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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第1巻【燃え】

1黒猫服事 ◆sage :2002/11/06(水) 17:47 ID:7AcypPKc
このスレは、萌えスレの書き込みから『電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』ではない萌えな自作小説の発表の場です。
・ リレー小説でも、万事OK。
・ 萌えだけでなく燃えも期待してまつ。
・ エロ小説は『【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ【エロエロ?】』におながいします。
・ 命の危機に遭遇しても良いが、主人公を殺すのはダメでつ

▼リレールール
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・ リレー小説の場合、先に書き込んだ人のストーリーが原則優先なので、それに無理なく話を続かせること
・ イベント発生時には次の人がわかりやすいように
--------------------------------------------------------------------------------------------
※ 文神ではない読者各位様は、文神様各位が書きやすい環境を作るようにおながいします。
2sage :2002/11/09(土) 23:31 ID:Jdk1Ra4E
 私、シャオアは懺悔室で人々を悩みから救い、助ける仕事をしています。
 懺悔室は、私と懺悔なさる方の間に壁があり、その中央ほどに小さな小窓がある、といった具合です。
 ちなみに、今懺悔しておられる方は、リンゴを拾われて、誰の物かはわからずに結局食べてしまった、ということだそうです。

 さて、次の方は、と・・・。

「どのような罪を犯してしまったのですか?」
「あぁ、シャオアさん、私はダメな男です。」
「なぜ、ダメな男だというのです?」
 このように、いつも漠然としたことから話はじめる方がいるので、少しいらだちます。
 必要以上に興奮させないよう、ゆっくりと問い掛けるように努めなくてはならないのが面倒です。

「教会に来るたび、いえ、街の中でもどこででも、プリーストの女性をみると、その衣服のきわどいところに目がいってしまい、あげく、押し倒せやしないものか、と考えてしまうのです。」
「男の人の劣情というものは得てしてそういうものです、必要以上に悩まないのが宜しいですよ。また、その悩みを打ち明けたことで、神もあなたをお許しになるでしょう。」
 はぁ、最近はこういう男ばかりでうんざりです。
 以前はもっとバリエーションがあったのですが。
「それだけではないんですシャオアさん!!今も私はあなたを押し倒したいと!!!」
 今の言葉に身の危険を感じた私は天井から吊り下げられている紐を引っ張ってしまう。
 ガッコン・・・。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・。」

 今日も困ったさんがまだまだいるようです・・・。
3##sage :2002/11/10(日) 05:10 ID:4UFPz.Gw
うへ・・・失敗して(仮)コテハンがトリップになってしまいますた・・・。

タイトルは「プリのとある日常。」ですた・・・。
ちまちまと書いていくつもりですのでよろしくおながいします。
4名無しさんsage :2002/11/21(木) 01:13 ID:dUDkTRHc
男商人(ご主人様)×女剣士たん(非売品(笑))
の、えろえろものと見せかけて甘々ラブコメSSねたが
脳内鯖で展開中ですが、需要はありますですか?
やっぱアコプリでないとだめですか?(笑)
5名無したん :2002/11/21(木) 01:17 ID:dWtiTJrI
>>4
ここのスタンスは、文神さま各位が書きたいものを書いていただければ良いのです。
むしろ、12/1まで悶々としている住人がいそうなのでよろしくおながいします
6通りすがりAsage :2002/11/23(土) 00:12 ID:35zKgeig
>3
勝手に妄想で続き書いていい?
なんかいいキャラだからつい俺も書いてみたくなったもんで……
7##sage :2002/11/23(土) 00:16 ID:cgCyyM.w
>6
え・・・・?
拒否する理由はどこに?

・・・調子乗りました。スンマセン(;´Д`)人

是非とも書いてください。

あ、ちなみに、次回は青箱をネタに絡ませます。
・・・・どうなることやら。
8通りすがりAsage :2002/11/23(土) 00:23 ID:35zKgeig
「しゃ〜おあさんっ♪ 冒険に行きませんか?」
「行きません」
 即答してやる。この子は剣士の頃から色々面倒を見てきた子なのだが
 騎士になって独り立ちしたはずの今になってもちょくちょく誘いに来る。
「え〜、またですか〜」
「何度も言っているはずですよ? 騎士にもなって人を頼るんじゃありません」
「そんな〜、だってシャオアさんいないとヒールする人いないし」
 私はヒールだけですか?
「大体あなた異様にタフなんですから自力でどうとでもなるでしょう?」
「そんな! シャオアさんがいないと……えっと……その……」
 何やら考え込んでいる。
 実際の所理由なぞはどうでも良く、ただ一緒に冒険がしたいだけだというのはわかっていた。
 そんなこの子を可愛いとは思うが、私にも仕事がある。
「そうだ! にんじん代がうくじゃないですか!」
 …………そうですか、私はにんじん(12z×大体300個ぐらい)と同価値ですか
 ガッコン
「なぜ落とし穴ーーーー!!」
 知りません。
「あーーーー! なんでこんな所に触手にゅるにゅるがー!」
 知りません、いや本気で。
「いやーーー! そこは……あ……ダメ……そこはシャオアさんの為にとっておいた……」
 いりません、今すぐそこで散らしてください。
「助けてー!!」
 …………ふう、しかたがありません
 ぴろりん♪
「何故速度増加!?」
「頑張って走って昇ってください」
「ムリ言わないでくださいーーーー!! あー! 触手ぬるぬるイヤーー!!」

 今日も困ったさんの多い事です……
9通りすがりAsage :2002/11/23(土) 00:26 ID:35zKgeig
>7
まさかこんなに早く反応がこよーとは……
早速遠慮なくいかせていただきました〜
へっ……そうっすよ……俺も12/1まで暇なんすよ(TーT)
10##sage :2002/11/23(土) 00:37 ID:cgCyyM.w
読ませていただきました(・∀・)ニヤニヤ
遠慮なく書いていただいて、シャオアは切れつつも、作者の私は喜んでいます。
何かネタがあったらまた書いてみてください。
オナガイシマス
114sage :2002/11/23(土) 01:40 ID:nIGNP5Lo
え〜お言葉に甘えて書いてみました(笑)>商人くん×剣士たん
脳内鯖から文書への移行って、当たり前ながら難しいです(^^;
少し長めになったので?、あぷろだ↓の方にあげました。
おめよごしですが(^^;

tp://moetaro.virtualave.net/ragnarok/cgi-bin/ss_up/cbbs.cgi

の、63番です
12名無しさんsage :2002/11/23(土) 08:37 ID:Dm5pdGpc
 _n
(  l     _、_
 \ \  ( <_@`` ) >>11Good Job !!
   ヽ___ ̄ ̄   )
     /     /
134=11sage :2002/11/24(日) 04:13 ID:ntnN5ySI
 調子に乗って2話目まであげてみたり...(笑)
どんどこおめよごし、すんまそん(笑)
14名無しさんsage :2002/11/24(日) 06:07 ID:4sn4P59E
  _、_
 ( く_@`` )     n
 ̄    \   ( E) >>13Good Job !!
フ     /ヽ ヽ_//


うっかり者のアチャ娘たん萌え(そっちかよっ!?)
15sage :2002/11/24(日) 23:07 ID:ntnN5ySI
>うっかり者のアチャ娘たん萌え(そっちかよっ!?)

 そっちですかい!?(笑)
って、読んでいただけてありがとうです(^^)
あの娘は今後もうっかりです(笑)マテ
16>>2さん、勝手にキャラ使ってごめんなさいっ!sage :2002/11/25(月) 23:19 ID:TkrC4OfM
「・・・・ありがとうございました」
「いえいえ、それが私の務めですから・・・」

 今日も懺悔室には幾人もの迷える人々がやってきます。(時々、頭の痛くなる方もいらっしゃいますが)
 さて、次の方は・・・と。
 がちゃっ・・・
 扉を開けて入ってきたのは、丈の余った新品同様のローブを着たアコライトさん。
 おそらくなりたての新人の方なのでしょう。随分と小柄なかわいらしい方です。
「・・・シャオア様。私の罪を聞いて下さい・・・」
 これまた随分と神妙な面もちですね。
「どうぞ」
「・・・私・・・・」
 そこで何か言いづらそうに、くっと言葉につまる(多分)新米アコライトさん。
 これはまた・・・・なにかよっぽどの事なのでしょうか。
「何か言いづらいことなのですか?」
「その・・・あの・・・」
 言いよどむ所から見るに、おそらくそうなのでしょう。
 こう言う時は、努めて優しい声でなければいけません。
「たとえ大罪であったとしても、ここで告白し悔い改めるのであれば、神は必ずやお許しになってくれます。告白することもまた勇気ですよ?」
「それは・・・その・・・はい・・・・・でも・・・・」
 その表情ははや今にも泣きそうな危ういものとなり、小柄な体をさらに小さく縮こませる少女。
 ・・・何故か私の方が罪悪感を感じてしまいます。
「どうしました?ここは懺悔室。どのような罪事であっても隠すことなど無いはずですよ?」
「・・・・はい・・・。わかりました・・・・・実は私・・・」
 すぅっ・・・はぁっ・・・・
 深呼吸ですか。ついこっちまで緊張してしまいます。
「つまみ食いをしてしまいましたっ!」

 ずるっ。

「・・・・・・・・ハィ?」
 思わずすっこけてしまったじゃないですかっ!!さっきまでの思わせぶりな雰囲気は一体なんだったんですかっ?!
「夕のお祈り前で・・・・とてもおなかがすいていて・・・それでつい・・・・・」
 変わらず神妙な表情の少女。
 な、なんて些細な・・・・ていうかそれ、ネタですか?
「それも一度だけではありません・・・何度も・・・なんどもっ・・・・!」
 ・・・いえ、多分本気ですね。これは。
「しかも私の罪はそれだけではありません!おとといなど、つい夜更かしして朝のお祈りを寝坊してしまったんですっ!」
 うあ。なんて純粋な。
「そのあげくお祈りの言葉は間違えるし、花瓶を倒して床を水浸しにしたし、参拝の方にぶつかって転ばせてしまうし、それに・・・それに・・・・」
 ついにえぐえぐとしゃくり上げはじめる少女。
 ううむ・・・今時こんな子が現存するとは・・・・私の同僚達にもこの子の爪の垢を煎じて飲ませたいですね。
「もうその辺でよいですよ・・・そこまで悔い改めて居るのであれば、神も必ずやお許しになるでしょう」
「ヒック・・・・いえ・・・まだです・・・・まだあるんです・・・」
 だぶついて余っていたローブの袖で涙を拭き拭き顔を上げ、
「聖職者として、殺生は禁断と知っていながら・・・ありさんをふんでしまったんですっ!」

 がっこん。

「きゃあああぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ・・・・」
 ごめんなさい。もう限界です。悪気はないんです。(TДT;
「ふぇぇぇぇ・・・・ん!いたいですぅ!くらいですぅっ!!」
「すみません。つい・・・・」
「はぅぅぅぅ・・・ついってなんですかぁ・・・・・っひゃんっ!!?」
 ん?どうしたんでしょう。
「シャ、シャオア様っ?!なっ、なんでこんな所に触手が・・・・ぅきゃあっ!!」
 いえ、それはホントに知りません。
 ていうか、まだいたんですね。
「大丈夫ですか?」
「ひえぇぇぇん!!た、助け・・・っやっ!だめえ・・・・ぇっ・・・っ!」
 つぅ・・・
「おっと・・・・鼻血が・・・(とんとん」
「はっ、早く助けてくださぁぁぁぁい!(泣」


 ・・・どうやら今日は、私も困ったさんの様です・・・・


・・・お目汚し&ネタ汚しスマソ(TT;
17名無しさんsage :2002/11/26(火) 01:00 ID:5u8F81NE
なんてーかシャオアさん大人気……つーかむしろ落とし穴&触手プレ(スピードヒャック)
18名無しさんsage :2002/11/27(水) 08:43 ID:jRFKU.hI
>>11
新作御苦労様です。
相変わらずのアチャ娘たんに(;´Д`)ハァハァ
今頃兄貴共に輪ky=ー(゚∀゚)・∴∵.ターン

ともかく剣士たんと共に幸せになって欲しいです。
課金前に完走できるようにがんがれ♪
1911=海sage :2002/11/27(水) 22:50 ID:FYYRGyII
↑毎度ありがとうござりまする。
苦難の3話終了で、べたべたの(笑)最終話にむけて
気合充填中です。課金まであとわずかっ!

剣士たんは...べたべたに幸せにしてあげたい所存ですが
あちゃ娘さんははたして....?(笑)
20名無しさんsage :2002/11/28(木) 02:06 ID:XQXdA2j.
「はい、次の方どうぞ」
 最近、私シャオアの懺悔室を訪れる迷える人々の数が、なぜか以前と比べて急に増えているので休む暇も有りません。
 これがお店であれば商売繁盛で言うこと無しなのですが、ここは迷える人々が罪を告白する場所、繁盛されても気分が複雑です。
 繁盛しているお医者様というのはこのような気持ちなのでしょうか?
 新しい方が入って来られました。
「また来たぜシャオアさ〜ん!」
 ……どうやら今回も困ったさんのようです。いい加減慣れましたけど。
 とりあえず、フンス(;・∀・)=3フンスと鼻息も荒く飛びこんできた常連の商人さんに犯した罪を尋ねます。
「嗚呼シャオアさん、罪深いのはむしろ貴方です! ただでさえきわどいスリットから覗く殺人的なガーターベルトの蠱惑にくわえ、今日は看護帽という本気装備だなんてっ!?」
 ガッコン。
 いつものように皆まで言わせず私は落とし穴を作動させる紐を引きます。
 この方には学習能力という物が無いのでしょうか?
「うわーはっはっはっは! そう何度も同じ手にかかる私ではないよ明智君!」
 前言撤回。信じられないことに商人さんはマントをたなびかせながらぽっかりと空いているはずの穴の上に立っていました。何故かつけている蝶の仮面が激しく謎ですが。
 良く見れば穴の上には器用にカートがつっかえ棒として渡してあり、その上に立っているのでした。
「試練をクリアしたからには我が怒涛の如き懺悔をダイレクトに聞いてくださいプリた〜ん!(*´Д`*)」
 そんな約束をした覚えはこれっぽっちもありませんけれど。
 第二の紐に手をかける私ですがそれは徒労に終わりました。
「あ、ごめ」
 いつの間にか背後に立っていた女シーフさんの足払いでバランスを崩した商人さんは、お腹を空かせた仔犬のような情けない声を上げながらカートもろとも奈落の底に吸いこまれていきました。
「あぁ、シャオアさん、あたしは貴方の許しも無くこの部屋に入ってしまいました」
「神は貴方を全力で許すでしょう」
「懺悔するのはそこじゃねえだろヽ( `Д´)ノウワアアン!」
 地の底から聞こえる虚しい叫び声を尻目に、私はシーフさんに即答しました。
「だが、しかぁしっ! いつもいつも触手如きに屈するこの男商人アルではぬわぁいっ! むしろ転んでもヒドラカードを手に立ちあがる勢いでぇっ!! ウェルカム触手! カマーンカマーン!?」
 かすかに痩せ我慢めいた台詞が聞こえてくるのが哀愁を誘います。あ、メマー音。
 シーフのカリンさんと雑談するうちに、地下からの音が静かになってきました。流石に心配になって声をかけてみますと、
「大丈夫ですか?」
「余裕余裕、物足りないぐらいだぜぃ!」
 犬歯を光らせながら父指を立てる商人さん。
「ならも少し増量〜」
 いつのまにか取り出だしたる皮袋から落とし穴に向けてどぼどぼとヒドラを注ぎ込むカリンさん。
 よく見るとその袋には『すごいヒドラ』と書いてありました。
「あれっ、ねえ、ちょっと? 冗談だろ? 何これ? グラストヘイム特産? はぁ? うわっ、ダメっ、そんなことされたら、ひぎぃぃぃーッ!?」
 あとはもう声にならない断末魔の声が。敢えて例えるとするならばAR・OT・WPを重ねがけした越後屋に物凄い勢いで手篭めにされる村娘の声とでもいいましょうか。流石の私も少しだけひどいな、と思いました。エイメン。

 あ、リザラックション(LV1)かけてさしあげないと。


---------------------------------------------------------------------
長物の構想が中々煮詰まらないとはいえ駄文失礼。
>>2さんスマソ、キャラ使わせていただきますた(;´Д`)ゞ
21##(2)sage :2002/11/28(木) 02:24 ID:8LWaWwcg
どうも、>>2です。

シャオアがものすごい勢いで一人歩きしてるので驚くことしばしば。
今後下手に書けないですねぇ(^^;
2226sage :2002/11/28(木) 04:02 ID:zlU9Ua.w
無数のモンスターに囲まれる二人。
じりじりと後退する彼等であったが、無常にも背後が壁にあたる。
「・・・くっ・・・ここまでか」
苦しそうに息を吐くと、彼の横にいるプリーストをかばうように
一歩前に出る。
「あなただけでも逃げて!」
そのプリーストが背後から悲痛な叫びを上げる。
彼女は足に深い傷を負ってしまったらしく、身動きが出来ないようだ。
それに癒しの力を行使出来るだけの気力が残っているようにも見えない。
まさに絶体絶命の状況だ。

「お前こそ逃げろ」
騎士は、持っていた蝶の翼をプリーストの足元に放り投げる。
「いや! わたしだけ逃げるなんて!!」
蝶の翼を拾い上げると、よろよろと彼の手にそれを渡そうとする。
だが、騎士は優しく笑うと
「・・・騎士っていうのは、誰かを守るための剣であり盾である事を
至上とする職業でね」
そう言いながら彼女の手に、再び蝶の翼を握らせる。
「それと、こんな時に言うもんじゃないけど、守るべき大切な人のためなら
何倍にでも強くなれるものなんだよ・・・だから君は・・・君には生きていて
欲しいんだ」
涙で瞳をぬらしながら、黙ってただただ頷くプリースト。

その二人の空気を裂くように、モンスターどもの飢えた声が響く。
じりじりと彼等を包囲する輪を縮めている。

彼はにっこりと微笑むと、次の瞬間には戦う男の顔つきとなり、剣を
両手で構えてモンスターをにらみつける。

そして気合の声と共に、モンスターの群れに飛び込む。
「早くいけ! 僕なら大丈夫だ!」
彼の気持ちは彼女に十分伝わっていたが、彼女はその場を動く事を
ためらった。
2326sage :2002/11/28(木) 04:25 ID:zlU9Ua.w
何故なら彼が彼の言うほど「大丈夫」ではない状況であると分かっていたからである。
明らかに彼は劣勢で、剣を振るうのがやっとという状態であるのが痛いほどだった。

ガキーン!

