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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第2巻【燃え】

1名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/14(金) 00:54 ID:q83j76lk
このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
・ リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ【エロエロ?】』におながいします。
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ

・ 感想は無いよりあった方が良いでつ。ちょっと思った事でも書いてくれると(・∀・)イイ!!
・ 文神を育てるのは読者でつ。建設的な否定を(;´Д`)人オナガイします。

▼リレールール
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・ リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
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※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。

前スレ【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第1巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoe&key=1036572446&ls=50
2スレルール:追記sage :2003/11/14(金) 01:14 ID:q83j76lk
スレルール
・ 板内共通ルール(http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoesub&key=1063859424&st=2&to=2&nofirst=true)

▼リレー小説ルール追記--------------------------------------------------------------------------------------------
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ
・ リレーごとのローカルルールは、第一話を書いた人が決めてください。
  (たとえば、行数限定リレーなどですね。)
--------------------------------------------------------------------------------------------

以上、テンプレスレの存在を忘れてたバカがスレ立てた故の弊害ですっと。
3名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/14(金) 10:12 ID:jD1xdd/Y
3ゲト。
前スレに投稿したのは滑ったな・・精進しまつ・・。
4名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/14(金) 23:14 ID:JqNgdLJ6
4確保。
ネ申 降臨祈願(-人-)〜†
51スレの422sage :2003/11/14(金) 23:42 ID:g16bPUwE
5ゲット、ずさー。
続き執筆したので、省文ver投下〜。
アップローダーには、完結してから文を削った前の奴を置いておこうと決意しました。
他の文神様のように地の文を少なくする方法を会得してないので見苦しいし、
長々としていますが……お付き合いのほどを;;。
あと、試験的に改行なども勉強中……お見苦しいかもしれませんが、
どうかご了承の程を。
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「ふぃー、疲れたねえ」
プロンテラ南出口の公園。プロンテラにおいて、ある意味街中よりも人の交流の盛んな場所である。そのためここには常時たくさんの人々が集まっていた。ベンチで休みながら雑談を楽しむ者、PTやギルドのメンバー集めに勤しんでいる者、あるいはそういった客層を狙った露店商人たちである。
それらに混じって、ノービスの少女とアコライトがベンチに仲良く座っていた。少女は縮こまったように、少しだけ俯いて。対して、アコライトの方はその職らしさなど全く無視して、背もたれに両腕を投げ出してリラックスした様子であった。
「ここまで来ればもう、心配はないよ。大事にいたらなくてさ、ホント良かった」
と、彼の言葉を聞いて、ビクリと少女の肩が震えた。脳裏に恐怖が蘇り、少女は自分の目の端に涙が浮かびそうになるのを感じた。が、零れ落ちようとした涙が流れることはなかった。
「あわわ……。ごめんごめんごめん。軽率だったよ。許してくれ。ほら、この通りだ」
彼が、突然にわたわたと腕を振り回したからである。まるで泡を食ったような表情で、平謝りしてくる。あまりに大げさなポーズである。このまま放っておけば土下座までしかねない彼に、今度は少女まで大慌てである。
「あっ、あの……! わたしは助けていただいた身なんですから……そんな、謝らないで。顔を上げてくださいっ……」
「いやいや、ボクが悪かったんだよ。ごめんなさい! すみません!」
「あうあう……」
それでも引き下がろうとしない彼に、参ってしまう。これは、並大抵の言葉では諦めてくれそうにない雰囲気であった。
「あの……わたしでしたら、大丈夫です! ほらっ、こんなに元気なんですよ!!」
だから彼女は今だ顔を上げない彼の両肩を揺らして、できもしない力瘤なんて作って見せてしまう。が、それでもこの時ばかりは自分の腕も、オークウォリアーばりにムキムキだと自己暗示して、彼にアピールしていた。
「……許してくれる?」
「勿論です!!」
まるで小動物のような様子で尋ねる彼に、少女は胸を張って答えた。こうでもしないと、彼が立ち直りそうにないと思えたのである。
「そっか。それはなによりだね♪」
と、彼はあっけらかんとした様子で上体を上げて、再びベンチにふんぞり返った。これまでの腰の低さはどこ吹く風で、にこにこと口笛でも吹きかねない様子だ。そのギャップにまた軽い驚きを覚えながら……少女はしかし、はたと気づいた。
(あれ……わたし、何を怖がっていたんでしたっけ?)
男たちに襲われたことである、それは分かる。
だが、今はそのことを考えても、背筋が寒くなることはなかった。静かに、とても心が落ち着いているのが分かる。
「ま、悪いことが起きるとさ、それしか頭が巡らなくなるんだよね。そういう時は無理してでも忘れるってのも、いいんでない?」
彼は聖職者らしからぬ言い回しで謳った。何でもないことのように呟き、両手をひらひらさせている。けれどこちらを見る視線はとても穏やかで、ささやかに諭すようであった。
ちょっとだけ、少女と彼の間で沈黙が続いた。しかし、それは居心地の悪い沈黙ではなかった。二人、静かに奇妙な時間を共有する。
―――そして次に声を上げたのは、少女の方だった。
61スレの422sage :2003/11/14(金) 23:50 ID:g16bPUwE
「そう、ですね……はい。わたし、忘れることにしちゃいます」
 そしてまだぎこちないけれど、少女は初めてその顔に笑みを浮かべた。
「おっ、笑ったね〜。その調子だ」
 こちらは満面に喜色を浮かべて、彼が返す。その表情を少女の瞳が映して、彼女の方もまた少しだけ、ぎこちなさが解れた。それを見て、彼の笑顔がまた一層深くなったように感じられて、少女は場違いだと分かりつつも、喜びを感じていた。
 だが、彼女もまた冒険者を志した者であり、譲れないものもあった。不意にその表情を引き締めて、神妙な顔つきになる。そして、硬い声で続けた。
「あ。でも、これだけは忘れちゃいけなかったです」
「……へ?」
 突然の不意打ちに、彼の表情が固まった。それに対しぺこりと頭を下げて、少女は言った。
「助けていただいて、ありがとうございます」
 その言葉は、ただ男たちから救い出してくれたことを指しているのではなかった。彼とのやりとりの全てに感謝しながら……心の底から浮かび上がってきた言葉をだけ、告げる。言葉を飾るより何より、それが彼に対して何よりの報いだと思えたからだった。
 ぽかんと、とまではいかなかったが、それは彼に対して結構な不意打ちであったようだ。今まで鮮やかに切り返してきた言葉は、彼の口からは出てこなかった。それを感じて少女は顔を上げた。彼の顔を見やる。
 そこにあるのは、さっきまでの固まった表情ではなかった。どこか満足げな、まるで年下の身内の成長を喜ぶような、そんな顔だった。
(ちょ、ちょっとドキドキします……)
 知り合いにそういう男性がいなかったせいで、少女はその顔に思わず赤面しかけていた。なんというか……この少−青年のような人間はあまり身近にいない存在だったわけで、それは仕方のないことかもしれなかった。
 だがしかし、彼はそんな彼女の心を知ってか知らずか、ちょっとするとその表情を大きく崩した。にやりと、決めの言葉を放つ。
「いやいや、神の使いとして、当然のことをしたまでさ!」
 ばちりと音が鳴りそうなくらいのウインクに、親指を立ててガッツポーズ。終いにはその白い歯まで光らせて、彼は決めてみせた。ここまでくるともう、あからさまに演技だと分かる。
「あははっ。神様に感謝、ですね」
 思わず吹き出しながら、少女もついその言葉に乗ってしまう。こうなるともう、ぎこちなさの欠片もない。彼も更に乗ってきて、二人は周りでお喋りに興じる人々に負けじと騒ぎ始めた。
「そうそう、笑うべきだよ。そっちのが可愛いし」
 と、こんな台詞を吐くものだから、少女はまたも忙しく顔を上気させることとなる。しかしこの時は、「えへへ」と恥ずかしそうに笑うだけで、言い返すこともなく、会話が続いた。
 そうして、二人はまるで古くからの友人のように、仲良くお喋りを続けたのだった。

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 これであと、もう2-3くらいシーンを書いたら終わりとなると思いますが……
 現在進行形で書いていますので、どうなるかは分かりません。
 全く期待せずに待っていただけると幸いです。

 PS削ってもやっぱ地の文多いです……そして、萌え分が足りない。_| ̄|○
  も、もうちょいすれば書ける……(はず)
7名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/16(日) 02:17 ID:3OfnFsj2
わざわざ省文Verにしなくても…
省略したところに意外と萌えが、もしくはその布石があったりするかもしれないから、
書いた物はそのままの方がよいと思いますよ。
(本当に必要の無いと思える部分なら削っても良いけど…。)

セリフよりも地の文を勉強しまくれば、1行使ってた表現をその半分で済ませれたり…。
重要ですよ?

ココに投下されてる文神ほとんどに言えますが大半がセリフでの進行は実力の上昇につながりません。

どこに改行を入れるかで見易さなどの感覚を掴みましょう。

なんだか突っ込みばかりですいません。

最後に。

「新スレ使う前に前スレ埋めちゃいましょう。」

新スレが立つのはスレの進行がある良い証拠ですが、新スレ経つ毎に前スレ消費しきらないのは、
スレ資源の無駄遣いですし、ね。
8名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/16(日) 19:48 ID:jv8UUIHc
アコきゅん燃へ。
そのまま突っ走っていいと思うですよ、7氏も書いてますけど。
どのような決着をみせるのか楽しみです。
9名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/17(月) 10:03 ID:6w1NJ05Y
>>7
>「新スレ使う前に前スレ埋めちゃいましょう。」
前スレの容量が限界になったから新スレがたったのでは?
小説スレのような1レスが大きくなりやすいスレにはままあることですよね?
感想レス程度なら入るのかもしれませんが本文ともなると流石に入らない気が・・。
10名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/17(月) 19:24 ID:pikR9QII
>10
いや、現状15KBほど余ってるが、ざっと1万文字ぐらいは詰め込めるわけで、
本文、感想、レス番云々を考えても2つは入るよー。
11名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/17(月) 23:22 ID:g3fOutWc
>>10
(・∀・)ニヤニヤ

でも長いのはこっちに書いてほしかったり。なんとなく。
12とあるスレの577sage :2003/11/18(火) 23:26 ID:pE03rFNU
|∀・)

「みんなで創る小説Ragnarok ♂萌え1冊目」
225-233さんを参考に
一つUPさせていただきます
よろしくお願いします

|彡サッ
13とあるスレの577sage :2003/11/18(火) 23:26 ID:pE03rFNU
キミへ

俺が他人に対して手紙を書くなんていうのは
一生に一度あるかないかのような
でもキミが望むならばまた書いてもいいかもしれないなんて
そう思うこともあるけど
別にそんなこと言いたいわけじゃなくて
今の気持ちを正直に書いてみたいと思って
これを残すつもりだ
正直恥かしいし
俺字は下手だしバカだし
だいたい盗賊の筆なんてお宝の印でも書ければいいって
思っていたくらいで
気持ちなんて字にするなんてことは
バードなんかに任せておけばいいやって
ほっておいたから
なんだか変な文章になるとおもうけれども
まあ聞いてくれや

キミと会ったのはプロンテラ南の
草のじゅうたんのうえだったな
たよりないノビがぼーっとしていたことを
俺はいまでも時々思い出す
下手な字の看板を立てて
俺に話しかけたキミは今
幸せに冒険しているのだろうかって
ちょっとだけ気にかかったりもする
ほんとうにちょっとだけだけどな
皆が通り過ぎる中
俺に話しかけたキミは
運がよかったのか悪かったのかって
ちょっとだけ気にかかったりもする
ほんとうにちょっとだけだけどな

キミのことを思い出すときはいつも
俺のノビの時のことも思い出す
結構前の話になるんだが
ノビ太だったこっちがポリンを叩いていると
なんとなく人が近寄ってきて
ブレスをかけたり
黙って人参を落としたりしてくれたことがある
口下手のうえに妙なプライドが会った俺は
受けた親切にぎこちなく答えると
忙しい振りをしてそそくさとはなれていったもんだ
でも本当はとても嬉しかった
半人前とみられていようが
冒険できているってことだけで
楽しかったことを思い出す
転職してから慣れるまでも
考えて見れば数限りない親切を受けたものだと思う
もちろん、横殴りされたりアイテムを先に盗られたりという

「相手をこの場でたたきのめすことができればいい!」

って思ったことも多いけれども
それよりもちょっとした親切をたくさん受けてきたんだと思う
辻ヒールなんかも
昔は今からは想像できないくらい精神力の回復が大変で
やっている人には心底頭が下がる想いがしたもんだ
聖域をはるやつなんかは特に
めちゃめちゃ金持ちか聖者のような気がして
俺は悔しいような悪いような気がして
わざとそこから離れて人参を齧っていたこともあった
けれどそれでも聖域を唱え続ける奴の顔を見て
おずおずと踏みこんだときの
体に来た心地よい刺激は忘れようったって忘れられるもんじゃない
青石を置いてハエで逃げたが
あのときどう見られてたかと思うと
かなり恥かしい
俺はクールな盗賊でいたかったから
しばらくその地点にはいかないように
わざと遠回りして町を歩いていたこともあった
今考えればそんな奴のこといちいち覚えちゃいないんだよな
でもそのときは真剣だったんだぜ
かなり恥かしいな

それから時が流れて
ふとその町のその場所にいったとき
当然だがそのプリーストは居なかった
飲み屋で話しているときに
そのプリーストの噂を聞いたことがある

「・・・GHの奥深くで・・・死体もみつからなかった・・・」

俺はその夜自分の部屋で
グラスを二つ用意して
一杯を奴のためにテーブルに置き
一人で乾杯させてもらった
こういうことは珍しいことじゃあない
冒険ってのは危険なもんだ
頭じゃわかっていても心は正直なもので
俺はその夜ひとりで酔っ払い
奴の為にめちゃめちゃな祈りを捧げた
いい奴は先に死んでいく
こっちが生き残って
向こうが死んでいく
それがいいのか悪いのか
ロクに勉強したことのない頭じゃよくわからないが
それでも神ってやつを信じられるプリースト達を不思議だって思う
こっちの気持ちはわかって欲しい
いつかは俺も死ぬ
それがいつかなんて考えもしないが
それが来たときに平然としていられるように
なるべく人との交わりを少なくすることが
悪いことだとは思わないだろう?
そんなわけでこっちはソロ活動ばっかりしていた
気楽だしな
べつに寂しくなんかないぜ
やることは多い
そう思って毎日気楽に暮らしてた・・・

だけどキミと会ってから
こっちは急に死ぬことが怖くなってきた
冒険ってのは危険なもんだ
頭じゃわかっていても心は正直なもので
このあいだ臨時に参加したときも
レイドアチャの矢が俺に連続して当たって
瀕死のところまで追いつめられた
単に死ぬだけならまだいい
プリーストにはリサがあるし
イグ葉もあるから普通は生き返らせてくれる
けれどももしも
そのまま・・・死体のまま取り残されてしまって
誰も助けに来なかったら・・・と思うとゾッとする
今まではそんなことを考えたことはなかった
死ぬときは死ぬ
でも現在の俺は
死ぬときが来て欲しくない
どうしても
どうしてもだ

キミが幸せになるってことは
どんなことなのか偶に考えることもある
きっと立派な騎士とかプリーストとかが
そちらに参上して
白馬の王子様のごとく甘い台詞を喋り
キミを攫っていくのだろう
甘いマスクと豪奢な生活
それと愛情に満ち溢れた日常が待っているのだろう
キミが今のままでまっすぐ育つのならば
きっと不可能なことじゃあないと思う
今だってきっと宿屋にラブレターを届ける奴とか
なんとなく周りをうろつく奴とかは
一人や二人じゃないだろう?
まあそんなのにかまわないでも
理想の相手はいつか現れるだろうから
安心してくれ
俺が保障する
キミは素敵な女性だ

・・・

人間ってのは変われるものなのか
最近ぼーっと考えることもある
俺が立派な人間になるってことはまずないだろうが
それでももしかしてプリーストを相手にしても
大丈夫なような存在になれるかもしれないって
そんなことを思ったりもする
ケチな盗賊が
仲間が全滅しそうになったら真っ先に逃げ出すような
臆病でドジでスケベな悪党が
分不相応にも
そんなことを思ったりもする
もしそんな日がくるのなら
俺は

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「どあーーーーーーーー!!!女々しいぞこのーーーーーーー!!!」

プロンテラの北に位置する
泉のほとりで
なれないペンを使って手紙を書きながら
ローグはいきなり叫び声をあげます
周囲をうかがって誰も居ないことを確認すると
紙をまるめて空瓶につめ
ぎゅっと蓋をすると
石をひろってくくりつけ
水の中に投げ込みました

ぼちゃん!

・・・

彼はその泉のほとりで
じっと膝を抱えて
ずーっとずーっと座って
何かを考えていました・・・
14とあるスレの577sage :2003/11/18(火) 23:27 ID:pE03rFNU
|∀・)

失礼いたしました

|彡サッ
15名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/19(水) 02:35 ID:BrwT4Yac
>>13
多くは語らん。
GJ!
16名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/19(水) 03:01 ID:hVqkRk7k
>>13
なんかいよいよクライマックスが近づいてきたって感じだ。
このまま最後まで突っ走ってください。
1717sage :2003/11/23(日) 11:38 ID:lzZVYJMI
王国騎士団にて――。

上水道討伐隊指揮官は卓上に名簿録を広げながら困り果てた表情を浮かべていた。
それもその筈。普段ならば盗蟲やネズミ、蝙蝠程度の魔物しか存在しない首都上水道にとんでもない魔物が出没しているとの
情報を、つい先日得たのである。その魔物の正体とは……、アノリアン。上級冒険者でさえ倒すには手こずる難敵だ。
『グラストヘイム下水道と首都上水道が実は繋がっているのではないか』という噂が現実になってしまい、突如として指揮官は
何らかの対策を早急に講じらなければならない立場に置かれてしまった。

(……だが)

指揮官は内心で呟く。視線の先には、卓上に広げられた名簿録。
そこには、名声を勝ち得た者や更なる高みを目指す者達。そして志半ばにして倒れた者達の名が連綿と記されている。
既に一冊の名簿では足りず、数千人分の名を記したファイルは六冊までに達していた。

(自らの名を名簿に記したことを覚えている者が、どれほど居るだろうか)

単純に「首都上水道に出没した魔物を討て」という騎士団付の通達書を彼らに送りつけることは容易な作業だ。
しかし、それに従い賛意を示してくれる者がどれだけ居るだろうか。彼らの多くにとって、首都上水道は既に過去の場所として
認識されていることだろう。通達書自体には法的拘束力はない。根本的に彼らは民間から募った、義勇討伐隊員なのである。
唐突に送り付けられた通達を無視したところで罰せられることは無いのだ。

そ彼らにとって首都上水道は、既に普段の生活とは全く無縁な場所と化している。
更には、召集に応じてくれたからといって彼らに褒章を出すことも出来ない。
そこまでの予算行使権は、彼には与えられていない。今回のような突発的な事態は想定外のことでもある。

召集を呼びかけたところで全く人員が集まらない、という最悪の事態を想像して指揮官は重い溜息を零した。

しかし、それ以外に講じられる方法は無い。

魔物の襲来に備えている正規の王国騎士団を迂闊に動かすわけにもいかない。国王に打診をしたところで、最短で一週間の
時間が必要になる。頭の固い文官達はこぞって反論意見を捲くし立てるだろうことは火を見るより明らかだ。
何より、アノリアンの群生発見報告が成されてから四日間。既に死傷者の数は数十名にも及んでいる。これ以上、何もせずに
静観するのは限界でもあった。何よりも、傷付く者を平然と傍観するくらいならば、彼が指揮官として居る意味がない。

意を決した指揮官は、卓を軽く両手で叩いて席を立った。

--------------------

その二日後、
1817sage :2003/11/23(日) 11:54 ID:lzZVYJMI
稚拙ながら書き込ませて頂きました。お目汚しして申し訳ありません。

最後が「その二日後、」で途切れているのには理由があります。
考えられる事態は少なくとも数パターンあるでしょう。それぞれの方に脳内補完して頂ければ、これ幸い。
この後どうなるか全く分からない、というのもMMOの楽しみでもあるかと思った次第です。
(面倒だから書かなかったというわけではありませんよ? 本当ですよ?)

とりあえず、パターンとしては……

1.昔に世話になった狩場を取り戻そうと召集に応じてくれた勇士達が突貫、ワニや窓手などの群れと対峙
2.何も知らずに既に踏み込んでいた初心者冒険者達を逃がすために一部の勇士達が突貫して奮闘
3.召集に全く応じて貰えず、初心者冒険者達は脱出するためのサバイバル戦を繰り広げる
4.召集に全く応じて貰えず、初心者冒険者達は全滅、溢れ出てきた魔物の群れで広場が首都西がパニックに

……等々。他にも色々と考えられますね。
個人的には1であってほしい、という願いも篭めて書かせて頂きました。

――貴方なら、どういう選択肢を選びますか?
19名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/23(日) 14:29 ID:g7e40/qg
導入部も矛盾してませんし説得力ありますし、
どうせなら17氏に続けて書いて欲しいと思いました。

ちなみに自分としては3+2の方向が燃え。
20えべんはsage :2003/11/24(月) 03:12 ID:.4e6bfEw
>>17さん
断然二番!
18さんも書いてますが自分も続きが読みたいです。わくわく。
21えべんはsage :2003/11/24(月) 03:14 ID:.4e6bfEw
僭越ながら。
GvG時間中に仲間内で駄弁ってたことをモチーフにして、
一本書いてみました。酷評・感想等、いただけましたら幸いです。


 桃色の軟体生物が、突きこんだナイフの先で弾けた。真っ赤に熟したリンゴが転がり出て、そのリンゴをほつれの目立つ手袋が拾いあげる。
 ノービスはしゃりしゃりとリンゴ齧りながら木陰に座りこんだ。目の前を這っている虫や、跳ねている軟体生物を眺めながら息を整える。彼らはこちらから手を出さなければ、襲いかかっては来ないということをノービスは学習していた。
 ノービスは二匹倒すごとに休憩をとった。まだ力量不足で、軟体生物と三回も戦うと喘息のように息が切れてしまうのだ。初日で命を落とすような真似は、あまりにかっこわるいのでいやだった。
 夜明けごろ出発してから、勘を頼りに鬱蒼とした樹木のあいだをひたすら歩いた。時刻はわからなかったが、木立の隙間からときおり差しこむ眩しさから、どうやら日は昇っているらしい。
 疲れてはいる。足がだるく、肩に背負ったザックが重い。けれど、町を出てから楽しくて仕方がない。見るものすべてが派手に見えた。
 やっと呼吸が落ち着いてきて、彼は立ち上がり腕をぐるりとまわす。
「よっしゃー! 待ってろよー!」
 彼を待っているようなものは、この時点ではなにもないし、だれもいない。しかし、なんとなくそう叫ぶべきだとノービスは思った。無造作に刈られた赤い髪が、風になぶられてざわと揺れた。


 ノービスはまだ、街の外に広がる見慣れた森すら抜けてはいなかった。
「あー……」
 もう数えるのを止めた溜息が岩陰に響く。出発してから一週間が過ぎていた。
 ノービスはいいかげんに、地図が間違っているのではないかと疑いはじめていた。いまだに森から出られないのだ。俺もついてないぜまったく、とそのときは自嘲のように思ってみたりもしたが、本気で寂しく不安になったのでやめた。
「せめてこいつが止んでくれないと」
 赤い髪をばりばりと掻きながら呟く。暗く濁ったような雲から、幾筋も透明な糸が降り注いで大地を潤していた。三日間ノービスは立ち往生を強いられており、彼は参っていた。
 この地域特有の大雨で動くに動けなかった。水に濡れた衣服を、そのまま着ていれば体温がどんどんと奪われる。そしてその状態は著しく体力を消耗するのである。
 身体が丈夫でない、というかむしろ平均以下な彼にとって、このどしゃぶりの中をうろつくのは自殺行為に等しかった。近くに町があるならば無理をおして行くという選択肢もあったが、町はおろか森の出口もわからないのである。
 地図の読み方は飽きるほど練習した。磁石を無くしても大丈夫なように、星の動きや太陽の位置で方角を知る術も学んだ。しかし存在しているはずの河や砂漠は、その流れや砂粒ひとつ発見することができなかった。それどころか、故郷のそばに生えている、特徴的な竹という植物すら見かけなくなっていた。
「もっとうまくいくと思ったんだけどな」
 沈んだ気持ちになり、涙がこぼれそうになる。ノービスは頭をぴるぴると勢いよく振るうと、ザックから不透明な欠片を取り出して地面に放った。ポリンから回収することのできる物で、ゼロピーと呼ばれている。身体を動かしでもして気を紛らわせないと、どんどん悪い方向に考えがいってしまいそうだった。
 しばらく待つと、茂みから一体のポリンが跳ねてきた。地面と接触するたびに、間抜けな音が聞こえる。彼らの習性で、適当な物を放っておくと近寄ってくるのだ。ナイフで三回ほど突き刺すと、おびき寄せられたポリンが弾ける。ノービスはポリン程度ならば問題なく仕留めることができる程度に、この一週間で成長していた。
 転がりでたリンゴと餌のゼロピーを拾いあげて、ザックに仕舞いこむ。食糧はこうして何とか確保することができる。問題は水だ。
 ノービスは空から降る水を空き瓶に入れて、それを飲むようにしていた。その瓶もポリンから確保したものである。当面はそれで凌げるが、動けるように、つまり雨が止んでしまったらその方法は使えない。
 水を確保できるうちに、危険を冒してでもなんとか見通しのつく場所までたどり着かなければならない。雨が降りはじめた日に、ノービスが下した結論だった。
 地図は何度も見直した。あとは覚悟を決めるだけだったが、ノービスはしかねていた。地図が間違っているのではないかという疑念のためだ。もし自分が読み違えているだけなら、これから修正すればいいだけで、もし地図自体が間違っているのなら遭難が決定する。
 手持ちの水は、距離的に森をぎりぎり抜ける分しかない。遭難した場合、おそらく干上がってしまう。そのときも都合よく雨が降ってくれるとは思えなかった。
「だれかいないのかよー……」
 この三日間ずっとそれを期待していた。しかし見えるのはポリンと樹木だけ。
 客観的に見て絶望的な状況だった。この辺りは人の通り道ではないらしく、町を出てから自分以外の動く人間を見かけた覚えがない。
 ナイフを放り出して仰向けに倒れこむ。岩の上にはザックと着替えが敷いてあるから、強かにぶつけてのたうちまわるような心配はない。岩肌を眺めながら、町を飛び出したときのことを思い出す。

 冒険者になりたいと思ったのは、ごく個人的な理由からだった。
 世界の異変を突き止める、見知らぬ世界を知りたい、魔物を討伐して住民に安心を。そのたぐいの前向な、聞いたら応援したくなるような動機で、冒険者になりたいのではない。食いつなぐためだった。
22えべんはsage :2003/11/24(月) 03:15 ID:.4e6bfEw
 自分には特技と呼べるようなものはなにもなく、今はまだお情けで雇ってもらっているものの、いつそれが駄目になるかわかったものではない。飢え死にしないために強くならなければいけない。

 道具屋の小間使いをして貯めた金を使い果たして準備を整えた。食糧と水、それに武器が必要だった。武器屋のお姉さんに心配されながら、ナイフを買った。同じ建物に店を構えている防具屋のお姉さんも、目に光るものをためながら頭巾をくれた。「死にに行くわけじゃないんですから」と言うと、彼女たちは切なげな顔をして強く生きるのよ、と応援してくれた。

 樹木の葉にはねる水の乾いた音だけが聞こえる。過去を思い出していると、なんだかますます死が近づいてくるような気がした。
「……っと、そうだ」
 つい勢いのままナイフを放ってしまった。水に濡れたままでは錆び付いてしまう、拾わなければいけない。身体を起こしてナイフを探した。
 意外にもナイフはすぐに見つかった。向こうから近づいてきてくれたからだ。
「嘘だろ?」
 放った拍子に突き刺さったのだろうか。ウルフが片目から血を流しながら、威嚇の唸り声をあげてにじり寄ってくる。大きさはそれほどでもないが、ノービスの喉を食い破るには十分なくらいの牙は持っているようだった。
 ええと、こーゆーときは、そう。死んだふりだ、死んだふり。いや、それはビッグフットのときだっけ? ていうかどうして刺さってんだよ、俺コントロール良すぎ。
 想定外の出来事に彼は混乱した。普通、放ったナイフが偶然居たウルフの、しかも面積の小さい眼に刺さるものだろうか。ウルフは足を伸ばせば届きそうな位置まで距離を詰めると、品定めするように動きを止める。
「わかったわかった、俺が悪かった。だから、な? 話せばわかりあえるよきっと」
 彼は思わず腰を浮かせて後ずさる。
 それがきっかけとなり、ウルフが地を蹴った。鋭い牙の並ぶ顎を大きく広げて飛びかかかる。赤く、てらてらと光る口腔内が地獄の入り口のように見えた。
「痛……っ」
 咄嗟に顔をガードした右腕に鋭い痛みが走った。涙目に見えたのは、白くひょろっとした腕に食いついた禍々しい牙だった。そのままウルフは頭をゆすって食いちぎろうとする。眼に突き刺さっていたナイフが落ちる乾いた音。傷口が開き、芯まで響く激痛がノービスをうちのめす。
「くそっ、このっ、ちくしょうっ」
 左手で転がったナイフを掴み上げて、思いっきりウルフの鼻っ面に突きたてる。ウルフは甲高い悲鳴をあげて腕から離れた。肉と皮膚が裂けて肘から先が真っ赤に染まる。
 ウルフは涎をだらだらとこぼしながら、狂ったように吠えて襲いくる。
「うわっ」
 反応し切れない。無意識に再び差し出した右腕にウルフの牙が埋没する。先ほどの傷口に深く食いつかれて、激痛にノービスは骨が砕けたかと思った。
 傷口が抉られて目が眩む。ナイフを握り締めるが、腕の痛みに気をとられて彼は突きたてることができない。ただがくがくと痛みに身体を震わせる。
 ノービスはウルフの成すがままに喚くことしかできなかった。ウルフは何度も頭を振るい彼を苛む。
 嘘みたいな終わり方だな、と激痛の中でノービスは他人事のように思う。武器屋のお姉さんの悲しげな表情は、このことを予測していたためだったのだろうか。腕が痺れるようなるにつれて、だんだんと痛みがやわらぐように感じる。
 ウルフが離れて勝ち鬨の遠吠えを三度あげる。とどめは喉である。食い破られれば、それですべてが終わる。
 逃げようとしたが、痛みで麻痺したように筋肉が反応してくれなかった。脚は伸びたままぴくりとも動こうとはせず、腰からは力が抜けていった。激しい出血に、ノービスの意識はなにか白っぽい得体のしれないものに塗りつぶされていく。
 地獄のようだと感じた口が喉に近づく。まさか、本当に地獄の入り口になるとは思っていなかった。迫り来るようなざわめきが耳障りだった。ノービスは観念して目を閉じた。
 事は唐突に終わった。ウルフの悲鳴が横に流れて、ほどなくして断末魔があがった。
 うっすらとまぶたを開くと目の前に人影のようなものがあった。
「おい、しっかりしろ。生きているか、少年」


 不思議な感覚だった。静かで、温かく、柔らかい。
 相変わらず身体中が重く、右腕からは鈍痛がした。目をあける──あけたと思う。しかし、ノービスには暗闇しか見えなかった。あの世ってこんな風なのか、はっきりとしない頭でそう思った。
 全身が温かく、柔らかいものに包まれているのを感じる。顔面はふわふわとしたもので覆われているようだった。その感触は、いままで体験したことのないものだった。体中から力が抜けるほど、心地よかった。
 いつまでもそうしていたかったが、ノービスは息苦しさを覚えた。死んでも呼吸する必要があるのかと驚いた。試しに腕を動かしてみる。筋肉は反応したようだったが、不自然に動かなかった。まるで何かで拘束されているようだった。
「むー?」
 ほかに動かせる場所はないか、探ってみる。探るといっても大したことをするわけではなく、ようするにもがいてみただけである。
「んぅ……」
 自分のものとは思えない悩ましげな声が聞こえた。死ぬと声まで変わるのだろうか。いまいち状況が掴めなかった。吐いた息がこもって、顔の表面に熱が感じられる。断片的にしかウルフに襲われたときの記憶がなく、どこか重要な部分がぽっかりと抜け落ちているような気がした。
「あのぉ……、だれかいますか」
 先ほどの悩ましい声ではなく、聞きなれた自分自身の声だった。しばらくそのまま息苦しさに耐えていたが、反応は無かった。
 今度はさっきよりも力を入れてもがいてみた。腕が痛んだけれど、実際のところそれほど痛むわけではないようだった。
23えべんはsage :2003/11/24(月) 03:16 ID:.4e6bfEw
自分の腕はかなり損傷が酷かったような覚えがあったのに、どうしてなのだろう。
「よっ、と」
 肩を前後左右に揺すってみて、どうやら後頭部と背中で固定されているらしいことを知る。
「ぐ、ぐぐ……」
 首を痛めないように注意しながら、頭と肩を重点的にいろいろな方向へ動かす。
 唐突に光が射しこんだ。暗闇になれていた眼がしくしくと痛み、じわりと涙が出てくる。まぶたを薄く閉じて、光に目が慣れるのを待った。
「へ?」
 間抜けな声はノービスが出したものだった。驚くほど近くに人の顔があったことと、なによりその人はどう見ても女性らしいということが一番だった。
 彼女はまだ眠っているらしく、目を閉じて安らかな顔をしていた。その女性の胸に、彼は抱かれているらしかった。
「ちょっと、待っ……! いや、おいしいけどっ」
 状況を理解した彼が本音を漏らしつつ一人で慌てふためいていると、女性が目を覚ましてしまう。
「……うん?」
 目が合った。ノービスは人の目を見るということが苦手だったが、本能的に逸らしてはいけないと思った。彼女は自分の胸に顔を埋めているノービスがなんなのか、わからないようだった。
「ど、どーも」
 ノービスはなんとなく、愛想笑いを浮かべた。
「……」
 ぼやけた顔をした彼女が不意にはっきりした顔になる。唐突に彼の身体は重力に引っ張られて落下した。
「ぐっ」
 受身の技術など持ち合わせていないノービスは、強かに背中を打って情けない声をあげる。息が詰まって涙がにじむ。
「何者だ貴様」
 ベッドの上に仁王立ちして女性は凄んだ。「か弱いノービスです」とノービスは言ったつもりだったが、言葉はかすれて形を成さなかった。
 その代わりに、哀願するような視線を送って──ノービスは目をまじまじと見開いた。
 腰まで届きそうな漆黒の髪が印象的だった。だぶっとしたシャツ一枚を寝間着代わりにしているのか、パンツのたぐいは穿いていなかった。視線を下ろすと、すらりとした脚とその付け根の布地が目に入った。
「……白か」
 ノービスはなかば条件反射のようにつぶやいてから、自分の過ちを悟る。
「あ、嘘だから! なんも見てないから!」
「変態め」
 彼女は壁際に立てかけてあった剣を掴むと、振り向きざまにいきなり抜刀した。
「オーケイ、話せばわか──ぎゃあああっ」
 咄嗟に頭を抱えてしゃがんだのは僥倖だった。頭上の空気を切り裂いて、刀身が横薙ぎに通過する。洒落になっていない。
「待ってくれ、ときに落ち着けって。俺だってわからないんだよ!」
「問答無用」
 言い捨てて腰だめに彼女は剣を構える。こんなわけのわからない状況で死ぬのはいやすぎた。ドアの開く音がして、なにかの名前を呼ぶような声がすると、右下方から迫ってくる光が弾かれたように舞い散り、硬質な音が聞こえた。
「問答無用じゃないよ、まったく」
 薄い灰黄色のコートを羽織った若い男が、殺人未遂者の女性とノービスのあいだに立ちはだかる。自分の命を救ったのはどうやら彼らしいとノービスは思った。剣がいつの間にか彼女の手から放れて、床に転がっている。いったいどのようにしてそれを成したのか、ノービスには見えなかった。見上げるノービスの視界、黒い髪の中で赤い小さな花が揺れている。
「なぜ入ってきた」
「彼が斬殺されるのを黙って見てるわけにもいかないからね」
 ノービスの頭をやさしく撫でながら、彼は済まなそうに言った。
「大丈夫かな?」
「ええと、おかげさまで一応生きてるみたいです」
 彼は微笑んだ。
「彼女、寝ぼけてるみたいだから、あまり怒らないでやってね。僕からちゃんと言っておくから」
 寝ぼけててあれですか、とノービスは思い彼女を非難がましい目つきで見たが、すでに毛布に彼女は包まっていた。
「すみませんね、本当に」
 彼は慇懃に頭を下げた。頭のてっぺんに生えている赤い花も一緒にその頭を垂れた。

「すまない……。なんというか、その……。眠くなってしまって、つい、な」
 ばつの悪そうな顔を伏せて、ノービスの頭を斬り飛ばしかけた彼女は謝罪した。
24えべんはsage :2003/11/24(月) 03:16 ID:.4e6bfEw
「別にいいっすよ」
 ぶすっとした顔でノービスは答えた。どうやら彼女に命を救われたらしいのだが、そのあとに殺されかけたのだ。釈然としない感情がノービスの中で渦巻いていた。
 道に迷っていたところ、たまたまノービスの叫び声が聞こえたらしい。彼女は剣士で、彼女に殺されかけていたノービスを助けた彼は、マジシャンという職業に就いているそうだった。
「えーと……」
 ノービスがどうしたらいいのかと悩んでいると、料理が運ばれてきた。剣士とマジシャンの前には魚介類のサンドイッチが並び、ノービスの前にはサラダが置かれた。
「一息に食べちゃだめだよ」
 マジシャンがサンドイッチをノービスにすすめる。
「はあ」
「お茶は飲む?」
 マジシャンは微笑みを浮かべてノービスに訊ねる。ノービスは緑茶を頼み、剣士は黄茶を頼み、マジシャンは赤茶を頼んだ。
「で、詳しい話なんだけどね」
 マジシャンはサンドイッチをぱくつきながら、ことの顛末を話した。ノービスを剣士が背負ってアルベルタまで来たこと、右腕の傷はいまはいないアコライトが癒したこと、新しく部屋を取る余裕がなくてノービスと同じ部屋になったこと、眠くなってノービスを抱き枕にして剣士が眠ったことを話した。
「なるほど」
「わ、私とて、好きでだだだ……。抱いていたわけでは」
「あ、そうなの? てっきり飢えてたからかと僕は思ったんだけど」
 マジシャンがお茶をすすりながら茶化すと、剣士は彼を剣呑な目つきで睨みつけた。
「飢えてなどいない」
「どうだか」
 剣士はばつの悪そうな顔をしつつ、目だけは鋭くマジシャンを睨みつづけ、マジシャンはそれを平然と受け流しているようだった。この二人は、いったいどういった関係なのだろうか。ノービスはなぜか気になった。基本的に、あまり他人に興味のあるほうではないのだ。
 話の途中でもみんなかまわずに食べていたので、朝食はきれいに片付いていた。
「まだ痛むだろうけど、後遺症とかは残らないみたいだよ。良かったねぇ」
 剣士がそれに続ける。
「だが、まだあまり動かすなよ。完治したわけではないからな」
「はあ……」
 傷がなおったのはよかった。しかし、ノービスの心からは不安な気持ちが消えていなかった。それはせこい考えである。
「それはありがとうございました。……ところで俺は食事代とか、宿代とか持ってないんですけど」
「気にしないで、彼女が払うから」
 マジシャンが穏やかに微笑む。「すみません」と言いながら、ノービスは内心でガッツポーズをとった。
「……私だけなのか」
 剣士がマジシャンを恨みがましい目つきで見た。マジシャンは微笑を崩さずに言った。
「寝起きの一件、忘れてないよね?」
25えべんはsage :2003/11/24(月) 03:19 ID:.4e6bfEw
以上にて終了です。
「燃え」と「萌え」を両立させようと試みたのですが、
うまくいったのかいまいち自信がありません。
重ねまして、なにかご意見のほどをお願いしたく思います。
26名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/24(月) 14:29 ID:IztG2/tw
>>21-24
(゚д゚;≡;゚д゚)
え、続きはないんですか? 生殺しですか?
続きじゃなくてもよいですので、新作プリーズ(;´Д`人

というか、前スレの一番最後に投下されてた方ですよね?
あなた様の文体、かなり好みです。(=゚ω゚)コテイファンニナッテモヨイデスカ?
27続き;y=-( ゚д゚)・∵:.sage :2003/11/24(月) 15:33 ID:UeNC.J1o
 宿屋を出た三人はぶらぶらと人気のない街路を歩いた。
 ノービスはふたりの後に従いながら、不審げに周囲を窺う。朝方だから少ないのかと思ったが、それにしても人気がなさすぎた。なんというか、生活感がない。これではゴーストタウンだ。マジシャンと剣士は気にならないようで、しっかりとした足取りで歩きつづける。マジシャンの頭の上で赤い花が揺れ、剣士の首もとで大きな眼鏡がぷらぷらと揺れる。
 一本の長い通りを北上すると、突き当たりのあたりにようやく数人の人影が見えた。ふたりはベンチに腰かけ、花のようなヘアバンドをした女性にマジシャンが近づき、何事が話しはじめた。深く腰かけたノービスが所在なげに足をぷらぷらと遊ばせる。
「ところで」
 剣士が茫洋とした目で空を見上げながら、ノービスに声をかけた。
「あ、はい?」
「君はどのような職につきたいのかな?」
「えーっと……」
 居心地が悪そうに、ノービスは頭巾の位置を直した。
「特にないんです」
「ふむ。それなのに冒険者になりたい、と?」
 ノービスはためらいがちに頷いて、しかしはっきりと話しはじめた。
「俺、特に手先が器用ってわけじゃないし、運動神経だってよくないし、身体だってそんなに強くありません。それにほら、ウルフに襲われてたでしょう? あれだって俺のドジなんです。頭だって別によくないし、いいところなんかなにもないんです。他のことでもそうです。例えば、人と交渉したりするのも、神様を信じたりするのも、どっちもだめなんです」
 剣士は「失敬」と言いながら失笑した。ノービスはその反応は予想していたが、少なからず憮然としてそっぽを向いた。
「すまんすまん」
「いいっすよ、別に」
 そうだ、もういいのだ。ノービスは沈んだ気持ちで考える。根拠もない自信は、ジャングルの雨にきれいさっぱり流されてしまった。とてもじゃないが、これからうまくやっていけるとは思えない。おとなしく故郷に帰って、また変化の乏しい安穏とした生活を続けよう。故郷を出たときの、身体の底から静かに震えがくるようなあの感覚も、ひどく遠い昔の記憶のようだった。
 やがて、ようやく笑いの発作が収まった剣士は顔を引き締め、ノービスの目を正視して質問をつづけた。
「それなら、どうして冒険者になりたかったのだ?」
 ぐっ、とノービスは言葉に詰まらせる。食いつなぐためだなんて、言ってはいけないような気がした。先を急かしたりはせず、そんなノービスを眩しそうに剣士は眺めていた。穏やかな午前の陽光が、そのベンチの一角を切り取るように照らしだす。猫のような鳴き声の鳥が数羽はばたいて飛んでいく。
「つ、つよく……」
 ノービスは絞り出すようにしてつぶやいた。
「ん?」
「俺、強くなりたくて、それで、冒険者に、なりたいと思った」
「そうか」
 なんでだろう。ノービスは泣き出してしまいたいのを堪えていた。なんでだろう。頭に乗せられた剣士の手が大きくてあたたかい。
「話は終わったかい」
 気を使っていたのだろうか。マジシャンがのほほんとふたりに近づく。剣士はマジシャンに頷きかけて、にやりと笑いながら言った。
「予定変更だ」
「またですか」
 辟易したようにぼやくマジシャン。
「少年、首都まで行くぞ」
「え?」
「君はまだ冒険者にすらなっていない。道すがら私が鍛えてやる、いいな?」
「え、でも、俺なにも」
 困惑するノービスに、マジシャンが荷物を手渡す。
「はい。これは君のだからそのつもりで」
「なんだ、おまえもそのつもりだったんじゃないか」
「まあね。だいたい予想つくようになってきたし」
 剣士が立ち上がり、ノービスに手を差し伸べる。
「ほら、行くぞ」
「え、でも」
 すでに歩きはじめたマジシャンが振り返って、ノービスに声をかける。
「大丈夫、襲われそうになったら僕が助けるから」
「まだひきずるかおまえは」
 駆け出す剣士、逃げ出すマジシャン。先を行くふたりをノービスはぽかんと眺め、その目がだんだんと輝きだす。
「待ってください!」
 ベンチを飛び降り、鼻をすすったノービスは力強くはじめの一歩を踏み出した。
28えべんはsage :2003/11/24(月) 15:39 ID:UeNC.J1o
間違えて上書きしてしまった分の修正が終わりました。
ベタベタなおちですがお見逃しくださると幸いに候。

元々がピンチに次ぐピンチ、というお題で森のシーンを書いたもので、
ベッドシーン以降はあまりストーリーらしいストーリーはありません。
かように適当な奴のため、はやまるのは思いとどまったほうがいいと思われます>>26さん
でもすみません、嬉しい(つД`)
29名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/24(月) 17:55 ID:mmX1/tkM
>>28
いやぁ、いいっすよ。充分キャラが立ってるし、この後の展開が楽しみで(ぉぃ

冗談さておき、この三人なら何気ない旅でも楽しい旅になりそうじゃないですか。
30名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/25(火) 01:38 ID:AVGuM9Bw
「32・・・33・・・」

夜気に包まれた宿の一室。今日もいつもの儀式を行う。
灯りの油がはぜる音と、腕立てに軋む床の音、あとは私自身の呼吸音。
それだけしか聞こえない静かな世界がここにある。

「47・・・48・・・」

筋肉はついたけど、それでも女らしい曲線を残す体に珠のような汗が浮かぶ。
アサシンになった今でもこの儀式を欠かしたことはない。

「66・・・67・・・」

力を。
あの人と一緒に戦える力を。
それだけが私の望み。


最初に彼と会ったのはシーフだった頃の臨公だった。
アコライト二人にマジシャン一人でどうするのかと聞いたときに彼は言った。

「あ、ボク前衛ですから」

一緒に戦ってみてもう一度驚いた。
シーフの私よりも軽やかに斬撃を避け、的確に敵を屠る。
危機のときには、剣士しか使えないはずの剣技さえ使って
醜悪な死体どもを炎の中に沈めたりもした。

どれもこれもが私には持ち得ない強さで、
それをずっと憧れの目で見ていたのだと思う。

それから私と彼は度々冒険を共にした。
いつも一緒というわけではなくて、でもお互いに淋しがり屋だったのか
2、3日に一回は必ず一緒に旅に出ていた。

彼は奇跡を以って私を癒し、強さをもって敵を倒す。
私はナイフや、ときには毒を使って彼の手助けをする。

十分に経験を積み、私はアサシンに、彼はプリーストに転職しても
私たちの関係は変わらず、お互いに旅に誘ったり誘われたりしていた。

私はそんな彼のことが好きだったし、彼も私のことを好いていてくれたと思う。

きっかけは些細なことだった。
彼は体調を崩し、私はその間にいくばくかのレベルアップと新しい武器を手に入れた。
彼はそれを自分のことのように喜び、祝福してくれた。

でも暫く振りのコンビ狩りを終えたとき、彼の顔に喜びはなかった。
困惑と少しの驚愕。そして――僅かな羨望と嫉妬。
私の振るう刃が怪物を真っ二つに切り裂き、次々に灰へと帰していく。
私の強さは、彼が考えていたレベルを遥かに超えてしまっていたのだ。

私は気付いた。気付かされてしまった。
彼が望んでいたのは「私を護ること」だったのだと。


「91・・・92・・・」

あの時の彼の顔は今も私の脳裏に焼きついている。

「95・・・96・・・」

私と彼が共に旅をすることは二度とないだろう。
だって、どんな顔をして彼ともう一度会えばいいのか、私には分からない。

「107・・・108・・・」

それでも私はこの儀式をやめない。

「109・・・110・・・」

彼と一緒の道を歩むためだった儀式を。

「111・・・」

ふっとトレーニングを止め、起き上がる。
汗は床に滴り落ちるほどになっていた。

カタン――。

窓開けると夜風が火照った体を冷ましてくれて、とても気持ちがいい。
外に灯りはなく、まるで星空に吸い込まれそうだ。

「馬鹿、だよね。ホント」

明日の朝、彼が起きる前にここを出ていこう。
誰にも知られることなく。何にも気付かせることなくひっそりと。

きっと彼は私を引き止めるだろうから。
私は、そんな彼の優しさを振り切れないだろうから。

「聖職者か、せめて魔術師になれば良かったのかな?」

彼が護ってくれるような私に。私はなれば良かったのかな?

小さな呟きは、誰にも、知られることなく――。

END

うがーー!文章修練10がほしー!
自分世界すぎて他人に読んでもらえる文章じゃないよ
ごめんよ・・・お目汚しだ・・・まじで。
31名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/25(火) 04:30 ID:LtO5p9Jk
>>30
色々考えさせられるところがあって、面白いと素直に感じました。
自分と重ねてしまうというか。良い作品だと思います。

謙遜しすぎは嫌味だよー(*´∀`)σ)Д`)
3217sage :2003/11/25(火) 06:50 ID:ORjVZwkc
>>19,20
稚拙な文章にコメントを頂き、ありがとうございます。

続きは出来るだけ書き控えておこうと思ってましたが、パターン2と3を織り交ぜた形で書き込もうかと考えています。
イメージは既に浮かんでいますが、かなりの遅筆なので時間はかかるかと思います。あまり期待せずにお待ち下さい。
3330sage :2003/11/25(火) 08:18 ID:AVGuM9Bw
>>31
えー、オイラごときを褒めるなよー。
SSノービス初投稿ROMサック野郎なんだからー(*´∀`*)
よーしパパ調子にのって補足書いちゃうぞー。

「彼」はぶるじょわーじなAGI先行殴りプリさん。木琴とかマグナムクリとか
色々持ってます。羨ましいですね。
「私」はびんぼーな2刀アサ子たん。やっとSTRが70にのって特化武器も
手に入れたところです。将来が楽しみですね。

「私」が更なる強さを目指してるのは、「私」がわざと弱くなるように
していたとき、「彼」がその原因(=「彼」の嫉妬)に気付いて更に
傷ついてしまうことのないようにです。
書ききれてませんが。

このレベルの殴りプリってきっついです。
特にAGI先行で装備無しだと・・・( つД`)
34名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/25(火) 09:23 ID:qQLHgWa6
>>30さん、気持ちの伝わってくるようなSSでしたー
感情移入できましたよ。どっちかというとプリのほうの気持ちがわかる。
守りたい相手が居て、でも自分にはその力がなくて・・・オワリの無い葛藤ってやつですね
続きをぜひ><ノ
ちなみに、殴りプリは80台から覚醒するそうです。頑張れ
35名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/27(木) 05:49 ID:2J.ShO8E
 私には、幼馴染みがいる。同じ剣士としての道を歩んでる、男の子。
 私の方は、その、少しばかり気になったりするのだけれど、困った事に向こうはどうもはっきりしない。
 おまけにどこがいいのだか女の子達に人気があって、ますます私としては面白くない。
 とまあそんなこんなだから、一世一代の勇気を出して誘ってしまいました。ルティエに。

 ルティエと言えば雪の町。クリスマスの町。そして何より恋人達の町。
 雰囲気ばっちりのここに来れば、どんな野暮天だってちょっとは心が動くはず。
 ・・・と思ったのが浅はかでした。

「やっぱり寒いわね」
 さくさく雪を踏む背中に話しかけると、
「当たり前だろ、雪降ってんだから」
 振り返る素振りもありません。
「ほ、ほら、なんか手が冷たかったりしない?」
「きちんと防寒して来いよ。いざって時に武器を落としたらどうするつもりだ?」
 あのね、私がして欲しいのはね、そういう心配じゃあなくて・・・。
 じゃあ手を繋ごうか、とか、さ・・・。
「でもまあ、綺麗なトコだよな」
 やっと振り向いて、笑顔を見せる。
「そ、そうよねっ!」
「・・・今度、また来ような」
 ちょっと頬が赤くなったのが、自分で判る。えと、続く台詞を期待してもいいですか?
「――皆で」
 ぐしゃ。ものの見事な肩透かしで、私は顔から雪に突っ込んだ。
「何やってんだよ」
 あきれた声を出す剣士。
「なんでもないわよっ!!」
 顔についた雪片と一緒に、滲んだ涙を拭う。
 馬鹿みたいだ、私。なんかひとりで期待して、ひとりで舞い上がって。
 判ってたんだ。全然こいつが、私をそんなふうに見てくれてないって。
 なんだか悔しくて悲しくて頭のなかがぐるぐるとして立ち上がらずにいたら、
「・・・ったく、しょうがねぇな」
 ぶつぶつ言いながら、彼が近付いてくる気配。
「ほら、とっとと立てよ」
 差し出される手。意味がとれなくて、私はきょとんと彼を見返す。
「ほら」
「わぁっ!?」
 ぐいっと手を掴まれて、無理やりに立たされた。
 そのまま彼は私を引いていく。手を離す気配はない。
 確かめるようにぎゅっと握ると、そっと握り返してくれた。
「・・・」
「・・・」
 雪は、さっきよりも優しく降るようだった。
36名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/27(木) 14:45 ID:/Eh/UVSY
>>35
OK簡潔にいくぜ。GJ
出来れば続きキボン(*゜ー゜*)
37名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/27(木) 15:00 ID:dBbuWgs2
>>27-28
ホントに続きを出してもらっちゃった(*´¬`)
やっぱGoodです。( ´Д`)モウファンニナッチャッタモンネ
あなた様の文章読んでいると、私も書きたい衝動ががが……

>>30
切ない……;;
登場人物ふたりのお互いの葛藤がなんとも……

>>35
GJ(*´д`)
こういう何気ない恋物語というものが、大好物だったりします
36氏には悪いけど、これはこれで終わった方が好きかも……
38名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/30(日) 00:09 ID:pnhyWxjo
>>35
ほんわか(・∀・)イイ!!
21みたいな長いのもいいけど一人称使ったこういう短いのもいいね。
剣士きゅんも何気に握り返すあたりが(*ノノ)
39名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/30(日) 13:57 ID:Ey2qi3gA
|ω・`)つttp://www.asahi-net.or.jp/~xk2y-hrym/sage.htm
40えべんはsage :2003/11/30(日) 14:24 ID:Qrg3tr1o
ぜ ひ 2 番 で 。
(・∀・)アァン
41名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/30(日) 14:25 ID:Qrg3tr1o
( ゚д゚)!

;y=-( ゚д゚)・∵:.
42素敵な……35さんに感化されますたsage :2003/12/01(月) 01:39 ID:qPk/qVZw
 わたしには恋人がいない。
 恋人というのはつまり、街中でいっしょに腕を組みながら歩いたり、別れ際にお互いを抱きしめあったり、そういう男女のことだ。
腕にしがみつくわたしを、優しく笑いかけながら撫でてくれる人がいない。
とても悲しい気持ちになったときに、わたしを強く抱きしめてくれる人がいない。
待ち合わせをしているときに遅れてやって来て、わたしにごめんねとすまなそうに謝ってくれる人がいない。
「さて、行こうか」
「遅い! 何時間待たせたと思ってるの!」
「二時間」
 待ちぼうけ寸前だったわたしの神経を、逆撫でてくれる人はいる。
「わかってるならなんとか言いなさいよ、ばかっ!」
「悪い」
「本当にそう思ってないでしょ!」
 しかも、こいつといったらえんじ色の髪をわしわしと掻きながら、めんどうくさそうに言うのだ。
「なんだようるさいな。今、謝ったじゃないですか。土下座でもしろと?」
 怒鳴る気力がどこかに言ってしまったので、わたしはため息を抗議がわりにした。
「土下座っていうかもっとこう、誠意っていうかさあ……。例えば、遅れた理由を言うとか」
「……それは、言えないな」
 別に、わたしだってこいつに多くを望んではいない。こいつにだっていいところはそれなりにあるし、すごく優しいことだって、たまにある。
 それでもこの対応はないと思う、なんでこんなに冷たいのか。それというのも、わたしのことが嫌いだからに違いない。
わたしは知っているのだ。こいつがわたし以外の人間と親しげに話していたことを。
 わたしには、恋人がいない。

 それなりに人がいて、それなりに賑やかな山岳都市フェイヨンは、こいつの故郷らしい。わたしもこの町の雰囲気がわりと気に入っている。
視界いっぱいの緑から鳥の囀りが聞こえ、建物も枯れた感じで自然に調和している。水もおいしい。
それに狩場のレベル的にもぴったりなので、しばらくのあいだここを拠点にしているのだ。
 王都に比べれば露店も少なく品揃えも豊富とは言えないけれど、そのせいかみんなどこかのんびりとしていて、
露店商と冒険者が談笑する様子は王都では滅多に見れない光景だった。
露店商に食ってかかる冒険者とか、怒鳴りまくる露店商は王都に行けばたくさん見られるけれど。
 東に広がる森林地帯へ行くために、街中を二人で歩く。もちろん腕なんか組まずに、わたしはあとからのろのろと着いていく。
カートを牽いているせいで、足並みが揃わない。揃えてくれてもいいと思うのだけれど、こいつはひとりで行ってしまう。
大きな槍を背中に担いで、防具だってかなり重装備のはず。使っているところを見たことはないけれど、大きな剣だって予備に持っているのに。
「あ、そうだ」
 急に足を止めたおかげで、わたしはこいつに追いつくことができた。
「どうかしたの?」
「ちょっと待ってれ、すぐ戻りますから」
 こいつの「すぐ」は信用できなかった。今日だって「すぐ行くから先に行ってて」と言っておいて平気で二時間待たすし、
三十分くらい待たされることは茶飯事だった。しかもこの朴念仁、性質の悪いことにそれをあまり悪いと思っていないところがある。
どうしてわたしがこんな奴とパーティを組んでいるのかと思うと、神さまの理不尽さを呪わずにはいられない。
「わたしも行く」
「なんだよ、大した用事じゃないんだって」
「やだ。そう言って待たせるじゃない」
 なんとも苦々しい顔で見つめられて、わたしは悲しくなった。そこまで露骨に嫌がらなくたっていいだろう。そう思った。
「……なーんて、ね。さっさと済ませてきなさいよ。待っててあげるから」
「悪いな」
 そう言い残して、街の中心へ向かっていった。
「あーあ……」
 ひどく白けた気分だった。カートを背にして、ずるずるとへたりこむように座ると、道行く冒険者がわたしを笑っているような気がした。
赤い髪のハンターと黒い髪のプリーストが笑いあいながら、わたしの前を通り過ぎる。脚でも引っかけてやろうかと思って、顔をあげて、驚いた。
「ひっさしぶりー」
「あれ?」
 ハンターがにっこりとわたしに笑いかけていたのだ。ハンターの後ろ、離れた位置でプリーストが暇そうにしていた。
 前に見たときは、まだ彼女はアーチャーだった。
「一ヶ月ぶりくらいでしたっけ? 元気でやってます?」
「うーん……、まあぼちぼち、かな」
 彼女とプリーストはこれからハンターギルドへ行くらしかった。ようやくファルコンを扱えるようになったのだと、彼女は嬉しそうに言った。
わたしは祝福の言葉をかけながら、申し訳ないとは思いつつ別のことを考えていた。
「いいなー、優しそうな恋人がいて」
「そ、そんなことないですよ! パーティ組んでもらってるだけですっ」
 両手を忙しげに顔の前で振って、慌てながら否定する彼女の態度が言っていることは明白だった。
妙に微笑ましい思いで彼女を見ているうちに、だんだん惨めになってきた。
「いいなあ……」
 わたしのつぶやきに、彼女は訝しげな顔をする。
「なんか深刻そうですね」
「そういうわけでもないんだけどね」
 彼女は少し考える素振りをして、なにかを思いついたようなにんまりとした笑みを見せる。
「恋の思いをよせる相手が恋人なんですよ。だから、片思いでもいいんです」
「……へ?」
「がんばってくださいね。それじゃ、あまり待たせるのも悪いので。またウィスでもしてください」
 ぽかんとしてるわたしを置いて、彼女は手を振りながら行ってしまった。

「おーい」
 ぼろい革手袋が顔の前ではためいて、やっとわたしは我に帰ったらしい。
「あ、ご、ごめん」
「しっかりしてほしいな、せっかく用意してきたんだから」
 ほれ、とぼろ布をわたしによこす。
「どうしたの、これ?」
 ぼろ布を解きながら訊ねる。
「俺からの無期限レンタル品」
 新品のチェインだった。
「攻撃力不足だろうから、それで補えってさ」
 こいつといったら、まるで他人に言われたことのように言うのだ。
 銘の刻まれた、属性武器だった。エンベルタコンが八つ叩き込まれており、鎖の表面は透き通るような青いモザイク模様を宿している。
「もしかして、今日遅れたのってこれのせい? 今行ってたところも精錬所?」
「さて、行こうか」
 ぷいと顔を背けて、こいつといったらわたしを置いて歩き出してしまうのだ。
足並みが揃わないではないか。揃えてくれてもいいと思うのだけれど。
 あいつはしばらく行ってから、早く来いよと憮然と言った。自然に顔がにやけてしまう。
「……へへ」

 わたしには、恋人がいます。
43えべんはsage :2003/12/01(月) 01:42 ID:qPk/qVZw
35さんごめんなさい_| ̄Z○
;y=-( ゚д゚)・∵:.
44連投ごめんなさい。砂の灼ける匂いの中でsage :2003/12/01(月) 02:00 ID:qPk/qVZw
 熱せられた砂が陽炎を生み、陽炎が幻影を映し出す。
 モロク近郊の砂漠はルーンミッドガルヅ王国有数の難所として知られていた。
隊商は冒険者を傭兵として雇い、冒険者もここを通過するときは徒党を組む。そんな茹だるような空気の中、凛とした声が響いた。
「何度言えばわかる、もっと丁重に扱え」
 声の主は、漆黒の黒髪をゴーグルで結うようにまとめた、長身の女剣士だった。
彼女は無造作に置かれた剣を拾い上げると、椰子の木陰でへたり込んでいる人影の目の前に手渡し、自分の大剣を抱くようにして日陰に座った。
「剣は剣士の誇り、ってね。耳タコだぁね」
 どこか拗ねたような感触の声色で応じるのは、少年と青年の中間といった半端な面影の剣士だった。
剣士は細く長い葉が幾重にも折り重なった樹の幹にもたれかかり、ところどころを黒っぽく汗に染めさせた頭巾をはためかせ、
生暖かい風を自分へと送り込む。乾きかけの血ようなくすんだ色の髪の毛先を、汗が伝わり落ちて砂の色を濃く染めあげている。
しかしそれは十秒と保たずに元の色に戻った。日陰とはいえ、砂地はかなりの熱さだった。
「わかっているなら行動で示せ。剣を捨て置くとは何事か」
 女剣士は赤毛を軽くこづくと、ザックからミルクを二本取り出して、一本を彼に渡す。
「おお、さすがシツキ先生」
 剣士は歓声をあげてミルクを受け取り、ふたを開ける。
「弱きを守るのも剣士たる者の務めだ。へばってる誰かさんを放っておくことは、残念ながらできないのだよ」
 女剣士はそう言って髪を結っていたゴーグルを外し、大きく息を吐いた。
漆黒の髪が額に張り付いて乱れ、その様を見ていた剣士は女剣士に視線を向けられると慌てて目をそらし、憮然として言った。
「ちょっと休んでただけだよ。守ってもらわなくたって平気さ」
 ミルクを一気に飲み干して剣を拾う。喉を通る冷たい感触が心地いい。
「今に見てなって、俺がシツキを守ってやるからさ」
 そう言い捨て、剣士は立ち上がる。陽炎の漂うなか「ちゃんと見てろよ」と再び言い残し、剣士は駆け出していった。
さっきまでへばっていたのが嘘のような身のこなしだ。呆気にとられていた女剣士は、しかし眩しそうな目をしながら彼の後を追う。
何がおかしいのか、彼女は含み笑いを漏らし、楽しげに呟いた。
「期待、しておこう」
45名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/01(月) 02:38 ID:lS09KaKw
>>42-44
(*´д`)<タクサンヨメテウレシー
46名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/01(月) 12:43 ID:lRcFHXsE
>42
どうしよう(*´Д`)限りなく萌え〜〜〜!
4735sage :2003/12/02(火) 06:17 ID:im1Z50t6
>>36-38
遅レスだけれど、感想ありがとう。
やはり書き上げたものに反応があると、とても嬉しい。
そして>>36さんには悪いのだけれど、>>35の話はあれで終りです。すまない。

>>43
詫びる理由も逝く理由も何ひとつあるものかっ。
自分の書いたものに反応してくださったなら嬉しい限り。
そしてこのスレが伸びるのも同様です。
というか氏の書かれている作品群は好みなので、今後とも頑張ってくださいませ。
48名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/02(火) 06:18 ID:im1Z50t6
 夜半。かすかな軋みで、投宿の部屋のドアが開いた。
 職業柄、俺の眠りはひどく浅い。その音だけで、意識は鮮明に覚醒する。
 が、刹那緊張を孕んだ体は、直ぐに平静を取り戻した。
 物盗りの類ならばまず施錠を確認する。だがこの侵入者は、ただの一度も鍵を探っていない。
 となればそれは在室の折には鍵を掛けないという俺の性癖をよく知る人間で、そんな奴はこの宿に、ただの一人しかいない。
「起きている?」
 小さく、か細いソプラノ。
「ああ。どうした?」
 問いの体裁ではあったが、俺が目覚めていると予想していたのだろう。続く応えは早かった。
「眠れないの」
「喜んでいただろう? 久方ぶりに真っ当な宿だと」
 野宿でも安宿でもなく、安心して手足を伸ばして眠れると、そう彼女がはしゃいでいたのは今日の夕刻の事だ。
「・・・でも、眠れないのだもの」
 夜目の利く俺でも、さすがに月光も差さない暗がりは見通せない。けれど彼女がどんな顔をしているか、凡その察しはついた。
 いつものように口を小さく尖らせて、細い体を不満で膨らませているのだ。
「貴方と違って私は繊細なのだから。枕が変わると眠れないのよ」
 ぱたんとドアが閉まり、彼女がベッドの脇までやって来る。カーテン越しの月光で、予想通りの表情が確認できた。
 沈着と冷静が売り物のウィザードでありながら、こいつの感情はとても豊かで――俺はきっと、そんなところに惚れている。
「全く・・・」
 言いながら俺は体を横半身にして、狭いシングルベッドに隙間を作る。
「二部屋とった意味がないだろう?」
 俺の言いにすねたように鼻をならし、けれど当然の仕草で彼女はそのスペースに潜り込む。
 そしてほんの数十秒で、すやすやと穏やかな寝息を立て始めた
 ――いつものように、俺の腕を枕にして。
49名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/02(火) 16:41 ID:UycgUUrA
>48
どうしようどうしよう、やったらめったら萌えなんですが(*´Д`)
お互い、何もかも通じ合っちゃってるふたりが……
日常のワンシーンをクリティカルに切り取ったあなた様の作風は
私的にはもう神です。35氏は神!

21氏(えべんは氏)といい、35氏といい
なぜにこんなにも、私のツボをきゅんきゅん突く文神様が……
(*´∀`)<シアワセダー
50名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/03(水) 12:19 ID:nwUaBa2Q
>>48
蝶・サイコー!!
掌編的な短さでサクッと小気味よく描写しきれてしまうあたり、
(*゚∀゚)<ネ申
51ハリケーン少女の日記sage :2003/12/04(木) 21:55 ID:PP.Y8fYM
初めまして
某板の某スレより誘導されてきました者です
皆さん素晴らしい文才をお持ちで羨ましい限りです

ところで質問ですが、こちらのスレはSSを直接書き込む形が良いのでしょうか?
元のスレでSSを書いていたのですが、修正版を一気に載せたいのであぷろだにUPしたいのですが、
問題無いでしょうか?

