48 ID:eIoS84Yo
修正完了を報告。
オートガードは他の要素で代えました。

で、とりあえず次に書きたいパーティは
未亡人と愉快な仲間達PT、男の友情タッグチーム、と言う所でしょうか。
夕方辺りにでも、状況整理を兼ねた繋ぎの話を書きたいですねー。
161名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/20(月) 12:49:11 ID:/A30U3BQ
ROワ絵のえらい人の更新キタ─(゚∀゚)─!!

>>157
ミストレスさま、マーダラーに進化おめでとう!
力を制御してる砦の制御装置は灯台以外にいくつあるんだろう。
基本で攻めると亀の両手両足の4個(+頭と尻尾2個)+中心1個
って感じなんだろうけどね。
162名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/21(火) 12:19:36 ID:ezyWgRb2
165.契約完了 [2日目昼:雨の前]

殺される。殺される。殺される。
追いつかれたら、どうしようもないほどに殺される。
いまの私ではなんの抵抗もできずに、もてあそばれて、殺される。

ドワーフの作る金細工のように細やかでうつくしい髪がみだれることもいとわずに、少女は森の中を駆けていた。
およそ普段の生活ではありえないほどの運動量に、肺が酸素をもとめてわめきたてている。
足りない、まだ足りない、と少女の小さな口はせかされていた。
それでも少女は止まるわけにはいかない。

少女にとっては、ここが正念場であった。

ほんのついさっきまでは、少女は守られる立場であったのだ。
けれどいまは、違う。
いまの少女を守ってくれるものは誰もいない。
生き抜いて、彼の仇を討つためには、少女は自分ひとりの力でなんとかしなければならないのである。

さいわいにも、少女を追ってくる男は身体能力の上では、少女とそれほどかわらないらしかった。
いや、魔法という奇蹟をあつかう力をのぞけば、男はむしろ、少女よりも劣っているらしい。

そのせいもあってか、この命をかけた鬼ごっこの軍配は、少女にあがった。
男は森の中で、少女を見失ってしまったのである。
一度少女の姿が見えなくなってしまい、気配までもが消えてしまうと、男が少女を見つけ出すことは困難であった。

男は手近な木の幹に、右手の刃物を突き刺して悔しがった。
なんどもなんども突き刺して、それで多少は気が済んだのか、
左目につけた片眼鏡をはずし、服の裾を使って磨きなおすと、もういちどはめこむ。

「残念です。あと少しというところだったのですが・・・・」
しかし男の表情はすでに冷静さを取り戻しており、瞳は氷のように、冷たい感情を放っていた。

「ちょうどいい機会です。もうひとつの青箱もあけておくとしましょう」
わずかに口もとをゆるめてそう言うと、男は荷袋から取り出した青い箱のふたを丁寧な手つきで開きはじめた。

「・・・」
「・・・」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
男は無言のまま、なにも見なかったことにしてふたを閉じようとした。
ところがふたの中にいたそれが、そうはさせまいと鋭くとがった槍のようなもので男の手をしたたかに突き刺した。

わずかにうめいた男の手から、ぼとりと青箱がこぼれ落ちた。

「痛いゾ、ニンゲン」
それは不思議な抑揚で、人の言葉を話した。
夜のように黒い体毛におおわれた、羽根の生えた奇妙な生き物が、そこにいた。
満月のように丸い目が、男を見ているのであろうか、大きく開かれている。

「まさかデビルチが入っているとは、どうやらこの青箱は普通ではないようですね」
刺された左手を痛そうにさすりながら、男は視線をデビルチと称した生き物に向けて放った。
ひとりと一匹の視線がにわかにぶつかりあう。

「悪くない目をシているナ、ニンゲン。
 悪魔と契約ヲしても、成し遂げタい願いを持った目ダ」
よろこびを含んだ声が、デビルチの口から発せらると、その内容に、男も少しだけ口端をつりあげる。

「えぇ、私の願いはひとつだけです。そのためならば、悪魔にもなりましょう」

「いいゾ、ニンゲン。汝の力にナろウ。
 コトが成されタあかつキには、相応のモノはモらうけどナ」

「構いませんよ」
男はどこからか+10スティックキャンディーを取り出し、すっとデビルチに差し出す。

「契約成立ダ。担保代わリに受け取っておくゾ」
デビルチはそう言うと、矛を持っていない方の手でスティックキャンディーを受け取り、
ふさがった両手でリズムをとりながら踊りはじめた。

男は忘れられない彼女との記憶の中から、その踊りがデビルチの契約の儀式であることを思い出し、微笑した。

こうして男はこのゲームでは貴重な貴重な、殺戮の同行者を手に入れたのであった。

〈♂WIZ〉
現在地 E-7
所持品 コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
    未開封青箱1つ レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
スキル サイト サイトフラッシャー ファイヤーピラー クァグマイア ファイヤーウォール
    フロストダイバー
備 考 「研究」のために他者を殺害 黒髪 土気色肌 丁寧口調 マッド
    ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
    フードを洗って使えるようにするか、♀ノービスを見失った
    デビルチと主従関係の契約


〈デビルチ〉
現在地 E-7
所持品 +10スティックキャンディ
備考  悪魔 ♂WIZと主従関係の契約


〈♀ノービス〉
現在地 E-7
所持品 未開封青箱1つ
スキル しんだふり
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 E-7の森の中を逃走中
163162sage :2006/02/21(火) 12:26:49 ID:ezyWgRb2
殺す側の戦力を強化したかったので反則気味な技を使わせてもらいました。
それは反則だ、と言われると返す言葉もありません。

デビルチはペットなので首輪がないけど、悪魔なのでハイディング・クローキングを見破れます。
受け入れていただけると、助かります。
164162sage :2006/02/21(火) 12:30:25 ID:ezyWgRb2
♂WIZさまの持ち物などが一部おかしかったので修正

〈♂WIZ〉
現在地 E-7
所持品 コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
      レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
スキル サイト サイトラッシャー ファイヤーピラー クァグマイア ファイヤーウォール
    フロストダイバー
備 考 「研究」のために他者を殺害 黒髪 土気色肌 丁寧口調 マッド
    ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
    ♀ノービスを見失った
    デビルチと主従関係の契約
165名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/21(火) 16:30:25 ID:B/95IYgw
デビルチかあ。でもまあ、前回は青箱から深淵の騎士やバフォJrが出ているから、
出てきたこと事体は、問題は無いと思います。後は結界にどこまで能力が制限されるか、
そこら辺が鍵かなと思います。

個人的にはデビルチだけに、小悪魔的な性格だと、面白いかなあとw
ハイディングとか見破っているのに、ぎりぎりまで教えないとかねw
私は言いと思いますよ、強すぎなければ・・・ですがね。
166名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/21(火) 17:31:41 ID:foW5gRnQ
>>165
まて、騎士子たんは青箱から出た枝から出たんだ!
箱の中で丸まっていたわけじゃない!

>>162
つーか今回も既に箱からジルタスでてるしね、問題ないと思うよ
流石にこれ以上ペットetcが増えるのはどうかと思うけど…
167名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/21(火) 17:41:01 ID:VKTrvFXA
>>166
子デザも一応箱から出てるはず
描写がなかったせいで卵が入ってたのか犬がそのまま入ってたのかわからないけど

>>165
意思の疎通が出来るだけに前回のJr&ローグみたいなコンビになるといいかな
あと結界みたいなものが島全域に張ってあるみたいですし強さは当然抑制されてるかと
168名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/21(火) 17:46:59 ID:VKTrvFXA
あー、今見直したらちゃんと卵ってカイテアッタヨorz
169名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/02/21(火) 20:42:02 ID:B/95IYgw
〉〉166
・・・・、ごめん、読み返したら、枝から出てた。
でも、騎士子が体育座りで、箱の中から見上げていたら、可愛いかな?w

そういえば、義姉妹PTや、振り切られた♂マジはどうなるんだろう。
位置的にはどっちも遭遇することは可能そうだけど、どうかな?

♀マジは♂WIZを見つけて、マーダラーからヘタレへと説得できるのかなあw
けど、デビルチ出てきちゃったし、難しそうだなあ・・。
170名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/24(金) 12:11:33 ID:9SA1GXv6
166.雨宿り [2日目午後:雨]

『ねぇ、5年後の私たちはどうなってると思う?
 やっぱり一緒に旅をしてるのかな。
 それともあなたは私のお父さんみたいなロードナイトにでもなって、国の騎士として働いてるのかな。
 私たちの未来は、どんな色にかがやいてるのかしら』

記憶の中でにっこりと彼女が笑った。
少し意地の悪い性格の彼女だったけど、ときどき見せる笑い顔がとてもまぶしくて、
そんな彼女の笑顔を大切にしたいと、あの頃の俺は思っていた。

魔が差した、なんて言葉で片付けてはいけない。
片付けていいはずがない。
底なしな大馬鹿野郎の俺がしてしまった行為を、俺は一生背負っていかなければならない。

『人間誰でも恐怖はある。つーかな、怖さを知らない人間ほど恐ろしいものはねえってな。
 臆病なことは決して悪いことじゃあないんだよ。
 恐怖をおして前に進める人間が一番の勇者だとはよくいったもんだ』

♂プリーストの言葉に行き場を失った俺の心は救いを得た。
けれど俺はその言葉を以前にもどこかで、聞いたことがあるような気がしていた。
それはいつの話だっただろう───

剣士の姿をした自分が、アコライトの法衣に身をつつんだ少女と薄暗い地下道を歩いている。
地下道は息を吸い込むだけで気分の悪くなる悪臭と、よごれた水で満ちていた。
それだけではない。
おびただしいほどの魔物が、盗蟲と呼ばれるそれらの魔物が、地下道に巣を作っていたのだ。

当初、騎士団からの依頼は、
騎士の不足にともない地下上水道に起きた異変調査をする余裕がない。
そこで騎士志望である君に調査をお願いしたい、ということであった。

おそらくはロードナイトでもあるアコライトの少女の父親が、少年に騎士への登竜門を与えてくれたのであろう。
ところがそこに大きな誤算が発生したのである。
予想以上の群生となっていた盗蟲の存在であった。

ひとかどの剣士ならば10匹や20匹くらいの盗蟲など、あっというまに片付けてくるであろう。
少女の父親はそう思っていたはずである。
まさかその数が100匹をはるかに超えているとは、そのときは誰も思ってもみなかったのである。

さらに盗蟲は、意外と狡猾であった。
入り口で自分たちが大所帯であることをさとられてしまうと、大勢の騎士たちが駆けつけてくるとふんだのであろう。
地下上水道の1F付近にはほんのわずかに、それも小さくて弱いものだけを生息させ、
様子を調べにきた剣士とアコライトを、たくみに地下深くへと誘ったのである。

圧倒的な数の盗蟲によって退路を断たれたふたりは、進むこともできず、もどることもできず、
ただただ消耗戦を続けることしかできなかった。

「はやく、ヒールをっ」
「もう、無理よ。SPなんてすっからかんだもんっ」

少女が悲鳴のように叫ぶと、剣士の少年もまた泣き出しそうな表情を浮かべた。
それでも少年は懸命に右手のサーベルをふるった。
大勢の敵を前にして、なるべく隙を見せないように、体勢をくずさないように、したたかにサーベルの刃をひらめかせた。

けれど多勢に無勢であった。

数が圧倒的に違うのである。
少年が白刃をふるい、一匹の蟲を切り裂く間に、蟲たちはあらゆる方向から少年を襲った。
あるものは少年の右足すねにかじりつき、あるものは左のふとももを、あるものは飛びかかって少年の肩をえぐった。

「マグナムブレイク !!」

焦燥を顔に出しながらも、少年は大きく剣をなぎはらった。
少年の後ろで身を震わせている少女の白肌を蟲の牙などに傷つけさせるわけにはいかないと思ったのだ。
少年は恐怖に負けまいと、叫び吼えた。
べっとりと蟲の体液によごれた刃が、さらなる緑色に染まった。

剣士の少年の烈火のごとき気迫におされてか、蟲たちはわずかに動きをにぶらせた。
そのときであった。

すさまじい風が巻き起こり、動きのにぶった盗蟲たちをまたたくまに切り裂いていったのである。
風は刃であった。
ひとりの剣士が起こした剣風であった。

剣士の少年とアコライトの少女の前にはいつのまにか、ひとくみの剣士とアコライトがいたのである。

「よくがんばった。あとは俺がひきうけよう」

突然のできごとに立ちつくしていたふたりに対して、剣士がわずかに笑みを見せた。
同伴していたアコライトの女性が少年と少女に癒しの光をそそぐ。
小さな奇蹟ともいえるできごとであった。

剣士姿の男は、とても剣士とは思えないほどの力量で、吹きすさぶ風のように蟲たちを塵に変えていった。
まるでアサシンが使うソニックブローのごとく速さであった。
反面、アコライトの女性はそれほどの癒しの奇蹟を使えるわけではなかった。
もうしわけていどに少年と少女の傷を治すと、彼女はちろっと舌を出して笑うと、ごまかすように頬をかいた。

「ごめんね。私はあんまりたいしたことできないんだ。
 でも彼がいるから、絶対大丈夫よ」

彼女の言葉は本当であった。
あれほどいた盗蟲が、いまや数えることができるほどまでに減っていたのである。
鍛えあげられた剣士の力はそれほどまでに圧倒的であった。

少年はそんな剣士の戦う姿を見て素直に憧れの感情をいだいた。
いつか自分も彼のように強くなって、そして転職して誰かを守ることのできる騎士に。
そのときの少年は、心からそう思ったのであった。

「けどな、少年。嬢ちゃんを救ったのはお前だ。
 怖かっただろう。それでもお前はちゃんと前に進めたんだ。
 本当に強い人間ってのは、恐怖に打ち勝って前に進める人間なんだぜ。
 現に蟲たちはそんなお前に恐怖した。だからあいつらは動けなくなったのさ」

そう言って太陽のようにさわやかな笑顔で剣士の男は笑った───

「恐怖に打ち勝って前に進め、か。
 騎士になって強くなったつもりだったけど、もしかしたらあの頃の方がずっと強かったのかもしれないな」
「なんのことだよ」

ぼそりとひとりごとを言った♂騎士に♂アルケミストが反応した。
突然に降りだした雨をさけるために集落を見つけたふたりは、てきとうな小屋で雨宿りをしていたのである。

「恩人のことを思い出していたのさ」

♂騎士の、どこか遠くに想いをはせているのであろう表情を見て、♂アルケミストはそれ以上なにも聞くことはなかった。
ふたりはそうやって静かに雨のあがるのを待ち続けていた。

♂騎士は知らない。
あの日、剣士だった♂騎士を救った剣士もまた、最愛の彼女を失って狂ってしまったことを。
♂騎士は知らない。
その剣士がクルセイダーに転職していたことを。
♂騎士は知らない。
その彼が、いま、自分と同じこの島で、死神のごとく刃をふるっていることを。


<♂騎士>
現在位置:D-5(集落)
所持品:S3ナイフ、ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:プロテインの効果で痛覚を失いつつある 雨がやむまで雨宿り中
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗を示す
   ♂クルセイダーは剣士時代に同じく剣士だった♂騎士を救っていた恩人


<♂アルケミスト>
現在位置:D-5(集落)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:♀クルセイダーの死の感傷から大分立ち直る 雨がやむまで雨宿り中
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型
171170sage :2006/02/24(金) 12:16:57 ID:9SA1GXv6
過去話ダイスキーなので♂騎士、♀プリ、♂クルセの過去を書いてみた。
ただし過去話は死亡フラグが立ちやすいという諸刃の剣。
172名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/24(金) 19:37:53 ID:tUdCR7j.
167.ギャンブル[2日目昼]

それは突然の邂逅だった。
大きな起伏の頂点へたどり着いた瞬間に起きた、お互いにとって必殺距離での。
一方はゲームに乗っており、もう一方もそのことを知っていた。
にもかかわらず、戦端は開かれなかった。
双方がお互いの実力差を正確に認識し、狩る側と狩られる側があまりにもはっきりしていたから。


「さて、あまり手を取らせないでいただけるとありがたいのですが」
その死神じみた男は言った。
こいつだ。こいつが♀マジの言っていたキ○ガイWizに違いない。
♂マジは背筋を冷や汗が流れ落ちるのを感じた。
「キキキ。丸焼きト八つ裂キ、毒デ悶死のどレがイイ?」
「私に毒を使うスキルはないですよデビルチ君」
なんだ。なんなんだこいつは。
恐怖と混乱で思考が斜め上へと走り出す。
どうしてデビルチなんて連れているんだ。
召喚?召喚したのか?
それともこの島には参加者以外にモンスターがうろついてるのか?
どっちにしても最悪だ。
デビルチにまともに効く魔法なんてほとんどない。
「くぅっ…なんて…、なんて運が悪いんだ…っ!」
「ああ君、聞いていますか?おとなしく実験材料になってもらえますね?」
不運を嘆いている間にも、手にしたごつい短剣をゆらしながら♂Wizが向かってくる。
そうだ。デビルチ以前にこいつが問題じゃないか。
確かに♀マジの言っていたとおり、言動が常軌を逸している。
こいつは敵だ。敵なんだ。
悪意を持ってこちらを殺そうとする人間がここにいるんだ。
だが。
「戦う……?無理だ…っ!魔法の種類も…威力も、詠唱速度だって負けている……っ!…なら殴りかかるか…?…いや駄目だ……っ!どう考えてもSSの方が早い…っ!……やはり逃げるしか……。だがどうやって…?QMも、FWも…IWもあるかも知れないのに……っ!!」
「ふむ。まあ判断は正確のようですね」
「性格はイささカ問題ダがナ。キキキキキ」
「くぅ…っ。お前には、お前にだけは言われたくないぞ……っ!」
♂マジは耳障りに笑うデビルチをにらむ。
しかしどう考えても勝ち目がない。
逃げる手だてもない。
駄目だ。
もう諦めるしかないのか。
攻撃を仕掛けて万が一を期待するか。
SSならあちらが反応するより早く完成するかも…。
「駄目だ…っ!」
万が一?
馬鹿なっ!
可能性のあるところにしか偶然は起きない。
勝算も考えずにただ偶然を期待するのは破滅への道だ。
考えろ、考えろ、考えろっ!
何か道がある。きっとあるはずだっ!
俺にあってあいつにない物が、勝機を生む何かがきっとある…っ!
諦めるな……っ!

  ざわ…

         ざわ…

うなじの毛がそそけ立つ。
全身の肌が粟立つ。
何か。
何かがある。
何かが。
考える。
考える。
考える…っ!
「……そうか……」
♂マジは青ざめた顔を上げた。
「――どうしました?」
彼の反撃を警戒して♂Wizが立ち止まる。
飛び掛かるには遠く、しかし決して逃げ切れない距離を残して。
ガチガチと音を立てそうな歯をかみしめて♂マジはゆっくり言葉を押し出した。
「あんた……あんたは……、なんでまだ魔法を撃たないんだ……?」
「そんなことですか」
♂Wizは鼻で笑う。
「私が実は善人だとか、人を殺せないのではないかと期待したなら見当違いです。私は単になるべくきれいな生きたままの実験体が欲しいだけですよ」
「ナらバ己の体デもイイんじゃナイのカ主人ヨ」
「自分を解剖してしまっても研究が続けられるなら、それも手ですね」
「そうじゃないっ……そうじゃないんだ……っ!」
1人と1匹の狂気に満ちた会話に腰が引けつつも♂マジは言葉を繋ぐ。
「あんたのその目的は想像がついた……。だから……取引しよう」
「取引の余地はありません。あなたが選べるのはいつどのように死ぬかだけです」
「いや…っ!できる……っ!!」
♂マジはローブの下で『それ』を握りしめた。
「あんたは俺の……生きた体が欲しい。だから……殺せるけど、殺せない。俺は……死にたくない。けど……殺されない方法がない」
「キキ、そレハ困ったナ。どっチも手詰マりダ」
あざ笑うデビルチを無視して♂マジはローブの下から右手をゆっくりと引き出した。
「だから……取引だ。賭けをして……あんたが勝ったらおとなしく実験体になる。俺が勝ったら……見逃してくれ」
「――ふうむ」
彼の右手指の間に挟まれた3つのサイコロを見て、♂Wizはかすかに興味深そうな表情を浮かべる。
「断ったら?」
「全力で……戦う。この体が……消し炭になるまでっ」
「…なるほど。ですが、負けた側が約束を守る保証は?」
「賭けの間……俺は座る。逃げるにも戦うにも、一手遅れる。あんたは……」
言いかけて首を振った。
彼が生き残る道は、賭けに勝った上で♂Wizが約束を守る。その小さな可能性にしかないのだ。
その意味を理解して♂Wizは薄い笑みを浮かべた。
「いいでしょう。ルールは?」
「お互い3から18の数字に賭けて……サイコロを3つ振る。……出目に近い方が勝ち。あんたが先に選んでいい」
「…なに?」
♂マジの提案を聞いて♂Wizが少し呆れたような表情をした。
少し遅れてデビルチが笑い出す。
「キキキ、まっタくノ五分カ。ズいぶン欲張るナ、気ニ入っタゾ。キキキキキ」
1から6の数字が刻まれた普通のサイコロであれば、3つ振った時に最も出やすい目は10と11。そして3〜10の目が出る確率と11〜18が出る確率は等しい。
当然お互いに10か11のどちらかを選ぶだろうから、勝つ確率は2分の1になる。
決定的に不利な状況を五分五分の賭けにするのは♂マジに都合良すぎるだろう。
デビルチの言ったのはそういう意味だった。
「なら……あんたは俺の後に、数字をもう1つ選べ。その代わり……サイコロは俺が振る」
♂マジは譲歩してみせた。
これは♂Wizにサイコロを触らせないための、予定のセリフだった。
一旦サイコロを振ってしまえば、イカサマがばれても約束は約束と強弁できる。
それで♂Wizを怒らせたとしても、冷静なままの相手と戦うよりは生き残る可能性があるだろう。
しかし振る前にばれてしまっては賭けが成立しない。しかも仕掛けを見破ることで♂Wizは怒るどころか精神的優位に立つだろう。
だから絶対に♂マジがサイコロを振らなくてはいけないのだ。
「なるほど。いいでしょう」
そんな彼の内心を見透かしたかのように♂Wizは手を差し出した。
「ただ、サイコロを確かめさせてもらいますよ」
「……え?」
「当然でしょう?サイコロに望みの目を出す仕掛けがあっては困りますから」
「くっ……!」
♂マジは奥歯を強くかみしめた。
万事休すか……?
いや、まだだっ。
サイコロを手渡す瞬間、奴に手が届くっ!
不意打ちできれば……っ!
「デビルチ。彼のサイコロを確認してください」
「ヨし。マかせロ」
「……っ!」
あくまでも用心を怠らない♂Wizの一言に全身から力が抜けて行く。
最後の足掻きさえも見透かされた。
終わりだ……っ。
「ほレ、よこサぬカ。ひョロ夫メ」
トテトテと歩み寄ってきたデビルチが、力の抜けた彼の手からサイコロを奪う。
そして即座に転げ回って笑い出した。
「キーッキキキキキッ。なンじャこれハっ。1シか掘ってナいでハなイかーッ!キキキキキキキッ!」
「ぐう……っ!」
「…なるほど」
がっくりと膝をつく♂マジ。それを見下ろす♂Wizの声にはむしろ感心の色があった。
「3から18の数字、と言うことでそれが普通のサイコロだと刷り込んだわけですね。今の今まで数字そのものに細工があるとは考えていませんでした」
「う……く……っ」
「ですが約束は約束です。私は3を選びます。2つ目の数字は必要ありません。…さあ、数字を選んでサイコロを振って下さい」
「キ…キキ……笑いスギて腹がいタい…」
地面でひくひくと痙攣していたデビルチが起きあがって♂マジの手にサイコロを押し込む。
彼は思わず呟いた。
「お前の……そこは……腹じゃなくて口だろう……」
「キキキ。マダそのヨうな口をきケるか。実ニ気に入っタ、ニブルでハ仲良クしよウ」
彼の背を叩いてデビルチが離れる。
道は閉じた……。
もう…手は……。
「さて――アイスウォール!アイスウォール!アイスウォール!ファイアウォール!!」
キキキンッ!キンッ!どんっ!
考える間に♂Wizが呪文を連打し、♂マジの後方から側面にかけてを囲い込むように氷の壁がそそり立った。さらにその内側に炎の壁が立つ。
「無駄に時間稼ぎされてもつまりませんし。炎が消えても投げなかったら時間切れでいいですね?」
♂Wizは顔色も変えずに言い放った。
逃げ道を塞がれ、時間稼ぎまでも封じられた。
駄目か……っ。
駄目なのか……っ!
ここで終わりなのか……っ!
俺はここで死ぬしかないのか……っ!
心がゆっくりと暗く閉じて行く。
173名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/24(金) 19:38:24 ID:tUdCR7j.
死…
死ぬ…。
死ぬ……?
……いいじゃないか……。
俺は……殺さないことを選んだ……。
死ねば……誰も殺さないで済む……。
楽に……なれるんだ……。
……。
……

『本当に?』

……!
違う…
違う……っ!
俺は何を考えてる……っ!
生かすことを選んだなら…自分の死も認めるな……っ!
死なないために殺すのも……殺さないために死ぬのも……馬鹿げてる……っ!
俺は…。
俺は……っ!

「俺は……生きることを……、そのための選択を……諦めない………っ!!」
「む?」
♂マジは気迫を全身にみなぎらせ、握りしめた拳を突き上げた。
警戒した♂Wizが詠唱の構えを取る。
それを無視して
「俺が選ぶ数は……4だ……っ!!」
彼は高々と上げた拳を振り下ろした。
アイスウォールの前に立った、消えかけのファイアウォールへ向け。

パチンッ

小さく弾ける音。
そして。
「…アりえヌ…」
「…見事です」
死神の主従が呆然と声を漏らした。
「俺の……勝ちだ……っ」
3個のサイコロの内、1個が割れ――破片は両方とも1の目が刻まれた面を上にして落ちていた。
すなわち、合計は4。
「ファイアウォールを通してアイスウォールにぶつけ、熱膨縮と衝撃で割る…ですか。可能性は1%も無かったでしょうに」
「それでも…可能性はあった……」
割れて4つになったピンゾロサイコロを拾い、♂マジはゆっくりと向き直る。
緊張は解いていない。
まだ、窮地を脱したわけではない。
「で……どうする…?」
身構える彼に♂Wizは肩をすくめてみせた。
「約束は約束です。今日明日は見逃しましょう。最終日になればそうも言っていられませんが」
その瞬間、緊張の糸が切れた♂マジは地面に崩れ落ちた。
やった…俺はやったぞ…、とうわごとのように呟く♂マジをつつきながらデビルチは♂Wizを見上げる。
「いイノか?」
「ええ。別の実験に付き合っていただくだけですし」
「な……っ。ぐぅっ……約束は約束だと言ったのに……っ」
平然と言ってのけた♂Wizに対し抗議の声を上げるが、一度切れた緊張の糸は簡単には戻らない。
腰を抜かしたままじたばたと後ずさる彼をデビルチが愉快げに揶揄した。
「キキキ。約束ハ貴様を見逃すコトだけダ。契約ノ内容はヨく確かめヌとナ」
「なに、危険はありませんよ。それとも命懸けで抵抗してみますか?」
賭けに勝って得た精神的優位をあっさり覆され、♂マジはがっくりと肩を落とす。
「いや……抵抗はしない……」
「賢明です。――モンスター情報!」
「……!?」
あまりにも予想外の魔法に♂マジは目を白黒させた。
「モンスター情報って……なんで……」
「実験に必要なのですよ。あと、いくつか質問に答えて下さい。魔術の専攻と教師は?」
「あ、ああ……、数理魔法学…変動確率論だ…。独学だよ……」
とまどいながらも答えた内容を聞いて♂Wizはかすかに笑った。
「これはまた趣味な分野を」
「くっ…だから言いたくなかったんだ……」
「いえ、誉めたのですよ。実験にはむしろ好都合ですから。そんな物を専攻してる方が他にいるとは思えませんしね」
「……どういう意味だ……?」
「モンスター情報の結果とその情報があればあなたの魂を特定できる、という意味です。あなたには霊魂追跡の被験者第2号になっていただきますので」
♂Wizにとって大事なことはただ一つ。
愛する人の『再生』である。
しかし、それを為すためには仮初めの肉体を作り出すだけでは足りない。
愛する人の魂を探し出し、製造した肉体に定着させなければならないのだ。
そこで彼はよく知った人物の魂を探知する術を考案した。
そして実験段階でいきなりつまづいた。
彼ほど人付き合いの悪い人間でも、知っている人間となると膨大な数に上るらしい。
最初の数度の実験ではあまりに多くの反応に脳が追いつかず、瞬時に昏倒した。
仕方なく倒れずに済むところまで術要素を削ったところ、今度は何も反応しなくなった。
つまり全然使い物にならなかったのだ。
しかし、この島では事情が異なる。
知っている人間の数がごく限られ、また魔法を極端に制限されているため術の範囲が島外まで及ばない。
したがって本土では気絶した初期設定でも普通に使うことが出来るのだ。
「霊魂って……やっぱり殺す気か…っ?」
「いいえ。それでは実験にならないのですよ、残念ながら」
焦る♂マジに対し♂Wizは背を向けた。
威力が落ちている以上、ニブルヘイムも探知範囲外である。
死者の魂を探すのが本来の目的なので♂Wizにとってはかなり残念なのだが、いろいろ条件を変えながら必要な要素を絞っていけば大陸でも使える術が完成するだろう。
「ですからせいぜい長生きして下さい」
「達者でナ」
「あ、ああ」
何の未練も見せずに立ち去ろうとする彼らを呆然と見送りかけ、♂マジはハッと気付いた。
自分が第2号と言うことは……すでに誰か1人探知できると言うことだ。
そんな相手は限られるんじゃないか?
「待て……待ってくれ。……もしかして、被験者第1号は…♀マジじゃないのか?」
「ええ。そうですよ」
案の定肯定した♂Wizに頭を下げる。
「位置が分かるなら……教えてくれ。はぐれたんだ」
「ふむ?――まあいいでしょう」
♂Wizは手助けの是非を一瞬考えたようだが、すぐに聞き慣れない呪文を呟いて念をこらした。
やがて一方を指し示す。
「まだ術の距離感が完全ではありませんが、方向はおおよそあちらです」
「わかった…礼を言う」
♂マジはもう一度だけ頭を下げた。


遠ざかるローブ姿を見送り、デビルチは自らの契約者を横目に見上げる。
「デ、あ奴の探シてオる者ハ本当にあチらにオルのカ?」
♂Wizはまったく顔色を動かさず、ただひとこと問い返した。
「さあ?どう思いますか?」


<♂Wiz>
位置 :E-6
所持品:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
外見 :黒髪 土気色肌
スキル:サイト サイトラッシャー ファイアピラー クァグマイア ファイアウォール
    フロストダイバー アイスウォール モンスター情報
備考 :「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド
    ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
    デビルチと主従契約

<デビルチ>
現在地:E-6
所持品:+10スティックキャンディ
備考 :悪魔 ♂WIZと主従契約

<♂マジ>
位置 :E-6 → ♂Wizに聞いた方向へ
所持品:ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個(内1個は割れている)
    青箱1個 スティレット
外見 :長髪 顔色悪い
状態 :左手負傷(スティレットによる自傷)
備考 :JOB50 ♀マジとはぐれ捜索中 カイジ

<残り29名>
174名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/24(金) 19:49:12 ID:tUdCR7j.
>>169見て突然こんなモノ思いついちゃいましたので投下してみます。
カイジむずかしい…。

でもって言い訳&ネタっぽいものを。
・序盤♂Wizがヘタレてた理由付けをしてみました。
・♂マジに伝えた方角の真偽は後の方にお任せします。
・デビルチが出たと思われる青箱を♂Wizの所持品から削りました。
・♂Wizは魂の定着(憑依?)に関する研究もしています。
175名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/24(金) 22:33:17 ID:/.Te0E2g
すげぇええええええ!!!
カイジネタでここまで手の込んだ仕掛けをきっちり書き上げるとは!!!

途中からばとROわじゃなくてアカギかカイジ読んでる気分だったよ
同じ字書きとして平身低頭、尊敬します。GJ!
176名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/25(土) 00:11:01 ID:rjsyptK6
サイコロが割れて4ってそれなんて遊戯王?
それはともかく緊迫感があって楽しめました。GJ!
177名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/26(日) 16:08:00 ID:tAMhn8eE
あれだな。
再開した後のセリフは勿論
『畜生……っ。お前等それでも人間か……っ』辺りで。
178名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/27(月) 12:22:13 ID:sEJ19/8w
まとめサイト167話まで編集完了。
167話によっていままでいまひとつ目立ちきれていなかったカイジ、じゃない♂マジシャンが躍進しましたね。
なんていうか、ほんとうに全員が主役って感じで、これからどう収束させていこうか、収束していくのか、
書き手、読み手、それぞれにドキドキな気がします。

人物関係も複雑さを増して、どうなる今後。

個人的には、最近いいところがない♂ローグさんが大暴れして欲しい。
179名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 17:06:48 ID:r/P.v65s
168.託す者

雨音がパタパタと耳朶を打つ。

雨を避ける為にダンボール箱を被りながら移動する悪ケミをちらりと見やり、忍者は苦笑する。
まるでダンボール箱から足が生えているようだ、と。

「雨宿り出来る場所を探した方がいいんじゃないかい?それじゃあとっさの時に動くのも難しいよ?」

その言葉にダンボール箱ならぬ悪ケミは足を止め箱の中で何やらごそごそとすると、にゅっと1枚の紙片を突き出す。

『時間が無いの。出来るだけ早くモンクを探さなきゃでしょ。夜になる前に何とかしないと何時遅われるか判らないし』
『♀モンクは1日目で居なくなっちゃったから♂モンクを見つけないと。首輪が外せる事が判れば、みんな殺し合う必要が内って判ってくれるはず』

なるほど。誤字は多いが言っている事は至極まっとうだ。
しかし…と忍者は内心続ける。

(指弾の使い手は明らかに殺意があった…どう説得するつもりなんだろうか…)
(もし別のモンクがこのゲームに参加していたとしても、その者がマーダラーじゃないという可能性は五分五分…)
(ならば最悪の場合、力で押さえ込み従わせる必要もある、か…)

「どーしたの?早く行くわよ」

ハッと気がつくと、悪ケミちゃんさまとの距離が開いていた。
仮想対モンクの戦闘をイメージしている内に足を止めていたらしい。

「したぼくのクセに私に先を歩かせないでよねっ」
「ごめんごめん」

小走りに駆け寄ろうとしたその時だった。

シュカッ!

空気を裂く矢羽根音。
反応した…というより早く体が動く。

振り向きざまに背後の空間を薙ぐ。
手刀の一撃が飛び迫る矢を叩き落とす。

研ぎ澄まされた感覚が時間を伸長させ、雨粒の落下が静止した世界で忍者は驚嘆に目を見開く。

目前にある驚異。
目前に現れた死神。
それは飛びかかる毒蛇の様に飛来する。

2本目の矢。

1本目の矢を追い掛ける様に放たれたそれが、自らの体へと吸い込まれていく。

ダブルストレィフィング。
狩人達の考案した殺傷能力の極めて高い死殺技。
1発目を回避・防御した所で2発目が着弾するというフェイントの要素を織り込んだ必殺の一撃。

鈍い音を立てて左胸に突き刺さった矢が、それでも心臓から外れたのは幸運の為せる技か。忍者の体術のレベルが桁違いなのか。
しかし即死では無くも重傷である。
動けなくなるのも時間の問題であろう。

「ちょ…どうしたのよ!」

異変に気付いた悪ケミが慌てて駆け寄ろうとする。

「来るな!」

強い口調で叫ぶ。
びくっと立ちすくむ悪ケミを背に、グラディウスを抜き放ち逆手に構え薄暗い木立を見据える。

居た…。

予想より遠い位置に佇む影。
血よりもなお赤き衣を纏った冥府への案内人。

「ローグか…。いきなり仕掛けて来た所を見ると、どうやらゲームに乗った人間の様だね」

悪ケミに聞こえるようにつぶやく。

うかつだった。
まったく気配を感づけなかったのは雨の所為だけではない。
そう…悪ケミとのやりとりを楽しんでしまっていた自分の油断に他ならなかった。

小さく苦笑する。
何時の間にこんなにも心を許してしまったのだろうか。
暗殺者の道すら捨てた何も無い自分が。
力を求める事に疲れ果て、ただ一人モロクで座していた自分が。

ちらりと悪ケミを横目で見る。

この子はこのゲームに必死になって抵抗しようとしている。
それを成すだけの知恵もある。
ならば私の役目は一つだ。

「行くんだ。ここは私が引き受けるよ」
「な…っ!」
「君はまだ、しなければいけない事があるだろう?」

赤い死神が距離を詰めてくる。
ヒステリックな哄笑が近付いてくる。

「時間がない。それは君のセリフじゃないか。早く行くんだ」
「でも…っ!」

「ひゃはぁっ!2人とも逃がしゃしねぇよ!!」

♂ローグの狂喜に満ちた叫びが届く。
まだ顔も判別出来ない距離だと言うのに、その声はひどくひどく耳障りに聞こえた。

「行けっ!」
「待って!したぼくのクセに格好つけないでよっ!!」

叫ぶと共に♂ローグに向かって走り出す。
距離が残っている間に接近しなければ…少しでもこの子から遠ざけねばならない。
悪ケミの悲鳴とも泣声ともつかない声を後に残して、黒い疾風が出陣した。


ふと彼女の問いを思い出し、一人言葉を紡ぐ。

「君を生かす事で希望を託し繋げよう。なぜなら私は…」

───忍者なのだから


<悪ケミ>
現在位置:I-6(西に向かって移動中)
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<忍者>
現在位置:I-6(西に向かって移動中)
所持品:グラディウス、黄ハーブティ
外見特徴:不明
思考:悪ケミについていく。殺し合いは避けたい
状態:重傷。戦闘開始。

<♂ローグ>
現在位置:I-6
所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、馬牌×2、青箱×1
外見:片目に大きな古傷
性格:殺人快楽至上主義
備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す
状態:全身に軽い切り傷。戦闘開始。

<残り29名>
180名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 17:10:51 ID:r/P.v65s
お初に投下させて頂きます。
稚拙な文章でお目汚しスイマセン^^;

しかも投げっぱなしorz
181名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 17:57:40 ID:6Vi4iEjE
NG.天国には行けない2人 [2日目昼]

どんよりと灰色によどんだ雲が、男の頭上に立ちこめていた。
男の片目には大きな傷痕があった。
真新しい傷ではないそれを見れば、誰だって男がまっとうな生活を送ってきたとは思わないであろう。
事実、男の人生は血に彩られていた。

盗み、犯し、殺した。金品を奪い、純潔を奪い、生命を奪った。
どこまでも、ひたすらに、ただただ自分の欲望を満たすために。
殺した人間の中に自分の肉親は当然のように入っていたし、子を孕ませた女を子供ごと殺したこともあった。

それでも男の欲望は満たされることはなかった。
渇ききった心にいくら血の雨が降ろうとも、心はひからびたままであった。

ただ殺すだけではなんの快楽も得られない。つまらない。
なにをしてもつまらない。生きていても死んでいるみたいで、つまらない。
どうしようもないほどに、つまらない。

男は刺激に餓えていた。
殺し、殺される、殺人ゲームに自らを投じるほどに、刺激を求めていた。
そして念願は叶い、男はいま、殺人ゲームの舞台に立っていた。

その男が誰であるか。
言うまでもなく、♂ローグであった。

彼は配給された干し肉をおいしくもなさそうに噛みちぎりながら、目を血走らせ、周囲にひそむ気配をさぐっていた。
血肉に餓えた獣という言葉を人にも使うことができるのだとすれば、♂ローグはいま、まさにその言葉通りであった。

朝起きてから数時間も経っているのに誰も殺せていないことが、♂ローグ自身をいらつかせていたのであった。

足りない。血が、肉が足りない。
恐怖に泣き叫ぶ声が足りない。命乞いをするあわれな声が足りない。
隣人の死に嗚咽し、血啼く声が足りない。絶望に気が触れて壊れたように笑う声が足りない。
死のふちで、殺す相手をうらみつらめく呪詛の声が足りない。

なにもかもが、足りない。

だから♂ローグは───決めた。
次に自分の目に誰かが映ったら、その誰かを殺す、と。
たとえそれがどのような人間であれ、どのように徒党を組んでいようと、全力で殺す、と。

そう考えた♂ローグのことを知れば、人は短絡的な思考の殺人狂と揶揄したかもしれない。
しかしそれは大きな間違いであった。
実際彼は少しも狂ってなどおらず、自己の力量というものを正しく把握していた。
どの程度の相手なら、どの程度の人数までなら、どこまでなら殺せるか。
それらのことを限りなく熟知していたし、
殺した経験でいえば、彼はこの島にいる誰よりも経験を積んでいるかもしれなかった。

その♂ローグが全力で殺すということは、それはすなわち、殺せるということであった。
おそらくはオーラを放つ冒険者でさえ、殺せる自信があるのだろう。
相手の力を発揮できないよう封じ、自分の力を最大限に利用する戦い方を、彼は身につけているのである

