全部 1- 101- 201- 最新50
【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第6巻【燃え】

1名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2004/06/13(日) 02:30 ID:PLOYwC1U
このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ【エロエロ?】』におながいします。
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ

・ 感想は無いよりあった方が良いでつ。ちょっと思った事でも書いてくれると(・∀・)イイ!!
・ 文神を育てるのは読者でつ。建設的な否定を(;´Д`)人オナガイします。

▼リレールール
--------------------------------------------------------------------------------------------
リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
--------------------------------------------------------------------------------------------
※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。

前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第5巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1084461405/

スレルール
・ 板内共通ルール(http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoesub&key=1063859424&st=2&to=2&nofirst=true)

▼リレー小説ルール追記--------------------------------------------------------------------------------------------
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ リレーごとのローカルルールは、第一話を書いた人が決めてください。
  (たとえば、行数限定リレーなどですね。)
--------------------------------------------------------------------------------------------
2どこかの166 :2004/06/13(日) 02:35 ID:PLOYwC1U
と、言うわけで新スレです。
多くの文神様の降臨を祈って。
降臨祈願(-人-)〜†
3保管庫"管理人"sage :2004/06/13(日) 02:49 ID:BP/Rn5ns
スレ立ておつ&3ゲットっと

保管庫の場所、おいておきますね
http://cgi.f38.aaacafe.ne.jp/~charlot/pukiwiki/pukiwiki.php
4名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/13(日) 07:51 ID:AkUzJJhE
げっつ
5名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/13(日) 08:23 ID:RLzwT4/6
さようなら、5巻
こんにちは、6巻

そして・・・5ゲッツ
6名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/13(日) 10:00 ID:mVI1T26k
6ゲット、そして今だ書きあがらない漏れ/BAN
○)))).... | ̄|_

そういえば全スレって一ヶ月の命だったんですね。
回転速くナリマシタネ。
7名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/13(日) 13:16 ID:v4wTfzFg
読み専としては充実したペースだったよ>前スレ
ともかくスレ立て乙>1
8名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/13(日) 13:36 ID:q8xGmUVk
やっと6巻目に突入ですな。
というわけで記念の8(σ・∀・)σ ゲッツ!!!

>>1
すれ立て乙
9名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/14(月) 09:45 ID:PAipbeiY
9ゲット

……リレーの地上方面の話…書いてる途中だけど投下して良いものかいな
なんか戦線拡大しそうな感じになっちゃってるけども…
まぁ、書きあがってから考えよう

魔物サイド|  λ............ドウニカキレイニマトマランモノカ
10下水リレー(地上sage :2004/06/14(月) 16:54 ID:oiXf8r/I
 10をゲットしつつ、ママプリを大聖堂に侵入させてみるテスト
----

 王都プロンテラの西の城壁沿いを、走る女の顔には常に無く苛立ちの影が濃かった。
「…ここも塞がれている? …手回しが良すぎる」
 神出鬼没と言われるプロンテラの聖女だが、彼女とて生身の人間であり、常に雲を霞と消えられるわけではない。
教会に追われる身である彼女は、今日のように城外への転送結界が張られた時に備えて常に首都への出入りの
ルートを複数確保していた。それが、今はことごとく封じられている。

「あとは…一箇所。あそこが駄目なら、西門を強行突破するわよ」
「了解した。義母上」
 が、駆け出そうとした二人の足を、横手からかけられたしわがれ声が止めた。
「無駄じゃ。首都から西に抜けるルートは全て封じさせてもらった」
「……そう、貴方が手を回していたとはね…“元”大司教様。モロクからわざわざご苦労様」
 油断無く声の出た路地の暗がりを見る聖女の目に入ったのは、最後に別れた時から一回り小さくなったような
僧服の老人。その手には彼女の持つのとよく似たソードメイス。それに気が付いた瞬間、彼女の目が微かに
細められた。
「…真のクルセイド計画完遂の為、お主には死んでもらおう」
「義母上…ここは我が」
「貴方の相手できる人じゃないわ。さがりなさい」
 打ち鳴らされる鋼の音がリズミカルに夜の闇を裂く。
「真の…と言ったわね。それが貴方の戻った訳!?」
「二年前、聖堂騎士団を全滅させた例の件の失態で首都を追われたが…計画完遂の暁には再び中央に返り
 咲くことができる」
「そんな理由でっ」
 一際大きく打撃音が響き、二つの影が僅かに離れた。子バフォが鎌を構えたまま、身動きもできぬ程の応酬
だというのに、交わされる二人の言葉は息一つ乱れていない。まるで、型通りの演舞をしているかのように。
「引くなら引くがいい。首都にとどまる限り、お主も魔族共とまとめて灰になるのだからな。そして…首都から
 出る間道は既に無い」

 この老人がそういうのならば、確かにそうなのだろう。魔族の子バフォならば仮死に陥ることで魔界への転移が
可能だが、彼女が逃げる道はない。…しかし、それは逆に言えば。
(魔族の進入路もコントロールできる…ということ。考えたわね)
「…お主は知るまい。聖堂地下にある偉大な存在を。魔族、そして背徳の都に住まいし神の意に沿わぬ愚者を
 GameServer01ごと灰に化す…それが真のクルセイド」
「…真の? じゃあ、首都防衛の為に来るゲフェンやモロク、アルベルタの兵力は…」
「神の威に背く金銭亡者、暗殺者……。全て諸共に砕くのだ…そして、お主もな!」
 横薙ぎに振るわれる司教のソードメイスを、聖女が立てた己の武器で止めた。
「外敵に地上の聖堂が攻められれば、自動的、かつ即座に発動する其れは神の意なり。もはや誰にも止めら
 れぬ!」
「地上の…」
 聖女が口を動かさずに小声で念を飛ばす。
『伝えて。首都を攻めるな…いや、攻める振りだけ見せて、引き込まれるなって。時間を稼いでくれれば、後は
 どうにかするわ』
『…義母上? 何を』
「色々と…口ばかり達者になったわね!」
「お主は修行を怠ったようだな!」
 振り下ろされた一方の武器は、老人の肩を砕き、薙ぎ上げた他方の武器は、聖女の顎を叩き割った。頭蓋を
揺さぶられた聖女の視界が崩れる。彼女に見えた最後の情景は、老人が放ったホーリーライトが子バフォを
吹き飛ばす姿だった。

 ぱちぱちぱち…、と乾いた音が路地に響く。

「いや、さすがですね、“元”大司教様。あのプロンテラの聖女を一騎打ちで仕留めるとは。私の気遣いは無用
 でしたか」
 若い聖騎士が、微笑を浮かべたままで手を上げると、聖騎士団の紋を身につけた兵士達が彼の背後から
現れた。彼等が、横たわる聖女に向かいかけるのを、老人が制する。
「…生きているならば…、いや、死んでいても、この女の取調べは私が行おう。地下を借りるぞ?」
「尋問でしたら我等にお任せいただければ」
 しどけなく横たわる女をちらりと見てから、若き狂信者は糸のように細めた瞼の奥より、老人を試すように睨む。
老人は、唇を嘲りの形にゆがめた。
「…己は若い。この女、色欲を絶った者、魔族すら落とす色魔ぞ。それとも、お主はこの女が欲しいか?」
 口を開き掛けた自分の口腔が乾いているのに気づき、聖騎士は唾を飲んだ。すぐ後ろで、いくつも同じ音が
聞こえる。ごくり…と。
「……任せましょう、“元”大司教様」
「己の分を弁える事だな。それと…、いつまでも“元”などと呼び続けていると、後で後悔するやも知れぬ、と
 忠告しておこう」
 老人は辛辣に言い捨てると聖女を抱え、短距離転送門へと消えた。聖騎士が姿の消えた老人に向かって
呪詛の如く呟く。
「……地位に拘る俗物めが…だからこそ利用できるというものだが。クルセイド後に貴様の居場所などある
 ものか」
 その口元は常の微笑を消していた。

----
 ママプリ負けてみせたのは八百長ですからね? 顔に傷つけたのは、八百長と監視者に見破られない為
ですからね?
 と言い訳しつつ、久しぶりに駄文を放置。とりあえず、意図としてはクルセイドの全容を、悪党がボタンポチッ
とな、の止めやすいものに変えて、止める際に押さえるべき場所に強そうな方を放り込んでみる。
 あ、老司教はコラボの老残の人です。使用済みなので煮ても焼いてもいいですよ…。
11下水リレー(地上sage :2004/06/14(月) 17:10 ID:oiXf8r/I
 で、なんとなく書いてしまったものの、プロレスなんて詳しくないので続きがかけない物をおいていく…。

----

 下水道入り口南の橋。南西からの亜種族の群れを食い止めるための最後の防衛線である。防衛戦の為に
前線に戻ったフォン=フリッシュ将軍の指揮下にあるのは決して精兵ではなく、場所柄防衛に手を貸してくれて
いる冒険者達も集団戦慣れをしているとはいえない。
 だが、彼は弓兵を主体とした巧みな戦線構築で猪突猛進を主策とするオーク達を翻弄していた。自らは橋の
中央で仁王立ちとなり、群がる亜人をある者は斬り、ある者は川へと叩き落す。

「よし、お前等…俺の名前を言ってみろ!」
『レオ=フォン=フリッシュ! レオ=フォン=フリッシュ!』
 降り注ぐ矢の雨がオークの足を止める。
「そうだ。俺がいる限り、ここは陥ちん。ほれ、バナナ食え」
『レオ=フォン=フリッシュ! レオ=フォン=フリッシュ!』

 その様を彼方から見やったオークヒーローは、地に唾を吐き、立ち上がった。
「糞…気に入らぬ。奴一人のために橋を抜けぬとは」
「…駄、駄目ですよ。ロード様もいらっしゃらないのですから、貴方まで…」
 その口調に剣呑な物を感じたオークレディが、慌てて前に回ろうとした、が。
「小言は後で聞こう! 我がオーク族の血が命じるのだ。己より強いかも知れぬ者…見過越しには出来ぬ
 とな! …親衛隊、続けぃ!」
 オークヒーローの巨体の周囲に、青灰色の精鋭部隊が集う。オークレディはため息をつくと、別の婦人
兵に太鼓の用意を命じた。

 オークの兵の波が引いた。そして、低い太鼓の音が響く。オーク族の村に響く太鼓は、村の中ではそこを
守る守護者を称える音。外部では戦に挑む勇者を称える音色。フリッシュ将軍はまばらな木の向こうに、
一際巨大なオークの姿を認めると、弓兵達を制し、一人橋の真ん中で待った。
「我はオーク族英雄。戦士の中の戦士! 人よ…名誉ある一騎打ちを所望する」
「オークヒーローか。俺の名は…」
『レオ=フォン=フリッシュ! レオ=フォン=フリッシュ!』
「……いや、聞かずとも分かる。それに名など戦士には無意味」
 オークヒーローの周囲から、親衛隊がさっと下がる。橋を覆うように立つ巨体と、其れを迎え撃つ一回り
小さな…しかし、人間としては十分に大きな男が目を合わし、どちらともなくニヤリと笑った。

 それが、戦いの合図だった。

----
 という感じで下水前も膠着させようと試みるテスト…。動かしたければ一騎打ちに水を差せばイイし。
ほっといても害はないよね?

 そして、9氏が「書いている途中」とあるのをみて血を吐いてみる…。これから書くんじゃないのか…。
ごめんよ、なんかまずかったらごめんよ
129/上水道リレー 魔物サイドsage :2004/06/14(月) 20:36 ID:PAipbeiY
とりあえずGH騎士団の動きっとね
_______________________________________

「前衛のレイドリック隊、カーリッツ隊それぞれ戦闘に入りました。レイドリック・アーチャー隊、援護に入ります」

「GH騎士団の西に展開中の、オークD駐留部隊オークヒーロー副司令が動かれました。現在ハイオーク親衛隊とともに前線に向かって進行中」

「北西方面より進軍中のゲフェン隊、プロンテラ騎士団遊撃部隊と戦闘が開始されました」

「赤の司祭殿より入電。強行偵察作戦"ダインスレイフ"発動。部隊は上水道へ侵入完了」
ライドワード達が淡々と戦況を報告する中、ブラッディナイトはじっと前線を見つめていた。

「おかしい…我らがここまで出てきておるというのに、聖騎士団が未だ動かぬとは…何か策があるというのか?
くそっ、獲物を目の前にして動けぬというのも腹立たしい!!」
キリキリと歯軋りをしながら、ブラッディナイトはGH騎士団に命令を下す
「彷徨う者遊撃隊、深淵騎士隊は後方にて待機。ジョーカー隊はプロンテラ南まで偵察。ウィスパー隊はハイド状態でプロンテラ内に侵入。何かあれば即報告。
なおウィスパー隊の戦闘は厳禁、見つかったら即逃げろ。報告が最優先だ。よいな」

「「「「Sir Yes,Sir」」」」
ライドワード通信兵達が、所定の部隊に通信をしている中、通信兵長のアリスが声を上げる。
「血騎士様、プロ北迷いの森部隊からの入電です。取り急ぎ報告する事があるそうですが、如何致しましょう」

「バフォメット閣下からか?よし、繋いでくれ」

「了解しました」
パタパタと通信機を操り、迷いの森部隊からの映像をブラッディナイトの前に出す。

「戦闘中失礼します。こちらプロ北迷いの森部隊所属バフォメットjr。取り急ぎ報告したい儀がございます」

「構わんよ。まだ戦闘は始まったばかりだ。それよりも急ぎの報告とは何だ?」

「ハッ、それでは報告を…」
バフォメットjrは、ママプリから聞いた対魔族殲滅計画『クルセイド』の詳細を話す。

「………」
報告を聞いたブラッディナイトの沈黙に、バフォメットjrが怪訝な顔をして問いかける。
「いかがなされましたか、血騎士候?」

「クックックックック…ハァッハッハッハッハッハッハ!」

「血、血騎士様?どうなされたのですか?大丈夫ですか?」
驚いたアリスが、ブラッディナイトに声をかける。だがその言葉に答えずに、笑い続けるブラッディナイト。
ひとしきり笑った後で、いきなり怒りの形相に表情を変え、手に持っていた"カッツバルゲル"を地面に刺して、言葉を吐き捨てる。

「腐ったヒトの聖職者共の思う通りにさせて堪るか!!ジェスター隊、ダークフレーム隊出撃準備!!
両隊はジョーカー隊に合流後、プロンテラ南で撹乱行動!!ウィスパー隊に連絡!!大聖堂付近にハイド状態で部隊を展開!!
聖騎士団の動きを逐一報告せよ!!聖騎士団が動いたら即撤退!!戦闘は極力避けるように!!」

「りょ、了解しました!!」
慌ててWIS装置に向かうアリスにむかい、さらに命令を続けるブラッディナイト。
「オークD駐留部隊に連絡!とっととオークヒーロー殿を呼び戻せとな!!
このままプロンテラ騎士団だけに戦線を展開しておっては、我らは壊滅するぞと言ってやれ!!」

「オークD駐留部隊より返信!現在オークヒーロー様へ報告の為、通信兵が前線へ移動中、間もなく繋がる。との事です!!
…あのぉ、ゲフェン隊に連絡はしないのですか?」
そう恐る恐る聞いてくるアリスに、ブラッディナイトが答える。

「ゲフェン隊の背後はゲフェンタワーの魔術師連中のみだ。そいつらの大半はGHに向かうだろう。
強行偵察隊が潜入した後に動き出してもどうにかなる。それにプロ北部隊から連絡もいっておろう。ドラキュラもアホゥではない、どうにかするさ。
問題なのはプロンテラ南に集まる各国軍の動きだ。動かなければならぬ"時"を逃すと、後は我らと騎士団で揃って殲滅されるのみだ」

「りょ、了解しました!!」

WIS装置に向かい、必死で操作しているアリスを視界の端に収めつつ、ブラッディナイトが嘆息と共に呟く。
「幾ら司令官級が同格だと言っても、私より古くから戦っている者に命令など出来るものか…
血の気が多いとはいえ、あまり前線に出られても困るのだよ、ヒーロー殿…」
__________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________

超兄貴とレオ=フォン=フリッシュの一騎討ちは、こちらの考えと一緒だったり…
けどとりあえず今日はここまで。
13リレー地下577・皆様のご意見入れてsage :2004/06/14(月) 22:32 ID:TpitmTuE
お久しぶりです
では・・・

------------------------

俺はなにかに貫かれたような刺激を受けて、
いきなり起き上がると・・・そのまま凍り付いてしまった。
丁度100歩先に金色の野郎が黒い空気と共に佇んでいる!、
そしてその間から微かなオーラーが漏れている、
あいつだ、
あいつが大変なことになっている、
だが俺がなにをするまもなく、金髪の男が
さらにオーラーにむかって進んで・・・。

そこでぷっつりと光は失われた。

『け…けがをしているだけに決まっている…かるいけがさ…。』
俺は心の中で必死にそう思い込もうとするが、
奴の向こうに見える白い篭手をはめた手はピクリとも動かず、
水に侵され、白く洗われてゆく・・・。
そして男の声が

「おやおや・・・お目覚めかね、ねぼすけ君。
残念だ、君に見せたかったよ、私の勇姿をね・・・フフフ。」

「・・・く・・・クッ・・・。」

「如何した?見えなかったのがそんなに残念なのかい?
安心しろ、君にも見せてあげよう・・・命と引き換えにな。」

俺は
俺は・・・。
俺は自分の服の前を両手でぎゅっと握り締めると、
これからやることに向けて精神を集中し始めた・・・。

---

俺は自分のこの「仕事着の紫」を着る時、いつも思い出す。

レオ=フォン=フリッシュ
『アサママさん、お宅のアサシンくんは、固定PTをまったく作ろうとしません。
 そう、嫌われているというより、まったく人とうちとけないのです。
 初心者教師としてとても心配です。』

アサママ
『それが…恥ずかしいことですが…親である…わたしにも…なにが原因なのか…』

ノービスの時から思っていた。臨時広場に座っていると、それはたくさんの人と出会う。
しかし、普通の人たちは、一生で真に気持ちが通い合う人が、いったい何人いるのだろうか…?