よろしくお願いします
52名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/04(木) 22:43 ID:3hwMls.Y
初めて投稿します。
ヘタレな上にノー萌えですが呼んでくれると嬉しいです。


湖は穏やかだった。
湖面は鏡のようになめらかで、月明かりが美しく湖面に映りこんでいる。
俺はその美しさに魅了され、危うくここに来た目的を忘れそうになった。
「っと、いけない……任務に戻るか……」
俺は湖から目を離し、再び歩き始めた。


首都プロンテラから少し離れた場所にあるこの湖は、昔から観光名所として多くの人が訪れていた。
しかし、1ヶ月ほど前にこの湖で死体が見つかったのが事件の始まりだった。
その後も湖周辺で命を落とす者が続出した。
凶悪なモンスターもいないはずのこの湖でなぜこれほどまでに死者が出るのか?
その原因を調べるため、調査隊が数回ここに派遣されたが、その調査隊も帰ってこなかった。
そこで、騎士団の一員である俺が調査隊の安否の確認、及び原因の調査としてここに派遣されることになった……


「はぁ……疲れた……」
昼からずっと歩きっぱなしだったのでかなり疲れがたまっていた。
捜索は明朝からまた始めよう……そう思い、俺は野営の準備を始めた。
火をおこし、持ってきた干し肉と野菜、そして水を鍋に入れ、簡単なスープを作る。
しばらくすると美味しそうな匂いがしてきた。
「よーし、それじゃあいただきま……」
そういって俺が身を屈めた瞬間、さっきまで俺の頭があった場所めがけ、何かが飛んで来た。
「っ!?」
慌てて愛刀――村正――を抜き放ち、辺りを見渡すが、人影はない。
が、再び俺に向かって何かが飛んでくる。
「くうっ!」
とっさに身をひねらせ、なんとか回避する。
標的に当たらなかったその物体は俺の背後にあった木に突き刺さり、止まった。
(くそっ……弓矢かよ……)
直感的に俺はそう判断した。
しかも非常に正確に撃ち込まれてくる。恐らく今俺を狙っている奴は相当腕の立つ奴なんだろう。
「上等だぜ……」
俺はアルコールの瓶を取り出し、ビンの口にボロ布を詰め、それに火をつけた。
そしてそれを何かが飛んできた方向に思い切り投げつけた。
ビンが割れ、アルコールに火がつき、草木が燃え上がる。
その火にあぶり出されたのか、1つの影が俺の前に躍り出た。
そこにいたのは……ノービスの女の子だった。
年は10歳前後だろうか? その小さい手にはソードが握られていた。
あまりにも予想とはかけ離れた人物だったので少し驚いてしまった。
が、その隙に彼女は体勢を立て直し、俺に向かって持っていたソードを投げつけた。
「ぬあっ!?」
なんとか刀でソードを弾き落とす。
追いつかなかった頭がようやく考えをまとめた。
―つまり、彼女が捜索隊やここに来た人々を殺していた―
自分で考えておきながら、なかなか信じられない。
だがその間にも彼女は的確な攻撃で俺に迫る。
(腹をくくるしかないか……)
俺は持っていた刀を鞘に収め、彼女に向かって手招きをした。
「来いよ、お嬢ちゃん……」


……続く……かもしれないです
53とあるスレの577sage :2003/12/04(木) 23:16 ID:arGw4Ycw
|∀・)

>>17
の続き導入部書いてしまいました
皆も続いてくれると嬉しいなあ
やりませんか?
とりあえず投稿

|彡サッ
54とあるスレの577sage :2003/12/04(木) 23:16 ID:arGw4Ycw
そうその二日後
上水道討伐隊指揮官は卓上に名簿録を広げながら困り果てた表情を浮かべていた
彼はこの救出劇の為に持てるコネ全てをつかって
冒険者を集めたはずだった
はずたっだのに
目の前に居るのは・・・

「ねみーな、何で俺がこんなこと・・・弓つかえるったってハンターのかわりにはならんぞ・・・」

とぶつぶつ言うローグは
髪の毛に頭を突っ込んでかき回している
慣れない弓を肩に担いでいる姿がなんとも頼りない

「・・・」筋骨隆々とした殴る男、そのブリーフのあざやかな黄色が眩しい

そして

「条件わすれないでね!アレが手に入るってのはなかなかないから・・・
そうと決まればアタシにお任せよホーッホッホッホーーーー」

指揮官の前で笑い続けるアサ姉御
この3人を目の前にしてため息をつかずにいられようか
しかし背に腹はかえられない
すでに生存者がいるかどうかもわからないが
管理兵の話だと
まだ無事が確認されていない冒険者が数名居るとのことだ
見殺しにするわけにはいかない
それにこのままではプロの町も危険だ

「キミたちだけで行くのか?この任務は・・・」

と言いかけたときにタイミングよく開かれたドアから
転げるようにして入ってきた逆毛モンクは
姉御の目の前までくるとこういった

「ふうはあ、言われたWIZを一名都合してきたぜ!これでなんとかなるかな?」

「あらあら、頑張ったのね・・・ん?」

姉御の視線の先には
サークレットを被った金髪のウィズ嬢が・・・
彼女はモンクの腕を取ると
驚きの表情を浮かべる彼にかまわずこう言った

「はじめましてアサさん、この人と一緒なら頑張れそうな気がしますので
精一杯努めさせていただきますね♪、お互い仲良くしましょうね♪
(・・・フフフこいつがモンクの好きな人?私のほうがいいんじゃなーい?ねえ)」

「アラこちらこそよろしく・・・モンクさんは可愛いお嬢さんのお知り合いが居るのね
ホホホホホ(なにこの女・・・あーめっちゃムカツクわこの野郎あとでピヨピヨグチの刑ね・・・)」

隊長の机の前で
わけのわからない火花を散らす二人
モンクがようやく自分のあやまちに気づいたときには
ローグが彼の背中をぽんとたたいて
こっそり耳打ちする

「お前こないだ姉御といい雰囲気だっていってたよな
お前・・・バカだな・・・」

ガックリと肩を落とす武道家
肩をぽんぽん叩くローグ
殴りプリはその光景を暇つぶしに観察しながら
元気づけようとモンクにブレスなどをかけており
さらに討伐隊長の眉間の皺は深くなっていくのでした・・・

「・・・(とりあえず先遣隊として送ろう、あとから他の冒険者が来てくれるかもしれないし・・・
来てくれるといいな;;)」
55とあるスレの577sage :2003/12/04(木) 23:17 ID:arGw4Ycw
(「逆転イッパツマン」のリズムで)
キュッ キュッ♪
キュキュキュキュキュキュキュキュキュッ キュウシュツターイ♪
スキだスキだ あの笑顔♪
希望希望 抱きしめて♪
呼べば呼べば あらわれる♪
闇の中を 飛んでくる♪
どこから!? それは プロからよー♪
どうして!? それは ヒマゆえにー♪
風よりも速い翼♪
炎より熱い心♪
さぁ(サァ) さぁ(サァ)救出!♪
ここから敵は通さない♪
さぁ(サァ)さぁ(サァ)救出♪
これから俺らの花道♪
キュキュキュキュキュキュキュキュキュッ キュウシュツターイ♪

自作の歌を披露しながら
おどおどした管理兵に封鎖された扉を開いてもらい
俺たちは下水に入っていった
辺りはしんと静まり返って
ゴキも蝙蝠も姿が見えない
・・・食われたのか?
悪食だなあと考えながら
姉御の命令で俺たち男三人肩を並べて進んでいく
窓手が出るかもしれないってことだから
もしそんなことがあったら火矢をバックステップ撃ちして倒すのが
こっちの役目だそうだ
ウィズも居るしなんとかなるだろう
しかし適当に救出したら帰りたいよな
姉御の話じゃあくまで

「なぜこうなってるかの原因確認」

だって言うし
アノリアンはかなりキツイ相手だからな・・・
そもそもなんで現れたんだ?
『グラストヘイム下水道と首都上水道が実は繋がっているのではないか』
なんてホラもいいところ、距離ありすぎたよな
とこっちがぶつぶつ言っている横を
肩を落とした気弾つきモンクが歩いている

「(・・・まあ、みんな一緒だしなんとかなるか
ワニなら俺と姉御が回避できるし、QMもある、沢山居たらこいつに金剛してもらってLOVっていうことらしいし・・・)」

そんな作戦を考えていたこっちの耳に
弱った泣き声が入ってくる

「えく・・・えっく・・・もうイヤ・・・助けて・・・」

か細い声で闇の中から現れたまーちゃんが
カートも放り出してこちらに向かってくる
後ろからは大きな手の化け物が
彼女を追いかけて床の上を滑ってくる
俺たちがお互い眼で合図すると同時に
姉御の命令が上水道に響き渡った

「フフフ来たね!お前達!やーーーーっておしまい!」

あらほらさっさと
俺たちは一列に並ぶと
モンクの野郎が・・・

「残影!」

まーちゃんのフードを掴むと
そのままこっちに引きずってくるのを
気配で確認し
こちらは火の矢を撃ちこんでいく
プリはまーちゃんの傷を治すと
その手に蝶の羽を渡した
心底嬉しそうな顔をした彼女が
淡い光に包まれて帰っていく
まずは一人・・・

「バックステップ」

寄ってきた窓手の放った泥の沼をかわして
矢を打ち続ける俺の方に向かって
呪文の詠唱が響き渡る

「爆炎障壁(ガンズン=ロウ)!」

炎の壁がスティングを弾き飛ばし
弱ったところを矢が貫く
ま、こんなもんか
あっという間に窓手が崩れ去った
・・・しかしほんとに居るのか・・・
一寸だけ深刻になる俺の後ろから
WIZ嬢の黄色い声が聞こえる

「モンクさーん、どうだった私頑張ってるでしょう♪
もっとやるから見ててねーーーーーー(おんぴう」

別方向からの刺さるような視線を感じながら
曖昧に笑って手を振るモンク
殴りプリとローグは
そんな事を無視してなんとなく一緒に歩き
あっち向いてホイなどして遊びながら
奥へ奥へと進んでいくのでした・・・

ー現在の状況ー

・救出1名
・上水道1F
・先遣隊損害なし
・他の部隊今のところなし
・モンスター 窓手1撃破
56とあるスレの577sage :2003/12/04(木) 23:18 ID:arGw4Ycw
|∀・)ノシ

|彡サッ
57えべんはsage :2003/12/05(金) 00:07 ID:P2f1dFqE
>>45-47
撃沈かと思われましたが、なんとか生き延びれたようで。
嬉しかったです、レス多謝でした。
そして35さんがSugeeeee!!
ローカル保存させていただきますた。もっと保存させてください。

>>51
あぷろだにUPしても問題ないと思います。が、
できれば(UPした)URLを載せて誘導していただくとベターかと思います。
ということで、UPされるのを楽しみにしております。

>>52
続くかも……ではなく、続けなければなりますまい。
(推定)スパノビvsムラマサerの戦いを見たい奴(1/20)

>>とあるスレの577さん
続いてくれると、といいますとリレー形式ということでしょうか。
テンプレにも書いてあるのですがリレーの場合、
書き出しの方がなんらかの取り決めをしないといけないようです。

それについてプロローグを書いた>>17さんが特に言及しておらず、
なおかつ>>17さん自ら選択肢2+3の路線で執筆中とのこと。
そのためリレー小説形式で進めるならば、>>17さんとは別に、
何らかの取り決めをしていただかないと続けられないと思うのです。

その辺り、どうしたらいいんでしょうか。
そこで投げ出すなよ、って言わないでクダサイ。
リレー形式って読んだこともなくて、
どんな具合で書いていくのかわからないのです(弱)。
そしてレス長すぎてごめんなさい_| ̄|○
58ハリケーン少女の日記sage :2003/12/05(金) 00:38 ID:PayXiX4A
>>57
すいません、にゅ缶の小説スレに出してしまいました。
こちらの方でも読んで頂ける様、一応URLを貼り付けておきます
(どうもにゅ缶の方はスレの進み具合が遅いようです・・・)
ttp://tfc55.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/ss_up/rag_ss/HurricaneEX.txt
59(1/2)sage :2003/12/05(金) 01:58 ID:cKdEcCTA
私は♀アサ。沈着冷静、初志貫徹がモットーの二刀流アサシンだ。
唐突だが今、ベッドの上で私はどうしていいか分からないでいる。
…えーっと。
……。
「…うさぎって何て鳴くのだったかな。」
…いやいやいやそんなことはどうでもいい。
私の腕の中にある物をじっと見つめる。
…沈黙。
これをどうしろと言うのか。眺めるのか。抱き締めて寝るのか。
何故だろう。何故私はうさぎのぬいぐるみを貰ってしまったのだろう。

事の発端は一週間前。私は風邪を引いてしまって寝込んでいた。
アサシンとして、否、冒険者としてあるまじき行為。
私の体調不良が原因で、その日の狩りは中止になってしまったのだ。
パーティのメンバー(念のため…ギルドではない。最近は少なくなったが固定PTだ)には随分な迷惑をかけてしまった。
全く情けない事この上ない。
結局私は二日間殆ど自宅で寝っぱなしだったのである。
それだけ寝てれば普通は治る物だろうが…何故だか完治はしなかった。
疲れていたのだろうか?
確かにここ最近はハードな狩りを続けてしまっていた。免疫力が落ちてしまっていたのかもしれない。
体のだるさを残したまま私は後の四日間を過ごした。
そして今日。先刻。
パーティのメンバーが見舞いに来てくれた。恥ずかしいが素直に言う。嬉しかった。
彼らには私の希望で、私が風邪の間も普段通りに行動してもらっていた。
皆の様子を伺う…どうやら狩りは上手くいっているようだ。少し複雑な気分だが。
ともあれ、元気そうで何よりだった。そう言ったらするどいツッコミを喰らったのは秘密だ。
用事だそうだ。暫く雑談をしてから♂BSが、もう少し時間が経ってから♀アコが席を外した。
まぁそんなに珍しい事でもない。私はそのままリーダーと二人で雑談を続けた。
ふと、リーダーの傍らに大きめの紙袋があることに気が付く。
質問をしてみると、彼はふふんと得意そうに笑った。何だかむかつく。
メンバーからの見舞いの品だそうだ。…涙が出そうになったが、自分のプライドのために我慢。
選んだのはリーダーらしい。なるほど。自信がありげなのはそのためか。
栄養満点だよ、というリーダーの言葉に押されて箱を空ける。
60(2/2)sage :2003/12/05(金) 01:58 ID:cKdEcCTA
……。
ピンク色のふわふわした体。長い耳。つぶらな瞳。
これは…どう見ても…。その品物の名称を三回ほど呟いた。
リーダーと目が合う。リーダーの顔が困惑で染まった後、紅潮した。
あ、逃げた。用事だそうだ。
…しかし…。これは…。……。

「あのさ。あの後ちょっと聞き耳立ててたんだけどさ。」
「何でそんな事するかなぁ…趣味悪いって絶対。」
「いいじゃないいいじゃない。しっかしびっくりだわ〜。
 リーダーがあんな物プレゼントするなんてなっかなかやるじゃなぁい♪。」
「いや…プレゼントっていうか。そもそも俺が選んで買ってったのはもっと違う物で…。」
「そんなに照れなくてもっ。お見舞いにぬいぐるみだなんて女の子を喜ばす最高の手段じゃない!」
「……。」
「あらら。顔赤くしちゃって。」
「あーもう!どうでもいいじゃないかっ。…というか、すり変えられてたみたいなんだ。中身。」
「え?誰がそんな事するのよ?もー、恥ずかしがっちゃって。」
「本当だよ!…あ〜あ。多分アイツだろうな。あのオオボケ鍛錬士め。」
「あっははー。今ごろウシャシャシャ笑ってるでしょうね。
 でも良かったじゃない?ポイントアップよきっと。喜んでたんでしょ?彼女。」
「……。うん。そうだね。きっと、嬉しそうだった。…良かった。」

…とにかく。
ふわふわだ。いや違う。困惑だ。私は困惑だ。言葉の使い方まで間違っているほど困惑している。
あぁもう!何を考えているんだリーダーは。
こんな物で私が喜ぶとでも思っているのか。子供じゃあるまいし。
こんなふわふわしたの、子供しか喜ばない。あ、♀アコなら喜ぶかもしれない。
いやとーにかく。私はアサシン。大人ですごい大人の二次職何だってば。
決して子供じゃ…子供じゃ…。
…。
彼がこの見舞い品を抱えて持ってくる時に付いたのだろうか。
ほんのりと。
彼の暖かな、優しい香りが。ぬくもりが。
……。
誰にという訳でもなく、私は呟いた。
「まぁ…たまにはいいじゃないか。」

その日の夢で私は、何故か…。
うさぎのヘアバンドを装備したリーダーとダンスを踊っていた…。
6159-60sage :2003/12/05(金) 02:01 ID:cKdEcCTA
流れをぶった切って投稿してみましたゴメンナサイ許してうわー。
萌え度は低いですが、感想とか下さると嬉しいですかも(・ω・)
あ、リーダーの見舞い品は適当に想像しといて下さい。まぁ朴念仁ですし。
62名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/05(金) 12:54 ID:J4mTfGJc
>>53
うおおおお、しばらく見ないと思ってたらこんなところに!!
変わってないメンバーが(・∀・)イイ!GJですた!
>>58
(*゚∀゚)・:∴.;キューン
エリザベートたん燃え!
>>59
ウサシン―――(゚∀゚)―――ッ!!
こんなPTいいでつね、あこがれまつ。
63とあるスレの577sage :2003/12/05(金) 14:29 ID:Grw5w5V2
>>えべんはさん
私としてはリレーというより皆さんのキャラで特攻してほしいと
思ってたりして・・・
>テンプレにも書いてあるのですがリレーの場合、
>書き出しの方がなんらかの取り決めをしないといけないようです。
ん?そうなんですか・・・
よく読めなかったようで申し訳ありません
>>2にあったんですね;;

>>なおかつ>>17さん自ら選択肢2+3の路線で執筆中とのこと。
う!そうでしたか・・・
んじゃこれはどうしましょうか
アナザーストーリーと言う形で全部私が書いてもいいのですが
もし参加して頂ければうれしいです
その場合自分達のPTがどこに居るのか
どういう状況なのかを最後に書いていただけると有り難いです
んー悩みますね・・・
ちなみに私のストーリーだと4Fで金ゴキの貴重な産卵シーンが
見れる事になります(完璧ネタ話ですね)
いかがなものでしょうか?
64名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/05(金) 14:37 ID:TAbetRMs
混乱避けるためにも接点を少なめにして並行突入したら?

それはさておき、私のPTが2F入り口にポタメモあって、いきなり577PTを追い越すって夢を見た・・・_/ ̄|○
6517sage :2003/12/05(金) 15:02 ID:6fJ9jV8I
遅れてすみません、>>17です。
どうもホットゾヌ2から直接書き込めなくなっているようで…。
色々と不便なこと、この上ありません _no

リレー小説に関しては>>63さんの意見を採用させて頂きたいと思います。
自分の持ちキャラなどを是非とも参加させてみて下さい。事前に打ち合わせをして
最終的に共闘する展開に持ち込むというのも良いかも知れませんね。

ただ、以下の二点だけは押さえておいて下さい。
・初級冒険者達は非力な能力を知力と勇気で補って必死に脱出しようとしている
・漠然としていた「死」という存在が身近に存在することを知って恐慌+燃え状態である
彼らがギリギリの環境に追い込まれている、ということだけは把握しておいて下されば幸いです。
それでは皆さん、絶体絶命の中で颯爽と活躍してくれることを期待しつつ。

ちなみに私の執筆している2+3の方向で書いている文は最下層一歩手前から始まります。
今は行き止まりの通路でアノリアン達と新米シーフ君がにらめっこしている状態です。
…ホットゾヌ使えないと執筆が益々はかどらないよう、ママン _no
66えべんはsage :2003/12/05(金) 19:13 ID:4peYeN9U
金ゴキ大統領の貴重な産卵シーン! ひいては散乱シーン。51ダメージ連発で(・∀・)ヌッコロ!

>>ハリケーン少女の日記さん
登場人物がしっかりと書き分けられているなあ、と思いました。(=゚ω゚)ノシ見習隊隊員一名立候補。
ペットやWis関連の解釈も納得できるものでしたし、アクションシーンもスピード感があって良かったです。
各章タイトルの命名もうまいと思いますし、
気になったところも最初の章と他の章で地の文に少々違和感を感じたくらいでした。

>>59さん
全然萌え度低くないよ、すごい高いよっ!
淡々としてる癖に内心は悶々とかもうストライクですよ。;y=-(*゚д゚)・∵:ターン
書き出し部の『どうしろと言うのか〜寝るのか。』ってところが秀逸と思います。様子がありありと。
難を言わせていただくならば、♂♀記号がちょっと興ざめでした。
これならばむしろ、性別描写抜きでもいいと思います。
地の文でも判別できると私は感じましたし、リーダーとメンバーの会話でも『女の子』とありますから。

>>上水道のハナシ
なるほど、そのような形式ならばあまり(゚Д゚;≡;゚Д゚)とならずにすみそうですね。納得。
ただ>>64さんの懸念が、私的にも気になるところです。
リレー小説をちょっと読んでみたのですが、風呂敷広げやすい分収拾するのが難しそうだなー、と。

あと、ゾヌは使ったことない上に激しく蛇足気味ですが、
エディタなりメモ帳使ってタイプしてそれをコピペすると比較的楽かと思われます。
既にやっておりましたら忘れてくださいませ。;y=-( ゚д゚)カチャ
また長くなっちゃって申し訳ありません。;y=-( ゚д゚)・∵:.ターン
67名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/05(金) 20:46 ID:RRS7bCyE
今、落とせる最新版で試してみました。
OS
WinXP Pro
ホットゾヌのバージョン
ホットゾヌ2β age11

掲示板のURL
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/ROMoe/
スクリプトの選択
2ちゃんねる互換スクリプト
(DOLOBではない方)
文字コード
SJIS
掲示板の設定
表示されたそのまま
6852sage :2003/12/05(金) 22:12 ID:Tq9WEH..
敵を前に刀を鞘に納める。
そんな俺の動作を見て彼女は驚きの表情をあらわにした。
だが、すぐそれは怒りに変わった。
それで私を斬るつもりか?
声にこそ出さないものの、彼女の視線がそう告げていた。
無理もない、ミッドガルド広しと言えども、こんな戦い方をする騎士は俺以外にはいないのだから。
先に動いたのは彼女だった。持っているソードを投げつけ、それを追いかけるように走り出す。
俺の喉元に向けて飛んで来たソードを身を屈めて回避する。
そのままの勢いで突っこんできた彼女の鳩尾に肘打ちを叩きこむ。
彼女の動きが痛みのために一瞬止まる。
その一瞬のうちに、俺は村正を抜く。
村正は閃光となり、彼女の横っ腹にめり込んだ。
(……しかし、俺も甘ちゃんだな)
そう、俺は刃の部分ではなく、峰の部分で斬りつけた。俗に言う峰打ちである。
だが峰打ちといえども本気でやれば骨を砕くほどの威力がある。
その直撃を喰らった彼女は、僅かな間苦悶の表情を浮かべていたが、すぐに地面に崩れ落ちた。
「ふぅ……」
よくこんな年でここまで強くなれたものだ。俺は素直に感心した。
それと同時に惜しいと思った。この技術を人殺しだけに使うなんて、と。
だが、いつまでもそんな感傷に浸っている訳にはいかない。彼女には聞くことがたくさんあるのだから。
そう思い、俺がロープを取りに行こうとした、その時だった。
突如、彼女が跳ね起き、俺に向かって猛然と突進してきた。
「なっ!?」
完全に不意を突かれた。
一太刀目はなんとか鞘で受けることが出来た。
しかし、二太刀目を避けることはできず、ソードが俺の左腕に食い込んだ。
「ぐうっ……!!」
傷はそれほど深くはなかったが、その際に持っていた刀を落としてしまった。
それを好機と見た彼女は容赦なく俺に斬撃を浴びせかける。
彼女が腕を振るうたびに、空気の焦げるような風切り音が響く。
かろうじてそれらを避けるが、斬撃の勢いは止まらない。
やがて、先程の湖にたどり着いた。
これ以上は下がれない……俺は背中に冷や汗が流れるのを感じた。
俺を追いつめた少女は、とどめとばかりに渾身の一撃を繰り出そうとしている。
進退窮まった俺は一か八かの賭に出た。
彼女がソードを振り下ろした瞬間、俺は倒れ込みながら足払いをかけた。
足元をすくわれたバランスを崩し、危うく湖に落ちそうになる。
俺はすぐに立ち上がり、軽く彼女の背中を押した。
それが決定打となり、彼女は頭から湖に落ちていった。
彼女が湖から出る前に、俺は刀を拾い、次の攻撃に備えた。
……しかし、いっこうに湖から出てくる気配がない。
よく見ると不自然なほどの気泡が湖面に現れている。
「……溺れてる?」
いや、ひょっとしたら作戦かもしれない。安易に助けようとするのは危険だ。
だが……それでも俺はほおっておくことができなかった。
意を決して湖に飛び込む。案の定、水中ではあの少女ががむしゃらに手足を動かして必死に水面に辿り着こうともがいていた。
しかし、息が続かなくなったらしく、次第に動きが弱々しくなっていく。
俺は急いで彼女を抱き上げると、水面に向かって泳ぎだした。


ノビたんをレギュラーしようか悩み中です。
もし意見があればそれを尊重したいと思います。
6917sage :2003/12/05(金) 22:19 ID:6fJ9jV8I
>>67
わざわざ、有難うございます!
一気にモチベーションが上がりました。

頑張って書き上げますので、今暫しお待ちくださいませ。
70ハリケーン少女の日記sage :2003/12/06(土) 01:31 ID:37RGD7no
皆さん評価していただきありがとうございます。
このSSにつきましては、某スレの方では雰囲気に沿わず不評を買うこともありましたが、
改訂版として載せさせていただきました。

>>62
私としても燃えを序盤は萌え、終盤を燃えを狙っていたので、そのお言葉は大変嬉しいです♪

>>えべんは様
恐縮です(汗)。実は、このSSの発端を私は提示しただけで、リレー式に進んでくれないかな、
と某スレの方で始めたのですが、序盤の一部を別な方が書かれただけで、殆ど自分で書いてしまいました。
これは改訂版として、なるべくキャラやストーリーを統一させようと殆どの部分を書き直したものです。
違和感があったのはその為だと思います。

書き込む機会は少ないと思いますが(仕事の都合上)、今後は皆さんの文章を見習って精進したいと思います。
失礼いたしました。

それと、もう一つ、某スレで書いていた番外編の方を載せさせていただきます。

ttp://tfc55.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/ss_up/rag_ss/HurricaneAno.txt

楽しんでいただければ幸いです。
71えべんはsage :2003/12/06(土) 20:18 ID:ogF9Ob66
 それは一瞬の出来事でした。
軽い衝撃を受けたかと思うと、彼はついこのあいだ新調したばかりの環頭太刀を取り落としてしまいました。
やっと買えたねと、我が事のように喜んでくれたパーティメンバーの顔が思い返されました。そういえば、剣士は太刀を精錬するの忘れていました。
やっと手に入れた大切な相棒です。帰ったら、きちんと精錬してやらないといけません。
「は……っ、は……っ、は……っ」
 恐怖と戦慄が、まだ少年の面影を残す剣士の顔にぺっとりと張り付いていました。
底なしの暗さを湛えた、すえた臭いのする筒のような空間が広がっています。
わずかな光源が頼りなさげに周囲を照らし、揺らめく影を剣士に投影していました。
 薄暗いパイプは音を反響させます。パイプ表面を濁った水が流れる、規則的で軽やかな音がよく聞こえます。
それに混じって別の、水が断続的にはじける音が聞こえていました。
まるでバケツに水を汲んで、遣り水に撒き散らすときのような、そんな音でした。
『リーダー? もう大丈夫? ねえ……、返事してよ……。リーダー……』
 剣士の耳に悲痛な声が届いていましたが、剣士はそれに反応することができないようでした。
祈る聖職者のように跪いて、一心に自分の置かれた状況を理解しようとしていました。
 飲み込むつばが剣士の喉を鳴らします。
視線の先で鉈のごとき無骨な刀身をもった剣が、まるでおとぎ話の意思を有した魔剣のように踊っていました。
鈍色の刀身を赤い液体が伝い、剣士の足元でなおも広がりつづけるそれと混ざり、錆びた鉄のような臭いを濃密に漂わせています。
『リーダー! ねえ、聞いてる!? リーダーってばぁっ!』
 先ほどからひとりでに震えだした身体は、震えを強くする一方でした。呼吸が荒く、歯の根が合いません。
 剣士の黒い瞳を見るのは黄色い輝きでした。猫の瞳にも似て細められたそれは、剣士の左腕から迸る赤黒い液体を見つめていました。
奇妙なほど白い歯を剥き出しにしたそいつは、まるで笑っているようでした。
 そうだ、剣を──。剣を拾わなくちゃ。そうさ、俺は剣士なんだから、こんな風にビビってちゃいけないんだ。
俺は剣士なんだから、痛くたって我慢して、歯を食いしばって、それで戦わなくちゃいけないんだ。
 剣士は取り落とした太刀を探しました。
足元の液体が染み込んだせいで、膝が濡れて少し冷たいのを我慢して、剣士はようやく買ったばかりの環頭太刀を見つけました。
 美しい曲線を描く刀身はまだ新しく、新品同様に輝いていました。切っ先から剣の腹にかけて、血抜きのための溝が走っています。
突き刺したとき、ここに空気が通ることで抜けやすくするための造りです。
「……あれ、これ、誰のだよ?」
 簡素ながら装飾の施された柄を、見覚えのない物が掴んでいました。彼は自分の剣が盗まれようとしているような印象を受けます。
「おい、返せよ、それは俺んだぞ。俺の大事な──」
 両手を伸ばして、剣士はびくりと何かに気づいたように全身を戦かせました。ぶつり、と何かが遮断されるような感覚が剣士を包みます。
そして、それっきりでした。
 見下ろす影は興味を失ったのか、そこから離れていきました。
足元を水が流れているにも関わらず、何の音もさせずにその影は暗闇へと消えていきました。
72えべんはsage :2003/12/06(土) 20:19 ID:ogF9Ob66
>>68さん
ムラマサerがカッコいい! 殺陣シーンいいですねぇ、斬って斬って斬りまくtt(斬殺
Σd(`・ω・´)GJ

>>ハリケーン少女の日記さん
萌えでした。それ以上ぐだぐだ言うのは野暮というもの。Jの旦那がカッコいい!

>>上水道のハナシ
ええと、とあるスレの577さんのハナシに続くつもりで書いてみました。
いちおう「非力な冒険者」を書いてみたつもりです。が。
失敗風味でしたら容赦なくご指摘くださいませ。
;y=-( ゚д゚)ノシ ・∵:.ターン
73えべんはsage :2003/12/06(土) 20:22 ID:ogF9Ob66
ぐあ、投稿してからミスってるの気づいた_| ̄|○

二度目の呼びかけの一段上の行、『剣士の足元で〜』の部分なんですが、
『剣士の足元で影のように広がりつづける黒ずんだ液体と混ざり』に脳内変換をお願いしたいです。
ごめんなさい。
74とあるスレの577sage :2003/12/06(土) 23:50 ID:OTD092is
>>えべんはさん
おお!ナイス
んでは次この人たちの救出を目指しましょうか
そこで質問
・2F入り口という設定でいいのかな?
・呼びかけている人は女の子かな?職業は?
・アノリアン何体?1体でいい?
お返事お待ちしています
75えべんはsage :2003/12/07(日) 00:48 ID:9Pvrr3JA
>>とあるスレ577さん
レス多謝ですー。重傷のくせに冷静すぎかなあ……、との懸念が残っておりますが、
失敗してなかったんだ、僕は間違ってなかったんだ! と、気が触れたっぽく信じてもいいですか。

場所についてですが、4F(最下層)は金(ゴキ)大統領の産卵シーンによるスペクタクル、
入ってすぐだと先遣隊──仮称特攻野郎A(ssassin)チームとすぐ出会ってしまう可能性が高く、
『知恵と勇気で脱出を試みる』シーンを挟みづらいかと思い避けましたが、続けて書く方の裁量でいいかと思われます。
その辺りは融通が利くように、生意気かとは思いつつ意識的にぼかしました。
絶望させて全滅させるも(・∀・)ヨシ、執筆者の思い入れある職業に設定し活躍させるも(・∀・)ヨシ、放置するも(・∀・)ヨシ。

というかこれってリレー形式、と考えちゃっていいんですよね?
76とあるスレの577sage :2003/12/07(日) 11:44 ID:n4Zk39Vg
|∀・)

>>えべんはさん
リレーみたいなものでいいんじゃないかな?
んではその続きちょっといきますー
わくわく

|彡サッ
77とあるスレの577sage :2003/12/07(日) 11:45 ID:n4Zk39Vg
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・モグ」

殴りプリがその大きな手で
小さなキャンディを摘んで
3個目を口に入れようとしたときには
彼らは上水道1階の奥まで来ていました
あいかわらず蝙蝠もゴキブリも居ないため
かえって緊張してしまい
必要以上にゆっくりと進むパーティ
モンクは気を常時最大数練って
いつでも対応出来るように精神を落ち着け
ローグとアサも猫足立ちで構えながら
遠くで落ちた針の音も聞こえる程に
神経を張り巡らせています
プリはそんな中、心の中でお気に入りの
お祈りの一節を唱えながら
平常心を保つべく
熱い思いを甘いお菓子でなだめるのでした

「・・・・・・・!」

2階へと続く通路が視界に入ってきたところで
明かりの影になにかしら動くものと
それが立てる音を聞きつけ
救出隊全員に緊張が走りました
ローグが短剣を抜き、アサがカタールを構えなおして
ウィズのサイトの明かりの中
前に進むと
そこに居たのは

「・・・!・・・に・・・にんげ・・・ん?」

水に濡れ血で汚れた
シーフの女の子が
遠くからでもはっきりと解るほど
震えていました
頬にはいくすじもの涙の後がこびりついて
壁に入り込んでしまいたいといった感じで
うずくまっています
虚ろな眼が
だんだんと正気をとりもどし
救出隊のメンバーを視界にとらえると
いきなり激しく泣きじゃくりながら
こちらにむかって突進してきました

「うああああああーーーーーー!」

そのあまりの必死さに
思わずあとずさるモンクの脇から
殴りプリが現れて
正面で彼女を抱きとめます
小さな声で落ち着かせるように
連続してヒールを唱えますが
彼女はおおきな黒い手の中で
はげしく強く動き続けます

「ああ!リーダーをっ!・・・えく・・・リーダーを助けて!!!
私逃げたの!怖かったの!見捨てたの!リーダーを、リーダーを見捨てたの!
ごめんなさいごめんなさいだからだからおねがいリーダーを助けて!!!」

ローグが彼女に背を向けて暗闇の中をじっと見詰めている間
皆はそれぞれの悲しみを胸に抱き
殴りプリはそんなにも優しくなれる大きな手で
彼女の肩をなんどもなんども撫で続けていたのでした・・・

やがて一応落ち着いた彼女の目の前で
ゆっくりとキャンディの包み紙を開いて
それを唇に当てます
シーフは素直に口に含むと
ちょっとだけ笑っていいました

「・・・あまい・・・」

殴りプリの顔にゆっくりと笑みが広がります
その様子を見届けたアサの姉御は
カタールを振って一言

「さてそれじゃあリーダーさんを助けに行きましょうか!
アンタもついてきな!怖がらせた奴らをギッタンギッタンにしてやるから」

期待に満ちた目で彼らを見詰める
シフ子さんを皆ちらっと確認しながら
隊列を組みなおし
奥へとすすんでいくパーティー
殴りプリは自分のチェインを握りなおすと
シフ子さんの影を
自分の影で覆うように
近くで警戒をつづけるのでした・・・
78えべんはsage殺陣シーン書くのタノシ―――(゚∀゚)―――ッ!! :2003/12/07(日) 15:16 ID:EU1c8J7Q
 シーフはまだ落ち着かないようでしたが、横道にぶつかるたびにパーティの進むべき方向を指示しました。
一人増えて都合六人組となった先遣隊は、一人を除いて示し合わせたかのように押し黙って進みます。
シーフの嗚咽と足元の水を踏む音が、ひっきりなしに続いています。
闇を孕んで際限なく先遣隊の前後に広がる通路は、夜目の利くアサシンとローグでも、先を見通すことができません。
 筒状の通路のため、パーティの側面には壁面があります。
側面攻撃のおそれはないと判断したアサシンは、自らとプリーストにパーティの前衛を、ローグとモンクにパーティの殿を務めさせました。
奇襲に対して警戒する中衛は置かずに、回復法術の使い手と戦闘能力に優れた者でウィザードとシーフの前後を守るつもりです。
 油断なく暗闇を瞳で切り裂きながら、アサシンはシーフに訊ねました。
沈黙に耐えかねたわけではなく、訊いておかねばいけないことがあるからでした。
「あなた、何か気づいたことはある? どんな些細なことでもいいわ」
「……なにも、ないです……。リーダー……」
 シーフは気の滅入るような声でつぶやき、力無く首を振りました。
アサシンは舌打ちしたくなるのを堪えて、「そう」とだけ言って神経を前方の暗闇に集中させます。
 なぜこうなっているかの原因確認、それがパーティに課せられた最優先目的です。
生きているのかもわからない者の救出は、決して望ましい行動ではありません。シーフ以外のメンバーはかなり経験豊富な冒険者です。
口にこそ出しませんが、思っていることはいっしょでした。リーダーとやらはもう──
 徒労に終わる可能性、死体のそばにモンスターが集まっている可能性。
戦略的に考えれば、後続部隊も望めず敵の戦力もわからない現状、見捨てるのが正解でした。
正規の部隊ならば、即座に切り捨てられても文句は言えません。一人のために、一つの部隊を危険にさらすことはできないのです。
アノリアンやスティングと渡り合うのは、先遣隊のメンバーをして容易なことではありません。
 しかし、彼らはプロフェッショナルな軍人ではなく、冒険者でした。助けてくれと頼まれれば助けてやるのが、彼らの流儀でした。
「この先です……」
 一本の横道を指差しながら、シーフは消え入りそうな声で告げました。
ウィザードがシーフの肩を抱いてなだめるのを横目に、アサシンはローグに目配せをします。
頷いたローグを後方を透かすように見まわし、『問題なし』の手信号を送りました。
 横道に入るパーティの先頭で闇を睨みつけながら、
「おいでなすったわね」
 アサシンが不敵に口を開きました。それまでどこか沈んでいたパーティに、緊迫感が走りました。
音もなく現れ、おそれるふうもなく牙を剥くアノリアン。
緑色の鱗が弱々しい光源をぬめぬめと反射させ、どす黒い何かをこびり付かせた鉈が軽快にひるがえります。
シーフがあげたか細い悲鳴を合図に、アノリアンは無音で距離を詰めてきます。
支援法術を行使しながらプリーストが最前面に立ち、アサシンは言い残して駆けました。
「速攻でいくよ」
 立ちはだかったプリーストが、アノリアンの初撃を盾で受け止めました。
「……ッ」
 鉈が甲高い音をたててバックラーを弾き、プリーストの腕が衝撃に軋みます。
たたらを踏み、表情を歪ませたプリーストの目に、早くも振り下ろされつつある鉈が映りました。
反応できないプリーストの肩口目がけ、鉈をひるがえらせるアノリアンの腕をローグは即座に照準しました。
「食らえ、悪漢ビーム」
 びんっ、と硬質なばねの音を伴って矢が走りました。
ばね仕掛けの機構で矢を発射するアーバレストは連射性能こそ劣るものの、矢の威力は弓の中でもトップクラスでした。
狙い違わず命中した矢は、しかしアノリアンの腕に突き刺さっただけでした。鉈が振り下ろされます。
「げっ……」
「使えないねあんたはっ!」
 パイプ側面をほとんど真上近くまで駆け上ったアサシンは、ローグに罵声を浴びせながら壁面を蹴ってアノリアンを強襲します。
「ハンターの代わりはできねーって言っただろーが……」
「クァグマイア!」
 次の矢を番えるローグが悔しげにぼやくのと同時に、ウィザードの魔法が発動してアノリアンの体勢を崩しました。
軌道がぶれた鉈は、プリーストの肩をわずかに削ぐに終わります。
 高さと身体を転回させることで勢いを稼いだアサシンが、カタールをアノリアンの背後に疾走させます。
その滑らかな動きは撫でたようにしか見えませんでしたが、赤くない魔物の血を勢いよく噴出させました。
 まだ空中にいるアサシンに狙いを変えるアノリアン。凶刃はしかし、虚空を薙ぎました。
プリーストが鼻面へと鎖を強かにたたきつけ、アノリアンの後退させたからです。
 着地したアサシンは駆け抜けざまにひと撫でして、プリーストに並びました。アノリアンはうなり声をあげてこちらを威嚇します。
「大丈夫かい?」
「……」
 無言で頷くプリーストの肩をモンクが治療しながら、熱心な様子でアサシンに言います。
「やっぱりここは俺の出番ですって!」
 アサシンはちらりとモンクを見やります。
「同じ方向から攻撃しちゃだめ、挟撃が基本だよ」
「任せてください!」
 プリーストが後退し、アサシンとモンクは手負いのアノリアンに再度立ち向かいました。
79えべんはsage :2003/12/07(日) 15:23 ID:EU1c8J7Q
>>上水道のハナシ
すみませんすみません……、調子こいて書いてしまいました_| ̄Z○ヒラニーヒラニー
恐れ多いことです、あああ……。
カチャ;y=-( ゚д゚)b >>77Good jobでした、とあるスレ577さん。
ターン;y=-( ゚д゚)b ・∵:.
80とあるスレの577sage :2003/12/07(日) 20:53 ID:n4Zk39Vg
|∀・)

>>えべんはさん
フハハハ、いいよ!いい!
それじゃいくぞ!

|彡サッ
81とあるスレの577sage :2003/12/07(日) 20:54 ID:n4Zk39Vg
「さあさあ俺の出番だな!単純なワニなんかハンドバックにしてやるぜ!」

単純さではワニとどっこいどっこいのモンクが
相手をからかうように
指をひらひらと動かします
アノリアンはちょっとその太い首をひねりますが
やがて馬鹿にされたことに気づいたのか
一声あげると鉈を振り上げて駆け寄ってきました

「フオオオ!見切った!」

振り下ろされた鉈を
フィストをこするようにして軌道をそらし
地面に打ち下ろされた相手の武器を
足とバックラーで押さえ込みます

「白羽取りイイイ!」

ワニが抜けない武器に焦りを感じた一瞬の隙をついて
横から回り込んだアサシンのカタールが
そのワニの顔面を切り裂きます

「せいっ!」

「グアアアアアアア!」

カタールの連続攻撃に
たまらず武器を捨てて後退しようとする化け物
しかしその体が後ろに行こうとしたとたん
まるでその額から角が生えた様に
鏃が突き出して・・・

「・・・まあ、なんだ、バックスタブは弓でも撃てるんだよな」

いつの間にか背後に回ったローグの一撃で
脳髄を貫かれたアノリアンは
しばらく尻尾をジタバタさせていましたが
そこをアサの駄目押しクリティカルを喰らい
倒れこんだその動きがだんだんとゆっくりになり
辺りに再度静寂が訪れたのでした・・・

-------------------

「あ・・・り、リーダー・・・」

俺が先頭で気弾を練っている間に
その光で映し出されたものを
真っ先に見つけたのは
不幸なことにパーティメンバーの彼女だった

剣士の死体は
ほぼ完全に脇の下から両断され
皮一枚くらいで繋がっていた
血は流れてしまったのだろう
ロウ人形のように見えるそれは
しかし間違いなく人間のものだった

「・・・」

こちらは彼の体を仰向けにし
顔を確認する
そこに恐怖は見えず
ただ「ああ、そうか」といった表情だけが見えたことに
ちょっと感心すると
プリの野郎に視線を送る

「・・・(こういう奴はいい戦士になるって言うよな・・・)」

やがて長い聖魔法の詠唱が始まる
死体が食われないで
残っていたのはとても運がいい
俺は武道家としての道を選んだことに
ほとんど後悔してはいないが
ただこの奇跡を目の前にするときはいつも
自分がもしかして起こせたであろう復活を意識して
ちょっとだけ残念に思う

「・・・(リザレクション)」

傷口がくっつき
剣士の目が開かれていくのに従って
シーフの眼が一旦輝き
そして急に暗くなって
何かを再生しつつある彼に訴えようとする

「ああ・・・リーダー・・・わたしあなたを見捨て・・・」

しかしその言葉を完成させる前に
俺の手が彼女の口を塞いだ
ローグがその後ろからぼそりとつぶやく

「言うな・・・俺たちシーフは逃げていいんだ・・・ただ最期に助けられればいい・・・な?」

その意味を理解して
眼だけでお礼をいうシーフの女の子
それから剣士に向き直ると
まだぼーっとした彼に
嬉しそうに頭から突っ込んでいくのだった
・・・また死なない程度にしろよ、な?

「さて!やるじゃないアンタ等、変態どもでも少しは役に立つのね・・・」

ポタで送られた二人を見送った姉御が
ニヤニヤと笑いながら
皆にむかって暴言を吐く
酷いいいようだが
そんなほうが今の状況では有難い
全員で肩をすくめると
俺とアサが先頭になって
上水道の奥に向き直る
さて・・・お次はなんだ?
こちらの疑問に答えるものは
闇から聞こえてくる水音だけだった・・・

ー現在の状況ー

・救出3名
・上水道2F途中
・先遣隊損害
ダメージ殴りプリ(ヒールにて回復)
・他の部隊今のところなし
・モンスター
窓手1撃破
アノリアン1撃破
82名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/07(日) 21:12 ID:xw3er7MU
見事なタッグでございます。
二人ともお互いの癖を読み取って書いているようで、本当に頭が下がります。

いやぁ、いいもの読ませてもらってるって実感。
#割って入りたいのに書くペース遅すぎて絡めない罠。
83名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/07(日) 21:47 ID:q0U7yXSw
(゚д゚)ポカーン
すご……。ふたりの文神の文章での掛け合いに脱帽。
82氏に同意しつつ、次の展開を楽しみにしてます。

あと、ローグのバックスタブのセリフがすごく好きです(*´Д`)ハァハァ
84名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 00:30 ID:qGgU95PQ
襲いかかってくる魔物を撃退しながら、パーティは奥へ奥へと進みます。
アサシンの判断は正しかったようで、一回も奇襲は受けませんでした。
散発的に襲いかかってくる魔物は、せいぜい同時に二体程度で、
先遣隊の面々は大なり小なりダメージを受けてはいたものの、
二人の法術者のおかげもあって、未だに戦闘不能者は出ていませんでした。

「さって、そろそろ一休みにしようかしらね」

薄暗い中でも、わずかに他のところより明るいところにさしかかり、
アサシンはやや疲れたような声で提案しました。

「異議なーし」と、ウィザードはなぜかモンクの腕にしがみつきながら同意します。

アサシンの頬がぴくりと震えて、モンクがびくりと体を引きつらせます。
気の毒そうにモンクを見ながら、ローグがアサシンに言いました。

「俺も賛成、腹へったしな。ついでに指揮官のおっさんにも連絡しようぜ」
「そ、そうだな、後続が来てくれてるかもしれないな」

モンクは怯えるルナティックのように落ち着かない様子で、かくかくとうなずきます。
冷たい目つきでアサシンはモンクを睨みつけます。

「んじゃ、アタシが連絡するから、あんたとウィズ嬢でゆーっくり休んでなさい」
「え……、ふ、二人だけ?」
「そうですよぉー、二人っきりですよぉー」

うろたえるモンクの内心をわかっているのかいないのか、ウィザードはさらに強くしがみつきます。

「前後を一人づつで警戒するのよ。あとで交代して休憩するんだから、ちゃーんと休んでなさいな」

ほとんど殺気を放ちながらアサシンははき捨てました。

「わかったかしら……?」
「は、はい……」
「……」

プリーストは『イ`』といった顔でモンクの肩を叩き、どうやって入れていたのかわかりませんが、
ふところからかわいい布に包まれたバスケットを取り出しました。

「おー、準備いいじゃーん」

まずい固形の携帯食糧を食べかけていたローグは歓声をあげます。
皆、思い思いにプリーストの持ってきた弁当を頬張り、
一時の安らぎに身を任せました。
85名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 00:31 ID:qGgU95PQ
|・ω・`)シツレイシマスタ
|ミ ピャッ
86地下のほう/1sage :2003/12/08(月) 01:26 ID:DcNekLIY
『いいかい、どんな事があっても、どんな状況になっても、『こんな筈じゃなかった』なんてのは絶対に言うんじゃない。
 我々魔道を志すものは万物を万物として見流れを流れとしてみる事を至上目的としているのだよ。そこに『もし』はないし。『だったら』もない。いいかい、もう一度言うよ。我々魔道師とそれに連なるものたちは、現象を変質させているわけじゃあない。それは流れのなかの一つでしかないのだよ。そうあることが、そうあるべきなのだ。わかったかい? ははは、うん、分からなくてもいいよ。今は、まだ、ね。
 では、君の先に流れの加護があらんことを。ムリはしないようにね』

 ――先生。ああ。
 ずるずると。ずるずると。黴臭く澱んだ空間を掻き分けるように。
 まだ無理はしていなかった筈だ。駆け出しもいいところのおれ一人ならば危なかったかもしれないが、一人では無かったのだ。彼女は涙目になりながら蝙蝠に棍棒を振るい己を癒しつつ戦っていた。仲間の戦闘に反応してきたもう一匹に悲壮な顔になる彼女の目の前に、咄嗟に火柱の壁を展開させたのは本当に咄嗟だったからだ。寄ってきた羽ばたく卑しきものは炭となり彼女に張り付いていたもう一匹は棍棒と杖の餌食になった。汗を拭いながら彼女は言った。『ありがとうございます』と。彼女は新品らしい副使の制服に身を包んでいた。彼女は穏やかな瞳とともに笑った。内側から放たれるようなその笑顔に、おれはこういうのを神に愛されたと形容するのだと、そののち思ったものだ。正直に言おう、惹かれていたと。
 彼女と一緒にさらに深く。先生にはお世話になった。『首都はプロンテラを支える下水道は、長く昔から討伐隊を募集しているよ。腕ならしには丁度いいんじゃないかな。ムリをしなければ』。その通りだ。でも先生、ここは首都から仰天するぐらい離れていますよ、いや故郷のアルデバランに比べたら近いですが、というと先生の影にひっそり立っていた聖職者の女性が無言で門を開いて叩き込んでくれた。足蹴は聖職者としてどうかと思いますとこんど合ったら進言しよう。おれと彼女は潜っていく。道すがらにおれは念力を形とする事が出来、彼女は早足の術を唱える事ができるようになった。火柱の壁が素早き甲殻生物の足を止め念力の弓が打ち砕く。ささやかな祈りの聖句が疲労した身体を癒し早足の術が鳥足を体現する。おれと彼女は息が合った。まるでそうなる事を定められたかのように思えた。もしや、先生、これも流れと言う奴ですか。おれたちは疲労しつつも笑いながらもう一つ潜った。

 まるでそうなる事を定められたかのように、か。

 考えればおかしかったのだ。何故雲のように群がっていた素早き甲殻生物が見当たらなくなったのか。何故卑しき蝙蝠たちの鳴き声が聞こえなくなったのか。何故めったに現れない多数の触手をもった動かざるものが肉片となっていたのか。何故この闇はこれほどまでに沈んでいるのか。
 流れ、か、先生、これも流れというのか。
 泥水にまみれたコートがうっとおしい。壁に凭れ掛かるように、ずるずると、蝸牛のようにずるずると前に進む。否、それは後退しているのか。後方の暗黒より来るおぞましきものどもから逃げているのか。右足が無い。根本が腐蝕し始めている。右目が見えない。血だ。泥のような血が流れているのだ。コートにまみれているのは泥だけではない、血もだ。どす黒い。内臓の血はこうなっているのだと聞いた事がある。息が切れ、倒れこみそうになるのを堪えて、ただ、一歩、一歩。左腕には張り付いたように握り締めた杖が血にまみれ泥に犯されなお杖として存在している。杖をつきながら歩くのは止めておいたほうがいいと先生に言われたが背に腹は変えられまい。そして左腕にはしっかりと、

 しっかりと、
87地下のほう/2sage :2003/12/08(月) 01:27 ID:DcNekLIY
「う……うう……っひ……うぅ……」
 剣を抱え込みこうして縮こまり隠れる事しか出来なかった。醜悪な掌のような、否、あれを掌と形容していいものだろうか、が、何時自分が居る隙間のような所を探し出し形容しがたき圧砕を行うのか、そんな事も考えずに震えて泣きつづけた。死んじゃう。ブレイドを握り締めて嗚咽する。死んじゃうんだ。もう母さんも大兄ちゃんも小兄ちゃんも肉屋のおじさんも花売りのお姉さんも宿屋の双子も向かいのじいさんも友達にも会えないんだ。白魚の煮付けも母さんの焼いたパンも暖かいスープも小兄ちゃんの苦い消毒液ももう食べられないんだ。どうしてこんなことになったんだろう。どうして下水道になんてきたんだろう。どうして今日は一人で出かけたんだろう。どうして今日は朝のお祈りをしなかったんだろう。どうして。どうして。どうして。
「ぅぅ……ぅ……ぅぅうっ……ひっく……ど、どうして……どうしてこんなことに……
 ……こんな……はず、じゃ……」


 ず
 ず。


「ひぃやっ」
 来た。来た。来た来た来た来た来た来た来た来た来た。
 来た。ボクを殺しに来た。殺しに。殺しに。殺しに。殺しに来た。
 めいいっぱい身体をちぢ込ませる。両手で頭を覆い地面に擦りつける。きつくきつく目を閉じる。神様っ。父であり聖霊であり絶対であり秩序であらせられる神様、助けて、助けて、今朝お祈りを忘れたのは謝ります、これからは絶対に忘れたりしません、神様、だから、助けて、ボクをたすけて

「ひと――か」

 何の声なのかわからなかった。ついで耳を疑った。ついで頭を疑った。ついで恐る恐る顔を上げた。
 壁に凭れ掛かるようにして、茶色い髪の男があった。それは有ったと形容するのがまさに正しいような風体だった。片足は腐り頭は地に塗れ魔法士の代名詞である長いコートは塵のようになっていた。その男は光を失った片目でこっちを見た。いや、本当にこっちを見ているのか。
「ひっ、ひ、ひひとでです……」
 いや、そんな事はどうでもいい。心底救われた気分だった。安堵から笑みがこぼれた。助かった。人だ。これで一人じゃない。一人じゃなければ、

 なんだというのだ。

 笑いが凍りついた。そうだ。如何する。こんな今にも死にそうな魔法士一人いてどうなる。かれでもどうにも出来なかったのだろう、ならば自分はどうなる。どうにもならない。弱者と弱者が居てもどうにもならない。
 死ぬのか。やはり死ぬのか。

「こ、こん、な……こんな事って……」

 再び地を着いた。男は相変わらず目に光を宿さない。死んでいるのか。死んでしまったのか。死ぬのか。こんなまっくらな底で死んでしまうのか。
「どうして」
 また涙が出てきた。
「こんなはずじゃ、こんなところで」

「こんな筈じゃ――だと?」

 顔を上げた。男の目には光がともっていた。
「違う。こんな筈なんだ。
 巨きなる流れは弱きものを全て飲み込み己の一部とし轟然と流れてゆく。おれたちもまた然り。おれたちは弱きものだからその流れにははむかう事も認知される事もできない。なぜならそれが流れというものだからだ」

 突如朗々と喋り始めたその男は両手のものを握り締める。片手にはよごれた杖が握り締められていた。もう片手には

「だがな、おれたちはただ流される訳じゃない。流れはおおきい故に遡る事はできぬが行き先をわずかにでも変えることはできる。わかるか。わかるか、おい、お前。『こんな筈じゃなかった』なんてのはくだらなく下衆で愚図で愚かしいほどにナンセンスなんだ。わかるか? わからんだろうな。だがお前もおれも分からなければならないんだ。何故だか分かるか」

「っひぃ――」

 おとこの片手には。大切にかかえらるように持つその片手には。

「生きるためだ」

 女の頭が。

「おれは生きるぞ。彼女がこうなったのが流れだというのならば、流れよ、そして貴様よ、おれは死んでも生きるぞ。死に物狂いでも醜くあしがいても生きてやる。流れをおれが生きるほうに進んでやる。でなければ」

「何故彼女はしんだんだ」

 抱えられた首は引きつった表情をしていた。たぶんとても綺麗な女の子だったんだろう。呆然とそれだけしか考えられなかった。

「おい」
「っひゃひ」
「その剣はなんだ。何を這いつくばっている。さっさと立ち上がれ。さっさと剣を取れ。緊張しろ。集中しろ。怯むな。臆すな。お前はいまからおれとともにこの地獄の底から立ち戻るんだ。いいか、絶対に死ぬな死のうと思うな考えるな。もはやそのいのちお前一人のものではないと思え」

 ――なんといった、こいつは。
 還る。
 此処から。この地獄から。死の場所から。
 還ると?
 バカな――ムリに決まっている。なんでボクがこんなところに隠れていたと思っているんだ。外に出れば死ぬからだ。だのにこいつは、

「何だその目は」

 頬に衝撃が走る。呆然として見ると男が杖を振りぬいた体勢からゆっくりと戻っている。頬に一筋傷が入ってそこからついっと血が走った。

「いいかもう一度だけ言うぞ。お前はいまからおれと還らなければならんし死ぬ事も許されない。おれは此処から還るつもりだし死ぬつもりも無い。わかるか? 分かるな? 分かったならわかったといわねぇか愚図野郎てめぇキンタマついてんのかぁああん!?」
「わ、わかりまし……った……」

 怒鳴られた。もうなにがなんだか分からない。男は「よし」と呟くと、

「じゃあ行くぞ。おれたちの流れがいささかも絶えぬことを」

 なんの祈りかと思ったが、自分も慌ててそれに習った。

「ボ、ボクたちに神鳴る加護があらんことを」

 そうして、死の暗闇に進み出る。
88お目汚しスマソsage :2003/12/08(月) 01:29 ID:DcNekLIY
初めまして諸兄方。
空気読めてないかもしれませんがお許しください……

今回のリレー小説の設定がとてもそそられたのでおもわず筆をとってしまいますた。
特定の方だけで回していたものでしたら……ほんとすいません。脳内削除よろしくです。
つーかダラダラ長いよそれ以前に萌えないよ初心者っぽくないよ……すいません。叩いてやってください。


>84
(*´д`)
アサシン姉御がかわいすぎなんですがどうすればいいんでしょうかっ
8952sage :2003/12/08(月) 01:57 ID:Yun/7n8Y
負けるなんて、おもわなかった。
いままで、いろいろな人とたたかってきた。
みんなわたしがうごかなくしてきた。
でも、今日はちがった。
まけちゃったらわたしもうごけなくなるのかな?
くらい水の中で、わたしはそんなことをかんがえながら目をとじた。


「呼吸は……異常なし。脈拍も正常。」
結構派手に溺れていたようだが、命に別状はないらしい。
彼女に毛布を掛け、少し煮えすぎた感じのするスープを食べる。
(……見れば見るほど信じられないな……)
横で眠っている少女を見ると、とてもこの娘が何人も殺したとは思えない。
だが、先程の戦闘での動き。あれは熟練した騎士をも凌いでいた。
故に、自分に信じ込ませるしかなかった……彼女が殺人鬼だという事を。
やがて、彼女が目を覚ました。
しばらくの間、何が起こったのか理解できていないらしく、せわしなく辺りを見ていたが、やがて俺と目があった。
「……おはよう」
とりあえず挨拶をしてみるが……彼女はそれに反応せず、しばし呆然としていた。
だがすぐに戦闘態勢に入り、武器を取り出そうとした……が
……彼女の手は何も掴まなかった。それもそのはず、武器は全て俺が没収したのだから。
あわてふためく彼女を見て、俺はようやく彼女を年相応の少女だと感じる事ができた。
なんとか落ち着いた彼女は、改めて俺に視線を向けた。
その射抜くような視線のため、俺も彼女から目が離せなかった。
緊迫した雰囲気が辺りを支配した……その時。
くぅ、と可愛らしいお腹の音がした。
無論、先程食事をした俺が腹の音などさせる訳がない。と、なると答えは一つ。
見ると彼女は恥ずかしそうに俯いていた。
仕方なく俺は残ったスープを器に移し、を彼女に差し出した。
「ほら、食えよ」
だが彼女はそれを拒むように明後日の方向を向いてしまった。
が、またお腹が鳴り、恥ずかしそうに目線を落とす。
その仕草が妙に可笑しかった。
「遠慮なんていらないから、食べろよ」
俺が再びスープの器を差し出すと、警戒しながらも彼女はそれを受け取った。
淡々と食事をする彼女。俺はその様子をしばらく見ていた。
食事が終わり、何とはなしにたき火の炎を見つめていた彼女に俺は本題を切り出した。
「……君が……殺したのか?」
彼女が俺の顔に目を向ける。が、言葉は返ってこなかった。
少し唐突すぎたか。俺は頭の中で自分の浅はかさを反省した。
「それじゃあ……いつからここにいるんだい?」
この質問にも、彼女は答えなかった。
「お父さんやお母さんは?」
やはり彼女は口を開かない。
「……名前は?」
答えの代わりに沈黙が返ってきた。
……嫌な予感がした。
「……喋れないのか?」
意を決して俺は彼女に問いかけた。
少しの間のあと、彼女は首を縦に動かした。
「……字は書ける?」
彼女は首を振る。
……頭が痛くなってきた。
話せない、字も書けないとなると彼女がどうしてこんな事をしたのか。その理由を聞く事ができない。
(……貧乏くじだったなぁ……)
俺は天を見上げ、大きく溜息をついた。


徹夜中の息抜き(?)です。
文章が破綻してるかもしれないです。ご了承ください。
90とあるスレの577sage :2003/12/08(月) 09:27 ID:7oNXSFpM
|∀・)
>>84
どもお疲れー
そのお弁当ソヒーたん製ということにして
Hなの1つ書こうかな
ありがとう

>>88
いいぞいいぞいいぞー
3階でいいんだね、んじゃ向かわせて頂きます
あー職場でも書きたいなあ
仕事早く終わらそうっと
どんな状況にも繋げてみせるから
安心しなさい
骨はひろってやるって!
・・・なんてね

他の2次職もお待ちしております

|彡サッ
91名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 10:52 ID:JfZZA7Do
>>88さん
確かに萌えはしませんでしたが、燃えました。
恐慌に陥っている剣士と脱出に燃える魔術師コンビいいじゃないですかっ。
初心者っぽくない、とはおそらくマジ君を言っているのかと思われますが、
『先生』氏の教えによって「信念をもった初心者マジシャン」、と考えればまったく問題ないかと。むしろ燃え。
ガタガタ震えて命乞いする描写も切羽詰ってて良かったです。
引き続き書くんだ! いえ、書いてください。

んでもって、僭越ながら気になった部分なんぞ指摘させていただきたく。
『咄嗟に火柱の壁を展開させたのは本当に咄嗟だったからだ。』→咄嗟が連続して少し違和感。
『念力の弓』→読み返してわかりましたが、初めに見たときアーチャー居たっけ? と思いました。
私の読解力不足だったという線は否めませんが、表現改善の余地があると思いました。

>>とあるスレ577さん
マジ君たちが結局死んでしまうのか脱出できるのか、それはわかりません。
しかし、もう少しいじめたほうがいいかと思うのですがどうでしょうか。それに……
|゚д゚)……(←そろそろ先遣隊をピンチに陥れようかと画策中)
|゚∀゚)ウフフフフ
|゚∀゚)・∵:.ウッ
92名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 10:55 ID:JfZZA7Do
>>52さん
これからどうなりますかぁぁぁ!
(*´Д`)b<GJ
93初投稿sage :2003/12/08(月) 13:06 ID:0eSbAwk6
萌えスレの貧乏あるケミ子でデンパジュシーンしたんですが
長くなってしまったんでこっちに投稿します
文章力、表現力の無さはご容赦ください_| ̄|○

-----------------------------------------------------------------
朝方の伊豆ダンジョン。
人気のないダンジョン内を進んでいく、♂騎士と♀アルケミストの姿があった。
「ふああああ〜なんだよ、こんな朝っぱらから狩りに出ることはねぇだろ?」
眠たい目をこすりながら、騎士がぼやくと
「なに言ってんのよ!人のいない今のうちに、狩りまくってレアアイテムも製造アイテムもたくさんGETするのよ!」
アルケミストの方はやる気満々だ。
といっても、戦っているのは殆ど騎士のほうで、彼女はといえばアイテム収集係に徹しているのだが・・・
しかもPC3なため移動速度が極端に遅い。
「おーい、置いていくぞ!」
「なに言ってんのよ!こんな物騒なところにか弱い乙女を置いて行く気?」
やれやれ、と騎士はため息をつく。
強気なことをいいながら、本当は寂しがり屋で臆病な彼女。
ちょっと強引なところも悪ぶっているところも、その弱さを隠すためだ。
騎士はそれを知っている。だから彼女のどんなわがままもつい付き合ってしまうのだ

彼女に出会ったのは数ヶ月前。
プロンテラの大通り。どこにでもあるような露店を開いていたアルケミスト。
しかし、彼は見逃さなかった。
「なぁ」
「な、なによ?」
突然話しかけられて、彼女は思わずびくっとなる。
何か後ろめたいことがあるようなそらし気味の視線、ギクシャクとした態度。
それを見て彼は自分の考えに確信を持った。
「あのさあ、詐欺なんてみっともないこと辞めたら?」
「な・・・、失礼ねっ!詐欺だなんて!あたしがするわけないでしょ!?」
「じゃあ、露店の名前紛らわしいから変えたほうがいいぜ?S無しマフラー1Mってさ・・・」
「むきぃーーー!なによなんなのよあんた突然やってきて!営業妨害よ!訴えてやるんだからぁっ!」
突然真っ赤になって逆切れするアルケミスト。
騎士はそんな彼女を見て苦笑しながら、
「どうやらその態度を見る以上、悪いことをしてるって意識はあるみたいだな」
「なっ・・・そ、そんなことないもんっ!放っておいてよ!あんたには関係ないでしょ!」
アルケミストは憮然とした態度で、早急に店を畳み始める。
「あんたのせいで気分が萎えちゃった!今日はもう店じまいよ!今度会ったらただじゃおかないからね!」
そんな捨て台詞を吐いて彼女は足早に立ち去っていった。

その夜。
「あうー、お腹すいた〜」
ぎゅるぎゅるお腹の虫を鳴らしながら、プロンテラ郊外をアルケミストは歩いていた。
ついムキになって、早々に店じまいをしてしまったが、せめて夕食代ぐらいは稼ぐべきだったなぁと後悔する。
街に戻って露店を再開することも考えたが、さっきの騎士に鉢合わせたら気まずいし・・・
そう思いながらポリンやルナティックを叩くアルケミスト。
リンゴやにんじんのドロップを期待しているのだが、ゼロピやクローバーだけがどんどん貯まっていく。
「ああーん、もう!なんで私ってこんなに運がないのよう・・・」
思わずへたり込んでしまうアルケミスト。
殆どの財産を費やして作成したホムンクルスは失敗作に終わるし
狩りをしようにも軍資金はないし。
商売しようにも品物もろくな物が無いし。
変な奴には捕まるし。
おかげで夕飯は食べ損ねるし・・・
「しょうがない・・・もう夕飯はあきらめてうちに帰ってふて寝するか・・・」
よっこらしょ、と重い腰を上げる。
しかし次の瞬間・・・
「きゃあああああああああああああああ!!!!」
94初投稿/2sage :2003/12/08(月) 13:07 ID:0eSbAwk6
数分後。
ボロボロの姿で頭を抱えてしゃがみこんでいるいるアルケミストを、あきれた顔で見おろす騎士がいた。
街の近辺を巡回中、悲鳴が聞こえたので慌てて駆けつけてみたら・・・
あのアルケミストがボーカルととりまきにたこ殴りにされていたのだ。
「あのなあ、お前、仮にも二次職だろ?これくらいであんな凄い悲鳴を上げるなよ」
「だって・・・ひくっ・・・うくっ・・・戦闘は得意じゃないのよっ!それに、ろくな武器も装備も持ってなかったし・・・それに・・・」
きゅるるるるるる・・・
涙目で抗議するアルケミストの惨めさに、一層拍車がかかるお腹の音。
「なんだ?お前、腹減ってるのか?」
「う、煩いわね!ほっといってっててばー!」
「・・・ったく、かわいくねぇな」
騎士はため息をつきながら、ボーカルの戦利品を彼女に手渡した。
「ほら、これやるよ。売ってなんかうまいもんでも買いな」
「・・・え?」
手渡されたものを見て目を丸くするアルケミスト。
「ちょっ・・・これオールドスターロマンスじゃない!あんた、自分でなにをしてるか分かってんの?これいくらすると思ってんのよ!?」
「安心しろ、俺は夕飯を買うくらいの金は持ってるからな」
「そ、そうじゃなくって・・・」
「いいから、いい加減素直になれよ、金が無くて困ってるんだろ?」
「う・・・うん」
半分押し切られる形で頷くアルケミスト。
「よし、じゃあな!悪い商売はするんじゃねぇぞ」
騎士はポンポンッとアルケミストの頭を軽く叩くと、屈託の無い笑顔を見せて立ち去ろうとした。

その時、意を決したようにアルケミストが叫んだ。
「ま、待ちなさいよっ!」
「・・・?なんだよ?」
オールドスターロマンスをずいっと差し出すと
「やっぱりこれ、貰うわけにはいかないわ!」
「なっ・・・?」
思わずポカーンとなってしまう騎士。
アルケミストはというと、さっきまでの元気の無さはどこへやら、威勢良く
「んふふふ。決めた!”貰う”んじゃないのあんたに”借りた”ことにする!」
「はぁ?」
「まったく、ニブイ男ね!」
アルケミストは「はぁっ」とため息をつくと
「あたしはあんたにこれを借りるの。借りたんだからちゃんと後で返すって言ってるの」
「そんな事、俺は望んでねぇよ。欲しけりゃやるって・・・」
「いいから!」
きっぱりと言い放つアルケミスト。
そしてニッコリと満面の笑みを浮かべて言った。
「だから、ね。借金が返済できるまであたし、あんたに着いて行くことにするわ」
「え?えええっ!?」
「だって、少しずつでも返していきたいしさ、だったら一緒にいるほうが効率的でしょ?」
「い、いや、根本的になんかそれって間違ってな・・・」
「ああもう、くどい男ね!あたしがそうするって決めたら、そうなるの!」
そう言いながらずんずん歩いていくアルケミスト。
「ちょっとお!置いてくわよ!」
「・・・・・・・・・ふう」
あまりにも強引な話だが、その振り向きざまに見せた、無邪気な彼女の笑顔を見て騎士は思った。
「まあ、こういうのもアリ・・・かな」

伊豆ダンジョン4F。
「このおっ」
騎士に「お前も少しも戦え!」と散々言われて、渋々短剣を振るうアルケミスト。
「えいっえいっ!とりゃあっ!」
強烈な一撃が、フェンの体を引き裂いた。
すると・・・
「・・・え?こ、これって・・・」
遺されたアイテムを見て、驚愕するアルケミスト。
とても高額で取引されているフェンカード。
それが彼女の足元に落ちていた。
騎士への借金を返すのに、充分な価値のある品物だ。
しかし彼女は、騎士に見つからないように、そのカードをこっそり懐に隠した。
「どうした?なにかあったか?」
「んん〜?べっつに〜」
何事も無かったかのように済ました顔を見せるアルケミスト。
「それよりも、無駄口叩いてないでがんがん狩る!」
「はいはい」
苦笑しながら騎士は戦闘に戻って行く。
アルケミストは懐のカードを見て微笑む。
(これは、まあ、お守り代わりにでも取っときますか・・・ん〜これでまた借金の返済が延びちゃうけど・・・ね)
・・・二人の旅はまだまだ続いていくようだ
95えべんはsage :2003/12/08(月) 13:35 ID:EWim/Zh6
 何か物音がするたびに胃は縮み上がり、激しい嘔吐感をボクに突きつけた。
不快な感覚にボクはうめき声をもらした。いっそ思いっきり吐けたら楽になるのかもしれない。
残り少なかった『吐瀉できるもの』はついさっき魔法士と歩き出してすぐに吐き出していて、もうこれ以上吐くものがなかった。
寒くて暗くて臭くて怖くて惨めで、どうしようもなく体が震えた。どうしてこんなことになったんだろう。こんなはずじゃ、──なかったのに。
「う、うう……」
 ブレイドを固く握りしめたボクは、魔法士の前を進まされていた。
かれよりもボクが前に居たほうが安全性は高いらしいから、ボクは嫌だったけど仕方なく前に出た。杖で殴られた頬がまだ痛かった。
こつ、こつ、と杖が床を叩く音が規則的に聞こえる。片足がないからそうしないと歩けないのだろう。
 こつ、こつ、こつ、こつ──
「あ、あの、手のお化けとか、歩くわにさんが出てきたら……。ど、どうするんですか?」
 反響する杖の音が怖かった。いつ途切れるのかと思うと地面がひっくりかえって上から落ちてきそうだった。
杖の音が止まった。そのまま静かになったから、ボクは見たくもなかったのに振り向いて見てしまった。
片腕の杖で自分を不恰好に支えている魔法士と、もう片腕の手の中には──
「なんとかするに決まっている」
「ひゃっ……あ、っは、はい」
 ぎらぎらとした目でボクを睨みつけ言ってから、魔法士はつらそうにうめいた。ボクはそのまま進みだすのがはばかられた。
「あの、い、痛くないんですか?」
「それがおれたちの流れになにか関係があるのか?」
「い……っいいえ」
「前だ」
 かれの言葉はボクの心臓を掴みあげた。
「っわひ!」
 慌てて魔法士に背を向けると、ばさばさという音と小さな鳴き声が聞こえた。
それは聞き慣れた蝙蝠の羽音と、子鼠の鳴き声に違いなかった。だからボクは安堵して剣を構えることができた。
ファミリアとタロウが相手ならならボクだってやれる。見知った相手だと思うと、モンスターだというのにボクは心が落ち着いた。
 集中したボクに暗闇から飛びかかってきたのは、ボクの頭ほどもある大鼠だった。タロウじゃなかった。
「うがはっ」
 みしり、と嫌な音がして浮遊感に包まれたボクは、そして背中にひどい衝撃を受けた。息が出来なくなってボクは咳き込んだ。
ジャケットなんてなんの役にもたたなかった。白いもやのようなものが視界を覆っている。どこかで爆発するような音がする。
大鼠に体当たりされた胸のあたりがずきずきと痛み、また嘔吐感がこみあげた。
吐けないはずだったのにボクの口から何かが吐かれた。黄色っぽい胃液じゃなくて、赤色の胃液だった。
ばさばさと耳障りな音がして、肩のあたりに灼きごてを押し付けられたようなびりりとした感覚が走った。
「鼠はおれがやる。そいつは貴様がやれ」
 魔法士は淡々と、無慈悲な、ボクなんかてんで心配していない声でボクに命令すると、ボクにはわからない言葉で喋りはじめた。
ボクの目の奥が熱くなって、泥と血で汚れた頬を目の奥から出てきた熱が洗い流した。なんでボクがこんな目にあわなきゃいけないんだ。
こんなはずじゃなかったのに、もっとボクはうまくやれたはずなのに、どうして、どうして──
 びりびりする肩もずきずきする胸もどこか遠い世界の痛みのようだった。かれに見つかってしまう前のように、ボクは頭を抱えてうずくまった。
神様、もう助けてくれなくていいですから、せめて、せめてお願いです。楽に死なせてください。
痛いのはもういやです、怖いのももういやです、だから、だからお願いです。楽に死なせてください。
「何をしている。死にたいのか」
 魔法士が怖い顔をしているのがわかった。そういう声だった。ボクは頭を抱えたまま首を横に振った。
かたく閉じたまぶたから熱いものがこぼれ落ちて、耳の奥で血が逆流するような音をたてていた。
「もう……っ、もういやだよぉ! 痛いのも怖いのももういやだよ!」
 途端に背中にがつんとした痛みが発生した。
「ひぐっ」
 次に爆発するような音。顔をあげると体勢を立て直しながら、魔法士がもの凄い形相でボクを睨みつけていた。
魔法士の背後で炎が壁のように燃えていて、まるでかれは悪魔のようだった。殺されると思った。
「ごっ……、ごめんなさ──」
「いいか」
 魔法士の茶色い髪を炎が不規則に照らしていた。ボクは見た。
左側の頭に赤茶けた汚れがこびりついていて、それがかれの目元まで隙間なく覆っていた。
爛々と獰猛な眼光を隻眼から放って、親の仇みたいにボクに言葉をたたきつけた。
「痛いのが怖いのがいやなら、戦え」
 もう一度魔法士の後ろで爆発する音がして、それがどうやら魔法士のせいだということがわかった。
その瞬間だけかれは炎の壁に目を向けて、ボクにわからない言葉でつぶやいたからだ。
「楽に死ねるとでも思っているのか。ばかめ。奴らがそんな殊勝なわけがないだろう。いたぶられて殺されるぞ。
もてあそばれて殺されるぞ。おれを見ろ。こうなるのがおちだ。わかったか。わかったら戦え」
 ボクはわけがわからなかった。こんなはずじゃないのに、こんなはずじゃないのに。ただただそう思いながら、早く時間が過ぎてくれるのを待った。
「行くぞ」
 魔法士の声に気づいたボクの足元に、血みたいに赤い色の蝙蝠が転がっていた。
いつのまに立ち上がっていたのかわからなかったし、ブレイドから血がしたたっているのもどうしてなのかわからなかった。
でも、一つだけボクにはわかったことがあった。
 きっと魔法士は、ボクを犠牲にしてかれだけ逃げるつもりだ。そうに違いなかった。
 いや違う、かれはボクを元気づけるためにわざとああ言ったんだ。いや違う、いや違う、いや──
 自分の呼吸が耳障りになったのははじめてだった。ボクは煩悶しながら、それでも背中の痛みに押されるように歩き出した。
96えべんはsage :2003/12/08(月) 13:48 ID:EWim/Zh6
>>88さん
キャラクタを使ってしまいました、しかも一人称。ごめんなさい。_| ̄Z○
マジ君がすげーカッコよくて、ムラムラ来てしまって、どうにも書かずにはいられなかったのです。