島に来てからこれまでの殺しでは、♂ローグはどこか手を抜いていた。
もちろんそれは殺しを楽しむためであり、自らが好んでそうしたのであった。
けれど次はない。
♂ローグは血を浴びたいのである。
一秒でもはやく、誰かの肉体から血を奔出させたいのである。

目を皿にして、♂ローグは獲物をさがした。
茂みによって見通しは悪かったが、その分は耳と鼻で補った。
そしてさがし続ること実に2時間。
♂ローグはついに獲物を見つけたのである。

獲物は二匹。痩せたアサシンとバフォ帽にサングラスのアルケミストであった。
182名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 17:57:51 ID:6Vi4iEjE
突然に、忍者は悪ケミを突き飛ばすと、無言のまま短剣を鞘から抜いた。
まさに紙一重としか言いようがなかったが、その行動によって悪ケミは命を救われた。
トンネルドライブで姿はおろか、気配までも消していた♂ローグによる一撃を、悪ケミに代わって忍者が受け止めたのである。

「手前ェ・・・やるじゃねぇか。さすがにアサシンさまは伊達じゃねェってか」

凶暴さを前面に押し出して、♂ローグはベッとつばを吐くと、
ひかえめなサイズのおしりを地面につけたまま動転している悪ケミをちらりと見て、下卑た笑いをした。

「ちと発育が悪ィな、嬢ちゃん。そんなんじゃ、立つモンも立たねェよ」

言葉に反応してか、びくりと悪ケミのからだがふるえた。
これほどの殺意を浴びせられては、殺し合いの経験などもたない悪ケミが、萎縮してしまうのも無理はないことであった。

「となると使い道は───ひとつしかねェよな」

歯茎までむきだしにして、♂ローグは笑った。醜悪と表現するほかない笑い顔であった。

ふたたび♂ローグの姿が気配ごと消えた。
最初の襲撃と同じようにサプライズアタックを仕掛けようというのであろう。
もちろん♂ローグは相手がサイトやルアフを使えないことをわかっていた。
一方的な虐殺になるかもしれないことを承知で、その虐殺をしようというのである。

♂ローグは包丁の刃を地面にへたりこんだままの悪ケミに向けた。
ためらうような素振りは微塵もない。
一秒でもはやく。そう思っているのだろうか。
トンネルドライブを解いた♂ローグは、悪ケミの頭蓋目掛けて包丁の厚刃をすべらせたのである。

パッと悪ケミの紫色の髪が宙を舞った。
刃が悪ケミに届く寸前で、忍者の体当たりが♂ローグをよろめかせ、再び悪ケミを救ったのだ。

「おラァッ!」

手首を返し、♂ローグの包丁が今度は忍者を襲う。
ぶつかり合ったグラディウスと包丁の周囲に一瞬、火花が散った。
しかし、次の瞬間には♂ローグはふたたび姿を消していた。
微塵の隙も忍者には与えないということなのだろう。

♂ローグは執拗に悪ケミを狙って包丁を振るい、忍者はそんな♂ローグの凶行を、ぎりぎりのところで防いだ。
グラディウスと包丁のぶつかり合った回数は20回を超えていた。

忍者の額には汗が珠のように浮かび、こぼれ落ちた。
♂ローグもまた、全身にびっしょりと汗をかいていた。
悪ケミは腰を抜かしているのか、どうしようもできず、ふるえる肩を両手で押さえつけることしかできなかった。

何度目の攻撃であっただろうか。ついに均衡は破れた。
包丁が忍者の左肩を深く裂き、赤い血がどっとあふれ出した。
それでも忍者はわずかに呻いただけであり、続く♂ローグの一撃を、懸命に身をよじり、すんでのところで避けきった。

忍者のグラディウスの間合いよりもかなり外側で♂ローグは姿をあらわした。
♂ローグは肩で息をしはじめた忍者を見ながら、包丁に付着した忍者の血を歓喜に満ちた表情でなめた。

「さぁ、どうするよ。そいつを見殺しにして、敵討ちにでもはげんだ方がいいと思うぜ。
 1対1のガチンコなら、あんたもちったぁマシにやれるだろう?」

♂ローグは包丁で忍者を指すと、首を軽く回した。

「それともふたりなかよく連れ添って、天国行きの階段でものぼるか? あぁ?」

そのときである。
それまでずっと♂ローグに対してひとことも言葉を出してはいなかった忍者がはじめて口を開いた。

「残念ですが、私は彼女と違って天国には行けません。すこしばかり人を殺しすぎましたからね。
 ですが地獄に行くのも、まだすこし、先にしてもらいたいのですよ」

忍者の言葉に♂ローグは高々と笑った。

「そうかい、そうかい。いいねェ。人殺し同士でやりあえるってのはさ。
 たまんねェな。あまりの興奮で下半身までビンビンしちまいそうだ。
 それじゃ、嬢ちゃん守って最期まであがきな」

それだけ言って♂ローグはその身を周囲の景色に溶かしこんでいった。

<♂ローグ>
<位置:H-6>
<所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、馬牌×2、青箱×1>
<外見:片目に大きな古傷>
<性格:殺人快楽至上主義>
<備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す>
<状態:全身に軽い切り傷>


〈悪ケミ>
現在位置:H-6
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
状態:腰がぬけて動けない
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目


〈忍者>
現在位置:H-6
所持品:グラディウス、黄ハーブティ
外見特徴:不明
思考:悪ケミについていく。殺し合いは避けたい
状態:左肩に深い傷(致命傷ではない)
183181sage :2006/02/28(火) 18:02:36 ID:6Vi4iEjE
投稿競り負けたぜ、ヒャッホウ(涙)
内容もかぶってt

>>179の忍者がかっこいいからいいやヽ(´ー`)ノ
忍者ばんざい。
184名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 18:33:36 ID:jvcPsqxU
どっちらけ忍者助かりそうにないけどな(つД`)
185名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/02/28(火) 19:37:58 ID:Hzg4CMWc
 NG 遠い雨上がり

 悪ケミちゃん様、ご機嫌斜めのお天気に些かブルー。
 ──と言う様な事はうっちゃって、雨宿りの最中なのであった。
 人間、降りしきる雨なんぞに打たれれば普通体力を消耗するもので、風邪だって引いてしまう。
 それは勿論、世界制服を企む悪ケミとて例外ではない。

「鬱陶しい雨よね……」
 呟いて空を見上げるのだけれど、一行に雨に止む気配は無く。
 寧ろ、これから強くなりそうな気配すらある。
 一応の目標が決まった矢先にこれである。
 因みに木陰である。悪ケミハウスは雨に弱く、今は畳まれてバックの中だ。

「そうだね。でも、そんなには続かないと思う」
 と、相槌を打つ様に忍者が言った。
 彼は、腕を組み自然体で木の幹に背中をよりかけている。
 革靴には所々、雨がしみこんでいるのか黒い斑点が出来ていた。

「遅くても今晩ぐらいまでじゃないかな?結構強い雨だけど、こういうのは長く続かないよ」
「それって、今──お昼過ぎぐらいだろうけど、それでもずっと足止めされるって事?」
「うん。残念だけど」
 げんなりした顔で言い放つと、悪ケミは再び視線を空に移した。
 既に溜息も出ない。おまけに遠雷まで聞こえてきている。
 こんな最中を出歩いている人間なんて居ないんじゃないのか、とさえ思えた。

「まぁ、こういう雨の時は下手に動かないのが一番ね。風邪でも引いたらシャレにならないわ」
「私も、手持ちの薬には限界があるからね」
「薬?」
「うん。解毒用だけど、いざと言うときには風邪薬の代りにもなるから」
 言って、忍者は懐に忍ばせていた皮袋を見せる。

「それはんーと……抗生物質、だっけ。確か、カビから作ってるって聞いたけど」
「流石に博学だね。まぁ、緑ポーションに比べたら不便だけど」
「でも、あんまり飲みたくないのよね……それ。だって、効果が強すぎだもん。殆ど紙一重って言ってもいいかも。
 魔物の爪とかの廃血症なら兎も角、普通はちゃんとした薬が欲しいわね」

 雑談を交わしつつも、空は相変らずの灰色。
 と言うよりも、寧ろ黒に近く遠くの山に霞が登っているのが見えた。

「と、少しいいかい?今のうちに地図を確認しておきたいんだ」
「あ、いいわよ。ほら」
 差し出された地図を受け取って、忍者はペンを片手にそれを覗き込んだ。
 頭脳労働、と言っても千差万別。今は悪ケミにしか出来ない事があれば、当然彼にしか出来ない事もある。
 幾つかのマスが、すでに禁止区域で埋まっている地図に、彼は更に書き込みを施す。
 ここに到着するまでに発見した死体、通り過ぎたエリアには右上に×印、発見した砦には赤丸。
 (因みに、悪ケミは見つけた死体を物色する事を拒んでいた)
 ──それから、恐らくは人が多いだろうエリアを見繕って行く。
 禁止エリア、それから既に逃げ場が無くなりつつある場所を順に赤と橙にして除外。
 彼らが出合った海岸線。ここも除外していいだろう。
 そも、彼らが居た場所に人が多ければ悪ケミに出会う以前に忍者が気づいている。

 さて、と。一体何処に人が多いんだろう。
 そこで考えに詰まった。判断材料が無いのだ。

 参ったね。虱潰しに探すには広すぎるし、分が悪い賭けになるよ。

 地図を見ながら考えを廻らせる。
 声高に口に出しはしないが、殺し合いは現実として進んでいる。
 たった一人がその全員を殺した訳では無い以上、複数の殺人者がいると見て間違いは無い。
 だが──、一日そこらでこれほどの死者が出るには他にも何かある、と思った方が現実的だろう。

 一、これらの死者が現状に耐え切れずパニックを起した者以外の手による物も含むか。
 YES。曲がりなりにも牙のある者達だ。自分から殺そうとする人間もいる事は間違いない。

 二、その人数は多いか。
 ……判らない。判別のしようが無い。全員では無いだろうが、一人と言う訳でも無いだろう。
 それなりの広さがある島である以上、殺そうと思う人間が複数居なければ、これほど死者は出ないと思う。

 三、そしてある程度限定された場所で起こったか。それとも、発生が分散していたか。
 これもはっきりとは判らない。ただ──殺し合い、と言う目的がある以上、
ばらばらに飛ばされる、と言う事は無いと思う。積極的に仕向ける筈。
 つまり、ある程度固まった場所に飛ばされた、と思った方が正しいだろう。

 ならば、それは何処だろうか?
 島の中央付近か、そうでないか。
 二者択一だけれど、そもそもから仮定と推論の積み重ねの思考だ。
 信頼性がある、とは言えない。これまで余り人に出会えなかったのは不幸だった。
 それから、死体の観察も人探しが目的である以上、あまり意味は無い。
 強いて言えば、殺人者が近くにいるかいないか、それから殺人者がモンクかそうでないか、と言う事ぐらいか。
 ──、一時間程前だろうか、不幸な事に彼は悪ケミと共に休憩していた場所で
見つけた墓をこっそりと暴き、そこで怪力で腹部を穿たれたジルタスの死体を見つけていた。
 (最も、その後で悪ケミにそれを見つかったのであるが)

 どうしたものかな。困ったよ。
 不機嫌な悪ケミを傍らに、忍者は目尻を押さえつつ軽く肩を叩いていた。

<悪ケミ&忍者 暫くの間移動の後、雨で足止め。現在地不明 状態など変わらず>

-------------------------------------------------------------------------------
つい、こんな物を考えていた。
UPするかどうかは迷っていた。
今は反(ry。
どう見ても、NG作品です。本当に有難う御座いました。
186名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/01(水) 20:45:01 ID:dqqM9qjo
エロ小説スレ 十四冊目で♀WIZの過去話(追憶の彼方)を書き始めてみました。
バトROワとは全く関係ないのですが、読んで貰えれば幸いです。
続き物で全3回の予定です。
|彡サッ
187名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 06:07:46 ID:3/Zgopb6
アナザー.Assassinate[不明]


じりじりと肌を刺す強い日差し。
天に架かる太陽が、恵みではなく悪意となる地。砂漠。
日に灼かれ、色あせた熱砂は降り注ぐ光を同じ強さで照り返す。
さらに乾いた風が焼けた砂を巻き上げ、針となって全身を突き刺す。
毒虫さえも夜を待って砂の下に潜み、動く物と言えば砂そのものの怪物のみ。
砂漠の中心、アサシンギルドの置かれた土地はそんな場所なのだ。
土地の民であれば全身を服で覆い、頭にも布を巻くところだろう。
凶暴な日光に耐えるにはそれしかないのだ。
しかし今、日差しの下を進む半裸に近い姿の男女の列があった。

ドサッ
列の中程で女が倒れた。
しかし前後の男女と手錠を縄で繋がれており、そのまま砂の上を引きずられる。
「…せめて倒れた者の落伍を許せ。これでは他の者も長く保たん」
列の先頭近く、武装した一団に囲まれた男がかすれ声を出した。
彼を捕らえた鎖の端を手に、無表情な男が答える。
「あなたが目的を話して下されば、すぐにでも。アサシンマスター」
「…もう答えたはずだ」
ギルドマスターは連行される部下達へ視線を送り、苦渋に満ちた声を出した。
アサシン達は徹底的な武装解除を受けており、何一つ隠し持てないよう靴まで奪われている。
アサシンギルドでの戦いとここまでの強行軍で、もはや全員がいつ倒れてもおかしくない状況にあった。
「ではこのままプロンテラまで同行願うだけです」
「……」
無情な答えにギルドマスターは歯ぎしりする。
比較的丁重に扱われている彼でも、むき出しになった腕や首筋はすでに火傷のような状態になっている。
衣服の多くを奪われた部下達はその比ではあるまい。
彼らは今この瞬間も責め苦を受け、着実に死への道を辿りつつあるのだ。
…自分のために。
彼の背からふっと力が抜ける。それを見て取って無表情な男が質問した。
「あなたの目的は?」
迷った末、ギルドマスターは押し殺した声をしぼり出す。
「……お前達の殺戮ゲームを止めることだ」
「なぜ?」
即座に飛んだ次の質問に対し、ギルドマスターはかろうじてひび割れた唇へ嘲笑を浮かべて見せることに成功した。
「…お前達の行為は、時代に必要とされていないからだ。そうでなくても人の死が溢れている、この時代にはな」
「では、どうやって止めるつもりでした?」
皮肉めいた言いにも相手の無表情は動かず、ただ淡々と質問を重ねる。
ギルドマスターはしばらく答えなかった。しかし繋がれたアサシン達からさらに倒れる者が出るに至って苦々しげに口を開く。
「……♂アサシンに島の基本構造を聞き出させ、ゲーム中に破壊するはずだった」
「他には?」
「それだけで充分だ。この国に今すぐ同じ物を建設する余力はない」
「それを信じろと?」
「事実だ」
「……」
吐き捨てるような彼の言葉に対し、男は沈黙で答えた。
ギルドマスターが苛立たしげにうなる。
「質問には答えたぞ。部下を解放しろ」
男は無表情な顔に苦笑とも嘲笑とも取れる小さな笑みを浮かべた。
「あなたの要求は倒れた方を置いて行くことではなかったのですか?それにまだあなたの言葉が真実だという確証がありません」
そして再び冷酷に問う。
「もう一度聞きます。あなたの目的は?」

瞬間。
ピシッ
炎天が凍てついた。
「っ!」「な…」
殺気。殺気。殺気。
血も凍るほどの殺気。
そこに至って初めて灰色の人影に気付く。
どれほどの時間気配を消したままそこにいたのだろう。
砂丘の陰、風化した骨の間、何もない砂の上。
3つの影が当たり前のように周囲を取り囲んでいた。
ズッ
「ぐ…っ」
殺気と人影に気を取られた刹那。砂を割って飛び出した数個の紫影が杖を持った男女を切り裂く。
さらに三方の影が半弧状の衝撃波を放った。
「ソウルブレイカー!」
無防備なところに猛打を浴びた弓使いが崩れ落ちる。
そして気を取り直した一行が武器を構える前に襲撃者達は姿を消した。
「密集!対アサシン戦!」
奇襲によって遠距離戦力を半減させられた一団を統率し、男が無表情を捨てて叫んだ。
「サイト!」「ルアフ!」「集中力向上!」
人質と男を中心に円陣が組まれ、隠れたアサシンを見つけだす為のスキルが連呼される。
しかし、それにあぶり出されたのはアサシン達だけではなかった。
やや離れた位置にプリーストが3人、並んで現れる。
「「アスペルシオ!」」「聖体降臨!」
彼らの呪文によって追撃はすべて無効化された。
その間に襲撃達は充分な距離を取って気配を断ち、それを確認したプリースト達もテレポートして逃げる。
「武器持ち替え。盾構え。ニューマとアンクル、ファイアウォールを」
男は素早く防御を指示する。
待ち構えていたのがアサシンだけではないと言うことは、この襲撃が突発的な物ではなく計算された罠に違いないと言うことだ。
それはとりもなおさず、懸念していた反逆の根が広く根深い物であることを示している。
「アサシンども、降伏しろ!貴様らのギルドマスターと仲間は我々の手にある!降伏しなければこれより1分ごとに1人殺す!」
当然ながら即答はない。
(ワープポータルの用意をしておけ)
男は小声で指示を出し、中央に固められた人質に歩み寄る。そして再び声を上げた。
「まず1人殺す!降伏しないなら全員死ぬまでそこで見ていろ!」
「貴様っ」
ギルドマスターが睨むが、男は動じない。
最悪の形ではあるが、男としてはギルドマスター1人連れ帰ればそれでいいのだ。他のアサシンは彼に対する人質に過ぎない。
そして1人であればポータルで連れ帰れる。わざわざ砂漠を徒歩で横断する必要も無い。
人質と砂漠横断はギルドマスターに対する拷問道具に過ぎず――失うことで事実追求は遅れるだろうが、これほど周到な罠に掛かったとあっては仕方ない。
「では…」
『――――、――』
人質全員の命を絶ち、ポータルで帰還する。その腹を決めたとき異国の言葉が砂漠に響いた。
ミッドガッツの言葉に直すとこうなる。
「脱皮しろ、サイドワインダー」
188名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 06:08:58 ID:3/Zgopb6
その言葉を聞いた瞬間、歯ぎしりしていたアサシンギルドマスターの頭がビクリと動いた。
「今のは何と言ったのですか?」
男が不審げに問うが、気にした様子もない。
「うおおぉぉっ!」
つながれた鎖を両手で握り、死にものぐるいの力でバックステップした。
鎖の先を手に巻いていた男があまりの勢いに引きずられる。
「何を!」
もちろん男を引きずり、円陣を組んだ男女の体に遮られて大して下がれない。
無理矢理もう一度跳ねるが、ファイアウォールに弾かれ、罠に挟まれて動きが止まる。
それでも円陣の外に飛び出してはいた。
「ええい…っ!制圧射撃!」
男はギルドマスターを押し倒し、襲撃者が近寄れないよう自分たちの周囲に矢と魔法の雨を降せる命令を下す。
しかし
「――――!」
今度はギルドマスターの口から異国の言葉が響いた。

「「「「「ベナムスプラッシャー!!」」」」」
「馬鹿な…」
ギルドマスターの声に応え、幾重にも重なった叫びに男は当惑した。
叫んだのは人質の半数近く、およそ10名ほど。
おそらくベナムスプラッシャーを会得している者全員なのだろう。
しかし、そんなものを使えるはずがないのだ。
ベナムスプラッシャーの使用にはレッドジェムストーンが必要であり、さらに対象がある程度傷を負っている必要がある。
そのどちらの条件も満たしていない。身体検査には完璧を期して肛門まで調べたし、ギルド襲撃時に負った傷は治療した。
まして自分たちはアサシンと戦うために来たのだ。大半が鎧にアルギオペカードを使っている。
毒による攻撃など効くはずもない。
(――?)
何かが引っかかった。
しかしその意味に気付く暇はなかった。
ボバッ!ボボンッ!バシャッ!
人質達の肉体が凄まじい勢いではじけ、猛毒を帯びた血煙が一帯に充満する。
「があああぁぁぁっっ!」
10発近いベナムスプラッシャーの多重発動。
ロードナイトであっても生き残れる物ではない。
巻き込まれた武装集団が白目を剥き、泡を吹いて次々に倒れる。
敵を巻き込んでの自爆。
これこそがベナムスプラッシャーという術本来の用途だった。
ジェムストーンとは術の反動を吸収する、いわば安全装置である。敵もろとも死のうという時にそんな物は必要ない。
敵に傷を負わせる必要もない。負傷した自分自身が目標なのだ。
「聖体降臨かっ」
ギルドマスターの上で、ただ1人生き残った男がうめく。
アサシン達を守るためと見せかけ、その場全員の鎧を祝福していたのだ。
鎧を聖属性にしてしまえば、毒属性の攻撃は多少弱まるものの有効になる。
「あとは貴様だ」
ギルドマスターは答えようとせず、口調と表情を冷酷な殺人者のそれへと一変させて男の首を絞め上げた。
「放せっ……ぐぁっ!」
慌てて振り払ったその背を刃が貫く。
さらに近づく複数の死の気配。
姿を消していた襲撃者達だと気付くより早く、彼は蝶の羽に手を伸ばした。

「あの男、死んだか?」
「さあな」
ギルドマスターの言葉にアサシンクロスはそっけなく答える。
確かに蝶の羽が発動する直前、いくつかの攻撃は届いた。だが本拠へ戻れたのなら蘇生も治療も受けられるだろう。死んだとは思いにくい。
ギルドマスターは苦笑した。
「俺は一応ギルマスという事になっている。もう少しうやまえ」
「さっきまではな」
「ふん」
やはりそっけない返答にギルドマスター…いや、ギルドマスターだった男は肩をすくめる。
彼は影武者だった。
『脱皮しろ、サイドワインダー』
このキーワードによって解けるまで、強力な暗示で心の底から本物と思いこんでいた。
だが、本当のギルドマスターは別の場所に居る。
当然だろう。アサシンギルドは計画殺人を生業とする犯罪組織なのだ。国家をはじめとして敵対する組織・個人には事欠かない。
そんなギルドのマスターが、いかにも重要そうな場所の中心に、いかにもお偉いさんですとばかりに鎮座しているわけがないのだ。
騎士団や教会とはわけが違うのである。
ではなぜ、影武者に過ぎない彼を救出に来たか。
これも答えは単純。
アサシンクロス達は彼を救出に来たわけではない。
彼らの任務は”影武者の知識を親衛隊の手に渡さないこと”だった。
本物でないとはいえ長期にわたって影武者を演じてきたため、外部に漏れてはならないことも多数知悉している。
救出できれば最上であるが、難しいと見れば即座に口を封じる予定だった。
影武者もそれを察したからこそ自力で逃げたのだ。
失敗した場合、部下の自爆に巻き込まれる覚悟の上で。
暗殺者とは本来そういう存在であり、彼は暗殺者の中の暗殺者だった。
彼の掲げていた平和主義や正義感も、影武者としての暗示と共に植え付けられた作り物の性格に過ぎない。
アサシンを冒険者として世間に送り出すに当たり、アサシンギルドがただの暗殺組織ではまずかったのだ。
そこで対外的アピールのため、影武者は『独善的ではあるが正義の人』として設定された。
…もっとも、結果的には冒険者となったアサシン個々の言動の方が何百倍もの意味を持っていた。
本来アサシンとは相容れるはずのない教会の人間――プリーストの手助けを受けられるのも、彼らの築いたコネあってのことだ。
とは言え、彼こそが冒険者アサシンの任命や育成を行っていることを考えれば、間接的に効果はあったといえるだろうか。

「俺の次の任務は聞いているか」
治療を終え、さらにすべての死体を蘇生不可能なまでに破壊してから影武者が訊ねた。
アサシンクロスは答える。
「地に潜み、BR参加の目的を果たせ。以上だ」
「了解した」
BRに参加者を出した目的。
すなわちアサシンの強さ、恐ろしさを王国に思い出させること。
BRでは失敗したとは言え、こうしてそれを補って余りあるほどの死を振りまいた。
この事実が、そしてこれから続く王国との暗闘が噂になれば目的は達せられるだろう。
直属の親衛隊ではなくとも、その配下を殲滅したのだ。躍起になって捕らえにくるに違いない。
そして彼としても、このままにして置くつもりはない。
「では、な」
「ああ」
影武者はアサシンクロスへ軽く片手を上げてみせ、そのまま背を向ける。
お互いそれ以上の言葉はなかった。

この日よりアサシンギルドマスターと呼ばれていた男は消息を絶ち、王国の闇で暗躍し始めた。
189名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 06:09:42 ID:3/Zgopb6
>>113に対してアサシンGが正義過ぎてちょっと、と言う意見があったので修正話を書いてみました。
・113氏が一番描きたかったのは、アサシンギルドという騎士団や教会以外の組織が王国に反逆する部分なんじゃないかと考え、そこら辺もちょっとフォロー。…なってない?げふり。
・もはやROワ本編の人間が名前すら出てこないので完全アナザー扱いでお願いします。
190名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 08:43:25 ID:CPenbAIk
169.Murderer's show down [2日目午後〜夜]

それは何合目になろうか。
お互いの手にした刃が咬み合い火花を散らす。
弾かれるようにお互い飛びすさり、間合いを開く。

「はっ!しぶといじゃねぇか…この死に損ないがぁっっ!!」

♂ローグがさも楽しそうに吠える。
その獲物を狙う爬虫類を思わせる視線を冷静に見返し、次の刹那に備える。

旗色は刻一刻と悪くなっている。
左胸に受けた傷からどんどん体温が流れ落ちていく。
顔を濡らす雨のおかげで一見判らないが、脂汗が次から次へと沸き出し、血の気が失せた顔には重い疲労の色が滲んでいた。

「その死に損ない相手にすら手間取っている君が…人殺しを名乗るのかい?」

嘲るように問う。
が、相手も余裕の笑みを崩ず、挑発には乗ってこない。
すでに判っているのだ。
この死合は時間がかかればかかるほど忍者に死の天秤が傾いて行くのを。

双方クローキング、トンネルドライブという隠形移動の技を持つ以上、先に身を隠した方が不利になる。
技を維持する精神力が途切れた瞬間に、姿を消した相手に無防備な背中を晒す羽目になるからだ。
♂ローグには一撃必殺のバックスタブがあるが、背後を取らせなければ驚異にはならない。
距離を取っての弓の攻撃では、この遮蔽の多い林には避ける方法が幾らでもある。

(だが…)
逆手に構えたグラディウスをちらりと見る。
(せめて…手にした得物がカタールであれば…な…)
内心舌打ちをする。

対して自分にも一撃で相手を屠れる技がない。
ソニックブロウもグリムトゥースも使えない。これらの技はカタールを手にした時に最大限の威力を発揮するように作り上げられている。
毒を操る術はおそらくこちらが上だが、毒の扱いはお互い精通している。まず効かないと考えていいだろう。

決め手を欠いたまま、小手先のせめぎ合いを続けるしかないのだ。
目の前の殺人狂の実力は決して低いものではない。手負いの我が身では勝負はすでに付いていると言える。

だが、距離を稼ぐ事には成功した。もはや悪ケミの姿が視界から消えてしばらく立つ。
後は出来る限り時間を稼ぎ、自らの策を確実なものにすれば良いだけである。
私の目的は敵を倒す事ではない。友を逃がす事なのだ。

「く…くくく…っ」

不意に♂ローグが笑う。
我慢して押し殺していた笑みが溢れ出る様に、徐々にトーンを上げながら哄笑へと変わっていく。

「ひゃはははははははははぁ!!」
「…何を笑う?」

さも可笑しいと言わんばかりに、天を仰いで笑い続ける♂ローグ。
耳障りなその笑い声に、つい反応して問いかける。
その問いに、顔を上げたまま目だけを向け、にやりと頬を歪ませながら言葉を繋ぐ。

「てめぇの考えなんぞお見通しなんだよ」

そのままの姿勢で♂ローグは続ける。

「一緒にいたお嬢ちゃんを逃がす為の時間稼ぎのつもりなんだろ?
 昨日今日会ったばかりの相手に随分と入れ込んでるようだな、おい。
 そんなに具合が良かったのかい?」

くひひと下卑た笑いを浮かべる♂ローグ。
忍者は無言で返し、先を続けさせる。

「さぁてクエスチョンだ。これなんだと思う?」

そう言って懐から何かを取り出す。
それを見て忍者の心拍が跳ね上がる。

「馬牌…だと…」
「ひゃははっ。ご名答ってな。んじゃこいつに仕込まれた魔術も判るよなぁ?」

絶句している相手に、してやったりと言わんばかりの視線を送る。
飾り紐を指に掛け、陶器製の円盤をくるくると回して弄ぶ。

「てめぇを片付けたら、あのお嬢ちゃんと鬼ごっこの開始だぜ。
 多少の時間稼ぎ程度で俺様から逃げられると思うなよ?
 じりじりと追いつめて疲れ果てるまで追い立ててやる。
 泣き叫びながら命乞いをするお嬢ちゃんを裸に剥いて嬲って犯して…殺してやるよ」

手にした包丁に舌を這わし、愉悦の表情を浮かべる。

「ああ、どうやって殺してやろうか。
 考えただけでも勃っちまうぜぇ。

 両手両足を切り取って、芋虫みてぇに地べたを這わせてやるのもいい。
 目ン玉潰してから追いかけ回すのも悪くねぇ。
 言う事聞けば助けてやると期待を持たせて、徹底的に犯した後でゆっくり切り刻むのも好みだけどな。
 両足潰して禁止領域に置き去りってのも楽しそうだが、やっぱとどめは自分で刺してぇし。
 シメはやっぱりばらばらに切り分けてやらねぇと。
 女の体は柔らかくて張りがあるから切り応え抜群だもんな。
 ああそうだ、てめぇにゃお嬢ちゃんの首でも土産に持ってきてやろうじゃねぇか。」

おおよそ普通の人間とは嗜好がずれているらしい。
聞いているだけで気分の悪くなる様な想像を、心底楽しみ、それを実行しようとしている。

「下衆が」
「ひゃはははははぁ!
 てめぇの死体と仲良く並べてやるよ!
 歯ぎしりしながら死んどけや!!」

馬牌を懐に戻すや否や、弾かれたように飛び出す♂ローグ。
一瞬で間合いを詰め、左から右へと包丁を走らせる。
横凪の一閃をグラディウスで受け流し、そのまま鳩尾めがけ抜き手を放つ。
♂ローグは受け流された勢いのまま、体を半回転させ突きをかわし、重い蹴りを打ち込む。
バックステップで蹴り足を避ける忍者。
蹴りが流れ、一瞬体を崩した♂ローグめがけて体当たりをするように刃を突き出す。
が、それも読んでいたと言わんばかりに互いの得物を咬み合わせ、受け止める。

ぎゃり…
鋼が擦れ合う音を立てながら、力比べに入る。

「ったくマジでしぶてぇなぁっ!!糞野郎がぁっ!!!」

体重を掛けて忍者の体を押し戻し、さっと間合いを開ける♂ローグ。
お互い一挙一足の距離を保ったまま、にらみ合いに戻る。
ぴん…と張りつめた空気が雨音すら消し去っていく。

膠着した殺し合い。
飾られた絵画の様に一寸の揺らぎもなく。
途方もなく長く、刹那ほどに短い時間の中で。
最後の一手が打たれようとしていた。
191名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 08:44:03 ID:CPenbAIk
がさり…

護る為にその身を盾にした男は、絶望の足音を聞いた。
屠殺の快楽に取り憑かれた男は、満面の笑みを浮かべた。

それは濡れた草を踏みしめるブーツの音。
逃げたと思った悪ケミがいつの間にか近くまで来ていたのだ。
おそらく剣戟の音を頼りにこちらを目指しているのだろう。きょろきょろと首を巡らしている。
悪ケミはまだ彼等に気が付いていない。

すでに毒蛇の餌場に足を踏み入れているというのに。
すでに死神の大鎌がその首に掛かっているというのに。

(何故…)
忍者は思う。
またその一方で、

(やはり…)
と思う。
彼女は口では世界せーふくなどと言ってはいるが、可笑しいほどに悪人にはなりきれない。
逃げろと言った所で、はいそうですかと知り合いを見捨てて逃げられる様な子ではないのだろう。
そんな優しい子だからこそ、私は彼女に希望を託し、礎にならんとしている。

「ひゃはははぁ!てめぇもいい加減馬鹿かと思えば、そのツレも大馬鹿女と来たモンだっ!!」

♂ローグがバックステップで忍者の間合いから離れる。
すでにその手には矢をつがえたクロスボウが構えられている。
その挙動を押さえるには、バックステップ分の距離が絶望的に遠い。

狙いは…悪ケミ。
先ほどの♂ローグの叫びを耳にし、こちらに気付いたのであろう。
狙われているのが自分であると認識して、驚愕とも恐怖とも付かない表情に顔を歪ませている。

この一手は罠である。
だが忍者には罠に乗る以外の選択肢が残されていない。

自らの体を♂ローグと悪ケミを繋ぐ射線上に滑り込ませる。

ドスドスッ!!
立て続けに撃ち込まれた2本の矢が、右肩、右脇腹へと突き刺さり、のけぞる様に倒れ込む忍者。

「いやああああぁぁっっ!!」

悪ケミの悲鳴が空気を震るわす。
倒れ込む際に一瞬見えた♂ローグの顔がにぃと歪んだ笑みを浮かべていた。
その顔を脳裏に浮かべながら、忍者は小さく呟いた。

───悪いが…最後の一手はこっちが貰う

忍者は倒れ込みながらも悪ケミに向かってそれを放り投げる。
♂ローグにも一瞬の油断が有ったのだろう。宙を舞うそれを見ても咄嗟に動き出せなかった。
悪ケミの手元に吸い込まれるように投げ込まれたそれは…

2つの…馬牌。

「走れえええぇぇっっ!!」
「てめぇっっ!!」

♂ローグが悪ケミに向けて走り出す。
その眼前にグラディウスを投げつけ、一瞬足が止まった所へ跳ね起きた勢いのまま飛びつく忍者。
横合いから体当たりを食らい、♂ローグと忍者はもつれる様に倒れ込む。

「行くんだ!!君には目的があるのだろう!!」

♂ローグの凶刃が閃く。
顔に、腕に、首筋に、振り下ろされるたびに鮮血を撒き散らしながら、それでも♂ローグを押さえ込む腕に力を込める。

「生き延びて、世界せーふくを成すんだろう!!」
「でもっ!!」
「行くんだああぁぁっ!!」

悲痛なまでの叫びに、何かを言いかけて…ぐっと言葉を飲み込む。
手にした馬牌の一つを両手で折る。青い魔力の迸りと共に甲高い馬のいななきが響き渡る。
泥と雨と、涙にまみれた顔を上げて、悪ケミは走り出した。

その儚くも決意に満ちた悪ケミの顔を見て、忍者は満足そうに微笑んだ。

在りし日の忍者を名乗る青年が示してくれた「思い」
自ら忍者を名乗り次の者に託したかった「思い」
彼の様に形見を残せた訳では無いのだけれども。

───私にも…できたのだろうか


◇◇◇


「ち…あの抜き手は最初から馬牌狙いだったってワケかよ」

ようやく覆い被さっていた忍者の体を蹴飛ばして、体を起こす♂ローグ。
何度包丁を叩きつけたか判らない。すでにぼろきれの様になったそれを見て唾を吐く。
虫の息と言うのであろう。むしろまだ生きている事が不思議な位であった。

「胸くそ悪ぃぜ…お嬢ちゃんにも逃げられちまうしよぉ」

立ち上がり、血と泥にまみれた服を見て小さく舌打ちをする。
腹いせにぼろきれの頭が有ったであろう部分に、足を振り上げ、下ろす。
めきゃっと言う音と、びくりと跳ねるその体の最後の足掻きが、足を伝って体を通る感触に少しだけ気が晴れる。

「まぁいいさ…てめぇが必死に逃がしたお嬢ちゃんも…必ず俺が殺してやらぁ」

───ひゃはははははははははぁ!!

