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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第10巻【燃え】
- 1名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/04(木) 03:50:14 ID:D9hvpvFY
- このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ【エロエロ?】』におながいします。
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ 感想は無いよりあった方が良いでつ。ちょっと思った事でも書いてくれると(・∀・)イイ!!
・ 文神を育てるのは読者でつ。建設的な否定を(;´Д`)人オナガイします。
▼リレールール
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リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
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※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。
前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第9巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1108197722/
スレルール
・ 板内共通ルール(http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoesub&key=1063859424&st=2&to=2&nofirst=true)
▼リレー小説ルール追記----------------------------------------------------------------------
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ リレーごとのローカルルールは、第一話を書いた人が決めてください。
(たとえば、行数限定リレーなどですね。)
--------------------------------------------------------------------------------------------
保管庫様
ttp://cgi.f38.aaacafe.ne.jp/~charlot/pukiwiki/pukiwiki.php
ttp://moo.ciao.jp/RO/hokan/top.html
- 2名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/04(木) 10:43:48 ID:ypl0nfTc
- 2げっとしてみる
- 3名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/04(木) 12:43:47 ID:WYnw30s.
- 3ゲット〜
- 4名無しさん(*´Д`)ハァハァSAGE :2005/08/04(木) 16:56:46 ID:ctl8tg1.
- ここが新スレけぇ・・・
なんともちんけな所じゃのう!
- 5名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/04(木) 22:52:28 ID:nLaeF63o
- だんなまだ一ケタ台ですぜ。面白くなるのはこれからですぜ。
- 6名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/08(月) 23:48:58 ID:k/p.xvQc
- 前スレとこっちとどっちに投下すりゃいいんだ……。
- 7名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/08(月) 23:55:00 ID:wuMTWdlk
- 長くなりそうならこっち、短編ならあっち。
- 8名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/11(木) 11:16:09 ID:JWwC7CNs
- はじめまして、
いつも読む側であったのですが、今回は書く側に回ってみようと
こそこそ小説を打ってみました。
ベタかもしれませんが師匠と弟子のお話です。
よろしければご観覧ください(_ _*
そして初の一桁ゲット(*´Д`)
- 98@なもなきソラのうたsage :2005/08/11(木) 11:18:24 ID:JWwC7CNs
- 乾いた風に、チョコレート色の長い髪が暴れる。
アーチャーの少女は一度髪を束ねなおすと、瞳を閉じた。
集中力を向上させ、自らの持てる最大限まで神経を研ぎ澄ますと、
おもむろにアーチャーは弓を構えた。
アメジストの瞳が捕らえるのは、エルメスプレートに咲き誇る
ジオグラファー。
炎の矢を矢筒から取り出し、アーチャーは一呼吸する。
「ダブルストレイフィング!」
弓から放たれた二本の矢が、ジオグラファーを射止めた。
聞き慣れたジオグラファーの奇声も気にとめず、更に矢を放っていく。
ジオグラファーが絶命すると同時、アーチャーの頭上で花火のような光が破裂した。
その出来事を一瞬では理解できなかったのか、アーチャーは息を整えながらしばらく立ちつくした。
「・・・・やった」
初めは遠慮深そうに、自分に確認するように。
やがて顔がほころび、笑顔が自然と溢れた。
「やったぁ!やっと転職だぁ!!」
ぴょんとその場で跳ねても喜びは収まらず、ついには枯れ葉の敷き詰める丘を
駆け下りた。
そんな彼女に足下への注意は行き届いてなかったようで、
「うわっ!?」
足を滑らせ、尻餅をついた。
そのまま、エルメスプレートの丘の真ん中でアーチャーは寝転がるように
空を見上げた。
澄み切ったスカイブルーが、「彼の人」の瞳を連想させる。
「やっと・・・・追いつけるんだ」
アーチャーが師匠と呼ぶハンターの青年とは、ここ数ヶ月彼女の自らの意思で
会っていない。
彼を思い出し、自然と頬が熱くなっているのに気付いた。
(あ、憧れなだけだもんっ)
勢いよく上半身を起こして、熱を振り払うように頭を振った。
すると髪についた落ち葉がはらりと風に舞う。
「早く転職して、驚かせなきゃ!」
紅い頬のまま、アーチャーは嬉しそうに微笑んだ。
- 108@なもなきソラのうたsage :2005/08/11(木) 11:21:23 ID:JWwC7CNs
- 「・・・・・むう」
鏡の前に映るのは、見慣れない姿の自分。
アーチャー・・・基、ハンターは肩を落とした。
鏡を見て、自分の身体を見下ろして、
(成長したいな・・・・・)
はぁ、と大きなため息をついた。
(天下大将軍いるし、とりあえずこの辺りでしばらくレベル上げしようかな)
ハンターギルドを抜けると、鬱蒼とした竹藪に揺れる木の棒の様な魔物、
天下大将軍を見つけた。
ハンターはすかさず使い慣れた弓を構えて、天下大将軍へと矢を放った。
「あれ?」
刺さった矢が二本であることに気づき、ハンターは首をかしげた。
「おっと、失敬」
竹藪の奥からがさりと物音が聞こえ、ようやく誰かとターゲットが
被ってしまっていたことに気付いた。
慌ててハンターは頭を下げた。
「あ、こちらこそすみません!」
「・・・お、転職したんだな」
「え?・・・・ああ!」
頭を上げて、ハンターは唖然とした。
琥珀色の髪、冬の空のような瞳、何よりも聞きたかった声。
彼女が師と呼ぶ青年そのものであった。
しかし、違和感が拭い切れない。
「し・・・・師匠・・・・?」
「何で疑問系なんだよ、顔忘れちまったのか?」
「そ、そんなことないです!だけど、その服装って・・・!」
ハンター、ではなかった。
メンズ用のアーチャーの服装、それも、一般に出回っているものとは
色合いが違う。
「あ、これ?転生したんだぜ、俺!」
屈託のない笑顔で師は言った。
一般的に言われる、冒険者としてのレベルの最高は99。
しかし現在はヴァルキリーの君臨により、彼らは再び新しい冒険者として
生まれ変わることが出来る。
世に言う、「転生」と言うものだ。
口では簡単にいえるものの、転生への道のりは激しく困難であることは、
ハンターも十分に理解している。
「おめでとう・・・・ございます」
「おめでたいのはお前だろ、ハンターに転職したんだしな」
ぽん、とハンターの頭に手を置く彼は、
服装の所為か何処となく幼く見える。
(追いつけたと思ったのに・・・)
風船が萎んでいくように、転職した喜びが萎んでいくようであった。
「そうだ、転職祝いあるんだよな」
ごそごそと鞄を探る師をハンターはぼんやりと見つめる。
本来ならもっと喜ばしいことであるのに、素直に喜べない自分が苛立たしい。
ふと暖かい掌が髪に触れて、ハンターは我にかえった。
弦を引くには細く長い彼の指が、ハンターの髪に何かを結わいていく。
硬直するハンターに気付く由もなく、続いて反対側にも。
「こ、これって・・・」
「転生追い込みの時、騎士団で拾ってさ」
目の端に映る、紅いリボン。
多くの少女たちが憧れる、ツインリボンであった。
騎士団にわずかにしか生息しないモンスター、アリスが落とすそれは、
ハンターの全財産をかけてでも手に入らないレアアイテムである。
「これなら頭装備の邪魔にもならないし、・・・って、どうしたんだよ!?」
目尻が熱くなっているのがわかった。
嬉しさ、寂しさ、色々なものが暖かい涙に変わって行く。
「ありがとうございます、師匠・・・それから、すみません・・・!」
「な、何故謝る!?ってか俺悪いことした!?寧ろそれ気に入らなかったか!?」
「と、とんでもないです!ただすごく嬉しくて、本当に嬉しくって・・・」
どうにか笑顔を作ろうとしても涙は止まらず、頬も引きつる。
ハンターの頭を、苦笑いを浮かべて師は撫でた。
暫くすると震えていた肩が静まる。
ハンターは顔を上げ、
「師匠、これからも・・・わたしの師匠でいてくれますか?」
涙を拭い、言った。
「当ったり前だろ、お前みたいな泣き虫じゃ世の中渡っていけないしな?」
ハンターの好きな、あの笑顔で彼は答えた。
泣き虫と言う言葉に恥ずかしさを覚えたが、ハンターは、
同じように笑顔を浮べ、頭を下げた。
「さてと、そんな訳で早速レベル上げするか」
俺に追いつかれんなよ?
ハンターの鼻をちょい、と指で押して師は言った。
彼の背を見て、ハンターは誓う。
いつか必ず追いつきたい。
そして、誰よりも彼を思い続けると。
- 118@あとがさsage :2005/08/11(木) 11:26:06 ID:JWwC7CNs
- 省略されてしまった・・・すみません。・゜・(ノД`)・゜・。
ではではッ。
- 12白髭sage :2005/08/12(金) 20:09:47 ID:OegY7t8U
- はじめまして。
>>8さん
師弟関係サイコー!
思わず応援したくなるハンタ娘さんに敬礼!
書きたいところがしっかりと書いてある感じで、読みやすかったです。
強いて何か言うとすれば、転職までの苦難の道のりを振り返る描写がちょっとあってもいいかな、という程度です。
一反木綿とか一反木綿とか一反木綿とか。
僕も今までROMでしたが、今日から脱ROMに挑戦します。
他の人の作品読んでたら、無性に書きたくなって適当にガーッってやっちゃった作品でも投下します。
慣れない萌えを狙いすぎて、逆に死んでます。
の代わりに、燃えのほうに力入れてます。燃えられるかどうかわかりませんが。
- 13白髭sage :2005/08/12(金) 20:10:15 ID:OegY7t8U
- 適当に登場人物とか用語
魔術師 ♂ Age:20前後・・・?
高等魔術師(ハイウィザード)
基本的に面倒臭がり。気難しかったりするが、以外に優しいところもなくはない。
若くして、プロンテラの宮廷魔導師を束ねる立場にまで上り詰めた。というか、成り行きで上り詰めてしまった。
惰眠を貪ることをこよなく愛する。
ニューイ ♂ Age:??
猫。魔術師の使い魔・・・?
普段は、主人と共に布団で寝ているか、主人の頭の上で寝ているかのどちらか。結局、いつも寝ている。
セレン ♀ Age:18
聖騎士(クルセイダー)
生真面目で強気。目標がある限り努力を惜しまない。
プロンテラ聖騎士隊に所属し、副隊長に任命された。
魔術師とは、彼が王宮魔導師として働き始めた時からの知り合い。
ビニット ♀ Age:??
下水前のカプラさん。
プタハ ♂ Age:52
鍛冶屋(ブラックスミス)
豪快なおじさんスミス。製造型だが、殴れるらしい。
王都プロンテラでひっそりと鍛冶に勤しんでいる。
プロンテラ宮廷魔導師
まんま。プロンテラの王室に仕える魔導師達。
マジシャン系の職業ならばこの役職に就くことが出来るが、いざという時のために、ある程度の魔法力が要求される。
普段は魔法書の解読や、魔法の新たな可能性の研究に勤しんでいる。
プロンテラ騎士隊・聖騎士隊
まんま。プロンテラの城を守るナイト、クルセイダーの集団。
別部隊になっているためか、いがみ合う隊員も多い。
主にテロの鎮圧などの場合に活躍する。
セージギルド
ジュノーに本部を置く、セージの団体。
シュバルツバルト王国や、ルーンミドガルズ王国の王室ともつながりがある。
普段やっていることはプロンテラの王宮魔導師達と同じだが、テロの際には発生原因や敵勢力の分析で活躍する。
- 14白髭sage :2005/08/12(金) 20:11:40 ID:OegY7t8U
- プロンテラ攻防戦 No.1 ―宮廷魔導師長
・・・うるさい。
朝、真っ先に意識を支配したのはその言葉だった。
そして、そこから次々と派生するマイナスイメージ満載の単語が、彼の意識を埋め尽くしていった。
(うるさい。暑い。ダルい。眠い。めんどい。)
真夏。
やや北寄りで、涼しい気候であるべきゲフェンの周辺は、異常なまでに暑かった。
ミンミンと鳴くこの季節の主役が、自分の存在をこれでもかというほど主張する。
モロクにいたらきっと蒸気になって天まで昇っていけるだろう。
そんな、ゲフェンの町外れのボロ屋の中、彼はまだ起き上がれないでいた。
目だけ開けて、何を思うわけでもなく天井を見つめる。
眠い。しかし、暑くて眠れない。
これが生き地獄なのだろうと悟ったのは、つい数日前のことだった。
(休暇を取っておいて正解だな。)
成り行きで、彼が宮廷魔導師を束ねる立場に立つことになってしまったのは、もうだいぶ前のことだった。
いつものように「面倒臭い」の一言で断れば良かったと、彼は今でも後悔している。
しかし、当時彼は、ワケあって無一文。生活のためにと就いた職だったが、待遇はなかなか良いのでそのままズルズルとその仕事をこなしていた。
待遇は良かったが、その多忙さは他の一般職とは比べ物にならないほどのものだった。
就役初日の宮廷総会議から始まって、王族との謁見、他部隊への挨拶回り、セージギルドと合同での魔法研究会など、息をつく暇もなかったのである。
夏に入り、ようやく大きな休暇を取ることが出来た彼にとって、この愛すべき休日が灼熱地獄になってしまったことは、幸運であり不運だった。
(もういい。寝る。)
しかし彼は、せっかくなのでこの休日を寝て過ごすことにした。
寝ているときは、何も考えなくていい。ただ、本能の赴くままに惰眠を貪ればいい。
そんな時間が、彼にとってはささやかな幸せだった。
が・・・
ドンドンドン!!
けたたましく戸を叩く音が鳴り響いた。
王宮に仕える身である彼にとって、借金取りというのは全く縁のない存在である。
(つまり、それ以外の要因が俺の安眠を妨げている)
彼は、眠りの世界から意識だけを取り戻し、冷静に状況を分析していた。
ドンドンドン!!
一向に鳴り止まない。
むしろ、叩く手に力が入ってきているように思われる。
このままでは、このオンボロ家屋の扉がダメになってしまう。そう思った彼は、渋々起き上がり、玄関まで歩いていった。
ガタン!
ドアを開け・・・
「帰れ。」
バタン
必要最低限の言葉で、どこぞの詐欺商人だか何だか知らん相手を追っ払って、いそいそと寝床に戻る。
「こら!閉めるなー!」
ドンドンドン!!
なにやら聞き覚えがないでもなさそうな少し高い声が聞こえたあと、またしても扉が外れる勢いで借金取りノックが始まった。
「ああ!うるせぇ!」
ガタン!
「何事だ。」
- 15白髭sage :2005/08/12(金) 20:12:17 ID:OegY7t8U
- どうしても帰ってくれそうにない相手に対し、目いっぱいの恨みを込めてガンを飛ばす。
「遅い!さっさと起きてよね。」
ドアの前で、青髪ロングヘアの聖騎士(クルセイダー)が膨れていた。
ガッシリと、重たそうな鎧で、腰には綺麗に磨きぬかれたサーベルを佩いている。
整った顔立ちの娘ではあったが、やはりその鎧と見比べると、やや不釣合いではあった。
むにっ
さり気なく質問をスルーされた魔術師は、表情一つ変えずに自分の頬をつねった。
それだけだとまだ不確かなので、前後に捻ったり横に引っ張ったりしてみた。
「・・・夢じゃないわよ。」
「なら幻か。」
ブン!