大聖堂の女プリのともだち欄は、友人の名前でいっぱいだ。
50人ぐらいはいるのだろうか? 100人ぐらいだろうか?

騎士にはペコがいる。ハンターには鷹がいる。
自分はちがう。
ギルドエンブレム背負っている人とか、ひゃっくたんはきっと何百人といるんだろうな。
自分はちがう。

「自分にはきっと一生、誰ひとりとしてあらわれないだろう」
「なぜなら、この「仕事着の紫」が見える仲間はだれもいないのだから…
 見えない人間と真に気持ちが通うはずがない」

オーラ聖騎士や死んでいた踊り手、女クルセの姉ちゃんにブラックスミスの自称弟、震えていたアコに
出会うさっきまではずっとそう思っていた。
目の前で殺されていった奴のことを考えると、背中に鳥肌が立つのはなぜだろう。
それは、目的が一致した初めての仲間だったからだ。後ろに続く者の為にという、この戦い!
数十分の間だったが、気持ちがかよい合っていた仲間だったからだ。

俺は「仕事着の紫」を見て考える!
こいつを昔のように目覚めさせてやろう・・・。
紫の衣は毒の衣、尽きることの無い毒の恐ろしさを奴に味合わせよう、
悪魔にだって効くはずだ、
周囲から絶え間なく浴びせかけられる
「操られるモノ」よる毒のシャワーなら・・・。

---

「いくぞおああああああ!!!」

「フン、雑魚がなにをするというのかね?」

奴の構えに向かって50歩の距離をまで詰め寄ると、
そのまま右回りに回転しながら服の力を解放する、
びちょびちょとたまらなくおぞましい感覚が俺の肌の上をなでまわすが、
こちらは歯をくいしばって奴の周りをくるくる回りながら
蛇のように波打つ「仕事着の紫」に命令を与え・・・。

そして布は一瞬にして、俺だけに見える
蛇のようなケーブルを展開して
ターゲットを囲みに入れた!。

「くらえッ!! 金髪野郎ッ!! 半径20mベノム・スプラッシャをーーーッ!!」

「ヌウッ!?」

何も無い空間から毒が強力な勢いで噴出していくその光景に、
完全に虚をつかれたのか、奴は一歩も動くことなく
毒を全身に浴びていく。
ジュッジュッと響くその音から与えたダメージをはかりながら、
俺はカタールを握りなおして、
奴がその中心から出てきたときに
首を刎ねてやろうと待ち構えていたのだった・・・。
14名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/15(火) 06:19 ID:1m4pjJT6
半径20mキターーーーーーーーー!
15名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/15(火) 23:41 ID:AFA9X80c
リレーは面白いんだが中途半端で切れてる所や難しい伏線とか放置されてる気味なのでその辺りが気になるなぁ。
スレ汚しスマンかった。
16名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 12:06 ID:vUbuX2y6
下水小説続きが読みたいです(´・ω・)ノ
17ある鍛冶師の話(3-1)sage :2004/06/17(木) 12:07 ID:vUbuX2y6
 まだ、その熱が離れない。

 触れた瞬間の記憶などは覚えていやしなかった。
 渡されたマインゴーシュはいつもの剣と一緒に腰にさしてはあるが、
 実戦に使うなと言われた手前切れ味を試す機会がない。
 駄目元で銀髪の聖職者である義姉に声をかけたら、彼女は悪びれずに笑顔で、

 「お肉でも切ったら、切れるし焼けるで一石二鳥?」

 要約すればつまり火の魔力をこめてあるのなら、生肉を切ると同時に焼くことが
 できるのではないかと彼女は言っているのである。常に何処か言葉足らずな事を承知し
 ていれば、大体の会話はいつも成り立つ事ができた。

 誰かに編みこんでもらったらしい銀髪にかかる淡い色づいた花びらの輪は、彼女に
 はよく似合っていた。ふいに自らの髪に手をあてながら、僅かにリツカは目を伏せた。

 騎士であることは少女の誇りであった。
 そしてそれは生きる理由でもあった。

 今自分の肩によりかかりながら眠る義姉は、自分にとっての主であり永遠の人だ。
 初めて見たときにそう決めた、ただひとつだけの約束。

 自分は何があってもこの人の傍に居よう、と。


 先の世界大戦において首都に侵攻してきた魔物をねじ伏せた英雄が、彼女達の父であり、
 兄であり、師匠でもあった。金髪の髪に碧眼という絵に書いたような英雄は、それでいて
 飄々としているところがあり、周囲が気づけば何時の間にか彼は英雄になっていたのである。

 とはいえかの騎士は英雄であるという肩書きを好まなかった。
 そのせいか、今ですらあまり首都に居る事が無い。
 自由気侭に生きたいのだそういう、男だった。

 リツカが、イリノイスに会ったのはその大戦のあとだ。

 リツカが記憶を辿る限りでは、自分には家族というものがあったような気はしている。
 優しい声で自分の名前を呼ぶのは、恐らくは母親。
 少しぶっきらぼうに自分の頭を撫でるのは、恐らくは父親。
 けれど思い出す事を拒否するように、それ以上の事はひどい頭痛とともに思い出す事が、
 まるで、できない。

 気が付いたら握っていた刀を杖がわりにしながら、通りを歩いていたら。
 自分よりも少し年齢が上と思われるやたらふわふわとした雰囲気の少女に、
 いきなり声をかけられた。それが今の義姉である。

 彼女の後ろに居た金髪の騎士は連れの少女が声をあげたと同時に、思わず剣をかまえていた。
 それと同時にリツカはただ殺されないがために、杖にしていた刀を振るえる足で地面を踏みしめ、
 その騎士へと向けたのだった。それが気に入った原因だっというから、騎士の頭の中はまるで
 今も理解することができない。

 けれど、途方もなくあの騎士の背中を追いかけるように、自分も騎士になったのは。
 少なからず焦がれる存在なのだろうと、リツカは自分の中で位置付けていた。

 ひどく怯えていた自分を、まるで幼い子を守るように背にかばい立ったのは、
 この銀髪の聖職者である。このこは違うのと言う連れの少女の言葉を聞きながら、
 確か騎士は安堵ともに大笑いしたのだったか。

 初めはただのお節介な女。
 次になんて弱弱しい存在。
 そして、そのくせに何故守ろうとするのか。

 だから、リツカはイリノイスを守ることを決めざるをえなかったのだ。




 「・・・・・あれも戦闘には向かなかったな」

 鍛冶師のことをぼんやりと思い浮かべる。
 全体的にやたらと人のよさそうなイメージは変わらない。
 ただ少し、彼は男であるから、指先の作りも体の大きさも、つまりは性別の差が全てであった。

 思ったより、しっかりしている作りだった。

 そんなことを思いながら、ふいにまたあの鍛冶師のことを考えていることに苦笑いを浮かべた。

18ある鍛冶師の話(3-2)sage :2004/06/17(木) 12:08 ID:vUbuX2y6
 雨上がりの空を見上げるとふいに虹が見えた。
 鍛冶師はぼんやりとそれを見上げながら、手にしている斧を振り上げた。

 先日のモンクギルドでの一件以来、明らかに避けられている自分に鍛冶師は自嘲した。
 そもそも煽ればああやって行動をしてみせるなどとは、皆目検討もつかなかった。

 「・・・・・・あれは可愛かった」

 ぼんやりと言葉を口にしてしまってから、鍛冶師は四百五十六個目の鉄鉱石を拾い上げた。

 途中雨に阻まれながらも、こうして砂漠で緑の影を見つけては必死に殴りつけること数時間。
 カートの中身にあったプロンテラ直輸入の牛乳は、もう大分へり。
 かわりに冷たい色をした鉄鉱石がカートの中で揺られていた。

 考える事がありすぎるときは考えないほうが、かえって楽だったのかもしれない。

 目と閉じればすぐさま浮かぶ赤い色にどうしたらいいのか、いまだに鍛冶師はわからない。
 作ろうとしていた剣と言えば、途中で打つことが怖くなり、
 ようやくできたマインゴーシュですらも実戦に使うには少し不安があった。

 過去の事を気にするほど、足がすくむ。
 指先から冷たくなるように、震えが広がるのだ。

 あの赤は彼女の髪や目の色と少し似ているかもしれない。

 暗殺者の死体は直後アサシンギルドに引き取られたようで、
 あのまま冷たくなっていく彼は今は冷たい土のしただろうか。

 今ですら震えるというのに、彼女のために剣を作るなどと言うのは到底無理そうだ、
 そう思いながらまた斧を振り上げる。

 鈍い音とともに切断された緑の残骸からも、こぼれ出るのは赤い色。

 「・・・・・・ごめんな、せやけどどうしても変わりたいんや」

 同じ色だなと認識しながらも、そうせざるをえなくなる。
 それこそ自分が武器を作るなどと言う行為をやめれば、いいのだろうか。
 そうしたら、俺はあの人を忘れられるだろうか。

 失わずにすむだろうか。

 些細な事だきっと、俺が居なくとも世界は回る。

 たった、それだけのことだった。
 鍛冶師が居なくなろうともあの騎士はかの聖職者のために剣をふるうであろうし、
 武器を手に入れる事もできるだろう。そう考えて、その武器たちに何を思ったのか。

 不思議と震える指先から震えが消える。
 かわりに溢れるものがある。

 作らなくては。
 作るのだ。

 かの騎士にふさわしいものができるまでは、諦めきれない。

 「せやないと絶交らしいしな」

 友人である商人を思い出しては、鍛冶師はまた斧を振り上げた。


 狩が終わりゲッフェンへと戻ってくると、
 緋色の髪の見覚えのある聖職者がこちらに向って手を振った。
 袖口にある赤い月のエンブレムからして、赤月華の人なのだろう。

 「・・・・・・ジェー、ジェニーだっけ?」

 聖職者は悪びれず名前を間違えてみせると、カプラ嬢が差し出すマフラーを首に巻いて、
 軽くカプラ嬢に頭を下げた。大通りを左にいったところにあるカプラ保管所は、
 中央から外れているとは言えまだ人が多い。

 ジェニーだなんて呼ばれた自分の名前に鍛冶師は、やや眉を寄せた。
 
 「ごめんごめん、えーっと」

 「ジェイ、です」

 少し寄せられた眉のまま言う鍛冶師の言葉に、聖職者があぁと相槌をうつ。

 「あたしの名前はわかる?」

 「コーリアさんでしたっけか」

 「そうそう。偉いなぁ、やっぱ商人さん系だと人の名前覚えるの早いのよね」

 感心したようなコーリアの物言いに少し眉を鍛冶師はゆるめる。

 「貴方階級幾つだっけ?」

 「82です」

 「お。あたし78なんだけどさ、それでよければちょっと付き合ってくんない?」

 冒険者の強さの位を述べてみせると、コーリアはなんだか口端をつりあげながら言う。

 「そら折角のゲッフェンだし?ゲフェニアダンジョンに行くに決まってるでしょ」

 わかってないなぁとコーリアが肩をすくめると、
 鍛冶師は僅かに青ざめた。

 「俺、完全製造なんやけど、いけるん・・・・・かな」

 「大丈夫。こちとら神速の退魔師だし」

 神速。
 口にしてから初めて出会ったときの事を鍛冶師は思い出す。
 あの白い羽の魔法は聖職者によるものだった。
 正式に言うと魔法とは部類が違うのであるが、それでも神の力を借りて行う業は、
 どう考えても鍛冶師には未知なるものの部類である。

 「無理せぇへんで居てくれるなら」

 折角の聖職者の誘いである。
 ここで誘いを見逃せば、また暫くソロであることはわかっていた。
 どこまでいけるか不安ではあるものの、鍛冶師の了承の言葉に聖職者は思ったより、
 子供じみた屈託のない笑顔で、

 「オーケィ。さー気合入れていくっわよー!」

 コーリアの振り上げたグーの拳を見つめながら、このひとは殴り向きなんじゃないだろうかと、
 鍛冶師はふと、思った。

19ある鍛冶師の話(3-3)sage :2004/06/17(木) 12:08 ID:vUbuX2y6
 ゲフェニアダンジョンの一階には赤い色の神速といわれる蝿がいる。
 蝿の王もしくは、赤い星のなんたらと物語のそれに例えられては、
 冒険者達に恐れられているその存在。

 一歩踏み出すだけで空気が違うのだ、
 紫色の瘴気のようなまとわりつく空気。

 ここには死者がいる。
 ここには魔物がいる。

 そうして生きとしいけるものに向けられる増悪の感情の渦は、
 冒険者達をさらに奥へと誘い込む。

 とびかってくる赤い蝿にうんざりという表情をみせながら、
 コーリアが聖なる十字架をふりかざす。

 「ホーリーライト!」

 鈍い音ともに落ちた赤い蝿を見つめながら、
 自分が叩くよりもよっぽど強かった威力に少し目線をそらした。

 「ん、どうかした?」

 小首を傾げられて問われると、鍛冶師ジェイは慌てていや、と言葉を濁す。
 まさか攻撃力の違いに項垂れてましたなどとは、口が裂けても言えやしない。
 そこのあたりジェイにも男のプライドとやらはあるようで。

 「・・・・・・・・いや」

 言葉にごす今の狩の相方を見ながら、コーリアは肩をすくめて笑った。
 そんな調子で歩みを進めていくと、どうにか赤い蝿にたかられることもなく、
 なにやら鈍い瘴気をはなつ階段の元へとたどり着く事ができた。

 そのふちから覗く世界は暗い、世界。
 一寸先は闇という言葉はこのために用意されているようであった。

 二階へと下がる階段の手前でコーリアが深呼吸をする。

 先に踏み出したコーリアの後ろでジェイも同じように僅かに息を吸い込む。
 長く息を吐いてからかわりに吸い込んだ空気に混じり、
 暗い不安がこみ上げてくる。
 肺を満たした瘴気が恐らくはそう思わせるのか。

 沈みがちになる意識を古い立たせるように鍛冶師が声をあげる。
 響き渡るジェイの声にコーリアは僅かに肩をびくりとさせる。

 「・・・・・あ、すんません」

 思わず謝るジェイを見ながらコーリアはまた笑みを浮かべる。

 なんだか年上の女性を相手にしているような気分になりながら、
 ジェイは少しくすぐたかった。

 降りていった先で彼らを待ち受けているのは、
 うす暗い世界。

 よく響く蹄の音をたてながら一匹の人面馬が足をとめる。
 こちらに狙いを定めたように視線を馬が向ける、それを見返しながらジェイは斧をぎゅうと
 握り締める。後ろでコーリアが短く何かを唱え始めたのを感じた。

 人面馬がその詠唱に気づきこちらへと駆け出してくるのを睨みつけながら、
 兄の作った水の魔力がこもる斧を思い切り叩きつけると、ジェイの手には鈍い感触が走る。
 びりびりと痺れる様な手のひらに、押し負けないように押し返す。

 「お前の相手は、俺や」

 カートを数歩後ろにひいてから、間をあける。
 せせら笑うようなあがる甲高い馬の嘶き。
 ひくりっとジェイの眉が寄せられると、ジェイは押し返した斧ごと軽く体を低くする。

 「・・・・・・・・!」

 一瞬のつめるような息のあと、人面馬が駆け出してくる。
 ジェイはかけてくる馬の蹄のほんの僅かな合い間を縫って、
 横へと斧を両手で一閃させる。

 紫色の帯を引きながら落ちるのは、人面馬の前右足。
 しめたとばかりに口端をつりあげるのを見て、
 直後その人面馬の表情が苦痛に歪む。

 「さぁ悪夢にもがきなさい」

 後ろから響くいやに邪気をはらんだ声にジェイが振り返る。
 白い天使の羽が魔物の意識を深い眠りへと引きずり込む。
 そんな舞う羽の中でコーリアはそれこそ悪魔のように微笑む。

 この聖職者やはり何か違う、とジェイが思わず眉を寄せると、
 コーリアと目が合った。彼女とは違う淡い赤い目だというのに、
 そこだけは印象が重なった。

 引きずりこまれるような赤い意識は、
 赤月華皆がもつというのか。

 「・・・・・どうか、した?」

 その目に見返されてジェイが僅かに怯んだ。
 慌てて首を横に振れば、コーリアは何も言わずに歩みを進め始めた。


 繰り返し寄って来る魔物たちを白い羽が多い尽くせば、
 そのたびにあの赤いイメージが鍛冶師の意識を取り込もうとする。
 騎士の、イメージだ。

 「あぁ大分奥まで来たみたいね」

 疲れたーと声をあげながらコーリアがカートの横に腰を下ろす。
 どうにか一息つける間があいたところで、ジェイはカートの中身をちらりと確認する。
 残り三割ほどにまで減った牛乳を見つめながら、コーリアとふと視線が合う。

 「そろそろ戻る?」

 そんな問いかけにジェイが頷くと、目の前を蝙蝠の影が覆い尽くす。

 ファミリアだろうかと慌てて斧を振り回せば、
 コーリアの短い悲鳴。

 咄嗟にカートを振り回して視界の蝙蝠をなぎ倒せば、
 目の前にあるのは黒い外套をまとった人影。
 バサバサと舞う回りの蝙蝠を見れば、ジェイは一瞬絶句し。

 「ヴァンパイア!」

 出会うことすら稀な彼らだが、時折こう現れては冒険者を奇襲する。
 度々見つかるグールの群れの中に彼らに殺された冒険者が居るという噂は、
 あながち嘘ではないようだった。

 女性を好んで襲うというヴァンパイアがコーリアの体を後ろから羽交い絞めにしながら、
 鍛冶師ジェイの銀色の目を鈍い目で見返した。
 瘴気をはらんで黒くにごった赤い目は、凄惨な印象を与える。

 「・・・・・・ッ、ジェイ、どうにかして!」

 どうにかと言われても、そう口にしかけてジェイは唇を噛む。
 ここで逃げる訳には、いかない。

 水の匂いをはらみ青く光る斧を見つめながら、ジェイがカートごと斧を叩きつける。
 ヴァンパイアは一瞬怯みコーリアから離れるものの、
 すぐして離れた場所から勢いよくその闇のような外套を広げて、
 彼らの視界を覆い尽くす。

