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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第4巻【燃え】
- 1名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/04(日) 21:34 ID:nprzUvrQ
- このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ【エロエロ?】』におながいします。
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ 感想は無いよりあった方が良いでつ。ちょっと思った事でも書いてくれると(・∀・)イイ!!
・ 文神を育てるのは読者でつ。建設的な否定を(;´Д`)人オナガイします。
▼リレールール
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リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
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※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。
前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第3巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2//test/read.cgi?bbs=ROMoe&key=1074912738
- 2スレルールsage :2004/04/04(日) 21:35 ID:nprzUvrQ
- スレルール
・ 板内共通ルール(http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoesub&key=1063859424&st=2&to=2&nofirst=true)
▼リレー小説ルール追記--------------------------------------------------------------------------------------------
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ リレーごとのローカルルールは、第一話を書いた人が決めてください。
(たとえば、行数限定リレーなどですね。)
--------------------------------------------------------------------------------------------
- 3名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/04(日) 21:43 ID:iIOtsdpQ
- スレ立て乙。
前スレに劣らぬように頑張っていきまっしょい
- 4名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/04(日) 23:42 ID:qF6Tgjoc
- 魔剣戦争記・外典第一話、前スレの最後を無駄に容量使ったので
あぷろだにあげておきました。
http://tfc55.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/ss_up/rag_ss/1081046636.txt
>前スレ290さま
一気に書き上げてしまったので…
次からは読み直しての修正と校正をしっかりがんばりたいと思います。指摘感謝。
- 5名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 01:33 ID:vcIiMoCY
- あら、一桁。記念に何か書きたい今日この頃。
書きたいのに浮かばないジレンマ_| ̄|○|||
ともあれ、スレ立て乙です。
- 6名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 04:05 ID:/3HaQ4cE
- わーい、初めて1行ヽ( ´ー`)ノ
と、そんな事はおいといて・・・
スレ立て乙です
- 7名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 14:26 ID:crK6VXRw
- 7ゲトーΣ(゚Д゚ ;)
スレ立ておつです
- 8名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 15:29 ID:Vtb985cQ
- >>6
なにが1行?
- 9名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 15:49 ID:9rHmUONI
- 間に合うかな?一桁。
いつかゲットズザーではなくて小説を載せたい・・・
まだ書きかけなんだよ〜見逃してくれよ〜
- 10名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 17:43 ID:k.rS9WOQ
- 多分10げつ
>>9
゚∀゚)<ダメ
というのは冗談で
早くカキアゲルンダ
- 116の人sage :2004/04/05(月) 18:47 ID:/3HaQ4cE
- 1行ってなんだ・・(;´д`)
- 12名無しsage :2004/04/05(月) 19:34 ID:dscrapUs
- 「たいりょー、たいりょうw」
STR1、VIT1という華奢な転職間近のマジ子が意気揚々とプロにもどってきた。なじみというか、一方的に懐いているというか利用しているというか言葉に困るが付き合いのある錬金術師の前で体育座りをする。『露天をしています。邪魔しないでください』と言っているような錬金術師の顔を覗き込むようにしながら、
「ね、代売りとミルクを買って?」
さもとーぜんというようにしながら、背負っていた荷物を渡す。マジ子の持てる重量ギリギリまではいかないが満身創痍、自然治癒もしていない様子をみると50%は簡単に越していたらしい。
「…まとめで代売りを頼むとかできないわけか、お前は…」
「倉庫代がもったいないでしょ」
「せめて瀕死の状態で帰ってくるな」
「ヒルクリもってないし、無理。ダッシュで帰ってきたの。早く代売りして〜〜」
「はいはい……」
「あ、ハブはお土産ね。白ハブだけど。白Pにでもして、その売り上げでなにかおごってw」
あきれている錬金術師にさらっといいながら、白ハブを渡す。荷物を渡すとふぅっと肩を軽くまわしてから二人で牛乳商人のもとに向かう。
「ほい」
「ありがとう。ビビタcまでの道のりが一歩近づいたわ」
ゼニーを受け取ってホクホクしているマジ子に呆れ顔の錬金術師は溜息をつきながら
「俺からはとっとと卒業してくれ」
「…いいの…?」
「……なにが?」
「……あたしが卒業して」
いつもニコニコとしているマジ子が真剣な顔をしてじぃっと錬金術師を見つめていた。彼はその双眸に射すくめられたようになりながら、一寸「あ、こいつ可愛いかも」とかなんとか思ってしまう。胸元とか太腿とか…きわどさでいえばBSのほうがぽろっといきそうでいいのたが…
「……勝手にしろ」
ごくっと唾を飲み込んで言葉を返した。そうするとマジ子はにっこりと微笑んで頬にちゅーする。
「これからもよろしくね?」
にっこりと笑うマジ子の顔をみながら、錬金術師はふとINTとDEXの高さから『マジは床上手』と『マジは詐欺師』との噂を思い出し、しみじみと「はやまったな、俺…」としょげていた。
はじめまして。萌えSS読んで書きたいなぁと思ってちょこっと書いてみたんですけど…撃沈…(ゲフリ)
マジ子は萌えじゃないんだろうなぁとか思いながらも、マジ子が好きなので…
あつかましい自称倹約家マジ子×錬金術師♂でした(コソコソと逃亡)
- 13名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/05(月) 20:15 ID:CbphmegA
- わたしは>>12に謝らねばならない。
ゼニーを受け取ってホクホクしているマジ子
が、
ゼニーを受け取ってクホクホしているマジ子
に見えたことを。
>>4
ユウゴきゅん萌え
- 14名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/06(火) 20:38 ID:HHADSa/o
- しかしこのスレはDOPとツヴァイハンダー大人気だな。
お兄さん両手神速騎士作りたくなってきちゃったよ
- 15えべんはsage :2004/04/06(火) 23:52 ID:3o4fTlHI
- 弱々しく揺れる紙燭のともる中で、老人と青年が向かいあっていた。
明かりはふたりの周囲から闇を払うのがせいぜいで、あたりは暗く、静かだった。
青年が老人の額から布を取りあげて、かたわらの水の張ってある桶にひたした。
水の動く音すらもひそやかだった。
「ヨンや……、そこにいますか、ヨン」
老人の声に青年は手を止めた。老人は、不安げに首をわずかにめぐらせていた。
青年は口を耳に寄せる。
「ここに」
青年のことばに老人は満足げに頷く。
何事かことばをつむごうと口を動かしかけた老人の額に、しわがよった。
それから老人は、喉になにかが詰まったかのようなひどくかすれた咳をした。
「大丈夫ですか……?」
いよいよかと、青年はたまらない気持ちで老人の身体を支える。
しばらくのあいだ、老人は咳きこみつづけた。
「大丈夫です。もう気にせぬよう」
ようよう咳もおさまり、青年の助けを受けながら身を起こした老人は、
しかし思ったよりもかくしゃくとしていて、目には往年の光を宿していた。
口の端から血を滲ませていても、青年からはすっきりとした表情に見えた。
「お水を持ってまいりましょうか?」
老人は首を振る。
「そういった意味で言ったのではありませんよ、ヨン」
老人は微笑みすら浮かべていた。
「はあ……」
青年は老人の言葉に納得しかねる様子だったが、神妙に頷いた。
「時間がきたということですよ、シオン。
わたしとて本当に不死身ではないのです。
時が経ち、老いさばらえたスレッドはただ埋められるのを待つのみですよ」
「そのようなことを仰らないでください、サン」
青年は泣きそうな顔をしてことばを続ける。
「まだわたしは、あなたに教わってないことがたくさんあります」
「わがままなのは相変わらずですね」
老人は苦笑いを浮かべて、また咳きこみはじめた。
「こんな老人に、まだの調練の相手を強いるのですか?」
「……しかし」
老人は青年の頬に手をそえる。
「わたしおそらく、三百台でお迎えが来るでしょう。
短命であること。それこそが、わたしたちのような存在にとって、喜ばしいことなのです」
「サン……」
「さあ、立って。ほら、早くなさいな」
青年は渋々といった様子で立ちあがると、深く頭をたれた。
「さあ、お行きなさい。皆が、あなたを待っていますよ」
「お勤め、ごくろうさまでした……」
涙声で青年はそう述べると、もう振り向くこともなく、
紙燭に照らされた空間から暗闇へと立ち去った。
青年がどのような物語を綴り、それを留めるのか。
「さて、あとは、埋め終わるのを待ちましょうか」
見送る老人は、ただ満足げだった。
- 16名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/06(火) 23:58 ID:3o4fTlHI
- 16げとずさー。
第3巻はまだ全部読みきってないのですけれど、
続きが楽しみな作品がめじろ押しで大変読みごたえがありました。
第4巻も職人様たちに期待大であります!
- 17名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/07(水) 09:53 ID:shgZrqW6
- 下水道リレーマッダァ〜?
- 18名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/07(水) 10:53 ID:qR5S/DCQ
- >>17
モチツケ(´д`;)
文神様も春の新環境移行とかでいそがしいと思うんだよ、きっと!!
またーり待とうZe
- 19今を生きるために、決して過去は振り返らないsage :2004/04/08(木) 18:24 ID:6iQWKpWs
- 暇なときは、首都の南門の外のベンチで本を読んでいたり、うたた寝していたり、ぼーっとしていたり……そんなのんびりした面があるかと思えば、氷のように冷酷に冷静にはどんな相手でも気を抜かず全力を持って敵を殲滅する。
ピラミッドのオシリスに挑んで死闘の末に手に入れたというクラウンが、トレードマークのウィザード。
落ち着いた口調と、物静かな態度……でも、実はお祭り好きで少しおっちょこちょい。
外見の派手さと中身とのギャップに私は彼が好きになった。
……それが、私の相方であり……恋人。
好きです、相方になってください……そう告白したのは私から。
そのとき、私はまだ彼のレベルよりも遥かに下だった。
本当は、彼に追いついてから告白したかったのだけど、そんな悠長なことをしていたら別の誰かがこの人に告白してしまうんじゃないかと焦ってしまったから。
事実、彼はとても人気があったし。
私の告白を聞いて、彼は目を丸くして本当に驚いていた。
それはそうだろう。
私は当時、孤高のプリーストを気取っていたから。
支援プリーストとして成長してきたけれど、相方も作らず、ギルドには決して入らない。
臨時の探索パーティを見つけてはそこへふらりと入り、探索が終われば抜ける。
そして一般的なプリーストとは違う「耐えるプリースト」ではなく「避けるプリースト」である私。
断られると思った。
でも、彼は笑いながら一緒に組めるくらいまで成長するのを待つと言って、その場で所属していたギルドへの上納を限界にまで上げてくれた。
そして、念願かなって……組めるようになって……数ヶ月過ぎた頃だったろうか。
「しばらく、旅に出る」
彼がそんなことを言ったのは、グラストヘイムに探索に行った帰りのゲフェンの宿だった。
いつものように寝台に寝転んで本を読んでいた彼は、本を閉じて私に向き直った。
「え……どこまで? 私は一緒に行っちゃダメなの?」
隣に座って髪をとかしていた私は、驚いてブラシを落としてしまう。
もうその頃には、私は彼と同じギルドに所属してギルド内でも公認の恋人同士だった。
いつも一緒にいるよねとか、いつ式を挙げるのかとか、仲が良すぎて(熱くて周囲が)溶けるとか……。
そんなことを言われるくらいだったから。
「……いつ帰れるかわからないから……連れていけない」
神妙な顔で表情を暗くして、彼はつぶやいた。
「自分が行かなくても大丈夫かもしれないって思って、黙っていたんだが……結局行くことになってね」
「そんな……」
「悲しそうな顔するなよ。帰ってこないわけじゃない」
泣きだしそうな私を抱きしめて、頭を撫でるとそっと優しく額にキスをした。
「リリー、ルティエの街への転移メモ残ってる?」
「うん。この間の結婚式の送迎ポタがまだあるけど」
一週間ほど前に、ギルドの仲間がルティエで結婚式を挙げたので、送迎係をしていた私の手元にはルティエの教会前の転移のメモが残っていたのだ。
- 20今を生きるために、決して過去は振り返らないsage :2004/04/08(木) 18:24 ID:6iQWKpWs
- 「それじゃ、ルティエの教会に今から連れて行ってくれないか?」
「え、今から?」
……そして、私は彼とともにルティエに来ていた。
もう深夜とも言える時間だから、教会の入り口には鍵がかけられていた。
「やっぱり、この時間じゃ仕方ないよね……また、後でにしようか?」
「ちょっとまってて」
彼は慌てもしないでどこからか針金を取り出すと、その鍵を開けた。
さすが……器用さが命のウィザード……。
「っ!? ……それまずいんじゃ」
「いいから。もう時間がないから、一分でも一秒でも惜しい」
私は彼に手を引かれて教会の中に入った。
しんと静まり返り、暖房も止まっているせいか空気も冷たく肌に刺さってくる。
奉げられた銀の蜀台のロウソクのほのかな明かりが周囲を照らし、大きなステンドグラスが外の雪明りを反射してとても幻想的な風景になっていた。
その中を彼は、私の手を握ったまま奥の壇の前まで連れてきた。
「リリーナ、俺は何よりも君の幸せを願っている。だから、これから言うことは俺のわがままだ。約束はしなくていいから……ただ、聞いてほしい」
彼は私の手に小さな箱を載せた。
「俺は君を愛している、何にも変え難いほど……。辛いだろうけれど、俺が帰るまで忘れないで待っていてくれ。そして、帰ってきたら……結婚しよう」
箱を開けると中には、金でできた精巧な細工の指輪があった。
「……忘れるわけないでしょう? 待ってる……から……ずっと待ってるから……」
思い切り抱きついて、私は彼の胸の中で泣いた。
「……リリ? おーい、リリ? こら、しっかりしろー」
翔の声で、ようやく私は現実に引き戻された。
人と言うものは、あまりに強い衝撃を受けると思考が停止するとか、その時までに生きてきた人生が走馬灯のように振りかえるとか色々言われているけれど、同じことが自分にも起きるとは思わなかった。
って、そうじゃなくて。
私がショックを受けた理由が理由だったからだけど。
私の目の前には、皮製の鞭を持ったローブ姿の金髪の女性と、先程から私に治療を施している小間使いの女性。
ローブの女性は、ジルタス。金色のとても美しくて長い髪と、きつめの吊り目。ローブはゆったりした魔導師用のものだけど、スリットが深くてそのスリットから覗くその脚に履かれているのは皮の編み上げブーツ。
小間使いの女性は、アリス。小間使い用のメイド服を身に着けた、黒髪の大人しくて柔らかい感じがする女の子。
つまり、グラストヘイムで現れるはずのモンスターと同じ名前。
そして、人間の姿にしたら、きっとこんな感じになるという姿そのものだったから。
- 21今を生きるために、決して過去は振り返らないsage :2004/04/08(木) 18:31 ID:6iQWKpWs
- こそっと・・・続きを投下。
筆の進みはいいけれど、邪魔になっていないか不安ですよ(´・ω・`)
今回は、下手な恋愛小説の一部分みたいで自分でも反省_| ̄|○||
次回は、ボンゴンのこととか書きたいな。
ではでは
___ __________________________________________________
|/
||・・)ノ
- 22名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/08(木) 22:16 ID:qfnKZ9OE
- ポリンとポポリンは仲良しです。
ポリンは林檎が大好きです。だけど、ポポリンは林檎を食べたことがない
んだそうです。よく緑ハーブを食べているのを見かけるけど、あれは苦味が
効いてて、ポリンはちょっと苦手です。でも苦いハーブを食べれるポポリン
はカッコイイなぁ、っておもうんです。
あるとき、ポリンはいいことをおもいつきました。
「ポポリンといっしょに美味しいものを食べよう。ぼくも食べれる、苦くな
いやつを」
とても良い考えだとおもいました。
ポリンは美味しそうなものいっぱい、いっぱい拾い集めました。だけど、
ポポリンのところに行くまえに、ぜぇんぶ消化してしまちゃっうのでした。
「こんなにいっぱい食べたら、マスターリングみたいにデブデブお腹になっ
ちゃうよ」
ポリンはため息をつきました。
「そうだ、息を止めてみたらどうかな?」
……あやうく死にかけました。
全身、マーリンみたいな真っ青になって、頭の上にエンジェリングみたい
なワッカが見えかけました。エンジェリングは取り巻きを連れていてステキ
だとおもうけど、マーリンは嫌いです。だってあいつら、「拾い食いなんて
みっともないね」って、すかしてるだもん。おまけに魔法まで使っちゃうよ
ーな嫌味なやつだから、嫌いです。
でもポリンがもっと嫌いなのは、なんでもかんでも食べてしまう自分自身
でした。
「美味しいものをひとり占めなんて……ぼく、嫌な食いしん坊だ」
しょげているポリンに、ポポリンは言いました。
「ポリンといっしょに食べるゼロピーがいちばん美味しいよ」
こんなときポリンは、桃色の身体で良かったなぁ、っておもうんです。
……萌える?
- 23名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2004/04/08(木) 23:49 ID:n8rN7qWI
- 初挑戦。しばしおつきあいを・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「俺、ナタリーさんが好きだッ!つき合ってくれッ」
俺は、顔から火が出るような思いで告った。
ナタリーさんはしばし絶句したが、すぐにいつもの笑顔に戻り、
いつものように、その笑顔で全てを突き放す一言を放った。
「せめて公平組めるようにならないとねー。一次職の分際で
私に告るなんて、身の程を弁えろよ、ゴルァ♪」
ああ、いつもこういう人なんだった!