「く!」
残った気力で半数以上のモンスターを倒した時に、ついに耐え切れなくなって、剣を弾き飛ばされる。
剣はかなり離れたところまで勢いよく吹っ飛んでいた。
やられる!
彼は思った。
そして彼女は無事に逃げおおせたかも気になったが、きっと逃げてくれていると
思った。
そう思うと、ふいに気持ちが安らいだ気がした。
もう、死んでもいい。

だが、残ったモンスターどもは騎士を乱暴に弾き飛ばすと、そのまま
彼を無視して移動を開始する。
その先には・・・彼女がいた。

何故彼女がまだここにいる?
一瞬そう思ったが、次の瞬間には立ち上がり、彼女目掛けて剣を振り下ろす
モンスターにタックルを食らわせていた。
「なんで、まだ?」
次々に降り注がれる攻撃を巧みにかわしながら、騎士は腰にある予備の
短剣を抜き放ち、応戦をする。
「わたしだって聖職者です。傷ついた人を見捨てて逃げる事は許されないのです」
騎士にメイスで加勢しながら彼女は精一杯の笑みを浮かべた。

だが、そもそも武器の扱いになれていない上、足に深手を負った状態で満足に
防戦できるはずもない。
彼も気力はとうに使い果たしており、彼女を守りたい心だけが彼を突き動かしている
極限状態だ。

残りのモンスターも数匹となったとき、それは起こった。
足の痛みでバランスを崩した彼女に容赦ない一撃が振り下ろされた。
彼は咄嗟にその一撃を阻止しようと動いたが、身体が思うように動かなかった。
モンスターの腕目掛けて短剣を突き刺したが、振り下ろされた武器の勢いを
止めるまでには至らなかった。

彼女の頭部には彼女の転職祝いに彼が贈ったサークレット。
安物ではあったが、彼と彼女には大切な思い出が詰まったものだった。
そのサークレットがモンスターの一撃で変形し、彼女の頭から外れ
床に落ちていた。
その横には頭から出血した彼女が横たわる。
彼は目の前が真っ暗になって、何も見えていなかった。
2426sage :2002/11/28(木) 04:41 ID:zlU9Ua.w
あれからどのくらい時間が経っただろう?
眩しい日差しで彼女・・・プリーストは目覚めていた。
ベッドから上半身を起こすと、頭が酷く痛むのを感じた。
そっと手を当てると、どうやら包帯のようなものが巻かれているようだ。
「わたし・・・一体どうしたんだっけ?」
頭がものすごく重い。
何か思い出そうとすると目の前が痛みで真っ暗になるほどだった。
でも、とても大切な何かを忘れている気がして、彼女は一生懸命思い出そうと
努めた。

その時、ふいにドアがそっと開かれる。
ドアの向こうからは眩しい陽光が差し込む。
彼女は目を細めた。
誰かが滑り込むように入り込んでくる。
その人物もまた、全身の至る所に包帯を巻いた男だった。

「目・・・さめたのかい?」
そっと優しく彼女に微笑む。
「はい」
答える彼女の目には涙が浮かんでいた。
そう、彼女は何もかも思い出していた。
あの時の痛みも、目の前のいとしい人も。
彼女は気付いた時には彼のもとへ駆け寄り、抱きついていた。
「すまない・・・辛い思いをさせて」
「いいの・・・いいのよ」
「それに、サークレット・・・もう修理出来ないらしい」
「でも、そのサークレットのお陰で、わたしはこうして貴方の元へ戻れたんだと思う」
「そうだな、感謝しないとな」
「ええ」
ふいに真剣な眼差しで彼女をみつめる騎士。
「それで、代わりといってはなんだが」
すっとポケットから小さな金属を取り出す。
「これ、受け取ってもらえるかな?」
差し出されたその手には、美しい指輪が光っていた。
「ええ、勿論です」

そう答えるのが精一杯だった。
再びなきじゃくり、声にならなかったからだ。

オシマーイ
25名無しさんsage :2002/11/28(木) 05:42 ID:buIRnPdc
>>20
アルとカリンって懐かしいキャラが来ましたなぁ♪
26名無しさん :2002/11/28(木) 10:46 ID:DuThbwW2
 朝もやが辺りを包む。
 体臭の鼻をつく匂いが発ちこめる村の中を、一人の剣士が歩いていた。
 腰に下げた剣は、長い年月使い込まれた証。世間で言うところの、「騎士」になっていてもおかしくは無い歳である。
 剣士は、胸元から一つの短剣を取り出した。黒く染み付いているのは血だろうか? それもまた、長い年月を感じさせた。
「いよいよだ…」
 剣士は短剣をしまうと、村の中心部へと向かっていった。そこに、用のある奴がいる。

 時をさかのぼろう。十年ほど前、彼がまだ新米の剣士だったころの話。

「そろそろ、プロンテラも飽きてきたんだ。ちょうどよかった」
 剣士の隣には、彼より少し年上の盗賊がいた。意気投合した二人は、盗賊の生まれ故郷であるモロクへと向かう途中だった。
「砂漠はさ、昼間はすごい暑いし、夜はめちゃくちゃ寒い。プロンテラの方が全然いいと思うんだけどよ…」
「そろそろ嫁さんが帰ってこいって言うんだ…あいつ怒らせると怖いしな」
「それに娘の顔も見たい。大きくなったろうな…」
 盗賊は剣士に語り掛ける。夜になってしまい、野宿をすることとなった二人は、お互いの身の上を語り合っていた。
 と、言っても、剣士は盗賊の言うことを黙って聞いているだけである。時々口を挟むが、それも相槌だけだった。
 彼のしゃべったことと言えば、自分が騎士になりたいということ、モロクへは自分の武器を鍛えに行くということぐらいだった。
「お前は家族はいないのか?」
 剣士が答えようとした瞬間、獣のような雄たけびが近くから上がった。
 二人は急いで火を消すと、辺りの気配をうかがい始める。
 どれくらいの時間が経っただろうか? 盗賊のすぐ横に、一振りの大剣が振り下ろされた。
「ちっ…」
 辛うじて体勢を整えた盗賊が見た物は、オークの一団だった。
「しまった…」
 囲まれていた。オークの狩りの帰りに鉢合わせてしまっていた。
 剣士は愛用の剣を抜くと、静かに間合いを計り出した。盗賊も短剣を取り出すと逆手に構える。
 二人は背中合わせに敵と対峙していた。
「部が悪いな…。自信はあるか?」
 剣士はそれに答えない。答えることが出来なかった。
「だな…。こっちもあんまりねぇや…」
27名無しさん :2002/11/28(木) 11:06 ID:DuThbwW2
 じりじりと迫ってくるオーク達。皆狩りの帰りで興奮状態だった。
「いいか、よく聞け。相手の腕を見るなよ…」
 何の事か、突然盗賊が剣士に話しかけた。
「あいつらの攻撃を、一発でも食らったら御陀仏だ。避けろ」
「相手の行動を読め。目を見るんだ。自然と次に攻撃する場所は、眼で確認する」
「どこを狙っているかを見極めろ。避けたら相手より早く斬るんだ。わかったな?」
 剣士にはした事の無い戦い方だったが、素直に頷いた。
「よし、じゃあ…いくぞ!」
 二人はオークの群れに飛び込んでいった。

「何とか…なったじゃねえか」
 数時間後、辺りにはオークの死体が転がっていた。
 二人の善戦は、オーク達を戦意喪失させるに充分だった。
「だが、これでここにいる訳には行かなくなった。さっさととんずらしようや」
 剣士は僅かな自分の荷物をかき集めると、立ち上がろうとした。
 そう、実際には立ち上がれなかった。
 彼の目に移っていたのは、オークヒーローだった。
「ウソだろ…」
 盗賊もそれを見つけていた。オークの中の英雄。オークロードとも呼ばれるそれは、彼らにとって最悪の相手だった。
「親分を呼んできた、って訳か。勝算も無し。はは、ついてねぇな…」
 盗賊と剣士は間合いを保つと、静かに後退する。
 勝てない
 オークヒーローからたち登る殺気のような物が、二人を包み込んでいた。
「おい、お前」
 突然、盗賊が剣士を呼んだ。
「足に自信はあるか?」
 盗賊の意図を察知したのか、剣士は剣を握り締めると一歩前へ出る。
「バカかお前は!? 生き残る確立で言えば、俺が囮になった方がいいんだ」
 盗賊は手短に説明した。自分の方が機敏であること。相手が一匹である以上、二手に分かれたほうが良いということ、そして
「俺には死ぬ理由が無い。嫁さんと娘に会いたいしな」
 一瞬だが、剣士は盗賊の目を見た。
 信じられると思った。
「じゃあな。また後で会おうぜ!」
 二手に分かれると、彼はそう言ってオークヒーローと共に夜の闇に消えた。
 彼に遺体が見つかったのは、それから三日後の事だった。
28名無しさん :2002/11/28(木) 11:20 ID:DuThbwW2
 たくさんの事があった。修練を積み、騎士の誘いが来た時も、やるべき事があると言って断った。
 騎士になる前に、やっておかなければならない事があった。
 その日、オーク達の村へとやってきた剣士は、静かに中央の広場へとやってきた。
「お前達の頭はどこだ…」
 その問いかけに答えるはずも無く、オーク達は剣士に襲いかかった。
 オークの斬撃は、剣士には当たらなかった。襲いかかるオークの攻撃を、いとも簡単にかわす。
 相手の目を見て、相手より早く斬りつける。あの盗賊の戦い方だった。
 どれくらいの時間が経っただろうか? オーク達の波がひいた。そこに立っていたのは、あのオークヒーローだった。
 剣士は無言で大剣を構える。あの時と同じ殺気が彼を包み込む。だが、彼は引かない。相手の両目をしっかりと見る。
 動いたのはオークヒーロー。片手で剣士の背丈ほどもある剣を振りかぶる。剣士は右へ飛ぶ。
 剣士のいた場所に、剣が突き刺さる。地面がえぐれ、その衝撃は地震と間違えるほどだ。
 体勢を立て直す暇も無く、剣士に容赦無く襲い掛かるオークヒーロー。剣士は避けるので精一杯だった。
 隙が無い。
 やがて、その斬撃は剣士を捕らえ始める。手にした大剣で弾き続ける剣士だったが、剣の方が限界を迎えてしまった。
 鈍い音を立てて、剣士の大剣は根元から折れていた。
29名無しさん :2002/11/28(木) 11:33 ID:DuThbwW2
 一瞬、オークヒーローが笑ったような気がした。ゆっくりと最上段に剣を振り上げる。
 剣士にはほとんど体力が残っていなかった。次に一撃が避けられたとしても、その次で終わりだろう。だが彼は、敵の目をずっと見ていた。
 オークヒーローの剣が振り下ろされようとするその刹那、剣士は動いた。一気にオークヒーローの懐深く走りこむと、自分の懐から何かを取り出した。
 あの、血の染み付いた短剣。盗賊の形見だった。それを抜くと、オークヒーローの喉元へ深く刺しこんだ。

 あれから何日が経ったのだろう? 剣士はモロクに来ていた。
 花束と、酒、そしてオークヒーローの証。一つの墓の前に立ち止まった。そこには真新しい花が供えてあった。
 持ってきた物をそこに置くと、彼はもう一つ、自分の懐から取り出した。
 短剣だった。新たな血の染み付いた短剣は、さらにどす黒くなっていたが、心なしか、どんな名刀よりも輝いて見えた。
 その短剣を墓に立て掛けると、彼は無言でその場を立ち去った。墓の出口で、女の子と、その母親と思われる女性に出会った。
 喪服を着て自分のいた方向へと向かう女性を、無言で見送ると、彼は町の外に止めておいたペコペコにまたがった。
 モロクの町の門を見つめ、彼は
「ありがとう」
 確かにそう呟くと、砂塵の彼方に去っていった。
3026 :2002/11/28(木) 11:45 ID:DuThbwW2
駄文、長文申し訳無いです。
気に入らなかったら削除して下さい。
感想とか…は別にいいです。
31名無しさんsage :2002/11/28(木) 13:10 ID:73fofDfE
>>26
萌えというより燃えか?こういうときはシンプルに…
(・∀・)イイ!
32名無しさんsage :2002/11/28(木) 22:08 ID:rh22U2eE
>>26-30
燃える話をありがとう。
でもオチに♂騎士たんが未亡人のママンと結婚して男の子を儲けたり。
ママンと互いの傷を舐めあうように激しく ま ぐ わ っ た り !
その後グラストヘイムへ旅立って帰らぬ人となり、また未亡人になったママンは夜な夜な火照った身体を慰めたり。
成長した息子が実は妹と種違いだと発覚して ま ぐ わ っ た り ! !
♂騎士たんの面影を垣間見てママンが息子と ま ぐ わ っ た り ! ! !

そういう展開を読み終わってご飯食べてお風呂入ってるときに考え付いた私は逝ってよしですか?


      ||
      ||
    _||○___
     \_| |_/
     (@`ノノ| |))  ぴぃ。
     ノハ-|__|ノゝ
    .ζ(ヽilヽ
   ζ  )u u
      ヽハノ

      -━-
33名無しさんsage :2002/11/28(木) 22:14 ID:iyfz03oE
>>でもオチに♂騎士たんが未亡人のママンと結婚して男の子を儲けたり
このあたりなら漏れも考えたゆえ、イ`
34名無しさんsage :2002/11/28(木) 22:14 ID:Qz.IvC1I
 こんばんわ、シャオアです。
あいもかわらず忙しい日々を送っております。
罠が休む間もないくらい、ほんとに、困った...いえ、
迷える方々の多いことです。

 あ、また一人来たようです。
「あ、あのシャオア様ですよね? あたしの悩みを聞いてくださいっ!」
 そう言って、駆け寄ってくるのは、まだ幼さの残るあちゃ娘さん。
「ああ、走ると危ないですよ。」
べちゃ
...って言ってるそばから、転んでるじゃないですか。
しかも、そこは..!?

がっこん

「なんでこんなところに落とし穴が〜〜〜〜」
穴のそこから、あちゃ娘さんの声がします。
 最近酷使してるから、留め金が弱くなっていたのですね。
それにしても、何かする前に落ちられた方は初めてです。
念のため手を伸ばしかけていた紐から手を話して語りかけます。
「今、ロープを下ろしますから。間違っても他の仕掛けにさわらないで
くださいね?」

がっこん

...穴のそこから悲鳴が聞こえてきます。
「シャオアさま! な、なんかいます!! なんか、ハアハア言ってます〜〜〜〜!」
ああ、そういえば触手もワンパターンなので今回は、あれに変えてたんでしたね。
「まだいじょうぶです。くれぐれも他のしかけを...」

がっこん

「シャオアさま〜〜〜〜 た〜すけて〜〜〜〜〜(TT)」
....え〜っと、とりあえず、ブレッシングでも...