 「・・・・・・応援を呼ぼないとダメかも」

 コーリアの小さな声にジェイが頷きを返す。
 それまでは持ちこたえないと。
 ジェイの決心をした横でコーリアはギルドへの連絡を飛ばそうとする。

 と、そこを狙うように蝙蝠達がコーリアのもとへと集まり始める。
 そして響き渡る馬の嘶き。

 あぁ、まずい。

 数の差どころか力の差でも危ういと言うのに。
 響いてくる馬の蹄の音を聞きながら、ジェイはズボンのポケットから一枚だけの蝶を取り出すと、
 コーリアに握らせようとした。

 「・・・・ちょ、アンタ何考えて」

 コーリアがその蝶を押し返そうと鍛冶師を見返す。
 ジェイはコーリアの先輩にあたるあの聖職者と同じ銀色の目をしながら、
 それよりも幾分強い眼差しで言った。

 「いいから、逃げて」

 その眼差しに何か言おうとコーリアが間をあけると、
 鍛冶師は無理に蝶を握りつぶし。聖職者は慌てて鍛冶師に手を伸ばしたものの、
 それは届くことなく空をかいた。

 再び目を開けたとき、コーリアの目に入ったのは、
 波の音を響かせるアルベルタの港であった。


20ある鍛冶師の話(3-4)sage :2004/06/17(木) 12:09 ID:vUbuX2y6
 「死ぬ気は、ないで?」

 苦く唇をかみ締めながらカートをひきつつ、ジェイは後退する。
 どうにか牛乳がある限りはギリギリ生きてはいけそうだったが、
 それも時間の問題だ。
 人気の居ない場所で息をつこうとしたのが間違いだった。

 まだ他に居れば助けを求めようもあるものの。

 生憎と響くのは己の斧の音のみ。
 僅かに喉を鳴らして腹に無理矢理流し込めば、
 意識だけは保つ事もできる。

 「・・・・・・・ッ、らァ、どけやァ!」

 斧を振り上げて蝙蝠を蹴散らし、ほんの少しの間が開く。
 いまだ、っとばかりにカートごと走り出せば、
 あぁなんたることか、そのカートに鈍い重み。
 ヴァンパイアがカートにへばりつきながらニタ、と白い乱喰歯をのぞかせた。

 背筋からぞわりと広がる感情に、声をあげそうになる。
 カートを引きずることもままならず、ジェイが目を閉じる。

 蝿買っとけばよかった。
 などと灰色の羽を思い浮かべれば。

 「フラストノヴァッ!!」

 いやによく通る声で突然世界が冷たさをなす。

 「セシア、ヒールを彼に!」

 向けられた声にどこかで聞いたような声がはい、っと声をあげる。
 突然軽くなる体に大急ぎで後退すれば、
 かの騎士の焦がれる聖職者に似た、まさに瓜二つの聖職者が、
 ジェイの目の前でにこりと笑みを返した。

 「イリノイス・・・・・さん?」

 問い返した声にセシアと呼ばれた銀髪の聖職者は、
 僅かな間の後声をあげる。

 「イリちゃんを知ってるの!?」

 「セーシーア、話はあとにしてくれィ。
  とにかくこれを片付けねェと今日の飯もくいっぱぐれるぞ」

 べんらべェ口調であんまり切羽詰ってなさそうに無邪気に笑う声がする。
 見れば燃える様な色の赤い髪に片目をかくした魔導師が口端をつりあげているのが見える。
 年端もいかない少年のような赤い唇を見つめてから、ふいにその唇から、
 白い長い牙が伸びるような感覚をジェイは覚えた。

 呼ばれたセシアが魔導師に視線を向けながら、
 言われなくてもわかってると言わんばかりに不貞腐れて魔導師へとヒールをかける。

 「・・・・・・俺の名前はレッド・ビート。こっちの聖職者はセシア。
  赤月華の人だろう、お前ェ。追われてるようだから助太刀したが、
  迷惑だったらすまなんだ」

 そう言いながら魔導師ビートは冷えた空気をなぎ払うような勢いで、
 片手を横へと思い切りふるう。と、同時に汗をじっとりとかくような熱気が辺りを覆えば、
 氷の塊となりもがいていた吸血鬼の姿は見る影もなく炭となっていた。

 「・・・・ざまァねェな」

 消し炭となった地面に残る影を見つめながら、
 ビートがせせら笑うように口をつりあげる。

 「・・・・・・、」

 その横顔をかの聖職者によく似た銀髪の聖職者は、
 何故か途方もなく泣き出しそうな眼差しで見つめていた。


21ある鍛冶師の話sage :2004/06/17(木) 12:11 ID:vUbuX2y6
一つ質問です。
作中ウィザードというのを魔導師とかいてみたのですが、
魔術師のほうがいいんですかね。それと、だとするとマジシャンは、
どう表記すればいいのか。

そんなところで悩んでました(´・ω・)
22ある鍛冶師の話sage :2004/06/17(木) 12:21 ID:vUbuX2y6
そしてゴメンナサイ。べんらべェじゃないですよね、べらんべェ口調。
なんだかご好評はいただいているようで、素で嬉しくて泣きそうでした。
楽しんでくれれば幸いです。|ミ
23名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 13:04 ID:.X3HdlQc
いいところに来ました。ワーイワーイ
で、他にも誤字とか、ちょっとしたひっかかり(二重で〜したら とか)がちょみちょみあるので
投下前に一度見直すの推奨。書いたら即投げたくなって書き込んで後悔したこと多数な奴より。
24名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 17:29 ID:jCyUKuRE
個人的な意見というか小言を。
下水リレーママプリには適当なところで撤退してもらいたいなぁ・・・
せっかくここまで来たリレーを急に出てきてそのまま決着までつけていきそうな勢いが嫌なんだよね
キャラ特性的に確実に勝つキャラだからそういうキャラに最後の場にはあまり居て欲しくない
膨らみすぎた伏線つぶしくらいでとどまっておいて欲しい

あくまでも小言。聞き流してください
25名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 17:34 ID:.X3HdlQc
意見も多いし何書いていいかもわかりません。そんな貴方に
つ 「座談会」
26名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 18:05 ID:6h0cSW06
壁|ω・)座談会…行きたいな…いつやるんだろ…。
27保管庫"管理人"sage :2004/06/17(木) 20:49 ID:aMN5VzBM
 半放置の保管庫連絡用掲示板にリレー進行相談用のスレを立てたら利用してもらえるかな?
○○殺していい? とか、ここの伏線はこんな感じで使うよ? とかみたいなことを聞くのに…。
相談なしの出たとこ勝負も好きなんだけど、今はそれでお見合い感が出てるようだから。
>>26
座談会は、日時切って待ってますって書き込んだら2名様来てくれたから、募集しちゃえ…とか。
28名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 21:12 ID:8iy9hdpg
>>21
ジ ェ イ 大 好 き (*´Д`)=3
続きを楽しみにしております。

で、MagとWizの表記ですが、ある鍛冶士の話氏の好きでいいと思うのですよ。
作品ごと、作者様ごとに解釈や書き方は違うわけですし。
ポピュラー(?)なところでは魔法士、魔術士、魔導士、辺りではないでしょうか。
個人的なイメージでは魔法士=魔術士<魔導士だったりしますが、あくまで個人的。
29名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 21:15 ID:85j5j9wQ
>>21
自分の場合はWiz=魔導師、Magi=魔法士 に当ててますが、
ぶっちゃけ訳語としてはどちらも「魔法使い」なんで、
貴方の望むように定義されればよろしいかと。

あと、「べらんべェ口調」でもなくて「べらんめえ口調」だと思うのですよ (´ω`)
30名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/17(木) 21:28 ID:a1HPnQPk
ままぷり、あきた〜
31どこかの166sage :2004/06/18(金) 02:58 ID:x4rPhqaE
「にゅ?」
 背後から、凄く聞きたくない声が聞こえてきた。
 ここはGH。人と魔族が己の命と名誉と欲望をかける世界の園。
 背後の剣戟も飛び交う大魔法も戦場の嗜み。いつもと変わらない日常。
 それに変化が生じている。
 いや、変化などという生易しいものではあるまい。
 壁の一面が黒い。いや、元々GHは闇なのだが、たとえて言うなら夜出したゴミ袋ぐらいに黒い。
 最近は透明袋が広がっているから古着等は細かく切っておかないとあの二人あたりが漁りに来るので要注意。
 閑話休題したがとりあえずそのゴミ袋みたいなのものを私は思いっきり掴みあげた。
「にゅう〜〜〜〜〜!!」
 じたばたするゴミ袋もどきを掴んだまま、私は日常が変わるうめき声を聞きながらため息をついたのだった。


『しんぶちたん』


「ついてきたら駄目って言っただろう!!」
「にゅ……だって……」
 GH秘密の控え室。見物高い魔族達に囲まれて私はごみ袋に説教をする。
 当然、しゃべるゴミ袋等では無く私の妹だったりする。
 身長など私の1/3しかないくせに私のマントを着て、ぶかぶかの兜をつけて私の後をつけてきたという訳だ。
 そりゃ、ゴミ袋にしか見えない。
「いい?私は遊びでここに来ているんじゃないの。
 お仕事でここに来ているんだから、ついてきちゃ駄目って言ったでしょ!」
「やだやだやだぁ!わたしもおねーちゃんと一緒にお仕事をするもん!」
「馬だって乗れないくせに!剣も持てないでしょ!」
「馬だって乗れるようになるもん!剣だって持てるもん!!」
 そう言って私が持っていた剣を持とうとして……そのまま固まる妹。重くて持ち上げられないのだ。
「もてるもん……もてるんだもん……」
 気まずい空気の中、第三者のまったく空気の読めない声が響く。
「おおっ!剣のっ!これが騎士殿の妹者かっ!」
「そうみたいだな弓の。見よ!全身から萌えがみなぎっているぞっ!!」
「そのまま萌え尽きてしまえっ!!」
 とりあえず、剣と弓の二人をBdsで沈めておく。
 どくじゃからんと音を立てて床に骨を散乱させる二人。これぐらいでやつらが消えるとは思っていないし、いや、消えてくれたら私としてもかなりうれしいのだが。
「どうした!警備が手薄になって……」
 と入ってきて怒鳴りつけようとして、妹を見て途端に好々爺の顔を見せるカーリッツ老。いかん。老人はとにかく子供に弱い。
「おじいちゃん……持てないの……」
「よしよし。わしが手を貸してやろうかのぉ。たしか人間どもが落とした『ひとくちケーキ』が……」
「カーリッツ老!警備の件で来たんでしょう!!」
「あ、構わん構わん。どうせ人間どももここを落としに来ている訳ではないのだから少しばかり休憩してもよいじゃろう」
「そんないいかげんな……」
「あぁぁぁぁぁっ!!深淵様の妹様ぁぁぁ!!」
 ずさぁぁぁぁ!!とドムなみの床走行で休憩室に現れた「GHの夢見るメイド」もとい「GHのアイドル」アリス。
 なぜか知らないが、最近なつかれて困る。
「すっごい可愛いですぅ♪ああ、深淵さまの面影がこのっていますね」
 私の苦渋に満ちた顔を見た妹はにこりと微笑む。
 やばい。あの笑みは悪戯を考えたときの笑みだ。
「みなさまこんにちわぁ。しんえんのきしのいもうとですぅ。
 きょうはおねーちゃんのおしごとをけんがくしたいとおもいやってきましたぁ♪
 よろしくおねがいしますぅ」
 ぺこりと皆に頭を下げる妹。勝負はついた。
 かくして今日一日、私は妹の面倒を見ることになった。
32どこかの166sage :2004/06/18(金) 03:02 ID:x4rPhqaE
 流石にGH最前線は危険という事で今日の私は枝勤務という事になった。
 要するに人間どもが使う枝に呼ばれる為の待機役だ。
 まぁ、枝で呼ばれるのはランダムなのではやい話待機という事だ。
 何故かというか、当然と言うか剣・弓二人とアリス、カーリッツ老もついてきてのGH外壁散歩という事となった。
「にゅう♪お馬さんだぁ」
「気をつけろよ。こいつは時々後ろにいるやつを蹴るからな」
 私の言葉に何故かひそひそくすくす笑う同僚達。
「な・に・をはなしているのですか?」(にこり)
「いいえ何も」(×4)
 仲良く首を振る四人。まるで申し合わせたかのような動きで凄く不愉快だ。
「ほら。私の背中に掴まれ」
「はぁい」
 よいしょと妹が私の背中に捕まる。
「おうまさん。おうまさん。わーい♪」
「はしゃぐんじゃない!馬が驚くっ!」
 照れ隠しの為、大声で叫びながらすごくゆっくりと私は馬を前に進めた。
 かっぽかっぽと闇の中、私達6人の珍道中が続く。
 揺られてはしゃぐ妹。
 その姿に萌え転がる剣と弓。
 ひそひそ話しながらくすくす笑う、アリスとカーリッツ老。
 顔は不機嫌だけど、心のどこかで「悪くないかも」と思う私。
 だが、そんな散歩も不意に打ち切られる事になる。

「ほう。こんな所にも魔物が沸くか」
 目の前に不意に現れたのはベコに乗った人間の騎士。テレポートで跳んだ所に私達がいたという事だろう。
 私達を見てベコを突進させる。
「剣の」
「弓の。分かっている援護を」
「お下がりください。ここは防ぎます」
「深淵さま。お引きください!」
 皆が私の前に立ちはだかり私を守ろうとする。
 私も手綱を引っ張って後方に下がろうとした。
「にゅうっ!」
 それを拒否したのはぎゅっと背中にしがみつく妹。
 背中越しに震えながら一生懸命恐怖と戦いながら妹は私にだけその決意を告げた。
「だめ。いっしょにたたかうの」
 騎士は敵に背中を見せてはいけない。
 守るものを守るために戦うこそ私は騎士なのだから。
「しっかりつかまっていろ!」
「にゅう!」
 私は馬を駆ける。前に。

「来いっ!深淵の騎士よっ!」
「どけぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 互いにすれ違いに一閃。
 倒れたのは人間の騎士だった。
33どこかの166sage :2004/06/18(金) 03:05 ID:x4rPhqaE
「眠ったか?」
「ええ。ぐっすりと。泣きつかれたのでしょう」
 休憩室から出てきたアリスは私に微笑む。
 あの後恐くなった妹が急に泣き出し、みなであやすのに一苦労だったのだ。
 いずれ、妹も私みたいに血で汚れる事になるのだろう。
 分かってくれるのだろうか?
 私の返り血はこのGHを守るためという事を。
 このGHの皆を守るためという事を。
「分かってくれるじゃろう」
 心配してアリスと共に妹をあやしていたカーリッツ老が私の心を読んで笑った。
「幼くとも騎士は騎士じゃ。
 何より、彼女は逃げなかった。
 お主と同じぐらい、よい騎士になるじゃろうよ」
 そう言って寂しそうに笑うカーリッツ老。
 皆、言わない事がある。
 そう。妹は戦う定めにある。この人と魔族が争うかぎり。
 それは定められた運命。
「できれば……」
 ぽつりと出た言葉を飲み込む。言わなくてもこの二人には伝わっただろうから。
「おおっ!騎士殿の妹者の寝顔げっと」
「ライドワード製パソコンに保管とは流石だな!剣の!」
「何を保存しているかぁぁぁぁぁ!!!」
 とりあえず、剣と弓の二人をBdsで沈めておく。


(できれば……妹が騎士となった時には、戦う事無いように……)
 その私の願いを知る事無く、妹はすやすやと眠りについていた。
34どこかの166sage :2004/06/18(金) 03:19 ID:x4rPhqaE
【GH】深淵の騎士子たんに萌えるスレ【騎士団】 で今話題のしんぷちたんを早速ネタに使ってみました(ごめんなさいっ)。
そのスレはこちら

ttp://www25.big.or.jp/~wolfy/test/read.cgi/livero/1078220631/l50

リレーの方ですが、当初から魔族のプラグとしての参加なのでママプリはあくまで脇役です。
リレー地上は合戦模様で時間が進めやすいので地下の進捗状況を見てプラグを消すため少しずつ投下する事にします。

ところで地下編の作者皆様に質問。
地下編の主軸キャラは誰を想定しているのですか?
私は学者先生に色々説明してもらおうと彼に情報が集まるように仕向けたのですが。
35名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/18(金) 10:40 ID:Uc.EYF56
>31
ほのぼのいいですね。
ゴキの話もですが、あなたのほのぼのは好きです。
ついでにゑロはもっと好

          ⌒ ヽ、     wWw
         / fノノリハ)) ─ ;,(   )
         f || ゚ -゚ノ| ,,-   ;;'フ  )
         | (|]-†',,, =.. ─;,, ノ ノ
         リノ/);;::::::|    ̄ -,,;'(  )
         //|.:.::::i  ガスベスゴキャ
         ';'ノ''::::''
(バフォ帽は私の技量不足により断念)


           л
     <||   / ̄ ∈
     /__ヽ   || ̄    166者、最初がしん「ぶ」ちになっておるぞ。
     | | ||  /    |⌒ i
   /|   |\     | |
   /    < ̄ ̄ ̄ ̄/| |
 __(__ニつ< ライドワード/__| |____
     \<____/ (u ⊃
3693@NGワード用sage :2004/06/18(金) 10:42 ID:8YoMileU
おはようございます
さっそくしんぷちたんが…(笑

で、リレーですが、ママプリが活躍しすぎなのは私も思ったので、ちっと隔離部屋に引っ張らせていただきました。
地上で魔族を止めて、地下の学者先生からの情報を流してを一人でやっちゃいそうな勢いに見えたので…。
(違ったらゴメンナサイ

多分、地下の学者先生から情報ゲットは魔族侵入部隊の仕事じゃないかなぁ、とか。それがないと、ただ突っ込んで
戦うだけのキャラになりそうだし。バフォ様と語るのもクレセントサイダーもちのハンスくんあたりがやりたいんじゃ
ないのかなぁ? とか。
ママプリはなんでもできそうな人だからこそ、落穂拾いでよいんじゃないかなー、思ってます。斯く言う私はママプリ
好きですよ?
37名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/19(土) 15:50 ID:bfPKYAt2
電波受信したので初投下(*ノノ)