全てを包むような慈愛の笑みと、その真逆でトゲだらけの悪魔のセリフ。
それがナタリーさんだった。
だが、告っちまった以上、もう後には引けない。
「じゃあ、追いついて見せますッ!」
俺はきびすを返し、いつもよりワンランク上の狩場目指して駆けだした。
「ひさしぶりねえ、レックス。レベル上がったの?」
ナタリーのヒマワリのような微笑みは本当に久しぶりだ。
口を開けばヒマワリはフローラになってしまうのだが、俺はそんな彼女に
惚れているのだ。だから、地獄のトレーニングで一気にレベルを上げた。
「上がったぜ、もうすぐ転職、51レベルだ」
「その程度のレベルで私にタメ口きくなよオルァ♪
転職してそのダサイ服を着替えてこいや?」
畜生、負けるもんか。その笑顔を俺のものにしてみせる。
俺はきびすを返し、いつもよりワンランク上の狩場目指して駆けだした。
「ひさしぶりねえ、レックス。レベル上がったの?」
ナタリーのヒマワリのような微笑みは本当に久しぶりだ。
俺は騎士になっていた。ナタリーを追うために、彼女と同じ道を選んだのだ。
この、鎧の光沢もまぶしい、今の俺をみてくれーッ!
「おう、一通りのスキルは覚えたぜ、今ベースは65だ!」
この短期間でこのレベルなんだ、そろそろ追いついただろう。
俺は自信を持って報告した。・・・した、わけだが。
「何時になったら公平組めるようになるの?もー、とろくさいぞダラ♪」
「う、うそだろ。あんただってこないだ転職したばかりだったはず」
65で公平不可ってことは、最低でも74。
そんなにポンポン上がるレベルじゃないはずなのだが。
「く、こうなれば追い抜くまでよッ」
「やってみろ雑魚が♪」
いっそ嫌いになれたらと思うこともある。でも、結局好きなままなんだからしょうがない。
これが俺の選んだ道なんだ。こうなればとことんやってやる。
俺はきびすを返し、いつもよりワンランク上の狩場目指して駆けだした。
- 24名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2004/04/08(木) 23:52 ID:n8rN7qWI
- ひさしぶりねえ、レックス。レベル上がったの?」
ナタリーのヒマワリのような微笑みは本当に久しぶりだ。
「・・・」
俺は報告する気力も失せた。
俺だってさあ、必死で頑張ったんだぜ?
ベースは87。すでに廃と呼ばれるほどのレベルに到達したんだ。
これまでの修行のきつさは半端じゃなかった。
だが、ナタリーは・・・廃ガスを噴出していた。
「何か言いたいことでもあるの、雑魚助が♪」
「ありえねえ・・・だが!」
俺は指を突きつけた。
「それでこそ俺が愛する女!挑戦する価値があるッ!
みていろ、必ずお前を振り向かせてみせるからなッ」
俺はきびすを返し、いつもよりワンランク上の狩場目指して駆けだした。
「ひさしぶりねえ、レックス。レベル上がったの?」
もうこのセリフもききあきたな、おい。
だが、もうこいつも毒は吐けない筈だ。なぜなら、俺も極みに達したからだ。
しかし、ナタリーは見たこともない姿をしていた。
「一周目ごときが私にプロポーズ?出来ると思ってるのかイ」
どんどん口調が悪くなってないか。
「三次職・・・か」
そうくるか。俺が極みに達するまでに、あんたは2回目の極みに達したというのか。
「追いつけない、か・・・」
諦観とともに湧き上がるのは怒りの感情。
「そんなに俺が嫌いか。そこまでして俺を退けるのか。
わかった、もうあんたとは会わない。好きにすればいいさ、お互いにな」
ここまで強くなったのは何のためだったか。
ナタリーに振り向いて欲しい。ただそれだけじゃないか。
その目的を捨てて、背を向けて、俺はどこに向かうんだ。
三次職なんて気が遠くなる道のりに踏み出すつもりはない。
潮時・・・か。
だが、最後にけじめをつけないといけない。
このままじゃ、終われないんだ。
「Pvいこうぜ、ナタリー」
未知のスキルが俺を襲う。それをぎりぎりで凌ぐも、ナタリーの攻撃は
あまりに凄まじく、俺は受けることで精一杯だった。
それでも、ただ一度のチャンスを待つ。
闇雲な攻撃など意味はない。
「私は、あんたには釣り合わないのよ」
「逆だろ?」
「いいえ、私はただ逃げ続けているだけ・・・。
私には好きな人がいて、おつきあいしていたわ。
だけど、その人は・・・ある日偶然出会ったとき、彼は違っていた。
心を持たず、ただひたすらに戦い続け、私の声も届かない・・・」
「BOTか!」
「正体を知られた彼は、申し開きどころか、私にも道具を渡して、無理やりBOTになれと
迫ってきたの。彼は自分のギルドの拡大のために、BOTを増やしたかっただけだった。
私を選んだのは、美人なら許されるだろう、ってね。バカじゃないの。
裏切られた気分になって・・・私からおつきあいをやめたわ。
それ以来、男の人に近づかれるのが怖いの!だから、極限まで強くなった私を
倒せるほどの人じゃないと、認めない!」
いっそう激しくなる剣戟。
「俺がBOTだとでも?なら、見せてやる」
耐えろ、耐えろ。
今はチャンスを待つんだ。
彼女は逃げていると言ったが、それは違う。
三次職という極まった状態。その状態の彼女を正面から打ち破ってこそ、
俺はナタリーを呪縛から解放し、プロポーズする権利を得られるんだ。
「俺はそんな卑怯なことなんか絶対しねえぞ。俺は頭が悪いからな、
打算とかそんなこと、考えはしない!俺が強くなったのは、お前が好きだからだ!」
その一瞬、隙が生まれた。
時間の流れが停滞したかのような一瞬を、俺は見逃さなかった。
「オートカウンター!スタンバッシュ!そしてェッ」
その瞬間、ナタリーは微笑んでいた。
一切の毒気のない、心からの微笑み。
彼女はこの瞬間、解放されたんだ。
後は俺が、彼女にふさわしい男として大成できるか、だな。
「ボーリングバッシュ!!」
ようやく、勝てた。
これで・・・
ドスッ
「え、何で?」
「アホかお前は♪こちとら三次職でい。オートリザレクションでかるーく復活よ」
「え・・・」
「終われ、雑魚が!!」
あとは一方的だった。やはりナタリーはナタリーだった。
さんざん俺を叩きのめしたあげく、高笑いして去っていった。
「呪縛が外れても・・・もとからああなんだな」
俺はしばらく笑った後、空に誓った。
「・・・追いついてやる」
その日、俺は転生した。
あいつのいるところはまだ遠いが、何時の日か、
必ず、あいつから告白させてみせる。
AL LA FIN TO THE MAX.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
三次職とかは創作です。お目汚し失礼致しました;
- 25名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/09(金) 00:37 ID:h5enjDdY
- ナタリーさんかっこいいぞヲイ。
インパクトあるなあ・・・
- 26名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2004/04/09(金) 03:21 ID:Bvs3TTjM
- やっべ、22ステキ。
そういうノリは好きデス、ほのぼの系はまかせた。
ただ、段落は行開けで置き換えたほうがいいかも。
段落で読み分けるのだろうけど、ちょっとみずらかったから。
- 27名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/09(金) 20:55 ID:r3BpbggA
- >>22
某ひまわりのようで(´ω`)のほほん。
文章の置き方というか、間のとりかたがうまいと思いました。
でも私は感想とか書くの苦手なので、あまり詳細には書けません。ということで結論。
萌えました(・∀・)
>>23
話の筋としてはとても大好きなのですが、
差しでがましくも気になったことを申し上げますと、
「俺」が頑張ってる過程を描写して欲しかったように思います。
そーするともっと感情移入できただろうなー、と。
>>下水道リレー
書いてた作者様方はまだいるのかなー…、とちょっと不安に。
よかったら挙手とかお願いしちゃってもいいですか?
- 2823-24sage :2004/04/09(金) 23:35 ID:/OGpXiLE
- 感想ありがとうございます〜。
思いつくままに書いたんで、ギャグのつもりだったのに
後半なんだか真面目になってしまったのが反省点ですね;
>25
ナタリーは書いていて自分も気に入ってしまったのですが、
よく考えると普段の私のキャラがまさにこんな感じなんですよw
>27
そうですね、それは必要だったかな。でも、初投稿であんまり長いのもどうかと
思ったもので、色々端折っちゃいました。どうすれば短文で主人公に感情移入させるか。
これって、難しい課題ですね。よし、がんばろ。
>22
短文なのにポリンの心が透けて見える・・・。
息を止めるとこが好きです。
また思いついたら投稿しますので、よろしくです。
- 29名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/09(金) 23:38 ID:0RAGX/tY
- >>27
実は……書いてました。
だけど最近それなりに忙しくて書けなくて……
それに他の方の動きも見たかったり……
言い訳っぽかったですね、すみません。
- 30前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:53 ID:g0wwc7Nk
- ]U、
小さな窓から日の光が差し込む。朝独特の弱々しくて柔らかい日差しを
まぶたに浴び、私は目を覚ました。あたりを見回せば、見慣れた石造りの
壁はなく、部屋の広さも私の部屋よりも二周りほど大きい。
あぁ、私は初めて狩りに来て、初めて外泊したんだ。
脇のソファを見れば、既にもぬけの殻。彼はどこへいったんだろう?
とりあえず、彼がこないうちに着替えてしまおう。寝巻きを脱ぎ捨て、
アコライトの制服に着替える。脱いだ寝巻きは丁寧に畳んで背嚢の奥にしまう。
顔を洗いに洗面所に行って帰ってくると、部屋には彼がもどってきていた。
汗をかいているみたいだし、顔も上気している。
「や、おはよう」
「おはよう」
「支度できた?朝飯食べに行こうよ」
「ええ、構わないわ」
連れ立って階下の食堂に向かう。適当に席をとった私たちは、
注文をとりにきた宿の主人に、愛想を振りまきながら
ピッキの香草焼きサンドイッチとココアを注文した。
お互いに黙ったまま、注文した料理が届くのを待つ。気まずいといえば
気まずいのかもしれないが、気楽と言えば気楽でもある。
周りには、やはり冒険者が多い。ここ近年で、魔物はフィールドに
まで生息地を広げ、一般市民では街から街への往来もままならないのだ。
さらにゲフェニアダンジョンの地下一階といえば、一次職の冒険者にとっては
格好の狩場。宿に一次職が多いのも頷ける話だ。
つまるところ、貢いでもらえそうな二次職の男はいない。
パティ先輩の教えを実践する機会はもう少し先のようだ。
それを確認した私は、表情を普段のものに戻す。周囲の人間観察を終えた
私が彼の方を向くと、なぜか彼は顔をしかめて、舌打ちしていた。
彼の視線を追う。なるほど。シーフとアコライトのペアが囲むテーブルを
はさんで、向こう側のテーブル。そこには、昨夜部屋を訪ねてきて
薬を売ってくれ、と言ってきた商人風の男がいたのだ。こちらをジーと
見つめている。私にはため息をつく他に別のリアクションが見つからなかった。
やがて料理が運ばれてきた。決して豪勢な食事ではないが、香りも見た目も
大聖堂の朝食より数段優れているように思える。彼は両の掌をあわせ、
いただきます、と呟くとサンドイッチを口に運んだ。
ばっかみたい。
私は神様への感謝の言葉も言わずにココアのカップに口をつけた。
- 31前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:54 ID:g0wwc7Nk
- 「速度増加!!に、ブレッシング!!。はい、頑張ってね」
私はその場に座り込んだ。
「へ?」
彼がぽかんと口を開いたまま、その場から動こうとしなかった。
ここは、ゲフェニアダンジョンの地下一階。朝食を終えた私たちは
支度を済ませ、遂に狩りにやってきたのだ。
「私は支援プリ志望だから、魔物と殴りあうだけの筋力も体力も
敏捷性もないの。支援してあげるから、戦ってきてね」
私の懇切丁寧な説明を聞いても、彼はまだ納得しかねる、といった顔を
していたが、やがて、なんか違う…とかなんとか呟きながら歩き出した。
数歩歩いた彼は私に背を向ける格好で立ち止まり、敵を待つ。
定点狩り。座ったまま精神力の回復を待つ私を守るように立ち回る
つもりなのだろう。
ポイズンスポアが湧いて出てくるまでそんなに長い時間はかからなかった。
ぴょこぴょこ、と跳ね回り噛み付いてくるポイズンスポアの攻撃を
彼は必死で避けながら、カタナで確実に斬撃を加えていく。
私の支援もあって彼は順調に、次から次へと湧き出てくる毒キノコの化け物を
倒していった。下水道では強敵だったファミリアももはや私たちの敵ではない。
「どう?」
「いいんじゃない、と言いたい所だけれど。知りあいから聞いた話だと
ここではもう少し効率よく経験を積めるみたいよ」
「うーん、OK。わかった。ここだと少し湧きがぬるすぎるから
もうちょい奥へ行こうか」
性懲りもせず襲い掛かってくるポイズンスポアを叩きのめしながら
私たちは少しずつ奥の方へ進む。しばらくして分岐点が見えた。
「どうする?」
「貴方の好きな方でいいわ」
「じゃあ右かな」
右折した私達を待っていたものは袋小路。申し訳なさそうに、こちらを見る
彼に、私は気づかない振りをして言った。
「ここだといざという時逃げ場がないから、さっきの分岐点まで
戻らない?そこで定点狩りしましょ」
「了解」
二人そろって回れ右。振り返った私が見たものは、洞窟の狭い道を
塞ぐようにして立っている黒服サングラスの男たちと、
彼らのうち最も屈強な人に羽交い絞めにされている赤毛の商人風の男。
ほら。だから言ったのに。私は頭を抱えたくなった。
- 32前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:55 ID:g0wwc7Nk
- 「た、たすけてくださーい!!」
なんて言ってる割には、結構呑気そうな商人。
「お前達、あの赤髪のウィザードにもらった薬を渡してもらおうか」
「さ、さもないと、どうなるかわかっているな」
黒服がドスの聞いた声で脅しをかけてきた。だがその声は心なしか
震えているようにも思える。
「うげげ、た…たすけへー」
「あ、アンタ、何だってこんなところにいるんだ!?」
彼はひどく狼狽している。私は、彼がどう動くのか、見ていることにした。
「あなたがたの後を追ってダンジョンに入ろうとしたら
こいつらに捕まっちゃって、ははは」
「さあ、おしゃべりはそこまでだ。早く薬を渡せ」
黒服が私達に迫る。彼は懐の巾着に入った液体入りの「試験管」を
抑え、黒服と睨み合っていたが、やがて肩をふっ、っと下ろし
溜め息をついて言った。
「わかった。コレは渡す。だからその人を放してやってくれ」
結局。彼は自分が引き受けた仕事よりも、どこの誰だか知らない赤の他人の
命を優先させた。
なんとなく、彼ならそうするだろう、とは予測は着いていたが。
律儀な彼としては、苦渋の選択だったにちがいない。
試験管を左手に持ち、突き出すような格好でゆっくりと黒服に近づいていく
彼の顔には、傍目から見てもわかるくらいはっきりと自責の念が
浮かんでいた。
「よし、確かに受け取った。おい、そいつを話してやれ」
試験管を受け取った黒服の合図で、赤毛の商人を羽交い絞めにしていた黒服は
その手を緩めた。
「はひー、助かった…」
男はほうほうの体で私たちのほうへ、走り寄ってくる。
そして、試験管を手に入れた黒服たちは…
「やった、遂に取り返したぞ!これで我々の悲願が達成される!」
と、よほど薬を取り返したのが嬉しかったのか、その場で小躍りを始めた。
ちょっと不気味。
しかし、勝利の女神が彼らに微笑み続けるという事はなかった。
自分達の成功に有頂天となっていた黒服達は背後から忍び寄っていた
ポイズンスポアに気づかなかったのだ。
『危ない!』
私と彼の声がハモッた。時既に遅し。ポイズンスポアの攻撃を受けた
黒服は、けだもののような叫び声をあげ、地に伏す。
その男の手に握られていた試験管は宙に放り出され、放物線軌道を描き
落下。そして、ポイズンスポアに衝突。中の液体を紫色の魔物にぶちまけた。
「―――――――――あ」
その場の誰もが凍りついた。私も彼もあの「薬」にどのような効果が
あるのかは知らない。でも、今の状況がとてつもなく悪いものであることは
何となく想像できてしまった。
予感は当たった。
液体をかぶったポイズンスポアがぽよんぽよん、と跳ねると、
胞子が当たり一面に撒き散らされる。
胞子は地面に到達すると、発生を開始し、分化を始め、成長していく。
尋常ならざる速度で成体となった生まれたばかりのポイズンスポアはさらに
胞子をまきちらし――――――あぁ、神様。
要するに。
ポイズンスポアが凄まじい勢いで繁殖し始めたのだ。
「逃げろ!!」
誰がそう叫んだかはわからない。彼だったかも知れないし、黒服のひとり
だったのかも知れないし、赤毛の男だったかも知れないし、
私だったのかも知れない。
でも、そんなことはもうどうでもいい。
肝心なのは。
必死で元来た道を戻り始めた私達の背後に、ダンジョンの横幅一杯に
広がり、天井に今にも届きそうなぐらい膨れ上がったポイズンスポアの
群れが迫って来ているという事だ。
- 33前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:55 ID:g0wwc7Nk
- 13、
目の前で、ポイズンスポアが、次々と発生していく。
僕は自分の失敗を悟り、その末路に恐怖した。
身体は金縛りにあったかのように動かず、視界も
生えてくるポイズンスポアに固定される。
辺り一面に広がっていく毒々しい紫の色は、僕の脳裏に
十年前の死の光景を喚起させた。
「逃げろ!!」
黒服のうちの誰かが叫んだ。おかげで僕の意識は地上に戻る。
黒服たちは我先にと小部屋から逃げ出し、赤毛の男と彼女もそれに続く。
僕も後を追おうとしたが、目の端でスポアに襲われ倒れた黒服を捉え、
立ち止まった。
一瞬、迷う。僕の命と黒服の命。天秤にかける。
そこで僕は気づいた。なんでそんな真似ができるんだ。
僕の命と男の命、どちらが尊いなんて答えは既に在るじゃないか。
黒服の禿オヤジの右腕を自分の肩にかけ、男の半身を背負う。
体力のない僕が敏捷さを殺すような真似は自殺行為だ。
だが、それもいいと思う。
十年前のあの日から、自身に重みを感じられない僕は、ただ単に
死に場所を探していただけだったのかも知れない。
せめて死ぬときぐらいは、大切なもののために死にたい、と。
せめて死ぬときぐらいは、意味のあった存在でありたい、と。
- 34前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:56 ID:g0wwc7Nk
- ]W、
横に彼がいないことに私が気づいたのは、走り始めてすぐだった。
お尻がむずがゆくなるような焦燥感を覚え、私は背後を振り返る。
そこには、数匹のファミリアとポイズンスポアにたかられながらも、
黒服を担いで急いで歩く、彼の姿があった。
魔物が、彼の服を裂き、肉を削り、命を蝕む。
それでも彼はしっかりと男を背負ったまま、歩き続ける。
顔から血の気が失せ、全身至る所に傷ができ、出血は止まらない。
それでも、彼の黒い瞳は煌々と灯っているのだ。
苛々する。本当に苛々する。
「何してるんです!?早く彼を助けないと!ヒールをかけて!」
肩をきつく掴まれ、私は自分のすべきことを思い出した。
赤毛の商人が私から離れて奇声を上げながら、彼をついばむ魔物の群れに
突っ込んでいく。
私は大慌てで、よく狙いを定め彼にヒールをかけた。
商人が彼の頭上を飛び交うファミリアに襲い掛かったのを見て、
彼も背に負った男を下ろし、ポイズンスポアに切りかかる。
大量発生したポイズンスポアの群れはすぐそこにまで来ている。
急がないと。彼に追い風と神の祝福を贈る。
ファミリアに苦戦していた商人にブレスをかけ、
私は首尾よく魔物の一団を撃退した彼の元に向かった。
- 35前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:57 ID:g0wwc7Nk
- 15/]X、
「速度増加!! ブレッシング!! ヒール!!」
彼女の声が洞窟内に響き渡る。やれやれ。また彼女に救われたようだ。
僕は背の黒服を丁寧におろすと、腰のカタナを引き抜いた。
赤毛の男と共同して、二匹のファミリアと一匹のポイズンスポアを
殲滅にかかる。彼女の支援で活力の戻った身体はたやすくそれらを
切り伏せた。
毒キノコの胞子を拾い上げ、彼女と合流する。
「早く逃げましょ。轢き殺されるわ」
彼女の言うとおり、大量のポイズンスポアは目と鼻の先にいた。
「お二人とも、蝶とか蝿は?」
「私、蝿しかもってきてないんです。/えーん」
「オレは蝶一個だけ」
「そんな、じゃあ私の分は?」
「無いよ」
短く答えると、カタナを鞘にしまって、再び黒服の禿オヤジを担ぐ。
「とりあえず逃げよう。蝶も蝿も本当にヤバくなった時だけ使うんだ」
そういって僕は彼女を腕を掴み、走り出した。
「本当にヤバい時、って今なんじゃないのかしら」
体勢を立て直した彼女が耳元で囁く。赤毛の男も呼応した。
「そうですよ!今は、ほらあそこのPTに押し付けて、蝿飛びしましょ」
そう僕たちが逃げる先には一次職のPTがいたのだ。
「おい、あれ見ろよ!」
「あんなん処理しきれねーだろ!!」」
「さっき黒い人たちが逃げてったのはあれのせいね!?」
二度目の失敗に、僕は自分を絞め殺したくなった。
あれだけの魔物の集団を引き連れて逃げ回っていれば
こうなることは予測できたはず。なのに僕は、また命欲しさに
誤りを犯した。一体何を考えていたんだ。PTを組んで浮かれてしまって
自分の存在意義を忘れていたなんて。
なんて情けない。本当に僕は無価値な人間だ。無意味な人間は
他の人間の代わりに死んでこそ最初で最後の意味を持てるのに、
僕は一体何をやっていたんだ…!