ガントレット付きの、文字通り"怒りの鉄拳"をかわされると、聖騎士は溜息をついた。
トンチンカンなことを言われ、拳で突っ込みを入れようとして避けられて溜息をつく。
まるきりいつものパターンだった。
「それで、俺の愛しい休日をどうしたいんだ?プロンテラ聖騎士隊 セレン=ラズワード副隊長さんよ」
魔術師は、いつにも増して不機嫌だった。
「首都で大規模なテロが起きたのよ。」
「そうか、せいぜい頑張ってくれ。俺は寝る。」
セレンはいたって真面目だったが、魔術師はなかなか手ごわいようだった。
何せ、先ほどから表情を全く変えない。
一種のポーカーフェイスと言われればそうかもしれないが、その表情と言葉が見事に一致する辺り、彼は筋金入りの怠け者だった。
「永遠に寝てみる・・・?」
いい加減、セレンも堪忍袋の尾がプツンと切れそうである。
黒い怒りオーラがジワリジワリと滲み出ている。
「今日のところは遠慮しておこう。暑くて眠れたもんじゃない。行くぞ。ニューイ。」
「なぁ〜。」
主人の変わりに布団の中で寝ていた黒猫が出てきた。
ヒョイ、と彼の頭の上に乗っかると、だらしなくそこにのしかかり、また目を閉じた。そのやる気のなさそうな様子は、やはり主人とそっくりだった。
暑くなかったら永遠に寝てたいのかという問いを、喉元でグッと押さえつけて、セレンは現状報告をした。
AM 7:34 首都中央噴水広場付近より、魔物発生
AM 7:46 駆けつけたプロンテラ騎士隊により、鎮圧
AM 7:47 首都南門付近より、魔物発生
AM 7:56 セージギルドの研究者が原因・勢力分析を開始。古木の枝と思われる木片が見つかる。
AM 8:00 深遠の騎士、キメラなど、高等魔族の存在を確認
AM 8:17 国王トリスタン3世が王都全域とその周辺に対し、避難勧告を発令
AM 8:35 現在。いまだ鎮圧せず
「ふん。情けない。もう発生から1時間も経ってるじゃないか。」
戦況はあまり芳しくないとのこと。なんとか王都騎士隊、聖騎士隊が持ちこたえ、城への侵入は防いでいるらしい。
「・・・で。」
セレンは、ペコペコの首に腕を絡めながらも、不機嫌そうな顔だった。
「どうしてあんたが私の後ろに乗ってるのよ!」
薄いオレンジ色の羽をした巨鳥、ペコペコにまたがるのは、ナイトやクルセイダーの専売特許だった。
が、最近では親しい間柄では二人乗りをすることも多くなってきているらしい。
セレン達は、今まさにその状態にあった。
「俺だけノンビリと歩いていくわけにも行くまい。」
そう言いながら、魔術師は何かの本を読んでいた。
勿論、振り落とされないようにセレンの腰に片腕を回して。
心なしか、セレンの頬が少し赤い気がした。
- 16白髭sage :2005/08/12(金) 20:13:00 ID:OegY7t8U
- 「さっきから、何読んでるの?」
何故かゲフェンの街に入らずにそのままミョルニール山脈沿いの道へと入った辺り。
魔術師は、熱心に・・・とまでは行かなくとも、ある程度真剣に本を読んでいた。
「ドラボンゴーレ。ライト=バードマウンテン作の名作漫画だ。」
「ま、漫画!?しかも古いし!」
大魔導師が読みふけるのだから、いったいどんな魔法書なのだろうと思っていたら、彼が読んでいるのは漫画だった。
20年も前に始まり、およそ10年強の間、老若男女問わず、人々の心を魅了してきた漫画である。
「古いなどと言うな。未来の世界のスモーキー型ロボットが爆裂波動の状態で指弾を連発しながらボンゴレを食べ歩くというこの斬新極まりないストーリーを一度読んでみろ。抱腹絶倒 隔靴掻痒(かっかそうよう)だぞ。」
斬新過ぎてわけがわからなかった。
「・・・もどかしい漫画なの?」
※隔靴掻痒 → 靴を隔てて痒い所をかくように、思うようにならなくて非常にもどかしいという意味
「買うのがもったいないというのなら貸してやる。ドラムタンクと癌ガムシリーズもあるぞ。」
そう言って、どこに隠し持っていたのかわからない漫画を2冊ほど取り出して見せる。
どうやら、彼は古い漫画が好きらしいということがわかった。
「遠慮しとく。私はまだ普通の人間でいたい。」
セレンは、何度目になるかわからない溜息を吐いた。
プロンテラ地下水道入り口付近
そこには、本来なら首都中央で商売をしているはずであろう商人達がひしめいていた。
普段、そんなに出番のなかったビニットが忙しく頭を下げている。
「ねぇ。」
セレンは、顔を赤らめながら小声で声をかけてきた。
「どうした。用を足すのなら5分だけ待ってやるが。」
ブン!
狭いペコペコの上でも、またしても拳をかわされてしまった。
器用に背中を反らせている。
「はぁ・・・。」
結局、呆れて物が言えなくなるパターンを繰り返すだけだった。
「その・・・そろそろ目的地だから、降りてくれない?」
流石に用件だけは伝えたかったらしい。セレンは恥ずかしそうに、下を向きながら小声で言った。
「もうそんな場所か。 せっかくいい所だったのに。」
魔術師は、割と残念そうにつぶやくと、面倒臭そうにペコから降りた。
草原に降り立ち、首都の城壁を眺める。
いつもと変わらぬ姿で、その高い城壁はそびえ立っていたが、その内側の、活気に満ちた空気は存在しなかった。
風が運んでくるのは、ドス黒い、邪悪な気配と血の匂いだけだった。
「い、いい所・・・?」
イマイチ、彼の言葉の意図が理解できなかったのだろう。セレンはオウム返しにたずねた。
「ああ。せっかくいい雰囲気だったのに、残念でならないな。続きは後でもいいんだが。」
普段の顔とあまり変わらないかもしれないが、彼は心底残念そうに溜息をついた。
「お前さんも若いんだな。」
そこに突然、ヌッと顔を出したのは、中年の鍛冶屋(ブラックスミス)だった。
緑がかった青い髪に、煤けた頭巾を巻いた男だった。
「プタハか。久しいな。」
「おう。まあ、俺はコイツを仕入れに来ただけだからな。後は若いモン同士で頑張りな。」
魔術師とプタハは知り合いらしかった。
プタハは、見るからに危なそうな赤い液体の入った瓶を見せると、よくわからないことを言ってさっさと去ってしまった。
(え!?何この展開!?どういうこと!?)
先ほどまでの二人乗りから、やや頭に血が上っていたセレンは、混乱し始めた。
「い、いい雰囲気とか、続きは後でもいいとかって、何の話・・・?」
思い切って、聞いてみる。声が裏返っている、ということは、彼女自身も理解していた。
「ああ、それか。せっかく、晩年やられキャラのナムチャが活躍しそうだったのにという話だ。」
「・・・へ?」
漫画の話だったらしい。
- 17白髭sage :2005/08/12(金) 20:13:21 ID:OegY7t8U
- そんな、のほほんとした雰囲気も城壁近くの木の陰に来たところですぐに張り詰めた。
プロンテラ西門の入り口には、これでもかというほどの、おびただしい数の魔物がひしめいていた。
「ごついミノタウロスが親玉か。それ以外はなんとかなりそうだけど・・・。」
セレンは、真剣に状況を分析していた。
見える限りで言えば、赤いミノタウロスとその取り巻き、それからエルダーウィローなどの下級モンスターがうろついているだけで、中央の赤ミノタウロスを除けば、楽に鎮圧できそうだった。
しかし、その赤いミノタウロスというのが曲者で、その手に持った大槌で殴られれば、よほど鍛えた者でなければ一瞬にして潰れたトマトと化してしまう。
「何をウダウダ迷っている。さっさと突撃しろ。」
セレンとは逆に、魔術師は単純だった。
「あ、あんたね!私だって、きちんと戦略考えてるんだから、いい加減な判断しないで!」
「ヘタの考え休むに似たり。」
魔術師は、小指で耳の穴をほじりながら、間髪入れずに突っ込んだ。
「な・・・っ!?」
怒りを隠せないセレンをよそに、魔術師は落ち着き払って言った。
「俺が後方支援してやるんだ。あの程度、秒殺できる。それに・・・。」
そう言って、魔術師は人込みのほうを見た。
「今この瞬間も、誰かがどこかで死んでいく。」
彼は、先ほどとはまるで別人のような顔だった。
無表情だったその顔が、自然に、変化に気付かないような変化ではあったけれど、寂しい表情になっていた。
「・・・わかったわよ。」
うつむいて溜息をつくと、セレンは門に向かってペコペコを走らせた。
ある程度距離が離れたところで、魔術師も駆け出した。
門番のミノタウロス達がセレンに気づき、槌を振り上げて襲い掛かってくる。
それほど動きが素早いわけでもないので、ペコペコを操りながらかわし、隙をついてはサーベルで斬りつける。
聖騎士隊の副隊長を務めるだけあって、彼女の動きは非常に洗練されていた。
重たい鎧を着けている、などということを全く感じさせないほど優雅で繊細な動作だった。
取り巻きのミノタウロスが苦戦していることを知ると、赤いミノタウロスが動き出した。
取り巻きよりも一回りほど体が大きく、しかもその巨体に似合わぬ速度で猛攻撃を仕掛けてくる。
「くっ・・・」
流石のセレンも、避けたり受け流したりで、防戦一方となってしまった。
このままでは、あの巨大ハンマーで薄焼き煎餅にされてしまうのも時間の問題だと思った、その瞬間だった。
「あっ!?」
親玉に気を取られていたセレンは、周囲のミノタウロスが魔法の詠唱を開始していたことに気がつかなかった。
気付いたときにはもう遅く、彼女の周辺の大地が激しく揺れて、その衝撃で彼女はペコペコから振り落とされてしまった。
「くはっ」
地面に強く叩きつけられ、ショックで呼吸器が一瞬おかしくなったような感覚に陥る。
その思考が停止した瞬間の隙に、親玉が大槌を振り下ろしてきた。
「オートガード!」
ガンッ!!
「っくぅ・・・!!」
なんとか、シールドでハンマーを受け止めるが、その力は並のものではなかった。
左腕全体が痺れ、痙攣を起こす。
もう、左手に盾を持つ力は残されていなかった。腕がダラリと、力なく垂れ下がる。
受身を取っていたので致命的な衝撃は免れたが、それでも危機的状況であることに変わりはなかった。
盾を見捨てて、なんとか次の追撃を避ける。
普段から慣れているとは言え、鎧は重たい。
直撃を受けるのも時間の問題だった。
―――我振るうは虚空より出でし白銀の刃・・・
後方から、明瞭な声が聞こえてくる。
それは、荘厳で重々しく、それでいて宇宙の神秘を感じさせる不思議な声だった。
静かに、それでいて高らかに響いたその詠唱は、次の瞬間、その力を解き放った。
「斬り刻め!ストームガスト!!」
ミノタウロスの大群のど真ん中から、猛烈な吹雪が起こった。
時にそれは、鋭い氷の刃を成して敵に斬りかかり、時に分厚い盾となってセレンの身を守った。
その大魔法、ストームガストの発動から僅か十数秒。ミノタウロス達は、凍えて息絶えてしまうか、もしくは氷漬けのオブジェと化していた。
「ふん。低級が。」
大魔法の使い手は、更なる魔法の詠唱へと移った。
彼の黒く長い髪は、全身から迸る魔力の波動によって荒々しく舞い、その漆黒の瞳には湧き上がる闘志が感じられた。
普段の、全てにおいてやる気のない彼からは、全く想像も出来ない、神々しい姿だった。
―――我招くは天を斬り裂く朱色(あけいろ)の雷撃・・・
「焼き払え!ロードオブヴァーミリオン!!」
激しい轟音が鳴り響いた。そして、その魔法の名の通り、バーミリオンの閃光が凍て付いた邪悪な存在を焼き尽くす。
眩しい光の合間から、時折魔物達の悶え苦しむ姿が見えるが、悲鳴はその轟音にかき消されてしまっていた。
そんな、魔物にとっての地獄絵図のような世界を前に、魔術師はただ悠然と立っていた。
表情一つ変えずに、自らが呼び出したその神秘の力を見つめていた。
十数秒続いたその巨大な魔法が終わると、先ほどまでいた魔物達は跡形も残っていなかった。
セレンは、ただその圧倒的光景に見とれているだけだった。
勿論、大魔法を見たのは初めてではなかったが、彼の場合は魔力が段違いだった。
「宮廷魔導師長は伊達じゃない、か。」
自然と、そんな言葉が漏れていた。
「ほれ、いつまでもお座りしてるな。闘いはこれからだぞ。」
そう言って振り返った彼の姿は、いつも以上に輝いて見えた。
続く・・・?
- 18白髭sage :2005/08/12(金) 20:15:26 ID:OegY7t8U
- ぎゃー!省略ごめんなさい。
作者の脳味噌に、言い訳属性が付与されました。
ごめんなさい。眠かったんです。
当方、最近不眠症でして、中盤とか(特に、プタハおじさん出てくる辺り)がやたら眠かったんです。
描写が穴だらけというか、俺ワールド全快で申し訳ないのですが、徐々に読める作品にしていけたらなと思います。
最初は一人称にしようと思ったんだ。でも、何故か神様視点で始めちまって、気がついたらここまでたどり着いてたんだ。
()とか、後から読むと割と不本意な部分が多いけど、この物臭主人公の視点で書いちゃうと全体が崩壊しそうで怖いし、後半の戦闘の部分がやや冷めそうだったので。
セレン視点でも良かったかもしれないけど、もう面倒なので投下。ぽい。
漫画のネタは、お察しください。大量印刷技術とか、そういうところには突っ込まないでくれると、ちょっと幸せな気分のまま眠れるかもしれません。
詠唱の初めの文字で、何を意識しているかわかっちゃう人って、結構多いんだろうなぁ。光の○刃! ・・・失礼しました。
かなりイタめの次回(嘘)予告
続くかどうかもわからないけど次回の予告さ!
西門から突入した魔術師とセレン(とペコと猫)。首都中央噴水広場は大変なことになっていた!?
プタハおじさん、あんた製造なのに殴れんの!? え!?しかもそれ、狂気POT!?血斧まで!?
次回 プロンテラ攻防戦 No.2
「首都内戦争 プロンテラを解放せよ」
「プタハおじさん キメラとタイマン」
の二本立てでお送りいたします!
・・・イタくてごめん。_| ̄|○ノシ
- 19名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/12(金) 21:45:33 ID:YBBCUf4.
- >>10
言いたいことが素直に書いてあって好感が持てる感じ。
いつまでも師匠とお揃いになれないハンタ子南無。
くどくなく、適度に想像しながらサクサク読み進められる話だと思った。
(この場合、読みやすい=サラっと読み終わっちゃうでもあるんだけど)
情景描写、説明がもうちょい増えるといいかなと思う…「あの笑顔」ってどれよ、みたいな。
>>14
話自体は普通に面白いのに>>13のだらだらある設定&説明文で読む気が萎えた。
(ので、飛ばして読んだわけなんだけど)>>13を読まなくても理解できたよ。
小ネタへの愛がかなり感じられた。たれ猫がナマモノだった衝撃の事実とか。笑ってしもた。
マンガネタも面白かったから、別にそこまで及び腰になるもんでもないかと。
引っかかったのは主人公が転生二次である必要があるのか、というか
作中の描写ではWIZでも問題なさそうだったんで。
まだ鎮圧戦は序盤のようだからこれからのハイウィズとしての活躍に期待。
あとひとつ言えるのは言い訳は男らしくないぞ。びびらず投下しなさいよ。
ああ…なんか偉そうな感想でごめんorz
- 20丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:41:06 ID:eNFH.EsM
- 閾値の低い文章ばっかり書いてるので、これを書くんだー、っていう
意気込みの詰まった>>8氏や>>14氏みたいな文章を見ると羨ましく思えます。
>>8
転職したときの喜びがダイレクトに伝わってきました。
単語の意味に頼らず感情を伝えるのって凄いと思います。
>>14
やはりクールな魔導師は素晴らしいな、と自分の認識を更新しました。
魔法の描写などを緻密にする力はあるんだから、それを言い訳や設定
の箇条書きに使っていては勿体ないと思うのですよ。
感想だけでは何なので中編投下。省略ご容赦。
- 21丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:48:16 ID:eNFH.EsM
- --右手に過去 左手に未来--
うららかな春の日差しがはしゃぎ回る子供達を照らしていた。
彼らの目には世界はいつも新しく、そして希望に満ちて見える。
三人の子供達はボールをお互いに投げあっているようだった。
どういった思いつきかボールを持って走り出した一人の子供が石に足を取られて転んだ。
その手を離れたボールは転々と転がりだし、子供は赤くすりむいた膝を押さえて
必死に涙をこらえていた。
ボールが転がった先には、一人の老人がいた。老人は左手に持っていた杖を落とすと、
ボールを手に取った。
「ルークや、独り占めをしようとしてはいかんぞ」
ボールを拾い上げた老人がゆっくりと子供に近寄った。
その足取りはおぼつかなかったが老人は杖を持たなかった。
老人には右手がなかった。ゆったりとした黒い衣には赤糸黄糸で刺繍がなされていたが、
右の袖はただだらんと空虚に垂れているだけ。袖に通っているのは左の骨張った手一本だった。
「ポール、ジョン、お前達も友達が怪我をしたのだから助けなさい」
その言葉を受け、遠巻きに気まずそうに見守っていた子供達も少し転んだ子に近寄った。
老人はしゃがみ込み、ボールを地面に置くと左手を子供の膝にかざした。
淡い緑色の光が彼の膝を包み込み、その光が薄れた頃には膝に傷はなく、砂がついている
だけになった。
子供は涙を浮かべた瞳で老人の顔を見上げた。老人の髪は既に白く、頭頂部の禿もそろそろ帽子
がカバーしきれない程度に広がっている。しかし、長く伸びた真っ白の眉の下には子供達と変わらぬ
好奇心旺盛な目があった。
「ほら、もう一度仲良く遊んできなさい」
そういって老人は目を細めた。皺だらけの顔も相まっていかにも好々爺といった感じだ。
子供が涙をぬぐうのを見ると、膝に当てていた手を伸ばし子供の頭をなでた。
老人はよっこらせ、とかけ声を上げて立ち上がると腰のあたりをさすりながら元いた場所へと向かった。
そして、杖を拾い上げると、白髪の間を抜けていくそよ風の感触に身を任せた。
「おじいさま、それにみんなー、ご飯の時間ですよー」
小鳥のさえずるような声、というと陳腐に過ぎるだろうか。凛と澄んだ高音が老人の背にかかった。
老人は深く息をついたまま動こうとはしなかった。
「おじいさま!ご・は・ん!!…もう、耳が遠いんだから…」
「大声をださぬともよいよ、ローザ。年寄りは動こうと思うてもすぐには動けんでな」