夜の帳が降りる中、返り血で赤黒く染まった死神が…いつまでもいつまでも笑っていた。


<忍者>
現在位置:I-6
所持品:グラディウス、黄ハーブティ
外見特徴:不明
思考:悪ケミについていく。殺し合いは避けたい
状態:死亡

<♂ローグ>
現在位置:I-6
所持品:包丁、クロスボウ、望遠鏡、寄生虫の卵入り保存食×2、青箱×1
外見:片目に大きな古傷
性格:殺人快楽至上主義
備考:GMと多少のコンタクト有、自分を騙したGMジョーカーも殺す
状態:全身に軽い切り傷。

<悪ケミ>
現在位置:I-6(西に向かって逃走中)
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式、馬牌×1
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<残り28名>
192名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 09:36:37 ID:73cIRb42
>>190
>───私にも…できたのだろうか

アサシン物語キタ──(゚∀゚)──!!
はげしくGJでございますですよ。
すばらしい。忍者も♂ローグもすばらしいっ。
いいもの読ませていただきました。

あえてひとつ重箱の隅をつつくとしたら
>「その死に損ない相手にすら手間取っている君が…人殺しを名乗るのかい?」
人殺しを名乗ったのはNGの方で、168話の方では名乗ってないってところ。
でもそういう会話が冒頭までにされたと思えば大丈夫なんですけどね。

それにしてもいいバトルだった。
あぁ、忍者・・・(つД`)
193名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 10:27:32 ID:R2YlIhIM
>>190
忍者ぁぁ!!
なんて格好いいバトルシーンなのか…ため息ものですた。
♂ローグも忍者もいい戦いだったよ…
GJ!!
194190sage :2006/03/03(金) 10:31:14 ID:CPenbAIk
>>192
ああああ…ご指摘ありがとうございます。
まだまだこのスレの猛者達に遠く及ばない_| ̄|○
195名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 14:33:02 ID:73cIRb42
>>190で触発されたのでアサシン物語(バトROワ版)を書き書き。
本当のアサシン物語がすばらしすぎて・・・書くんじゃなかったと反省しつつ投稿。


Another Story. アサシン物語

その少年は親の顔を知らずに育った。当然のように物としてあつかわれ、売られ買われる生活であった。
はじめて人を殺したのは、自由を獲得するためであった。
しかたがなかったのだ。殺さなければ、自分が殺されていた。
それほどの労働を少年は幼いからだにしいられていた。

それでも少年の心は痛んだ。
奴隷という形で育てられたにもかかわらず、少年の心には人殺しの罪悪に痛む良心があったのである。
それはひどい矛盾であった。
なぜなら少年が殺した男はひとかけらの良心すら少年には教えていなかったのだから。

少年は痛みの理由がわからなかった。
わからなかったけれど、せめて自分がしたことは許されることであって欲しい。
そう神さまに祈った。

それから少年は砂漠の町の片隅で、つつましくも穏やかな生活を送った。
裕福とはほど遠い暮らしであったが、けして悪いものではなかった。
ときどきは身を守るために剣をふるうこともあったが、戦うことはそれなりに得意であったらしく、少年が負けることはなかった。

そんなあるとき少年は知った。
人を殺すことを糧として生活を送る人々がいるということを。
それは少年にとっておどろきであった。
きっと心が痛むからなんだろうな、と少年は思った。

だから自分が痛くないようにお金を払って人に人を殺させるんだろう。
そして僕は人を殺したことがある。
だからきっと大丈夫だ。

そんな理由で少年はアサシンになることを思い立ったのである。

アサシンになるためにはシーフギルドに認められ、シーフにならなければならない。
少年がアサシンという職業について知っていることは、人殺しでお金をもらうことを除くと、それだけであった。
そこで少年は、町の南西にある武器屋の裏手でいつもつまらなさそうにたたずんでいる男のことを思い出し、アサシンについて聞くことにした。
少年は彼がアサシンではないかと疑っていたのである。

「ねぇ、シーフギルドってどこにあるの?」

男はからだも、頭までも灰色のぼろ布でおおわれていたが、少年の言葉に布からわずかに覗く瞳を揺らすと、ふらりと起き上がった。

「連れていってあげよう」
「ほんとうですか?」

ぼろ布ではっきりとは見えなかったが、男は頷いたようであった。

「どうしてシーフになりたいんだい?」
「僕はアサシンになりたいんです。だって僕はアサシンに向いていると思うから。
 おじさんもアサシンなんでしょ」

あどけない表情で聞く質問ではない。

「おじさんってのは俺のことかい? これでもまだ20代なんだけどな。
 それはそうと、俺はアサシンじゃない。残念だったな。
 俺はアサシンよりもずっと弱い、忍者さ」
「忍者?」
「そうさ、アサシンになりきれなかったものの称号さ。それを忍者っていうんだよ」
「でもおじさんは弱そうに見えないよ」

素直な少年であった。彼はまっすぐな瞳で男を見ていた。

「そりゃ、お前はまだ盗賊でもないノービスだろう。さすがにノービスよりは強いぜ。
 それよりもだ。お前、アサシンになりたいって言ったな。
 うん、偶然の出会いってやつも悪くはない。
 せめてお前が俺より強くなれるように、そこまでくらいは鍛えてやるよ」
「本当ですか?」
「あぁ、約束だ」

そして少年はシーフギルドの試験を難なく突破し、晴れてシーフとなった。

「転職祝いにコイツをやるよ。コイツはアサシンだけが使いこなせる武器だ。
 だからコイツを使いこなす日を目標に、がんばりな」

そう言って男が少年に渡したのは、カタールに分類される武器の中でも有名な、ジュルという名の武器であった。
しかし少年はそのことを知らない。知らないけれど少年はしあわせそうな笑顔で男にお礼を言うと、ジュルをカプラサービスに預けた。
いつかアサシンになったら。そういうことなのであろう。

それから少年と男は旅をはじめた。
はじめて見た海。虎の住む竹林。森の奥に群れを成す狼。雪の降る町。人であふれかえった首都。
ゴブリン族やオーク族の村。訓練砦と呼ばれる冒険者の城。錬金術師の町や、魔導師の町。
さまざまな世界を体験し、さまざまな冒険をした。

おどろいたのは少年を鍛えてくれると言った男がほんとうに弱かったことであった。
魔物との戦いでは、彼はいつも少年のうしろに隠れ、直接戦ったのは少年だった。
しかも少年が戦闘中であっても気まぐれにふらっと姿を消して、またふらっと戻ってくるのである。

全然鍛えてもらってないような気がする。少年はそう思った。
事実少年の成長は少年自身の努力によるもので、
男から教わったことといえば地理に関すること、旅に必要なことなどの、いわゆる冒険者としての知識であった。

それでも少年は男と一緒に旅を続けた。
男が話す世界や、連れて行ってくれる世界は不思議に満ちていて、楽しかったのである。
196名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 14:33:23 ID:73cIRb42
───物事には始まりがあれば終わりが必ずある

数年の旅を経て、少年は成長していた。
アサシンとなるにじゅうぶんな力をたくわえ、男とともにアサシンギルドまでやってきたのである。
しかし男はギルドに通じる橋の手前で少年に別れを告げた。

「いまの君なら試験なんて楽勝さ。だからここでおわかれだ。
 明日から君は、人を殺すことで糧を得る、アサシンだからな」
「忍者もアサシンなんでしょ。だったら一緒に・・・」

少年のさみしげに引き止めようとする声に、彼は背中を向けたまま、右手で別れの手を振った。

「アサシンギルドに俺の居場所はないのさ。俺は人を殺せない忍者だからな。
 次に会うときは・・・いや・・・・・・じゃあな。強くなれよ」

砂漠の砂けむりに消えていく男の背中を、少年は見送ることしかできなかった。

そして少年はアサシンへの転職試験に無事合格し、アサシンになった。
ところが少年はそこで自分の未熟さを痛感させられることになる。
人をうまく殺せないのだ。いままでの冒険では魔物としか戦っておらず、少年は人との殺し合いに慣れていなかったのだ。
少年以外の新人アサシンがジュルをたくみに使いこなし、次々と任務をこなしたのに対し、
少年は命を懸けての殺し合い、その根本的な部分から鍛えなおさなければならなかった。

まずは武器をどうにかしなければ。こんな店売りの武器じゃ、人はうまく殺せない。
なにかもっと強い武器はないだろうか。
そう考えたとき、少年はあることを思い出した。

そうだ、そういえば彼があのとき。
長い冒険の旅で少年はそのことをすっかり忘れていたのである。
コイツはアサシンだけが使いこなせる武器だ、そう言って彼が渡してくれたジュルのことを。

モロクの町に帰った少年の顔を、カプラサービスのグラリスは覚えてくれていた。
これでよろしかったでしょうか。そう言って左右一対の刃物、ジュルを渡してくれたのである。
あの頃はわからなかったのだが、少年はひと目見て、そのジュルが普通のジュルでないことに気づいた。
刃先がするどく、触れただけで鋼鉄すらも両断できそうな、魔力のかがやきに満ちていたのである。

「これは・・・間違いない。カードがささってる。それも・・・」

ジュルにささっていたカードは三枚で、どれも同じカードであった。
青い骨だけの怪物、ソルジャースケルトンを封じ込めたカード。
トリプルクリティカルジュルといわれる代物であった。

ジュルを見つめる少年の目に、涙がにじんだ。
強くなれよ。彼の声が少年の頭の中で響いていた。

───血塗れた人生が幕をあけた

その日から少年は変わった。ゆるぎない強さだけを求めた。人を殺すための強さを、である。
そして殺した。任務であれ、日常であれ、人であれ、魔物であれ、ともかく殺した。
トリプルクリティカルジュルの力がそれを容易に可能としてくれた。
もちろん少年の素質というものもあったのだろうが、少年は殺して殺して殺しまくった。

血の臭いにもなにも思わず、返り血で染まった服もそのままに、少年は人殺しを続けた。
紅い色を見ない日などなかった。いつしか<紅>という文字が少年自身の呼び名にもなるほどであった。

そしてさらに数年が流れた。
アサシンの世界で<紅>の名前を知らないものなどはいない。
<紅>は同業者ですら恐怖する存在となっていた。

少年はもう少年ではなく、筋骨たくましい青年になっていた。
どれほどの死線を乗り越えてきたのだろうか。他を圧倒するほどの死の気配を撒き散らしていた。
アサシンとして人を殺し続けてきた少年は、もはや人ではなく、人の命を食らう死神となっていた。

けれど死神の胸の中にはいまだ、彼との日々が息づいていた。
彼の言葉が忘れられなかった。彼との冒険が忘れられなかった。
人を殺すたびに心はいつも引きちぎられるかのごとく悲鳴をあげ、死神はいつもあの頃に帰りたいと思っていた。

───そして運命の夜をむかえた

その日死神が殺したのは、ひとりのアサシンであった。
ぼろ布で顔を隠したアサシンであった。
アサシンであるのにアサシンギルドの方針にそむき、ギルドにあだなそうとしている。
そう知らされた死神は、いつもと同じようにためらうことなくアサシンを殺したのである。

トリプルクリティカルジュルが月明かりに照らされ、深紅のかがやきをひらめかせた。
殺したアサシンの顔に巻き付いていた布が、ふわりとはがれ落ちた。
そして死神は、布の下にかくれていたアサシンの顔を知った。

彼であった。

「強くなった、な。良かったじゃないか、お前は、立派なアサシンだよ」
「どうして・・・どうして・・・・・・」

わけがわからなかった。ただ彼を救えないということだけはわかっていた。
どうして教えてくれなかったのか。俺だ、とひとこと言ってさえくれれば───

「お前に、教えたかった。人を殺すということが、どういうことなのかを。
 人が人に殺されるということが、どれほど哀しいことか、を」

嘘だ。嘘だ。こんなのは夢だ。悪い夢だ。
気がつけば死神は泣いていた。片膝を地面につけて男を抱きかかえながら、死神は顔をくしゃくしゃにして、大粒の涙をこぼしていた。
それはかつて少年だった男が、死神になってからはじめて流した涙であった。

「あぁ・・・私の選んだ道は・・・・・・」

なんて愚かだったのだろう。
なにも理解していなかった。人を殺すということがどういうことなのか、なにもわかっていなかった。
私にとって、彼と過ごした時間こそが、ほんとうにかけがえのない、大切なものだったのに。

その日死神は、ひとりの人間に戻った。
人を殺すことでどうしてあんなに心が痛むのか。死神はその理由を彼を失ったことによって知ったのである。

───ねぇ、ちょっと聞いてる?

「貴方を私の子分にしてあげるって言ったのよ」

かわいらしい少女のちょっと怒ったような声で彼は現実にかえった。
どうもすこしだけ、昔を思い出していたらしい。

「子分っていうのはなにをするんだい?」
「決まってるじゃない、私の世界せーふくの手助けをするのよ」

そうか、と彼はうなずき、目の前の少女の自己紹介を待っていた。

「私は悪ケミ。いずれ世界をせーふくする女よ!。あなたは?」
「私かい?私は───」

思いをつなげよう。たくされた思いを、この少女に。
私と少女との出会いも、彼との出会いと同じ、ただの偶然なのかもしれない。
それでも私は思いをつなげよう。希望という名の思いを。
197名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 17:06:06 ID:m8yNkv/w
忍者(´;д;`)シンジャッタノー

GJ
198名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/03(金) 21:14:08 ID:NmFQn2qY
169.小さな運 [2日目夕方]

しとしとと降り続く雨が男の体を濡らしていく。

ゆっくりと男は歩を進めながら、時折あたりを警戒する。

男はわずかに痛むコメカミを右手で軽く抑えながら歩いていく。

男の左手には鞘に収められた獲物、ブレストシミターが握られている。


(運が・・・よかった、な)


♂クルセははずせば武器を諦めるつもりでシミターをグランサモンクに対し投じた。

シミターが運良く奴にあたれば最良、外れて木にあたり剣の魔力が発動すればそれもまた良し。

投擲自体には自信はあった、しかしシミターはグラサンモンクに当たることはなかった。


(不幸中の幸い、といったところか・・・)


だが天は彼に味方した。

投じたシミターはグラサンモンクのすぐ横にあった木に突き刺さり、そして剣の魔力が発動した。

だがグラサンモンクは死の気配でも感じたのか、咄嗟に爆発を回避し、軽症ですんだようだ。

♂クルセは冷静な瞳を浮かべたまま踵を返しその場を立ち去ろうとした。

その数秒後、彼の目の前にザクリと音を立ててブレストシミターが空を舞い、彼の元へともどってきた。

♂クルセはシミターの柄を握ると自嘲気味に薄く笑うと、グラサンモンクに興味を示すこともなくその場を去った。


(コメカミの傷はたいした事はない、か)


やがて♂クルセの視界が開ける。

うっそうとしげる木々が終わりを告げ、背の低い草原へと変わった。

♂クルセは森の終点の木に寄りかかるように腰をおろす。


(まだ雨はふりつづいている、か)


(この雨・・・なれぬものには厳しいものとなるだろう・・・)


(うかつに動きもとれず・・・足回りも時間がたてばたつほどに悪くなる・・・)


(だがそれは誰とて同じ・・・ただ、物を言うのは経験の差だ、な・・・)


(この雨ならば移動はしたくない、周りもそう思うだろう。ならばいつもより安全と考える、だろう)


(だがその安全という考えは間違っている)


(一人でも殺そうという気があるものがいるかぎり・・・安全は起こり得ない)


(まだ時間はたっぷりとある・・・あせる必要は・・・ない・・・)


(だが・・・減らせるときに減らしておくのもまた大切、か・・・)


♂クルセは鞘に納まっているシミターを握るとゆっくりと立ち上がる。

思えば自分はいったりきたりしている、たまには違うところに行くのもいいだろう。

そう考えでもしたのか、♂クルセはゆっくりとした足取りで北へと進路を向けた。


(前はこんなにも落ち着けたことはなかった・・・な・・・)


(そういえば・・・)


(前もこんな雨が降り続いていたな・・・)


<♂クルセイダー>
髪型:csm:4j0h70g2。
所持品:S2ブレストシミター
備考: 傷はほぼ回復、コメカミの傷は血が止まった、わずかに疲労
現在地:E-6 北へ移動中
199名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/06(月) 15:36:10 ID:iGXpyASA
>>195
前半を見てあるアサ物語の焼き直しかと思いきや、アサシン=暗殺者の悲哀を帯びたストーリー展開で楽しく読ませていただきました。
アナザーなのが勿体ないくらいGJ
>>198
158.涙雨の戦闘後のフォロー&♂クルセの移動の矛盾の修正乙です。

停滞している様ですし、そろそろ定時報告の話を挟んで時間帯を夜〜朝に移行しても良いですかね?
200名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 06:40:30 ID:LMge1mTs
>>199
う〜んどでしょね。まだ夕方近辺(雨が上がった後)の話がふぁると忍者しか無いんですよね。
定時放送B(夜8時)前に死者が出る話考えてる人は、それが誰かを「入れずに」申告を〜w

私は雨中向きのネタは思いついたのに使い方を思いつかない…。
誰か使える物ならドゾ。
つ[属性場実装以前ROにあった計画][天候と魔法]

そしてもっとお馬鹿なアイデアの方を文章化したので投下してみます。
201名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 06:44:02 ID:LMge1mTs
170.よげんのしょ[2日目午後・雨〜夕方]


――黙示録。

終末の予言が書かれている書物。

元々は神の啓示を受けて異教の聖人が記した、その宗教における教典の一部である。
ただし内容があまりに難解な上に不吉な部分が多く、その宗教においてさえ一般の教典とは区別されていた。

例えばこんな調子である。
『第一の神の使いがラッパを吹き鳴らすと、血の混じった雹と火とが現れ、地上に投げつけられた。地の三分の一は焼け、木々と青草もことごとく焼けた』
『第七の神の使いがラッパを吹き鳴らすと、大きな声が天に起こりこう告げた。「この世の国はすべて我が神と、そのメシアの物となった」』

内容の真偽についてはさておこう。難解と言うことは解釈次第で好きなように読めるという意味でもあり、真偽など論じようがない。

だが、予言とは何かについてなら論じられる。
不審に思うかも知れない。
予言とは将来起こる事を示した言葉や文章のことではないか、と。
もちろんその通りである。

だが、落ち着いてもう一歩考えを進めてみよう。
ある男が明日外出先で事故死する、と予言されたとする。
その予言によって、彼は身を守るために外出しないと言う選択が可能になる。
すると予言は外れてしまう。
…矛盾である。当たらない物をなぜ予言と呼べるのか。
つまりこの予言が予言であるためには、彼は何があろうと外出し、事故死しなければならないのだ。

ならば、こうは言えないだろうか。
「予言とは内容通りの結果を引き起こす、呪いの一種である」


その黙示録を座布団にして♂モンクは物思いにふけっていた。

(どーしたものかしら)

大粒の雨が木の葉を叩く激しい音。
息苦しくなるぐらいに青臭い、森の香りが充満した大樹の陰。美女と2人肩を寄せ合って雨宿り。
実に野生を際立たせる状況で、あーなったりこーなったりしてもおかしくはないのだが…。
ちら、と隣を見る。
膝を抱え、そこに下半分を埋めた♀騎士の白い顔は、雨空の下ではなおさら青白く見えた。

(きっついねえ)

彼女を美しいと思うほどに、心は踊るどころか重くなって行く。
生き残ろうという意思に乏しい人間を守りきるのは想像以上に難しい。
♂クルセとの遭遇で気付いた弱点も、全部引っくるめて背負い込むと決めた。だからこそ今は正直、男女の仲がどうこうという余裕まではない。
ふぅ、と意識せずため息が漏れる。
それにかすかに反応して♀騎士が長いまつげを揺らしたが、彼は気付かない。

(♀騎士たんの望みも問題だし)

彼女は仲間を求めている。
おそらく戦いを嫌う余り他人もそうあって欲しいと願い、その確証を得るために。
だがそれは大いなる自己欺瞞だ。
この島にいるのが本当に平和主義者ばかりだと信じられるなら、仲間など探さなくても心穏やかでいられるだろう。
だがすでにいくつもの死を見聞きし、悪意が満ちあふれているのを知った。だからこそ善意を求めずにはいられない。そういうことだ。
つまり彼女も無意識では他者の危険性を理解していて、ただ直視できてないだけなのではないか。

(指摘したげるのがいいのかね)

現実を直視させてあげた方が彼女のためだ。それは間違いない。
けれどそれでまた泣かせてしまったら?
自分は口がうまい方ではないし、今度もなだめられるとは限らない。
♀騎士の信頼を失うだけになれば、危険はより大きくなる。

(…説教はプリーストの仕事だってーの)

はぁ。
もうちょっと別の修行も積むんだった、と彼はまたため息をついた。

「あの…」
そのため息をどう思ったか、♀騎士が声を掛けてくる。
「ん?」
「いえ…」
しかし♂モンクが顔を上げると口ごもり、また膝に顔を埋めてしまった。

彼は考える。

(何だ?もしかして小便かな?…っていくら何でもストレートに聞くのはマズイよな)

そしてとてつもなく遠回しな言い方を思いついた。
「ああ、雨のせいでちょっと冷えてるね。座布団使うかい?」
「あ、いえ。大丈夫です」
意図はまったく伝わらなかったようだ。
差し出した黙示録のやり場をなくし、彼はその分厚い書物で肩を叩く。
「んーとじゃあ…」

フワッ

叩いた肩に、厚い布地でも挟んだかのような妙に軽い手応えがあった。
驚いて黙示録を見ると気弾のような薄青い微光をまとっている。
いや。彼の腕も、肩も、その全身が。
髪の毛が、そして全身の毛が逆立って行く異様な感覚。

――帯電――!

『気』と同種のエネルギーが引き起こすその現象の意味を悟り、彼は♀騎士を全力で突き飛ばした。
「きゃっ!?」

――パリパリバリバリッドゴオオオォォォォオオォォンン!!

ほとんど同時に彼らの雨宿りしていた木が爆発する。
にわか雨にはつきものの自然現象――落雷。
「……!」
♂モンクの全身を激しい衝撃が打ち据え、意識を暗転させた。
202名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 06:44:31 ID:LMge1mTs
「♂モンクさん!」
一瞬の轟音と閃光に麻痺した五感が回復し、♀騎士は悲鳴を上げた。
焦げ臭い匂い。
雨宿りに使っていた大木は無惨に裂けて白煙を上げ、その下の地面も広範囲にわたって焼けこげている。
そしてその中央に♂モンクが倒れ伏していた。

「だめ!死なないで!」
背中に大きな傷は見あたらない。
かすかな望みと共に、力無く伏した重い体をひっくり返す。
そして息をのんだ。
髪の毛は逆立ったままチリチリに焼けよじれ、裂けて血を流す右手から右脚にかけて服が真っ黒に焦げている。
胸が、動いていない。

「死んではだめ!」
彼女は♂モンクの胸を必死に押した。

戦場の光景が脳裏をよぎる。
混乱するミッドガッツを避け、隣国の庇護を求めようとした国境近くの小さな街。
反乱、そして鎮圧。
自国の民に刃を向けた不名誉な戦い。
他の街への見せしめとして荷担した者は一族すべて誅殺され、
まだ息のある子供に治療することも許されなかった。

死んで行く誰かをただ眺めているのはもう嫌だ。
一回、二回、三回、四回、五回――
心臓の真上に手を押しあて、体重を掛けて押す。
そして唇を合わせ、強く息を吹き込む。
正規軍で教える応急処置の、蘇生手順通りに。

さらにもう一度。
一回、二回、三回、四回、五回――
ふーっ
もう一度。
一回、二回、三回、四回、五回――
ふーっ
雷鳴が遠ざかり、雨の上がる予兆に氷の粒が降り始める中、一心にそれを繰り返す。

どれぐらいの間続けたのだろう。
「ぅ…」
♂モンクの口から息が漏れ、うっすらと目が開いた。
同時にその心臓が大きく脈打つ。
「あ…よかっ」

「Yeeeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaah!!」
よかった。と言い切る間もなく、♂モンクが奇声を上げて跳ね起きた。
そして妙に歯切れのいい節を付けて歌い出す。
「♪Why・キミ・キス・オレ・フォーリンラヴ♪?」

「……あの?」
蘇生していきなりの、狂態とも言える行動に♀騎士は目を丸くする。
♂モンクは続けて叫んだ。
「Baaaad!!…何か・変だよ・オレっち・言葉・うまくナイナイ!♪」
見事なまでのアフロになってしまった頭を抱え、いかにも困惑した様子なのだが…言葉はひたすら明るいリズムを刻み続ける。
それは一部のバードが即興的に歌う、ラップという曲によく似ていた。

♀騎士の視線に疑念の色が混じる。
「ふざけてるわけでは…ありませんよね?」
「♪NoNo!オレっち・生きるよ・愛と真実♪……っNoooooooooooo!」
♂モンクの答えは最後が絶叫になり、焦げた大木に頭を打ちつけ始めた。
「わ、分かりましたから落ち着いて!」
どうやら本気で苦悩しているらしい。
そう判断して慌てて彼を押し止め、そこまでの歌の内容について考えてみる。
妙な節を無視すれば何とか内容を理解できそうだ。

「ええと…何か思い通りに話せない。悪意や冗談ではない。という意味でいいですか?」
最初にもう一つ何か言っていた気がするが、触れない方がお互いのためだろう。

♂モンクは大きく頷き、
「Cooooool!」
ビシッと両の人差し指を彼女へ向けた。
そして泣き笑いのような表情でへたり込み、鳥の巣がごときアフロ頭を抱える。
やはり自分の反応によほどショックを受けているようだ。

「♪な・な・な・なぜ・Why・なぜ・Why♪」
「本当に、どうしちゃったんでしょう」
♀騎士はまだ白煙を上げている大木を見上げた。
「やっぱり雷に打たれたから…?」
「♪知らない・オレ・そんな奴♪みんな・歌うぜ・ユピテルサンダー!♪」
「ですよね」
ユピテルサンダーでもライトニングボルトでも、受けた者がいきなり歌い出したなんて話は聞いたことがない。もちろん自然の雷でも同じだ。

そこまで考え、彼女は頭を振った。
起きてしまった物は仕方ないし、悩んでみても解決法が見つかるとは思えない。
治る物なら時間が解決するだろう。今はそれより大事なことがあるはずだ。
♀騎士は心が前向きになるのを感じていた。
彼女に必要だったのは心強い仲間でも自信でもなく、守るべき何かだったのだろう。
力弱くとも、自信など無くても、己にとって守らなければならない物を手にしたとき、人は戦うために立ち上がる。
図らずも♂モンクの身に起きた不幸が彼女にそれを与える形となっていた。

「ひとまず怪我を治療しないと」
♀騎士は支給された鞄から赤ポーションを取り出す。
蘇生に成功したとは言え落雷をまともに浴びたのだ。常識的に考えてまだ相当な重傷を負っているはずだ。
しかし♂モンクは気落ちした様子のまま、口調だけ元気に否定した。
「♪ノンノン・オレっち・モンク・張るよ気の壁・弾く・滑る・Thunderboltも・運次第♪」
「ええと、つまり大丈夫と言うことですね?」
「Oh〜Yeah〜♪」

要は金剛の応用なのだろう。雷の帯びた『気』と反発し合う『気』を体表面へとっさに張り巡らせ、雷の大部分を受け流したのだ。
その証拠が焦げた服である。
♀騎士は知らなかったが、人に落ちた雷は通常その体内を流れるため服はほとんど焦げない。服の焦げは逆に体内を流れた電流が少ないことを示している。

理屈はわからないながらも一応納得し、♀騎士は提案を続けた。
「でしたら少し移動しませんか?」
「♪OK・Allright・歩こう・探そう・安全な場所♪」
これには♂モンクも即座に同意して立ち上がる。
もっとも2人の理由はいささか異なった。
♀騎士は仲間を――特に♂モンクの言語異常を何とかできる人を捜すため。
♂モンクは焼けた木の上げる煙が人を呼ぶことを嫌って。
どちらにせよ、2人はほぼ丸一日過ごした森を後にすることにした。


彼らの去ったあとに一冊の本の残骸が残った。
もはや判読不能なまでに炭化したそれは、かつては黙示録と呼ばれる伝説の書物だった。
そして、それには一枚の四つ葉のクローバーが挟まれていた。
クローバー自身は落雷に耐え切れなかったものの、その葉に含まれた水分と幸運の力によって黙示録のほんの一部が炭化から救われていた。

このように。

『…………………………………………………………………雹と火とが現れ、地上に投げつけられ……………………………、木…………も……………焼……』
『………神の使いがラッパ……………………………………………………………………………………………………………………ア……となった」』


――こうは言えないだろうか。
予言とはその内容通りの結果を引き起こす、呪いの一種である。と。


<♂モンク>
位置 :E−7→
所持品:なし(黙示録・四つ葉のクローバー焼失)
外見 :アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊
備考 :ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 ♀騎士と同行

<♀騎士>
位置 :E−7→
所持品:S1シールド、錐
外見 :csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考 :殺人に強い忌避感とPTSD。刀剣類が持てない 笑えない ♂モンクと同行

<残り28名>
203名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 06:49:38 ID:LMge1mTs
………orz
重い話が続くのでコメディにしてやろと思ったのに…。
笑いの方が難しいとは思わなかった。出直してきます。
204名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 07:46:24 ID:UAxfs0fc
>>201
コーンスープ吹いた
205名無しさん(*´Д`)ハァハァdage :2006/03/07(火) 08:02:17 ID:SqD6LGGQ
>>201
青汁吹いた
206名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 08:51:22 ID:t8arwgAY
ミルクココア吹いたw
GJ
207名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 15:24:01 ID:m8NQ9hCQ
ソースカツ吹いた。GJ
208名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 15:45:37 ID:xIrICaQ6
おまいら吹きたいだけジャマイカw
NUDA吹いた。GJ
209名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 16:07:42 ID:xIrICaQ6
171.ヒューマンエラー [2日目午後・雨〜夕方]

「先程、♀アコライトの件で少々おかしな点が報告されているのですが。」

部下のGMの報告に、顔をしかめるGM森。
彼は自室で日課の筋トレに励んでいる所だった。

「今、俺は勤務時間外だぞ。後にできんのか。」
「ですがもしかしたら…異常事態かもしれません。至急GMジョーカーに報告して頂きたいのですが…」

はぁとため息をつくと両手にもったダンベルを下ろし、アゴで示して報告を促す。

「何か問題でもあったのか?」
「問題…かどうかは判りませんが。
 まず現状報告ですが、♀アコライトの首輪の反応は通常通り。
 彼女の発言もライフパターンも問題無く記録できています。
 また彼女が所持していた地図はD-8地点から移動していない所を見ると、おそらく地図を携帯していない様です。
 それに関してはD-8地点で♂クルセイダーとの交戦記録も残っており、支給品一式を置いてその場から逃走した…と推測されます」

そこで一旦区切って、部下が眉をひそめて小声で続ける。

「そしてここからが問題なのですが…。
 ♀マジシャンとの会話ログからですが、不可解な発言がいくつか出ています。
 禁止区域から♀アコライトが移動してきた、という会話がなされているのです。」

なんだ、と心底つまらなそうな表情になり部下に返答するGM森。

「そいつらが勘違いしているだけなんじゃないか?現に首輪の方は問題無さそうじゃないか。」
「ですが万が一という事もあります。至急調査した方が良いと思うのですが…」

食い下がってくる部下に、面倒そうにひらひらと手を振って追い返す。
あまり些事に拘らないGM森の脳中では、単なる勘違いと結論着けてこの件は片付けたのだろう。
さっさと会話を終わらせようとしているのが見え見えな返事を返す。

「判った判った。上には報告しておくから下がっていいぞ。」
「お願いしますよ…本当に。
 それではBR管理運営規則に従って、要監視対象者に該当する♀アコライトの監視をBAN権限のあるGMに移行します。
 発見者の直属の上司が担当として事態に対応する…という事で、GM森に引継ぎとなります。後は宜しくお願いします」

報告書をGM森に手渡すが、彼はそれに一別しただけで机の上に放り出した。
部下にしてみれば、その行動も想定の範囲内。
後の責任はこのプロテイン漬けの上司にお任せして、自分は自分の仕事に戻るだけである。
彼はため息を一つついて「報告はしましたからね」と念を押して退出する。

そして、部下が部屋から出ていく頃には、GM森の脳裏からは先程の報告はすっぱりと忘れられていたのである。


◇◇◇

「ほ〜ぉ、ふんどしヘソ出し年中無休な露出過剰マジ子のクセに人の格好に文句言っちゃう訳?」

♀アコライトが剣呑な響きを含んだ声で聞き返す。

「同性相手とは言え、人前で下着姿になっちゃうようなエセ清純派気取りの人がボクの格好にケチ付けないでよねっ!」

がおーと吠えそうな勢いで♀マジシャンが言い返す。

…事の顛末はこうである。
夕刻に突然降り出した雨に、頭から爪先までびしょびしょになった2人。
♀アコライトは元々海に投げ込まれた所為もあって、一歩歩くたびにぴちゃぺちゃ水滴を垂らす程ずぶ濡れになってしまった。

一旦、雨宿りできる場所を探そうと言う事で、どうにか雨を避けられるだけの大木を見つけだし、その根元に腰を下ろす。
途中で山小屋らしき物もあったのだが、残念ながら火災でもあったのだろう。黒こげに崩れ落ちた納屋では雨を凌げず、ロクに観察する暇もなく森へと逆戻りさせられたのだ。
と、♀アコライトは大聖堂支給のローブを脱ぎだして、あれよあれよという間に動き安さ重視と思われる飾り気のないスポーツ用下着だけの格好になったのだ。
本人にしてみればさっさと水気を絞り出したいと思っての行動であったが。

面食らった♀マジシャンが「もうちょっと恥じらいを云々」と説教すると、♀アコライトがじー…と♀マジシャンの上から下までを観察し、ふんどし発言に至ったのである。

「まぁあなたみたいなささやか〜〜〜ぁな胸じゃあ人前に晒せないのも判るけどね」

嘲笑を含めた視線は♀マジシャンの胸元に向けられている。
ばばっと胸を両腕で隠すその行動を見て、ふっ…と勝ち誇った嘆息を漏らす。

「君みたいに無駄なお肉だらけの人が良く人前で肌を晒せるじゃないか」

♀マジシャンの視線はお腹の辺りに向けられている。
かちーんと頭に血を上らせる♀アコライトを見る視線が、「図星か」と雄弁に語っていた。

『ふふふふふふ』

期せずに揃った不気味な笑いに、子デザートウルフがビクッと身をすくめたように見えた。

「自分の事ボクボク言ってるけど。実は男の子だったとしたらその可哀想な胸も納得よねー」
「可哀想とかゆーな!そっちこそ地図も読めないINT1の殴りアコのクセに、その体型じゃ素早く動くのも無理そうじゃないか」

『ふふ…ふふふふふふふふふ』

子デザートウルフがビクビクッと身をすくめて、荷物の影に隠れたのは正解かもしれない。

「これは豊満な肉体って言うんだよ。っても一生ロリ担当なあなたには縁の無い話でしょうけど」
「それって太ってる人が自称『ちょっとぽっちゃり系』って言うのと一緒で、聞いてて痛々しいよね」
「育ち盛りはこれくらい平均だってゆーの!自分のナイナイづくしな体を標準だと勘違いしないでよね」
「こっちだってこれから成長するんだい!ボクがないすばでぃになる頃には、君は色んな所がたるんでるんじゃないのー?」

一拍空けて。

「貧乳」
「デブ」

『ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ』

嫌な含み笑いをしながらお互いすっくと立ち上がる。
左、左、右と風切り音をあげる見事なコンビネーションブロウを虚空に放ち、構えを取る♀アコライト。
一方、両手を腰の高さで構える♀マジシャン。その両手の平からパチパチと電光がほとばしる。

♀アコライトの殺気が彼女の背後にデリーターを浮かび上がらせ、しぎゃー!と唸りをあげて牙を剥く。
相対する♀マジシャンの背にはエドガが浮かび上がり、がおー!と吠えながら威嚇する。
龍虎相まみえる。両者の間の張りつめた空気に耐えきれず、子犬が脱兎のごとく逃げ出した。

「神と子と大聖堂の名の下に…粛正してやるぅ!」
「ふははは、返り討ちにしてくれるわー!」

お互いのアイデンティティーを賭けた戦いの幕が切って落とされるのであった。


…戦闘の内容はここでは明記するのを避けるとしよう。
雨が上がるまで聞くに堪えない罵詈雑言と拳と電光が飛び交った結果、双方疲れ果てて引き分けだったという。

自らの首輪の変調がこのゲームの根幹を揺るがしかねない事に、♀アコライトを含む2人と1匹はまだ気付いていないのだった。


<♀アコライト&子犬>
現在位置:C-7
容姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:荷物袋・地図等含めすべて崖の上(D-8)
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 自分の首輪が危険区域で爆発しないことを知る(首輪が壊れていると思っている) ♀マジとともにD-8へ。
状態:疲労気味

<♀マジ>
現在位置:C-7
所持品:真理の目隠し
備考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。。♀アコとともにD-8へ。
  ♂マジを治療できる人を探すことはすっかり忘れている。 褐色の髪(ボブっぽいショート)
備考:疲労気味
210209sage :2006/03/07(火) 16:08:52 ID:xIrICaQ6
首輪の異常がばれたら即BANされるんじゃないかなー?と思い、その辺りを書いてみました。
GM森が只のヘタレになってもーた_| ̄|○

後、通しNo,がずれてないですか?
前の話に合わせてNo,171にしてあるけど…169が2コある。
タイムテーブル考えると>>190がNo,170の方がいいのかな?

それと>>190のタイトルですが、show downをshowdownに脳内変換お願いします。
英語力足りないのがバレル_| ̄|...○

Murderer's show down → 殺害者は下へ示します。
Murderer's showdown → 殺害者の対決
(nifty翻訳より)
211名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 16:45:53 ID:pq9MzZZs
173. Forest in the Rain 【2日目午後】


「やー、ホントに降り出しましたね、雨。さっきまでお天気良かったのに、いやはや〜」
巨大な木の下の、巨大なうろの中に、明るい声が少し反響する。
「・・・うん。鳥さんが、教えてくれたから」
少しはにかみながらそう言う♀ハンターに、♀スーパーノービスはふくれた振りをした。
「もう、こんな素敵な力があるんなら、なんでもっと早く教えてくれなかったんですかー。私と♀ハンターさんの仲だって言うのにっ」
勿論、♀スーパーノービスが全てを解っている上での冗談ではあるが、気恥ずかしさに♀ハンターは首を傾げた。
彼女達は森から森へと、木々の間を縫うように移動していた。森の中であれば、他の参加者や敵意のあるものに発見され難いということ、また発見されたとしても身を隠し易いということが利点として挙げられる。逆に言えば、こちらからも他の参加者の接近に気づき難いということでもあるのだが、彼女達の場合は♀ハンターに味方する野鳥達が情報として周囲の人の動きを知らせてくれる。当然、森であればそんな野鳥達も多く、言わば森は♀ハンターの『領域(テリトリー)』であるとも言えた。
「・・・あ」
ふっと♀ハンターが顔を上げる。
「どうしました?」
「あの、さっきの・・・だけど。木が、燃えてるって」
先程、二人は少し遠くで爆発音のような音を聴いている。やはり、この森の中で何かがあったというのは間違いなさそうだ。
気付くと雨音に混じって、種類は解らないものの鳥の鳴き声が微かに聴こえた。♀ハンターはこの鳥と『会話』しているのだろう。
「クルセイダーと、モンクさん・・・どちらも男の人で、・・・あの、会ったらきっと、・・・・・・殺される、って。あ、大丈夫・・・この場所にいれば、会うことはないって・・・今のところ」
立ち上がりかけた♀スーパーノービスに、♀ハンターは鳥から得た情報の概要を説明する。
「クルセイダーさんにモンクさん・・・その方達に会うのは危険だって、覚えとかなきゃいけませんね」
♀スーパーノービスは少しだけ険しい顔をしたが、冷たい腐葉土の上に座り直した時にはその表情はいつもの暢気なものに戻っていた。
「とは言え、火が燃えてるのに気付いた誰かさんがこの辺りに集まって来ないとは限りません。濡れちゃいますケド、もう少し雨が小降りになってきたら、移動した方がいいかもですね」
♀ハンターは頷くと、この冷たそうな雨の中に飛び出して行くことを思って身震いした。
「・・・・・・寒そうですよね」
♀スーパーノービスと視線を交わし、二人で苦笑する。


  *  *  *


【幕間 その頃のふぁる】
――寒ぃ・・・・・・ぜぇ・・・・・・羽根が重い・・・・・・ぜぇ・・・はぁ・・・・・・、畜生、こんな雨ン中までオレサマが来てやったってのに・・・・・・、ドコに隠れてンだアイツは・・・・・・!!


  *  *  *


「・・・思ったより凄いことになってますね。でも、これは・・・・・・」
辺り一面は黒焦げ、という表現が最も似合うであろう様相を呈していた。木々が、土が、そして――人が、燃え尽きた跡が残されている。
「この雨で火が消えちゃったにしても、煙も出てないし・・・」
「あの、誰か、誰か近くにいる?」
♀ハンターの声に応えるように、ちちちと言う鳥の鳴き声が雨の中に聴こえた。姿は見えないが、雨でも木々の間に鳥達は沢山隠れているのだろう。そのまま小声で♀ハンターは何かを話し始めた。
「ね、ね、おねえちゃん」
この状況を整理しようと頭の中が忙しかったためか、おねえちゃん、というのが自分のことであると気付くのに、一瞬の間があった。♀スーパーノービスは苦笑しながら訊く。
「はいはい、何でしょう〜」
「燃えてるのは、この場所じゃないって。ここは、時間はわかんないけど・・・、昨日、燃えてたみたいだって」
「昨日・・・?」
ちらりと、黒い人の形をした塊を見る。
「あ、おねえちゃん・・・」
それに近付く♀スーパーノービスに不安そうな声をかけるが、構わず♀スーパーノービスは黒い屍とその周りを調べ始めた。衣服は既に炭になってしまったらしく、見ただけでは参加者のうち誰なのかは判別がつかない。
「・・・女性の方、みたいですね」
定時放送で名を呼ばれた女性参加者を思い出してみたが、数が多過ぎて、やはり判断はできそうにない。
諦めて、他に遺留品はないかと周囲を見回したところ、少し離れたところに短剣と、何か黒い塊が転がっていた。拾いあげてみると、煤は付着しているものの、それ自体は別に燃えてしまったわけではないことが解る。大きさは両手で抱え上げることができる程度、見た目ほど重くはない。何やらからくり仕掛けの小箱のようだ。
「ねね、♀ハンターさん。これ、何だかわかります?」
雨に濡れたその黒い物体を♀ハンターに見せると、答が返ってきたことに♀スーパーノービスは少し意外そうな表情を見せた。何気なく訊いてみただけで、♀スーパーノービスとしてもこの黒い物体の正体の手がかりになるとは思わなかったからだ。
「それ、トラップですね」
「トラップ?」
「うん。設置用トラップがあれば、あたしでも作れるくらいの。それはもう、出来上がったものみたい。トーキーボックスって言って」
ハンターの設置用スキルのひとつ、トーキーボックス。♀スーパーノービスにも、それがどういったものであるのか、という知識はあった。
「これ、まだ使えます?」
「うん、多分。壊れてなければ」
何かに使えるような気がするのだが、今は何も思いつかない。とりあえず、拾っておいて損はないだろう。
「じゃ、これは♀ハンターさんに預けておきますね。それと、これ」
トーキーボックスと一緒に、拾った短剣を♀ハンターに渡す。
「あれ、これ・・・」
「見たところ、フォーチュンソードみたいですね。♀ハンターさん、持っておいてください」
「でも、おねえちゃんのほうがこういう武器、使えるんじゃ・・・」
「私にはホラ、これがちゃんとありますから」
そう言って腰から抜いたダマスカスをひらひらさせると、
「護身用ですよ、一応ね。それに、持ってるだけで幸せになれるって言いますから、その短剣は」
♀スパノビはウインクすると、強引にフォーチュンソードを♀ハンターの腰に挿し込んだ。
「さ、行きましょうか。♀ハンターさん、鳥さんなびげーとの方、宜しくお願いしますよっ」
目を閉じ、静かに動かぬ骸に手を合わせると、♀スーパーノービスは歩き始めた。慌てて♀ハンターも同じようにすると、後を着いて行こうとした時、くしゅんっと声がした。
「・・・どこか安全な、雨宿りできる場所見つけたいですね〜」
雨はまだ振り止む気配を見せない。


<♀ハンター 現在位置・・・F-7>
<所持品:スパナ 古い紫色の箱 設置用トーキーボックス フォーチュンソード>
<スキル:ファルコンマスタリー ブリッツビート スチールクロウ>
<備考:対人恐怖症 鳥と会話が出来る ステ=純鷹師 弓の扱いは??? 島にいる鳥達が味方>
<状態:びしょ濡れ。♀スパノビを信頼>

<♀スパノビ 現在位置・・・F-7>
<外見:csf:4j0610m2>
<所持品:S2ダマスカス シルクリボン(無理矢理装着) 古いカード帖(本人気付いていない) オリデオコンの矢筒>
<スキル:集中力向上>
<備考:外見とは裏腹に場数を踏んでいる(短剣型)>
<状態:びしょ濡れ。♀ハンターの生い立ち、鳥との会話能力を知る>
212名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 16:59:23 ID:pq9MzZZs
ナンバリング戻しましたよ〜。
定時放送の準備として、2日目全然動いてない人達を消化していきましょー、とこの姉妹を応援。
雨上がるまでに動かしときたい気がするのは♂ハンタ君・♂アコきゅん・♀BS組のその後の動向と、
未亡人組、グラリスさん、♀ノビたん、♂Wizさん、カイジも雨降る前までしか描かれてないですね。
って私が決めることじゃないんで、消化し切る前に定時放送かかっても別に構わないとは思うですがっ。
・・・・・・何かどっかで死人出そうだし、上記の方々の様子見てると。
213名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 17:36:20 ID:zCCPYn/M
174.目覚める少女 [2日目午後〜夕方]

どべしゃっ

うす暗い森の中で、少女は転倒した。はげしく顔面を打ちつけて、目から火花を飛ばした。
木の根や、石につまずいたわけではなく、驟雨がもたらしたぬかるみに足をすべらせたわけでもなかった。
確かにいたるところに泥濘ができており走りづらくはあったものの、少女が泥を浴びることになった原因はそれらではなかった。

全身を泥だらけにした少女はうめきながら立ち上がろうとして、今度は濡れた土にずるりと手を取られた。
慣用句で言うなら「泣きっ面にミストレス」だ。
ふたたび少女は泥水をはねあげ、勢いよく地面に口付けした。
口の中にまで泥を入れてしまった少女は、そのときになってようやく、雨が降っていたことに気づいたのだった。

(いつのまに、こんなに雨が降ってたの?)