「先に逃げてくれ。オレはここで少しでも時間を稼ぐ」
黒服の禿オヤジを下ろし、手に蝶の羽を握らせる。
淡い光にオヤジの身体は包まれ、男は空間転送された。
これで他に道はない。あるのは、三途の川の向こう岸への直通路。
初心者修練所に入所したときに師から頂いた愛用のカタナを抜く。
そして洞窟を流れる激流のようなポイズンスポアの群れにきびすを返す。
「な、何言ってるの?」
背後から聞こえる彼女の声は、気のせいだろうか、震えていた。
「逃げろ」
僕は魔物の群れに気合声をあげて、飛び込んだ。
- 36前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:58 ID:g0wwc7Nk
- 「ど、どうするんです!?」
「彼が頑張ってるんです!私も出来る限りのお手伝いを!」
こんな時までぶりっ子してしまう自分が呪わしい。
雄たけびをあげ、突っ込んだ彼の姿は瞬く間に魔物の群れに飲み込まれた。
裂迫の気合ともに彼が魔物の急所を狙って強打を繰り返す。
噛み付かれ、切り裂かれ、殴られ、彼の身体は刻一刻とモノに
近づいていく。乱戦の中、私はヒールをうかつにかけることもできず、
かといってポイズンスポアを殴ることもできず、その場で状況を
見ていることしかできない。
ポーションも尽きたのか、彼の身体はレッドゾーンに近づいていく。
おそらく気力も尽きたのだろう。疲労した彼の動きは先ほどよりも
鈍くなっていき、加速度的に彼の命は削られていく。
私は蝿の羽を手に握った。決壊したら、すぐにでも逃げられるように。
それにしても。
何故彼は他人を庇ってまで戦うのか、私には分からない。
そんなにまで自分の身体をいじめて何が楽しいのか。
そんなに自分を傷つけて、その先に何が見えるというのか。
地位、お金、周りからの賞賛と羨望?
違う、たぶん。きっと彼はそんな理由で戦っているんじゃない。
知らず、聞かず、の赤の他人のために命を賭けている。
なら、何故? そうまでして他人に肩入れするのは何故?
単なる偽善者?それとも本当に…?
あぁ、私には彼がわからない。理解できない。
そうか、だから私はこんなにも苛々するんだ。
彼が、私の知っているどの種類の人間とも違うから。
人は皆自分が一番大切で、自分のためなら何でもして、他人をだますことだって
厭わない。人間は信用できない。だまされるのが嫌ならだますしかない。
彼はそうでないのかも知れない。彼は、もしかしたら、本当に
「優しい」人なのかもしれない。
そういう思いが私の中で大きくなっていくにつれて、
それを認めたくないがために私の苛々も大きくなる。
私の中で絶対的な真理だったこのパティ先輩の言葉は、たったひとりの
黒髪の剣士のために揺るがされていたんだ。
彼と一緒に狩りにこようと思ったのも、彼がどういう人間なのか
確かめるため。彼だって結局は自分のことしか考えていない、と自分に
言い聞かせるために。でも彼はことごとく私の希望を破り…
そうか、だから私はこんなにも焦っていたんだ。
だからあの時、プロンテラで彼に向かって叫んでしまったんだ。
今にも、彼が、この世の中に居るはずのない本当に優しい人だ、と
認めてしまいそうな自分が恐くて、悔しくて。
そして――――――――――
私を不安にさせるだけ不安にさせておいて、彼はゆっくりと、
仰向けに倒れ、地に伏した。
まるでさっきまで喋ったり走ってたりしたのが嘘だったのかのように、
その「人形」はもうピクリとも動かなかった。
- 37前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:58 ID:g0wwc7Nk
- 私は、蝿の羽を握りつぶすことも忘れ、
こちらに向かって雪崩の様に押し寄せてくる魔物に反応もせず、
ただ、ついさっきまで彼であったモノを見つめていた。
頭の中は真っ白。視界に入ったものもモノクロ。
私にとっての世界の全ては、仰向けに転がる剣士のヒトガタ。
私の身体がポイズンスポアの海におぼれた。それでも私は紫色の笠の
向こうに見える彼に、もう「彼」ではないのに、囚われたまま。
私もすぐ彼のところに行くことになる。そしたら、聞いてやるんだ。
何でそんなに損な役回りばかりするの、って。
意識が遠くなる。赤くて、白くて、何もない世界が広がり始めた。
パティ先輩、自分の事を損得勘定に入れない人なんていない、って
言ってましたよね。でも、もしかしたら彼はそういう人かも知れないんです。
だから今からそれを確かめに逝きますね。
さよなら―――あぁ、私には別れを言えるような友も家族もいないんだ――
「ブランディッシュスピア!!」
「ヒール!!」
天国に逝きかけた私の魂を地上に呼び戻した声は、
私にとってひどく聞き覚えのある声だった。
朦朧としていた意識が鮮明さを取り戻す。私とポイズンスポアを遮る壁の
ように立ちはだかるのは、二人の二次職の冒険者。
私にヒールをかけ、傍らのペコペコに乗った騎士に支援法術をかける
栗毛の女司祭。
パンディリア=ガンスリィ。孤児院時代から私の面倒を見てくれて、
色々な事を教えてくれた人。
でも、どうして…?
「パティ先輩…?」
混乱している私に、先輩は綺麗な笑顔とピースサインで答える。
そして、ペコ騎士がポイズンスポアの海に飛び込んで開いた「道」を
駆け抜け、彼の元に走りよった。
「リザレクション!!」
青色のジェムストーンが弾け、閃光が走る。プリーストの神聖性を
体現したかの様なその「神の奇跡」は、確かに彼を死の淵から救ったのだった。
- 38前スレ79sage :2004/04/12(月) 23:59 ID:g0wwc7Nk
- 川の向こうにいるのは、お父さんか、お母さんか。それともお爺ちゃん、
それともお婆ちゃんか?或いはお隣の家の人?お向かいの?
大勢の人がそこにはいた。見覚えがあるような人もいれば全く覚えていない
人もいる。そして、その人たちに共通しているのは、皆僕を、
暖かく歓迎していると言う事。
心の内に、無力な癖に一人だけ生き残ってしまった僕への恨みと、
そして結局はこの場に来てしまった僕への蔑みと嘲りを秘めて。
そう、僕は死ぬ。その事実に、安心とそして少しの名残惜しさを覚える。
名残惜しい?何故?自分の感情に疑念を感じた僕の脳裏に、一瞬彼女が映る。大丈夫。敏捷型の剣士なんかより、彼女にはもっとぴったりな相方ができるさ。
なおも現世にすがろうとする情けない自分にそう言い聞かせ、
僕は、川を渡る前にもう一度向こう岸にいる人々の顔を見ることにした。
バレット、バレットじゃないか…やっぱり君も…
僕はそこに、剣士ギルドに所属する冒険者の様な格好をした古い親友の姿を
認め、そして気がついた。他の人は皆穏やかに笑っているのに、
バレットだけは僕を睨みつけている。いや、睨んでいるんじゃない。
試されている? そう思った僕は思わずバレットを見つめ返した。
バレットの黒い瞳に映る、青白い自分の顔。しかし、その像は絵の具を
かき混ぜる様に潰れ、やがてその絵の具は全く別の像を構成した。
ネンカラスで声をかけてくれた栗毛のプリーストさんの天使のような笑顔。
そして。
僕は神々しくも暖かい光に包まれ―――――
「リザレクション!!」
三途の川に片足を突っ込んだ僕の魂は、再び世界と繋がったのだった。
- 39前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:00 ID:e0PWL0GY
- 洞窟の壁に上半身を預ける様に意識を失っていた彼が、ゆっくりと
まぶたを開けた。冬眠から覚めた熊さんの様な顔で、目の前の私を
焦点の定まらぬ眼で眺めている。
やがて、私を認識したのか、彼は口元に空っぽの笑みを浮かべた。
「やぁ。また、助けられたのかな?」
「…私じゃないわ。先輩が、パティ先輩が助けてくれたの。
今、先輩と、先輩のPTの人が食い止めてくれてるし、周りの人も
協力して、掃討にかかってる。だから、私達はもう引き上げましょう!」
「まだ戦ってる?じゃあ駄目だ。僕が行かないと」
「あれは不可抗力なの、私達の責任じゃないわ!」
「どっちでも一緒さ。今戦っている人はもしかしたら死んでしまうかも
しれないじゃないか。それじゃ駄目なんだ。
僕は誰かの代わりに死ななくちゃいけないんだ!」
彼の剣幕と言動に虚を突かれ呆然とする私をおいて、彼はカタナを杖がわりにおぼつかない足取りで戦場に向かい始めた。しかし、地面に転がっている石に
足をとられ、盛大に転んでしまう。
理性は、彼に「大丈夫?」と優しく声をかけようとした。
しかし、身体は私の管理下から離れていた。
彼と自分に対する、やるせない腹立たしさが急に私を襲い、
眼の奥が熱くなる。気づいた時には、彼の肩を鷲掴みにして激しく
前後に揺さぶりながら、殆ど喚くようにして彼にくってかかっていた。
「どうして!?ねぇ!どうして!?どうして、そんなに自分を大事に
しないの!?どうして、そんなに死にたがるの!?
わかんない!わかんないの!私、貴方がわからない!」」
「……死ねばよかったんだ…」
されるがまま揺さぶられていた彼は、ぽつり、と俯いたままつぶやいた。
「オレが、僕が、皆の代わりに死ねばよかったんだ。お父さんの代わりに
お母さんの代わりに、バレットの代わりに……」
「な、何言ってるの…?」
ようやく感情の高ぶりを抑えた私は、何とか彼の言葉の意味を
理解しようと必死で努力した。
「ミョルニル山脈の廃坑。十年前まで、あそこの近くには、小さな集落が
あったんだ。僕はそこの生まれで…あの頃は楽しかった。でも、あの日」
彼は呻いた。呻き、搾り出す様に後を続けた。
「たくさん化け物がやってきたんだ!全部壊した!みんな殺した!」
言葉の後半は殆ど悲鳴だった。
「僕だけが生き残った。僕は、何も出来なかった。
僕は無力だ。無価値だ。無意味だ。殺された皆も恨んでる。
どうして何もできない僕なんかが生き残ったんだ、って。
全くそのとおりさ!だからせめて!僕は、自分よりも生きる価値のある他の
人の代わりに死ななくちゃいけないんだ!」
「…だからプロンテラで私を庇ったって言うの?」
「…うん」
小さく頷いた彼の表情は、戦闘でぐちゃぐちゃになった豊かな頭髪に
隠れて、わからない。
目の前で両親や親友、村の人々を殺された幼き少年。
さぞや悔しかったろうに。さぞや歯痒かったろうに。
自身の無力さを痛感した彼は、何時しか自らを無意味なモノと感じ、
自暴自棄な振る舞いさえ厭わなくなった。
でもそれは。周りに見てもらいたいから。周りに構って貰いたいから。
周りに自分を認めてもらいたいから。それ故の行為。
それは彼の独り善がりでしかない。私は、彼に自分の影を重ねた。
ほら、やっぱり。結局、彼も自分の事しか考えていなかったのよ。
理性が先輩の声でそう囁く。
でも、その囁きを私は肯定できなかった。否定してしまった。
あぁ。本当は、とっくのとうに、私は理解してたんだ。
彼が優しい人だという事を。
他人の為に死ぬなんて確かに自己満足の行為かも知れない。それでも、
それを実際に実行してしまう様な人間なんて滅多に居ない。
だから、それができる彼はやっぱり優しい人なんだ。
そう理解した時私は感情の爆発を抑えることなんてもうできなかった。
「ふ、ふざけないで!そんな理由で助けてもらっても私、嬉しくなんかない!
貴方に、私が無意味じゃないなんて何でわかるの!?
甘ったれないでよ!自分の重さも感じられないような人が、
他人の重みなんてわかるわけないじゃない!