そう継げるとゆっくりときびすを返し、老人は石造りの建物の方へ歩み出した。
- 22丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:49:01 ID:eNFH.EsM
- プロンテラ第二孤児院、というのがその建物の書類上の名前であった。実際は、首都郊外の古い修道院
で身よりのない子供達と一人の老人が暮らしているだけにすぎない。その予算は教会から出ているとはいえ、
半分は寄付でまかなわれ、それでさえ裕福とは言えなかった。
オートミールとミルク、それに野菜を前にして孤児院のメンバーは全員椅子に座った。
「さ、みんな手は洗いましたか?じゃあお祈りを始めますよ」
一番年長格の子供が皆に指示を出した。年の頃は12かそこそこだろうか、子供達の中でただ一人、彼女
だけはアコライトのような服を着ていた。木綿で出来た簡素な服だったが、やはり教会が支給する物だけ
あって他の子供達の服よりは仕立てがよい。それなりに身だしなみにも気を遣っているのか、長い飴色の
髪は丁寧に梳られ、茶色のリボンで後ろにまとめられている。
「ローザや、それはよいがの、皆手は洗ったかの?」
長机の短辺、聖画を背にする位置に座った老人が髭の下に隠された口を開いた。
その様子を見てアコライトの少女があきれ気味に口をとがらせた。
「おじいさま、さっきそれは言いました!」
「そうじゃったかの」
そういう老人を無視して少女は祈りの文句を紡ぐ。その後を追うようにして幾重にも重なった子供達の
声が続く。食事を前にして浮き足立っているのだろうか、少し先行気味に唱えている声もある。
「では、いただきまーす!」
皆が一斉にスプーンを手に取り食事を口へとかき込む。老人は、いただきますだけでいいんじゃがな、と
つぶやくと左手にスプーンを持ち、もさもさと食事を始めた。
--
少女は椅子に座って黙々と聖書を読んでいた。外では子供達のはしゃぐ声が聞こえる。窓とは名ばかりの
ガラスのはまっていない石の隙間から日光が差し込み、部屋の中は適度に温かい。
少しまどろみそうになったところで少女は首を振り聖書に意識を集中した。
ドンドン、と板きれを張り合わせたみたいな扉が鳴った。少女は席を立ち扉へと向かった。
扉を開け、少女は差し込んできた影の長大さに驚いた。そこに立っていたのは戸口をくぐるのが難しいと
思われる偉丈夫だった。その顔には年齢と厳正さが刻み込まれ、身にまとわれた白銀の鎧は日の光を反射し
室内を照らした。逆光になって見えなかったがその後ろにはフードを目深に被った魔術師と一分の隙もなく
法衣を着こなした聖職者の姿があった。
- 23丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:49:36 ID:eNFH.EsM
- 「失礼、師父は、ファン神父はいらっしゃるかな?」
朗々とした声で問いかけられ、少女は一瞬その名前が意味するところを失念していた。
そしてその名前を持つ人物が片腕の老神父であることを思い出して返事を口にしたが
言葉を選ぶには少し時間が足りなかった。
「おじいさ…いえファン神父はお昼寝…お、おやすみになっておられます」
少女はちょっと振り返り老人が眠る寝室の方へと目線をやった。ご用ならば起こしてきます、と
言いたげなその動作に鎧の聖騎士は微笑むと具足で固められた手を振った。
「いやいや、いいのだ。お休みのところ失礼した。師父には悪ガキピーターとその仲間達が
訪ねてきたとお伝えくだされ」
聖騎士の言葉には威厳と言うよりも懐かしさのような物が多分にこもっていた。
聖騎士は振り返ると二、三事言葉を交わした。その中には残念、という意味の言葉が含まれていた。
「あ、あの、ピーター様、他にお伝えすることは…」
名残惜しさと懐かしさの混ざった彼らの顔色を悟って少女は言葉を継いだ。
しかし、聖騎士とその一行は丁重に辞去の礼を尽くすとそのまま去っていってしまった。
少女は白昼夢でも見たようにその場にしばらく立ちつくしていたが、席に戻ると再び聖書に目を移した。
しかし、どうにも集中できず視線は泳ぐし、冬ならば冷たいすきま風もこの春には心地よいそよ風である。
程なくして、椅子の上からすぅすぅという小さな寝息が聞こえてきた。
--
- 24丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:49:58 ID:eNFH.EsM
- 夢を見ていた。遠い遠い過去の夢を。しかしそれは今に非常に近かったかもしれない。
青年は小山のような何かに相対していた。何かは巨大な蹄を踏みしめ、何とも嫌な低音で笑った。
ひとしきり笑うとそいつはなぜか青年をたたえる言葉を吐いた。そして鎌が振るわれた。
青年は風のような物が肩を通り過ぎていくのを感じた。
そして引き延ばされた時間の中、
力無くのばされた青年の腕は、
肩口のところで切断され、
空中で放埒な軌道を描き、
断面から髄液と血とを振りまきながら、
ぼとり、と地面に落ち、
その骨の白さが鮮やかだった。
- 25丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:50:34 ID:eNFH.EsM
- --
びっしょりと背中に汗をかき、老人は粗末なベッドの上に身を起こした。左手で水差しを引き寄せ
乱暴にその吸い口から水を涸れた喉に流し込んだ。喉を鳴らそうにも引きつって正常に受け付けない。
老人は咽せた。口の中にあった水が木綿のシーツを濡らし、白いあごひげに水滴を作った。
ひゅーひゅーと肺が空気を求め、喉が痙攣して異物を吐き出そうとした。
そうやってひとしきり咽せていると、その声に気づいたのか少女が飛び込んできた。
「おじいさま、大丈夫ですか、おじいさま!」
声も出せないまま、老人は左手を前にかざし少女を制した。
それから三分間、少女に背中をさすられ続けようやっと老人は言葉を紡ぐことが出来た。
「ただちょっと水を飲もうと思うてな。歳は取りたくないものじゃな…水すら自由に飲めのうなる」
「なら、いいんですけど…。おじいさまももう歳なんですし気をつけてください!」
そういって少女はベッドの横にあった椅子を立って扉へ向かった。そのほんの僅かな距離の間
何度も何度も老人を振り返った。そして扉に手を掛けてもう一回振り返り思い出したように
口を開いた。
「そういえば、先ほどピーター様という方がいらっしゃって…おじいさまはお休みですと
伝えたところお帰りになられました。それで、ええっと…悪ガキピーターとその仲間達が
挨拶に来た、と。」
「ほう、そうじゃったかの。応対ご苦労じゃった。はてさて、ピーターとな…誰じゃったかのう…」
答える老人の声に、咽せたのとはまた別の強張りがあったことを知らぬまま、
少女は老人の部屋を後にした。
- 26丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:51:21 ID:eNFH.EsM
- --
その夜は獣の鳴く声が聞こえなかった。それだけなら良いのだが、こう空気が粘り着くような感触を
帯びていてその静けささえ何とも不吉に感じられた。
何となく寝苦しさを感じ寝返りを打った少女はかすかな明かりが寝室の戸口から差し込んでいるのに気づいた。
下で寝ている彼女の「兄弟」たちを起こさぬようにゆっくりと二段ベッドのはしごを下りると、
彼女はぺたぺたとスリッパを鳴らしながら部屋の外に出た。それは用でも足して心を入れ替え、
ぐっすり眠ろうと思ってのことだったが、心のどこかに明かりに対する好奇心があったのも事実だった。
トイレに向かう曲がり角を曲がると、明かりが漏れている部屋がわかった。そこはこの修道院の礼拝堂
だった。少女は疑問を感じた。なぜこの時間にここに明かりがともっているのだろう。もしかしたら泥棒
とかじゃないだろうか、と。
春の夜独特の寒気を感じて少女は夜着の胸元を押さえた。そして、礼拝堂の入り口からそうっと
顔だけを出し、中の様子をうかがった。
礼拝堂では月明かりに照らされ、天窓の十字架型の桟が石床にその影を落としていた。
そして講壇の上にはカンテラが一つ置かれ、その元で一人の人物がうずくまっていた。
その背の曲がり方が彼女のよく知る人物の物であることに気づき、少女は安堵した。
そしてぺたぺたと礼拝堂の中に入っていった。
老人は少女が近づいてくるのに気づき、顔を上げた。
「どうしたね、ローザ。こんな遅い時間に」
- 27丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:51:48 ID:eNFH.EsM
- 「おじいさま、なんか私眠れなくて」
少女は目をこすり、老人を見つめた。そして、老人が彼女の知らない服を着ていることに気づいた。
真っ白な、いや銀色の長い服。その胸元には金色の十字架が刺繍されていた。
裾はだらりと床まで垂れ、首の周りには長いこれまた銀色の襟巻きが巻かれている。
そして何より…その服はあらかじめ右腕の部分が作られていなかった。
よく見れば老人がついている杖もいつもの古ぼけた木の棒ではなく、青みを帯びた金属で出来、
先に宝玉のはまった棒だった。
「おじいさま…どこかにお出かけになるのですか?そんな立派な服をお召しになって…」
「それは…」
老人は少しためらうように言葉を切った後、左手の人差し指をたてた。骨に皮が張りついて
いるだけのその指を皺だらけの唇に当てると、老人は目にいたずらっぽい光を浮かべて言った。
「それは、ひ・み・つ、じゃ。ふぉふぉふぉ」
「おじいさま…」
老人はゆっくりと少女をかき抱いた。銀色の服に抱かれて、少女は樟脳の臭いに鼻をならした。
老人はしばらくそうやって少女を抱きしめた後、下ろされた彼女の長髪を骨張った指でなでると
体を離し、語りかけた。
「さぁ、ローザよ。よい子はもうとっくに寝ておる時間じゃぞ。早く寝ないと怖い物がきてしまう」
「もぅ、子供じゃないんですから」
ぶりぶりと不機嫌さをあらわにしてからやっぱり眠い目をこすり、ローザは来たときのように
ぺたぺたと足音をさせ礼拝堂を出て行った。
その足音が石の廊下の向こうに消えた後、老人はそっとつぶやいた。
「ピーター、トーマス、サイモン…最後に会ってやれず…済まぬな。
儂が奴を葬っておれば…こんなことには…」
そして、老人は礼拝堂を出て外に向かった。
- 28丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:52:22 ID:eNFH.EsM
- 少女は寝室に戻るとスリッパを脱ぎ、そっと着替えの置いてある居室に向かった。
少女はあのまま寝室に戻り、そのまま寝るだなんて気はさらさら無かった。
大人びた振りをしては見るけれどやはり彼女も好奇心旺盛な子供。老人が夜にどこか秘密の場所へ出かける。
それを追うのはなんともわくわくする冒険だった。
彼女の頭の中には神様や何かと同列に妖精がいて、夜の森でダンスを踊っているのだ。
ともすればあの老人は魔法使いと言った風貌がぴったりではなかろうか。
もっとも、そんな解釈を人前で言えば口をふさがれる。どれだけ老いてもあの老人は聖職者。
それが魔法使いだなんてあまりにも不謹慎に過ぎた。
だがしかし、そんな幻想でも少女に老人の後をつけさせるには十分だった。
わくわくと心を躍らせ、少女は鞄にいろいろ詰め込んだ。拾ったハーブ、柔らかい毛、牛乳、バナナ。
アコライトになったときにもらったメイスを握りしめ、中身の詰まった鞄を背負うと、少女は息を殺して
老人の靴音を待った。
こつ、こつ、こつ、と杖が石床を叩く音が聞こえた。少女は音をさせないように廊下にでると、
背を曲げ手を曲げ、まるで猫が二本足で歩くみたいにして老人の跡をつけた。
老人は礼拝堂を出て外に向かった。老人の背が月明かりに照らされ、北の森へ向かっていくのを
見て、少女の心は躍った。
北の森は大人達が近づくのを厳しく咎める禁断の地。そこへこんな夜に行くのだからこれは
凄い冒険だ。恐怖とそれに負けない好奇心を持って、少女は北の森へ向かった。
--
老人は知っていた。最近悪魔討伐の軍勢が組まれたことを。
老人は知っていた。それが如何に絶望的な軍勢であったかを。
老人は知っていた。その指揮官がこの孤児院の出身であったことを。
だから、老人は少女の報告で気づいた。死兵として戦地に赴く彼らが、出撃前に自分のところに
尋ねてきたことを。
そして老人は知っていた。その悪魔が、彼の右腕を奪ったことを。
--
- 29丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:53:08 ID:eNFH.EsM
- 夜の森は酸鼻を極めた。あちこちに血や人間の部分が散らばっている。低木は血を浴びて
その重さに枝をかがめ、高木は白い樹肉も露わになぎ倒されていた。
まるでそこに嵐が通り、通り道の人間を全て引き裂いていったようだ。
そして時々現れるクレーターとも言うべき草木のない空間。
この森で生きて動く物は今や老人だけであった。
一人の壮年の魔術師が木にその背をもたせかけて絶命していた。その胸からは折れた木の枝が
突き出し、その折れた面にはどす黒い血が粘っこく溜まっていた。
彼の遺骸の前で老人は立ち止まって瞑目すると、嗄れた肺から言葉を吐き出した。
「サイモン…お前は人一倍賢い子じゃったなぁ」
老人は杖を持ったまま十字を切るとゆっくりと歩くのを再開した。その長い衣が血に汚れる
のも気にせず、老人は何かに引き寄せられるように森を歩んでいった。
その靴に敷かれた小枝が音を立てる。だがそれに反応して動く獣の音はない。
この死臭にもっとも敏感な虫たちでさえ、その出現をためらっているようだった。
老人がしばらく歩くと、一人の聖職者が横たわっていた。その顔には苦悶の表情を貼り付けたまま
体が上下に両断されていた。誰かを助けようと思ったのか、それとも逃げようと思ったのか、
上半身だけではいずった後があった。
老人はその長衣の裾が血と泥で汚れることもいとわず、聖職者の上半身へと近づいた。
「トーマス…お前が聖職者になると決めたときは儂も驚いた」
かがんでその目を閉じさせると、老人は再び十字を切って歩き出した。森の奥へ奥へと。
そうして歩みをすすめるたび、周りの空気が粘度を上げていく。かつてその身に何度も感じた
障気という感触。肌でそれを感じつつ、老人は障気の濃い方へ濃い方へと足を引きずって歩いた。
途中、老人は何度も何度も、かさかさになった唇を噛み締めて血で湿らせた。
- 30丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:53:47 ID:eNFH.EsM
- --
こんなはずじゃなかった。少女は何度もその言葉を口にした。涙が出て、体が震えて、それでも
少女は戻ることが出来なかった。そして少女は恐ろしい事実に気づいた。それに気づきたくないように
首を振っても事実は重みをましてのしかかってくる。
楽しいアドベンチャーは恐怖の彷徨へと変わった。握りしめたメイスは自分の汗でぬるぬると滑っていた。
彼女は、この死体だらけの夜の森の中で、一人迷っていた。
それが、どれだけ恐ろしいことだろうか。それも生半可な死体ではない。そのほとんどが悲惨な
離断遺体だ。先を行く老人も見失い、後に戻る道もわからない。人間のような物が一瞬見えて
道を聞こうと脇を向くと首だけが冗談のように転がってたりする。
耳に聞こえるのは自分のすすり泣く声だけ。喉には灼けつくような感触。鼻には鉄臭くて生臭い血の香り。
靴の裏に柔らかい感触があるたび泣きたくなる。月明かりに照らされた色彩は濃赤。それが葉の緑と
相まって黒く映る。
ただ少女にとって幸せだったのはそこで感覚が麻痺してしまったことだった。怖さと心細さが上限に達し
ある意味鈍感になった少女は夜の森を彷徨った。
「おじいさま…ひっく…おじいさま…」
涙で顔をくしゃくしゃにし、ひりつく喉で繰り返しながら少女は歩いた。そうしていつの間にか
草のない空間で彼女は初めて自分以外の声を聞いた。
「う…うう…」
月にてらされた惨劇の広場には、銀色の鎧が横たわっていた。
しかし、ありとあらゆる隙間から血がしみ出し、それはもはや赤い鎧となっていた。
そして鎧からのぞく顔をみて、少女はひときわ強く手を握った。
その顔は果たして少女の見覚えのある顔、昼間訪ねてきた聖騎士の顔であった。
少女は一段強くすすり上げると、嗚咽に混じって言葉をだした。
「ひっく…ピーター…ううぅ…ピーター様…ひっ…どうして、こんな…」
「うう…その声は…ああ、もはや目が見えぬ」
全ての血が流れ出してしまった体がそんな色になるのだろうか。聖騎士の顔の色は灰色だった。
聖職者として駆け出しの少女にとっても、その聖騎士が助からないことはすぐにわかった。
「なぜ…君が…ここにいる…かは知らないが…戻…た…うがいい…。バ…フォメ…」
残された時間に全てを注ごうと必死に聖騎士は呼吸を継いだ。少女はただ、胸元を握りしめその場
に立ちつくして涙をこぼすことしかできなかった。
- 31丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:54:16 ID:eNFH.EsM
- 「道に…ひっぅ…迷ったんです…おじいさまを…ぐずっ…追ってきたのに」
「そうか…さっき師父の声を聞…た…きっと向…うに…行っ…と思う」
がちゃり、と最後の力を振り絞って聖騎士は腕を持ち上げた。少女は鼻水をすすり上げ食い入るような
目つきでその指さす方を見詰めた。具足の隙間から血がぼたぼたと落ち、落ち葉の上に付着した。
聖騎士は見えぬ目を少女に向けた。そして口の角に血の泡を溜めつつ、切れ切れに祈りの文句を継いだ。
「君の…無事を祈っ…いる。…生きて…れ…。君に…神の加護…を…P.o..vi..d..n..ce」
がしゃん、と大きな音を立てて聖騎士の腕が落ちた。そしてもうその腕は動かない。
少女は胸元のリボンを強く握った。そして、少女はこの森に来てから初めて、自分のため以外に
声を上げて泣いた。
--
周りの木がなぎ倒され、即席の広場となった場所に老人はたどり着いた。そしてその中心に
小山のような物があることに気づくと、老人は歩みを止めた。
「まだ…残っていたか人間め」
小山が震えた。そしてそれはゆっくりと体を起こした。毛むくじゃらの脚とその先についた蹄、