>>初投稿さん
(* Д)・∵:.    ゚  ゚
私的にクリティカルな組み合わせ&シチュエーションでした。もう腰砕けです。
蝶 G J
97名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 23:02 ID:QnOMEzK.
 それはつまり、最悪の状況というべきなのだろう。
 相方とともに首都プロンテラへ戻ったのは、つい先程のこと。幾度となく繰り返してきたグラストヘイム古城の魔物討伐は、もう一度や二度ではさしたる修練にもならなくなってしまった。
 そんな私たちが、普段よりもずっと長く城内を探索していたのは、他の目的もあったからだ。
 イミューンマフラー。姉と同じ、聖職者の道を選ぶと言った彼女への、ほんのささやかな贈り物の筈だった。
 どうにもそそっかしくていけない彼女が、少しでも楽に戦えるように。私なんかに憧れて、冒険者という危険な世界に足を踏み入れてしまった妹を、少しでも護ってあげられるように。
 予定よりも一日遅い帰還。私は逸る気持ちを抑え、まずは大聖堂へ報告に出向く。
 そこに飛び込んできた火急の一報は、私を跪かせるに十分すぎるものだった。

 ――首都上水道に、グラストヘイム地下水道のものと思われる魔物が多数出没している。貴女の妹も先日から上水道へ出向いたまま、いまだ戻ってはいない――

 視界が暗転し、周りの音が遠ざかる。自分でも気付かないうちに、私は妹へ手渡す筈のマフラーを強く握り締めていた。
 恐慌状態に陥った私に、相方の冷静な声が届く。王国騎士団が魔物討伐の勇士を召集する通達を寄越している。ならば、することはひとつであろうと。
 すぐにでも上水道へと向かおうとする私を、しかし相方は引き止めた。召集をかけているのであれば、騎士団に情報が集まっているだろうと。
 こんなときに冷静で居られる相方を一瞬憎らしく思い、すぐに恥じた。私が混乱してしまっているから、彼女が冷静を努めてくれているのだ。いつもなら熱くなるのは彼女の役目だというのに……。

 騎士団に着いた私たちに上水道討伐隊指揮官が伝えてくれた情報は、芳しくないものばかりだった。
 犠牲者はすでに数十名に及び、いまだ多くの冒険者が取り残されている。討伐の勇士は予想以上に集まっていない。先遣隊として送られた者たちは、指揮官曰く頼りない。
 幸か不幸か、私の妹は生死の確認が取れていない者のひとりであった。
 指揮官から上水道調査の依頼を受けたが、私たちは辞退を申し入れた。原因なんてどうでもいい。私はただ、妹の無事を確かめたいだけなのだから。
 無骨な冒険者ゆえ、どうしても任務に私情を挟んでしまいますから。私がそう言うと、指揮官は諦めたように頭を振り、妹救出のために上水道へ向かうことを許してくれた。
 せめて他の勇士が来るまで待機してはどうかという騎士団員の言葉も、私には届かなかった。どうにか引き止めようとする団員を、指揮官はいいからと引き下がらせた。
 私たちが名の知れた冒険者であったことも、理由であっただろう。普段は名声など堅苦しいだけだが、今回ばかりはありがたかった。

 私たちと入れ違いに、騎士団に救出者が出始めている連絡が入った。先遣隊も、言われる程無能ではないではないか。
 しかし、その中にも妹の名はなかった。やはり、行くしかない。
「ごめんね。疲れているのに、付き合わせちゃって」
「ん」
 短く、返事を寄越す相方。それだけで、全てを理解してくれていることが伝わってくる。ピーッ、と相方のファルコンが頭上を一回り飛んでみせた。なんて頼もしい相方たちだろう。
 マフラーを濡れないように道具袋の奥に仕舞うと、私たちはゆっくりと地下への階段を降りて行った。
98名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/08(月) 23:07 ID:QnOMEzK.
|x・) 第2陣(2人しかいませんが)出発……

|x・).oO(ところで、妹って誰のことなんでしょうね。無事だといいですね)

|彡サッ
9952sage :2003/12/08(月) 23:27 ID:8mY0UCxU
毎回読んでくれる人がいてくれて嬉しい限りです。
思いつきと試行錯誤の組み合わせのシナリオなので、右に逸れたり左に逸れたりしますがご了承ください。
それではこれからもよろしくお願いします。


――ふと、淡い花の香りが漂ってきた。
見上げると月は高く昇っており、もう夜も更けたという事を俺に告げいていた。
横を見ると、あの少女が安らかな寝息をたて、眠っている。
先程まで敵意をむき出しにしていたのだが、やがて大人しくなってくれた。
まるで野良犬みたいな娘だな――
そんな事を俺は考えた。
が、すぐにいいようのない不安が押し寄せてきた。
今まで死んだ冒険者や調査隊……人数を数えれば20人は下らないだろう。
その犯人……つまり彼女が法によって裁かれれば……
見たくないはずの光景が頭をよぎる。
確かに殺人は重犯罪だ。しかし、なぜか俺は彼女が死ぬところを見る事ができそうになかった。
俺には……どうすればいいのだろう……?
その問いには誰も答えてくれなかった。


夜明けと共に出発した俺達は昼前にはプロンテラに着く事ができた。
道中、これと言った問題はなく、逆に平和すぎるほどだった。
一番の不安材料だった彼女も、大人しく俺のあとに付いてきてくれた。
「街は初めてか?」
彼女は小さく頷く。
初めての街で、迷ったりしないだろうか。俺は少しだけ不安になった。
「それじゃあ……迷うといけないから俺にしっかり掴まってくれるか?」
そう言った後すぐ、変な提案をしてしまったと反省した。
言い直そうとしたが、彼女はあっさりと了承してしまったらしく、そっと俺の手を握ってきた。
……なんだか恥ずかしい。
「と、とにかく。ちゃんと付いてくるんだぞ」
手に伝わってくる暖かさにすこし戸惑いながら、俺は城門をくぐった。


雑踏をくぐり抜けると、ほどなく騎士団本部に到着した。
中に入り、騎士団長の執務室へと向かう。
その途中、俺は昨夜考えていた事を心の中で確認した。
たとえ間違っていたとしても、俺はこの道を選ぶ。
その決意と共に、俺は執務室のドアを開いた。

「王国騎士団第零特務部隊所属、マナ・ラインフィールド、ただいま帰還しました」
「うむ、ご苦労だった」
部屋の奥の椅子にはがっしりとした初老の男性がいた、誰であろうこの人こそ騎士団長である。
彼は静かに俺に言った。
「報告をしなさい」
「はっ、プロンテラ南西の湖付近で発生した連続死亡事件についての調査結果を報告します。死亡の原因は……他殺でした」
「モンスターによるものか?」
心臓が高鳴った。
心に決めたとはいえ、まだどこかで吹っ切れていないところがあるようだ。
だが、ここで迷ってなんかいられない。俺は意を決して口を開いた。
「……はい。召還されたと見られる高等モンスター数体を確認しました」
「それで……どうしたかね?」
団長が少しだけ身を乗り出した。
「……その場で全て排除しました」
「ふむ、分かった。それで……その娘は?」
「はっ、どうやら迷っていたらしく、モンスターに襲われる危険もあったので保護しました」
「なるほど……」
そう言って、団長は彼女に優しく話しかけた。
「お嬢ちゃん、恐かったかい? もう大丈夫だよ。もうすぐパパとママに会えるからね」
彼女はその言葉がよく理解出来ないらしく、頭の上に?マークを浮かべている。
「報告ご苦労だった。しばらく休んで次の任務に備えたまえ」
「はっ、失礼しました」
最後に敬礼をし、執務室を後にした。
ドアを瞬間、どっと体中の力が抜けてしまった。
「はぁ……嘘も楽じゃないよ……」
そう呟いてへたり込む俺を、彼女はただ不思議そうに眺めていた。


なんかまた文章破綻ぎみです。
申し訳ありません。_| ̄|○
10052sage :2003/12/08(月) 23:32 ID:8mY0UCxU
しかも脱字……
もうだめぽです_| ̄|○
101接敵。sage :2003/12/09(火) 03:21 ID:GSDmseKY
 さあ。状況を整理しよう。
 こちらの戦力は手負いの魔法士一人と剣士一人。どたらも駆け出しで錬度は低い。
 対する敵戦力は不明。判明しているのはその敵全てが半端な強さではないということ。こちらが正面きって戦えば、一部の間違いも無く殺される。
 此方の目的は下水道よりの脱出。現在位置は地下三階。敵戦力の真っ只中。
 あちらの目的はこれも不明。もとより化物に理由などありはしない。人を喰らい徘徊し瘴気を振りまく唯それだけだ。

      オンリーワン
 脱出方法は 唯一つ。 この魔窟と化した下水管を、接敵することなく通り抜ける。

 それがいかに困難なのか。それがいかに不可能なのか。
 前を行く剣士はおっかなびっくりで話にならない。愚かな。震える力を足に換えろ。呟く泣き言を六感に移せ。狂気の泥は此方を逃がさず、悪意の鰐は全てを裂く。
 もはや。
 最早、一刻の猶予も。
 男は一歩を踏みしめる。歩、それは生存に寄る一歩である。
 すでに、足は一本。『半分』だ。

 最早。一刻の猶予も。

 頭蓋を握り締める。
 剣士よ、怖れる剣士よ。
 目を覚ませ。流れを見よ。お前は死出に逝くつもりか。

 信ぜよ。


 びくりと剣士が歩を止める。
 ――ついで、

 ずぞ。ずぞ。ずぞぞぞぞ。

 滑る、しかしそれは這うと言ったように。そしてその音は頭の奥に槍のように刺さっている。逡巡は刹那も無かった。
「隠れろ」
 硬直し、微動だにしなくなった剣士の襟首を掴み曲がりかけた角に身を潜ませる。そっと片目を覗かせる。光の無くなった闇の向こうは見通すことは不可能であるが、その這うような音は絶え間なく続いていた。
 現象を有るがままに受け入れるのは当然のことだ。
「おい」
 至極小声で剣士に呟く。土気色になっていた剣士は相変わらず硬直から解かれない。そんなことでは困る。
 切り抜けるには、二人のほうがよいのだ。
「おい。固まっている場合か。恐怖に犯されるな。受け入れられぬなら感じるな。死を否定しろ。生を貪れ。生存に貪欲になり死滅を拒否しろ」
 あるべき流れを望むべき流れへと。出来ぬ事など何も無い。
 殴りつける。後頭部を壁面にたたき付ける。
「戻ってきたか。目が覚めたか」
 呆けたような剣士の首を右手で巻き込み額と額を付き合わせる。
「忘れたか」
 片目で剣士の目を覗き込む。受け入れろ。
「受け入れろ。『こうなること』は既に過去だ。今は全て過去だ。聞け、この音を。来るぞ。あの忌々しくも恐ろしい泥と狂気の掌がおれたちを圧殺しにやって来る音だ。これは今だ。既に受け入れるべき世界なのだ。さあ来たぞ。もうすぐそこまで迫っている。あと数刻もしないうちにおれたちは魂までも喰らわれてしまうだろう。だが、だが。もしや、もしやおれたちは生き延びる事ができるかもしれん。考えろ。猛然と真っ直ぐと只管に考えろ。何をか。
 生き延びる方法をだ」
「――あ」


 ずぞぞぞぞぞぞぞ


 ぞ。


 ――さあ。

 生存の時間だ。
102名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 03:22 ID:GSDmseKY
 どうもです。肯定の言葉を頂き誠に感謝です。

>91
ご指摘、ありがたく頂戴いたします。今後注意していきたいと思います。


>初投稿氏
もまえさま某アルケミ子スレの住人か! じつは漏れもだ! だから言う事は一つ!

 悪 ケ ミ  マ ン セ ー

>えべんは氏
(  Д)・∵:.    ゚  ゚
うぉぉやっべこれいいよやっべ。
全然全く切片も構いませぬ、むしろ仕様してくださり感謝の極み。

>第二陣
おお、そうきたか、と。GJ!

|・).oO(ええ、無事だといいですね)

|彡サッ

>52
ノービスで強いって時点でもう燃え。そしてこれからの展開を予想して(*´д`)
103名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 03:57 ID:OiW/di4U
勝手に書いてみよう。


下水3F。
今私はここにいる。
私は防御に特化したクルセイダ。
ガスマスクにオーク帽の格好だが、これでも女だ。
このLVではもはや盗虫どもの攻撃など痛くもない。
ここに来たのはz稼ぎのため。緑ゴキカードで、一儲けをたくらみここに来た。
そう考えて装備を整え、下水4Fに来たのがどれだけ前だったろうか。

もはや時間感覚が完全に狂ってしまったようだ。
ここに来たのが3日前だったか5日前だったかわからない。

ある日と突然まったく盗虫どもをみかけなくなった。
獲物がいなくなれば当然探しに回る。

そして見つけたのはここにいるはずもない、ワニや窓手。
そしてそいつらに殺された冒険者たち・・・・・だった肉塊。
そしてまだ、必死で生き延びようとする冒険者たち。

私は戦った。
私たちは戦った。
そして勝った。
多くの者たちが死んだ。
あるものは一撃で。あるものは弄られるように。

残ったのは、少なくとも私とアコライトが一人。
後はしらない。
ほかにもまだどこかで必死に戦っているものがいるかもしれない。
だが、私には荷が重すぎる敵が多すぎた。

私に出来ることは敵と殴り合ってその足を止めること。後衛を護り、攻撃させる隙を作ること。
敵の気をひきつけることは出来ても、倒すには自分一人ではあまりに非力だった。

せめてウィザードといわず、マジシャンでもいれば。
もっと多くの人を死なさずにすんだのかもしれない。

私は非力だ。
わかっていたこの事実がひどく痛い。だが打ちのめされている暇はない。

私達は徐々に徐々に後退してゆく。出口へと向けて。
途中で襲い掛かる敵は、私が敵の攻撃を受けつつ、ゆっくりと時間をかけて倒し、
アコライトが私を癒し、援護する。
そして気力体力ともになくなりかけて、休憩する。
そしてある程度回復したらまた出口へと進む。

ここ数日か、数時間か、敵の数が多い。休む暇がない。
もしかすると今まで運がよかったのかもしれない。
一度に来なかったのだからきっとそうだろう。

アコライトの気力はすでにない。気を失っている。
回復剤も食料も切れた。一応5日分は用意したはずだったが・・・・・。
蝶の羽は敵が現れだしたときに新米のアコライトに救援を呼ぶために使わせてもうない。

ジリ貧だ。

・・・・・・・・・・・・・・足音が聞こえてくる。
敵だろうか。

オーディンに祈りをささげ、ガスマスクをはがす。
せめて素顔で死のうか。
私は傷だらけになった盾を掲げ、ツルギをかざす。


神よ、わが戦いを照覧あれ・・・・だ。

そして私はニヤリと笑った
104名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 05:54 ID:089uXeiQ
漏れも乱入させてくだちい。


渾身の力をこめて振り下ろしたトリプルボーンドチェインの一撃が、アノリアンの頭を叩き割った。
カートにあれだけ積んできた物資も、残りは1/3を切っていた。
足元にはガーゴイルとクランプの死体。幾度となく俺を致命傷から救ってくれたイミューンマントも、もうボロボロだ。
まだ地上までは遠い。この物資を使い切っても、生きてここから出られるかどうか…………。
俺は束の間の休息を取るため自分のカートにもたれかかり……一言、吐き捨てた。

「くそっ、こんなの聞いてねえぞ……!!」

……ただの、腕試しのつもりだった。
もういつだったかは忘れたが……単身で、ここの主・黄金の蟲を殴り倒すブラックスミスを見た。
何時の日かあの人のようになる事を夢見て、ただの露店商だった俺は戦闘ブラックスミスになった。
有り金の大部分をはたいて、装備は整えてきた。肉もミルクも蜂蜜も回復剤も、カート一杯になるまで積んできた。
今ではハイオークとも真っ向渡り合う俺が、どれだけあの人に近づけたのか……試したかった。

が、探せど探せど……黄金の蟲は見つからなかった。
それどころか、気味悪いほどいたはずのゴキブリ共がみるみるうちにその数を減らす。
異変に気づき始めた刹那、背後に殺気を感じて振り向いた俺が目にしたのは……
恐ろしい勢いでこちらに迫ってくる、巨大なネズミ。
ここの上の方に住み着いてる奴らとは比べ物にならない、猛毒を持った獰猛な連中――――。

それからは必死だった。必死にならざるを得なかった。
カートに積まれた回復剤を湯水のように使い、格上の敵を相手に血路を切り開く。
戦闘型とは言え、俺は所詮ブラックスミス。本職の騎士・アサシンには及ばない。
こんな状況で出来る戦いと言えば……物資量に物を言わせたゴリ押し程度だ。

ところどころで目につく、まだ修行中と思しき冒険者の死体が痛々しい。
俺は何度と無くカートのイグ葉に手を伸ばしかけ……そして、思いとどまる。
ここで蘇生する事は可能。だが、どの道彼らではこの化物どもには歯が立たない。
俺の足手まといになる可能性もある。同じ死の苦しみを、もう一度味あわせるよりは――――。

――生きなきゃ、な。ああはなりたくない。
形は違えど、これこそ俺が望んだ力試しの舞台。
まだ食料はある。死ぬと決めつけるには早すぎる。
戦闘型ブラックスミスとしての実力を、存分に発揮できる滅多にない機会じゃないか……

俺は闘志を奮い起こし、もう随分と軽くなったカートを引きずって慎重に歩き出した。
曲がり角に、人影らしき物が見える。
敵か、それとも冒険者か……確認する間もなく、人影は俺に斬りかかってきた。
反射的にバックラーで受け流す。胸にはホーリーシンボル。
オークヘルムの下には、醜悪な兄貴のツラとは似ても似つかぬ端正な美貌。

――――味方だ!!!!

「落ち着け、剣を納めてくれ! 俺は人間だ!!」


推敲無しの乱筆乱文失礼します&103様勝手な乱入ご容赦を。m(_ _)m
105一方、GHでは。(1/3)sage :2003/12/09(火) 05:54 ID:Sx8.IItU
いても立っても居られなくなったので、不肖の身ながら初参加です。
黒幕まで決定してしまっていいのやら…まずかったらスルーしてください。


どちゅっ、という耳障りな音と共に既に泥の塊と成り果てたそれを見遣り、姉は息をついた。
「…おかしい。1週間前に来た時は…もっと、魔物の数が多かった筈だ」
辺りを見回す。なるほど、確かに以前パートナーと来た時とは様子が違っていた。

紫色の、大人の頭ほどはあろう凶暴な鼠も。
泥が形を成した生物とすら呼べるかどうかさえ解らぬモノも。
醜悪な、直立する鉈を手にした爬虫類さえも。

その数は、明らかに少なくなっていた。

かれこれ一時間は探索しただろうか。
その間、交戦したのは只の数度。冒険者が多ければこのような事はままあるのだが、すれ違う影も
無い今日のこの状況を見れば、それは異常とも言えた。

グラストヘイム下水第3層。
プロンテラ上水道と繋がっている、という噂が囁かれ始めて既に久しい場所。
そこに、私達は居た。目的などは無い、只の酔狂。
…の、筈だった。この異常事態を目にするまでは。
106一方、GHでは。(2/3)sage :2003/12/09(火) 05:55 ID:Sx8.IItU
「フィル。2時方向、クランプ2、スティング1、ガーゴイル1。行けるか」
「ちょっとキツイ…けど、なんとかなるっしょ。行っとこう。」

瞳でタイミングを取る、3…2…1…GO。

「クランプから行くよ!」
「了解。キリエエレイソン!」

薄い光に私は包まれる。同時に、『鼠殺し』の武器を手に取って。
ざざん、ざざん…ソレが二度目の体当たりをする前に屠り、そのまま次の目標を─
「─っ!」
矢が、右足を射抜いた。ついで、スティングの平手打ち。
ごきり、と胸骨が嫌な音を立てたが、間もなくそれは癒され、2匹目の鼠の死骸が転がった。
短剣を腿のサックに収め、カタールを手に取る。火の力を宿す、爆炎のカタール。
一度、二度、三度、四度─やがて、スティングに降り注いだ光の剣を合図に止めに入る。
「滅せよッ!」
カタールでの8連撃を受け、ソレは形を失った。
と、同時にぽん、と間抜けな音を立ててガーゴイルが消える。
伏兵を警戒し、周囲を見回す。特に、異常は無し。
107一方、GHでは。(3/3)sage :2003/12/09(火) 05:55 ID:Sx8.IItU
「…ダメだな、今日は。溜まっていてこの程度とは」
「そうだねえ…帰る?このままじゃどうにもな」

ずずん、と揺れる地面。
5度、6度…計10回の揺れは、明らかな異常を示していた。
通路の奥が、ぼんやりと輝いている。次いで、また地震。
視線を互いに交わして、慎重に進むと。

「…こりゃあ、洒落になんないかも…」
「戻るぞ。急ぎ知らせなければ」

私と姉は、光の扉に飛び込んだ。


二人が消えた通路の少し先。そこには本来居てはならない者が居た。
カタコンベの主、ダークロード。
108とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 07:47 ID:.IJxRoow
|∀・)

>>all
みんなノッテルねえ
それではちょっとまとめてみようか
間違ってたら言ってね

|彡サッ
109とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 07:48 ID:.IJxRoow
「ふえっくしょん!・・・誰か噂してるのかな」

ローグの言葉を聞きつけて
アサが呆れたように頭を振って
彼の言いたいであろうことを引き継ぎます

「どーせアンタのことだから
“素敵なローグさんが助けてくれたの!もうあの人にメロメロ〜”なんて噂を期待してるんでしょ」

「へへへ・・・ご名答」

そんな二人のやり取りを
表情を変えずに見守る殴りプリ
心の中では

「・・・(どうせ地上では頼りない奴等だとか噂してるんだろう)」

と考えて
顔をしかめました
彼等が来ること自体
本当は間違っています
でも騎士団にまかせたままでは
救援到着まで
あと数日はかかるでしょう
きっと今頃も
暖かい暖炉の前で
たっぷりとした料理を囲みながら
太ったおっさんたちが
およそ真剣に考えているとは思えない
議論を交わしているのでしょう
想像していると腹が立つので
頭を振って
弁当の残りをつめなおしていると
ウィズ嬢がプリの方ににじりより
皆をくるっと見回すと
小声で話し始めます

「えと・・・いいですか?今まで気づいたことなんたけどお・・・」

彼女の話はこういうものでした
・確かにGHにしかいないモンスターがいる
・しかしなぜか皆通路の奥からしか出てこない
・ここまで来ても3人しか助けられなかった

「ん?どういう意味だ?おかしくはないだろう?」

頭をひねるモンクに向かって
自分でも確信がもてないという感じの表情を浮かべる魔法使い
しかし迷いを断ち切るように
顔を引き締めると
推理を話しつづけます

「こう思うの・・・いつものダンジョンだったら
全滅したパーティがいても死体は・・・少なくとも一部は残っていて
それで復活できることも多いよね
でも今回はさっきの剣士以外死体も見えない・・・
不幸にも全部きれいに食べられたか・・・“攫われている”って思わない?」

アサが深く頷くと
ウィズ嬢の推理を引き継ぎます

「なるほど・・・それとモンスターのほうは
“奥からしか現れない”ってのはつまり
“沸きポイントが決まっている、ほとんど一箇所”ってことね
これも普通のダンジョンじゃありえないことだわ・・・」

闇に眼をこらしたまま
ローグは頬を掻き掻き
彼の考えを漏らします

「枝・・・じゃないよな、その場合こんなのばかりってことはない
でもグラストヘイムからは距離がありすぎる・・・
誰かが何らかの目的で“送っている”と考えるのが妥当だよな」

この現象自体が
誰かにとって何らかの意味がある・・・
それはつまり
支配するものがいるということになります
それがワニや窓手よりも弱いということは
まずないでしょう
彼等全員
そのことに気がめいっていきますが
ふと気づいてウィズがアサの姉御に尋ねます

「ねえ、後続はくるの?連絡したんでしょう」

「・・・“できるだけ前向きに善処します”だってさ・・・」

あきれたような表情を浮かべながら
肩をすくめる姉御
心の中では
進むべきか待つべきか
はたまた戻るべきか
色々な意見が渦を巻いて
彼女の腹の虫を
騒がせるのでした

「・・・(あーーーーーームカツクわ・・・・)」

ー現在の状況ー

・救出3名
・先遣隊上水道2F途中
・先遣隊損害
ダメージモンクの心(修復不可能?)

・他の部隊
騎士とハンター(現在上水道に向かったところ)
魔法使いと剣士(現在3F)
クルセ、アコ、BS(現在3F)

・モンスター
窓手
アノリアン
クランプ
ガコ
ドレインリア
等確認

・その他
GH奥で
ダークロードの奇妙な行為を確認
この現象と関係があるかどうかは
不明
11017sage :2003/12/09(火) 08:14 ID:p.PQgvr6
17です。

何ていうか…、皆さん、文章が上手すぎて圧倒されています。
当初の構想ですが、色々とリレー小説が上がってきたのでボツになりつつあります。
(本当はGHまで何とか魔物を押し戻して災禍の元凶となる通路を潰す、というシナリオでした)
ですが、現実問題として距離がありすぎますし、それと同時にそこまでの物量作戦は無理でしょう。

>>109さんの案をベースにして筆を進めて頂ければ幸いです。
111上水道リレー小説進行状況中間報告sage :2003/12/09(火) 12:06 ID:3z66cMNk
黒幕っぽい奴も出てきたところで、一旦まとめてみました(自分のために)。

 はじまり(>>17)

 先遣隊(>>54-55,71,77-78,81,109
 人員→アサシン、プリースト、ウィザード、ローグ、モンク
 現在→2F中途で休憩中。モンクの心に損害大(修復困難)

 おれ&ボク(>>86-87,95,101
 人員→魔法士、剣士
 現在→3Fのどこかで接敵寸前(スティング?)

 姉妹の姉とその相方(>>97
 人員→プリースト、ハンター
 現在→妹を助けるべく上水道に突入

 私とアコライトと俺(103-104)
 人員→クルセイダー、アコライト、ブラックスミス
 現在→3Fのどこかでクルセイダーがブラックスミスを攻撃中

 私と姉(105-107)
 人員→アサシン、プリースト
 現在→ポータルに乗り転移中

 王国軍(騎士団?)
 人員→不明
 現在→会議癌ばってますっ!
112名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 12:08 ID:3z66cMNk
ミスってる_| ̄|○ゴメンナサイ…

 私とアコライトと俺(>>103-104
 人員→クルセイダー、アコライト、ブラックスミス
 現在→3Fのどこかでクルセイダーがブラックスミスを攻撃中

 私と姉(>>105-107
 人員→アサシン、プリースト
 現在→ポータルに乗り転移中

フワーリΛ||Λ
11393-94sage :2003/12/09(火) 12:46 ID:JUWqbv9Y
うおおお、レスがついてるΣ(゚д゚)
ありがとうです!
>96
そんなお言葉をいただいた私のほうが
(* Д)・∵:.    ゚  ゚
な状態です

>102
某アルケミ子スレの住人では無いですが
萌えスレに感化されまくっています

悪ケミ マ ン セ ー マ ン セ ー(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)

リレー小説楽しく読ませていただいてます
それぞれの個性が出ててこういうのも面白いですね
最後まで突っ走ってください!
114えべんはsage :2003/12/09(火) 14:21 ID:jIufAf1M
52さんの>>99 光 源 氏 計 画 の 予 感 !!
ごめんなさい嘘です許してください。
一段落目、というか初めの区切りで主人公がノービスの件で悩む部分。
首吊りなのか斬首なのかはわかりませんが、どうして見る事ができそうにないのか、
情が移った経緯というかその辺りの心理的な描写をしてほしかったです。
気づいておられるようではありますが、『俺には……どうすればいいだろう……?』は言い回しが変です。
山場的場面ですし特に気になってしまいました。で、
|*゚д゚)<続きはいつですか?

>>101さん
 ゚  ゚    .;∵・(Д *≡* Д)・∵:.    ゚  ゚
マジ君カッコよすぎ。こーゆーのが好きで好きで仕方のうございます。書けるようになりたいです。
『此方』『此処』とかの類いの表記を私はあんまり好きになれないんですが、
101さんの文体(特にマジ君のとき)ならば好きになることができました。
句読点の位置、文章のテンポ、マジ君の描き方、諸々ひっくるめて大好きだ!(*゚д゚)<ヤラナ──
| 葬);y=-   (。Д゚)・∵:
|葬 )つ(。Д゚)......<アルケミマンセー
|。Д゚)............<剣士君使用(事後)許可ありがとうございました。
115とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 15:18 ID:.IJxRoow
|∀・;)

>>111
う・・・>>97をなんでか
騎士とハンターだと思ってた・・・

_| ̄|○ <介錯ry
116とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 16:03 ID:.IJxRoow
|∀・)

>>103
んではその逃げることの出来た新米アコさんで
一つ書きます
勝手に男ということにします
よろしくー

|彡サッ
117とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 16:05 ID:.IJxRoow
僕がもう何度目か
騎士団の扉を叩き
必死の形相で
危機を訴えるのを
「またかこいつ」といった表情で
追い返す衛兵の冷たい眼にも
もう慣れっこになってしまった
数日立っているというのに
あいかわらず騎士団は

「準備できしだいすぐに出発する」

という返事以外
なにもしていない
蕎麦屋の出前じゃあるまいし
遅すぎる
食い物のことじゃないんだよ!!
こっちの仲間の命がかかっているんだ!!!
僕が騎士団の前で
神様も耳を塞ぐくらいの
ありったけの汚い言葉を吐いていると
先輩プリーストが
いつのまにか後ろに近寄ってきて
耳元で囁く

「来なさい・・・手がかりが掴めたようだ・・・」

その言葉に喜んだこっちが
先輩を引きずるようにしてついた大聖堂で
彼は一冊の古びた書物を取り出して言う

「キミに聞いたとき最初は信じられなかったが・・・
どうやら、昔もこういうことがあったらしい
この文献によると・・・」

昔話が彼と一緒に読む本の中から
紡ぎ出されるにつれて
僕はその内容のあまりの悲惨さに
唖然とする
昔、上水道から突然現れた凶暴なモンスターたちが
プロンテラをほとんど壊滅状況に追い込んだということ
響き渡る絶叫と泣き声
食われる死体の咀嚼音
燃えさかる炎
そういったものがプロンテラを覆っていき
一時は騎士団ですらも
撤退を余儀なくされたという
最期に死力をつくして
敵の親玉らしきものを倒したという話だが
それが・・・

「・・・こんなことってあるんですか・・・」

「うむ・・・可能性はないとはいえない
キミだって“不老不死”というものに興味はあるだろう
人間の命は星や大地に比べれば非常に短い
それが永遠になるというならば・・・たとえ人の命を犠牲にしてでも
欲しがる人が・・・いないとは限らないだろう?」

髪の生え際に
たっぷりと汗をかくと
僕は本から体を離し
眼をつぶりぎゅっと拳を握る
なんとかしなきゃ
なんとかしなきゃ
でもその時の恐怖が
自分の体をすくませる
あんなことにもう一度耐えられるだろうか?

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「・・・で、その親玉を倒すための武器が大聖堂に保管されているというところまで・・・読んだかね?」

その言葉に
眼をかっと見開き
先輩のほうを向く
彼はゆったりとした動作で
蝋燭に火をつけると
僕の前に立ち
ちょっと笑って
こういった

「来なさい・・・神様はキミを選ばれたのかもしれない・・・」

彼の肩の動きだけ追って
僕は聖堂の奥へとすすむ
やけに響くような気がする石の通路を
もうなんども通ったはずなのに
はじめてのところのような気がして
緊張のあまりこっちは
なんどもなんども
咳き込んでしまうのだった

なんどもなんども
118とあるスレの577sage :2003/12/09(火) 16:07 ID:.IJxRoow
|∀・)

どうかな・・・

|彡サッ
119名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 16:19 ID:cjkAuyU6
 私はその後ろ姿に憧れていた。

 颯爽と魔物に駆け行く姿は格好良かった。
 流れる後ろ髪は美しいと思った。
 背中越しに掛けられる声は優しかった。
 あなたの後ろ姿が見えるこの場所こそが、私の居場所なのだと本気で思っていた。

 出会ったのはプロンテラ南西に広がる草原。
 商人さんから安く譲ってもらった火矢を抱えて、初めてバッタの魔物を相手にした時。
 魔物と斬り結ぶあなたの後ろ姿を見つけた。
 その時に、私の目には魔法が掛かってしまったのだろう。
 強く惹かれ、離すことができなくなった。
 いつの間にか近付いていたバッタに殴られ、情けない声を出してしまったことで、彼女は私に気付いた。
 思い出す度に顔が赤くなる。そんな出会いだった。
 あなたの後ろ姿に見惚れていましたなんて、口が裂けても言えはしない。

 それから、私たちは二人で狩るようになった。
 彼女が前で剣をかざし、私が後ろで弓を引く。
 私たちの息はぴったりだったと思う。
 あっという間に、バッタは私たちの相手にならなくなってしまった。
 私は狩場をワンランク上げることを提案した。
 二人に敵う者などいるはずもないと、無謀にも信じていた。
 行き先はプロンテラ地下上水道に決まった。
 出発の前日に、私はなけなしのお金を叩いて、銀矢を買い込んだ。
 彼女はそれを見て頼もしい限りだと笑った。
 それから、銀矢の代金なんてすぐに取り戻してあげるからねと言ってくれた。
 二人で笑い合ったのは、それが最後になった。

 見たこともない凶悪な魔物がそこにいた。
 私の銀矢など何の役にも立ちはしなかった。
 為す術もなく、私たちは追い詰められた。
 物陰に隠れ、迫る死の恐怖に泣き咽ぶ私に、彼女はもう一度だけ微笑んだ。

 あなたに神の御加護がありますように

 私の手の中に、ひとつのロザリーが残されていた。
 彼女が何を言っているのか、その時の私にはまったく理解できていなかった。
 彼女が背を向ける。
 微かに震えるそれは、思っていたよりずっと小さかったのだと知った。

 彼女が飛び出して行く。
 いつもと変わらぬ、颯爽とした後ろ姿。
 そんな彼女に、私はただの一言も掛けることができなかった。

 そして

 真紅に染まる、彼女の背中

 もうぴくりとも動かない彼女を抱え、奥へと連れ去る巨大な手

 見たこともない後ろ姿が、そこにあった。
 見たくもない後ろ姿が、そこにあった。

 やがて彼女たちの姿は見えなくなり、

 私は大切な何かを失った。
120|x・)sage :2003/12/09(火) 16:28 ID:cjkAuyU6
|x・) 流れが速くなってきましたね。ワンテンポ置くために、犠牲者増やしてみました(ぉ

|x・) >115ですが、職業を明示しない私の文体が悪いので、お気になさらずに。

|x・) てことで、もう一度そのふたりに登場してもらおうと思います。 これから書くんですけどね。

|彡サッ
121名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 18:08 ID:cjkAuyU6
「静かなものね」

「ええ……、気味が悪いくらいに」

 地下上水道第一層は、文字通りの静寂に包まれていた。
 ここを訪れるのはもう数年振りになってしまっていたが、今の状態が従来在り得ないものであることは嫌でもわかる。
 月のない闇夜にも似た、深淵を思わせる雰囲気。魂に刻まれた原初の恐怖を呼び起こす、生きとし生ける者の天敵。
 常人には耐えがたいこの空気に、しかし私たちは何度も身を置いてきた。
 例えば魔法都市ゲフェンの地下に広がる古代ゲフェニアの大地。プロンテラ北の丘陵に佇む迷宮の森。
 それらに匹敵する何かが、この地に現れているのだ。まだ駆け出しの冒険者たちを多く迎え入れる、この上水道に。
 思っていたよりもずっと悪い状況に、最悪とは底の知れぬものなのだと今更の様に思い出した。

「さて、どうするの」

 私よりも入り口から数歩分離れた位置で、辺りに軽く視線を送りながら相方が訊ねる。
 パーティーとしての行動を決定するのは、いつも私の役目だった。私が考えている間、相方が周囲に注意を払う。いつものスタンス。
 気がつけば、私は大分冷静さを取り戻していたようだ。
 できるなら一刻も早く、妹を助け出したい。だが闇雲に探し回ってもよいことはないだろう。ならば……

「まずは先遣隊に追いつきましょう。彼らから必要な情報をもらって……その後は私たちに先陣を譲ってもらいましょ」

 出発前に届いていた情報では、先遣隊はすでに第二層まで到着している。
 また未確認ではあるが、それまでに救出された者以外には遺体すらも発見されていない。
 それが何を意味するのか。もし予想通りならば

「何かいる」

 思考は、相方の一言で区切られることになった。
 彼女の示す方向に意識を向けると、確かに何者かの気配が感じられる。
 燃え盛る敵意でも、凍えるような殺意でもない。もっと弱々しいこれは……

「心配いらないわ。出ていらっしゃい。私たちは……あなたを助けに来たの」

 声に誘われるように、人影が飛び出してくる。まだ表情に幼さの残る弓師の少女。笑えばきっと可愛らしいであろうその顔は、可哀相に今は恐怖と哀しみに侵されていた。
 私が優しく抱き止めると、少女は堰を切ったように泣き出した。

 少女は見た感じ、妹と変わらぬ程の歳だろう。
 転移の光の中に消えた彼女のすがるような瞳が、脳裏に焼き付いて離れなかった。
 仲間を犠牲にして、自分だけが戻ってきてしまったらしい。本当に大切な仲間だったのだろう。少女の言葉から、痛々しいまでに伝わってくる。
 彼女と共に地下水道を訪れた剣士の少女は、大きな手の魔物――おそらくスティングに連れ去られたらしい。生死は不明。おそらくはもう……
 身に付けることを許されぬ小さなロザリーを、祈るように強く握り締める少女。私はこの残酷な想像を、彼女に伝えることはできなかった。
 その子も必ず助けてあげるから。決して叶う筈のない約束を交わし、指切りをして、少女を首都へと送り返した。
 光の柱を見詰めていた私の肩に、相方の右手が置かれた。気付かぬうちに、杖を握る力を強めてしまっていたのだろう。左手が僅かに痺れている。
 少女に、妹の姿が重なって見えていた。恐怖に怯えて、震えてはいないだろうか。悲しい現実を前に、泣き出してはいないだろうか。
 駆け出しの頃というのは、その後の冒険者としての一生を決めてしまう程、大切な出会いや経験が少なくない。私たちもそうであったし、先の少女や妹だって例外ではないだろう。
 それらの場となってきたこの上水道に、居てはならない者たちが入り込んでいる。そして多くの新米冒険者たちに、消えることのない深い傷を負わせている。
 許せない。彼女たちの大切な時間を奪うなど、決して許されることではない。
 だが、状況が明らかになる度に、絶望はその深さを増している。
 連れ去られた剣士の少女。辺りを覆う闇の匂い。想像が確信へと変わっていく。
 事態はとうに、私たちだけでは手に負えないものとなっているかもしれない。
 それでも……
 私は一度深く息を吐くと、その手に自分の右手を重ねた。
 今は信じるしかない。妹が無事でいてくれることを。

「これ、持ってて。混ざるといけないから」

 不意に、相方が数本の銀矢を手渡してきた。

「これは?」
「あの子の願いがこもった銀矢。心強いでしょ」

 パチンと軽くウインクをしてみせる相方。
 表情にこそ見せないが、同じ弓師として、彼女にも思うことがあったらしい。
 なるほど、ならばこれは、私たちの切り札だ。

「よし。では、私たちも参りますか」

 私たちがやることは、初めから決まっているのだから。
 私は叶える限りの奇跡を起こすと、相方の後ろを走り出した。
122|x・)sage :2003/12/09(火) 18:15 ID:cjkAuyU6
|x・) 私も戦闘シーンを書いてみたいのですが、無理そうです。

|x・) 一人よがりな文章しか書けない能無しは、しばらく傍観者に戻ろうかと思います。

|x・).。o(クライマックスで描いてみたいシーンがあるけど、兼ね合いで難しそう)

|彡サッ
123名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 18:35 ID:41o60g7c
うわっ、覗いて見れば加速がすごい事に!?
リレー小説を書かれていらっしゃる皆さん、頑張ってください。
すげぇ楽しみに拝読してます。

>>93-94
萌え。率直に好みです。
理由なしでも一緒に行動できるようになるといいね、とか老人のように言ってみる。
やっぱり悪ケミの悪は、悪戯の悪なのだろうか。

>>99
この後の展開が、ものごっつく気になったりです。
えべんはさんの仰る光源氏計画を激しく希望。
・・・と、こっそり呟いてみる。
124名無しさん(*´Д`)ハァハァsageそして流れを無視する俺 ∧||∧ :2003/12/09(火) 18:39 ID:41o60g7c
「酔ってないか?」
「まさか」
 あたしがこの程度の酒量で酔う訳もない。間髪入れずに答えると、彼は片手を上げて追加を注文した。
「しっかし馬鹿よね、アンタ。出世も何も棒に振って、さ」
 さして上等ではない酒場の、やはりお粗末なカウンター席。
 店内は薄暗く姦しいが、それでも隣同士に座したこの距離ならば、お互いの声は聞き取れた。
「同じ事を何度も言うな」
 ふてたような台詞だが、瞳は穏やかに笑っている。
 この男は、かつてプロンテラの騎士だった。その居場所はかつて王城に在った。けれど――。
「オレの欲しい物はあそこにゃなかった。それだけの話だ」
 どうしてだろうか。今はあたしの隣なんかに居る。
「・・・」
 カウンターに乗せられたままの手に手を伸ばす。あたたかい、大きなてのひら。あたしの指がその指に絡んで遊ぶ。
「だけどさぁ・・・世間一般に言って、あたしはゴロツキよ?」
「法を守るのが善人とは限らない。法を破るのが悪人とは限らない」
 無愛想なマスターが、注文の杯を置いていく。
 軽くグラス同士を触れ合わせてから、仰がずにこいつは解った様な事を言って片目を瞑って見せた。
「いつも言ってんだろ。あたしに小難しい事言うなって」
 口を尖らすと、やっぱりこいつは穏やかな微笑みを浮かべる。少しばかり悔しくなって、あたしは身を乗り出した。
 唇を重ねる。触れ合わせるだけの、軽いキス。
「やっぱり、酔ってるだろ?」
「そうね――」
 この恋に。そしてアンタに。
「かなり、酔っているかもね」
12552sage :2003/12/09(火) 20:57 ID:aNv6ezGc
感想、ありがとうございます。
>102
やはりスパノビは浪漫ですよね。
自分も好きです。(だから書いてるんですが

えべんは様
>光 源 氏 計 画 の 予 感 !!
……どうしてそれを……!?
ともかく、個人的には辛目の意見は大歓迎です。
確かに、心理描写が薄かった所がありました。猛省します。
いつか修正してうpろだ等にあげようと思います。
……それまで続けばいいですが……

この頃は下水道リレーシリーズが盛況のようですね
ストーリー曲げてこっちの話も下水道n(ry
12652sage :2003/12/09(火) 22:28 ID:aNv6ezGc
嘘がこれほど辛いものだとは思わなかった。
今でも心臓が落ち着いていないし、冷や汗も止まらない。
先程から隣にいる少女が外に連れて行けと俺の服を引っ張っているが、俺にはもうそんな気力なんてかけらも残っていなかった。
「……頼むから静かにしてくれ……」
だが彼女は俺の頼みなど聞こうともせず、服を引っ張り続けている。
「はぁ……」
仕方なく、溜息をつきながら立ち上がろうとした、その時。
「マーーーーーーーーーナーーーーーーーーーーーたーーーーーーーーーーーーーん♪」
遙か彼方から聞こえてくる聞き覚えのある叫び声……
全身に悪寒が走る。
見たくはない、だが見なければいけない。
ゆっくり目線を向けたその先には……
「おうマナたん♪ 元気しとったか〜?」
……やたらハイテンションな同僚の姿があった。
「……ハンス、『マナたん』はやめろと何回言った?」
「今ので291回目やけど、何か?」
さらりとそんな事を言ってくれる。長年付き合ってるがこいつの性格には未だに馴染めない。
「で、どやった? 湖へのハイキングは?」
こちらの返事を待たず、連弩のように喋りまくる。
静かな場所に慣れた俺にとっては少し五月蝿く感じる。
「別に大したことは無かったよ、だから少し静かにしろ」
「そうだよ、マナも嫌がってるよ?」
「うぅぅ……紫苑も一緒にワイをいじめるんか……」
現れた同僚の司祭――紫苑――の協力もあり、ハンスは少しだけ大人しくなった。
「お帰り、マナ。湖の事件はどうなったの?」
「あぁ……それなら団長に聞いてくれ。もう報告してある」
「うん、分かったよ。それで……この娘は?」
紫苑が少女を指して言った。
「あ……あぁ、湖で保護したんだよ。迷子らしいんだ」
「マナたんの変態! ロリコン!」
誤解を招くような発言をしたハンスを足蹴にしつつ、紫苑は話を続ける。
「ふぅん……ね、お嬢ちゃん。お父さんとお母さんは?」
彼女は俺の時と同じく、無言の答えを返す。
「……あー、まー……孤児みたいなんだ、うん」
「そう……」
一瞬、紫苑の表情が曇る。だがすぐに笑顔に戻った。
「もう大丈夫だからね。寂しくないよ」
そう言って少女の頭を撫でる。
普通は喜んだりするものだが、撫でられてる本人は不思議そうな表情である。
「ほら、おいで」
そう言って手を広げる紫苑。だが少女は俺から離れようとしない。
「……懐いてるね」
「そう言われても……ほら、大丈夫だから、な?」
しばらく思案していたようだったが、やがておずおずと少女は紫苑の元に歩いていった。
紫苑は彼女を抱き上げ、再び頭を撫でた。
「ね、疲れてない?」
腕の中の少女が小さく頷く。
「それじゃあ……お姉さんと一緒にお風呂入ろうか?」
紫苑が突拍子もない提案をしたので、思わず問い返してしまった。
「な、なんでそうなるんだよ?」
「スキンシップだよ、スキンシップ♪」
すると、先程の蹴りでのびていたハンスが勢いよく立ち上がり、
「なんつーかなんつーか、ワイも混ぜてくれへん?」
とか血迷ったことを抜かした。
「……………………」
一瞬の沈黙の後、紫苑の蹴りが再びハンスに炸裂した。
127えべんはsage :2003/12/09(火) 23:48 ID:pLvZADuw
レス厨で申し訳ありませぬがご容赦いただけると幸い。

>>|x・)さん Σd(゚д゚*)GJ!
傍観者に戻らないで! クライマックスを描いて! 逆毛を愛しt(切り札銀矢DS
果たしてあの方かしらと邪推してしまいます。文章書き慣れてる印象を受けました。
後半部の姉が怒ってるところとか共感できましたですよ。駆け出しのころが懐しゅうございます(゚дÅ)
アチャ子を追撃せずに剣士子拉致ったのも気になりますし、是非続きを所望する次第でございます。
というか私ごときが意見するのはばかれるわけで_| ̄|○Skill Plzzzzz

>>124さん
違ってたらどうしようと怯えつつ三作目SAKAGet!! (゚д゚)9m サセテイタダキマスタ!!
片や相手に酔ってて、片や相手が欲しくって。
しっぽり、もといしっとりとした雰囲気が感ぜられます。
そして 騎 士 君 。もうねもうねハァハァh(人事不省

>>126さん
光源氏もロリコンのきらいがありましたから問題ないですよ。ね、マナたn(蹴
スパノビ子を育ててったらさぞやすんげぇ使い手になるのでしょう。ね、マナt(蹴
自分棚上げに意見してしまい申し訳のう。恐縮でございます。
山場通り越して谷かと思いますが、キャラの作り方出し方がうまいと思いましたですよ。
ハンス大好きー(゚∀゚)ワカリヤスクテゴメンヨ
128名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/09(火) 23:50 ID:pLvZADuw
消せばいいのか、そうかそうか。……_| ̄|○
;y=-( ゚д゚)・∵:.
129とあるスレの577sage :2003/12/10(水) 00:02 ID:BZCvNnR.
|∀・)フフリ

本当ににぎやかで楽しいねえ
>>|x・)さん
もしよろしかったら先遣隊まで追いついてくれれば
そこのシーンで共闘しましょうか?
戦闘えべんはさんが書くかもしれないし・・・
あとクライマックスのところで書きたいシーンがわかれば
見せ場とっときますよー

リレーも楽しいし
他の小説もいいですねえ
↑みたいにレスはあまりかけないけど(笑)
楽しんでます
ヨロシク
では

|彡サッ
130丸いぼうし@騎士団会議室sage :2003/12/10(水) 00:18 ID:Eiiq0TDk
「事情はよくわかりました。それが僕が呼ばれた理由ですね?」

 僕は、会議机の上に腰掛けて髪をかき上げた。
僕の態度を見て眉をひそめるご老体がたくさんいるがそんなことは知った事じゃない。
死にも消え去りもしない老兵に僕は尊敬の念などこれっぽっちもいだけやしないのだから。

「シュバルツバルドで科学を学んできた超エリィト魔導師であるこの僕にお任せあれ」

僕は机から反動をつけて飛び降り、会議室のボンクラどもに完璧な作戦を示してやることにした。
 黒板には地下水道の見取り図が大きく描いてあったが、いちいち突入して潰すだなんて
全くスマートさのかけらもありゃしない。言うなれば愚の骨頂だ。

「良いですか皆さん、現在水道を占拠しているのは高レベルの魔物ばかり、そこでいちいち
 冒険者を派遣していては、被害は拡大するばかりです。現に救出作戦も遅々として進んでい
 ないではありませんか。これは漸進主義的作戦の失敗を意味します。つまり、ソリューション
 は、一撃での解決以外に考えられません」

 騎士団の連中はフムフムと聞き入っている。まぁ、彼らの脳みそはペコペコのそれよりは
大きめという程度だから、僕の意見に異議など唱えられようはずもな――

「異議アリ!。どうやって一撃で水道全域を掃討するんだ?通路は入り組んでるし、
 敵がどこから来てどこにいるのかもわからんぞ。」

 黙って聞いていればよいものを。僕の作戦は理想的にして現実的。
盲点などあるはずもないのだ。

「ふむ、その点についてはマジカルリフレクタ技術を使用します。」

「なんだそりゃ?」

素人は黙っていてくれよ…。おかげで魔導工学の基礎の基礎から解説しなくちゃならなくなる。
131丸いぼうし@騎士団会議室sage :2003/12/10(水) 00:18 ID:Eiiq0TDk
「マジカルリフレクタ技術とはシュバルツバルドで開発された技術で、魔力場を生成し、
 電磁波、粒子、その他の軌道を偏向させます。今回はコレとLoVアレイを組み合わせて使用します。
  今回の作戦規模はWiz135人。内訳はリフレクタ制御とLoVアレイに64人ずつ、情報リンクに6人、そして
 総指揮がこの僕、で計135人です。
  まず、LoVアレイにより通常の数十倍から数百倍の威力のLoV…即ち核爆発を発生させます。
 コレをリフレクタで囲い込み、発生したエネルギーを一方向――もちろん水道の方向であるわけですが――
 にコヒーレント化して放出します。放出軌道上の温度は20万度を軽く超え、ありとあらゆる生命は生存不可能!。
 また、試算によれば岩盤で2Km隔てた先のアノリアンに致死量の放射線を浴びせることが可能であり
 軌道上でなくとも水道内の全ての敵を掃討することができてしまうのです!。
  この僕が考案した『スーパーノヴァシステム』ふふ、あながち名前負けしてるとも言えない威力でしょう…
 を使用すれば、この事態は速やかに収拾――」

「中にいる人間はどうなるんだ?」

「ですから、この環境下ではあらゆる生命は生存不可能だと先ほども…」

騎士団長は渋い表情で顔を上げ、僕と異議を唱えたボンクラ騎士とを交互に見ると、しばらくの沈黙の後
大きく息を吸い込んで口を開いた。


「このバカ学者をとっとと会議室からつまみ出せ!!」


君たちにバカと言われる筋合いはない、というか、この流れで何で僕がバカになるんだ!?。
こ、こら、腕を引っ張るな、うわーやめろーなにをするきさまらー

バタン、と音がして会議室の中には再び静寂が戻ってきた。大きく一つため息をつき、
騎士団長は宣言した。

「さて、諸君、検討を続けようか。」
132丸いぼうしsage :2003/12/10(水) 00:31 ID:Eiiq0TDk
見てたら書かずにはいられないこのスレの熱さに惹かれ、ものすごく久しぶりに書きました。

白熱した人間ドラマはかけないので、地上での軽めのお話をば、ってことで…
内容はオサッシクダサイ。
133名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 00:47 ID:l9tCkECo
久し振りにここ覗いてみたら、凄い盛り上がりでびっくり。

そして、件の首都上水道討伐プロジェクト一連の小説が、燃えて仕方ありません。
並行突入の、各PT毎にドラマがあって、もう面白すぎて面白すぎて・・・・・・。
続きと、ラストが気になって仕方ないです。
文字神様達、素敵な小説をありがとう・・・。
これからも、期待しています!!
134名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 05:52 ID:7cs9hUH2
 私がアコライトになったのは、お姉ちゃんのようになりたかったから。

 私が冒険者になると伝えたときの、お姉ちゃんの顔は今でも覚えている。
 困惑半分、喜びがその半分。もうその半分の哀しみと、諦めと決意が少々ってところ。
 ここまで見事に分析できるのは、さすが妹だって誉めてもらいたいくらいだ。
 反対はされなかった。私が真剣に考えた末のものだって、わかってもらえた証拠。

 大聖堂で服事の制服を授かったときは、本当に嬉しかった。これから、お姉ちゃんと同じ道を歩ける。そう考えるだけで、踊りだしたい気分だった。
 お姉ちゃんもめいっぱいのお祝いをしてくれた。よほど嬉しかったのだろう。人前だということを忘れて、ほっぺにキスの雨を降らせてくれた。
 私も大概にシスコンだけれど、お姉ちゃんも立派な「姉バカ」だと思う。
 表ではそういったところは隠してきていたのだろう。大聖堂でも特に有名な冒険者であるお姉ちゃんのそんな姿は、周りに大きな衝撃を与えた。
 もちろん、その後に持てる力を費やして、緘口令を敷いたのだけれど。
 余談だが、お姉ちゃんの相方さんは今でもこの話を持ち出しては、お姉ちゃんにそれはたいそうヒドイ目(相方さん談)に合わされているらしい。

 さすがにこの件は恥ずかしかったみたいで、大聖堂から帰ってからはもう、はしゃぎまわるようなマネはしなかった。
 お姉ちゃんの温かい抱擁と、優しいキスを期待していただけに、とっても残念だ。
 代わりに一振りのメイスをくれた。大した物じゃないけどと、手渡されたメイスはまだほとんど新品のようだった。
 おそらくは酔狂で作ってみただけの物なんだろうけど、お姉ちゃんのお下がりというだけで私は嬉しかった。
 それにしても。これ以上は絶対に無理というところまで精錬を行った、クワドロプルハリケーンメイス。その価値くらい、私だって知っている。やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんってことだ。
 甘えるのは今回だけと決めて、受け取ることにした。もちろん、今でも大事に使っている。

 それから、たくさんのありがたーいお話を頂いた。
 聖職者は常に辺りに注意を払いなさい。仲間の命を預かる職業だと強く自覚し、パーティーの内外の様子に目を向けること。
 パーティーの進軍は聖職者が決める。自分が少しでもダメだと思ったら、必ず進言すること。聖職者が無理を通すようでは、もとより成功は難しい。
 聖職者は最後まで倒れてはいけません。聖職者が立っていることで、仲間は勇気を得るのだから。
 もし倒れるのならば、最後の一瞬まで仲間のために奇跡を振るうこと。どんな絶対絶命の状況でも、ただのひとりが生き残れるならば、その持てる力を全て使わなければなりません。
 どれも大変そうだとは思ったけれど、お姉ちゃんのようになるには必要なことだと自分に言い聞かせた。
 けれど最後に言われた言葉だけは、私にとってとても辛いものだった。

「私を呼ぶときに『お姉ちゃん』は禁止。冒険者になるのだから、子供っぽいところは直していかないとね」

 そう言って笑うお姉ちゃんに、私は恨みがましい表情を向けた。
 そういうところが子供っぽいって言ってるのよ、とお姉ちゃんはまた笑った。

 それからは、人前では「姉さん」か「姉」を使うようになった。けれど、家では変わらず「お姉ちゃん」を使った。
 始めは叱っていたお姉ちゃんだったが、なんだかんだでこの呼ばれ方が好きだったんだろう。数日もしないうちに、家の中だけならばと許してくれることになった。
135名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 05:53 ID:7cs9hUH2
 カエルやバッタである程度の修練を積んだ私は、ついに魔物が巣食う迷宮に足を踏み入れることになった。
 と言ってしまうと大袈裟だが、プロンテラ地下上水道はそんなに危険な場所ではないとはいえ、歩いているだけで魔物が襲い掛かってくるのだから油断はできない。
 そのことを姉に伝えると、出立を三日だけ遅らせて欲しいと返された。
 それから相方さんに急いで連絡を取ると、あっという間にグラストヘイム古城への魔物討伐の準備を終えてしまう。
 私たちが帰ってくるまで待っててね、と言い残すと二人はさっさとゲフェン行きのポータルに乗ってしまった。
 姉が何をするつもりか、想像は簡単にできてしまう。前言を撤回しなければならない。
 私も大概にシスコンだけれど、姉は重度の「姉バカ」だ。
 いつまでも甘えてるわけにはいきません、と私は地下水道へ向かう準備をして、同じくさっさと家を後にした。

 騎士団で討伐隊に申し込むと、団員の方から姉がいかに立派な冒険者であるかを教えられた。そんなこと、私が一番よく知っているというのに。
 アコライトになってから、もう何度、姉と比べられただろう。
 私にとって自慢の姉だった。だから姉の話をされるのは、とても気分が良かった。
 けれど、最近は少し嫌な気分になる。
 私は姉さんじゃない。
 姉のようになりたいと思って選んだ冒険者の道だけれど、姉と比べられる度に、その言葉は苦痛となっていく。
 私は大切な何かを失いかけていた。

 薄暗い地下水道は、気分を下げるにはあまりにも効果的だった。
 盗蟲を一匹ずつメイスで叩き潰しながら、私は頭の中で渦巻く嫌な考えを打ち払えずにいた。
 自らの身体を癒すこの奇跡の力は、一体何のために手に入れたものだっただろうか。
 ようやく手に入れた、姉と同じ力。だが私は姉ではない。この力は姉の代わりにはならない。私は……姉のようにはなれない?
 黙考しながら、うわの空で歩いていた私に、突如コウモリが牙を立てた。
 しまった……、こんなに近くに来るまで気付かなかったなんて……
 聖職者は常に辺りに注意を払いなさい。姉の忠告が脳裏を過ぎる。
 なんて情けない……。私は涙目になりながら、自分を癒し、襲い掛かるコウモリにメイスを叩きつけた。
 動転しまっているのだろう。思うように当たらない。私が苦戦していると、仲間の戦闘に反応したのか、もう一匹のコウモリが姿を現した。
 次第に悪くなる状況に、背筋を嫌なものが通り過ぎる。嫌だ、自分がなぜ力を求めるのかもわからないまま、終わりたくはない。
 次の瞬間だった。
 激しい爆音と共に火柱が立ち上がり、新たに迫るコウモリが一瞬で炭と化した。
 これに驚いたのか、私に張り付いていたもう一匹のコウモリが動きを誤り、振り回されるメイスが命中する。
 さらにもう一本、私の横から伸びた杖に殴打され、コウモリは地に落ちた。

「ありがとうございます」
 汗を拭いながら、私を助けてくれた相手の方へ向き直る。そこに居たのは茶色の髪が少しハネた魔法士だった。
 その姿を見るなり、私は不思議な気持ちに包まれた。
 なぜだろう。さっきまでの陰鬱さがウソのように、私は穏やかに微笑むことができた。
 そして、なぜだろう。目の前の彼は、少し照れているようだった。
136|x・)sage :2003/12/10(水) 06:17 ID:7cs9hUH2
|x・) インターミッションのつもりが、長くなりすぎちゃいました……;

|x・) という訳で、全然傍観者に戻っていなかった愚か者です。

|x・) この後のシーンもすでに出来上がっているのですが、ちょっと投下を躊躇しております。

|x・) 唐突ですが、レスタイム。

>>127
えべんは氏にGJって言ってもらっちゃったよぉ……|箱|x;)
傍観者にはまだ戻ってなかったようです。クライマックスはとりあえず様子見。逆毛はごめんなさい(ぇ
恐らく想像されている方とはまったくの別人です。
勝手にあなた様の固定ファンになったヤツだったりするのは、秘密にしておきますね。

>>129
勝手に追いつかせてくれていいので、どうかよろしくお願いします。
どんな戦い方をするかという情報が必要なのであれば、軽く書いてみますけれど。
書きたいシーンの伏線は適当に放り込んであるので、しばらくはこのまま進んでよさそうです。

今さらですが>>102
私もマジ君に惚れちゃったひとりです。
文章の中でも動かしてあげたかったんですけど、私の力量じゃ手に負えません∧||∧

そして>>132
セージきゅん 播|箱|x・)GJ!

|x・) レスタイム終わり。ダラダラと失礼しました。

|x・).。o(やっぱり続き投下しないとマズイですか……?)

彡サッ
137名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 11:49 ID:yQEL8Hdo
>>102さん
接敵後のことは現在執筆中だったりするのでしょうか?

>>130に丸いぼうしさん降臨シテル―――(゚∀゚)―――ッッッ!!!!!
超エリィト魔導師君が最高です。事態解決の糸口にも使えそうですし、全然軽くないと思います。
ちなみにスーパーノヴァシステム概要は難しくてわかりませんでした。鉄アレイかと(゚∀゚)モレモ キシダンイン!!
でもコヒーレント化の意味調べたら、ちゃんと意味が通ってて震えがきました。

>>134さんマヂデスカ!! 二重に(  Д)・∵:.    ゚  ゚
件のマジ君とここで絡むわけですね!
そして顛末があまりに。・゚・(ノД`)・゚・。なわけですけれどもGJ(つД`)b
それと一つだけ。135の後半部。地下水道入ったところなんですが、『気分を下げる』というのは違和感がありました。
その前の騎士団で話してるときに盛り上がってるような描写、だんだんテンション下がっていく描写がありますから、
入った途端にストンと『沈ませる』といいんじゃないかなー、とか意見してみるテスト。ゴメンナサイゴメンナサイ
んで、やっぱり続きは投下しないとマズイと思うのですよ。
|*゚д゚);y=-    Σ(・x| 箱 |
138|x・)sage :2003/12/10(水) 14:01 ID:7cs9hUH2
|x・)・∵:. なんか噴出してるヤツです。ごきげんよう。

|x・)・∵:. 続きを投下すると、書いた本人が軽く落ち込んでしまうので、先にレスだけ……。

>>137
ご指摘の部分、まったくもってその通りだと思います。
徹夜で脳みそとろけたまま書いて、簡単な日本語すら思いつけない状態だったのです;;
自分的にもかなり違和感があったのですけれど、投下しないとレスできない小心者でして〓■●_
あとご意見を出してもらうのに、謝る必要はないです。はい。
本日の教訓、ちゃんと推敲はしましょう。

そして>132はWizきゅんだったことに気がついた∧||∧
しばらく傍観者になることですし、一発ミミックに食われてきます。

|ミミック|x・) 続きですが、痛いシーンがありますので(押さえ気味ですけど)そーゆーのダメな人は飛ばしましょう。

|ミミック|x・)ノシ

|ミミック|<アァン
139名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 14:03 ID:7cs9hUH2
 私たちは臨時のパーティーを組むことになった。
 彼が炎の魔法で魔物を撃ち、私はメイスと癒しの奇跡でサポートする。
 初めてとは思えないくらいに、私たちはお互いを理解し、協力しあえた。
 楽しかった。私が奇跡の祈りを行う度、彼が笑顔を向けてくれる。仲間の役に立てることが、何よりも嬉しく感じた。
 そう、私は仲間を手に入れた。先程の自問に答えるために足りなかったものを、見つけることができた。
 私が手にした力は、姉の代わりではなくなった。私の仲間を助ける力は、私だけが持つものなんだから。
 彼に導かれるままに、私たちはさらに下層を目指す。
 その途中で、私は新たに風の奇跡を起こす力を得た。彼もまた、念力の矢を放つ魔法を習得した。
 何もかもが順調だった。そう思い込んでいた。このときすでに大きな間違いを冒していたことに、私は気付くことなんてできなかった。
 層をもう一つ下ったところで、異変は訪れた。

「きゃっ」

 思わず口を出た悲鳴は、慌てて手で抑えたところで彼に聞かれてしまっただろう。
 目の前に、何かの肉片と思われるものが落ちていた。見回せば、辺り一面に同じような肉片と何本もの触手らしきものが散らばっていた。
 彼はこれがヒドラと呼ばれる魔物のものであることを教えてくれた。また、何か強い衝撃を受けてバラバラに吹き飛んだようであると、付け加えた。
 気付くと、コウモリの羽音が聞こえなくなっていた。同じように、大量にいた盗蟲が一匹たりとも見えなくなっていた。
 心なしか、辺りがさっきよりも暗く見えた。光が少なくなったのではなく、闇が濃くなったような感覚。
 何かがおかしい。姉譲りの直感が、警鐘を鳴らす。
 彼もそのことに気付いたようで、もう少し先に進み確認してみようと言ってきた。危険があるようなら、急いで戻ろうと。
 もう一刻の猶予もないと、私の中の何かが叫んでいた。だが、私は彼に従った。
 自分が少しでもダメだと思ったら、必ず進言すること。私はまたしても、姉の忠告を忘れていた。

 何が起きたのか、私には理解することができなかった。
 あるはずのない沼が、私たちの足をすくった。バランスを失い倒れ込む私たちの目の前に、巨大な泥の塊が現れた。
 みしり、と私は自分の身体があげた悲鳴を耳にした。
 強烈な嘔吐感とともに、世界が暗転する。意識が残ったのは、奇跡としか思えなかった。
 耳鳴りの向こうで、彼の悲痛な叫び声がした。私の視界に映った彼は、ひどくおかしな形をしていた。
 彼は、ああなんてことだろう。片足を巨大な手に「持っていかれて」いた。
 あまりに現実離れした状況に、私は壊れてしまったんだろう。こんなときだというのに、どこからともなく姉の声が聞こえてくる。
 聖職者は最後まで倒れてはいけません。聖職者が立っていることで、仲間は勇気を得るのだから。
 姉の言葉はもう今さらでしかなかった。私の身体は動かない。立ち上がることなど、もう金輪際ありはしないのだから。
 彼が吼えた。立ち昇る火柱が、泥の魔物を押さえ込む。
 しかし、魔物はそれだけではなかった。私の頭よりも大きいのではないかと思うに巨大なネズミが姿を見せたかと思うと、あっという間に火柱に突っ込んできた。
 さらにその後ろから、二本足で歩き空いた前足に鉈を握るワニがゆっくりと近付いてくる。加えて、風船のような顔を持った悪魔が、弓に矢を番えてこちらを向いていた。
 どすっ、と音を立てて彼の片目を奪い去った。それでも彼は倒れなかった。それが何の助けにもなるわけではない。このままでは、やがて力尽きて倒れるだけだ。
 その刻はもう遠くはない。そこでまた、姉の声が聞こえた。
 もし倒れるのならば――そうか。そこで私はようやく理解した。私が冒した間違い。
 立派な冒険者になるためではない。仲間を助ける力が欲しかったわけでもない。
 冒険者である、姉の生き方そのものに憧れていた。
 私は、お姉ちゃんと同じ世界を見てみたかっただけなんだ。
140名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 14:06 ID:7cs9hUH2
 私が叶えられる奇跡は、たったのふたつ。
 聖職者になって得た力は、たったのふたつ。
 それでも、私は祈らなければならない。
 彼を助けるために。
 お姉ちゃんに近付くために。
 このふたつの奇跡は、彼を生き残らせるために必要な力なのだから。

 お姉ちゃん。今このときだけでいいの。私に聖職者としてあるべき姿を。
 お下がりのメイスを力一杯握り締めて、私は動くはずのない両腕を天に突き出す。

「ヒール!」

 私が癒しの奇跡を祈ると、彼はそれに応えるように大ネズミに腹をかじられながらも、今一度、火柱を出現させた。
 片足を失ってもなお、彼は動くことができた。杖をつきながらも、ゆっくりと火壁の陰へと後退する。
 もう二人ともわかっている。私たちはこの魔物を撃退することは敵わない。それでも彼が動けるのならば、選択肢は残されている。
 火柱が魔物の行く手を阻んでいる間に、今度は彼に風の奇跡を祈る。これで不恰好ながらも、人並みの速度で動けるはずだ。
 彼はよせばいいのに、なんとか私の方に近寄ろうとする。もう私にできることは何もないのだから、私を置いてさっさと逃げるべきだよ。
 私の目の前には、鈍く光る鉈があった。最期の瞬間くらい笑っていたいのだけれど、頬が引きつって動いてくれない。
 死神の鎌が振り下ろされる。彼が何か叫んでいるけれど、深い耳鳴りがしていて聴こえなかった。
 まったく。命、賭けたんだから。ちゃんと無事に生きて戻ってよ?