無理もなかった。少女はここまでの道を、ひたすらに逃げることだけ考えて走ってきたのだ。
自分を守ってくれるはずだった♂アサシンを失い、その♂アサシンを殺した非道なウィザードから逃げ切ることだけを考えていたのだ。
どれくらいの時間を走っていたのかもわからない。どこまで走ってきたのかもわからない。
自分自身にひたすら鞭打って、ここまで走り続けてきたのだった。

それでも少女はおぼろげに、あのウィザードの追跡から逃れることはできたのだろうと思った。
すくなくともウィザードである彼よりは体力があるに違いない。そう信じて少女は逃げ続けたのだった。

四肢に力が入らなかった。からだはもうとっくに限界を超えていて、立ち上がることができなかった。
泥の風呂に、さらに雨のシャワーのおまけ付きという最悪の状態ではあったけれど、どうにもできなかった。
島に送られてくる前に教えこまれた応急手当の知識を思い出しながら、うつ伏せのまま、肉体の回復を待つのが精一杯だった。
さっきまでならこんなことにでもなれば、♂アサシンが背負ったり、抱きかかえたりしてくれたのに───

(死んじゃった。本当に死んじゃったんだ。♂アサシンさん・・・)
(守るって言ったのに・・・生きて帰してくれるって、言ってくれたのに・・・)

自分の頬を伝う雨に涙をまぜて、少女は声を殺したままその身をふるわせた。
哀しみのままに少女はもぞもぞと背中をまるめた。

(どうしたらいいの・・・私・・・)
(わからない・・・わからないよ・・・♂アサシン・・・さん)

どれだけの時間をそうやって費やしたのだろう。少女のふるえは先ほどよりも酷くなっていた。
雨に濡れたため、からだが完全に冷え切ってしまったのだ。
このままこうしていたら、死んじゃう。そう思い、四足のまま泥中を這うように、手近な木までにじり寄った。
やっとのことで背を木の幹に預けて、少女は目線を上げた。

飛び込んできた映像は、少女の目を大きく見開かせた。眼球が目からこぼれ落ちそうなほどだった。
目線の先に人間がひとり、横たわっていたのだ。
それは先ほど少女を転倒させた原因だった。すでに事切れたシーフの少女だった。少女がはじめて殺した人間だった。

(私が殺した・・・ひとだ・・・)
(この島に放り出されて、わけもわからないままに・・・気がついたら殺してしまったひとだ・・・)

結局少女はもどってきてしまったのだ。自分がはじめて両手を血に染めた場所に。
♂アサシンと出会った、はじまりの場所に。

(ひとりぼっちに・・・もどっちゃった・・・)
(なんにもできない・・・ひとりに・・・)

うなだれて少女は泣いた。止められないほどに涙があふれ、ぽろぽろとこぼれた。
顔は汗と泥と涙にぐしょぐしょだった。
泣きながら♂アサシンのことを思い出した。最期の最期まで少女を守ろうと手をさし伸ばした彼の姿を思い出した。

(あの手が逃げろって言ってた・・・逃げて生き延びろって・・・)
(ほんとうに最期まで、私の心配ばかり・・・・してくれて・・・)
(なのに私は・・・逃げることしかできなくて・・・・・・なんの力もなくて・・・・・・)

寂寥感に寒さが加えられて、少女はふるえる自分の肩を自分で抱きしめながら、泣き続けた。
泣くことくらいしか少女にはできなかった。仇を討つ力も、自分自身を守る力さえ、少女は持っていないのだから。

無力感にさいなまれながら、涙が枯れるまで、少女は泣き続けた。

いい加減泣くこともできなくなった頃、少女のおなかが音を鳴らした。
ここまでずっと飲まず食わずだったのだ。胃袋としては当然の欲求だった。

(やだな・・・こんなことになってるのに・・・おなかはちゃんとすくんだ・・・・・・)
(どうしようもないのに・・・私なんかが生き残れるはず・・・ないのに・・・)

それでも何も食べない苦しさに耐えられるはずもなく、少女は背負っていた鞄を外し蓋を開けて、手持ちの食料を確認した。
干し肉もパンも、水筒もそろっていた。まだ2日程度は食べていけると思える量が残っていた。

干し肉をゆっくりと噛みながら、少女はふたたび視線を上げてシーフの死体を見た。
彼女を見つめながら、干し肉を噛み締めた。
舌が泥だらけになっていたせいで味はよくわからなかったけれど、自分が生きているということだけは、はっきりと自覚できた。

『もうお前は人殺しなんだよ。普通の人間じゃあない』

♂アサシンと出会い、最初に言われた言葉が少女の頭の中を横切っていった。
少女は干し肉を噛み続けた。

(そうだ・・・私は人を殺したんだ・・・)
(怖かったけど・・・わけがわからなかったけど・・・・・・殺したんだ)

少女は尚もじっと物言わぬシーフから目をそらすことなく、干し肉を噛み続けた。

(私は・・・殺せたんだ・・・・・・ノービスの私でも・・・殺せたんだ・・・・・・)
(自分が生きるために・・・殺すことができたんだ・・・・)

雨は弱まりはじめ、森の中にもわずかながら光が射しこんできた。
少女はそのことに気づいて、噛んでいた肉を飲みこんだ。

(私はたしかに、この人を殺した・・・)
(だったら私はもう・・・立派な人殺しだ・・・・彼と同じ・・・人殺しなんだ・・・・・・)

泣くだけ泣いて、哀しむだけ哀しんで、怯えるだけ怯えて、食べるだけ食べた少女はもう、前を向くしかなかった。
ようやく自分が人を殺したという事実を受け入れることができたのだ。
ゆっくりと茜色の晴れ空が、森から覗きはじめた。まるで自分の気持ちみたいだと少女は思った。

(この雨は、いままでの私を洗い流してくれたんだ。だから今からの私はアサシンだ)
(力はまだ足りないけど、人を殺すことに迷ったりなんてしない。だって私は、人殺しなんだから)

決意を胸に、少女は鞄の中から最後の希望を取り出した。

「底には希望が入ってる。だってこれは彼が遺してくれた、たったひとつのものなんだから」

そう言って少女はその古くて青い箱を開けた。
箱の中には1本の短剣が入っていた。取り出して握ると、刃が夕日を受けて紫色のきらめきを放った。
ポイズンナイフ、別名河豚毒ともいわれるそれは、刀身そのものが毒性をもった恐るべき短剣であった。

たしかにそれは非力な少女をアサシンに変える、希望だった。

〈♀ノービス〉
現在地 E-8(E-7に程近い)
所持品 ポイズンナイフ
スキル しんだふり 応急手当
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 どろだらけ。 人殺しとしての決意新たに!
214名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 18:15:37 ID:zCCPYn/M
>>209
ちょ、なにこの素敵ペア。下着だけの♀アコを想像して鼻息荒くしちゃったじゃないか。
こういう話を書ける人がうらやましいっ。うらやましいぞっ。

>>211
さりげなく義姉妹なふたりがあまり敵と出会わない理由になってて上手いと思った。
トーキーボックスがどう使われるか。そして、ふぁると出会えるのか。楽しみになってきた!

>>212
グラリスさんは消耗はげしいので小屋でぐっすりとかでもいいですし、
♂ハンタ、アコ、♀BS組はミストレスを追いかけるでなんとかなりますけど、
未亡人組だけは動かさないといけないですね。2日目に何もしてないってのも悲しいし。

北へ向かった♂クルセ。雨宿りしている♂騎士・♂ケミ。未亡人組。
ドラマの予感。
215名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 19:37:02 ID:SZztGoYY
>186
エロスレのほうの読んだよー。
♀WIZがなんかかわいくて(*´Д`)ハァハァ
続き楽しみにしてます。
向こうとこっちで迷ってこっちにレス。
216名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/07(火) 22:32:54 ID:MtTgVhks
突然突発的に思いついたので書いてみた♪

番外編 夢の対決 新旧ローグ、マーダーバトル!

♂ローグは眼前の♀ローグに視線を移す。
「気に入らねえな。てめえのその人を食ったような嘗めた面がよ」
♀ローグはそんな♂ローグをせせら笑う。
「ふん、ザコが粋がっていい相手じゃないんだよ。身の程を弁えな」
目線が鋭くなる♂ローグ。
「……てめぇは存分に嬲ってから殺す」
その言葉と共に♂ローグの姿がかき消える。
「やってみな」
同時に♀ローグも姿を消す。

物音一つしない沈黙。
風というにはあまりに小さい空気の流れる音が微かに聞こえてくる。
太陽は中天に昇り、桃の木から伸びた影法師が色濃く地面にその痕を残す。
空は突き抜けるような青い空、その雲の動きでここが時の支配する世界だと認識出来る。
動く物も無い、額を付ければそのまま静止画として通用しそうな光景。

「くたばれ!」
「死にな!」

♂ローグの振るう包丁を♀ローグのダマスカスが受け止める。
すぐに左手で♀ローグは♂ローグの包丁を持った手をひっぱたく。
一瞬♂ローグの包丁が狙いを外れた隙に、左足で♂ローグの足を払いにかかる♀ローグ。
♂ローグはすぐさま右膝を曲げ、足を持ち上げたかと思うと、凄まじい反射速度で♀ローグの足を踏みつける。
『早いっ!?』
♀ローグのダマスカスを持った右手は、蹴りのバランスを取る為に体の後ろに振られている。
♂ローグはその隙を逃さず無防備な♀ローグの頭頂めがけて包丁を振り下ろす。
咄嗟に右手に持ったダマスカスを左手に放り投げ、片手で持ったダマスカスでこれを受け止める♀ローグ。
しかし、彼我の力の差でそれはすぐにも押し切られてしまいそうであった。
♀ローグはその不安定な体勢のまま、全力で体を右回転させる。
全身のバネを使ったそれに、さしもの♂ローグの包丁も左に弾かれる。
♀ローグはそのまま踏まれた左足を抜き、それを軸に右足を♂ローグ側頭部まで振り上げる。
『このクソ女!』
♂ローグは迫る♀ローグの右足を避けきれないと踏んで、逆に額をその足に叩きつける。
肉と骨がきしむ音が響き、両者を同時に後ろに飛んで下がる。
♂ローグの額からは蹴りの衝撃で血が流れ落ちていた。
『なんだこの女の曲芸じみた動きは』
♀ローグはじんじんと痛む右足をそれと悟られないように後ろに引く。
『イカレてるのは頭だけかい。パーフェクトに受けきってくれるじゃないか』
そして二人は同時に笑う。
「いいねぇ、殺し甲斐があるってもんだ」
「おもしろいじゃない、殺し合いはこうでなきゃねぇ」

一方その頃
「ち、近づかないでくださーい。わ、わたしはろーぐなんですよ! つつつつ、つよいんですからね! ですから、出来ればそのまま立ち去ってくれると私嬉しいなーなんて思っちゃったり思っちゃったり」
がたがた震えながら手に持った木の棒を向ける♀ローグ。
対する♂ローグは無言だ。
「ふふふ、不用意に近づいたりしたら、必殺のらくがきアタックが火を噴きますよー! 顔にひげとか描いちゃいますよー!」
ぼそりと呟く♂ローグ。
「そら地面に何か書くスキルだろ」
♂ローグのつっこみに、全身で慌てふためく♀ローグ。
「ぎぎぎぎくーーーーっ! そ、そんな事ありません! この技はローグに代々伝わる秘伝の技で……」
溜息混じりに再度呟く♂ローグ。
「俺もそのローグなんだが」
♂ローグは害意を持ってこれを言った訳ではないが、♀ローグにとってそれは死刑宣告に等しかったようだ。
半泣きになりながら喚く。
「う、うぅ……もうダメですー。わ、私殺されちゃうんですぅ。うわーん、おかーさーん」
そして遂に♂ローグが切れた。

「なんだって俺はいっつもこんなのばっか相手させられるんだよ!」
217名無しさん(*´Д`)ハァハァdage :2006/03/08(水) 01:16:28 ID:2LgEHdkk
>>216
夢の対決GJ
ローグ姐さんと新♂ローグの息詰まる攻防が格好良いっす!
あと、どうあっても子供の相手させられるローグの兄貴が素敵だw
218名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 13:48:34 ID:m43ENxME
>>216
新♀ローグモエスwwwGJ。

連投規制中で暇なのでチラシの裏を投げてみる。
マーダラー視点からの(現時点での)各PT戦力を考えてみる。

・♀BSと愉快な仲間達PT
前衛は♀BS1人と薄いが、プリ、アコ、支援スパノビと圧倒的に耐久力が高い(ケミもPPありそう?ケミ子は積極的に動くカンジではないが)。各個撃破で倒さないとジリ貧に追い込まれる。又、逃げに回られると相当厳しそう。
身内に爆弾抱えまくってるので崩れる時は一気に崩れそう。

・義姉妹PT
ハンタはふぁると合流するまでは非戦力と考えて問題なさそうなので、スパノビ子の戦闘能力次第。
ハンタ子の情報収集能力も不意打ちのチャンスが減るので地味に厄介ではある。
支援が無いので現状djや怪我に弱いカンジ。今ならスパノビ子を倒せばもれなくハンタ子も頂けますw

・似た者PT
ケミは装備、能力とも微妙なラインだがPPあるとペア性能は良いのかも。GMのテコ入れがある騎士も厄介。騎士はサシ勝負でも倒せないかも知れない。が、騎士はいつ暴走するか判らないと考えれば、精神的な揺さぶりを掛けて自滅待ちも手か。
ここも支援が無いので搦め手は苦手そう。

・守りたいPT
今の所メイン戦力はアフロモンク。阿修羅持ちである以上、真っ向勝負はデメリットが高い。また騎士子も錐にシールドと装備は悪くないので弱いPTとは言えない気がする。
アフロがピンチになると騎士子が戦力に化けそうなので、騎士子から狩るのがスマートか。

・未亡人PT
目下、最大戦力のPT。前衛が1次2人で狙い目と思いきや、セージ&プリも前に出てこれる。セージはWIZと並んで火力にもなるし、プリも殴りとは言え一応は支援要員と考えるべき。このプリにはハイド系効かないしなぁ。
しかもWIZがとにかく強い。設定見る限りQM張ったら前にも出てこれるし(AGI型)、距離を取りたければJTがある。しかもクロキンマフラもあるのか…。
ここは各個撃破以外の選択肢が無いんだけども、グラリス嬢の一件もあるからそうそう単独行動はしなくなると予想。
自分にはこのPTに準備万端で待ちかまえられると、崩す方法が思い浮かばない^^;

・アコマジPT
前衛としてのアコの戦力は侮れない(♂クルセと素手でガチバトルできるし)。マジ子も普通に考えれば火力としては申し分ないと思う。
1次2人のPTの割にはバランスが良い。
が、どのペアPTにも言えることだが片方を落とせば何とかなりそう。


んでマーダラー考察(と言うほどのモンじゃないがw)。

・♂クルセ
前回優勝者の肩書きは伊達じゃないw
kill数は少ないが、どの相手にも対等以上で戦えてる。非常に非情な殺し屋風味なので油断が全くないのが怖い所。
装備面、体力面とも問題無し。遠距離戦に難アリと思いきやシミターブーメランも披露しているのでそうとも言えない。

・♂ローグ
ハイブリット型なので距離を選ばず戦えるのが強み。しかもdj持ち。
装備面も充実しているし、その性格から相手を殺すのに躊躇がないのもポイント。
強い筈なんだけど油断を突かれて殺しきれないカンジ。

・グラリス
装備もいいし精神的にも比較的冷静に相手を撃破できるカンジ。
遠距離戦が出来なくなっているが、睡眠矢を接近戦で使うあたりはお見事。
未亡人PT戦のダメージがどれだけ回復出来るかだが、まだまだマーダラーとして無視出来ない存在。

・♂WIZ
他のマーダラーと比べると、研究>>>殺人なので相対しても生き残れる可能性がある相手。他のマーダラーより殺人には熱心じゃないカンジ。
能力、装備(デビルチ含む)共にトップクラスなので戦闘には強いと思われる。
でもカイジの相手がこの人以外のマーダラーだったら、カイジ死んでるよなぁ…w

・ミストレス
本体の魔術もさることながら、虫を使役できる所も怖い。
まだ動きは無いが、動き出すと一気に死人が増えそうな気がする。

・グラサンモンク
マーダラーでは無いが、殺しに禁忌感が無いのでいつでもマーダラーに化けうる相手。単純に勝ち星が無いだけで基本はマーダラーなのかも?
能力は高いぽい。悪ケミ&忍者戦、♂クルセ戦などを見ると積極的に仕掛けて来るようだ。

注:あくまで私的考察です。
219名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 15:17:20 ID:uozhm.KI
>>209
す、スポーツ下着アコたん……(*´Д`)ハァハァ
220名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 15:19:19 ID:QcT9ZsG6
>>218
非常に忘れられがちで申し上げにくいことなのですが

>・義姉妹PT
>支援が無いので現状djや怪我に弱いカンジ

djなどハイド系、集中力向上で見破れたりします。
そして、集中力向上は二人とも(スパノビは確実にハンターでもおそらくは)習得しているかと
射程と消費の関係で非常に使いにくいことを挿しているのでしたら失礼
221名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 15:48:04 ID:m43ENxME
>>220
フォローthx。
ふぁると合流してディテクティング使える様になるまでハイド看破は出来ないと勘違いしてたorz
222名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/03/08(水) 17:19:44 ID:707V9dMc
スパノビならそれ以外にも見破る方法あるしな。
♀スパノビと♂ローグの戦闘が脳内に浮かんできてるのだがこいつらしばらく会えそうにない位置だよなあ。
223名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 17:20:27 ID:707V9dMc
ごめんsage忘れた…
224名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 18:44:52 ID:8rCrUYEE
>>209
皆がアコにハァハァしている中まないたマジ子ハァハァ(*´Д`)

>>201&画像保管庫
アフロが面白すぎてラーメン鼻から吹いたw
このままモンクはギャグキャラに墜ちてしまうのか?
225名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 21:49:10 ID:snxGxaoA
175.雨と葛藤

♂マジは迷っていた。
あの狂った♂Wizが……正しい方向を教えてくれたとは…限らない……!
…だが……彼としても…実験を遂行するには……俺が死んだら困るはずだ…
考えろ…考えろ……!

しと…しと…

気がつけば雨が降っていた。
いくつもの分岐をあらゆる角度から考え、しかしいまだ結論は出ない。
……俺を殺さないように配慮したと考えれば……♀マジと遭遇できるように正しいことを教えただろう……
しかし♂Wizが逆の方向で別の人影を見かけたとすれば……万一を思って別方向にいかせるかもしれない……
大体……俺と♀マジを組ませたら……自分に反抗するという可能性を考えているかもしれない……
いや…もしかしたらまだ奥の手を……そもそもマジシャン2人で勝てる相手ではないかもしれない……
…ぐっ……時は刻一刻と過ぎていく……
この隙に……♀マジが移動するとも考えられる……
ならば…考えている間に移動したほうが良いかもしれん……
…最悪の場合…アイツが殺されてしまうかもしれんっ……
落ち着けっ……落ち着けっ……焦りはミスを生むだけだっ……


  ざわ…


         ざわ…


……よし……決めたっ……今一度だけ…信じよう……!

――気づけば雨は大降りになっていた。
ブーツの中までぐしょ濡れになり、重くなった足をしかし、止めることなく加速して。
…あの衣装ではとても保温機能があるとは思えない……
加えてあの貧相な体つき……たとえ有名な魔術師の作の衣装だとしても……

ククク……

――笑ってる……だと…?誰が……一体……?
…いや、ここには俺しかいない……
つまり……笑っているのは俺だ……
――何故笑う……?
…本気で同情するほどの……彼女を…彼女との出会いを……思い返したから……

……この二つの符号が意味するものは…ひとつ……っ!

最初は……厄介でしかないと思っていた……
自分よりも見るからに弱そうで……足手まといにしかなりそうもなく……
一度は……もうひとりの自分が殺せと…殺せと命令するぐらいだった……だけど…!
たった、たった一晩しか一緒にはいなかったが……
今まで感じたことのなかった温もりを……彼女は与えてくれた……っ…!
初めての感覚だが…思ったより気持ちがいいな……!
他人を信用できるっていうのは……!
まして、それが……こんな殺し合いの場でなければ……
さらに格別っ……!最高だっ……!
帰ろう……帰って、どうなるのかはわからないが……
きっと……
自然と足が速まる。
これからを思い描くという、初めての体験をしながら。

――気づけば日は傾きかけていた。
自分に問う。例え彼女を見つけたとして、彼女を絶対に守れるのかと。
――俺は……守れる…この命に代えても……守ってみせる……っ……
ギャンブルに生き、すべての因果は確率で片付けられるものと思っていた彼。
今は違う。
明確な目的を遂行するために生きる。
どんなことになっても絶対に守ると、彼自身が決めた自分への誓約。
誰に言われるまでもなく、飽くまでも自分自身の為の。

いいのかよ……!
俺がやる気になったら……遊びじゃなくなる……!
やらせてもらうぜっ……限界を超えてっ……!

今の自分なら何でもできる。
そう思い込んだ彼はもう止まらなかった。
ひたすらに♂Wizの指し示す方向へ直進を続ける。
晴れ渡った彼の心に続くように次第に雨も引いていく。
だから、少し考えれば危険とわかる森へも勢いを殺すことなく進んでいくのであった。


<♂マジ>
位置 : D-6 森の入り口
所持品:ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個(内1個は割れている)
   青箱1個 スティレット
外見 :長髪 顔色悪い
状態 :左手負傷(スティレットによる自傷)
備考 :JOB50 ♀マジとはぐれ捜索中 カイジ
226名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 21:51:51 ID:snxGxaoA
落ち着け私(つд`)
雨が止み切ってないのに火の傾きが分かる分けなかろうorz

――気づけば日は傾きかけていた。

――気づけば、辺りは暗さを増していた。
に脳内変換しといてくださいorz
227名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 23:41:16 ID:Zt1Eykbg
175.女郎蜂 [2日目夕方]

草の匂い立つ雨あがりの草原を、憮然とした足取りで歩くひとりの青年がいた。
青年は雨の中でもずっと歩いていたのであろうか。衣服の上から下まですべてがこれ以上は水を含めないほどに濡れていた。
丈夫な白麻でできた羽織り着も、綿糸を編みこんだ褐色の上着も、動きやすさを追求した短めの下裾着も、
靴の中、果ては下着までもすべて、イズルードの海にでも飛びこんだあとのように、ぐっしょりと濡れていた。
その状態は、ハンターである青年にとって動きにくい以外のなにものでもなかった。

雨上がり、熟れた稲穂の色に染まった西の空を仰ぎながら、さきほどまで大木のしたで雨をやり過ごしていた女がいた。
女のからだつきは、まだ少女のそれであり未成熟ではあったが、ただよわせる色香は少女とは思えないほど艶っぽかった。
ほっそりとした身体のラインを鮮やかなほどに浮き彫りにする青布の服はおどろくほど薄く、
裾からのぞく白い腕も、肉付きの良い足も、溢れんばかりの女の魅力を内包していた。
そして、なによりも目を惹いたのは、水晶のような透き通る紫の輝きを秘めた、腰まで届くほどの長髪であった。
これでもし女の肢体が男を誘うのにじゅうぶんなほどであったとしたら、
貴族の跡取り息子であったとしても、たとえどれほど高貴な血をひくものであったとしても、
自分たちの地位などには関係なく、誰しもが彼女の魅力の虜となったことであろう。
そうでなくとも、彼女はため息の出るほどに美しかった。ただし彼女の正体は人ではなかったのであるが。

ふたりはかつて奇妙な関係で繋がっていた。王子様とお姫様という、この島にはとうてい相応しくない関係であった。
けれど今のふたりは違う。お姫様は悪魔に魂を奪われてしまったのだ。
ならばその魂を取り戻すのは他の誰でもない。王子様以外にはありえなかった。

ところがここで、偶然が起こった。王子様はいともたやすくお姫様を奪い去った悪魔に再会してしまったのである。
もちろんそれは王子様が自ら望んでいたことではあったのだけれど。
それでも普通の物語であるなら、数々の試練というものが王子様を待ち受けていてしかるべきであっただろう。
いったいどこの誰が、まっすぐ悪魔を求め雨も気にせず歩いていたら偶然雨宿りをしていた悪魔と再会するだなどと思ったことであろうか。

とにもかくにも、ふたりは再会したのであった。

その悪魔───ミストレスは、♂ハンターの姿を見るや、意地の悪そうな笑みを浮かべた。
これほどすんなり会えるとは思っていなかったのであろう驚いた顔をして走ってきた彼に向かい、かわいらしい少女の声のまま話しかけた。

「どうしたのじゃ。我を追いかけてきたのか、それともただの偶然かや?」

少女のものとは似ても似つかないその口調を聞いて、♂ハンターは顔をくもらせた。
ある程度の距離まで近づくと、それ以上は近づかずに、悪魔が乗り移ったままのお姫様の体を眺めやった。

「見るだけかや?我の質問に答えてみよ。そなたは我の王子様なのじゃろ」

♀アーチャーのからだをそのまま通して出てきた言葉を聞いて、♂ハンターは先ほど以上の驚きの表情を浮かべた。
なんでお前がその愛称を、と聞きたかったのであろうが、口をぱくぱくさせることしかできないようであった。

「どうして我が王子様のことを知っておるのか気になるかや?
 教えてやってもよいが、我は見返りが欲しいのぅ」

いたずら好きの子悪魔のように♂ハンターの反応を楽むような素振りで、ミストレスは言った。
♂ハンターはあわてた様子でアーバレストに矢をつがえ、構えをとった。
ミストレスがあまりに敵意を持っていなかったので、すっかり油断してしまっていたのである。

「動くな。それ以上こちらに近づいてくるようなら───」
「なんじゃ。そなたは我をどうしたいのじゃ?我に愛を語りにきたのではないのか?」

ミストレスの言葉に♂ハンターは誰が見てもわかるほどに両の頬を紅潮させた。

「お前、なにを言ってるんだよ!」
「それはこちらの台詞じゃ。愛をささやくのでなければ、そなたはどうして今一度、我の前に姿をあらわしたのじゃ?」

♂ハンターの動揺を餌にしながら、ミストレスは紅玉のように紅い瞳を妖しくかがやかせた。

「♀アーチャーの心をとりもどせる。そう考えておるわけではあるまいの?」

そう言って手のひらで口もとを隠し、くすくすと笑った。

「図星かや。うぶな恋心じゃのぅ。じゃが、きらいではないぞ。魅力あるメスにオスが惹かれるのは当然じゃからの」

♂ハンターは開いた口を閉じることもできず、ミストレスの話を聞くことしかできなかった。
228名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/08(水) 23:41:38 ID:Zt1Eykbg
「それならば───どうじゃ、我と約束ごとをせぬか?
 我の中にはたしかに♀アーチャーがいまだ息づいておる。それゆえに我はそなたのことを知っておるのじゃ」

そこで一旦口をつぐみ、ミストレスは♂ハンターにするりと擦り寄った。♂ハンターは咄嗟に矢を放つことができなかった。
♂ハンターの心の中にある♀アーチャーへの想いが一瞬の隙となり、そこを彼女は見事に突いたのである。
もしここでミストレスが明確な殺意を抱いていたとすれば、彼は一撃のもとに殺されていたことであろう。
けれど彼女はそうはしなかった。つやのある薄桃色の唇から男を骨抜きにする甘い息をもらしながら、彼女は脳髄がとろけるような悩ましい表情をした。

「正直者よな。顔に喜びの表情が浮かんだぞ」

オスの本能を揺り動かす、メスの仕種であった。

「それで約束というのはの。そなたの精をもらいたいのじゃ。
 悔しいが我もまだ力が足りんでの。
 どうじゃ、そなたが我に精を提供してくれるなら、事が済み次第、しばらくの間は♀アーチャーの心を解放してやろうではないか」

すでにミストレスは両手を♂ハンターのからだにからみつかせていた。
やわ肌の感触が♂ハンターを襲い、♂ハンターは自分が正しく物事を考えられなくなっているような気がした。
いつのまにか完全に彼女のペースに乗せられていた。
くもの巣につかまえられた、蝶を想像した。

それでもどうにかこうにか年頃の女性の肌という罠から思考を切り離し、彼は精一杯の強がりを口にした。

「お前が嘘をつかないっていう保障がどこにあるんだよ」

心はもう、妖艶な女王蜂によって陥落寸前であった。
そのことに気づいているのか、ミストレスは美しい紫に色づいた笑みを隠そうとしなかった。

「これは我にとっての最大限の譲歩じゃ。あとは自分の意思で選べばよい。我はどちらでもよいのじゃからの。
 いや、そうではない。我は是非にでも、そなたとひとつになりたいのじゃ」

脳をとかす麻薬の声音が♂ハンターに耳に届いた。どこまでも妖しく、どこまでも魅力的な、メスの声であった。


<ミストレス>
現在地:E-6
容姿:髪は紫、長め 姿形はほぼ♀アーチャー
所持品:ミストレスの冠、カウンターダガー
備考:本来の力を取り戻すため、最後の一人になることをはっきりと目的にする。つまり他人を積極的に殺しに行くことになる。
   なんらかの意図があって♂ハンターを誘惑中


<♂ハンター>
現在地:E-6
所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢
外見:マジデフォ金髪
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。
   ミストレスに誘惑されている
229227sage :2006/03/08(水) 23:45:26 ID:Zt1Eykbg
ゴメンなさい。お話のナンバーは172話ですね。
お色気分を補充するためにミストレスに一肌脱いでもらいました。

うーん、お色気って難しい。
230227sage :2006/03/08(水) 23:52:28 ID:Zt1Eykbg
そうじゃない、176だ・・・
恥ずかしすぎなのでFFのポーションでも飲んで落ち着いてきます。
231名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/09(木) 01:27:04 ID:k.tCWdmU
NG.旅は道連れ世は情け[二日目夕方]

何時になったら止むんだろうな。雨宿りは早く切り上げたいところだけど……。
シトシトと降る雨を木の木陰から見上げていた♂ハンターは視線を地上に戻した。

俺は一体何がしたいのだろうか…。
♀アーチャーを見つけたらどうする?ジルタスを殺した相手と出会ったら?
♂ハンターは頭を左右に強く振った。
今はそんなことを考えている場合じゃない。考えても答えは出ない物だ。

とは言え───

この雨では人を探すのは難しい。
足跡は消えているだろうし、仮に近くまで近づけたとしても
雨音で追跡は難しくなる。
また、雨の中では相手も警戒しているだろう。
気配を絶っていたと勘違いされて戦闘になるのは避けたい所だった。

雨宿りを続けるしかないか。
♂ハンターは再び空を仰いだ。

こんな雨の中を何かが飛んでる?
よく目を凝らしてみるとどうやら鳥の様だ。
「あれは……ファルコンか……?どうしてこんなところに。」

♂ハンターがファルコンはゆっくりと空を旋回しながら降下して
丁度、♂ハンターの雨宿りしている木の枝に着地した。
大きく体を揺すり体にまとわりついた水をはじき飛ばす。
雨を逃れてやって来たのだろうか。

♂ハンターが鷹の様子を眺めていると、
ファルコンは始めて気が付いたかのように♂ハンターに目線を向けた。
鷹と狩人の視線が交錯する。

♂ハンターは何となくその鷹の目を見ておかしくなってしまった。
どこか俺と同じ雰囲気がするなコイツ。
「お前も……何かを探してるのか?」

鷹は答えなかったが、どこか賢そうな瞳をハンターから離さなかった。
「俺は、探してるんだ。女の子をね。
 大切な人なのかどうかはまだ分からない。」

一旦言葉を区切り繋げる。まるで自分の意志を確かめるかの様に。
「でも、守りたいんだ。守って上げたい人なんだ。」
♂ハンターは顔が自然と火照るのを感じ慌てた。

「はっ…お前に話してもしょうがないか……。」
視線を地上に下ろす。俺も精神的に参ってるのかもな。

突然、♂ハンターの右肩が力強く握りしめられる。
何事かと思い右肩を見ると先ほどの鷹が肩に止まっていた。
「なんだ……餌なら持ってないぞ。」

怪訝な表情でいる♂ハンターの頭を、ファルコンがコツリとつつく。
「いたた!、何するんだ!」

こつこつこつこつ!
「痛てっなんだ!いたたた!」

ようやく突くのが収まったので鷹の方を見ると、
まるでこの馬鹿が!と言わんばかりのすました顔で遠くを見つめていた。
「───人を探すのを手伝ってくれるのか?」

鷹は答えない。しかし、一瞬だけこちらに向けた鷹の目がこう言っている様に思えた。
(似たもの同士だろ?)


<ふぁる>
現在地:F-6
所持品:+2バイタルシュールドボウ[3]、リボンのヘアバンド>
スキル:ブリッツビート スチールクロウ>
備考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない。ツンデレ?GM側の拠点を発見するも重要視せず無視>
   気まぐれで♂ハンターと同行。

<♂ハンター>
現在地:F-6
所持品:アーバレスト、ナイフ、プリンセスナイフ、大量の矢
外見:マジデフォ金髪
備考:極度の不幸体質 D−A二極ハンタ
状態:麻痺からそれなりに回復(本調子ではない) ミストレスと、ジルタスを殺したモンクを探すために動く。
   ふぁると行動を共にする。
232名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/09(木) 01:30:34 ID:k.tCWdmU
初投稿NGった( ゚∀゚)・∵. ガハッ!!

ミストレスエロエロだ〜〜〜ヒャホ〜〜〜!
233名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/09(木) 01:37:23 ID:k.tCWdmU
しかも誤字脱字消し忘れまくりだっt( ゚∀゚)・∵. ガハッ!!
×♂ハンターがファルコンはゆっくりと空を旋回しながら降下して
○ファルコンはゆっくりと空を旋回しながら降下して

慣れないことはするもんじゃーねー。
234名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/09(木) 01:37:43 ID:nykvfwck
>>231
どちらにしてもふぁるは晴れた夕方にGMの拠点を発見していたので
♂ハンターと合流したとしてもそれのあとじゃないといけない気がする。
NGだからどうでも良い話なんだけど、一応ツッコミ。
235名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/10(金) 03:09:45 ID:2OGfDWpc
177 人と魔と

「しかし主人ヨ、おぬしはもう少し冷酷かと思っておったのだがナ。」
従者である、デビルチが主である♂WIZに言った。

「先ほどの♂マジの件ですか?」
「そうダ。別の実験に使ったとはイえ、あれほどたやすくカレる者も残っておるまいに。」

歩調を健気にも♂WIZに合わせながら言う。
「たしかにそうでしょうね。実力差もありましたし、戦力差もありました。
あそこまで相手を圧倒するチャンスはもう無いかもしれませんね。」
♂WIZはあっさり認める。それはつまり意図的に見逃したと言ったも同然である。

「なれバ、なぜ見逃した?あの約束は守ルほどのものであったか?」
デビルチは以外に突っ込んで追求してくる。♂WIZは苦笑して答えた。
「確かに約束もあります。それに魂の探求にも、実験は必要です。
ですが、見逃した理由には、もう一つあるのですよ。」
そう言って♂WIZはとんがり帽子を左手ではずした。そして帽子を眺めながら、
思い出すように話し出した。

「そうですね、私と彼の立場が似ていたからですよ。彼の境遇は、あなたと契約を
結ぶ少し前の私に似ていたのです。」
そう言うと、持っていたとんがり帽子を目深に被り直した。その仕草をデビルチは
下から見上げる。可愛らしい手であご?をさすりながら質問してくる。

「主人ヨ、似ているとはドコノことだ?たしかに二人とも魔術師ではアルが、
逆に言えばそれくらいしか、共通点がナイぞ?まさか、主人モギャンブルで
生き残ったのか?」
デビルチにそう聞かれ、♂WIZは口元に自嘲的な笑みを浮かべた。
「その通りです。実は私も1%以下の賭けに乗らざるを得なかったことがあったのです。
そして、それに打ち勝った。そこが私と彼の共通点です。」
「なるほどナ、♂マジの中に己を見たか。たしかにそれではコロセンナ。」
デビルチはようやく合点が言ったと、うれしそうにキキキと笑う。
が、♂WIZは少し物思いに耽る。

(私が賭けに勝った時、♂アサシンは死んだ。しかし、私が賭けに負けた今回、
私は生き残っている。命を奪い合うこの島で、賭けに負けて、しかし生き残り、
一つの実験の被験者も得られた。幸運と言っていいだろう。)


♂マジと♀マジに施した実験は順調なようだ。魔法で確認してみると、距離こそ
離れているが、方向は大体合っている。♂マジに正しい方向を教えたのには理由がある。
二人が近づくことで、距離感がある程度判ってくる。そうなれば、方向と距離で
彼女の魂の位置が特定できるようになるはずである。それに、二人を感じ取れなれば、
それは二人が死んだことを意味し、そちらに危険(おそらくはマーダラー)があると
推定することもできる。いわば、二人は♂WIZのレーダーでもあるのだ。

(彼が私から走り去ってから1時間ほど経ちましたか、あの速度でこの距離感、
そして♀マジと彼との距離の縮まり方・・・。ふむ、地図を見ているかのように、
位置関係が分るとよかったのですが、やはり人の視点と同じ感覚でしか、分りませんか。
距離が離れれば、離れるほど、実際の移動距離よりも少なく感じるようですね。
方向は問題ありませんが、距離は遠くなるほど不正確になっていきますね。
このままでは魂の探索など、到底無理ですか・・・。まだまだ改良が必要ですね。)


先ほどまで、明るかった空が暗くなってきた。遠くの雲が稲妻を孕んでいるのが見える。
どうやら、一雨来そうだ。♂WIZは雨宿りできる場所があるか、周囲を見渡す。
すると、先の方に民家が見える。何件かあるようだ。

「主人ヨ、あの家に一時避難するカ?」
「ええ、雨に濡れても体力を消耗するだけですし、そんな環境で戦闘になって、
勝利するには、なかなか骨が折れるでしょう。ですが、屋内なら最悪待ち伏せも
できます。接近戦は余儀なくされますが、反面私の魔法も避けようがなくなります。
あなたが足止めすれば、例え身を隠したローグでも発見することができるので、
警戒する場所を限定できる屋内は、私たちにとってそんなに悪い環境ではないはずです。」
そう言った♂WIZに、デビルチは特に反論することもなく、従った。

♂WIZは素早く民家に近づき、窓から中を窺う。特に異常は見られない。デビルチを
中に先行させる。ハイディングなどで隠れていないとも限らない。が、中は本当に、
もぬけの空の様だ。雨が周囲にぽつぽつと降り出してきた。とりあえずはここで、
雨宿りもいいだろう。ただ、周囲には何件か民家があるので、その中に他の参加者が
いないとも限らない。暗くなってから、デビルチを偵察に行かせるのもいいだろう。
暗がりで体の黒いデビルチは、しかしハイディングなどの隠遁の技を見破る目を持つ。
そういう意味ではうってつけだ。

♂WIZは外からは見えない位置へ移動して、床のホコリを払うと、
ゆっくりと腰を降ろした。そして、鞄から食料を取り出し、半分にちぎって、
片方をそばにたたずむデビルチに与える。デビルチはトライデントを肩に立てかけて、
両手で食料を受け取り、一口で放り込んだ。うまそうにもしゃもしゃ食べている。
その様子を見ながら、♂WIZは襲撃者への対策と雨が止んだあとのことを考えていた。


<♂Wiz>
位 置:D-5(民家内で休息中)
装 備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
外 見:黒髪 土気色肌
スキル:サイト サイトラッシャー ファイアピラー クァグマイア ファイアウォール
    フロストダイバー アイスウォール モンスター情報
備考 :「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド
    ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
    デビルチと主従契約

<デビルチ>
現在地:D-5(民家内で休息中)
所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用)
備考 :悪魔 ♂WIZと主従契約
236名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/10(金) 10:41:05 ID:hz2swN3Q
♂WIZの声が子安声に変換される
新作乙ー
237名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/10(金) 12:18:44 ID:ulZ5Wx5o
>>235
嵐の前の静けさ的な展開で、(・∀・)イイ!!
♂WIZって今回愛されてるよなぁ。前回が前回だっただけに・・・余計にそう思うぜ。

知的な悪役が進む未来にはどんな結末が待っているんだろう。wktk
238名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/11(土) 18:23:39 ID:u6LiaPDo
178 紅の騎士 [2日目夕方(雨が上がる前)]