頭の上で禍々しく渦を巻く角。そしてどんな硬玉よりも貪欲に紅く光るその目。
バフォメともバフォメットと呼ばれる異教の神がそこにいた。
だがしかし、それに魔王たる物が残されているとすればそれは貫禄だけであった。
あれだけ多くの人間を引きちぎり、鏖殺した大悪魔も、彼らの必死の抵抗で大きな傷を負っていた。
左腕は引きちぎれ毛皮は焼けただれ、右の腿は炭化してさえいる。胸板には十本を超える武器が突
き刺さり矢の数に至っては数えることが出来ない。自慢の角さえも右側は砕け、左目は白く濁っていた。
悪魔討伐隊が絶望的な軍勢だったとすれば、聖騎士達の活躍は目も見張るものであったことだろう。
ただ、その栄誉を生きて受ける人間はいなかったと言うことだが。
そしてその口から怨嗟の声と唾液を垂れ流し、満身創痍の大悪魔は老人の方を見やった。
悪魔は口を歪めると連続して短い息を吐いた。どうやら笑うつもりだったらしい。
「なるほどな…因果は巡ると言うことか。」
「そのようじゃの」
「ほんの三、四十年前だと言うに…老いたな…命短き人の子よ…」
- 32丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:54:49 ID:eNFH.EsM
- --
その異形は小綺麗な郊外の修道院にはあまりに似つかわしくなかった。禍々しき魔の都ならまだしも、
人間の住む場所でそれが似合う場所などありはしない。毛むくじゃらの足には蹄、むき出しの胸には剛毛、
禍々しい顔には曲がった角。大悪魔バフォメットは、怒りに染まった紅い目で修道院を睥睨していた。
その紅玉髄の瞳に映るのは一塊りになってすすり泣きをこらえる子供達と、それに覆い被さるよう
にしてやはり必死で涙をこらえる女性。そして、敢然と立ちはだかった一人の青年。
「悪魔め、何が目的だ」
刺繍のかかった黒い服を着て、青年は怒気をはらんだ口調で物怖じせず悪魔に問うた。
それに答えようと悪魔が息を吸い、吐くたびに後ろの無防備な人間はその身を固くした。
「我の領地を侵したものを皆殺しにしようというだけ…」
腹の底から恐怖をくすぐるような重低音が響いた。その重低音で皆が凍り付く中、よりいっそうその身を縮めた
子供がいた。名をピーターというその子供が禁じられた北の森へと踏み込んだのが全ての発端だった。
彼にとっては好奇心からの行動だったが、森の主バフォメットにはそうは映らなかったようだ。
「貴様の森に踏み込んだのは何人だ」
「一人」
生きた心地がしない、というのはこういう事なのだろう。ピーターは泣くことも出来ず己の腕
をきつく抱きしめた。抱きしめた空間の空気一粒さえも全て絞り出してしまうように、きつく
きつく抱きしめた。
青年はふるえる子供達を振り返ることなく、ただ一心に悪魔の目をにらみ続けた。
「ならばなぜ皆殺しにしようとする」
「我の怒りが収まらぬから、では不足か」
威嚇するような悪魔の声は、その語尾に至っては咆吼と同義だった。
答えを出したとき、青年の口の端に笑みが浮かんだように見えた。彼がこの孤児院に現れてから
何度も見せた笑み。生を諦めたような危なっかしいその笑みに、子供達を慰めていた女は強い
不安を抱いた。彼女が密かに思慕していたこの青年が、紙くずを放るように命を捨ててしまうの
ではないかと。
- 33丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:55:22 ID:eNFH.EsM
- 「この右手で、怒りを収めてもらいたい」
青年はまっすぐにしかし力を抜いて右手を横に伸ばした。ともすれば無防備なその姿勢に、
大悪魔はすこし息を止めると、天も抜けるかのような重低音の哄笑を上げた。
「わっははははは…人間よ。この我と取引をしようとな!?自惚れるのも大概にするが良い。
汝が如何に高位の聖職者だろうとも命で我の怒りを鎮めることは叶わぬ。しかも、命でさえ
酔狂というに右手とな!」
「だが、俺がこの命を出せば、貴様は俺を殺した後彼女らを殺すかもしれん。だが、右腕ならば
俺はこの取引を最後まで正当な物に出来る。」
青年は左手を懐から抜いた。その五本の指の間には四つの青い宝玉が輝いていた。
その輝きに悪魔は紅い山羊の目を細めた。
「もしも、そうもしもだ。我が汝の右腕を奪い、しかる後にそこにいる連中を殺そうとしたら
どうするというのだ?」
「その時こそ、命を捨てるまでだ。…貴様もこれが何かわかるだろう。貴様は俺を殺すことが
出来るかもしれんが、こっちは必死で抵抗させてもらう。如何に貴様が大悪魔とは言え、
『あれ』は痛いだろう?」
ずん、と大悪魔は巨大な蹄を地面に打ち付けた。そして体をかがめると腹の底から、今度こそ
耳が砕けんばかりの笑い声を上げた。
「ふ、ふあはははははは!!面白い、面白いぞ。人間よ。汝は剛胆だ。それに頭も回る。
そのような逸材によもやこんなところで会えるとはな。よかろうよかろう。怒りも消えたわ。
その取引、受けてやろう」
悪魔の大鎌が目にもとまらぬ早さで一閃された。
- 34丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:55:48 ID:eNFH.EsM
- --
大悪魔はごぅ、と大きく息をつくとゆっくりと喋り始めた。
「だがしかし人間よ…汝は何のために我のまえに立ちはだかる」
「儂の可愛い子供達が貴様に痛い目に遭わされたそうなのでな…。」
老人は左手に持っていた杖を腰に吊るし、空いた左手を懐に入れた。そして懐から手を抜き出すと
その手には青くてごつごつとした鉱石が一つ、握られていた。
その様子を紅い隻眼で見届けると、再び大悪魔は短い息を連続して吐いた。そして右手に抱えた大鎌の柄に
すがると、ゆっくり体を起こした。そして、まるで戦太鼓の響きがそうであるように右足、左足、と
蹄を交互に地面に打ち付けた。
「笑止!!人間ごときがいくら手負いとはいえこの我を殺せると思うてか!!」
「それは、試してみねばわからぬぞ」
ふぅ、と風が揺らいだ。老人の眼光はもはや好々爺のものではない。月明かりを吸収し
た目が長い眉の下で炯々と青く光っている。その眼光に射抜かれ、大悪魔は嬉しそうに口の端を歪めた。
「不浄なるもの入るあたわず…Sanctuary!!」
しわがれ声の一喝と共に放たれた宝石が、嚆矢となった。どこにそんな体力が残っているのか、大悪魔は
真後ろに飛び跳ねた。先ほどまで大悪魔がいた空間に緑色の柱が上がる。飛び退いた際に最後まで残っていた
右の蹄がその光に触れ、ちりちりと煙を上げた。そこは大悪魔もさるもの、瞬時に大鎌を振るい、
老人を両断する軌跡で刃が迫る。とっさに後ずさった老人だったが刃はその胸の深くえぐった。
「むぅっ…」
しかし、緑色の光に触れた瞬間、嘘のように老人の傷はふさがっていく。ぱっくりと口を開けた
傷口が、まるでファスナーでも閉じるかのようにに接合されていった。
そして挙げ句の果てには服までも繊維を絡め合い、その傷を消し去った。
「聖衣か…これはまた上等な死に装束よの…」
振り切ったはずの大鎌はいつの間にやら一回転しその刃先を月光に煌めかせた。
今度は斜め上から大鎌が迫る。後ずさりや横飛びで回避できるレンジの攻撃ではない。
「十二聖人の加護を…Safety-Wall!!」
瞬時に展開された薄紫色の薄片がひとつ、老人の頭上で砕け散った。残る十一枚の薄片が
老人の周囲を飛び交い、飛んでくる大鎌の一撃ごとに砕け散っていく。そうして後ろに移動しながら
老人は聖域と守護防壁を連続して展開した。老人に攻撃を加えようとするならば聖域に身を焼かれる
ことになる。バフォメットは身を離し、老人を見据えた。
- 35丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:56:30 ID:eNFH.EsM
- 「緋の王に命ず…確たる滅びを与えよ…」
直後、老人の足下に巨大な円形の魔法陣が展開された。森のあちこちに不毛の地を作り出した最強魔法。
その土地に草木が芽吹くことは永遠にないのかもしれない。それほどまでの強大な破壊力、
「核の力」がもたらす圧倒的な破壊の前にはいかなる防御手段も無効と化す。その呪いの名は…
「Lord-of-Vermilion!!」
「Teleport!!」
間一髪、空に消えた老人の前に閃光と共に高エネルギーの壁が盛り上がった。
瞬時にして草が土が潜んでいた虫が分解され、熱の奔流の中に消えていく。
陽炎を挟んで二人が再び相対したとき、先ほどまでの広場の中心にはクレーターが広がっていた。
その中心は未だ焦れた熱を持って赤く、冷え始めた辺縁部はきらきらと輝いていた。
岩石の主成分たる珪素がすさまじい高温で溶かされ、ガラス化されたのだ。
「興ざめよ。あのとき一瞬とは言え我を怯えさせた男がこの程度とは…。」
全身の傷や火傷も気にせず、大悪魔は勝ち誇った。対する老人は杖をつき、それに縋るようにして
立っていた。
「やはり…歳は取りたくないのう…。全力は一分も持たぬか…。」
展開された聖域と守護防壁の中、老人はがくりと膝をついた。細りきった喉からは息だけが
空しく出し入れされ、必要な酸素は入ってこない。全身を冷や汗が伝い、立っているのもままならぬ
めまいが老人を襲った。
その様子を見て、大悪魔は息をつき言葉を発した。
「違うな。歳などではない。汝の目的が復讐などという物である限り、我を倒すことは叶わぬ。
あのとき我を怯えさせたのは汝の気迫。何者かを守るという必死の気迫よ。」
そういって大悪魔が鎌を大きく振りかぶったとき、広場に高い声が響いた。
「おじいさまっ!!」
瞬時に老人の姿がかき消え、次に現れたときには老人は少女をその胸にかばっていた。
少女は老人のただならぬ様子、そして向こうに控える悪魔を見て、ひしとその胸にしがみついた。
老人は左手一本で器用に三つの宝石をつかむと、地面へと投げつけた。
投げつけた場所から瞬時に展開される聖域と二つの守護防壁。老人と少女にはその緑色の光越しに悪魔が
にやりと笑うのが見えた。
「おじいさま!おじいさま!」
防壁の中で少女はただただ、老人の衣に顔をこすりつけて涙をぬぐった。こんな地獄の底にたった一人で来て、
たった一人で彷徨って、どれだけ怖い思いをしてきただろうか。老人はそれを知っていたからこそ、
少女に声を掛けることをせず、するがままにさせていた。少女が泣きやむと老人は出かける前にそうしたように
ゆっくりと少女の髪をなでた。
- 36丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:57:06 ID:eNFH.EsM
- 「ローザよ。すまなんだ、本当にすまなんだ…。きっぱり『来るな』と言うべきじゃったな、
怖い思いをさせてしもうた。なぁんにも悪うないお前に…すまん、すまんなぁ…。
もう大丈夫じゃ。怖いこと無い。儂がここにおる。」
「えぐっ、ひくっ、おじいさま…」
そして少女を見守っていた温かい視線は防壁の向こうへ向けられたとき、修羅のそれとなった。
同時に、一陣の風が巻き起こり、老人の長衣をはためかせた。
薄青い光が老人を包み込み、光のかけらが吹雪のように舞った。
クレーターの向こうでは悪魔が紅い山羊の目をまぶしさに細めた。
「而して、悪魔よ。守る気迫…とな?」
老人の一言に悪魔は全身を振るわせ、鼻息を吹いた。
「…恐ろしい目よ。殺されるかと思うたわ。」
それからゆっくりと息を継ぎ、悪魔はどっかと腰を据えた。老人は自分の周りの障気がどんどん
と向こう側に吸い寄せられていくのを感じた。少女もただならぬ様子に震えていた。
戦いの空気をその肌に重ねた人間でなくともわかる、ある種の「悪い予感」。
二重鎖に込められた生存の意思が明確な警告を発するほど、その力は強大だった。
老人は身をかがめると、少女を見つめた。
「ローザよ。儂はこの通り右手が使えぬ。だからのう、儂の右手になって欲しいんじゃ。」
赤く泣きはらした目で老人を見つめると少女はしっかりと一回頷いた。
ほほほ、といつものように笑い、老人は左手で印を結んだ。そして家事か何かのやり方を
教えるような優しさと気楽さで、彼女にその形をまねてみろと言った。
「こうして…こうじゃ、ほれ、簡単じゃろ?」
少女は再び頷いた。失敗するな、とかしっかりやれ、とは老人は一言も言わなかった。
その失敗がどんなことにつながるかは老人はもちろん少女も肌で悟っていた。
だからこそ老人は言わなかったのだ。
老人は立ち上がり、少女の頭をなでた。立ち上がった老人の曲がった背中が、少女には
とても頼もしく見えた。
「因縁にけりをつけるときが来たようじゃの」
老人が言うと同時に、ドンッ、と周りの空気が衝撃に打ち震えた。衝撃の中心でかの異形の大悪魔は
赤い闘気をまとっていた。
悪魔が障気を体内に循環させるパス、それ自体の仕組みは人間の気の流れ…経絡と大した差はない。
なればこそ、その流れを最適化することにより限界を超えた力を行使することが出来る。
濃密な障気の塊となった大悪魔がゆらり、と大鎌を振り上げた。もはやいかなる身体的苦痛
精神的苦痛も彼の枷にはなり得ない。もちろん、いかに神に近い力を持つバフォメットとはいえ
肉体を底まで酷使した場合、生命の危機は免れないだろう。しかしそれを賭してまでやる
価値があると、悪魔もまた信じたのだった。
「行くぞ!!」
- 37丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:57:46 ID:eNFH.EsM
- 大音声を上げ、両の蹄が大地を蹴る。空気の壁を作り出し、それを突き破り、視認がほぼ不可能な速度
で鎌を構えた悪魔が迫る。V字型に突き進む衝撃波に大地が揺らいだ。
悪魔の雄叫びと同時に、紫と緑の光の中では老人がゆっくりとその左手を前に掲げ印を結んだ。
老人が頷くと、それに合わせるように少女が右手を重ねて印を結んだ。骨張った左手に重ねられる瑞々しい
小さな右手、組み合わされた印を前に二人は叫んだ。
「…Magnus-Exorcismus!!」
白い閃光が老人の、少女の、悪魔の視界を灼き尽くした。
--
白い閃光に灼かれ、全身から煙を上げ、消し炭のようになりながらも悪魔は鎌を振るった。
その鋭利な切っ先が迫ったとき、老人はとっさに少女を押しのけ「右手」を伸ばしてかばおうとした。
かばう手など持っていないことに老人が気づき、後悔する前に空気を切るように鎌の先端が
老人の体をすり抜けていく。痛みはないが、命をごっそりと刈り取られる感触が老人の体内
を駆け抜けていった。そしてそのまま「右手」があるべき空間を抜け、少女の体へと切っ先
が伸びていくのを老人は引き延ばされた時間の中、ただ見つめることしかできなかった。
その様子を、絶望に表情を変えることさえ出来ない老人の様子を満足げに眺めながら、
悪魔は灰になった。
- 38丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:58:20 ID:eNFH.EsM
- --
「私…生きてる…」
倒れていた少女はゆっくりと体を起こした。極大退魔発動の瞬間、彼女は大悪魔の鎌で切り捨
てられたはずだった。少女はその時、峻厳な極大退魔の閃光の中で温かい別の光を見たような
気がした。
少女は首を振った。ぼやけていた視界がゆっくりと元の形を取り、月光にてらされた世界が
そこに映し出された。自分の心臓の鼓動とピーンという高周波で埋められていた耳も、
ゆっくりと風に揺れる木々の音とを聞き取り始めた。
少女は木々のさざめきに紛れる苦しそうな呼吸を聞き取ると、一瞬の後に思い出したように
振り返った。
「おじいさま!しっかりなさってください!おじいさま!」
抱き起こされた老人は浅い呼吸をしていた。しかし顔は土気色になり、深く刻まれた皺を伝って
生気が流れ出していってしまったようだった。もはや誰の目にも、手遅れは明らかだった。
治癒はおろか復活の魔法でさえ取り戻すことの出来ない命。どれだけ掬い止めようと手を
伸ばしても、指の間からこぼれていってしまう命。それに気づいても少女は、泣きじゃくりながら
覚えたての治癒呪文をかけ続けた。
呪文が発動した後の一瞬、生気が戻ったかのように見えてもすぐに失われてしまう。
それは穴の空いた器で水を汲むのと同じ事だった。ただ、それでも器を水で満たそうと、
少女は呪文を唱え続けた。理性が老人の命を諦めていても感性がそれを許しはしなかった。
やがて、少女の手が力無く垂れた。何度呪文を口にしても生命力が戻らなくなったのだ。
少女は代わりに老人の服をつかみ、揺さぶった。
「やだ…やだ…死んじゃやだ…おじいさま死んじゃいやだ…」
「ローザよ…泣くでない」
老人は震える手を伸ばし少女の髪に触れた。老人のその行為を気にとめることなく、
少女は大粒の涙を零し続けた。老人はこの優しいきかん坊を見てちょっと困った顔をすると、
落ち着いた声で続けた。その声にもはや先ほどの苦しさは残っていなかった。
「大丈夫じゃ、大丈夫。儂はずっとそばにおる。可愛い子供達が一人前になるまで、どうして
離れられようか。そう、いつも離れず見守っておるよ。だから、何も気にすることはない。
何も泣くことはない…。
ローザや。お前は一番笑っているときが可愛いんじゃ。そう、その顔じゃ。」
無理に笑顔を作ろうとした少女を誘導するように、老人が自然に微笑んだ。
そして数回優しく頭をなでた後、少女の髪を梳る手が止まり、地に落ちた。
- 39丸いぼうしsage :2005/08/13(土) 07:58:48 ID:eNFH.EsM
- --
今日、孤児院に新しい子が入った。青い服を着せられて、門の前に置かれていた。
右腕が不自由だったので棄てられたようだった。貧しいのはわかるけれど、
辛いのはわかるけれど、いつもやりきれない気分になる。
だけど、そんなやりきれない表情で子供達に接してたら、子供達もきっと救われない。
だから私は笑おうと思う。私は笑顔が一番可愛いんだから。
--end
- 40丸いぼうし@連投規制ガクブルsage :2005/08/13(土) 08:01:56 ID:eNFH.EsM
- 全18レス…こんなに長くなるとは思わなかったorz
一応アンカ貼ります >>21-39 です。
- 41名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/13(土) 19:29:46 ID:XpHoS0F.