 ねぇ、お姉ちゃん。
 私はこんなところで終わってしまうけれど。
 ほんの少しでも、お姉ちゃんに近付くことはできたのかな。
 あぁ、願わくば、もう一度だけでいいから、

 お姉ちゃんに抱き締められて

 優しくキスをしてもらいたいです
141とあるスレの577sage :2003/12/10(水) 18:14 ID:BZCvNnR.
|∀・)

さて・・・
>>121の二人が追いつくまえに
先遣隊の戦闘開始です
|x・) 氏のこの二人が
どんな戦い方をするかは知りたいと思いますので
書いていただけると有難いです
あとアチャ子の
銀の矢はラストシーン直前で使いましょうね
こっちも銀の杭(のようなもの)を使う予定ですので
って一寸ネタバレかな

>>丸いぼうしさん
こういう話も楽しいですね
GJ!

個人的にはマジ君にその姿のまま
危機であることを知らせる連絡役になって
欲しいのですが・・・
まあ話の流れに身を任せましょう
では投稿

|彡サッ
142とあるスレの577sage :2003/12/10(水) 18:15 ID:BZCvNnR.
「聞いてサカゲリーナ
 ちょっと言いにくいんだけど
 聞いてサカゲリーナ
 俺は姉御に喜んでもらいたくて
 WIZ嬢ををつれてきたんだけど
 まずかったみたい
 どうなるのかな?
 いい雰囲気だったのに
 また逆戻りかな?
 さみしいよう
 聞いてくれてあーりがと
 サカゲリーナ♪ 」

「・・・(こいつかなりの重症だな・・・)」

ローグが苦笑しながら
休憩中に上水道の壁にむかって呟くモンクの背中を
じっとみています
なんとなくさみしそうにみえる
その姿をオチしながら
彼はそれでも
こういう危機的状況でも
意識しているしていないに拘わらず
笑えるような行動が出来る仲間を
ちょっとだけ誇りに思うのでした

「あーーーーもうヤメヤメ、一旦撤退しようかなーーーーー!」

アサの姉御がわざとめんどくさそうな声をあげて
皆に撤退を促しますが
本心は皆わかっているので
だれも口を開きませんでした
一旦体勢を立て直して
何人かでもベテラン冒険者を追加して
再度救出にあたりたい
心の中ではそう思っているのですが
時間がそれを許してくれません
しかしここより深く進めば
さらにモンスターが出現するのはわかりきっています
全員どうしたものかと
頭をひねっている間に
ふと姉御の耳が
何かを引きずるような嫌な音を聞きつけます

「・・・前・・・来た・・・」

一瞬の後に
真一文字になぎ払われた鉈を
カタールで受け止めたアサの体が
続いて現れた大きな手の一撃に弾かれて
うしろまで吹っ飛びます

「ぐふっ!」

水道の壁に当ってから
体をひねって着地し
なんとか地面に激突することだけは免れた
彼女の唇の端から
一筋の血が流れ出します
そこにモンクとプリのヒールが集中する間に
後退しながら弓を放つローグの前に
炎と氷の壁が
立て続けに現れて・・・

「ノーマナーなんて言わないでよね・・・
封鎖させてもらうよ」

モンスターたちの咆哮の中
全員隊列を組みなおすと
少しづつ後退していきます
炎の壁と氷の壁が
激しい勢いで
削られていくのを見て
WIZ嬢の額から
冷や汗が流れ出しました

「・・・結構な数らしいな・・・」

モンクが自分の体を
鉄壁と化すために精神を集中し
体にオーラを纏っていきます
全員の顔に走る緊張
削られていく壁の向こうには
死を恐れずに炎に突っ込む
大ねずみや
窓手の姿が見え隠れします
最期の氷が
音を立てて崩壊した時
人間と魔物は
生存をかけて
狭い通路の中
真正面からぶつかっていったのでありました・・・

ー戦闘開始ー
143えべんはsage :2003/12/10(水) 19:05 ID:fvk6Qyec
全体的に谷っぽい展開が続いておりましたが、
まったく勢いが衰えないところは文神様方にGJと言うしかありませぬ。

|x・)さんの書いた>>134以降でまた山場への伏線ができましたね。
>>139も良かった。・゚・(ノД`)・゚・。セツネェ
マジ君があれだけ頑張れるのもわかるってもんです。
でもちょっとこの姉妹レズっ気があると思tt(ミミックに齧られますた

とあるスレ577さんの先遣隊も山場迎えてますし、これからどう転がっていくのか楽しみデス。
144えべんは@接敵……の寸前。sage :2003/12/10(水) 19:09 ID:fvk6Qyec
 殴られた。
 無防備な顔面に拳がぶつかり鼻から血が溢れ出る。痛いのにはもう慣れていた。だけど、やっぱり痛いのは怖くて嫌で目の奥が熱くなってしまう。そうしたら急にボクを睨みつける目が見えなくなって、途端にぐいと突き飛ばされたように感じた。頭が硬いものにぶつかり、さっきよりも小さい、だけどじんじんと芯に響くような痛みをボクに訴えた。嗚咽が漏れてどろりと口の中に入ってきた液体は錆びた鉄みたいな嫌な臭いがした。ボクはかれとなんかもう話したくなかった。どうせボクを見捨てるに決まってる。
 かれはボクの額に自分の額をぶつけ怖い目でボクを脅しながら、かれは一生懸命に口を動かしていた。何を言っているのかぜんぜん聞こえなかった、否、聞こえてはいたがそれを理解しようとしていなかった。自分はもう狂ってしまったんじゃないだろうか。さっきからずっと、ボクはただ一つのことだけを考えていた。こんなはずじゃないのに、と。
「──生き延びる方法をだ」
 聞こえなかった、聞きたくなかったはずのかれ言葉がなぜか鮮明に聞こえた瞬間、ボクのお腹のあたりに熱の塊みたいなものが生まれた。それは今までボクが感じたことがないほどの、激烈で醜悪な怒りの塊だった。
 偉そうにボクに講釈をたれるかれは、いったいかれは何様のつもりだ。なにが生き延びる方法だ、ふざけるな。なんだってボクがあんたのために働かなくちゃいけない、死ななくちゃいけない。冗談じゃない。あんた何様だよ。さっきからボクを痛めつけやがって。
「──あ」
 言いかけたボクの口をつぐませたのは耳の奥にこびりついていた音だった。耳障りで、堪えようもない絶対的な恐怖を喚起する音だった。身体中の毛穴がぞわりと開いて、冷たく粘性の高い液体が滲んだ。膝が高笑いしている。手が老人のように震えている。あのとき暗闇で見たものが脳裏によぎる。
 かつて人間だったぐちゃぐちゃの肉の塊が、ガラス玉みたいになった目で立ち去る人影を恨めしげに見つめていた。圧砕され、蹂躙され、跡形もなく破壊されたその肉の塊は絶望と悲哀に満ちたガラス玉を人影に向けていた。肉塊の頭だったと思しき部分に張り付いていたのは、恐怖に歪んだボクの顔だった。立ち去る人影は足が一本なくて、杖をついていた。
 どうしようもなく合わない歯の根を無理やり噛み締めると、悲鳴のように歯は軋みをあげた。ボクは悔しくて悔しくて仕方がなかった。このままじゃ魔法士の奴に利用されたまま、馬鹿にされたまま──
「その目だ」
 何を勘違いしたのか知らないが、魔法士の奴は凄絶な笑みを浮かべた。血まみれで笑うかれは、まるっきり狂人にしか見えない。
「俺は速くは走れん。だから貴様が先に飛び出して奴を誘導しろ」
 ほら見ろ。どうせボクなんか魔法士の奴にしてみれば捨て駒にしか過ぎないんだ。何が誘導だ。犠牲になれ、と言えばいいじゃないか。くそったれめ。
「貴様が誘導した奴の足をおれが止める。その間に出来得る限りの距離を稼ぐぞ」
 魔法士の奴がぐだぐだと演説している間にも、あの音はどんどん大きさを増していた。もうこれ以上は聞いていられない。
「わっ、……わかった」
 今の心境をまったく表さない怯えた情けない声だった。意識してそのような声を出しているわけではなかった。おそらく声帯に染み付いてしまったのだろう。魔法士の奴は曲がり角の向こうを凝視しながらつぶいた。
「行くぞ」
 迷っている暇はないし、迷うつもりもなかった。ボクは右手のブレイドを強く握って、左脚に力を込めて曲がり角の先へこの身を進ませた。
14552sage :2003/12/10(水) 19:14 ID:Yw6bo5KE
「ワイの体が死んでも魂は死なへん……」
「そうか、よかったよかった」
撃沈されたハンスをよそに、俺は刀の手入れを始めた。
まず、刀を鞘から抜き、表面の汚れを丹念に拭き取る。
「で、マナたん」
「マナたんって言うな」
「あの娘をこれからどないする気なん?」
俺のツッコミを無視し、ハンスはしゃべり続けた。
「……知らん。そこまでは考えてない」
「なんや、『お兄ちゃん』とでも呼ばせるんかと思ったんやけど」
「……一つ言っていいか?」
刀に打ち粉を打ちながら、ハンスに向き直る。
「……ここだけの話だが……彼女は言葉が話せない」
「……ホンマか?」
お気楽だったハンスが、真顔になる。いつもと比べるとその雰囲気はまるで別人のようだ。
「……あぁ」
「……そうか……」
いつになく、暗い表情をするハンス。だがすぐにいつもの調子に戻る。
「でも、喋れへんけど必死にコミニュケーションしようとするのって萌えへん?」
「萌えない」
打ち粉を拭いながら、キッパリと答える。
「……マナたんは浪漫がないな……」
「言ってろ」
ハンスとの会話を打ち切り、手入れの終わった刀を見る。
刀身は光を受けて鋭く輝いている――まるで刀自身が『俺に斬れない物はない』と言っているようだ。
「よし、手入れ完了」
「お疲れさん」
「お前も武器の手入れぐらいしろ」
気怠そうなハンスに忠告する。
「あー、ワイのは手入れめんどいから兵站係にやらせとんねん」
そう言われて、俺は忘れかけていたハンスの得物を思い出す。
……なるほど、あれは手入れに時間がかかりそうだ。
「かといって兵站係に任せっきりもどうかと思うぞ?」
「んー、そうか?」
などと雑談している間に、紫苑たちが戻ってきた。
「ただいま〜、いいお湯だったよ〜」
「ん、おかえり」
事務的な挨拶を交わす俺に対し、ハンスは
「いやー、流石紫苑ちゃん! 湯上がり姿も艶やかやね〜!」
と、媚びを売っている。もう蹴られるのはこりごりらしい。
「おだててても何も出ないよ」
紫苑はそんなハンスを優しくたしなめる。
「あれ? あの娘は……?」
一緒にいるはずの少女の姿が無いのに疑問を感じた俺は紫苑に問いかけた。
「あ、あの娘だね。ほら、こっちおいで」
紫苑が呼びかけると、通路の奥からアコライトの少女がなんだかぎこちなく歩いてきた。
「……誰?」
「だから、マナが連れてきた娘だよ」
しれっとそんな事を言ってくれる紫苑。
「いや、ノービスだっただろ? あの娘」
そう、彼女は初心者が身につけるショートパンツとシャツを着ていたはずだ。なのに目の前の少女は法服を着ている。
「えっとね、あの服汚れてたから、今は洗濯中なんだよ。だからこの娘には余った法服を着せてみたんだよ」
「へえ……」
よく見ると顔立ちは間違いなくあの少女のものである。
彼女は慣れないスカートに悪戦苦闘しながらも俺のそばにやってきた。
近くに寄られると、石鹸のいい匂いがして……何だか恥ずかしい。
「ほーっ、これなら将来いい女になるんとちゃうか?」
そう言いながらハンスは彼女を舐めるように観察する。見られている本人はかなり警戒しているが。
「……いや、これはこれで美味しそうやけど」
不用意な発言をしたハンスが三度紫苑を蹴りを食らう。先程のお世辞は何の効果も為さなかったようだ。
しかし……先程より女性らしさが増した彼女を見て、俺も内心ドキドキしていた。
(……末期症状だなぁ……俺も)
思わず自嘲の笑みが浮かんでしまう。
「ほな、この娘を遊びにでも連れていこか」
「賛成♪ ほらほら行こうよ〜」
立ち直ったハンスが彼らしい提案をする。紫苑も賛同し、せかすように俺の手を引っ張る。
「分かった、分かったから落ち着け」
それに釣られ、俺と少女が歩き出そうとしたその時――
「ラインフィールド大尉! 出撃命令です!!」
一人の兵士の叫びが、俺達の耳に届いた……


次から再び戦闘モードに入ります、多分。
私的には下水道に参加したいのですが……よろしいでしょうか?
146えべんはsage :2003/12/10(水) 19:23 ID:fvk6Qyec
丸いぼうしさんの名前欄の書式をパクリつつ調子こいて続けてしまいました_| ̄Z○ゴメンナサイゴメンナサイ
贅沢を言わせていただけるなら、
安否どちらかはわかりませんがここからもう一押ししてしまいたいところです。

とか書いてたらリアルタイムで52さんの>>145がキテル―――(゚∀゚)―――ッ!!
参加、しちゃっていいと思いますですよ。骨は577さんが拾ってくれるそうですし(・∀・)ヒロッテモラッタシ
ハンスの武器も気になります。
ラインフィールド大尉の動向も気になります。例えば本当にロリk(ry

失礼しました。;y=-( ゚д゚)・∵:.
147とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:18 ID:BZCvNnR.
|∀・)

52さん
参加していただけると楽しそうですね
よろしくお願いします
ちょっとついでで申し訳ありませんが
こいつらも連れて行ってください
いいですか?
投稿

|彡サッ
148とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:21 ID:BZCvNnR.
僕たち二人が大聖堂の奥の
あまり使われていない階段を
埃の上にしっかりと足跡をつけて
滑らないように一段一段降りていく間
先輩はさっきの文献から得ることの出来た情報を
こっちの心に残るようにということだろうか
低い声でお祈りのようになんどもなんども繰り返す

「そのものはどんなに激しい攻撃を受けても
急速に再生していったそうだ
騎士団も冒険者たちもこれには困り果て
有効的な手段が見出せなかったらしい
知能も高かったようで
モンスターたちを上手く操り
いくつかの作戦も裏をかかれて失敗したらしい
ただ銀の矢で攻撃したときだけ再生の力が多少弱まったようだという報告をうけ
それならばと強い銀を探したそうだ
古代の種族だけが作ることの出来た
オリデオコンよりも貴重な銀の武器
それを作り上げてついに一人の勇者が
親玉の心臓にその武器をつきたてたそうだ
それが・・・この下にある・・・」

かなりの時間同じ話を聞いて
もう耳にたこができるほどになったときに
僕らは大聖堂の奥までたどりついた
普段つかわれないその倉庫のなかには
一見するとガラクタしか入っていないようだが
先輩はその間に割ってはいると
ぶつぶつ言いながら
さらに奥へ奥へとすすんでいく

「まさか子供の頃のかくれんぼがこんなところで役に立つとは・・・たしかここら辺だとおもったんですけどねえ・・・」

先輩が法衣をたくし上げて
ごそごそやる姿に
僕はあっけにとられたように
後ろで突っ立っていたが
手伝いを申し出る前に
彼が歓声とともに
昔はきれいであったろう
りっぱな木の箱を取り出して
こっちにもってくると
目の前に下ろした

「これのようですね、文献と同じマークが書いてあります・・・開けますよ」

どんなにすばらしい武器が出てくるのだろうと期待した
僕のこころはふたが開いた瞬間に
寒いジョークでも聞いたように
凍り付いてしまった
そこにあったのは剣のさきっぽのような
ソードメイスの先っぽのような
杖のさきのような
・・・要するに短いとがった棒でしかなかった
先輩はそれを取り上げると
たいして光もしない
むしろくすんだ色といったその武器を取り上げて
困ったような表情でこういった

「・・・信じるしかないんでしょうねえ・・・」

-----------------------

「とりあえずいきます!また騎士団に!この本と武器を持って
・・・聞いてくれるか解らないけど」

僕が出来る限りの回復アイテムや蝶の羽を持って
大聖堂を飛び出そうとすると
いつのまにか先輩も旅支度を終えて
僕の肩を叩いてこう告げる

「キミ一人ではたよりないな・・・ご一緒しましょう
それに騎士団には知り合いもいますしね
わたしは“むらさきさん”と呼んでいますが
彼女ならなんとか私たちの話を聞いてくれるでしょう」

僕は先輩の好意に感動して
眼を伏せると素早く涙をこすりとる
その瞬間に彼は速度増加の聖魔法をかけると
体にグッと力を込めて
ペコダッシュのように
大聖堂を飛び出した

「・・・(待っててね・・・みんな・・・)」

後を追って飛び出すこっちのほうを
神様の像が
じっと見ていたような気がしたのは
僕の・・・気のせいだったのかもしれないが
ちょっとだけ心強く感じた

ほんとうにちょっとだけ・・・
149とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:23 ID:BZCvNnR.
|∀・)

言い忘れた・・・
>>117の続きです

|彡サッ
150とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:55 ID:BZCvNnR.
|∀・)

えと、あと>>103-104の続きです
沢山の人を扱うのって大変ー

|彡サッ
151とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:56 ID:BZCvNnR.
「それだけの荷物を持っていて蝶の羽を持っていないとは・・・御笑い種だな」

私はブラックスミスから野菜を受け取ると
一口齧って
自分がどれだけお腹が空いていたかを思い出した
アコライトの女の子も
押し頂くようにして受け取ったブドウを
赤ん坊のようにちゅうちゅうと吸って
どうやら人心地がついたようだ
憎まれ口を叩きながら
しばらく私たち三人は
カートを囲んで体力と気力を回復していく
つかの間の休息は
私たちの精神を再び開放し
目的を明確にしてくれた

----------つまり生きること
     生き続けること
     それが何より大事なことだ


「さて姉ちゃん・・・俺たちは今3階の奥のほうにいる
つまり地上までにはまだまだ距離があるってことだ
どうする・・・っていってもやることは一つだよな」

「ああ、そうだ、やることは一つだ
・・・姉ちゃんは止めろ、私はお前のような弟を持った覚えはない」

ブラックスミスの唇の端に
こんな面白いジョークは聞いたことがないというような
笑みが浮かぶ
私はそれを受けて
自分でも唇の端に笑みを浮かべてみた
アコライトの顔にも
少しだけ明るさが戻る

「・・・(いままで縁がなかったが・・・笑いとはなかなかいいものだな・・・
生きて出ることが出来たら、腹を抱えて精一杯笑うことにしよう)」

傷ついた盾を取り上げると
私は周囲に警戒しながら
BSと肩を並べて
その間に女の子を挟みこみ
一歩一歩できるかぎり静かに
戦略的撤退を始める
水道管に反射して響き渡る水音が
自分の呼吸の音が
自分の鎧の音が
敵をおびき寄せるのではないか心配だが
ふとこういうことにも気づいて
少しだけ心を明るくさせていく

“味方をひきよせてくれるかもしれない”

そんなことを考える
私の後ろにも
私の前にも
長い道が
暗闇に覆われて
ずっとずっと伸びていた・・・

ずっとずっと
152とあるスレ577sage :2003/12/10(水) 20:57 ID:BZCvNnR.
|∀・)

やってやるぜ!

|彡サッ
15352sage :2003/12/10(水) 21:39 ID:Yw6bo5KE
とあるスレ577様
了解です。バランス崩しかねないPTですがよろしくお願いします。
もしなんだったら強敵をバシバシぶつけてもらっても結構ですので。
キャラの方はプリと剣士でよろしいのでしょうか?
それと発掘した武器は何かの概念武装か何かでしょうか?(訳の分からない事を言わない
その辺りを教えてくれると嬉しいです。
154名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/10(水) 21:59 ID:7cs9hUH2
 弓師の少女と別れてから第二層に辿り着くまでの間は、とても静かなものだった。
 魔物の姿も、人の姿もありはしない。伝わるのは自らの呼気と、相方の連れるファルコンの羽ばたき。あとは金板を渡るときに響く甲高い足音が、深淵に吸い込まれて消える。
 水の流れる音、滴る音さえ聴こえない。耳の奥がじんと痺れる。辺りに漂う闇が、私の五感を蝕もうと手を伸ばしている。
 だが怖れる必要はない。相方は闇の中でもその感覚を失うことはなく、むしろ鋭く研ぎ澄まされて行く。

「いるよ。ちまいのが二匹」

 第二層に降りてすぐ。相方が矢に手を伸ばす。
 告げられて注意を向けても、私には気配すら感じ取ることができないでいた。
 だからといって、その言葉を疑う必要はない。彼女が居るというなら、確かにそれは存在する。

「足を止める必要はないわ。最速で処理して、先を急ぐわよ」
「オッケー。あと五歩。くるよ」

 寸分違わぬタイミングで、青い体毛をもった巨躯の鼠が姿を現す。

「レックスエーテルナ!」
「バイバイ」

 裁きの剣が舞い降りると同時。相方の弓から放たれた二筋の光は、標的を物言わぬ骸に変えた。
 倒れた躯の後ろから、もう一匹が踊り出る。一瞬で仲間を失ったというのに、紅く濁った狂気の瞳には怖れの色は見えない。
 数十歩もの距離を一瞬で詰める青鼠に、今度は三本の矢とファルコンの鋭い爪が襲い掛かった。
 人が到底敵わないその足を持ってしても、この距離は長すぎたのだろう。
 すれ違う毛の塊を振り返ることもなく、私たちは駆け抜けた。

 どんなに深く果てのない闇であっても、彼女が放つ光はただ真っ直ぐに切り裂いて行く。
 私はただ付いて行けばいい。道を開くのは彼女の役目なのだから。
155|x・)sage :2003/12/10(水) 22:16 ID:7cs9hUH2
|ミミック|x・) ミミックの中からごきげんよう。以下、レスです。

>とあるスレの577氏
必要と言われたので、少しだけ戦闘シーンです。
……短すぎましたね。まぁ、どう扱ってくれてもいいよという感じで……
距離的に、もう追いついちゃってると思います。はい。

>えべんは氏
レズじゃないです。百合です(マテ
当方、百合スレ出身なのです。生きててごめんなさ……じゃなくて、お察しください。

>52
ご参加、楽しみにしております。144-145の続きも楽しみにしております。

|ミミック|x・) では一度、投稿スピード落としますね。

|ミミック|x・)ノシ
156|x・)sage :2003/12/10(水) 22:20 ID:7cs9hUH2
|ミミック|x;) >>154に間違いが見つかってしまいました……

|ミミック|x・) 言わなきゃわかんないかもなので、訂正はなしです(最低

|ミミック|x・)ノシ
157とあるスレの577sage :2003/12/10(水) 22:47 ID:BZCvNnR.
|∀・)

また伸びてる・・・すご
52さん
えと、このキャラは>>103でクルセに助けてもらった
新米アコとその先輩のプリです
また武器は見たとおりのものです
吸血鬼を倒すときの杭みたいなものと考えてくださいな

|ミミック|x;) さん
金板かな・・・
それはそうとして
先遣隊を助けてくれると嬉しいかな
奴等はガコに苦労しますので
では

|彡サッ
15852sage :2003/12/11(木) 00:18 ID:1TkfyfCE
とあるスレ577さん
了解です。文中ではアコ=服司 プリ=司祭 としています。
もし、何かおかしい所があったらビシバシ突っこんでください。


『指令書』
『プロンテラ地下水道ダンジョン内において、多数の上級モンスターが出現したとの報告があった』
『ダンジョン内部には多くの冒険者が取り残されており、非常に危険な状態である』
『既に義勇軍による先遣隊が向かっているが、事態の解決には至っていない』
『直ちに出撃し、遭難者の救助、及び原因の究明にあたれ』
『備考:現在確認されているモンスターは次の5種類である』
『ドレインリアー』
『ガーゴイル』
『クランプ』
『スティング』
『アノリアン』
『諸君等の健闘を祈る』
指令書の内容は単純明快。要するに地下水道に行って、人助けしてこいと言う訳だ。
「しかしまぁ……ワイらもコキ使われるなぁ……」
ハンスが愚痴を漏らす。
「でも、やっぱり人助けって大切だと思うよ」
「そらな……でもこれはお偉いさんの魂胆見え見えやで」
ハンスの言葉が理解出来ないらしく、紫苑は首を傾げる。
「つまり、義勇軍が頑張ってるのに騎士団は動きもしないなんてどういうことだ。って苦情が殺到してるんだよ」
「それで、ワイらにお鉢が回ってきたって訳や。『私たちもこんなに頑張ってます!』ってアピールするためやね」
「ふぅん……世の中ってややこしいね」
紫苑が釈然としない表情で答える。
「まぁ、どうであれ命令が下ったんだ。ハンス、兵站係からお前の武器と補給物資貰ってこい」
「了解っ」
ハンスはすぐに倉庫の方向へと走り出した。

ほどなく、ハンスが木箱と大鎌――クレセントサイダー――を抱えて戻ってきた。
「補給物資やでー……少ないけど」
そう言って木箱をこじ開ける。
中には各種ポーション、ジェムストーン、イグドラシルの葉、蝶の羽などが詰まっていた。
種類は一通り揃っているが、これでは少ない。
「確かに少ないな……軍曹、これ以上は回せないのか?」
俺はハンスの後ろにいる軍曹に問いかけた。
「はい……先遣隊や救護隊にも回さなければいけないので、これが限界です」
彼は申し訳なさそうに頭をかいている。
「どうする? マナたん。このままじゃあかんで?」
ハンスの言う通り、これだけの物資では全滅する可能性も十分に考えられる。
しばらく思案した後、俺は紫苑に告げた。
「紫苑、服司か司祭を連れて来れないか?」
紫苑は一拍おいてから、頷いた。
「うん、ちょっと待ってね……」
そう言って部屋の隅に移動し、何かを喋り始めた。
俗にwisと呼ばれる冒険者用の連絡回線を使用しているのだろう。
ややあって、紫苑が戻ってきた。
「知り合いのプリさんが脱出してきたアコさんを連れてこっちに向かってるって」
「そうか……脱出したってことは中の状況を少しは知っているんだな?」
「うん、多分」
曖昧ながらも紫苑は頷く。もし知っていなくとも、回復方術――ヒーリング――の使い手が2人も増えるのはありがたい。
「……よし、先に突入地点に移動して、待機だ」
そう言って歩き出そうとする、が。
何だか足が重い。見るとあの少女が俺の足にしがみついていた。
訴えかけるような目でじっと俺を見つめている。
……だが、連れて行く訳にはいかない。危ないと言うよりも、変に暴れられたら困るからだ。
「……軍曹、この娘を帰るまで預かっていろ」
「……はい?」
俺の命令に素っ頓狂な声で答える軍曹。その顔には困惑と驚きが浮かんでいる。
「……マナたん、もう嫁に出してまうんか……」
「五月蝿い」
茶々を入れるハンスを一喝し、軍曹との話を続ける。
「いえ、ですが、自分はそういうことは苦手で……」
戸惑いながらも拒否の姿勢を見せる軍曹。だが預かって貰わないとこっちが困る。
やむを得ず、俺は――
「よく聞け、俺は大尉で、お前は軍曹だ。意味が分かるか?」
彼を指差し、そう言い放った。つまり上官の命令には絶対服従と言う事だ。
「……分かりました。ほら、おいでお嬢ちゃん」
これが効いたらしく、しぶしぶ軍曹は彼女の手を引き、去っていった。
去り際、あの少女が未練がましくこちらを見ていた事は忘れる事にしよう。
「……それじゃあ、改めて突入地点に移動だ」
「「了解!」」
2人の声が、綺麗に重なった。
15952sage :2003/12/11(木) 00:20 ID:1TkfyfCE
突入地点には、紫苑が呼んだと見られる司祭と服司がすでに到着していた。
服司の方はまだあどけなさが抜けきっていない新米のようだったが、司祭の方はかなりの修練を積んであるらしい。
彼の落ち着いた物腰が俺にそう感じさせた。
「お久しぶりです、むらさきさん。ご迷惑を掛けますが、よろしくお願いします」
「ううん、私たちも困ってた所だし、大歓迎だよ」
紫苑と司祭が互いに挨拶を交わす。
それとは別に、俺は新米服司の方に話しかけた。
「君、内部の状況はどうだった?」
「は、はい……」
そう言って、彼は自分が見た内部の状況を説明してくれた。
死闘に続ぐ死闘、死んでいった仲間達、そして彼を助けてくれたクルセイダーの事を。
「……そうか、辛かったやろ?」
ハンスの言葉を、彼は首を振って否定する。
「辛かったけど……それより、仲間達が……」
「……気にいったで! 坊主!」
自分より仲間の事を想う、その精神に感銘を受けたハンスは服司の肩をぽんぽんと叩く。
「よーし、ワイが大活躍してみんな助けたるわ!」
意気込むハンス、今はその気合いが頼もしく思えた、多分。
簡単な作戦会議をし、いよいよ突入するその時、司祭の持っている奇妙な本と杭のような物に目が止まった。
紫苑もそれに気づいたらしく、司祭に問いかける。
二言三言交わした後、紫苑が本のページをパラパラとめくった。
すると、見る見るうちにその表情に驚きの色が浮かぶ。
「……こんな物まで持ってきたの!?」
呆れたように叫ぶ紫苑、それを柳に風と受け流す司祭。どうやらかなりの大物のようだ。


「それじゃあ、全員準備はいいか?」
全員が頷く。それを確認した俺は満を持して声を張り上げる。
「それでは……出撃!!」
大きな鬨の声が響き渡った。


ノビたんはお留守番ですが、軍曹がへっぽこなので脱走可能です。
もし、動かしたい人がいたら、動かしてもらっても結構です。
160名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 00:39 ID:lCGh5AbY
久しく忘れていた感覚。
背中を預けられる仲間がいると言う事が……こんなにも頼もしく思えるとは。
それが腕っ節も器量も文句無しの美女とくれば尚更だ……言う事は少々素っ気ないが。

俺のようないわゆる「戦闘ブラックスミス」は、
まぁぶっちゃけて言えば冒険者の中でもはみだし者の部類だ。
鍛冶の腕なんざ磨かないから、同職の中では異端者扱い。
かと言って騎士ほどの防御力もアサシンほどのスピードもハンターほどの攻撃力も持つ訳じゃなく、
戦闘力に期待して俺と組もうなんて言う酔狂な奴はまずいない。
何より俺自身、独りで困ると思う事はこれまで数えるほどもなかった。
ただ何も考えずに廃坑へと向かい、死してなお彷徨う哀れな炭坑夫どもから
鉱石を巻き上げ飯の種とするだけの日々…………

ふとアコライトの少女に目をやると、酷く怯えた表情をしている。
この状況では無理も無い。まだ冒険の経験も浅いと思われる彼女が、
極限状態の中で生きて正気を保っているだけでも立派な物だと思うべきだ。

今にも泣き出しそうな彼女を励ます俺を尻目に、
クルセイダーの姉ちゃんはお決まりの鉄面皮で通路の先を見据えている。
……頼もしい事は頼もしいのだが、少しは仲間への気遣いって奴が欲しいモンだ。

「おい、姉ちゃん……」

言うが早いか、彼女は即座に振り向き鋭い視線でこちらを睨みつける。
その迫力たるや、同じオークヘルムをかぶる廃兄貴の比ではない……なんて軽口を叩いてる場合でもない。
次の言葉が出ない俺に対し、彼女が静かに口を開いた。

「静かにしろ。 ……何かが、いる」
161104だったものsage :2003/12/11(木) 01:09 ID:lCGh5AbY
書いてる間に52さんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!
某スレ577さんにも扱っていただけて光栄至極。
こんな推敲抜き即興文章で参戦していいのかしらと思いつつ
また1時間書きの文章を垂れ流してしまう漏れでした。(死

ちょっと自分用に上水道の現状整理。見落とし等ありましたら突っ込みヨロです。
(下になるほど深い場所。)

地上:紫苑PT・アコきゅん他
1F:(剣士子リタイア)
2F:プリ子・姉ハンタ子PT(第2陣)
   A(ssassin)チーム(第1陣)
3F:片足マジ・剣士君PT(生存者その1)
  (妹アコたんリタイア)
   クルセ・アコたん・BSPT(生存者その2)
4F:?????

戦闘シーン(と言うかクルセさんアコたんの活躍)を書きたかったのですが、
クルセさんのスキル構成が解らず断念。ムネンアトヲタノム
162104だったものsage :2003/12/11(木) 01:12 ID:lCGh5AbY
姉の位置間違えた。姉プリ子・ハンタ子PTですね_| ̄|○
163丸いぼうし@二時間前地上sage :2003/12/11(木) 01:35 ID:QaXu0eHY
「全く非科学的な連中だ。こんな奴らが上にいてどうして作戦がうまく行くはずがある?。」

自分の無様さと奴らへの怒りをまぎらわすように、僕は悪態をつきながら騎士団を出た。
試しに小石を蹴りつけてみると、小石は綺麗な放物軌道を描いて飛翔し、石畳の上に落ちた。

「あー、無様だ…」

小石を蹴ったところでこの惨めさが消えるわけがない。太陽は未だ高く、今の僕と同じように
行き場を失っているようだった。

ドン

不意に衝撃があり、僕は石畳に接吻した。唇を切ったようだ。血の味をかみしめながら立ち上がり、みえも
しない相手に僕は怒鳴った。

「何処に目をつけて歩いてるんだ、危ないじゃないか!。いいか?今のでもし僕の脳細胞が減ったとしたら
これは国家的損失だぞ?。頭脳を大事にしない国に未来なんてないんだからな!」

「ご、ごめんなさい」

どんなバカかと思ったら、服事の少年だった。途端に、むらむらと自己嫌悪が立ち上ってきた。
こんな少年に、超エリィトの僕がそこいらのローグのごとき怒鳴り声をあげてただなんて、大人げなさすぎる。
仏滅だから運が悪いなどとは信じたくないが、今日はどうにも調子が悪いみたいだ。

 ふと、石畳の上に目を移すと、鈍い銀色の金属棒が落ちていた。僕がそれを取り上げてしげしげと眺めて
いると、少年は奪うように僕からそれを取り上げた。全く失礼な奴だ。
 だが、あれは何なのだろう。持ったところ銀のようだったが、何ら学術的、芸術的、資産的価値もなさそうだった。

「なぁ、それ、何に使うんだい?」
「魔物を討つんですよ。それより僕は早く行かないと…」

 こんな子があの水道に?あの戦場に行くだと?。騎士団の連中は僕の作戦を否定したくせにこんな少年を戦場へと
送るのか。アコライトを戦場に送るほど、事態は切迫しているのか。僕が指揮官なら、もっと上手くやる。
164丸いぼうし@二時間前地上sage :2003/12/11(木) 01:35 ID:QaXu0eHY
「そうか、頑張れよ」

走り去る後ろ姿に心にもない台詞を吐く。言ってから後悔した。
何が、頑張れよ、なのだろう。頑張ると言ったって、凡人には可能なことと不可能なことがある。
つまりは僕の言葉は、頑張って死んでこい、そういう意味になるわけだ。
 唇に手を当てる。血は流れていなかった。それどころか痛みもない。

「そうか、あの少年、ヒールをしていったのか…」

よく考えれば、慌てていただけで彼もそう悪い人間ではなかったわけだ。そして、放っておけば、
彼は数時間以内にその命を落とす。あのボンクラどもが上にいる限り、多分確実に。
 そんなことを考えながら、歩いた。いつの間にか、騎士団前に戻ってきていた。
衛兵の視線が冷たい。僕は一際大きく声を上げた。

「作戦の立案に僕を参加させろ。君たちではムリだ。」

-----

「何しに戻ってきたのだね、学者先生。君のような夢想家に現実的な戦略が立てられるとは思わん。
物資も人員も限られているんだ。」

 言うじゃないか、ボンクラ団長め。だが、議論と詭弁で僕に勝とうなどと言うのは十年早い。
いや、脳細胞の数は子供の頃に打ち止めだから、まぁ、僕には一生勝てないと言うことか。

「戦略なら、まぁ、あなた達にも経験やプライドがあるようですしご自由にお立て下さい。
ですがあなた達には知識はない。モンスターの弱点その他をあなた方は確実に把握しておられるのですか?」

「ふむ、一理ある。で、君は何をすると言うのだね?。我々には君が戦えるとはとても思えないのだが。」

「僕は自分をデータベースとしてこの作戦に参加させると言っているのですよ。」
165丸いぼうしsage :2003/12/11(木) 01:50 ID:QaXu0eHY
 もう、このスレ熱すぎて目が離せないよ フンスフンス(゚∀゚)=3
読み切りで書いたつもりだったんだけれども、書きたくなってしまった……ネムイヨー

 盛り上がってきたところ心苦しいですが、ハイ、またもや地上です。
なるべく本編に干渉しないようにしながらテキトーなでっち上げ解説やらをしていけ
たらいいなぁ、と思っています。矛盾するところ等容赦なく指摘お願いします。
166103sage :2003/12/11(木) 02:25 ID:JaCNWRaQ
では、クルセの詳細公開といこう


来たのはネズミだっだ。
もちろん下水にいる白いネズミではなく、GHにいるはずの青い奴だ。
ネズミは矢のように私たちに突進してくる。

そして私の盾にぶつかった。正確には私が盾にぶつけた。
ネズミがぶつかったときの衝撃を私は完全にころし、そしてそのままネズミを盾で弾き飛ばす。
奴は少しの間、眼を回したようにひるんだ。

「下がって」
そういって盾を掲げ、神に祈る。
一瞬金色の光が私を包む。

ネズミは私にやられた仕返しとばかりに飛びついてくる。
腕をかまれたが、振りほどき、斬りつける。
ネズミが完全に私をターゲットにした。
そして私ののど笛めがけて飛びかかろうとして・・・・・・・、
BSの持ったチェインの連撃でもって叩き潰された。

「まだくる。」
ネズミの来た方向から足音がする。魔物のうなり声も・・・・・。
まだ距離はある。
「私が敵を抑える、お前は敵の背後から殴り倒せ。全力で、だ。倒すことだけ考えろ」
手短に要点だけ伝える。
もう少し愛想よくできればいいのだが、どうもうまくいかない。
ついでに疲れていて冷たい物言いになってるし。

「大丈夫かよ、姉さん」
私はお前のような弟は持った覚えはないし、
私の鑑定眼に間違いがないなら、多分お前よりかは年下のはずだ。
実はこれでもわたしは二十歳前だ。
年齢について否定するのは労力が要るだろうからあえてほおっておく。

私はにやりと笑うとBSの胸に右手を、左手は自分の胸に置き、聖句を詠う。
慣れれば聖句などいらないが、この極限状態でうまく発動できるか、少し不安があったので、
あえて、聖句を唱え、確実にオーディンの加護を下ろす。

「われらが主神オーディンよ、我と彼の者に、汝の加護を。
彼の者の痛みは我が者に、彼の者の苦しみは我と共に
我は汝に尽くさん
                            Devotion」

私とBSの間に光の鎖が渡り、二人をつなぐ。
この光の鎖がBSの怪我を痛撃をすべて私に伝えてくれる。
逆に言えば、彼の怪我をすべて私が肩代わりするのだ。

なるほどBSはうなずくとカートに盾とチェインをしまいこみ、両手斧を引っ張り出して構えた。
防御のための盾を捨て、攻撃力の高い両手斧を持ったのだ。

「後、ヒールだけでいい」
あらかじめ、アコライトに言い含めたことを再度確認するように言う。
ブレスや速度増加の奇跡はほしいが、その分回復の奇跡を使うだけの精神力がなくなるからだ。
さっきもそれで気絶するほど、彼女に消耗を強いてしまったからだ。
アコライトの女の子もうなずいた

「さあ、くるぞ」


そして戦いは始まる。
いやでも何でも、また再び始まってしまう。
167103sage :2003/12/11(木) 02:30 ID:JaCNWRaQ
ついでに、
このクルセはAGI−VIT献身盾クルセです。
木琴持ってます。精錬も+4〜+6まで行ってます。
避けます、こらえます。倒せません。
そんな奴です。


ええ、私のクルセ娘がモデルです。ええそうですとも、ここまで強くはないですけどね。


PS。
「”みんなで作る”Ragnarok萌える小説スレ」
スレタイどうりになってきてますねぇ
168105@突入(1/4)sage :2003/12/11(木) 02:38 ID:Yg4Zw3.2
斬られた、というよりは微塵に砕かれた、といった表現が正しいだろう。
そんな、ヒトだったモノが、私達の目の前にあった。
そして、今まさにそれを持ち去ろうとする泥の塊も。

「参ったね…場違いもいい所だ。」

私は、爆炎のカタールを手にしながら呟いた。


話は、少々戻る。
ポータルで拠点であるモロクに戻った私達は、二手に別れて援軍を依頼しに行った。
私は、古巣であるアサシンギルドへ。
姉は、状況連絡も兼ねてプロンテラへ。
アサシンとなって永い私は、経験を買われた為かマスターに直接会うことが出来た。
下水3層の現況を知らせ、私達で止められなかった場合─つまり、死んだ時だ─は各地の
同胞に連絡して事後対応に当たってもらいたい、と。
その旨を伝え、マスターはそれを了承してくれた。

足早に私はギルドを出、プロンテラへの転送サービスを使い、姉の元へと急いだ。
169105@突入(2/4)sage :2003/12/11(木) 02:38 ID:Yg4Zw3.2
「何度も言うように、現在協議中である。追って連絡をするので暫く待っていろ」

目の前にいる、騎士団の連絡係はそんな言葉ばかりを連ねていた。
プロンテラ市街地の北西部にある、騎士団。
大聖堂で上水道の現況を聞いた私は、妹と見た状況がこれに関係している可能性があると
判断し、正式な使者として(勿論、偽りだ…神よ赦し給え)ここへやってきた。
だが、目の前の連絡員は先の言葉の一点張りで。
いい加減焦れた私が声を荒げて説教をしようとした、その矢先。

「聖堂の使者殿。たった今、聖堂より連絡が入った。無礼を許されよ。」

髭を蓄えた、恐らく団長であろう人物が奥より出て来てそう言った。
…聖堂から連絡?有難い、どうやら聖堂側も緊急事態と判断してくれたようだ。
神に感謝をし、そして招かれるまま、私は奥…会議室へと足を運んだ。
170105@突入(3/4)sage :2003/12/11(木) 02:39 ID:Yg4Zw3.2
会議室では、愚にもつかない議論が展開されていた。

曰く、騎士団を動かす事は国家の権威に関る事であり、国王への打診が必要であると。
曰く、水道のモンスター退治程度で騎士団を動かす事は、他国への恥になると。
曰く、万一失敗した場合の責は誰が受けるのかと。

聞くに堪えない保身議論の堂々巡りを耳にして、私はつい声を荒げてしまった。

「煩いクソ共!今こうして愚かな議論にもならぬ言い合いをしている間にも、神の子たる
 市民は傷付き、命を脅かされているのだぞ!市民を護るべき騎士団の存在意義とはその
 程度の物なのか!貴様等上の人間はふんぞり返って己の保身のみを考えていれば良いの
 だろうが、下に─現場に居る者達はそうではない!今、まさに死と隣り合わせている!
 それでも尚ぐだぐだぐだぐだとやっているのなら、私が貴様等を現場へ引きずり出し、
 今現在どのような状況になっているのかと身に沁みて教えてくれよう!それが嫌ならば
 さっさと出動を決めろ!国王への申し開きは後でも出来る事だ、解ったかカス共が!!」

見た目からして大凡聖職者らしくない(色眼鏡に煙草。気に入っているスタイルだ)私の
「説教」が効いたのか、その場は静まり返りやがてぼそぼそとした『会議』が開始された。

騎士団からは3名の人員が急ぎ割かれる事となった。
彼等も愚物では無いだろう。騎士団側から信頼されているであろう人間の筈だ。
決定を聞き、満足した私は会議室から出、妹を待つ事にした。

背後から「聖堂の質も云々」という声も聞こえたが敢えて無視する事にする。
貴様等に言われたくは無い。
171105@突入(4/4)sage :2003/12/11(木) 02:39 ID:Yg4Zw3.2
姉は憮然とした表情で騎士団の施設内部に居た。
なんとも言えないプレッシャーを感じたのでその事には敢えて触れず、ギルドへ連絡した
事のみを伝える。
姉は一息つき、やがて上水道でもGH下水のモンスターが出現している事を告げた。
現況を聞くと、先遣隊5名と次いで2名の冒険者が既に行っているという。
それに騎士団派遣の3名が加わっても、場所は広い地下水路だ。手は足りないだろう。
ギルドマスターにwisを飛ばし、予定の変更を告げる。
『GHの異変と関係がある可能性があります。よって、そちらへ向かいます。よろしく。』
と。

そして私達は水路へと向かい、今まさに目の前に「ヒトだったモノ」を連れ去ろうとする
化け物と対峙している。
姉の奇跡を受け、化け物を斬り捨てて、彼─彼女かもしれないが─に祈りを捧げる。
神の力を以ってしても、ここまで蹂躙されてしまった者の復活は不可能なのだ。
心が、痛む。姉は眼鏡を外して彼を見つめながら、ただ祈りの言葉を続けている。
その様子に、ああ、やはりこの人は聖職者なのだ、と感心していた、そんな時。

「…フィル。奥だ」

耳を澄ますと、声が聴こえて来た。彼の仲間か、敵か、或いは先遣隊か、はたまた…


襲われつつある、冒険者か。
172105sage :2003/12/11(木) 02:44 ID:Yg4Zw3.2
…というわけで、第4部隊です。
>52氏の話とちょっとリンクさせてみました。

…いや、一プリーストの言葉がここまで威力あるかどうかはともかくとして。


>124
(* Д )・;∴.゚ ゚
やっべやっべやっべ。
漏れも酔いそうだ…酔ってイイデスカ。
173105sage :2003/12/11(木) 04:03 ID:Yg4Zw3.2
って、階層書き忘れてるよ_| ̄|○
補足:現状B2Fです……
174結果。sage :2003/12/11(木) 04:06 ID:tDlXuN.g
 勝負は一瞬。生死も一瞬。

 剣士が注意をひきつけかわしおれが足を止めかわしその後剣士がおれを引きずって全力離脱。

 駆け出した剣士に続いて転がりながら角から飛び出す。片足でもっとも素早く移動するのは転がるしかない。立ち上がるその間に『火よりきたるもの』を呼び寄せ命じる。応じて発現した火球が二つ、闇を焼き剣士の脇をすり抜けその前方の床に着弾爆発。暗闇をさらに瓦礫と煙が覆う。剣士はその煙幕を突っ切り火の神技を発動。それにあわせてまた転がり『火より立ち上るもの』を呼び寄せる。剣士は爆発の剣で動きの止まった敵の隙を突いてその向こうへ走り去り、おれはその敵からひとときも片目を離さずその行為を認識し、そして再び動き出した敵の動きを絡め取るように『火より立ち上るもの』を発現させ、何故か動きの鈍い敵の横を炎にあぶられながらもう一度転げて再度『火より立ち上るもの』を発現展開。敵の脇を完全に過ぎ去った事を確認して視線を前に向けそこで自分が来るのを待っているはずの剣士の姿を、

 走り去る後姿。

 ――死に急ぐ、か、剣士よ

 おれは、
 おれはゆっくりと立ち上がる。
 『火より立ち上るもの』が消え去り、煙幕が鎮まり、その敵の姿をあらわにさせる。闇は深くされどもその姿は明確に。

 ――剣士は、生きている、
   おれは、生きている、だが、
   いまは、もはや過去なのだぞ、
   そして、


 その敵はじっと此方を見ていた。かのものに意識というものがあるのかどうかなど知った事ではないし知ったところでどうということも無いが、相対したものをひとと同じ感覚で感じるのはひとの常だ。
 敵は。その敵は手の形をしたものだった。頭の奥と片手に氷の槍が刺さったような感覚がやって来る。片手。片手。片手。かたときも放さず離れず抱え続ける頭蓋。

 語る事はもうないし、
 語るべき事はもう話した。


 ――火より来たれ。

 どうであろうとも死するときは死し生きるときは生きる。なればこそ。

 信じるぞ、

 剣士よ、

 おれは生きる。


 手が伸びてくる。炎はもうこない。念力はもう練れない。手が迫る。手が。手の中に。女。女の肢体が。動かなくなった体を名状しがい感覚が襲い。おれは。死。まだ。死。まだ。まだ。まだ死んでない。動き出す。運ばれる。ずぞ。ずぞぞ。ずぞぞぞぞぞ。運ばれる。片手に女の頭蓋を。目の前に女の肢体を。おれは。ぞぞぞぞぞぞぞ。少女よ。ぞぞ。おれは。まだ。ぞぞぞ。死な


 ぞぞ。
17588sage :2003/12/11(木) 04:06 ID:tDlXuN.g
マジ剣士コンビ、断裂。マジは『まだ死んではいません』。
どう料理されても結構です。剣士は三階を走っている模様。

>137
遅くなりましたが書いてみました。
リレー形式をとっているので好きな話の続きを好きなように書いてみるのもオーケイかと。
つまり続きをかわりに書いて(サバキャン


>|x・) 氏
フォォォォ!
漏れの文才の無さが際立ってきましたね。巧すぎ。
マジは適当にそれっぽいことを言わしてそれっぽい動きをさしてやればオーケイです。
あ、>119のものとリンクさせてみますた。 このまま黒幕のとこまで生きたまま運ばれるのかどうかは時の運? みたいな?

聖職者の姉の人とあえるのかしら……。

>えべんは氏
一押ししますた。展開はやい……かも……。
氏が剣士を書いてくれたおかげでマジとの関係がよく分かります。感謝。
漏れが書くと半分も雰囲気を出せないですYO!

>とあるスレ577 氏
切り札キター!
ワクワクです。ワクワク。


>丸いぼうし氏
キザ魔道師フタタビー!
こういう現場以外のところでも燃えが展開されていますな!(゚∀゚)ムッハー


>103
クルセ子(*´д`)モエー
しかも鉄壁クルセ……いかん、ステからしてかっこよすぎる。
見せ場が楽しみです。

>105
ぞくぞくと部隊が突入中ですね。
生き残りもしくは先発隊と合流するのはどのタイミングか……。
17617sage :2003/12/11(木) 04:26 ID:cs8/B6TQ
(――全く、今日は厄日だな)

鍛冶商人の男は口元に咥えた煙草に手を伸ばそうとして、肩が思うように動かないことに初めて気が付いた。
ザックリと斬られた右肩の傷口からは大量の血液が流れ出しており、既に痛覚はおろか感覚すら失っている。
「ちょっと格好つけて新米共を庇ったツケにしては…、上出来か」
独り言を呟きながら口端を軽く歪め、男は重厚な石壁に背中を預けた。
元々、彼は戦闘に向いていないのだ。武器を打ち、製造することに長けているが故のハンディキャップ。
生まれつき体格が良い訳でもなく、図抜けた戦闘力を持つ訳でもない製造専門の鍛冶屋。それが彼の全てだ。
目前では、濁った琥珀色の瞳を持つ魔物が機を窺うように彼を睨み付けている。
その手には無垢の鋼鉄から荒く削り出したような粗悪な質の蛮刀。
「……不恰好な武器を使いやがって」
思わず悪態が口から零れる。――だが、そんな無骨な武器でさえ、彼の命を絶つには十分な力を秘めている。

(俺は、ここで死ぬのか?)

威嚇するような空気音を放つ醜悪な容姿の魔物を眺めながら、男はぼんやりとした頭の片隅で考える。
生涯最高の武器を作る夢すら果たせぬまま、ここで朽ち果てなければならないのか。
自分のような中途半端な才能の鍛冶屋には、粗悪な武器で命を断たれるのが当然ということなのか。
意識が朦朧とした瞬間を突いて、暗緑色の鱗を持つ魔物が蛮刀を真上に振り翳して一気に間合いを詰める。

「――ふざけんな」

無意識に呟きながら、男は地面に置いたカートの縁を全力で蹴る。
鉄鉱石や鉄、鋼鉄類が満載されたカートが油断していた魔物の片足を轢き、腹を打つ。
骨が折れる鈍い音。アノリアンは甲高い悲鳴を上げて蛮刀を取り落とし、その場に蹲った。
男は更にカートの側面を蹴る。ガァン、という重い音と共にカートは魔物の側頭部を強打した。
右側部分を完全に削り取られ、形を大きく歪ませた頭部。魔物は断末魔も残さず、その場に崩れ落ちる。
「相手が中途半端で非力な奴だと甘く見るから酷い目に遭うんだぜ…、ワニ野郎」
吐き捨てるように鍛冶屋は呟き、肩を押さえながらカートの縁に凭れかかる。
この腕では普段から扱っている両手斧は持てない。カートを引くことなど望むべくもない。
唯一の武器も持たず。商売道具を全て投げ出し。それでも。

それでも――、生きる道を選ぶのか?

(……決まってるだろう。俺は最高の武器を作るまでは絶対死なねぇ)
口端を引き攣らせるように軽く歪めながら、鍛冶屋はカートに別れを告げて歩き始める。

上水道第三層最深部。彼の生存レースは、ここで幕を開けた。
17717sage :2003/12/11(木) 04:29 ID:cs8/B6TQ
17です。

細かく設定を作るような文章は諦めました。(各自自由に筆を進めた方が、より楽しめそうですから)
そんなわけで皆様に許して頂けるならば、ここからは一書き手として筆を進めていこうと考えております。

当初の予想を大幅に超える盛況となって非常に驚いている次第です。……皆さんの文才が羨ましい。
178名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 05:41 ID:BDlMIOrM
軍曹は困っていた。
もともと人付き合いは苦手なのだ。子供の扱いとなればなおさらだ。
子供は嫌いだ。無駄に動き回るし行動は想像つかないし言ってることはわからないしすぐ泣くし。
目の前にいる子は入口の方を向いて突っ立ったままで大尉殿のことが心配なのが丸分かりで喋らないし泣いてないが。
でも苦手には違いない。
でも上官の命令だからなんとか相手しなくてはいけない。
軍曹にとって、「上水道に閉じ込められた人」とやらと同じくらいの災難に感じられた。
冒険者としての経験の無い彼にはそれがいかにバチ当たりな考えであるか思いつきもしないのだが。
「えーっと・・・」
少女に声を掛けるがそのあとが続かない。
少女も軍曹を見るが、そのあとを軍曹が言わないので、やがてまた入口のほうを向く。
面倒なので放っておきたいが、この子の相手をするのが今の任務なのだ・・・。
「あー・・・なにか飲むかい?」
再び少女が軍曹の方を向いた。
「何がいい?ミルク?赤ハーブ茶?」
少女は答えない。沈黙が痛い。
「・・・ミルクでいいかい?」
少したってから少女が頷く。
「じゃ、じゃあちょっと待っててね」
軍曹は立ち上がって飲み物を取りにいく。これで少女に隠れて溜息がつけるってものだ。

あのおにいさんはばかだとおもう。

軍曹がいなくなった後、少女は部屋を見渡す。
壁に何本か剣が立てかけてあった。
近寄ってまじまじと見つめ、そのうちの一本、少女が持つにしては大ぶりな片手剣を手にとった。
鞘から軽く抜き刀身を眺める・・・

わるくない。

「ああ!危ないよ!それは壁に戻して!」
片手にミルク、もう片方に熱そうなコーヒーのカップを持った軍曹が戻ってきた。
剣を鞘に戻すとそれを抱えたまま軍曹のもとに駆け寄り

コーヒーカップを持つ手をつかむとその手を軍曹の顔に叩き付けた。

「ぎゃあ!!」
少女の力なのであまり腕が動いたわけではないのだが、それでも熱いコーヒーがおもいきり軍曹の顔にかかった。
がちゃんと派手に音を立てて落ちたカップが割れるのと少女が部屋を走り去ったのは同時だった。
「・・ま・・まて!!」


剣を抱えて少女はプロンテラを走る。
「!」
慣れないスカートが足に絡まり、つまずいて転んでしまった。
「あらあら、大丈夫?」
たまたま近くを通りかかったプリ―ストが心配そうに近寄る。
少女は無視して立ち上がった。
「・・・アコライトが剣を持ってどうしたの?おつかい?」
少女は無視してプロンテラの西門の方を見ている。
「・・・ちょっとキミなんとかいいなさ・・・っ!?」
さすがにむっとしたプリ―ストが何かを言いかけたとき
少女は剣をすらりと抜き放った。
ただならぬ気配を感じて、プリ―ストは咄嗟に後ろに飛びずさる。
少女はスカートを掴むと剣を当て、一気に切り裂いた。
プリ―ストと同じくらいのスリットが出来上がると少女は鞘を捨てた、また走り去っていった。
残されたプリ―ストはただ唖然とするしかなかった。

その様子はかなり異様だっただろう。
プリ―スト並みにスリットの入った破れたスカートのアコライトが
ご法度のはずの剣を抜き身のまま持ってものすごい勢いでプロンテラ西門を駆け抜けていったのである。
ちょっとしたことでは驚かない冒険者たちもさすがに唖然とした様子でアコライトの後姿を見ていた。
カプラ嬢ですら一瞬眼鏡がずりおちたほどである。
全く動じていないのは露店を出したまま居眠りをしている商人だけであった。
179178sage :2003/12/11(木) 05:47 ID:BDlMIOrM
|∀`;)

猛烈に参加したかったのでいきなり投稿して(ごめんなさいっ)
52さん・・・ごめんなさいノビ子たんを勝手に使ってしまいますた・・・
この後アコきゅんと合流とか・・・(妄想)
ーが―になっちゃったことが失敗_| ̄|○


ちなみに・・・某エロスレの49だというのは・・・どうでもいいや・・・

|ミ

|=3 ボカスカジャン ギャー
180とあるスレの577sage :2003/12/11(木) 08:47 ID:xkEkxbwc
|∀・)

朝になったらこんなに伸びているっての
凄いね・・・
>丸いぼうしさん
地上じゃなくて一緒にやりませんか?
セージと考えていいならまだ居ませんし・・・
もうすぐ私の小説で使っている
シニョンアコ・アチャ子・アルケミが
出発する予定ですので
貴方には敵の存在等の解説をお願いしたいです

なので>107さんが使った52さんの
スパノビとも下水前で合流したいなと思ってます
よろしくお願いします

また、先遣隊の方に
プリハンタコンビとアサプリコンビを合流させていただけると
嬉しいです
先遣隊は遠距離攻撃と支援不足ですので・・・
(乱戦中だと殴りプリが全部はできません)
そんなところです

マジ君は死なない方に一票
クルーセ隊も頑張ってね

あと、敵の方もイメージを出しておきましょうか
いわゆる「リッチ」です
強い魔法使いだった彼は
永遠の命を得る為に
LODと融合しようとしています
ただまだ完全ではありません
グラスヘイムから金ゴキの体を使い
卵という形で
モンスターを転送し
上水道を地獄に変えており
冒険者達の魂が彼の栄養になります
性格はもちろん「DIO様!」
得意技はストームバーミリオン(!)
さーみんなでがんばろー

ノリすぎたかな
・・・追加設定お待ちしています

|彡サッ
181名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 14:20 ID:yTS.u7p2
 まだ固まりかけの泥を見つけ、私はようやく先遣隊に近付いたことを悟った。
 あれからまた魔物の姿を見なくなっていた。単発でしか現れない魔物は、何を意味するのか。
 恐らくは。魔物たちは部隊で動いている。しかも、ひどくまとまりのない精度の低い部隊。
 奴らは思い思いにこの上水道を闊歩し、見つけた人間をその凶悪な力で蹂躙する。そして殺戮を犯す度に、手に掛けた者たちを一度連れ帰る。
 そう、帰るのだ。普通の魔物ではありえない。奴らは何か強大な力に従っている。そしてそれこそが、この闇を喚び出した元凶。深淵そのものだ。
 ならば私たちは一直線に奥へ、深淵の庭へと向かう。早かれ遅かれ、全てはそこに集結するのだから。
 できるならばそれまでに、連れ去られた剣士の少女と、妹を見つける。いや、見つけなければならない。
 私の嫌な勘は、尽く的中してしまう。深淵に飲み込まれれば、もう二度と還ることは許されないだろう。
 あの子を永遠に失うなんて、そんなことは絶対に耐えられない。
 杖を握る腕に、また力が入る。私とあの子を遮るこの距離が疎ましい。傍に居てあげられないこの身がもどかしい。この手で抱き締めてあげたいのに。

「その先、通路を曲がったところ」
「いくつ?」

 私の黙想を知ってか知らずか、またも相方の声が掛かる。
 敵の数を問う私に、彼女は思いがけない答えを返してきた。

「いっぱい。敵だけじゃないよ、人も居る」
「なんですって」
「戦闘中みたいだね。フルコースでお願い」

 告げて、彼女は足の運び方を替え、一瞬だけ体を後ろに流す。
 それは相方なりの始動準備。彼女なりに言い換えるならば、戦闘モードへのシフトチェンジ。
 私がありったけの支援を送ると、いくよ、と一声掛けて、彼女は前傾姿勢で飛び出して行った。
 それでもまだ、彼女は臨戦態勢に入ったにすぎない。口火を切るのは私の役目。
 疾風と化した彼女が、通路を曲がるその瞬間。私は謳い、破魔の獣を解放する。
 主よ、我らに栄光を。

「グロリア!」
182名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 14:21 ID:yTS.u7p2
 崩れ落ちる氷柱の欠片には、生々しい戦闘の惨状が映し出されていました。

「うおおおおぉぉっ!」

 モンクは雄叫びを上げると、その強靭な肉体を使って
大きな泥の塊を押し返しました。
そこに後ろからローグの放った炎の矢が次々に刺さり
巨大な手の平をハリネズミに変えていきます。
 クァグマイアで動きの鈍くなったアノリアンの太刀を
アサの姉御はもう二度と食らうものかとかわし続け
お返しとばかりに、カタールの刃で緑色の皮膚をなで
青い体液を撒き散らせながら、ずたずたに引き裂きます。
 その横をクランプが走り抜け、後ろのWizに迫りますが
その途中でプリのバックラーに阻まれては
何度も何度も、大きな体をぶつけました。

「くそっ、キリがねぇ!」

 モンクが動かなくなった泥の塊を放り投げると
唾とともに、口に溜まった血を吐き捨てます。
 奥からは次々と、魔物たちが押し寄せてきています。
その中に弓を構えたガーゴイルの姿を見つけたとき
アサの姉御が苦悶の声とともに膝をつきました。
 見れば、ガーゴイルの矢をかわし損ねたのか
左の太ももをざっくりと裂かれ、血が流れています。
 慌ててプリが緑のもやを立ち昇らせ、姉御を護りますが

「あ、バカ! ニューマなんて使っちまったら、俺の矢まで当たらなくなるじゃねぇか!」

 ローグから叱責の声が飛び、プリはしょぼんと肩を落とします。

「よくも俺の女神をっ!」

 姉御を傷つけられたことにモンクは頭に血を昇らせ
ガーゴイルの元へ駆け寄りますが、空いた隙間をスティングが通り抜け
Wizはクァグマイヤとファイヤーウォールを唱えながら
追いかける手の平から、必死に逃げ回ります。

「何やってんだい! アタシのことはいいから、前衛を維持しな!」

 アサの姉御が叫んだときには、もう陣形は完全に崩れ、
連携も取れず、各々が目の前の敵と相対するしかないような
乱戦状態になってしまいました。

(くそっ。やっぱ普段からソロばっかりやってる連中じゃ、これが限界かい)

 心中で悪態を吐きながら、姉御は迫る鉈を
ただ必死に避けることしかできませんでした。
 一つのミスが焦りを呼び、それがパーティー中に伝播し
立て直すことも許されず、やがて誰かが倒れ崩壊する。
 最悪の状況がみんなの脳裏を過ぎります。
しかしそれでも誰一人として、この状況を打破する方法を
思いつくことができませんでした。

「きゃあっ!」

 Wizについにスティングの手が届き、悲鳴をあげます。
その声に、みんなは背筋を流れる冷たいものの感触を抑えられません。
 もうダメか。諦めがパーティーを支配しようとしたそのとき
Wizをつかむはずだった泥の手が、遥か遠くへと弾き飛ばされました。
そのすぐ後を数本の矢と、ファルコンの鋭い爪が追い駆けて行き
スティングはいともあっさりと崩れ落ちてしまいました。

「横殴り、ごめんね。お邪魔するよ」

 何が起きたか理解できず、呆けたままのWizの前を
ハンターの女性があっという間に通り過ぎ、
血の舞い飛ぶ戦陣の中に飛び込んでしまいました。

「大丈夫だった?」

 すぐ横から掛けられた声に、Wizは振り向くと
そこにはもう一人、プリーストの女性が立っていました。
瞳が合うと、彼女はにっこりと微笑んでみせました。
 こんな状況の中で笑みを浮かべる女プリーストを見て、
私たちは助かったのだと、無条件で思ってしまうのでした。
183|x・)sage :2003/12/11(木) 14:53 ID:yTS.u7p2
|青箱|x・) 本日は、青箱に入ってみました。ごきげんよう。

|青箱|x・) 青箱には夢がありますね。この中に入れば、私も夢のある話が書けるのでしょうか。以下、レスです。

>上水道の話全般
ごめんなさい。全然投稿スピード落ちてませんね……。
先遣隊に早く合流が望ましいとのことなので、書いちゃいました。
このままでは某スレ577氏の思惑にハマり、全部書いちゃいそうなので
続きの戦闘シーンは、えべんは氏にお願いしたいです。まる。

それにしても他人様のキャラや文体を使わせてもらうのは、すごく大変です;;
まぁ、せっかくなので、スレッドで読みやすい文体というのを
この機会にしっかりと勉強させてもらいたいと思います。
私の文体もがしがし替わりますが、あまり気にしないでください。

105氏の部隊よりも先に、先遣隊に合流してしまいましたので、
こちらとはまた別に、他の生き残りのメンバーと合流してもおもしろそうです。
52氏の部隊は、いわば本命ですね。活躍は遅くなりそうなのが残念です。

もうひとつ書きたいシーンが浮かんだので、これから準備してみます。
参加中の皆様も、頑張ってくださいませ。みなさんの素敵な文章が読めるのが、何よりも楽しみです。
あと、一体何人の方が現在参加してるのか、ちょっとだけ気になります。
誰か数えてください(自分でやれ)

>>175
拾ってくれてありがとうございます。これで剣士娘も浮かばれます(マテ
妹アコの首も、大事に持っててくださいね〜
今気付いたんですが、犠牲者の大半は私が出してるんですね。てへ。

>>180
ごめんなさい。DIO様ってどんな方ですか;;

|青箱|x・)ノシ ではまた後ほど。

|青箱|ミ

|青箱|<アケチャダメー
184|x・)sage :2003/12/11(木) 14:56 ID:yTS.u7p2
|青箱|x;) また誤字が……;;
185とあるスレの577sage :2003/12/11(木) 18:03 ID:f5mdiBOM
|∀・)

>>180・・・間違えた
LOD(ロードオブデス)じゃなくてダークロードでしたね;;

>>|青箱|x・)さん
助けてくれてありがとー
(ちょっと気になるのは・・・殴りプリは一体どこにニュマ置いたのかな?
いえアサを守るようにして置いたならローグには関係ないような・・・
アサを撃つわけじゃないんだよね?射線の途中に置いても効き目あるんだっけ?・・・)
とにかくお疲れです
DIO様については・・・(;・∀・)どう説明したらいいだろう
「ジョジョの奇妙な冒険」の敵役です
すみやかにお読みになることをお勧めします
いえほんと

|彡サッ
186丸いぼうし@会議室sage :2003/12/11(木) 18:22 ID:QaXu0eHY
「ふむ、では問おう学者先生。君の好きな空論と妄想の問題だ。
 もし、モンスターが街の方へあふれでたとしたら、どの程度の被害が想定される?。」

「最低で二千人ですかね」

嘲笑だけが漣のように会議室に広がっていく。彼らはバカではあるが一応ベテランの戦士だ、
自信だけはあるのだろう。確かに、統率の取れた軍隊というものが鎮圧に当たれば
二千人の犠牲者が出る前に二千匹の敵を屠ると言うことは容易い。

「どうやら我々を過小評価しているようだな」
「いや、あなた方は、被害者を戦死者と勘違いしておられる。たとえば、今回発見されている中で
 最も危険なモンスターは、どれだとお思いですか?」

質問にだけ答えたまえ、という叱責の声と、アノリアンか、いやガーゴイルか、まてまてスティングか、
といったとりとめのない議論が会議室を包み込んでいく。僕は会議机を叩いて周りを制し、声を張り
上げた。

「ですからあなた方は勘違いしているの言っているのです。今回のケース、最も危険なモンスター
は間違いなくクランプです。」

「馬鹿な、今回の中では言っては何だが下級モンスターだ。」

「確かに身体能力という点ではあなた方の見解は正しい。ですがクランプは体表に幾種もの細菌・ウイルス
 を飼っています。大腸菌、破傷風、ペスト、ラッサ熱…あの生き物は『動く培地』と言っても過言ではない。
 おまけに現在は異常事態により上水道は封鎖、この衛生状態と混乱では感染者が出た場合の隔離および治療
 は困難を極めます。あなた方がアウトブレイクを緑POTだけで防げる、と言うのならわかりませんが、
 そういった意味で考えれば、二千人は決して少ない数ではありません。」
187丸いぼうし@会議室sage :2003/12/11(木) 18:24 ID:QaXu0eHY
全く他愛もない。人間というのは脅威に対してかくも脆弱な意志しか持ち得ないのか。
 あれほどざわめいていた会議室が、水を打ったように静かになった。
さぁどうだ、見れば見るほど皆青い顔をしている。病は気からというが、本当に病人のような顔色だ。
普段何かと「危機管理」を口にする奴らの割には危機管理がなっていないな。
 沈黙を最初に破ったのは、意外に若く、張りのある声だった。

「帰還冒険者の隔離と検疫を最優先で行うべきです!。次に教会及び各機関への連絡と外出禁止令の発動。
 また、水源、聖職者、医薬品の確保、そして入り口付近に消毒薬と殺鼠剤の散布が必要かと思われます!」

「小尉、それじゃまるで戦争じゃないか。今回はあくまで只の異常事態だ。そこまでする必要はない。
 それとも学者風情に吹き込まれて怖じ気づいたのか?」

少尉、と呼ばれた青年の一言を呼び水にして、再び会議室は議論の渦巻く滝つぼと化した。
 未だに事態の危険性を認識していない奴がいるのも奇跡的ではあるが、具体的な対応策を即座に打ち出せる
人間がまだこんな組織に残っているというのもまぁ、奇跡的と言えば奇跡的である。僕なら見限る。

 奴らの危機感を煽るだけ煽り、僕の必要性を認識させてやったところでまず一仕事完了だ。
次からは本格的な情報収集と対策が必要になる。しかしながらここは僕の研究室ではないわけで、
いくら僕が超エリィト魔導師だと言っても、やっぱり資料は必要になる。僕はこめかみに手を当て、念じた。
俗に言われるWhisと言う奴だ。これでパシリ…もとい助手を呼ぶことにする。

「あー、もしもしケミ君?。突然だけど資料が必要になったから持ってきて。うん、研究室から。
 黒い大きなファイルと僕の鞄、それと机の上に置いてある本三冊。何、ない?じゃ本棚探して。
 民明書房って書いてある分厚いのだから。そうそう、それそれ。じゃよろしく頼むわ」