雨が降れば、移動をしようとする人間は減る。
だがそこを狙って、あえて移動をして他人を襲おうとする人間もいる。
そのような人間が、雨をしのぐに最適であろう集落を狙うのは当然のことだ。
♂騎士も、もちろん警戒を怠ってはいなかった。
だからこそ逃げ場のない小屋の中ではなく、雨宿りの場所を軒先へと移したのだ。
しかし――かつての恩人が、彼を襲うなどとどうして想像できようか。
命の恩人との再会を喜んだ彼が、あっさりと♂クルセイダーの接近を許してしまったのも無理はなかった。

「気づいたか。なかなかの反応だ」
奇襲を避けられたというのに、眉一つ動かさずに♂クルセイダーは静かに呟いた。
「……俺は、警戒してたからな」
避けた、とは言っても深い傷にはならなかったというだけだ。♂アルケミストは血の滲む肩口を抑え、顔を歪めた。
(……どうして)
♂騎士は、凍りついた表情でそれを眺めていた。
元々♂クルセイダーの攻撃は♂騎士を狙ったものであり、♂アルケミストの傷はそれを庇った結果であった。
恩人が自分を殺そうとしたという事実。
それに呆然とする♂騎士の肩を、しっかりしろとばかりに♂アルケミストが叩く。そこでやっと彼は正気を取り戻した。

「……あなたはあの時、俺を助けてくれた。それで俺は、あなたのような騎士になろうと思ったんだ。
 それなのにどうして今あなたは、殺人者になったりしてるんだ!」
衝撃を隠しきれない様子で♂騎士が叫ぶ。♂クルセイダーは表情を全く変えずに、それに返した。
「俺には恋人がいた。お前も知っているだろう」
「あ…あの、アコライトの……」
「彼女が殺されたとき、俺という人間も共に死んだ。それだけのことだ」
「……っ」
――この人も俺や♂ケミと同じように、大切な人を失ったのだ。
♂騎士は顔を伏せた。自分も道を違えれば彼のようになっていたのかもしれない、と思いながら。

「お、俺も……大切な人を失いました。いえ、手にかけてしまいました。
 恐怖に打ち勝つことができずに、逃げた結果です。あなたの言ったような強さを、俺はなくしていたから……」
「……そうか」
「でも、俺はあなたのようにはならない。……あなたに殺されるわけにも、♂ケミを殺させるわけにもいかない」
伏せた顔をあげ、♂騎士は♂クルセイダーを睨みながら言い放った。
「……そうか。俺もお前も、それでいいのだろう」
返す♂クルセイダーの表情に、やはり変化はない。
本当に感情が死んでしまっているのだろうか、と♂騎士はそれを少し悲しく思った。

♂クルセイダーと睨みあった♂騎士の背を、静かに汗が伝う。
目の前の男の実力は痛いほどよく知っている。
剣士のときでさえあの実力だ。現在になってその差が埋まっているかといえば――相手が殺人者である以上その可能性もほぼない。
まともに戦って勝てる相手ではないだろう。本気で殺しにかかってくる相手に、まともに応戦する道理もないのだが。

「……おい、お前はこれ持って逃げろ。杖だけじゃ不安だろうからな、護身用だ」
♂アルケミストにナイフを渡し、♂騎士は言い放った。
彼の予想通り♂アルケミストは憤慨した様子で言い返してきた。
「ばっ…何言ってんだ。あいつ、あんたが言ってた凄腕の恩人さんなんだろ?
 一人でかなう相手かよ! それとも俺が足手まといだってのか?」
「いいから、言うとおりにしてくれ。……頼むぜ」
そう言って♂騎士は♂アルケミストに口元だけで笑いかけた。
(……! そういうことかよ)
それに何かを感じ取ったのか、彼は渋々頷いた。
「……死ぬなよ」
最後にそう呟くと、♂アルケミストは走り去っていった。

「自分の身を盾にして仲間を逃がすとは、大した勇者だな」
「そんな立派なものじゃないですよ」
無感情に呟く♂クルセイダーに、♂騎士は憮然とした表情で返した。
♂クルセイダーはそんな彼を、どこか懐かしそうな目で眺めた。

きらり、と互いの持つ剣の刀身が光る。
先に打ちかかったのは――♂騎士だ。
相手の力量は自分より確実に上回っているだろうとは感じていたが、それがどれほどか見極めるためだった。
♂クルセイダーは最低限の動きで♂騎士の剣をかわすと、鋭い反撃の刃を♂騎士に見舞う。
シミターが♂騎士の脇腹を掠める。かすり傷だ、と彼は思った。だが――

どん、と爆音が響く。
吹き飛ばされたのだ、と♂騎士は全身を地面に強かに打ちつけて初めて気づいた。
手には何も握られていない。先ほどの衝撃で取り落としてしまったのだろう。
(あの剣、カードが刺さってるのか……!?)
動転した思考を慌てて戻し、起き上がるが――眼前にはすでに♂クルセイダーが迫っていた。

「ぐ…っ」
刺された…のか? ♂騎士は混乱していた。
何故疑問形なのか――それは痛みがないからだ。だが熱いものが腹から流れ出していくのはわかる。
実際その剣は彼の体を深く抉っていた。傷口からは夥しい血が流れ、地面に血溜まりを作り始めている。
明らかに致命傷だ。だが、正常でない体を持つ♂騎士にはそれがわからなかった。
「……っ、くそっ!」
♂クルセイダーが彼の体から剣を抜いたのを見計らって、後方に飛び退る。
素早く♂騎士は先ほど取り落としたツルギを拾い、再び構えをとった。

(痛すぎて頭がおかしくなったのか、俺)
だけど今は痛がっている場合じゃない。むしろ都合がいいか。
そう思い♂騎士は自分の体へ疑問を持つのをやめた。
いや、♂クルセイダーの剣が彼の視界で再び奔ったため、考え事をしていられなくなった、というのが正しいか。

(……どういうことだ)
♂クルセイダーは♂騎士の動きに微かに焦りを覚えた。
熟練した戦士ならば、痛覚をある程度遮断することができる。だが完全にとはいかない。
どのような生き物でも、傷を負えばある程度その部分を庇うような動きをしてしまう。
目の前の青年のように、致命傷ともいえる傷を負った人間ならば、もがき苦しんでその場から動けなくなってもおかしくないのだが。

♂クルセイダーの剣をかわし、あるいは受け流す。
最大限に集中すれば、これ以上深い傷を負うことはない。防御のみに徹すればの話ではあるが。
――その度に腹部の損傷が激しくなっていることに♂騎士は気づいていないのだが。
無論このままではいずれ集中力が切れ、命を落とすことになるだろうということを♂騎士は理解していた。
(あまり得意じゃないんだが、これに賭けるしかない)
このまま嬲り殺されるわけにはいかない。♂騎士は眼光を鋭くした。
肩口を剣が切り裂くが、ただ彼はツルギの柄を強く握り締めるのみだ。
(……耐えろ)
♂騎士は前方を睨みながら、心中でそう呟いた。
全ての神経を研ぎ澄ませ、次の♂クルセイダーの攻撃の軌道を見極めるのだ。

(こいつは、何故――)
腹部から夥しい血を流しながらも、何かのために耐え続ける♂騎士。
彼を見て♂クルセイダーは奇妙な感覚を覚えていた。
それは♂騎士の様子がどこか、彼がかつて――大切な人を失う前に希望を持って目指していた、『人を守る聖騎士』の像に重なるからか。

――俺は何を考えている。
この男に、何を見ている? 彼のようになりたかったなどと、厚かましくも思っているのか。
……そんなはずはない。半分死人と化した人間が望むことか。
俺は、生き残ること……そしていつか、死ぬべき場所で死ぬこと。それだけを考えている。
これまでも、これからも。今だってそうだ。

これまで死人のように動きを見せなかった♂クルセイダーの心。
それが今、わずかにではあったが揺れ動いていた。

♂騎士の動きが止まる。
その隙を見逃すものかとばかりに、♂クルセイダーは♂騎士の首を狙って斬りつけた。
突然動きを変えた相手に斬りかかるなど、普段の慎重な彼にはありえないことだ。わずかな思考の乱れが判断を鈍らせた。
♂騎士はまるで♂クルセイダーの剣の軌道が読めているかのように、身を後ろに引いた。
(なに……!? これは、オート――)
♂クルセイダーの剣が空を切った。彼の視界に♂騎士の剣が映る。

(――カウンター!)
♂騎士が、再び前に踏み出す。雷光のように奔った彼の剣が、♂クルセイダーの左眼を切り裂く。
続いて突き出された剣は、♂クルセイダーの脇腹を薙いだ。
♂クルセイダーは常人離れした反射神経で身を捩り、貫かれることは避けたものの、けして浅くない傷にわずかに顔を歪めた。
――今だ!
心の中で叫ぶ。♂騎士の視線を受け、ひとつの影が♂クルセイダーに向かって飛び出した。

こうすれば♂クルセイダーの裏をかける。♂騎士も♂アルケミストもそう思っていた。
だが二人は彼がかつて、♂アサシンと♀ノービスに似たような奇襲を受けていたことを知らない。
二度同じ手を食うほど♂クルセイダーは愚かな男ではなかった。

♂アルケミストの握るナイフが♂クルセイダーの背に突き刺さる。
それが急所を外している――いや外されていることに、あまり戦闘慣れしていない♂アルケミストは気づくことができなかった。
振り向いた♂クルセイダーの凍りつくような眼光に、彼は顔を強張らせた。
239名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/11(土) 18:25:48 ID:u6LiaPDo
(だめだ、浅い!)
一瞬でも♂騎士の判断が遅れていたら、♂アルケミストは鋭い剣閃と共に地に倒れ伏していただろう。
だが死に向かっている故の冷静さか、♂騎士は奇襲の失敗に気づくことができた。
とにかく♂アルケミストと♂クルセイダーを引き離す。それを優先して、♂騎士は体当たりをするという暴挙に出た。
さすがに♂クルセイダーにとっても予想外だったのか、彼は倒れるまではいかないものの、大きく弾き飛ばされバランスを崩した。
追撃する好機、のはずだった。

しかし思考に肉体がついていけるほど、♂騎士の体の状態はよくはなかった。
血を流しすぎたのだ。体当たりの衝撃と共に、♂騎士はそのまま地に倒れ伏した。
倒れた拍子に打ったのか、頭部からまでも血が流れ、彼の視界を塞ぐ。
先に行動を起こすのは無論♂クルセイダーだ。彼はためらいもなく、♂騎士の体に再び剣を突き立てた。
血溜まりが、雨で濡れた地面に拡がる。

赤。♂アルケミストの眼前にはただその色が広がっていた。
腹からあれほどの血を流していたのにまだ流れるのかと、♂騎士の流す血の泉を見て思う。
そして彼の前に、死神が歩み寄る。
俺もまた、♂騎士のように赤く染まって、死ぬんだろうか。
そう♂アルケミストが思い始めたときだった。

彼は見た。
死神の後ろで、銀の髪までも自らの血で赤く染めた騎士が、再び立ち上がるのを。


***


まだ、立てるのか。
♂クルセイダーは視線だけを♂騎士に向けながら思う。
彼は長くはもつまい。だがおそらく、この戦いの間はどんなに傷を負わされようと『生きていられる』のだろう。
♂アルケミストの命を繋ぐために、何度でも立ち上がってくるのだろう。

認めよう。俺は動揺している。
そうでなければ、こんな酷い戦いはしない。
左眼はおそらくもう見えまい。体に受けた傷も深い。これから後を引くに違いない。
ほんの少しの心の乱れが招いた結果がこれか。……高すぎる代償だったな。

また、俺は少しだけ、この青年を殺したくはないなどとらしくないことを思っている。
この青年――いや目の前の騎士が、俺は羨ましいのだ。
きっとそれは、彼がもう一人の俺のように見えているからだ。
大切な人を失っても、彼のように、他の光を見つけて――それを守るために戦うことができたのかもしれない。
血塗られた俺には、もうできないことだけれど。

死に場所を探しながらも、生きるために人を殺すという矛盾。俺は何を望んでいたのだろう。
もしかしたら、ここが俺の死に場所だったのかもしれない。
別の道を歩んだ『俺』に打ち倒される……いや、共倒れになる、か。これ以上ない、愚かな俺らしい死に方じゃないか。
だが俺はどうやら死に損ねたらしい。死に掛けた目の前の騎士に倒されることなど、最早できはしないだろう。

一見冷静な自己分析を、♂クルセイダーは静かに終える。それと同時に彼は、遠くから近づいてくる気配を感じた。
今まで気づくことができなかったとは、よほど自分はどうかしていたらしい、と彼は自嘲ぎみに溜息をついた。
健常な状態でも避けるというのに、左目の光を失い、体に重傷を負った状態でこれ以上誰かを相手にする気はなかった。
動揺が残ったまま戦うことをしたくなかったというのもある。
だがそれ以上に――早くこの場から去りたいという思いが何故かあった。

「お前は…『騎士』になれたのだな」
そう一言呟くと、♂クルセイダーはその場から去るように歩き出した。
死にきれなかった自分は、またこれから空虚に生きるのだろうと――他人事のように考えながら。
(死ぬべき場所を、再び見つけることができたとして……俺は、死ぬことができるのだろうか)
内心で呟く。答えの出しようのない自問をするなど、馬鹿馬鹿しいことだとわかってはいるのだけれど。


***


♂クルセイダーが去るのを見届けた後すぐに、♂騎士は地に伏した。
呆然としていた♂アルケミストも、それを見て慌てて駆け寄る。
ここまで生きてこれたのが奇跡だと、誰もが言うであろう傷を負いながらも、彼はまだ『生きて』いた。
もっともその体は確実に、死に向かっていたのだが。
それでも♂アルケミストは必死に傷を塞ごうと治療を始めた。彼に生き延びてほしい――それだけを願いながら。

――俺は死ぬのか。
生きたくないのかって言ったら嘘になるけど、なんだか妙に落ち着いた気分だ。
♀プリのところには……行けないだろうな。俺はあいつに許されただなんて思っちゃいない。
まあ、それでもいい、か。
自分の恐怖心にも、頭の中のやかましい声にも抗って、俺の生きたいように生きることができたんだし。
……それに俺は、♂ケミの命を繋ぐことができた。
それだけで――手にかけた♀プリの分、厚かましく残してきた俺の命は無駄にならなかった気がする。

朦朧とする意識の中で、♂騎士はただそう思った。
痛覚を失っているとはいえ、嘘のように穏やかな笑顔を浮かべながら。

「♂ケミ……お前…俺が死んだら、もっと背負うものが増えちまうなぁ……」
「馬鹿、死ぬ気になってんなよ。……根性出せって」
(根性出せって、無茶言いやがる。まぁ、お前らしいけどさ)
♂アルケミストの言葉に、彼は苦笑いを浮かべた。
かつて♀プリーストを殺してしまうまでに心を狂わせた、自らの死への恐怖は最早ないのだが。
ここで自分が死んだら、♂アルケミストはその命までも背負おうとするだろう。それを彼は、少し心苦しく思った。
それでも、せめて彼には最後まで生きてほしい。♂騎士はそう願った。
「すごく、重いだろうけどさ……、お前だけでも、生きてくれ、な……」
♂騎士の意識が混濁し、闇へと沈んでいく。
彼の名を呼び、死ぬなと叫ぶ♂アルケミストの声が――何処か遠くに聞こえた。

「勝手なこと言うな! 格好つけてる場合かよ……! ……くそっ、止まれよ!」
血が、止まらない。♂アルケミストは自分の無力さを呪った。
ある程度の治療の技術は持ってはいたが、♀クルセイダーの傷を治療した時とは損傷の度合いが違いすぎた。
かつて彼の目の前で――美しい髪と体を赤く染めながら、穏やかに死んでいった人がいた。
それを思い出し、♂アルケミストの視界に涙が滲んだ。

俺を守ってくれた人が死ぬのを見るのは、もう嫌だ。
大切な人に置いていかれるのは、もう嫌だ。

「俺だけでも生きろだって? 馬鹿言うな! 生きなきゃいけないのはあんただろうが!!」
激情に駆られ、♂アルケミストは叫んだ。
答えはない。が、まだ♂騎士は生きている。まだ希望はあるんだ、と彼は無理矢理に気を奮い立たせた。
(頼む……死なないでくれ!)
♂アルケミストは願った。
自分を生かすことにすべてを懸けてくれた、友の命の灯火が消えてしまわないようにと。


<♂騎士>
現在位置:D-5(集落)
所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:痛覚を完全に失う ♂クルセイダーに負わされた傷から激しい出血、瀕死状態
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗する

<♂アルケミスト>
現在位置:D-5(集落)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:やや混乱状態 右肩に浅い傷 必死に♂騎士の傷を塞ごうとしている
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型

<♂クルセイダー>
現在位置:D-5から移動
髪型:csm:4j0h70g2
所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) ソード ナイフ(背に刺さったまま)
状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷、背に刺し傷を負う
♂騎士との邂逅によりわずかに心が乱れるが、冷静さを取り戻す
240178sage :2006/03/11(土) 18:36:10 ID:u6LiaPDo
♂クルセは北に移動中に集落を見つけて、そこで休んでいるかもしれない人間を狙って移動したと考えてください。
Wiz様がいるあたりとは少し離れた位置で戦ってるんだろう、多分(本当は見落としただけorz)

読み返すと♂騎士がゾンビのようで怖い。格好いい感じを目指したかったのに、何故ホラーにorz
♂ケミが戦闘時にあんまり役にたってない感じになってますが、半製造型とのことなのでこんなものかな、と。
♂騎士の生死や、♂クルセが感じた気配の主の正体とかは任せます。

しかし、普段男女ペアも書いているせいだろうか。
♂ケミと♂騎士のやりとりが、どうしても友情を超えて見えてしまってウホッ書き直し状態に。
さすが薔薇の香りがすると散々言われてきた二人だけあrうわなにをするやめ(ry
241238=240sage :2006/03/11(土) 18:38:26 ID:u6LiaPDo
178って何…と思ったら、話数でしたねorz
もう少し落ち着きましょう、自分。
242名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/11(土) 21:14:49 ID:vBkAag.U
>>238
えがった。♂騎士も♂クルセも♂ケミもえがったよぅ。
かっこいいよぅ。

まだ♂騎士死んでないよね、これからだよね(涙)
243名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/11(土) 23:37:36 ID:babz4Iqo
本編とは関係ないのですが、まとめサイトのほうで登場人物一覧があるじゃないですか。
知らなかった友人に教えて気づいたのですが、始めてみる人が一覧を見るのは至極当然で、
そこにネタバレ(というか死亡状況とか)がかいてあるのはどうなんでしょう、と。
リアルタイムで見てたため未だに気づかなかったのですが・・・他の方の意見もきいてみたいです。
244名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/12(日) 00:02:07 ID:Yz41TNZ6
あー、それは問題かも。私も気づかなかった…。
参加者一覧 と 現在の参加者一覧とで作ってみるといいかも。

参加者一覧では容姿設定と、基本的な性格付けだとか一番初期の持ち物とかだけにしておいて、
現在の参加者一覧を今までのものにするとかどうでしょ。
245名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/12(日) 01:12:12 ID:5aveJWi2
>>244
それがいいかも
今の参加者一覧はどっちかというと書き手さんが現状を把握するためのもの
という感じなので
246名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/13(月) 01:16:04 ID:T6PZYoRw
最近動きが無いのは、未亡人PTと♀BS&愉快な仲間PTですかね。
物語の時間としては足並みがそろってきた感じはしますが、ちょっと、
最近日の目を見ていないので。とはいえ、あの人数をまとめて書き上げ
るのもえらく大変でしょうけど・・・。
247名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 12:00:32 ID:ohcZ131U
未亡人PT書こうとしていたら浮かんだ疑問なんだけど、
Lv99のオーラってクローキングでちゃんと消えるんだっけ?
前にどこかでクローキングでもオーラは見えるみたいなことを読んだ記憶があるんだけど・・・・・・
248名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 12:05:38 ID:kdKGFxdA
>>247
消えますよ。
画面外に出て、戻ると消えてますし
249名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 18:33:57 ID:ohcZ131U
179.薔薇の花 [2日目夕方]

 通り雨というには長すぎた雨がいきおいを弱めはじめたころ、偶然見つけた集落、その中の一軒の小屋で身を寄せあい、雨をやり過ごしていた♀WIZたち5人は、外から聞こえてきた不穏な音にぎょっとして、顔を向けあった。

 どうやらすぐ近くで、何者かがあらそっているらしい。雨音にまじって聞こえてくる金属音はあきらかに、剣と剣とがぶつかりあう音であった。

 小声ですばやく相談をした結果、クローキングを使うことのできる♀WIZが偵察を行うことで、話はまとまった。

 先行する♀WIZが状況を確認し、クローキング状態の♀WIZを見ることのできる♂プリーストが後方からフォローするということである。

 残った♂シーフ、♀商人、それから♂セージは♂プリーストからの指示があるまでは待機することになった。あくまで偵察が目的であり、雨の中での無茶な行動は可能な限り避けたいというのが♂セージの思惑であった。

 ♀WIZはクローキング状態のまま、そっと小屋の扉を開けて、そろりそろりと足を進めた。いくらクローキングを使えたところで、足音まで消せるものではない。用心してもしすぎるということはないのである。

 少しずつ音のよく聞こえる場所まで近づいたところで、彼女はじっと目を凝らした。雨が多少は弱くなったとはいえ、まだ外はそれほど明るくはなかった。

 遠めに見た彼らは、どうやらクルセイダーとアルケミストのようであった。そしてもうひとり。クルセイダーの男に体当たりしてアルケミストを助けた男は、♀WIZが知っている人物であった。

 ♂騎士であった。

(いけない・・・・・・)

 ♂騎士の姿をひと目とらえて、♀WIZはにわかに動揺した。彼らとはまだかなりの距離があったが、♂騎士が普通の状態ではないことがわかってしまったのである。

 彼のからだは全身、血まみれであった。

(彼が・・・・・・殺されてしまう・・・・・・)

 気がついたとき、♀WIZは走り出していた。息を殺すことも忘れ、♂騎士を助けようとして彼女は思わず、その場から飛び出したのであった。

 クローキング状態であったことで、容易に♂クルセイダーの不意をつくことができると思ったのであろう。

 ♂騎士はまだ立ってはいたが、全身が血と汗と泥とでぐちゃぐちゃであった。それでも♂騎士は、なおも♂クルセイダーに向かおうとした。

 ところがそこで、♂クルセイダーがなぜか一目散に逃走しはじめた。

(嘘・・・・・・私の気配に気づいたの!?)

 ♀WIZはおどろくほかなかった。♂クルセイダーがそこまで冷静さを保っているとは思っていなかったのである。まさかクローキングのまま近づこうとしている自分の気配を、雨の中で気づくことができるとは、彼女は予想もしていなかった。

 ♀WIZが♂アルケミストと♂騎士の近くまで来たときにはもう、♂クルセイダーは集落を利用して、まんまと姿を消していた。

「俺だけでも生きろだって? 馬鹿言うな! 生きなきゃいけないのはあんただろうが!!」

 ♂アルケミストの悲愴な声があがった。どうやら♂騎士はやはり、瀕死の状態であるらしい。

 ♀WIZは後ろに振り向いて、急いで♂プリーストの姿をさがした。がっしりとした体躯に修道女のヴェールを身に着けた♂プリーストは目立つのか、すぐに見つかった。
隠れるのはあまり得意ではないようであった。

 ♀WIZはすばやく右手をあげて、おいでおいでと手のひらをひらつかせた。成熟した大人である彼女がふと見せた子供のようなその仕種はとてもかわいらく、♂プリーストは飼い犬のように♀WIZに向かってまっしぐらに駆け寄ってきた。ただし、♂プリーストがそれをすると、犬ではなく、ミノタウロスの突進であった。

 ♂アルケミストは♂プリーストの足がたてた雨土をはねさせる音に気づき、わっと声をあげた。どうしようもないほどに不意打ちだったのである。

 ♂騎士の上半身を抱きしめながら、やってきた♂プリーストをキッとにらみつけた。

 敵意がむき出しであった。
250名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 18:34:19 ID:ohcZ131U
 ♂プリーストは♂騎士の様子を見るや、♂アルケミストを腹の底から出したような大きな声でどなりつけた。

「バカやろう! なに無理な姿勢とらせてんだ。はやくそいつを横に寝かせろ。はやくっ!!」

 あまりの大声におどろいたのか、内容におどろいたのかはわからなかったが、♂アルケミストは♂プリーストの声にはっと我に返った様子で、あわてて♂騎士を地面に横たわらせた。

 すかさず♂プリーストがぶつぶつと祈祷の言葉をつぶやきはじめた。右手がぼうっと青白くひかり、彼はそのまま手のひらを♂騎士の傷にかざした。

「♂騎士、しゃんとしろよ。、嬢ちゃんの分まで生きるんだろ。おら、おめぇも呼びかけろ。人間の五感で最期まで生きてんのは聴覚なんだよ。だからこいつが旅立っちまわねぇように、必死になって呼びかけろ」

「え・・・・・・あ、あぁ。生きてくれよ。目を覚ましてくれよ。♂騎士。俺、このままじゃお前にいろんなものを借りっぱなしじゃないか」

 ♂プリーストが敵じゃないということを理解したのであろう。♂アルケミストは♂騎士の耳元で、祈るように呼びかけはじめた。

 ♀WIZはいつのまにかクローキングをといており、絹糸のように美しい銀色の髪を雨に濡らせながら、真摯な顔もちで♂騎士に呼びかける♂アルケミストをじっと見ていた。

(この目、わかるわ・・・・・・この子は彼を、ほんとうに大切に思ってる・・・・・・)
(私には・・・・・・もう・・・・・・・いなくなってしまったけれど・・・・・・)

 ♀WIZは睫毛をわずかに伏せて、自分が一番大切であった彼のことを想った。

 それからすっと顔をあげ、意を決した様子でヒールを続けている♂プリーストに告げた。

「♂プリーストさん、どうか彼らのことをよろしくお願いします。私はあの♂クルセイダーを追います」

 ♂プリーストの顔色がさっと変わった。とんでもない話であった。

「ひとりでか? 冗談だろ」

それでも♂プリーストは♀WIZの方を向くことなくヒールをかけつづけていた。♂騎士の状態にはすこしの余裕もないのである。♂アルケミストもまた、休むことなく♂騎士に呼びかけつづけていた。

「おそらくは彼も手傷を負っているはずです。私はいまが好機だと考えます」

 ♀WIZの語気が普段とは別人のように強く、♂プリーストには彼女がまるでなにかに憤っているように感じられた。

「積極的に殺すっていうのか? その行為はすくなからず、周りの人間を不安にするぜ」

「構いません。殺さなければいけない人を殺せるときに殺しておかないと、あとできっと痛い目を見ます。それに私はあの♂クルセイダーがどうしても許せませんから」

「知ってる人間を傷つけたからか?」

 ♂プリーストは抑揚を変えることなく、静かに聞いた。♀WIZは問いかけにすばやく答えた。

「違います。ただあの♂クルセイダーを殺せなくて、GMジョーカーが殺せるはずがないと思ったのです」

 本当の理由とは違っていたが、♀WIZはあえて言わなかった。いま口にしたことも嘘ではなかったからである。

「あんたは薔薇だな。美しくも非情な棘を持ってるってことか」

 ♂プリーストは、♀WIZを止めることはできないと感じたのか、しぶしぶながらも了承した様子であった。きざなセリフに、♀WIZがくすりと笑った。

「似合いませんよ、そういうセリフ」

「ぐっ・・・・・・それよりほんとうにひとりで大丈夫なのか?」

「ありがとう。でも大丈夫です。私、あなたたちよりもずっと強いんですよ」

 そう言って、♀WIZは妖精のようにいたずらっぽく笑った。すぐに真顔にもどしてしまったのではあるが。

「──それでもひとりではどうにもできないことがあるんです。だからここで待っていてください」

「わかった。ほかの連中には、こいつをなんとか助けられたら、そのあとで伝えにいく。終わったらすぐに戻ってこいよ。あんたがいなくなると、俺の逆毛もしょんぼりして、しおれちまうからよ」

 集中してヒールを使い続けていることで、♂プリーストの声には力があまりなかった。それでもいまできる精一杯のはげましを、♀WIZに贈ったのであった。

「そうそう、そういうセリフの方がずっと素敵ですよ」

 ♀WIZはマフラーをなびかせながら、ふわりと身をひるがえした。

「いきます」

 そのまま♂クルセイダーが逃走したと思われる方角に向けて、彼女は走りはじめた。

 気がつけば雨はあがり、夕日が彼女の背中を黄金色に照らしていた。


<♀WIZ>
現在位置:D-5(集落)
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー 案内要員の鞄(DCカタール入)
外見特徴:WIZデフォの銀色
備考:LV99のAGIWIZ、GMに復讐、♂プリ、♂シーフと同行 ♂クルセイダーを殺そうと、彼を追う

<♂プリースト>
現在位置:D-5(集落)
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し)、でっかいゼロピ、多めの食料、赤ポーション5個
外見特徴:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない)、怖い顔
備考:殴りプリ ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行 ♂騎士治療中

<♂シーフ>
現在位置:D-5(集落)
所持品:青箱(未開封)、多めの食料
外見特徴:栗毛
備考:ハイディング所持 ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
   盗作ローグ志望でちょっと頭が良い 右肩負傷(軽傷なのでヒールで治りそう)
   小屋で待機

<♂セージ>
現在位置:D-5(集落)
所持:ソードブレイカー 青箱(開封済みの可能性アリ)
容姿:マジデフォ黒髪
備考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? ファイアウォール習得 GMジョーカーの弟疑惑
   ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
   左足負傷 小屋で待機

<♀商人>
現在位置:D-5(集落)
所持:青箱2(未開封)
容姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備考:割と戦闘型 ♀WIZ・♂シーフ・♂セージ・♀商人と同行
   ♂セージに少し特別な感情が……?
   小屋で待機

<♂騎士>
現在位置:D-5(集落)
所持品:ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:痛覚を完全に失う ♂クルセイダーに負わされた傷から激しい出血、瀕死状態
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗する
   瀕死の状態

<♂アルケミスト>
現在位置:D-5(集落)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:やや混乱状態 右肩に浅い傷 必死に♂騎士の傷を塞ごうとしている
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型
251名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 18:38:08 ID:ohcZ131U
♀WIZがひとりで♂クルセを追ったのは、オーラならではの強気というか過信というか、そういう感じで。
それでも手負いの♂クルセよりも強いとは思いますけども。

♂騎士がどうなるかは、さらに次の人におまかせします。
普通じゃなおらないけど、彼の体は普通じゃありませんから、大丈夫かもしれません。
252名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 19:03:41 ID:JCrbGJSE
フリルドラ挿しマフラーのクローキングだと
壁際でしか使えないのに、♂クルセにクローキングで接近してるのが少し気になった。
253249sage :2006/03/14(火) 19:20:05 ID:ohcZ131U
今はD-5で集落だから普通に壁だらけだと思うのです。
178話での戦闘も軒先だったはずですし。

集落描写をきっちり冒頭でしておいたほうが良かったですかね。
254名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/14(火) 20:04:39 ID:VzTy2Zzo
夕方前の未亡人PTの行動を書いてしまってもいいでしょうか。
いきなり朝から夕方に飛んでしまったので、
昼間の行動がわからないと思うのですが、
どうでしょうか。
255254sage :2006/03/14(火) 20:09:32 ID:VzTy2Zzo
あと、気になったこと。
最後に未亡人PTはF3に向かったのになんで、D−5にいるの?
おかしくない?
256249sage :2006/03/14(火) 20:23:35 ID:ohcZ131U
そういえば当時147話を読んだときに、
なんでF-3に行くことになってるんだろうって突っ込もうと思ったのをすっかり忘れてました。

変ですね。なんだかつっこみばかりなのでNGにしてください、ゴメンなさい。
未熟でした。
257名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/03/15(水) 01:23:05 ID:8KwCY4fo
しかしながら、この大人数をまとめたのはGJ。

位置関係はややこしいですな。
258名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 01:44:11 ID:KJBMjRcY
この手の大人数PTは動かし辛いって点から、素直にGJと言いたい。
昼間の行動云々は移動ってだけでもいいし、疑問に思った書き手の人がフォロー話を挟めばいいと思ふ。

E-3からF-3移動はグラリス追撃?
そのあたりもフォロー話に盛り込めれば、NG扱いにしなくても問題ない希ガス。
259名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 02:01:29 ID:KJBMjRcY
そういえば個人的に疑問というか質問なんだけども、皆さんMAP1エリアの移動って大体どれくらいを想定してます?
漏れは「112.彼の長い夜」の♂ローグが首輪鳴り始めてから全力移動+馬牌で30分ギリ。エリア中央からの移動と勝手に解釈。
通常移動=1エリア4時間横断
全力移動=1エリア2時間横断
全力馬牌=1エリア1時間横断
くらいで考えているんですがどでしょう?

後、時間のサイクルですが、
朝(定時放送前) → 朝(放送後)〜昼 → 昼〜夕方(放送前) → 夕方(放送後)〜夜 → 深夜 →明け方
の6パートくらいかなぁ?と思っているんですがそのあたりも意見聞かせていただけると嬉しいです。
260名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 07:38:54 ID:eVR30jfY
>>258
それでは競り負けた未亡人PT話の終わり方をちょっと変えて、フォロー話として投下してみるテスト。
261名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 07:40:45 ID:eVR30jfY
180.剣よりも強い物[2日目昼〜雨]


時を数時間ほどさかのぼる。


『ここへ来るまでに、遠目にですが集落らしき物を見かけました。彼の傷も治療したいですし、そこまで戻りませんか』
グラリス撃退後、♂シーフの傷が浅いことを知りつつも♂セージは言った。

まず急ぐべきことは筆記具の入手。その為には他の参加者と遭遇する危険を承知で人家を探さざるを得なかったのだ。
彼が見た集落はすでに大半が禁止区域になったようだが、まさか禁止区域に全体が収まるはずもない。はみ出ている部分も当然あるだろうし、北から来た♀Wizや♂プリ達は民家の気配さえ目にしていなかった。
当然の選択として♀Wiz一行は東へと向かう。
そして、彼が言っていたよりもかなり手前で民家を見つけた。
そのころには空色が怪しくなりつつあったこともあり、彼らは安全策を採ってそこへ向かった。
…地図上ではF−3。つまり♀BSと♂スパノビ・ダンサーが出会った民家へ。


倉庫に踏み込もうとしていた♂セージが民家を振り返った。
「今、叫び声が…?」
「行きましょう」
炎の輪を浮かべた♀Wizが走る。
サイトを持つ彼女とルアフを持つ♂プリが手分けし、それぞれ倉庫と民家の安全を確認する手はずになっていた。
あちらには♂プリと♂シーフが行っている。
ゲームに乗った殺人者が居たとしても複数の可能性は低く、不意打ちを受けないよう気をつけていれば簡単にやられてしまうような2人ではない。
そう思ったからこそ分散したのだが。

「どうした!」
3人は裏手から民家の角を回り込んで正面へと飛び出す。
そこに♂プリ達が居た。特に♂シーフは地面にへたり込んでえずいている。
「大丈夫ですか!?」
「来るな!」
駆けつける彼らに気付き、♂プリは気を取り直したようだ。手を上げて3人を制止した。
その様子に事態を薄々察しながらも♂セージは一応訊ねる。
「何があったのかな?」
♂プリは♂シーフと♀商人に目をやって遠回しな答えを選んだ。
「まあ、何だ。冥福を祈ってやらなきゃならん奴が2人ほどいた」
「その様子ですと、結構ひどいようですね」
眉をひそめる♀Wizに♂プリは頷き返した。
「ああ。見ない方がいいぜ」

「それより!その2人は誰と誰です?死んでどれぐらい経っていました!?」
惨状を思い出して顔をしかめる♂プリを♂セージが急き立てる。
勢いにとまどう彼より先に♀Wizがその意味に気付いた。
「♂プリさん。その2人が殺されたばかりなら、手を下した誰かがまだ近くにいると言うことになるんです」
「あ、ああ」
♂プリは答えようとして改めて不審点に気付く。
「…ありゃあ殺られたのは今日になってからじゃねえ。それより変だな。ありゃ参加者じゃねえぞ?」
「なんですって?」
「さっきは気にしてる余裕無かったが、ありゃ王国軍の制服だ」
その答えに♂セージと♀Wizは顔を見合わせた。
「……見てきます」
「私も」
「おいおい。やめとけってのに」
♂セージに続いて民家の戸をくぐろうとする♀Wizを♂プリが引き留める。が、彼女はやんわりとその手を押し戻して♀商人を示した。
「私なら大丈夫です。それよりあの子をお願いしますね」
「本当に大丈夫なのか?」
「大抵の惨状は悪夢に見ましたから」
かすかに微笑む余裕さえ見せて民家へ踏み込む彼女を見送り、♂プリは引率を任された少年少女を見下ろした。
「…女は強し、ってか?」
♀商人も呟く。
「あのー。わたしだって女なんですけど…」


「で、何か分かったのか?」
悪臭と羽虫に辟易しながら出てきた2人と共に倉庫へと場所を移し、車座に座ると即座に♂プリが聞いた。
「ええ。まずこれを」
「…何だそりゃ?」
♀Wizと♂セージが差しだした物を見て彼は表情に疑問を浮かべる。
大きな布包みと、そして一冊の聖書。
「着た切り雀はちょっと嬉しくありませんから。着替えを見つけました」
そう言って♀Wizが包みを広げ、同時に♂セージが聖書のページを開く。
そこには元々の教典の上に口紅で真っ赤な文字が書き加えられていた。
「おいおい。そいつはちとよろしくねーぞ…ん?」
聖職者として反射的に顔をしかめた♂プリが文字を読んで固まる。
【これから筆談しますが絶対に言わないで下さい】

「え、どういうこと?」
♀商人も思わず口にしてから慌てて口を押さえた。
しかしそれを♀Wizが何事もなかったようにフォローする。
「確かに死んだ方の物を奪うのは良くないかも知れませんけど…今はそんなことを言っている場合ではないと思うんです。雨も降ってきましたし、もう丸一日着たきりですから」
その間に♂セージはさらに聖書のページをめくった。
【ジョーカー達に盗み聞きされています】

「ああ…まあそうか」
♂プリは困惑をありありと浮かべて曖昧な相づちをうった。
一方心の準備が出来ていた♂セージは飄々と受け流す。
「ま、詳しい説明は着替えてからにしましょう」
しかし。
「私と♀商人さんはそっちで着替えます。見ないで下さいね」
「……」
♀Wizが冗談めかして言い、♂セージは♂プリ共々思わず光景を想像して沈黙してしまった。
やはり男とは悲しい生き物のようである。
「もうっ!ばかっ!」
そんな男共のすねを♀商人は憤然と蹴っ飛ばした。


数分後、服を着替えた一行はそれなりにさっぱりとした顔で車座に戻った。
「にしても、よく全員分の服があったもんだな」
「それについては♂セージさんの方から」
「そうですね」
♂セージは頷いて聖書に口紅を走らせる。
【筆談は♀Wizさんに任せます】

2人は内容を取り替えて本格的な説明態勢に入った。
複数の論理的な内容を同時に考え、しかも話すことと書くことを間違えずにいるのはさすがに難しい。そこで意図的に分担したのだ。
「えーとまず、母屋で殺されていたのはほぼ間違いなく王国軍の兵士です」
【この島のシステムについて説明します】

♀Wizの文章は簡潔すぎるほどに簡潔だった。
きちんとした筆記具が見つからなかったから仕方ないとは言え口紅では少々書きにくく、また今後のことを考えるとなるべく消費を抑えたかったからである。
多少誤解を生む可能性もあるが今は仕方なかった。
「私の知る限り正式の軍装のようでしたし、参加者ではない証拠に首輪をしていた跡もありませんでした」
【工務大臣から聞いたので正確でしょう】

彼女の書く赤い文字に頷きつつ、♂セージは自分の観察と推論を披露する。
「そして惨殺されたにもかかわらず、ろくに抵抗した痕跡さえありませんでした。ここから推測できる可能性は2つ」
【首輪には振動をGM側に伝える機能と爆破機能があります】

「犯人は瞬時に兵士2人を無力化できるだけの力を持つ何者か…あるいは彼ら兵士が油断する何者かだ。ということです」
「なんだって?」
目と耳から同時に知識を詰め込まれ、♂プリが目を白黒させて声を上げた。
自分でもどっちに対して反応したのかよく分からない。
一方、早々に文字を追うのは諦めて♂セージの話に耳を傾けていた♀商人が、首を傾げつつ疑問を口にする。
「どっちも島に連れて来られた人たちには無理な気がするんだけど…」

「ええ、前者の可能性は低いと思いますよ。彼らに一撃で昏倒するような大きな傷はありませんでしたし、参加者にそこまでの力を与えるはずもありませんからね」
【振動は私たちの会話と脈拍を監視する手段です】
「そうですね」
♀Wizは聖書に口紅を走らせつつも不自然にならない程度に合いの手を入れた。