1/3

「俺、しばらく旅に出ることになったわ」
ぼんやりとした月が空に昇った頃、工房で彼がそう切り出したとき、私は何も訊かなかった。
紺色に染まりはじめたプロンテラの街では、明日、新世界に移住する者達を送り出す宴の音が
あちらこちらから響いていた。

「そう」
私は彼には目を向けず、熱い鋼鉄の塊を打ちながら心の奥底に湧き上がってくる想いを抑え込んだ。
「出発は今夜なんだ。急な依頼でさぁ、プリーストが足りないんだとよ」
まったく、もっと早くに言えよなとぼやきながら、彼は私の傍までやってきて耳元で囁いた。
「多分、ひと月位で戻れるよ。山ほど土産持って帰ってくるからさ、楽しみにしてろよ、な?」
「アルフ…近づくと火傷するわよ」

――嘘が巧いわね。
でも私は知っているの、貴方がもう戻らないことを。
いつまでも私の隣にいさせてくれと言ったのは貴方だったのに。
その言葉を信じていたのに。
でも、言わない。言ったら私の負けだ。
脳裏に、昼間見た、流れるような金髪を持つ蠱惑的な魔法使いの姿が浮かぶ。
移住希望者の受付所で、貴方と腕を組み『私と一緒に行くのよね』と笑っていた、あのひと。
唇をかみ締めて、ハンマーを振り下ろす。熱い火花が幾筋も弾けて散る。
胸が痛い。心が何かに?まれているよう。
苦しい。息が出来ないくらい。

「…もう時間がないな」
ちらりと棚の上においてある小さな置時計を見て、彼は私の頬に手をやり自分の方に向けた。
大きい温かい手。いつも私を護ってくれた手。顔が上に向けられる。
金敷に置かれた打ちかけの鋼鉄がジジッと音を立てた。ハンマーがごとり、と床に落ちる。

口付けは、いつもより少し、長かった。

「行ってくる。体に気をつけろよ」
吟遊詩人の歌う別れを惜しむ唄が、風に乗って開いた窓から流れてくる。
揺らめくカンテラの明かりが、彼の蒼い瞳と銀の髪をオレンジ色に染めていた。
――いや…嫌…!行かないで…!私の傍にいて…!!
「いってらっしゃい。気をつけて」
転移の聖句を唱えると、彼は軽く私に手を上げて光の環の中に入った。
その姿に、にっこりと微笑みかけて、手を胸元で振る。――いつものように。

彼が、姿の消える前に私の名を呼んだ、気がした。
3837続きsage :2004/06/19(土) 15:57 ID:bfPKYAt2
2/3

不思議と、涙は出なかった。こんなに苦しいのに。こんなに胸が痛いのに。
私はのろのろと、床に落ちたハンマーを拾い上げて金敷の上をぼんやりと見る。
聖職者のための、ソードメイス。

何かが、私を動かした。
ハンマーを握り直し、ペンチで打ちかけのそれを?み、燃えたぎる炉の中に入れる。
ほの赤く熱せられたソードメイスには星の欠片を2個仕込んである。
ハンマーを振り下ろすたびに、火花が、白く明るく散る。汗が頬を伝う。
慎重に、優しく、刃を打ち上げ、何度も炉に入れ、作業を繰り返す。
さらに、炎の心と呼ばれる鉱石をソードメイスに仕込む。
火の属性を持つハートの形をしたその石は、奥底に燃える炎をちらちらと揺らめかせた。

これは私の心。貴方に捧げた私の全て。

窓を閉め、カンテラの明かりを消す。工房の中に明るく炉の姿が浮かび上がった。
息を深く吸い込み、炉に再びソードメイスをくぐらせる。
炉の赤。星の煌き。炎の心の紅。全てが混じり合い、熔けて、あかく輝く。
――まだだ…もう少し…3…2…1…!
手を素早く引き上げ、足元に置いてある水桶に一気に突っ込む。


――口では上手く言えないから。
私はこれでしか、語れないから。
声にならない言葉。
私の想い。
この一本に全てを込めて――。


「…出来た…」
濛々と上がる蒸気の中に混じる、炎の息吹。
柄には武器の強さを示す星が二つ輝き、その刃には炎が宿る。
炉の明かりに照らされたそれは、息を呑むほど美しかった。

見つめる目に涙が溢れた。喉が震え、嗚咽が漏れる。
まだ熱いそれを両手で握り締めたまま、私は声を上げて泣いた――。
3937続きその2sage :2004/06/19(土) 16:08 ID:bfPKYAt2
3/3

「――今もそれは工房の片隅に眠っている。もう二度と戻らない恋の墓標として――と。あっあっあっ!なにすんのよっ!」
机に向かってペンを走らせていた私の手から、紙が抜き取られた。
「何が恋の墓標だー?なんだこれ?」
傍らには銀髪のプリーストが立っていた。いつのまに工房へ入り込んだのか、私の傑作を取り上げて読み始める。
「ちょっとアルフ、見ないでよっ!」
私は必死になって紙を取り返そうとするが、奴のほうが女の私よりも背が高い。
アコライトの時には私より低かったくせに、いつの間にか無駄にデカくなって、頭半分ぐらい抜かれている。
手を伸ばしてもひらひらと頭上でかわされてしまって、取り返すことが出来ない。悔しいったらない。
「かーえーしーてったらっ!」
おまけにひとの頭を押さえ付けて、じたばたする私を尻目に奴は勝手に読み始めてるし!
「うはははは!なんだよ!?この、こっぱずかしい話は!?つーかナンカお前別人だぞ!?」
読み終わったらしいプリーストが遠慮なく笑い声を上げる。
ああ、もう!だから見られたくなかったのに!鍵をかけときゃよかった…。と、後悔するも後の祭り。
頭上の手をかい潜り、まず奴の顔に拳骨を一発喰らわせて、私は棚に手を伸ばして時計の脇に置いてあった
『Kapla2004 5月号』をポンッと机の上に、放り投げた。

―― 貴女の切ない体験談大募集!『涙の失恋物語』採用者にはなんと100kゼニーが!――

大体、あの時はお前が勝手に勘違いしてだなぁ…とか何とかごにょごにょ言いながら、
見開き2ページにわたる広告の大文字を見て、鼻血を垂らしたプリーストの蒼い目が呆れたように私を見た。
その隙に、私は奴の手から素早く原稿をひったくって取り戻した。
「嘘は書いていないもの。コレは絶対、採用間違いなしよ!失恋してないけど実体験だし!100kゼニーは私のものよー♪」
「…さてはお前、また製造失敗したな?あれほど俺がいないときにはやるなと言ってあるのに?」
詰め寄られて、私は視線をはずし、後ずさった。
ふっ…さすが我が相方、アルフレッド。その洞察力は侮れないわね。しかし、まだ甘い。
「今度は何を壊し…って…お前に預けといた、お、おお、俺の+6火ソドメはどうしたっ!?」
「いや、あのー、オリデオコンが余ったからね…えーっと…こ、怖いよ?その顔…」
アルフは鼻から火を吹きそうな勢いで、私の肩を?み、ガクガクと揺さぶりながら、片手で部屋の片隅を指した。
「そこにある強い火ソドメをよこせ、カーラ!!使いもしねぇ、売りもしねぇ…新品だろ?!俺によこせ!」
「あ、それだめ。あんたが浮気したらそれで殴るつもりなの」
「なんだそりゃあああ!よこせ!よーこーせーっ!!」
「だぁーめ☆」

街の喧騒が遠く聞こえる、プロンテラの昼下がり。
窓辺に差し込む陽光が、壁に掛けられ、美しく磨き上げられたソードメイスを照らした――。


                                            ― happy end?


なにか最初のほう文字化けしてますね・゚・(ノД`)・゚・
>なにかに?まれるよう→なにかに掴まれるよう です

お見苦しかったら読み飛ばしてください
壁|ω・`)ノ
40名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/19(土) 18:29 ID:2lu7ReTg
37>すごい好きです。オチもよかったですよ!この二人の別の話も読んでみたいヽ(`Д´)ノ
41名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/19(土) 18:57 ID:9WJmpdGE
>>37
1/3から2/3の(´・ω・`)な雰囲気から一転、
3/3(特にKapla2004 5月号以降のやり取り)にやられました。
小粒(文章量的に、ですよ。内容的に、ではありません)ながら場面展開が巧いなあ、と。
リレーSSがハードでシリアスなため、
こーゆー日常のひとコマ的なほのぼのするお話を読むと和みますね。
読後の清涼感とでもいうのでしょうか、雰囲気が秀逸でありました。
ごちそうさまでしたー。
42丸いぼうしsage :2004/06/20(日) 02:50 ID:sYMwVP/g
--魔法論 第一講

ずるる、ずびー

鼻をすする音が一際高く階段教室に響いた。隣で本を開いていた女魔導師はあからさまに不快な顔をした。
三割ぐらいしか人の入っていないがら空きの教室。その全員からの非難の視線を一身に受けても、
壇上の賢者は表情を変えなかった。鼻の頭は赤く腫れ上がり、まぶたも腫れて眼は人相の悪い三白眼…
もとい充血して三赤眼。この人こそがプロンテラ大学にその人あり、と言われた魔法物理学の権威
であろうとは、誰も思うまい。

「えー、僕が一年次の魔法論を担当する…」

鼻声でそう言いかけた彼の鼻から、たらり、と鼻水が垂れた

ずびび

「失敬。僕が魔法論担当のシーゲル・ノースウッドだ。あー、花粉症は辛い…」

ずるる

十秒前後の間隔で、彼は定期的に鼻をすすった。話は中断されるし、鼻声は通りにくい。
開始一分、彼が常春気候と花粉症との関連性について言及する間に、聴衆の5%が夢魔とお友達に
なっていた。

耐えかねたのか、彼はこめかみに手を当て、Whisの構えをした。

「アローアロー、学務部ですか?ちり紙と目薬下さい。オーバー。」

言い終わると同時に、彼の頭上遙か上、教室の天井に二重の円が描かれ始めた。
ルーン文字に彩られ、緑に赤に点滅する円は、空間制御の魔法陣だ。

二重の円がぴったり重なると、ちり紙の束が、どさり、と教壇上に落ちた。教壇上、彼の頭の上に。
教室中を笑いが包み込んだ。彼はちり紙を教壇の横に置くと、一枚を手に取った。
 構えたところに、忘れたように目薬が降ってきた。コツン、と硬質な音を立てて目薬は彼の頭蓋骨
に当たった。
 この狙ったようなタイミング、教室内に広まった笑いはおさまらなかった。だが、意に介せず
彼はちり紙を鼻にあてた。

ズビー

用済みになったちり紙を横に置いて点眼をすませ、彼は一時だけのよく通る声で言い放った。

「そろそろ私語の時間は終わりにしよう。」

水を打ったように、という比喩が適切だろう。放射状に配置された階段教室の座席。
そこに同心円状に沈黙が伝播していく。ものの数秒で、あれほど蔓延していた笑い声はぴたりと
止まってしまった。
43丸いぼうしsage :2004/06/20(日) 02:51 ID:sYMwVP/g
「第一回の今日は、魔法の定義について話そうと思う。まぁ、君らは魔法学校出の
人間だろうから知っているだろうけれど、これからここで四年間…あるいはそれ以上、
魔法を学んでいくとしたら、その定義は出来るだけ共通したものでなくちゃならない。
異なった定義は議論に齟齬を起こす。そんなことで時間を食っていては、進む研究も
進まなくなってしまう」

途中から、もう鼻声に戻っていた。彼は二枚目のちり紙を使うと、それを一枚目の隣に置いた。

「では、魔法とは何か。これは非常に根元的な問いだ。時代によってその定義は二転三転しているし、
今でも一つにとどまっているかどうかはアヤシイものだ。でも、僕らの視点としては
『とりあえずこれが正しそうで、これといって間違いもない』のなら、それが真理になる。
だから、現在これが正しそう、とされている説について言及すると、
魔法とは『意思世界と現実世界の間で起きる界面現象』ということになる。」

彼は、白墨を手に取ると、慣れた手つきで黒板に大きく「意思世界と現実世界の間で起きる界面現象」
と書いた。そして、「意思世界」「現実世界」「起きる」「界面現象」の四つのワードにアンダーラインを引いた。

「さて、用語の解説と行こう。まず意思世界。これは誰もが内面に持っているともされるし、客観的存在
として独立に存在するともされるものだ。意思世界の持つこの性質を『意思世界の二重性』と言う。
 意思世界はこの世界に対し、平行している。何次元のレベルで平行なのかは、まだ分かっていないけど、
六次元以上であることは確実だね。
 で、この中では、君らの考えたことは、現実としてヴィジョンを持ちうる。ドーナツ食べたいと思えば
君の眼前にドーナツが出現するし、何かを燃やしたいと思えば、炎が立ち上る。
 でも、重要なのは、平行していると言うことだ。平行していると言うことは交わらない。だから、
僕が今ここでドーナツが食べたいと思っても、ドーナツは出てこない。」

彼は「意思世界」と書かれた文字の下に「二重性-duality」と書き、三枚目のちり紙をつかった。

「二重性についてもう少し詳しく行こう。現在主流とされている学説では、意思世界は客観的に存在するんだ。
これは少し難しい話になるけれど、世界はものすごくたくさんの分岐の上に成り立っている。君らも考え
てみたまえ。数秒で、あのときああしていれば、というifがいくつもいくつも列挙されるだろう?。
そして、細かく細かく物事を見ていけば、どんな状況だって分岐しだいで起こりうる。もし、そのifの世界が
僕らと並列に存在するとしたら…それは、もう、星の数だけあって、そのうちには君の想像したifの世界だって
あるだろうね。つまりそれが君の『意思世界』…と言う論法なんだ。これが『客観的存在性』。
 だけれども、反面、君が想像しなければ、その世界は誰にも知覚されたり干渉されることなく消えていく。
だから、意思世界は、君の意思に依存しているとも言えるわけで、これが『主観的存在性』になる。」

なんだか難解な話になってきた。隣の女魔導師は一生懸命にノートをとっているが…眉間に皺が寄っている。
見回してみると、腕を組んで悩んでいるもの、かぶりをふるもの、寝ているもの、みんなそれぞれだ。

「次に現実世界を説明しよう…って、説明するまでもないか。僕らが生きてるこの世界だ。どういう世界かは
認識で変わってくるだろうけれど…多分みんな同じ現実を生きてるはずだ。僕らが殴ったり蹴ったり喋ったりで
物理的に干渉できるこの世界さ。

 これで、半分説明が終わったね。次は『起きる』についてだが、君らのうち六割以上が、なんでこんな所に
傍線を引くのかと怪訝に思っているはずだ。そう思った六割以上は、僕の説明を聞いてほしい。残りの四割未満
は優秀だから、僕はその人達に期待してる。
 傍線を引いた理由は、自動詞と他動詞の問題だよ。僕らが日常行使する『魔法』は、どちらかというと
界面現象を『起こす』ものなんだ。反して、神聖魔法や一部の魔法の類は界面現象が『起きる』んだ。
 僕ら魔法畑の人間は直接起こすことが可能な界面現象を『魔術』、間接的に起こすタイプの界面現象を
『奇跡』なーんて呼んでる。もっとも、日常的な神聖魔法を『奇跡』なんて呼称するのは聖職者を増長させる
だけだと思うんだがね。」
44丸いぼうしsage :2004/06/20(日) 02:53 ID:sYMwVP/g
こんなこと、町中で口走ったら血相を変えた聖職者や騎士がダース単位で押しかけてくるだろう。
押しかけてきたのが前者なら数時間にわたって説教され、後者なら数時間にわたってボコボコにされるだろう。
でも、ここはプロンテラ大学。トリスタン三世の庇護の元、自治が与えられたここには、言論の自由がある。
だから、みんなフフフ、と小さく笑っているのだ。

何枚目かのちり紙を屑に変え、壇上の賢者は時計を見やった。

「ん、最後まで話せそうだ。それでは最後。今日のメイン、界面現象についてだ。
 今までの話で、現実世界と意思世界が平行にあることは分かったと思う。魔法というのは簡単に言えば、
その二つの世界を重ねてしまうことなんだ。紙を二枚重ねると、ほら、面と面がくっつくだろう?」

彼は二枚のちり紙を目の前で重ねてみせた。

「もし、世界と世界がくっつけば、くっついたところが干渉する。例えば、向こうの意思世界で炎が燃えていれば、
こっちの世界でも炎が燃える。これが、意思世界の投影。だから、魔法は僕らの意思を具現化できるのさ。

 ところが…制約もなく世界と世界がくっついてしまったら、それは大変なことになる。みんながドーナツ食べたい
と思ったら、街がドーナツであふれてドーナツ屋が失業してしまう…っと、これは巫山戯た例えだけどね。
 まぁ実際、世界というのはよくできたもので、そうはならない。それは、界面現象に制約条件があるからだ。
その制約条件は広さ、距離、時間の三つだ。」

彼は、三つのワードを板書した。

「まず、広さからだ。こうして僕は二枚のちり紙をくっつけているわけだけど、全面がくっついてる訳じゃない。
くっついてるところとくっついていないところとがある。全面くっつけようとすると、凄く骨が折れる。
 魔法も同じ。広範囲で世界を重ね合わせようとすると、莫大な力が必要になる。魔法というのは
意思世界と現実世界をある次元軸に沿ってひん曲げることで重ね合わせるわけだから、広い範囲を
くっつけようとするなら、それに必要な力が増えるのは当たり前だ。
これが広さの制約。

 次に距離。一般的に、現実離れしたものすごい妄想ってのは、意思世界にあっても、現実世界とその意思世界
との距離が大きいんだ。距離が大きいものをくっつけようとしたら、そのひずみは自然と大きくなり、ひずみを
発生させるのに必要な力は大きくなる。だから、魔法というのは現実に近ければ近いほど、少ない力で実行できる。
これが、距離の制約。