穴のそこからばたばたと逃げ回る音が聞こえてきます。

今回私は、何もしていないのですが....
世の中、いろんなタイプの困ったさんがいるものです。


---------------------------
お目汚しすんません。なんか書いて見たくて(^^;
ぜひ、本家2さんも、がんばってください!
35名無しさんsage :2002/11/29(金) 12:40 ID:ErmVSgYk
初めて書かせていただきます。
当初♂萌えで、アコきゅんと男プリで書いてたのですが、
どうも自分の好きな乙女系の範疇に留まらなかったので
男プリを辞めて女プリに修正しました。

長文で駄文ですが、お許しください。

-----------------------------------
□『大聖堂によくある風景』

銀の燭台にキラキラと色とりどりの光が反射する。
雲ひとつない空の蒼が、ステンドグラスを透かして小さな部屋を照らしている。
賛美歌を奏でながら天空を祝福して周る、純真無垢な天使の白。
大地に息づく全ての生命を称えて揺れる、深い大地と草の緑。
主の生誕に喜びの声をあげ友と祝い合う、信心深い教徒達の黄。
そして人々に糧を、大地に実りを与える、全てを照らす陽光の赤…。
そこは大聖堂の小さな一室。


キラキラと美しく色を変える燭台に細い指先が添えられた。

栗色の髪の少年が爪先立ちに背伸びをして、燭台を棚の上から取り出そうとしている。
少年、という表現が最も似合う年頃。
その身を包むアコライトの服は彼には少し大きくて、
背伸びして伸ばした指が、やっと服から覗く程度。
栗色の艶やかな前髪が踊るその仕草からは、性など微塵も感じさせず
衣服から男性…男の子とやっと判断できる程度の未成熟な顔立ちだった。

銀製の燭台は少年が一人で持ち運ぶにはかなり大きく、
見るからにか細い彼の体躯では両手で抱えなければいけない重さ。
やっとの思いで燭台を抱えた少年はよろよろとしながらも、
部屋の静寂を守る様に慎重に、慎重に、息を止めて抱きしめて歩く。

コトンッ

目的の場所に着いて気を抜いてしまったのか、
少年は気を配って静かに燭台を机に置いたつもりだったが
小さな音が立ち反響し、張り詰められていた部屋の静寂が途切れた。

「…あっ…。」
少年は自分の立ててしまった音に驚き、小さな声を洩らした。
それから数瞬して、自分のあげた声が先程の音よりも大きかったことに気がつくと、
顔を赤らめて、咄嗟に指先だけ覗かせた両手で口を塞ごうとする。
子供のような少年の焦りと無邪気な仕草は、更に悲劇を生んだ。

ガシャン!
慌ててあげようとした手が机にぶつかり更なる騒音をたてる。
お世辞にも決して立派とは言いがたい木製の机は大きく揺れて、
机の上の燭台が連鎖的に勢いのよい音を立てて転げる。
「イテッ…もぅ!」
手をぶつけた痛みで更にあがった声と、豪勢に机の上で躍る銀燭台の音。

クワンクワンと部屋に反響する音の中で少年はパニックになっていた。
やっと燭台の動きが止まり静寂を取り戻しつつあるなか、
少年はふと我に返る。
すると今更に己の犯した小さな事故に、
叱咤されることを恐れる子供の様に、目をぎゅっと瞑り赤面した。

部屋にはまた静寂が訪れた…。
数秒…数十秒…息を止めて小さく竦みあがったままの少年には
もっと永い時間に感じられたかもしれない。
沈黙に耐え切れなくなった少年は、ゆっくりと薄目を開けながら顔を上げると
燭台を置いた机の反対側に恐る恐る視線を向けた。

3635sage :2002/11/29(金) 12:41 ID:ErmVSgYk

そこには一人の女性が座っていた。
燭台よりも更に輝いて見える白銀の髪を軽く束ねて、
プリーストの法衣に身を包んだ女性。
年齢はまだ若い。
少年とは威厳も違えば歳も少々離れているが、
それを加味しても年齢に似合わない落ち着きをもった端整な顔立ち。

彼女は木製の椅子に腰掛けて足を揃え、その上に置いたバイブルに視線を向けていた。
何かに畏まっているかのように背筋を伸ばして美しい姿勢をしていたが、
顔を傾けているので、表情を読み取ることは難しい。
ただ、眼下にかけられた小さな読書用の眼鏡をたまに指先で持ち上げる仕草から
バイブルに読み耽っていることだけわかる。
プリーストの厳かな法衣に身を包み、姿勢も正しく落ち着き払っているものの、
その姿は何故か世捨て人を思わせた。

女性は先程少年が起こした些細かつ重大な失敗に気がついているのか、いないのか、
バイブルのページを捲ることも無く静かに視線を落としたまま黙っていた。

「すみませんでした…。」
少年はいてもたっても居られなくなったのか、慌てて頭を下げる。
女性の反応はない。
バイブルに読み耽って、気がつかなかったのだろうか…。
そんな都合の良い考えがふと少年の脳裏に浮かぶが、
すぐに常識から判断して、その可能性を否定し言葉を続けた。

「ボク…失敗ばかり…。
 こんなんじゃ…ずっとプリーストになんて…。」
ポツリポツリと少年は謝罪の言葉を口にする。
それでも彼女は無言のまま。
バツの悪くなった少年は一度口を閉じる。

永い沈黙が少年を押し潰す。
耐えられなくなった少年はあげていた顔を再び俯かせると、
そのまま部屋を出ようと扉に向かった。

「……(ふぅ)……。」
部屋を出ようとした少年の耳に彼女の初めての吐息が届く。
呆れる様な溜息。
そう聞き取った少年には、背後から刺さるその溜息は耐え難い苦痛だった。

「…また…ですか。」
溜息の後は、更に少年に呆れ返った様な言葉。
彼女はそれっきり、また黙ってしまったが、
少年には彼女の言葉が重すぎて、もう部屋を立ち去ることすら出来なかった。

3735sage :2002/11/29(金) 12:42 ID:ErmVSgYk

「シスター様、ごめんなさぃ…。」
顔を真っ赤にして俯いたまま少年は口を開いた。
その言葉は先程までの謝罪の言葉とはどこか雰囲気が違っていた。
それ程までに彼女の呆れの言葉が心に響いたのか、
もう少年には怯えの表情すらなかった。

今の出来事を謝罪するというよりも、
まるで自嘲の言葉で自らの心の傷を抉るように。

「…いつも、焦っちゃって。落ち着きなさいって、いつも怒られるの…。」
段々と声を大きく、早口に。少年は捲し立てた。
まるで自分の行いを、性格を、
シスター様を呆れさせてしまった自分の愚かさを悔やみ懺悔するように。

「シスター様に迷惑ばかり! 今日だって、今だって!」
彼女は無表情。

少年の自戒の訴えは止まらない。
「この前だってそうだものッ! ボクがシスター様の言葉に甘えて、
 自分の力量もわかんないで、無理に飛び出して、…。」

この沈黙はシスター様の与えた罰なんだ。
シスター様はもう何も仰らないけど、それはもっとも重い仕打ち。
少年の心を支配するのは先程起こした些細な事故ではなく、
もっと前に、心に負った傷。

これは懺悔なんだ。
そう自分に言い聞かせるように、少年は続ける。

「…シスター様に…迷惑を……。
 ボクの身代わりに謹慎…なん……て…。」

「女性に…怪我まで負わせて…
 き…え、…ない…痕。
 償う術すら…な、い。」

言葉にならない。
少年の目にはいつしか涙が流れている。
無邪気な子供が怒られることを恐れた時のそれとは違う。
自分ではどうしようもないことを、世の中を、そして
自分の無力さを知ってしまった者の瞳から流れる涙。

「…ボクは…どうしたら…。
 ボクには何も出来ない。
 …する、権利すらない、のに…。」
最後の方はもう涙交じりの嗚咽でよくは聞こえなかった。


シスター様は厳しいお方だ。
でも、これはボクの罪。

少年は泣いた。
言葉を終えても泣き続け。
そして…いつしか泣き止んだ。
目を真っ赤にしたまま、頬を引き攣らせて、
少年は笑顔を作っているつもりなのだろう。

「…ボク、諦めます。
 こんなことで、ボクなんかが出て行くだけじゃ、
 何にもならないかもだけどッ!」
少年は机上の燭台をキチンと置きなおすと、
首から下げた信仰の証、ロザリオをそこに架けて深々と頭を下げた。

「…さよなら。…ありがとうございました…。」
そう最後にもう一度お辞儀をすると、部屋の扉を開けて出て行った。

3835sage :2002/11/29(金) 12:43 ID:ErmVSgYk

パタンッ

軽い木の軋む音と共に少年は後ろ手に扉を閉めた。
修道院で学ぶアコライト達に割り振られた質素な小部屋。
ベットに小さな祭壇、狭い部屋にそれでもなお空間を余らせる程しかない
最低限だけの少年の荷物が隅に転がっている。

少年は黙ったまま自分の私服を適当に見繕いベットの上に並べると、
アコライトの制服を脱ぎ始めた。

トンットンッ

部屋の扉を誰かがノックする。
一瞬、少年は手を止めるが、気に止めずに着替えを続けた。

「…入ります。」
「!!」
先程のシスターの声だった。
少年は服を脱ぎかけのまま、制止の声をかけようとしたが、
既に振り返った時には扉は開けられていた。

慌てて女の子のように胸の前で脱ぎかけの服を手繰り寄せる。
真っ赤になって、先程の涙で眼も腫れた顔をもう見られたくないのか、
無理矢理床に視線を向けながら出来るだけ冷静さを取り繕った。
彼女の方はといえば何を恥ずかしがるでもなく、
そんな少年の行動を表情一つ変えずに見つめていた。

「…なんですか?
 ボク、もうアコライトじゃないんです。
 お説教も聴く必要なんてないですよ…。」
心にも思ってもいないことを話してごまかそうとする。

そんな見え透いた言葉にシスターは変わらぬ表情で答えた。
「それは…とても残念ですね。
 とっておきの御話を説こうと思ったのですけど…。」

「…どんな…?」
「おや、興味が無いのではありませんでした?」
シスターは初めて少年を虐めるような不敵な笑みを浮かべて
片手の指を立てておどけて見せた。
少年は自分がまだ未練を持っていることを見透かされたと感じ、
更に羞恥心をおぼえ頭を振って反論した。

「し、知りませんッ。もぉいいです!」
早く着替えて出て行きたいが、シスターが目の前に居ることで
服を胸の前で抑えることで精一杯だった。
なんとかこの場を誤魔化して早く逃げ出してしまいたい。
恥ずかしい。

相手は女性だけど、ボクより歳も位も全然高いプリーストだ。
何も気にせずに着替えを済ませて、彼女の横を通って部屋を出て。
通り過ぎざまに「サヨウナラ。」と一声かけてやればいい。
そんな簡単なことが、少年ののぼせた頭には思い浮かばなかった。
思い浮かばなかったのか…したくなかったのか…。

指を立てていたずらな笑みを浮かべながら、
腰を曲げて下から少年の顔を覗き込むように歩み寄る。
少年は無意識に後ずさる。
顔を思い切り近くに寄せられて、上目がちに大きな瞳で見つめられる。
数歩近づいて…。
退いて…。
少年の後ろにはベット、これ以上さがる事は出来ない。

トスッ

少年はベットの端に転ぶように座り、
彼女はクルッと少年の隣に腰を降ろした。

3935sage :2002/11/29(金) 12:45 ID:ErmVSgYk

「バイブルには様々な主の教えが示され、
 私達がどう生きていくべきなのか、その教訓が記されています。」
手元のバイブルのページをパラパラと捲りつつ、
彼女は再び小さな眼鏡をかけ直すと、語り始めた。

「使徒列伝…詩篇…申命記、創世記。」
彼女は先程バイブルに読み耽っていた時とは違い、
まるで微塵にも興味ないような態度でつまらなそうにバイブルのページを捲る。
そして一通りのページを捲り終えると、
おもむろにバイブルを閉じて眼鏡をはずした。

アコライトではまだ持つことの許されないバイブルから、
説法を説かれると思っていた少年は素直に横に座るシスターを見つめて
首をかしげる。
疑問いっぱいの顔で自分を見上げる少年に、彼女は問いかけた。
「貴方は何でアコライトになったのですか?」

「人々を助け…不浄なる存在を排し、
 主のお言葉を人々に知ってもらいたかった…から?」
少年は答える。
日々の主への祈り、
教会の修行で教えられた常識をそのまま口に出して答えた。
わざわざ当たり前のことを聞かれているのだから、
もしかしたら違う答えが求められているのかもしれない。
そう思いつつも、少年には常識として身につけた言葉以外思い浮かばなかった。

「ふふ、優等生な答えですね。」
「…優等生って…な、…ボクは、そう信じてッ。」
からかわれていると思ったのか少年は、癖なのだろう顔を赤らめて反論する。

「そう怒らないで。」
「ぅぅ…。」

「では聞きますね…。
 貴方が人を救うのですか?
 貴方がアンデッドや悪魔を退治するのですか?
 貴方が主の素晴らしさを万人に知らしめるのですか?」
ゆっくりと耳元で囁く様に、しかし凛とした声でシスターは問う。

「それは、ボクでは…まだまだだけど…。
 でも、いつか…。」
自分の不甲斐なさを責められているのかと少年は思った。

「それが貴方の仕事?
 それが貴方のやりたかった事ですか?」
神父やシスターの様にプリーストになれば、そうするのが仕事だと思った。

「主の御力の代行者のような神父様や、
 聖母のようなシスター様になれば…ですか?」
でも、自分ではそうなれないから…諦めようと思った。

自分の頭に渦巻いていたことを全て言われてしまい、少年は黙り込んだ。
「(違うの? だって、だって…。)」

ワケもわからず信じてきたことを責められている自分。
教会で今まで教えられたことが頭の中を反復し、
求められている解答がわからない自分への苛立ち。

少年は…黙ったまま、また咽び泣いた。

4035sage :2002/11/29(金) 12:46 ID:ErmVSgYk

修道院の一室。
壁には小さな窓。
その小さな入り口からあらん限りの輝きで部屋の中に入ってくる春の陽光。

シスターは立ち上がり、窓に近づくと眩しそうに手で日差しを作りながら
外を見つめる。
修道院の裏手には小さな墓地。
今は使用されていない名も刻まれていない石碑達は、
新緑と、薄紅色や鮮やかな黄色の花々に覆われている。

静寂の中、部屋に響く咽び泣く声。
外界と遮断された空間に、突如一吹きの風が舞い降りる。

シスターは一度手を止めて、胸いっぱいに大きく風を吸い込むと、
息を吐き出すようにゆっくりと、全開まで窓を開け放った。

静寂がかき消され、人々の声が遠くからやってくる。
首都の往来を行き交う人々の笑い声、
商売に精を出すものたちの声、
今まさに冒険に出ようという者達の声。
風の音。

いつしか泣き声は消えていた。
少年はやっと落ち着きを取り戻したのか窓の方に向き直る。

そこには、羽織っていた法衣のファスナーを下ろし、
素肌に太陽の光を浴びるシスターの背中があった。
一瞬、少年は焦って目を背けそうになるが、その視線が一点で止まる。
その背中には大きな傷痕があった。
それは不浄なる者に深く傷付けられた、ヒールでも消えることのない傷痕だった。

4135sage :2002/11/29(金) 12:48 ID:ErmVSgYk

大聖堂には主の奇跡を求めて訪れる人々が大勢居る。
あるものは結婚式のために幸せそうな顔で訪れ、
あるものは天に御霊を返すための祈りを捧げて欲しいと、
あるもの達は世に蔓延るモンスターを討伐する為に教会の力を借りに…。

彼女は大聖堂でも一二を争う退魔法術の使い手だった。
しかし、自ら戦いに志願することは殆ど無く、
ここ数ヶ月は祭事を取り仕切る人員として聖堂で職務を果たしていた。
「シスター様、ボクも行ってみたいです!
 不浄なものを浄化するところを、
 見てみたいです!」」
その少年の好奇心の一言に、最初彼女は怪訝な顔を見せたが
世界を見るのも勉強になるでしょうと、付き添ってくれた。

少年の好奇心が彼女を動かし、
そして一生消えることのない怪我を負わせた。
目的地の討伐も終わり、帰ろうとする一団から抜け出して一人奥地へと進んだ少年。
突如現れた、今までに見たことも無いような悪魔、イシス。
少年を庇って瀕死の重傷を受けたシスター。
祭事を司っている期間中の使用を自ら禁じ、誓いを立てていた法術の使用。
マグヌス=エクソールシスムス…。
悪魔は浄化されたが、彼女もまた癒えることの無い傷を負い、
そして自らの誓いを破った事で、一時的とはいえ聖堂での立場を失った。