Whisを切り、僕は未だ議論の鳴りやまぬ会議室を見渡した。
188丸いぼうしsage :2003/12/11(木) 18:43 ID:QaXu0eHY
>>某スレ577さん

>地上じゃなくて一緒にやりませんか?
>セージと考えていいならまだ居ませんし・・・
ウホッ!お誘いいただけるとは全くもって光栄です。自称エリィトセージキュン
で良ければ存分にお使い下さいませ。僕はその場で話に合わせて解説を入れたり
あわよくば話をすすめてしまったりますので。
189丸いぼうしsage :2003/12/11(木) 18:47 ID:QaXu0eHY
~s/しまったりますので/しまったりしますので/ig;

ナニマチガエテルンダヨ_| ̄|○
190結果。の続き。sage :2003/12/11(木) 19:33 ID:tW7E4PFI
 やった、やったぞ。ボクは生き残ったぞ。見たか。ざまぁみろ。ボクを馬鹿にするからだ。
「はっ……、はっ……、はっ」
 剣士は無我夢中で、歓喜に包まれながら走っていた。疲労と身体中の痛みのせいで脚が棒のようになっていた。
膝の関節がうまく機能してくれなかった。接地の衝撃を吸収することができず、力の入らない膝から時折体勢を大きく崩しながら、
今にも倒れてしまいそうな不恰好な走り方で、それでも剣士は暗闇を走った。真っ白な頭はただ脚を動かすことを剣士に命じており、
全身を血が駆けめぐり熱を奪い熱を伝えていた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 上半身を総動員した荒い呼吸に、大鼠にやられた傷が突き刺さるような痛みを発していた。
魔法士に叩かれたせいで痛む背中と切れた頬、壁に打ちつけられた後頭部が奇妙なほどにうずいた。
ブレイドが重く持っているのが辛かった。神経を直接やすりで撫でられたようなざらついた恐怖は、手の化け物といっしょに暗闇に去った。
無理やり恐怖を押し殺す必要はなくなり、自分を痛めつけていた存在もいっしょに──
 それはそれまで剣士を支えていたものが煙と消えてしまったかのような、唐突な倒れ方だった。
無様につんのめり、咄嗟についた手と手放したブレイドがパイプの表面を滑った。乾いた音をたててブレイドは転がり、
強かに打った鼻面から何度目かの血が溢れた。
「はあ……、はあ……、はあ……」
 緩慢な動作で身体を起こしながら走ってきた方向を見た。
反転している視界は相変わらず闇に沈んでおり、何の音も動きも感じることはできなかった。
振り返るのをやめて、剣士は四肢で身体を支えながら、まだら模様のパイプを眺めた。
水滴がたれるような音がするたびにまだら模様は大きくなり、視界が揺らめき頬を涙が伝う。──ボクはかれを見殺しにした。
「う、うわ」
 唐突に視界を覆う赤い帳。頬に鋭い痛みが走り、剣士は夢中でそれを掴んで引っぺがした。頬の皮膚と肉が抉り取られて血が溢れた。
転がっていたブレイドを拾いあげ、手の中のそれをパイプに押しつける。大鼠に体当たりされたときに見た、血のような赤い羽を持った蝙蝠だった。
「くそっ……、このっ、馬鹿にすんな……っ」
 それは作業だった。
憤死しそうなほどに激した剣士は、手の下でもがき羽ばたく蝙蝠の羽をブレイドで突き刺した。二度と飛べないように、何度も何度も突き刺した。
耳障りな甲高い悲鳴。飛べなくなった蝙蝠を足で踏みつけた。何度も何度も踏みつけた。もう蝙蝠はほとんど動かなくなっていた。
ぼろくずのようになった赤い蝙蝠の頭部にブレイドを叩きつけた。
勢いあまったブレイドはパイプ表面に達し、その振動に剣士はブレイドを取り落とした。
「はぁっ、はぁっ!」
 今ごろはきっと、原型もとどめず朽ちるのを待っているだけだろう。足元の蝙蝠のように、ぼろくずにようになっているのだろう。
あれほど生に執着していたかれだって、あきらめたに違いなかった。嘲笑ってやろうと思った。
魔法士の最後の瞬間、絶望に満ちた目をしていたに違いないその瞬間、それを思い出して。
狂ってしまったような、醜く歪んだ笑いを浮かべながら剣士は走り去る寸前、ほんの刹那振り返ったそのときを思い出した。
「あ」
『行くぞ』
 かれは。かれは、そんな目をしていたのか。絶望と悲哀に満ちたガラス玉のような、そんな目をしていたか。
羽を切り裂かれ、頭部を断ち割られ、足元に落ちた赤い蝙蝠はぴくりとも動かない。
前に見た赤い蝙蝠は、焼け焦げていたはずだった。
「あ……っ」
『戻ってきたか。目が覚めたか』
 自分は。自分は、なにをしている。なにをした。かれに、なにをした。あのとき、怯えていた自分を見捨てることだって魔法士はできたはずだ。
足手まといの自分を餌にして、逃げることができたはずだ。それなのに、あんな身体じゃ、痛むに違いないのに。
「あ、う……」
『おれたちの流れがいささかも絶えぬことを』
 あのとき自分はなんと言った。
 いささかも、欠片も疑っていなかったあの魔法士に、自分はなんと言った。
『ボクたちに神鳴る加護があらんことを』
 剣を見た。叩きつけたせいで刃が少し欠けている。
かつて自分が剣士になったとき、贈ってもらった言葉。──剣士となって、貴方は何を成すつもりですか?
「大兄さん、小兄さん、ボク……。ボク、なんとか剣士のままでいられたよ」
 剣士は空も見えない、低く暗い天を仰いだ。
19117sage :2003/12/11(木) 19:35 ID:cs8/B6TQ
「全く…、あの人はいつも突拍子もない行動ばかりだなぁ…」

ブツブツと小声でぼやきながら、アルケミストの青年はファイルや鞄を見つけ出しては机の上へと置いていく。
果てしなく乱雑に散らかった部屋の中で目的の物を探すのは難しい。正に「探索」という表現がピッタリ当てはまる。
散らかした当人の頭の中には正確な見取り図が描かれているのだろうが、頼まれる方にしてみれば堪ったものではない。

「衛生応急処置法全書第三巻…。それから上等戦略概説全書の第五巻と第六巻…」

命ぜられた物を何とか探し当てながら分厚い本を次々と積み上げていく。
普段、運動とは無縁の生活を送っているため、彼の額には薄っすらと汗が浮かんでいた。
床に転がった鍋――何故そんな物が転がっているのかは不明だが――の下から最後の一冊を見つけ出す。

「第一次首都上水道災禍記録保管ファイル。これが必要ということは、首都は憂慮すべき状況の真っ最中ということか…」

拾い上げた手元の分厚いファイルに視線を落としながら、彼は苦々しい口調で呟いた。
十数年前、遥か遠いジュノーの地にまで、その災禍の被害報告は大々的に鳴り響いたのだ。
王国からの来訪者に門戸を開いている現状では、同じことが起これば今度は確実にジュノーも被害に巻き込まれることであろう。
俗世とは一線を画した存在を自負する錬金術士といえど、今回の異変に全く無関係で居られるという保証は皆無、ということでもある。

「――あの人が、どうして自ら貧乏籤を引いたのは分からないけど。まぁ、たまには人助けをするのも悪くはないかな」

軽く口元を綻ばせながら、青年は積み上げた書物を自前のナップサックに詰め込んで肩に担いだ。
今にも倒れてしまいそうな覚束ない足取りで部屋を後にする。彼が再び此処に戻ってこれるかどうか。

――それは神のみぞ知る。
192続き。の続き。sage :2003/12/11(木) 19:37 ID:tW7E4PFI
 ──どこだここは。
 引きずるような音と不快な感触に包まれていた。見上げれば、暗く汚れた壁面がゆっくりと後方に流れている。
身体中から力が抜けており、指の一本も動かすことができない。最早全身不具になったのかと魔法士は思った。
 ぎりぎりで動き、ぎりぎりで生き残っていた視覚を宿す器官を動かして、魔法士は状況の把握に努めた。なにが起ころうとも必然なのだ。
ともすれば崩れてしまいそうな自我をここまで支えてきた言葉を反芻しながら、ようやく顔の横で目を瞑っている女性の顔を見つけることができた。
剣士、否、元剣士と思しき女性だった。
 裏切られた。脳裏によぎってしまった言葉が苦々しく思い返された。裏切りもなにもないのだ。すべては流れ。おれごときには逆らえようもない。
綺麗なままの横顔を眺めるのを止めて、魔法士は瞑目し精神を集中した。足の先から爪の先まで、自分の神経を伸ばすイメージ。応えよ。応えよ。
 僥倖なのか、はたまた悪運の賜物か。
どうやら、念を練り上げるならば三回分、『火より立ち上るもの』を発現させるにはいささか足りない程度の精神力が、自分には残されているようだった。
悪くない。かれは口の端を歪めほくそ笑んだ。まだ残されているものがあるではないか、まだおれの流れは途切れてはいないのだ。悪くはない。
 今魔法士にとっての問題は、この残された残滓とでもいうべき自分の流れを動かす時機についてだった。無闇やたらと使うわけにはいかない。
残された流れはあまりにも矮小だった。対さねばならぬのは巨なる流れである、まともにぶつかっては押し流されるだけだ。
 ──待つ、か。
 そのとき魔法士は頭の片隅に生まれた諦観を追い払いながら、視界の片隅に動くものを認めた。自分を置いて逃げたはずの剣士だった。
 彼は最後に見たときとはかけはなれた動きで走っていた。
しなやかな躍動感にあふれ、決して上等とはいえないはずの剣も輝きが違っているように見えた。
剣士は獲物を狙う者の目をして、手の化け物へと一心に向かう。力の差は埋めがたいはずなのに、戦きを秘めた目はそのくせ刹那も逸らされない。
「ボクたちの流れがっ」
 既に間合いに踏み込んでいた剣士に、手の化け物が襲いかかる。
手のひらに載せるように運んでいた魔法士と元剣士と少女の頭蓋をそのままに、指のような形状の塊が剣士に牙を剥く。
自分は止せ、と言いたかったのだと思う。しかし魔法士の口からは苦鳴がもれただけだった。
「いささかも絶えぬことをッ!」
 剣士の神技、火炎の剣技マグナムブレイク。剣士は向かい来る指に火炎を纏ったブレイドを叩きつけた。
穢れた泥が爆炎に焼かれ焦土と化し、爆風に手の化け物が吹き飛んだ。
 魔法士は轟音と閃光を感じ、続けて自身が落下していることを知る。受身もとれず、魔法士はパイプ表面へと転がり落ちた。
転げ落ちた魔法士に駆け寄る剣士は、ぼろぼろと涙をこぼしていた。
「ご、ごめんよ、ほんとに、ほんとにごめんよ」
 ──馬鹿め。謝っている暇などないぞ。
 体勢を立て直した手の化け物がこちらに迫ってくる。
尽きることのない汚泥が内から盛り上がり、化け物の動いた跡には瘴気ともいえる気配を湛えた穢れた泥が残る。
剣士は化け物を見据えながら、必死で魔法士を支えようとする。ぐったりと脱力した魔法士を担ぎ上げる作業は難航し、
魔法士の右肩に自身の左肩を潜り込ませたときには、化け物はすぐ目の前に迫っていた。二人を飲み込もうと汚泥が広がる。
 ──動け。
 魔法士は動けない。剣士はためらうことなくブレイドを差し出した。魔法士を支えていなければならない。
勢いは皆無、殺傷力などあるはずがない。襲いかかっていた泥が、瞬間的に剣に集った。時間にして一秒かかったかどうか。
ブレイドはひしゃげ使い物にならない鉄の塊となり、汚泥に蹂躙されその役目を終えた。再び襲いくる汚泥。
もう身代わりになるようなものを、剣士は持っていなかった。よしんば魔法士の杖を差し出そうとも、既に化け物は動いているのだ。間に合わない。
 ──動け。おれはこんなところで終わるのか。剣士は流れを変えた。おれが変えなくてどうする。動け。動け。
「……生き延びるんだ」
 剣士はしかし、あきらめていなかった。握りしめた拳に炎を宿し、汚泥に差し出した。
 ──馬鹿な。腕が死ぬぞ。
 剣士の肘あたりまで泥が食らいつき、圧砕し、蹂躙し、そして爆発した。
汚泥に密閉されていたマグナムブレイクの爆発力は、その威力の程をすべて化け物に発揮した。後退する手の化け物。
 剣士は苦悶の表情を浮かべながら魔法士を支え逃走に移った。飛散した泥もそのままに、化け物が追いすがる。
二人分の重量を支え、なおかつ満身創痍の剣士の足取りは重く遅い。
 追いつかれそうになるたびに剣士は炎を纏った腕を差し出し、圧砕するに任せ、距離を稼いだ。
剣士の腕は関節が四つほども増えており、力無く肩からぶらさがっていた。
 ──止せ。それ以上腕を痛めつけるな。二度と剣が持てなくなるぞ。
 魔法士の叫びは届かない。魔法士は祈るような気持ちで『火より立ち上るもの』を発現させるべく、何度も何度も詠唱を続けた。
一向に魔力の集中しない我が身を憎く思った。ここで終わるのか。おれはなんだ。偉そうに剣士に口を利いていたおれはなんだ。
 精神的にも、体力的にも限界だったらしかった。剣士の愕然とする気配が魔法士に伝わり、魔法士は理解した。
『力』が尽き、炎を具象化することができなくなったのだ。五度目の追跡劇も終盤、化け物は剣士の数歩手前に迫っている。
必死に押しとどめ、堪えていたものが堰を切り剣士を押し流そうとしていた。魔法士は全身が灼かれそうな怒りを込めて意思を述べた。
 ──おれの流れよ、応えぬなら絶えよ。『地の底に眠りし灯火よ裁きの手をかざせ』
 果たして魔法士の祈りは通じた。魔法士の動かないはずの腕が少女の頭蓋を固く抱き、口元がかすかに動いた。
「火より来たれ」
 化け物と二人の間に『火より立ち上るもの』が発現した。伸ばしかけていた汚泥は焦げ崩れ、化け物は愚鈍に炎に衝突し続ける。
「え……?」
「立ち止まるな」
「あ……、う、うんっ」
 呆気にとられたような剣士の様子に、魔法士はこんな状況だというのに笑いがこみ上げた。
「貴様、その腕をどうするのだ。下手を打てばそのまま不具になるぞ」
 後方で火炎は燃え盛り、化け物の行く手を阻みつづける。
「そのときはそのとき。受け入れよ、だろう?」
 魔法士はひどくシニカルな微笑みを浮かべた。
「上等だ」
193えべんはsage :2003/12/11(木) 19:38 ID:tW7E4PFI
>>88さん
私が妄想してた展開とほぼ同じですよ!
というか、氏の剣士君を動かしまくってて恐縮でございます。申し訳ないです。
この手のへっぽこ君が大好きで、つい動かしてしまいたく……。
そろそろいじめるのも終わりに、どうなるかはわからずとも>>103さんのパーティによる救いの手を、
とか画策してたんですが、思いのほか粘ってしまい私が力尽きました(。A。)アヒャヒャヒャ

今回、なんといいましょうか、都合よすぎな気がもの凄くします。剣士そんな強いのかよ、みたいな。
堪忍してくださいませ皆々様;y=-( ゚д゚)・∵:.

>>180、なとあるスレ577さん
「(LoDorDLと)馴染む、実によく馴染むぞ!」の台詞は是非。
「URYYYYYYYYYYYYYYY」もあれば言うことなしです。
ニューマはアサシンの周囲に矢が届かなくするため、その近辺のmob(アノリアンとかスティングとか接近系)に、
ローグの矢が届かないぜー、ってことかと思います。

>>|x・)さん レッツオープン......ヾ( ゚д゚)ノ" Σ[青箱]
蝶・GJですYO!! 誤字はぱっと見た限りわかんねーです(゚∀゚)アッヒャー
補足説明。DIO様とは、吸血鬼で不老不死で貴族の養子で時を止めることができてそれからそれからえーとえーと。
ともかく某JOJOに出てくる「素敵」な敵役です。某天空の城の某ムスカ大佐みたいな。
あと、なんかこわいこと言われてるのは見なかったことにします。

>>188丸いぼうしさん
つつつ、ついにエリィト君が動き出す!
楽しみに待っております。

>>191の17さん、重なってしまいごめんなさい。
それでは長々と失礼しました。
;y=ー( ゚д゚)・∵:.
\/| e |)
19417sage :2003/12/11(木) 19:39 ID:cs8/B6TQ
>>丸い帽子さん
やってしまいました、すみません。余りに学者さんが格好良かったもので、つい…。
正直、最初の登場時点ではどうなることやらと思っていましたが(ぉ
やはり、学者さんのような理知的な存在があってこそ、討伐計画が成功を収めることができると思った次第です。
19552sage :2003/12/11(木) 20:14 ID:XkhJ8Lts
>>178 様
ノビたんをご指名いただき、ありがとうございます。
やはりというか何というか……スカートは破られる運命にありました。
あと、少し気になった事が……
……なぜ鞘を捨てた! 生きて帰らないつもりか!?(何
ともかく、これからもよろしくお願いします。


とあるスレ577様
DIO様!?
貧弱貧弱ゥ! とか 無駄よ無駄もう脱出不可能よ! とかですか!?
すごく楽しみです、期待してます。


|x・)様
本命部隊とは……恐縮です。
とにかく、力の限り頑張りますので。
……どこまで行けるか分かりませんが。
19652sage :2003/12/11(木) 20:14 ID:XkhJ8Lts
水路は予想していたよりずっと静かだった。
時折、水の滴る音がする以外はほとんど無音と言ってもいいだろう。
「……静かだね……」
紫苑が呟く。その声すらも静寂の中に溶けていきそうだ。
「嵐の前の静けさとも言うな……」
いつもはお喋りなハンスも、全方位を警戒しながらゆっくり、そして静かに歩いていく。
「この階ぐらいはこのまま素通りしたいんやけどな……」
「そうですね……」
慎重に、慎重に、俺達は歩を進める。
右を見ても、左を見ても、世界は平和だ……今のところは。
ただ、壁に付いた生々しい血痕と、僅かに漂ってくる血の臭いがこの水路がいかに危険かを教えていた。
水路に架けられた橋を渡ると、奥に階段が見えた。
見る限り、モンスターの影はない。
「……突っ切りましょうか?」
司祭が物陰から通路の奥の様子を伺いながら言う。
「そうだな……」
この程度の距離なら一気に走り抜けることも出来るだろう。
「よし、行くぞ」
物陰から身を乗り出し、走り出そうとしたその時。
何か――音がした。
あまりに小さな音だったので、危うく聞き逃す所だった。
聞き慣れたその音……そう、弓を引き絞る音だ。
次の瞬間、弦の音が鳴り響く。となると次にやってくる物は……!!
「止まれ貴様! 避けろ! 伏せろ!」
とっさに俺は隣にいた服事を蹴り倒した。
「うわ……っ」
何が何だか分からないまま蹴り倒された服事の上を矢が飛んでいく。
俺はその矢が飛んできた先に目を向ける。
そこにいたのは、弓を持った悪魔――ガーゴイル――が2体。
それと同時に、水路に隠れていた鰐の化物――アノリアン――が姿を現す。
「ヒュウ……歓迎部隊の到着やね……」
ハンスが楽しそうに口笛を吹く。いや、実際楽しんでいるのだろう。
彼は嬉々として大鎌を構え、全身の筋肉を撓ませて戦闘態勢に入る。
「ハンス、お前はガーゴイルをやれ。俺はワニをやる」
「了解や……!!」
「援護、頼むぞ」
「了解だよ……光の衣よ、彼の者を悪しき者から守りたまえ……」
「分かりました。神よ、祈りを力に変えたまえ……」
俺のセリフと同時に、紫苑と司祭が詠唱を始める。
「キリエ・エルレイソン!」
「ブレッシング!」
その声と同時にハンスが『消えた』。
2体のガーゴイルは、射るべき目標を見失い、しきりに視線を動かす。
だがその目が彼を捕らえる事は二度となかった。
冗談としか言えない速度でガーゴイルの首にハンスの大鎌がめり込む。
まるで糸を切るようにあっさりと首は切断された。その首が落ちるよりも速く、ハンスはもう一体のガーゴイルの頭に鎌の切っ先を突き立てた。
恐らく、彼等は自分達が死んだ事すら認知していないだろう。そう思わせるほどハンスの動きは速かった。
仲間を失った怒りからか、アノリアンが俺に向かってがむしゃらに突っこんできた。
手に持った鉈を大きく振りかぶり、力一杯叩きつける。
しかし……遅い。あの少女に比べるとまるで兎と亀だ。
鞘走りの音と共に刀が抜かれる。それは今まさに俺を叩き斬ろうとするアノリアンの腕を切り裂いた。斬られた腕がどさり、と地面に落ちる。
腕を斬られ、攻撃能力を失ったアノリアンにとどめの一撃をくわえる。
振り上げられた刀の向きを手首のスナップで変え、頭からアノリアンを両断する。
アノリアンはしばらく固まったように動かなかったが、やがて体の断面図を見せながらその場に倒れた。
「……排除完了」
「流石だな、マナたん」
既にガーゴイルを倒したハンスが余裕の表情で話しかけてくる。
「これぐらい出来なきゃ特務部隊の隊長は務まらないぞ」
「くーっ! カッコイイなー! マナたんは!!」
ハンスが笑いながら俺の背中を叩く。
「マナたんって言うな。それじゃ、行こうか」
俺に蹴られて倒れたままだった服事の手を取り、起こす。
その時服事が「……嘘みたい……」と言っていたが、気にしない事にした。
だがこの程度で浮かれてはいけない。
本番はこれからなのだ……
19752sage :2003/12/11(木) 20:19 ID:MSFlExx2
考えたらアコ&プリの出番ほとんど無い……
577さんごめんなさい_| ̄|○
198名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 20:47 ID:Hyrs.Fhc
薄暗く、水の音だけが響くプロンテラ地下水路の一階で、一人のバードが目を開けた。
壁にもたれかかったまま、ぐっと腕を上げて背伸びする。
大きなあくびを一つしてから、傍らの楽器に手を伸ばす。
「おはようー、おれの愛しいリュートちゃん」
唐突に楽器を抱きかかえて頬ずりする様は変態にしか見えない。
ひとしきり愛の抱擁をしてから、彼はようやく異変に気が付いた。
妙に静かなのだ。
1F故に普段から魔物の数は少ないが、常なら蝙蝠が飛び交い盗虫が這い回り鼠が駆け抜け盗虫の卵がうごめいている場所なのにもかかわらず、だ。
そんなところで寝るな、と忠告されたことは一度や二度ではない。
「……もしかしたら、魔物の討伐に成功したとか?」
まるきり見当違いな言葉だが、ここには彼に突っ込んでくれるような人はいない。
地下水路全体に流れる暗く澱んだ空気に気づいていないのだろうか。
バードは勝手に納得すると、入り口の衛兵に話を聞こうと荷物を持って出口へと歩き出した。

「何か変だな」
バードがぽつりと漏らしたのは歩き始めてしばらくたってだった。
1Fの中でも出口から一番遠い奥まった場所にいたので、先程寝こけていても誰にも気づかれなかったのだ。
「人もモンスターもいないのに、なんで足音が聞こえるんだ?」
バードという職業柄、耳には自信がある。
自分が出てきた通路と逆方向から聞こえるこの地響きは。
薄闇の向こうに足音の主の姿を確認して、彼は思わず固まった。
紫色の、巨大な体躯を持つ鼠――それは、無論このようなところにいるはずのない魔物だ。
そして大鼠が彼を狙っているのは明らかだった。
「うっそだろお!?」
彼ははじかれたように大鼠と逆方向に走り出した。
何故ここにいるのか、よりもこの状況をどう対処するか、の方が問題だからだ。
とにかく追いつかれまいと懸命に走るが、みるみる距離が縮まっているだろう事は想像がついた。
走りながら、腰に据えておいた弓を手に取り後ろを振り返る。
醜悪な大鼠はすぐ後ろに迫っているかのように感じられた。
ぞくりと、背筋を寒気が走り抜ける。
それは本能が察する純粋な『死』の恐怖だ。
幸い周りに人がいないので、無理に相手をするよりも逃げ切る方を選んだ。
「チャージアロー!」
いっぱいに引いた弦から矢が発射され、大鼠に当たったと同時にその体が後ろに吹き飛ばされる。
目くらましにと角を曲がるが、即座に体勢を立て直した大鼠が追いついてくる。
バードは軽く舌打ちすると、二本の矢を弓につがえて放った。
「ダブルストレイフィング…!」
二本の矢の直撃を受け、流石に大鼠はひるんだ。
その隙にと、彼は愛用の楽器を手に取った。
高らかにこう叫ぶ。
「アマツのキノコはア・松茸!」
冗談かどうかすらわからない寒い冗談を受けて、大鼠の体が瞬時に氷の彫像と化す。
凍結が溶けないうちに、と彼は更に大鼠から離れるように走る。
そして出口に行こうと思っていたはずのバードは、何故か2Fへの階段を駆け下りていた。

【PT構成】バード一人
【状況】クランプから逃走完了
【場所】2F入り口
199198sage :2003/12/11(木) 20:48 ID:Hyrs.Fhc
かなり盛況で熱い作品が多いので、自分も参加したくなって書いてしまいました。
バードがいなかったので、中堅ぐらいの扱いで。
キャラ的にも呑気な方で、ばしばし歌うバードだと思われます。
ある意味イレギュラーですがあまり状況を理解していない、巻き込まれ型がいてもいいかな、と。
これ以上キャラが増えるとまずいようでしたら、スルーしてください。
寒い冗談は創作です……寒いとかいう問題じゃないや_| ̄|○

>マジ&剣士
彼らの描写はずっとしっかりきっちり書かれていて、
心の動きもわかりやすく読んでいてドキドキします。マジ君に惚れます。
>先行Aチーム&プリ&ハンタ
合流おめでとうございます。人数が多いと動かすのが大変だと思いますが、
破綻無く書けていてすばらしいと思いました。姉御がんばれ。
>現在地上の人
エ、エリートセージ君いいですね…。冷静に、しかも会議を牛耳ってしまうとは
相当頭がいいんでしょう。使いっぱのアルケミ君ナイス。
>マナたん部隊
強い…つか、格好良いです。元々別の話を、こちらにアレンジできるのも凄いと思います。
個人的にノビたんに期待。

これからもがんばってください。
200名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 20:54 ID:yTS.u7p2
「どうなってんのかしらね、これはさ」

 目の前を、人を乗せたスティングが通り過ぎていくという、それはそれはとても奇妙な光景。
 金網の上に腰を下ろしたまま、私はボーっとその様子を眺めていた。

 私はよく、周りから変わり者だと言われる。
 ウィザードとして冒険者をやっているんだから、攻勢魔法の威力と適確さ、それに詠唱の早さを極めようとするのは、おかしくもなんともないでしょうに。
 人もまぁ、その程度のことまでは認めてはくれるんだ。
 ただ、見た目にかける情熱が、明らかに間違った方向を向いているんだそうだ。
 魔法といえば戦闘の花形。ウィザードなんて職をやってるヤツらなんて、多かれ少なかれ、その派手さに魅了されてるところがあるものだと思うけど。
 それなのに。私がファントムマスクに似合いそうだから酸素マスクが欲しい、と友人の聖職者に話したところ
「また、変わった物を欲しがるのね……」
 とか言うんだもん。あー、やんなっちゃう。
 まぁ、必要な材料を教えてくれた訳だし。何より、人から敬遠される私と、今でもこうして友達として付き合ってくれる彼女を、恨んだりなんていたしません。

 で。
 酸素マスクの材料であるオラオラを落とすという、タロウとかいうネズミさんを求めて下水道にやって来た訳ですが。
 ん? 上水道だっけ? ま、どっちでもいいんだけどさ。
 なーんで、お馴染みの青ネズミちゃんがいるのかしらね。それに赤コウモリに、ワニに、泥の手に、風船悪魔。
 っと、そういやさっき、風幽霊も見たっけなぁ。ん? 見てないかな。まぁ、これもどっちでもいいや。
 ここって、グラストヘイムの地下水道じゃないわよねぇ。頭を掻きながら、無駄に考え込んじゃったわよ。
 別にこいつらを相手にするのは全然構わないんだけど、私が倒したいのは白くて可愛いネズミちゃんな訳。けれども、どこを探してもただの一匹すら見つからない。
 いい加減、予定外の敵を相手するのもめんどっちくて。ガードマフラーの魔力を使って姿を隠し、金網の上に座り込んでいたりする。
 たまーにガーゴイルの矢が飛んでくるけど、そんなアホには問答無用でアーススパイク。ヒールイヤリングに奪われる私の精神力返せ、このすっとこどっこい。
 はぁ……。せっかく友達のハンターからグローブオブムーンライトまで借りてきたってゆーのに、ついてない。
 やることもないし、もう帰っちゃおうかなって思っていたら……そこになんか面白いものが飛び込んできたのでありました。

「はてさて……、スティングがペコペコの替わりになるなんて、聞いたこともないわねぇ。つーか、乗ってるのは死体がふたつ……みっつかな」

 モンスターどもに聴こえないように、私は口の中でだけそう呟くと、奥へと歩みを進めるスティングを見送った。
 すると、そのすぐ後ろを血まみれの剣士君が追いかけて行った。
 こいつ、バカ?
 本気でそう思った。剣士ごときが、どうやってもスティングなんかには敵う訳ない。
 ないんだけど……、剣士君の表情がヤケにカッコいいもんだから、なんか気になってしまった。もうちょっとだけ見てようかな。

 人生は余興の連なりである、とは誰が言った言葉だっけなぁ。
 粗末な作りの杖を手にし、腰を上げながら、そんなことを考えてみた。
201名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/11(木) 20:55 ID:yTS.u7p2
 やっちゃった。やっちゃったよ、この剣士君。
 敵わないまでも、スティングから魔法士の少年を助け出してしまいました。
 うわー、かっけー。お姉さん、ホレちゃいそうだよ。
 いや、年下の男の子が好きって訳でもないんだけどさ。って、それは置いといて。

 一部始終をすぐ目の前で傍観しながら、私は驚きを隠せなかった。
 剣士君がスティングを怯ませたのもスゴイけど、魔法士君が生きていたのにも驚いた。
 だって、片足ないんだよ? 私が見たときもぴくりとも動かなかったしさ。生きてるとは思わないじゃん。
 ちょっと向こうに放置されてる剣士ちゃんの方が、四肢がついてるだけ、まだ生きててもおかしくないって。
 それが生きてただけでなく、ファイヤーウォールでスティングを抑え込んでしまうんだからもう、二重の驚き。
 いやはや、人間って結構スゴイんだなぁと感心しちゃったよ。うん。
 その努力に免じて、ヒールでも掛けてあげようかと思ったけど、隠れて見てたのがバレると怖いからこのままでいよう。
 剣士君と魔法士君は支え合いながら、スティングから離れるように歩いて行く。あ、あと首だけの子も一緒。
 というか、やっけに大事に抱えてるわよね、生首なんて気持ち悪いもん。私ならすぐにでも放り出しちゃうけどな。
 なんだか気になって、二人の前に回り込み生首の顔を覗き込んでみた。
 あらあら、結構可愛いじゃない。なるほど、魔法士君ってば結構面食いなんだなぁ……って、ちょっとマテー!
 思わず大声を上げそうになり、慌てて口を抑えた。よかった、二人とも気付いていない。

 その生首の顔は見たことがあるものだった。ていうか、ごめん。知人です。
 友達の妹さん。彼女の家に遊びに行ったとき、いつも笑顔でお茶を出してくれた子。
 それがまぁ、なんと無残な姿になってしまったことで。
 私は数ヶ月振りに、血の気が引くという感覚を思い出した。
 別に知人の遺体を見たくらいでは、そんなに驚いたりはしない。
 けれど、だ。その友達というのが妹さんに対して、それはもう恐ろしいまでの溺愛っぷりで。それが、彼女のこんな姿を見ちゃった日には……
 やばい。プロンテラの街が消えるかも。いや、マジで。

 妹さんの首は魔法士君に抱えられたまま、剣士君とともに曲がり角の先に姿を消した。
 反対側では、ようやく火柱が消えて辺りをうかがうスティングが、目標を見失ってウロウロしてた。
 やがて諦めたのか、剣士ちゃんをつかみ上げると、また奥へと連れ去って行く。
 死体を連れ去る魔物なんて、なんだか事件の予感。いや、すでにおかしなことにはなっているけれど。

 さて。私はどちらを追いかけるべきなのか。はたまた、今のうちに友人の魔の手の届かないところまで逃げるべきなのか。
 通路の隅っこに突っ立って、私は見えるはずのない天を仰ぎ……

「やっぱ逃げるべきだよねぇ」

 誰に聞かせる訳でもなく、ぽつりと呟いた。
202|x・)sage :2003/12/11(木) 21:29 ID:yTS.u7p2
|紫箱|x・) 青箱が開けられちゃったので、今度は紫箱です。ごきげんよう。

|紫箱|x・) 旧サバでMクラスなので、さすがに開けるのはためらわれると思います。以下、レス。

>上水道の話関連
マジ君を助けてみようかなって思って書いてたら、先にえべんは氏に書かれてしまいまして
折角書いたんだしと恥を覚悟で、緊急書換え、最悪Wiz娘の登場、即退場です。
剣士娘もまたえっちらおっちら運ばれちゃいました。どこまで連れて行かれるのか楽しみです。

>>185 某スレ577氏
ニューマについては、>193でえべんは氏のおっしゃる通りです。
アサ姉さんにくっついてるアノリアンたちを撃てなくなっちゃいます。
弓師がPTにいるときは、打ち合わせなしに前衛ニュマしちゃダメです。
当方、支援プリがメインなのに、時々やっちゃいます_| ̄|○
わかりにくい表現、失礼いたしました。

>>188 丸いぼうし氏
やっぱセージなんですか。>131の3〜4行目にWizという表記ががが……
個人的にセージきゅん希望です。セージきゅん好きなので。

>>193 えべんは氏
怖くない、怖くない……(催眠光線
某JOJOはわかりませんけど、ムスカさんならよくわかります。
わかりやすい喩え、ありがとうございました。
というわけで続きお願いしますね(にっこり

>>195 52氏
予想以上に、ケタ違いの強さですね……;
追いつかないうちに、他の部隊を先に進めないと……

>>199
いい位置にいますね(にやり
こんな素敵キャラを使わないのはもったいないと思います〜

|紫箱|x・) レスの方が書いてる時間長そうです。反省。

|紫箱|x・)ノシ
203とあるスレの577sage :2003/12/11(木) 21:59 ID:f5mdiBOM
|∀・;)

なるほど・・・>193>202
そんなアホなことしたとは
ローグもローグだ、武器持ち替えろアホ
あとで二人とも尻フラワーの刑だ!

さーて一旦まとめのお時間ですね

【有名冒険者+おちゃらけ先遣隊】
お姉さんプリースト、ハンター
アサシン(姉御)、プリースト(殴りブリーファー)、ウィザード(おんぴう)
ローグ(スケベ)、モンク(サカゲリーナ)
現在→2F中途戦闘継続中

【おれとボク・・・と高レベルWIZ】
マジシャン、剣士、ウィザード
+妹の頭蓋
現在→3Fのどこかで逃亡中、ダメージ大
WIZは隠れて観察中

【私とアコライトと俺】
クルセイダー(AGI-VIT献身盾)、アコライト、ブラックスミス(戦闘タイプ)
現在→3F奥より後退中

【私と姉】
アサシン(フィル)、プリースト
現在→2Fで前に何かいる

【俺】
ブラックスミス(半製造タイプ)
現在→3F奥より後退中

【騎士団特殊部隊】
騎士(ラインフィールド大尉)、騎士(ハンス)、プリースト(紫苑)
+プリースト、アコライト
現在→1F戦闘終了

【エリートセージとアルケミ助手】
セージ、アルケミ
現在→地上で会議

【バード】
バード
現在→2F入り口

そして・・・

【スパノビとおまけ】
スパノビ、シニョンアコ、アチャ、アルケミ
現在→地上
できればセージさんたちと合流したいのう

ふう・・・大変だ・・・
しかし必ずや終わらせて見せる!
まずはアコプリがある程度集まったら
「アコプリヒール」の歌を強制的に歌わせますw
行くぞ皆アアアア!!!!!!!!!!

【おまけ・DIO様予定台詞集】
「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」
「貧弱貧弱ゥ!」
「URYYYYYYYYYYYYYYYそんな眠っちまいそうな詠唱ででこの私が倒せるかーッ!!!」
「馴染む!実によく馴染むぞ!!!!」
「ウリイイイヤアアアッーぶっつぶれよォォッ!!!!!!」

彡サッ
204とあるスレの577sage :2003/12/11(木) 22:00 ID:f5mdiBOM
「ねえ・・・大丈夫だって!あの人たちなら
何だかんだいって帰ってくるに決まってるって
もしかして今だって上水道なんかじゃなくて
どこかの酒場で酔っ払って雑魚寝してるのかもしれないでしょう?ねえってばあ!」

アチャさんは私のことを気遣っていってくれているようですが
先程聞いた話が頭から離れないこっちの心には届きません
きっかけは今日の朝ごはんを食べた後
いつもの宿にちょこっと顔を出したときに
そこにはぶすっとした表情のソヒーたんとネコちゃんしか
いなかったことから始まりました

「あれ?今日は一人?めずらしいねえ
きのう料理した弁当もって皆でピクニックにでもいったのかな?」

アルケミたんが彼女にかけた言葉に
テーブルの上に顎をのっけて
不満そうな表情のまま口だけ動かして
答えるのは

「ふーん、ご主人様たちはプロンテラ上水道にいくんだって
私はきちゃだめなんだって
仲間はずれなんていやだなーつまんないなーみんなにもいってなかったなんて
わるいんだなーよくないこと考えてるのかもしれないなーーーーーー」

・・・え?上水道?
最近なんだか悪い噂が流れているあそこに
あの人たち行ったの?
なんだか胸騒ぎがしてしょうがありません
私もよくはわからないのですが
上水道が封鎖されていて
出入りできないということと
行方不明の冒険者が結構な数いるということは
聞いています
自分は逃げ出してきた人という人を一人
プロ南で見ましたが
可哀想なことに・・・その方の髪の毛は真っ白で

「たすけて!」
「俺は上水道から逃げてきた!」
「ああ!あの燃える眼!」
「たすけて!」

・・・精神に異常をきたしていたのでしょう
やがて衛兵に連れて行かれてしまいました
それからというもの
プロ西を溜まり場にする人はすくなくなり
憶測だけが皆の間を流れていきます

「枝テロが大規模に行われているらしい、まったく迷惑だよな」
「いや実はプロンテラ騎士団の大規模演習だそうだ」
「ついにゴキを排除する究極殺虫剤が出来たらしい」
「いや他国を侵略するための秘密兵器の実験をしているというぞ」

いろんな話がでていますが
確かなことはなにもわかりません
でも・・・なんか良くないことがおこっているというのは解ります
私はどうしても
この眼で上水道の入り口辺りを確認したいと思って
できればちょっとだけ入ってみたいとも思って
いままでカプラさんにあずけていたもので
役立ちそうなものをバックパックに詰め
アルケミさんのカートにも積んで貰い
アチャさんの制止もかまわずに
プロンテラの西門へとむかうのでした

「もう・・・あーーーーわかったわよ一緒に行くわよゴキなんて全部潰してやるわよ見てなさいーーーーー!」

・・・ありがとね、アチャさん、アルケミさん
私ほんとうに心配なの
皆のことが
あの人のことが・・・

--------------------

こんなにひっそりとした西門付近は
はじめてかも知れません
いつもだったらカップルの多い公園も閑散として
地べたに座っておしゃべりにふける冒険者たちの姿も
まったく見えません
たまに山のほうに向かう人や
オークダンジョンのほうに向かう人がいますが
皆なんとなく急ぎ足で
さっさとこの辺りを通り過ぎていきます
暖かい昼間だというのに
寒気を感じて
私は衛兵さんたちが妙にびくびくしながら
大人数で上水道入り口を囲んでいるのに近づこうとして・・・

・・・横にローブを身にまとって
剣をもった変な女の子がいるのに気づきました

「?」
「?」

私たち3人と
ノービスの女の子は
そのまま木陰で
頭にハテナマークを乗っけたまま
お互い相手の言葉を
じっと待っていたのでした・・・
205とあるスレの577sage :2003/12/11(木) 22:01 ID:f5mdiBOM
|∀・)

まとめとかで
間違っているところあったら
言ってね

ノシ
206104だったものsage :2003/12/11(木) 23:24 ID:Cxp9tOFA
…………俺は今、猛烈に自分の所業を悔いている。

傍らには、肩を寄せ合うようにしてカートにもたれかかるクルセイダーとアコライト。
二人ともすでに満身創痍。気力も体力も、すでに限界に達している。
足元には、剣士と思わしき女の子の……冷たい身体。

俺はあの時、向かいの通路を横切っていく手のような物体を発見した。
スティング。別名窓手。
火炎魔法には滅法弱いが、いざ接近戦を挑めば百戦錬磨の廃とて
そうそう無傷ではいられない化物中の化物。

奴は、息を潜め慎重に様子をうかがう俺たちには気づいていないようだった。
そのままやり過ごすのが最善手だった……んなこたぁ今時素人でも解りそうなモンだ。
だが俺は……次の瞬間、愛用のファイアツーハンドアックスを両手に握り、奴に飛び掛っていた。
クルセの姉ちゃんのディボーションをもらった事で、気が大きくなっていたのかも知れん。
窓手の巨大な掌に握りこまれる、人間と思わしき姿を確認した瞬間から
俺の冷静で正常な判断力はどこかへ吹っ飛んでしまっていたのかも知れない……

廃ですら無傷ではすまない窓手と俺がガチの一騎討ち。
ダメージは全てクルセの姉ちゃんが被り、アコライトの少女がそれを懸命に癒す。
なんと言うか……2人の消耗は、お察しください。
生きているだけ大したモンだと思うべきかも知れない。
女の子2人をピンチに追い込み、自分だけがピンピンしてる情けない男。それが今の俺だ……

2人がこの状態では、動く事もままならん。これも俺の軽率な行動のせいだ。
残りもわずかとなった回復剤をカートから差し出し、
俺は不慣れながら目一杯の手当てでクルセの姉ちゃんを労う。
後悔はしていない、とばかりに俺に笑ってみせる彼女。
何故だ? 何故あんたらは、赤の他人のために自分が傷を受けて笑っていられる……??

……過ぎた事をウジウジ考えてる場合じゃねえ。
今度は俺が、彼女たち2人を守る番だ……いや、3人か。
致命傷の一撃で倒されたらしく、幸いにも剣士の子の身体そのものは比較的良好な状態。
この分なら、朽ち果てる前に蘇生を施せればなんとかなるだろう……

周囲を警戒する俺の視界に、この薄暗い上水道にあって何やら鈍い輝きを放つ物体が飛び込んだ。
……オリデオコンだ。どうやら先の戦いで、俺が「発見」していたらしい……
こんな状況では、この神の金属すらも石コロに等しい。なんでこんなところで、変な幸運を使うかな。
半ば投げ遣りにオリデオコンをカートに放り込む俺に、再び姉ちゃんは微笑みかけた。

「我らは余程強運に恵まれているらしいな。
 生きて還れる。間違いなく。この運があれば、な」

……本心なのか、空元気なのかは解らない。解ったところで1zの得にもならない。

「……ああ」

俺は、不敵な笑みで彼女に応えた。
……そうするしか、できなかった。
207104だったものsage :2003/12/11(木) 23:38 ID:Cxp9tOFA
と言う訳で、ディボーション書かせていただきました。
結果だけですが……ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ_| ̄|○

イキアタリバッタリ全開につき、なんか話もちっとも進んでいないような…_| ̄|○
20852sage :2003/12/12(金) 00:31 ID:y82yz5oU
少しバランス崩しぎみっぽいのでここらで騎士団チームを一旦止めます。


階段を下り、地下2階に辿り着いた。
1階よりも血の臭いが濃くなる。それは犠牲者の多さからか、それとも時間的なことなのか……
前方を見ると、長く続く水路、そして……
「あれは……?」
司祭が指差した先には、人間らしき形をした物が横たわっていた。
要救助者か、それとも『元』要救助者か……
とにかく、確かめない事には何も始まらない。周囲の安全を確認すると、俺達はその人影へと向かった。

「ひどい……」
紫苑が思わず口元を覆う。……正直、俺もあまり見たくない。
そこにいたのは惨殺、なんて言う二文字がピッタリな死体だった。
頭部は何者かに切断されており、それを見る事はできない。
が、それよりひどかったのは全身の傷である。
体全体が傷に覆われ、ずたずたになった内臓が水の中に散乱していた。
もはや性別すらも分からない。それほどに変わり果てた姿だった。
「……しかし……」
司祭が傷口を観察しながら呟いた。
「どうやったらこんな傷になるんでしょうか?」
「というと?」
ハンスが司祭に問い返す。司祭は首の切断面を指差した。
「まずここ、これは刃物で切断された……つまりアノリアンの仕業である事が伺えます。
 しかし、この全身の傷……このように全体をまんべんなく削り取ったような傷を作ったのは誰か、と言う事です」
俺は考えた。
アノリアンなら四肢は分断され、このような形にはならない。
スティングの攻撃方法でもこうはならない。
ガーゴイルは矢を使うので論外だ。ドレインリアーも肉を削り取るような事はしない。
となると残るのは一種類。
三人で顔を見合わせた後、振り返る。
暗闇の向こう……そこには数十もの瞳が光り輝いていた。
言うまでもない、クランプの大群だ。
「……どうしますか?」
司祭が落ち着いた態度で尋ねてくる。
「退く訳にはいかへんなぁ……そやろ?」
そう言ってハンスが一歩前に踏み込み、身構えた。
司祭は硬くなっていた表情を少し和らげると、方術の詠唱を始めた。
「祝福の歌よ、我らに幸運をもたらせ。グロリア!!」
歌声が響き渡り、体から力がわき出る。
俺も刀の鯉口を切り、闇の彼方を睨みつける。
ゆっくり、ゆっくりと迫ってくる大鼠の河。
その流れが加速した。
「ネズミ駆除の開始やっ!」
声だけを残してハンスが消える。見えない刃が大河を少しづつ切り崩していった。
それでも半分ほどは刃をくぐり抜け、俺達の元に殺到する。
俺は刀を抜き放ち、口を開けて飛びかかってきた鼠を二,三匹同時に切り落とす。
とにかく振れば当たるという状況である。見える鼠を片っ端から斬り捨て、突き刺し、踏みつぶしていく。
俺が斬る事が出来なかった鼠も、司祭が方術で始末していく。
「おーおー、やるやないか、プリさんも〜」
司祭の意外な強さに感心したハンスが一瞬よそ見をしたために、大量の鼠が押し寄せてきた。
「っ……! このバカハンス!!」
悪態をつきながら一心不乱に刀を振る。だがいかんせん数が多い。
残った鼠数匹が紫苑と服事に殺到する。
「聖なる光よ! 神に仇なす者を討て! ホーリーライト!!」
直前で司祭が光の矢で鼠を貫く。
だが、それすらもかいくぐった一匹が紫苑の首筋に噛みついた。
「きゃあああぁぁぁっ!」
「紫苑ッ! くそっ……!」
助けに行きたいが、攻撃の手を休めればこちらが鼠に食い殺されかねない。
「服事! 叩き落とせ!!」
唯一手の空いていた服事を怒鳴りつける。彼は一瞬躊躇したものの、紫苑の首から鼠を引き剥がし、ほおり投げた。
いい度胸をしている。ハンスより役に立つかもしれん。
すぐに服事が紫苑にヒールを唱える。もう大丈夫だろう。
「ハンス! もうよそ見するなよ!!」
「分かったあっ!!」
少し不安を抱きつつも、俺は改めて鼠を斬る事に専念した。

数分後、辺りには鼠の死体が山と積まれていた。
「よくもまぁこんなにいたものやね……」
ハンスが小さく溜息をついた。
「紫苑、傷のほうは?」
「う、うん……大丈夫だよ。アコ君がすぐにヒールしてくれたし……」
そう言われて紫苑の横にいる服事が照れくさそうに鼻を掻いた。
「まぁ……誰かさんがあそこでよそ見をしなきゃこういう事にはならなかったんだがな……」
「いや、だからあれは……な? その……」
そう言ってハンスを睨む。焦った本人は賢明に弁解の言葉を探そうとしているようだ。
「ともかく、大事に至らなくてよかったですね」
「うん。本当に――」
突然、紫苑の様子がおかしくなる。
「紫苑?」
「え……あ……だ、だいじょう……ぶ」
言葉を言いきらないうちに、紫苑の体が倒れ込む。
「……紫苑? 紫苑!?」
体を揺さぶるが、紫苑は苦しそうに呻くだけだ。
「……クランプの毒にやられたのでは?」
司祭が紫苑の顔を覗き込み、言った。
「かなり強力な毒です……治すには時間がかかりそうですね……」
「……ワイのせいや……」
ハンスが後悔に顔を歪める。
予期せぬ損害……俺達の前に、暗雲が立ちこめた。
209名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/12(金) 00:39 ID:hwQDJXMw
 遺憾なことではあるが、実際、私も彼に救われていた。アコライトと二人だったならば、底の見えない沼地のような絶望に陥穽するしかなかっただろう。
「姉さん、また来たみたいだ」
 緊迫した鍛冶士の声に私は気を引き締め、ままならぬ身体を酷使して立ち上がり戦闘態勢をとった。自身の力の無さがもどかしい。
「了解、だ」
 半身を覆い隠せるほどの大きな盾と、波打つ刃が特徴的な片手剣フランベルジェを構える。私のスキルの大半は盾がなければ効果を成さない。
いわば生命線ともいえるそれを前に突き出し、フランベルジェを中段に構え、闇から響くひきずるような音と羽ばたく音に神経を集中させる。
アノリアンならば無音であるし、クランプならば鳴き声でわかる。ガーゴイルならば既に攻撃されている。
音から判断するに、ドレインリアーとスティングの混成部隊に違いあるまい。
「ドレインリアーは私が落とす。スティングはわかっているな、お前だ」
「あいよっ」
 鍛冶士は斧を構え、戦闘用のスキルをすべて行使した。輝く球体が鍛冶士を覆い霧散し、巨大な剣のイメージが鍛冶士に降り注ぐ。
最後に鍛冶士の身体中を紅のオーラが覆うと、彼は親指を立てて猫科のごとく背を丸め突撃の瞬間を待った。
「……それと今回、ディボーションは無しだ」
 私の身体が限界に近いのもあるが、それ以上にアコライトの状態が思わしくなかった。
精神力の使いすぎだ。気丈にも立ち上がり戦闘態勢をとってみるものの、
血の気のない顔で足元もおぼつかない彼女に更なる負担を強いるわけにはいかない。
「私が注意を逸らす。一撃離脱で攻撃しろ」
「わかった」
 闇を纏った影がわずかな光源に照らしだされる。斬りかかった私が見たものは、醜悪な手の化け物ではなかった。
それはドラインリアー二体に纏わりつかれながらも足を止めない、しかしひどく憔悴した様子の剣士だった。
彼は生きているのか死んでいるのか──おそらく後者だろうが、
ずたずたになったコートが辛うじて魔法士であることを伝えている頭を垂れた人間を伴っていた。
 剣士は私を見やりながら口を開く。
「すいません……、蝙蝠の処理をお願いできますか……」
「あ、ああ……」
 自分の迂闊さを恥じながら、剣士の頭部と右肩の辺りを執拗に攻撃し続ける蝙蝠を狙う。
フランベルジェの切っ先を向けながら私は歯噛みした。これでは、無理だ。剣士に攻撃が当たってしまう。
「ディボーション」
 私は殲滅を諦め、剣士のダメージを肩代わりした。いかに傷つこうとも私はクルセイダーだ。
ドラインリアーごときの攻撃など、どうということはない。剣士は不思議そうな顔をして肩を見やり、そして私を見て頭をさげた。
「あ、ありがとうございます」
「気にするな。それよりいつまで見ているつもりだ。さっさと落とせ」
「あー、はいはい」
 鍛冶士は斧を仕舞い、チェインを取り出した。何をするつもりかは知らないが、私よりも彼のほうが武器の扱いもうまく、手先も器用だった。
「当たったら許してな」
「食らうのは私だ」
「そうでした」
 鍛冶士はおどけて言うと、チェインを構え一気に薙ぎ払った。剣士はびくりと肩をすくめ目を閉じるが、
チェインは剣士にかすることなく、まるで意思を持ったかのように疾走しドラインリアーだけを叩き落した。
「神業」
 自画自賛する鍛冶士に始末を任せ、私は剣士と魔法士の状態を検分した。
「大丈夫か?」
 暗がりでわからなかった二人の損傷を見た私は吐き気を覚え、それを懸命に堪えた。
神よ、貴方は見ておられぬのか。そう思った途端、私は呟いてしまった。
「ひと──か?」
 硬直する剣士と魔法士。しまった、私はなんということを。
「失言だ……、すまん……」
「ひとです」
「ひとだ」
 ほぼ同時に答えた二人は顔を見合わせて、いきなり笑いだした。私は呆気に取られ、おそらく生涯に類を見ないほどの間抜けな顔をした。
ドラインリアーの始末を終えた鍛冶士が理解できないといった様子で私を見る。鍛冶士は自分の頭の辺りを指でさし、くるくると円を描く。
傷が痛むのか笑いながらうめき、涙を浮かべ、苦鳴をもらしながら、それでも笑いつづける二人は確かに気が触れたようにしか見えない。
しかし私はこのように笑う人種を知っていた。
「イグドラシルの葉はあるのだろう。壊死する前に治療せねばならん」
「あ、ああ。……待ってな、今用意するから」
 彼らの笑い方はよく知っていた。私の目指す人が相棒とよくしている笑いとそっくりだった。
それは死線をくぐり抜けた、戦友同士の笑い方だった。
210えべんはsage :2003/12/12(金) 00:42 ID:hwQDJXMw
駆け足すぎたかもしれません。思うところがありましたら遠慮なく言ってくださいませ。
後学し精進したく思います。

>>206の104だったものさん
>>200-201でスティングに乗った剣士子は連れ去られてしまったようなので、
その方向を前提に何となく辻褄合わせにならないかなー、と思いつつ合流させてしまいました。
口調等おかしなところはかなーりあると思いますが、ご容赦いただけると幸いです。

>>198さん
ア・松茸ワロタ、と……(・∀・)イタダキ!
キャラもおもしろいし良かったと思いますですよ。
52さんの部隊も>>208で足止め食らいそうですし、先遣隊の救世主となり得るかもしれません。

>>202の|x・)さん ((((;゚д゚))))ガクガクブルブル ~~~~ヾ(・x|紫箱|サイミソコーセソ
こわくないこわくない……。やっぱりこわい(つД`)
なにが怖いのかと言いますと、姉プリと相方ハンターの扱いが怖いのです。
姉プリ友人のWIZ子さんの言もありますし、下手に扱えないなー、と。強すぎて。
52さんのロードナイトクラスと思しき二名のような感じでしたら、真三国無双状態でひたすら斬殺していく描写等思いつくの(発想が陳腐)ですが、
プリーストとハンターだとむつかしゅうございます。
あと、剣士君とマジ君のハナシ、先に書いてしまったようで申し訳のう。

はて……、次回はプレゼントボックスでしょうか。

>>203のとあるスレ577さん
異議アリッ!!
「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」→×
「おまえは今まで食った芋(orミルクor人参)の数をおぼえているのか?」→○
「おまえは今までヌッコロした(・ω・)ポリーンの数をおぼえているのか?」→スゴク(・∀・)イイ!!

駄レスごめんなさい
;y=ー( ゚д゚)・∵:.
\/| e |)
211丸いぼうし@会議室sage :2003/12/12(金) 00:55 ID:u0Z23fXU
 会議は騒ぐ、されど進まず。おまけに頼んだ書類は届かない。どうせケミはカオス理論に基づいた
私の整理方法などわからないだろうから、時間がかかるのも無理はない。だが、遅すぎる。
 焦ってもいらだっても仕方がないのでカフェインを摂取しに、外へ出た。騎士団の廊下では
ごろつき然とした騎士団員が煙草を吸っていた。肺ガンになったらどうしてくれよう。
騎士団の休憩所にはいると、伏せてあるマグカップを手に取り、サーバーからコーヒーをなみなみと注ぐ。
 口を付ける。なんだこの泥水は。香りもコクもあったものじゃない。ひとくちだけ口を付けて残りは
流しに捨てた。

 会議室の前の廊下に戻ると、さっきの騎士がちびた煙草をまだ吸っていた。開いていた会議室の扉から
中をのぞき込むと、議論が交わされる中で入り口付近に立ちつくしている見慣れた姿があった。
 顔を真っ赤にして汗を流し、口をパクパクしている。ケミは対人恐怖気味なところがあったからムリもない。
ここに入ってくるだけで体力の大半を消費したことだろう。

「ああ、ケミ君お疲れ様。資料の件ご苦労だったね。」

「きょ、教授〜」

泣きそうな顔でこっちを見つめてくる。というか、目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
泣かれても立場が悪くなるのは僕なので背中をさすってやる。手間のかかる奴だ。

「ん、ああ、そいつは学者先生のお弟子さんだったか。だんまりしてるもんで出前の蕎麦屋かと
思っちまったワハハハ」

一体どういう推論過程があってケミが蕎麦屋になるのだろうか。理解できない。
気まずい沈黙を察したか豪快に笑い飛ばして騎士がケミの肩をバシバシ叩く。今に泣き出すぞ。
 ケミは失語状態で自己紹介も出来ないようなので、代わりに紹介をしてやることにした。

「僕の助手のケミ君だ。多少気が弱くのろまではあるが、判断は正確だ。」

 ケミはうつむいたまま真っ赤になった顔を振った。否定されたいのか肯定されたいのか
まったくわからない態度である。
212丸いぼうし@会議室sage :2003/12/12(金) 01:13 ID:u0Z23fXU
 頼りない助手はともかくも、資料は届いた。
 そのパンパンにふくれた鞄の中に、ファイルはあった。これがまず真っ先に詳しく見たかったのだ。

 第一次首都上水道災禍記録…何分昔に作ったファイルなので、内容は詳しくは覚えていなかった。
当初は情報が少なかったが、今こうして作戦本部にいると、情報はかなりの量が入ってくる。
机の上に散らばっている殴り書きの報告書(汚い字体から書いた人間の知性が推し量られる…字は人なり、だ。)
とファイルを対比してみる事にした。

「○○日午後九時…四階でアノリアン出現の報が入る。その後通信途絶…か」
ファイルのデータを参照すると、月齢…一致。階層…一致。

ドキリと心臓が跳ねた。

 一枚、また一枚、報告書を重ねるたびに、心臓の鼓動が早くなる。
一致…一致…一致…一致、一致、一致、一致、一致一致一致一致一致…
机の上の最後の報告書を全て山に重ねたとき、同時にファイルを繰る手が止まったとき、

僕は戦慄した。

その一致にその運命にその恐怖にその必然に、その不思議さに。

「…なぁ、ケミ君。楽しいなぁ。」

「?何が楽しいんですか教授…」

「君は面白くないのか?このファイルを読んだのだろう?状況を知っているのだろう?
 以前と一致してるんだ。一致してるんだよ。いや、違う…同一(アイデンティカル)…。そう同一だ!。
  僕らは今、多分この世で最もミステリアスなもののうちの一つの前に立っているっ!
 さぁ、君も理の追求者ならば感謝したまえ!。世界の流れに!時の巡り合わせに!!」
213103sage :2003/12/12(金) 01:21 ID:f7oi1EEQ
調子こいて書いちゃうぞ〜(ヤメレ
てゆうか書かれてるよ、続き・・・・・・・・。
細部修正・・・・・・・・・・・・・。


「こんなの落ちてました」
そういって、アコライトが拾ったのは手袋みたいなものだった。
なんか、実はいらないところで運を使い果たしているのかもしれない。
「これで黒字だな」
私は無理やり笑うことにした。
アコライトもBSも笑った。さっき合流した剣士と魔法使いも笑った。
その裏にはかなり疲労と恐怖と不安が混じっているような気もする。
自分も多分そんな顔なんだろう。

そして、アコライトが笑うのをやめた。
そして私たちに喋るのをやめてさせて、聞き耳を立てている。

「どうした?」
「誰か、います。襲われているかも?」
私の問いに彼女は答えた。
「ほんとか?」
「わかりません。でも、あっちからそんな声が」
そうBSの問いに答えて彼女の指差した場所は行き止まりの道。

「助けにいくか?」
魔導師の少年はいいだす。
剣士は何も言わなかった。

私は助けに行きたかった。
4Fで助けたかった、でも助けられなかった1次職の冒険者たちを思い出す。
ワニの鉈で両断された剣士、ネズミにのど笛を食いちぎられたアーチャー。
窓手に握りつぶされたシーフ。矢りんごのように壁に頭を縫い付けられたマジシャン。
そして舞い上がる緋色の霧。

誰かを守りたくてこの道を選び、この戦い方を選んだのに、誰も助けられなかった私。
せめて、と生き残っているものを助けるのが、今の私の使命だと思う。いや、思いたかった。
多分そう思わないと自己嫌悪進めなくなりそうな気がした。

「いきましょうか」
そういって両手斧を担ぐBS。
「はい」
まだ辛そうだけど立ち上がるアコライト。
魔導師は剣士の手を借りて、カートの中に入った。
さしずめ戦車状態かと思った。

「すまない」
私は訳もなく謝った。
下手したら危険の真っ只中に突っ込むかもしれないのに、
拒否されても仕方なかったのに了承してくれた皆に感謝を。
きっと、生き残りたいのはみんな同じで、人が集まれば生存率はその分上がると思っているのだろう。
かくゆう私もそう思う。

「いこうか」
そういって今度は走り出す。
襲われている人が殺されてしまう前に。
214丸いぼうしsage :2003/12/12(金) 01:24 ID:u0Z23fXU
♪読み返すたびに、誤字が見つかる〜…キチンと推敲しようね、自分。

>>|x・)さん
最初はWizだったんですが、ドッチでもそれほど矛盾無かったのでセージに
しちゃいました…と思ったら矛盾がありましたか…反省_| ̄|○

>>17さん
続けてくれるだなんて、こんなに嬉しいことはない…。グッジョブ。
215名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/12(金) 01:54 ID:f7oi1EEQ
さらに走るスピードを上げる。
暗い視界にはBSらしき人影と、ワニ。
逃げてここに追い詰められたのか、間違ってここに逃げたのかわからない。
そんなことはどうだっていい。

私は走るのをやめる。
走る勢いを地面をすべるようにして制し、その勢いを自分の体を軸にして回転の力にかえる。
そしてその回転をそのまま勢いに買えて、おもいっきり盾をぶん投げる。

ワニに命中し、盾は回転しながら私の元に戻ってきた。
それを気合一線、叩き落として拾う。装備する。

ワニはこちらの存在に気がつき、私に向かってくる。
思惑どうり。

ワニは私に粗末な鉈で斬るつける。
それをよけ、あるいは盾でとめ、よけきれない分は鎧に当てて受ける。

その隙にBSは両手斧を担ぎ、疾駆する。
そして円筒状の通路を駆け上り、壁をけって斬りかかる。

まるで竜巻のようにして振り下ろされた斧はワニの背骨を砕く。
私はそれをワニごと盾で受け止める。
盾と斧にはさまれて、ワニの体は真っ二つになった。

それでもしぶとく食いつこうとする頭に聖霊の矢が炸裂した。

幸い、襲われていたBSは命に別状はなかった。
戦力になるか?といえば、たぶん現状ではNOだと思う。

とりあえず、休憩することにした。
アコライトが限界に近かったからだ。

水の流れる音がする。
会話がなく、沈黙が流れていた。


一方そのころ、
「何でお前がそこにいる」
どうもクルセイダの妹がここにいたので驚いているようだ。

かってながら、3Fに残存する戦力を集中させにうごきます。
ッと思っていたらどんどん合流してってるよ。
すごいね〜

4Fにはすでに生存する人間はいないと思って書きます。
(殺されて動く死体になっちゃってる冒険者はいたりして・・・・
と、すると、首のないアコライトの妹が襲ってきたりとか・・・・・いや〜〜)

_| ̄|○すみませんすみません、冗談です出来心です。
216103sage :2003/12/12(金) 02:16 ID:f7oi1EEQ
 ∧||∧
(  ⌒ ヽ  調子こいてるようなのでつっときます
 ∪  ノ
  ∪∪
明日あたり復活しているかもしれません
217105@遭遇。sage :2003/12/12(金) 04:15 ID:zKZnHYrE
慎重に、先へ進む。
声の感じから判断すると、どうやら交戦中では無いようだった。
声の主は、人間。それも、複数のようだ。
挟撃を警戒しながら、じりじりと歩みを進め─

そこには、5人の冒険者が居た。
騎士が2名、司祭が2名、服事が1名。
なるほど、どうやら騎士団側の人員というのは彼等の事らしい。
要所を護るように位置している2名の騎士は、歴戦の勇士だという事が判断できた。

…もっとも、私達が姿を現した途端、首元に鎌を突きつけられたからなのだが。

「いやあすまんすまん。なにしろこの状態やろ?出遅れるワケにはいかんかってん。」

そう言って、鎌─クレセントサイダーを手にした騎士はからからと笑った。
大ぶりの刀を手にした騎士は、その様子をじと目で見ながら武器の手入れをしている。
これだけを見ると、騎士団派遣の救護班と判断できるのだが、一つだけ違和感があった。
横たわる司祭である。顔色こそ悪いものの、死んでは居ないようだ。
私は姉と二言三言相談し、それから。

「失礼ですが、何がありました?プリーストさんの様子がおかしいようですが。」

リーダーらしき、騎士に声を掛けた。
私達の見立てが間違っていなければ、力になれる筈だ。
218105sage :2003/12/12(金) 04:20 ID:zKZnHYrE
性懲りも無く絡んでみるテスト。
>52氏の思惑と外れてたらごめんなさい、ということで。

なんというか、盛況ですね。
今後の流れを観ながら、ちょこちょことアサプリ姉妹を動かしていく予定です。
宜しければ適当にいじってやってくださいませ。>諸氏

>198のバード君や、ノビたん&アコたん&アチャたんの動き次第でもちょっかいを
出していこうかなあ…

>口がxな202氏
アケチャウヨー(・∀・)
21917sage :2003/12/12(金) 04:24 ID:nOJyTqrU
*cross-over*

(――生きろ。生きろ。生きろ。生き抜いてみせろ)

行き止まりの通路の壁を背にして、俺は狂ったように、だが奇妙に冷静で冴え渡った脳裏で言葉を連呼する。
何もない。最後の奥の手に使うカートも、武器も。逃げ道さえも。目の前で牙を剥いている魔物に抗う術は、何一つ残されていない。
肩口に受けた裂傷は酷く、大量の血液が流れ出してしまい、気を抜けば即座に意識が暗転しそうになる。痛みが無いのが唯一の救いだ。

「……ようやく追い詰めた、と思ってるだろ?」

走り続けて半ば干上がった喉の奥から、俺は無理やり声を絞り出した。
咥えていたままで捩れてしまった煙草を片手で摘み、その先端を魔物に向ける。
手元には何も残されていないが、唯一残されたものはある。それは、長年の経験と知恵。


上水道で鉄鉱石買取を長年続けてきた商売柄、ここの通路の見取り図は完璧に頭の中に叩き込んである。
最短距離で第三層を横断した場合、幾つか行き止まりの通路が存在する。それは、安直に考えるならば忌避すべき死地だ。

だが、そこに自分もろとも相手を追い詰めたら、どうなるか。一方向に集中すれば事足りる分、少人数でも討ち取ることは出来る。
少なくとも、怪我を負った俺を敵の攻撃から庇いつつ、更に背後にも神経を配らなければならない状況よりは遥かにマシだろう。
だから通路の奥に集団の人影を見つけた瞬間、俺はわざと悲鳴と怒号を張り上げながら行き止まりの通路へと足を踏み入れた。

それは、死地に活路を見出す賭け。
彼らに見捨てられてしまえば、間違いなく自分は死ぬ。彼らが来れば、間違いなく生き延びることができる。
日頃の武器製造という真剣勝負と賭ける物は違う。賭けに負ければ失われるのは材料ではなく、自分の命。


視界の片隅に蠢く数名の人影を認めて、俺は口端を軽く吊り上げて勝ち誇った笑みを浮かべた。
肉体的にも精神的にも限界点を越えていた俺は、満足しながら背を石壁に預けて目を静かに閉じる。

「――逆だぜ、ワニ野郎。追い詰められたのはテメェの方だ」

呟きながら、手にした煙草を再び口元に戻す。捩れて湿り気を帯びているお陰で、全く味がしない。

(やれやれ…。目が覚めたら煙草に火を点けて一服、だな)

ゆっくりと徐々に暗転していく意識。おそらく、再び目を開けることは出来るだろう。
22017sage :2003/12/12(金) 04:27 ID:nOJyTqrU
>>103様、しがない鍛冶屋を救助して頂いて本当に感謝しています。
正直、武器もカートも残されていない状況で、どうやって逃げ延びようかと困り果てていた次第です(ぉぃ
上水道に関しての知識と経験、度胸の良さだけが取り得の奴なんで煮るなり焼くなりご自由になさって下さいませ。
221名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/12(金) 10:14 ID:6FGOsKxs
104だったもの氏の>206はなかったことになったんでしょうか?
>209以降、剣士の死体も表現されていないし、結局スティングに連れ去られたのかな?
>200-201で別々の方向に移動してるし、気になった次第です。
222104だったものsage :2003/12/12(金) 11:29 ID:AEMi0/mw
2F方面← マジ剣士PT Wizぽん クルセPT 単騎BS→4F方面

私がこう考えた故の、3F組合流への布石のつもりだったのですが……
(ほら、上水Dって基本的にほぼ一本道ですし)
この際潔くスルーされちまいましょう。合流は済んだようですし。