 最後に時間。さて、二枚のちり紙をくっつけている手がそろそろしびれてきた。これだよ。長い間
ひずませておくのは凄く大変だ。だから、長時間現象を起こそうとすれば、力もまた大きくなる。
そうして、維持する力が切れると、こうして世界は離れて元に戻る。だから、魔法で生み出された
火は消え、ドーナツは味わうまもなく消える。
これが、時間の制約。」

彼は、二枚のちり紙を机の上に戻した。

「こうやって、界面現象に時間の制約があるからこそ、僕らは後腐れなく魔法が使えるってこと。
これで、制約の三条件の話は終わり。いったい何の役に立つのか…と思うかもしれないけれど、
これは重要だ。さっきも言った、世界のひずみを維持する力…これは実は魔法力と言ってしまうわけだけれど、
魔法力は発動した魔法の距離・時間・広さに従って大きくなる。

 距離の制約の例を挙げるならば、ボルト魔法の矢の数だね。一本作るよりも九本作るほうが非現実的だから、
たくさん矢を作れば作るほど魔法力は必要になる。
 広さの制約の例は、大魔法。大魔法は広範囲を書き換えるから、魔法力がかなり必要だ。
 時間の制約の例はファイアウォールが適当だね。狭い範囲の簡単な制御だけれど、あれだけの時間
持続させるとなると、結構な魔法力を食うものだよ。」
45丸いぼうしsage :2004/06/20(日) 02:53 ID:sYMwVP/g
彼は二枚のちり紙をもう一度重ねると、それで鼻をかんだ。時計の針は、講義終了の時刻を指していた。

「おや、もうオシマイの時間か。それじゃ、今日のまとめだ。今日の内容は魔法の定義。
『魔法とは意思世界と現実世界の間で起きる界面現象である』だ。
意思世界の二重性はさておき制約の三条件はこれからもよく使うから、覚えておくように。
 次回は、どうやって界面現象を起こすことが出来るのか、という魔法の発生過程についての話を
する予定だ。それじゃ、おつかれさま。」

彼はぺこり、と頭を下げた。彼がパチン、と指を鳴らすと机の上にあった使用済みちり紙は紫色の炎を上げて燃え、
跡形もなくなってしまった。そして、黒板消しが自動で動き出し、丁寧な往復運動で黒板に書かれた文字を
消去していく。教室の後ろのドアからは、多数の学生がぞろぞろと出て行った。がやがやと喋っているが、
お昼時な事もあってか、出てくるのは食べ物の話題ばかりだ。隣にいた女魔導師も、ノートを
チャッチャと片づけて、早々に出て行ってしまった。教室に残っている人間が十人ちょっとになったとき、
僕は気づいた。


ノート、とってなかった。
46丸いぼうしsage :2004/06/20(日) 03:09 ID:sYMwVP/g
どうも私の世界観はファンタジーからずれてしまうし、何よりキャラクターの
かき分けが微妙なので、登場人物を絞ってプロットも決めて書いた方が
いいようです。

 魔法がこの世界にあったら、どんな風な論理で扱われるのか…
というのがここ半年ほどマイブームになってます。
現代&未来もので、魔法を扱った作品を買ってきては読んでいますが
空の境界とウィザーズブレインは面白かったです。

そのうち、金枝篇とかに走りそうですが、学がないのできっと読めないん
じゃないかと思います。
4737sage :2004/06/20(日) 13:17 ID:QeYvEElo
おはようございます。
一晩明け、投下した文を眺めて再びミス発見しました・゚・(ノД`)・゚・

3/3 10行目 奴は勝手に読み始めている→奴は読み続けている に脳内変換お願いします。うぅ。
もうひとつ、【掴む】 を旧字で打ってしまった為、3箇所ほど【?】で表示されています。読みにくくてスイマセン…orz

>>40さま この話を好きと言ってくださってありがとうございます(*ノノ)
      一応これで完結していますが、電波が来たらまた書くやも知れません
>>41さま この拙い文章にそのお言葉、嬉しくて言葉もありません。
      小説というもの自体初挑戦でしたので、かなり勇気付けられました。ありがとうございます。

他の文神さま方に触発されて書いてはみたものの、流れを無視しての投下。気になりましたら申し訳ありません。
リレー小説楽しみにしています〜(^o^)ノシ
48名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/20(日) 18:38 ID:BFshZBp2
触発され触発して、いいものを沢山書ければそれほどいい板はないですな!
鍛冶師と聖職者の話に萌え殺されました。
週末ですので特攻しますヽ(`Д´)ノ
49ある鍛冶師の話4-1sage :2004/06/20(日) 18:40 ID:BFshZBp2
 赤い鼓動という名の魔導師は、少し目を細めたあとすぐに声を上げて大笑いした。
 セシアという名前の聖職者は人助けをしようとする度にこの、レッド・ビートに毎回
 先走るなと小言を食らう。

 今回のことにしてもそれは同じだった。

 とはいえ幸運な事にこの鍛冶師が件の鍛冶師であることのほうに意識のいっているビートは、
 セシアがまた先走って人助けをしたことには小言を言う風はなかった。

 「・・・・はっはー、リツカがなァ」

 目を細める魔導師の目は暗い闇の色を秘めている。
 ゲッフェンダンジョンで感じた彼の唇から牙が生えていそうな雰囲気は、
 こうして鍛冶師が手当てもかねて連れて来られた宿の一室ですらも変わりそうはしない。

 パーティ会話の機能を使ってコーリアと連絡をとろうとしたものの、
 どうにも磁場が悪いようでうまく機能はしてくれないようだった。

 「お前ェ、あいつ好きになるのはいいが恐らく苦労するぞ」

 今だって相当苦労はしていると言いかけた台詞を飲み込んで、
 鍛冶師ジェイは魔導師を黙って見返した。

 二人部屋でとってあるベットの一つに腰をおろしながら、目の前で得意でない斧を振り回した
 両手にセシアのヒールが温かく触れる。淡い光に視線を落とすと、セシアが少し笑ったように
 見えた。

 「リツカさんってイリちゃんの事しか見えてなかったからね」

 昔から、と言うセシアが青い目をジェイに向ける。
 あぁ、これが違うとジェイが認識してみれば、確かにこの聖職者とかの聖職者では、
 なるほど目の色が違っていた。

 それでも印象ですらも似通う二人を双子だろうかとジェイが思えば、
 ビートはのんびりと部屋の中央にある机の横で椅子にゆるり腰かけながら、
 午後のお茶を楽しんでいる。

 「ビート」

 セシアの呼ぶ声にビートは黒い目を前髪からちらりとこちらへ向ける。
 ほんの僅かな視線があう合い間に、一瞬セシアが何かを言いかけるのだが。
 ビートは苦笑いのような笑みで眉を下げると、お茶が美味しいと笑った。

 何か含まれる二人のやり取りを見ながら、ジェイは随分とやわらいだ手の痛みに握ったり
 開いたりを繰り返してみる。

 「ジェイさん、手のほうはそこまで酷くはないけど。
  思ったより体酷使してるみたいだから、きをつけてあげてね?
  自己管理できない鍛冶師は、いい鍛冶師にはなれませんから」

 お終いそう言われて離れていく手のひらから、淡い光が消えていく。
 どうやら完全支援型らしい彼女の癒しの能力は、半端ではなかったようだ。
 軋む様な気配もなく動く手のひらに、安堵したようにセシアが言葉を続ける。

 「私とイリちゃんは、同じジュノーの出身だから。
  正確に言うとルティエなんだけど」

 雪景色になら尚、映えるであろう銀色はここでもその色を失わない。
 冬ならば景色に溶け込みそうな、そういうはかなさを二人は持ち合わせているように、
 ジェイには思えた。

 「随分前だけど。世界大戦があったでしょう、ベータと呼ばれるあれのおかげで、
  私もイリちゃんも両親を失っていく当てがなかったの」

 セシアは思い出すようにして、窓の外を見た。
 外は雪など降るような気配はないが、今にも降りそうな錯覚をジェイは覚える。

 「雪の降る中、私たちの街は閉ざされたのと同じ。
  そこにきたのが、」

 「俺とシャイレンの率いるプロンテラ聖騎士団だ」

 ビートが口を開くのに視線を向けながら、ジェイは黙って耳を傾けた。

 「そもそもの始まりは、随分と昔にあったグラストヘイムの崩壊による。
  当時グラストヘイムにはプロンテラと同じ規模以上の王国があったんだが、
  王が呼び寄せた国家の安泰を祈るための神って奴が、生憎と悪魔って部類だった。
  そのおかげでグラストヘイムは陥落。まだ小さな王国だったプロンテラに、
  グラストヘイムから溢れかえる魔物が押し寄せるのを防ぐため、
  ゲッフェン、アルデバランの両都市に塔を建てて封印をなしたんだ。

  あれらは二つで対だったんがな、前の大戦はこの塔のバランスが崩れたことが原因らしい。
  位置的に見て」

 ビートは一度息をつくと、紅茶の入ったカップを軽く回す。

 「・・・・・・ルティエってのはその崩れた封印の歪む磁場の真中にあった。
  今でこそ行き来はあるものの、当時まだジュノーとは正式な国境ができてなくてな。
  下手をすれば一触即発、かつジュノーの奴らからすればこっちがつぶれれば自分たちの番だ。
  それで向こうからルティエの救出の要請もあって、俺たちが出た。

  酷いもんだったなあれは」

 目を閉ざすまでもなく今もセシアの銀色を見ていれば、
 ビートはあの日の事を思い出すことができる。

 彼にとってそれは、喪失でありまた、得がたいものを得た瞬間であった。

 「雪が一面赤だった。
  赤月華のエンブレムはお前さんの持つ通り、赤い月がそうなんだが。
  あの状況じゃそれも異質にしか見えねェ。どっちが悪魔なんだかわかりゃしねェ」

 「イリちゃんと私は母親が姉妹でね、家も隣だったし。
  イリちゃんは私を庇って頭に大怪我をしたから、多分昔の事とかはあんまり覚えて、ないと、
  思う。私の事を見ても、初めは何処の誰って顔してたし。

  ・・・・・・・あれはもう二度とおきて欲しくない、な」

 セシアはビートをちらりと見てから、また窓の外を見つめる。
 先の戦いと言えばジェイ達家族にとっては、ゲッフェンの塔から溢れ出す魔物を見た。
 ただその程度の記憶である。鍛冶師であった彼らの家は、表立って戦闘をすることはあまり
 なかった。とは言え両親は子供達を守るためにやはり魔物に殺されていたし、
 あの記憶というものは皆が皆封印したくなる、そういうものだった。

 「だから私とイリちゃんは友達なんだけど、友達じゃないの」

 小さく笑うセシアにビートが黒い目を伏せるように向ける。
 傷を隠しあうような二人のやり取りに、ジェイは何か深いものを感じた。

 「リツカちゃんはそういうイリちゃんの、たった一人の騎士なんだ。
  シャイレンさんは彼女達の父親みたいに振舞ってるけど、
  いつも傍には居れないし。初めリツカちゃん、イリちゃんの事すごい嫌ってたんだよ」

 「そう、なんや」

 相槌をうつジェイにセシアが信じられないでしょうと苦笑いする。
 イリノイスであればしそうにないその表情は、この聖職者の影をうかがわせた。

 「女であること多分リツカちゃんは、すごくコンプレックスなんじゃないかな。
  リツカちゃんの初恋も、イリちゃんだし」

 苦笑いを浮かべるセシアにジェイも苦く笑みを返す。

 「・・・・・・だから障害は、すごく、あるけど。
  貴方がリツカちゃんを好きなら、がんばって」

 後押しされるような言葉を受けながら、ジェイはやんわりと相槌を返す。

 「話が長くなったな、宿まで送ろう。
  すまなんだ、セシア、首都行きのポタを」

 頷くセシアが青ジェムを手荷物から取り出す。
 ジェイが腰をあげてカートまで歩み寄ると、タイミングを見計らっていたらしい、
 足元の床がすぐ光の渦をまく。

 光にまかれながら遠ざかる景色を見てジェイが咄嗟に声をあげる。

 「助けてくれておおきに!」

 「気にしねェでくれ。こっちはただのお節介にすぎねェ」

 手を降る魔導師と、そのとなりで小さく微笑む聖職者は次の瞬間消えうせていた。
 かわりに目の前に広がる景色と、突然現れた人間に驚いている人たちに軽くジェイは頭を
 下げる。人通りある首都のど真中に放り出された鍛冶師は、カートを鈍くひきながら、
 改めてパーティ会話を試してみる。

 ジジジ、という鈍い音ともに繋がったそれの向こうで、
 コーリアの泣き叫ぶような声を聞いてジェイは少しだけ笑った。

 「大丈夫、俺は無事です」

 そういったジェイの言葉にコーリアは罵詈雑言を容赦なく、浴びせたのだった。
50ある鍛冶師の話4-2sage :2004/06/20(日) 18:41 ID:BFshZBp2
 合流した先で清算をすませれば少しだけ重くなった自らの懐に、
 ジェイは僅かに口端をつりあげた。
 コーリアと別れてからやってきた先には、露店が建ち並んでいる。
 そこでつい先ほど見つけたのは、いつだったか送ろうとたくらんだそれである。

 淡い桃色の花びらを輪にしている仮初の恋は、本来は少女が少年へとおくるものらしいのだが。

 「・・・・・・・、すいません、これを」

 差し出した花輪に店の主人がニヤリと口端をつりあげる。

 「彼女にプレゼントですかね、お兄さん」

 向けられた言葉にジェイは柄にもなく頷いてみせると、冷やかしを受けながら代金を払った。

 赤いリボンの包みにくるまれた頭飾りを片手に、
 ジェイの足取りは軽く大通りを過ぎていく。
 東人形屋前あたりまでやってくると、人形屋が目に入りなんとはなしにぬいぐるみを手にして
 しまう。少しうかれているかもしれない。

 そう思いながらも買ってしまったのだから、どうしようもない。

 カートに手荷物をのせて歩いていけば、目当ての相手は只今留守とのこと。
 折角やってきたプロンテラ近くの騎士団詰め所前で座り込めば、
 空は悔しいほどに晴れていて。

 「そういやあわせる顔もないん、やった」

 唇辺りに指を伸ばせば、感触を僅かに思い出せる。
 小さくそんな動作をやらしいと呟いて、鍛冶師は僅かに目元を赤らめた。

 「阿呆らしィわ・・・・」

 のんびりと呟いた言葉の横から、ぬ、っとオレンジ色の嘴が飛び出す。
 慌てて顔をあげると、赤い髪の少女は今日はペコペコに乗って遠出をしていたらしい。
 ヘルムから戸惑うような赤い視線を、鍛冶師に向けていた。

 「何が阿呆なんだ?」

 問われて鍛冶師はわたわたとした手つきで包みを差し出した。
 それを受け取ろうとした少女の目の前で、オレンジの嘴がカプリと噛み付く。

 「あ!」

 思わず声を上げたジェイにペコペコは我関せずと言った調子でむしゃむしゃと。
 少女が慌てて嘴から包みを救い出せば、びりびりになった包みの中から花びらが零れ落ちる。

 「・・・・・・・花束か?」

 わざわざ包みに花束を突っ込む物好きもいないであろうにぼやきながら、
 少女が出てきた花輪に一瞬言葉を飲み込む。

 それから少し目線を彷徨わせてから、ありがとうというと、
 早速ヘルムを両手で外してペコペコの鞍にぶらさげて、
 淡い花輪をかぶってみせてくれた。

 高さはあるもののこちらを見下ろす視線は、何処か照れているようで。
 鍛冶師は思わず嬉しくなり、少女に向って手招きをした。

 「・・・・なん、だ?」

 僅かにペコペコから身を乗り出した少女へと、ジェイが背伸びをすれば。
 軽く掠めるような感触。途端、少女、リツカはペコを引き寄せて後退しながら、
 ジェイのことを睨みつける。

 「おま、えなっ」

 それでもリツカの表情が赤い事が知れれば、鍛冶師はなぜか笑みを浮かべるばかりで。

 「セクハラで訴えるぞ!」

 叫ぶように声をはりあげて言うのに、ジェイが少しだけ調子にのって口端をゆがめる。
 その笑みはいつもは弱気の鍛冶師にしては、少しだけ不敵な笑みに見えた。

 「してみれるなら、してみィ?二度と、キスせェへんで」

 調子にのるなと殴られる事を覚悟してみたのだが、
 リツカは本気で考え込んでいるらしい。
 妙な間がそこにあった。

 ペコの上の少女を見上げながら、ジェイが苦笑いを浮かべる。

 「・・・・・・じゃぁ今度は同意の上でしましょう」

 そんな言葉を聞かされるとリツカは、はっと我に返り。
 ふざけるなと言葉を残してペコペコを走らせてしまう。

 それでも頭の花輪が風に揺れているのを見れば、
 鍛冶師ジェイはまた嬉しそうに頬を緩めるのだった。
51ある鍛冶師の話4-3sage :2004/06/20(日) 18:41 ID:BFshZBp2
 オレンジのペコの上の少女の赤い髪には、最近淡い花びらが揺れている。

 いつもは銀色のヘルムが彼女の頭を守っているというのに、
 その淡い花びらをしていると少女は何処か騎士である凛々しさを兼ね備えた別の誰かにみえる。
 ペコが一歩進めば、また少し揺れる髪の上を見つめながら、
 暗殺者蓮は、さてはあの鍛冶師がと思い当たり少し口はしをつりあげた。

 隣を歩く銀髪の聖職者が幾分も背の高い蓮を見上げる。

 「どうか、したの?蓮ちゃん」

 ぼんやりとした銀色の目が蓮の姿をうつしている。
 この少女に同じものを送れば喜ぶだろうか、とぼんやり考えてから、
 暗殺者はふいに途方もなく頼りない聖職者を抱き上げた。

 「お姫様、貴方の騎士をそろそろ離してあげてはくれませんか」

 お姫さまと呼ばれれば、銀髪の聖職者は僅かに目を細める。
 本当に何の事だか思い当たらないらしいイリノイスに、蓮が苦く笑う。

 この聖職者にうつるのはこのギルドの長であるあの騎士の後姿、ただそれだけなのだ。
 リツカちゃんは大切な妹、そう言うであろう言葉を思っては、
 先に歩くオレンジの背姿を見つめる。

 「蓮ちゃん、最近リツカちゃん可愛いんだよ。
  今度スカート着せてあげたいなぁ」

 小さい子のように笑う姿を見ながら、蓮も小さく笑みを返す。

 「そうだね、きっとよく似合うだろうな」

 そう言いながら蓮が顔を傾けて、腕の中の聖職者の額に恭しく触れようとすれば、
 気配で気づいたのか。オレンジのペコの上の少女は、足を止めて剣を抜かんばかりの
 勢いの殺気。

 これは侮れない、そう口にしようとして蓮は言葉を閉ざし、
 かわりに少女の頭上を見上げた。

 「可愛い頭飾りじゃないか」

 「・・・・・・、もらいものだ」

 自分が望んでつけている訳ではないのだとでも言うような、
 無愛想な口調。そのくせひどく嬉しそうに笑みを浮かべるのを見て、
 蓮は可愛いものだなと苦笑いを浮かべる。

 きっと、この少女はあの鍛冶師に心惹かれているのだろう。

 二人が肩を並べるのを思い浮かべては、蓮はまた笑みを深めていく。

 「何がおかしい」

 「・・・・・・いや、リツカにいい加減お姉さん離れもして欲しいものだなと」

 言われた言葉にリツカがきょとりと瞬きを繰り返す義姉に、視線を向ける。
 永遠に叶わないであろう想いを思えば、ふいにあの鍛冶師の顔が義姉に重なる。
 穏やかそうな頼りないところが、本当によく似ている。

 困惑気に視線を彷徨わせるリツカを見ながら、イリノイスが小首をかしげた。

 「リツカちゃん、最近可愛くなった?」

 さ、っとリツカの表情が変わる。僅かに赤らめる表情のあと、
 即否定の言葉。

 「そんなことはない」

 「でも可愛いリツカちゃん、すき、だよ?」

 言われ、鍛冶師の表情を浮かべる。受け取っただけであんな風に嬉しそうに笑う彼を。
 そして、聖職者のことを想う。ただ自分を好きだと笑うこの表情を。

 印象が似すぎて、いるのだ。
 だからきになるだけ。

 自分は何処へも行かない、そう誓ったではないか。

 だと、言うのに。

 鍛冶師のことをふと、考えた。
 ただ好きだというその言葉一つだけで自分を締め付けるようにするのは、
 この聖職者の言葉だけであるというのに。

 同性?それがなにか?
 義姉妹?それがどうした?