【そして振動を伝える機能が失われると爆発します】
「つまり彼らは無抵抗のまま捕らえられ、その後殺されたと見るべきなんです。…ではそれが可能なのは何者でしょうか」
一旦言葉を切って彼は聴衆の反応を待つ。
どうやらこういった探偵口調が気に入ったらしい。
「わからん。ま、俺達じゃないことだけは確かだな」
♂プリが律儀にも付き合って答えた。

「そう、まさにその通り。私達参加者にはほぼ不可能なんですよ。つまり犯人はおそらく彼らの仲間…より正確には上司であるGM達の誰かだと思われます」
【またこちらの位置を伝える機能が地図にあります】
「げ。げげ。そっちか」
得々と推理を語る♂セージと文章を綴る♀Wiz、♂プリの反応はまたもその双方への相づちとなっていた。
仮にもプリ。他者の告白を聞いて必要な反応だけを返す術には長けているのかもしれない。
「だけど、どーしてわざわざ部下の人を殺したりするの?」
♀商人がまたも首を傾げた。
適切な疑問を投げ返す辺り、探偵の助手役としては合格である。

「その答えがこの着替えにあります。あの民家には食料はおろか調理器具さえ残っていなかったのに、ほぼあらゆる冒険者職業の衣装と簡単な化粧品が揃っていました。そしてこの倉庫には何とカートまであるんですよ」
【スキルその他の大きな力は訓練砦と同じ装置で減衰されます】
確かに暗がりに積み上げられた農機具などに混じって商人用の猫車が置いてあった。
一切の改造をほどこしてない、カプラサービスで貸与されるのと同じシンプルな物である。
「ペコペコ以外の外見装備一式か。それで?」
262名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 07:41:20 ID:eVR30jfY
【GM達はこれを無視する装備を持っています】
「つまり彼らは特定の参加者に装備を供与するか、逆に一部を殺してすり替わり、ゲームの結果をコントロールしようとしていた不心得者なのではないでしょうか」
「ぁ…そう言えば商人ギルドで聞いちゃったんだけど」
何か思いだした様子で♀商人が手を叩く。
「このゲーム…BRの毎日の死者や優勝者を当てる賭博があって、大きなお金が動いてるって」
「なにぃ罰当たりが。知ってたらこの俺が闇討ちしてぼっこぼこにしてやったのに」
「♂プリさん、そんな事してたんだ…」
ポキポキと指を鳴らす♂プリを♀商人は呆れ顔で見つめた。
彼はにんまりと笑う。
「おうよ。俺はこう見えても実は破戒僧だからな」
「こう見えてって…どっからどー見ても立派な破戒僧じゃない」
「おほん。続けていいかな?」
脇道にそれ始めた会話を♂セージが咳払いで止める。

「それでジョーカー辺りが嗅ぎつけて粛正した。傷の多さは拷問の跡。死体を残したのは他にも居るかもしれない同類への警告と、参加者の危機感を煽って殺し合いを加速するため。という所でどうでしょうか」
「なるほど。確かに筋の通った話ですね」
【装置は島内に4基、細かい場所までは不明です】
口紅を置き、自分の方の説明も終わったという意思を示して♀Wizが言った。
「ただ、それが事実とするとまた同じような手出しを考えるかも知れないと言うことになりませんか?ここは危険じゃありませんか?」
そこで彼女は再び口紅を取り、一言だけ書く。
【GMも】

♂セージは大きく頷いた。
「まあ可能性は低いでしょう。知らなければともかく今は兵士の不在に注意しているでしょうし、兵士にしてもアドバンテージは首輪をつけられていないだけですから、1日目を生き残った我々を相手にしたくはないはずです」
最悪の事態は♀Wizの書いたとおりGMが手出しを始めた場合である。
ただし、それはスキル制限無効化装備とやらを手に入れるチャンスでもある。
♀Wizもその可能性に思い至ってることを確認し、彼は話を次の段階へ移すことにした。

「ところで♀Wizさん。その話が出たついでにちょっといいですか?」
「なんでしょう」
♂セージは♀Wizから口紅を受け取った。
【首輪と装置を止める方法は?】
質問を書いて口紅を返し、まったく別のことを口にする。
「午前中にうかがった『悪夢』ですが、あれが事実なんてことはありませんか?」

「何がおっしゃりたいんですか?」
【不明です。が】
♀Wizは短く答えて図を描き始めた。
破裂寸前まで膨らんだ大小2個の風船を、ピンと張ったゴム紐で繋いだ糸電話のような絵。
大きな風船には【首輪】小さな風船には【GM盗聴器】と説明書きが加えられた。
【首輪の原理は単純です。どこを切っても破裂しますが空気を抜けば無力です】
彼女がそれを書く間、♂セージは言いにくいことを言おうとしているかのような長い間を取り、そして言った。
「…貴女が実際にこのゲームを運営する側ということはないか、と聞いているんです」

「おい。よりによって何てこと言い出す」
♂プリが真面目に憤慨し、♀Wizはため息を吐いてみせた。
「仮に私があなた方を騙すつもりなら、そんな疑われるようなことを口にしませんよ」
その間に♂セージは地図を取り出し、亀のような島の東西南北に突き出た『手足』に印を付けた。
【島は砦の十数倍。おそらく装置は均等配置・限界出力】
本来の用途よりはるかに広い面積をカバーするためにはあまり片寄った配置は出来ず、また技術者というモノは『美しい』システムを好む。
彼はそのきれいな対称形に並ぶ位置に比較的自信があった。
「そうですか?貴女自身忘れていて、それが悪夢という形で噴き出したと言うことは?」

「そんなこと言い出したら、あなただって今はすべて忘れているだけのGMかも知れないって事になるじゃありませんか。誰も信用できなくなりますよ」
付き合ってられないと言わんばかりの口調を演じつつ、♀Wizは♂セージの考察について吟味する。
配置は確かに彼が示した位置にある可能性が高い。
そして装置の許す限度ギリギリまでパワーを上げてあるとすれば。
口紅を走らせる。
【1〜2基の操作もしくは破壊で全基停止も?】

♂セージは頷いた。
ただし憎まれ口は絶好調のまま。
「おや?この状況で誰かを信用するつもりですか?」
「♂セージさん!?」
様子を見ていた♀商人がさすがに悲鳴じみた声を出した。
♂セージは肩をすくめて理由を聖書に書き込む。
【明日中に装置を全て確認し、どれがGMの本拠か探りたい。『喧嘩別れ』しましょう】
彼はこの時、GMの本拠は装置のどれかと一緒にあると自然に思いこんでいた。
「…とりあえず一発殴っていいか?」
♂セージの意図が盗聴相手に疑われずPTを分けることにあったと分かり、♂プリが安堵のあまり彼の頭を叩く。
「あたっ。…そりゃまあ言い過ぎかも知れませんが、殴ることはないじゃないですか」
「言って分からない奴にはこれでいいんだよ」
「何も言ってないじゃないですか」
「やめましょうよー」

仲良く仲間割れの演技を続ける脇で♀Wizはしばし黙考し、やがて1つの疑問を記した。
【別れてもそれぞれが装置へ近付けば怪しむのでは】
♂セージは口と文字で即答する。
「これまでのようですね」
【近付く際、地図を預けます】
「……っ!」
全員が息をのんだ。
確かに言われてみればそれしかないという手段である。
しかしそれは単に現在地を確認できなくなると言う以上に大きな賭けとなる。
地図を預けた相手が裏切って禁止区域に地図を投げ込めば。そうでなくてもその誰かが殺されてしまい、地図が禁止区域に取り残されることにでもなれば。
その時は爆死を免れない。
口ではああ言った♂セージだが、実は♂セージが最も仲間を信用しているのかもしれなかった。
「それはどういう意味ですか」
♀Wizも演技に加わり、PT分けを始めようとしたその時。

「…僕は行きます!」
「あ、おい!」
それまで黙って説明を聞いていた♂シーフがいきなり倉庫を飛び出した。
♂プリには彼が『僕は』ではなく『僕が』と言ったように聞こえた。
「俺ぁ追いかける!あいつ荷物忘れて行きやがった」
「私も行きます」
♀Wizは♂シーフの残していった地図を拾って♂セージへ示す。
それには島の半島のうち現在地から最も遠い場所、E−10付近に印が付けてあった。
彼女はさらにE−5とE−6の境目付近へ丸印を付け、♂セージがそれを集合地点として理解したかも確かめずに飛び出す。
追いついてきた彼女へ♂プリは悔いを漏らした。
「あいつ、根が真面目だからな。思い詰めてるとは思ったが…」
考えてみればグラリスを撃退した後から今まで、彼はほとんど口を利いていなかった。
自分の一言で仲間を危険にさらしたのがよほどこたえたのだろう。
だからこそ挽回の機会が欲しかったのだろうが、これでは同じことの繰り返しだ。
「とっ捕まえてちゃんと説教してやらねえとな」
「それよりIAを!」
効き目の薄い速度増加を使って彼らは走り出した。

「やれやれ」
♂セージはため息をついて積み上げられたカートを引き下ろす。
まったく突発的に別れてしまった。
本当はいろいろ理由を付けてもう少し戦力を均等に分ける予定だったのに。
しかもさすがの♀Wizも慌てたのか、聖書と口紅を持っていってしまった。
せめてそのどちらかがなくては、誰かと友好的な接触を持てた場合説明に困るだろう。
いろいろ考えて仕掛けたつもりが、まだまだだったようである。
「仕方ありませんね。私達も追いますか」
彼は♀商人にカートを渡して、強くなり始めた雨中へと飛び出した。


結局彼らが♂シーフを捕まえるまでには丸々1ブロックの横断を要し、説得と休息のために雨を避けて最寄りの集落へ身を寄せることになる。
そこに待ち構える事態も知らず。


<♀WIZ>
現在位置:F-3→D-5(集落)
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー、案内要員の鞄(DCカタール入)、島の秘密を書いた聖書、口紅

<♂プリースト>
現在位置:F-3→D-5(集落)

<♂シーフ>
現在位置:F-3→D-5(集落)

<♂セージ>
現在位置:F-3→D-5(集落)

<♀商人>
現在位置:F-3→D-5(集落)
所持:青箱2(未開封)、店売サーベル、カート

他は同じのため省略(前出179話>>250
263名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 07:57:15 ID:eVR30jfY
ちょっと♀商人にいろいろ与えちゃってますが、これで繋がると思います。
…179話で♀Wizと♂プリ以外が引っ込んでる積極的な理由(反目している演技中)にもなります。
ついでにもう秘密話しちゃったので♀Wizが死んでも大丈夫。…シヌナー♀Wizたーん;;
264名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 08:29:16 ID:7Js1LU.k
>>259
確か、以前その話題になったときに
1MAPの移動には全力移動で1時間。
斜め移動時は全力馬牌1時間横断。
だったと思います。
二時間で2MAP移動した話もありますし。
265名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 08:39:18 ID:GLDlCmCU
>>261
すごいなこれはw1回目BRでも筆談しながら雑談のネタがあったけど良く書けるもんだと感心w
こーいうセンスが欲しいorz
首輪の謎に一番近い所にいるPTなのに今までアクションが無かったので良かった良かったw
激しくGJ。
266名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 11:37:54 ID:SMivk0uU
>>261の人は>>254の人と同じ人なのかな。
ともかくGJですだ。
F-3で♀BSが見た兵士の話とか、そのときに刺さっていたサーベルを回収したり、
♂プリの悪人を独自に殺してたという最初の方にあった設定などもうまく使った会話とか、にやりとさせられました。
およそ完璧に近いと思えるほどにすばらしい補間ですだ。

ただ口紅1本だけであの文章を伝えるのはさすがに苦しそうだから、
ある程度何本か見つけたとことにした方が良いかもしれない。

それにしても261さんの書いた♂セージ、素敵だなぁ。
267名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 17:45:11 ID:MMBPnzIE
♂クルセどうなるんでしょう…;
ワルかっこいいのにもうすぐ♀WIZに倒されてしまうのしょうか
心配です……;
268名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 18:02:26 ID:cbUMY36s
>>261
長文&緻密な構成GJですが、あえて1点だけ気になったので。

>サイトを持つ彼女とルアフを持つ♂プリが手分けし、

のところで♂プリはオブトゥルーサイト持ちということに触れると、より自然かと思いました。
269名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 18:37:32 ID:urmq17lY
>>261
私もその一点だけが少し引っかかりました。
ちなみにマヤパさしてるとクロキンしてる人は真っ黒に見えるらしいです。怖い!
270261sage :2006/03/15(水) 19:27:06 ID:fCszHJmM
>>265
え〜つたない文にGJ頂いてありがたいやら心臓に悪いやら^^;
>>266
ふぬぁ254氏見逃してた。書いてましたらごめんなさい。
しかし自分で書いておいて何ですが、口紅で文字ってどれぐらい書けるんでしょうねw
本数とかどれぐらい残ってるかは文章外で決めちゃうのも何ですので後の方にお任せ〜。
>>268>>269
ははははは完全に見落としてましてましたとさ。げふりorz
すでに雨が降り始めてるので、真っ暗な室内を照らす灯りが欲しかったと読んでください(ぉ。
嘘です。wiki掲載時に手を入れますです。はい。

てことで1書き手に戻りま〜す
271名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/15(水) 22:43:48 ID:3wlSHZy.
>>261
これまでの設定を回収しつつ次に繋がる見事な補完、グッジョブです!
よくこんなに計算された話がかけるなぁ…
もし♀WIZ達が死んでしまってもあの聖書を誰かが読めば
島の謎について理解してもらえるというのがまた、憎い。

>>267
バトROワなんですから、贔屓のキャラの生存を心配してもしょうがないっすよ。
どちらかが倒れるもどちらも死亡・もしくは助かるも、全ては書き手さんs次第。
死んだとしても格好いい死に様が見れるかも!と期待しましょうや。
272名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/16(木) 21:13:02 ID:R3Xg9Bv.
>>267
むしろお気に入りのキャラを生かす物語を考えましょう。
素手のノビでも完全武装の2次を倒せるのがBRの醍醐味ですよ〜。
皆で作るストーリー。新たな書き手さんも大歓迎ですよw
273名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/16(木) 23:36:19 ID:SWMG4s8c
181 Endless nightmare

 終わらない悪夢を。
 無理やりでも終わらせるために、私は走る。

 今からしようとしていることを知ったら、今はもういないあの人はきっと烈火のごとく怒るだろう。
 それでも、私は悪夢を終わらせたい。

 贖罪と……あの人の敵を打つために。


 彼の傷が酷かったせいか、すぐに♂クルセイダーには追いついた。
 血の跡を背後に残し、背中にはナイフが刺さっているのが確認できる。
 しかし、近づくにしてもクローキングは川に背後を塞がれたこの場所ではできない。

 見通しが良すぎるのだ。
 詠唱のためにはある程度の距離が必要だし、詠唱中に近づかれたらそれこそ良い的だ。

 ……それなら。

「……待ちなさい。あなたを逃がすわけにはいきません」

 背後からの追撃者に気がついていたのか、♂クルセイダーはその場に立ち止まる。

「オーラ……それほどの力を持ちながら、何故お前は人を殺す側に行かない?」

 足元から巻き上がる淡い光に唯一残った右目を細めて、♂クルセイダーは♀WIZに問いかけた。

「……あなたには関係ないことです。死んだ目をしたあなたには」

 ♀WIZは怒りを抑えた口調で、澱んだガラスのような暗い瞳の♂クルセイダーにそう言葉を投げる。

「死んだ目……か。生きるために死んでいるようなものだからな……」

 ♂クルセイダーはシミターを構え、徐々に♀WIZへと近づいてくる。
 ♀WIZは後ろに後退しながら、距離を一定に保ちながら話を続ける。

「やはり、あなたは殺人者側……ね。それも、恐ろしく強いわ」

 クァグマイアだけでかわせるだろうか。
 場合によっては、死ぬ覚悟がいりそうだ。

「それを殺そうとしている、お前も殺人者ではないのか? そうでないというのであれば、甘いにもほどがある」
「……そうですね。私もいつかどこかでそうだったのかもしれないわ。でも、今は守りたい者を守るためにあえて手を血に染める」

 血だらけの左側顔面。
 おそらく、♂クルセイダーの左目は、見えない。
 死角は左側。

「……守りたい者か……ならば、俺を殺すがいい。殺せるものならな」

 手負いの物とは思えぬスピードで♂クルセイダーは、♀WIZに走りよってくる。
 咄嗟にクァグマイアを唱え、ぬかるみに沈める。
 しかし、彼のシミターの勢いを落とすことはできず、なんとか避けたもののその長い髪を一房切り落とされた。

「なるほど……AGIWIZか。避けるはずだな」
「傷だらけの癖に……どこにそんな余力が……」

 ファイアーウォールを盾にして、また距離をとる
 ユピテルサンダーで距離をもっと取りたいが、あのグラリスを相手したときよりもこの♂クルセイダーは反応速度が速い。
 つまり、詠唱中に狙われることは必然。

「……殺せぬのなら、死ね」

 ♂クルセイダーは淡々と剣を振りかざす。
 それなら。

「ソウルストライク!!!」

 古代聖霊が、呼びかけに応じて♂クルセイダーを襲う。
 一瞬ひるんだ彼の足元をすり抜け、左側の死角に走る。

「アイスウォール!! アイスウォール!!」

 氷の氷壁を召還する魔法を二度唱え、彼を氷壁で挟み込んだ。

「なにっ?」

 氷壁自体には殺傷能力もない。
 しかし、このように挟み込むのには理由があった。

「焼き尽くせ、ファイアーウォールっっっ!!!!」

 簡易擬似ファイアピラーと呼ばれる、アイスウォールとファイアウォールを利用した技。
 その威力は、たとえ能力が下がった現在でもかなりのダメージを与えられるはずだ。

 炎がおさまり、氷壁が溶ける。

「……まだだ……まだ……」

 剣を持つ手が水蒸気を割り、♂クルセイダーが焼け爛れた半身を引きずり現れた。
 しかし、その足は先ほどの勢いはもうない。

「さよなら……」

 呟くように♀WIZはささやくと、ユピテルサンダーの詠唱を始めた。
 麗朗な詠唱と共に雷が♂クルセイダーを襲う。
 激しい勢いではじき飛ばされ♂クルセイダーは川に転落した。

 ♀WIZは川岸に走りよるが、♂クルセイダーの姿はそこに浮かんでは来なかった……。


<♀WIZ>
現在位置:D-5→D-4
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー、案内要員の鞄(DCカタール入)、島の秘密を書いた聖書、口紅

<♂クルセイダー>
現在位置:D-4から消息不明
髪型:csm:4j0h70g2
所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) ソード ナイフ(背に刺さったまま)
状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷、背に刺し傷を負う
♂騎士との邂逅によりわずかに心が乱れるが、冷静さを取り戻す
♀WIZのJTにより川に突き落とされる(生死不明)
274名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 04:43:00 ID:cWJZwCxE
まとめサイトといえば、話数の横に登場人物が書いてあるじゃないですか?
あれの中で死亡する人物だけ色が違うのも、初めて読む人にとってはネタバレになってしまうのかな、とか
でも書き手としてはどこで誰が死ぬっていうのも重要だろうし
面倒だけれど、読み手用と書き手用にわけるのも手なのかと思いました
275名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 10:25:07 ID:MIOekKBY
>>274
>>243-245
作業したいけど時間がとれない一読み手。
276名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 12:35:49 ID:IySth4rY
>>273で♂クルセvs♀WIZは終わっていますが、どうしても書きたかったので書かせていただきました。
もちろんアナザーですが、楽しんで読んでいただければ、さいわいです。


another battle しがみついた男

「どうして♂騎士を襲ったか、答えていただけますか?」

わき腹を深くえぐった刀傷。背中には突き立ったままのナイフ。
左目は血にまみれ、傷の様子から二度と光を得ることはかなわないだろう。
おそらくは殺す側の人間として致命的なほどの傷を負った男は、あらわれたウィザードの女を残った右の目で疎ましげに見やった。

女の足もとからはしゅわしゅわと光の珠が尽きることなく生み出され、中に浮かんでは消えていく。
それだけで、女が人として到達できる極限の力を持っていることがわかった。
けれど男はひるまない。おびえることもない。ただ目の前に仁王立つ女を、目を細めて刺すように見ていた。

「殺さなければ俺が死ぬからだ」
たんたんとした口調で、男はそう言った。右手に構えたシミターの刀身が、夕日を受けて赤くきらめいていた。
女が見た男は一種異様ともいえるほどに落ち着いていた。
生への執着などかけらも見せないままに死を拒否した男の言葉に、女は背筋をぞくりと冷たいものがはしるのを感じた。

♀ウィザードには、♂クルセイダーが死にたがっているようにしか見えなかった。
満身創痍でそれでもきっぱりと死を望まないと言い放ち、人を殺すことを曲げようとはしない彼が、
まるで神のために死のうとする殉教者のように思えた。

♀ウィザードは彼にとって引き返せない引きがねを引いた。

「このゲームを壊すことは考えないのですか?」
♂クルセイダーは、一瞬だけおどろいたような、意外そうな顔をした。
あまりに一瞬だったので、♀ウィザードですら気づかなかったかもしれなかった。
すぐにまた鉄仮面でも被っているような、つめたい表情にもどして♂クルセイダーは剣先を♀ウィザードに向けた。

「そんなことに興味はない。俺はただ、ルールに従って自分以外を殺すだけだ」
「それなら私もあなたを殺します。あなたはGMジョーカーを殺すための障害のようですから」
そこで♂クルセイダーははじめて笑った。口端をほんのり吊り上げただけではあったが、たしかに彼は笑った。

「お前、復讐者か。なるほど。そのためにはなにを犠牲にしても構わない。そう思っているだろう?」
♂クルセイダーのシミターが♀ウィザードを一閃する。しかしそこには♀ウィザードの肉体は、ない。
彼女はあざやかなほどにシミターの刃が届く範囲を見切っていた。最小限度の動きだけで♂クルセイダーの初撃をやり過ごしたのだ。

♀ウィザード右手ですばやく印を結んだ。彼女は杖を持っていなかったが、それでも並々ならない雷が右手でバチバチと爆ぜるような音を立てていた。

「否定しないのだな。だったら俺たちは同じ人種だ」
♂クルセイダーはいつのまにか左手に握っていたソードを軽く前方へ投げ、♀ウィザードが放ったユピテルサンダーにぶつけた。
耳元で銅鑼を叩かれたようなすさまじい音がして、ソードがどこかへ弾けとんだ。
その隙に♂クルセイダーは♀ウィザードに対して二回目の斬撃を繰り出す。

「お前はGMジョーカーに復讐したいと考えている。 おおかた大切な人をこのBR法によって失いでもしたのだろう?」
ニ撃目もまたなにもない中を斬った。♀ウィザードのすばやい身のこなしに、♂クルセイダーはいささか舌を巻いた。
それでも口から出てくる言葉を止めようとはしなかった。

「GMジョーカーが憎いのだろう? お前の目はそういう目だ。復讐にとりつかれた人間の目だ。
 だから俺とお前は同じだ。俺は世界が憎い。この世界のすべてが憎い。
 俺の大切な人を救ってもくれなかった神も、殺した人間も、この世界も、すべてが憎い」
はげしさを増した♂クルセイダーの剣勢に、♀ウィザードは魔法を使う隙を失った。
手負いの彼がここまで動けるとは、想像もしていなかった。
冷酷な殺人鬼のようだった彼が、ここまで激情的に剣を振るってくるとは、思ってもいなかった。

追い詰めて、逃げようとする彼を逃がさず確実に殺す。♀ウィザードはそう考えていたのだ。

「同じ!? 私とあなたが・・・・・・同じ!?」
襲いかかる剣の隙を縫って、♀ウィザードは右手で印を結びつつ、左手のひらをを地面に向けた。
大地に泥濘を作り出す魔法、クァグマイアには印も詠唱も必要ない。

「同じだろう。俺もお前も、もう生きてなどいない。復讐の炎でしか動けない、おろかな自動人形だ」
すかさずクァグマイアの範囲から離脱するように♂クルセイダーは♀ウィザードの死角へ回り込もうとした。
そうはさせまいと、♀ウィザードが先ほどの印を完成させた。

「それでも私は───私のような誰かが二度と生まれないように、そのために戦っています」
突如♂クルセイダーの前面に、燃えさかる炎の壁があらわれた。
が、♂クルセイダーは灼熱の壁を前にして、そこにはなにもないかのように♀ウィザード目掛けて突進をした。
277名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 12:36:05 ID:IySth4rY
「だったら死ねばいい。死んでしまえば、かなしむ必要などない。俺が手伝ってやる。俺の剣がお前たちを救ってやる」
からだが焼ける苦しみもいとわずに、叫びながら♂クルセイダーはシミターで♀ウィザードを薙ぎ払おうとした。
♀ウィザードはその迫りくる刃を、♂クルセイダーのふところに飛び込みながら、咄嗟に取り出していたロザリオを使って受けた。
ガキリ、と金属同士がぶつかって青い火花が散った。
相手の吐きだす息の音すらも聞こえてきそうな距離で、男と女の視線もまたぶつかり合った。
♀ウィザードの表情が、わずかに笑みを見せた。

「それで、あなたはなにかを残せたのかしら?」
「なに?」
♀ウィザードはロザリオを巧みに使い♂クルセイダーのシミターを抑えながら、顔つきするどく、言葉をつづけた。

「たとえ私があなたに殺されたとしても、私の意志は受け継がれるわ。
 誰かがきっと、このゲームを終わらせてくれる。それだけのものを私は残せたもの。
 あなたにはなにが残るの? あなたはいったいなにを残せたの?」
ギリギリとロザリオとシミターの刃元がこすれあう。

「そんな必要はない。俺はいつ死んでも構わない。俺はもうとっくに死んだ人間だ。未来など、なにもいらない!」
♂クルセイダーの巨体が大きく後方へ跳びすさった。その一瞬で♀ウィザードは体勢をくずした。
ロザリオとシミターという奇妙な鍔迫り合いの駆け引きは、♂クルセイダーが一枚上を行ったようだった。

舌戦においても♂クルセイダーがまさっていた。
未来を放棄した人間がこれほどに強くなれるものなのかと♀ウィザードは絶句した。
♀ウィザードはいままで自分の命すらも投げ出すような人間に強さはないと考えていた。
最後の最後まで希望を捨てないものこそが、復讐すらも遂げられるのだと信じていた。

よろめいて体勢をくずした♀ウィザードに対して♂クルセイダーがふたたび跳びこんできた。
今度はロザリオで受けるなどといった曲芸じみた芸当は使えそうにない。

「お前は甘い。だからこうやって簡単に隙を見せる。地力では俺よりもまさっていたはずなのにな」
♂クルセイダーの右手、シミターの湾曲した刀身が♀ウィザードの無防備な胴へすいこまれた。
血飛沫が大地を赤く濡らした。勝敗は決したかのように思えた。

♂クルセイダーは♀ウィザードが笑ったような気がした。
いや、♂クルセイダーの右目はたしかに、♀ウィザードの口もとに笑みが浮かんだのをとらえた。

♂クルセイダーは自分が斬ったものの手ごたえの違和感に気がつくべきだった。
自分の力量なら♀ウィザードの胴を両断してしかるべきはずが、できなかったことでなにかに気がつくべきだった。

突如♀ウィザードが♂クルセイダーに飛びかかった。
彼女のからだは細身ではあったが、シミターを握ったままの♂クルセイダーが体当たりから逃れることはできなかった。
おそらくは想像もしていなかったに違いない。
胴が千切れるかもしれないのに剣をめり込ませたまま跳びかかってくるなど、自殺行為でしかない。

これではまるで彼女が自分に復讐を果たそうとしているようではないか!

「お前はGMジョーカーに復讐したいのではなかったのか?」
ふたりは勢いよく地面に倒れこみ、もみあう形となった。

♂クルセイダーは腕力で彼女を強引に引き離そうとしたが、できなかった。
信じられない力が♂クルセイダーを組み伏せていた。
今わの際の力というものだろうか。♂クルセイダーは♀ウィザードの顔がやはり笑っていることを確認した。

「やっぱり私とあなたは違います。だって私は復讐を捨てられますから」
言葉の意味を♂クルセイダーは一瞬理解できなかった。彼女がこれからなにをしようとしているかもわからなかった。
ただ、彼女の笑顔があのときの、自分が愛したアコライトの少女の最期の顔と重なった気がした。

───ゴメンなさい、あなた。私、仇を討てません。私は彼らのために、この人をそちらに連れていきます。

ごうっという音が聞こえた。同時に♀ウィザードのからだが炎につつまれた。
♂クルセイダーを下に敷きながら、♀ウィザードは炎をまとい、一本の柱となった。
夕日に焼けた空と同じ色の炎が、空までも届きそうなほどに高い、一本の柱となった。

劫火の中で♀ウィザードは笑顔で♂クルセイダーに告げた。

「GMジョーカーを殺すために用意したものでした。
 私のからだには、そのためだけにブルージェムストーンを埋め込んであったのです」

───♂アサシンには最後まで反対されたけど。

「そうか・・・・・・それでシミターは・・・・・・胴の途中で、止まったのか・・・・・・」
炎につつまれたふたりは、お互いの顔を見合わせながら、身が焼ける苦しみとともに最期の会話をした。

「お前は・・・・・・捨てることが・・・・・・できたのだな」
「はい・・・・・・・復讐よりも・・・・・・未来を信じたいと思ったのです・・・・・・」

♂クルセイダーは静かに右目を閉じた。なぜだかはわからなかったが、♂クルセイダーにはもう、怒りも憎しみもなかった。
いち早くそれらをこの炎が焼いてくれたのかもしれない。そう思えるほど、心は穏やかであった。

♂クルセイダーは♀ウィザードのからだが軽くなっていくのを感じて、自分の死もまた、近いのだろうと思った。
世界を壊すという復讐にしがみついた男と、誰かのために復讐を捨てられた女か。
勝てるはずがない。この女に俺が勝てるはずなど、なかったのだ。
♂クルセイダーは最期でそう、思った。

そしてふたりのからだは、狐色の炎につつまれたまま、灰となって空高くのぼっていった。
278名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 18:32:39 ID:iA4s.hQg
>276
♂クルセを説得し仲間に引き入れる展開かと思ったがさすがにこの展開はこれは予測できず。
♀Wizに激しく燃えた。そして♂クルセがユカに見えt
279名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 22:16:19 ID:QvqIZzhM
>>273を見て、電波を受信してもーた。
同じメンツの話が続くのもあれかなーと思ったけど投下。


182.似て非なる者、あるいは同じ者 [夕方(雨上がり後)〜夜]

「これは…面白いことになって来ましたね」
傍らに控える従者に、さも可笑しそうに語るその主。

「主人ヨ。次は何ヲ考えついタ?」
「判りませんか?最も私の研究の障害になりそうな相手が、愚策にも単身飛び出して行ったのですよ」
ククク…と笑いながら♂WIZが、追撃に走り出した♀WIZの後ろ姿を物陰から見ている。
「あのクルセイダーも相当の手練れと見ましたが、今は手負いの身。…邪魔になりそうな者を2人も排除できる好機が転がり込んで来たのですよ」
♂WIZは♂騎士と♂クルセイダーの戦いが始まった時から、ずっと機会を窺っていたのだ。
あわよくば生き残った方を不意打ちし、自らの実験材料とするその機会を。
だが、事態は二転三転し、当初の獲物は諦めるしか無くなってしまった。が、それよりもっと上等な獲物を狩る機会が与えられたのである。

「キキキ、そういうコトカ。主人ハよくよくツいているものダナ」
「漁夫の利と行きましょう。後を追いますよデビルチ君。…愚か者にこのゲームは生き残れないという事を彼等に教えてあげようではありませんか」

♂騎士を取り巻く面々から発見されないように、♂WIZは建物から建物へと身を隠しながら移動を開始した。
手負いの♂クルセイダーとそれを追う♀WIZを、さらに追い掛ける為に。

◇◇◇

「さよなら…」
呟きと共に放たれた紫雷の塊が♂クルセイダーを撃ちすえた。大きく弾き飛ばされたその体は濁流へと吸い込まれて行く。
それは彼女にしてみても計算外だったのだろう。
慌てて♂クルセイダーの姿を水面に探すが、それが叶わなかったのか大きくため息を付いてその場にへたり込んだ。

「どうやら決着が着いたようですね」
遠目に様子を窺っていた♂WIZがにやりと頬を歪める。
「欲を言えば不意を打ちたかったのですがね…。ここまで開けた場所では身を隠す場所が無いですし、ひとつ正面から正攻法で行ってみるとしましょうか」
そう呟くとコンバットナイフを抜き放ち、傍目には気楽な態度で歩き始める。
「主人ヨ。あまりニそれハ無策ではないカ?」
慌てて後に付き従う従者に、顔も向けずに返事をする。
「彼女、体術はなかなかのものですが、肝心の魔術に関しては研鑚が足りないですねぇ。呪文の詠唱がまだまだ遅いです。
 それにわざわざ相手が体勢を整えるのを待ってやる義理も利点も無いでしょう?」
「ふム…精神力を途切れさせてイル今が好機という訳カ」
「君に心配されずとも油断はしていませんよ。仮にもオーラの輝きを放つ相手ですしね」
「そうカ。主人の事ダ。勝算が無けれバ戦いもすまイ」

へたり込んでいた♀WIZは話し声と足音に気付くと、顔を上げる。
♂プリーストでも後を追ってきたのかと一瞬考えたが、歩み寄る1人と1匹を見て慌てて腰を上げる。
「そこの貴方!止まりなさい」
黒い妖魔を従えた自分と同じ力を持つ者。ウィザードである。
相手の考えが判らない以上、魔術の範囲まで近付かせる訳にはいかない。
しかも疲労が絡みつく蔦の様に重くのしかかっている。戦闘は避けたい所だった。

聞こえているのかいないのか、♂WIZは歩みを止めない。
あと十数歩も近付かれれば、それはお互いの間合いになってしまう。
「止まりなさい!こちらに敵意はありません。が、止まらないのであれば攻撃しますよ!」
しかし、なおも距離を詰めてくる♂WIZ。その手にナイフの輝きを認め、敵と判断する。
く…っ。♀WIZは小さく歯噛みする。
短期決戦に持ち込むしかない。持久戦になれば、おそらく魔術を行使する精神力が持たないだろう。

♂WIZが必殺の距離に足を踏み入れる。
「フロスト…ッ」
「フロストダイバー!」
先に呪文の詠唱を終えたのは♂WIZである。
身を切るような冷気の波が彼女の全身を撃ち、♀WIZは詠唱を中断させられてしまう。
頬が、腕が、足が、薄氷の欠片の生んだ裂傷に傷つき、至る所から鮮血を滲ませる。
「な…っ!」
「遅い」
凍結は免れた。受けた傷も大したダメージではない。
だが彼女は悟った。相手が悪すぎる、と。

「「ソウルストライク!」」
ほぼ同時に次の魔術を行使する。
お互いの放った複数の魔力の球体が、空中で激突する。
小さな破裂音を幾重にも響かせて、2人の空間の中央で弾け合って消滅していく。
彼女の持ちうる最速の魔術すらこの相手には防がれてしまった。
「く…」

「まぁ…お互いの詠唱速度の差を考えればそれ位しか手は無いでしょう。ですがそれも想定済みです」
片眼鏡の位置を直しながら、♂WIZは事も無げに言う。
「次はファイアーウォール、もしくはクァグマイアで追撃を遮断して、逃走を狙う…といった所ですかね。まだ逃げ回れる程の体力が残っていれば、ですがね」
にやりと笑う相手に憎々しげな視線を叩きつける♀WIZ
確かに体力も精神力も限界に近い。クァグマイアで足止めした所で、同じ魔術で逃走を妨げられてしまうだけだろう。

だが、
…まだ勝ち誇るには早いっ!、内心叫ぶと次の一手を仕掛ける。
「アイスウォール!アイスウォール!!」
2枚の氷壁が♂WIZの背後に打ち立てられる。
♂クルセイダーを無力化した一撃必殺のコンビネーション。
「食らいなさい!ファイアーウォール!!」

が、その火炎の壁を生み出す呪文が完成するより早く、♂WIZの魔術が発動する。
「サイト…ラッシャー!」
彼の生み出した小さな火球が、熱風と衝撃波を伴って炸裂する。
その一撃は彼の後退を妨げていた氷壁を、いとも容易く粉砕する。

「その技はすでに見せて貰いましたからね。通用しませんよ、私には」
一歩下がる事で炎の壁をやり過ごし、悠々と迂回して無傷の姿を見せる。
「くぅ…っ…」
がくりと膝をつく♀WIZ。もはや魔術を行使するだけの精神力も、眼前の敵を退ける気力もない。

「足掻いた所で現状を打破できないのは理解できましたか?」
「キキキ、あきらめロ人間。勝負ハついタ」
♂WIZの肩にぶら下がるようにしがみついている妖魔が耳障りな金切り声を上げる。
「さて…止めを刺させて頂きましょう」
すっと手の平を♀WIZに向けるのを見て、デビルチが怪訝そうに尋ねる。
「主人ヨ。こやつハ実験とヤラに使わナイのカ?」
「ええ、自分より力のある人間を生かして帰す程、私もお人良しではありません。まだ獲物は残っていますし、彼女はここで始末します。」
280名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 22:16:53 ID:QvqIZzhM
「実験…?貴方は…何の為にこんな事を…」
ぴくりと肩を振るわせて♀WIZが問う。
「時間稼ぎノつもりカ?」
「まぁ…いいでしょう。少しお喋りに付き合いましょうか」
言いかけたデビルチを片手で制し、構えた腕を下ろして♂WIZは続ける。
「何の為…というのであれば愚問ですね。ここは人と人とが生き残りを賭けて殺しあうバトルROワイアルの舞台です。
 第一の目的は当然ながらこのゲームで生き残る事。それはあなたとて同じでしょう?」

「なら…生きてこのゲームから脱出する方法があるかもしれない…と言ったら?」
これに相手が乗ってくれれば…と期待を込めて♀WIZは言った。
だがその言葉には大して興味を示さず、さらに言葉を続ける♂WIZ
「第二に…私はある研究を完成させたいのですが、それにはまだまだ情報も知識も足りないと言わざるをえません。
 検体が必要なんですよ。動物やモンスターではなく、人間の検体がね。
 当然の事ながら倫理を無視した邪法の研究です。戦時下であればいざ知らず、今の世の中では人体実験はご法度。それゆえ私はここに送られる羽目になったのです」
「異端者…という訳ですか…」
「まぁ有り体に言えばそうなるでしょう。だからこのゲームに参加させられたのはある意味僥倖とも言えますね。ここならモルモットには事欠きませんから。
 脱出する方法?そんなものは必要としていません。全ての生存者を検体として利用し、結果、私が勝者となればいいだけの事です」

かっと怒りに目を見開いて♀WIZが睨み付ける。
「貴方は…そんな理由で貴方は人を殺すと言うのですかっ!」
その視線を涼しい顔で受け流して、男は口元を歪める。
「そんな理由とは失礼な方ですねぇ。私にとっては何事にも変えられない重要な命題だと言うのに。
 そもそも理由がどうであれ、私も貴方も同じ穴のムジナ。人殺しである事に変わりはないでしょうに…」

♀WIZはかぶりを振り、もう一度睨み付ける。
「確かに私も人殺しです。守りたい人達の為にこの力を振るう事を躊躇いはしません。
 だけど!貴方とは違う!!絶対に違う!!」
「いいえ変わりませんよ。どんな大義名分を持とうとも人殺しは所詮、人殺しでしか無いのです。そこに差などありません。
 死は万物に等しく死であり、生を奪う者は奪われる者からすれば等しく殺戮者なのですから」
「それでも絶対に貴方とは違うわ!!」

激昂して叫ぶ相手をつまらなそうに見やり、すっと右腕を掲げる異端の徒。

「少しお喋りが過ぎた様ですね…禅問答は好む所ではありません。そろそろ幕引きといたしましょう」

♂WIZのかざした手に冷気が急速に集まってゆく。
それは凄まじいまでの旋風となって、2人を包み込んでいく。

「さようなら、お嬢さん。せいぜい偽善者の理屈を振りかざして死んでいきなさい。」

最後の力を振り絞ったか、彼女の抱えた信念が彼を拒否したのか、跳ね起きるように体を起こすと拳を振り上げ駆け寄る善意の殺戮者。
だがその命を狩る為に編み上げられた魔術の構成が、一足早く唸りを上げた。

「永遠の静謐に眠れ…ストームガスト」

物理的な圧力をもった冷気の竜巻が全てを白く染め上げていく。
大地も、川も、人も。
その想いすらも。
白く。
白く。


◇◇◇

「主人ヨ。あの魔術師ニ止めを刺さなくテ良かったノカ?」
肩の上がよほど気に入ったのか、そこから離れようとしない従者が不思議そうに主人に問う。
すでに戦闘の場から離れ、大きく迂回をしながら集落へ戻る道すがらである。
彼女の仲間と鉢合わせを避ける為にそのようなコースを辿っているのだ。
これで、もっとも厄介な相手は脱落させる事が出来た。後は残った面子をいかに効率よく捕らえるか考えながら、しばらく隙を窺う必要がある。