自分に意味を見出せないのは貴方だけじゃないわ!そんなに死にたいなら、
せめて他人の重さがわかるようになってからになさい!」
もうずっと長い間、孤児院の時から溜め込んできた事まで吐き出す様な勢い。
私がこんなに感情的になるぐらい、他人に怒りを、関心を抱いたのは
これが生まれて初めて。
本当に恥ずかしい。半分くらいあてつけじゃない。こんなこと、
これで最初の最後にしよう……。
肩で息をつく私を呆然と見上げる彼の黒い瞳は揺れていた。
- 40前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:00 ID:e0PWL0GY
- 今まで僕の心とか魂といったモノは、宙に浮いていた。
自分が自分で無い様な感覚。感覚が感覚に感じられないという感覚。
自分に何が起きたって、他人の事のようにしか思えない。
嬉しくも、腹立たしくも、哀しくも、楽しくもない日々。
ただ時間だけがすぎていく倦怠感。
自分に意味を、重みを見出せないという事は、自分を感じられないという事。
故に僕は自分を感じるため、魔物と殺し合い、自らを傷つけてきた。
そんな僕の魂は、たった一人の青い髪のアコライトによって、
地上に引きずり下ろされたのだった。
自信を持て、と彼女は言ったのだ。自分の力を信じろ、と彼女は言ったのだ。
彼女の言葉の意味を理解し、僕は震えた。心臓を鷲掴みにされたような
衝撃が全身を打ちのめす。
わかってしまった…。僕は今まで、他人を、特に大切な仲間を守って
死ぬ事こそが僕の唯一の意味だと信じてきた。
でも、本当は違う。僕はただ、周りの人間に自分が価値のあるモノだと
認めて欲しかっただけなのだ。自信を持て、と言って欲しかっただけなのだ。
なんて愚かなんだろう。なんて情けないんだろう。結局、僕は
他人のためと言いながら、自分の事しか考えていなかったのだ。
それなのに。彼女は僕が欲していた言葉を言ってくれた。彼女にだって
わかったはずだ。僕の浅ましさが、僕の愚かさが。それでも、彼女は
そんな事には一言も触れず、ただ僕が待っていた言葉だけを言ってくれた。
なんて優しいんだろう。正直、旅の途中で僕は彼女のことを冷淡だと
感じていた。彼女より自分の方がまだ他人を思いやれるとうぬぼれてさえいた。
それがどうだ。僕は自己中心的な愚か者で、彼女こそが心優しい
正真正銘の聖職者じゃないか。
そうだ。僕は一体何を血迷っていたんだ。こんな娘こそ、僕は
守らなくちゃいけない。不幸な目に遭わせたくない。
そのために僕は師匠に剣を習い、そして剣士になったんじゃないか。
そんな大事な事さえ僕は忘れていた。いつの間にか、手段と目的が
入れ替わっていたんだ。
それが分かった今、僕がやることは一つしかない。
- 41前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:01 ID:e0PWL0GY
- 戦場を見る。さっきのペコ騎士が中心となって一次職の人達が
ポイズンスポアの「海」と格闘しているが、運悪くウィザードやハンター
がいない為、殲滅が追いついていない。
案の定、数匹のポイズンスポアがこちらへ流れてきた。
地面に落ちていた刀を拾い、彼女の盾となるべく立ちはだかる。
「ちょ、貴方!私の話…」
彼女の言葉を遮るように、そして自分を確認するために、僕は叫んだ。
「思い出したんだ!何でオレは戦うのか!」
一直線になってこちらへ突っ込んでくる紫色の化け物。
「あの時、何もできなかったオレと!」
小さく、だが鋭く跳ぶ。重心を乗せ、脚のバネを開放し、完璧な「踏み込み」。
一番前のポイズンスポアを蹴り潰す。
「同じ気持ちを誰にも味合わせたくないから!」
飛び上がってきた二匹目を踏み込みと同時に袈裟懸けにする。
「だから、これは、オレのやらなくちゃいけないJob(仕事)なんだ!」
技の終わりを狙って、首筋を食いちぎらんと大口を開いた三匹目の咥内に、
短刀を叩き込む。
ひとまず片付いた。向き直り、彼女に正対する。
「ごめん、やっぱりオレ行かなくちゃ」
彼女は何も言わない。泣き出しそう、とも怒り出しそうとも見える複雑な
表情で、僕をまっすぐに見つめている。
「あそこで戦ってるのは、君の先輩なんだろう。あのままじゃ、
あのプリさんだって、ただじゃ済まない。オレ、君の泣き顔は見たくないんだ。
だから、もしオレに何かあったら。何かの機会で廃坑に立ち寄った時、
花でも添えてくれると嬉しい」
再び戦場を向く。もう振り返らない。
「それじゃ」
後ろに向かって軽く手を上げ、僕は再びポイズンスポアの群れに飛び込んだ。
- 42前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:02 ID:e0PWL0GY
- 彼は行ってしまった。今度こそもう戻らない、そんな気がしたけど、
私は彼に何も言えなかった。
何故なら、今にも彼と一緒に魔物を殴り出そうとする自分を押さえるのに、
私は精一杯だったからだ。
そんな事、身体能力の向上よりも知力を優先して来た私がするのは
余りにナンセンス。そういう野蛮な事は、上手いことやって、馬鹿な男に
やらせておけばいい。
わかってるはずなのに。そう思っているはずなのに。私の身体は
理性の言う事を全く聞かず、逆に理性の方が感化されてしまっているみたい。
そうだ。考えてみたら私達まだ清算してないじゃない。大部分の
収集品は彼に預けてあるんだから、取りに行かないと。そう、決して好きで、
ブルジョワでも廃でもない彼の所へ行くんじゃないんだから。
そう自分に言い聞かせて、私は懐のチェインとバックラーを構えた。
全く。彼と出会ってから、私はペースを乱されっぱなしだ。
こんなの不公平。何かお返ししてやらないと、私の気が済まない。
そういえば、さっき彼は、私の泣き顔がどうとか言ってたけど…。
ここは一つ、貧乏剣士なんかに守られる程私はヤワじゃない、って事を
彼に教えてあげる事にしよう。
ブレスとIAを自分にかけ、私はポイズンスポアの群れに飛び込んだ。
- 43前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:03 ID:e0PWL0GY
- 黒髪の剣士を探す。絡んでくるお化けキノコを蹴散らし、彼を探す。
ポイズンスポアの量に対し、交戦する人間の量は圧倒的に少ない。
シーフ、じゃない。アコライトじゃない。商人じゃない。騎士でもない。
剣士…彼じゃない。こっちの剣士も違う。…パティ先輩。先輩が見えた。
そして、一生懸命に傷ついた冒険者を癒していく先輩のすぐ傍には、
先輩を守るように立ち振る舞う黒髪の剣士がいた。彼と見まごう程に雰囲気の
似た黒髪の剣士。そう、その人は似ているというだけで、彼ではない。
その人に気をとられたのが悪かった。気づいたときには、既に私は
数匹のスポアに囲まれていたのだ。慌てて頭と顔をバックラーで隠しながら、
チェインでポイズンスポアを殴りつける。
クリーム色の法衣を突き破って、スポアの牙が私の右の二の腕と、
左腿を傷つけた。頭が一瞬真っ白になって…後から気の遠くなるような
激痛がやってくる。思考がパンクした。もう声も出せず、ただチェインを
滅茶苦茶に振り回す。今度はおかしな風に打ちつけてしまったのか、
手首を痛めてしまった。目から汗が溢れる。
私はもう満身創痍だというのに、スポアは続々とやってくる。
私は絶望した。殴った拳も、傷つけられた身体も全てが痛い。
全身が悲鳴をあげる。ノービスの頃、ポリンやウサギを殴ったのとは全然違う。
知らなかった、前衛がこんなにもつらいものだなんて。
前衛の人達や彼が常にこんな苦しい時間にその身をおいている、と
私は思いもしなかった。私が座っている間に、彼がどんな思いをしていたか
私は考えもしなかった。
私はこんなに辛い思いをしている人達から、無償で何かを貰おう
としていたんだ。
正直、そんな自分にもう反吐が出そう。
精神力の全てを費やして自分にフル支援し、なんとか自分にタゲの来た
スポアを殲滅する。
出血は一向に止まらず、痛みも引く気配がない。魔物を殴った感触も
とても気持ち悪い。もう嫌…。目の汗が絶え間なく滴り落ちる。
彼は、彼はどこ?
不意に肩を叩かれる。振り返れば、そこには、血や土で顔を薄化粧した
黒髪の剣士。
「何やってんだ?逃げろ、って言ったろ!?」
「わ、私は…私は貴方に、い、言い忘れたことがあったから…」
しゃくりあげながら、言う。汗を拭くふりをして、目の汗を拭う。
「私、廃坑なんて行かない。お墓参りは自分で行って…」
私の眼を心配そうに覗き込んでいた彼は、やがてふっと、柔らかく笑うと
私の顔に指を伸ばし、汚れをとってくれた。
「オーケー。わかったよ、自分で行く。生きて、ここから出て
ドリスさんの露店に二人で買いものに行く。それでいいかな?」
「ええ、良くってよ」
上品に返して、チェインとバックラーを構えなおす。
話しているうちにまたポイズンスポアの集団に囲まれていた。
自然と、私達は互いに背を庇いあう体勢になる。
「恐くなったら、いつでも蝿逃げしていいんだぜ!」
「冗談、こんなスポアの色違い、下水のゴキの方がまだ恐ろしいわ」
「上等!」
視界の片隅で、ヒールに忙しそうな先輩に話しかける赤毛の商人を捉えつつ、
私達二人は菌糸類の化け物との戦いの渦に飲み込まれていった。
- 44前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:03 ID:e0PWL0GY
- 右腕が使い物にならなくなる。ヒールがあれば何とかなるが、
支援型なのに敵の殲滅に協力する彼女に、口が裂けてもそんな事は言えない。
僕は、カタナを納めて、マインゴーシュを左手で握った。
敵は一向に減らない。恐ろしい増殖速度で湧き出てくるのだ。
最初こそ、ばらばらに戦っていた冒険者達も次第に共同して戦い始めていた。
そう、僕達二人の様に。
「一次職、もっと後ろに!二次職より前に出るな!」
「そこの騎士、アンタこそ前に出すぎなんだ!シーフなめんなよ!」
「す、すまん!」
「アコプリの護衛を最優先しろ!」
「魔法職はまだか!?」
互いに声を掛け合うことで、互いを励ましあい、情報交換も行い、
状況を自分達なりに組み立てる。全体の維持は保身にもつながるのだ。
だが、運悪くハンターも少なく、ウィザードがいない。プリーストも少ない。
彼女の先輩、栗毛のプリーストは汗で髪がほつれるのも気にせず、
ただひたすら集中し、複雑な手順を踏み、儀式を構築し、神の奇蹟を
呼び起こす。あれに比べたら、単調に刃を振るう僕らは何て楽なんだろう。
プリさんの支援に応えるためにも頑張らなくては…!
そう自分を鼓舞し、黙々とキノコを破壊する。
どれ程の時が経っただろうか。
身体がもう限界だった。筋肉が悲鳴を上げ、骨が軋む。
息がとても…クルシイ。
「どうしたの?危なくなったら、いつでも物乞いヒールチャット、
立ててもいいのよ」
そう軽口を叩く彼女の表情は見えない。
でも、それが苦悶のものであることは想像に難くなかった。
「君こそ…大丈夫なのか?」
「私は…平気…だから…」
「何言ってんだ。早く蝿を使うんだ!」
「冗談…今更…」
「ばっ――――」
まともに二つの脚で立っている事もままならず、僕たちは互いの背で
お互いの体重を支えている様な有様だった。丁度、「人」の字の様に。
魔物をいなしながら、彼女をたしなめようとしたその時、僕は
信じられないモノが宙を舞っているのを見た。見れば、
彼女も洞窟の天を見上げている。
雪が、降っていたのだ。
ストームガスト!!
聞く者に不敵な印象を抱かせるその声が、大魔法を発動させる。
次の瞬間、ポイズンスポアの海は、氷河と化していた。
- 45前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:04 ID:e0PWL0GY
- 16/]Y、
ゲフェンタワーは今、地下三階から地上、それに連なる広場まで
負傷者や、それを癒す聖職者、回復アイテムを原価で売る露店商人などで
埋め尽くされていた。
冒険者達は互いを気遣いあい、また己の武勇伝を戦闘に参加できなかった
人達に聞かせたり、と互いに「生」の喜びを分かち合っていた。
幸いにも死者は出なかった。正直、今僕はほっとしている。
だが、素直に喜べないのもまた事実だ。彼女とはぐれてしまったのだ。
凄まじい人ごみと、喧騒。陽気な人達はまだ日は高いところにあるという
のにもう酒宴を始めている。
腰まで届く、長く青い髪のアコライトを探す。見つからない。
早く会いたい、と急く頭とは別に、脚はあまり機敏には動かない。
それもそうか。再会は、同時に臨公の終わりを、彼女と一緒に行動できる事の
終わりを意味しているのだから。
思い切って、相方になってくれ、と頼んでみようか。ダメ元で言ってみて、
駄目ならまた別の人を探すか、ソロに戻る、ただそれだけの話。
卑屈に考えることなんてない。そう、自分に自信を持つんだ。それは、
過信でもなく、自惚れでもなく、ただ自分に意味を見出すだけなのだから。
やがて、僕は彼女を見つけた。いや、見つけてしまったと言う方が
自分に正直か。彼女も何かを、おそらく僕を、探していたようだったが、
僕の姿を認め、その場に立ち尽くしていた。
早まる鼓動を抑えようと努力しつつ、僕はゆっくりと彼女に歩み寄った。
彼女の前まで来て、緊張はほぐれるどころか、その頂点に達していた。
別に愛の告白をするわけじゃない。これからも狩りに一緒に行かないか、
と誘うだけなんだ。落ち着け、オレ。
- 46前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:05 ID:e0PWL0GY
- 彼と眼が合ってしまった。彼と会ってしまえば、この臨公は終わり。
彼とはもうさよならだ。
色々と学ぶ所の多い臨公だった。何度も命を落としそうになった。
もうこんな危なっかしい臨公はこりごり。でも、一生に一度くらいは
こういう経験があってもいいかな、と今は思う。
この場にいる人達は皆、互いに互いを思っている。原価でアイテムを売る
露店商人。自腹を切ってサンクチュアリを展開するプリースト。
肩を支えあいながらダンジョンから出てくる剣士とシーフ。
一生懸命、辻ヒールをするアコライト。負傷者の苦痛を和らげるため、
美声やとっておきの芸を披露するアーチャー。
今私が見ているこの光景は、彼が私を外に連れ出したりしなければ、
人の良心を信じない私とは一生、無縁のものだったに違いない。
その彼との別れはすぐそこまでやってきている。
正直、眼が合わなければ気づかなかった振りをして、芋を洗うような
人ごみに逃げ込んでいただろう。
でも、今はもうそれもできない。
彼の澄んだ黒い瞳には、至近距離の私の顔が映っているから。
「やあ」
先に口を開いたのは彼の方。
「ごめんね、はぐれちゃって。探した?」
やだ、私、顔を合わせられない…。彼の声を聞いた私の頭は真っ白になった。
「さ、さっきはごめんなさい。大きな声、出して…」
あぁ、なにとんちんかんな事言ってるの、私は。
でも、彼は私の言葉の意味を察してくれた。
「いや、謝らなきゃいけないのはオレの方だ。迷惑かけてゴメン。
そして、ありがとう。おかげで助かったよ」
「え…あ、はい…」
ど、どういう意味?何が、ありがとう、なの?
そんなどうでもいい事を考えていたから、私は、次の彼の言葉に、
上手く反応することができなかった。
「それで、さ。良かったら、相方になってもらえないかな」
- 47前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:06 ID:e0PWL0GY
- 「え?」
彼女が顔を曇らせ、戸惑いの声をあげた。
やっぱ駄目か。反射的に、しかし少し慌てて、僕は取り繕った。
「い、いやさ、良かったら、転職まで一緒に修行しないか、なんてね、
ははは」
「は、はい」
彼女はまたしても首を縦に振っていた。
「え?」
今、彼、なんて言ったの?
「い、いやさ、良かったら、転職まで一緒に修行しないか、なんてね、
ははは」
胸の奥に針が落ちる。でもそれ以上に私の胸は温かい何かで一杯になった。
「は、はい」
私の弾むような返事に、彼は目を丸くしていた。
彼女の吸い込まれてしまいそうな深く蒼い瞳に映る、自分と僕は見つめあい、
彼の、窓から入る日差しを赤く還す漆黒の瞳に映る、自分と私は見つめあい、
何となく気恥ずかしくなった僕は、彼女に笑って見せた。
何となく気恥ずかしくなった私は、彼に笑って見せた。
「とりあえず、外に出て精算しようか」
「ええ」
塔から一歩外に出れば、そこは陽の光が降り注ぐ世界。
地底から出てきたばかりの僕らには少しまぶしかったけれど、
同時にそれは僕らの未来のような気がして、心が弾んだ。
明日はどこへ行こうか。世界は人間には広すぎる。
でも、仲間がいれば、どこにだって行ける。
そんな気が、した。
- 48前スレ79sage :2004/04/13(火) 00:12 ID:e0PWL0GY
- ベタベタな展開でイタイ内容を拙い文章で
だらだらと書き連ねて来てしまいましたが、
ようやくこれで終わりです。
予想以上にサイズが大きくなってしまったので
やはりどこかのうpろだにでもあげたほうが
よかったでしょうか?っつっても、後の祭りか。。
ちょっくら吊ってきます。
皆さんがこの小説で楽しんでいただけたら、何よりです。
ありがとうございました。
- 49名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 01:37 ID:cQCTSmmM
- ベタベタな、ひいてはよくある展開の話は、面白いからこそ「よくある」のです。
要するに、面白かったという事でして。
楽しませて頂きました。
続きとは言いませんので、また何か話が浮かんだら投下して頂ければ幸い。
- 50名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 04:17 ID:7eZWWIg2
- >>48
おつかれさま〜
王道だろうとなんだろうと、ハッピーエンドは楽しいのです。
楽しいからこそまた読みたくなるのです。
- 51名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 12:06 ID:KAztz7Ng
- >>48
マイグレーションの時の首都防衛戦を思い出して涙が溢れました。
ニブルヘイム実装時にでもまた大規模戦闘やりたいな〜
人&魔族の連合軍Vsロードオブデス様率いる死の軍隊あたりで
バフォ様やDOP様をGMが操作すればかなり燃えそう
- 52名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 16:35 ID:rG9wsIqU
- >>48
GJ&お疲れ様Σd(´∀`)!!
貴方の小説はアツき燃えと微笑ましい萌えを備えた素晴らしい物だと思います。
ベタベタな展開? いいや違うね。この小説は『王道』であり『お約束』だ!
つぅかいやもうホント、大変面白かったです。
蝶・サイコー!!!
- 53名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 17:16 ID:K46S8XmQ
- をれ9取った奴なんだけど
一応、書いてみたんよ・・・
慣れてないし外出先でPDAで書いてるもんだから変換しょっぽいし
何より萌えとか燃えとかなさそげなんだけどさ・・・投下しても良い?