 それでも鍛冶師の笑みが頭の中をぐるぐると回る。リフレイン、ただそれだけを。

 「リツカちゃん?」

 「あ、あ、すまない。先に戻る」

 本当にすまなそうに目線を下げるリツカを見ながら、イリノイスはうんと不思議そうな表情
 で見上げながら頷く。蓮は苦い笑みを浮かべながら、年相応の表情を行き来させる少女を見
 守っていた。


 プロンテラのいつもの道を行けば、いつもと違うのはその頭の重さ。
 ヘルムがないのだ、それだけだというのに。
 視界が開ける、いつもは僅かに斜めに上がふさがれている視界は、
 今は揺れる花びらを髪に感じる程度で、青い空も町並みも広く見る事ができる。

 「・・・・・・・、」

 ふいにすれ違う鍛冶師の姿を認めて思わず振り返る。

 これは、なんだ。
 この感情は。

 思わず口元に手を当てる。
 全くと言っていいほど似つかない真っ黒な髪だというのに、
 ただ服装が似ているだけで振り返った己の行動に、少女リツカはペコの首後ろに突っ伏した。

 乗る主人がどうもおかしい様子に、ペコペコが首をキョロキョロと動かす。
 途端ペコの首後ろに顔をしずめていたリツカの鼻先に、オレンジ色の羽毛がかすめる。

 勢いよくくしゃみをすれば、回りの視線を集めるわけで。

 「・・・・・・クソ」

 少女らしからぬ言葉を口に出すと、リツカはペコの速度をあげて逃げるようにそこを後にした。
52ある鍛冶師の話sage :2004/06/20(日) 18:48 ID:BFshZBp2
23様>お言葉慎重に受け止め、できるだけ見直してみましたがどうだろう。(´・ω・)

28様>そう言って頂けると幸いです。一応のことレッドビートに関しては、魔術「師」
   という書き方にしたのは彼の立場的設定が元なのでこれはこのままにするつもりです。
   魔法使いだとどうしてもウィズ、マジをまとめた言い方のような気がしてしまうので。
   魔術士<魔道士にしていこうかなと、お答えいただき有難うございました。

29様>Σ(゚Д゚;)!!べらんめェ口調なのディスカ。
   ずっとべらんべェ口調だと思ってましたー;
   はい、自分の設定に合わせて変えていこうと思っています。

話の設定上、公式に忠実とはいかないものになりそうですががが。
面白くできたらいいなぁと思っています。いつもありがとうございます。

でわノシ
5323だったり保管庫の人だったりする人sage :2004/06/20(日) 19:03 ID:v3fELmvA
 なんか、いいところにまた来てて嬉しい。ワーイワーイ
今回は読んでいてひっかかるところがなかったです。偉そうな物言いにもかかわらず、
取り入れてくれてありがと。

 辞書によると、Magicianは魔術師、魔法使いどっちでもみたい。Wizardは魔法使い、だそうです。
かと思えばWizardryの訳が魔術だったりするし、まだ訳語は一定してないんじゃ? と思ったり。
魔道士とか魔術士っていう言い方は辞書にはないみたいです。
 以上を踏まえてフィーリングで決めてしまえばイイ! とか。
54名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/20(日) 22:24 ID:A.jNQ6Ic
神作品に触発されて書いてみました。
思い切って投下します。
拙作ですが皆さんに楽しんで頂ければ、幸いです。
5554sage :2004/06/20(日) 22:25 ID:A.jNQ6Ic
 錬金術において、その属性として「熱く」「乾いた」モノを、火の属性である
と表現することがある。
だとすれば、このモロクという土地は間違いなく「火」の属性だろう。
 太陽は地上に生き物が存在することを許さない。そこに河川はなく、草原もない。
荒々とした乾いた砂丘がただ広がっているだけの大地。その砂漠の中に、
生物が自然に対してせめてもの抵抗を見せるが如く、点々とオアシスがあった。
 水がある所に動物が集まり、植物が繁茂する。生き物があつまる場所には、
当然、人も集まる。水は生き物を呼び、生き物は人を呼び、人は人を呼ぶ。
 このモロクの街はそういった積み重ねによって、できた街であった。
ルーンミッドガズ王国の勢力下におかれ、歳月が流れた今現在。無能な太守の怠慢に
よってこの街はならず者が集う街として、また職人の業による染料を扱う交易が
盛んな街として栄えていた。
 そして、近年ピラミッドやスフィンクスをモンスターが徘徊する様になると
モロクには商人やならず者の他にも冒険者が多く訪れるようになっていた。
5654sage :2004/06/20(日) 22:26 ID:A.jNQ6Ic
 交易商人の近くのヤシの木の下でぼんやりと佇むその悪党も、一応は
そういった冒険者の内の一人だった。
 悪党は自由である。騎士の様に騎士団や国家の為に戦うわけでもなく、
また司祭や十字騎士の様に教会の権威と布教の為に戦うわけでもなく、
暗殺者の如くギルドから厳しい支配を受け、職業として生き物を殺すのでもなく、
商売もせず、研究もせず、武器も薬も作らず、なにをするかは本人の自由。
 それは裏返せば。
「暇だ…」
欠伸一つ。ローグは大きく開いた口を掌で隠した。
 豊かな赤い頭髪は見るものに不快な印象を与えない程度に無造作にまとめられ、
ギルド指定の赤いジャケットは前で大きく開いている。
 露わになった薄い黄色の肌の肉体は、酒と女にしか興味がなさそうな服飾に反して、
その実、無駄なく引き締められていた。
 シーフから転職した後も日々の鍛錬を欠かしていない証拠である。
「さてはて、どうしたもんかね」
半ば砂の中に埋もれている公道を数多くの人々が通る様はとても賑やかだ。
 墳墓の深奥に潜む魔物から奪った金品を掲げて意気揚々と凱旋するどこかのギルド。
見知らぬ土地と人を物珍しそうにキョロキョロと眺めながら、
おっかなびっくり歩く初心者。
冒険者としての生活にも慣れ、自分の価値を磨く事を覚えた中級者のPT。
 楽しそうに会話を交わしながら目の前を通り過ぎる、黒髪の剣士と
青い女アコライトのペアを一瞥して、ローグは再び大きなあくびをした。
5754sage :2004/06/20(日) 22:27 ID:A.jNQ6Ic
 治安の悪いと言われるこの街もそうそう大きな事件があるわけではない。
「ま、帰って寝るか」
 ローグは誰にともなくそう呟いた。両手をズボンのポケットに入れ、背筋を緩めて、
頼りない足取りでねぐらの方向へ歩いていく。
 と。脚に何か大きなものが当たった感触。視線を下ろすと、石畳の上には、
尻餅をついた、まだ年端もいかない少女がいた。
 くすんだ金髪に薄汚れた肌。着ている、というよりは被っていると言ったほうが
より適切な衣服はぼろ雑巾の様。
「あ、わりいわりい。大丈夫か?」
頭をかきながら、少女へ手を伸ばす。少女は初め呆然とローグを見ていたが、
やがてローグの手をとり、ゆっくりと立ち上がった。
「…あ、ありがとう」
「ん、怪我はないみたいだな。俺も気をつけるから、お前様もちゃんと前見て歩けよ」
手前勝手な事を言うだけ言って、ローグはその場を立ち去ろうとした。
が、それを見た少女はローグのズボンをひっぱり、彼を押し留めた。
「ん、まだ何か用か」
「…おはな」
「ん?」
「お花…要りませんか」
「あぁ、なる」
どこの街でも貧富の差と言うものは、残念ながら、ある。だが、プロンテラとモロクは
特にその差が顕著であり、スラム街が存在した。この少女もそういった貧しい家庭の
子供なのだろう。
 親を少しでも助けるため、子供なりに精一杯働いている、といった所か。美談だねぇ、と
ローグは思った。幸か不幸か、持ち合わせは充実している。本来の仕事、
姉に言わせればただの道楽だそうだが、の経費も別に確保してある。
 花を買わない理由は特に無かった。
「一本もらおうか。いくらだ?」
「…あ、はい、どうぞ…」
名前も知らない小さな花だったが、彼は気にいった。
5854sage :2004/06/20(日) 22:29 ID:A.jNQ6Ic
 彼のねぐらは、冒険者を優待するギルド指定の宿屋である。
花を両の手でもてあそびながら自分に割り当てられている部屋の前に立った時、
ローグはねぐらの異変に気付いた。中に誰かいる…。愛用のダマスカスを抜き、
身体の陰に巧妙に隠す。さらに、ドアの脇の壁に身を押しつけるようにして、
ゆっくりと扉を開いた。
「おかえりなさい」
透き通るような女声。彼はその声に聞き覚えがあった。西日が、開いたドアの隙間から
薄暗い部屋の中に差し込む。質素な椅子の上に佇んでいたのは、流れるようなカラスの濡れ羽色の髪を腰まで伸ばし、ミニグラスを目立たぬ様にかけた若い女ウィザード。
 可愛いというよりは、美しいという形容が似合う知性と気品と妖艶さが漂う女性だ。
「姉さん…」
ローグはハイドを解き、部屋の中に足を踏み入れた。
「おかえりなさい、どうしたのそんな物騒なものをもって?」
「姉さんが勝手に部屋に入るから…」
あたふたとダマスカスを懐に納めた所でローグは、ようやく気付いた。
「姉さん、なんでこんなところにいるんだ!?」
「あら、愛する弟の居場所くらい知っていてもおかしくないわ」
「そう言うことじゃない…」
「なら、どういうこと?」
柔らかく、それでいて鋭い魔女の言葉。
「いつまでも臍を曲げてないで、いい加減家に帰ってきたらどうかしら?
お父様も今更、貴方に魔法の修行をしろなんて仰らなくてよ」
「俺が帰らないのは別にそう言うわけじゃない。今の生活が気にいってるんだ」
「今の生活というのは、正義を振りかざして暴力を振る事かしら」
「そんなんじゃない!俺は自分の信じた道を行きたいだけだ!」
「そんな事をしても罵声を浴びせられる事さえあれ、誰にも感謝される事なんてないわ。暇人の道楽よ」
「誰にどう思われようと関係ない。俺は自分のやりたいようにやる」
「そう、なら好きになさい。でも辛くなったらいつでもお姉ちゃんの所へいらっしゃい。可愛がってあげるわよ」
右手を口許にやり、魔女はくすりと薄く笑った。ひどく蠱惑的な仕草だった。
「いい。姉さんに関わってろくな目にあったことない」
「あら、残念。でも気が変わったらいつでも声を掛けてね。お姉ちゃん、お仕事でしばらくモロクにいるから」
「仕事?塔の?」
「そうよ。こないだの地下の騒ぎの間に誰かが禁呪を持ち出したみたいなの。人を魔物に変える邪法。結構前に、ある魔法使いが作った失敗作だから、実行すればリバースオーキッシュより悲惨なことになるわね」
 何故姉は自分にそんな機密事項を漏らすのか。姉はああ見えて、冷血だ。
公私を混同する様な真似は愚か、自分に得になるようなことしかしない。
話の内容よりも姉の姉らしかぬ態度をローグは訝しく思った。
「どういうつもりだ、姉さん」
「どうもこうもないわ。それより、もうそんな堅い話は抜きにしましょう」
睨みつけるローグを妖しい笑みでかわし、魔女は素早くローグの後ろに回り込んだ。
ローグである彼が簡単に背中を許してしまうほどの鮮やかな身のこなし。
 手早くミニグラスを外して、黒髪の魔女は赤毛の悪党の首筋にかじりついた。
「私、今日こっちに着いたばかりだから部屋が取れてないの。今夜はここに泊めてね」
「待て!姉さんは一体何を企んで…」
ローグの詰問は耳に吹き掛けられた魔女の吐息に中断させられた。
「最近ごぶさたなんでしょう?可愛がってあげる」
「お、おい…」
不意に姉が顔をローグの肩に埋めた。
「不思議ね。お父様が拾ってくださらなかったら、私も貴方も別々の場所で一人、
誰に知られることもないまま死んでいたわ。そんな私達が今こうして二人一緒に
いられるのは…とても不思議な事なんじゃないかしら」
「…お義姉ちゃん…」
後ろから首元にまわされた義姉の腕に、ローグは両手を優しく重ねた。
5954sage :2004/06/20(日) 22:30 ID:A.jNQ6Ic
 翌朝、既にもぬけの空となっていたベッドから抜け出すと、ローグは狩りに出かけた。
帰りがけにあの花売りの少女から花を買った。

 その次の日、ローグは少女の姿を見つけることはできなかった。

 さらにその三日後、ローグはヤシの木の陰で立ち尽くしていた。
 その表情は険しく、指先や脚が世話しなく動いているところを見るとひどく苛立っているように見える。時刻は昼前あたりか。
 ローグは昼食をとらずに、花売りの少女が現れるのを待つことにした。
何故かひどく嫌な予感がした。
 その時だった。
「〜〜」
傍らの年老いた商人が何かつぶやいた。雑踏が賑やかな町中では、
ほとんど口の中でつぶやかれたような言葉は常人には聞こえない。
しかしローグはローグであった。狩人ほどではないにしろ、その感覚の鋭さは
常人の及ぶところではない。
「おい、じいさん。いまなんつった?もういっかいいってもらおうか」
ローグは、年寄り商人の胸倉を掴み上げ、粗暴な態度で質問した。
「…ゲフッゲフ、離せ、離さんかい!…わかった、話す、話すから…」
ローグは老人を下ろし、おどけた調子で、しかし目は笑っていない、言った。
「ものわかりのいい年寄りに出会えて俺は嬉しいよ。おい、じーさん、
命がおしけりゃ…」
「あの子供はもういない、とそう言ったんじゃ」
「どういう意味だ?」
「どうもこうもあるか、売られたんだろうよ」
「何?」
「なんじゃ知らんのか」
 老人はそっぽを向き不貞腐れたように言葉を吐き捨てた。
「お主も噂くらいは聞いたことあろう。近ごろ、この町に質の悪い人買いがやってきおった。なんでも、スラムの子供を買い叩いているらしい」
「知らねぇな、そんな話」
「そんななりをしていて、世事に疎いとは情けない話じゃな。
儂はそういう話を聞いたことがある、というだけのことじゃ。
信じるかどうかは、お主次第。じゃが、まわりの人間に聞いてみぃ。
知らんのは…お主ぐらいのものじゃろうて」
「何故そんなことを?」
「さぁな、儂ゃあ、人買いになったことがないからわからん。じゃが、噂では東の天津に奴隷として売るだとか、怪しい儀式の生け贄にされてるとか、色々言われておる」
「…」
急に黙り込んだローグは、射抜くような視線を老人の方へ向けた。
鋭利に研がれたダマスカスの瞳に老人は畏怖する。
やがて年老いた交易商人は、ローグが睨めつけているものが自分ではない事に気づいた。
「世話になったな、じぃさん」
そう言って、ローグは半ば無理やり老人に1kゼニーを握らせると、その場から立ち去っていった。
6054sage :2004/06/20(日) 22:33 ID:A.jNQ6Ic
 日が西の稜線に沈むと、町は昼間とはまた少し違った喧騒に包まれる。
行き交う人々はどこか慌ただしく、商店も先を争うようにして店仕舞いを始める。街全体を何か焦燥感の様なものが覆うのだ。一日のつらく、だが同時に充実してもいる仕事を終えると、人々は一刻も早く、愛する家族の、あるいは大切の仲間の下へ帰ろうとする。
 その心情を思えば、こういった雰囲気が現れるのは至極当然のものだろう。その一方で、この時間帯になってようやく活気づく場所もある。飯屋を兼ねた酒場がそれだ。ローグが今探しているのは、まさにそんな酒場の一つであった。