なお、鉱石発見のオリデオコンも布石のつもり……ではありました。
クルセBSコンビには石ころでしかなくても、誰かに役立てていただけるかな……とか。

(´-`)<(箱の中の人、紫箱を開けられたら今度はどこへ行くのだろう……)
223全 滅 の 予 感 !!sage :2003/12/12(金) 11:50 ID:DPfYvO.6
 戦況は芳しくなかった。プリーストは舌打ちしながらウィザードに手を伸ばすスティングを殴り、狙いを自分に変えさせた。
プリーストはウィザードにヒールを施し砕かれる自分の腕を片手間に治療しながら、
猛禽を思わせる眼光を阿鼻叫喚の様相を示しつつある戦場の隅々まで走らせた。
 後衛が狙われぬよう、後衛が殲滅に専念できるよう、敵を抑え足止めするのが集団戦闘時に前衛を務める者の戦術上の最優先目的である。
 しかし散開した前衛は隊列を乱し、そのほころびから侵入し入り乱れ、暴れまくる敵に有効な手を打つことができない。
連携はおろか回避行動すらままならない泥沼の混戦状態、彼らに今できることは滅びのときを先延ばしにすることだけだった。
変態的な風体のプリーストが彼女に並び、支援に徹しはじめる。
 プリーストは一目見て彼らが集団戦闘に不慣れであることを知った。せめて一人でいい、クルセイダーないしはナイトが欲しかった。
敵の攻撃を一挙に受け止めなおかつ倒れない存在。
 彼の者が今この場に居たならば、時間を稼ぎ混乱したパーティを立て直すこともできただろう。
先遣隊のメンバーは遊撃に適してはいるものの、圧倒的な物量を持って押し寄せる敵の攻撃を受け止めるには無力に等しい。
これまで保っているだけでも大したものだった。
 唯一、硬質化したモンクならば頼れるかもしれなかったが、代償として機動力が低下することによる行動の遅さが問題だった。
見捨てるならばそれでもよいのだが……。
 頭の片隅に浮かんだ考えを払拭しながら、プリーストは間断なくヒールを施し、支援法術を連続して行使する。
フェンの魔力に守られた彼女に痛みは問題ではなかった。立錐の余地もない中わずかな間隙を縫い的確に空気の障壁を具象させ、
飛来する邪魔な矢が力を失い地に落ちる。
 纏わりつく穢れた泥の塊を、無骨な鉈の斬撃を、必死の形相でかいくぐるアサシンとローグにわずかな余裕が戻った。
だが、それも気休めに過ぎない。各々三体以上の敵に張り付かれているのだ。
このクラスの実力を持つ相手からの多方向同時攻撃、捌ききるには神がかったかのごとき強運が必要だった。
 プリーストの相方が参戦したことで前線を支える人員は四名となっていた。
闇を切り裂く閃光は冗談のように魔物をあっさりと屠り、一時は押し返すかとも思われた。しかしいかんせん数が多すぎる。
 他者に張り付く魔物を優先して射抜いていた相方も、やがて自分に張り付く魔物の相手に余裕を失いつつあった。
切り札を未だに残しているのは流石といえるが、状況を打破するには足りない。
トラップを仕掛けようにも仕掛ける場所がなく、相方は厳しい表情のまま遠距離職としては不本意であろう、ほぼ零距離からの射撃で応戦し続ける。
 矢が放たれるたびに魔物は体躯のどこかに致命的な傷を負い、ファルコンがまるで踊るように戦場を飛べば血の風が吹きすさぶ。
しかしプリーストがレックスエーテルナを行使できない今、相方の殲滅速度は目に見えて落ちていた。
 前衛はもう保たない。立て直せなかった自分を苦々しく思ったが、プリーストは即座に頭を切り替える。
後悔はあとで好きなだけすればいい、今はこの事態を収めなければならない。
当方に残されたカードは、もはやウィザードだけだった。
彼女に頼るしかなかったが、しかし一向に動きを見せない彼女はいったいなにをしているのか。
 眼球だけを動かして見た彼女は愕然とした。ウィザードはひたすらにクァグマイアを発現させ、散発的なボルトを盲打ちしていた。
 クァグマイアを絶やさないのは間違った行為ではなかったが、この状況下では命取りだった。
ウィザードが攻撃的支援に徹して切り抜けられるのならばそれもいい。
だが前線が崩壊しかけている今、そのような悠長な策を取っている暇はないのだ。
ましてやボルトを散発的に落としたからといって、いかなる戦果をあげられようか。
「大魔法!」
「は、はい!」
 前線ばかりに気を取られ、指示を忘れていた自分の手落ちだった。
集団戦に慣れたウィザードならば即座にストームガストによる一時的な状況リセットを試みるはずだった。
彼らは集団戦に不慣れだと認識していたのに、勝手に思い込んでいた自分の──手練の冒険者との実戦経験が豊富な彼女ならではのミスだった。
 プリーストはヒールのディレイを最小に抑えながら前線を支えた。
サフラギウムを唱えたかったが、今ここでサフラギウムのディレイに動きを止めるわけにはいかなかった。
前線のキャパシティは既に限界を越えつつある。友人の、あの憎たらしい飄々としたウィザードがここに居れば──
「暗雲に迷える雷の響き」
 プリーストの懊悩をよそに、ようやく長い詠唱を終えようとするウィザード。
そしてウィザードを見るプリーストの目は、まるで悪夢を見るようだった。
低い天井に深淵を湛えた暗闇が立ち込め、その奥に太陽を思わせる輝きが集う。
「一条に集いて死の記憶に眠る王を呼び覚ませ──ロードオブヴァーミリオン!」
 金色のオーラを纏ったウィザードが両のかいなを開き、高らかに発動のスペルを唱えあげた。
 瞬間、暁のごとき光が暗く沈んだ通路に打ち下ろされた。轟音と共に膨大な熱量を放出する電撃が荒れ狂った。
224無題_| ̄|○sage :2003/12/12(金) 11:53 ID:DPfYvO.6
「きたー!」
「っしゃー、これで終いだぜ」
「しんどかったねぇ」
 のんきな声にプリーストは爆発しそうだった。
 パイプ内を流れる水はその熱量に一瞬で蒸発し、アノリアンに高圧の電流を流し込む。
衝撃にアノリアンは苦鳴をあげるが、しかし倒れずに耐え抜いた。スティングに至っては何ら反応を見せずに気を抜いた三人に踊りかかった。
「うおっ、やべぇやべぇ」
 ローグが慌てて身をかがめ、それまで彼の頭が位置していた空間を汚泥が薙ぎ払った。
横転し、立ち上がろうとしたローグの手のひらを矢が縫い付ける。
「な、なんだっ──」
 モンクの悲鳴は中途で断ち切られ、横っ腹をぶちぬいた鉈が赤くてらてらと輝いた。
「こんにゃろうっ」
 歯を食いしばりモンクの腹に鉈を突き刺したアノリアンの頭部を斬り飛ばしたアサシンは、背後に迫るスティングに気づいていなかった。
相方が『力』を込めた矢でそのスティングを吹き飛ばさなければ、アサシンはぐずぐずの肉塊となっていたに違いない。
「この馬鹿!」
 惨憺たる前線を見るプリーストは唇を噛み破りながら、ウィザードに怒号を叩きつけ命令した。
「ガストを撃ちなさいッ、最低レベルでいいから!」
「ひっ……」
「急げ!」
「で、でもディレイが……」
「終わり次第ッ!」
 辛うじて支えてきた状況が一気に崩壊した。
クァグマイアがなくなり、それを耐えて待った大魔法はストームガストではなくロードオブヴァーミリオンだった。
 前線のメンバーに蓄積していたダメージが致命的なものとなり、実際、モンクが戦闘不能となり後退してしまう。
三名となった前線は、もはや刹那のミスも許されない修羅場と化した。
 アノリアンにストームガストは効かないが、それでもスティングはその寒風に凍結しその動きを止める。動きを止められること、それが重要だった。
 一時的にでも敵勢力の一部を無力化させることができれば、その分パーティ全体にかかる負荷は軽減する。
紙一重の状況下ではその軽減した負荷が千金の価値を持つというのに、
今ままで自分が支え前衛も持ち堪えてきたのに、それをこのウィザードは無に帰した。
それどころか、場を混乱させぎりぎりで平衡を保っていた天秤を敵の側へ傾けたのだった。
「どうしたんですかー? なんか大変そうですけど」
 プリーストにかけられた声は、道端で迷った者がばつの悪そうな様子で口を開いたような、そんな声だった。
ウィザードに続くこのわけのわからない存在は彼女をいたく怒らせた。
鬼女のごとき形相で振り返った彼女はしかし、怒声を発しはしたがそれは罵声ではなかった。
「ブラギ」
「ひゃ、ひゃい!」
 有無を言わせぬプリーストの口調に、唐突に現れたバードは泣きそうになりながら応じた。リュートと呼ばれる楽器を取り出し、演奏を開始する。
スキルのディレイとキャストタイムを大幅に短縮する、魔力を秘めた場違いな軽やかな旋律が紡がれはじめる。
プリーストはそれまで使えなかったグロリアの行使が可能となり、ウィザードはストームガストを唱えるまでの時間がかなり短縮した。
これで天秤は平衡に近づいたが、──まだ足りない。
「切り札使うよ」
 相方が呟く。プリーストを怒りを収めながら、頼れる相方に感謝した。相方の切り札である集中力向上のスキル。
ただでさえ神がかった精度を誇る相方の射撃がいっそう鋭さを増し、身のこなしはアサシンに勝るとも劣らない切れを見せはじめる。
天秤は限りなく平衡に近づくが、しかし人員の減った前線の状況は最悪と言えた。
「……」
 目まぐるしく頭脳を回転させ、回復法術を行使するプリーストの肩を、変態的な風体のプリーストが叩いた。
寡黙なのか、はたまた喋れないのか。彼は無言で死地に赴いた。手にはごついソードメイスを携え、その鈍器に炎が纏わりつく。
「気張りなさいよ……」
 敵陣の只中に飛び込み、マグナムブレイクを連発する変態的なプリースト。
アサシンとローグが歓声をあげ、一日千秋の思いで待ったウィザードもようやくディレイを終えたようだった。
プリーストは連続したスキルの行使の反動である、頭痛のようなものを感じながら滅多に祈らない神に祈った。
225えべんはsage :2003/12/12(金) 12:01 ID:DPfYvO.6
人数多すぎて描写が追いついていない感がありますが、
とにもかくにも書いてしまったため、こき下ろされるのも辞さない心づもりで投稿しました。
ええと、>>182の続きのつもりです。
顛末ぼかした(力尽きた)ので全滅させるも分断させるも殲滅させるも自由、ということで。

>>221さん、>>222の104だったものさん
混乱させてしまったようですみません。
104さんにいたりましては割り込んでしまったようで本当に申し訳がたちません。
私としては先立って書かれていた>>200-201の流れを取りまして、
剣士子は連れ去られたものとして書いてしまいました。
基本の流れは104さんが書かれておりますから、私が邪魔してしまった部分はカットしてくださって結構です。

見苦しいものをお見せしてすみませんでした。しばらく黙ります。
;y=ー( ゚д゚)・∵:.
\/| e |)
226不味かったらスルーでよろsage :2003/12/12(金) 17:00 ID:.sQQSsOw
最下層階段前にて

BSが逃げるのを見届けた後、追撃するモンスに立ち塞がる1人のクルセイダー
「悪いが貴様ら全員を行かせる訳にはいかないのでね」
蒼い煌きを体に纏わせモンスの大群に飛び込む

切る 突く なぎ払う 叩き潰す 投げつける 押し戻す 吹き飛ばす

殺到するモンスに対し当たるを幸いにとポールアックスを振るい続け、ガーゴイルは盾を投げつけ叩き落す
それでも一人では抑えきれずに大量のモンスの進行を許してしまう
「全てを抑える事は無理か…だがな、3分の1位なら抑えて見せるさ!」


状況、孤軍奮闘中

性別不明の廃装備クルセです
227名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/12(金) 18:24 ID:XGuGp5Vg
「サフラギウム!」

 私が祈りを捧げると共に、魔道師の詠唱が始まる。彼女が行う詠唱の大半は、この祈りが替わりに謳ってくれる。
 バードの奏でる旋律により、迅速に精神力を行使できる状態であることも加わり、大魔法といえどその詠唱はほぼ零に等しい。

「ストームガスト!」

 舞い散る氷の花弁。吹き荒ぶ絶対零度の暴風。視界が白一色に塗り替えられ、誰もが刹那の間、その動きを止めた。
 その光景を真っ直ぐに見詰めると、乱れた精神さえもその熱を奪われる。
 冷静になれ。これで戦況は五分に戻った。天秤の傾きを操るのは、冷静な判断と迅速な行動。知恵と経験では劣りはしない。足りないのは行動力。
 目の前にいるのは、どれも集団戦闘に不慣れな者ばかり。ならば、

「貴女! 絶やさず全力でストームガストを放ちなさい!」
「は、はい!」

 私の激しい呼び掛けに、魔道師の娘は怯えを隠せないようだった。しかし、精神を落ち着かせると、すぐにまた詠唱に戻った。

「貴方はその人を連れて後ろに下がりなさい。他のメンバーは私の少し前で、横に整列!」

 同じ聖職者と思わしき男性に、倒れた修道士を下がらせるように命じる。彼は寡黙ながらも私の指示に素直に行動した。
 氷雪にびくともしない爬虫類を抱えた暗殺者とローグは、この指示に戸惑っていたが、私の相方は早くも作戦を理解したらしく、適当な位置に陣取ると前の二人の脇にいた鰐どもを弾き飛ばす。

「私の横! アサシンさんが真ん中になるように!」

 魔物を引き離されたことで移動が可能になり、二人は相方の指示通りに並ぶことができた。
 相方の適確な行動は、今の私にとって本当に頼りになる。私も負けてはいられない。

「ブラギやめ! 口笛!」
「は、はいぃっ!」

 今度は見もせずに声だけで、詩人に曲を替えさせる。応える声は見事に裏返っていたが、こちらは先程よりも怯えが消え、大分勇ましいものに聴こえた。
 指示と同時に私も詠唱を始める。その内容を聞き、相方以外の面々はまた驚愕の表情を浮かべることになったが、今は説明してる暇すら惜しい。
 新たに奏でられた旋律に、浮き上がるような感覚が身を包む。そして私の詠唱も完成した。
 主よ、この地に祝福を与え、浄化と安息を!

「サンクチュアリ!」
「二人とも、一歩も引いちゃダメ。前に出るのもダメ。ここを絶対死守!」
「貴方は魔道師を護りなさい! 彼女に指一本触れさせないで!」
「アサシンさんは目の前の敵だけ斬って。私とローグさんは、凍ったヤツを撃つよ」

 大地より浮かび上がる聖なる光に、皆の傷ついた体が癒される。聖域に入る者は人も魔物も問わずにその恩恵を受ける。しかし、私の展開したそれは適確に人だけを選びとっていた。
 聖職者の男性は修道士を魔道師の近くに横たえると、その場を意地でも護ると言わんばかりに、丸盾と棍棒を構えた。
 暗殺者の女性は目前にやってきた相手だけを刃の錆びにし、ローグの青年もまた魔道師の詠唱を待つ間、獲物を短剣に変えて蛮族と相対していた。
 休むことなく矢継ぎ早に繰り出される指示に、彼らもどうにかついてきているようだ。

「ストームガスト!」

 待ちわびた魔道師の詠唱が完成し、再び視界が遮られる。だが、今度は誰一人として動きを止める者はいない。
 暴雪に氷像と化す魔物たちは、絶えず放たれる矢に氷を割られ、力尽き倒れるまで常にその身を刻まれ続ける。
 必要なのは、敵の数を減らすこと。味方の数を減らされないこと。それがわかれば、後はそれを行う方法を指示するだけでいい。

「ははっ、コイツは楽しいぜ!」

 がむしゃらに振り回される鉈を避わし、時には傷付けられながら矢を放ち続ける青年が、場違いの歓声を上げる。
 だが、それでいい。彼らが考える必要はない。この死闘すら楽しいと思えるなら、それは好都合だ。
 もう誰の心にも、不安などは微塵もありはしない。天秤の傾きは、もう火を見るより明らかだ。
 動けぬなら、私が動かせばいい。パーティーの中央。こここそが、私の戦場だ。
228とあるスレの577sage :2003/12/12(金) 18:44 ID:HlmBNDWw
|∀・)

進んでますねえ
・・・それではここらへんで黒幕登場
今のところ最強の
騎士団特殊部隊使わせていただきまする

彡サッ
229とあるスレの577sage :2003/12/12(金) 18:48 ID:HlmBNDWw
運良く来てくれた暗殺者のおかげで
紫苑は毒から回復してった
こんなときになにも手助けできない自分をちょっとだけ悔しく思うと
彼女が皆にかけるお礼の言葉を片手で受けて視線を逸らす
ハンスが頭をかきかき謝り続けるのを
司祭と服事が微笑みながら見ていた

「お力になれたようで嬉しいわ、ね、姉さん」

司祭がその言葉に深く頷いてからこちらを見たときに
ハンスが横から
ずっと気になっていたのだろう
お礼の言葉と質問の言葉を同時に舌の上にのぼらせる

「さっきはほんまにすまなんだなあ
ありがとさん、そやけどなんでこんなところに二人で?」

その質問に暗殺者の方が早口で答え
逆にいくつもの質問を投げかけるのに
ハンスがまごまごしているのが更に面白いようで
司祭と服事の微笑みが直接的なわらいに変わっていく
ダンジョンの中で
先程までの緊張感が嘘のように解かれた俺たちは
しばらくお互いの自己紹介と情報交換をかねて
暗殺者と女司祭との話を楽しんでいたのだった

「・・・というわけなの、アサシンギルドには言ってあるから
まずは調査といったところね」

「貴方たちが騎士団からの人員なのね、フィル、ならこちらの方々とご一緒しましょうか
ずいぶん腕がたつようですしね」

二人の女性に微笑みながら言われ
わるくないといった表情を見せるハンスを意図的に黙殺して
俺はかるく頭を下げる
この際仲間は多いほうがいい
毒があるのならば毒の専門家も欲しいところだ
そんなことを思った後にふと先程見つけた惨殺死体を
これだけ司祭がいればどうにかなるかもしれないと思って
そちらに視線を向けた俺は
いつの間にかいた存在に気づいて
一気に心の中で警報を鳴り響かせた

「ふ・・・無能な部下をもつとこれだから困る
こんなところに拾い残しがあるじゃあないか・・・」

ぶつぶつと独り言をつぶやきながら
死体にかがみこむ金髪の男
正直に言おう
俺はここしばらく、どんなモンスターや人間に対しても
これだけ近くまで寄ってきていたものに気配すら感じなかったなんてことはない
だのにそいつの気配はまったく嗅ぎ取れなかった
ハンスが俺の表情に気づいて
瞬間的にこちらに向き直り死神の鎌を構えたのにも
気づいているのだろうが
意に介さないといった様子で死体に触れる男
途端に死体から炎があがり
皆あっけにとられる中で
かれは燃えカスとなった死体から何かを拾ったようなそぶりを見せると
立ち上がってゆっくりとこちらを向いた

「何やコイツ・・・けったいな奴やな・・・」

「待てハンス!こいつは・・・!」

俺の制止の言葉を振り切って
ハンスが大鎌を振って相手ののど元につけようとする
常人では見切れないほどのその動き
しかしそいつはかるく下がってから・・・なんと鎌の先を二本の指で掴んだ!
信じられないといった表情を浮かべるハンスに
奴はすました顔で言葉をかける

「なかなかのものだな・・・人間というのは修練でここまでのスピードを出せるものなのか・・・」

俺でさえ訓練で相手をする時
なかなか手こずる奴の鎌の動き
それを赤子の手をひねるように押さえ込んだ金髪の青年に
こちらを含めた周囲の人間は言葉をうしない
石像になってしまったかのように
しばし・・・佇んでいたのだった
230とあるスレの577sage :2003/12/12(金) 19:25 ID:HlmBNDWw
|∀・)

大阪弁間違ってたら御免ね;;

彡サッ
23152sage :2003/12/12(金) 22:16 ID:QNVlS2I6
「ハンス・クルーガー中尉ッ!」
俺の叫び声で我を取り戻したハンスが、青年との間を取るために飛びずさった。
その顔は、恐怖と焦燥に彩られている。
それに対して青年は、まるで虫を見るような目でこちらをじっと見ている。
その無機質な目――あのような目をする人間がいるだろうか? いや、いない。
いつの間にか、俺は刀の柄に手を掛けていた。本能がこの異形を排除しようと訴えかける。
だが理性は青年の発する無味無臭の殺気……それを感じ取っていた。
……落ち着け、マナ・ラインフィールド。焦るんじゃない。相手をよく見て、考えろ。
奴との間合いは約2m強。剣術の世界では一足一刀の間合いと呼ばれている間合いだ。
頭の中に奴の動きをシュミュレートする。同時に、自分の振るべき太刀筋も予想する。
初撃は何だ? 左か? 右か? それともさっき見せた魔術か?
分からない……ただ一つ言える事は、奴が一歩踏み込んだ瞬間、どちらかが死ぬと言う事だけだ。
青年はまだこっちを見ている。
何を考えている…… 来るのか? 来ないのか?
――――足が――――動いた。
限界まで張りつめた集中力が解き放たれ、反射的に腕を動かす。
……が、奴は踵を返すと、闇の中へと軽い足取りで歩いていった。
やがてその姿が見えなくなる。奴は去っていった。
「……っはぁっ……はぁっ……」
ようやく自分が呼吸をしていなかった事に気が付いた。額には冷や汗がにじんでいる。
後ろで、大きく溜息をつく声がする。皆もアイツの威圧感を感じ取っていたようだ。
抜きかけた刀を納め、俺は天井を仰ぎ見た。
(軍曹に『帰るまで預かれ』なんて言わなきゃよかった……帰れないかもしれない……)
俺は過去の過ちを深く後悔した。
23252sage :2003/12/12(金) 22:21 ID:QNVlS2I6
何か文章破綻の上に訳の分からない表現連発です、スミマセン_| ̄|○
それに、他の方が書いた文が格好良く見えて身分の未熟さを反省している限りであります。
233名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/12(金) 23:55 ID:227Wppgk
プロンテラ上水道地下4階、化け物も居ないような隅の所で眠っていたアサシンは、普段とは違う奇妙な感じがし眼を覚ます
「・・・何かが違う」
原因を調べるべく通路に出た途端、何かが横から迫ってきた
「くっ!」
間一髪その物体を避けきり、確認し、眼を疑った
「何でここにこいつが居る!」
巨大な斧を持った赤い牛、俗にごっついミノタウロスと呼ばれているものだ
赤牛は首をめぐらせこちらの姿を確認すると見かけより遥かに素早い動作で再度迫ってきた
「まずいな、ここは相手にしない方が良いか」
自分の武器を確認し(TCジュル)、分が悪いと知ったアサシンは、一旦赤牛の死角に回り壁際に寄ってクローキングを使い姿を消す
振り向いた赤牛はこちらの姿を暫く探し、諦めたのかその場を離れていった
「なんとかやりすごしたか、しかし、一体何故あいつがここに?」
状況を把握しようとクローキング状態のまま歩き回る

結果、緑鰐、紫鼠、赤牛、窓手、風幽霊が居る事が分かった以外は何も無し

「訳が分からんがとりあえずここは危険だから逃げるとしよう」
道具袋をあさり愕然とする
「蝶が無い、蝿もだ!」
しばし呆然とし、正気の戻り次第近くにあった3階への階段を上がっていった
234233sage :2003/12/13(土) 00:01 ID:aE1v4bvY
ついつい、乱入してしまいました
見ての通り、文才ゼロなので誰か後頼みます(マテコラ


それは置いといて、この話、楽しんで読ませてもらってます
この後の展開が非常に楽しみです

では、みなさん頑張って下さい
235233sage :2003/12/13(土) 00:04 ID:aE1v4bvY
追記、キャラは男アサです
236名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/13(土) 00:52 ID:HooIEWhA
 廃棄物を扱うように、それはぞんざいに放り出された。

 泥の這いずる音が次第に遠くなり、辺りはまた静寂に包まれる。
 山と河が、そこに音もなく在った。
 人であったものを無造作に積み上げただけの山は、そこかしこから手足が突き出て、いびつな形をしていた。
 流れ出る血の河は石畳を伝い水路へと至ると、赤黒い染料が水に溶け広がっていった。
 現世に映し出された地獄絵は、何か間違った芸術のようにも見える。だが、その光景に感想を述べる者は誰一人として居ない。
 深淵に飲み込まれた上水道最深部は、もう生者の臨める世界ではなくなっていた。

 そこに闇が生まれた。新月よりもなお暗い、漆黒の輝き。
 闇は球体を形作り、黒色の稲光を纏いながら次第にその大きさを替える。その中に逆五芳星が描き出されると、やがて隣に並ぶ人山程にまで膨れ上がる。
 稲光が弾けると、闇は質量を持ち、巨大な人影となって深淵の底へと降り立った。ここに在ってはならぬ者。死霊の貴公子、ダークロード。
 彼は目の前にある屍骸のオブジェクトを見やると、まだ運ばれたばかりの、生前は剣士であっただろう人型の死肉をつかみ上げた。
 素材としては、恐ろしく未熟だ。だが……美しい。
 夜が融かし込まれた、濃紺の長い髪。血の気を完全に失った、青白く人形のような肌。そして何よりこの朱だ。
 袈裟懸けに肩口から大腿に至るまで、一直線につけられた深い傷痕は、肉の生々しい緋色と凝り固まった血液で、それはあまりに醜く……そしてあまりに美しい朱を生みだしていた。
 ダークロードが掌を差し出すと、そこにまた闇が生まれた。中央に逆五芳星を伴った、真球の闇。
 闇はゆっくりと浮かび上がると、腕に横たわる娘の胸に飲み込まれていった。

 娘よ、貴様は運がいい。この不死の王に気に入られたのだからな。
 さあ、喜べ。貴様に仮初の生を与えよう。尽きることなき永遠の命を。
 そして、我が眷属として盟約を果たせ。我の言葉に服従せよ。
 目覚めよ、闇に抱かれし娘。死霊の戦乙女よ。

「はい――我が主。この命、闇と共に」

 娘が答える。もう二度と動くはずのなかった、娘が。
 その言葉に貴公子は満足した。奴がいない間に、我が眷属をこの地に置いていけるのだから。
 このからくりに気付いた時、奴はどんな顔をするのであろうか。またはその暇も与えられず、我が眷属と成り下がるか。
 死は絶対のものだ。奴とて決して逃れることはできぬ。
 実に愉快だ。この闇の王を謀ろうとしたこと、永久に後悔するがよい。
 声なき笑いと共に、死霊の貴公子は姿を消した。

 逝くことも、還ることも許されぬ、不死の監獄に捕らわれた娘。
 その手には鈍く光る短剣が握られていた。
237名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/13(土) 01:34 ID:exv5dqyo
>>227,>>236
(゚д゚)ウマー
姉プリ視点がいい。
DLが現れるところが雰囲気出てて好き。
238とあるスレの577sage :2003/12/13(土) 09:16 ID:le5J4JgE
|∀・)

さてまたまたおまとめの時間です
多くなっちゃったので間違っているところは
指摘若しくはスルーよろしく(お)

1.【有名冒険者+おちゃらけ先遣隊+合流したバード(計8名)】
お姉さんプリースト、ハンター
バード
アサシン(姉御)、プリースト(殴りブリーファー)、ウィザード(おんぴう)
ローグ(スケベ)、モンク(サカゲリーナ)
現在→2F中途戦闘まだまだ継続中
今後→そのまま続ける予定

2.【おれとボク・私とアコライトと俺(WIZ?)(計7名+死体)】
マジシャン+妹の頭蓋、剣士、(ウィザード隠れて観察中?)
クルセイダー(AGI-VIT献身盾)、アコライト、ブラックスミス(戦闘タイプ)、ブラックスミス(半製造タイプ)
+剣士子の死体(蘇生可能?)
現在→3F奥
今後→やはり少しづつ後退したほうがいいですかね

3.【騎士団特殊部隊+私と姉(計7名)】
アサシン(フィル)、プリースト(名前?)
騎士(マナ・ラインフィールド大尉)、騎士(ハンス・クルーガー中尉)、プリースト(紫苑)
+プリースト、アコライト
現在→2F黒幕との出会い終了
今後→2F奥へどうぞ、ハンスさん自信なくさないでね

4.【エリートセージとアルケミ助手(計2名)】
セージ、アルケミ
現在→地上で会議
今後→現場検証でスパノビたちに合流予定

5.【スパノビとおまけ(計4名)】
スパノビ、シニョンアコ、アチャ、アルケミ
現在→地上
今後→夜を待って衛兵なぐリ倒して突入予定

6.【クルセイダー】
クルセイダー(そのままだと間違いなく死亡;;)
現在→4F階段前
今後→生きたければアサと一緒にお逃げなさい

7.【アサシン】
アサシン
現在→3Fへの階段あがったところ
今後→逃げなさい

【敵】
DIO様(仮称)
ダークロード
ダークロードの操る女剣士
卵を産んでいる金ゴキ
その他GHの愉快な仲間たち

さてそれではここで一旦登場人物の数をふやすのは止めて
それぞれの物語をお願いします
私は、「ドラマのない人にはドラマを与えよう!」の信念に従い
クルーセ隊に居るアコライトの話を書いてから
適当に敵や出番の少ない人の話をつづっていきますね

あと、私はキャラクターを殺しませんので
自分で生み出したキャラを殺す場合は自分で行ってくださいね
また、生還後のエンディングについても同様です
文才なくても気合で書けば何とかなります!
(キャラに対する)愛だろ、愛!
・・・やば、私10人くらい書かなきゃならないのか・・・

尚書いている人間は
感想を求めていると思いますので
読んでいる方々書きづらいとは思いますが
応援よろしくお願いします
それが書き手の励みになりますので

【おまけ・DIO様予定台詞集】
「おまえは今まで割ったポリンの数を覚えているのか?」
「貧弱貧弱ゥ!」
「URYYYYYYYYYYYYYYYそんな眠っちまいそうな詠唱でこの私が倒せるかーッ!!!」
「馴染む!実によく馴染むぞ!!!!」
「ウリイイイヤアアアッーぶっつぶれよォォッ!!!!!!」

彡サッ
239丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 10:54 ID:o7fcj3Ro
 気でも触れたかという好奇の眼差しが僕に一斉に注がれる。嫌な沈黙を咳払い一つで振り払い
頬を掻きながら僕は半ば独り言のように呟いた。

「問題はどうしてこれほど大量のモンスターが現れたかと言うことです。僕の予想では…
 いや、事実としてこれは、人為的と言わざるをえない。」

「グラストヘイム地下と何かの拍子につながったのではなかったか?」

「あれほど広大な古城から誰が好きこのんで下水のように狭いウサギ小屋に引っ越してくるん
ですか?。モンスターとて生命です。一定地域に存在できる個体の数には制限がある。
それに、下水道があそことつながらないって事は、あなた方が十四年前の調査で明らかにして
いるのではないですか?。」

 ”十四年前”その単語が緊張と化して空気の中を伝わっていく。十四年前に起きた大惨事。
今回と驚くべき一致を示す同じような事件。しかし、この一致を騎士団が予想しながらも覆い隠
してきたとしても僕は驚かない。八年前、こっちに帰ってきて僕は真っ先に大惨事の原因を調査した。
 しかし、調査報告書は何処にも残っていなかった。結局、シュバルツバルド国家諜報部の集めた情報
以上のものはこの国では得られなかった。当事国であるこの国でだ。

 ばさばさと紙を束ねる音だけが静まりかえった会議室に響いていた。

「あなた方が認めないと言うのなら私が言いましょう。この事件は十四年前の再来だ。
 箝口令が引かれていようが何だろうが今はそんな悠長なことは言ってられない。
 どんな些細なことでも良い。十四年前の事件について知っている人は教えてください。」

「それは無理だよ、学者先生…」

重々しい空気の中、喘ぐように騎士団長が言葉を継いだ。

「あの事件の鎮圧に当たった騎士団員の七割が殉職した…。残りも廃人と化したり自ら命を絶ったり…
 その記憶を止めているものはほとんど残っておらん。かくいう私も、アルデバラン辺境警備隊から
 異動してきた人間だ…。」

「報告書の類は、残っていないんですか?。腐っても役所だ、書類の一つぐらいあるのでしょう。」

ああ、こんなことを聞いても無駄だろう、と言いながら思った。彼らは十四年間あれほどの災害を
「事故」にして隠蔽してきたのだ、報告書を残しておくだなんて、そんなことがあるわけがない。

「あの事件が鎮圧されてから、焼け野原になったここに異動してきた私の最初の仕事は何だったと
思うかね?。書類の焼却だよ。犠牲者の火葬も全部済んでいないのに、だ。」

 再び重々しい空気が部屋を支配した。今ここにいる連中は一つのことを除いて何も十四年前の事件に
ついて知らない。
 ただ、十四年前には多数の騎士団員が死亡し、今度同じ事が起きれば自分の命はないだろう、
という一つの確信を除いては。
240丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 10:55 ID:o7fcj3Ro
「う、うわぁぁぁぁぁん助けてください助けてください神様神様神様ーー!!」

 沈黙を破って何者かが室内に駆け込んできた。エプロンをして飴色の髪を後ろで束ねた少女…
どう考えても騎士ではない。

「どうしたねアコさん。今私たちは会議中だ。落ち着いて静かにしてもらわないと困る。」

「で、でも団長!!水が、台所の水瓶の水が真っ赤に!!」

 数人がどっと食堂の方へ駆け込んでいく。水瓶の水は深紅だった。まるで血のような、深紅。
炊き出しに来ていたアコライトの話によると、さっきこっちに来て騎士団員の賄い飯を作ろうと
水瓶の中を見たら水が真っ赤になっていたそうだった。昨日は透明だったと言うから不思議な話だ。

 さしもの騎士団員も、真っ赤な水を見てうろたえているようだった。こいつらはモンスターを相手
にする分には強いが、こういったオカルティックなことにはめっぽう弱い。

「こ、これは何か悪いことの前触れでは…」
「神罰だ…神がお怒りになっている」
「死んじまうんだ、俺たちみんな、みんなこんな色の血を噴き出して死んじまうんだ…。」

騎士団長もあまりのことに色を失っている。ただ水の色が変わっただけだというのに。
僕は水瓶に近づき、少し水を試験管にくむと、灯りに透かした。水は濁っていて、とても飲めそうにない。
臭いをかいでみると黴くさいような生臭いような、そんな臭いだった。

「落ち着いてください皆さん。藻が繁殖しているだけです。赤潮と変わりません。
 アコさん、今は水道の供給は止まっているはずです。この水は何処の水ですか?」

「水道の水です。昨日くみ置きしたときは綺麗だったんですけど…」

給水停止ではないか、と問いただそうとした僕の言葉を遮って、騎士団長が口を開いた

「学者先生。言い忘れていたが農業用水と工業用水は給水を続けている。しかしアコさん。
 我々の食事に工業用水を使うとか、まさかそういうことをしていないだろうね?」

 しまった、と言うようにアコライトが口を手で押さえる。そして、恥ずかしそうにつま先を床にトントンと
うちつけて、「沸かせば大丈夫かな、って思ったんです」とぼそり口にした。
 ぐええ、さっき飲んだコーヒーが不味かったのはこの所為か。この女は可愛い顔してとんでもないことをし
でかす女だ。僕は独身でエリィトだから、この類の女に引っかからないように気をつける必要があるな。
 喉の奥からこみ上げてくる酸っぱいものをこらえている僕の肩をケミが叩いた。

「教授、いくら工業用水だからと言っても、こんなに藻が繁殖するなんておかしくありませんか?」

 さすが我が愛弟子。目の付け所が素晴らしい。確かにこれはおかしい。水道を通ってきているのは元は
ミョルニル山脈のわき水。それがこんなに藻が繁殖するほど富栄養化しているというのは、引っかかるものがある。
これでは水耕栽培だって出来そうなぐらいだ…。

「――そうか! ケミ君、急いでこの水を調査してくれ。簡易水質調査キットを持っているだろうね!?」
「教授、ご安心を。魔導質量分析機から何から、全部カートに積んであります。」

でかしたぞケミ!。全く、ケミの用意の良さには助けられる。言われたことだけするのではなく、先を読んで
行動するというコイツの能力は、なかなか素晴らしいものだ。
241丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 10:57 ID:o7fcj3Ro
「学者先生…。今は水質調査をやっている場合じゃない。作戦を考えないと――」

「いえ、これはかなり重要なことです。もしかすると相手がどうやってモンスターをここに運び込んだ
か、それがわかるかもしれない。」

台所の中にざわめきが広がっていく。騎士団長はそれを制して、皆を一旦会議室へと移動させた。何故かあの
ポンコツアコまでついてきている。変な水を料理に使われてもたまらないから、それでいいんだが。

「さて、学者先生。説明を願おうか。」

騎士団長が手を組み、僕の方を見た。皆が僕の話を聞こうとこっちに視線を向けている。ううむ快感。
僕は黒板を背にし、説明を開始することにした。

「 人為的に閉所へモンスターを移動させるとなると、現在二つの方法が有力視されています。
 一つは魔力による空間湾曲を利用した五次元移動…俗に言うワープポータルですね。
  しかし、これは大量輸送には向きません。空間湾曲を維持するには莫大な魔力が必要です。
 おまけに、輸送元のモンスターが必要なわけですから、こっちへ大量に派遣するとなると、向こうで
 はモンスターご一行様を集めるのに精一杯。効率が悪いことこの上ない。

  そしてもう一つの方法。クローニング…これはホムンクルス生成と同じメカニズムを利用します。
 培養槽中で受精卵を成長させ、個体を直接造る…まぁ、一言で言えばママの真似っこと言うことです。
 未だ科学先進国シュバルツバルドでも確立された技術ではありませんが…見通しは立っています。
 ただ、この方法では成長させるのに時間がかかりすぎる。理想的な条件だったとしても数ヶ月はかかり
 ますかね。

  ただ、この二つの方法は一見すると無理なようでも、それを克服する技術または魔力があれば
 充分可能なわけです。ですからもし、後者の方法をとったとしたら、何らかのそう、培養液など
 が水に溶け出しているかもしれない。それを今、ケミに調査をさせているのです。」

そこまで話したとき、どたんばたんとあわただしい音がして、数秒後に扉が大きく開いた。
対人恐怖は何処へやら、駆け込んできたケミは息を上がらせて私に紙を渡すと、大声で喋り始めた。

「 教授、出ました、出ました!。とんでもない濃度の有機物です!。アミノ酸、タンパク質、溶存酸素濃度
 ミネラル、pH…全てが生物の培養に最適な条件になってます。しかも、ヤバイものも出ました。
 これ、この微生物は古生代までに滅んだとされる微生物です。ああ、もうっ、信じられない!!」

 しゃべり出したケミはひとまずほおっておいて、渡されたチャートにざっと目を通す。
確かにこれは培養液そのものと言っていい組成だ…だけれども、それだけじゃない、この栄養組成はまるで


――原初の海じゃないか――。
242丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 10:57 ID:o7fcj3Ro
 一つの恐ろしい仮説が、僕の頭の中で成長していた。これが本当なら、僕らはとんでもない奴を相手にし
ていることになる。

「皆さん、調査の結果が出ました…。ただ、このデータを正しいとするならば、クローニングとか、
そんな生やさしい事じゃない…。何かとんでもない存在が、裏で糸を引いていることになります。」

「もし裏に首謀者がいるとしたら、とんでもない存在だと言うことは我々もわかっているつもりだ。
 例えそれが絶望的なものだろうと、知らずに死ぬわけにはいかない。…説明を、お願いする。」

危機が人を、変えるのだ。勇気と無謀のバランスも取れない愚かな彼らが、近いうちに死を迎えるという
この状況で知ることを求めるとは、まさか思わなかった。

「いいでしょう…学者生命をかけて、説明致します。皆さんは、進化論をご存じですか?。」

部屋の中に、急にざわめきが広がる。ポンコツアコはこっちを見て睨んでいるし、首をふるもの、
刀の柄に手を掛けるもの、色々だった。
 それもそのはず、進化論は異端だった。公の場で口にすれば比喩でなく首が飛ぶ。この世界では悲しいかな
我々は被造物なのらしい。説明しようと言葉を継いだ途端、鋭い叫び声が遮った。

「馬鹿なこと言わないでください!!私はあなたを異端者として告発します!!」

 あのポンコツだった。その声に応ずるように数名の騎士団員がさやからわずかに剣を抜く。
ああ、やはりな、これだったんだ。十四年前の大惨事が隠蔽されていたのは、教会からの圧力によるものか。
多分、優秀な誰かは、十四年前の事件が生命の起源に言及するものであることを知っただろう。
そして、教会もそれを知り、データを消した。
つまり僕の科学的仮説は裏付けられたと言うわけだ。皮肉にも最も非科学的な人間の愚かな行いによって。

 僕が黙っているのを良いことに、ポンコツは甲高い声で被造物、我らが父、等の非科学的用語をキャンキャンと口にする。

「良いですか、騎士団ともあろう神の法の守護者が、何でこんな異端者の言うことを信じるんですか?
神は我々を造りたもうたのです。それ以外は認められません。この事件を起こしているのは悪魔です。
その学者は悪魔の手先です。だからどうやって悪魔がこの事件を起こしているかを知ってるんです!!」

「 告発するなら事態が終結したあと自由にしたまえ!ただ、今はそんなことを言っている場合じゃない。
 生物学者も異端審問官も市民もみんな死んで真っ平らになった大聖堂跡地で僕の為に審議会を開く気かね!?
 いいだろう、君と僕だけ残った青空審議会で、僕は自説の正しさを主張するぞ。そしておきまりの宗教裁判の後
 君が僕を処刑するがいい。
  それが嫌なら今は黙っていることだ、この教条主義者め!!」

神罰が下りますよ、と、一言食い下がってポンコツは黙った。未だとげとげしい空気が、騎士団の中を包んでいた。
僕の当面の敵は、会議室にいる人間の先入観だとか、常識だとか、その辺のことらしかった。
243丸いぼうしsage :2003/12/13(土) 11:03 ID:o7fcj3Ro
ドッチャリと投稿してみました。

後すこしで地上で出来る説明は終わりですので、突入はもう少しだけ
待っていただけると幸いです>某スレ577さん
244とあるスレの577sage :2003/12/13(土) 11:32 ID:DPrPiPx6
|∀・)

会社よりー
>>丸いぼうしさん
うわおう!いい!凄くいいよ燃えて来たーーーーー!!!
いっくらでもお待ちしますのでよろしくお願いします
くうーーーこんなの書いて見たいよなあ
精進致します
では

彡サッ
245名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/13(土) 12:29 ID:40YoOoHQ
 吹き止まぬ氷陣に、ついに魔物たちが悲鳴を上げた。
 崩れる泥塊、動かなくなった大鼠。主力を失い、今度は奴らが辟易する番なのだが、怖れを知らぬ魔物たちはまったく引く様子を見せない。
 次々と倒れ往く不浄の者。気付けば、氷雪の外から矢を放っていた悪魔の姿も見えなくなっていた。
 恐らくは戦闘を安定させるために、相方が率先して光の矢で撃ち落としていたのだろう。ニューマを必要としなくなり、もう一人の聖職者も大分楽をできているようだった。
 まったく、本当に頼りになる。動き出した戦局に反応も見せず、真摯に獲物を追い続ける横顔のなんと凛々しいことか。
 本人の前では恥ずかしくて言えないが、彼女は私にとって間違いなく、考える限り最高の相方だ。

「撃ち方、やめ!」

 私が声を張り上げると、相方は氷像から目前の蛮族へと標的を変えた。それを見てローグの青年もまた、短剣を取り出す。
 すでに私が幾度となく呼び出した聖なる光も、その力を失いつつあった。消える光を見ながら、私は杖を握り直した。

「口笛やめ! ブラギ!」
「あいあいっさー!」

 詩人の青年も大分調子付いたようで、少々軽薄にも感じる返答。

「セイフティーウォール! 貴方は」
「クァグマイア!」

 詠唱と共に魔道師を振り向くと、私は息を飲み、言葉をつぐんでしまった。
 彼女の瞳が変わっていた。私の命令に怯えながら動いていた娘は、もういない。薄紅色の光に包まれた彼女の表情は、相方のそれに似ていた。

「サフラギウム!」

 切った言葉の後も継がず、私は彼女のために祈りを捧げる。
 魔道師の娘はためらう素振りも見せず、唱え始めた。一度は味方にまで危害を及ばせてしまった、呪われし文句を。
 軽やかに、高らかに、彼女は謳い上げる。
 それは雷神を纏いし真紅の王。紡がれる詩に、空気が震え出す。

――暗雲に迷える雷の響き、一条に集いて死の記憶に眠る王を呼び覚ませ――

「ロードオブヴァーミリオン!」

 舞い降りる滅びの光。紅い輝きが大地を嘗め尽くす。
 轟音は魔物たちの叫び声すらも飲み込み、この地に終末が訪れた。


「はぁっ……はぁっ……」

 彼女は動悸を抑えることすらかなわぬ様子で、胸に手を置いたまま、膝をつかぬようになんとか耐えているようだった。
 残されていた魔物は、すべて大地に臥している。だが歓喜の声は起こらない。詩人の演奏も止まっており、辺りには彼女の荒い吐気だけが響き渡る。
 高温にすっかり蒸発してしまった水路を歩く音は、やけに高く聴こえる。足音に、娘は肩を震わせた。
 歩み寄る私に、恐る恐る振り向く。また先程までのおどおどした表情が戻っていた。
 そんなに怯えなくてもよいと思うのだけれど。それとも、私はいつも、そんな怖い顔ばかりしていたのだろうか。

「え……あ……えっと……」
「お疲れ様」

 背中を軽く叩いて、ねぎらいの言葉を掛ける。
 娘は一度と大きく震えると、しかしその表情には満面の笑みが浮かんでいた。

「はいっ!」

 遅れ馳せながら、地下水道の一角は歓声に沸き上がった。
246|x・)sage :2003/12/13(土) 12:46 ID:40YoOoHQ
|T-Box|x・) 紫箱まで開けられちゃったのでギルド宝箱から、ごきげんよう。

|T-Box|x・) これならギルマス以外は手が出せません。以下レスです。

>上水道関連
先遣隊の戦闘の続き、及び最下層最深部一角での様子です。
助けられることなく連れ去られた剣士娘はバッドエンド直行です。
スピード早いのは楽しいけど、>206がなかったことになってしまったりで残念でした;;
結構兼ね合いが大変になってきましたねぇ。みなさん、ガンバですよ〜。

本当は感想とか、レスしまくりたいのですけれど
本文に負けない量になってしまうので、本文の展開に関わるところだけ。

>某スレ577氏
先遣隊のメンバーを改めたいと思っているのですけれど、
氏のキャラクター数人を一時的に退場させても大丈夫でしょうか。
予定では戦闘不能のあの人と、恐らく一番人気のあの人です(ぇ
もう一人も一次撤退してもらって、5人になるのかな。
内容先バレはしたくないのですが(続きの予約にもなってしまいますし)
こればかりは許可をもらわないとマズそうなので……

|T-Box|x・) 唐突ですが、一度名無しに戻ります。箱ネタが尽きたからじゃないですよ。

|T-Box|x・) この手のレスが必要なときだけ、ひょっこり現れますのでよろしくお願いします。

|T-Box|x・)ノシ
247名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/13(土) 13:48 ID:SVevY9Dc
クローキング状態を維持したまま、アサシンは3Fへの階段に近づいた。
ここは階段の後ろ側なので、上るためには回り込まなければならない。
だが、彼の足を止めさせたのは向こうから聞こえてくる戦いの音だった。
魔物のあげる物音の中に、確かに硬い物がぶつかり合う音や人の声が混じっている。
進むべきか、進まざるべきか。
冒険者として、普段の彼なら迷うことなく飛び出していっただろうが、現在は状況が違う。
少なくとも先程確認した魔物達が集まっているだろう事を想像して、思わず足がすくんだ。
とにかく戦況を見ようと、角からそっと顔を出した矢先。
きりきりと弓を引く音がして、彼はとっさに身をかわした。
左肩の真横の壁に一本の矢が残る。
(しまった……!)
アサシンの視線の先に映るは、弓を構えた醜悪なガーゴイルの姿。
いかにハイディング状態といえど、一部の魔物には感づかれてしまう。
状況を確認していた時は十分に注意を払っていたが、今は戦闘の様子が気になって自分の周りに対する注意力が落ちていた。
どうする、と自問して、一瞬の後彼は階段の方へと走り始めた。
4Fを警戒しているのならば、3Fまでは上がってこないかも知れないという予測の元に。
後ろから飛んでくる矢をかわしながら角を曲がった時、彼はそこに信じられないものを見た。
一人の、たった一人のクルセイダーが階段の前に立って魔物と交戦している。
すでに左の肩当てははじけ飛び、盾は敵の攻撃でか形を変形させていた。
今首から落ちた輝きはロザリーであろうか。
重厚な頭装備をしているため、性別までは把握できなかった。
彼は刹那の間だけ全ての状況を忘れた。
名も知らぬクルセイダーの窮地を見、それをすぐに助けられなかった自分に腹が立った。
アサシンは迷わず魔物の群れの中に突っ込んでいた。
その姿を認めたのか、兜の下のクルセイダーの目が見開かれる。
そしてクルセイダーの盾が投げられたかと思うと、一瞬ひるんだ魔物達は道を開けた。
こんなことしないで自分の身を守っていろ、と怒鳴りたくなったが、そんなヒマはない。
一直線にクルセイダーの元に駆け寄った。
脇腹に鋭い痛みが走る。大鼠が食いついていた。
アサシンは顔をゆがめることすらせず、その手の中のジュルを大鼠に突き刺した。
ちょうど急所に当たったのか、大鼠は地面に転げ落ちる。
彼が見たこともないような武器を持ったクルセイダーは、その槍を以て一匹の鰐をしとめていた。
「ここは私が食い止める。早く逃げろ!」
確固たる意思が秘められた声をかけられて、それでもアサシンは階段を上がろうとはしなかった。
急所に確実に当たるようなカードの魔力が込められた武器を無言で振るい出す。
「何をしている!」
苛立ったような声だった。
当然だ。こんな魔物の相手をするのに、クルセイダーとアサシンでは力不足に過ぎない。
「……じゃああんたは、俺が逃げた後どうするんだっ」
三方から迫りくる攻撃を避けながらアサシンは声を上げた。
二人が向かい合っているわけではない。半ば背中合わせのような形になりながら、それぞれ目の前の魔物と対峙していた。
「上にはまだ人がいる。ここを守りきってみせる」
「死ぬ気か!?」
クルセイダーは答えなかった。ただ、魔物達を階段へ近づかせないよう槍を振るった。
「あんた一人死んで何になるって言うんだ! 生きてやると思わないのか!?」
「私の職業はクルセイダーだ。人を守ることこそ、私が選んだ道だ!!」
二人、声を張り上げて叫ぶ様はどこか滑稽に見えた。
それぞれがあからさまに許容範囲を超えていると思われる魔物と戦いながら、口を動かすことを止めない。
それで隙が見えるわけではなく、二人ともが傷を負いながらも魔物の数は少しずつ少なくなる。
しかし、次々に――無限とも思われる数の新手がやってくる。
「俺は生きる、生きのびてみせる」
アサシンが、声のトーンを抑えてぽつりと言った。
「上に上がるぞ!」
クルセイダーに声をかけると、馬鹿な、と怒鳴り声が返ってきた。
「それでは意味がない、上の階に行けばそれだけモンスターどもが地上へ行く可能性も増える!」
「どっちみちあんたが死んだらそうなるだろう! 戦略的撤退を知らねえのか!」
アノリアンの鉈が、アサシンの右腕をえぐった。
お返しとばかりに鉈を握った手を切り落とし、心臓に刃を突き立てた。
鉈を捨てた音が意外に大きく響いた。
「ここじゃあ広すぎるんだ、上の通路は一本道だから、少なくとも一度に相手する数が減るだろ!」
手当をしている余裕はない。白ポーションを乱暴に傷口にかけた。
クルセイダーの盾が、また一匹ガーゴイルを打ち落とした。
「階段上がってすぐの所で相手してりゃあ、いつか他の奴が通りかかる! こんな事態を放っておくほど騎士団も冒険者も馬鹿じゃねえ」
尤も、それまで俺らが保つかどうかが問題か、とアサシンは心の中で苦々しく思った。
保たないと判断したらば、彼はクルセイダーが何と言おうと引きずってでも逃げるつもりだった。
人の巻き添えになって死ぬ気はないし、人が死ぬのを目の前にして放っておくほど非情でもなかった。
「……わかった」
クルセイダーも納得したのか、目の前の敵をシールドチャージで吹き飛ばす。
アサシンは飛来した矢をかわすと、階段の上へと走り出した。
後ろからクルセイダーもついてくる。
生きてやる、とアサシンは心の中で再び叫んだ。
248247sage :2003/12/13(土) 13:49 ID:SVevY9Dc
一応198ですこんにちは。
どうも、バードを拾ってくださってありがとうございます。
プリーストのお姉様に使われてさぞかし彼も喜んでいることでしょう。

今回は、孤軍奮闘中のクルセと逃亡したかったアサシンの話です。
勝手に書いてしまってごめんなさい。
後、微妙に>>233さんの状況と、577氏のまとめと食い違ってしまってすいません。
モンスターうじゃうじゃだったら通り抜けられないかな?と思いまして。
誠に勝手ですが、>>233の「階段を上がっていった」の前にこんな話があった、ということにしては
いただけないでしょうか?
クルセは性別不明のままにしました。

>某スレ577氏
毎度ながら、まとめありがとうございます。
おかげで各PTの動向が掴みやすく嬉しいです。
>騎士団部隊
やばい、黒幕カコイイ……。
冗談はさておき、毒も抜けたようで良かったです。
>丸いぼうしさん
セージ君が回を増すごとに格好良くなってますね!ケミ君も良いキャラだ。
台詞の言い回しとか、理論の確かさ、宗教倫理などに感服です。
>元死体剣士子
うわあああ……ひょっとしてドッペルゲンガー並に強くなったとか!?
>先行隊
撃破おめでとうございます。
Wiz子の戦闘間での成長が良かったです。こうして手練れになっていくんだなあ…と。
249とあるスレの577sage :2003/12/13(土) 14:05 ID:SkxKrPMA
|∀・)

>>|T-Box|x・)さん
どうぞどうぞ
キャラを大事に扱ってくれるなら
どうして頂いても結構です
よろしくー

んでもそうすると私のまとめ
間違ってたようですね
剣士娘はダークロードの手先;;
ということで願います

彡サッ
250丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 14:09 ID:o7fcj3Ro
邪魔者もいなくなったことだし、僕は解説を再開することにした。

「さて、ここから先は、科学的仮説ですが、信じるかどうかはあなた方次第です。ま、
 僕はあなた方の科学的センスを信じてお話をするわけですがね。

  我々人間は、猿から進化したとされています。猿は哺乳類ですけれど、哺乳類も元をたどれば
 シノグナータスなどの哺乳類型爬虫類へと行き着くわけです。つまりはアノリアンとも遠い親戚だと
 言うことになりますね。まぁ、そんなことを言えば人類皆兄弟になってしまいますが。
  さて、その爬虫類はイクチオステガなどの両生類が地上に上がって進化したものですし、
 両生類も元をたどれば肺魚などの魚となります。さらに脊索動物、プラヌラ、原生動物、真核生物…
 どんどんどんどん遡り、最後は、いや、「最初」は、コアセルベートと呼ばれる『代謝する物質』へと行き着く
というのがまぁ、僕らの訴える学説な訳です。」

「…難しいな…話が見えてこない…」

 誰かが愚痴をこぼした。それもそうだろう。いくら詳細をカッ飛ばして、卑近な例まで使って、最大限の
歩み寄りをして喋ったとはいえ、それこそ女が男の脇腹から生まれただなんて思っている人間には
わかることではない。

「まぁ、これはイントロダクションですよ。生命の誕生は三十億年ほど前にこの星で起こったものだと
 言われています。それは海から起こりました。原初大気から海にとけ込んだ様々な有機成分が
 核酸やら塩基やら、その辺になったわけです。そして、その原初の海と、大体同じ組成をしているのが
 さっきの水道の水です。流れる速度から考えて、一週間ほど前の水道最深部は三十億年前のこの星と同じ状態だったと、
 つまりはそういうことです。」

「教授…まさか、あなたは、誰かがそこから生命を作り出し、アノリアンやクランプの段階まで進化させたと、
そう言うおつもりですか!?」

「いくら何でも、それは飛躍しすぎですケミ君。だけれど、大体近いですね。
  さて、進化論はこの辺にしてES細胞というものがあります。これは組織に分化する前の細胞であって
 様々な細胞になることが出来ます。きっと最深部にはそのES細胞みたいなものがどろどろになって
 水の底に溜まっているのでしょう。つまり、黒幕は下水全体を培養槽としてわずかな期間でES細胞も
 どきを造ったわけです。これを元の生物の細胞を核に合成すれば…高等生物が出来ちゃうわけですね。
  本来、細胞というのは栄養を摂取して分裂して…ってやっているから時間がかかります。
 そこを、ES細胞もどきという代替品で補ってやれば、成長に時間がかかるというのは克服できます。」

 皆が、聞き入っていた。騎士団長も、少尉も、ケミも、そしてあのポンコツも。「そんな神様みたいな事が、
出来るわけはない」誰かが言った。それもそうだ、僕の言っているのは仮説だ。オーバーテクノロジを前提に
してるから厳密に言えば科学的ではないかもしれない。
251丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 14:10 ID:o7fcj3Ro
「もちろん、そんなことは不可能です。今の技術では。ただ、僕らがそう言った生命の神秘を知らずとも
 生きているように、仕組みを知らずにその高度な技術を利用する存在があったとしても、不思議ではない。
 多分ね、黒幕だって生命の深奥まではわかっちゃいない。多分生命を生み出す魔法か何かのように思っ
ているのでしょう。大変に遺憾なことだけれど。」

ああ、自分でも情けないなと思う。僕は何か説明できているようで何一つ説明できていない。だが、
そんな技術があるのなら僕はその技術を見てみたいし、もっと詳しく調べてみたい。

「でも、おかしいですよ教授。こんな大量の有機物どこから持ってきたんですか?。いくら何でも核融合させて
 作り出したとは思えないし…」

 ケミが訝しがって尋ねる。それもそうだろう、いくらオーバーテクノロジでも無いものを作り出したり
あるものを消しりするのは大変だ。確かに質量はエネルギーと等価だ。だが、それはあまりに効率が悪い。
 僕は以前気に入っていた本を無くしてしまったが、もしあの本が物質として消滅していたら、僕の研究室
は核爆発のグラウンド・ゼロになっていて跡形もないだろう。

「どこから?。ケミ君、ここしばらく、水道には魔物が出なかったそうじゃないか。おまけに、入っていった
人間も帰ってこないと来ている。そう――つまりは――」


――モンスターや犠牲者をどろどろに溶かして作り直してるって事になるね――

 自分で言って吐き気がしてきた。だれが、何のために、そんなことをするのだろう。神をも恐れぬ…おっと、
これは禁句だな、僕は異端者なのだった。
 大体、生物というのは種自体の繁栄を促進するように遺伝子に書かれている。それが、こんな種自体に利益を全く
もたらさない共食い行為を平然とやってのけるというのは、もはやそいつは遺伝子のくびきを外れているか、
あるいは人間という種でないか…どちらにせよ「人ならぬもの」だ。

 会議室は沈黙したままだった。皆が同じ気持ちなのだろう。ジジジジ、と小さな音を立て魔力灯が満月の夜
の騎士団内を照らしている。そう言えば十四年前の事件も満月の日だったか。

 ――満月――満月の時期には卵を産む生き物が多い。ウミガメも珊瑚も黄金虫もそうだ。その「生」の時期に
規格外の方法で生命が生み出され、僕らは死に向かう。何とも皮肉で詩的な話だった。

 まてよ、黄金虫…あの最深部には棲息しているという話だったが…。

「あっ!!」

「どうしたんですか教授、また何か思いついたんですか?」
252丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 14:11 ID:o7fcj3Ro
思いついたも何も、なかなか衝撃的な仮説だ。こんなものが次から次へと沸いてくるとは自分で考えても
自分の頭はできすぎだ。

「黄金虫は、とんでもない数の卵を産むそうじゃないか…しかも満月の時期に。たとえば、その黄金虫の卵細胞の核に
 拒絶反応を起こさないように、そして、周りの原形質細胞を取り込んで成長するように遺伝子操作したアノリアンや
 クランプの遺伝子を組み込んだとしたら…どうなる…?」

聞くまでもなく、ケミは理解したようだった。さっきまでの紅潮した顔とはうってかわって青白い顔をしている。

 もし組み込んでいたとしたらどうだって?生命爆発が起きるのだ。
「生命の泥」に植え付けられた大量の卵からものすごい勢いで強力なモンスターが量産される…しかも全自動で。

僕は知らずに技術を使っている奴が相手かと好意的に予測していたが、その希望はすでに潰えた。
 相手は、ポンコツの言うように「悪魔」だ。現世の全てを知り、演算し、予測する。魔だ。

 だが、それ故に、僕はわからなかった。そいつの目的が。それほどの頭脳と技術を持つものの目的は、何だ?
確かに奴の行動は極めて計算ずくだ。時期に合わせて極めてスマートな方法でモンスターを送り込んだ。
だが、目的が見えない。手段は見えても、目的が見えない。それが見えない限り、僕らに勝ち目は…多分、
いや確実に、ない。そして、奴は今、黄金虫が卵を産むあいだに、次の行動に移っているはずだ。

「我々に、君の話を信じろと言うのかね、学者先生…」

「はじめにも申し上げたとおり、判断はあなた方にお任せ致します。この仮説は僕が今まで作った中で
 最低の仮説です。ただ、この仮説は帰納的に導き出されたもの、と言うことはお忘れの無いように。」

「スーパーノヴァなんとか、を使うしかないんじゃないか!?」

 誰かが叫んだ。馬鹿な、もう手遅れだ。十四年前と手口が同じであるとすれば、明日の昼あたりにはあふれ
出すことになる。SNSの展開にかかる時間は長い。シュバルツバルドから機材を取り寄せ、熟練した雷術師を128人
と念術師を5人集めなければならない。もしその辺のヘタレ魔導師が混ざっていて、制御に失敗したとしたら、
64人の並列処理により生み出された核の炎は首都全土を灰燼に帰すだろう。それだけではない。
死の灰が振りまかれ水と農作物は今後数十年は口に出来なくなるし、全土で異常な数の奇形児、
癌患者が発生するだろう。
 まぁ、そのとき僕らはみんな仲良く蒸発してしまった後だろうから心配の必要なんか無いんだが。

「学者先生…。騎士団は貴公の意見を正しいものとして、それに協力は惜しまないつもりだ。
 だが、一つ聞きたい、我々は滅びを甘受するしかないのか?」

騎士団長が、重く、苦々しい口調で口を開いた。ここに来てようやく僕の正当性に気がついたか。
ポンコツが隅で眉をひそめているが、まぁ、いい。

「いいえ、十四年前に止められたのです。今回も止めることは不可能ではない。」

「それは、ここにいる人間の7割を殉職させろと言うことかね?」

「貴方次第です。」
253丸いぼうし@会議室sage :2003/12/13(土) 14:12 ID:o7fcj3Ro
 団長の眉間には、厳しい皺が刻まれていた。それもそうだろう。自分の指示一つで何十人何百人が
生きたり死んだりする。その現実に直面すれば、まともな人間であれば苦悩する。
 一つうなずき、団長は周りを見渡した。騎士団員は、団長をじっと見つめ、それぞれが頷いた。

「では、我々は何をすればいい?あのシステムの用意か?兵員の派遣か?自らの葬式を済ませることか?」

「SNSの展開はおそらくもう、間に合いません。方法はただ一つ。外科手術的作戦(サージカルオペレーション)のみ。
 まずは、先遣隊及び生存冒険者とのWhisの確立を。」

会議はようやく、まとまって動き出した。僕もやるべき事を、やらねばならない。


  運命の歯車は、きしみを立てて回りゆく

  決戦への時を示す針を、一秒ごとに進めながら

  ラプラスの魔よ、君に問う

  世界はどちらに向けて動いているのか
254丸いぼうしsage :2003/12/13(土) 14:19 ID:o7fcj3Ro
せっかくの休日だって言うのにずっとPCの前にいる不健康な僕。

 とりあえず、地上編で言いたいことは全て言い終わりました。
科学的なところは、結構どうして穴だらけだと思いますが、見逃してやって
くれると幸いです。

本屋]λ=3<ウィザーズブレインカワナキャ!

シケンベンキョウスルノガサキカ>λ.....[本屋]
255203以降読んだ感想sage :2003/12/13(土) 18:32 ID:JyLTdb7s
>>211-212
教授と助手の掛け合いが面白い。
教授のキャラもありがちっぽいんだけど、どっかねじくれててイイ。

>>215
なーんかクルセイダーのキャラクターが揺らいでるよーな気がしますよ。
前に出てきたトキって、もっと堅物なカンジじゃなかったかなー、って思いましたよ。
一方そのころ〜以降ナニしてんのかが分かりませんです。妹?
初っ端クルセ視点なのに、どうも〜驚いてるようだ、ってのはオカシイ。

>>219
頭脳戦ってカンジ。カッコイイ。

>>223-224
ところどころ接続オカシイ。
全体的に見ても悪くはないケド、なーんかちぐはぐな印象。
>>209ら辺のアナタの書いてる話は陳腐に感じたですよ。燃えませーん。
しばらく黙るってんならその方がイイでしょう。
リレー始める前みたいのはもう書きませんか?