「ぁぁ…ぁ…ぁ。」
少年はシスターの背中を一心に見つめ声を洩らす。
『許されない罪を犯した、そしてボクは…罪から逃げようとした。』
ベットの上を這うように、彼女の背中から一瞬も目を逸らさずに近づく。
「ぅ…ぅ…ぁぁ。」
ベッドサイドの窓辺に立ち、こちらに素肌をあらわにして背を向けたままのシスター。
少年は肩から腰まで伸びたその痛々しい傷痕に自然と片手を伸ばす。
その力なく差し伸ばされた少年の腕を、彼女が掴んだ。

「この傷が、悲しいですか?」
悲しいです。
ボクのせいで、こんな体に…。

「…それとも、
 この傷が、美しいですか?」
美しい?
何を言っているのか理解できなかった。

「悪魔やアンデッドを浄化し、
 その戦いの証であるこんな傷が…。」

「人から感謝はされるでしょう…。
 この傷は、私が悪魔を退治した証です。」

「こんなものが、美しいですか?」

気がついた。
シスターの伝えたかったこと、少年が思い違っていたこと、
段々と少年の頭の中で整理が付いてくる。

「力を奮い、不浄を排し、人を助ける…。
 その力は私達のものですか?」
そうだ、それは…。
「そんな力は私達には有りませんよ。
 全ては主の成せる御わざ。」
そうだ、だから、ボク達は…。
「私達に出来ることは、
 そんなだいそれた事なんかじゃない。」
ボク達にできることは…。
「私達がするべきは、
 私達のしたいことは…、
 こんなことではないでしょう?」

彼女が振り向く。
その首からは彼女自身の物と、
もう一つ少年が銀の燭台に架けて置いてきたロザリオが架けられていた。

ロザリオ…十字架に架けられた御子が最後まで貫いた思いはなんだった?
その意味は、全ての人を『許し』『愛する』こと。
ただ、それだけだ。

彼女は少年の栗色の髪を優しく撫でると、こう言った。
「私に出来ること…。
 私の役目は…、
 父と子と聖霊の御名によって、
 …『貴方を許しましょう』。」

少年の目は涙で濡れていたが、それは悲しさとは違う涙。
相変わらずに上気した赤い顔のままで、少年はそのまま目を瞑り
シスターの胸元に顔を近づけると、ロザリオに涙で濡れたくちづけをする。

「ボクに出来ること…。」
少年は口を合わせたまま小さく呟く、
「父と子と聖霊の御名によって…」

『ボクは貴女を愛します。』

春の麗らかな太陽。
開け放たれた窓から全開で降り注ぐ陽光の赤、
澄んだ空の蒼、
大地に芽吹く草木の緑。

キラキラと美しく色を変えるロザリオに二人の唇が添えられた。

完--------------------------------------------------
やば…アップしてわかる、この長さ…。
申し訳ございませ〜ん(;´Д`)
42名無しさんsage :2002/11/29(金) 16:34 ID:75G9Ixfg
>35さん
…イイっ!
冗談抜いて泣きますた(つД`)
43名無しさんsage :2002/11/29(金) 22:14 ID:75G9Ixfg
プレオープンってことで微妙閑散でせうか。
えーっと、実は萌え本スレ483の者です
本スレ491-492に書いた小説の続きを書いているんですが…
ここに書き込んでも問題ないでしょうか?
正直35さんの後ろに書くのはおっそれ多い気もしまつが(;´Д`)
44名無しさんsage :2002/11/29(金) 23:12 ID:jdmrdvYA
>>35
……段違いの文章力に言葉が出ないです…。
繊細な描写にアコライトとプリーストの会話、文章が更に綺麗なものになってます。
素晴らしい小説をありがとう。そして>>35氏、お疲れ様でした!
4535sage :2002/11/29(金) 23:48 ID:ErmVSgYk
>>42さん
うぅ、有難うございますですよぉ。
スレの趣旨に合うかどうか不安でしたが、
そう言っていただけると心強いです。
また、書こうという意思が沸いてきます〜。
もぉ、こういう萌えスレとか大好きなので、
色々と読ませて欲しいです!

>>44さん
ありがとございましたッ!
読んでいただけるだけで嬉しいですね。
ラグナロクは北欧神話なんでしょうけど、
どうしてもアコプリや聖堂のイメージはキリスト教だったので、
それ風のお話にしてしまいました(;´Д`)

また書かせていただいて読んでいただければと思います。
本業は絵の方なのでホントは挿絵も入れたいけど、
時間がかかり過ぎそうで…色々と模索中です。
46名無しさんsage :2002/11/30(土) 15:51 ID:usUOvmRI
本スレ483です。
…違っ(´Д`)書いたのは481-482ですた。
幸い反応が頂けたので、書き込ませていただきます。
しつこくなりますが、481-482から続く連載もの?なのでまずはそちらからご覧下さい〜
47本スレ483sage :2002/11/30(土) 15:52 ID:usUOvmRI
私は♀アサ。普段はクールな司令塔として、熱血漢のリーダーに代わってPTを統率している。
が、今、私の頭の中には「未曾有の危機」という看板が掲げられている。一旦、状況を整理しよう。
先ほど♂騎士に抱きついた後、私はこともあろうに、キ…接吻、を、彼と交わしてしまったのだ。
…あぁ。まだ感触が残っている…。何で、こんなことに。
そして、現在は♀アコに抱き締められて頭を撫でてもらっている。…何でだろう。
前述の通り、私は徹頭徹尾沈着冷静、頼れるPTの指導者であるはずなのだ。
しかし…先ほどの半狂乱、というか暴走。やはり、理性はこのように動いているのだが、思うように体が動かない。
何か、本能のような物に突き動かされ、行動しているのだ。…嫌だ、こんな自分。
「お姉ちゃん…。」
だから誰が言った今のこう何というか鳥肌が立つような猫声!…残念ながら私だ。くっ。
何が何だか本当によく分からない。とにかく私は♀アコに、幼い少女のように甘えている。
うぅ、こんなの、私じゃない!
「という訳で、だ。…今の彼女の状態を説明してほしいんだよな、うん。」
リーダーらしく♂騎士はPTを個室に集め、状況整理を提案した。よし、その調子その調子。
ふと見ると、まだ彼の頬はタラフロッグの如く赤い。私は彼の、いわゆる純情を傷つけてしまったのだ。…二重の意味で恥ずかしい。
「そうさなァ…アサがこの宿屋に戻って来てそんなに経ってねェ頃か。」
テーブルを挟んでリーダーの反対側に位置する♂BSが、頭に指を立ててゆっくりと語り始める。
「いっぺんどっかに消えちまったと思ったら、いきなり俺ンとこ走ってきて抱きついてきたんよな。
 そいで、どうしたのかと思ったら、大好き、だってよ。」
「だって…あたし、アナタの事スキなんだもん。大好き。」
っかぁああぁぁぁっ!目を潤ませるなショボンってするな指と指をくっつけてに当ててもじもじするな!私!
♂BSは既に異変に気付いたらしく、思案するような視線を私に向けている。あぁ、不幸中の幸い。
「…えっと。それで、リーダーが帰って来て、アサちゃんが貴方の方へ走ってって…。…ね?」
続いて♀アコが言葉を紡ぐ。私の頭をぎゅうと抱き締めながら。…今の状況を楽しんでいるような。彼女。
…いや、「ね?」って…。
ぼむっ
一瞬何の音かと思った。何かが燃えて、破裂したような音。…音源はリーダーだった。
♂騎士は顔をこれでもかというぐらいに紅潮させ、倒れてしまったのだ。
そして呻き声を上げながらその場で這いずり回る。もしかしたら先ほどの接吻…の感触が蘇っているのかもしれない。
ぁぅぁ…私もなんか唇がじわじわしてきた。
「そんなに嬉しかったのかしら?」
それは違う気がする。だが、改めて思う。彼は、本当に純粋なのだ。
…とにかく、本当に♂騎士には悪い事をしてしまった…もう合わす顔が無い。
「えへへ…そうだったなら、あたしも嬉しいっ♪」
またまた私の放った言葉だ。…ああぁぁぁあぁ、合わす顔が…。
48本スレ483sage :2002/11/30(土) 15:54 ID:usUOvmRI
私は♀アサ。♀アコに抱き締められながらPT会議の行く末を見守っている。
しつこいようだが、この状態は私にはとても恥ずかしい…。
「媚薬…の一種かもなァ。」
私の荷物から赤ポの空き瓶を見かけた♂BSの最初の一言は、これだった。
この発言に♂騎士もさすがの♀アコも驚きの表情を隠せないようだ。同時、顔も赤くなっている。
私はというと…♀アコの胸に頬を近づけていっている。改めて思うが、危険だ。今の私。ぅぅ。
「見た感じってだけだけど、赤ポで薄めてあるみてェだ。だからこの程度で済んでるのかもな。」
不幸中の、幸い。もし、濃度の高い薬だったりしたら…。考えただけでも恐ろしい。
「とりあえず、俺はダチんトコ行ってくら。錬金術に詳しいヤツがいるんだな。
 そいつに聞けば何か分かるかもしらんし。
 運が良ければアサの状態を直せる薬を作ってくれるかもしれねェ。」
♂BSはそう言うとさっさと準備をしてとっとと出掛けてしまった。
彼は、そういうせっかちな人間なのだ。昔から、そして、いつもいつも。
「…バイバイ、って言えなかった。」
またしてもショボン、となる私。
たしかに、時間を合理的に使う♂BSは、私が何かを伝える前に消えてしまうことが多い。
今、私の行動を支配している私には、それが寂しくてたまらなかったのだろうか。
…私らしくもない。って、今更だが。
「あの、えと、本当にごめんなさいなんだけど…。」
♀アコが私の頭から手を離し、唐突に口を開いた。
「私さ、ちょっとこれから大聖堂に行かなくちゃいけないのよ…。司祭様に呼ばれててね。」
「え。」
一瞬の沈黙。
「…やだ、やだやだやだやだやだ!お姉ちゃんまで行っちゃやだぁっ!」
彼女の言葉に激しい反応を起こす私。
外へ向かうべく歩き始めた♀アコを抱き締め、離そうとしない。
誰とも離れたくない。寂しい。
今の私は、そんなワガママな感情を全面に押し出しているように見える。
そんな気持ち…とうの昔に捨てたはずだったのに。
「あぁ…と、ほら。アコは忙しいんだよ。でもさ、ちゃんとすぐに帰ってくるワケで。」
「そうそう。ちょっと行ったら、急いで帰ってくるからね。留守番、しててくれるかしら?」
♂騎士と、♀アコがそれぞれの笑顔でそれぞれの言葉を投げかけてくれた。
「ね?や、く、そ、く。」
彼女は、そう言って聖職者らしい美しい笑顔を残して去っていった。
「…うんっ。」
♀アコが約束を破ったことはない。その事を私も分かっているのか、すっかり落ち着いたようだ。
そして、宿屋には私とリーダーの二人が残った。
…ん?
49本スレ483sage :2002/11/30(土) 15:57 ID:usUOvmRI
どこまで続くのか分からなくなって来てしいますた。
そして長くて読みづらいという最大の欠陥が…。
今後は改善しつつ、続きを書いて行こうと思います。
最悪やんけ∧‖∧
50名無しさんsage :2002/11/30(土) 18:50 ID:d8psWX2k
>>49

 最 高 で つ (*´Д`)b
51名無したんsage :2002/12/01(日) 00:45 ID:znn8I/Pc
>>49
GoodJob!
52名無しさんsage :2002/12/02(月) 15:43 ID:e17KM.CM
>>49
そうか、これを世の中では
Good Job!!
というわけだな
5326 :2002/12/03(火) 10:50 ID:4JmFFP5Y
そう言えば、もう一年だった。
私は花束と彼の好きだったお酒を持ってあそこを訪れる。
誰も近寄ろうとしない、お墓の一角。ブーツが供えてあるお墓だ。
お酒と花束を供えると、改めてそのお墓をみる。
小さくて、古びているけど、誇らしげな言葉。

『イルファーズ ミッドガルを駈け抜けた男』

そう、彼は文字通り、ミッドガルを駈け抜けた…。

彼と出会ったのは、3年前の事だった。
いつもの様に私は、プロンテラの大聖堂でお祈りをしていた。
「へぇ〜、ここが大聖堂か〜」
無粋な声に集中が途切れてしまった。
「お静かに」
私は少しむっとしながら、その声の人物に注意を促した。
「あ、すいません…」
初心者、だった。どこから来たのだろう?
「あの、アコライトになりたくて」
未来の同士なら、無下にするわけにも行かない。
「こちらへ」
私は彼を神父様の元へと案内する。これから彼が受ける試練の無事を、心の中で祈りながら。

「こんにちわ、シスター」
聞き覚えのある声に振り向くと、少し前に来た彼だった。
「あら、こんにちわ。試練は無事通り抜けた様ですね」
彼は苦笑いを浮かべると、自己紹介をした。
「イルファーズです。よろしく」
「よろしく。未来のプリーストかしら? それともモンク?」
アコライトはその通過点に過ぎない。この質問をすると大抵の人は自分の希望を延々と話してくる。
それを論破するのが私の趣味だ。
でも、彼は違った。
「いえ、もう目的は達成しましたから」
ああ、ポータルで生計を経てるのか。
「これで世界中を走り回る事が出来ます」
この答えにはさすがの私も驚いた。聞けば、彼は見た事の無い地域へ、自分一人の力で行って見たいという。
愚の骨頂だ。今はポータルでどこへでもいけるというのに。
「それじゃあ意味が無いんです」
「この足で歩いて、この目で見て、この耳で聞いて」
「そこに辿り着くまでの事を楽しみたいんで」
笑いながら、そんな小さな夢物語を語った。彼は自分の夢を語ると、さっさと出ていってしまった。
「こうしている時間も惜しいんです」
速度増加をかけながら、彼は走り去ってしまった。
あっけにとられた私は、しばらく彼の出ていった方向をずっと見ていた。
「何だったんだろう…」
5426 :2002/12/03(火) 11:00 ID:4JmFFP5Y
しばらくして、彼が帰ってきた。
傷だらけで、今にも倒れそうだったけど、彼は元気だった。
「いやあ、本当に広いですねミッドガルは」
当たり前だ。さらに北の同盟国と西の敵国、それ以外にもたくさん国はある。
「で、ですね…」
彼は自分の見てきた事を、何故か私に報告しに来たという。相手にするのも面倒なので喋らせておく。
「間違えてオークの村に入っちゃって…」
無茶ばかりしている。彼の実力ではオークに頭蓋骨を叩き割られるだろう。
「命からがら逃げ出してきたんですよ」
そうして、彼はお土産だといって押し花を置いていった。
「モロクで女の子が売ってたんです。きれいだったので」
安い土産だ。口には出さずに目いっぱいの営業スマイルで受け取る。
「それじゃまた」
そう言うと彼はまた出ていった。
今日もらった押し花は、しおりにでもするか。
5526 :2002/12/03(火) 11:31 ID:4JmFFP5Y
それから、彼はプロンテラに来るたびに、私の元を訪れた。
安いお土産と、たくさんの話を持って。
彼の口から出てくる物語は、私も聞いた事の無いような物もあった。
「水の中の洞窟で…」
「宙に浮いてる展望台から…」
「周りの人がみんなで協力して狼を…」
彼の物語は、私にとって知識でしかない物も多かったが、いつしか私も聞きいっていた。
表情にはこれっぽっちも出していなかったけれど。
「で、今回はこれです」
そう言って彼が差し出したのは、大きなリボンだった。
「ロッダフロッグかと思ったら、なんか違うみたいで」
倒すのに苦労していたら、周りの人が手伝ってくれたという。
「その時持ってたやつなんですが、私には似合わないので」
私にも似合わない。というか絶対したくない。やんわりとその事を告げると、
「じゃあ、似合う人にあげてください」
そう言って彼は無理やり私に押し付けて、出ていってしまった。

あのリボンはまだ持っている。だってこれが、彼の形見になってしまったから。

大聖堂で、私は今日もお祈りしていた。多分、彼が来る。いなくても良いのだけど、いなかったらがっかりするから。
別に気になるわけではないけど。彼が可愛そうだからここにいてあげる事にした。
昼になって夜が来て、それでも彼は来なかった。せっかく待ってたのに。
私が寝室に戻ろうとすると、神父様がお声をかけてきてくださった。眠いのに。
「お知らせしなければならないことがあります」
彼が死んだという知らせだった。迷いの森で、ハンターフライに囲まれている人を助けた後、そのまま亡くなったという。
自分だって弱いくせに、何を考えているんだろう。逃げ切れると思ったのだろうか?
「そうですか」
私は一言だけ言うと、自分の部屋に戻った。頬がぬれていた。誰にも見られたくなかった。
正義の味方じゃないのに! アコライトが何をでしゃばってるの? その足で逃げれば良かったじゃない。
いろいろな言葉が出てきた。でも、それを投げかける相手はもういなかった。