 老人と別れた後、ローグはその足でローグギルドに向かった。老商人の言っていた噂の真偽を確かめるためである。
 果たして、人買い組織は実在した。ここモロクの街でギルドに紹介料も払わずないまま
「商い」を始めたその組織はかなり強引な商売を展開している様だった。
また腕の立つ冒険者を雇っているのか、警告のつもりで送った使者が返り討ちにあった、と
ローグギルドの人間もぼやいていた。
 とにかく。ギルドは今組織への対処に手を焼いているらしい。
独断先行が十八番の赤毛のローグに情報が下りたのも、ローグが何をしようとしているか承知の上で、
黙認しようとしているからだろう。
 そういった政治にローグは興味はない。上納金を納めている以上、見返りとして
情報を貰うのは当然だし、ローグの行動をギルドがどう利用しよう
と、それはローグの関知する所ではない。
道を踏み外さない範囲で、自由に振る舞うことこそがローグの
ローグたる由縁なのだ。
6154sage :2004/06/20(日) 22:35 ID:A.jNQ6Ic
 目指す店は、表通りから脇に逸れ、路地裏に入った知る人ぞ知るといった感じの場所に
立っていた。ギルドの情報が正しければ、このうらぶれた酒場が人買い組織の拠点である。
 ローグは物陰に隠れ、しばらく店の様子を伺うことにした。
店には煌煌と明かりがついているが、今がかき入れ時だと言うのにもかかわらず店に出入り
する人間はいない。中での酒宴の様子は伝わってくるのだが。
 ローグが攻めあぐねていたその時、ひときわ大きな笑いが店の中で沸き上がり、
小さな影がドアから飛び出してきた。いや、飛び出したのではなく、突き飛ばされて
出てきた、と言った方がより正確か。その小さな人影は、店から漏れる光に照らされ、
ローグの視線を捉えた。
 黒い砂の上に尻餅を付いたくすんだ金髪にぼろい服の少女。その姿は、ローグの記憶の中の
花売りの少女と重なる。
 少女はよろよろと起き上がり、酒場の中から出てきた騎士とシーフに食ってかかった。
「弟を返して下さい!」
ローグはその声を聞いて違和感を感じた。
「しつけーな。いねぇもんはいねぇんだよ」
人相の悪いシーフが声を荒げ、凄む。すると、脇の身綺麗な騎士がシーフを諫めた。
「相手は小さいとは言えレディですよ。乱暴はいけません」
アルカイックスマイルを浮かべたまま、騎士は少女に手を差し出す。
「失礼しました、。我々は、日頃から荒くれ者とばかり関わっております故、
レディの様な麗しい花の扱いには長けておりませぬ。非礼をどうか御容赦いただきたい」
6254sage :2004/06/20(日) 22:36 ID:A.jNQ6Ic
 腰を落とし、少女の目線に自らの視線を合わせる騎士。場にそぐわないその態度に
瞳を丸くした少女であったが、やがて自分を取り戻すと刺のある口調で要求を繰り返した。
「お、弟を返して」
「それは先程この者が申し上げたとおりです。我々は貴方の弟様を存じませぬ。私どもも
情報が入りましたら、レディにお伝えしますので、今日の所はどうかお引き取り下さい」
「でも…私見たの!」
「もう夜も更けてきました。この辺りは荒事も多い。レディを狙って賊がどこかの物陰に
隠れているとも限りません。…そう、例えばそこにいるローグの様に」
「どんな荒事がおこるのか、詳しく話を聞かせてもらいたいな」
ハイドが解かれる。目つきの悪いローグと笑顔を顔に張り付けた騎士が、正対した。
「名も名乗らず、覗き見をする様な輩にお教えすることは何もごさいませぬ」
あくまでも、にこやかに平然と言ってのける騎士の言動に、ローグは鼻を鳴らした。
「話せないんじゃなくて、話したくないだけだろう」
「これは異なことを。何を根拠にそんなことを?」
「自分の胸に聞いてみろ」
 一瞬だけ、騎士の表情が仏のものから修羅のものへと変化する。
だがローグの挑発に乗ったのは騎士ではなく、シーフの方であった。
「おい、てめえ。さっきから聞いてりゃ、勝手なこと言いやがって!調子に乗ってると、
ぶっころすぞ!」
「俺が嘘を言ってるかどうか、そこのガキにききゃ、わかるだろ」
そういって、ローグは傍らの少女を顎で示した。月光を浴びて、鮮明になった彼女の姿形は…
「!?」
花売りの少女とは違っていた。あの少女よりも、背格好は一回り大きく、瞳は理性的だ。
「私、見たの!この人たちが子供をいっぱい連れてこの店に入っていくところを!
私の弟もその中にいたの!私、おいかけて、ちゃんと見たんだから!」
ローグという味方を得た為か。少女は大声で、一気にまくし立てた。ローグは己の勘違いを
内心恥じながらも、そ知らぬ顔で言い捨てた。
「だとよ」
「ク…」
騎士の筋肉に緊張が走った。
 一触即発。研ぎ澄まされた鋼鉄の眼と、ダマスカスの瞳がしのぎを削る。空気が平衡に
達した。その均衡を破ったのは、またも突如として開かれた酒場の入り口と、飛び出してきたまだ年端もいかぬ少年だった。
「お姉ちゃん!」
「アレン!」
 血相を変えた騎士が幼い男の子に駆け寄ると、その少年を小脇に抱え、旋風の如く店の中に
引き返す。同時に、ローグも動いていた。事態の展開についていけずに呆然としていた
シーフに強烈な峰撃ちを背後から見舞うと、店の中に飛び込んでいった。
6354sage :2004/06/20(日) 22:37 ID:A.jNQ6Ic
 煙草の煙が渦を巻く様にして視界を塞ぐ靄となり、酒の匂いが滝を登る様にして
嗅覚を妨げる香料となる。店の中はひどく乱雑であった。酒で顔を真っ赤にさせた
ごろつきが大勢だべっている。
 板張りの床には埃と砂が堆積し、人が四、五人かけられる大きさの円卓が
幾つか無造作に置かれている。奥の方に見えるカウンターも同じようにまるで手入れが
なされておらず、さらにその奥の酒棚には蜘蛛が巣を作っていた。
 やはり、この店は普通の「店」ではない…
 ローグはそう確信しつつ、奥の部屋に消えていった騎士を追う。
跳躍したローグの眼前に円卓が迫った。ごろつき達は闖入者を敵と判断したようだ。
 きりもみするような勢いで身をひねり、ローグは蹴飛ばされた円卓をかわす。
腹の出た剣士の蹴りを、右足を軸とした回転で避けざま、その剣士に
峰うちを喰らわせる。横から突き出されたシーフの匕首を肘と膝で止め、手の甲で
その鼻っ柱を叩き、弾き飛ばす。頭上から切りかかってきた暗殺者の一撃を
その場で転ぶようにして前転し、やりすごす。背後の床に暗殺者が突き刺さった。
さらに正面から大上段に斧を振りかぶった鍛治師が現れる。その強力無比な斧が
振り下ろされる前に、ローグは床を蹴り、鍛治師の腹に膝を突き建てた。
「Fire Bolt!!」
足元に炎の矢が炸裂した。足元だけでなく、酒場の中一帯に魔法が行使される。
まだ未熟な魔術師が錯乱して、見境無く攻撃し始めた様だった。
「馬鹿野郎!何考えてんだ!?」
ローグが毒づいている間に、火は店に散乱していたアルコール類に引火し、
木製の床は炎の海と化していた。
 飛んでくる炎の矢を、手近にいた同業者を盾にして防ぎながら、ローグは騎士が入っって
いった扉の前にたどり着いた。ノブを回すのも煩わしく、ドアを蹴破る。
6454sage :2004/06/20(日) 22:37 ID:A.jNQ6Ic
 扉は裏口だった。背後に迫った炎から抜け出すようにして外に飛び出す。
辺りを油断無く且つ素早く窺ったローグは闇に包まれた通りの向こうを走る、例の騎士を
発見した。反射的にローグの利き脚が地を蹴る。その矢先、
「おっと、まちな」
ローグは後ろから声をかけられた。やむなく、振り返る。燃え盛る酒場を背景にして、
表で張り倒したシーフが少女の首元にナイフを突きつけた状態で立っていた。
「何か用か、三下」
ローグはゆっくりと身体をシーフの正面に向けた。
「…く、て、てめぇ。いいか、少しでも抵抗してみろ。このガキの命はねえぞ」
ローグは答えない。少女の事を遂、忘失してしまった自分を責めながら、ローグは沈黙した。
「…ま、まずは武器を捨てろ!早く!」
右手のダマスカスをしげしげと見つめた後、ローグは得物から手を離した。
糸の切れた人形の様に、ダマスカスはローグの掌から砂の上へと落ちる。
酒場を貪る炎の影が、砂上の短刀を覆った。大小、左右に揺れる影はまるで魔物の様。
「声が震えてるぜ」
その余裕に、シーフは彼我のレベルの差を悟った。だが、もう後には退けない。
「よ、よし!うごくんじゃねえぞ! もし、おかしな真似しやがったら…」
「わかってる。早くしろよ」
この程度の相手ならば、ローグの敵ではない。ほんのちょっとした隙さえできれば
この状況を覆すことなど容易である。
 その隙を作り出すべく、ローグはシーフに捕らえられた少女の眼を見つめた。
わずかに暴れてくれるだけで良い。それをローグは少女に伝えようとしたのだが、残念な事にアイコンタクトは失敗した。
 少女は当然の様に救出されるのをただ待っているだけだったのだ。
ローグの顔に初めて狼狽の念が表れた。その変化に気を良くしたシーフは少女の頭を
鷲掴みにしたまま、ローグに襲い掛かろうとした。
 その時。
「マジかよ!?」
シーフと少女の間に突如として氷壁が出現した。気を取られたシーフは焦り、その焦りが
シーフの行動を遅らせた。
 その機を見逃すローグではない。咄嗟に足元の砂と、得物を蹴り上げる。
舞い上がった砂がシーフの眼を眩ませ、その間にローグはダマスカスを掴んだ。
 勝負は決まった。
6554sage :2004/06/20(日) 22:38 ID:A.jNQ6Ic
 「三日前にはアンナが。その次の日にはマリン。昨日はジャン。いつの間にか
みんないなくなってて…。おじさんやおばさんに聞いても何も教えてくれないし…。
それで、昨日の夜、眼を覚めたら、家に知らない人がいて。知らない人がいて、
お父さんとお母さんが。お父さんとお母さんがアレンを、弟をその人たちに…」
少女は肩を震わせながら、溢れ出てくる何かを押さえ込むようにして言葉を紡いだ。
「私、後をつけたの。でも恐くなって、帰ってきて…。眠って起きたら、いつもみたいに
アレンはいると思ったのに。いないの。どこにも弟がいないの!」
最後の方は悲鳴だった。押さえ込んでいた感情が爆発したのだろう。少女の目の端からは、
涙がとめどめもなく流れていた。
 俺が皆に黙って家を抜け出した時も、姉さんはこんな風に心配したんだろうか。
不謹慎だ、と心の隅で思いながらも、ローグは優しかった義姉を思わずにはいられなかった。
「あの人達は一体何なんですか…?」
「人身売買をしている、ろくでもない連中だ」
そう、人身売買は、このならず者の街モロクでも御法度だ。
「…それじゃあ、貴方は?」
「見ての通りだ。俺はあいつらと戦ってる」
淡々と告げるローグに、俯いていた少女は顔を上げ、そして叫んだ。
「どうして、どうして、戦ったりなんかしたんですか!? 争うのは悪いことだって、
お父さんもお母さんも言ってた! さっきだって、ちゃんと話し合いをすれば弟を返して
もらえたかも知れないのに!」
違う、とローグは言いたかった。戦う事が許されない事だと言う事はわかっている。
人を傷つける事は罪だとわかっている。それでも、それでも話し合ってもわかりあえない
奴はいくらだっているんだ、と、そうローグは叫びたかった。だが。
「返して!弟を! 弟を返して!」
 自分に拳を振り上げて泣き喚く少女。その姿に、いなくなった自分を思って毎夜毎夜泣いていたに違いない義姉を重ねてしまったローグは、少女に何か言えるはずもなく。
 代わりに口を衝いて出てきたものは、そんな甘い自分を冷笑して、追い越していくかの様な乾いた言葉。
「お前、何か勘違いしてるみたいだな」
「え?」
「俺は騎士でもなければ、プリでもない。俺は―――――」

 酒場を完全に呑み込んだ炎は天を舐めるフリルドラの舌の様に揺れ、
ローグの顔の半面に深い影を落とす。少女には、その表情が鬼の形相の様に思えた。
「俺は、ローグだ」
6654sage :2004/06/20(日) 22:41 ID:A.jNQ6Ic
流れぶったぎりで申し訳ないです。。。
感想やらご指摘などを頂ければこんなに嬉しい事はありません。
今回はこの辺で失礼します。
67名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/20(日) 23:04 ID:zLQYKkzI
>54
うわあ…むちゃくちゃ格好良かったです。
ローグの生き様がステキ。
68名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/21(月) 00:48 ID:7NQXKkDA
>>54
うぉ、燃えローグキタワァ─wwヘ√レvv~(゚∀゚≡゚∀゚)─wwヘ√レvv~─!!
むしろお姉さんと夜中に何やったのか小一時間(ry
69名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/21(月) 16:41 ID:ZfR2rI4U
かっこいいアウトローがいるスレはここですか?

チンピラ風騎士様がかなり好みです。ピンチになったら下衆の本性をさらけ出してくれるのを
激しく期待。55の「黒髪の剣士と青い女アコライト」にドキドキしたりしたのは内緒です。
70名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/22(火) 21:47 ID:isbtK92g
リレーマダァ〜(AA略
7154sage :2004/06/22(火) 21:52 ID:mWoMO7rQ
>>67
そういってもらえると、とても嬉しいです。
>>68
夜は、おそらくご想像の通りかと(^^
>>69
実は自分もドキドキしてます。

というか、スレの進行止めてしまったみたいでスミマセン
以下何事も無かった様に、
文神様方のSSとリレーをお楽しみくださいm(--)m
72名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/06/23(水) 11:37 ID:yy9gsDVw
リレー小説(´・ω・)
かっこいい男の人をかけるようになりたいなとしみじみ。
正義の味方ではないところに哀愁を感じます。
何故か某魔都を髣髴とさせるものがありました。
なんとなくその後が気になります。
73ある鍛冶師の話5-1sage :2004/06/23(水) 11:38 ID:yy9gsDVw
 気づけば姿を探している。

 鍛冶師ジェイがその騎士に出会ったのは、
 初めての事だった。

 赤い髪の少女が人ごみの中自分に気づいたのだと思い、
 こちらに向って手を振ったのに手を振り返した。
 けれどその横から駆け出す銀髪の聖職者を認めて、
 人違いであると知った。

 街を通る人たちが走り出す聖職者を不思議そうに見つめる。
 そしてその走り出した先にいる一人の、騎士を見て、数人が頭を下げた。

 「シャレイン!」

 いつも何処か捕らえどころのない聖職者の声は、
 ただただその名前を慕いながら呼ぶ。
 響きが違うのだ、声に色がついたと言わんばかりの。

 赤い髪の少女は、頭の上にのせているヘルムをとると、
 鍛冶師ジェイの横を通る騎士に恭しく頭を垂れる。

 騎士は同じように頭を覆うヘルムを外してペコペコから飛び降りると、
 走ってくる聖職者を抱き上げて勢いのままくるくると回った。

 「留守にしていてすまなかった」

 少し低いが男のものにしてはやや高い通る声が響く。
 物語にでもでてきそうな金髪長髪の騎士は、絵から抜け出たような端正な顔立ちで、
 花が咲いたようにふわりと微笑んだ。
 屈託のない子供のような笑みだと言うのに、何処かほっとするようなそういう笑みを。

 これが赤の長であり、英雄かとジェイが思えば、
 ふ、っと背に気配を感じる。
 慌ててカートを引き寄せながら振り返ると、暗紫色の装束がそこに一人。

 今までそこに居たらしい、気配をふつりと現せば、
 蓮は暗色紫の瞳が僅かに感情の色をなしている。
 暗殺者が感情を露にするのを見ながら、ジェイは小さく問い掛けた。

 「あれが、赤の長なん、ですか?」

 「・・・・・あぁ、あれがそうだ。
  英雄だ、あれが」

 陶酔、しているようでもあった。
 暗殺者は膝を折り、そのまま頭を垂れる。

 何もかもが自分から遠のいていくように感じながら、
 自分の隣に居る蓮に気づいたらしい、シャイレンの歩みがこちらに向けられる。
 イリノイスを降ろしてから、ペコペコを彼女に任せたらしい、
 ペコの手綱をひきながらそのあとを銀髪の聖職者が続く。

 「蓮、留守を任せていたすまなかった。
  ・・・・、とー・・・君は新入り君かな」

 頭を垂れた蓮に声をかけながら、英雄は隣のカートひくジェイに気づいたようだった。
 袖口に縫われている刺繍は赤い月のエンブレム、声をかけられたジェイと言えば、
 唐突に向けられた言葉にただ瞬きを繰り返していた。

 すぐ、して。
 英雄が苦く笑うのを見ると慌てて、鍛冶師は頭を垂れた。

 「鍛冶師見習として、一月ほど前より、ジェ、ジェイと言います」

 「ジェイ、か。私の名はシャイレンだ。適当にシャイレンで構わん」

 「・・・・・は、はい」

 裏返るような声を抑えて、答える。
 思ったより若く見える英雄は、鍛冶師の答えを聞くとまた、あとでと小さく答えを返し、
 その言葉を聞いて頭をあげてすぐ後ろに続く蓮を引き連れて白に赤い月のエンブレムの入った
 マントを翻すと、颯爽と通りを歩いていく。

 足取りは速くもなければ、遅くもなく。

 ただただ遠ざかるその背姿が見えなくなれば、ジェイはふと、
 自分の足に全く力が入らないことに気づいた。


74ある鍛冶師の話5-2sage :2004/06/23(水) 11:39 ID:yy9gsDVw
 英雄と会ったその緩い足取りで、通りを歩いていつもの牛乳即売所までいくと、
 今日は珍しく錬金術師の集団が買い物にきているようだった。
 鍛冶師とは全く別方向に通じる彼らは、物理的ではなくもっと未知の分野にまでその手を
 伸ばしている。