- 9の人はこのまま見守るでOKとして(えー
14の人、19の人も言ってるけど、13が余計。
キャラ設定とかは“本人の頭の中(もしくはメモ)にあればいいこと”で
押し付けがましく、前面に書き出すことじゃない。
自分の頭の中にある13の事柄を、本文中において読者に認識させるのも小説ってヤツだよ。
18も8割余計。
グダグダ言ってないで続き書けや、こちとら楽しみに待ってるんだ(偉そうだな、オイ)
まあ、両名に言える事はgjってことだb
ホント、続き楽しみにしてるんでヨロシクお願いしますm(__)m
- 42白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 20:59:06 ID:AeaGNzlw
- >>19さん
あちゃー、確かに、今見ると設定とかって要らないですね。
本当はさり気なく作中で描写できるのが一番いいんですけど、どうも自分は要らないことをしたがることがあるらしいです。
小ネタ愛なんですが、小ネタに愛を注ぎすぎて他が疎かになってしまわないかと、いつもビクビクしてます。
考えてみると、廃WIZとしての活躍は、妄想の世界だから書けるわけで、実際にはSGやってればいいじゃんみたいな仕様にプチ嘆き。
ビビリ君でごめんなさい。他の人の面白い作品読んでると、投下にはちょっとした勇気が必要なんです_| ̄|○
>>20さん
どうも、戦闘シーンとかその辺りの描写はスラスラ進むんですが、他のところがまだまだ甘いみたいですね_| ̄|○
精進します。(`・x・´)
>>21-39 右手に過去 左手に未来
この題名を見ると、某カードゲームの魔法カードを思い出したり・・・しませんか。
台詞があまり多くない分、臨場感のある描写に引き込まれました。
生々しい死の描写って、結構読み入ってしまうものですね。
おじいさん属性には非常に弱いんですが、若い頃のおじいさまも勇敢で素敵。
バフォ様の気難しい性格もGJ
"道"で感動した後だからかどうかわかりませんが、最後の新しい子はまさか・・・!?
じっくり読むと、感動がジワジワ湧き上がって来ました。
>>41さん
その感想を下さったことに感動しました。
自分の頭の中にあればいいというのは、正にその通りなわけでして、今後気をつけます。
まともに公開する機会がなかったもんで、楽しみとか言われると涙で目がかすんで・・・うぐっ。
頑張ります。気合入れて。
そんなわけで、ブルブル震えながら王都攻防戦の続きを
- 43白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 21:10:53 ID:AeaGNzlw
- プロンテラ攻防戦 No.2 ―戦太鼓よ響き渡れ
「ホーリークロス!」
「我恃むは熱き紅蓮の精霊。ファイヤーウォール!!」
西門から突入した二人は、襲い来る魔物達をなぎ払いながら、中央の噴水広場へと向かっていた。
神聖な力を秘めた斬撃が邪悪な鏡を砕き、灼熱の炎が生前魔導師であっただろう死者を焼き尽くした。
既に、辺りにはいくつか人の死体が転がっていた。
死者に生気を吸い尽くされた者、刃物でズタズタに引き裂かれ、血まみれになった者、関節がおかしな方向を向いている者、腹の中身がゴッソリと抜き取られた者
数こそ多くなかったものの、それは凄惨な光景以外の何者でもなかった。
広場へ近づくにつれて、血の匂いも段々と濃くなっていった。
転がっている死体も、徐々にそれが人であった頃とかけ離れたものになっていく。
次に彼等の目の前に立ちふさがったのは、燃えている何かだった。
それは、自分が燃えている、という以外は何も感じさせなかったが、よく見ると炎の中に瞳らしきものが見えた。
「ブレイザーね。シールドチャージ!!」
セレンが、持っていたシールドでその燃えている何かを殴ると、それは勢いよく後方へ飛ばされた。
思いのほか威力が強かったのか、そのまま噴水に突っ込んで、その何かは消滅した。
噴水広場は、思わず目を覆いたくなるような地獄絵図だった。
綺麗な水が湧き出ていたはずの噴水は、既に赤黒く染まり、人の手足や首が沈められていた。
白かった石造りの道も、まるでその白が不自然な斑点であるかのようだった。
鼻を突く死臭と、その凄惨な光景に、魔術師は眩暈を覚えた。
「・・・・セレン。」
「何?」
セレンに背を向けたまま、魔術師はつぶやいた。
「テロとは、これほどの物だったか。」
やや怒気を孕んだ声だった。
前回起こった小規模なテロは、一瞬にして沈められてしまった。
それ以来、長らくテロなど見ていない彼にとって、この状況は衝撃的だった。
―――うぅ・・・。
誰かの呻き声が聞こえた。
沢山の死体の中、動いている物があった。
「お兄ちゃん、しっかりしてぇ・・・。」
血だまりに倒れた、騎士と思われる男に向かって、スカイブルーの髪の毛をした少女が泣きついている。
彼女はアコライトらしかったが、彼の傷を完全に塞ぐことは出来なかったのだろう。
彼は、アコライトのヒールで一命を取りとめてはいたものの、それは非常に危険な状態だった。
―――清らかなる癒しの光を 汝のその身に与えん・・・
「ヒール!!」
セレンが手をかざすと、明るい緑色の光が、彼を包み込んだ。
彼の傷は塞がったが、やはりダメージが大きかったのだろう。彼は立ち上がれずにいた。
驚いた様子のアコライトに向かって、セレンは優しく微笑んだ。
剣を振るう身でありながら、その姿は聖女のようだった。
- 44白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 21:12:07 ID:AeaGNzlw
- その時だった。
突如、アコライトと男のいる場所が影になった。
日の光を遮るその巨体は、自然の生き物では決してなかった。
人間の大人5人分はあろうかという巨大な体。ライオンの頭部。背中から生える5本の蛇の頭。
どれを取っても、絶対に友好的な存在には見えなかった。
「我剥くは凍て付く虚空の牙!フロストダイバ!!」
魔術師は素早い詠唱で、地を這う氷の刃を召喚した。
ペコペコが走るよりも早い速度で、その氷の刃は敵、キメラの大腕に絡みついた。
徐々に、その体を氷漬けにしていく。
が、腕を完全に凍らせる前に、その氷は砕けてしまった。
(ちっ、下等魔法では凍らんか。)
「我見える(まみえる)は足掴む亡者の腕!クァグマイヤ!!」
比較的詠唱の短い魔法で、敵の足止めを図る。
不思議な空間が、敵の動きを鈍らせるが、それでも危機的状況は変わらなかった。
キメラは、その豪腕を振り上げようとしていた。
元々動きの素早い魔物ではないが、高等魔族と言われるだけあって、その破壊力はすさまじいものである。
恐怖に震えたアコライトと、蓄積したダメージの大きいナイトは、動くことが出来なかった。
「我剥くは凍て付く虚・・・グッ!」
時間稼ぎに過ぎないと知りつつ、もう一度フロストダイバを唱えようとしたが、その詠唱は中断されてしまった。
魔術師の体が、横へ突き飛ばされる。
「オートガード!!シールドチャージ!!」
何が起こったのか、初めは理解できなかった。
さっきまで自分のいた位置を見ると、そこにいたのはセレンだった。
(つまり、俺はヤツに突き飛ばされたと。)
彼女は、巨鳥の爪を盾で受け止め、そのまま後方へと吹き飛ばしていた。
いつの間にか、魔術師の背後にグリフォンが迫っていたことに、彼は気がつかなかったのだ。
こうなってしまうと、もはやキメラから二人を守ることは難しくなってしまった。もはや、フロストダイバの詠唱も間に合わない。
振り上げた豪腕が、二人を捕らえようとしたその時
「その首もらったあああああああ!!」
叫び声が聞こえたかと思うと、キメラに向かって、何かがものすごい速さで落下してきた。
キメラは声に反応して後ろに飛びのこうとしたが、クァグマイヤの効果によって動きが制限され、落下してきた何かはその振り上げた腕の付け根を直撃していた。
ギャアアアアアアアアアアアア
異形の者の悲鳴が辺りに響いた。
キメラの左腕が、明後日の方向へ豪快に吹き飛んだ。
グシャリと、地面に叩きつけられる音がする。
その場にいた者で、何が起こったのか理解できた者はいなかった。
落下してきたのは、どうやら人らしい。
キメラの腕を斬り飛ばした大きな斧を肩に担ぎなおし、その男は顔だけ振り返った。
「危ねぇから下がってな。」
緑がかった青の髪に巻かれていたのは、先ほどの頭巾ではなく熱血ハチマキ。
やや煤けた白いシャツと、破れかけたGパンが特徴的なブラックスミス。
「おーデカブツよ。耳クソかっぽじってよーく聞け。このプタハおじさんが現れたからには、てめぇの好きにはさせねぇ。覚悟しな!」
そういって、親指を下に向けてキメラを挑発したのは、先ほど下水前で現れたプタハだった。
キメラのほうはというと、そんな挑発には耳も傾けずに、ただ失った腕の痛みに悶えていた。
一方、態勢を整えたグリフォンは、自分を吹き飛ばしたセレンに向かって突撃してきた。
鋭い爪を振り下ろして攻撃してくるが、セレンは慣れた手つきでその攻撃を受け流し、反撃を加えていった。
グリフォンの体には傷がついていくが、一向に倒れる気配はない。
「はぁ!」
セレンが、剣に体重を乗せて一際強い一撃を放つ。
バッシュと呼ばれるこの剣技は、剣士ならば誰もが初めに覚える技である。
―――我呼び起こすは大地に眠りし精霊・・・
「貫け!アーススパイク!!」
グリフォンがバッシュでよろめいた隙を狙って、魔術師は大地の魔法を唱えた。
轟音と共に、地面から巨大な柱が飛び出し、グリフォンの腹をえぐり、貫く。
断末魔を上げ、グリフォンはその場に力なく倒れ伏した。
「プタハ。助かった。例を言う。」
「良いってことよ。俺もちょうど暴れたかったところだしな。」
そう言って、ニッと笑うプタハは、年齢の割に若々しく見えた。
「そうか、ならいい。ここは任せた。」
そうとだけ言うと、魔術師は北に向かって足早に歩き出した。
「あ、ちょ、ちょっと待ってよ!・・・もう。」
あまりの決断の早さに、セレンは感心を通り越して呆れていた。
「ククッ、嬢ちゃんも苦労してんな。」
「笑い事じゃありません!」
何故だか嬉しそうに笑うプタハに突っ込みを入れて、セレンもペコペコを走らせた。
- 45白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 21:12:41 ID:AeaGNzlw
- 「ほんとに、良かったの?」
北のプロンテラ城へ向かう途中、セレンが心配そうにたずねてきた。
「何がだ。」
「その、ブラックスミスにキメラを任せて。」
ブラックスミスは、戦闘においてそれほど強いわけではない。
確かに、斧という強力な武器は扱えるが、剣士系のように重たい鎧は装備できないし、シーフ系のように俊敏な動きも、あまり出来ない者のほうが圧倒的に多い。
「問題ない。見なかったのか?あの血斧(ブラッドアックス)と屋根付きカートを。」
「え゛!?」
屋根付きカートと聞いて、セレンは素直に驚いた。
商人系の職業が引いているカートは、いくつかの種類があるが、中でもパンダのぬいぐるみが乗ったものや屋根のついたカートを引くには、よほどの戦闘能力が必要だった。
商人ギルドから検査を受け、その高い戦闘能力を承認された者だけが引くことを許される、正に強者の証だった。
ブラッドアックスは、オーク達の王、オークロードが所持する血塗られた斧だ。
手に持つと力がみなぎってくるという、やや危ない代物である。
オークロードは、並の実力では倒すことが出来ないし、そのオークロードが持っているブラッドアックスは、やはり高値で取引されている。
オークロードを倒すだけの力か、ブラッドアックスを買うだけの財力が彼にあるかのどちらかである。
「更に言っておくと、下水前で俺達に見せたあの液体の正体は・・・もうわかるな?」
「バーサークポーション・・・。」
セレンは、プタハの実力を想像して身震いした。
「さぁて、どうしてやろうかねぇ。」
屋根の付いたカートから、赤い液体の瓶を取り出してキメラを睨みつける。
「えぐっ・・・うぅ。怖いよぉ・・・。」
アコライトは、まだナイトに泣きついている状態だった。
ナイトが優しく頭を撫でてやるが、一向に泣き止まない。
「嬢ちゃん。もう大丈夫だ。おじさんが守ってやるからな。」
「う・・・うわぁああああん!!」
プタハが一番怖いらしい。
「それじゃ、一暴れしますか。」
アコライトの反応をさして気に留めた様子もなく、プタハは、赤い液体をグビグビと飲み干し、その瓶を放り投げた。
バリン、とガラスの割れる音がする。その瞬間、プタハに変化が現れた。
プタハは、痙攣したように肩を上下させた。
「ククッ、クククッ、力がみなぎってくるぜ・・・!!」
目は血走り、呼吸は荒くなって、もはや理性を捨てた本能の塊のようだった。
これなら少女が怖がるのも無理はない。
「行くぜ!! アドレナリンラッシュ!!オーバートラスト!!ウェポンパーフェクション!!マキシマイズパワー!!うおりゃあああああ!!」
叫びました。
バーサークポーションで自分の力の限界を引き上げ、更にブラックスミス特有の戦闘スキルで強化。
これが、彼の常套戦術だった。
血塗られた斧を構え、キメラに向かってその狂戦士の瞳をカッと見開き、走り出す。
キメラは、残された右腕を振り回して攻撃してきたが、左右のバランスが取れずに苦労していた。
そんな鈍い動きには、プタハは捕まらなかった。
「カッ飛べや!」
腕の横をすり抜け、キメラの右足の付け根を斬り払う。
耳を塞ぎたくなるような獣の悲鳴が聞こえたかと思うと、キメラはそのままそこに倒れてしまった。
「ケッ、しぶといペットじゃねーの。」
見下ろし、そして背中から生えている蛇の頭を1本ずつ切断していく。
斧の重さと、プタハの強化された力の前には、蛇の首など、まるでキュウリを輪切りにしていくようなものだった。
それでも、苦痛に歪んだライオンの頭部はまだ生きていた。
それを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべ、プタハは斧を振り上げた。
「月(アドレナリン)は出ているか?」
キメラが絶命するのに、時間はかからなかった。
その頃、プロンテラ城の前では、激戦が繰り広げられていた。
騎士隊、聖騎士隊が前衛を勤め、その後方から宮廷魔導師隊が援護攻撃を放つ。
傷ついた者は、大聖堂から逃げてきた聖職者のヒールで回復する。
しかし、そのサイクルはいつまでも続けられるものではない。
徐々に、聖職者は魔法力を消耗しすぎて顔が青白くなってきている。
前衛の体力消耗も大きい。突破されるのも時間の問題だった。
弱点がない無属性のモンスターが多かった。
ライトニングボルトでの攻撃も強力なオウルバロン。
鉈で切り刻んでくるリビオ。
すさまじく硬い装甲を持つアポカリプス。
それも、1体ではなかった。そんな強力なモンスターが大量に押し寄せているのである。
- 46白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 21:14:26 ID:AeaGNzlw
- 「ちっ、キリがないな。」
そうつぶやいたのは、前線で戦う赤髪のナイトだった。
リビオの鉈を剣で受け流し、返す刃で斬りつける。
「ラット、お前の言ってた宮廷魔導師長ってヤツはまだ来ないのか?」
ラットと呼ばれた青髪の男は、修道士(モンク)のような格好をしていた。
モンクとは、己の肉体を鍛え、神罰の代行者として悪を駆逐する者達である。
アポカリプスに掌底をねじ込み、後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。
重たいアポカリプスを数メートル吹き飛ばすのだから、彼はよほど戦い慣れしているのだろう。
「さあな。ヘタすると1日中寝てるようなヤツだから、日が暮れるまで来なかったりしてな。」
軽口を叩くだけの余裕は残っていたが、流石に長時間戦い続けていることもあり、表情には疲れが出ていた。
「日が暮れるまでって、その前に倒れちゃうよー。」
後ろにはハンターがいた。長い銀髪に、ゴーグルをつけていて、やや幼い顔立ちだった。
弓矢で敵を足止めしてはいるが、なかなか深く刺さってはくれなかった。
全員、追い詰められた状況だが、最悪のケースを考えないために無理をしているという感じだった。
「うあっ!?」
ナイトの剣が、リビオの鉈で弾かれ、宙を舞った。
そのまま、ナイトの頭をカチ割らんとして振り下ろしてくる。
寸でのところでかわし、弾かれたクレイモアを掴んで反撃にかかる。
「んの野郎!」
リビオも負けじと鉈で受け止めてくる。
最初は、ナイトが優勢だった。
「危ない!」
後ろにいたプリーストの声が聞こえたと思うと、ナイトの右腕に激痛が走った。
「あぐっ・・・!は、離せよ!」
腕を乱暴に振るってみるが、そいつはしっかりとナイトの腕に噛み付いていた。
外見はただの本のようでもあったが、開かれたページには牙が付いており、それが彼の腕に食い込んでいる。
小さな見た目からは、想像も付かない力で噛み付かれていた。
徐々に腕から力が抜けていく。
その隙に、リビオが力を込めてナイトを突き飛ばした。
彼はバランスを崩して、背中から地面に倒れこんでしまった。
そこを狙って、周りのリビオ達がワラワラと群がってくる。
「離せ!離せ! って、嘘だろ・・・?」
噛み付いてきたライドワードを石の地面に叩きつけるが、かえって牙が食い込んでくるばかり。
気付けば、自分は何匹ものリビオに囲まれて、退路を経たれていた。
一斉に鉈を振り上げ、突き刺そうと振り下ろしてくる。
(ここまでか・・・)
―――神に刃向かう者達へ、聖なる十字架の裁きを与えん
―――天上の精霊達よ。我が呼び声に応え、父なる天空の神秘を呼び覚ませ!!