彼のお葬式は静かに行われた。知り合いと身内だけ。それも数人程度だった。
最後に、彼の形見が置いてあった。ぼろぼろのマフラー、シューズ。サングラスに愛用のチェイン…。
普通のアコライトの物と違うわけではない。それでも、その風貌は様々な地方を歩いてきた証だった。
私はその中に、気になるものを見つけた。天使のヘアバンド…倒せるはず無いのに、なぜ?
「それは、ですね」
彼の母親が、私の表情に気付いたらしく、近寄ってきた。
「『似合いそうな人がいるから、絶対に持ってくる』って言ってね」
「『いつ渡そうか』ってずっと言ってたの。苦労してとったけど、あの人は笑うからって」
そうか、思い人がいたんだ。
「大聖堂のプリーストさん、って言ってたわ。名前も知らないけど、寂しそうな顔をしてるからって」
声も出なかった。名前も教えてないのに、どうしてそこまでするんだろう?
気があった? そうだとしても、私の雰囲気でわかるはずだ。なぜ?
「世の中に絶望した顔をしている、って言ってたわ。そんなに捨てた物でもないのにって。アコライトの癖に、一人前に説教たれるのよ」
5626 :2002/12/03(火) 11:48 ID:4JmFFP5Y
それから後は覚えていない。他の人に聞くと、私は大声で泣き崩れたそうだ。
パーティーに入って、機械のようにこき使われて、絶望したあの頃。
それ以来、外に出ようなんてこれっぽっちも考えた事なかった。
彼はそれを、否定したかったのだ。そうじゃない。外の世界は希望がたくさんあると。
絶望と同じ位、希望があることを、私に教えてくれようとしていたのだ。
泣き崩れた私を、彼の母親はずっと介抱してくれたそうだ。私はいろいろな事を彼女に話した。
彼の事、自分の事、今までの事、これからの事…。
全て話し終わると、彼女はゆっくり口を開いた。
「それで、あなたはどうしたいのかしら?」

それからすぐに、私は旅に出る事にした。お世話になった大聖堂を後にして、いろいろなところを見て回った。
彼の見たこと、聞いた事、感じた風…
それら全てを自分で感じてみたかった。今ではギルドを作り、小さいながらも仲良くやっている。
もちろん、旅中心のパーティーだ。
そして久々に帰ってきた。彼に旅の報告を済ますと、私はみんなの元へ戻る。
「ごめんなさい。遅くなったわね」
騎士とアサシンがもうそこにいた。ギルドのメンバーである。
「もう一人待ってるんだ。気にすんな」
アサシンがそう言うと、騎士は無言で一人の少女を指差した。最近メンバーに加わったアーチャーである。
私は彼女の肩に手を置くと、微笑みかけながら言った。
「準備は良いかしら? みんな待ってるわよ」
人をからかう癖は、早々抜けない様だ。彼女は慌てて準備を始める。
「自分も遅れた癖に…」
騎士の呟きを聞いた。あいつのヒールはいつもより遅れてだそう。うん。
「あの、準備できました!」
彼女の声を合図に、私達は動き出す。
「あの…突然ですいませんが、聞きたい事があるんです」
彼女の問いに、微笑んで問いかけを待つ。
「その、大きなリボン、どうして付けてるんですか?」
その問いかけに、一瞬躊躇する私だったけど、
「これはね…」
話す事にする。あの人がくれた勇気が、伝えられるような気がして。
旅の素晴らしさ、辛さ、そして、あの人の思いと共に。
私は今日も、駈け抜ける。
5726 :2002/12/03(火) 11:50 ID:4JmFFP5Y
また調子に乗って書いちゃいました。
すいません。
よろしければ感想お願いします。
あと、次回からなるべく短いのにしようと思います。
58名無しさんsage :2002/12/03(火) 12:44 ID:5LDnK.bo
26さん
気にしないでもっと書いて下さいな〜。
短いのでも長いのでももっと読んでみたいです。
とっても泣けますよぅ(つД`)
59名無しさんsage :2002/12/03(火) 13:19 ID:HLBT/zFw
(;_;)
60名無したんsage :2002/12/03(火) 20:09 ID:R/wzBBwc
イイ…!>>26
61名無しさんsage :2002/12/04(水) 00:56 ID:l1TFdnwk
>>26
悲しくも綺麗な物語をありがとうです!
>>26氏のROの世界観は読み手を引き込んでいきますね…。
百合スレ住人じゃ書けない…。
62女鍛冶屋の憂鬱sage :2002/12/04(水) 03:15 ID:Ndppc2hg
「いらっしゃいませー、おいもですよー!」

道行く人々に向かって、周囲の商人達に負けじと大声を張り上げる。
今日もプロンテラの南大通りは、雑多な人間で溢れている。
声をあげるのにも疲れて、ぺたん、と地面に座り込む。

「うー・・・何で売れないかなぁ・・・」

溜息ひとつ、ひとりごちる。
隣の露天からはピンク色の髪をした商人の女の子の、ありがとうございました、と可愛らしい客への礼が聞こえる。
やはりブラックスミスに転職したのは失敗だったのだろうか。
制服も可愛くないし、パーティーを組めば姉御とか姐さんとか呼ばれるし・・・
はらはらと眼の前に落ちてくる、空色の髪を鬱陶しげに掻き上げた。
頭の後ろで髪は二つに括っているが、前髪まで後ろに括る事も出来なかったのだ。

「はぁ・・・何で売れないんだろ・・・」

半ば無意識的に、繰り返した。

「似合わないからじゃないですか?」

と。
横から予想もしない、答えが返ってくる。

「・・・・は?」

まさか自分の独り言に返答する者がいるとは思わないものだから、思わず間抜けな声をあげて・・・
声のした方を見た。
見れば、銀髪に片眼鏡のウィザードが座っている。
なかなかの美形で、にこにこしながら・・・

「いやぁ、だって腕力一番!Intは無しよ!みたいなブラスミさんが可愛らしい声あげたって怖いだけですよー。ほら!腕なんか兄貴を素手で倒せるんじゃない!?ってカンジですし!」

・・・毒を吐いていた。
ぶちぶちと血管が切れる音を聞いた様な気がしながら・・・セシリア・・・BSの少女は、立ち上がった。
63名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:17 ID:Ndppc2hg
「んーっと・・・喧嘩売ってるの、カナ?」

にこやかな笑顔で言うものの、目は笑っていない。
・・・更に右手の拳を左手で揉みほぐし、コキコキ言わせている。

「むぅっ、不満でしたか!?」

さも意外そうな顔で、ウィザードがほざいて・・セシリアがキレた。

「当たり前でしょうがっ!乙女に何て事言ってくれるかなあんたはっ!」

怒鳴り散らすセシリアに、ウィザードはうーん、などと言いながら考え込んで・・・
ぽん、と手を打った。
と、セシリアの腰に手を回し、抱き寄せる。

「美しいお嬢さん・・・怒っていては貴女の美貌が勿体ない。貴女にはそう・・・この、氷の薔薇を差し上げましょう。美しい物は美しい女性に似合う。」

ご丁寧にキラン、と歯を輝かせて言う。
まあ、お顔の作りは丁寧なのでサマにはなっている。

「それでは私はこれにてっ、さらばっ!」

HAHAHA、とよくわからない高笑いをあげながらウィザードが走り去って・・・
セシリアは急な事で呆然とし、また言われ慣れない事を囁かれて真っ赤になり、ぽーっとしていた。
手の中の薔薇の冷たさに、はたと気付いて手の中の物を見た。
決して溶けない筈の氷の薔薇が溶けていた。
・・・と言うか、すぐそこの花売りが売っている2zの花をフロストダイバで凍らせた物だった。

「あん・・・・」

うつむき、ぴくぴくと身体を震わせるセシリアに、一連の騒動ですっかり集まっている野次馬がどよめく。
泣くか!?泣くのか!?だの、あのWizのにーちゃんやるなあ、だのBSたんハァハァ、だの。
まあ、そんな野次馬に気付く事もなく・・・セシリアが心のままに叫んだ。

「あんにゃろう、今度会ったらブッ殺す!」

野次馬達は全速力で逃げ出した。
64名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:18 ID:Ndppc2hg
セシリア・バーシュレットは全速力で山を駆け下りていた。
カートの車輪がガラガラと悲鳴をあげ、つんのめりそうになりながらも駆け続ける。
後ろから迫るのは、無数のギチギチと言う音と共に押し寄せる、蟲だ。

「ひぃぁぁああああ!死ぬ、死ぬ!マヂで死ぬってば!」

半泣きになりながら駆けていく。
・・・事の起こりは、レベル上げに訪れたミョルニル山脈の東の端・・・いわゆるマンドラ森の北、で・・・アンドレの一匹を叩いた事だった。
一匹なら何とかなるだろうと思い、2HA、両手持ちの斧で殴り始めたのは良かったが・・
同じ種族が襲われていると仲間を救う為に参戦してくる習性が災いして、増えるわ増えるわ。
本来ならばアンドレが大量出現する事など滅多にない。
だが、滅多にないと言う事は、滅多にはあると言うことだ。
不幸な事に、セシリアはあまり幸運とは言えなかった様である。
まあ、そんな訳でカートを引きずりながらセシリアは全力疾走していた。
ぐんぐんと風景が流れていき・・・焦っていたのが災いしたのか道を間違え、先が行き止まりである事を知る。

(も、もうダメだ・・・)

息は荒く、心臓の拍動は休み無く胸を灼く。
喉がヒリつき、声を出す事もままならない。
行き止まりで立ちすくみ、迫るギチギチという節足が擦れる音を聞いて・・・恐怖に、ぎゅっと目をつむった。
65名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:18 ID:Ndppc2hg
と。

「原始の精霊、炎の仔。地に宿りて焼き尽くせ。」

言葉が力を持って、大気を渡る。
魔術師の手にした青い魔法の石が、軽やかな音を立てて粉々に吹き飛ぶ。

「Fire Piller!」

力強い結印と共に言葉が放たれ、セシリアの手前の地面が突如、噴火口と化した。
ごうごうと炎を吹き上げ、業火が襲い掛からんとするアンドレを焼き尽くす。
舞い上がる炎と溶岩がアンドレの四肢を吹き飛ばし、ボトボトと残滓を大地へと撒き散らした。
全てのアンドレの息を止めると、噴煙は徐々に穏やかになり、やがてゆっくりと消えていく。
一瞬前までそこに火口が存在していたとは思えない、何ら変わらぬ大地。
そして何の音も聞こえなくなって・・・セシリアが、怖々と眼を開く。
そこには蟲の千切れ飛んだ体節が広がり、体液の焼ける匂いと焦げ臭さが充満して。
銀髪の片眼鏡の魔術師が相も変わらぬ笑顔で立っていた。

「大丈夫ですか?」

笑顔のままに、言う。

「だ、だいじょ・・・・」

大丈夫なハズ無い、と言おうとしてセシリアの視界がぐるん、と傾いた。
地面が傾いてるのではなく、自分が倒れている事に気付いたのは側頭部を地面に打ち付けるごしゃ、と言う鈍い音を聞いてからだった。
そうして、セシリアの意識は闇に落ちていった。
最後に思った。
あいつの眼って、いつ開くんだろう?
66名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:19 ID:Ndppc2hg
フィオット・ヘリオドールは非力である。
どこからどう見ても非力な外見であるから、ノービス時代は随分と苦労もした。
もっとも、魔術師になってからというもの、先天的に向いていたのか苦労した記憶は無い。
周囲が魔術書とにらめっこして、やっとファイアーボルトを出せる頃には既にファイアーボールを撃っていた。
友人達がやっと彼に追いつき、火球を打ち出す頃には彼は炎の壁を呪文で作り出していた。
まあ、いわゆるエリート街道を歩んできた彼だが・・・取り敢えず彼は今、今までに無く危機だった。
右肩がパンパンに腫れ上がっている。
はぁ、と溜息を付きながら白いハーブを噛み、肩に貼り付けて布を巻いた。
すっ、と肩が幾分か軽くなった気がする。
司祭にヒールを掛けて貰えば、あっという間に完治なのだが。

「まったく・・・何で貴女はそんなに重いんですか・・・」

ソファに座り、ベッドで横たわるる少女、セシリアに声を掛けた。
返答は無い、期待した訳でもない。過度の疲労と緊張で眠っているのは知っている。
アルギオペ、いわゆる赤芋虫を倒しに行こうと思い、気紛れに遠回りしてみた。
そうして見つけたのは、蟻の大群に追われる空色の髪のBSの少女だった。
見間違うハズも無い。彼にとって彼女は特別なのだから。
露店で買ってきたエールの瓶の栓を抜く。
きゅぽん、と音を立ててコルクを飛ばし、直接喉へと流し込んだ。
ほろ苦いアルコールが疲れた身体に心地よい。
エールを片手に、フィオットは立ち上がった。
ぎしぎしと床を軋ませて、ベッドの傍らに立った。
すやすやと彼女は眠っている。
そっと右手を伸ばし、頬に触れる。

「んっ・・・・」

軽く眉をひそめ、セシリアが身じろぎした。
一瞬、起こしてしまったかと思ったが・・・動かない。
どうやら心配は杞憂だったらしい。
寝顔を見て、優しい微笑みを浮かべて・・・
セシリアの左手を手を取り、手の甲に唇を一瞬触れさせた。

「おやすみ、僕のお姫様・・・」

酔ってますね、とフィオットは自嘲して、ベランダへと出た。
安宿で床は軋むし、すきま風も通るが夜景だけは悪くない。
67名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:20 ID:Ndppc2hg
ばたん、とベランダへ続くドアが閉まった音を聞いて・・・
セシリアははぁ、と息をついた。
火照った頬に、冷たいシーツの感触が心地よい。
体中の筋肉が悲鳴をあげているが、構わず左手を引き寄せて・・・
左手の甲に、唇を当ててみた。

(やだ、何してんだろあたしっ・・・・)

半ば無意識に取った行動が、無性に恥ずかしかった。
ぎゅう、と顔を枕に押し付ける。
高鳴る鼓動を感じながら、セシリアは再び眠りについた。


翌朝、宿の一階に降りると彼は既に食卓で待っていた。
宿のおばちゃんがパンと卵とスープを机に置いて、去っていったのを眼で追って・・・

「あ、あの・・・おはよう。」
「おはようございます。」

にこにこと、彼は笑顔だ。彼の場合、笑顔だから裏がない・・・とは到底言えないが。

「あの・・・その・・・き、昨日はありがとねっ」

頬を染めて、一気に言った。
妙に意識しているせいで、目を合わせられない。
緊張するセシリアとは裏腹に、フィオットは焦る素振りすらない。

「いえいえ、お気になさらず。それよりもですね、朝市に行ったら掘り出し物があったのでプレゼントですよー」
「え、ええっ!?」

生まれてこの方、男からプレゼントなど貰った事の無いセシリアがびっくりして顔をあげた。
いや、フロストダイバで凍らせた2zの花もプレゼントに入るならば、その限りでは無いが。
68名無しさんsage :2002/12/04(水) 03:20 ID:Ndppc2hg
期待と緊張で高鳴るセシリアの前に、フィオットがそれを置いた。

がちゃん。

重々しい鋼鉄に、テーブルが一瞬沈み込んだ。

「・・・・・え?」

視覚情報を一瞬信じられず、セシリアはもう一度それを眺めてみた。
実用本位の無骨なライン。
丈夫さと耐久性、耐熱性を追求した結果、鋼鉄をふんだんに用い、頑丈そうだ。
飾り気の無いデザインは、どこの地方でも変わらないだろう。
もっとも、被っても前が見えなくないように穴は開いている。・・・四角い穴が。
どこからどう見ても、完璧、かつ絶対的に、疑いようもなく溶接マスクだった。

「あのー・・・わたし、まだ調子おかしいのかな?溶接マスクに見えるんですけど・・・」
「大丈夫です、溶接マスクですよ♪」

悪気のカケラも無いフィオットの反応に、セシリアのこめかみにピキッと音を立てて青筋が浮かんだ。
次第、紅潮した頬が静まり、表情がドス黒い笑顔に染まる。
無言でグローブを取り出すと両手にはめて・・・ゆらりと席を立つ。
すたすたと無造作にフィオットに近寄って・・・

「どこの世界に・・・女に溶接マスクを贈る男がいるかぁっ!」

声に乗せて、拳を繰り出した。
ひゅう、と唸りを上げてフィオットの頬に当たるかと思った瞬間・・・ひょい、と避けた。

「くのっ!くのっ!くのっ!」

しゅんしゅんしゅん、とスピードに乗せて拳を繰り出す。
が、それすらも笑顔でフィオットがひょいひょいとかわしている。

「HAHAHAHAHA、当たりませんよ、マイハニー♪」
「避けるんじゃないっ!」

爽やかな笑みで、拳をかわすフィオットの首に巻かれているのは、モッキングマフラーと呼ばれる物だった。
マフラーから溢れる人外の力が、フィオットの動きを化け物じみた物にさせているのである。

「ああ、もうっ!ムカつくぅーっっっ!!」

セシリアの叫びが、安宿の食堂に響いた。


−END−
6962(萌えスレ606)sage :2002/12/04(水) 03:23 ID:Ndppc2hg
萌えスレで電波を受信して、「可愛いBSたん」を書きたくて書き始めたハズでつが・・
ふと気付いたら激しく女性向けな気がするのは 気 の せ い で す か ?