 原価の値段でカートに入りきるだけ牛乳を詰め込むと、鍛冶師は少し遠巻きにその集団を
 眺めていた。彼らの性別も年齢もまばらではあったが、皆ジュノー錬金術師学校のバッチ
 を胸につけている。
 つまり彼らは学生達の集まりらしい。

 楽しそうに会話をする様子を見ながら、そのうちの一人がこちらに視線を向けるのを見返
 す。何処かで見たような顔をしていることに気づいたのは、その錬金術師が駆け寄ってき
 てからだ。

 「お久しぶりです。ジェイさん」

 暫く姿を見ないと思っていたら、あの商人どうやら学校受験をしていたらしい。
 ゴーグルから覗く表情は、自分のことを何かと手助けしてくれたあの商人の顔だ。
 服装が違うだけで随分と印象が変わるものだと鍛冶師が感心していると、
 錬金術師は相変わらずですねと言いながら屈託なく笑った。

 「流石に受験落ちてたらあわせる顔はありゃしませんが、
  あっしも受かることができたんで、明後日ぐらいには赤に顔を出しにいこうかなと。
  いやぁ、風の噂ですが、リツカさん花飾りをつけている、とか?」

 ルードの居ない合い間に手渡された花びらは、赤い騎士の頭を彩っている。
 常からヘルムで動き回っている彼女が、そういったものをしていれば嫌でも噂になるらしい。
 ジェイは少しばかり眉を寄せて難しい顔で照れを押し隠すと、
 錬金術師ルードの真新しいゴーグルを見返した。

 「受かってよかったやん」

 照れ笑い交じりを堪えているような妙な表情を見ながら、
 ルードは擽ったそうに頷いた。
 と、後ろからルードの名を呼ぶ声がする。

 「あ、暫くはこっちに居るんで、また」

 慌てて走り出したルードを見送りながら、ジェイは大きめに手を一度振る。
 同じ服装の生徒達に混じりながらルードは振り返ると、大きく手をぶんぶん振り返す。

 「・・・・俺も負けてられへん、な」

 牛乳の入ったカートをぐいと引き寄せると、遠ざかる錬金術師達を見つめながら、
 鍛冶師ジェイはそう小さく呟いた。
75ある鍛冶師の話5-3sage :2004/06/23(水) 11:40 ID:yy9gsDVw
 チリチリするような胸の感覚に、騎士リツカは眉を寄せた。
 義姉は久々に帰還をはたした英雄にじゃれついたまま離れようとしない、
 はたから見れば年の離れた兄妹にみえる二人だがその関係は親子によく似ている。

 そのくせイリノイスは決してシャイレンの傍を離れようとしないし、
 そしてその状況を許しているかの英雄といえば、始終笑みを浮かべながら話を聞いている。

 「妬けるのかい」

 横から向けられる暗殺者の言葉にリツカの眉が釣りあがった。

 「別に、そういうんじゃ、ない」

 ちょっとした火傷のように痛むのは単にいつものように義姉がじゃれてこないからだ、
 ただ少し、寂しい、だけ。

 唇を噛んでから歩き出すリツカを見送りながら、蓮は苦く口元を歪めた。

 「リツカが居たのか」

 視界端に入った暗殺者の装束に視線を向けると、シャイレンの目には赤い髪の少女の背姿
 が見えた。反抗期かなと英雄は呟くと、親馬鹿丸出しなとろけた笑みを浮かべる。

 「・・・・・・相変わらずだな、シャイレン」

 昔馴染みの仲間でもあり主人でもある騎士を見返す暗殺者の眼差しは、
 あくまで冷ややかに言いながらも温かく注がれている。
 まだ話をしたいらしいイリノイスにまた、あとでなと言い聞かせながら、
 シャイレンは腰をあげる。

 「あとで、また部屋に来てくれる?」

 あどけなく笑みを浮かべる聖職者を見返しながら、シャイレンは大きく頷く。
 ただそれだけでイリノイスは嬉しそうに約束、と小さく声を出してまた笑う。
 笑顔が途切れない様子を見ながら、自然蓮も笑みが浮かぶ。

 そういう空気を作る事のできる英雄は、大切な愛娘の部屋の扉をしめると同時に、
 表情を消した。暗殺者は次に遠慮もなしに叩きつけられる殺気に、全身の毛が総毛立つ。

 背中の背骨の上を冷たい汗が伝った。

 ガキィン

 抜く動作も素振りも見せずに英雄は剣を暗殺者の取り出したダマスカスに叩きつける。
 カタールとは違い直に受け流すこともできずにくらった力の勢いは、
 暗殺者の左手をビリビリと電気が通ったように痺れさせる。

 「手加減が、ない、な」

 暗殺者は口端をつりあげながらも、手の痺れに眉を寄せる。
 恐らく僅かであろうが、数秒は感覚がまともに動かないであろう利き手を放って、
 腰に下げているカタールを右手でとる。

 大きめの刃を滑らせるようにしながら英雄の真横へと叩きつけると、
 彼は僅かに数歩足を下がらせて、寸ででその刃先を避ける。

 「当たり前だ。お前に手加減をしていては、私が負けるからな」

 ただ純粋に楽しそうに口はしを歪める英雄、騎士を見返しながら、
 暗殺者は左手に握るダマスカスをもう一度握りなおす。
 そうして指の痺れがないのを確認すると、暗殺者は利き手にダマスカスを逆手に持ちながら、
 肘を曲げて自分の前に垂直にかまえる。それから避けられたカタールを下にかまえると。

 騎士が剣を構えなおしたその瞬間を合図に、石畳の廊下をかん高い音一つ残して、
 前へと飛び出す。

 音にもならないような息一つでもって間合いをつめれば、
 騎士が僅かに目を閉じた。

 と、違和感。

 蓮はあと少しであたるダマスカスの刃先をそのままにしながら、
 脈一つ大きくうつのを感じた。

 ふ、っと息を呑んで一つ分の鼓動を逃せば、真上に気配。
 振り下ろされる刃はいやに重い音をならしながらダマスカスへと叩きつけられる。
 鈍いうめき声とともに蓮が後方へと倒れるように床すれすれに飛べば、

 「まだ、動ける、か」

 騎士の途方もなく安堵したような声が響く。

 「シャイレン?」

 暗殺者が友の名前を呼べば、シャイレンは何事もなかったように笑みを浮かべて言った。

 「動きが鈍ったんじゃないのか、蓮」

 そういった表情を見返すと、蓮は。

 「・・・・・・・・ほう、そう言うか」

 再度ダマスカスをかまえる暗殺者を見て、騎士は言った。

 「全力で来い」




76ある鍛冶師の話5-4sage :2004/06/23(水) 11:40 ID:yy9gsDVw
 かの英雄の話で持ちきりである通りを通り抜けると、
 少しだけ入り組んだ住宅街へと出る。
 カートの牛乳を時折心配そうに振り返る鍛冶師は袖口の赤い刺繍を見て、
 目を細めた。

 「・・・・英雄」

 そう言われている騎士は気さくな人物であるように見えた。
 よく笑う、そういう印象をもたせるような笑みの。

 いい人なのだろうなと思えば、少しだけまた会いたくなった。

 「さて、露店の位置や・・・」

 冒険者向けに安く牛乳を売る露店は割りと多いのだが、見落としがちなのが一般市民に売る
 という事。なにも首都プロンテラは冒険者とその回りの人間達がいるだけではない。
 ひしめき合う建物には沢山の職業の人々、年齢、性別で溢れかえり。

 今日会った人とまた会えるという保障はどこにもない。
 それだけ広い街の中で商人たちが一番の金ヅルにするのが冒険者。

 一般市民ももちろん食物や最低限の自衛用の武器などを買いにはくるのだが。

 そのせいであまり露店を見かけることのない家々の合間を歩いていけば、
 十字路の真中へと足が出る。辺りを見回して見れば、小さな宿屋が数店連なるだけでどうや
 ら先客は居ない模様。これ幸いとばかりにカートの中身を広げていくと、すぐして宿から出
 てきた店の人たちが安めに設定してある値の牛乳を買い占めていく。

 「お兄さん、これも頂戴」

 カートの右から伸びてくる腕に答えれば、今度は左から。

 「これもこれも!」

 気が付けば一時間もたたずに売り切れたカートの中身を見つめれば、
 上からふいに聞こえてくる声。

 聞きなれたそれに咄嗟に顔をあげると、赤い髪の少女がペコの上から顔をのぞかせていた。

 「すごい勢いで売れていたな。話し掛けようと思ったんだが、忙しそう、で」

 目線を彷徨わせる様子にジェイがふいに笑う。
 どうやら客が引くのを待っていてくれたらしい。

 「シャイレンさんて、なんやキラキラしとる人やったね」

 視界の奥でちらつく金髪を思い出しながら言うと、リツカが目を瞬いてから大笑いする。

 「きらきらって、なんだそれは」

 「せやって、なんていうか、王子様とかそんな」

 「アイツが王子様、なぁ・・似合わないだろうな」

 「そう、なんや?」

 想像でもしているらしいリツカにジェイが小首をかしげて返す。

 「そりゃそうさ。アイツは騎士だからな」

 言い切るリツカにジェイはほんの少しだけ苦笑いを浮かべた。



 ペコペコから降りてカート整理を手伝いだしたリツカを見ながら、
 ふと腰に下げてある短刀を見つける。よくよく見ればジェイの名が刻んであり、
 そのこともまたジェイには嬉しかった。

 「姉さんはシャイレンの事が好きなんだ。というより、それしか見えていない」

 唐突に聞こえた言葉に緩んでいた表情をジェイは引き締める。

 「俺は、あの人の剣であり盾でありたい。
  あの人の何かでさえあれば、いい。
  けれど多分俺は一生、その存在にすらなりえないかもしれん。

  ・・・・・・ジェイは、そういう思いをしたことはないか?」

 問われると同時に向けられる赤い瞳は、僅かに感情の色に揺れているようだった。
 戸惑いがまず鍛冶師を支配したが、次にふいにこの少女が自分を頼りにしていることに、
 何処か安堵した。

 「せや、な。
  俺は、」

 話を続けようと口を開けば、思わず音が出ない。
 そういえば面と向って好きだとか、鍛冶師は口にしていなかったのだ。
 答えるにも答えられない自らの返答に、鍛冶師の表情が固まる。

 「・・・・・・ジェイ?」

 「あ、え、・・・・・あー・・・えと、な」

 「おう」

 カートの隅っこに視線を伏せながら、必死に言葉を向ける。

 「俺、リツカさんのこと好き、なんよ」

 「そうなのか・・・・・・、・・・・・・、・・・・・・・・・は?」

 一瞬納得して流されかけた言葉にジェイの目が遠くなれば、
 リツカはぽかーんとした調子で唇を開いている。

 「あぁ、だからな、その結婚とか違うんよ。
  なんやろ、貴方を守る防具も武器も俺が作りたい。
  そうやって俺が貴方の糧になれれば、ええなぁっていうか。

  いや、好き、やけど」

 「・・・・・・そ、そうか」

 お互いの言葉がしどろもどろになる。
 その中で鍛冶師が尚も言葉を紡ぐ。

 「あんな、でも全部が全部俺が貴方を守るものを作れるわけや、ない。
  俺が作れるんは武器や、し?防具はせいぜい不備がないか見ることしかできへんし。
  せやかて全部できればそりゃ嬉しいで?

  けどそうは、いかんし。
  そういうことなん、ちゃうんかな。

  その人のこと、全部が、全部な、手に入れることなんてできへんし。

  せや、ろ?」

 逆に問われてリツカが瞬きを繰り返しながら首を縦に振る。

 「だから、イリノイスさんの何処かにシャイレンさんのことがあっても、
  決してリツカさんのことを嫌いなわけやないし。

  気にすることあらへんのと違います?」

 「・・・・・・・、そう、か。・・・・すまない、ありがとう。落ち着いた」

 「せやったら、ええんのやけど」

 ぽてっと軽い音を立てながら鍛冶師の肩にリツカが頭を預ける。
 好きにさせながらジェイが大人しく座っている。

 その横でペコが大あくびするのを壁からこっそり覗きながら、
 錬金術師ルードは、進展してるようで微妙にすれ違っている二人を拳一つ握り
締めながら見守っていた。

77ある鍛冶師の話sage :2004/06/23(水) 11:42 ID:yy9gsDVw
23様>Σ(゚Д゚;)!!
78下水リレー(93・地下)sage :2004/06/23(水) 16:30 ID:ttSNOT1k
 よーしパパリレー進めちゃうぞー。
----

「…よりにもよって…奴か」
 男はその姿を見て、そう口にするのが精一杯だった。彼の敵にして今の主たる
存在の数ある手駒の中でも品性においては最低の下衆。戦う相手に対する敬意も
礼儀もなく、ただその圧倒的な魔力によって己より弱い敵を嬲ることしかでき
ない屑。『狗』とは良くつけた名前だと男は思う。
 彼が『狗』に気づくのと同様に、『狗』も男が自分の領域に足を踏み入れた事に
気が付いたらしい。男のすぐ横の壁面から、小さな青黒い肌の生首がぬぅっと生えた。
その面はしわがれた老人の如く、高く突き出た鼻梁とこけた頬は生前にも異相に分類
される物であったろうことは間違いない。今は、黒目の中に赤光を浮かべる瞳という
取り合わせが更に魔的な風貌を強調していた。この小さな皺首が『狗』の本体だ。
 生前は有能な死霊術師だったというが、今はその影すらもない。
「邪魔はダメッ絶対ッ」
「……」
 無言で頷く男の姿に満足したのか、皺だらけの老顔を綻ばせて『狗』は男の脇に
漂う。これから始まる「遊び」への期待で緩んだ『狗』の口元から滲んだ涎が地面を
打った。

「弓技も使えるんでしょ?」
「まぁ、人並みには」
 楽士と思しき姿が楽器を弓に持ち変えるのを待ってから、女狩人は弦を弾いた。ほう、と
男の口が感嘆の息を漏らす。
「HYAAAAAAA! HAAAAA!」
「「ダブルストレィフィング!」」
 気合の声が不快な金切り声を裂く。それでも甲高い叫びを上げ続ける『狗』の首に、
炎を纏った矢が四本突き立った。苦悶の声とともに、仮頭がぼとりと落ち、新しい頭が
空白を埋める。しかし、それも『狗』が敵を欺く常套手段に過ぎない。一番大きな分身の
変容に敵が気を取られているうちに、無数の分身で壁を、床を、天井を抜けて周りを
包囲する。数で嬲ることこそ、奴の戦い方だ。
「ひゃはははははっ みぎぃぃぃ!」
「↑ダヨォ〜」
「シィィタァァーーー!」
 複数の方向から、連携の取れた同時攻撃が前にいる敵対者達を襲う。狩人と楽士が
幽霊を打ち抜き、かつての男同様鍛えた肉体を武器とする男達が素早い動きで蝙蝠を
叩き落とすが、それも数という暴力の前には無意味。
「くそ…きりがねぇぇ!」
「………」
 男は、『狗』の分身で埋め尽くされた視界の向こうから聞こえる悲鳴に落胆の表情を
浮かべた。この者達も奴を倒す力はないだろう。『狗』の仮体が無数の蝙蝠と死霊の
乱れ飛ぶ向こうで勝ち誇ったように狂笑する。その、刹那。

「HYAAAHAAA…GYAAAAAAA!?」
 ばしゃっ、と男のすぐ脇で水を叩くような音がした。老人の頭の形をしていたモノが
至近距離から銀の矢を打ち込まれて爆ぜる音だ。そして、男の首筋に鋭利な刃が当たる
感触。
「不意打ちで盗賊の上前はねるなんざ…」
「十年早いっての」
 男女二人分の声は、完璧に気配を絶っていた筈の男の背後から聞こえた。男に刀を
向けているのは、どうやら女らしい。賞賛に値する技量だ…。素直に男は認めた。
だが、ツメが甘い。男は既に人ではないのだから。
 内なる声が囁く。切るのではなく突きつけるに止めた甘さの代償は支払ってもらえと。
首に食い込む刃を気にも留めず、踵を中心にくるりと回る。人ならば頚動脈を自ら切断
するような速度と動きにカタールの持ち手は虚を突かれたように後ずさった。男は、
青い血を首から引きながら、間合いをつめ、女の首を掴もうとする。
 その手が、空を切った。壁を背にした女が、あまりにも
「…似ている」
「え?」
 その一瞬で、逆襲の機は消えた。男は、己の油断を内省しつつ、足に力を込める。
「クァグマイアを」
「あ、はい。クァグマイア!」
 後ろから響いた声が、撤退しようとした男の目論見を砕いた。
「ECと原理は同じ、かな。精神波動を纏うことで、空気摩擦を限りなくゼロに減らし、
 高速移動を可能にする…、たいした手品だけれども種が推測できれば対処は簡単だよ」
 得意げな声。泥濘の魔法を唱えた女の声とあわせて、八名。これだけの腕の持ち主が
揃えば…。僅かに沸く希望を冷たい理性の声が否定する。ありえぬ。奴に勝てるなど。
永劫に彼女と共に。…今のままでいればいいのだ。

 そ れ が 惨 め な 負 け 犬 に で き る 最 善 の 事 だ。

「……屠所のブタのように…青ざめた面にしてから、おまえらの鮮血のあたたかさを、
あぁぁ味わってやる!」
 足元で、上半分がほとんど消し飛んだまま叫ぶ老顔の声が男を我に返らせた。
「絶望ォーーーに身をよじれィ虫けらどもォオオーーーッ!!」
 跳ねるように飛び上がった首を、女狩人の矢が射抜いた。しかし、狂ったような
大声は注意を引く為の物。ならば、『狗』の本体は別の場所に移ったということだ。
「おい! 動くな! …クソッ」
 男の背を強矢が貫いた。遅れてほぼ無詠唱の雷呪が彼を撃つ。しかし、