- 54名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 17:41 ID:b4ExE/ew
- |-゚)
|ー゚) マズハ投下シル 話ハソレカラダ
|彡サッ
名も無き文神さんを待ち望む人(1/20)
- 559sage :2004/04/13(火) 17:55 ID:vAdA8s5g
- うおおリアルタイムレスサンクス。
職場で自前環境で仕事さぼってこつこつ書いたんよ
・・・ばれたらマジやっべーんだけどそんな事おかまいなしさね。
じゃ、いってみよ〜
- 569sage :2004/04/13(火) 18:03 ID:vAdA8s5g
- 場所、プロンテラに程近い森の中。ロッカーだのポリンだのがぺけぺけ跳ねてる。
あたしは転職したての剣士。ロッカーを叩きに来てる。
目の前にはこの場所なんか過去の彼方に置いて来て、今は通り過ぎるだけの場所になっている筈の
アサシンとかローグとかブラックスミスとか。
戦闘で傷ついて、ついでに暑かったものだから森の奥の方、木陰で涼んでいたあたしを囲む様に
姿を現したって訳。
ちょーっと、目付きが尋常でないかな?なんてーか、こう血走ってるっていうか・・・
「へっへっへっ。こんな森の奥で休憩してたら危ないぜ?お嬢ちゃん。魔物とかさぁ。」
・・・いやもうあからさまにあなたが危ないって感じだよローグさん。
アサシンさんも無言のまま皮のベルトを手でもてあそんでるのがとってもこわいんですけど・・・
あー・・・もしもしスミスさん?手を前に出してわきわきさせるの止めようよー不気味だよー。
って冗談めかしてみても状況は好転してくれない。じりじりと距離が詰まっていく。
情けないけど、あたしは体がすくんじゃって一歩も動けなかった。
でもでも、こういう時は大抵カッコイイ男が助けに入るのがお約束ってものだし、
第一ここは18禁スレじゃないんだからこれ以上は無い筈だし!
うわ、思考もぐちゃぐちゃだ。自分でも意味不明、理解不能、支離滅裂だよ。
そもそも「じゅうはちきんすれ」ってなんだろう?聞いた事もないのにね。
それはともかく、後一歩で彼等の手があたしに届く、その時。
彼等のすぐ後ろを流れる様な動作で一人の青年が通り過ぎた。
あまりに自然過ぎて一瞬認識出来なかった位。
ほらやっぱり、タイミングばっちりじゃない!?これで『そこまでにしておけ』とか割って入って
助けてくれてそれで当然とっても強くてこいつら撃退してそれからラブロマンスが始まったりして!?
あぁまだ飛んじゃった頭が帰ってこない。一瞬の事とは言えナニを考えてるんだあたしは。
青年はそのまま通り過ぎて立ち去って行く・・・って、え?
ちょっと今一顧だにしなかったよ彼・・・そりゃーラブロマンスは自分でも行き過ぎだとは思うけど
それでもこんな状況なら普通少しは何か反応あるでしょ?
「ちょ、ちょっと、そこの人!無視してないで助けてよ!?」
思わず声を張り上げちゃったよ。
私に言われてブラックスミスが思わずといった様子で振り返った。
アサシンは変わらず無言でぴくりとも動かない。ローグはニヤニヤ笑いを浮かべて、
「おいおいんな幼稚な手にひっかかってんじゃねえよ。」
・・・え?気付いてない、の・・・?
目の前の三人はあたしから見ればとんでもなく強い筈。それなのに気付かなかったっていうの?
気配を気付かせなかった彼が凄いのか。
それとも魅力的な獲物に心を奪われていたのか。
(ほらそこ首を傾げない!あたしの事だよ!・・・嘘ですごめんなさいそこまで自惚れてないです(TT))
「な、何だよお前・・・?」
ブラックスミスが呟いた。恐らく反射的に振り向いてしまっただけで
本当に人が居るとは思っていなかったのだろう。信じられないって顔をしてた。
それで、今度こそアサシンとローグが怪訝そうに振り返り、驚愕の表情を浮かべる。
それも一瞬。今までの軽薄な表情が厳しく引き締まって、歴戦の顔が覗く。
あたしに呼び止められる形となった彼は、違和感を感じる程端正な顔立ちに何の感情も浮かべず、
こっちに半身を向けて立ち止まった。
重厚な鎧を身にまとい、腰に剣を履き、背中に大きな盾を背負っている・・・クルセイダー。
兜は被っていない。そうでなければ顔見えないもんね。
でも・・・この人、この格好で、全く音を・・・いや、気配さえ発しなかったっていうの?
「おうおう、見世物じゃねぇんだ。用がねぇならさっさと通り過ぎるべきだぜ?」
「そうそう、痛い目見てぇってんなら話は別だがな?」
ローグとブラックスミスは軽口を叩きながらもさりげない動作で自分の武器に手を伸ばしてる。
アサシンに至っては既に短剣を構えて殺気を撒き散らしている。
あたしにもわかるんだ。こいつ等にも当然わかるんだろう。
クルセイダーの薄い気配が。
それはあまりにも自然に過ぎて却って不自然だと感じる程。
その端正だけれど、どことなく無機質さを感じさせる顔と相まって。
まるで・・・そう、人形と向き合っている?そんな気にさせられる。
とにかく、人間と向き合っている気がしない。
「俺には用件など無い・・・呼び止めたのはお前達だ。」
平坦な・・・何の感情も窺わせない、口調。
「あぁ?誰もてめぇなんざ呼び止めてねぇよ、さっさと消えな!」
「そうそう、邪魔は野暮ってもんだぜ?
それとも正義の味方のクルセイダー様は悪を見過ごせないってか?」
ローグとブラックスミスは相変わらず相手を小馬鹿にした口調で反応を窺っている。
アサシンは動かない。けれど・・・凄い汗・・・お腹が痛いのを我慢してるって事は・・・ないよね、うん。
「確かに呼び止めたわよ!助けてって!」
あたしは声を張り上げた。何だか、このままだとこのクルセイダーは
『そうか。邪魔したな』
とか言って帰っちゃいそうな気がする。
一応、助かるかもしれないチャンスなんだから頑張ってみないとね。
だというのに・・・
「諦めろ。俺は他人と関るつもりはない。」
うわ、平然と抜かしやがったよこの野郎。
あ、あ・・・またすたすたと歩き出しちゃったよ・・・
「こらー!か弱い乙女のピンチを救ってあげようって気にはならないのかー!この馬鹿ー!」
くぅー、今度は振り向きもしなかったよ畜生。
・・・とほほ・・・諦めるつもりはないけど、万事休す?
- 579sage :2004/04/13(火) 18:07 ID:vAdA8s5g
- 「あ、おいやめろ馬鹿っ!」
と、その時ローグが焦った声を張り上げた。
去っていくクルセイダーの背中に躍りかかったアサシンに向けて。
あたしにはアサシンの手の動きなんか全く見えなかった。ただ銀色の光が数回走っただけに見えた。
それが多段斬撃であると理解できたのは鎧が甲高い音を立てていたからでしかなかった。
そう、その斬撃は頑強な鎧に阻まれていた。
「我に挑むか・・・?」
再び振り向き、問いかけるクルセイダー。
その口調は先程までの平坦な物ではなく、どこか悲しげに聞こえた。
え・・・今一瞬だけクルセイダーの目が赤く光った様な・・・?
アサシンはにやりと笑うと素早く武器を取り替えた。あれは・・・ジュル?
そして再び斬りかかる。
先程の速度は無く、今度のはあたしでも辛うじて目で追える速度。
クルセイダーはその外見に似合わない・・・なんてもんじゃない、
アサシンにも劣らぬ反応速度でその斬撃をかわし、盾でいなす。
けれど、全てを回避するのは無理の様だ。半分位は当てられている。
・・・当然、ちょっと離れてるから見えるんであって、
あたしが当事者だったら何が起こったかもわからずに案山子みたいに切り刻まれるよ。
アサシンの斬撃は的確に鎧の隙間を穿って行く。当然肉体にも届いているらしく、
鎧のあちこちから真紅の液体が染み出す。
クルセイダーは斬撃の嵐の中、致命打になりえる顔への攻撃のみの防御へと切り替え、
まるで痛覚などお構いなしとばかりに表情も変えずに腰の剣を抜き、
ゆっくりともいえる動作で剣を持つ右手を左側へと持っていく。
上体が捻れ、右肩の裏側までアサシンに見せて、そして・・・
アサシンは当然、その一撃を避けるつもりだったのだろう。休む事無く切り付けながらも
その動きのタイミングを図っている様に見えた。
ぶおん、というより・・・どおん、と風を薙ぎ払う音。
アサシンはバックステップで跳び離れ、そして倒れた・・・上半身だけが。
下半身は未だに着地した姿勢を保っている。
クルセイダーは一刀でアサシンを両断してのけた。
油断していた訳では無いだろう。けどアサシンのあの動きなら避けられない速度じゃ無かったと思う。
あたしは、昔聞いた話をふと思い出していた。
『剣は、体の動きと腕の動きの合計の速さで振るわれる。
それに対し避けるという行為は体の動きでしかない。体を剣の速度で動かす事は誰にも出来ない。
なら、一流と呼ばれる剣士達には何故相手の剣が避けられるのか?
それは、言葉で説明するのは難しいのだけれどね・・・相手の攻撃の瞬間がわかるんだ。
攻撃は、殺気が膨らみ切って破裂する・・・その瞬間に行われる。
殺気っていうか、要するに攻撃しようとする意思って事なんだけどね。
とにかく、それを読み取れれば一手先の行動が行える。
攻撃を回避するっていうのは、その一手先の行動で動きの速さを補う事で成り立つんだ。』
その話を聞いた時、思った。
つまりは・・・もし、攻撃しようとする意思を悟らせずに攻撃を行える者が居たら・・・
その攻撃を回避する事は誰にも出来ないという事になるんじゃないだろうか?と。
根拠はない。強いて述べるなら人を一人切り捨てながらも揺るがないその静かな気配、それだけ。
でももしこのクルセイダーがそうなのだとしたら今起こっている事が納得できる。
・・・まぁ、回避云々の話が本当だったとしたら、だけどね。でも、あたしは信じてる。
なんでかは、まぁ今は置いといて。
ふらふらと揺れていたアサシンの下半身が倒れた。
「こ、このやろぉっ!」
仲間の死で逆上したのか、今度はブラックスミスがクルセイダーに跳びかかった。
アサシンより力強いけれどもアサシンより遅い。その攻撃のことごとくを避けるクルセイダー。
避けながら、口を開いた。
「強き者、汝は何故に己を鍛え、武器を振るう?」
そしてクルセイダーの背後からその答えが返った。振り下ろされる刃と共に。
「決まってるだろぉ!?てめぇみてぇないけ好かねぇ奴をぶっ殺す為だ!」
何時の間にか移動していたローグの背後から必殺の一撃は、クルセイダーの喉を正確に貫いた。
「へへっ・・・ざまぁみやがれってん・・・だぁっ!?」
ローグの攻撃が決まり、ブラックスミスの気が緩んだのも、油断じゃなかったと思う。
だって普通、喉に短剣刺されたら即死もんでしょ?
なのにこのクルセイダーは死ななかった。
目の前で武器を降ろしかけていたブラックスミスに一足で跳びかかり、今度は縦に両断した。
喉に刺さった短剣を握っていたローグはその動きに引きずられそうになって、
慌てて短剣を手放して跳び離れた。
「ば、化け物・・・」
ローグは今明らかにこのクルセイダーに怯えている。顔に浮かぶのは恐怖の表情。
・・・あたしも多分似たり寄ったりな顔してるんだろーけどね・・・
そして、ローグに向き直り、一歩踏み出すクルセイダー。
「う、うわあぁぁぁぁっ!」
既に戦意を喪失しているローグは、その場から忽然と姿を消した。
ハエの羽か蝶の羽で離脱したみたい。恐慌をきたしかけていた割には冷静な判断だと思う。
クルセイダーは剣を腰に戻すと短剣を掴み、無造作に引き抜いた。
噴き出す鮮血が鎧を赤黒く染めていく。
喉が機能している筈は無いんだけど、クルセイダーの口から言葉がこぼれる。
「ヒール」
鎧だけでなく周囲も赤黒く染めていた血飛沫が収まっていく。
傷口が塞がると、クルセイダーはそのまま歩き始めて・・・倒れた。
死んではいない・・・体は動いてるし。でも、立ち上がれないでいるみたい。
・・・えーと・・・
・・・あたしにどうしろと?(TT)
選択肢
@:とどめをさす
・・・なんでよ?あたしがわざわざそんな事する理由はないよ。第一出来るとも思えないし・・・
A:見なかった事にして立ち去る。
・・・これが一番妥当だと思うんだけど・・・はっきり言って怖いし。でも・・・
B:一応結果として助けて貰ったんだし、様子ぐらいは見ていこうかな。
・・・結局は、これだよねぇ・・・このクルセイダーが何者か興味もあるし・・・
あたしは、意を決して、恐る恐る倒れているクルセイダーに近付いた。
- 589sage :2004/04/13(火) 18:09 ID:vAdA8s5g
- 「どうしちゃったのよ?」
クルセイダーが(無表情でわかり辛いんだけど)困惑した様子で呟いた。
「信条に反するが・・・致し方あるまい。」
ん、ん?何が仕方ないのかな?そういやさっき見捨てられた時
『他人と関わるつもりはない』って言ってたけど・・・
つまりは、仕方ないからあたしと話をしようって事、かな。
なんか引っかかる言い方だけど・・・
それこそ仕方ないから聞かなかった事にしておこう。
「力が入らない。体が動かない。何故だ。」
ちょっと待ってなんでこいつは本当に不思議そうなの?
原因なんて一つしか考えられないじゃない。
「血、出しすぎたんじゃない?普通即死してる傷だったんだし。」
「いや・・・俺には血はさして重要ではない。他に要因がある筈なのだが。」
「他の要因?」
力が入らなくなる?血が足りない以外で?
「病気とか?」
「病気ではない。体に異物が侵入すればわかる。」
「お腹が減ってるとか・・・」
・・・自分で言っててなんだけどそんな訳ないよね・・・
「お腹が減る・・・?飢えているという事か。そうか、納得した。」
・・・って、納得するの!?
「えっと・・・さ。前にごはん食べたの、いつ?」
「生命力の補填作業は目覚めてから行っていない。」
なんか変な言いまわしだよね?でも、目を覚ましてからごはん食べてないって事は・・・
「朝ごはんとお昼ごはんを抜いたの?」
だから無表情でわかり辛いんだけど・・・どうも意味が掴めてないみたい。
あたし、変な事は言ってないと思う・・・ってこの人、人間じゃないかも知れないんだから
こっちの常識が通用しない可能性があるんだよね。もっと別の事聞かないと。
「目覚めたのって、いつ?」
「俺が目覚めたのは一ヶ月前だ。」
「つまり、一ヶ月前から寝てもいないし食事もしてないって事?」
「そうだ。」
「すっごく、今更なんだけどさ・・・あなた、人間?」
「そうだとも言えるが違うとも言える。」
「えっと・・・つまり?」
・・・沈黙。答える気はないのかな?って思い始めた時に答えが返ってきた。
「生物学的にヒトかと言われれば答えは否だ。」
・・・それきり口を開く様子はない。
「人間だと言える部分は?」
「かつてはあった。だが今はもう、ない。」
・・・なんとなく、直感。さっきの沈黙は説明する言葉を探していた時間で、その結論が。
「『説明するのメンドクサイから前言撤回して人間じゃないって事にしちまえ』なんて思ったでしょ。」
クルセイダーは初めてあたしの顔を見た。
やっぱり無表情なんだけど(くどいからそろそろ無表情って入れないよ)驚いてる気がする。
「何故わかった。」
「なんとなく、ね。元々勘は悪くないんだ、あたし。」
「そうか。」
「ま、いっか。とりあえずあなたは人間に見えるけど人間じゃないって事で。納得してあげましょ。」
「納得して貰えたのなら有難い。」
「で、あなたは人間の食事で栄養補給できるの?」
「試した事はないが・・・恐らく可能だ。」
うん・・・変な奴だけど危ない奴じゃない気がする。例によって直感だけだけどね。
「そっか。なら、はい。」
あたしはポリン産りんごを渡しかけて・・・
「あ、長いこと食べないでいたところにいきなり固形物は駄目って前に聞いたっけな。
人間じゃなくってもそうかも知れないんだから、まずはミルクね。
寝っ転がってたら飲めないから体を起こさないと・・・って、おもい・・・鎧脱がすよ。」
上半身を覆う鎧を剥ぎ終えて、上体を起こす。
彼は力を抜いてあたしに体を預けている。
わ・・・言葉の勢いと成り行きだけど・・・これってもしかしなくてもスゴイ光景じゃない?
周囲は血の匂いで充満してるっていうのに
(だってしょうがないじゃないあたし成人男性+鎧の重量なんて動かせないもん(TT))
彼の発する薄い男の匂いと汗の匂いが確かにする。どきどきする・・・頬が熱い。
途端にどぎまぎしてぎこちなくなった指を叱咤して、鞄からミルクとハンカチを取りだす。
こぼれてもいい様にハンカチを当てがって、ゆっくりとミルクの瓶を傾ける。
途中から自分で支えられる様になったから手を離す。
空瓶を受け取って、暫く待つ。
「お腹の調子、どお?」
「問題ない。」
「じゃ、次はこれね。」
今度こそりんごを渡して、あたしも自分の分のりんごをかじる。
かぷり、しゃり、しゃり、しゃり、しゃり、かぷり、しゃり、しゃり、しゃり、しゃり、がり、ごり、がぎ、ごぎん。
『がり、ごり、ごり、がぎ、ごぎん』?
・・・うわ、芯まで食べてる。種噛み砕いてるよ。
「それちがう!歯ごたえが固くなってきたら捨てるの!」
「・・・そうなのか。」
「人間社会で暮らした事がないの?でもこの鎧はクルセイダーのでしょ?
転職するならプロンテラ行かなきゃだし・・・って、転職もへったくれもないよね・・・
・・・ひょっとしてその鎧、強盗で手に入れたとか、死体からひっぺがして来たとか・・・」
あぅ、想像してたら怖くなってきた。
「あ・・・でもヒール使えるんだから正規のクルセイダーと考えてもいいのかな?