>>227>>236>>245
読みやすいし特に目立った欠陥もない気がしたよ。
多分作者一緒だろーからまとめてみたよ、と憶測でレスしてみるテスト。
相変わらず姉のプリーストは萌えも燃えもしないんだよなー。
個人的にーですが。
むしろ嫌いなタイプなワケですが、
読んでてあんま気にならんのはどうしてだろう。
相方も美化されすぎな気がするんだけど、
あんま喋んないからコッチは好印象。

>>229
Dの字早く出したかったのかなー。展開加速させすぎな気がするです。
二本指で武器掴むのはベタベタ。
定番中の定番。馬鹿一中の馬鹿一。サスガに過言?
まー例の二人からして、それまでのキャラと比べりゃー、
人外みたいなモンだから気にならんですね。
演出としては悪くないと思いマス。某龍玉みたいなインフレ具合だけど。
っていうかアナタの書くベタベタな展開は読んでてキモチイイです。
Dの字予定台詞集は知らないヒトにしたらワケ分かんねーと思うので、
入れない方がいいんじゃないですかね。

>>231
クルーガー中尉再起不能!
なーんて言いやしませんが、ケガの一つくらい負わせてもいいような。
耐久力は如何ほどのモノか、とかなんとか攻撃しそうなモンですケド。

>>239-242
最高。

>>250-253
面白い。
もう地下行かなくていいから教授このまま講義続けてー。
あー、騎士団のお偉方ヤル気になっちゃったからもうだめか。残念。
これだけじゃー悔しいから重箱の隅をつっついてみる。
古典哲学はまだイイとして、
分子生物学(だと思ったけど詳しくないから違うカモ)そのまんまー
ってのはどうかなー、と思ったですよ。
まーカプーラがケータイ持ってる世界だし、なんでもアリなんだろうケド。
試験ベンキョがんばー。
256226sage :2003/12/13(土) 18:55 ID:fULQx/4E
うあ…情報を書き忘れてる事にいまさら気づいた…_| ̄|○

判る人には判るけど
>蒼い煌きを体に纏わせ=オーラバトラーです
某鯖某ギルドのクルセさんがモデルなのはここだけの話w

文才0な上に長文が苦手な私ですが、生暖かい目で見守ってあげて下さい
257247sage :2003/12/13(土) 19:54 ID:UIX1BZI.
>>256
Σ( Д)   ゜゜

すいません見落としてました_| ̄|○
というより、そういうスキルがあるのかと勝手に勘違いを……。
ゴメンナサイ ゴメンナサイ モウシマセン
よろしかったらスルーするか、脳内でクルセをもっと強い人にしてくだされ。
いっそなかったことに。
∧||∧
258226sage :2003/12/13(土) 22:44 ID:fULQx/4E
>>257
いや、オーラでも単騎であんな数は_でしょうからOKですよ

そしてこの数を一気に持って行ったら3階組みが全滅してしまいかねないので
うまい事撤退戦に持ち込まないといけない罠

_| ̄|○<先生、文才が欲しいです…
259死の淵。sage :2003/12/14(日) 03:39 ID:qMDKjf0I
 槍は穂先がすっぱりと砕かれ盾は全面が醜くへしゃげひび割れていた。人間の限界近い重々装甲は半ばが剥がれ落ち、一部では現れる事のない肌が傷跡とともに浮かび上がっていた。
「う」
 しかれどもその兜のおくより覗く瞳は今だ死なず。
「ぉおおおお!」
 左腕より放たれた盾が円盤の如く狂気に彩られた掌を分断し、聖なる印を描く槍は野蛮なる鰐を四分割する。ひとときの逡巡も見せずその槍は闇を突き、忌々しく肥えた鼠を二匹纏めて串刺しにする。しかしその間にも数倍を超える深淵よりはいよる化物どもが押し寄せてくる。階段上という位置的有利を持ってしても、心技を極めた自分と言えども、この劣勢は覆しがたかった。はたせるかな、死角から五匹の鼠が顎を開きくたびれた全身鎧を食い千切らんと襲い掛かり、
「――シャ――ァ」
 閃光の二振りによって十の肉隗へと変化する。隠れ身を使うまでも無く、闇色の暗殺者はこんな芸当をする。
「下がれるかむしろ動けるかっ!?」
 心配までされてしまった。情けない。火の神より賜る神技を大地に放ち押し寄せる化物を炎とともに吹き飛ばす。
「黙って下がれっ!」
 言いつつ後退。隙間のない鎧が僅かに動きを阻害することに苛立ち、それが平時ならば気にもとめぬことに気付いて歯噛みする。焦っている。落ち着け。
 防衛位置と決めた場所で暗殺者は白濁した回復液を一気に呷り、片手に持っていたもう一瓶をこちらに投げてよこす。はて、先ほど彼は一瓶飲んでいなかったか。瓶を投げられてもこちらは両手がふさがっている。盾と槍を持つ手で不器用に取り、両手で挟み込むようにして飲む、
「ガードさげたままじゃ飲めねぇだろ……」
「う…るさい」
 がこん、とフェイス・ガードを上げ再度瓶を口につける。一瞬で全身の傷が5割がたふさがり、大概の出血が止まる。あはぁ、と喘ぎ声にもにた溜息が漏れる。
 ふと見れば暗殺者はこちらをじっと凝視している。見られるのはあまり好きではないし居心地が悪い。
「なにか?」
「あー? んーいやべつにうんほんと」
 なんなんだと胡散臭く暗殺者を見、そこでかれの足元の暗がりに転がる物体に気が付く。暗殺者はそれに気がついたのかすっと視線をその物体に向け、

 ――神よ我を赦し賜われ

「掌の奴が掴んでたんだよ。焦ってたが傷は付けなかった。よかったよ」
 ごろりと下水の中に横たわっているのは、踊り子の衣装を纏った人であった。首がありえざる方向に曲がり間接が倍以上に増えた人であった。ああ。ゆっくりとその死人に近寄り、跪き十字を切る。
「世界樹の葉は」
「あるわけねぇだろどこの暗殺者がそんなもん携帯するんだよ」
「そう、か。
 しかし――まだ人として形は残っている」
「ああ。教会の連中ならきっと呼び戻してくれるだろうよ」
 暗殺者はついっと上を向き、
「本当に――手遅れでなくて、よかった」
 顔をあげれば、そこにはもうさっきと変わらぬ暗殺者がいる。まるで、

 ――まるで、さっきの泣きそうな声は嘘みたいだ

 がこん、とフェイスガードを下ろす。踊り子を壁にもたれかけさせ、もう一度十字を切る。
 暗殺者はぶらぶらと手首を振ってカタールを掴み、とんとんと小刻みに跳躍しながら呼気を整える。
 階段の奥でうぞりと塊が蠢いた。
 わたしは、槍を握りなおす。そして唱える。貫きを司りし神よ神風の神よ我が槍我が腕に神なる御技を。槍術における高速の振込み極め。
 この力は守るために。
 一斉に闇が襲い掛かってきた。
26088sage :2003/12/14(日) 03:41 ID:qMDKjf0I
すまねぇ、全部のレスは勘弁してくれ。

>えべんは氏
あ、あんたGJだよ……どんどん動かしてやってくだしい。


>233氏・247氏
ちびーとだけ書かせて頂きました…いまだにどっちのキャラもつかみきれてない感じです。。。
オーラの表現は自分には_っぽかったのでなんかそれっぽい? かな? ぐらいにしてみたようなどんなような。きっと最後のほうでかっこよくなってくれると思う。だってクルセだのに!
あ、一応最後に使ったのはスピアクッケンです。まずけりゃ精神統一とかそんな感じで。
三階防衛線のこの二人は今最も死相がでてますね。だれか助けに! ってみんな撤退中か……。
ダンサーの死人はあれです、だってバードひとりじゃ合奏できないじゃ(ry

>丸いぼうし氏
力いっぱい 蝶 サ イ コー と言いたいのだが

_| ̄|○<ウィザブレッテ今日発売日ダッタノネワスレテタ・・・

>黒幕
イマイチ白羽取りの奴の目的がわかんない……だからもうちょっと出番をかいてプリーズ。

  プ リ ー ズ
261丸いぼうし@地上sage :2003/12/14(日) 21:14 ID:zaw8Va0w
 青い月影とコントラストをなすように、赤い赤い篝火の大きな炎が天を焦がしていた。

 プロンテラ上水道の入り口の裏手。作戦本部はプロンテラ騎士団会議室からここへと移された。
騎士団長をはじめとして騎士団員はいつもの軍服ではなくプレートを着用しているし、クレイモアやら
ランスやら、各々の得物を近くにおいている。
 幔幕の中には机が置かれ、水道の見取り図にはありとあらゆる所に付箋と赤鉛筆の文字が躍っていた。
 まさに野営地。象牙の塔に住まう僕にしてみれば、なかなか場違いと言ったところである。

「ケミ君、鞄をとってくれ。僕らも戦の準備をしようではないか」

「教授、何言ってるんですか、僕らは非戦闘要員ですよ。」

「だが、自分の身は自分で守らねばならないだろう?。戦闘員非戦闘員と言ったところで相手がそんな法に
 則った戦い方をする保証なんてこれっぽっちも有りはしない。それに…」

 地下へ降りていって、事の真相を確かめたい、と言いかけて僕は口をつぐんだ。気弱なこいつは絶対反対
するだろう。無理に僕が行こうとすれば、良くて号泣、悪くて失禁だ。
 ケミの手から鞄を取り上げ、中を探る。ごわごわとした手触りのあと、黄ばんだ一着のマフラーを僕はとり
だした。

「うわ、小汚いマフラーですね…。と言うかそんなもの何の役に立つんですか?」

「ケミ君、ものは見た目で判断すべきでなく、何で出来ているかで判断すべきだ。覚えておきたまえ。
 このローブは去年ジュノーの学会に参加したときに研究仲間に頼み込んで譲ってもらった試作品でね。
  ポリパラフェニレンテレフタルアミド…まぁ、彼らはケブラー繊維と呼んでいるが…で出来ている。
 鋼線の五分の一の重さで、強度は七倍というマーベラスな新素材だ。おまけにこれはエルニウム糸との
 混紡で表面には高耐性(イミューン)加工までしてある…鈍器には弱いかもしれないが、そう簡単に刃を
 通す代物ではないよ。」

むっとした顔をしてケミは僕の手からマフラーをひったくり力一杯引っ張った。当然無駄だ。
数秒の後、真っ赤な顔をして肩で息をしながらケミはマフラーを僕の手に渡した。恩師の言うことは信用
すべきだがその懐疑の姿勢はなかなか評価に値する。

 僕は件のマフラーを肩に羽織った。ちくちくごわごわしていて、着心地はいいとは言えないが、
命には替えられない。
 そして、僕は金色の髪飾りを取り出すと、パチリ、と額を挟み込むようにしてはめた。ああ、懐かしい、
あの頃を、芋虫峠の頃を思い出す懐かしい緊張感。そして僕は、いくつかの装身具を改め、確かめると、
ケミに尋ねた

「上等戦略概説全書の第五巻はあるかい?」

「ええ、言われたとおり持ってきましたよ。でも、この本…民明書房だし、何か教授らしくないチョイス
 だなぁ…って思ってたんですけど。」

「だから言ったろう、見た目に惑わされてはいけないって」
262丸いぼうし@地上sage :2003/12/14(日) 21:15 ID:zaw8Va0w
 僕はケミの手から本を取り上げると、表紙を開き、カバーを外した。
深緑色のカバーの下に隠されていたのは、簡素な、黒色の表紙、それに銀色で文字が象眼されている。

――Αποχαλψπσε

ケミが眉間を寄せて、表紙を眺める。どうやら読めないらしい。この文字は古代ゲフェニア文字。オールマイ
ティな僕ならまだしも、錬金術専門のケミには読めなくても無理はない。

「Apocalypse…黙示録だよ。ただ、これはね…ただの本じゃない。」

 僕は本を開けた、ページは全て、白紙だった。黄ばんだページの上に指を走らせる。途端に黒い文字が緑の
輪郭を伴って浮き上がり、書面の真上数cmの平面に漆黒の画面が展開した。

『 ――魔法戦闘支援システム"Apocalypse"を起動します――

システム自己チェック…完了
脳波検知型入力デバイス"Circlet"を検知…リンクを確立します…リンク確立
ユーザ認証開始、脳波パターンを検索します…ユーザID:root…脳波パターン一致…。
 全権管理者のログインを確認しました。

 ――ようこそ、Apocalypseへ――』

「こ、これは…一体…?」

つらつらと虚空を流れていく薄緑色の文字列を見て、ケミが驚きの声を上げた。

 魔導師が戦うには、それを支援するものが必要だ。魔法の過度の使用は脳に負担を掛ける。それを軽減する、
あるいは魔法の出力を増大させるデバイス…それは時として杖の形をしていたりするし、これみたいに本の形を
しているものもある。もっとも、支援デバイスの大半は無意識の産物であり、経験的に、その存在に気づかずに
用いられることが多い。
 その全貌に気づき、意識的に用いているのは一部の先進的な魔導師だけなのだ。
そう、たとえばこの僕のような、ね。

「 これはね…昔プロンテラ図書館の地下で見つけてね、ちょいとパク…もとい拝借してきたのさ。
 元は本当に古代ゲフェニアの書物だった訳なんだが、非常に性能は優秀でね。それで、ちょっと僕専用に
 カスタマイズして使うことにしたんだ。
 最後に使ったのは数年前だから、動くかどうか心配だったんだが…君に持ってくるように頼んでおいて良かったよ。」

「その本が凄いのはわかったんですけど…。そんなエロ漫画に参考書のカバーを掛けるみたいな隠し方
 をしなくてもいいんじゃないかと思いましたよ僕は。」

 ふむ、なかなか良い例えだが、決定的な差違がある。なぜならば、普段勉強をしない人間の部屋に
参考書が一つ転がっていれば怪しんで誰もが中身を見る。しかし、僕のような人間が本棚に一つ本を増やした
ところで誰も怪しまない。木の葉を隠すなら森の中。本を隠すなら本棚の中だ。
263丸いぼうし@地上sage :2003/12/14(日) 21:16 ID:zaw8Va0w
「ふふん、凄いのがわかれば、それでいいのだよ。さて、動作テストと行こう。
 学問には品位が必要だ。お下品な例えを出してくれた君には、これからお仕置きをしなくてはな…」

 指で画面をなぞるまでもなく、脳波を感知して「黙示録」が外部スキルデバイスの認識を始める。
身につけたクリップが「黙示録」とリンクされ、頭の中にスキルの詳細な手順が浮かび上がる。
 すっ、とそのスキルのイメージを頭の中で見つけ、「使用」のイメージをそれにたたき込む。
このあたりの過程は、毎日やっていないとカンを失ってしまったりする。だから、魔導師は毎日の瞑想
を欠かしてはいけないのだ。

『外部スキルライブラリ"Heal-Clip"を使用してプロセス"Heal-Lv1"を開始します』

 突如として「黙示録」の画面から、緑色の文字がこぼれ落ちる。一列に連なった光る文字列は
地を這うようにして進んでいき、ケミの足下で円を描いた。

「きょ、教授、ごめんなさい、い、命だけは…」

ぴろんっ

 次の瞬間、間抜けな音を立てて、薄緑色の光の柱がケミを包み込む。そのときの泣きそうな
情けない顔と言ったらなかった。これは笑いを禁じ得ない…ぷ…くくく…。

「ひぃーひぃーアハハハハハハハヒヒ…い、息が出来な…フヒヒ…ヒィー」

「ひ、酷いじゃないですか教授、本当に死ぬかと思ったんですよ!それを笑うだなんてっ!!」

「あーははは…ふぅ…ふぅ…。…いやぁ、済まない済まない。」

 久しぶりに大笑いをして、スッキリした。ケミに謝ってテントをでると、満月はもう、高く
上っていた。後は隙を見て…こっそりと水路に潜っていきたいものだが、何分僕は辞書より
重いものは持ったことがない。囲まれたらどうするか、それが心配の種だった。
264丸いぼうしsage :2003/12/14(日) 21:31 ID:zaw8Va0w
一人だけ世界観が突破してしまってる上に長かったりでドウモスミマセン。
ローブとマフラーが一部置換ミスがありますが脳内補完お願いします。

>>259
撤退戦の二人組、とってもカッコイイです。死体の描写がなかなか
細かいのがイイと思います(マテ

>>某スレ577さん
こちらは出発準備完了です。モンク隊を出発させるのならば、ゼヒドウゾ
キャラが増えすぎて使いにくいようであれば、地上で繋ぎます。
個人的にはダンサーたんがワイヤー使いだったりすると萌え燃えなのですが(ぉ
265とあるスレの577sage :2003/12/14(日) 23:17 ID:cklmfFvU
|∀・)

>>丸いぼうしさん
んと、こちらの先遣隊が一度もどってくるようですので
アコたちも(所詮雑魚ですから)突入するか不明になってきました
なので地上で一旦待機ということにしましょうか?

今日は>>260さんの希望のあった
黒幕の目的・・・のつもりなのですが
なんか殺すのが惜しくなってきたりして
とりあえず投稿

彡サッ
266とあるスレの577sage :2003/12/14(日) 23:17 ID:cklmfFvU
私は闇の中を歩きながら
先程の出会いを思い出して微笑む
材料は全て手に入ったし
準備もほぼ完璧だ
しかし不確定要素をすべて排除することは出来ず
それによって失敗に終わる可能性があるということもまた知っている
長く・・・本当に長く生きているからな
以前同じことをしたのはいつだったか忘れてしまったが
そのときの感触は覚えている
私の実験を邪魔した奴等はまだ生きているのか死んでいるのか
そんなことに興味は無いが
ただ先程の奴等と
そしてそれ以外数名がこの私の作り上げたフィールドに
進入してきているというのが感じられる

「・・・フッ、物好きな奴等よ、大人しくしていれば
余計な痛みを感じることも無いというのに・・・」

人間であったときから習慣になってしまっていた独り言が
私の口をついて出る
私が真の力を追い求めてから
周囲にこちらと会話をするような存在がいなくなったので
知らず知らずのうちにそうなってしまったのだ
独り言は緊張をほぐし心身の健康維持に効果的だというから
とくに気にすることも無いかもしれないが
ただ心身といっても体のほうは既に人間とは言えないだろうから
ここで必要なのは精神の健康なのだろうなと考えて
その結論にわらいがこみ上げてくる
私の精神の健康か・・・

必要な死体と、魂は全て手に入った
私はちいさいときからずっと
昔話で不思議だったことがある
「悪魔はなぜ人間の魂を欲しがるのだろうか?」
そんなことを追及する人間というのは
滑稽な存在なのだろうが
どうしても気になったので
悪魔を召還して無理やり聞き出してみた
奴等の答えをまとめると

「悪魔はその存在を、力を維持するために人間の魂(と呼ばれるもの)を必要としている」

といったところだ
そしてこれを聞いたときにこちらが考えたことは

「では魂のエネルギーをこちらが取り出せるようになれば
悪魔以上の力を持てるということなのか?」

・・・そしてその答えが私の力となった

私はアンデットのような下等な存在になるつもりはない
奴等は臭いしボロをまとって美的センスもなく
ただ偽りの生にしがみついているだけだ
ほとんどのアンデットたちはキチンとした会話すらままならない
悪魔であっても
下等なものたちはただ人間を襲うプログラムが組み込まれた人形のようなもの
それ自体で思考し作戦立案し詩を書いたりすることもなく
たとえボスクラスといえども私の知る限り
人間以上の存在とは言いがたい
だがその直接的な力には見るべきものがある
それならば2つを合わせることが出来たら
永遠の命と
絶大な力と
偉大な知性を
もった存在が出来上がる
そう、それこそが今の世界に必要なものだ
超王として私が君臨する
どこにでも居る下衆な野郎どもを一掃し
理想的な世界を作り出して
それをひっそりと永久に見守ることにしよう
一旦できあがってもそれが腐敗するのもまたはやいから
適当な時期に刈り取りをしなければならないだろう
私の眼であり鼻であるものをいくつも放って
順次監視していく必要があるだろう
面倒だがヤリガイのある仕事だ
飢える子供も
犯される女性も
殺される男も居ない
そんな世界を私は夢見ていた
それが今実現しようとしている・・・

まずはあの上級冒険者の養殖に使われているような
情けない闇の王の力を吸い取ってくれよう
今の私ならばその魔力から本人以上の力を引き出せる
そして完全なる不老不死を手に入れてから
各地にモンスを派遣して人類を危機的状況に落としいれ
ころあいを見計らって英雄として登場することにしよう
人間とは単純なものだ
革命が始まってしまえば現在の体制を砕くのに時間はかからない
それから私の選んだ存在に後を託し
かの地を去ろう
私は神に等しい存在となるのだ
そう呼ばれるのは心外だがな

ん?
なんだ?
まったく・・・無能な部下を持つとこれだから苦労する
私があれほどきちんと4階の入り口をガードしておけといったのに
人間の気配に興奮してしまったのだろう
モンスターたちが通路に溢れている
私は奴等にちょっとだけ声を掛け
恐怖に硬直する低脳どもを睨みつけてこう言う

「何をしている、戻れ、貴様等の仕事は4階の入り口を守ることだ」

奴等があたふたと戻るのについて
私も4階への通路を進んでいく

んん?

「本当に――手遅れでなくて、よかった・・・」

こんな奥の方にまだ生きている人間が居るのか
・・・しかも私の部下がちょっかいを出していたようだ
女の死体もあるようだが
もう今の私には必要ない
白い鎧に包まれた聖騎士と黒服の暗殺者が話している後ろを
私はスッと通り過ぎ
びっくりした暗殺者が反射的に武器をふるうのを
頭をすくめてかわすと耳元で囁いておいた

「さっさと帰れ・・・今から実験が始まる」

心底驚いたといった表情を見せた暗殺者を残し
聖騎士が繰り出した鋭い槍を横に飛んでかわすと
私はそのまま4階に戻ろうとして
ふといいことを思いついて壁に向かう
・・・まあこう書いてもくる阿呆は来てしまうのだがな
それはそれで楽しみだ・・・

やがて金髪の美青年がモンスターたちと4階へ
旅立った後に
階段付近の壁に書いてある文字を
呆けたような表情で読んでいるアサシンが居ました
そこには

「この階段を下りる者、全ての希望を捨てよ」

ものすごくたちの悪い冗談をきいたような気がして
暗殺者は背筋に冷水を浴びたような感覚で
思わずあとずさりするのでした・・・
267とあるスレの577sage :2003/12/14(日) 23:18 ID:cklmfFvU
|∀・)

ふーむ・・・

彡サッ
268名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/15(月) 00:34 ID:nrE2jh3.
「…暗殺者、退くぞ」
言うなり踊り子の死体を抱えて歩き出すクルセイダー
「アレが…今回の事件の黒幕か?」
隣を歩きつつアサシンが問いかける
「恐らくそうだろう、我々は早急にこの事を報告しなければならない、アイツは…危険だ」
「…あぁ」
二人は背後に薄ら寒い物を感じつつ2階へと歩みを進めて行こうとする
「ん?おい、聖騎士さんよ、ありゃ商人が使うカートじゃないか?」
アサシンが指差す方向には(>176で廃棄した)カートがうち捨てられていた
「近くに生存者が居るかも知れん、行くぞ」
「あぁ、何か役に立つ物があるかも知れないしな」
うち捨てられたカートに近づく2人、そして
「死体すら無い…暗殺者、そっちはどうだ?」
近くに潜んでいたクランプを薙ぎ払いつつクルセが問う
「こっちも死体すら無いな、だがカートに良い物が有ったぞ」
アサシンが手に持っているのはイグドラシルの葉数枚とポーション数個
「よし、この区画を制圧後に踊り子殿を生き返らせる」

緊急事態だ、神もお許しになるだろう…
あの金髪…実験とか言っていたな…一体何をするつもりだ?

とそれぞれ思いつつカートの周りを制圧する2人であった


例の如く展開的に不味かったらスルーの方向で(汗
2691スレの422sage :2003/12/15(月) 00:51 ID:KKwof/YE
 スレが無茶苦茶いい流れの時に申し訳ないですが、一月前の続きを
アップローダーに投下させていただきましたので、一応報告を……。
 この一月、学業とアマツにかまけてました。
 でも、イクラナンデモオソスギダヨ……_| ̄|○
 流れを切ってしまって申し訳ないです……。

 もし一人でも読んでくださってる方がいれば、ごめんなさい。
 そして、まだ終わっていません_| ̄|○
 完結しない可能性あるので、最後までないとダメな方はご留意を……。
 では失礼……。
270名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/15(月) 02:02 ID:m29UVtz6
>>1スレの422さん
ああん、こーゆーの大好き(´∀`)ホノボーノ
一ヶ月程度なら待つうちに入りませんぜ。気にしなーい。
しかも前回より断然文章の流れも良いです。これで文句なんて言えましょうか。

あ、一つだけありました。アドレス貼ってくださいネ(・∀・)
271105sage :2003/12/15(月) 03:52 ID:UiUlhdsw
随分と間があいてしまいましたが、続きです。
騎士団部隊&第四部隊、行動開始。


「…なんだ、あれ…」

『人斬り』の短剣を構え、飛び出せる用意をしていた妹が、弛緩しながら呟いた。
斯く言う私も、あらゆる事態に対応できるよう準備をしていたのだが…
まずは、大事にならなくて良かった、という所だろうか。
紫苑は毒が抜けきったばかりで回復もしていない。
少なくとも現状で事を起こすのは得策ではなかった。

どうやら、これは全員同じ考えだったらしく、特に緊張していたハンスが大きく息をつく。
隣では、服事の少年が青ざめた顔で震えながらも、スタッフを手に祈りの言葉を呟いていた。
司祭がそんな彼の肩に手をやり、二言三言声を掛けている。
一瞬の安堵。
しかし、今は平時ではない事を皆知っている。

きい、きい─

硝子を斬るような、甲高い鳴き声。
それに混じり、ずるり、ずるりと何かを引き擦る音。
そして─女の、声。
272105sage :2003/12/15(月) 03:52 ID:UiUlhdsw
「や、やだあ!来るな、来ないで…」

それは、すぐ傍だった。
壁を隔てた通路の向こう─丁度真裏、というべきかもしれない。
少し進むと、そこへ繋がる通路があった筈だ。
ちらり、とそれぞれの様子を見ると、各々武器を手に準備を終えていた。
口火を切ったのは、マナだった。

「…要救助者、確認。行くぞ。
おい、聴こえるか!俺の声のする方へ走れ!今救助に向かう!!」

返事を確認せず、マナは駆け出す。
続いてハンス、フィル、服事、そして私達司祭。
通路を曲がり。そのままターンする。弓手の少女が、後を振り返らずにこちらへ走っていた。
いや、走る、というよりは転がる、という方が正しいかもしれない。
恐慌状態の彼女は、走る事すらままならず、時折転びかけながらも懸命に逃げている。

どん、とマナにぶつかった彼女は、恐怖を貼り付けた表情でこちらを見、次いで安堵したように崩れ落ちた。
良く見ると、左腕はあらぬ方向に曲がり、服は破れ泥に汚されて、所々血に塗れている。
恐らくはまだ転職して間もないのだろう。全身は震え上がり、歯の根すら合っていない。
紫苑が「怖かったね。もう大丈夫だから…」と、彼女を抱いて癒し、宥める。
…私の容姿でこれをやったら、余計怖がらせるだけだろうか。
などと、緊迫感の無いことを一瞬考えるが、今はそれよりも─
273105sage :2003/12/15(月) 03:53 ID:UiUlhdsw
「ちいっと、数が多いな…マナたんフィリーたん、いけるか?」
「フィリーたんって……3匹までなら余裕はあるよ。4匹以上だとちょっと辛いかも。」
「マナたんはやめろと言っているだろう…それに、俺は言うまでもない。」

そこに居たのは、小山と言えるほどのクランプと、3匹のスティングだった。
打ち合わせをしている余裕は無い。ここは二人を信用し、フィルに指示を飛ばす。

「フィル!クランプを最優先、数を減らす事を考えろ!エテルナを入れている余裕は無い!」
「了解っ!」
「いくぞ二人とも、準備はいいか?」
『OK!』

幸い、こちらには司祭が3人いる。
一人一人を全力でバックアップする事が可能だろう。
服事に少女の保護を任せ、戦闘体勢に入った。
274105sage :2003/12/15(月) 03:53 ID:UiUlhdsw
そこからは、まさに殲滅戦と言える戦いだった。
斬り、刺し、払い、裂き、まさに無限とも思える戦闘。
圧倒的な物量と、圧倒的な殲滅力。
ギリギリの拮抗から、徐々に私達に戦況が向いてきた、そんな時。

「あぐっ…!」

避け損ねたフィルの首元に、クランプが喰らいつく。
ヒールで癒すが、回避能力が追いつかない。
まずい、非常にまずい。私自身の精神力も、段々と落ちている。

「マナ!ハンス!あとどの程度抱えられる!」

スティングを退治し、クランプと交戦している二人に声を掛ける。

「二人で4匹ってとこだ!それ以上はもたん!!」

4匹、か。フィルについているクランプは5匹。迷っている暇はない。

「フィル!『一度殺すぞ』。闇に飲まれるなよ!」
「な…ユリアナさん!?」
「く…了解、仕方ないっ…!」

紫苑が驚愕の表情を私に向け、フィルは苦痛に顔をゆがめながらも刃を振るう。
紫苑の視線を無視し、私はアロエベラの小瓶をフィルに群れているクランプのうち1匹に投げつけた。
気取られ、怒り、私へまっしぐらに駆けて来るクランプをバックラーで弾きながら、騎士二人に祈りを捧げる。
フィルがクランプの中に崩れ落ちる直前、私は新たな祈りを捧げ始める。

『神よ!傷付き倒れ、貴方の身元へ今往かんとする勇士に、今一度戦う力を!』

フィルが倒れ、クランプたちの目が二人に行った、その一瞬後。
命を失った筈の彼女は起き上がり、マナとハンスに向かったクランプへ炎を放った。
マグナムブレイク、と呼ばれる剣士の神技。
275名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/17(水) 08:31 ID:kHhFkLCs
>>269
よかったぞー。
終わっていないのは望むところ、
あれで終わられたら物足りないわっ(゚Д゚)
マイペースで構いません、あるなら続きオボンヌ!

>>271
『人斬り』ってヒドラ武器ってことだろうか?
よくわかんなかったです。
ユリアナさんてアサシンの兄弟だか姉妹のプリーストでしたっけ?
疑問符浮かびまくりですた。
276理由sage :2003/12/17(水) 21:33 ID:noItI8qU
動く魔物が消え去った上水道の一角で、冒険者達は歓声を上げ、自らの勝利を祝った。
撃破した今でさえ事情が良く飲み込めていないバードも顔をほころばせ、愛器と冒険者達を眺めている。
精神を使う特別な歌ばかり演奏していたせいもあって疲れている彼は壁によりかかった。
通路の先に足音が聞こえはしないかと耳を澄ませると同時に、周りの者たちも
喜びお互いをたたえ合いながらも辺りに気を配っていることに気が付く。
はっきり言って何がなにやらわからないうちに戦闘に巻き込まれて命の危機にさらされたものの、人の役に立てたのは嬉しい。
人のために歌を捧げたのはどれぐらいぶりだろうと考え、リュートの丸みを指でたどる。
その向こうに、大切な人の姿を垣間見た気がした。

相方と呼べるような関係でなかったのは百も承知だ。
おそらく年下の、ちょうど弟のように思われていたのだろう。
あの人のために奏でたかった曲が紡がれることはなかったけれど。
彼女は立派な騎士で、自分など足元にも及ばないほど強かった。
彼女のために、彼女と共に狩りに行けるようにと修練を繰り返したが、GHになど行けるはずもなかった。
あの日自分が引き留めてさえいればと今でも思って止まない。

自分にそれを知らせてくれたのは、彼女と臨時公平でGHに行ったというプリーストだった。
非道く単純で、良くある話だった。
彼らは運悪くダークロードと遭遇し、不意をつかれたため彼女が持ちこたえている間PTは一時撤退した。
彼女が追いついてくることはなく、帰ってくることもなかった。
それだけの話だ。
しかし妙なのは、彼らがいたのはカタコンベ――ダークロードのすみか、ではなかったのだという。
GH内の地下水路、巨大なる手の化け物や直立歩行する鰐などが闊歩する場所に突然現れたという。
いかに魔物とてテリトリーというものがあり、特にバランスを崩さないためか強大な力を持った類の魔物は自らのすみかからは出てこない。
冒険者は経験上それをよく知っていたし、それを信じてもいた。
それがあっさり破られたために有効な手段が思いつかず、倒すことはできなかったらしい。
そして、神の奇跡を願うかせめて遺体だけでもとその場に戻ったプリーストが彼女を見つけることはなかった。
物陰から隠れて様子をうかがっていたローグ曰く、ダークロードがその遺体を持ち帰ったと。
にわかに信じられるはずもなく、魔物に食われたかと思った。
せめて彼女が使っていた装備だけでも見つけたく、それを聞いた時からますます力をつけることに励んだ。
GHに巣くう魔物の情報も集められるだけ集め、頭にたたき込んだ。
そのおかげで現在の妙な状況にも何とか対処できているのだが。
彼女がいなくなって一ヶ月、今回は知り合いのブラックスミスに頼まれて鉄鉱石を取りに来ただけのはずだった。半分、息抜きしろとのブラックスミスのメッセージだと知りながら。
しかし今現在、のんびりできるような状況ではなくなっていた。

戦闘に使う歌しか知らない訳じゃない。
彼女に捧げた鎮魂歌の数は数えるのもばかばかしい。
それでも、自分にくれてやる追悼の歌は持ち合わせていない。

一番大切な人は彼女で、一番大切なものは楽器。
腕を失うわけにはいかない、リュートが弾けなくなる。
頭を失うわけにはいかない、曲を知らなければ意味がない。
彼女を忘れるわけにはいかない。人の心を失ったら、終わりだ。
自己満足であっても、助けられる人は助けたいとバードは思っていた。

しばし自分の世界に浸っていた彼の耳に話し声が聞こえてきた。
277276sage :2003/12/17(水) 21:36 ID:noItI8qU
戦闘終了後の先遣隊+α、の中のバードを書いてみました。
彼の理由、というか今後の行動を裏付けるようなものを、と思いまして。
騎士子さんの事件につきましては一ヶ月前ですし、あまり関係ないかも知れません。
この話自体本筋に関わりの薄い番外編のようなものと思ってください。
箱の人、よろしくお願いします。

>丸いぼうしさん
なんというか、セージ君すっげえ頭良いんですな……。
しかし、図書館にあった本パクったのは犯罪だ。
>黒幕
うーん、言ってることがわからんでもないですが人間にとってははた迷惑な黒幕ですね。
戦闘に入る前にお互いの信念をかけて人間側と議論して頂きたい。
27852sage :2003/12/18(木) 00:18 ID:xO0ntHco
2人の協力もあり、俺達はモンスターを撃退する事が出来た。
弓手の少女も無事のようだ。
俺は彼女に蝶の羽を渡すと、地上へと送り返した。
「これで一人救助完了……」
「流石やな、ロリコンマナたん」
「……何か言ったか?」
「いや、ワイには聞こえへんかった。多分幻聴や。」
「そうか幻聴か……」
なんだかしっくり来ないが、まぁいいだろう。
しかし……奇妙だ。
ダンジョンの約半分を捜索したにもかかわらず、救助したのはたったの一人。死体も1つしか見つかっていない。
あまりにも――少ない。
いくら先遣隊の後とは言え、これはおかしい。死体ぐらいはもう少し残っているものだ。
死体が消えてしまったのだろうか……?
そこで、俺は先程の男を思いだした。
魔術のようなもので死体を消していた……今の不可解な状況もこれなら納得がいく。
しかし、何のために?
俺が悩んでいた所に、騎士団からのWisが届いた。
回線を開き、応答する。
「こちら王国騎士団第零特務部隊所属、マナ・ラインフィールド大尉だ。どうかしたか?」
『ラインフィールド大尉! 緊急事態です!!』
切羽詰まった通信兵の声が響いてきた。


彼の話の内容はこうだ。
まず、タイムリミットは明日の昼。それまでに事態を収拾させないと地下水路からモンスターが溢れ、首都が壊滅的打撃を受けてしまうらしい。
それを止めるために、増殖の根元となっている黄金虫、及びこの計画を実行している犯人をを排除せよとの事だ。
ようやく、このパズルが完成した。
つまりは、どこぞのイカレ野郎――恐らく、あの男だ――が、国家の転覆だのなんだのを狙って起こしたテロなのだろう。
まったく……よくこんな事考えるものだ。
俺は皆に指令の内容を伝えた。溜息と感嘆の声が返ってくる。
だが一人だけ……あの司祭だけは落ち着いた表情を保っていた。
27952sage :2003/12/18(木) 00:20 ID:xO0ntHco
かなり間が空いた上に文章破綻&中途半端……ダメダメです。
猛省します_| ̄|○
280名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/18(木) 16:40 ID:q6iIviP6
丸帽氏の賢者様のネタみてアブラカダブラキタ━━(゚∀゚)━━!!
とか思ったけど違っぽいな(´・ω・`)ヒールクリップダシ
281名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/20(土) 01:05 ID:cspDH3LM
36 :(○口○*)さん :03/12/19 03:49 ID:qKXwytI8
キリキリキリ、キリ、キリ、キリリ…
「よいしょ、よいしょ」
今日もアラームたんは時計のぜんまいを回します。
アラームたんの着ている大時計の着ぐるみはすごく
重たくて、とても1人だけじゃ動かせません。
キリキリキリ、キリ、キリ、キリリ…
「これだけ回せばだいじょうぶかなあ?」
おや、どうやら悪い冒険者たちが、また時計台を
荒らしに来ているようですよ?
アラームたんは早速着ぐるみを着て、悪い冒険者を
懲らしめにいきます。
でも中には、アラームたんが髪を留めているクリップを
狙っている悪い連中もいるから気をつけて!
早速ウィザードがこちらに向かってきます。
「あ、悪いウィザードのお兄さんだ。突撃ー」
テコテコテコテコ…
「あれれ、止まらないよ〜〜」
あらあら? どうやらぜんまいを強く巻きすぎて
しまったようですね。
ウィザードがなにやらもごもご唱えると、
アラームたんの前に炎の壁が立ちふさがります。
「ううう、進めません…」
近づいても近づいても押し戻されてしまうアラームたん。
「あ、煙でてきた。どうしよう〜…」
あぶない! 炎が空から降ってきました。
「わわわわわわわ!」
プシューーーン…
どうやらまた壊れてしまったようです。
「ふぇ…また管理人のおじさんに怒られちゃう…」
しょんぼりするアラームたん。次またがんばろうね。
アラームたんが一人前になれるのは、まだまだ先のようです。

http://www25.big.or.jp/~wolfy/test/read.cgi/livero/1071739335/l50
282丸いぼうし@地上sage :2003/12/20(土) 17:30 ID:YcNDWfNE
「先生、団長がお呼びです」

外で空を見上げていると、少尉に声を掛けられた。これで、潜入の機会は、一つ減ったことになる。
僕は請われるがままに幔幕の中へと入った。円卓の周りには騎士団長をはじめとして幹部陣が
すでに席に着いていた。

「先ほど、ようやく先遣隊との連絡を取ることが出来た。」

騎士団長の顔は険しかったが、その中にどことなく安堵の色が見えた。

「だが、奇妙な報告がある。ラインフィールド隊からの連絡だ。金髪の魔導師風の男が戦場に現れ、
クルーガー中尉の攻撃を指二本で防御、逃走したそうだ。これについて意見をお聞かせ頂きたい。」

意見を聞かせるも何も、僕の発言など団長の仮定を後押ししてやるものでしかない。それほどまでに、
状況は明確だった。

「十中八九、いえ、九分九厘、奴です。いかなる頑強な人間でも、指二本で斬撃を止めることは不可能です。」

「そうか、やはり私と同じ意見だったか。」

 そんなに何人も、化け物がいてもらっては困る。だが、問題は奴が逃走した、ということ。
本気になれば騎士団の精鋭部隊といえどもそう長くは持つまい(騎士団の七割がかかっても数日かかったのだ、
少数で止められるわけがない)。となると、何か、他の理由があるはずだった。

「問題は、奴のその後の行動ですね。何か他の報告はありませんか?」

僕の言葉を受け取り、通信兵が機械の前で何事かまくし立てる。しばらくなにやら機械越しに会話をした後、
通信兵はこちらに向き直った。

「ハッ、魔法で死体を消している金髪の男を見た、と言う報告があるであります!」

 そう、これは予想の範疇だ。奴の今回のモンスター量産計画に死体は必須、僕の仮説に一つ裏付けが増えた
だけだ。

「現在の居場所を、何としてでも特定しなければな…。先生、特定は可能かね?」

おずおずとためらいがちに、団長が口を挟んだ。この人は、僕を何だと思っているのだろう。
座したままで一国を焦土に変えられる超兵器の発明者たる僕に、そんな簡単なことが不可能なわけがない。

「 十分に可能です。強大な魔法力を持った人間が存在する場合、その空間は必ず歪みます。
 似たようなケースが質量についても報告されていますが、特に魔力の場合は変化が著しい。
 その歪みをよく調べれば、位置はもちろん、魔法力の程度も大体は推定できます。」

「おお、そうか、では早速位置の特定をお願いしたい。」
283丸いぼうし@地上sage :2003/12/20(土) 17:31 ID:YcNDWfNE
 了解しました、と一言述べて「黙示録」を開く。深呼吸を一つして精神を集中し、スキャンの開始を意味する
シーケンスを叩き込んだ。
 円卓上に、漆黒の画面が現れ、グリーン色で水道内の輪郭が浮かび上がった。構成要素の魔法力を
可視化することによる、一種の透視。「黙示録」の助けを借りれば、傍目に見れば奇蹟のようなことを起こすこ
とさえ可能である(それ故に、教会はこの書を禁書とし、図書館の最下層へと封印したのだろう)。

 見事なワイヤーフレームは、中心の一カ所で大きくひずんでいて、そこに強大な魔力があることは
一目瞭然だった。水路内にはかなり高位の魔導師もいるのだろうか、小さめのピークもいくつか見受けられた。

「あの歪んでいる部分に、いるのかね?…」

そうだ、奴はそこにいる。しかし、半端でない歪み具合だ。奴の近辺の面はすり鉢状に歪み、その底は
下向きに発散していた。シュワルツシルト半径が視認可能…一体どれほどの魔力だろうか…。
冷や汗が頬を伝って、ぽたりと落ちた。

 そのとき緑色の線が、ぐにゃり、と揺らいだ。突如、けたたましい警告音を上げて画面が暗転し、
赤い文字がはじき出された。

「警告!管理者の多重ログインです! プログラムの改変が命令されました。」

何が起こったかを察する前に、「黙示録」へと停止のシーケンスを送る。しかし、赤い文字はにべもなく
僕の干渉をはねつけ、処理を続けていく。

「Haltを実行…プライオリティ0。停止できません。…改変を終了しました。再起動します――」

 侵入者の手の内に「黙示録」が落ちるまで、結果として十五秒もかからなかった。
 そして今度こそ、画面は真っ暗になった。静まりかえってしまった「黙示録」のページの面をなぞる。
反応無し。一度表紙を閉じ、もう一度開いてページをなぞる。やはり反応無し。
 一度ならず、何度も何度も狂ったように起動の動作を行い、思いつくありとあらゆる命令を叩き込んでみた。
 しかし、答えは沈黙だった。どうやら、僕が知っている方法では、もうコイツを
制御することは出来ないらしい。

 脳漿が沸騰するような、そんな眩暈に襲われ、僕はへたり込んだ。

「畜生ッ!やられた……!!!」
284丸いぼうしsage :2003/12/20(土) 17:38 ID:YcNDWfNE
今朝、目が覚めたら銀世界。

|´-`) 。o(どうやって、黒幕の目的に理論をこじつけようかな…)

|ミ サッ
285名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/20(土) 19:32 ID:IZ9b5iTo
なんて良スレなんだ
こんなにいっぱいナイスな作品が読めるなんて・・・・
丸い帽子さん、    惚 れ ま し た
286名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/25(木) 23:53 ID:hUQmpK06
ぱったりとスレが止まっている・・・
一体何が?
287クリスマスがやって来るsage :2003/12/26(金) 00:27 ID:R/V3J3aU
 ──クリスマスがやってくる。
 そり遊びの歌とベルの鳴るやかましい調べが耳障りだった。
 街を彩る血の色を基調とした装飾のたぐい、数割増しの嬉しそうな顔をした人間、
興味なんてないくせにしたり顔でミサに押しかけてくるカップル、それらすべてが私を憂鬱にさせる。
「あの、お客様が……」
 少年は扉から顔だけを覗かせて、私にそう告げた。柔らかそうな栗毛を眉にかかる辺りで刈りそろえた、アコライトの少年だった。
少年は純朴そうな瞳で私を見つめた。少年に入室するよう指示し、私はデスクを間に少年と向かい合った。
「楽になさい」
「……はい、失礼します」
 直立不動のまま、少年はぎこちない動作で私に会釈し動きを止めた。おそらく、次の私の言葉を待っているのだろう。
ちっとも楽そうには見えない体勢で、少年は必死にうつむこうとする顔を支持していた。
 少年の纏う砂色の法衣には、ほつれやしわのたぐいがまったく見当たらない。たぶんアコライトになったばかりなのだ。
私のような人間に、しかも今日のような日に絡まれる少年に、私は少しだけ同情した。
「私は、追い返してくださいと言ったはずですが?」
「それが……。どうしても、と聞いていただけなくて……」
 抑えきれない苛立ちが混じった私の声に、少年は可哀想なくらいに身を縮めて頭をぺこぺこと下げた。
私は特殊な性癖の持ち主ではないが、年端もいかない少年の怯える様子に嗜虐心が頭をもたげだすのを感じた。
「そうですか」
 私はそう言ったきり作業に戻る。少年がどのような反応をするのか、興味を持ったからだった。
 紙の上をペンが走る音、ジングルの音。沈黙に耐えられないのか、少年は今にも泣き出しそうな顔をする。
泣き出すまで放っておくのも一興、しかしそのせいで面倒な事になるのは更にめんどうなことだった。
私は一息ついて雑多に湧きあがる感情を抑え込み、少年に微笑んだ。
「ごめんなさいね。仕事が終わらないもので、少々気が立っていました」
 少年は頬を染めて、目を伏せた。楽なものだ。
「い、いえっ、ボクこそ配慮が足りませんでした」
「客人はお通ししてください」
「わかりました。失礼します」
 少年はきびきびとした動作で部屋を退出する。私はペンを置いて客人を待ち受けた。
 ガチャリとドアノブが回転し、軋みをあげて開く扉から一人の男がやって来た。
私は口をつぐみ男を見据え、男は平然と視線を受け止めこちらへと歩み寄る。沈黙が薄暗い部屋を支配した。
「……何の用ですか?」
「宿がとれなくて困ってるんですよ」
 マスファーレンは光量をしぼってあるランプをいじりながら、そう言った。ちっとも困ってなさそうな、陽気な声で。
「泊めてくれ、とでも言いたげですが」
 ランプと格闘している彼を、私は突き放す。
「言いたげっていうか、言うつもりなんですけどね。……これかな」
 ランプの光量が増し、薄暗かった部屋を暖かい光が照らしだす。
彼は満足したのか、ランプから離れた。壁際に置いてある椅子を手ずからひき、どっこいしょと言いながら座り込んだ。
「野宿するなり、他の都市に行くなりしてください」
「どうせ予定なんて入ってないでしょう。たまには先輩孝行したらどうです?」
「そうはっきり言われると腹ただしいものがあるわけですが」
「あるんだったら謝りますよ」
「……ありませんけど」
「だったらいいじゃないですか。泊めていただけませんか?」
 マスファーレンは机の上のバイブルを手にとり、ぱらぱらとめくる。
「いやです。それに私なんかのところより、ご友人のところに行ってあげたらどうですか。今の時期、先輩の名前、きっと歓迎されますよ」
 先輩の名前はトモリ・C・マスファーレンという。ファーストネームがトモリ、ファミリーネームがマスファーレン、洗礼名がC──クリス。
「もう友人のところには行ってきましたよ。歓迎もされました」
 先輩はバイブルを置いて、にっこりと微笑んだ。直視してしまい、私の胸の奥がわずかに跳ねる。
動揺したのを、悟られはしなかっただろうか。
「さて、お茶でもいれましょうかね。お砂糖はいりますか?」
「いりません」
「了解です」
 部屋が乾燥しすぎないように置いた、ストーブの上の蒸気を噴きだしているやかんを手に、
先輩はてきぱきと手際よく湯を注ぎカップとポットを温める。慣れた手つきで戸棚から茶葉の入った陶器製の器を取り出し、
温めたカップにティースプーンで三杯、乾燥してパリパリになっている赤ハーブを入れた。
充分に抽出を終えると、先輩は私にカップを渡しながら微笑んだ。
「二十六日までよろしくおねがいしますね」
「……仕方ないですね」
 白い陶器のカップは暖かく、注がれた濃い琥珀色の液体からは心地よい芳香が漂う。
 私は口をカップに付け、傾けた。先輩のいれるお茶は相変わらず、美味しかった。
288えべんはsage :2003/12/26(金) 00:36 ID:R/V3J3aU
他のスレッドで季節モノのハナシが出てるなか、なんとなく寂しく思い即興でがりがりと。
間に合わず日付が変わってがっくり。
元ネタもあったりするのですが、そのまんま文章にするのもアレだったので手を加え。
そして首吊り用の縄が必要そうな出来となってしまいました。
;y=-( ゚д゚)・∵:.

スレッドが止まってるのはたぶん、年末進行故でしょう。
話も佳境ですし、まとまった時間が取れないと書けなさそう。
289名無しさん(*´Д`)ハァハァdame :2003/12/26(金) 01:09 ID:4nUmh872
くくくくく
290プロンテラ地下上水道連作、第二次中間報告sage :2003/12/26(金) 01:44 ID:R/V3J3aU
>>111さんの書式をお借りしました。
時系列ぐちゃぐちゃですが、整理することが目的なためこのようになりました。
ていうか見辛いかもしれませんごめんなさい。


・はじまり(>>17)

・地上
■エリィト魔導師とその助手のアルケミスト&癌ばる王国軍(突入寸前?)
>>130-131,>>163-164,>>186-187,>>191,>>211-212,>>239-242,>>250-253,>>261-263,>>282-283

■一次職パーティ
>>178,>>204

・一層目
■騎士団特殊部隊
>>158-159,>>196,>>208,>>217,>>229,>>231,>>271-274,>>278
■アコプリ隊
>>117,>>148,>>159で騎士団特殊部隊と合流)
■アサシンな私とプリーストな姉
>>105-107,>>168-171,>>217で騎士団特殊部隊と合流)

・二層目
■先遣隊
(>>54-55,>>71,>>77-78,>>81,>>109,>>142,>>181-182,>>223-224,>>227,>>245
■ソロで来てたバード
>>198,>>224で先遣隊と合流,>>276
■姉妹の姉とその相方
>>97,>>119,>>121,>>154,>>181-182先遣隊と合流)

・三層目
■私とアコライトと俺部隊
>>103-104,>>151,>>160,>>166,>>206,>>209,>>213,>>215
■剣士と魔法士
>>86-87,>>95,>>101,>>144,>>174,>>190,>>192,>>209で私とアコライトと俺部隊と合流)
■姉妹の妹のアコライト(首だけの人)
>>134-135,>>139-140
■製造スミス
>>176,>>215で私とアコライトと俺部隊と合流,>>219

■傍観ウィザード
>>200-201

■クルセイダーとアサシン
>>226,>>233,>>247,>>259,>>268

・四層目
■黒幕軍団(仮称)
>>236,>>266
291丸いぼうし@三日遅れのXmassage :2003/12/27(土) 00:21 ID:eYhB98tE
 僕は一人コートの襟を立てて、彩られた街の中を歩いていた。
 店先で詩人が奏でるクリスマスソングはメロディーラインこそ陽気だったが、どことなく
寂しさを含んでいるみたいだった。

 年の瀬特有の慌ただしさと浮き足だった空気の中、僕はいつの間にか店先でケーキを買って
いた。売り子の女の子の笑顔に少しだけ励まされたけれど、やっぱり足取りは重いままだった。

「はぁ、研究室のみんなは追い込みで忙しいって言うし…」

 公園を通りかかると、ベンチのあたりでは恋人達がなにやらと語りあっている。あたりは雪も
降り出したし彼らにとっては理想的な状況のようだ。
 パキン、と植え込みのカイヅカイブキの枝を手折った。懐から空き瓶を取り出し生けてみる。
小さな小さなクリスマスツリーだ。雰囲気は出ていたけれど、自分の惨めさだけが際だって、
僕は白いため息を吐き出した。

「一人でケーキを食べるのも何だかなぁ…」

気がつくと、研究仲間のアパートの前に来ていた。振り返ってみると路面についた僕の足跡は
何処かふらついていて頼りない。仲間のアパートのドアノブには、札がかかっていた。
 Don't disturbと書いてある、ホテルに良くあるアレだ。どこからくすねてきたのだろうか。
ノックを一回する。返事なし。もう一回しようとしたとき、ドアが開いて不機嫌な住人が顔を出した。

「何だ、ケミ君か…。今日は論文の追い込みで忙しいと前に伝えただろう?。」
「あ、Wiz子さん…ケーキ食べない?」

隈だらけの目でこっちを睨むと住人は無言のままドアを閉めた。僕はまたため息をついた。
当然だろうなぁ、という後悔ともあきらめともつかない、そんな気分。そのときもう一度ドアは開いた。

「折角来てくれたのにさっきは済まなかった。寒いだろうから入れ。」

招き入れられた部屋は、乱雑だった。とても一人暮らしのお嬢さんの部屋とは思えない。
机の上の書類を少しどけ、空いたスペースにケーキをおいた。

「ちょうど一区切りついたところだ。コーヒーいるか?ブラックでいいな?。あと、ケーキくったら
 出てけよ。忙しいから。」

キッチンから声が聞こえた。僕は窓際の、一際高い書類の山の上に、さっきのクリスマスツリーを置いた。
窓から見える雪景色を背景にして、小さなクリスマスツリーはちょっぴり壮大で、かつロマンチックに見えた。
292丸いぼうしsage :2003/12/27(土) 00:24 ID:eYhB98tE
季節商品って、売れ残ると惨めですね_| ̄|○

リレーの方は、現在考えてるけど、どういう理論をこじつけても
どうにもしっくり来ません…精進します。
293とあるスレの577sage :2003/12/27(土) 09:13 ID:xO.ZxnDc
|∀・)

>>丸いぼうしさん
お疲れ様ー
リレーのほう進めたいのう
しかし約束した手前キャラを動かせない・・・
というわけでちょこちょこ別の書きながらチェックしております
まあ、ゆっくりやりましょうか
忘れてないからね
では

彡サッ
294103sage :2003/12/27(土) 13:00 ID:Ty3TxzUo
漏れも〜、どうでもい〜や。
あとまかせた。
ななしにもどるわ。
じゃ
ノシ
295名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/27(土) 15:04 ID:XXUssL1o
立つ鳥跡を濁すべからず


閑話休題。
売れ残った季節商品でも、質が良ければ買った人は幸せになれると思いますよ。
ほのぼのケミ君Good!
>>293
書いてほしいですっ!
296花のHBの中の人sage :2003/12/28(日) 07:28 ID:sJanzSfY
リレー小説が盛んで何よりです。
(流れ止めたくなくて、投稿できなかったよ_| ̄|○|||)

また少ししたら、投下しに来ますね。
完結まで何とか持っていけそうです。
___ __________________________________________________
|/
||・・)
297とあるスレの577sage :2003/12/28(日) 13:40 ID:vkrjnB2.
|∀・)

>>花のHBの中の人さん
そんなこと言わずに投稿してくださいなー
皆飢えていると思いますのでw
・・・えと、別のものをおひとつ
お口直しにどうぞ

ttp://www.geocities.jp/rumiham/arashiko.html

彡サッ
298丸いぼうし@地上sage :2003/12/29(月) 00:44 ID:W8LZMT5w
「教授、返事をして下さい!教授!」

 ケミが、耳元で大声を上げていた。世界は不確かで、ちょっとつついたぐらいで
壊れてしまいそうだった。
 理性は言っていた。これは現実だ、敗北を受け入れろ、次の方策を立てろと。
だが、感性が、執拗に頭の中でわめいていた。ウソだ、こんなのはウソだ、僕が負けるわけ
がない、今まで勝ってきたじゃないか、と。

「助手君…一体何が起こったんだね…」

「教授の大切な『黙示録』が、敵に壊されてしまったんです…。いとも簡単に…」

 そう、僕が数ヶ月かかって自分用に改造してきた虎の子が、一瞬で喰い殺された。
奴が侵入してから、十数秒…「黙示録」のシステム自体は素数を利用した暗号化を施してある。
世界中の魔導師が頭をつきあわせたって、解読には何世代もかかるだろう。それが…なのだ。

「どうして…セキュリティは完璧だったはず…」

悔しさに耐えきれず、僕はもう一度「黙示録」を開いた。ページをめくると
最初に図書館で嗅いだ埃の香りがして、ゲフェニア文字が目に飛び込んできた。

タイトルは、僕の記憶にあるものだった。ああ、元に戻ってしまった……
そう、「黙示録」は何年もの時を遡り、僕が発見した時のままの姿へと、戻ってしまったのだ。

あれ、どうして、元に戻ったんだ?

奴は、どうして、「黙示録」の元の姿を知ってるんだ?

どうして、奴は「黙示録」の暗号を一発で破れたんだ?

警告はどうして、管理者の多重ログインだったんだ?

「………!!!」

急に立ち上がった僕に驚いて、逆にケミはしりもちをついた。騎士団の皆が、異様なものを見つめる視線を
こちらに向けていた。

「わかりました…。奴の正体が、少しながら…。」
299丸いぼうし@地上sage :2003/12/29(月) 00:45 ID:W8LZMT5w
理性が、感性を支配していた。敗北感とかそういったものを数パーセクの彼方に置き去りにして、僕の頭は
本来の明晰さを発揮し始めていた。
 僕が今までどうしても理解できなかった点が、一つの線へとつながっていく。どうして、奴が黙示録の
プロテクトを破り、元の姿に戻すことが出来たのか、答えは一つだった。そして、一つの答えは一つの前提
となる。そうして定理は積み重ねられ、真理が白日の下へと引きずり出されていくのだ。

「奴は、『黙示録』の著者…正確に言えば、前の管理者ですかね。だから、奴は侵入できたんですよ。
 裏口を蹴破って侵入するんじゃなく、堂々と表から入ってきた訳です。
  その証拠に、奴が侵入したとき、『黙示録』は警告を発した。『侵入』ではなく『多重ログイン』のね…」

皆が呆気にとられたような顔をしている。この本は古代ゲフェニア時代…即ち千年以上昔に書かれたもの。
千年以上昔の人間が生きているだなんて、そんなこと誰が信じるだろうか。

「教授…気でも狂ったんですか…」
「相手は不老不死だとでも言うのか!?」

方々から、罵詈雑言ともとられかねない、いや、そのものの言葉がとんでくる。真剣な会議の真っ最中に
絵空事を言えば、誰だって怒りたくもなるものだろう。僕だって絵空事だと信じたい。だが、
これは理論的な、結論なんだ。

「そう、そのとおり奴は…多分一種の『不死者』です。だけれども、それは完全な不老不死ではない…」

何故そんなことが分かる、と誰かが言った。簡単じゃないか。千年以上生きているのは人間じゃない。
いるとすれば不死者だ。そして、奴が完全な不老不死でない理由は、僕が黙示録を使えた理由でもある。

「 良いですか、僕はこの『黙示録』を図書館で入手し何ヶ月もかけて改造した。もし、仮に奴が
『黙示録』の著者なら、黙っちゃいないでしょうね。侵入者がシステムの改変をしてるんですから。
 それにさっきみたいに、奴にとって『黙示録』を壊すだなんて赤子の手をひねるようなものだ。
 壊すデメリットは、壊さないデメリットより遙かに小さいと言えます。
  では、何故奴は僕が改造したときに行動を起こさなかったか?と、こういう訳ですよ。」

「それはとるに足らないと思ったからではないのかね?」

「とるに足らないのなら、今だって放置しておくでしょう?。だからね、行動を起こさなかったんじゃない。
 起こせなかった、と考えるのが筋道というものです。もっとも、その数ヶ月間、奴が行動さえ出来なかっ
 た理由というのは、『不死者』の存在の根幹に関わることなので、色々とややこしいのですがね。」
300丸いぼうしsage :2003/12/29(月) 00:48 ID:W8LZMT5w
ようやっと方針が固まりました。
あと数回で、一応の完結が見られるはずです。

あとほんの少しだけ、わがままな長文投稿におつきあい下さい。
301名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/29(月) 02:03 ID:5rojfXL2
>>とあるスレの577さん
サイトがっ、サイトがっ!
まとめて読めるなんて素晴らしいです。

>>丸いぼうしさん
いやはや。GJとしか言いようがありません。
教授の発言、次になにが飛び出すのかと、楽しみで楽しみで。

そしてリレーの続きを書いてみたくなっちゃったので、
290で使われてる名称を使わせてもらいつつ皆様に質問なのです。
まず、先遣隊のこれからの動向。
確か箱の人さんが続きを書くそうなのでこちらには手をつけないほうがいいですよね?
次に、ブラックスミスたちのグループについて書かれているレスの最後のほう。
クルセイダの妹について言及されているのですが、
場面的にクルセイダーが自分の妹を発見し問い詰めている、
という解釈で構いませんでしょうか?
302とあるスレの577sage :2003/12/29(月) 08:34 ID:.W/hWvDw
|∀・)

>>301さん
先遣隊の解釈としてはそれでいいと思うのですが
正直私も丸いぼうしさんががんばっているのに
なんかしなきゃ・・・という感じなので
手をつけないというのもまずいかなと思ってます
箱さんがリアル事情で急に書けなくなったかも知れませんし
リレーは原則先に書いた者勝ちですから
1月になって投稿なかったら私書いてしまうかも・・・
なのでてきとーにいじっていただいて結構です

クルセは、正直よくわからなかったのですが多分そうだと思います
いーんですよ、たのしくやりましょう
・・・と思ったら私クルーセ隊のアコライトの話を
書いてなかったことに気づきました
失礼しました、年末までにUPいたします
では

彡サッ
303名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/12/29(月) 14:43 ID:43hrgdog
リレーの続きのアイディアが浮かばず悶々と……。
うーん……。

騎士団特殊部隊に件の剣士子ぶつけてみますかねぇ。
悩むことは楽しいのですけれど、
すぐにでも何か書きたい欲求もなぁ……。
うーん……。

>>302さん楽しみにしてますー。
304204の続きとかsage :2003/12/29(月) 20:41 ID:L8JRwgyM
 プロンテラ西、上水道入り口脇の木陰で、総勢4人の女性が
言葉もなく立ち尽くしていました。
 その沈黙を破ったのは、アルケミの声でした。

「えっと……そんなとこで何をしてるの?」

 スリットのムリヤリ入れられたローブを着た、抜き身の剣を持つ少女に
アルケミは問い掛けました。
 問われた少女からは返事もなく、特にこれといった仕草もなく
やがてその沈黙に耐えかねたアルケミがアチャ子に泣きつきます。

「お姉さまぁー! この子、しゃべってくれませんー(泣)」
「うわー、私に振らないでよ!(汗)」

 アチャ子もこういった状況には弱いらしく、
助けを求めるアルケミを突っぱねます。

「ねぇ……アコライトさん? で、いいのかな?」

 今度はアコが問い掛けると、少女は首を振って答えました。

「じゃあ、その服は一体どうしたんですか?」

 この質問に対しては、また反応がなくなってしまいました。
しかしよく見ると、少女は少しだけ首を傾げるような仕草をしていました。
この少女にも答えられないのだと感じたアコは、質問を変えます。

「えっと、じゃあ。なんでこんなとこにいるんですか?
ここは……私たちが言うのもなんですけど、今は危険なんですよ?」

 この質問にも、少女は返事しませんでした。
ただ、上水道の入り口の方を、何度も覗いているようです。

「もしかして、あの中に入りたいの?」

 コクリ。少女が初めて首を縦に振りました。

「でも、あの中は今、すごーく危険なんですよ」

 アコがもう一度告げると、それでもまだ少女は
衛兵の集まった上水道入り口に、チラチラと視線を送ります。
 アコは振り返り、アチャ子とアルケミに意見を求めようとしましたが
水を向けられたふたりは両手を前に出して左右に振り、
「ごめん、ムリ。あなたに全部任せるわ」の合図を返しました。
 アコは再び少女に向き直ると、少女が手に持った剣を
何度も握り直していることに気がつきました。

「もしかして、あの中に誰か大切な人がいるの?」

 それはただの勘でした。ですが、目の前にいる少女は
すごく今の自分に似ている気がしたのです。
 少女から答えは返りません。しかし、アコは言い方を変え
もう一度、問い掛けました。

「あの中に、誰か会いたい人がいるの?」

 その問いに少女が答えました。首の動く向きは縦。
 後ろのふたりの表情が驚いたものへと変わります。
30552sage :2003/12/29(月) 23:01 ID:RNAHS/mQ
ネタ詰まりでしたが、なんとか書くことが出来ました。
書き込みの前に、差し出がましいですが一言。
個人的に、DLが生き返らせた剣士は最後に来るパーティとぶつけたらどうかな? と思います。
そうでないとなんだか最後の人たちは見せ場が無いような気がするので……
あくまで個人的な意見ですので、無視してもらっても結構です。

では、つたない3流文士ですが、これからもよろしくお願いします。
30652sage :2003/12/29(月) 23:01 ID:RNAHS/mQ
「司祭、何か知っているのか?」
「えぇ……これを見てください」
そう言って、司祭は先程の古びた書物を取り出した。
それを開く。どうやら教会によって作られた調査書らしい。
「14年前の事件をご存じですか?」
司祭がそう問いかけてきた。
14年前というと……俺達の所属する『王国騎士団第零特務部隊』が設立された年である。
だが、それ以外のことは俺の記憶の中にはない。
もっとも、14年前、俺は首都にはいなかった。
その頃俺は……
――あまり思い出したく無いことを思い出しそうになってしまった。
心に残った嫌悪感を振り払い、司祭との会話を再開した。
「いや、俺は知らない。何があったんだ? 教えてくれ。」
司祭は調査書のページをめくり、語り始めた。
「14年前……ちょうど現在の状況とほど同じ事件がありました。
 地下水道からモンスターが溢れ出し、首都は混乱に包まれました。
 鎮圧に当たった騎士団もほぼ壊滅。人々はもはや生きる望みすら失いかけていました。
 しかし、残った騎士団の活躍により、事件は解決されたことになっています。表向きはね……」
一度、司祭は書物に視線を戻す。
「GHからのモンスターの侵攻、生き残った人々にはそう説明されました。
 ですが実際は、ある人物の実験の副産物に過ぎなかったのです」
「……どういう事?」
暗殺者の女性が、眉をひそめる。
司祭はさらに続けた。
「この文献には名前は残っていませんが……当時、一人の男がいました。
 彼は優秀な魔術師であり、科学者でした。
 ある日彼は、一つの論文を発表します。
 その内容は……」
「不老不死……やろ?」
司祭がびっくりしてハンスを見る。
いや、司祭以外にも、その場にいたほとんどの人物が一斉に彼に視線を向けた。
「いや、ワイは昔アルケミストになりたかったからな、その辺りのことは一通り覚えとんのや」
少しおどけた口調で彼は言った。
「確か……大量の生命エネルギーを体内に取り込むことで肉体を半永久的に保つ、ってやつやったと思う」
「そうです、ですが当時の学会はそれを論理に反すると言って彼を学会から追放しました。
 その後彼はしばらく行方不明でした……しかし14年前、突然姿を現し、その実験を始めたのです。
 自分の肉体を不老不死にするために……ね」
それが、事件の発端らしい。
自分を捨てた者達への報いか、それとも自らの理論の証明か。
理由はいろいろあるにせよ、彼はその禁忌とも言える実験を始めてしまったのだ。
「先程ハンスさんがおっしゃられた生命エネルギー、それを集めることから実験は始まりました。
 地下水道を一種の培養槽に見立て、そこから大量の生物を作り出しました。
 まずはそれから生命エネルギーを摂ろうと試みたのですが、それには多くの労力を必要とします。
 そこで彼は作り出した生物を新しいエネルギーを集めるための兵隊として使ったのです。
 そう……新しいエネルギーとは人間のエネルギーですよ」
場に冷たい空気が流れる。
人の命を使い、不老不死になる。
それがどれほど恐ろしいことかは容易に想像出来るだろう。
「後は先程言った通りです。
 モンスターが溢れ、首都は壊滅状態に陥りました」
だが、今でも街はある。事件は解決された訳だ……だがどうやって?
ちらりと司祭を見る。彼はさらにしゃべり続ける。
「犯人を特定した騎士団は、不老不死になっている彼を倒す方法を探し始めます。
 その時、彼の弱点が銀で出来た武器だということが判明しました。
 そして作られたのが……これです」
そう言って彼は金属の棒を取り出した。
どうやら銀で出来ているようだが、形は無骨な杭そのものだった。
彼は紫苑にそれを渡す。受け取った紫苑は彼の代わりに話し始めた。
「これは古代に作られた特殊な銀……ミスリルってので出来てるの。
 強力な魔力が付加されていて、特にアンデッドに対してはすごく強力な武器なの」
「そして残った騎士団の一人が、男にこれを突き刺し、事件は終わりました……」
つまり、今回の事件は14年前の事件の再来という訳だ。
ただ一つ違うことは、黒幕である男がまだ死んでいないこと……である。
いや、それともう一つ。
まだ首都には被害は出ていない。恐らく人々はいつも通り平和な生活を送っているのだろう。
それを破壊させてはならない。
『王国の危機を未然に、かつ隠密に取り除く』
ふと、隊の設立理由の一つを思い出した。今こそがそれを実行するときだ。
そのためには、一刻も早く奴を排除しなければいけない。
刀の柄を握りしめ、歩き出す。
もはや希望など持たない。
俺達は今、俺達に出来ることを精一杯やるだけだ。
307とあるスレの577sage :2003/12/30(火) 00:06 ID:wBO42j8c
|∀・)

ふむふむ・・・
さてわたしも投稿

彡サッ
308とあるスレの577sage :2003/12/30(火) 00:06 ID:wBO42j8c
ああ・・・もし聞こえるならば
アコライトさま聞いてください!
以前ご相談した内容を覚えていますか?
私のお母さんと10歳年下の剣士さんが
愛し合っているということ
結婚するかもしれないということ
あのお話は一番悲しい結末を迎えてしまいました
そう、つい先ほど・・・

「なんだよ・・・これえええ!!!!」

私がアコライトになってから
剣士のお兄さんはいっそう親切にしてくれ
私のことをいろいろなところに連れて行き
かばってくれました
その戦う姿を見て
この人のことをちょっと好ましくおもい
そしてお母さんにちょっとだけ嫉妬していました
でも今はもう
そんなことを考えた私を恥じています
そう・・・剣士さんが死んでしまった今では

彼の叫び声に振り返った私の眼に
蝙蝠や盗虫がなかなか現れない上水道の中に
いきなり大きな手が現れて
剣士さんをむんずとつかむ光景が飛び込んできました
なにかつぎの言葉を発する前に
その巨大な手が彼の鎧ごと握りしめ
ごぽっと言う音とともに
彼の口から出てきたものは
赤黒い血の塊でした
私が恐怖に固まっていたところに
死に行く剣士さんから発せられた一言は

「愛していたと・・・つたえ・・・て・・・」

その時さらに力を込めた窓手によって
血となにかを口から噴出して
できの悪い人形のように首をガックリと垂らした
その場面から逃げ出すようにして
私は走りました
近くに居た白い鎧の聖騎士さんが
戦っている後ろに回りこむと
眼をつぶってがくがくと震えて居ましたが
お尻を蹴られて

「ヒール!、ヒールしてっ!」

と怒鳴られたことによりスイッチが入った
壊れかけの私は
馬鹿の一つ覚えのように
精神が限界に達するまで
聖魔法の詠唱を繰り返していたのでした・・・

-------------------

「で、どうするんだ・・・」

BSさん達の休憩を兼ねた作戦会議が続いていきますが
私はもう何も考えたくなくて
座り込んだまま組んだ腕の中に自分の頭を
突っ込んでいました
泣こうとしても泣けず
ただ指先だけがぶるぶると震えます
なんでクルセのお姉さんは私に蝶の羽をくれなかったんだろう
あの男の子だって初心者かもしれないけど
私だって初心者のようなもの
なんで私ばかりこんな目に・・・
そんな風に考える私は
嫌な女かもしれませんが
でも何をしても帰りたかったというのが本音です
あんな風に殺されるのだけは嫌
お願いします神様
もしも私の願いがかなうならば
せめて眠っている間に
痛みを感じないように貴方の元へ送ってください

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

座り込むアコライトを
気の毒に思う気持ちはあるけれども
今はそんなことを言っていれないクルセは
装備を確認しながらなんとなくそちらのほうを
ちらちらと見遣ります
いまは少しの休憩を
彼女に与えてやりたい
しかしその視線を疎ましく思うのか
さらに自分の中に閉じこもろうといった感じで
体を縮める少女を見て
白い女騎士はそっとため息をつくのでした・・・

-------------------

「ふふふ・・・あの子帰ってきたら驚くかしら?怒るかしら?それとも喜んでくれるかしら?
“貴方に弟か妹ができるのよ”っていったら・・・」

プロンテラのとある家で
長いすに座った女性が
そのお腹をなでながら幸せそうにつぶやいています
一つの命が失われ
一つの命が生まれる
そんな神様の悪戯としか思えないような運命が
自分の身に降りかかってくるとは露知らず
アコライトのお母さんは可愛い靴下を
自分の子供のために編み続けるのでした・・・
309丸いぼうし@地上sage :2003/12/30(火) 00:52 ID:CCZOQKAY
「待ってくれ、理論が飛躍しすぎて話の筋が分からない!。不死者とか、著者とか、いったい何の話を
 しているんだ!?。もう難しい話はたくさんだ!答えを教えてくれ!」

 誰かが耐えきれなくなって叫んだ。徒に結論のみを求めようとしてはいけない。
最近の学生にもこういうのが結構いるが、過程を見なくては学問の楽しみの九割はないみたいなものだ。
 とはいえ、僕も喋りすぎて少し疲れてしまった。それに、彼らが辟易して話を聞かなくなってしまっては、
折角の特別講義(しかも、大学と違ってノーギャラだ)も全くもって無駄になってしまう。
 ここは一つ、対話的に講義を進めていくのが良いだろう。

「ふむ、それでは、僕は疲れたのでアコさんに不死者の説明をして貰いましょう。」

 急に指名されて、ポンコツがびくり、と肩を震わせた。すぐに親の敵でも見るような目つきになって
こちらを睨み付けてくる。どうやら本格的に嫌われているらしい。

「私は『不死者』に関して異端がどう考えているなんて知りません!」

「どうぞ、教会で習ったとおりに喋って下さい。」

予想外の答えに驚いたのだろうか。少し黙って、周りを見回し、ポンコツはおずおずと口を開いた。

「…異端者の命に従うのは不本意ですが、こうやってお話しするのも神の意志かもしれませんから
 お話し致しますね。
  えーと、不死者というのは、ゾンビとかレイスとか、そう言った亡霊みたいなもののことです。
 彼らは神や人を憎む心を糧として、死後も魂を体に留め続け、動き続けているんです。
 しかし、ひとたび祈りに触れたならば、その悪しき魂は浄化され、灰のように崩れ去るのです!。」

まぁ、教本通りの解説だ。僕が教会の担当者なら「可」ぐらいはくれてやろう。だけれども、
僕らの考えからすれば、トンデモ以外の何者でもない。学生でこんなレポートを書く奴がいたら、
レポートでなく本人の額に「不可」の印をくれてやろうと思う。

 内容はさておき、僕の試みはいったんの成功を見せた。彼らの範囲で理解できる話が気分転換に
なったのか、深く頷きながら聞いている団員なんかもそこかしこに見られる。とはいえ、あまりまかり
間違った言説を並べられてもアレなので、そろそろポンコツには黙ってもらわないといけないだろう。
 僕は、手を前に出してポンコツがそれ以上喋ろうとするのを制止した。
310丸いぼうし@地上sage :2003/12/30(火) 00:54 ID:CCZOQKAY
「はいどうもありがとう。アコさんは大変教科書に忠実に喋ってくれたので、僕の仕事は補足だけですね。

  憎む心、とアコさんは言いましたが、それは一種の論理回路です。たとえば、我々は脳でものを考え、
 体を動かしている。大体の動物だってそうでしょう。だけれども、必ずしも脳でものを考える必要は
 ない。下半身が考えても、シリコンチップが考えても、ノープロブレムです。
  例を挙げるなら…そう、レイドリックとかがそうですね。アレは鎧に刻まれた回路がものを考え、
 鎧自体を動かしている。古代の王都防衛機構の一つですが、良くできてるものです。
  不死者もまた然り。もし脳が腐り果てていたとしても、別の寄生生物…教会の言葉を借りれば
 『悪しき魂』が思考し、死体を駆動させていけば、問題なく『生きていける』訳ですね。

  ところが、体が腐りきって無くなってしまうと、これはどうにもならない。思考できたところで
 体がなくては行動できない。そうすれば、寄生生物とていずれは死に至る、と。
  だから、不死者達は体の劣化を早める紫外線…日光ですとか、ホーリライトの類ですね…を避けるわ
 けです。

  つまりは、不死者といえども、肉体の劣化という死からは絶対に逃れ得ることは出来ないのです。
 そもそもこの世界、いや宇宙自身、エントロピーの増大による熱的な死を避けることが出来ないのです
 から、不死者が死んだって何の不思議もない。」

ギリ、とポンコツが歯ぎしりをする音が聞こえた。ダシにされたのが余程悔しいのだろう。だが、
筋の通った反論は、教会側の人間には無理なことだ。教会の人間はアジ演説をぶつのに
腐心して、理論的裏付けなんぞ考えてはいない。僕も十代の頃は教会の論客と討論したことも
あったが、彼らの幼稚な強弁とレッテル張りには全くもって閉口したものだ。
 その点、言い返せないこのポンコツはまだまだ可愛い方ではないかと思う。

 僕が言葉を切ってからしばらくのあいだ、誰も喋らなかった。沈黙は肯定と読み替え、僕は話を
続けることにした。

「 ところが、千年の歳月を経て残る死体なんてのは、なかなかありません。死蝋だとかミイラだとかの
 類は組織がもうダメになってしまっているので、使えませんしね。
  しかし、数年前、ルティエの永久凍土でものすごく偉大な発見がありました。氷漬になった数万年前の獣
 の死体が見つかったのです。非常に状態が良くて、多分あれに寄生生物がとりついたら、まぁ、厄介な
 ことになるでしょうな。ハティーの祖先とも言われている凶暴な獣だそうですから。

  このことは、極低温状態であれば、かなり長期的な『不死』が可能なことを示唆しています。
 とくに、今回の相手は斬撃を指二本で止めたそうじゃないですか。それは絶対に、腐った死体の出来る
 事じゃあ、ないんですよ。」

「つまり、教授は…奴が永久凍土の中からよみがえったと、そうおっしゃりたいわけですか?」

 ケミは理解の程度は良いようだが、どうにも結論を急ぐ癖があるようだ。反対に、周りの連中は
慎重に結論するが、理解の程度は良くない。なかなかそのあたりは難しいバランスだ。