「グランドクロス!!」
「メテオストーム!!」
眩い光が見えたかと思うと、辺りが白く染まった。
リビオ達がその光の中で苦しみ悶えている。神聖で、清らかなその光は、邪悪なる者達を浄化した。
そして、そのすぐ後に、空から小さな無数の隕石郡が降り注いだ。
大気圏を突破する時の熱がそのまま残っており、その熱い岩石は魔物達を容赦なく貫いた。
その光景に、誰もが唖然とした。
「魔導師隊は何をしている!さっさと波状攻撃だ!遠慮せずに吹き飛ばしてやれ!」
後者の、隕石の魔法の主が高らかに叫んだ。
「た、隊長・・・!!」
一人のセージが、魔術師のもとへ駆け寄った。
「魔導師隊は奇襲を受け、ウィザードは全員が死傷。残されている戦力はマジシャンとセージだけです。」
「構わん!サンダーストームとヘヴンズドライブを駆使しろ! 間違ってもソウルストライクなどというバカな真似はするなよ。俺も加わる。一気に畳み掛けるぞ!」
魔術師は、全員に指示を出した。 既に彼は、"指導者"だった。
状況を、一瞬で冷静に分析し、今取れる最善の手段を導き出して命令を下す。
逆らおう、などという気を起こさせない気迫がにじみ出ている。
彼の指示に従って、全員が魔法の詠唱を開始した。
- 47白髭@14の人sage :2005/08/13(土) 21:15:13 ID:AeaGNzlw
- ―――大気を裂く雷鳴の光よ、今ここに集え!
―――我聞くは怒れる大地の鼓動 その身に刻み込め!
―――我振るうは虚空より出でし白銀の刃 斬り刻め!
「サンダーストーム!!」
「ヘヴンズドライブ!!」
「ストームガスト!!」
魔法が、生き残っていた魔物達に襲い掛かる。
黄金の光が大気を引き裂き、母なる大地がその身を揺るがし、白銀の刃が斬り刻む。
他の者達も、最初はただその光景を見つめているだけだったが、すぐに我に返って反撃に出た。
「騎士隊、聖騎士隊総員に次ぐ!ストームガストで氷漬けになった魔物を斬り捨てろ! また、ヤツラをうまく魔法の範囲内に誘導しろ!」
「「「「応ッ!!」」」」
騎士隊、聖騎士隊の皆が、騎士隊長の声で一斉に動き出した。
「ヒール!」
先ほどの赤髪ナイトも、ヒールを受けて立ち上がった。
愛剣をしっかりと握りなおし、正眼に構える。
「さっきの礼はたっぷりしてやらないとな・・・!!」
にっくきライドワードに向かって踏み込み、剣を突き出す。
右側へ避けられるのを見て、素早く足を捌き、間合いを詰める。
今度はしっかりと命中した。本の口を縦に斬り裂く。
ダメージを受け、ライドワードは宙から転落した。
ナイトは、そこへ剣を突き立ててトドメを刺した。
「よし次!」
剣を引き抜いて次の獲物へと斬りかかる。
「調子いいみたいだな。アーサー。」
「そういうラットだって、今ので何匹目だよ。粉々にしたアポカリプス。」
「まだ5匹だよ。」
彼等の顔には、勝利の確信を孕んだ笑顔が戻っていた。
戦いの流れが、完全に変わった。
氷漬けになると、その分防御力が低下する性質を利用し、そこに剣や拳で攻撃したり、サンダーストームを落としたりする。
魔物達が全て倒されるのに、時間はかからなかった。
続くような気がしないでもない。
本当に一言だけ。
"お兄ちゃん"って、書きたかっただけなんだ_| ̄|○ 今は反省している。
- 48名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/14(日) 17:44:10 ID:EqcRoLkI
- 花と月と貴女と僕 5
全身が泥にでもなってしまったかの様に重い。
瞼も鉛の様だ。…というか、僕はどうしたんだろう?
前後不覚だ。さっぱり訳が判らない。
考え…考えるのに疲れ、思考を放棄して怠惰な惰眠へと移行しようとする。
こういうところはつくづく自分は怠け者だと思うが、性分なのだから致し方無い。
そう。移行しようとして。
「寝るな」
「げふぅっ!?」
簡潔なお言葉。そして踵落しが炸裂。逆エビに跳ね起きる。
「うげ、うげ…うげーっほっ!! な、何しくさりやがりますかっ!!」
体を上げ、見上げると。
「…えーと、どちら様ですか?」
きつい目付きで、僕の事を睨んでる人が居た。
具体的に言うと、女の人が、僕の事を親の敵でも見る様な目で見てます。
フェイヨン風の服装に美人とさえ言える顔(最も、そのせいで余計に怖かったりもしますが)。
ひょ、ひょっとして新手のナンパですかっ?
「……」
「……」
しかし、予想に反して彼女は何も言わない。
だから、僕も何も言えない。
ううむ。こういう時の為に、僕には会話のイロハと言うものがある。
円滑な人間関係をはぐくむには、言葉のキャッチボールが一番だ。
──と、いうより、そうしないと非常な危機感を今現在感じている手前、いけないのであります。
何故かって?
混乱していたさっきまでなら兎も角、幾分意識のはっきりしてきた今なら、理由は明晰に判るであります。
不肖、僕は。──痛い。つーか、凄い痛い。
縄が手首に食い込むキリキリとした熱さと、どてっ腹の鈍い痛み。
つまり、後ろ手に縛られた挙句、踵落しの後、鳩尾を踏みつけられてる。
「OK。取り合えず、足を退けてくれませんかマドモワゼル?
僕はあくまで健全なお付き合いなら大歓迎だけど…その、こういった特殊嗜好はご免被りたく」
僕は全然っ、そっちの気はありませんし。
どげしっ。
無言の踵落しが鳩尾に食い込む。
嗚呼、会話のキャッチボール大失敗の大暴投。
二塁に投げたボールがそのまま左中間越えバックホームという感じ。
「あ、ああっ。まさか本物!? 略してモノホン!? そ、そんなに僕の肉体が欲しいのかっ!?
こ、この変態っっっ!! あっち行けっ!!」
唯一自由な足で、しっしっ、とジェスチャーを取る。
一方、ついさっきまで僕を踏みつけていた女性は、頭痛を堪えるかのようにコメカミを押さえていて。
「…どうしてこんな塵芥にも劣る半ば類人猿じみた下劣愚劣極まりない、致命的に知性が欠けた最下等賎民なんかに…」
「……」
そして、反論を全く許さないくらい徹頭徹尾、もう微塵の救いも無いぐらいボコボコにあげつらって下さった。
余りに苛烈すぎて脳味噌に染み渡るまで、少々の時間がかかるが、そんな僕を尻目にその女は更に続ける。
「全く、理解不能。さっぱり判らないわ」
「いや、つーかそれは僕も一緒なんだけど…と言うか、この特殊極まりないシチュエーションの説明をして欲しい次第」
「…貴方は何も知る必要は無いし話すつもりもないわね。大人しく転がってなさい。
というよりも、むしろ説明して欲しいのは私達の方。さぁ、キリキリ白状なさい!!」
「……ふと視線を移すと僕の連れが同じように、しかし丁重に寝転がってるのは何故に?」
見れば、月夜に照らされた石に身をもたれて、女の子がすうすうと安らかな寝息を立てている。
男女差別だ。女尊男卑だチクショウ。
情けなさとやるせなさに歯噛みしていると、ふわり、黒が降りてきた。
見覚えのある…っていうかお前は怪人黒マント!?
少しばかりマントの裾やらが焦げていたりするが。
「おーい、落ち着けっての」
「これが落ち着ける訳ないでしょ!!」
ヒステリックに叫ぶ女をどうどう、と諌める黒マント。
何だかこの場では彼が一番頼もしく思えてきて、泣きたいんだかほっとしたのか微妙な心持。
「坊主」
こちらに向き直った黒マントが僕に言う。
女の暴挙に思うところのある彼の方が未だ話が通じやすいに違いない。
砂漠で水を見つけた旅人の如く、顔をそいつに向ける。
が、ぴらり、と示されたのは一枚の紙。
じっと、目を見張る。
そこには僕の似顔絵が書いてある。
「ほうほう。こりゃまた凶悪そうにアレンジが効いてますな」
黒マントは、その一言に呆れ半分感心半分の表情を浮かべる。
似顔絵から、視線を下に落とす。…あれ?
「ふむふむ。このもの凶悪な犯罪者にて見つけた者に報奨金を支払う…教会直属執務執行機関…」
…ふむ。どうやら疲れているらしい。
幻覚を見てしまうとは。目を瞑り、再び開いて凝視する。
変わりない文字がそこにはあった。
「ああ。因みに偽造でもなんでもないからな、これ」
街中にあったのを引っぺがしてきた、と黒マントは続ける
とりあえず。混乱する思考の中でも解る事が一つ。
僕の見ていた砂漠の水は、蜃気楼でしたとさ。
「取り合えず、見つかっちまったら良くて数十年モノの投獄、悪けりゃ拷問の末に打ち首って線か。
で、とりあえず坊主を取り巻く環境はそんなもんだな。OK?」
「…OKってあんた。この状況でOKが出せるなら、そんな奴はとっとと白い壁の病院にブチ込んだ方が良いと思われ」
「いや、お前が勘違いしてるだけだろ、そいつは。俺は単に、お前にとって一番重要な事を言っただけだぜ?」
僕を前にやれやれ、と首を振る黒マント。
と──流石に目が覚めたのか、少し遠くで同じく捕縛されてた女の子が目を覚ましていた。
はっ、とした様に辺りを窺い、僕を見つけるなり目を見張った。
しかし、やっぱり彼女も捕縛されてる訳で。
ジタバタと暴れるだけの結果にとどまる。
「はなせーっ!!」
「!!」
さて、話は変わるけれど物事を判断するのには対象が必用な訳で。
普段そんな事を意識する事は少ないけど、他者がそこに居る事で間接的に人は、自己の置かれた状況を把握するものだ。
例えば、僕の日常を構成する人と、状況さえあれば僕はその状況を日常と理解するし、
そうでない人間が居て、そうでない要素があれば、それは非日常だ。
世界は色々な要素で構成されている。主体、客体etr。
見る側、見られる側、向こう側の見る側、見られる側。主は客で客は又主だ。
(最も世の中には、他者と交わる事が判らない、哀れな人間も少なからずいるけれど)
ともかく。
麻の様に捩れた思考を編んで。
結論を下せば。
- 49名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/14(日) 17:44:33 ID:EqcRoLkI
- 僕は女の子の姿を見て、漸く自らが置かれている非日常に気づいた。
自虐、とかそういうのは抜きに、自分自身が間抜けで仕方が無い。
「…おい」
声のトーンは1オクターブ以上落として、出来うる限りのドスを効かす。
「漸くお目覚めか?」
「ああ。すっきりはっきりしたよ。取り合えず、女の子の紐を解けよ。
そうしないと、僕は何も話さないし、話す気も全く起きない」
「…あなたが逃げないという保障は何処にも無いじゃない」
僕を睨みながら女が言う。
「──うるさい。あんたには聞いてない。食堂の狐面なんだろ?
僕が話しかけてるのは、そこの黒マント。どうせあんたは大して大きな存在じゃない。
僕は、今目的を果たす為に、彼と話をさせてもらいたい」
何を思ったのか、僕の言葉に面食らっている狐面(元)を無視して、黒マントは女の子の縄を解く。
ぴゅーっと、そんな擬音が付きそうな走り方で、彼女は僕の方にやって来た。
「だいじょうぶっ!?」
「ああ、大丈夫…」
縛られ転がってる時点で大丈夫でもなんでもない気がするが、とりあえずはそう応えておく。
彼女に遅れて、黒マントが僕の方に来た。
その姿を認めて、ふーっ、とまるで犬か猫みたいな様子で、女の子がそいつを威嚇する。
黒マントは、僕に出しかけていた手を引っ込め、肩を竦める。
「やれやれ…嫌われちまったか」
「やだもん。わたし、あなたきらいっ」
はっきりとした宣告が、ぐさっと音を立てて突き刺さる。
が、黒マントは気にした風情も無い。
「いや──取り合えず、縄を解いてもらわないと何も出来ないから、許してあげて」
言うと、何処か不服そうな顔で僕の傍から離れる。但し、目は男を睨んだまま。
慌てて女が縛を解こうとする男を制そうとするが、するり、と黒マントはあっさりとその手を避ける。
そして。
瓢、と空気が鳴った。
何か、線が走った気がした。
ぱさり、と音がする。
「どわっ!?」
走ったのは、ツルギだ。それが、僕を縛っていた縄を一閃の元に断ち切っていた。
紙一重だった。もう、後1mmズレてたら、どてっぱら断ち割ってます的な。
「解いたぜ?」
「……」
言葉が出ない。黒マントはにやにやと笑ってやがる。
殺意とか害意を全く感じなかったから余計に怖い。
が、その事を責めても事態が好転しないのは確かで、状況整理も未だ済んではいない。
よっこらせ、と何とも年寄りじみた言葉を発して立ち上がる。
その途端、てててっ、と女の子が走りよって来て、僕の後ろに隠れてしまった。
「お姫さんは、どうも本当に坊主の事を気に入っちまったみたいだなぁ」
「」
言葉がとっさに出ない。半ば茶化すような男の言葉だけれど、聞き捨てならない点が二つ程あった。
「僕はこれでも16だ。小僧と呼ばれたくはないよ」
「俺の半分しか生きていない奴を小僧と呼んでも構わないだろ、別によ」
「もっと精神的な問題だって。僕は、そんな風に呼ばれたくない」
「それに姫って? どういう事だよ」
「ああ、そりゃ言葉通りだな。お前さんの後ろに引っ付いてる子がそうだ、ってだけだ」
思わず絶句。口がパカン、と空いて、しかし言葉がついて出ない。
「ま、それについては後でしっぽりと喋ってやるよ。さて──」
そこで、黒マントは一度言葉を切った。
「じゃあ、小僧と呼ばない為にも先ずは自己紹介といこうか。
最も、俺は昔の名前は捨てちまってるけどな。お前、名前は?」
言われて気がついた。僕は、只の一度たりとも、今まで名前、と言うものをここまで口にしてこなかった。
女の子に名前を聞いたのに、自分は名乗りもしなかった訳だ。
少し後ろめたくなるが、気持ちを切り替えて、言葉を編む。
「僕は──」
「…っていうか、私を置き去りに、勝手に話を進めないで欲しいんだけど?」
ずい、と横から女が入ってくる。
「いいじゃねぇか。どの道こいつは逃げられない状況だし、俺等はこいつがいないと姫さんを連れてけない。
姫さんの調子が整ってないと祭りに影響するんだろ? だったら、一蓮托生さね。
発言に割り込んだんだ、まず嬢ちゃんからな。自己紹介」
びっ、と僕を指さしてくる黒マント。
ううむ。何というか、圧倒される様なモノがある喋り方をする御仁だ。
食堂での戦いぶりとのギャップがそうさせるのかもしれないが、妙に軽いノリといい、木賃宿の連中と良い勝負の様な気がする。
一方で、指差された女は露骨に顔をゆがめていた。
「…どうして私が」
「言ったろ。それに、手前の役目忘れたか? 私情を挟むのは良くないぜ?」
ぶすっ、とした顔を女は浮かべる。
ややあって、観念したのか口をひらいた。
「私の名前は──」
(閑話休題)
女の子。 黒マント。 剣士の少年。 (元)狐面的戦闘員女。 の名前を募集します。
尚、変態と店主は要りません。+聖猫天使様+とか、俺から染み出した媚薬入りの〜等は問答無用で却下しますのであしからず。
一番良いと思ったのを独断と偏見で決めます。無投票だと、泣きながら一人考えます。
それでわ。
(閑話休題終)
- 50名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/14(日) 21:57:05 ID:8HGz7Isw
- 自分で考えろ。
なんならUFAとか炉安とか名づけようか?
俺はやだぞ。
- 51名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/15(月) 15:21:05 ID:9zwTkFf.
- 募集・・・
何で自分で考えないんでしょう?
- 52名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/15(月) 15:30:32 ID:WiHU0Wq.