「細胞の壊死は聖職者の使う奇跡とて治す事はできません。火傷跡や古傷、凍傷もそれに含まれます。…と言っても判りませんか。
 結論だけ言えば彼女は助かりません。ほうっておいても死ぬ相手に無駄な時間を掛けるのは賢い者のする事ではありませんよ」
「時間ガ無くなったノハ、主人ガお喋りなどシているカラだろウ」
「まぁその通りですけどね。それに…」

ふと星が輝く空を見上げ、遥か昔に愛した人の顔を思い描く。
彼女を取り戻す為ならばこの身が狂気の淵に囚われようとも、私は止まるつもりは無い。
片眼鏡の位置を直しながら、♂WIZは続く言葉を口にはしなかった。

───守りたかった人の為…その一点は同じなのですから。


<♀WIZ>
現在位置:D-5→D-4
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー、案内要員の鞄(DCカタール入)、島の秘密を書いた聖書、口紅
状態:重度の凍傷により瀕死状態

<♂Wiz>
位置:D-5(民家内で休息中)
装備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
外見:黒髪 土気色肌
スキル:サイト サイトラッシャー ファイアピラー クァグマイア ファイアウォール
    フロストダイバー アイスウォール モンスター情報 ストームガスト
備考:「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド
   ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
   デビルチと主従契約
281名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 22:24:54 ID:/.C9plAk
>>279
同じキャラを使用するには、24時間余裕を見るというルールがあると思います。
そのルールを無視していると思うのですが……
282名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 22:39:29 ID:QvqIZzhM
おや…そういったルールが有ったのですかorz
気付きませんでした。
NGと言う事で宜しくお願いします。
283名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 22:57:22 ID:vnESxA0o
そんなルールあったっけ?
同じキャラを同じ書き手が書くのには3日置いてから。
違うキャラを書くなら1日置いてから。
っていうのならあったと思うけれど。
284名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:00:24 ID:/.C9plAk
前に、議論になったときに一つのキャラがずっと進んで、
他のキャラが進まないことを防ぐのにそうなったと思っていたんですが……

私の思い違いだったのかな。
過去ログにそんな話があったと思うんですけど
285名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:12:46 ID:iAvVKGwQ
多分思い違いですね、あくまで同じ書き手が連投することに対する抑止ルールですから
恐らくキャラ時間を一気に進めるのを控えようって話とごっちゃになっているのかと
それに同じキャラを他人も連続で書くの禁止されたら後半のPTが集結してきたときとか話の進みがえらく遅くなりますし

…そういえば(あるかわからないけど)第三回は連投禁止ルールを最初から適用するのかな?
個人的にはある程度進んでからの適用のほうが話の勢い的にいい気もするけど
286名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:24:46 ID:/.C9plAk
5スレ目の13から、この話題になってますね。
それで、結論的に24時間余裕を見るって形になったと思っていました。
287名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:25:58 ID:/.C9plAk
投稿した日  |連投規制な日    |連投規制な日|              |
         |             |         |投稿した人、投稿解禁|
         |             |         |              |
         |次の人が投稿した日|連投規制な日|連投規制な日     |
         |             |         |              |次の人、投稿解

こんな感じになってたみたいです。
(過去ログ調べてきました)
288名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:26:13 ID:2VUXH0l.
>>279
GJ!♀WIZどうなってしまうのかー!死んでしまうのだろうけれど…
そして初めて格好よく獲物を追い詰めることのできた♂WIZおめでとう!
でも今までの行動からして負け犬の遠吠えちっくに聞こえてしまうのがなんとも♂WIZだなぁ…

>>281-284
>>4の冒頭で書かれていることのやつでしょうか?(要約すると>>283氏の言)
連投についての議論は確かに起き、その解決策として規制は出来ましたが、
一つのPTの時間が進みすぎることについての明確な規制は出来ていないはずです。
(でも、暗黙の了解で「進みすぎたら誰かがストップをかけて足並みを合わせる」とかはあるかも)
それ関連で話題になったのは他の人物が昼間の時間軸にいるのに
1PTだけいきなり真夜中に、というやつかと思いますが…その辺のやり取りでも規制は出来てないかと。
289名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/17(金) 23:27:26 ID:2VUXH0l.
ああ…!リロっておけば…!orz
290名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 00:17:25 ID:hHTIAmXw
今までのが、一日あいてたからツッコミがなかったんじゃないの?
で、結局、これは、どう判断すればいいんだろう……
291名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2006/03/18(土) 00:45:33 ID:3R2ku166
今までのルールからしたら、NGにしないと・・。
ルールがルールとして成り立たなくなってしまうと思う
292名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 00:46:08 ID:3R2ku166
ごめ、上げたorz
293名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 00:47:44 ID:4SiSy1/2
>>285氏の解釈が一番正解に近いと思われ。
そもそもの発生理由が、同じ書き手の連投防止ですし。
と言うか、リレー小説なので、あまりに突飛な展開でなければ、
別の人が書いてる限り規制はかからないはず。
294293sage :2006/03/18(土) 00:54:33 ID:4SiSy1/2
っと、追記。まぁ、結論から言えば
この連投規制は

「同一の書き手」(判断材料は主にIDを想定)が

i)同一PTを手がける場合は三日の時間を空けて
ii)違うPTを書く場合は24時間以上時間を空けて

書かなければならない、と言うルールであり、
つまり182話はそのまま何の問題も無く通る、と言う事になると思われます。
295名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 00:55:08 ID:hHTIAmXw
個人的には、今まで通りで一日あけた方がいいような気がするし
NGでもいい気がする……。

というか、♀BSと愉快な仲間たちのPTがちっとも展開してませんよ、皆さん。
未亡人PTがたしかに美味しいのはわかるけど、そっちもちゃんと書かないと。
296名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 00:55:13 ID:54XVfG/w
曖昧なルールのままで突貫して重要キャラが瀕死じゃ続きが書きづらいですが・・・
297279sage :2006/03/18(土) 01:18:14 ID:3Bunpp8U
どうもごたごたの元になってしまったようで申し訳ありません。
自分はwikiから来た人なので、ルールはそっちしか読んでおりませんでした。
>>282にもあるようにNGと言う事でお願いします。
しばらくROMに戻りますねorz
298名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 02:13:54 ID:owaqFqhQ
ちょっと待った。
NGにするにはあまりに惜しい文だろう?
それを無視したって、何の問題もなくて注意した方の勘違いなんだぞ?
ルールをルールとして成り立たせるって言うなら、OKで通すのが筋じゃないか?

何だか好き勝手言ってる方々に色々と言いたい事もあるんだが、荒らすのは本意ではないのでやめておく。
これだけ良い文を書いてくれる人々がいるのだから、♀Wizのこれからも魅力的に描かれると俺は思う。

>>279
非常に楽しく読ませていただきました。
出来るならば、これからもどんどん書いていただけると嬉しいです。
299名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 02:19:15 ID:4SiSy1/2
 another:a long long ago


 ──それは昔々のお話です。

 ある所に、一人のノービスがいました。
 彼は、どちらかと言うと平凡な家庭で育ったごく普通の少年でしたが、
若さ故、と言うべきでしょうか。田舎の時間の流れがどうにも肌に合わない気がしていたのです。
 毎日毎日、かっちこっち。時計の針は休む事はありませんが、止まる事もありません。
 少年は、自分の父親の掌を知っています。
 沢山のマメが出来たぼろぼろの手。毎日毎日畑仕事で日に焼けて僅かに茶色がかった顔。
 嫌いではありませんでした。そのノービスは、その手が嫌いではありませんでしたが、
自分の未来をその手と顔の向こうに垣間見てしまう気がしていたのです。

 若さ故の。年を経るにつれて、徐々に収まっていくものだと言えばそれまでの事。
 でも仕方ないじゃありませんか。
 少年、と言うのは何時も何処でも情熱を持ってしまうものです。
 そんな退屈な場所で、ずっとこれまでと変わらない生活を続けていく事は我慢できなかったのです!
 黒い瞳の中には空。空の向こうにはきっと未だ見たことの無い場所。
 それを見てみたいとか。そんな、世界の何処にでも転がっているユメ。

 ある日、少年は古ぼけたナイフと、僅かなお金と道具。そして普段着一着を道連れに冒険者になるのだと告げました。
 母親は仰天し。幼友達は呆れ、けれど父親だけは僅かに眩しいものでも見る様な目で、少年を見ていたのでした。
 騒ぎ、慌てる皆の前。静かに目を閉じ、彼は少年にいいました。

「本当に、本当なんだな?○○○○」
「ああ、本当に本当だ。父さん」
 少年の決心は、自分自身にとってもこれまでで一番硬いもの。
 一欠けらの嘘なんてありません。じっと真っ直ぐ見つめ返して彼は答えます。
 とある少年にとって不思議な事があるとすれば──その目が。いいえ、自分自身の父親が僅かばかり普段より小さく見えた事。

 そして父親は、僅かに。思い出すように上を向いて、静かに口を開きました。
 それは余りにも寂しげで、知らない間に騒がしかったテーブルが静かになっていて。

「──私はね。冒険者になりたかった。子供の時は包丁なんか腰に挟んでは、
ごっこ遊びをしていたものだ。信じられないかもしれないがね」
「でも父さん。なら、どうして……?」
「なりたかったけど、なりたくなくなってしまったからだよ。……いや、なる事が出来なくなった、と言った方が正しいかな?」

 一呼吸置いて、彼は言葉を続けます。

「お前が生まれる時の話、知っているだろう?」
「……」

 少年は無言で頷きました。
 彼が生まれるほんの少し前。身重の母が病の淵の倒れた時の事。

「その時、私は必死の思いで走った。『初めて』冒険と呼べるような事を本当にしたのはこの時だったよ」

 それは、決して格好いいなんて言えない。夢物語のそれとは違う過酷な現実。
 車軸の様な雨を抜けて、ただ只管に走る走る。目指す場所は隣村の小さな教会。
 近隣で唯一、たった少しの癒しが使える神父の元へ走る走る。
 きちんとした道を通れば間に合わない。だから、それは道ともつかぬ木々の隙間を越え、直線で目的地を目指すルート。

「だが──私はね。その時、『冒険』というのが本当はどういうものなのか解ったんだ。
 でも、もしお前に本当に覚悟と言うものがあるのなら──好きにしなさい」

 呟く、父親の横顔は何処か寂しそうで。
 その時の言葉に、本当の事を言えば少年は不満を感じてもいました。
 だって、冒険者と言えば彼の憧れです。そんなくらい側面なんて想像したくないのです。
 結局、家を飛び出して彼は初心者修練場へと。
 そこで貰ったのは、街に溢れる冒険者達の誰もが知っている事。
 けれど、同時に現実を知ります。確かに、彼の父親の言葉は正しかったのです。

 ──その少年は、やがて成長して一人の男と出会いました。
 彼の目からはどうにも変わった格好をしていて、顔には穏やかな笑みが。

「あの、すみません。シーフギルドって、どこにあるんでしょうか?」

 適正試験でシーフが向いているって言われて、と更に告げた後少年に、男は。

「だったら、連れて行ってあげるよ」

 そう答えました。
 彼につれられるまま、後ろに続いて。薄暗いピラミッドの中をひたりひたりと。
 少年は僅かに不安も覚えていましたが、それはシーフになれる喜びと、好奇心で打ち消される程度のものでした。
 やっとシーフになれるんだ。そう思います。
 でも、この人は一体どんな職業なんだろう?そうも思いました。

 少年は、足を止めて言います。あなたは一体何の職なんですか、と。
 その人も、やっぱり足を止めて振り向くと、まるでいつかの父親のように穏やかな笑顔のままで。
 ある物語の始まりを告げたのでした。

「僕かい……?僕は、忍者だよ。隠し職業でね……とっても弱い職なんだ」

 ──と。


 next to a assasin's story
300名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 02:19:53 ID:4SiSy1/2
出遅れたけど、忍者追悼モノ置いておきますね、と。
301名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 02:23:08 ID:4SiSy1/2
訂正、next to a assasin's story => next to an assasin's stories

あああ、初歩の文法ミス…もうだめぽ。orz
302名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 02:46:58 ID:0bZOEkaA
>>281さんの言う、24時間待つというルールは勘違いだったぽいけど、
確かにひとつのパーティーの話ばかりが進むのは好ましくないと言えばそうだし、
281さんが気を使って、わざわざ投稿を遅らせてたとしたら報われない話だな。

279は普通に通すとして、281さんバージョンの話もあるなら読みたい一読者。
303名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 07:09:49 ID:hHTIAmXw
本人がNGって言ってるんだし、NGでいいのでは?
確かに惜しい話だけど、あのPTばかり話が進んでるし、
281のいってることも間違ってないと思うよ。
わざわざ過去ログ調べてきたみたいだし……
304名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 08:43:10 ID:oltRe7YI
>>299
大きな物語のプロローグっぽくて面白かったです。
ただ私は、少年が知った冒険者としての現実というのがどういうものなのか理解しそこなったのですが、
これは楽しいことばかりじゃないよ、ってことなのでしょうか。あえてぼかしてるのかな。

欲を言えば、バトROワとの接点がどこかに欲しかった気がします。
でも忍者好きなので、楽しく読ませていただきました。

あるアサシン物語ならan assasin's storyでstoriesではない予感。


>>投稿規制関連

281さんが探してきた図を作った人なのですが、
あの当時、同一PTを別の人が書く場合に24時間空けないといけないという話題はなかったはずです。
暗黙の了解で足並みをそろえるというものはありますけど、
別の人が書いた場合は、すぐに投下できたはずです。でなければフォロー話とか、インスピレーション受けた話とかをすぐに投稿できませんしね。

もともとの投稿規制ははじまったばかりの頃の投稿ラッシュの抑止と、終盤での同じ書き手による連続投稿を防ぐことにあったので、
同一PTだけが複数の書き手でどんどん進んでいってしまうというものの抑止はあまり考えていなかったのです。
というより、複数の書き手がどんどん話を進めていくことはリレーの熱い状態かと。

そういう意味では>>279さんは特になににも違反していないと思われます。
未亡人PTが動き出したのもそうとう放置されたあとのことでしたし、BSとゆかいな'sも動けば動き出すものかと。
リレーって生き物ですよ。

それよりもなによりも、私が気になったのは、わずかの感想もなく、いきなりルール違反ちゃうのん? みたいな書き込みだけがされたことです。
書き手さんは読み手さんが想像している以上に、人によってはデリケートなので、
匿名掲示板ではなかなか難しいかもしれませんが、多少なりとも文章の感想を書くことも忘れないで欲しいのです。
いや、感想がつかない文章は、その程度だと言われれば、返す言葉もありませんが、
ただ、議論とか問題点へのツッコミだけが白熱して、文章にはほとんど感想らしい感想がついていないことは、ちょっと気になりました。

もちろん書き手同士の馴れ合った感想ばかりになるのも読み手さんにとって気分のいい話ではないかと思われますのですが、
GJのひとことが、どれだけ書き手に明日への活力を与えてくれるのかを、知っておいてもらえればなと思います。
305名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 08:49:53 ID:R6LJkjRg
ルール違反といってる香具師が多いけど>>1-4に書かれてない以上ルール違反とは違うんジャマイカ
スレ内ではそういう方向で暗黙の了解にはなっているけど>>279に非はないと思う
確かに1PTが突出するのは好ましくないが折角書いた話をNGに追いこむのはどうか

>>303
>本人がNGって言ってるんだし、NGでいいのでは?
そういう問題じゃないだろ・・・と思った壱書き手
ルール違反だと言われたら「NGにする」と言うしかないんじゃね?
漏れはNGにすべきじゃないと思うがどうか

>>279
やっと♂WIZがマーダラーとしていいとこ見せられたw
GJ!
ROMるなどと言わずどんどん面白い話を投下してホスィ
306名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 08:59:35 ID:fIyTECdQ
暗黙の了解で、続いてたんならNGでいいと思うけどね。
それは、ローカルルールになってたようなものだと思うし。

>279
話としてはすごい素敵だけど、ちょっと突っ込みが。
スキル構成に無理がある。
レベルが低いスキル構成でないとその♂WIZのスキルは取れなくなるけれど。
307名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 09:04:10 ID:oltRe7YI
つ バトROワを読むにも書くにも大事なこと

・お気に入りのキャラが死んでも受け入れること(泣くのは可)
・よほどのことでもない限り、先出しが有効なこと(泣くのは可)


>>279
えぇ、♀WIZが瀕死だからって、先が短そうだからって、耐えてみせますとも。
書き手の力さえあれば、死んでさえいなければどんなどん底からだって立ち上がってこれるんだぞぅ。
それにしても♂WIZさまTUEEEE
マーダラー陣営も愛してる! ドザえモンな♂クルセもがんばれ!
308名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 09:17:39 ID:R6LJkjRg
>>306
明文化されてない暗黙の了解から外れたらNGだったら、新しい書き手さんは来るなって事になりかねませんよ
このスレで議論された話題ならまだしも2スレも前のローカルルールを把握しろって方が無理な希ガス
309名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 09:43:13 ID:4SiSy1/2
>>308
同意です。
と、言うか余り急激に進まないのだって、書き手さんの数が
限られてる件もありますからね。

さて、桃太郎のようなものは一体どこに流れていくのやら。
310名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 09:47:50 ID:4SiSy1/2
追記。
>>304
冒険者の現実、って言うのはmobと戦う事とか
冒険者の社会での厳しかったり、理不尽だったりする一面を指しての事です。

あと、storiesなのは、忍者と名乗った名も無いアサシンがこれまで二人以上いたらいいなー、
と言う書き手の完全な願望を含んでるので複数形なのです。
311名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 11:24:18 ID:.Nf0ARXk
同一PT(他人書きでも)一日あけて暗黙の了解だったのですか?
だったら私も引っかかったことがあるような気がします。

2ndステージ始まってからずっと書き手としていますが
そんなの規制は聞いたことありませんでした。

ルールをルールとして運用するなら勘違い指摘である以上
NGにはせずに通しで問題ないでしょう。

>>279
ROMに戻らず今後とも書き手として参加してください。
AgiWizとDexWizの対比が非常に良く出来てましたし、
この状況で手札を知られる不利さもじんじんと伝わってきましたから。

<!--ちらしの裏

最近ことごとくかぶり負けしてらwwっうぇwwww

-->
312288sage :2006/03/18(土) 11:44:35 ID:XGOIDOa6
な、なんだこの流れ。
確かに「話数」は進んでますが、「時間」はたいして進んでないと思うのですがね…

>>303,306
暗黙の了解云々言ったものですが、あれは
「時間が進みすぎているキャラクターがいたら、誰かがストップをかけて進みすぎてることを注意しあおう」
てだけで「同一キャラの話は24時間空けるのが暗黙の了解だった」という意味ではありません。
【投稿された話をNGに出来るような規制】はWiki(>>4)の通りのはずです。
何を持ってNGにしたいのかがわかりませんが、>>279は問題なく通らなくてはいけないでしょう。
でなければ、その謎のルールを明文化して規制に追加しなければいけなくなります。
(ちなみに281氏は過去ログを調べてくれましたが、>>286の結論自体が勘違いなので >>303

>>311
っNGでの提出を要求

というか、勘違いとはいえ他者を非難してしまったことにたいする謝罪もないんだよなぁ…
某人を髣髴とさせる。
313名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 12:29:57 ID:zQhsQKac
え〜っと・・・
同一キャラでも24時間空けなくてOKでいいんでしょうか・・・
おどおどしながら投下・・・
314名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 12:30:27 ID:zQhsQKac
183.Bloody crusader [夕方〜夜付近]


――君はなんのために闘うの?――


――愚問だな……死なない為だ――


――じゃあなんで君はそんな所にいるの?――


――そんな所?――


――まるで地獄のようじゃないか、不安、殺戮、恐怖、惨殺、不信、裏切り、赤く染まる体――


――何が……言いたい――


――私には解らないよ……なんで君がそんな事をしているのか――


――さっきも言っただろう……死なないためだ……俺は、死ねない――


――じゃあ……もう一度だけ聞くね……なんでそんな所にいるの?――


――それは、俺が――


「……ん」

♂クルセイダーはゆっくりと眼を開けると赤く染まる夕日の光に思わず眼をしかめた。
雨はもう気にはならないほどの小降りになっている。
♂クルセイダーはゆっくりと右腕を顔の前に持っていく。指はしっかりと動く、力も入る。

「生きて……いるの、か……」


「ぐ……ぉ……」

ゆっくりと背中に突き刺さったままになっていたナイフを抜くと、あらかじめおこしておいた火にくべられていた木を一つ手に取る。
そして背中の刺し傷へとゆっくりとその熱く焼けた先端を押し付ける。
じゅうという肉の焦げる音と傷を焼く痛みに顔をしかめる。
そして完全に血が止まる頃合をみて焼けた木を離した。
軽く傷を擦ると血がべとりと指につくが新たな血は出てこない。
指に付いた血を脇を流れる清流ですすぐ。
背中にある刺し傷、光を失った左目、機能を失ってはいないが焼け爛れた左半身。

「まさに泣き面に蜂……といったところか……」

傷を負った左目に加えて火で焼かれた左頬。
♂クルセイダーはそれでも尚穏やかな顔を浮かべている。まるでおだやかな日の午後にやさしいそよ風を受けているかのように。
その瞳は美しくきれいに澄んで夕日の光を写していた。
今の彼はまさしく一人の聖騎士、と言えるだろう。

「俺は……一人で何をしているんだろうな……」

パチパチと火のはぜる音を聴きながら一人夕日を眺める。

「まだまだ世界は広い、広いな……そう、俺よりも強い奴は沢山いるんだ……」

♂クルセはナイフを手に取ると左手の甲に突き刺した。どろどろと流れていく赤い血。

「もう……負けはしない……決して……決してだ!」

♂クルセは荒々しくナイフを抜き去ると砂浜に突き刺す。
未だだらだらと血が流れている左拳を硬く握ると焼け爛れた左頬を思い切り殴った。

「思い出せ……俺は死ねない……死ねないんだ……」

そうつぶやく彼の顔はいつもの冷静な、いや冷徹な顔に戻っていた。
瞳は澄んでいる、透き通っている、黒いガラスでできたガラス玉のように。
そしてふっとあたりが暗くなる。ゆっくりと顔を上げると水面は赤く色づいているが夕日は既に見えなくなっていた。

「少し……寝るか……」

そう言うと彼は浜辺にごろりと横になった。
その左手に握るのはシミターの鞘、右腕を前に突き出すようにして眠り始めた。
夜の舞台に備えて♂クルセイダーはゆっくりと眠りだした。
彼の演じる血の演舞はまだ終わらない。

<♂クルセイダー>
現在位置:D-3
髪型:csm:4j0h70g2
所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) ナイフ
状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷 背に刺し傷を負う 焼け爛れた左半身
   精神不安定 自分を見失いかける
315名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 13:09:00 ID:oltRe7YI
>>314
瀕死なくらいのダメージを受けて川に流されていたはずの♂クルセが普通に行動してるのがちょっと気になるかな。
回復力ありすぎんす。

あと文中でゆっくりという言葉がちょっと使われすぎだから減らすようにした方がいいかも。
それから♂クルセと♀WIZの戦闘前に雨は止んでるはず。

以上気になるところでした。

>>311
投稿競り負けてもどんどん投稿しちゃっていいと思いますよ。
本編だけがバトROワじゃないよ!アナザーも愛して!


それから
連投うんぬんは>>312さんの通りでいいと思う。
誰も24時間空けを暗黙の了解にしてたことはないだろう。
あれはみんなが昼の話なのにひとりだけいきなり夜を書いた人がいたから困っただけ。
316314sage :2006/03/18(土) 14:44:38 ID:zQhsQKac
おうあ、そういえばやんでましたね・・・

雨はもう気にはならないほどの小降りになっている。

の一文はなかったことに・・・
激しい運動はともかく火をおこして傷の手当てくらいはできるかなとも思ったのですけれでも
どれほどの瀕死度かいまいち・・・

そしてたしかにゆっくりがやたらでてますね
おもむろに・・・?
317名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 14:51:42 ID:I/ltm5Ds
>>314
これだとクルセ元気すぎませぬか
なんだか前の書き手さんの話がないがしろにされている印象を受けました
背中の刺し傷ってどこにささってもかなりの重症だと思うんですよ
満足な治療道具も高INTヒールも持っていないと思うのに

誤解のないように、クルセが生き延びた「展開」に意見しているのではなく
かなり回復している「表現」について問題だなぁと思ったのです
318314sage :2006/03/18(土) 14:54:38 ID:zQhsQKac
む、なるほど・・・

ん〜部分修正は不可能そうなのでひとまずNGで、本当に申し訳ありませぬ・・・
319314sage :2006/03/18(土) 15:39:11 ID:zQhsQKac
とかいいつつ一から書き直しちゃったりで一応投下だけさせてください・・・
激しくスレ消費&お眼汚しごめんなさい
320314sage :2006/03/18(土) 15:39:31 ID:zQhsQKac
183.代償 [夕方〜夜付近]

冷やりとした感覚が体を支配していく。
指先から、頭から、体全体へと伝わっていくように。
しびれるような傷の痛みも今はもうない。
ヒタヒタと忍び寄る死の感覚。
確実に迫ってくる終焉。

――俺は……死ぬのか――

――まだ、生きなければいけないのに――

――俺は、俺はまだ――

――ねぇ――

――死ねない…死ねないんだ――

――ねぇ、ねぇってば――

――誰……だ…?――

――君は何をしているの?――

――生きるために…闘っている――

――何と闘っているの?――

――決まっている……敵とだ――

――う〜ん、じゃあなんで闘ってるの?――

――さっきも言っただろう……生きるためだ――

――あれ、そうだっけ?それじゃ、なんで闘わなくちゃいけないの?――

――なん…で…?――

――うん、なんで闘わなくちゃいけないの?――

――闘わなければいけない……そういう場所だから…だ――

――じゃあ……どうして君はそういう場所にいるの?――

――どうして――

――まるで…地獄みたいな所じゃない…不安、殺戮、恐怖、惨殺、不信、裏切り、赤く染まっていく体……血に塗れた手――

――何が…言いたいんだ――

――別に……ただ私は、なんで君がそんな事をしてるのか…しりたかっただけ――

――なんで……なんでなんだろう、な――

――わからないの?――

――ああ、わからない…な――

――それじゃ…もう最後に一個だけきくね――

――なんだ…?――

――君って笑えなかったっけ?――


「う……ぁ……」

ゆっくりと眼を開ける。
まず視界に入るのは自分の左手、それから砂浜。
ゆっくりと指先に力を込める、ふるふると震えながらも手は握れた。

「生きて…いる……」

体全体がひんやりとしている、体の感覚は無いに等しい。
わずかに動かせる部分はないかと体中に力をこめる、しかし思いとは裏腹に体は弱弱しい反応を返すばかり。

(だめ、か…血を流しすぎた…体温も奪われた、か……)

(ひとまずは……生きていることを喜ぼう……)

(寝ていれば体力は回復するだろう……少しでも…動くことが、できれば……)

視線だけを動かして周囲を観察する、うつ伏せに転がっているために確認できる範囲はかなり狭かった。
目に付くのはほんの数十センチ先にある小さな清流。
ちろちろと流れるそれはどうやら体の下半身もぬらしているらしい。
次に目に付くのは小枝程度の流木。
湿ったものが大半だが、奥にあるものは乾燥しているのもあるようだ。
うまく使えば火をおこすこともできるだろう。
周囲を観察しているうちに段々と体に血が通っていくのを彼は実感した。
と同時に背中にズキリとした痛みが走る。

「ぐぁ……」

(そう、か……刺されたんだったな)

血が通ったせいで痛みを実感する事になってしまった事に、彼はむしろ喜んだ。
自分の外傷の確認、失った機能、戦闘能力の低下、自分の身体状況。
それらをすばやく確認することができるから。
わずかに動くようになった左手を動かして左目に軽く触れてみる。

(左目……は、もう見えんな)

(その上……焼けどのおまけつき、か……)

(まさに泣き面に蜂……というやつだ)

(這いずるようには…動けるか。だが得策ではない、な)

(せめて……たって歩けるようには、ならんと、な)

体力が回復するまではそこに横たわっている事に決めた彼はゆっくりと右目を閉じる。
口で静かに、大きく呼吸をしながら回復をまつ。

(世界というものは本当に広い…広いな……)

(自分よりも強い奴ら等は沢山いる……それは今までの事でわかっていたはず…)

(俺は……どうかしている……)

(何故♀ローグにあんな事を言った……何故♀アコに止めを刺さなかった……)

(目の前で殺すチャンスがあった奴も沢山いた……なのになぜ……)

(指輪……そうか指輪か……)

(あの子に……銀の指輪をあげたら…お礼に花の指輪をくれたんだっけ……?)

(だめだ……何を考えている…らしくない…らしくないぞ……♂クルセ……)

(闘うことだけ考えていればいい……俺はまだ死ねない……)

<♂クルセイダー>
現在位置:D-3
髪型:csm:4j0h70g2
所持品:S2ブレストシミター(亀将軍挿し) ナイフ(背中に刺さったまま)
状態:左目の光を失う 脇腹に深い傷 背に刺し傷を負う 焼け爛れた左半身
   精神不安定
321311sage :2006/03/18(土) 16:20:01 ID:.Nf0ARXk
背中を押されてしまいましたのでNG投稿します。
時間帯としては♀Wizが♂クルセを見失った時点の後でよろしくお願いします。


「やれやれ、これは困ったことになりました」

 まるで他人事の様に呟くのは♂セージ。しかし、彼は言葉とは裏腹に目の前の強敵に対して身構えている。目の前の強敵――― ♂クルセイダー ―――に向ける殺気には微塵の揺らぎもない。目の前のマーダーともども殺る気満々である。

NG.男の性

 ことの起こりはこうだ。
 軒下で雨宿りをしていた♂セージ、♂シーフ、♀商人の三人は先行している♂プリースト、♀ウィザードの二人の帰りをやきもきとしながら待っていた。争いの音が聞こえなくなってどれくらいたっただろうか、♂シーフがいても立ってもいられなくなり、立ち上がったときだった。
 雨上がりの集落の向こうから傷だらけの男が泥にまみれてこちらへとやってきたのだ。
 大丈夫ですか!?と駆け寄ろうとする♂シーフと、恐々と立ち上がった♀商人を制止して♂セージは問う。

「貴方、ゲームに乗っていますね?」

 問い、というよりはもはや断定の域にある言葉に満身創痍の♂クルセイダーは眉一つ動かさずに問い返す。

「なぜ?」

 ♂セージは一つ頷くと、手の内は明かしたくないのですが、といいつつもいつもどおりに推理を展開する。

「貴方のその傷です。
 顔の傷も腹の傷も真正面から戦って付けられたものでしょう。
 傷の大きさからすると剣に寄る切り傷といったところでしょう」

 推理を披露する間にも♂セージはじりじりと少年少女をかばえる位置へと移動する。その移動を知ってか知らずか♂クルセイダーも三人に向けてにじり寄る。

「しかし、貴方は腹だけでなく背中も庇っています。
 いえ、そのつもりはないでしょうが、わかるんですよ。貴方は背中にも傷を負っています」

 ぴたりと♂クルセイダーの動きが止まった。

「これは逃げ出す時に付けられた傷だ、といったなら?」
「そうですよ、マーダーから逃げ出す時に付けられた傷かもしれません」

 身につまされる話だけに♂クルセイダーの言い分に賛同する♂シーフをちらりとも見ずに♂セージは言う。

「だったら後ろを向いてもらいましょう。
 貴方がマーダーでなくて本当に被害者なら背中を見せるくらい何でもありませんよね?」

 ♂クルセイダーは何も答えない。
 ♂シーフは何も言えない。
 ♂セージは何も言わない。
 ♀商人はともすれば誰かにすがりつきたくなる自分の手を握り締める。

 全員の吐息だけが痛いほどに耳を打つ静寂。
 静寂を破ったのは♂クルセイダーだった。

「少年少女のお守りも大変だな。大人数では意思を統一せねば動けんか。
 ならば、手伝ってやろう。全くその通りだよ」

 露骨ないやみをこめて♂セージに♂クルセイダーは言った。その表情には不意を打てなかった悔しさなど微塵もない。どちらかといえば、群れねば戦えぬ弱者を嘲笑うものだった。とはいえ腑に落ちない点もある。

「しかし、なぜわかった?おまえは傷だけで断定したわけではないだろう」

 ♂クルセイダーの疑問に答えたのは意外にも♀商人だった。

「わたしたちはそんな抜いたままの剣持ってうろつかないもん!」

 怖気づきそうになる自分自身を鼓舞するかのように♀商人は精一杯の声で答える。軽く頷いて♂セージはもう一つの理由を付け加えた。

「なにより、その傷でゲームに乗っていなければマーダーだと断定されたら動じます」
「くくく、全くその通りだ…。とんだ失態だったな。次から気をつけることとしよう」

 次からは。
 その言葉に♂シーフは寒気を覚えた。
 この男は三対一という圧倒的な不利な状況でも僕たち全員を殺して生き残るつもりなのだ。
322311sage :2006/03/18(土) 16:24:16 ID:.Nf0ARXk
「やれやれ、これは困ったことになりました」

 まるで他人事の様に呟くのは♂セージ。しかし、彼は言葉とは裏腹に目の前の強敵に対して身構えている。目の前の強敵――― ♂クルセイダー ―――に向ける殺気には微塵の揺らぎもない。目の前のマーダーともども殺る気満々である。

「万全の状態でない以上お引取り願いたいのですが、そちらその気はありませんよねぇ」
「一片たりとも」

 暗に見逃してやる、という♂セージの言葉にも♂クルセイダーは頷かない。三人を相手にして勝てるという自信の現われなのか傷の痛みで判断力が鈍っているのか。どちらにしても♂セージとしてはありがたくないことであった。
 三対一で勝てるという自信の表れならばこちらが逃げ出してしまいたいくらいだし、判断力が鈍っているのならば手負いの獣ということでしかない。どちらにしてもまっとうな方法で相手にはしたくないのだ。だから、手の内を明かす危険も冒して推理を披露したのだが、時間稼ぎにもならなかったようだ。♂プリーストも♀ウィザードも未だに帰ってくる気配がない。

「神に祈りは捧げ終わったかね?来ないならばこちらから行くぞ」

 一向に襲い掛かってこない三人に業を煮やしたように♂クルセイダーは呟くと一気に距離を詰めた。狙うは一番戦いなれていないだろう♀商人。素人だけに激昂されては面倒であるし、初撃で屠るならばこの娘だと相対した時から決めていた。
 故に迷いなど一切ない。電光のような一撃が♀商人を襲う。

「っひ!!!」

 喉にかかったような悲鳴が上がる。
 しかし、多くの人間の血を吸ってきたシミターは♀商人の柔らかい肉を引き裂くことはなかった。
 その動きを予想していただろう♂セージのソードブレイカーに阻まれたからであり、何より標的自身がその場にいなかったのだから。

 泥が跳ねる。

 ♂クルセイダーの強襲に一番素早く反応したのは♂シーフだった。標的が♀商人と見るや全力で突き飛ばしたのだ。ぬかるんだ地面に頭から突っ込んで泥まみれになった♀商人にとってはいい迷惑であるかもしれない。
 少年の予想外のいい動きに♂クルセイダーは自身の戦力計算を書き換える。

「やれやれ、私が止めなければどうするつもりだったのですか。君の自殺癖は早急に治さなきゃいけませんね」
「聡い♂セージさんのことだから、きっと受け止めてくれると思っていました!」

 短いソードブレイカーの刀身でたくみにシミターの薄い刃と鍔迫り合いしながら、苦笑交じりに言う♂セージに対して♂シーフは元気に返す。パーティを危険に晒したことで落ち込んでいた彼だが、♀商人を庇ったことで吹っ切ったのかもしれない。
 一方の♂クルセイダーは面白くない。頭数を減らせなかったばかりでなく、少年まで戦力であることに気づいたからだ。それよりなにより、目の前の男。魔術師の様に推理を披露しながら、巧みに短剣を扱う。予想外だ。魔術師ならば距離を詰めてしまえば打つ手がないはずだったというのに。
 少年が使い物になる以上、目の前の男といつまでも鍔迫り合いをしているわけにはいかない。

「ハァッ!」

 気合一発、全力でシミターに力を込める。
 押し負けると悟った♂セージはその力に逆らわず後ろに跳び退って距離をとった。
 仕切り直しである。

「さて、仕切りなおしのついでです。♀商人さん、貴女はここにいても邪魔です」

 ♂クルセイダーの動向に気を配りながら♂セージはなんでもないことの様に言う。
 ♀商人は一瞬何を言われたのか理解できなかった。頭の中が真っ白になる。だというのに泥にまみれた身体は動いてよろよろと立ち上がる。そんな、今更足手まといだなんて、酷い。けれど、次の言葉、精一杯彼女を邪険に扱った一言で現実に引き戻された。

「動きが鈍い貴女を庇っていては戦いにならないと言っています」

 この馬鹿はきっと逃げろっていっているんだ。わたしが、戦えないことを見越して誰か呼んで来いっていってるんだ。この馬鹿がそういうのならここにいても邪魔なんだろう。だったらわたしが逃げるのが最善の一手、だと思う。
 なのにさっきは逃げ出そうとして立ち上がった身体がうまく動かない。
 それは、きっと、このまま別れたら、♂セージの顔を二度と見れなくなるような気がするから。
 カチカチに凍りついた身体を動かしたのはやはり♂セージの声だった。

「あの夜の話ね、本当なんですよ」

 少女以外には絶対に意味のわからない言葉。
 けれど少女には絶対にわかる暗号のような言葉。
 それは絶対の自信と絶対の生還を約束する魔法の言葉。

 その意味を深く理解する前に身体は弾かれたように動き出していた。後ろから♂クルセイダーに切りかかられることなんて考えない。今出せる最大の力で彼女は♀ウィザードと♂プリーストが消えた方向へと駆け出していた。

「女を逃がしたか、余裕のようだな」

 無数の傷を負ってなお巌の様にそびえる男は言う。彼にとっての障害はもはや♂セージであり♂シーフである。だから♀商人は見逃した。あの程度の素人ならば、自身で手を下さずともいずれ殺されるだろう。

「ええ、肉盾にでもしようとつれてきたんですけど役に立たないこと役に立たないこと」
「それって建前でしょ?女の子を守りたくなるのは男の性ですからねー」

 本人がもはやいないことをいいことに言いたい放題言う♂セージの言葉を受け取って♂シーフがまぜっかえす。♀商人とのらぶらぶっぷりを見せ付けられた腹いせだったのだが。

「おやまぁ、わかってしまいましたか。私はこう見えてもフェミニストなのですよ」

 そんな揶揄など何処吹く風。しれっとした調子でいう♂セージには一片の油断もない。とはいえ、言ってしまった以上、約束は守らなくてはならない。あの少女のためにも。

 向かい合う三人の男たち、ただ緊張した空気だけが流れていく。


以上、ここまで。
この後、クルセがセージとシーフの仲間割れを誘ったりオートバーサクで暴れたり、
砂まきで泥を投げつけて目潰しして辛勝したりと考えていましたが、長くなるので
NGにそんな力を入れてどうするという、文士の暗黒面に負けて割愛。

しかし、♂セージって本当に良くしゃべるなぁと書いてみて思いました。
探偵キャラって難しい…。
323279sage :2006/03/18(土) 17:36:01 ID:3Bunpp8U
何か思った以上に大問題になってしまいました…orz

>>312氏に判り易く纏めて頂いたのと、自分なりに過去スレを流し読みした限り連投規制には抵触していないようですので、改めて>>279のNG扱いを取り下げさせて頂きます。
但し、今後>>279がNGであるという明確なソースが指摘され次第、NG扱いとして頂けますようスレ住人の方々にお願い申し上げます。

NG取り下げは私個人の我を通すつもりではないのです。が、擁護・反論問わず調べてくださった方々を放っておいて自分だけROMに逃げる事はしたくない一心で一筆取らせて頂きました。
また問題の渦中の人間が言うのもおこがましいと思いますが、もし「同キャラ・別書き手も24時間投下を不可とする」というスレ内の結論に至るのであれば、折角Wikiもある事ですし、即時文章化して誰の目にも明らかな所に提示が必要なのでは?と思います。
私のようにWikiから来る人間がまったく居ないという訳ではないと思いますしね。

この度は書き手、読み手の皆様に多大な迷惑をお掛けした事をお詫びさせて頂きます。
本当に申し訳ありませんでした。

それとNG取り下げという事で>>279の一部修正をさせて下さい。
<♀WIZ>現在位置:D-5→D-4 → 現在位置D-4
<♂WIZ>現在位置:D-5(民家内で休息中) →現在位置D-4(D-5に向けて移動中)
次の書き手さんが位置の把握ができないと申し訳無いのでこの点を修正して頂けると幸いです。
また、スキル構成がおかしいという指摘に関しましては、NG扱いにならずWiki上に掲載される事があれば、前後の話と歪が出ないよう細心の注意をもって加筆修正させて頂きます。

乱文失礼いたしました。
324名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 18:16:54 ID:oltRe7YI
>>321
♂セージの最後の方の台詞を読んで、あぁ、さすがGMジョーカーと同じ血を持ってるだけはあるとしみじみ感じました。おもしろかったですよ。
あ、♀商人戦闘型なのに、役立たずでカワイソス。

>>323
おつかれさまでした。今回のごたごたの非は323氏にはありませんぜ。
スキル構成はファイアピラーがジェムなししか使われていないので問題なさそうな気がします。

いきなり24時間以内の投稿はルール違反だ!
なんて頭ごなしに書く人の方が、むしろ冷静さ欠いていると思うので、気にせずたくましく、次もどんどん投稿しちゃってください。
本当に投稿した文章に問題がある場合でも、優しく指摘してくれる人は多いはずですよ。
325名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 18:31:14 ID:hpKIVILE
えっと、♂アルケ騎士組に人妻PT(♂プリ)が合流してるって事でいいのですよね?
どちらにせよ。強引設定なのでNGでお願いいたします。(`・ω・)b

NG.少しの知識と少しの希望

「しっかりしろよ!目を開けろよ!頼むから…何か言ってくれよ…。」
破れた鞴のような頼りない音を唇から漏らし、かろうじて呼吸を続ける♂騎士を
♂アルケミは腕に抱きながら必死で呼びかける。
お互いの衣服を黒味がかった赤色に染めて尚も♂アルケミは♂騎士に言葉をかけ続けた。
「はぁ…はぁ…俺……誰も泣かせたく…ないって…思ったんだけどな…。」
自嘲を含んだ言葉と血を吐き出し震わせながら右手を♂アルケミに差し出す。
「そんな事言うなよ…。そう思うなら俺と一緒に生きて帰ろう。な?」
差し出された手を片手でしっかりと握り締めて励ます。
ポーションピッチャーで傷を回復しようにもポーションの数が絶望的に足りない。
こうして考えている間にも♂騎士の呼吸が弱々しくなっていく。

どうしたらいい?俺に何ができる…?