「 ケミ君。永久凍土の中にいたら、何時掘り返されるか分からない。そんな賭けを奴がするだろうかね?
 それに、その考えだと矛盾が出てくる。
 僕が黙示録を掘り出したのは、十年ぐらい昔だったはずだが、十四年前に何が起きていたかね?」
311丸いぼうし@地上sage :2003/12/30(火) 00:54 ID:CCZOQKAY
 あ、と声を上げたきり、ケミは沈黙してしまった。そう、自然に起きたことではなく、十四年ぶりのこの
覚醒も奴の仕組んだことなのだ。そして、不完全な不死者である奴の目的はおそらく…

「では、奴は人為的に体を極低温状態においていたと言うことですか!?」

少尉が挙手をして声を張り上げた。なかなか明晰な頭脳だ。

「正解です、少尉。ストームガストなどの極低温魔術(クライオソーサリー)は古代ゲフェニア時代には確立されていた
 と考えられています。だとすれば、奴が極低温魔術を用いて自らをいわば『冷凍睡眠』状態にしていたとし
 ても、何ら問題はないわけですよ。つまり、僕が『黙示録』を改造していた期間は、奴が氷の中で眠っていた
 期間と被っていた、と、これが僕の出した結論です。」
312丸いぼうしsage :2003/12/30(火) 01:16 ID:CCZOQKAY
 これであとは生命エネルギーの本質とDLとの融合(あと、ミスリル銀)を如何に上手く説明
するだけ…ですが、結構難しいなぁ…。

 最初は「魂の量子化」とか考えてたんですが、計算機が計算機自身に
言及する演算ってのやっぱりダメポなので却下。

次にDLに電極埋め込んで意識共有して制御とか考えたけど、さらに破綻したので却下。

306(52)さん:
核心に迫る物語GJ。最初は読んでいるうちに
「うわぁ…現在書いてるのと矛盾が出てきちゃった…ドウシヨウ」と思ったのですが
読み返してみたら、新しいアイデアが電波キターとなりました。
 おかげで続きがうまく行きそうです、ありがとう。
31352改め三流文士sage :2003/12/31(水) 23:11 ID:SLgfhZ0A
大晦日にちなんだ小説を書いてみました。
今の下水道シリーズとは全く関係ありませんので、ご了承下さい。


Behind the Scenes

「…………」
全身の神経を研ぎ澄ます。
勝負は一瞬。早くても、遅くてもいけない。
その一瞬を見極める。失敗したら全てが終わりだ。
まだだ……後少し……
……今だ!!
俺は網を素早く掴み、鍋の中の蕎麦をすくい取った。
それを冷水の入ったボウルに開け、水洗いする。
ぬめりがとれた後に、蕎麦の一本をつまみ、すする。
「……どう?」
紫苑が不安そうに聞く。その問いに、俺は一拍置いてから答える。
「……完璧だ」
「流石やなマナたん」
「マナたんって言うな」
いつものセリフを1秒で切り返す。
「とにかく、のびる前にに食うぞ」
そう言ってザルに蕎麦を盛りつける。
その様子を、あの少女が不思議そうに見ていた。
蕎麦を見たことがないのだろうか?
無理もない、蕎麦は最近ミッドガルドに入ってきたものだし、食べる機会など滅多にないのだから。
頭に?マークを浮かべたままの少女に、紫苑が語りかける。
「あのね、これは『年越しそば』って言って、来年も細く長く生きられるようにお願いしながら食べるものなんだよ」
「そや、元々はアマツの習慣やな」
簡単な説明だが、彼女は理解したらしい。
そう言えば以前から、何か教えると彼女はすぐに覚えてしまう質だった。
元来、物分かりのいい性格なのかもしれない。


ほどなく盛りつけも終わり、机の上に蕎麦が並べられた。
「ほな、食べて! 飲んで! 騒ぐでー!!」
「……まだ仕事中だぞ、俺達は。それに『飲んで』って何だ」
ピタリとハンスの動きが止まり、自分の机の中から何かのビンを取り出した。
「じゃじゃーん! これやっ!!」
ハンスが取り出したビン。それには『銘酒 天津の寒梅』と書かれている。
つまりは……酒だ。
「……仕事中だと言っただろう?」
俺はハンスを睨みつける。しかし当の本人は全く気にした様子はなく、コップに酒を注いでいる。
こうなったらもう止められない……ハンスのことは諦め、俺は早く蕎麦を食べることにした。
箸で蕎麦をとり、その3分の1ほどをそばつゆにつけ、一気にすすりこむ。
美味い。のどごし、歯ごたえ、つゆのそれぞれが非常に高いレベルで完成している。
我ながら上手く作れたものだ。そんな自己満足を感じながら淡々と蕎麦をすする。
隣の少女を見ると、最初は慣れない箸に苦戦していたものの、すぐに慣れ、黙々と蕎麦を食べている。
紫苑はと言うと……
「マ〜〜〜〜〜〜〜〜ナっ♪」
やたら上機嫌で俺にすり寄ってきている。
……何か様子がおかしい。
「ど、どうかしたのか?」
「ん〜ん、ぜんぜぇん大丈夫だよぉ♪」
大丈夫じゃない、絶対に大丈夫じゃない。
よく見ると、紫苑の手には先程ハンスが取りだした酒瓶が握られている。
しかも、中身がもう半分以上なくなっている。
一体どういう飲み方を……
視線を動かすと、酒を奪われたハンスが部屋の隅でいじけていた。
……何となく哀れだ。
「ねーねー、お酒飲む?」
目を離していた隙に、紫苑は少女にまで酒を勧めていた。
「お、おい。ちょっと「どうぞどうぞー♪」
俺の制止を振り切り、紫苑は少女の口元に酒の入ったコップを押し当てる。
少女はしばらく不思議そうにしていたが、やがて彼女はコップに入った液体を一気に飲み干した。
「なっ……!?」
つい、声が漏れてしまった。
余程肝が据わっていない限り、10才ほどの女の子が一気飲みをすれば誰だって驚く。
「うわ〜♪ すごいすごい〜♪」
しかし飲ませた本人は驚くどころか喜んでいる。
完全にキマっているらしい。
「おい! 大丈夫か?」
少女がなんとか俺の顔を見る。が、すぐに机に突っ伏して眠り込んでしまった。
「……言わんこっちゃない……」
顔に手を当て、溜息をつく。
「ねーねー、マナも飲もうよ〜」
「飲まない、一応仕事中だからな。それにアルコールは体に悪い」
そう、俺達には大晦日も正月もない。
出動がかかればいつだって現場に駆けつけなくてはならないのだ。
……もっとも、今の状況では出動出来るのは俺一人だけだろう……
「何よー! 私の酒が飲めないのー!?」
「飲めない」
反射的に切り返す。ハンスとの掛け合いの成果だ。
「じゃあめいれいー、のみなさーい!」
「階級が下のお前が俺にどうやって命令するんだ?」
そう言って紫苑を引き離す。
と、紫苑の目に涙が現れた。
「……マナは私のこと大切に思ってないんだ……」
「……はい?」
いきなり訳の分からない事を言い出す紫苑。
「私のこと大切に思ってないから……お酒飲んでくれないんだ……」
まったく筋の通っていない理論。しかし、涙声で言われるとやけに説得力があるように思えてしまう。
「どうして……私のこと……ぐすっ……」
ついに涙をこぼして泣き始めてしまった。
慌てて俺は紫苑の機嫌を直そうと声を掛ける。
「わ、分かったから泣くな」
「……じゃあお酒飲んでくれる?」
「うっ……」
流石にそれは難しい。
飲めない訳ではないが、あまり好きではないし、それに昔、『酒は体に悪い』とある人に教わったからだ。
「……勘弁してくれ、頼む……他に何でもするから……」
「……ほんとに?」
途端に紫苑の顔が明るくなる。
「じゃあね、じゃあね……」
「何だ?」
紫苑が俺に詰め寄る。
「キス……して」
……俺はとんでもない失言をしたことを後悔した。
「……イヤなの?」
「い、嫌という訳じゃないんだが……」
「じゃあ早くしてよ……」
もう泥沼だ。ここで断ればもう俺には止めようがなくなるだろう……
目の前には潤んだ瞳で俺を見つめている紫苑。
少女は眠っているし、ハンスは落ち込んだまま撃沈している。
……やむをえん。ここは腹を決めるしかない。
「……目、閉じろ」
「うん……」
素直に紫苑が目を閉じる。
俺も目を閉じ、そっと顔を近づける。
心臓がやけに大きく鳴っている。普通より鋭い自分の感覚神経がこのときだけは恨めしい。
そして、唇が重なろうとする――
その瞬間、紫苑の体が崩れ落ちる。
「……?」
顔を覗き込むと、すぅすぅと安らかな寝息をたてている。どうやら眠ってしまったらしい。
俺は安堵の溜息をつくと、紫苑と少女に毛布を掛けてやった。
ハンスは……体が丈夫だから何とかなるだろう。
蕎麦のザルを片付け、一息ついて椅子に座る。
その時、不意に時計が鳴った。
見ると時刻は12時。新年の幕開けだ。
椅子から立ち上がり、なんとなしに窓際に向かう。
空には蒼く光る月と瞬く星々。
まるで新年の門出を祝っているようだ。

さて……今年はどんな年になるのだろう――
314245の続きかなsage :2004/01/02(金) 18:23 ID:U/RAn4J.
「なるほど……ね。大体の状況はわかりました」
「わかったの?」
「ええ、特に目新しい情報もなければ、この事件の裏も一切不明のまま。ついでに現状の戦力も心許無いってことがね」
「それ、わかったって言うのかな……」

 まぁ、自分で言ってて頭が痛くなる話だけれど。
 戦いの後、私たちはパイプ同士を繋ぐ連絡通路に敷かれた金網の上で、疲労を抑えるために休憩を取っていた。
 その間を使って、巻き込まれた形になった詩人の青年への説明も兼ねて情報交換を行い、今後の方針を決定しようと思っていたのだが……。先遣隊の持っていた情報は私らとほとんど変わらない、むしろ少ないくらいだった。
 状況も依然最悪のまま。魔物があとどのくらい残っているかまったく不明ならば、救出すべき人間がどのくらい残っているかも不明。もちろん、私の妹の生死に関しての情報も皆無。
 さらに、今の戦いで先遣隊に負傷者が出た。傷は癒したけれど、意識が回復していない。彼を連れての進軍はかなり危険。ただでさえ戦力に不安が大きいというのに……。
 まぁ、もともとの予定が変わった訳でもない……か。

「さて……、これからどうするかですが」

 私の声に、周囲の注目が集まる。こちらからもぐるっとみんなの顔を見回してみれば、どの表情にも不安の色が隠せないでいる。

「これ以上奥へ進むのは危険ですので、先遣隊のみなさんにはここで帰還してもらおうと思います」

 思った以上に辺りの反応は静かだった。誰もが気付いているのだろう。もう私たちの手に負える状況ではなくなっていることに。

「アンタたちはどうする気なんだ」
「私たちにはまだ、やらなくてはいけないことが残っていますから」
「ふたりだけでかい? それこそ、危険すぎるんじゃない」

 ローグの青年から向けられた問いに答えると、今度は暗殺者の女性が口を開いた。
 彼女の言うことはもっともだとは思う。これだけの人数が居ても、たった一度の戦闘で大きく消耗してしまった。それだけ魔物の数は途方もない。
 けれど私たちの目的はそれらの殲滅ではない。あくまでも、妹を含む要救助者を助け出すこと。ならば戦闘は最低限でよい。必要なときに必要な戦力を。

「ええ、ですから。恥ずかしながら、私たちだけでは少々不安が残ります。そこで」
「アタシたちの中から、連れて行きたいヤツがいると」
「はい」

 気付けば、暗殺者の女性と向かい合い、一対一で話しているような状態になっていた。鋭く、相手を逃さんとする瞳。
 彼女が先遣隊のリーダーであることには間違いはないだろうから、これでさして問題がある訳ではないけれど。
 彼女は牽制しているのだ。私たちと共に行くということは、今まで以上の危険が待っているということ。誰だってもう帰りたいのが本音だと思う。それを連れて行こうというのだから、この視線も仕方がない。
 私は一度息を吐き、目を伏せながら言葉を継いだ。

「もちろん、断って頂いても構いません。強要はできないことを承知した上で、お願いしたいと思います」

 そこまで一息で口にしてから、まぶたを開いて彼女へと振り向いた。

「私たちに協力して頂けますか? ウィザードさん」
「……はい」

 彼女もまた、真っ直ぐに私を見詰めていた。予感があったのだろう。強く、決意を秘めた瞳だった。
315名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/03(土) 06:17 ID:8UAIHo8k
連作とは関係ないものをちょろちょろっと投稿。
リレーの続き待ちのひと、ごめんな。
316午睡(1/2)sage :2004/01/03(土) 06:17 ID:8UAIHo8k
 ゲフェン北東の湖畔。橋のたもとの大樹にもたれて、俺は大きなあくびをした。
 工房に篭ってばかりに倦んでくると、俺はここに露店を出す。風通しの良い水場で程よく涼しく、景色も上々。
 ここに主に棲息するホルン――大顎を備えた巨大クワガタだ――はこちらから手出しをしない限り襲ってくる事はない。
 だから警戒をする必要もないくて、息抜きには絶好のシチュエーションだ。
 俺がもうひとつあくびをしていると、こつんと肩に重みが乗ってきた。隣に座る従妹の頭だ。
 ふたり分の弁当持参でくっついて来たのだが、昨夜はあまり眠っていないから疲れていたのだろう。
 昼食を終えて十数分、話が途切れてふと見たら、すっかりと寝入ってしまっていた。
 寝かさなかった張本人としては、どうも起こすのもすまない心持ちだ。
 ざわざわと頭上の葉を揺らして風が行く。初夏の日差しは暑いと言うよりもまだ暖かい。
 寝顔だけ見ていれば、熟練の騎士にはとても見えない。
 やわらかな頬を突ついてみる。うぅん、と身じろぎして、けれど予想通り目を覚ます気配はない。
「まったく、仕方のない奴だな」
 俺に付き合うよりも仲間と狩りにでも行けばいいだろう、と言ったら、「なんでそういう事言うのよっ」と怒られた。
 被虐嗜好があるわけじゃあないが、そういう彼女の気持ちが嬉しい。
 どうも身動きを禁じられてしまった風情だから、しかたなく俺は傍らの花を摘む。
 茎と茎とを重ねて編んで、花冠をこしらえる。昔不器用なこいつが欲しがって、よく作らされたものだ。
 仮初めの恋と呼ばれる装飾具に似せたこれを被って、嬉しそうにはしゃぎ回っていたっけ。
 彼女はまだすうすうと、心地よさげな寝息を立てている。
 退屈紛らわせに編み上げてしまったが、さてどうしたものか。考えながらくるくると指先で回し、そしてカートに放り込む。
 こいつとの仲は、別に仮初めって訳じゃあない。
 穏やかな呼気と一緒に、さらさらと栗色の髪が俺の首筋をくすぐる。引き込まれたのか、俺まで眠くなってきた。
 もう少ししたら、叔父貴のところへきちんと挨拶を済ませに行こう。ぼんやりした頭で、そんな事を考える。
 肩にかかる彼女の重み。
 この感触を、いつまでも支えていたいと思った。
317午睡(2/2)sage :2004/01/03(土) 06:18 ID:8UAIHo8k
 ふっと目を覚ますと、そこは見慣れた宿でも従兄殿の寝室でもなかった。
 背中に木の感触。水と草の匂い。右側に馴染んだぬくもり。眠たい意識が醒めてくるにつれて、自分がどこにいるのかを思い出す。
「えっと・・・」
 起きたはいいが身動きがとれない。わたしは従兄殿の肩にもたれて眠ってしまっていたらしくて、そこまでは別にいいのだけれど。
 もたれたわたしに寄り添うように頭を預けて、従兄殿も寝入ってしまっている。わたしが動けば従兄殿は当然支えを失う訳で。
「・・・わかったわかった」
 突然に従兄殿が寝言を言う。どうやらわたしの夢を見ているらしい。
 声の調子がわたしの我がままを容れてくれる時のものそのままだから、まず間違いはない。
 ・・・これで他の女の夢なんて見ていたら、許さないけど。
 しばらく逡巡してから、わたしはやっぱり頭を抜いた。ずるずると従兄殿の身体が倒れてくるのを、上体だけひねって受け止める。
「よいしょ、っと」
 目を覚ましてしまわないように気をつけながらゆっくり身体を倒していって、崩して座るわたしの膝で膝枕。
うん、予定通り。
 しかしまあ、随分とよく眠っている。これじゃあ露店の品を盗まれたって、気付かないに違いない。
 男のひととは思えないくらい、細くて綺麗な手指。本当に色々な細工物を生むその指は、私からすれば魔法の指だ。
 なんとなく触れたくなって手を重ねると確かな温度が伝わってきて、それだけでにんまりしてしまう。
「――子供みたい」
 キスしてしまおうか。そっと唇を寄せたその時、
「あ・・・」
 草を踏みしだく音と同時に、小さく声が聞こえた。はっと顔を上げると、目の前にはひとりのアコライト。
 大樹の丁度反対側からやって来たのだろう。お互い幹が死角になって、この距離まで気付かなかった訳だ。
「・・・」
「・・・」
 二人とも、咄嗟にかける言葉が出ない。自分の顔が赤らんでいくのが判る。
「す、すみません、お邪魔しました! お幸せにっ!」
 わたしも恥ずかしかったけれど、向こうも十二分に気まずかったらしい。
 青色の長い髪を流れ星の尾のように曳いて、彼女はぱたぱたと大慌てで駆け去っていく。
「う〜・・・」
 照れ隠しで鼻を掻いてから目線を下ろすと、わたしの膝で、従兄殿はまだ眠りこけていた。
「・・・『お幸せに』、か・・・」
 枝を揺らして、心地よい風が通り過ぎて行く。日差しはのどけく暖かい。
「――幸せにしてよね、従兄殿」
「・・・わかったわかった」
 そっと囁くと私の最愛のひとは、絶妙のタイミングでそう寝言した。
318名無しさん(*´Д`)ハァハァage :2004/01/03(土) 16:15 ID:6s1hfryU
>316-317
GJ!(*´Д`)
リレーだけじゃ寂しいし、こういうのどんどん読みたいなぁ。
319名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/03(土) 17:29 ID:tKbf1kUo
>>316-317
こ、これはっ! (゚Д゚)<キ……、キタ―――(゚∀゚)―――ッ!!
なにも言うことはありません。
(私的に)最高のカップリングに最高のシチュエーション。
なによりなにより 従 兄 殿 。
あの二人の続きが読めるなんて夢にも思いませんでした。
おいしかったです、ごちそうさまー。

リレーもすっごい楽しみだけど、短編っぽいのも気後れせずにUPして(゚д゚)ホスィ
贅沢かもしらんけど。
320(^ー^*)ノ〜さんsage :2004/01/04(日) 07:41 ID:nO.saLYU
>>316-317
キタ━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━!!!
GJ!最高でつ(つд`)
保存完了。
321丸いぼうし@最後の講義sage :2004/01/04(日) 12:29 ID:iqBb6lNE
長くなりすぎたので、使ってなかったWebスペースにうpしました。

http://members.at.infoseek.co.jp/mstar0/last.htm

展開が性急すぎますし、ちょっと理論が曖昧っぽくてアレですが
教授達のお話はこれにて完結です。今まで長文におつきあいいただき、
どうもありがとうございました。

(´-`) 。o(エロはおけないけれど、今まで書いたものとか、補完するのに使おうかな…)
322名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2004/01/04(日) 21:04 ID:p/NoO7/U
 \  :::::::::::::::::,ー――――一'´   ヽ:::::::::|     /  / ̄ ̄ ̄\
   \::::::/━━━      ━━━  |:::::::::|    /  ( ((((((^^))))
    \/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ===/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ.|:::::::::|   /     |ミ/  \  /|
     .\ -=・=-  |  |  -=・=-  ロ=:::::::|  /    (6 ー[¬]-[¬]
       \     /  ヽ      /ヽ::::::::| /.      | <     」  >
    ブヒヒヒ  \´/    `ー―一´  ヽ::::|./   __| ||||  (ー) |
  ._/)_/)_.\●_●)        |:::/   (__/\___/
 (∴)◎∀◎(∴) .\|      ∧∧∧∧∧   / (__))     ))
⊂) ̄ ヲタラー ̄(つ  .\--.<     ヲ  >[]____| | ラブヒナ命| |
 (~ ̄ ̄ ̄) ̄ ̄~)     \<     タ  >|]   | |_________| |
 (____)___)      <  予  ス .> \_.(__)三三三[]__)
――――――――――――<     レ >――――――――――――
彡川川川三三三ミ〜〜〜〜 <  感  の >==========/ ̄ ̄ ̄ ̄\=
川|川 \  /|〜〜〜〜<.  !!       >========.(  人____)
‖|‖ ◎---◎|〜〜〜〜 /∨∨∨∨∨\=========|ミ/  ー◎-◎-)
川川‖    3  ヽ〜〜〜 ./::::/ ,,;;;;;;;;;;;;;;;   \======(6     (_ _) )
川川   ∴)〆(∴)〜〜 /:::┏━━━━┓  ┏\=====|  ∴ ノ  3 ノ
川川     〜  /〜〜 /|::=ロ   -=・=- ┣━┫-=\====ゝ       ノ=
川川‖      /リ〜〜 //|:::/ヽ      /ノ  ヽ    \/   PS2   \
川川川川   (⌒)ビシッ./ | |/  ` ̄ ̄ ̄´/    ` ̄ ̄ \ヽ     ノ\_)
:::::::::|-、 ,-/:::::/ ~レ-r、/  `|         (. o⌒o .)     \(  ⌒ヽ====
:::::::::|  /:::::/__ | .|./    \       :::::::::::::U::::::::::::::    /\ヘ  )====
:::::::::| /〈 ̄   `-,/      .|\   ::::--┬┬┬--::::  /|   \ J=====
323名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/04(日) 21:36 ID:2IXovs4g
この板見てる人の何%がオタだ?
あ、100%か。
324315sage :2004/01/05(月) 06:25 ID:bCP2AKN2
>>318-320
レスサンクス。反応があると、やはり嬉しいですよ。
さらに>>319さんは某所に投稿したアレもお読みくださっているご様子で、なんとも汗顔の至り。
ご記憶いただいていた事、望外の喜びです。ありがとう。
325裏切り者(1/2)sage :2004/01/05(月) 06:26 ID:bCP2AKN2
「・・・いいのか?」
「構わんさ。どうせ俺にゃ使いこなせない。それよりも、気に入ったのか?」
「ああ。試したが、いい品だ。これから鍛冶屋に行って、精錬するつもりだ」
「へし折られない程度にしておけよ?」
「判っている。・・・もう一度礼を言っておこう。ありがとう」
「よせよ、背中がむず痒くなる」


 ・・・少し、まどろんでいたようだった。立ったままでの睡眠なのは当然。
 人を殺せば追われる。それもまた当然の事で、追われる俺に横臥しての休息など在り得ない。
 それにしても、と思う。
 一体、幾人とひとつになっただろう?
 殺したのはアサシンギルドからの依頼故ではない。ただ、己の快楽の為。
 俺は両腕のカタールに視線を落とした。神の金属とも呼ばれる、オリデオコンでコーティングされた刃。
 元来の質の良さもあるのだろう。脂も巻かず切れ味も鈍らず、最早数も判らぬ程の人の血を吸ってきた。
 裏切り者。
 これはそう呼称される品だ。
 肌を切り裂き肉の間に滑り込み、命の維持に必要な臓器だけを選択したかのように傷つける。
 人を殺す、その為だけに作られた武具。
 だが、俺は知っている。
“潜り込むもの”。これには、その名こそが相応しい。
 そう。これはひとの精神、心にまでも忍び込む。夢魔が所持する武具である事と、それは無縁ではないのかもしれない。
 魔物を相手取った折には気付かなかった。だが初めてこの得物で人間を殺した時、俺は走馬灯を見た。
 俺の手にかかった人間の、それは最後の記憶に違いなかった。
 そいつの一生が、生まれてから死ぬまでの風景が一息に押し寄せ、俺の中を通り過ぎて行く。そのえもいわれぬ高揚感。
 殺した俺と殺されたそいつとが、死と生を挟んで刃で繋がりひとつになる。
 命を摘み取る背徳の快楽。魂までもを奪いとる悦楽。
 永遠のようなその一刹那の愉悦で、俺は堕ちた。
 以来、幾人とひとつになっただろう?
 思考は堂々巡りする。

 自分が何者であったのか。もう、よくは思い出せない。
 あまりに様々な記憶を見過ぎた。砂漠の生まれであるような気もするし、天空都市で生まれたようにも思う。
 港町で暮らした思い出もあるが、それは国境警備をしていた頃と同時期ではなかったか。
 友の顔。家族の顔。恋人の顔。交わした約束。果たされなかった誓い。
 その果てで、いつも俺は誰かの想いを裏切っている。
 それら様々が雑多に混合して、俺の思考を翻弄する。
 確かなのは己がこれを操る事に長けた暗殺者であり、そして渇いている事だった。
 そう――渇いている。
 血に。紅に。
 ひとつになろう。
 ぼうとしている間に、世界は色を失いつつあった。夜風。獲物を探すには、頃合だ。
326裏切り者(2/2)sage :2004/01/05(月) 06:27 ID:bCP2AKN2
 半年前、王都で事件があった。
 ひとりの娘に絡んだチンピラが、三人揃って膾にされた。そんな事件だ。
 世間じゃあ言っている。そいつが始まりだった、と。
 だが、違う。


 さすがに疲れて、水筒から水を呷る。オレは旅の途中だった。人探しだが、当ては無い。
 探しているのはお尋ね者だった。カタール使いの暗殺者。あちこちの街道に神出鬼没に姿を現し、旅人を殺めている。
 アサシンならば人を殺すのはある意味当然だ。だが、そいつは違った。
 依頼があったでも、金品が目的だったでもない。ただ殺す為に殺す。そういう犯行だった。
 騎士団は名誉と面子の為に。アサシンギルドは規律と尊厳の為に。それぞれそいつに莫大な賞金をかけた。
 だがそいつは未だに捕えられていない。素顔すら定かではないままだ。
 そして、オレが探しているのもそいつだった。だが金目当てって訳じゃあない。
 オレが騎士である事も、そいつが今や殺人鬼と呼ばれている事も、無論報奨金の事も、一切合財関係がない。
 理由があるとすればただひとつ。
 そいつが、オレの親友だからだ。

 半年前のあの日、オレはゲフェンから戻ったばかりだった。手にはゲフェニアダンジョンで得た戦利品。
 そしてその中に、あれが在った。
“裏切り者”。そう呼称されるカタール。
 ただ友人に扱える武具であるというだけで、オレはそれを手渡してしまい――結果、あれが起こった。
 人の心を蝕む武具が世界には在ると知ったのは、それから少し後の話だ。

「・・・いいのか?」
「構わんさ。どうせ俺にゃ使いこなせない。それよりも、気に入ったのか?」
「ああ。試したが、いい品だ。これから鍛冶屋に行って、精錬するつもりだ」
「へし折られない程度にしておけよ?」
「判っている。・・・もう一度礼を言っておこう。ありがとう」
「よせよ、背中がむず痒くなる」

 そう――始まったのは、あの時だ。
 オレがあいつにあれを渡した、あの時。気まぐれな運命が、かちりと歯車を噛み合わせたのだ。
 あいつがそれに魅入られてしまったのであろう事。そしてその武具をあいつに渡したのは、このオレ自身である事。
 それは決して消えない裏切りの烙印として、オレにべったりと貼りついている。
 お前をこんな破目に陥れたオレを、許せとは言わない。蔑してくれていい。
 だが、せめて呼ばせてくれ。

 ――友よ。

 夕暮れ。やがて日も落ちる。
 吹きぬける風は夜風。既に闇を孕んで冷たい。

 ――お前は今、どこにいる?

 邂逅を祈りつつも、オレはそれが遠からん事をも願ってやまない。
327名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/07(水) 21:12 ID:hkQiaOcQ
今日、いつもの緑のヘビを倒すとレベルが上がった。
念願のジョブレベルだ。
PC3でのろのろと、町へスキップしながら戻る。
いつもは重い、足枷のようなカートが心持軽く感じた。

人通りの多いプロンテラ。
私は念願のスキルポイントを使って露店を開けるようになった。
これで今日から商人として一人前になる第一歩。
まだお店から安売りも高く売りつけることも満足に出来ないけれど…。
初露店が嬉しくて、倉庫の中のものを売ろうと思った。
ちゃんとみんなの役に立てるようなもの。
適正価格がわからないから、自分がよく知っているモノを平均だと思う値段で。

露店を開いて、品物をちゃんと良く皆に見えるように綺麗に並べる。
看板には判りやすく名前と値段も入れよう。
売れるかな?役に立てるかな?ドキドキしながら用意した看板を立てる。
「ミルク20z 赤ポーション39z」
でも並べられたのはミルクが40本と赤ぽ24個。
お店で買ったものじゃなくてドロップしたものを大切に貯めていたもの。
ワクワクしていると、一気にざっと売れた!わーい!

「なんだよ少ねぇな。早く補充してこいよ。急いでんだからさ」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
お店で買うとまだ出した値段より高くしか売ってくれないの。
ちょっとだけれど、貴方の役に立ってくれれば嬉しいです。
もっとレベルを上げて、お店の人との取引で割引してもらえるように頑張らないと。
328名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/08(木) 04:43 ID:7nh8aI6A
「しっかしお前さ、不毛に思ったりする事ねぇの?」
「何をです?」
 ところはフェイヨン迷いの森。港街アルベルタへの道中だ。
「いやさ、事あるごとに見聞研究解明ばっかだろ。もうちょっと普通に楽しんだり驚いたりしないと、なんつーか、楽しみ薄いぜ?」
「見聞を広める事も、つぶさな研究も、因果関係の解明も、私にとっては楽しみです」
 先を歩くパートナーは、時折振り返りながら続ける。
「でもな、世の中ってのは不思議で出来上がってるんだ。お前の一生の間に、世界の全部を調べられる訳がないだろーに」
「それでも、努力するのとしないのとでは、雲泥です」
 はぁ、と彼は嘆息した。
「学者先生ってのは、皆そうなのか?」
「・・・私が、頑固なだけかもしれません」
 言うと彼は無礼にも吹き出した。
「なんですか、それは」
「いや、悪ぃ。随分可愛らしいな、と思ってよ」
「無礼の極みです。そもそも、何で貴方が先を行くんですか」
 何気ない言葉に動悸が高鳴る。多分紅潮しているであろう顔を見られたくなくて、私は足を早めて彼を追い抜いた。
 思考を切り替える為に深呼吸。
 うん。まず訪れるのはアマツ。異文化と風習には興味がある。
 タートルアイランドにも足を運んでみたいけれど、今の私達の実力ではあそこの魔物達には敵わない。残念ながら後回しだ。
 ジュノーから出てきた甲斐があった、と思う。あの学院は確かに知識の倉ではあるけれど、やはり実地には及ばない。
 それに、あそこに閉じこもったままでは気付かなかった不思議だってある。
 例えば自分の心。彼と居ると、どうしてこんなにも浮き立ってしまうのか。
「ペースが落ちてるぜ」
「ひゃあっ!?」
 いきなり服の背についた輪を引かれて、あろう事が悲鳴を上げてしまった。振り向けば悪戯っ子のような彼の笑顔。
 ぽんと私の頭をひとつ叩いて、またすたすたと先行してしまう。
 色んなものの答えを見つけたい。できる事なら、このひとと一緒に。
「貴方が先に立ってどうするんです。方向音痴のクセに」
 だから私はその背中を、見失わないように追いかける。
329名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/09(金) 01:36 ID:/Dki0wTA
>>325-326
はじめアレな意味で「ひとつ」なのかと思った自分/w
二人の相関がよかったですよ!

>>327
まーちゃーん!(*´Д`)ァァン
雰囲気からしてあの方でしょうかっ。
そうじゃなかったらごめんなさい。申し訳ありません。
すごくよかったです。

>>328
セージたんキタ―――(゚∀゚)―――ッ!!&輪っかキタ―――(*´Д`)―――ッ!!
セージたんの敬語な硬い口調が素敵です。大好きなんですこーゆー口調。
そして 「 ひ ゃ あ っ ! ? 」 で死にました。最高。
さらに個人的な趣味ながら彼女の相方を騎士と妄想すると 最 狂 にキます。キました。

年末年始のせいか投稿少なくてここんとこ(´・ω・`)だったけど(・∀・)イイヨイイヨー
あとはリレーの続きまd(ry
降臨期待sage(`・ω・)人
330花のHBsage :2004/01/09(金) 18:30 ID:u8fzkaqs
 すぐ近くに現れたコボルトの額をイスフィの矢が打ち抜き、それと同時にイスフィの頭上に天使が舞う。

「成長早いな。すぐにレベルが上がる」
「というか……もうクタクタ……スパルタで色んな所連れて行かれれば、レベルも上がりますよっ!」

 その背後には、アンクルにかけられて蜂の巣になったコボルトや、ジュルで切り刻まれたコボルトの
死体が折り重なるように並んでいる。

 あの出来事から4日が過ぎた。あと一日で幻想祭も終わる。
 あれからイスフィはスレイとずっと過ごしてきた。
 彼に連れられて、プリーストやアコライトのポータルであちこちの狩場に連れて行かれた。
 もちろん、何もなく、ある意味イスフィ的には自分に魅力がないのかと落ち込む原因にもなっていたのだが。

 ゲフェン西のコボルトたちの平原。
 斧、剣、鈍器をもったコボルトたちが、自分達の領域を侵す人々を襲ってくる場所。
 しかし祭の今、この場所は単なる通り道となっていた。
 ここから南に下った湿地帯にグラストヘイム古城に現れるはずの古の王・ダークロードと黒い甲冑の
古の騎士・深淵の騎士が現れるため、その姿を見ようと冒険者たちが続々とそこに向かうためである。
 この場所のほかにも、さまざまな場所で本来はダンジョンの奥深くで訪れるものを爪牙にかけるはずの
モンスターたちが現れ、冒険者たちは喜々として討伐に出かけていた。
 祭りのために、天の御使いたちの力が弱まったため、モンスターたちの封印が一時的に解けてしまったためだ。
 一般人には、迷惑な話だがそれも祭りが終われば元に戻ること。

「さて……そろそろダークロード見物にでも行くか♪」
「ちょっ……まってっ!! 置いていかないで〜〜〜〜っ」

 スレイにとっては、コボルトなど敵にも値しないらしく、囲まれてもすぐに倒しきって先に進んでいってしまう。
 そんなスレイを必死でコボルトを倒しながら、イスフィは追いかけて行く。


「わあ……」

 湿地帯に入って早々に、目の前で深淵の騎士とPTの戦いが繰り広げられていた。
 ブラックスミスのメマーや、プリーストのレックスエーテルナが飛び交う中、ハンターが前衛達を盾にするように、
背後からダブルストレイフィングを続けざまに何度も打ち込む。
 ウィザードが止めのユピテルサンダーを打ち込んで、深淵の騎士が沈んだ。
 口々に、お疲れさまと言い合って、また敵を探すために全員が散って行く。

 ふと、メマーを打っていたブラックスミスの一人がこちらに気が付いて、近寄ってきた。

「イスフィ!! 来てたんだー♪」
「え……? 誰?」

 聞き覚えのある声にイスフィが首をかしげると、ブラックスミスは装備していたオペラマスクとオークヘルムを外した。
 すみれ色のショートカットの髪が現れ、見覚えのある顔がそこにはあった。

「ルル?!」
「えへへ……わかんなかった? ちょっと試しに転職してみたんだ♪ どう? カッコイイ??」

 くるりと目の前で回転して見せる。
 凹凸がない、幼児体型のルルでは露出が激しいブラックスミスの服装は、かなり無理がある。

「……その手の趣味の人間に気をつけるべしと言った所か……プロンテラ平原だしな」

 スレイがじっとルルを見つめてつぶやいた。

「……ちょっと、イスフィ。こいつ何者よ?」
「イスフィ、このガキは知り合いか?」

 二人が、ほぼ同時に口を開いて、イスフィに尋ねてきた。
 慌てて、二人にそれぞれを紹介しようと口を開きかけたところで

「……ガキ?! かりにも花もはじらう乙女のあたしちゃんに対して失礼極まりないじゃないのさっ!」
「事実を言ったまでだ」
「むっかーっ! おおかた、イスフィが何も知らないからって、たぶらかして連れて歩いてる極悪ピクミンのくせにっ」
「心外だね。確かに連れて歩いているがたぶらかしてはいないぞ。ああ、安心するといい。イスフィと違ってお前はもっと
胸が成長しないかぎりは、並んで歩くのも願い下げだからな」
「な……なんでよーっ! スレンダーのどこが悪いのさ、この下半身直結ピクミン!」
「スレンダー? スレンダーというよりも幼児体型だろ、お子さま。それに、男は少なくともそれなりに下半身直結だと思うが」
331花のHBsage :2004/01/09(金) 18:33 ID:u8fzkaqs
「いや、あの……二人ともちょっと落ちつい……」

 ある意味、ノーマナーな言葉の応酬にイスフィは止めようと二人に声をかけるが、イスフィの言葉など、
二人の耳にはすでに届いていないようだ。

「うるさいのっ!!」
「ちょっと黙ってろ」

 二人に同時に凄まれて、イスフィは切れた。

「……いい加減にしなさいよっ。ソラ!! やっちゃえっ!!」

 ブリッツビート!
 高らかに声を上げて、ソラが二人に襲い掛かった。

「はうぁっ!?」
「のわっ?!」

 鷹にくちばしでつつかれ、爪に引っかかれようやく落ち着いた二人。

「……な、何するのさ、イスフィ!」
「鷹は防御無視で避けられないんだぞ!!」

 鷹をけしかけたイスフィに文句を言おうと振り返って、二人は凍りついた。

「何で、けんかしてるのよ……もう……ばかぁっ」

 涙目のイスフィが真っ赤になってこちらを見ていたからだ。

「ごめん、イスフィ……」
「すまん……」
「えと……そのBSは友達のルル。話したでしょ? ギルドに仲が良い商人がいたって」
「ああ、あの商人がこいつなのか」
「こいつって何さ。ルルさまって呼びなさいよ」
「ルル「さま」だぁ? ガキには呼び捨てで十分だろうが」
「……まだやるの……?」

 イスフィの声に、スレイとルルは黙る。

「それから、このアサシンさんはスレイさん。今、お世話になってるの」
「フーン……この下半身直結にねえ……」

 腕を組んで、じろじろと値踏みするように、スレイを見る。

「まあ、天使ヘアバンド装備だし……資産はそこそこありそうだし……イスフィの相手としては申し分なさそうだけど」
「資産って……あのな……」
「だって、装備も揃ってない貧乏ピクミンにイスフィはあげたくないもん」
「話がなんだか飛躍してるよ、ルル……。それに、装備云々じゃないけど……スレイさんは、冒険者レベルカンストしてるんだよ」

「カンスト?!」

 途端に、ルルの顔色が変わった。

「それなら、ギルドに所属するとか……相方とかいてもいいはずじゃないのさ。それがソロで、物好きにもプリーストとか
自分の利益になる職でもない成り立てハンターと一緒にいるなんて何者さ、アンタ……」
「単なる暇人だよ。昔は、ギルドにも所属してたし、相方もいたけどな……」

 スレイはそう答えて、タバコを取り出して火をつけた。

「何で今はいないのさ? あまりの下半身直結ぶりに相方に愛想付かされたとか?」
「ちょっと、ルル……いい加減にしなよ」

 イスフィがルルの手を取って止めようとするが、ルルは話し続ける。

「突然、相方がいなくなったんだよ。よりによって、結婚式当日にな。いなくなった理由なんて知るか……こっちが聞きたいくらいだ」

 煙とともに吐き捨てるようにスレイはつぶやく。
 彼が、いらいらしているのが良くわかる。
 タバコを持つ手が震えていた。

「そのせいで、ギルドにもなんとなく居づらくなってね。抜けたよ……それでもギルメンとは交流はあるけどな」

 そして、一つ溜息をついた。

「まだ、聞きたいことはあるのか? ガキって言うのは言いたくないことまでずけずけと聞くんだな。傷に塩を塗りこむように」
「ごめん……なさい」

 しゅんとして、ルルは顔を曇らせた。
 ルルからすると、素性もわからないアサシンと親友であるイスフィが一緒にいることがとても不安だった。
 少しでも不安を取り除きたくて、ついきつい言葉で根掘り葉掘り聞いてしまったのだろう。

「……言っていいことと、悪いことってあると思うよ……ルル」
「悪気があったわけじゃないよ……だって、レベルカンストしてるなんて珍しすぎるし……しかもソロだなんて……
BOTでもなければ、無理だと思っちゃったんだよ」

 BOT、魂を売り渡して己を戦闘のみに生きるようにしてしまった冒険者のことだ。
 御使い達が、世界を回っていればこのようなやからを排除するのも簡単なことなのに、何故か御使い達はそれをしない。
そのために世界にはそんなやからがたくさんいる。そういう者ほど、レベルも高くソロでいることが多い。
 もちろん、全てが野放しにされているわけではないが……。

「本当にごめんなさい」
「……まあ、慣れてるしな……気にするなよ」
「ありがとう……ごめんね、スレイさん」

 今にも泣きそうなルルの頭にぽんっと手を置くと、タバコを地面に落として踏みつけてスレイは火を消した。
 それを見て、イスフィはほっとする。

「ルル、暇なら私達と一緒に今日は行動しない?」
「んー? いいよー……あ。でも、ちょっとまってギルドに連絡入れてからにするから」
「あ、うん」
「早くしろよ。時間が勿体無いし」

 にっこり笑って、イスフィとスレイがルルの話が終わるのを待ったその時。

 スレイが一早く異変に気がついた。

「イスフィ!」
「え?」

 思い切り突き飛ばされて、イスフィはルルにぶつかった。

「逃げとけ……流石にこいつは……俺でも難しい」

 そういったスレイの背後には、黒い巨体のダークロードがその腕を振り上げていた。
332花のHBsage :2004/01/09(金) 18:35 ID:u8fzkaqs
リレーガトマッテルイマノウチニ・・・・・・
後少しでラストが見えてきました(*´д`)b
がんばるよー

では・・・後ほど
___ __________________________________________________
|/
||・・)
333名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/10(土) 00:43 ID:knnsMV.I
>>329
>>327ってなんか有名な方なのかい?
気になるので詳細キボン。
334名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/10(土) 02:24 ID:sJNKljmU
>>333
個人的に大好きな作者さん(だと自分は思ったん)です。
このスレの上のほうにもあるんですが、ちょうど掌編くらいのSSです。35とか48とか。
もし違う方だったらすげぇ失礼なのは承知してるのですが、
文体というか文章の雰囲気的にそうかな、と思い再度書き込ませていただきました。

>>330
そして花のHB先生が遂にキタ―――(゚∀゚)―――ッ!!
DL様出現でどうするどうなる二人組(一人増えたけど)の運命!
待て次回! ということで続きを(*´Д`)人
335333sageあとはテキサス娘とか荒武隊とか :2004/01/10(土) 04:41 ID:8BvJpMAo
えと、あの、>>35とか>>48とか書いた者です。おどおど。
つまるところ>>327さんは俺ではありません。
無礼になる書き方かもしれませんが、>>327を拝読して、「お、俺と同じようなのが好みのひとがいるなー」と思ったのです。
それでこの方の他の作品がどこかにあるならば読んでみたいと、先の質問を書きこんだ次第でした。

このスレに投稿したのは前述の他に>>124>>316-317>>325-326>>328辺りがあるのですが、やっぱり書き手が誰か判別できた方がよいのでしょうか・・・?

あ、それから付け足しのように聞こえてしまうかもしれませんが、大好きと言ってくださった事、大変嬉しく思います。
どなたか一人でも楽しんでくださればそれを書いた甲斐があると感じる人間なので、とても報われました。多謝。
336名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/10(土) 08:14 ID:7Zilk9S2
花のHBさんキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━ !!!!

相変わらずいいところで引きますねぇ。これからどうなるかじつに楽しみです。
337名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/10(土) 15:57 ID:NGfzoScs
>>335
私のちょっと気に入ったものを書いていたのが全部同一人物だったとは・・・
コテハンつけなくてもいいけど、ついていれば優先的に読ませてもらいます♪
338名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/11(日) 00:07 ID:f5mdiBOM
「んーーーーーーーっつ、お・は・よ・う♪」

ひとりには大きすぎるけれども、もし二人でつかうことになったら少し小さいかもしれない
そんな私専用の寝袋から顔を出して、朝日にいつものように挨拶をすると
こっちは朝ごはんの準備へととりかかる。
まだ暗い闇が残る周囲を見渡して、相棒の寝袋がぶじであることを捉えてから
朽木を削って火口にすると、昨日引きずってきておいた太目の枯れ枝に向かって
斧を片手に準備運動をしながら近寄っていく。

・・・よし!

「ガッ」
「メキメキッツ」

気合とともに振り下ろした斧が
木屑をちらしながら薪をつくっていく光景
私はこれがとっても好きだ。
斧とともに背筋を伸ばすと、朝の空気の中で自分の心も体も
ピリリ、ピリリと引き締まっていく。
体の中から沸いてくる力、それを私はただ
一番素直なフォームで伝えるだけ
それだけでいい。

・・・よし!もういちど

「ガッ」
「バキッツ」

鍛え上げた相棒を振り回しても、相方はあいかわらず
寝袋の中で夢の続き。
・・・私のほうを見ない?
のど元までせり出したその言葉を飲み込んで
いらだち混じりに薪を粉砕していく私の肌には
うっすらと汗が浮かんでいく。
ベーコンと卵とパンだけの簡単な朝ごはんだけど
ベーコンはカリカリに焼いて、卵はその残りの油でふわりと仕上げて
パンも火のそばで焦げないように温めておくよ
それがちょっとした私の、相方への感謝と愛情の表現。

「パチ」
「パチパチ」

鍛冶師のあがめる火
武器や防具を作り出し、私たちを守ってくれる火を私も胸に宿している。
ときに優しく、ときに激しく燃え上がるその火を
相方に見せるのはいつの日なのか

「・・・にぶちん」

ぽつりとつぶやいたその言葉に反応したかのように
もぞもぞっと動いた寝袋を眺める私。
タイミングのよさにちょっとだけビックリだけど、どうせ夢の中。
こっちが起こさなきゃいけない相方に、静かにちかよると
つま先で寝袋をゆすってから
お決まりの台詞でお目覚めの時間。

「オラ、起きろ、朝飯だぞー」
339名無しさん(*´Д`)ハァハァsage sakage :2004/01/12(月) 05:57 ID:rlM17xNo
##氏、2スレ目になってから見当たらない・・・。
氏の書くのが一番好きなのに・・・(´Д⊂グスン
340372sage :2004/01/13(火) 04:05 ID:Lp8doCfQ
あぁぁぁ。すいません!372を書き込ませてもらったものです。
こちらのスレでは前スレで書き込ませて頂いたくらいで
この2巻スレでは初出です。
前スレでは、ノービス子が商人子にプレゼントするポリン人形を
とってくるという、生ぬるい話を書き込ませてもらいました。
最近は、こちらの通常萌え小説ではなく、百合スレ(非18禁)で
アローチャとリリアという2人でなんかごちゃごちゃとお邪魔させてもらっています。(汗

もっと他、執筆されている皆様のレベルに達する様、精進いたします。(⊃Д`)
お邪魔しました。
341名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/14(水) 17:18 ID:k9tti6nI
>>花のHBさんキタ━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!!
正月過ぎてから初めてのぞいたら(つ∀`)
待ってました〜。正直もう続き読めないかと思ってました(´・ω・`)
342名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/19(月) 00:28 ID:tOr5sghA
初めまして、何時も楽しく拝読致しております。
腰低商人×鼻高ウィズ子の、
…萌えと言っていいものかどうなのか、な短編を投下致します。
343名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/19(月) 00:31 ID:tOr5sghA
 魔法都市のとある旅籠の一室にて、女は今宵も眠りにつく。真白の敷布に扇の如く広がる
黄金の絹糸が、双眸を閉じた女の麗なる面を縁取っている。
 女は魔導師だった。その知性は頂点を極め、世界に蠢く数多の魔物を塵と化してきた。
だが、今は、女の艶やかな唇が呪を紡ぐことはなく、静かに、唯静かに息づいていた。
 その枕元には、男の商人が佇んでいた。精悍と言える面に無精で生やした髭を散らし、
男は忠実に沈黙を守っていた。寝台の端に腰を沈めると、男は寝台のすべやかな頬を
指先でそっと撫でた。
 女は、密やかに横たわっている。


 男は、鍛冶師の家に生を受けた。
 こけた頬を炎に照らしながら雷神よろしく金槌を振るう父と、見事な刀剣に触れて育った
男の心に鍛冶なる道への憧憬が生じるのは、必然であった。だが、理想は遠いからこそ
理想と言える。己が夢を現とするべく世へ出た男は、女と出会った。女は、魔導を極めんと
欲していた。道こそ違えど、共に志を抱いているといった点に於いては、同じだった。しかし、
彼等が明らかに異なる点が一つだけ存在した、それは。

「おいおい、芋虫五匹も抱え込んでんじゃねえよ」
 唐突に背からぶつけられた男の声に、露骨に柳眉を逆立て、魔導師は振り向いた。
その先には、数人の男の魔術師連が、赤い芋虫の大群を焼き付くしたばかりの魔導師と
傍らの商人を軽蔑の眼差しで見遣り、無遠慮に言葉を交わしていた。
「幾らウィィィィィズ様だッつったって、なあ?」
 意味ありげに笑い合う男達に、魔導師は端正な面に怒りを滲ませ、冷徹に言い放った。
「私が溜め込みなんて惨めな真似をやったとでも言う積もり?」
「そんなことはねえけど、さあ」
 女の顔が歪めば歪む程、魔術師達の冷笑は高まった。一度触れば即破裂する、そこに、
「いやいやいや、済みませんねえ、本当にえらい目に遭っちゃいましてねえ、見ました?
 さっきの蝿飛び。思いっきり押し付け食らって、いやあ参った参った!じゃ、行きますか」
 睨み合う両者の間に横から割って入るや否や、只管一方的にまくしたてる商人に気圧され、
暫し固まる男達を他所に、商人は魔導師の腕を取ると、飄然とその場を去っていった。

 女の矜持は高かった。そして、驕慢だった。
 男は矜持は低かった。そして、恭謙だった。

 誰一人咎める者ない夜の中、毛布の上に敷かれた、女の身に纏っていた豪奢な外套を、
木造りの椅子の背に掛け直して、再び枕元に腰を下ろすと、男は物憂げな顔のまま、
女の透き通った肌をいとおしげに触れていた。
 それでも、女はその双眸を開こうとはせず、唯像の様に横たわっているのであった。

 果たして、女は眠っているのか。もしくは、薬を盛られたのか。或いは、魔法をかけられたのか。

 男が女を恋い慕うようになったのは、何時の日からであっただろう。
 男と会うまでずっと単身であったという女が敢えて手を携えたのならば、男に対する情は
少なからず在った筈だ、だが。
「嫌よ」
 あるとき、押さえきれぬ己の想いを狂おしげに告げた男への答は、思いの外峻厳を極めた。
「共に磨き合える魔導師や賢者ならまだしも、商人なんて」
 それから、互いが色恋について語り合うことは、一度たりとてなかった。幾度問答を繰り返した
ところで、女は驕慢な性質だ、天と地が真逆になったとて、己の言葉を覆すような真似をする筈がない。
男は諦めていた。手に入らぬものは追わぬ主義だ。

 それから、数日が経った、ある夜のことだった。日も暮れて後にどうにか街に辿り着いた彼らは、
一軒の旅籠の女将に、部屋を供じてくれるよう、頼んだ。幸い、幾つか部屋も残っていた事もあり、
彼らはすんなりと宿帳を記す事が出来た。
 日頃から、部屋の手配をするのは女の役目だった。
「二部屋、ですか?」
 女将の問いに、無論女は頷く筈だった。ところが、
「いいえ、一部屋で」
耳に届いた涼やかな声は、男の漠然たる思惑を呆気なく覆した。目を丸くする男を牽引し、女は
怜悧な相貌を崩すことなく、部屋へと案内されていった。
 部屋にて荷の整理やら何やらを全て終えると、女は一つしかない寝台に、さも当然のように
身を埋めた。もしや、と期待するも、女はそんな素振りすら見せず、切れ長の瞳を瞑ってしまった。
「あの……俺はどこで寝たらいいんでしょうねえ」
「さあ」
 恐る恐る問うてみるも、返って来るのは素気無い答のみ。まあ何時ものことだと密かに嘆息し、
男は部屋の隅の長椅子を己の寝床と決めた。毛布がないのは致し方ない、己の荷から上着を
何着か引っ張り出して自身に掛けると、男も戦の疲れを癒そうと試みた、そこに、
「私は寝ているわ」
 か細い、だが、はっきりとした声が男の耳を抉った。
 問い返すのも何となく躊躇われ、軋む床に注意を払いながら、男は寝台へと忍び寄った。
そこに横たわる女は、眼を閉じて尚美しかった。紅が差したような頬に誘われるかのように、
何時しか男の手は、女の顔へと伸びていた。はっと気づくももう遅い、無骨な指先は、女の肌に
触れるという禁忌を犯していた。気位が高い女のことだ、平手が飛んできてもおかしくはない。
されど、女は安らかに眠っていた。否。横たわっていた。物も言わず、身を動かさず。

 以来、夜のみに許された密やかな戯れに、男は溺れた。度を過ぎた振る舞いに出ることは
自らに禁じていたものの、時に男は思う。
 もしも更なる行為に及んだら、女は如何するだろう。悲鳴を上げて己を詰るのだろうか。いや、
己が床を離れるまで、その双眸を固く閉じ続けているのだろうか。
 いっそ女を起こしてみては如何だろうと思うこともあるが、何時もここで男は首を横に振る。
 繋ぐ糸の弱さを笑いながら、男は、女の艶やかな唇に己のそれを重ねた。

 窓の外に浮かぶ月は、鈍い雲に覆われていた。それが、丁度いいのだ。
344342sage :2004/01/19(月) 00:34 ID:tOr5sghA
番号入れ忘れた!(゚Д゚) 342です。
スレ違いになってしまっていたら相済みません、
お目汚し、大変失礼致しました。
345名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/19(月) 02:09 ID:K36EX8oA
やばい。
燃えとか萌え以前、文語調な文体が禿げあがるほど好みです。
感想や批評等書くの苦手なため短くてすみませぬ。
346342sage :2004/01/20(火) 01:33 ID:QbaR8QkM
>345
いえいえとんでもない、そう仰って頂ければ投下した甲斐があるというものですよ。
正直こりゃ堅苦しい上にフェチっぽいなあと心配していたので、嬉しかったです、
有り難う御座います。

|ω・`)つ ttp://hudesensyu.gooside.com/sousi/hinakusa.htm コンナノモカイテマスケド
347名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/22(木) 02:32 ID:PKvnm.kY
下水リレーSSの続きマダ〜(AA略
348335sage :2004/01/22(木) 03:19 ID:wJuaNVvw
えっらい遅レスも含んで恐縮ですが・・・。

>>340
えと、>>327さんという理解で間違いないとは思いますので、以下そういう解釈で話します。
匿名掲示板なのにあれこれ詮索するような真似をしてしまい、どうもすみませんでした。
百合スレの作品もちゃんと拝読していたのに、気付かなかったとは・・・不覚。
こちらでもあちらでも、1ファンとして一層の御活躍を期待しております。
あ、あと、出来ればヤリッツァさんは幸せにしてあげてください。

>>343
すごいのキター! なんかもう激しく趣味です好みです。
「絆の弱さを 〜」の辺りが、猛烈にきたですよ。
サイトの作も読ませていただきました。実は既読のものも結構あってびっくり。
今後もちょくちょく覗かせてくださいませ。
349とあるスレの577sage :2004/01/22(木) 23:01 ID:fl4Hncvs
|∀・)

さて久しぶりに短く投稿
丸いぼうしさんの後に書くのは
恥ずかしいものですが
リレーをきちんと終わらせたい身としては
しょうがありませんね
きっとケリをつけて見せますから
・・・できるかな・・・

彡サッ
350とあるスレの577sage :2004/01/22(木) 23:02 ID:fl4Hncvs
「ふう・・・面白かったな・・・」

独り言を区切りに、私は“観る”ことを止めると
誰も居ない中空に向かって手を叩いて
地上で頑張った彼の知識に敬意を払った
近くで這いずりまわっていた窓手たちがビクリと体を震わせるが
こちらはそんなことを気にせずに
愉快な気分に浸りながら断続的に拍手をつづける
これだから人間は面白い
「黙示録」を落としたと見せかけてバックグラウンドで起動して
こちらから観ていたのに気づかなかったのは
きっと彼が疲れていたからなのだろう
お疲れ様だな
君のような優秀な人間こそ私の新しい世界に相応しい
殺さないように注意しておこう
その為に魔物の進行ルート表とタイムテーブルを変更する必要があると思って
私は椅子から立ち上がる
急ごしらえの玉座の近くには
既に大き目の魔方陣が描かれており
中には私と同じ程度に身長の縮んだ
悪魔の王が捕らえられて
チューブと鎖にまみれた間から
憎憎しげにこちらを睨みつけていた・・・

召喚は既に終了した
後は時間が私の問題を解決していく
その間に騎士団がやってくるのは
予想の範囲内だったが
まさかまだ私を倒すことの出来る武器が残っていたというのは
可能性があることとはいえ意外だった
これだけ短期間に解決方法を見出すとは
なんらかの奇跡が働いているような気さえする
しかしそれが神の意図だとしても
直接的な力を私に振るうことはあるまい
それならば神は今まで何をしていたのだ
人々が私の実験の為に
犠牲になっていったときでも
奴はなにもせずに見ていただけじゃあないか
救済という仕事をしない神などよりも
私のほうがずっと役に立つ
指を咥えて見ているんだな、神よ
知らず知らずのうちに強く握り締めていた
自分の拳を深呼吸と共に緩めると
手のひらから一筋の
青くなってしまった血が流れ落ちていった・・・

さてこれからは
私はしばらく座っていることにしよう
適度な休息と栄養補給で
ガン細胞増殖のようにこちらの体が
段々と別のものに作り変えられていくのを
じっくりと待つことにしよう
今の体も捨てがたいが
目的の為には仕方がない
もうすぐだ
もうすぐ私は・・・

・・・

「馴染むッ!実によく馴染むぞ!!!!
後は全身に行き渡るのを待つだけだ・・・
フハハハハハハハッツ!!!」
351とあるスレの577sage :2004/01/22(木) 23:02 ID:fl4Hncvs
「ひゃあっ!」

考え込む僕たちの沈黙を破るように
再度WIS携帯装置が鳴り始め
びっくりした心臓をなだめながら
僕は急いでスイッチを入れる
皆に注目される中
聴いたことのない相手の
叫ぶような言葉を必死で解読して
やっと内容を理解すると
僕はいったん携帯から耳を離して
部隊のみんなにむかって力強く言葉を発する

「騎士団の本隊が上水道のモンスター討伐に
出撃するそうです!
こちらのミスリル銀を大切に守るようにとの
騎士団長からの言葉も頂いたそうです
やっと信じてくれたんですね!
これで希望が見えてきました!!」

しかし、きっと大声で喜んでくれると思っていた
僕の予想に反して
皆は首をかしげたり苦笑したりと
曖昧な反応を示すと
お互いの表情を窺っているだけだった

「まあそれは有り難いんやが・・・正直、どうやって
アイツを倒すっちゅうんや?
大部隊がみな上水道には入れんのやで
とすると結局少人数で対峙するしかないんやが・・・アイツに
そんな短いエモノを突き刺すことができる奴がいるんかい?
正直、ワシよりスピードある奴なんて
騎士団にはほとんど・・・」

ハンスさんにそう言われて
僕は次の言葉を発することも出来ずに
突っ立っているだけだった
たしかにあんな奴に
勝てるような気がしない
昔は一体どんなふうにして
撃退したのだろうか
そういえば文献には誰が倒したかなんて
書いていなかったな
そう考えて
僕にはまったく追うことの出来なかった
さっきの光景を思い出しながら
表情を暗くするのだけれど
ふと気づくと、いつのまにか
先輩が僕の右肩をがっしりと掴んで・・・

「まあ、皆さん、何とかなるものですよ
“神は我らと共にある”
この言葉を信じていきましょう」

・・・

あまりの能天気さに
ついふきだしてしまった僕に向かって
先輩はウインクすると
暗闇の中聖歌を歌いながら
ゆっくりと歩き出していくのでした・・・
352とあるスレの577sage :2004/01/22(木) 23:04 ID:fl4Hncvs
|∀・)

最近思うこと
リレー小説ってのは
下手でも最後まで投げ出さないってことが
重要なのかもしれませんね・・・
この駄文が皆の興味をまた引いてくれることを願って・・・
ノシ

彡サッ
353どこかの166sage :2004/01/23(金) 13:51 ID:eQMLtyuY
|∀・) おもいっきり流れをぶったぎってごめん
|∀・) ありがとう。チェき14才さんとアラームスレ440さん。

壁|つミ[悪ケミ+アラームたんな駄文]

|彡サッ
354どこかの166sage :2004/01/23(金) 13:56 ID:eQMLtyuY
アラームたん「がお?」(なんだろ……これ?)
悪ケミたん「ハイディングって言っているでしょっ!」(がたがたぶるぶる)

 そんな微笑ましいファーストコンタクトを生暖かく見つめている親ばか二人。
 一人は山羊の化け物。もう一人は山羊の帽子をかぶったプリースト。
 結婚指輪よろしく二人仲良くマタの首輪をつけて二人に気づかないように見ているらしい。
「娘よ……同じ血を引いているのなら何故戦わぬ……T-T」
「悪ケミたん……同じ血を引いているならなんで仲良くなれないかなぁ……」
 そして同時に互いを見て呟く。
「お主の教育が悪いからだ」
「貴方いったい何をしていたのよっ」
「……」
「……」
 二人して互いに武器を向ける。
 そして鎌とソードメイスが互いを捕らえようとする前に、
「父よ……義母よ……後ろ……」
 とようやく泣く子バフォに気づいて、二人は時計塔モンスターの皆様に呆れられつつ囲まれている事を悟ったのだった。

「で、色々聞きたい事があるのですが」
 時計塔管理人の声が妙に人間臭く聞こえる。そう、笑うのを我慢しているという感じで。
 二人は時計塔最上階の管理人室に通されている。子バフォは悪ケミたんを心配してアチャスケさんと一緒に遠巻きにアラームたんと悪ケミたんを見守っている。
 バースリーの出したハーブ茶を気まずくすすりながらバフォメットが答える。
「い、いやな。ちょっと人間どもの行動を把握しておく必要があってな……」
「では、その人間のプリーストさんは?」
 管理人のつっこみに見事にお茶をこぼしそうになるバフォメット。
「い、いや、その……偶然人間と出会ってな。見ただろう」
「そ、そうなのよっ!『枝を使ってみようかな〜』と私が思ったらあら大変!バフォメットが出ちゃってぇ〜」
 急に話を振られたママプリの方もまるで急ごしらえの話に合わせるように上ずったトーンで主張する。
「そうですか。の、割には一時間以上なんで二人仲良く壁向こうのアラームと悪ケミたんを見ていたのですか?」
「うっ!!」(×2)
(どうするのよ?あなたの最初の話だと話が通っているんじゃなかったのよっ?)<ひそひそ
(しょうがないではないか。GHできちんと話をつけて人事異動の折に嘆願書を渡したはずなんだが?)<ひそひそ
(と言う事は、事後確認子バフォに任せて怠ったでしょ!なんであなた最後まで見なかったのよ!)<ひそひそ
「仕方ないではないか!最近人間どもの襲来が激しくて時間が取れなかったのだ!
 今回の訪問とてLoD様に頭を下げ、深遠の騎士にシフトを変えてもらい、息子達からは呆れられてやっと実現したんだぞ!」
「私だって、今月はコブリンとデザートウルフとヒドラを孕む予定を全部キャンセルしてここに来ているんだからっ!
 悪ケミたんの弁償費、最近威力が上がって増えているんだからねっ!
 大体何よ?このバフォ帽子をかぶるとバフォメットに見えるってしっかりばれているじゃない!」
「我に言うなっ!
 そもそも『人間を魔族に見せる方法は無いか?』とGH中聞き回って聞き出したんだぞっ!」
「それ……多分騙されていますって……
 あと、そちらのプリーストさんの事情も承っておりますからご安心を」
 ひそひそ話のはずがエキサイトして全部管理人に聞こえている事にまったく気づかないあたり、「子も子なら親も親」。
 とても温和な管理人の声に我に返り、互いに顔を赤めてあさっての方向を向いてまだ互いの脇を突きあう二人。
 ひたすら笑いを我慢する管理人だった。
「えっと……大体事情は聞いているんですが……」
 とりあえず夫婦漫才はもういいだろうと思って管理人は話を強引に先に進める。
「……たしかにGHよりの人事異動の発令時に、深遠の騎士経由でバフォメット殿の嘆願書は受け取っております」
 管理人はそう言って、二人の前にバフォメットが書いた嘆願書を机の上に置く。
 その嘆願書には「悪ケミの教育の為に、優秀なる時計塔管理人に錬金術を教えて欲しい」と書かれているはずである。
 毎日毎日悪さ(というよりいたずら)をしている悪ケミたんだが、子バフォを通じて話を聞く親ばか二人はそろそろ娘の将来をと考えた訳で。
「今の人間の錬金術なんぞ役に立たん。我は歴史上最も優れた錬金術師を知っておるからそこに悪ケミたんを学ばせよう」
 とバフォがさしたる考え無しに言って、どの世のママも最高学府や高位の学者という言葉に反対する事もなく、時計塔管理人に話を通して子バフォが上手く先導して悪ケミたんをここに連れてくる予定だった。
 で、そうなると今度は「無事に着くか」と心配になった親ばか二人は悪ケミたんの後をこそこそとつけた次第。
「悪ケミたんを教える事については私に依存はありません。ただ……」
「ただ?」
 管理人の次の言葉に息を飲む二人。一番大事な事を、教えていなかったと激しく後悔する。
「私達を、悪ケミたんがただの魔物と見ない事が大事なのですが」
 と。
 考えてみればこの二人や悪ケミたんが異端であり、神が去ったこの大地で人と魔族は激しく争っている。
 それは互いの生存をかけた争いであるはずだったのだが、人の力の増大につれ人は傲慢に、魔族は余裕が無くなっているのをバフォメットは知っており、
 「魔物だから狩っちゃえ」という意識は実は人間の方にこそある事をママプリは自らの体験からも知っていた。
「悪ケミたんもそういう意識があるのかしら……」
 人間やっているママプリは心配そうに管理人を見つめているが、
「何、我の娘だ。心配いらぬ」
 とのー天気に言ってのける、山羊顔の親ばか一匹。それを見て頭を抱えるママプリ。
「まぁ、心配なのは私も同じなので、見てみましょうか……」
 かちゃかちゃと管理人は鏡をいじってアラームたんと悪ケミたんのいる場所を映し出す。
355どこかの166sage :2004/01/23(金) 13:56 ID:eQMLtyuY
アラームたん「がお?」(なんだろうな……これ???)
悪ケミたん「ハイディングって言っているでしょっ!」(がたがたぶるぶる)

 もう、二人が壁向こうから覗いていた時から30分は経っているはずなのだが、事態は何も変わっていないらしい。
 あ、若干違うのは画像の中に子バフォが悪ケミハウスの横に、アチャスケがアーラムたんについているぐらいか。
 ちなみに、子バフォとアチャスケの二人には手を出すなと命じている。

アラームたん「がおがおがお がお〜(子バフォさん こんにちは)
       がおがおがお がおがお がおがおが〜(アチャスケさん この箱 なんだろうね?)
悪ケミたん「ひぃぃぃぃ! ハイディングしているのよぉぉ…私はただの箱なのよぉぉ…T-T」(がたがたぶるぶる)

 さらにしばらくして、画像に変化が現れる。
「おおっ!さすが我が娘!!」喜ぶバフォ。
「アンバーナイトみたい……」かつて騎士子が同じ事を言った台詞を呟くママプリ。
 悪ケミハウスをかぶったままゆっくりと前進する悪ケミたん。当然前は見えていない。

管理人「あ、壁にぶつかった」

 がたがたぷるぷる震えていた箱が壁に当たる。
 「ごん!」とかなり景気のいい音が聞こえ、箱の上にぴよぴよと鳥が舞っているようにふらつく悪ケミハウス。
 どうやら、壁に頭をぶつけて目を回している(おまけに、箱をかぶって前が見えていない)悪ケミたん。
 くるりと回転して別の方向に向かおうとする悪ケミたん。その前方にはアラームたん。

悪ケミたん「子バフォ〜どこ〜〜〜(@×@)」

アラームたん「がお〜!?」(わっ!こっち来るよっ!?)

子バフォ「主よ。もう少し右。
     行き過ぎだ。左に戻して。そのまままっすぐ……
     アラーム殿動かないで……
     主よ!左、左!!」

アチャスケ「馬鹿野郎!アラームにそんな複雑な操作をさせるなっ!
      アラーム!右だ右!
      子バフォ!お前そっちに箱を寄越すなっ!!」

 アラームたんの周りをくるくる回る悪ケミハウス。
 こっちに来たから逃げようとして、悪ケミハウスの変幻自在(別の言い方でめちゃくちゃ)な動きに翻弄されるアラームたん。
 そして気分はすいか割りか、プロンテラの大通りの交通整理をやっている案内要因のお兄さんかと思いながら必死に悪ケミたんを誘導する子バフォとアチャスケ。
 そして事態は突然に終焉を迎える。
 悪ケミたんの敗因は悪ケミハウスの箱のふたを出してアンバーナイトをやっていた事であり、アラームたんの敗因はアラームに乗ってバナナの皮を踏むとどうなるか知らなかった事である。
 アラームが悪ケミハウスの端を踏んで……

「つるっ!すがしゃああああんん!!」

 舞う土ぼこりで鏡に何も写らない。

「アラーム!」
「悪ケミっ!」(×2)

 かくして慌てて駆けつける親ばか三人。
 土ぼこりの舞う部屋。アラームが倒れた振動で目を回す子バフォとアチャスケ。
 そして……

「うわ〜〜〜ん!」(×2)

 管理人とバフォとママプリが見たのは、悪ケミハウスとアラームから出て仲良く抱き合って泣いているアラームたんと悪ケミたんの姿でした。

管理人「まぁ……子供同士の出会いならこんな所では……
    アラームとうまくやってくれるのであれば大丈夫でしょう」
ママプリ「そうですね。子供ですから。二人とも。
     喧嘩は最高のコミュニケーションですわ」
 何故か安堵している二人を置いて完全に狼狽している親ばか山羊。
バフォ「何をほっとしているのだっ!ほらっ、悪ケミたんにヒール……えっと泣き止む為には…ミルクか?キャンディか?
    子バフォも目を回している暇があるなら起きんか〜〜〜!!!」

 その後火曜日の9時から15時にかけて、子バフォと一緒にランドセルをかるって時計塔に通う悪ケミたんの姿を見たとか見ないとか……
356どこかの166sage :2004/01/23(金) 13:59 ID:eQMLtyuY
ぎりぎり容量足りてほっとしています。
この手の反則複合技は、アラームスレにも悪ケミスレでもスレ違いかなぁと思いこちらでこそっと。
悪ケミスレ、アラームスレ共々これからも多くの神が降りますように。
357どこかの166 :2004/01/23(金) 17:59 ID:eQMLtyuY
使ったので立てました。
【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第3巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoe&key=1074912738&ls=50
358名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2004/01/24(土) 01:05 ID:LNrXz/mA
もうそんなになってたんだ

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