長文&駄文失敬致しました、それでわ〜(逃走
70名無したんsage :2002/12/04(水) 11:21 ID:Kra5YBVQ
>>69
激しくグッジョブ。
71名無したんsage :2002/12/04(水) 20:45 ID:e8eTwhmQ
>>69 イイ!
722さん,20さん、すみませんお借りしました。sage :2002/12/05(木) 05:42 ID:rCfwESOU
「次の方、どうぞ?」
「またまた来たぜ、シャオアさ〜ん♪(ALT+4)」
 私は『第一声がシャオアさ〜ん♪(ALT+4)の方には問答無用で紐を引くべし』のマニュアル通り
 紐を引きました。

 ガッコン

 ―って、落とし穴!? …ここってホントに懺悔室なのでしょうか?
「ふっ、そうそう何度も同じ手には引っかかりませんよ。しかも!今日は邪魔者も出かけてるのは確認済みです。」
 …信じられません。足元に落とし穴が開いてるのに、その商人さんは穴の上に立ってます。
 あ、良く見るとカートをつっかえ棒にして耐えているようですね。…見上げた根性です。
 ―ん? 商人さん?
「今日こそは我が怒涛の如き懺悔をダイレクトに聞いてください(*´Д`*)」

 ガ ッ コ ン

 私は『さらに、それが商人さんであった場合青い紐を引くべし』のマニュアル通り
 紐を引きました。
「ぬおぉぉぉぉぉぉおぉおぉ」
 懺悔室の床全体が落とし穴へと変わると、商人さんは深い穴の底へと吸い込まれていきました。

 …地底からは角突きヘルムと、ハァハァと言う荒い息遣いが聞こえてきたような気がしますが、
 細かいことは気にしない事にして青い紐をもう一度引き床に元に戻しました。
「な、何故ここに兄貴が〜〜〜〜〜!」
 聞こえません、知りません。きっと邪な思いを抱いたものに対する天罰です。
「シャ、シャオアさ〜〜〜ん。 あっ、そこはっ…そんな激し」
 聞こえないものは聞こえません!!

 ( 閑 話 休 題 )

…失礼、少々取り乱してしまいました(コホン)
最近、懺悔室を訪れる迷える子羊(の皮を被った狼さん)が増え、シャオアさんの休む暇がありません。
そこで今日は私フィーアが代理です。

「次の方、どうぞ?」
「シャオアさ〜ん♪(ALT+4)」
 私は『第一声がシャオアさ〜ん♪(ALT+4)の方には問答無用で紐を引くべし』のマニュアル通り
 紐を引きました。

 ガッコン

―懺悔室は今日も盛況な模様です。 …はた迷惑なことに。
7372sage :2002/12/05(木) 05:48 ID:rCfwESOU
こう言うの書くの初めてなので、お目汚しでしたらスルーしてください。

ちょうど懺悔ネタを考えてたところにこのスレを見て、一気に妄想膨らみました。
だから本題はまた別にあったり。
74名無しさん :2002/12/05(木) 10:56 ID:7V/pBuQo
>>72
本題と全く横道なレスだけど・・・

商 人 必 死 だ な

落とし穴にカートつかって懸命に耐える姿想像して
激しくワラタぞと。
75とあるプリの日常 青箱編##の人だったりします :2002/12/06(金) 01:22 ID:Ux/UJAj2
今日は友人に「聖書を読んでばかりじゃなくてたまには外に出なさいよ。」と、砂漠の都市モロクまで連れられました。
世間一般では、このような事を拉致、とでも言うのでしょうか。
それで、なんだかんだでメンバーは私、騎士のアルナさん、ウィザードのレオンさん、アサシンのクーレイさんです。
ちなみに、私の友人というのはアルナさんで、彼女は身のこなしが良く、敵からの攻撃をいつも最小限に押さえています。
あと、アサシンのクーレイさんとお付き合いをしてるとかなんとか・・・。
そんなどうでもいい話より、成果の方ですが。
レクイエム、というモンスターが落とした古くて青い箱が5つほど、ほかにも足枷、こうもりの翼など、よくわからないアイテムがたくさん手に入りました。
足枷はともかくとして、今皆さんでこの箱をどうしようか、という話をしているのですが・・・。
アルナさんは、というと。
「全部開けちゃおうよ、面白そうだし。」
続いてレオンさん。
「まぁ、私はどうでもいいな。まかせるよ。」
そしてクーレイさん。
「売っちまおーぜ、良い金になんだろ。」
と、三者三様ですね。
その様子をアホか、と眺めていたところ、急に私にお鉢が回ってきました。
「え、えーと。
 うん、一個だけでも十分高いので、一個だけ売って、後は空ける、というのでどうでしょう。」
と、まぁ、こう答えて見ますか。

結果として、私の案が採用され、全員に箱が行き渡りました。
それじゃあ、まず私から、と、アルナさんが箱をあけます。
「何が出るかなー。」
ぱかっ
箱をあけると、アルナさんの顔は氷尽き、中身毎クーレイさんへ投げつけました。
「こんなのいらないわよーっ!!」
と、叫びながら。

中身は何だったのでしょう?と見てみると。
「フード、スロット付きの。」
・・・アルナさんにはこの程度で十分でしょう。

「さて、それじゃ私が開けさせてもらう。」
と、レオンさんが開けると。
「ふむ、ミニグラスか。」
と、取り出したミニグラスをチャッとかけてみると、良くお似合いでした。

「んじゃ次俺なー。」と、今度はクーレイさんが開けました。
「・・・おぉー、目隠しか。」
目隠しを大事そうに取り出しなめるように私とアルナさんを見比べます。
「こらぁっ!!」
ゲシゲシとアルナさんがクーレイさんをたたいたり蹴ったりしていますが
後は私なのでとりあえず明けて見ましょう。
「えーっとこれは・・・ハチマキ、ですね。」
面白いものが箱に詰められているものです。
とりあえず、装備してみました。
似合うのでしょうか?

「とりあえず、4つ開けて後は売るだけなんだけど・・・。」
と、アルナさんが仰ったので。
「あ、私はお金いらないですよ。」
と、答えておきます。
「そぉ?それじゃ私達で分けちゃうね。」とあっさりとした返事が返ってきました。
貴方達で分けるぐらいなら寄付でもしなさいよね。
と、思っていると、いきなりクーレイさんが。
「シャーオアさん。」
と、私を呼びながら足枷と目隠しをつけてきました。
「クーレイっ!!」
ドゴドガバキッ!!グシャッ!! キュィーン バガンッ!! ブスッ。
目隠しをつけたままなので良くわからないのですが、殴打、バッシュ、何か鋭利な物で何かを指した音がそれぞれ聞こえてきました。
まぁ、私にこんなものを装備させるような輩は死んでしまった方が世のためですか。
「さて、そろそろ私は教会へ帰りますね。」
「あぁ、お気をつけて。」
結局返事をしたのはレオンさんだけでした。

ふぅ、やっぱり私には外の世界よりも、教会でゆっくりと聖書を読む生活の方が性に合うようです。
76名無しさん>>2の人です :2002/12/06(金) 01:24 ID:Ux/UJAj2
うー、長ったらしくて申し訳ありません。
あと、こんなのシャオアさんじゃない、と思った方、平にご容赦。
私脳内ではこんなキャラです。

青箱物を、とか言っておきながら結構間があいてしまったことについても陳謝いたします。

また、シャオアを使って書いていただける方。
まことにありがとうございますです。
ではこれにて〜

//次回はどんなの書きましょ?
77名無しさんsage :2002/12/06(金) 03:15 ID:TiKRIxY2
今日も今日とて懺悔室、迷える子羊に救いの手を差し伸べるのが私の仕事です

「シャオアさん、告白します。俺この間、彼女と肉体関係になれたんですよ!」
自慢ですか、そうですか

ガコン

「シャオアさん、私実はオカマなんです!」
今更カミングアウトされましても、昨晩泣きながら私の所に来た♂アコ君の心の傷は癒えないと思います、永久に

ガコン

「シャオアさん、俺このあいだダチの彼女とヤっちゃったんです」
一昨日その子は先に逝きました。あなたも後を追って下さい

ガコン

「シャオアさん、私……つい出来心で違法アイテムに手を出してしまって……」

通 報 し ま す た


……ふう、やはりハードな仕事です
しかも自分の心が荒んでいくのが手に取るようにわかります
こう毎日この様な相談をうけていてはいくら私でも……

「すみません、懺悔します」
おや? この方は始めてですね、男性の剣士さんですか
「結構前の事なんですけど、俺下水で溜めこみやってたんですよ」
なるほど、あなたはゴキが好みと……
「で、そこで俺通りすがりのアーチャーさんに注意されたんですよ、停止表示板頭に付けた人」
ふむふむ、え〜っとゴキの紐は……
「俺カッとなってその場では口汚なく罵っちゃって」
……緑追加です
「でもですね、良く考えたんですよ。人を注意するってどういう事なのかって」
赤蝙蝠も数匹用意しておくと鬱陶しさアップですね
「そりゃ、怒りに任せてって時もあるんだろうけど、その人は俺がわかりやすいよう、俺が納得しやすい様気を使いながら話してくれました」
部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はできましたか?
「罵られて不快な思いをするかもしれない、相手がわかってくれなくて言い合いで無駄な時間を過ごす事になるかもしれない。それでもその人は俺を注意してくれたんですよ」
ん?
「そう考えたら俺すっげー恥ずかしくなっちゃって」
…………。
「今すぐにでも謝りたいんですけど、もう何処行ったかわかんんなくて。俺どうしたらいいですか!?」
それは、その方を見つけたいという事ですか?
「はい! 色々な所探したんですけど見つからなくて、名前も知らない、顔も……実は良く覚えてないんです」
それでは見つけ出すのはほぼ不可能では?
「はい……そうは思いますけど……俺……」
なるほど、わかりました。では方向性を変えてみましょう
「方向性?」
その人が望む事はなんですか? 無駄にそこら中を探し回られる事ですか?
「…………」
その方の望みはあなたがその方の言いたい事を理解する事ではないのですか?
「はい」
そして、その方が言いたい事はただ下水で溜め込みをしないで欲しいという事だけだったのでしょうか?
「…………俺、頭良くないからわかんないですけど、もっと周りの人間の事を考えろとかそういう事だったんじゃないかなって……」
では、あなたが為すべき事も見えてくるのではないですか?
「…………」
どうしても納得できないというのなら、代わりに私が聞きましょう
二度とあのような真似はしないと、もっと周りの者を思いやれるようになると
さあ、今ここで誓えますか?
「もちろんです! 俺はもうあんな真似は二度としません!」
神はいつでもあなたを見ていますよ?
「関係無い! 誰が見てようが見てまいが俺はやらない!」

ええ、そうやって頑張るあなたを神はいつでも見守って下さいますよ
78名無しさんsage :2002/12/06(金) 03:15 ID:TiKRIxY2
剣士さんは何かふっきれた顔で帰って行かれました
「あ〜、なんといおうか〜、その〜」
聞きましたね、親切なアーチャーさん?
「う〜、あ〜」
頭に停止表示板付けたアーチャーなんてあなたぐらいです。見つからなかったのは女遊びに忙しくてロクに外にも出てなかったからですか?
「ら〜、た〜」
下のヒドラ部屋から出してあげた理由もわかりますね?
「……しゅみましぇん、ダチにはマジで謝っときます」
彼も自分の探し人が、友人の彼女を寝盗るだのなんだので揉めているなんて夢にも思ってないでしょう
「っだーーーー! 俺が悪かったです! 猛省してますって!」
本当ですか?
「いや、あんな事言われちゃあ……さすがに本気で堪えました。俺、もう女遊び控えます」
あなたが優しい人なのは知っています。そこに女性が惹かれるという事もあるでしょう
ですがそれら全てにその場の勢いだけで応えてしまうのはとても不誠実な事ですよ
「……はい」
では、すぐに行って謝って来なさい…………きっと許してはくれないでしょうけど
「……当然です。そーだよな〜、許してくれる訳ねーよ」
ではどうします?
「どうもしないっすよ。何されたってひたすら詫びるだけっす」
よろしい、せいぜい派手にぶん殴られてくるがいいです
「へ〜い」

翌日、彼、全身打撲でかつぎこまれたとの事です
相手は歴戦の騎士殿です。この程度で済んだのは僥倖というものでしょう


今日も相変わらず困ったさんは多いですが……他人からどう見えるかはさておき、私は結構気に入っています、このお仕事
79名無しさんsage :2002/12/06(金) 03:26 ID:TiKRIxY2
>>8>>77>>78です
シャオアさんは、書いてる自分が和むという素晴らしいキャラクターでして
……なもんでついまた書いてしまいました。ごめんなさい

>>75
目隠しと足枷に看護帽というコンボがワタクシ好みでして(ガコン)
8026 :2002/12/06(金) 13:11 ID:sXsfN.fw
 古くて青い箱。
 一部のモンスターもつというそれは、魔力を秘めている。
 そう、開ける物を虜にする魔力を…。

「さて、今日はこの辺にしとくか」
 彼の名はテイラス。一人の剣士である。今日も今日とて沈没船で狩りを続ける剣士だ。
 どうやら今日の狩りは終了らしい。
「?」
 と、どこからかカラカラという、おなじみの音が聞こえてきた。パイレーツスケルトンである。
「これでラストか」
 彼はしまった剣を取り出すと、再び構えた。それが、彼の長い時間の始まりだった…。

「これは…まさか!」
 そう、彼が手にしたのは古くて青い箱。『青箱』の通称で知られるそれは、開ければミッドガル中ににあるアイテムの中からランダムで一つをもたらすという、不思議な箱である。
 しかし、それは多岐にわたり、ゼロピーから伝説の魔剣ミストルティンまで様々である。
 またそれは高額にて取引され、冒険者の間では、
「青箱一つで家が建つ。五つで土地が、十ありゃ一生左団扇」
 と、ちょっとした小唄になっているほどである。
 ここで、彼に最大の選択肢が訪れた。
 開けるか。売るか。
 これは彼にとって最大の選択肢であった。
(売れば、貧乏生活から脱出できる…高い武器防具も買えるし、精錬だってできるし…)
(しかし、開けて出てきたものがあの伝説の魔剣、ミストルティンとかエクスカリバーだったらどうするよ)
 彼は震える手を押さえながら、箱の蓋に手をかける。ゆっくりと、ゆっくりと…
(開けるのか? 俺は…)
 緊張の一瞬。その時、背後に気配がした。
「誰だ!!!!」
 振りかえるとそこには、アコライトの女性がいた。狩りに来たのだろう。
「すいません、おじゃまし…」
 しかし彼女はテイラスの顔を見たとたん、泣きそうな顔になった。そりゃそうだ。テイラスの顔を今見たら、誰だって回れ右して逃げたくなる。
「あ…あぅ…」
 既に涙目である。
「いや、その、ちょっと…」
 なにか弁解しようとするテイラス。かなり必死だ。立ちあがると、アコライトに近寄ろうとするが、
「ひっ!」
 彼女は後ずさりを始めた。顔の表情自体変わっていないのだから当たり前である。
「いや、誤解だ!」
 まるで浮気を見られた亭主のような言い訳をするテイラス。
「こ…来ないで…」
 こちらもこちらでホラー映画のヒロインの様に後ずさりをするアコライト。
 その時は一瞬だった。テイラスの手から青箱が滑り落ちた。
『あ!』
 二人の声が同時に発せられるのを待つことなく、近くにいたククレがそれをかっさらっていった。
「ああ! 俺の青箱〜〜〜〜〜!」
 時既に遅し。ククレはすばやい動きで何処へと去っていってしまった。
 言葉もなく立ち尽くすテイラス。アコライトはそのすきに回れ右して一目散に逃げていった。
 彼は一週間ほど、宿屋から出てこなかったという。

 古くて青い箱。それは冒険者達を虜にする、魔性の箱。
 気が付けば、あなたも…。
8126 :2002/12/06(金) 13:14 ID:sXsfN.fw
重い話ばかりでも何なので、ちょっとライトタッチな物を書いてみました。
私は青箱取った事無いんですけどね…。
82名無しさんsage :2002/12/10(火) 21:58 ID:7UcDMHKw
今日はシャオアさんは非常に不機嫌なので私「フリート」♀(プリなりたて)が代理を務めさせてもらいました。
シャオアさんから50ページほどの対応マニュアルを渡されているので安心して子羊を落としています。