- >>49
名前も含めて貴方の物語なんだから、>>50も言うように自身で考えた方
が良いように思う。名前は作者のセンスが一番現れるところだから頑張って
考えてほしい。
完成した貴方の物語を読み返すのを楽しみにしている。
- 53名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/15(月) 20:35:53 ID:KrO113Yw
- すまん、遊び心のつもりだったんだ。
名前は別に考えたから、気にしないで下され。
- 54名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/16(火) 00:51:16 ID:Xx7D9YUM
- スレが伸びてる! ワーイ
前までスレが寂しかったので、名前募集したっていうのはROMの人とも
一緒になんかしたいっていう理由なのではないかなぁ。と邪推。
どうせなら名前募集よりも、先の展開とか、誰パートの描写を濃く、とか。
そういう希望を取った方がお互い楽しいと思うヨ
- 558@銀兎sage :2005/08/16(火) 08:17:06 ID:Q/1ZUx26
- こんにちは、>>8改め銀兎(シロガネウサギ)と名乗ってみます。
帰郷していてしばらく此方の掲示板に来ていなかったのですが
繁盛していていますねΣ(・ω・≡・ω・)
そして不甲斐ない文章にアドバイスをありがとうございます。・゜・(ノД`)・゜・。
>>白髪様
確かにすんなりと転職しすぎだったかもしれませんね・・・。
嗚呼ジオ平原で何度殺意を覚えたことかorz
小説の方ですが、殆どコメントを書かれてしまっていたorz
所々にある小ネタが面白いです。
たれ猫いいなぁ・・・欲しいです(*ノノ)
自信を持って全然問題ないと思います、じゃんじゃん
続きを書いてくださいッ!
>>19様
なるほど、確かに平坦で盛り上がりに欠けていますね・・・。
そして自分の脳内だけの状景を書くだけでは読者様に伝わりにくい表現
になってしまったと反省・・・。
>>丸いぼうし様
戦闘シーンが、白髪様とはまた別の緊張感があって良いなぁと思いました。
マグヌスを撃つシーンが好きです、憧れる・・・(ホワワ
ラストは・・・お・・・おじいさま・・・(つДと)
>>41様
gjですかっありがとうございます(つД`)
あの後の続きは自分の脳内でとどめておこうと思っていたのですが・・・
思い切って投稿したいと思います。
旅行中に携帯から打っていたものです。
そして折角続くので名前もつけてみたり・・・。
- 568@銀兎sage :2005/08/16(火) 08:21:32 ID:Q/1ZUx26
- 暫くフェイヨンにとどまろうと思う、
チルチルの師である現ハイアーチャー、ライオネルは言った。
「もうすぐ変わっちまうんだよな、此処」
「変わる…フェイヨンが?」
世界が常に変化していることは、チルチルも朧けながら知っている。
ライオネルは町並みを一望して頷いた。
「この街は俺の全ての始まりの場所だからさ、名残惜しいんだ」
ノービスとしてこの地に産まれ、アーチャー、ハンター、
そして転生によって再びこの場所に産まれて。
第二の故郷、と言っても過言ではないのかも知れない。
寂しそうに笑うライオネルを前に、断る理由などなかった。
「わたしも暫く此処にいます、師匠」
「…悪いな、チル」
この世界に来て日の浅いチルチルにとってもフェイヨンは
始まりの場所である。もうすぐ無くなってしまうその街に、名残惜しさを拭いきれない。
チルチルは精一杯の笑顔で答えた。
- 578@銀兎sage :2005/08/16(火) 08:24:13 ID:Q/1ZUx26
- フェイヨンの最後を飾る祭りの準備で、
街はかつて無い賑わいを見せている。
「あ、そこのアーチャーさんとハンターさん!」
露店の準備をしているブラックスミスの男性が二人を呼びとめた。
チルチルは首を傾げて彼に近付く。
見ると、彼の露店には何も用意されてなく、カートの中には大量の芋が伺えた。
「タヌキの木葉持ってたりするか?」
「えーと…持ってないな」
「わたしもです…でも、一体どうして?」
ブラックスミスは露店の看板を指す。
そこには「焼き芋直売り」と丁寧な字で書かれていた。
「折角の祭りだから、凝って焼き芋でも作ろうと思ったんだが…
生憎売り払った後だったんだよな」
苦笑を浮かべてブラックスミスは答えた。
「まぁ当初売る予定だったモンを素直に売るよ、呼び止めて悪かったな」
ひらり、と手を降り、カートのアイテム整理に戻ろうとしたとき、
「わたし焼き芋食べたいです!お手伝いします!」
目を輝かせたチルチルが体を乗り出して言った。
ブラックスミスとライオネルが唖然としているのも気にせず、
「早速スモーキー狩ってきますね!」
スキップを交えてチルチルは森へと入っていった。
「…うちの弟子がああ言ってることだし、何か手伝うよ」
「あ、ああ、どうも」
ブラックスミスは軽く頭を下げて、カートから芋を引っ張り出した。
ぼんやりとライオネルはチルチルの去っていった森を眺め、
やがて重量オーバーで助けを求めるブラックスミスの元へ急いだ。
- 588@銀兎sage :2005/08/16(火) 08:28:16 ID:Q/1ZUx26
- 続きはまだ打ち途中なので、半端ですが失礼します;
- 598@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:15:33 ID:EBkJkD4Q
- こんにちは、震源地から遠いのに地震で揺れてがくがくしました。
続きを打ったので再びこそりと置かせていただきます。。|ω・)つ
- 608@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:17:26 ID:EBkJkD4Q
- (焼き芋…久しぶりだなぁ)
ほどよい甘さと、ほっくりとした食感が好きで、
よく親に頼んでつくってもらったものだ。
昔を思い出しながら、チルチルはスモーキーの森へと向かう。
ひっそりとした森の奥、のんびりとした性格の狸型モンスター、
スモーキーが群れで戯れている。
「目標発見!」
ハンターボウを構え、次々とスモーキーを射ると、
驚いた彼等は木の葉を巻き散らしながら逃げていった。
アーチャー時代に苦戦していたのを思い出すと呆気無く感じられ、
転職して強くなった実感がようやく沸いてきた。
(陽が沈む前には帰ろう)
紅みをおびてきた空を見上げながらチルチルは更に森の奥へと進んだ。
異変に気付いたのは、あれから一度もスモーキーに
会わないことに気付いてからであった。
既に塒に付いてしまっているのかと考えたが、森の雰囲気も普通ではない。
風がざわめく。
落ちかけた夕陽で辺りは不気味なほど紅く、静かだ。
一旦戻るべきだ、チルチルは周囲を警戒しながら森の出口へ向かう。
カシャン、カシャン
聴いたこともない音に、チルチルは足を止めた。
否、目の前の光景の恐怖に足がすくみ、動けなくなったと言った方が正しい。
彷徨う者
怨念を身に纏いながら死に、今も尚呪われた愛刀を振るい
冒険者を地獄ヘと誘(イザナ)う者。
(何、あれ…)
今までであったモンスターとは違う、背筋が氷付きそうな雰囲気であった。
カシャン、骨になった首がこちらを向いた。
チルチルの体が恐怖に震える。
- 618@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:19:14 ID:EBkJkD4Q
- 「アンクルスネア…ッ」
覚え手間もないスキルであったが、考えている暇はなかった。
すくんで動かない自分の足をおもいっきり叩き、走った。
彷徨う者の足は、どう考えてもチルチルよりも速い。
しかし、うまく罠にはまったようでその足を止めた。
「ダブルストレイフィング!!」
その隙に矢を休み無く放つ。
しかし、罠に架けられた状態で彷徨う者はことごとくそれらをかわしていく。
それだけではなく、驚異のスピードで罠から抜けて来たのだ。
チルチルは再び罠を設置して、全力で森の出口とは反対方向に走った。
(どうしよう…)
他の帰り道など知る筈もなく、ただ彷徨う者から身を隠すことしか出来ない。
先ほど感じた恐怖が蘇り、涙に変わった。
いつのまにか陽は落ちて、辺りは暗く沈んでいった。
雪洞(ボンボリ)に灯がともり、フェイヨンは暖かな灯りで溢れた。
首都や他の街からやってきた冒険者で、昼間以上の賑わいが見られた。
皆露店を眺めたり、中央広場で行われているバードとダンサーの
合奏に目を奪われている。
その中で、ライオネルとブラックスミスは落ち着かない様子であった。
「いくらなんでも遅すぎねェ?」
「道にでも迷ったかな…ちょっと探してくる」
矢と弓の準備をすませると、ライオネルは暗い森へと向かった。
「オレも行く」
「あんたは店番しなきゃ、だろ?」
最近物騒だからな、とライオネルは片手を上げて森へ消えていった。
- 628@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:20:11 ID:EBkJkD4Q
- 茂みの間から、辺りの様子を伺う。
依然として彷徨う者はチルチルを探しているようで、
この場所か見付かるのも時間の問題であった。
街から聞こえてくる笑い声と陽気な音楽に、
引っ込んでいた涙がまたでてきそうになった。
(ブラックスミスさん…ちゃんとお芋焼いているかな…)
緊張の所為か空腹は感じられないが、
今日はほとんど食糧を口にしていない。
一番に焼き芋を食べたかったと、悲しくなった。
(……師匠)
今度こそ涙が頬を伝った。
このまま二度と会えなくなってしまうのかも知れないと、
最悪の事態ばかりが頭をよぎる。
そんなときであった。
(チル、今何処にいるんだ?)
耳の奥に届く、ライオネルの声。
チルチルは驚いて辺りを見渡すが、彼の姿は見当たらない。
(あ、お前耳打ち知らないんだっけ?
耳に手を当てて、オレに向かって強く言葉を念じてみてくれ)
チルチルは言われたとおり、耳に手を当てて言葉を念じた。
(聞こえますか?)
(ああ、バッチリ。んで、何処にいるんだ?
一応スモーキーの森まできたんだけどさ、)
それを聞き、チルチルは顔を上げた。
- 638@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:22:03 ID:EBkJkD4Q
- 「来ないでください、師匠!!」
できる限りの大声でチルチルは叫ぶように言った。
同時にその場から走り出す。
ザックリと今しがたチルチルの居た場所に刀が降り下ろされた。
彷徨うの注意は完全にチルチルに向かい、
出口から引き離すようにチルチルは走った。
罠を置き、無駄と分かりながらも矢を放った。
「チル!?」
遠くでライオネルの呼ぶ声がする。
「来ないでください、絶対来ちゃ駄目です!!」
繰り返しチルチルは叫んで、罠を張りなおした。
先程よりもスムーズなのは、慣れなのか、必死さが格段に違うからか。
「アンクル…」
伸ばした手に罠は無かった。
きれたのだと、瞬時に理解できたが既に遅かった。
彷徨う者の一振りが、風を切って下ろされた。
肩から腹にかけて斜めに血が飛び散る。
「あ……ッ」
悲鳴を上げることも、痛みを感じることも出来ず、チルチルはその場に崩れた。
彷徨う者の、血に濡れた刀が霞んで見えた。
「チル、何処だ!?」
ライオネルの声は遠くに聞こえるようで、近くにも聞こえるようで。
それでも答えることができない。
地面に染みていく血が月の灯りに照らされる。
怖かった。
「ししょ…う…」
死ぬことよりも、ライオネルまでもが殺されてしまうかも知れないことが。
チルチルは手を伸ばした。彷徨う者の袴の裾を力の入らない手で握る。
とどめを刺される瞬間まで、この手を離さない、離すものかと。
もう片方の手は、耳に向ける。
(師匠…逃げてください、それから…それから、)
好きと、伝えたい。
こんな時になってまで迷う自分が嫌だった。
意を決死て、最期の言葉を伝えようとしたときであった。
- 648@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:25:24 ID:EBkJkD4Q
- 「アドレナリンラッシュ!ウェポンパーフェクション!
オーバートラスト!マキシマイズパワー!」
「…え…、?」
力強い声と共に、キィンと金属がぶつかり合う音がした。
「…チッ、製造型の命中率をなめんなよッ!!」
刀を振り払うようにチェインを降るのは、先程のブラックスミスであった。
「リザレクション」
暖かい光と共に、天使がその純白の翼から落ちた羽根をチルチルに与える。
その羽根は体に取り込まれ、傷を癒していった。
「ヒール!…これで平気だわ」
霞んでいた視野が広がり、そこには先程の光のように
暖かな微笑みを浮かべたプリーストが居た。
「ブレッシング、速度増加、イムポシティオマヌス、グロリア」
たからかな声でプリーストは自分とブラックスミスに祝福を施し、
使い込まれたスタナを手に彷徨う者へ立ち向かった。
「あまり無理は良くないわよ、ユウ?」
「そんなことよりトリシア、毎度ながら思うがお前本当に聖職者か!?」
勿論よ、とスタナを振り回しながらプリースト、トリシアは微笑んだ。
呆然とその様子を見ているチルチルの肩に、ライオネルの手が置かれた。
「大丈夫か、チル?」
「師匠こそ、大丈夫ですか!?」
「オレは別にあいつと戦った訳じゃないから平気だ、
それよりも自分の心配をしろっての!」
ライオネルはチルチルの手にふさがりきっていない傷があるのを見ると、
自分の首に巻かれた茶色いスカーフを解き、赤ポーションを染みこませた。
それを傷口に器用に巻いていく。
「ヒールは出来ないから、まぁこれで我慢してくれな」
「ありがとうございます・・・」
暗闇で良かったと、赤い頬のチルチルは思った。
どうやら殲滅も終わったようで、張りつめた冷たい空気から解放された。
- 658@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:27:27 ID:EBkJkD4Q
- 「どういう経緯か知らないけど、ありがとう二人とも」
「とんでもないわ、たまたまユージーンの露店を見に通りかかっただけですもの」
ブラックスミス、ユージーンにヒールをかけながらトリシアは言った。
「さぁ、早く街に戻りましょう?お祭りも賑わっているわ」
移動魔法ワープポータルが、辺りを青く照らす。
わき水のように溢れる光にユージーンは早々と飛び込んだ。
「俺たちもいくぞ、チル」
ライオネルはチルチルの手を引いた。
硬直して固まったチルチルを振り返って、笑った。
「何だ、ポタ乗るのも怖いのか?」
「ち、違います!行きますよっ!!」
チルチルは手を握り返せないまま、ゆっくりとライオネルに引かれながら
光の泉へと飛び込んだ。
「そういやさ、最後に何か言おうとしてたよな?」
ライオネルは思い出したように言った。
自分でも忘れていたことで、チルチルは跳ね上がりそうなのを必死に押さえた。
「あ、えーと、大したことじゃないんです!ええ、そうです!」
「じゃあ教えてくれたって良いだろ?」
気付くとバックミュージックにダンサーのサービスフォーユーが
ゆったりと流れていて、まるで誰かが仕掛けたのかと疑いたくなるようなムードになっている。
- 668@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:28:51 ID:EBkJkD4Q
- 「その、わたし、師匠のこと・・・・・」
好き、
何かがチルチルのその言葉を抑えた。
「尊敬・・・・しています」
失うのが怖い。
たった一言が全てを壊れてしまいそうで、怖い。
まだ側に居たいから、想い続けて居たいから。
痛む胸を押さえつけて、チルチルは笑顔を作った。
「何だよ、照れるな・・・」
ライオネルは照れ隠しか、頬を掻いた。
その頬が心なしか紅いのが、チルチルは嬉しかった。
「師匠でも紅くなるんですね!」
「でもって何だよ、お前俺をなんだと思ってんだ!!」
チルチルは声を上げて笑った。
これで十分だ、と。
「師匠、焼き芋買いに行きましょう!」
ライオネルよりも前を行こうと、チルチルは走った。
ユージーンの店は繁盛しているようで、トリシアも手伝っていた。
「すみませーん、二つ下さい!」
「ああ、お前たちか」
チルチルがゼニーを渡そうとするのを手で制した。
「手伝って貰ったからな、サービスするよ」
「え、でも葉っぱは殆ど集まらなかったし・・・」
「いえ、私たちで集めたから平気だわ。ね?」
トリシアの同意を求めたのは、アコライトの少年であった。
暗く顔がよく見えず、チルチルは彼に近づいた。
そして動きを止める。
- 678@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:31:14 ID:EBkJkD4Q
- 「えええええ!!!??」
その声にその場の者も硬直した。
ライオネルは首をかしげてチルチルとアコライトを見て、目を疑った。
「ミチル!!どうしてこんな所にいるのっ!!?」
「うるせぇよ黙れこのボケ姉!!」
顔を見合わせた二人・・・それは、まるで鏡に向かい合っているような
錯覚を覚える、よく似た顔立ち。
アコライト、ミチルは耳を塞いでいた手を離してチルチルの頭を殴った。
「痛いー!何で殴るのバカミチル!」
「だからピーピー鳴くんじゃねぇよ鳥かお前は!!」
「ピーピーなんて言ってない!ファルコンだってそんな風に鳴かないもん!」
「ちょっと待て!両方ともまずは落ち着いて状況説明しろ!!」
ユージーンが合間に入って二人を引きはがした。
落ち着いた二人は、見れば見るほどよく似た顔つきで、
髪の長さと身長以外はこれといった大きな違いが見あたらない。
「まぁ・・・・ひょっとして双子なのかしら?初めて見たわ」
「ていうか何であんたら気付かないんだよ!とくにユウ!!」
「ミニグラス付けてなかったんだ、近眼なんだよオレぁ!」
始まった言い争いにを前に、
頭を抑えたチルチルは大きなため息をついた。
それが聞こえたのか、ミチルはじろっと睨んできた。
「おーい、焼き芋頂戴!」
「わぁ、双子だわ可愛い!」
「写真とっても良いですか!?」
騒然と露店に集まっていた客が押し寄せる。
各自、疑問を余所に持ち場に着き尚した。
こそこそと芋を受け取ったチルチルは、ライオネルの元へと戻る。
「すみません師匠、五月蠅い弟で・・・」
「いや、それよりお前に弟が居るなんて初めて知った」
「出来れば逢いたくなかった・・・・はぁ」
あれだけ楽しみにしていた焼き芋も、あまり美味しいと感じられない。
彷徨う者に殺され掛け、その上ミチルとの再会して。
厄日だ、チルチルは呪った。
「でもさ、これから賑やかになりそうで良いじゃん?」
「・・・そうですね・・・・」
ライオネルの笑顔の前には、チルチルは頷くことしかできなかった。
その日フェイヨンの街は明け方まで音楽と笑い声が響き、
別れを前に最大の賑わいをみせたと言う。
アルケミストとウィザードの合作である「花火」は特に冒険者たちの目を奪い、
夜空に色とりどりの光と音を放って散っていった。
これからの冒険の始まりを告げるかのように。
- 688@銀兎sage :2005/08/17(水) 12:36:03 ID:EBkJkD4Q
- またもや省略されてしまったorz
そして訂正箇所が・・・・;
>>67
その上ミチルとの再会して→その上ミチルとも再会して
です。すみません;
かなりどうでも良いことですが
名前に関して、全て実はある統一性があります
分かった人は僕と握sh(サーバーから接続がキャンセルされました
- 69名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/17(水) 16:48:14 ID:fVw7sUHk
- 花と月と貴女と僕 6
かつかつかつ、と音がする。
ブーツが床を叩く硬質で神経質な音。
その音は、おおよそ、その主の人柄を表すものだった。
身を包んだ長衣。黒い服。頭にはビレタを被り、しかしその下の目は陰湿で冷たい。
聖職者だ。しかし、傍目にはそれよりも寧ろアサシンに見える。
最も、彼、もとい彼等が自らが忌み嫌うその連中を飼う、などという事はありえないけれど。
ぎい、と再び音。馬鹿みたいに大きく重々しい扉を、その聖職者が開いた。
彼等に宛がわれているこの部屋は、酷く手狭ではあったけれどもそれだけに、ありったけの毒が濃縮されていた。
──要するに、ここは毒虫の巣穴だった。
彼は、部屋の隅、地下へ続く階段の横に据えられた椅子、そこに腰掛けた白頭巾の男に一瞥をくれると、さらに歩く。
白頭巾は、顎の辺りから涎を垂らしていた。ぽたぽたと、胸の辺りに零れ、服を汚している。目線は遠い。
この状態では話にならない、と踏んだのだろう。
白頭巾を無視し、奥の机に腰掛けた老人に向った。
「枢機卿閣下」
「ああ、貴君か。よいよい、畏まるな。私はその様に過剰に形式めいた物は好かない。
何より、その様なものは我々の職務には全く不必要だからな。
それに拘って、支障を来すようでは甚だ本末転倒だ。
敬語と言うものはそもそも相手に対する尊崇の念で成り立っている。
それが無くては対話が成り立たない様ではそもそもその関係は破綻しているよ」
饒舌に喋る老人に、しかし僧服の男は言葉を返す。
「ですが…閣下は私共にとっては十分尊敬に値します」
「よしてくれ。そうは言うがね。確かに貴君等の指揮権は私にある。そして統括する身だ。
だが、私は我等の主以外に敬意を払う必要など無い、と常々思うのだよ。
人は皆平等に作られかし。ならば貴君も私も又同じ。互いを尊重し、最大限の力を引き出せればそれで良い。
…まぁ、敬意を払われるのはやぶさかではないがね」
彼の言葉は、正論ではあるが、教会という空間においては異端である。
又、それは彼を端的に示す物でもあった。
「異端を狩るのも又異端。不覚ながら…随分と縮小されてしまったとは言え、ここに居るのならば、君もそれは弁え給え」
「…はい、解りました。それで、首尾の方は如何でしょうか?」
ああ、と老人は頷いた。
「久方振りの大規模な狩りだ。上の腰抜けからは随分と反発を食らったがね。
何、連中が安穏と惰眠を貪るにも、必用な事がある。怠け者を叩けば埃は幾らでも出るものだ」
「確かに──安易さで腐れた連中の事。取引材料には事欠きませんね」
「それは全く…とは言え、流石に得られたのは私兵の出兵許可のみだったが。
満足に教義にも従えぬ雑兵ばかりだが…致し方無いな。
これも時代の流れ…と言えば、聞こえは良いが、我々は所詮流れに乗る事が出来ない人間だからな。
己が成すべき事を淡々と成し続け、他に手段を知らぬ。狂信者とも言える。
ならばこそ、我等は我等の職務を遂行するのみ…か」
ふう、と感慨が篭った溜息を一つ。
「枢機卿。そういえば、一つ話しておかなければならない事が」
「何だね?」
「──勝者が、今回の狩りへの参加を熱望しているとか。
何処で嗅ぎ付けたのか、今回の異端共に加担している男との戦を強く望んでいるようです。
正直、彼は引退した身ですし、それに信仰とはかけ離れすぎている。
直接申し出られた私には決めかねまして」
「ふむ」
真っ白い髭を摩り、男は何かを考える。
だが、直ぐに聖職者に向き直ると言葉を編んだ。
「構わない。許可する。その男は、あの勝者が再戦を望むような手合いなのだろう?