一度ならず二度までも自分を救ってくれた友をどうしたら助けられる?

「…あ。」
はっと行き当たった閃きに短く声を上げる。
うまく行けば再び♂騎士に命の火を灯す事ができるかもしれない。
でも、失敗したら…?
光を失った瞳で空を見つめる♂騎士をこのまま死なせるわけにはいかない。
一か八かの賭けに縋る術しか彼の気力も体力も正常な判断力も残されてはいなかった。

アルケミストギルドの講壇で教授が言っていた事を思い出す。
【生命を作り出す技術…これこそが我々アルケミストの悲願でもあり…】
深く息を吸い込みそしてゆっくりと吐き出す
何度か繰り返すと大都市で教えられた生命倫理が浮かび上がる。
生命を召還させるにはいくつかの道具から生み出されるエンブリオを媒体にしないといけない。
しかし、エンブリオもなければ作り出す道具すら欠けている。
が、生命の基礎になる♂騎士、足りない物を分け与える自分という存在が目の前にある。

ゴクリと唾を飲み込み♂騎士の傍ら置かれたツルギを空いた手で取り上げ
光を失ったそれをじっと見つめた。
仮に命を繋ぎとめる事ができたとして以前と同じ彼でいる事はできるのだろうか…。
友を助けたい。嘘偽りのない純粋な気持ち。
でも、根底にあるのはアルケミストとしての研究心なのかもしれない。

「俺は、絶対にあんたを死なせない…。」
ザシュッ…!
ツルギで貫いた腕からぼたぼたと鮮血が♂騎士の上に零れ落ちる。
「くはっ…。やっぱ、いてぇ…これで失敗したらあんたの事恨んでやるからな。」
♂アルケミストはもう一度深呼吸をしてからゆっくりと叫ぶように声を上げた。

「コールホムンクルス!!!」

♂アルケミの傷口から零れる血液が薄い緑色の発光体となって♂騎士と繋がる。
それと同時に物凄い勢いで体中の力が抜けていくのがわかる。
「自分の生命媒体にしてるんだから仕方ないか…。」
胸元からじわじわと光が儚げな点滅を繰り返しながら♂騎士の身体を包み込む。
「頼む…お願いだから成功してくれ…。」
疲労感と虚脱感に抵抗できずに♂アルケミの意識が遠のいていく
深い闇に飲まれていく間に激しい光を目の奥に感じたような気がして
瞬きしたのを最後にどさりと♂アルケミは♂騎士の上に覆うようにして気を失った。

雨が正体もなく地べたに倒れた2人を叩き続ける…。
トクン…トクン…。
雨粒のリズムとは違うリズムが被さる。
ピクンッ…。
握り締めたままの腕に♂アルケミではない別の力が微かに加わった事に
深い眠りにつく彼は気が付く事がなかった…。
326名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 18:59:23 ID:8MAAWx9s
貴重な書き手を擁護したいんだろうけど、注意してくれた人をそこまで卑下する奴もちと痛いよ。
勘違いだったとはいえスレのために言った発言だったろうに。
つかほんと同じキャラばかり進み過ぎ。
書きたいキャラだけ書いて残りは「時間は戻るが」なんて前書きで済ませるのは質が低い。
327名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 19:04:01 ID:4SiSy1/2
 183:破戒<二日目宵の口>

 父親が死んだ。
 不思議と、余り悲しいとは思わなかった。
 世辞にもいい父親ではなかったけれど、多分そのせいでは無いと思う。
 きっと、そのせいじゃない。
 きっと──きっと、そのせいなんかじゃない。
 言い聞かせるように何度も言葉を転がす。

 そのくせ♀BSは、一しきり酒でも煽りたい様な気分だった。
 二度目のサヨナラにも乾杯だ。丁度、先程まで雨も降り注いでいて。
 ひどく寒い。回復したとはいえ、体力は普段に比べれば落ちているのだし。

「お天道様も泣いてたのかね」
 呟いた。彼女とその同行者は立木の影で雨をしのいでいた。
 結局、♂ハンターには追い付けなかった。山歩きへの慣れの差であった。
 酷く暗い。彼女以外には誰も何も口にしなかった。

 正直に言えば、彼女もまた彼らを責める事が出来る様な状況ではなかったし、
己が既に何をすればいいのか見失いそうですらあった。
 本当に、寒い。膝を抱え、視線をさまよわせる。
 映り込んで来たものは、と言えば幾つかの横顔。
 前を向いているのは、目を覚ました♂スーパーノービスだけだった。

「ぼ、ぼす」
「ああ、何さ?」
 投げやりに答える。

 そう言えば、このゲームの始まりから付き合い──言い換えれば、この中で一番気の置けない関係であるのは最早彼だけであった。
 他の者は皆死んでしまった。♀ダンサー然り、父親然り。
 ふと考える。もしも、彼さえも死んだとしたらどうだろうか?
 それは喩えるなら硬い硬い鉄(ココロ)を思い切り叩き潰すみたいな──おぞましい快楽。

 ぞわり、と何か酷くどす黒い被虐心が湧き上がった気がした。
 頭を振る。理解してはならないものだ、と思考を覚ますと、心配げな顔で♂スパノビが彼女を見ていた。

「何でもないよ……まだ、疲れてるだろ?おとなしくしてな」
 おとなしく言葉に従い、♂スパノビは身体の力を抜いて木に背をもたれかけさせた。

 愚鈍な男である。
 聞けば、殆ど教官の言葉を聴くがままに只管繰り返してきたのだと言う。
 そういう性質なのだろう。疑問をさしはさむ事の出来ない精神的片輪。
 ああ、しかしそれを言うならば自分自身は何か。
 きっと、立ち上がる為に必要な心が千切れ飛んでしまったのだ。
 ならば、己も彼も同じに違いない。
 瞳はぼんやりと。唇はかすかに歪む。頭は殆ど何も考えられない。

「──誰です?」
 だからなのか、不意に立ち上がった淫徒プリがその言葉を発して初めて億劫そうに顔を動かしていた。
 見れば、僅かに草むらが揺れているのが見えた。
 人殺しだったなら殺そうと、とりあえず簡単に考えて彼女もまた立ちあがる。

「人殺しじゃないなら、殺さないから。安心して出てきて」
 と、♀BSと同じく獲物を手にした♂アコライトがぼそりとした声で彼女の心境を代弁していた。
 茂みのざわめきが消え、そしてややあって。

「……」
 再び茂みがざわめいた後で、一人、♀ノービスが姿を現した。
 ぎょっとした顔を淫徒プリが浮かべる。
 それはそうだろう。冷静さを保っている彼故の反応と言えた。
 この情け容赦の無い殺戮戦。何の牙も持たないノービスが幸運のみで生き残る事が出来る程、甘くは無い。

 ひりついた顔で、♂アコライトがその少女を見ている。
 ♀BSは、僅かに躊躇いを覚えて♀ノービスと淫徒プリを見比べていた。
 頬の辺りに手を当ててから、ごほんと一度淫徒プリは咳払いをする。

「簡潔に答えてください。貴方は、一体どうやって生き残ってきたのですか?」
「……」
 少女は見定める様な目をして答えない。
 余りにも一方的な此方の物言いに面食らっているのかもしれない。
 だが、力関係では♀BS達が圧倒的に優位に立っている以上、否とは言えまい。
 ♀ノービスは眼前の淫徒プリの顎の辺りを見つめてから、嫌々といった調子で口を開く。

 ──少女が語った顛末は、おおよそ淫徒プリの想像の外に出るものではなかった。つまり、同行者がいたのだろう、と。
 アサシンの男と行動を共にしていた事、魔法使いに襲われて彼と死に別れた事。それから、自分はまだ死ぬ積もりは毛頭無いとも。
 促されるまま、腰に下げていたポイズンナイフを差し出すに至って、彼は彼女の生殺与奪が完全に自分にあるのだ、と理解する。

「この子、どうするんですか?」
 と、♀アルケミストが控えめな、しかし拒絶を僅かに含んだ声色で言う。
 考える事は酷く疲れるのだけれど、♀ダンサーの姿が心に引っかかるから、♀BSは嫌だと言えない。
 ♂アコライトは、僅かに嫌悪さえ浮かべて──♂アサシンと同行していたからだろうか──少女を見ていた。
 ♂スパノビは殊、こういう判断はからっきしだが♀BSの意見に従うだろう。

 賛成と反対は拮抗。結局、今現在全ての決定権は淫徒プリに委ねられていた。
 少し、考え込むような様子を見せる。
 彼とて馬鹿ではない。引き込むべき人間を刹那的な要求に従って選ぶ事は半ば放棄してしまっている。
 と、言うのも無理の無い話しである。余りにも、ここまでの道中に人が死にすぎた。
 半ば、彼らの一行はパーティとしての結束を失いつつある。
 そして、根拠の無い強弁はその瓦解を決定的なものにするだろう。

 同じパーティーの筈なのに、まるで敵同士の腹の探りあいのようである。
 信頼できぬ味方は敵よりも厄介である、とは誰の言葉だったか。

 ちら、と背後を仰ぎ♀BS達の方を仰ぎ見た。
 ──分の悪い賭けなどするものではない。それは破滅へ向かう一本道であろう。
 彼の美女の意向に添えないのは、個人としては残念であったが、そうも言ってられない。

「──わざわざ追い返す事も無いでしょう、ね。それに、もしかすると有益な情報も得られるかもしれませんし」
 ♀アルケミストは、特に文句を言いはしなかったが、少女は不安げな顔を彼女に向けていた。

「……解りましたよ。確かに、情報は多い方がいいんでしょうし……僕はそういう事は得意じゃありませんから」
「それでは、雨は上がりましたけど──」
 淫徒プリは、途中で言葉を切ると空を見上げる。
 そこには酷く暗い雲。僅かに形の良い眉をしかめてから、更に言葉を続けた。

「これから移動するのも酷です。もう少し休憩して──その間に、少し今後の事についてお話でもするとしましょう」


<♂アコライト>
現在地:G-6→?
所持品:ジルタス仮面(ジルタスの遺品) メイス
外見:公式通り
備考:支援型
状態:ジルタスの死のショックにより狂気を帯びる。


<淫徒プリ>
現在地:G-6→F7
所持品:女装用変身セット一式 青箱1
外見:女性プリーストの姿 美人
備考:策略家。Int>Dexの支援型
状態:軽度の火傷。魔法力の連続行使による多少の疲労。


<♀ケミ>
現在地:G-6→F7
所持品:S2グラディウス、青箱2個+青箱1個(♂BSの物) カード帖(ホルグレンの遺品)
外見:絶世の美女
備考:策略家。製薬ステ。やっぱり悪
状態:軽度の火傷。

<♀BS>
現在地:G-6→F7
所持品:ツーハンドアックス カード帖(ダンサーの遺品)
外見:むちむち。カートはない
備考:ボス、筋肉娘
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。父(ホルグレン)の死にショックを受け精彩を欠く。
   肉体的ダメージよりも、精神的なものが色濃い。

<♂スパノビ>
現在地:G-6→F7
所持品:スティレット、ガード、ほお紅、装飾用ひまわり
外見:巨漢、超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。眠りからは覚めている。

<♀ノービス>
現在地 E-8(E-7に程近い) =>F7
所持品 ポイズンナイフ
スキル しんだふり 応急手当
外 見 ノビデフォ金髪
備 考 どろだらけ。 姉御チームと合流

<注記:姉御チームの結束力低下>
328名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 19:05:49 ID:4SiSy1/2
とりあえず、姉御チームの進展を願って
色々ネタを仕込んだ繋ぎのようなものをおいておきますね、と。
329名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/18(土) 21:38:36 ID:XGOIDOa6
>>325
薔薇の二人が…… 一 線 を 越 え た ! ! (ごめん)

>>326
その後の行動イカンに寄って、行いの質が左右されるということですよ。
軽くでもフォローがあれば、あれは純粋な忠告になったと。

>>327
淫徒PTGJ!しおれ気味なBS姐さんが人間味あってヨカタです。
確実にダークサイドにイっちゃってるアコきゅんもまたいい味だしてました。
半数が男性のPTなのに、♀ケミが力を発揮できそうにないところが可哀想w
330名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 00:27:51 ID:4G.UTQ1A
184.Rainbow

「忍者の馬鹿馬鹿馬鹿ぁあああっ!!」

 ♂ローグの魔の手から逃れた彼女が最初に叫んだのはそんな言葉だった。命がけで守ってくれた恩人を口汚く罵るというのはどうかと思うのだが、今の彼女には関係ないらしい。

「私のしたぼくならあんな変態の一人や二人けっちょんけちょんにやっつけちゃいなさいよっ!
 私知ってたのよ!忍者、強かったじゃない!いつだか襲われた時だって一発で撃退したじゃじゃない…」

 忍者が強いのは知っていた。何で私のしたぼくになったんだろうって疑問に思ったこともあった。けれど、一人でいるより二人でいた方が安心できた。絶対口には出せないけれど、一人でいるのはさびしかったし、人のぬくもりを感じていたかった。だっていうのに…。

「どうして、どうしてみんないなくなっちゃうのよぅ…」

 糸の切れた人形の様にへたりこんで呟いた。そして、実際呟いてみてその現実と言葉の重さに立ち上がる気力を失ってしまった。虚勢を張る気力ももはやない。
 したぼくのバフォJrも忍者も、いつも彼女に構ってくれた騎士子もみんなみんないなくなってしまった。みんなみんないなくなってしまったのだ。

 雨は降り続く。
 どうやってここまでやってきたのだろうか。無我夢中で忘れてしまった。
 周囲はいつか見た岩と砂ばかりの不毛の大地だ。幸いにして見晴らしは悪いがこのまま日が暮れれば寒さのために体調を崩しかねない。

「それもいいかな…」

 いつも元気溌剌の悪ケミがポツリと呟く。近くにあった岩に背中を預けて黒く曇った空を見上げて呟いた。サングラス越しに見る空を綺麗だと思ったことなんてなかったけれど、この空模様はあまりに酷い。
 ぐったりと両手両足を投げ出してぼんやりと忍者のことを考える。

(そういえばアイツ、何かいってた…。いしづえとかなんとか)

 頭の中で"いしづえ"という言葉を何とはなしに変換していく。いつもしている世界せーふくのための頭脳トレーニングのように次々と変換していく。

 石杖、意思杖、医師杖、遺志杖…

(縁起でもない、あんなことを言っているから本当に遺志になっちゃうのよ)

 縊死杖、遺子杖…

(ダメ、忍者が何を言いたかったのかわからない。
 世界せーふくするための脳みそだっていうのにどうしてしたぼくのいったことすらわからないかな…。
 そういえば、漢字の勉強をしろっていっていたっけ。
 まったくもう、どうしてしたぼくの癖に世話を焼くのよっ)

 まだ、他にある、きっと意味は他にあると、悪ケミはその頭脳をフルに回転させる。
 礎…。

(これなの?)

いしずえ ―ずゑ 【礎】
(1)建物の土台となる石。柱石。土台石。礎石。
(2)(比喩的に)物事の基礎となる大事なもの、あるいは人。

 その意味を噛み締める。
 不意に、忍者の声がよみがえった。

『私はまだ私じゃない。なぜなら託し託され繋げていく者だからね、忍者は。
 そして、私は託して初めて私になる』

 いつかの夜に聞いた遠くを見つめるような声。

『生き延びて、世界せーふくを成すんだろう!!』

 最期の時に聞いた切羽詰った声。

(そーか、私に託したのね)

 これから、これからじゃないの。モンクを見つけて何とか首輪を外す、それでこの悪夢のような島から逃げ延びる。その後、その後…、そう、その後世界をせーふくするんだ。だったら、したぼくを失ったくらいでうじうじしている暇はない。

『行くんだ』

 本当に本当の忍者、最後の言葉。その言葉に背中を押されるように悪ケミは立ち上がる。
 まるで悪ケミを敵視しているかのような岩と砂ばかりの不毛の大地を睨みつけて、そこに亡霊の様に突っ立っている男がいることに気がついた。

「ちょっと!そこのあんた誰よ!」

 声を掛けてからしまったと後悔するのも遅い。腰元にあるグラディウスと忍者に渡された馬牌ををしっかり握り締める。襲われたら逃げる。貰った命をなんとしても守りきる。しかし、悪ケミの予想を裏切ってその男は茫洋とした目で彼女を見つめると、とんでもないことを言い出した。

「…俺を殺してくれ」
「はぁっ!?」

 一足飛びには近づけない距離を保って悪ケミと男は言葉を交わす。

「俺は生きていても仕方がない…。護るつもりが殺してしまった…。
 出来ることなら俺を殺して少年に亡骸を…「黙りなさい!」」

 それが偽装かもしれないということも考えず悪ケミはキレた。目の前のうじうじと言葉を紡ぐ男に対して、なんだか良くわからない怒りがふつふつとこみ上げる。

「殺してくれってなんなのよ!
 みんな必死で生き残ろうって言うのに一人さっさと死んで楽になろうって言うの!?
 殺してくれ?笑わせないで!
 本当に死にたいなら人の手を借りようなんてせずに海に入っちゃいなさい!」

 端から聞いていればまるで私と戦えと言わんがばかりの剣幕である。

「一回や二回失敗したくらいでへこたれてんじゃないわよ!
 生きたくても死んだ人だっているのに何で死のうなんてするのよ!」

 そのあまりの剣幕に男の目が初めて悪ケミを"見"る。それは紛れもなく彼自身がこの場所で殺そうとしたアルケミストの姿であった。そして、彼女を護っていた凄腕の忍者の姿がないことに気がつく。

「どうせ死ぬなら私の子分になりなさい!そんな命、私が有効に使ってあげるわよっ!」

 神様、これはあんまりだ。俺にこの娘を護れって言うのか。
 男は思う。そして、腰が砕けたようにその場に座り込んだ。
 そんなことはお構い無しに悪ケミはまくし立てる。

「どうなの!?子分になるのならないの!?」

 男が視線を上げると、間近に悪ケミの姿があった。敵か味方かもわからない相手に不用意に近づくその度胸に感心するやらあきれるやらしながらも何とか肯定の言葉を口にする。

「…わかった」
「そう?ならあんたは子分2号よ、したぼくともいうけど」
「1号はどうしたんだ?」

 不用意に聞いてしまったこの問いにも悪ケミは不敵に笑って答える。

「1号は名誉の欠番!だからあんたは2号なの」

 暗に答えられた忍者の不在の理由を承知しながらも、男は喉の奥に引っかかっていたことを口にする。たぶん、絶対に逃げられるだろうと思いながら。

「一つだけ、言わせてくれ。俺は、あんたを殺そうとしたことがある」
「そう?だったら特別に許してあげるわ」

 あっさりと許された。

「まてまてまてまて!殺そうとしたんだぞ!また殺そうとするかもしれないんだぞ!」
「へぇ、したぼくの癖にご主人様にはむかうわけ?」
「うっ」

 なんだか、信用されている。
 その事実がかたくなな男の心を打ち砕いた。
 お手上げとも降参とも取れるようなポーズのまま彼は仰向けにひっくり返り声を上げて笑い出した。

「ちょっとあんた、頭打ってない?大丈夫?
 身体の傷は治せるけど脳みそが馬鹿になっちゃったら無理だからね」

 傷だらけの手を振って悪ケミに大丈夫だと伝える。そして、目を開くとサングラス越しに空が見えた。
 黒い雲は去り、穏やかな太陽が顔を覗かせている。サングラス越しに見た空なんて綺麗なはずはないと彼は思っていた。しかし、そんなことはなかった。
 問題は山積み。だというのに晴れ晴れとした彼の心を象徴するに様な空。目を凝らせば虹もかかっているではないか。
 いつまでもひっくり返ったままの男の隣に座って悪ケミは手持ちのポーションを使って傷を手当てしていく。

「したぼくの世話もご主人様の使命だからね。そういえば、あんた何なの?」
「俺か、俺はモンクだよ。グラサンモンクだ」

<悪ケミ>
現在位置:G-7
所持品:グラディウス、バフォ帽、サングラス、黄ハーブティ、支給品一式、馬牌×1
外見特徴:ケミデフォ、目の色は赤
思考:脱出する。
備考:首輪に関する推測によりモンクを探す サバイバル、爆弾に特化した頭脳
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<グラサンモンク>
現在地:G-7
所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス[1] 種別不明鞭
外見的特徴:csm:4r0l6010i2
所持スキル:ヒール 気功 白刃取り 指弾 金剛 阿修羅覇王拳
備考:特別枠 右心臓
状態:負傷は治療、悪ケミを護る
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)

補記。文中の騎士子はこの島にいる♀騎士とは別人であります。悪ケミスレからの出張ご苦労様なのであります。
331330sage :2006/03/19(日) 00:31:17 ID:4G.UTQ1A
悪ケミ補完と忍者追悼。
グラサンモンクを絡めて、首輪の話は次の人任せ。
心象風景ばかりで読みづらかったらごめんなさい。
おかしなところがあれば指摘をお願いします。

………悪ケミの性格おかしくないだろうか。
スレ住人じゃないから微妙に違っていたらごめんなさい。
332名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 01:53:44 ID:Ek9hgYOg
>>330
「1号は名誉の欠番」の所で目から汗がでそうになった。
悪ケミのペースに乗せられてるグラサンモンクもいいあんちゃんな感じで萌えるw
激しくGJですよー。

ちょっと気になった点を上げると、
・「撃退したじゃじゃない…」になっている所
・「黙りなさい!」の部分がちょっと読みにくいかな?と思った。いや言葉を被せる演出なのは重々解っているんですけどね。
333名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 06:45:55 ID:xoix1ScY
>>330
悪ケミ&グラサンモンクぐっじょぶ
へこたれっぱなしじゃないあたり非常に悪ケミらしくてよかった
でも自分も>>332の言った「黙りなさい!」の部分が気になったかも
「少年に亡骸を…」
「黙りなさい!」
くらいのほうが言葉をかぶせる表現としては一般的な書き方かな?

そういや容量的にそろそろ次スレの季節?
334名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 12:40:24 ID:dgQ6cEOs
>>330
なんというか、すごく悪ケミらしい、その一言に尽きる。
へこたれてももっと強く立ち上がるんだね。

>>スレ
330くらいの文章が2回投下されるとおそらく埋まりますな。
その前にテンプレとかの修正もあれば済ませたいけれど…
そろそろタイトルがネタ切れです orz ぼすけて
殺し合いは・止められない 加速する 尚続く 終わらない 佳境へ …
佳境の次にクるのってなんだろう。
殺し合いは・涙に濡れて 繰り返される 悲鳴の中で …ああだめだ格好イイノが出てこない
335名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 14:35:58 ID:POOmpUD.
>>326
同意。書きたいキャラだけ書いていいなら、私はこれからはそうします。
同じように24時間待つ物だとずっと思っていたので。
そのルールは勘違いだとわかりましたし、時間が戻るというのであれば進めてしまってもいいんでしょうから。
336名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 15:16:09 ID:8Rm192NE
容量的には、もう1話くらい大丈夫そうですが、余裕を見て次スレをおったてました。
いろいろあるとは思いますが、コーヒーでも飲んで落ち着きながら物語の行く末をワクテカしましょう。

【絶望と希望の】バトルROワイヤル 八冊目【狭間で】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1142748388/l50

>>334氏がタイトル考え中だったらスマソ
337名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 15:57:42 ID:NrGcmEMo
>>334
次は【Dead or alive】 【生死の狭間】 的なのはどうだろう?
338名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 16:09:18 ID:/WOz0zNU
>>336
スレ立て乙です
339名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 18:56:50 ID:NrGcmEMo
さて、毎度恒例かもしれない埋め&雑談タイムのご来光ですよ、と。
個人的には、ラッパァがこの七冊目のMVP。
第一回と違い、結構なハード路線の今作の清涼剤となりうるか!?

個人的には、そろそろ彼らにも行動原理を付与したい所であります。
後、微妙にギスギスしてる姉御PTも今後に注目、といった所。
参加者も残り少なくなって参りましたし、今後の躍進に注目。
340名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 19:17:24 ID:X5Mt/2k.
もう終わった議論っぽいけどキャラごとの進行に差が出ることについて。
あるキャラ(およびグループ)の話のみが進むことで問題になるのは、
・そのキャラに対する他のキャラからのリアクションが制限される
ex)夜の時点で無傷なキャラに、昼の話として戦闘で負傷させることはできない
・同様にそのキャラの行動を通じて他のキャラの状態が制限される
ex)あるキャラが夜に♂Wizと出会ったとしたら、♂Wizは夜まで生存しなくてはならず
  しかも夜にはその場所にいなくてはならない
・特に定時放送をはさむ場合は死亡者および禁止区域の問題で整合性が取りにくい

上は極端な例を挙げたが、時間軸の整合性が絡むと大抵問題が発生する。
しかし、実際問題として書きにくい、動かしにくいキャラと言うのもいると思う。
そうしたキャラが残った場合に誰がそれを書くかのお見合い状態になって
全体の進行が止まるというのもそれはそれで問題だし、だからといって
「書きたくないけど/ネタ思いつかないけど、話が進まないから書いてみた」
なんてので進んでしまうようになるとリレー小説として有益とは思えない。

明確に制限事項とするのではなく、自粛事項程度にしておくのがいいのではなかろうか。
・物語全体の時間軸の整合性に配慮して、特定のキャラの時間を進めすぎないこと。
・同じキャラに関しての話が連続することについては、連投規制に抵触しないならば
 制限はしないが、物語上の扱いで不公平感が出ない程度に配慮・自粛すること。
・この物語に明確な「主人公」は存在しない。えこひいきとならないよう配慮すること。
341名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 19:34:53 ID:GEksbXsk
>>340
まとめお疲れ様です。
本来、これらのことはリレー小説において当然のことだったりするわけですが、
なんか全体のことをあまり考えてない人がいるということに、すくなからず残念な気がします。
匿名掲示板だからしかたがないのかな、こういうのは。

自分以外の書き手さんのことや、全体の流れ、整合性を考えつつ、
それでいて良い文章が書けるように、そしてバトROワ2が良い結末を迎えられるように、切磋琢磨していきましょう。

>話が進まないから書いてみた
これはもう、そうしなければならないときもあるかと思います。
ただ何人かの書き手さんがそういうフォロー重視の動きをしてくれてますので、大丈夫じゃないでしょうか。


そして雑談タイム!
このスレのMVPは私的には♀マジvs♀アコ、竜虎相撃つをあげておきます。
いや、もうなんていうか、絵師さんの絵ともどもごちそうさまでした、と。

ベストバウトは忍者vs♂ローグですかね。忍者、かっこよかったぜ。
342名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/19(日) 21:08:49 ID:ixYfir8I
私は♂マジ(カイジ)ですかね。今まではかなり存在感がうすかったのに、
167のギャンブルで一気に開花したと思います。GJでしたね。

ベストバウトは私も341さんと同じで忍者vs♂ローグですね。
やられながらも、きちっとやるところはやっているってのが、非常によかったです。
343330sage :2006/03/19(日) 22:36:17 ID:AzzqvA9w
こそーり…
雑談タイムだからいいよね

ご指摘、ご感想ありがとうございます。
誤字およびわかりづらい表現、加えて自分で見直して気になった点も
Wikiに掲載された際に訂正させていただきたいと思います。

で、私としてのこのスレッドのMVPは「野良犬の往く先」ことレバ刺し。
がんばれグラリス、それでもあんたが一番星を挙げている。

ベストバウトは♂ローグVSふぁるですねー
だれかずぶぬれふぁる書いてくれないかなぁ
344名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/20(月) 10:06:47 ID:AwYw1thE
そういえば最近♂クルセが出てくることが多くなったので気になることが

彼ソードってもってましたっけ?
作者さんによってもあったりなかったりするみたいなのでどっちなのかなって
345名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/20(月) 13:00:05 ID:UQiPzRuc
>>344
♀ノービス&♂アサシン戦で♂アサシンに突き刺されたまま持ち逃げしたので持っているはずです。
忘れられてるかもしれませんが・・・・・・
346名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/20(月) 14:00:26 ID:6i503RuQ
こっそり忍者vs♂ローグにイピョーウ
347名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/20(月) 16:42:29 ID:Jfd8QEec
あと2KBか!と表示に目を走らせつつ、MVPにはラッパーを上げておきます。
黙示録の話が出たときにはなんのことやらと思いましたが、
完結間際になったら(というかラッパーの地位が確立されたら)第一回の逆毛と一緒のアナザーが読みたいですね。
ベストバウトは♂マジvs♂Wizをかな。基本マジ系好きなので。

八冊目に期待するのは気脱を手に入れた悪ケミや、雨上がりに捜索開始しそうなツンデレふぁるあたりでしょうか。
マーダラーで期待は今なら絶対にオートバーサークが使用可能な♂クルセ。
♀ケミの開花は…なさそうですねあいかわらず。
348名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/21(火) 21:41:36 ID:0NFc7CaI
埋め。
野良犬VS桃太郎を妄想。
まさしく血みどろの争いであーる。
黍団子は持ってない訳ですがー
349名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/21(火) 21:51:15 ID:KsV6D9hU
桃太郎って誰だい?野良犬は判った。グラリスだよね。
350名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/21(火) 21:59:38 ID:NUCK/4eY
鷹の肉団子を作ろうとした奴ならばいたわけだが。

桃太郎ってのはどんぶらこっこと流れていった♂クルセだろう
351名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/22(水) 00:24:13 ID:e51KTEAM
ああなるほど。そうやって想像すると可愛いな♂クルセ…いや憐れだな…
352名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/22(水) 05:46:11 ID:WCsh847U
では位置も名前も不明のこの島は『鬼ヶ島』ってことで?
しかし子デザとふぁるは居てもサルはいないですなw
353名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/22(水) 07:43:58 ID:7Nmg6.uQ
ちゃん様…いや、なんでもないです。はい。
354名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/23(木) 08:34:45 ID:7G/4NYAo
そろそろラストかな?色々問題にはなったけど♂WIZvs♀WIZに一票。♂WIZが悪カッチョイイw
355名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2006/03/23(木) 15:54:28 ID:kQUAJPaY
another story. 目覚め

首筋の冷たい感触は彼に避けられない死を感じさせた。
押し当てられたカタールの刃は命を奪う死神の鎌で、死神は彼の背後で、彼をあざけるように笑っていた。

「安いねぇ。あんたの命は安すぎるよ。そんな安物を買ったアタシはなんて不幸なんだろうね」

男が意外に思うほど、死神の声は美しくやわらかな女性の声だった。
抑揚にどこか底意地の悪さが見え隠れするあたり、この女はもしかするとひどく若いのかもしれない。
男はそう思った。

けれど男は後ろを振り向くこともできず、顔を確認することもできないので、しかたなく悪態をつくことにした。
どうせ自分の命は女の思うがままなのだ。いっそ怒らせて、憤怒の表情をさせて殺された方が幾分かは気も晴れよう。
気分が晴れたところで殺されるのだから意味はないということを考えないようにして、男は口を開いた。

「なんだ、アサシンってやつは殺すことよりもしゃべることに夢中になるものなのか?
 それともいつでも殺せるって立場に酔ってんのか? どっちにしてもたいしたアサシンじゃないな。
 俺がお前の立場だったらなにも言わせることなく即座に殺してるぜ。あんた、まぬけか?」

男の言葉を女はふっと鼻で笑った。
どんな大層な御託を並べるかと期待して、この程度の悪態しかでなかったことに女は自嘲したい気分になったのかもしれない。

「あんたもアサシンだってのに随分とまぁ行儀のいいアサシンだね。
 もっとアタシをゾクゾクさせてくれるような醜い罵倒の言葉を吐いてくれると期待したんだけど、残念だよ。
 あぁ、残念。こんなんじゃすこしも感じられないじゃないか」

男は───♂アサシンは───絶句した。どうやら相手の女は変わっているを通り越して変態だったらしい。
死を押し付けられた人間の今わの際に吐く罵詈雑言を期待するなんていうのは、悪趣味このうえないことだ。
それを言うとアサシンという職業自体はどうなのだという気もしなくもなかったが、とりあえず♂アサシンは閉口した。

「おや、だんまりかい。つれないねぇ。顔はサドっ気がありそうなわりに、心はマゾだったりするのかい?
 いいよ、それならそれで、すこしずつ切り刻んであげようかね」

直後、首に当てられていたカタールが放された。とんだ女の気まぐれに、これ幸いと♂アサシンは脱兎のごとく地面を蹴った。

「まだまだ元気じゃないか。うんうん、やる気じゅうぶん。そうでなくっちゃね」

ギィンとカタールがぶつかり合う金属音が響いた。そのたびに青白い火花がはじけ、夜の闇の中でわずかな灯りとなった。
♂アサシンの目がとらえた女の顔は、彼が想像した通りに、若かった。もしかすると自分より年下かもしれない。
そう思えるほど、戦っている女の顔は少女のもので、全体的に小さく、瞳だけがどんぐりのようにくりくりとして、かわいらしかった。
もっとも戦っている最中に相手のことをかわいらしいなどと思う余裕は、限りなくなかったのではあるが。

何合目になるかわからない回数カタールをぶつけ合って、♂アサシンは少女が自分に手加減をしているような気がした。
どうにも手ごたえらしい手ごたえがなく、うまくかわされているような気がしたのだ。
これには♂アサシンの心も少々平静さを乱した。

「お前、やっぱり自分の優位さに酔ってんじゃねぇか!」

語気を強くして、同時にカタールをすさまじいほどの高速で少女の体を目掛けて叩き込んだ。
少女は避ける。目覚しいほどの動きでカタールの八連攻撃を避ける。
そんなもの目を閉じたって避けられるさと少女のくりくりとした瞳が笑った。

あまりにあざやかにソニックブローを回避されたことで、♂アサシンの思考は逆に冷静さを取り戻した。
はっきりとまともにやりあったときの勝機のなさを実感したのだ。
とすると彼が生き延びるためにできることは、いかに上手く逃げるか、この一点に絞られた。

「───サイト」

♂アサシンがクローキングを使おうとした矢先に、少女はぼそりとそうつぶやいた。
♂アサシンがこのタイミングで暗闇にまぎれて逃げようとするなんてことを、少女はお見通しだったのだ。
♂アサシンが舌打つ暇もなく、目の前には少女のカタールが、その刃先が迫っていた。

それを紙一重のところで避けて、♂アサシンはふところに忍ばせていた石ころを投げつけた。
少女はカタールの柄ともいえる部分を使ってうまく石をはじくと、♂アサシンに向けて背中を向けた。

これも読まれてるのかよ、と♂アサシンは内心でびくついた。
彼はちょうどバックステップで逃げようと思ったところだった。しかしお互いが背を同じ方向に向けていたのでは、逃げ切ることはできそうにない。

(待てよ・・・・・・こっちに背中向けてるまぬけに逃げる必要なんてないじゃないか・・・・・・)

相手の無防備さに気がついたのか、♂アサシンは大きく跳躍し、少女の背中を袈裟斬りすべくカタールを振りかぶった。
いまだに少女は先ほど使ったサイトのせいでハイディングもクローキングも使えない状態だった。
つまりこの一撃を少女は避けることができない。♂アサシンは少女のまぬけさに感謝した。

ところが♂アサシンが斬りさいたのは、虚空だった。
まったくもって信じられない跳躍力だった。少女は♂アサシンの急襲すらも読み切って真上に高く飛び上がったのだ。
♂アサシンはまんまと罠にひっかかったのだ。

♂アサシンの頭上から少女のカタールが牙を剥いた。身軽なアサシンとはいっても全体重を乗せた攻撃だ。受けきれるものではない。
そう判断し、♂アサシンはいちかばちかの賭けに出た。少女のカタールが突きではなく、斬りであることに賭けたのだ。
咄嗟に伏せ、腹を地面にこすらせるようにして、♂アサシンは相手の攻撃が通過することを祈った。

風切り音を立てて♂アサシンの頭上をカタールの刃が通過した。♂アサシンの勘は的中したのだ。
四肢すべてを使って♂アサシンは後方に跳んだ。次の攻撃がくる前に体勢を立て直そうと思ったのだ。
ところが、二撃目は来なかった。
少女がなぜか、その場に立ちつくしていたのだ。

一瞬これなら逃げられると思ったが、♂アサシンはなぜか逃げなかった。
逃げるよりも攻撃の手を止めた理由を聞きたかったのだ。

「なんでそこで止めるんだ? お前はどうみたって俺より強いはずだぜ」

不満そうにこぼす♂アサシンの声を聞いて、少女はからからと笑った。
少女らしからぬ笑い方だった。

「やめだよ、やめやめ。あんたを殺すのは、いまはやめさ」
「どういうつもりだ?」
「どうもこうもないさ。アタシはね、未熟な果実は食べない主義なんだよ。よーく熟れて、甘くなってから食べるのが好きなのさ」

夜闇で表情はわからなかったため、♂アサシンは少女の真意を測り損ねていた。
そのことを敏感に察したのか、少女は回りくどい言い方をやめた。

「あんたがもうちょっと強くなったら殺そうって思っただけさ。あんたは強くなるよ。ちゃんと人を殺せるようになりさえすればね」

するどく刺すような口調に、♂アサシンは動揺するしかなかった。
自分が人を殺したことがないことを、彼女は看破していたのだ。そして、殺すことを覚えてこい、そう言ったのだ。

「アタシの依頼はね、いつまでたっても人を殺す依頼を受けようとしないあんたを始末しろってことだったのさ。
 好きな女のためだかなんだか知らないけどね。あんただってアサシンだろ、なにをうじうじしてんだい。
 一度殺しに手を染さえすれば、あんたは間違いなく強くなるよ」
「なるほどね、さすがにアサシンギルドのお偉いさんも、人を殺さないアサシンには厳しいってわけだ。
 それなら俺を殺す必要は、もうないぜ」
「どういうことだい?」
「俺はもう、彼女を守ってやる必要なんてなくなったのさ。彼女はあいつが守ってくれるからな。
 だから大丈夫、俺は人殺しを断らない。それであんたの依頼も終了だろ」

どこかふっきれたように話す♂アサシンの声は、さびしさとやさしさがまぜこぜになったような声だった。

「なんだ、つまんないねぇ。せっかくアタシがなぐさめてあげようと思ったのに、もう諦めがついてんじゃないか」
「ロリコンじゃあるまいし、年下には興味ないな」
「アタシが年下だと思ってるんなら間違いだよ。アタシは童顔なだけなんだからね。
 それにあんた、アタシのことまんざらでもないだろう? 戦ってる最中だってのにあんたがアタシを見る目は女を見る目だったじゃないか」

少女らしからぬ色付いた声を出す目の前のアサシンに、♂アサシンは言葉に詰まった。
図星だったのだ。
先ほどの戦いの中でサイトの炎越しに見た彼女に、♂アサシンが惹かれていたのは隠しようのない事実だった。

(おかしいな・・・・・・俺の好みは♀WIZみたいな、色香にあふれる大人な女性だったはずなんだが・・・・・・)

するすると近寄ってくる♀アサシンを、♂アサシンは牽制することができなかった。
気がつけば彼女は吐く息の音が聞こえそうな距離まで近づいており、♂アサシンの背中にはいつのまにか彼女の両手が回されていた。

「いろいろと鍛えてあげるよ。アサシンとしても、男としても、ね」

光のない夜、二つの影が一つに重なった。
まぁ、いいか、と♀アサシンのやわらかな唇の感触を♂アサシンは深く考えもせず堪能することにした。
これがまさかロリコンへの目覚めになることなど、このときの彼は夢にも思っていなかった。
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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