本当にあなたってよく分からない。そうそう、いつまでも『あなた』じゃ呼び難いから名前教えてよ。
それとも、名前、ないの?」
暫く黙り込んでから、答えが返ってきた。
「あぁ・・・そうだ。思い出してきた・・・俺の名は・・・フェメト、だ。」
黙りこんでいる時間で考えた偽名なんだろうけど・・・
本名を知られたくない事情とかあるのかも知れないし、取りあえず呼べる名前があるならいいよね。
「フェメト、ね。ちょっと発音し辛いからフェンって呼んでいい?」
「好きにしろ。」
「うん。そうさせてもらうよ。あたしはササメ、よろしくね、フェン。」
なんて言ってるけど何をよろしくするのかなあたしは、とちょっと思ってみたり。
まぁ・・・ともあれ、こうして、あたしとフェンは出会ったわけ。
ちょっとした好奇心と、打算。あたしがフェンに興味を持ったのはそれが理由。
厄介事に巻き込まれるんだろうなって気は・・・うん、してた。
その予感は外れなかったんだけど・・・それはまた別の話ね。
- 599sage :2004/04/13(火) 18:16 ID:vAdA8s5g
- という訳で、板汚しスマンかった。
感想を貰えると嬉しかったりするかも・・・
- 60名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 20:27 ID:tIX3no7U
- >>9>>55
PDAで書き上げたらしいから仕方ないんだろうが
もうちっと行間あけたほうがいいだろうというのが
最初の感想だ。
……が、読んでるうちに漏れにはそんなことは気に
ならなくなった。
ようするにだ。 (゚∀゚) イイ
当然これから「厄介事」ってやつも読ませてくれる
んだろう?
- 61名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 22:40 ID:cdKV4slA
- >>9
>>60に同意で、確かに行間空けてもらったほうが
読みやすいかも。
だが、おもしろい。たまらなく。
剣士子の語りがおもしろい。
クルセと剣士子の掛け合いがおもしろい。
続き頑張って書いてくれ。(余計な事だが、仕事も頑張ってくれ)
- 62名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/13(火) 23:47 ID:2dvB2Eg2
- 下水道リレーは闇の中に・・・
- 63名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/14(水) 10:45 ID:P5/oMkYo
- 質問質問
グラストヘイムは巨人族との戦いで廃墟になった人間の城?
それとも巨人族の城?
馬鹿でかい本棚とかテーブルとかリビオとか深淵たんを見ると
巨人族の城ってイメージがあるのですが本当はどっち?
原作読んでないのでわからないです・・・求)日本語版
- 64名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 00:21 ID:wUjnC8qM
- セージ萌えスレ(ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoe&key=1075616521)
の>>35、>>46を読ませて頂いて浮かんだネタを投下してみます。
- 65名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 00:24 ID:wUjnC8qM
- 「……なあ、俺、油祭りって初めてなんだが……」
「うん」
「だいたいみんな、こんななのか?」
相方が招待されたというコモドでの油祭り。セージであるこいつに請われて付き添った俺の目の前では、ちょっと凄い光景が繰り広げられている。
休み無く「深淵の中に」を合奏し続けるバード・ダンサー、これはいい。普通だ。
いきなり倒れたり、哀れ顔がオークの如く変じる者がいる。これもまあ、よくある事なのだろう。
問題は、油セ−ジ達のSP回復の手段だった。
「す、ストームガス……」
「スペルブレイカー♪ ん……」
「ん……、む、は……ん」
OK、スペルブレイカーは詠唱を妨害してなおかつSPを吸収するスキルだったな。
だが、妨害ってのは唇で唇をふさぐ事なのか? SPの吸収ってのは口移しなのか?
なんつうか、喜々として回復に励んでるんだが。よくよく見れば、俺以外に男居なくないか? ……あ、殲滅役で誘われたらしい騎士さんが、近くのプリさんと真っ赤になって見つめ合ってる。周りの様子にあてられたか。
「アカデミーのね、うちの学科の秘伝なのよ、あのやり方って」
「ほお……」
「まあ、私は結構蚊帳の外だったんだけどね。今日呼ばれたのも、同窓のよしみみたいな物ね」
たしかに、対人を考えず、油型でもないこいつは、スペルブレイカーを修得していない。
「ああ、プリーストの相方が居るって教えてあったから、貴方が目当てだったのかもね」
それも有り得ない話では無い……が、何人かの面子は、俺を見て露骨に残念そうな顔をしてたんだが。……まあ、理由の察しはつくが、深く突っ込むのは止めておこう。
「まあ、なんつうか、楽しそうってか嬉しそうにやってるよな」
「そうね。真っ当な理由付きで、公然といちゃいちゃできる訳だし」
退屈そうに頬杖を突きつつ、相方が言う。見たところ、油セージ達はむしろブレイカーの方にこそ熱心で、ボスの類が現れる気配は今のところ、無い。
「『物事に理由を付けたがるのは、男の習性だ』ってのは、誰の言葉だったっけかね……。女も、似たようなもんなのかな」
「?」
独り言の様に呟きながら、俺は相方の背後にゆっくりと歩み寄る。
「要するに、だ」
「んむ……っ!」
不意を突くように相方の背中に抱き付き、肩越しにこちらを向かせて唇を重ねた。
「っぷは、ちょっ、なに、いきな……ぅふん……むぅ」
「したきゃ理由なんか付けずにしても良いだろ、ってこった。こんな風……にっと」
「んは、だからって、ん、人前で……あむ、はげし……っ」
その抗議は却下だ。周りはみんな、こんな調子だしな。……性別は別だが。
やがて相方の身体から抵抗する力が抜ける。
俺は頬に手を添え、もう片方の腕で背中から抱きすくめた。無論、キスは続行しながら。
「ぅふ……む、は……ぅん」
「……ぅむ……、……ふぅ」
ひとしきり堪能してから、相方から唇を離す。
「……なにか、吸ったでしょ」
「ん?」
「力、入んない」
そう呟いて、俺にくったりと背中を預けてくる相方。頬は薄紅色に染まり、瞳は既に潤み、蕩けている。贔屓目でもなんでもなく、色っぽい。
「火属性付与もやっちまったかな?」
「……ばか」
返事の代わりに、抱きしめる腕に力を込める。
正直、こいつが例のスペルブレイカーを修得しなくて良かった、と心から思う。こんな表情を見せられ、こんな仕草をされた日には、男でなくてもどうにかしたくなる。まして、いま周りにいる連中だったら、何をかいわんや、だ。
「……お前らには、やらねえ」
いまだSP交換に夢中な連中に目を向けて、呟く。
「え?」
「いや、こっちの話……さて」
ごまかす様に立ち上がり、相方をお姫様抱っこで抱き上げた。そして、この祭りの主催者らしい、仮初を飾ったセージに声を掛ける。
「すいませーん、こいつコーマかかっちまったみたいなんで、休ませまーす!」
「……あらー、それじゃしょうがないわねー」
怪訝な表情は一瞬の事。俺達の様子を察したらしいセージは、ほんわりとした笑みを浮かべて、
「ごゆっくりー♪」
と、ウインク付きで送り出してくれた。
「さ、主催者のお許しも出たことだし、部屋に行こうかね」
「ん……」
「ま、ごゆっくりはともかく、休むかはわからないけど、な?」
「……知らない」
俺の腕の中でそっぽを向きつつ、身体は俺の胸に預けてくる相方。
その温もりを味わいつつ、宿への道を急ぐ俺であったとさ。
- 66名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 03:16 ID:ERpDWjRc
- 『ティータ 3/5』
香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。アルバートは珍しく眼鏡を外して呆けていた。この白髪の暗殺者にしては、非情に稀な事だ。
リビングに降りてきたグレイは、椅子に腰掛けてそうしている彼を見て眉をひそめた。
「・・・何かあったのか?」
「え?あぁ・・・まぁ、な」
アルバートは曖昧に言葉を返し、また天井に目を戻した。
彼がいつも腰に差している短剣がなくなっている。何処かに置いているのかもしれなかったが、常に戦闘に備えているアルバートが手近に愛用の武器を置いてお
かないというのは考え難かった。それ相応の付き合いがあるグレイには、分かる。
「また爺さんと戦ったんだな」
アルバートは何も言わずにグレイを見た。言うな、と、その目が告げている。
ここ、彼の隠れ家はゲフェンの入り組んだ場所にある。尾行でもされない限りは発見される可能性は殆ど無い。騎士団だろうが、ベルガモットの<紅>だろうが、
ここを見つけるのは容易ではなかった。現に、逃げ込んだグレイやセシル達を探す騎士団の手はまだ一度も伸びていない。ティータを追う<紅>もだ。
しかし、女性陣は知らないことだが、一人で買出しや情報収集をしているアルバートは何度も<紅>の襲撃を受けていた。
不安を煽らないようグレイにも口止めをしていたのだが、今回はグレイも思うところがあった。こうも彼が行く先々に敵が待ち構えているのは不自然だ。
誰かが情報を漏らしているのか、とも考えたが、それならば素直にこの隠れ家の場所が露見しているだろう。
だとすれば何らかの手段を用いてアルバートの行き先を探知しているとしか考えられない。そして、その手段は何故かここ・・・ゲフェンに対しては使えないのだろ
う。若しくは何らかの事情があって直接襲撃が出来ないのだろうか。それは分からない。
問題は、ゲフェンにおいてはその手段が完全に無効化されるのか、それともそうでないのかだ。
「グレイ、ティータを連れて逃げてくれないか」
アルバートはグレイにだけ聞こえるか聞こえないかという小さな声で言った。
彼の言葉に息を呑み、グレイはキッチンで食事の支度をしているだろう少女の方を見やった。聞こえてはいないらしく、リアクションはない。
「・・・本気かよ?」
「至って本気さ・・・もうお前くらいしか頼める奴がいない」
騎士団にも顔が利く二人だったが、謀略によってグレイ達がお尋ね者になってしまった現状ではもうどうにもならない。騎士団に居る知り合いも個人的感情は捨て
てかかってくるだろう。騎士とはそういうものだ。彼らはそれを誰よりも理解していた。
「向こうがここを察知するのも時間の問題だ。なんとなく、そんな気がする」
「・・・お前も一緒に来ればいいじゃねぇかよ」
「いや、分かれて行動するほうが得策だ。向こうの<眼>は今のところ俺しか捕捉出来てない」
アルバートの勘は正しい。グレイは彼の卓越したセンスを知っている。それだけに、反論の余地はない。
このアサシンはいつもそうだった。隊を率いて任務に当たる時も、一度も読みを外さなかった。逆賊や犯罪者を暗殺するにしても、仕損じたことが無い。
だから彼は常に隊の中で畏怖され、部下にさえ嫌悪されていた。<黒>は隊の名前ではなく、標的にまとわりつく冷徹な死の闇、つまりアルバート個人を指して
連想された呼び名。忌み嫌われた男の蔑称なのだ。
「・・・セシル達には早朝までに支度をさせておいてくれないか。ティータには俺から言っとくから」
グレイの沈黙を肯定と受け取ったアルバートは淡々と言った。まるで単純作業の指示をしているかのように、事務的に。
そら恐ろしくなる男の素顔が覗く。窮地に立たされたせいかもしれない。
「セシル・・・いや、お嬢ちゃんには言わなくていいのか」
「別に今生の別れってわけじゃない。また会えるさ」
「妙にドライだな」
「俺に固執してもいい人生は送れないだろ・・・あの子」
と、彼は真顔で切ないことを言った。本音かもしれなかったが、分からない。
「つくづくロジックな奴」
「かもな」
グレイの皮肉めいた賛辞を受け、アルバートは苦笑した。
「鍛冶師」
「ん?」
二階の廊下にさし当たった所で、グレイは呼び止められて振り返った。
窓辺に寄りかかって立っていたのは、知的な顔立ちの赤毛のハンター・・・俗称、怪盗ポリン。本名アーシャ=ブランガーネ。
歳はグレイやアルバートとさして変わらないだろうこのハンターも、犯罪者として修羅場をくぐってきただろう手錬れだ。セシルやティータとは明らかに違う空気
に、グレイは少々身構えた。意識としては味方なのだろうが、かといって気の許せる相手ではない。
「そないに警戒せんでもええやん。運命共同体やろ?」
「だったら突然呼び止めるのはやめとけ。お嬢ちゃんと違って、俺は危ないぜ」
あくまで不遜な態度を崩さないグレイに、アーシャは肩をすくめた。このブラックスミスと、ここの家主で同じく逃亡者であるアサシン・・・アルバートとグレイはアー
シャから見ても奇異な人間だった。非凡な能力を持ちながら、どこか醒めている。彼女としてもこの二人は苦手だった。
とはいえこのグレイはまだマシな方だ。アサシンの方がどちらかといえば危険な匂いがする。
「ふう・・・いーかげん、状況を教えてもらいたいんやけど」
「変化はねぇよ。俺達は逃げなきゃ騎士団に捕まる。それだけだ」
「冗談。あのフェーナ・・・やっけ?あんなプリーストがほんまに騎士団の奴やったら半魚人が裸踊りするで」
だろうな、とグレイは笑った。
「騎士団に繋がってるどこかの組織って事だろ。騎士団だって一枚岩じゃないんだ」
「高位ギルド・・・って事かいな?」
「かもな。どのみち逃げなきゃ殺されそうだ」
のらりくらりと言う。が、急に真顔になり、
「つーわけで逃げるぞ。明朝にゲフェンを出る」
その言葉にアーシャは耳を疑った。ここに居る限りは安全だと信じていたからだ。
「やっぱり変化あったんやん・・・」
「ありそうってだけだ。ま、十中八九あるだろ」
「ど、どないする気や」
「ゲフェンを出て・・・そうだな、シュバルツバルドかアマツ辺りの国外に行くことになる。相手が高位ギルドならそれでも不安だが、近場よりはマシだ」
自覚はなかったがグレイの言う事は気休めにもならなかった。相手の勢力が不明な限り、何をしても不安は付きまとう。
アーシャはへなへなと脱力してしゃがみこんだ。年貢の納め時、などという陳腐な文句が頭を過ぎる。
「はあ・・・こんなんやったらおとなしゅう堅気にしとればえかったわ・・・」
軽い発見だ。怪盗とさえ言われる女が弱気になっている。グレイは僅かに上機嫌になって、タバコを取り出した。
「事情は知らんがお気の毒。後悔したって罪は消せねぇ、ってか」
咥えたタバコに火を点けながら、彼はせせら笑った。心なしか優位に立てた気がする。
「うぅ・・・うちは病気のおかんの治療費が欲しかっただけや・・・ほんま世知辛い世の中やでぇ・・・」
「あ、あぁ?」
ぶほ、と煙を吐いてむせかけるグレイ。アーシャは我が意を得たり、と続ける。
「うちのおかんは不治の病に侵されとるんや・・・せやかてうちは世間知らずの小娘やさかい、治療費も払えへんし・・・ああ!世間が憎い!」
へたり込んで仰々しく頭を振った。悲劇のヒロインよろしく、袖で涙を拭う仕草もして見せる。
だからといって盗人に身を落とす事もないだろうに。瞳を潤ませるアーシャを前にして、グレイは知らずうちに同情していた。
迂闊な同情だったが。
「・・・改心するなら治療費は俺が出してやるぞ」
「ほ、ほんまか!?」
「ああ、本当だ。改心するならな」
額にもよるが。グレイはパッと明るくなったアーシャに向かって口元を緩めた。
「無事にお袋さんに会えるように、ちゃんと逃げ切ろうぜ」
「鍛冶師、あんたええ奴やなぁ〜・・・」
完全に信用したグレイにとびきりの笑顔を送ってから、アーシャは内心でぺろっと舌を出した。
ちょろいものだ。
- 67名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 03:17 ID:ERpDWjRc
- 暗い部屋の中、窓から差し込む夜の街明かりを受けて、赤いリボンが映えていた。
大事な人からの大事な贈り物。セシルはベッドに横たわったまま、その薄い布を握って考える。
(これからどうしよう・・・)
漠然としたビジョンすらない、自分の未来を考える。アルバートやグレイは大丈夫だとしか言わなかったが、全く大丈夫でない状況下に立たされている自覚は
あった。何せ、お尋ね者だ。言ってしまえば一生逃亡者になる可能性もある。
セシルは目の細かい櫛も抵抗なく通りそうな自分の長い髪を弄った。
いっそアルバートと共に誰も知らないような土地へ逃げたいとも思う。夢の見すぎだとは分かるが、そうしたいと願う自分がいるのも事実だ。
現実には、負傷し、彼らに比べて元々未熟なセシルは足手まといにしかならない。
剣を失ったという事も重く圧し掛かる事実だった。あのバスタードソードを打ったグレイは命に比べれば剣なんて安いものだと笑ったが、そうそう割り切れる
ものでもない。あの敗北は剣のせいではなく、自分の未熟のせいなのだから。
鞘だけになったバスタードソードを見る。
その傍に、誰か立っていた。
髪の長い・・・誰だろうか。おぼろげに霞んだ、幻のような少女。
(まだ戦うの?)
少女は言った。いや、訊いた。その声も、どこか曖昧ではっきりしない。
「戦いたいわけじゃないけど・・・でもどうしようもないじゃない・・・こんなになっちゃったら・・・」
なんとなく、セシルは答えた。
(貴方はそんなに弱いのに?)