…私も随分と老いた。毒をもって毒を制すと言う訳ではないが、負担が減るならばそれに越した事は無い」
「聖堂騎士のお言葉とは思いません…正直、今でも卿ならば勝者とも互角と思われますが」
「いやいや…どうして年を取ると彼の様に体力が長続きしないものでね。
今戦えば確実に私がやられるだろうよ。全く、年とは取りたくないものだな」
首を振って応えた。
「──兎も角」
老人は一度言葉を切る。
「我々は、神の剣として、それを執行しなくてはならない。
研ぎ澄ましていなさい。遠からず、その時はやってくるのだからな」
「──御意」
狭い部屋に、淡々とした会話だけが響く。
それを聞く者は居ない。
何故ならここは異端の巣であり毒虫の根城。
そうでないものは最初から近づきもしないのだから。
彼等は異端であるが故に異端を狩る。
教会に残された最後の暗部。
名を、異端審問官と言う。
- 70名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/17(水) 16:48:52 ID:fVw7sUHk
- 「私の名前は、ミホ、尾に狐、と書いてミホね」
「僕は、ウォル」
ミホ、と名乗った女性に僕も同じく名乗り返す。
それを聞いて、黒マントの男は首を竦めた。
「それじゃあ…俺は、ロボ、とでも呼んでくれ」
「ロボ?」
「煙草の銘柄だよ。正しくはその一部をもじったんだが…何にせよ、呼び名が無いと不便だろ?」
言って笑う。そして、懐から一本、煙草を取り出すと火打石を打つ。
ぷかぁ、と紫煙が注に舞う。四角い煙草の箱の中で、孤狼が月に吼えていた。
「うー…わたしは?」
と、女の子が不満そうな顔で僕に囁く。
やっぱり、目の前の二人組とはまだ隔たりがあるようだった。
前を向くと、ロボとミホがそれぞれ対照的な表情を浮かべていた。
男は、ニヤニヤと笑っていて…一方の女は愕然とした顔だ。
「あ、あなた様には立派な御名がございます!!」
「まーまー。ここは、ウォルの奴に任せちゃどうだ?」
息を巻いて反論するミホに、ロボはそう言った。
その後で何やらごにょごにょと男が耳打ちをするなり、俯いて黙ってしまった。
…まぁ、硬く握られたその手がぶるぶると震えている辺り、微妙に後の展開が怖かったりするのだが。
それは兎も角、彼は僕が彼女の名前を付けろ、と言いたいらしい。
少し、考え込む。
いきなり名前を付けろ、と言われても思い浮かぶはずも無い。
その時、閃いた。
彼女と会った時、空には煌々と輝く綺麗な月──
「ツクヤ…というのはどうかな」
「わたし、つくや?」
「うん。…ま、まぁ余りセンスがあるとはいえないけどね」
「つくや…つくや… うん、おぼえたよっ」
反芻するように二度繰り返し、ツクヤはにっこり微笑んでいた
…うん。喜ばれるなら、悪くないと思いたい。
「ツクヤ…おう、それでいいんじゃねーか?」
投げ捨てた煙草を黒マントが踏み消す。
女性も又、不承不承それに承知する。
「で」
そして、僕は気を取り直す。
息を吐いて、ロボとミホに向き直った。
本題に入らなければならない。
「聞きたい事が沢山あり過ぎて困るんだけども、話してくれるんだろ?」
…さっきまであんなに強気だったのが嘘の様な声音である。
強気に要求出来ないのは…やはり、小市民のサガなんだろう。うん。
例えば湖のよーに僕の心は広いに違いない。S・A・G・A、サガ!!何処かから、そんな幻聴も聞こえた。
「…これがいきもののサガか…」
嗚呼。モヒカンバードの幻視が見える。
「いきもののさが?」
「…おーい、ウォル。帰って来い」
「……」
ツクヤは相変わらずで、ロボは呆れていて、ミホはというと睨む様にして僕を見ていた。
りぃん、と何処かで鈴が鳴る。
そんな幻聴を聞きながら僕は素晴らしいギター弾きの妄想に只立ち尽くすばかりだった。
next?
- 71名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/18(木) 00:47:27 ID:V5X6Ac/2
- >>銀兎の人
な、名前の統一性なんてわからないよorz
ソヒーの森でお禿様と握手して考えてくるorz
>>花と付きと貴女と僕の人
S・A・G・A シガ!……(゚∀。)アレ?
ロボ……まさかマ○ボ○が元だったりしますかね?
最近スレにも新しい人が増えてきて嬉しい限りだわ(´∀`*)自分でも何か書こうかしら
- 72名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/19(金) 09:22:20 ID:8IXo7X9E
- >>71氏
ロボはマルボロととある狼から取ってますね。
なんとなくサービスで参考資料的メイン登場人物の職業&簡易設定表置いときます。
後、ヒント。名前の当て字に注意。
ウォル(字を当てると『月』):年齢16 ♂
容姿と腕前共に凡庸なソードマン。妄想癖有り。
ツクヤ(字を当てると『月夜』)年齢:15くらい? ♀
変った言葉使いのソードマン。物語の鍵? これ以上は言えません。
ロボ 年齢:32↑ 自分の事を騎士と言って憚らないチェイサー。♂
スイートジェントルと黒いマントを着用している愛煙家。
ミホ(字を当てると尾狐) 年齢:20前後 ♀
短気な元戦闘員A。目付きがかなりキツい。毒舌である。
- 73名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/20(土) 11:39:25 ID:Eoxwz9Ns
- >>銀兎の方
一番最初に投下された時よりもチルチルの描写がセリフではなく
地の文で表現されるようになっていて
続きや別の作品が出る事に期待しまくりです
名前はチルチルとミチルにしか共通点を見出せませぬ、修行不足でした
71さんに続いて御禿様の元へ逝ってきますorz
ソヒー森| Λ...オレヲオイテイクナンテヒドイゼー
>>花と月と貴方と僕の方
御話が大分シリアスになってきて
序盤の破天荒な雰囲気も何処へやら〜ですね
今後どう話が膨らんでいくのか、想像しながら続きをお待ちしてます
ロボの由来の狼というと、モー○ア坑道に出てきた彼奴でしょうか?
長レススマソ
- 74名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2005/08/20(土) 17:44:26 ID:vu8Vf4Vw
- |ω-)誰も居ない…多分誰も居ない…。
『投下』
- 75名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/20(土) 17:46:33 ID:vu8Vf4Vw
- sage忘れた_| ̄|○|||
〜〜〜〜朧桜〜〜〜〜
プロンテラの南から暫く西にあるくと、バッタと呼ばれるモンスターがいる地域に着く。
その地域に、ある一人のロードナイトが休憩をしにやってきていた。彼の名前は『朧』。
月の龍と書いて朧である。尚、そんなことは言わなくても解ることだというのは百も承知である。
さて、彼は彼で色々と有名だった。
基本的に、パーティなどで狩りに行くときにあまり需要のない速さ特化の騎士であったがその戦闘能力はずば抜けていた。
それゆえに、さまざまな方面からのお誘いが来るのだが…どれも返答をあいまいにして消え去ってしまう。
まさに朧という名前にふさわしいというわけだ。
だが彼にも欠点はある。
「ああ〜平和だ。何か起こらないかな〜」
彼が『退屈だ』と思うと、確実に何かしらの事件が起こってしまう。
それは本人だけがわかっている秘密である。そして、それを考えてはいけないというのは頭ではわかっているのだが人間は刺激を求める動物。
ついつい何か面白いことを求めてしまう。
そして今日の事件は…。
「ひゃああああああああ!」
「ん?」
「何でこんなところにイービルドルイドがー!?」
「う〜ん、イービルドルイドか…ってあれ?」
例によって枝モンスターである。
枝モンスターとは、古木の枝という魔力を帯びた枝を折ることによってモンスターを呼び出すというまた迷惑なアイテムだ。
こういうのは90%良いことには使われず、大抵自分の楽しみだけに折るというパターンが多い。
と、いうか朧自身それ以外見たことがない。
まぁ今回もそんなところだろうと思ってみてみると…どうやら様子がおかしい。
現状は、イービルドルイドに女剣士が追いかけられてるのだが、更にモンスターが彼女の周りに集まる。
いや、集まるという表現はおかしい。寧ろ、沸いている。
しかもリビオやラーヴァゴーレムという上級モンスターからポポリンやエルダーウィローといった下級モンスターまでさまざまなバリエーションを取り揃えている。
何事かと思い近くまで走って様子を見る。助けてやれよと思うかもしれないが状況がわからないままでは自分もやられかねない。
そう思った朧は状況を理解することを先行した。
「誰か助けて〜!」
「うむ。上から99・62・88といったところ…じゃなかった」
冗談は置いといて、状況をもう一度確認する。
そして、理解すれば理解するほどこの女剣士の奇抜な行動に頭を悩ませることになる。
そう、彼女はまさに自分で枝を折って走っているのだ。初級の冒険者でもバカ極まりないと思うだろう。
ポーチから出て行った枝を踏んでは折り、踏んでは折り…。
そんな風にドンドンドンドンモンスターを増やしているのだ。
- 76名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/20(土) 17:47:33 ID:vu8Vf4Vw
- 「バカかあれは…」
頭を抱えて地面にひれ伏したいところだがそうも言ってられない。
ドンドンモンスターが増えているうえ、どう見てもか弱そうな女剣士を一人ほっておくわけには行かない。
そう考えた後、朧はすぐさま女剣士のところまで走っていった。
「おい!落ち着け!」
「ひゃあああああ!」
「むがー!うっせぇ!おわっと、折るな!」
「え?何が?」
「いきなり冷静になるんじゃねぇ!とりあえず状況が状況だからちょっと寝てろ!」
「え?え?ふ、ふああああああああ!?」
モンスターに追われてるときよりもよりいっそう高い声。
彼女は朧に胸倉をつかまれ、川にそのまま投げ込まれてしまった。確かにこれなら枝を折ることはないだろう…よっぽどではない限り。
一つの問題を解決した後、更にもう一つ目の問題に遭遇してしまった。いや、わかってたことなのだが。
目の前にいる大量のモンスター。
一般人ならここで一旦引いて救助を求めるのだが彼は違った。というかかなりの楽天思考だった。
更に突っ込むと、彼は戦闘の前だけかなりの楽天志向に切り替わるという、奇抜などと人のことをいえない性格をしていた。
「…ま、なんとかなるだろ」
彼は剣速高めるツーハンドクイッケンというスキルと戦闘能力を上げる薬物を使い、クレイモアを抜き去りモンスターの群れへと突貫する。
先頭に見えるはミノタウロス。まぁ彼の敵ではない。
軽く切り刻み次へと備える――が、既に彼は囲まれていた。
「さてとと、どうすっかな?」
まさに四面楚歌、しかも彼の思考では囲まれた後のことなど考えているわけもなかった。
しかし、彼が強いといわれるゆえんはここからである。
彼の正面から来るインジャスティス、通称変態のカタール攻撃を軽くかわし、さっきまで使っていたクレイモアを捨てて天津などの名産品、カタナを抜――かない。
あろう事か彼は鞘にカタナを入れたまま腰を低く落とし、目を瞑る。
そして、オーラブレイド、パリィング、コンセントレーションといったロードナイト特有のスキルを使い、極めつけにバーサークという狂戦士化する諸刃の剣的スキルを開放する。
そんな余裕があったのかと聞かれると実際そうではない。攻撃はもろに受けまくっていた。
それにも構わずスキルを開放し、自分のスタイルを整える。
目の前から来るインジャスティスのカタールの縦振りを避けようともせずに天津に伝わる抜刀術『居合』を放つ。
その剣速は鞘との摩擦によって生まれる火花が生まれ、消え去るまでの間に鞘にもう一度カタナを収められるほど速い。
この光景を見ていた女剣士の目には彼の体に触れる前に全てが切り落とされているようにしか見えなかった。
横からの挟撃、フェイント、さらには上空からの攻撃。何もかもが彼に触れる前に両断されていた。
そうすること2分。彼の周りにいたモンスターたちは全て切り捨てられ元の枝の世界とやらに返っていった。
「おい、大丈夫か」
「はい。ってうわぁあぁ!?」
「おまっ…どこまでドジなんだよ!]
川から上がった瞬間アラームが現れる。
多分、この女剣士が生み出したのだろう…いや、枝の力で。
軽く脱力したのち、女剣士を自分の後ろに引っ張りアラームの顔面に強烈な右ストレートを加えアラームを吹き飛ばし川に落す。
- 77名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2005/08/20(土) 17:48:23 ID:vu8Vf4Vw
- 「今度こそ大丈夫だな?」
「はいぃ…」
「後、状況はわかってるか?」
「それが、さっぱりで」
「はぁ………」
説明すること5分。ようやく状況を理解してくれたようだ。
そのどでかい胸を揺らしながらなぜかピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねている。
なぜかというと、このロードナイトがあの有名な朧だということが解ったからだそうな。
尚、自分がしてしまった過ちは当の昔に忘れ去られている。
「で、お前が枝をなぜ持って」
「うわぁ!あの朧さんですかー!私あこがれてたんです!」
「どこかで買ったのかひろっ」