「シャオアさ〜ん(Alt+4新エモ)」
 ガ コ ン
「あ゙あ゙ぁ゙〜、なしてここに激しく凄いヒドラがぁ〜!ギャース・・・」
(あ、紐を間違えてしまいました・・・まぁいいか)

ふぅ、これではシャオアさんの機嫌が悪くなるのも当然ですね・・・
(さて、悲鳴がまだ若干聞こえていますがお茶にでもしますかね)

「たのもー!」
(あらら、誰か着てしまいました・・・って、たのもー!?)
「ここにて悩みを聞いてくれる巫女殿がおられると聞いて参り申した」
(巫女!? 私プリーストですよ? それになんかやたら古風なしゃべり方です・・・)

どんな人かとのぞき窓を使って見てみました。
懺悔椅子に座っていたのは・・・

 徘 徊 す る 者 ・ ・ ・

「はははは、はいぃぃぃぃ どどどどどのような悩みでででしょうかぁ?」(半泣)
(シャオアさん。もし、生きて明日の朝日を見れたら・・・
   特別手当と称してあなたの躯を要求していいですか・・・・?)
8349sage :2002/12/12(木) 19:06 ID:IDV.H6EY
皆さん小説上手です。
俺、書きづらいですトホホ。
でもせっかくぐっじょぶ言って頂けたので続きを書かせて下さい。
とうっ。

【以下の小説は萌え本スレ481-482→当スレ47-48から続いている作品です】
8449sage :2002/12/12(木) 19:06 ID:IDV.H6EY
私は♀アサ。今、非常に困っている。
二人きりになってしまった。リーダーである♂騎士と。宿屋で。
普段ならば、いい。
私が所属するこのPTは恋愛関係とか、そういった物には皆が皆無頓着だからだ。
だが、しかし。今の私は違う。
「…二人っきり…だね。」
私の喉から、甘い、とろけるような声が漏れ出す。
その声色は何かを企んでいるようにも聞こえ、ただそう思っただけように聞こえ…。
何より、リーダーを誘う誘惑の音色に聞こえた。
やめてくれ…やめてくれ、本当に!もう!うわぁん。
やはり体が私の言う事を聞かない。ただひたすら、自分の欲望の一部に動かされ続ける。
媚薬。♂BSはそう言っていた。となると…このままでは危険だ。
「…うぇ?うぇぁあ、そうだなぁ。」
声が裏返った。かっこ悪いぞ。
「えっとね…。んっとぉ…。」
「ん?何?」
何普通に返事してる!リーダー!
さっきの話聞いてれば今の私がどんなに危険な存在か分かるだろうに…。
…いや、わからなかったのかも。リーダーだし。
「あたしね…アナタのこと好きだよっ。ずっと一緒にいたい。」
…もう突っ込む気も失せて来た。ああ、私のイメージよサヨウナラ。
ぼむっ。ばふっ。
二回。彼の顔がまたしても真っ赤に染る。一体どんな心境なんだろうか。不憫だ。
「だから、その、ね?…えぃっ。」
がばっ。
私は掛け声と同時にリーダーの胸に飛びついた。それなりの勢いで。
力の強い、優しい彼はそれを避けることなく受け止める。…今度は三回だ。
私の頬が、胸が、腕が、肩が、鎧を着ていないリーダーの体と密着する。
あたたかいぬくもりと、二人の吐息、鼓動。全てが耳と肌で感じられる。
非常に大きいな彼の胸。
♀アコのしなやかなそれとは違い、太くてごつごつと固い。
リーダーは…こんなに逞しかったか。剣士時代、私に護られていた彼が。
…力強くて、心地良い。
って、っはっ!な、なな何を考えている自分!精神の私が負けちゃったらダメなんだってば!
が、頑張れ!私!
8549sage :2002/12/12(木) 19:06 ID:IDV.H6EY
私は♀アサ。精神の私の抵抗もむなしく、私は彼に抱きついてそのままだ。
「…抱き返して欲しいの。」
悪いこと言うのはこの口か!この口か!
「…だめならせめて撫でて欲しいな…。」
猫なで声…だから私には似合わないんだってば…。
いつだったか、♀アコに猫耳バンドを付けられた時のことを思い出す。
その時はたしか♂BSに笑われた。当然ソニックブローの刑だ。どうでもいいが。
「…。」
リーダーはひたすら黙っていた。否、カチコチに固まっていた。
無理もない。無頓着とはいえ、私達は男女だ。これだけ長いこと密着していれば…。
…ぅぁぁん、恥ずかしいすぎる。ぅぅ。
「…むぅ。」
私が不満そうに呟く。反応が得られないことがつまらなかったのだろう。
♂騎士と目を合わせるために、私は彼の顔をこちらへ向けた。
彼の、深い緑の瞳が、静かに私へ向けられる。
どくん…どくん…どくん…。
誰の鼓動の音だろう。二人でくっついているため、どちらのものか分からない。
沈黙。
ふだん喧騒に飲み込まれているプロンテラ中央広場も、今日は比較的静かだ。
PTで取った個室に、静寂が流れるには十分な条件だった。
「…えぃっ。」
唇がまた熱くなった。同時に、心も。
静かに、ただ静かに。私とリーダーは二度目の口づけをした。
私より彼の方がはるかに背が高い。少し背伸びをしないと届くはずがない。
事故でも何でもなく、私は意図的に彼と唇を合わせたのだ。
再度空気の流れが耳に入ってくる。長い時間私達はそのままでいた。
鼓動が早くなる。私のも。彼のも。…精神の私も。
時間が止まっていたような気がした。
体が火照る。リーダーを抱き締める力が強くなる。目が潤んできたのが分かる。
今、私はどんな表情をしている?彼はどんな表情をしている?
離れたくない。このままで居たい。ずっとこのぬくもりを感じていたい。
でも、このままじゃ私は…私でなくなってしまう。
…本当に、どうしてしまったんだろう。私は。
恐い。自分が…恐い。
86名無したんsage :2002/12/13(金) 21:06 ID:F/R1gJmQ
>>83
ツヅキ待ッテタヨ
8749sage :2002/12/14(土) 01:16 ID:gw6NPPjQ
>>86
そう言って頂けると書いてる甲斐があるってもんです(つД`)
がんばって続き書きますです
88名無しさんsage :2002/12/18(水) 12:46 ID:DvE6gctQ
>>83
イイ・・・(*´д`)
激しく続きを希望。このドキドキ感がもう・・・
89名無しさんsage :2002/12/20(金) 15:08 ID:WVZv64Ds
マジさんのお話

壁のようにそびえる崖のふもと。
その岩陰に、一人のマジシャンが座り込んでいる。
ここはアルデバランと首都を分断する深い森の中。
旅慣れた冒険者でも進入することをためらう、手強い魔物達の巣窟。

数時間前。
 「ファイアーボルトの威力も上がってきたし〜♪」
 「やっとワンドも買えたし〜♪」
 「マンドラゴラ倒してハーブ集めぇ〜♪」
 「もしかしたら四つ葉のクローバーなんかも〜♪」
のん気に鼻歌なんかを歌いながら、
軽い足取りでプロンテラの西門を通り抜けて行くマジシャンの娘がいた。
やや長い髪をうしろに束ね、卵殻をかぶっている。

この可笑しな歌から察するに、どうやらマンドラゴラを狩りに行く様子。
貫禄や威厳のかけらも無い彼女の風体から察するに、まだまだ魔術師としては未熟なのだろうが
これまでにも何度か戦ったことがある相手で、
苦戦する理由もない気楽な探検のハズだった・・・が・・・


続くかも
90名無したんsage :2002/12/20(金) 17:03 ID:/gpxq9RI
>>89
続けてください、おながいします
マジ子タンのその後が気になるよう
9126 :2002/12/20(金) 18:51 ID:E2YxwNCI
 プロンテラの外れ、本来なら静かであるその場所に、似合わない音が響いている。
 ハンマーが鉄とかち合う音。鉄同士が弾ける音が、何日も続いていた。
 寂れた小屋から響いてくるそれは、もう三日の間なり続いていた。
 ふと、音が止まる。しばらくの間止まっていた音は、男の声と共に破られる。
「ダメだ! こんなもんではない!」
 その怒号が止むと、再び鉄の弾ける音が始まる。
 その男、ブラックスミスである彼は、一つの約束を果たそうとしていた。
9226 :2002/12/20(金) 19:08 ID:E2YxwNCI
 それはいつもの日課である、自作武器を露店で売っていた時の事だった。
 いつもの様に彼の武器は売れない。それは値段のせいでもあるのだが、彼自身愛想のない男であることも関係していた。
 店をたたもうとしていた時、一人の女騎士がやってきた。
「主人、物を見せてくれない?」
(着こんだ鎧に新品独特の光がない。歳は若い様だが、激戦を潜り抜けてきたのだろう。常に隙がない。)
 彼はそう見ると、奥から自分で材料を吟味して作り出した物を持ってきた。
 黙ってそれを受け取ると、彼女はほんの少しだけ眺め、そして一言、
「良い腕ね」
 そう言って、一振りの剣を買っていった。
 それが、彼にとって運命の出会いだった。
9326 :2002/12/20(金) 19:13 ID:E2YxwNCI
 それからしばらく、彼女は彼の露店でいろいろな物を買っていった。
 とくに何かを話したわけではない。ただ彼女が店に来て、彼が物を売る。それだけだった。
 それだけではあったが、二人は確かに信頼しあっていた。
 ある日、騎士は彼に一つの依頼をした。
「剣を、作って欲しいの」
 多くは語らなかった。しかし材料を見る限り、最高の、そしてこの世に二つとない物を作れ、と言っているように思えた。
「心得た」
 二人の間では、それで充分だった。彼は自分の出来うる限りの腕を持って、一振りの剣を打つことを決めたのである。
9426 :2002/12/20(金) 19:21 ID:E2YxwNCI
 翌日、彼は材料集めにいそしんだ。騎士から貰った物だけではなく、自分で納得できるものを作ろうとしたのである。
 材料を充分集め、彼が剣を打ち始めてから五日目のことだった。
「…出来た」
 朝日にまぶしく輝くその刃は、彼の魂と言うべき物を打ちこんだ一品となったのである。
 さらに数日後、騎士が彼の露天にやってきた。彼は黙って出来あがった剣を差し出す。
 剣を眺める彼女。何も言わず、様々な角度からそれを眺め、そして…
 一つ、感嘆を込めたため息をした。
 彼にとって、それが最高の誉め言葉となった。
 剣を受け取った騎士は、受け取った剣を腰に刺す。帰ろうとした時、ある事に気付いた。
「名前。この剣の名前聞いてないわ」
 普通なら自分の名前をいれるのだが、彼は一言、呟くような声で言った。
「騎士の剣。ソードオブナイトだ」
95名無しさんsage :2002/12/22(日) 23:57 ID:Uzs8SLow
>26
渋(・∀・)イ
9689sage :2002/12/23(月) 20:11 ID:72P.zW1c
ほんの偶然だった。
いつもよりちょっと浮かれていて、
たまたま見つけた青ハーブを目の前でポリンにさらわれて、
茂みに逃げ込んだポリンを追い掛け回して、
気が付けば自分がどちらに進んでいるのか、どちらに向いているのか
サッパリ分からなくなってしまったのである。
 「もぅ…どうしてくれるのよっ、迷っちゃったじゃないの〜っ!」
両腕で抱え込んだ、青ハーブを咥えた小さなポリンに愚痴を言う。
 「困ったなぁ…ここはどこなんだろう…?」
あてもなく歩き続けてみても森の出口は現れず、通る人もいない。

と、不意に空気が冷たくなった気がした。
 「…何かいる!」
その瞬間、左手の藪の中から黒い塊が飛び出してくる!
 「ナパームビート!」
とっさに放った念の爆発は襲撃者を直撃する。
衝撃で1、2回転しながら吹っ飛んだ黒いやつは、あっけなく地に伏せ・・・
るかと思いきや、ひらりと着地して何事もなかったかのように再び飛びかかってくる。
 「アルゴス!?」
背筋が凍る。
相手が悪すぎた。
迷い込んだ森はアルゴスとアルギオペの巣食う森だったのである。


さらに続きそう。
9789sage :2002/12/24(火) 10:39 ID:wER53peQ
現状を理解した今、残された道は2つ。
 ―― 逃げ切るか、死か ――
足に噛み付くアルゴスをどうにか杖で引き剥がし、走る。
横からさらにもう1匹が飛び出してくる。
その目くらましに足元にナパームビートを叩きつけ、必死で走る。

 「はっ、はっ、はっ…はぁっ…っ…」
どれだけ走ったのか自分でも分からない。
敵を振り切れたのかどうか分からないが、もう走れるだけの体力は残っていなかった。
岩陰に座り込むと緊張が解けたせいか意識が朦朧とする。
足には鋭い刃物でえぐられたような傷があり、かなりの出血があった。
何か手当てに使えるものがなかったかと思い道具袋に目をやると
何か袋の中でゴソゴソと動く物が。
 「あ、忘れてた」
アルゴスに襲われた際
とっさにあの青ハーブをくわえたポリンを道具袋に詰め込んでいたのだった。
ポリンの体に巻きついた布切れを引っぺがしながら
入れておいたはずの赤ハーブと緑ハーブまでもポリン君に食べられてしまった事に気付く。
どの道この傷の深さではハーブでどうにかなる物ではなかったが。
ひとまずはこの布切れで止血しようとしたものの、腕にうまく力が入らない。
 「もうダメかなぁ…こんな所で死にたくないよ…」
たらふくハーブを食べてご満悦のポリン君に話しかける。
ちっとも逃げようとしないところを見ると、どうやらなついてしまったらしい。
9889sage :2002/12/24(火) 10:46 ID:wER53peQ
(ガサガサガサ・・・)
感傷に浸る間もなく逃げてきた方向とは逆の茂みから何かが接近してくる!
もはや逃げることは不可能。捕まる前に叩くしかなかった。
ファイアボルトの詠唱を始めつつ茂みを睨みつける。
(ガサッ)
音がだんだん近づいてくる。
ポリン君を抱える腕に無意識に力が入る。
(ガサガサ・・・ガサっ!)
 「ファイアぼr!?」
思いがけない事態が発生した。
そこに現れた黒い影は、蜘蛛の化け物ではなく人間だったのだ!
 「避けて〜っ!」
攻撃目標を解除された火炎球はわずかに軌道を変えながらも
慣性のままに流れていく。
 『うぉっ!?』
残る全精神力をかけた火炎球は、その人の服の裾をかすめながら空に消えていった。
 『おいおい、酷い歓迎の仕方だな』
焦げた法衣の裾をパタパタさせながら男 ― プリーストが言う。

 「ご、ごめんなさい…、人が来るなんて思わなかったから…」
すっかり血の気の引いた唇で、マジシャンの娘が謝罪の言葉を述べる。
見れば足に深い傷を負っているが、手当てもされてなければ止血もてんでなってない。
 『その有り様じゃ怒る気にもなれないなぁ、ったく…』
プリーストは歩み寄ってくるが、すぐ傍まできてピタっと動きを止める。
 『ちょっと失礼』
 「え!?何を!?」
次の瞬間、マジシャンの腰に携帯していたナイフをするっと抜き取り
振り向きざまに後ろの茂みに放り込む!
すると、頭にナイフを突き立てられたアルゴスが奇声とともに飛び出してくる。
 (「聖職者が…刃物を!?」)
プリーストは、今度は自分のメイスを構える。
アルゴスを迎え討つべくメイスを握るその手元で、何かがカチッと音を出す。
 (「!!!」)
なんとメイスだと思っていたその鈍器から、数枚の刃が飛び出したのである。
哀れにもアルゴスの体は、その普通じゃないメイスの一振りでバラバラに四散。
 (「私は…ものすごく危険な人に助けてもらっちゃったのかもしれない…」)

薄れ行く意識の中で彼女が最後に見たものは
雑魚を蹴散らし、ニヤリと笑いながら戻ってくるプリーストの顔だった。
___________________________________

さて、これからマジ子さんはどうなってしまうのでしょうか?
以後の展開は皆さん各自のnounai鯖にお任せします。
99名無しさんsage :2002/12/26(木) 06:21 ID:bJ4JVtSk
(;´Д`)えー
100名無したんsage :2002/12/27(金) 05:46 ID:ixxqur/M
12月22日
初めてルティエという街に行った。年中雪が降っている、不思議な街。
街の中央にはおっきなツリーがあって、その木陰で、何組ものカップルが談笑していた。