「しょうがない・・・じゃない・・強くなれるならなりたいけど・・・私は」
(失敗作)
「・・・え?」
(貴方は失敗作だものね、セシル)
(でも、いいのよ。力が欲しいのならあげる。だけどね、それには私をちゃんと受け入れてもらわないとダメなの)
(受け入れなさい、愛しいセシル。貴方を見捨てた人を、貴方を罵った人を見返しなさい)
浮かんでは消えていく人々の顔。セシルはそれから逃げるように、シーツに顔を埋めた。
すると不思議なことに、先程の少女をセシルはすっかり忘れてしまった。
なんとも言えない不快感だけが残り、
リボンを握り締めながら、彼女は栗毛の元相棒を思った。
- 68名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 03:17 ID:ERpDWjRc
- ――傷付けたくなんてなかった
――殺したくなんてなかったんだ
数多の屍を背に、小さくうずくまって泣いている少年が居た。
転がる屍は殆ど原型を留めていなかった。切り刻まれ、貫かれ、ぐしゃぐしゃに壊れていた。
かつて自分が率いた部隊のメンバー。
今はただの肉塊。物言わぬ死体。
――どうしてこうなるんだよ
少年には分からない。彼はただ、部下の暴走を止めようとしただけ。
呆然と立ち尽くす老騎士は目を逸らし、
悲痛に顔を歪めたアコライトは少年を抱きしめた。
――もういいから
――もう殺さなくていいから
――貴方は優しい人だもの
――・・・アルバート
その日、騎士団の傘下にあった暗殺部隊<黒>は消滅した。
<白>の隊長と共に姿を消した<黒のアルバート>は、その後、罪に問われることもなく、
二度と歴史の表舞台に現れなかった。
『ティータ 4/5』
「どうも最近は物騒でいかんなぁ・・・そうは思わないかぁ?若いの」
閑散とした酒場の隅。申し訳程度に生やした口髭を撫でつつ、騎士は言った。
隣に座っている陰気な魔術師風の青年に向かって喋る彼は、どう見ても単なる酔っ払いだ。青年は目深に被ったフードの奥にグラスを運び、中の酒を飲み干す。
「例のアルベルタの事件ですか」
青年がグラスを置いてから言った。投げやりな口調だった。
「テロやなんかでも真っ先に商人が狙われるからねぇ。いやな世の中だよ」
「・・・はぁ、そんなものですかね」
騎士の愚痴めいた言葉に、曖昧に頷く青年。この騎士とは先程出会ったばかりだが、何かと話しかけられて困っているところだ。
この律儀で陰気な青年の関心事は別にあった。
思い返すだけで腹の底が煮えくり返る。苦労して作った『人形』を取り上げ、計画の遅延の責任を押し付けようとするとは。
青年が信じているのは絶対的な力と確かな知識だけだ。その粋たる『人形』を横取りされたことで、彼の怒りは頂点に達した。
それまで忠誠を誓っていた人間から離反したのもそのせいだった。じきに追っ手がかかるだろう。そうなれば一巻の終わりだ。
だからそれまでは酒でも飲んでいよう。
青年が出した結論はそんなものだった。今まで酒は判断力を鈍らせ脳細胞を殺すからと敬遠していたが、もうどうでもいいことだ。
髭の騎士は思い切り酒を煽る青年を見やり、微かに笑った。
「何か嫌な事でも?」
「え?」
「いや、なんとなく思ったんだが」
「あぁ・・・いえ・・・まぁ」
青年はグラスを置いて言葉を濁した。
「自分の人生というものが分からなくなりまして・・・思えば、『彼』の言うとおり歯車にすらならない下っ端だったんでしょうねぇ・・・私は」
「おいおい・・・君の歳でそんなに人生に疲れなくてもいいだろう」
「いえ、もう疲れましたよ。今まで私は力に固執しすぎていたんでしょう・・・そして自分に絶対の自信があった」
「野心は必要だぞ?若いんだからな」
「はは・・・野心ですか。私の場合はむしろ陰謀と言えるかもしれませんね」
二人は同時にぐいっとグラスを傾けた。
「・・・とはいえ、ひたむきに上だけを目指す姿勢は救いだな。機械のように無感情に人を蹴落とすことが出来るなら、楽だろう」
「・・・こんな世界ですしね」
油断をすれば死に、情けをかければ命取りになり、その気になれば人を殺せ、簡単に命が失われる世界。
殺されるよりはマシ。殺すほうがマシ。奪うほうがマシ。奪われるよりはマシ。
負けるよりは勝ちたい。だから青年は野心を持った。ただの魔術師では終わりたくない。終われないからだ。
で、その結果がこれか。
青年は自嘲気味に笑った。
確かに力の虜になることは楽だったが、同時に疲れもした。青年の中に残っていた僅かな良心が常に呵責を訴え続けたからだ。
「後悔というものを初めて理解しましたよ」
「上出来じゃないか?それくらい追い詰められたら何だって出来るさ。若いんだからね」
髭騎士は再び笑って酒を飲み干すと、席を立った。青年は彼のマントの下にさげられた両手剣をちらりと見る。
プロンテラ騎士団の刻印が刻まれた剣を。
「・・・中央騎士団の方でしたか」
「ああ」
「私を捕縛しに?」
「いや。俺のせいで道を踏み外しそうな若者達が居てな・・・ちょっくら助けに来たのさ。それにもう君は罪を重ねる気もないだろう?シメオン=E=バロッサ」
一瞬、青年・・・シメオンは意外そうな顔をしてから、すぐに苦笑した。
髭騎士が席を離れると、すぐにカウンターの裏から数人の重装騎士が現れた。髭の騎士は彼らに向かって手で何かを指し示し、檄を飛ばす。
「待機命令厳守!指示があるまで動くなよ!アウル一味が街に被害を出すまでだ!現行犯なら上層部と癒着してようが言い逃れはできまい!」
「隊長、一味に他の騎士団員が加担しているとして、彼らが敵対行動をとった場合は?」
「可能なら捕縛、不可能なら殺して構わん!向こうはアルベルタで虐殺を行った狂信者どもだ!容赦はするなよ!」
「了解しました!」
髭騎士と騎士達のやり取りを眺め、シメオンも席を立つ。
「・・・どこへ行くんだね?」
向き直った髭騎士の問いに、彼はフードを下ろし、微笑すら浮かべて言った。
「贖罪ですよ・・・自己満足とも言います」
「・・・そうかね」
ゆったりとした、それでいて迷いのない歩調で酒場を去るシメオンを見送ってから、髭の騎士は部下に向かって言う。
「これは包囲殲滅戦だ!戦争だと思って死力を尽くせ!以上だ!」
- 69名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 03:19 ID:ERpDWjRc
- 鞘に納まった面妖な赤い片手剣を手に、アルバートは走っていた。宵闇に紛れ、疾風の如く、見慣れたゲフェンの街を駆け抜ける。
街を包んでいる異様な空気が、これから始まる出来事を示唆していた。
嵐の前の静けさ、だろうか。
あちこちに潜んでいる大勢の騎士の気配を感じた。皆良く訓練されているらしく、接近しても物音一つ立てない。
願わくば彼らが敵でない事を祈った。
ズン、と空気が震える。走りながら見れば、ブリトニア側、西門の辺りの空が赤く染まっていた。
(・・・始まったか・・・)
疾走しながら彼は背のカタールを抜いた。二つの刃が閃く。そして目を閉じ、数分前を思い返した。
「嫌ねよ!あるばーdと一緒じゃなきゃ嫌!」
急いで支度を終えたグレイとアーシャ、それにセシルの三人へ、アルバートはティータを突き放った。
そのティータを受け止めたセシルは何とも言えない悲しそうな顔をする。それはグレイもアーシャも同じだ。
自分では分からなかったが、恐らく彼自身も同じ顔をしていたのだろう。
「奴らが狙ってるのは多分、ティータとこの剣だ。俺はこれを持って出来るだけ時間を稼ぐ」
アルバートはティータの剣を腰に差した。
「その隙にゲフェンを出てくれ。頼む」
「ああ・・・分かった」
火を点けていないタバコを咥えたグレイが頷く。ある種の使命を帯びた騎士のような顔つき。
最期になるかもしれない親友の頼みだからか、いつもの緩んだ彼ではなかった。
「・・・ごめん。朝までは大丈夫だと思ってたからさ・・・ちゃんと話せなかったな、結局」
突き飛ばされて愕然とするティータの頭を優しく撫で、アルバートは呟いた。
悲愴ですらあるそのやり取りをセシルは羨ましそうに見つめ、目を逸らす。アーシャはそんなセシルを肘で軽く小突いた。彼女なりの配慮だった。
背中を押されて前に出たセシルに、アルバートは小さな眼鏡の奥で微笑んだ。そして、
「またな」
そう言った。それはセシルだけでなく、その場に居る全員へ向けての言葉だった。
- 70名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 03:19 ID:ERpDWjRc
- ――目を開く。
無関係な一般人の悲鳴が聞こえ始め、ゲフェンの街に次々と邪な敵意が生まれる。西門の爆破はフェイクだ。本命は転移魔法での奇襲だろう。
普通の人間の思考だと、西門が危険なら東門へ向かう。その動きを読んだ上で街の中に現れる気なのだ。
アルバートの読みは当たっていた。たかがティータ一人の為にそこまでするか、とは疑っていたが戦術的には最も確実だ。
そして、だからこそ単独での攪乱も効果を発揮する。
眼前にワープアウトしてきたローグの姿を見止めると、アルバートは石畳を蹴って一気に距離を詰めた。
「う、うおぉ!?」
虚を突かれたローグは反応できずに身を縮めた。しかし、アルバートは仕掛けなかった。わざと気絶しない程度の蹴りを見舞い、走り去る。
こうすればローグは仲間に報告し、反撃に転じるだろう。振り返って見れば、丁度誰かに連絡を取っているところだった。
出来るだけ目を集めなくては。後はグレイを信じるだけだ。
次々と敵が転送されてくる中を、アルバートは駆け抜けた。
迫る敵をなぎ倒し、退けながら出鱈目にゲフェンを奔走する。何度か攻撃を受けて負傷しながらも、足は緩めない。
一体何人転送されてくるのか。原理が分からない不自然なポータルが大量に発生している。
(こりゃ・・・死ぬかな)
ゲフェンのシンボルとも言える塔の前の広場に差し掛かった所で、アルバートは一人ごちた。軽く五十は居るモンクとローグの混成部隊が、広場を包囲して
いたからだ。彼は陽動に釣られて追ってくる集団をかわし、転げるようにして広場の中心に躍り出た。
ドン、とその背中が誰かにぶつかる。
咄嗟に振り返った。
ぶつかった相手も同じ行動を取ったのか、視線が交差する。
整った顔立ちに、金髪をオールバックにまとめた剣士。黒い大剣を手に、包囲した集団に対して油断なく構えるその男は・・・
「・・・何・・・!?」
『・・・お前は・・・!!』
一瞬、お互いに我が目を疑ってから、剣士とアルバートは背中合わせに向き直った。アルバートは視界の隅に何故かカプラ職員らしき人影を見たが、今は
それどころではない。包囲されている上に因縁の相手がすぐ後ろに――居る。
『・・・三度目だな。とはいえ・・・前回、お前は気を失っていた』
「・・・やっぱりあの時のドッペルゲンガーか」
『今はジョンと名乗っている。そう呼んで欲しいものだ』
「ジョン・・・?」
どこかで聞いた名だ。アルバートは記憶を巡らせ、やがて思い出した。
アルデバラン近郊の森でベルガモットに追われた際、陽動をかけてくれたという剣士の名前だ。ティータはイイヒトだと言っていたが、まさかドッペルゲンガ
ーだとは。人間ですらないではないか。
「ははっ!偉くなったもんだな!あんだけ人間を見下してた割に、妙に人間味のある名前じゃないか!?」
『心境の変化とでも言っておこうか!?どちらにせよお前の知るところではない!』
「はっ!そうかよ!」
『ああ、そうだ!』
本来なら背中越しではなく、互いに刃を向け合う場面だった。確執を振り切れずにいる二人にとっては、そうなるべきだったのかもしれない。
だが、状況がそれを許さない。ジョンにとってもアルバートにとっても、過去の事より今やらなくてはならない事の方が重要だった。
即ち、この敵に囲まれた状況を打破する。
二人はほぼ同時に言った。各々の武器を、周囲の敵意に満ちた集団へ向けて。
「悪いが、今、お前に構ってる暇はないんだ!」
『残念だが、今はお前に構っている場合ではない!』
刹那、遠巻きに囲っていた僧兵達が一斉に二人へ向かって襲い掛かった。アルバートは即座にハイドからグリムトゥースの姿勢へ、ジョンは黒の大剣ツヴァイハ
ンダーを片手に持って空いた掌を突き出す。
「グリムトゥース!」
『ツーハンドクイッケン!』
アルバートがカタールを振るった足元の地面から『棘』が走り、四方へ伸びる。その棘の強烈無比な威力に僧兵達が地面を転がった。
それでも猛進してきた者を待っていたのは、目にも止まらぬ黒い刀身の剣戟。
急所は外されたものの、尋常ならざる速さで繰り出される剣に襲撃者達は尽く沈む。それこそ、声を上げる暇さえない。
二体の修羅に集団は怯んだ。そこへ来てようやく彼らの圧倒的な実力を感じ取ったのだ。
第二波として構えていたローグ達も、僧兵達のあまりに呆気ない最期を見て動けなかった。
「い、いかん・・・!退けぇ!」
中堅指揮者らしき者が叫ぶ。
だが、もう遅い。叫ぶ彼の背後の壁に染み出るようにして現れたアルバートは、カタールの柄で彼の後頭部を強かに打ち据えた。
蜘蛛の子を散らすように、有利な立場であった筈の集団は悲鳴をあげて逃げ惑う。
指揮していた者がやられた事によって、彼らは完全に統制を失っていた。
訳が分からないうちに宙を舞う者も居た。カプラ職員の姿をしたアリスのデッキブラシが唸りを上げて逃げ惑う者達を打ち上げる。
最早、形勢は完全に逆転していた。ジョンはなおもまとわりつく敵を切り捨てながら訊く。
『アリス!カタリナの位置は分かるか!?』
『東門付近だと思われますが、かなりの数の敵が転送されている模様。正面突破は不可能だと判断します』
東門にかなりの数。
何者なのかよく分からないカプラ職員の機械的な報告を聞いて、アルバートは戦慄した。タワー前におびき寄せた戦力で殆どだと思っていたからだ。
陽動がうまくいけば東門からグレイ達は脱出できると踏んでいたが、甘かった。
敵は戦力を分けて西と東から挟撃するつもりなのだ。そうなれば自分は勿論、グレイ達も一網打尽にされる。
たとえ局所的に勝利を収めても大局は変わらない。ベルガモットも東門にいるだろう。あの老練の兵はそういった肝要な部分を絶対に妥協しないのだ。
歯噛みして踵を返すアルバートの肩を、ジョンの手が掴んだ。
『どこへ行く気だ、アサシン』
「お前に構ってる暇はないって言ったろ!・・・仲間を逃がさないと」
『死ぬぞ!一体何人いると思っている!』
「何でお前にそんなこと心配されなきゃいけないんだ!?魔族だろ!?お前は!!」
彼の手を乱暴に振り払い、アルバートは叫んだ。斬りかかっても不思議はない相手。実際そうするべきなのかもしれなかった。
不意にアルバートの目の前にアリスが立ち塞がる。
『アサシン様、どうか冷静に。お一人で何ができましょう?』
見ず知らずの彼女さえも行かせまいとした。
『マスターなら状況を打開できます』
アルバートは反論に困窮した。確かに、ドッペルゲンガーは強い。凡庸な冒険者が相手なら何人でかかろうが物の数ではないだろう。
だが・・・だが、彼は魔族だ。いくら一度は助けてくれたとしても信頼に値する者ではない。
かといって、目の前の少女の言うことは間違っていない。今のアルバートは冷静でもなければ、何か出来るわけでもない。
あまりに無力だ。
『お前の仲間を助ければいいことなのだろう?ならば我に任せよ。必ず生きて脱出させる』
「・・・」
赤い眼と眼鏡の奥の眼が合う。空気が張り詰めながらも、この二人の間に敵意はなかった。
『お前とはいつか必ず決着をつけよう・・・それまでは死ぬな』
ツヴァイハンダーを携え、東門へ向かって静かに歩き出すジョン。
『アリス・・・このアサシンを見張っておいてくれ』
『イエス、マスター』
ジョンが去った後、アルバートはその場に座り込んだ。激しい戦闘の疲労もあった。そして、それ以上に、精神的に疲れていた。
ふと、顔を上げて見たゲフェンの街並みは既に赤く染まっていた。東門から上がった火の手が回ったらしい。
またか。
そう思う。途端に笑いが込み上げてきた。
「何が可笑しいんですか?」
吹き荒れる熱風にエプロンドレスをなびかせるアリスの問いに、アルバートは手にしたカタールの刃をやんわりと振った。
「いや、別に」
- 719sage :2004/04/15(木) 16:12 ID:6tKnUqvg
- うおぉ、感想が・・・感想がぁっ・・・をれは今嬉しいぞぉ!!
>>60
>>61
感想貰えて大感謝。
行間か。考えもしなかった・・・orz
次回から読みやすい文章を心掛けてやってみるよ。
続きは・・・また仕事時間で書き上げるから
気長に待って貰えると有難かったり。
誉められて気合入ったから仕事サボってバリバリ書くぞぉ!・・・
書けたらいいな(TT)
- 72577と名乗っていたものsage :2004/04/15(木) 20:14 ID:vHUvDmG.
- えーと
上水道リレー小説ってまだ需要あるのでしょうか・・・
ラグナロク引退した身ですが、これは仕上げたいと思っていたのですが
なにぶん私も忙しかったもので・・・
5月終わればかけるようになると思いますが、
いかがでしょうか?
ちなみに要望される人の中に・・・過去ログ持っている方います?(汗)
- 73名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 20:38 ID:.V9tqqTE
- >>66〜70
ジョン&アルバートキタ━━━━━(゚ ∀゚ )━━━━━!!!!!
GJです。
>>72
お願いしますゼヒ書いてください。
過去ログなら持ってたかも・・・
- 74名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/15(木) 20:54 ID:DBnh/y.E
- >>55
続き激しくきぼん
個人的には行間空けないほうが読みやすい派
改行も一文終わるまで無い方がいいかなぁ
- 75名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 00:05 ID:7IbFJsoo
- >>72
前半だけならログありますよ。
書いてもらえると他の人にもいい影響になるでしょうから是非お願いします。
- 7673sage :2004/04/16(金) 00:30 ID:aFO2txlI
- じゃあとりあえず小説スレ2・3の全ログ上げときますので
それを参照してください。
http://nekomimi.ws/~asanagi/cgi-bin/ragnarok/source/20040416002807-syousetu2.lzh
http://nekomimi.ws/~asanagi/cgi-bin/ragnarok/source/20040416002721-syousetu3.lzh
- 77名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 07:02 ID:ojTFPRPY
- >>76
小説スレ1もあればお願いできませんか。
花のHBとか最初から読みたいんですが……。
- 78名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 10:38 ID:c3Al37Lc
- >>77
過去ログ倉庫にdatであるっぽい
- 79名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 11:45 ID:nV1LpYjg
- >>73氏
横槍ながら、ありがたく頂きました。dクス
- 80名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 15:42 ID:iGYDDwtg
- 『ティータ 5/5』
セシルは行動を共にする者達の実力に改めて驚いていた。
ちょうどゲフェン外壁を沿うように東へ移動している一行は、何度か散発的な敵との遭遇を果たしていたが、その尽くは向こうがこちらへ接近する前
にカタがついていた。
弓を手にしたハンター、アーシャが親指を立てた。その遥か前方で数人の敵らしき人影が地面をのた打ち回っている。どうやら大腿を射抜かれたらしい。
「あっは、うち、グッジョブ」
自画自賛もいいところだが、誰も咎めない。迂闊に足を止めると包囲される危険性がある、と事前にグレイから注意を促されていたからだ。
アーシャは走りながら矢を取り、グレイはカートから矢を渡す。前を走る二人の連携によって、後に続くティータと、その手を引くセシルの安全は保障され
ている。すぐ傍に現れる敵も居たが、グレイの素早い一撃で昏倒するのがオチだった。
「鍛冶師」
「なんだよ」
「門に近くなるほど敵が増えとらんか?」
「かもな・・・っと!」
妙なポータルで沸いた敵をまた一人蹴倒し、グレイは肩をすくめた。
「どっちみち今ならゲフェンに滞在してた冒険者も応戦してる。混乱を突くには今しかない」
「そうなん・・・かっ!」
民家の上から飛び掛ってきた盗賊職らしき男をしなやかな蹴りで迎撃するアーシャ。男は石畳を転がって動かなくなる。
「ほんならさっさと・・・いんや・・・そうもいかんみたいよ」
そこで先行していた二人が足を止め、セシルとティータも立ち止まった。
「だな」
グレイは頷き、前方の二つの人影を確認して咥えていたタバコを吹き捨てた。
「・・・グレイ・・・お前まで私の前に立ち塞がるのか」
巨大な槍斧を地に突き立て、頑強な鎧に身を固めた老騎士が言う。
「久しぶりだが・・・悪いな、爺さん。通してもらうぜ」
「やれやれ、鍛冶師も訳アリの相手かいな・・・じゃ、うちもリベンジいこか」
踏み出す青髪のブラックスミスを一瞥し、アーシャも矢を弓に番えて騎士の隣のプリーストに向けた。
「あら・・・覚えていらしたんですか。光栄ですわね」
杖を掲げ、美貌の女プリーストがゆったりと言う。
「今度は本気でいくで!この似非神官!」
その刹那、アーシャとグレイは同時に動いた。グレイは騎士・・・ベルガモットの背後に回り、アーシャは矢を射つつ神官・・・フェーナの脇を抜ける。
回り込んだグレイは引いていた武器類満載の台車をベルガモットの鎧に叩きつけた。
凄まじい重量を伴い、運搬用途に使われるカートが凶器と化す。
「小賢しい!」
カートの強襲をハルバートで弾き飛ばし、ベルガモットはグレイを巻き込んで民家の壁を突き抜けた。
土煙の向こうへ消えた二人を後目に、フェーナの脇に潜ったアーシャは零距離から二本の矢を束ねて放った。低い姿勢から打ち上げるようにして放たれた矢は
神官に届く寸前で障壁に阻まれ、あらぬ方向へ折れ飛ぶ。
キリエエレイソンだ。通常のそれとは桁違いの防御力だったが、アーシャは素早く次の矢の束を取り出し、放った。
「先に門に行きぃ!ちょい手間取るわ!」
「は、はい!」
言われて、セシルは反射的にティータの手を引いて走り出した。
バチン、とアーシャの放った無数の矢がキリエエレイソンの障壁と相殺して四散する。セシル達を追うべく向き直っていたフェーナはゆっくりとアーシャを振り
返った。その身体に、再び障壁が発生する。異様な光景。
「何かいたしまして?」
「ち・・・追わせへんっちゅーことや!つきおうてもらうで!」
余裕の笑みを崩さない神官に、赤毛のハンターは次の矢を向けた。
飛び下がるグレイの目の前を槍斧の刃がかすめた。刃はそのまま柱を粉砕して振り回される。
「家の人に怒られるぞ!爺さん!」
「相変わらずふざけた奴よ!グレイ!」
不在の家の主に内心で謝り、グレイは室内の物をカートで吹き散らした。戦闘の邪魔になる。
破壊を撒き散らす要塞の様な老槍騎士に真っ直ぐ対峙し、グレイは身構えた。
「はん!俺はアルバートみてぇに、アンタに苦手意識はないぜ!」
「いいだろう!来い!」
ベルガモットの怒号。
それ以上の雄叫びを、グレイは放った。よれたワイシャツを引き裂かんばかりに筋肉が隆起し、逞しく鍛え上げられた肉体が覚醒する。
ラウドボイス。強靭な筋力がグレイの体躯を跳ねさせた。カートを手放す寸前に中から両手斧を引き抜き、ベルガモットに振り下ろす。
激しく金属のぶつかり合う音が響く。
並みの騎士ならその斧の一撃に圧砕されていた。しかし、ベルガモットも老体ながら尋常ならざる身体能力を有している。
「おおぉぉ!」
槍斧で両手斧を受け切ったベルガモットはグレイを押し返し、押し返され、一進一退の鍔迫り合いに持ち込む。
グレイは老騎士の力量に恐怖した。この老人は若い頃、一体どれほどの実力を持っていたのだろうか。歳を経て衰えていないなどとは思えないが、これで衰えている
のだとすれば、化け物以外の何者でもない。まさに武士(もののふ)だ。人間である前に戦士だとでも言うのか。
影の世界で最強と謳われた部隊を率いる男は、自身もまた最強に限りなく近い者。
その男に師事し、技を磨いたグレイだからこそ分かる、師の圧倒的な実力。まともな力比べでは勝てない。アルバートがそうであるように、グレイもまた、このベル
ガモットに一度も勝てた事がないのだ。
厚い鋼鉄の鎧、強力無比な槍、熟練した技。この男を倒すには、鎧による防御を貫き、かつ反撃を許さぬよう一撃で終わらせるしかない。
・・・そこまで考えてから、グレイは苦笑した。シビア過ぎる。結局は正面からの一発勝負ということだ。
(やっべ・・・白か黒か・・・いや、五分もねぇかな・・・)
ガチガチと火花を散らす得物を手に、青髪のブラックスミスは逆境の真っ只中で笑った。
- 81名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 15:43 ID:iGYDDwtg
- 灼光が壁を貫いた。
もはや光線としか例えようのない光が、逃げ惑うアーシャに追いすがる。
(またコレか・・・一体どうなっとるんや、こいつ・・・!)
フェーナ=ドラクロワのホーリーライトを始めとした神聖魔法は通常のものとは比較にならない能力を持っていた。
長年、盗賊として沢山の神官と相対したアーシャも、こんなプリーストは見たことがない。この女ただ一人だ。
異常な神聖魔法に加え、彼女はまるで眼が至る所にあるかのように壁越しのアーシャを確実に捉え、ホーリーライトを放つのだ。
質の悪い手品である。
「さぁ、どうしたんですか?私を止めるんでしょう?」
はっ、と見上げた民家の屋根の上にフェーナが立っていた。
既に詠唱を終えた白光が放たれる。アーシャは身を捻り、跳躍。同時に射撃。
ホーリーライトの極光は何も無い石畳を焼き尽くし、アーシャの矢はフェーナの張った障壁に阻まれた。
これでは不利だ。いくらアーシャが人間離れした身のこなしで避け続けても、いつかは限界が来る。対して、フェーナの魔力は無尽蔵とも言えた。
キリエエレイソンは幾らでも張れる。ホーリーライトは乱発出来る。視界外からも正確に座標を指定する。
本来なら奇襲か不意打ちでもしなければ勝てない相手だ。
(でもまぁ、うちにもプライドっちゅーもんがあるねん)
赤い髪をポニーに止めていたクリップを外し、長い髪を下ろす。そして、
「いくで!」
矢を束にして弓に構え、アーシャは地を蹴った。
狩人のぎらついた眼光が見据える先に立つ神官は、優美とさえとれる動作で杖を操る。
「・・・いきます」
呟いた。同時に、駆けるアーシャの足元に光の短剣が突き刺さる。
だが、彼女は構わずに走り続けた。フェーナがレックスエーテルナを使用するのは前回の交戦から分かっていた事だ。
防ぐ手段が無い事も。
「ひとつ!」
束にした矢を放った。それらはフェーナの前に展開したキリエエレイソンと相殺する。
素早く次の矢を取るアーシャ。
ここでフェーナは瞬間的な判断を要求された。
即ち、無難にキリエエレイソンを張り直すか、即座にホーリーライトで決着をつけるか。
このハンターを殺す事に躊躇は無い。だが、ホーリーライトを優先すれば間違いなくフェーナも攻撃を受ける羽目になる。
「ふたつ!」
間断なく、次の矢を放ったアーシャはそのまま突進した。判断の遅れたフェーナの直前まで、一気に駆け抜ける。
彼女は放たれた矢をなんとか杖で弾き飛ばしたが、もう遅い。
「みっつや!」
「くっ!」
零距離。瞬く間に次の矢を放とうとするアーシャと、咄嗟にホーリーライトを放つフェーナ。
アーシャの矢は弓ごと極光に消えた。フェーナが勝利を確信する。
が、ハンターの闘志はまだ消えていない。
「まだや・・・エインセル!」
アーシャはそこへきて初めて、頼れる『相棒』の名を呼んだ。今までわざと隠していた怪盗ポリンの切り札が、闇夜を縦に裂き、空から舞い降りる。
鷹だ。フェーナが真上から迫るその凶悪な爪と嘴に気付いた時には、もう遅い。
鷹の襲撃を杖で受払いながら後退るフェーナ。容赦ない鷹の猛攻は余裕をなくした彼女に確実にダメージを与えていく。
二度、三度と鷹の攻撃を受け切ったが、そこで彼女は力尽き、倒れた。元々、野生の狩人である鷹は防御の隙を本能で見切り、確実に敵の弱点を狙う。その爪と嘴の前
ではいかなる素早い身のこなしも、堅牢な防御も意味を成さない。それを考慮すれば、フェーナはよく持ち堪えたと言えた。
アーシャは疲労で言うことを聞かない身体を引き摺って立ち上がった。その肩に得物を仕留めた鷹が止まる。
「ここが屋内やったら、やられとったよ」
赤毛のハンターは倒れた神官に向けてそう言った。彼女なりの賛辞だった。
「そう・・・ですか・・・私は・・・負けるとは思ってませんでした・・・」
地面に投げ出されたまま、フェーナはか細い声で言った。もはや立ち上がる事も困難なほど、鷹、エインセルに付けられた傷は深い。
時間があればヒールで持ち直す事も可能だったが、彼女を見下ろす勇猛なハンターはそれをさせないだろう。
圧倒的有利だった筈のフェーナは、負けたのだ。
「・・・慢心、ですかね・・・」
「どうやろね。せやかて、プリーストは前に出て戦うもんやないと思うよ・・・あんたみたいな身体もロクに鍛えとらんのは特に」
確かにフェーナの魔力と技は目を見張るものがある。だが、それだけだ。
攻撃に耐えられる身体があるわけでもない。
「コンビいうんならまだしも・・・あんたの仲間、よほどの馬鹿か、あんたを捨て駒くらいにしか思うとらんやろ」
駒。
「私が・・・駒?」
「聞くとこによるとあんたも似たようなもんらしいから、同情はせんけどな」
アーシャは目を伏せて踵を返した。
少なからずショックを受けた神官を見ていられなかったというのが本音だった。
(ショック受けるくらい信頼すんなや・・・そんな奴)
聞こえない程小さな声で、アーシャは吐き捨てた。そして歩き出す。
残されたフェーナは呆然としたまま、深く暗い夜空を見上げていた。
- 82名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/04/16(金) 15:44 ID:iGYDDwtg
- 流れ無視で投下してすみません。
リレー、楽しみにしております。
- 83577と名乗っていたものsage :2004/04/16(金) 19:36 ID:HLAXyYJY
- |∀・)
えと・・・
仕事も終わってないのに書き終えた部分を
投下してみます・・・(久々だ)
ちなみにまことに勝手ではありますが、
リレーを残しておきたいと思いますので、私のサイトに
皆さんのをまとめさせていただきたいと思います。
そのうち読めるようになるかと思いますので、
読んだことのない方は楽しみにしていて下さい。
(面白いですよー・・・私の書いたとこ以外は;;)
では
彡サッ
- 84577と名乗っていたものsage :2004/04/16(金) 19:37 ID:HLAXyYJY
- 俺は既にどれだけの時間
相手の攻撃を受け、かわしていたのが
自分ではわからなくなっており、、
真の殺人機械となってしまったような
さめた気分のまま、
回避し損ねて出来た傷口から
流れ落ちる血を、他人のもののように感じながら
それでも尚相手と命のやり取りを続けていた・・・。
後ろに居るのがはっきりわかるオーラを発しながら、
しかし奴は時折り槍を軽く繰出したり、
気を送るだけで積極的に攻撃したりはしなかった。
もちろんその支援があってこそ、こっちがまだ致命の一撃を喰らわずに
生きていられるというものだが、あまりにじれったくて
ちょっと前はこいつは俺を生贄にして魔を狩ろうとしてるんじゃないかと
本気で思えたぐらいだ。
だが斬撃を弾いた一瞬、後ろを振り返って見た
奴の眼でこっちは今までの相手の行動に納得がいき、
それからはこちらの務めを果たすべく、攻撃をかわしながら
その一瞬を待っていた・・・。
そう、
奴は全身の力をただ一点へ集中すべく
全身の気を練って高めていた。
その眼がまるで糸のように細められ、最低限の感覚以外を排除して
自分の中に力を溜め込んでいく。
後ろの空気が収縮していくようで、なんだか温度も上がってきたようで
自分の怪我よりも俺は、クルセのやろうが爆発してしまうんじゃないかと
妙な考えが浮かんできた。
それがついさっきだったのか、それともしばらく前だったのか
もうわからない。
疲れた。
相手も疲れていると期待したいが、生憎悪魔に疲労というものはないようで
受ける攻撃がだんだん重くなっていくのがわかる。
一瞬で死ねたらどんなに楽だろうか?
こんなとき師匠だったら何ていうだろうか?
「逃げろ!」
か
「どんな卑怯な手を使ってでも勝て!」
とでも言うだろうか?
だが卑怯な手っていっても、毒は効かねえだろうし再生するし
おまけに本体が武器だというんじゃどうしようもない。
そう答えた時の師匠の困り顔が見えるようで、
俺は打撃音を周囲にまとわりつかせながら、なんとなく
ちょっとだけ笑みを浮かべて見ていたのだった・・・。
「KUUAAAAAAAA!!!!」
「いいかげんにしろお!!!!!」
俺は体のばねを充分に利用して、相手の短剣をカタールで挟み込むと
そのまま捻って引き剥がそうとする。
だが奴の体は常人とは違い、いくら捻られても力を緩めることがなく
肉がはじけるままにしてこちら目掛けて短剣を繰出そうとする。
いっそ腕が千切れてくれればいいのだが、そう期待する傍から
目の前で再生のショーが始まりこちらを失望させていく。
これがもう何度目なのか・・・。
後ろの奴の助けを借りて、相手との間合いを取った俺は
一呼吸ついて自分の体を冷静に観察し、あと暫らくしか
連続して戦闘は出来ないと判断を下すのだった。
「・・・疲れているようだな。」
後ろから抑揚のない声を掛けられても、答える体力すら惜しい。
それに俺が勝負に出ることを奴はわかっているから、答える必要もない。
相変わらず美しいとも取れる笑みを浮かべながら、女剣士が
こっちに向かってゆっくり歩み寄ってくるのを、
こんどの俺は無謀にも目を瞑ったまま
武器を胸の上で交差させ、珍しいことにちょっとだけ祈っていた。
誰に?何に?祈るのって?
確かに暗殺者の俺が祈るってのは変だよな、
だがその時はなぜがそうするのが当然だという気がした。
頭に浮かんできた人型のイメージは
誰だかはつかめなかったが、それが虚空に一筋の線を描いた。
と見えた次の瞬間、
その筋に沿って悪魔の短剣が襲いかかり・・・。
見える!
今までのどの攻撃よりも良く見えたそれが、
俺の体にどれくらい食い込み、どれくらいの傷を負わせるか
其処まで感じ取れたこっちは、
躊躇うことなく回避運動をストップさせる。
当然こちらの体に短剣が食い込み、
肉を裂き、血が噴出す。
それに意識を奪われることなく、
伸びきった奴の腕が次の運動に移る前に・・・。
「!?」
「かかった!」
腕一本に上下から繰出された刃が、正確に手首の間接をとらえ
俺は痛みも忘れて手首とともに落ちていく短剣を確認して
短い歓声を上げた。
腕が切れなければもっと短いところで切り落とせばいい。
それがこんなに上手くいくとは驚きだが、
相手のほうはもっと驚いたのだろう、
一瞬止まったその隙に落ちた手首・・・短剣を握ったままの手首を、
こっちは片足を鞭のようにしなわせて
バックパスで後ろに蹴り出した!。
「WRYYYYYYYY!!!」
奴がこっちの脇を抜けて、
自分の手首と短剣を追っていく、
しかしその先に居る男