街を歩いてみる。
…カップルしかいないのかな、この街は。
でもなんか、みんな幸せそうなので、ちょっといいな、と思った。
お土産屋さんがあった。ちょっとお話したら、なんとビーダマを貰ってしまった。
「ここは雪しか降らないから、時々そらが恋しくなるの。
だから貴方にも、このビーダマをあげる。」
明日も来てみよう。今日のポタコさん、明日もいるかなあ。

12月23日
昨日に比べて、カップルの数が2倍くらいになってる気がする(汗)
みんな、互いのことしか目に入ってないみたい。
私は転職もしてない、ただのちびっこだから、誰も相手にしてくれないよね…
ちょっと寂しくなった。

町外れに、雪だるまとベンチが並んでる場所がある。
昨日は誰もいなかったけど、今日はここも、カップルで一杯だった。
男の人同士とか、女の人同士とかもいるけど、きっと親友さんなんだろうな。
プレゼントの箱を交換しあったり、サンタ帽をかぶせあったりして。
みんな幸せそう。
またちょっと、寂しくなった。

そこに何故か、昨日のお土産屋さんがいた。
街灯の下に、ちょこんと、一人で。
だぶだぶの服にくるまって、にこにこと露店を開いてた。
あんまり、売れてないみたい…。ハットに雪が積もってる。
あいさつ、したいな。
でも、周りのカップルだらけの雰囲気の中を分けいって近づくことが、どうしても出来なくて。
プロンテラの露店街より、ある意味、濃密な空間だったから。
そんな中で商売やってるお姉さんは、すごい人なんだなぁと思った。
商人魂、っていうのかな、ああいうの。
寂しかったけど、頑張る商人さんを見たら、ちょっと幸せな気持ちになれた。
不思議な街、ルティエ。
またこよう。
101名無したんsage :2002/12/27(金) 05:49 ID:ixxqur/M
12月24日
今日はいつものポタコさんがいなかった。街を見回しても、ポタコさんは少ない。
なんとか、アルデバランまでポータルで行く人たちを見つけることが出来たので、
一緒に乗せてもらった。
「ったく!どいつもこいつもクリスマスデートだなんだかんだと!」
ポタコさんたちは、今日はみんなデートらしい。
そういえば、街で見かけたカップルに、今日はとりわけアコさんが多かった気がする。
パーティのポタコさんを待っていたアサシンさんが大暴れしていた。ちょっと怖かった。
そんなんだから…と口走った魔法使いのお兄さんが、次の瞬間、ぐったりして動かなくなっていた。
言っちゃいけないことを、一つ学んだ気がした。

アルデバランからルティエまでは、サンタさんに送ってもらうんだけど、
サンタさんは忙しいから、村の入口に適当に下ろしてしまうらしい。
そこからは北に歩くんだそうだ。
襲ってくる敵も、いるらしい。でも、サンタポリンもいるんだって。
大丈夫。レベルもちょこっとだけど上がってるし、体力には自信がある。

はずだった。
102名無したんsage :2002/12/27(金) 05:56 ID:ixxqur/M
ルティエ入口と告げられ、サンタさんのソリから、降ろされた。
あたりを見回すと、そこは、かすかに木々が見える、
吹雪に閉ざされた世界。慌てて頭上を見上げれば、
灰色の雲を背景に、粉雪が、わたしをあざ笑うかのように吹き荒れている。
私は、一人…。
どうしようもなく、不安になった。

『ここは雪しか降らないから、時々そらが恋しくなるの。』

ああ、そうなんだ。
この空は、人々の寂しさで出来てるんだ。
だからルティエは、おまつりの街なんだ。
ほんの囁きすら届くことは無い、寂しい世界に、少しでも抗えるように。

『だから貴方にも、これをあげるわ。』

慌てて、リュックサックから、この間もらったビーダマを取り出す。

『ふっふっふ、ただのビーダマと思うなかれよ?
 これは…そうだね、ソラノカケラ、かな。』

吹雪のなか、てのひらに転がしたビーダマを、じっと見つめる。
青。ビーダマの青。
でも、この明かりすらないモノトーンの世界じゃ、暗く沈むだけ…

それが明かりのない暗さではなく、巨大な動物の陰であることに気づいたとき、
私は、空に、舞っていた。
103名無したんsage :2002/12/27(金) 05:58 ID:ixxqur/M
続きは後日。
104名無しさんsage :2002/12/27(金) 12:17 ID:2xyFdrcc
>>100-103
いい感じですね〜
こういう雰囲気好きなのです
105ノビ子さん(1)sage :2002/12/31(火) 14:23 ID:iTBx9HNI
ここはプロンテラ。
私はノービス。

つい昨日のこと。
初心者修練場でのテストをクリアし、私は冒険者としての人生をスタートした。
職業適性診断ではアコライトを目指すように言われたが
そう言われた瞬間、つい笑っちゃった。
アコライト。
それは私が一番なりたくないと思っていた職業。

私のママは現役時代、プロンテラでも5本の指に入るほどの騎士だった。
うちによく遊びに来るママの友人のウィザードさんからも聞いているので、それは確かなこと。
そして父親はプリーストだった。
私が物心つく前に死んでしまったので顔も覚えていない。
たいして強くもない男で、カッコイイのと優しいだけが取り柄(ママ談)だったそうだ。
まぁママの方の一目惚れだったらしいので、カッコイイなんて本当かどうか怪しいもんです。
私が物心つく前に死んでしまったので顔も覚えていない。
一人っ子の私はママの女手一つで育てられてきた。
愛する人を残して死ぬなんて、もっての他だと思う。
私はママのように強くなりたいと思った。
だから「アコライトになります」と嘘をついて配給をもらったけど
本当は剣士を目指しているのです。

初心者修練場で思ったより時間をとられてしまって
プロンテラに送られた時にはもう夕方近くになっていた。
早く強くなりたかった私は街の雑踏を掻き分け外に出て、さっそく戦闘開始!
弱い者イジメは嫌いだけど、まずは自分の力を確認しなきゃ。
手近なポリンに斬りかかる。
1撃では仕留められなかったが、ポリンの反撃をひらりとかわして
カウンター気味にもう一振り。
ちょっと悲しそうな目をしながら、ポリンは崩れてしまった。
ゴメンよ、やっぱり私の相手じゃなかったね。

さてお次は〜…そこの木の根元にいるファブル。
ポリンみたいに可愛くないから容赦しない私。
めいっぱい振りかぶって斬りつけようとしたらナイフが手からすっぽ抜けて
ファブルのいる木の幹に止まっていたチョンチョンにクリティカルヒット!
(Alt+5…はまだ出せない)
ちょっと焦ったけど、チョンチョンはもう動かない。
なんだ、こいつも大したことないのね。

…気が付けば辺りは薄暗くなってきていた。
今日はここまでにして、また明日にでもウィローに挑戦してみようかな。
106ノビ子さん(2)sage :2002/12/31(火) 14:24 ID:iTBx9HNI
今日は早起きして、
まだ人の多くないクリスマス一色に染まった街の中を歩いてみた。
私の所持金じゃとても手が出ないような高額の商品がいくつも並んでいる。
いつかあんなカッコイイ剣を振り回してみたいなぁなんて、遠い目で眺めつつ
露店街を通り抜け、南門をくぐる。

さぁ、気を引き締めて今日も頑張るぞ〜。
まずは手始めに……???
何だ、あれ?
ポリンが帽子かぶってる。
たぶん街の中のクリスマス装飾に使われているサンタの帽子だろう。
こっちはお金が無くて、欲しい装備があっても指をくわえて見ているだけだというのに
このポリンの幸せそうな顔といったらもう…
なんか腹が立ってきた!(Alt+7…はやっぱりまだ出せない)

のん気に跳ねているポリンの後ろからナイフを構える。
こちらの殺気に気付いたのか、ポリンは初太刀をくぐり抜け
思いがけないスピードで私のボディーに体当たりを仕掛けてきた。
初めて喰らったダメージ、思ってたより響く…。
ちょっと目まいがしたけどポリンごときに舐められるわけにはいかない。
踏み堪えてナイフを繰り出すが、何度振っても空を切るだけで
そのたびに手痛い反撃が襲ってくる。
いくらなんでも無様すぎる!ポリンごときに!

痛さと悔しさで泣きそうになっていた。
と、その時、どこからか人の声が聞こえた気がした。
自分の体に光が降り注いだかと思うと、ポリンにやられたダメージが癒えていく。
何を言っているのか分からないけれど、さらに声が聞こえた。
またしても私の体が光に包まれる。
その光の効果なのか、腕に力が入る。頭が冴える。…ような気がする。
そして最後に、今度ははっきりと聞こえた。
「がんばれ〜!」
言われなくたって!
わざと大きめにナイフを振りかぶり、ポリンに斬りつける。
奴はそれを避けて反撃を繰り出そうとする。予想通りだ。
もう同じ手は通用しないのです。
急いでナイフを持った手を引き戻し、体当たりしてくるポリンと自分の間に構え直す。
サクッと小気味よく刺さった刃をひと息に振り払う。
見事に真っ二つに裂けるポリン。
手強い相手だった。
107ノビ子さん(3)sage :2002/12/31(火) 14:25 ID:iTBx9HNI
戦利品のサンタ帽子をつかみ、声のしていた方に振り向く。
木立の影にそのアコライトの姿が消える瞬間だった。
助けるだけ助けておいて、礼も言わせずに立ち去りますか!
そんなのは許しません。
急いで追いかけ、呼び止める。
…えっと…何て言えばいいんだろう?
 ― ありがとうございました ―
なんて照れくさくて言えないよ。
 ― 援護なんて無くてもあとちょっとで倒せたんだから! ―
いや、違う。こんな強がりを言うほどひねくれてはいない。

そんなことを考えている間に、呼び止めたアコさんがこちらに振り向く。
整った、優しそうな顔立ち。
「良かった、倒せたんだね。おめでとう。」
アコさんの澄んだ青い瞳と視線が合う。
吸い込まれそうな錯覚に陥る。
目をそらせない。
捕食者と被捕食者、蛇に睨まれた蛙のごとく動くことも出来ない。
もう空がどっちで地面がどっちなのかも分からなくなってきた。
むこうはニコニコ、こっちはフラフラ
数十秒のにらめっこの末に、草むらから飛び出してきたポリンの方に
アコさんの視線が外れてくれた。

次に視線が合ってしまったら、もうあの目から逃げるチャンスは無いかもしれない。
当初の「お礼を言う」という目的はどこへ行ったのやら
ゴメンナサイっ、とだけ言って逃げ出す私。
しかし、もう手遅れだった。
踵を返して走り出した直後に視界が歪み、何もない平らな地面でベチャっと転ぶ。
「大丈夫?」
当然のようにアコさんが駆け寄り抱き起こす。
あぁ、またあの悪魔の視線に捕まってしまった…。
そのままブラックアウト。
108ノビ子さん(終)sage :2002/12/31(火) 14:28 ID:iTBx9HNI
うぅ〜ん、よく寝た。
いつもよりちょっとベッドが硬い気がする。
毛布の肌触りが悪い…。
枕があったかい…???
「目が覚めたみたいだね。」
恐る恐る目を開けると、ここはさっき倒れた場所。
やっぱりそこには澄んだ青い瞳が待っていた。
「急に倒れちゃうんだもん、どうしようかと思ったよ。(ALT+5)」
「怪我もしてないし病気でもなさそうだけど
 倒れた人を転がしておくのは聖職者のやることじゃないしね。」
私は焦って膝枕から起き上がり
お礼なのか謝罪なのかよく分からない言葉をまくし立てる。
と、その私の唇をアコさんの唇が奪う!
ひとまず思考停止。
「やっぱり師匠の言う通りだなぁ。」
「女の子を落ち着かせるにはコレが一番だって。」
落ち着いたというか、ちょっと違う気がします。

「1人で頑張ってるの?」
「どの職業に進むつもりなの?」
「僕もまだアコライト成り立てなんだよ。」
「一緒に2次職目指そうよ。」
完全にアコさんの主導で話が進み、しばらく保護者になってくれることになりました。
「まずは剣士に転職しないとね。」
「最近では転職の時に試験をクリアしないといけなくなったんだよ。」
「上手く試験に合格できたら、ご褒美あげないとね。(ALT+3)」
落ち着かせるためだけにキスをするような人ですから
ご褒美なんていったら、どうなっちゃうんでしょうか?
ご褒美欲しいです。
頑張ります!
109名無しさんsage :2003/01/02(木) 10:55 ID:T602/dBY
(=゚ω゚)b GJ
ノビ子さんが可愛すぎだ(*´Д`)
110名無しさんsage :2003/01/03(金) 08:33 ID:5gGs2C9A
つーかアコきゅん手を出すの早過ぎ(w
これは密かにノビをストーカーして機会をうかがってたのかも。

しかもアコきゅんは実はノビのパパンの腹違いの子供で、ヘタすると近親相姦!?


とか妄想が膨らんでる別の場所も膨らんでる俺つええ!!もとい逝って良し。・゚・(ノД`)・゚・。
111名無したんsage :2003/01/04(土) 06:44 ID:ldw/loXw
12月25日

そらが揺れてた。あの灰色のそらだ。
悲しい色のそら。それが、揺れながら、流れてた。

あたまが、ぼんやりする。
からだが、なんだか窮屈だ。
ここ、どこだろう…
「…あ…う…」
声にならない。私、どうしたんだろう。
「…こ、ここ…」

ガタンッ!
そらが、とまった。

「ねえ、ねえ! 大丈夫? 大丈夫なの!?」
そらが、お土産屋のお姉さんになった。
「よかった…気がついたのね…」
お姉さんは、全く動けない私を激しく抱きしめると、頭をくしゃくしゃに撫でてくれた。
あったかい…
「あ、こ、ここは…」
お姉さんの台車の上だった。

私は、あの吹雪のフィールドで、白熊に叩きのめされたらしい。
完全に気を失い、半分雪に埋もれた私を見つけたのが、
商品の補充を終えルティエに向かっていた、お姉さんだった。

「お腹、空いてない? そこにあるにミルクとか赤ポ、飲んでいいよ。」

カートを引きながら、お姉さんは私にいろんなことを話してくれた。
私を見つけることが出来たのは、あのビーダマが落ちていたのに気づいたから、
だとか、ビーダマを売ってるわけ、とか、なんで商人になったのか、とか。
最後のほうはよく分からなかったけど、なんとなく寂しげに思える話しぶりの
お姉さんを見て、ちょっと胸が痛かった。
112終。強引矢の如し(T_Tsage :2003/01/04(土) 06:46 ID:ldw/loXw
「はい、ついた。」

いつしかカートはルティエ市街に入っていたみたい。あたりに光が溢れている。
やがて、お姉さんはツリーの下にカートを止めると、露店の準備を始めた。
私はただ、その様子をぼぉっと見ているだけだった。

「大丈夫? 具合、悪くない?」
「うん…でも、すごく寒い…」
「そっか、じゃ、1人でおいとく訳にはいかないね…」

ここに座って、と、お姉さんの言うとおりに座ると、
そこは、露店の小物が一杯に見える、特等席だった。

「えいっ! 二人羽織〜」

ばさっ! 不意に、目の前が真っ暗になる。
私は、お姉さんの防寒着の中にすっぽりくるまれてしまったらしい。
いいにおいがする。背中があったかい。首筋にお姉さんの柔らかい髪の毛が触れて…

「ぷはっ!」

視界が開けて、ここがルティエの入口から中央のそり、サンタポリン橋までを一望できる
場所だということに気づいた。雪にけぶる街の灯が、すごく綺麗。

「なかなかいい場所でしょ。今日はクリスマスだもんね。
…あたしだって、誰かと一緒にいたって、いいんだよね。」

耳元でそう囁いたお姉さんは、やっぱり寂しそうだったから。
私は、体の力を抜いて、ふっとお姉さんに寄りかかったんだ。

「うん、今日一日、私もお姉さんと一緒にいるよ…」

ツリーの光を受けたビーダマが、静かに青く、輝いていた。
そっか、今日だけじゃなくたって、いいんだ…

「お姉さん、もし、もしね…お姉さんがよかったら、私…」

きっと、お姉さんも、私も、一人じゃダメなんだ。
だから、私は、お姉さんの輝きを受け止めるビーダマになろう。
一緒なら、きっと楽しいよ。
113紅花 :2003/01/09(木) 16:28 ID:ZbxmmzcU
「一つ、二つ、三つ…はぁ…。」

人はあんなに一杯いるのになんで私は一人なのだろう…
私の名前は「のな」いつもモロクの片隅で一人いる。
『一人』慣れたって言えば慣れた…しれない、けれどやはり嫌な物には違いないでしょう?
だって寂しいじゃないか。

「そりゃギルドやPTには入ったこともあるけどさ…ぶつぶつ……」

「ふぅん、プリーストも大変なんだネ。」

「そうよみんなには赤pや人参やら回復アイテムの代わりとしか見られないし、
命令しかされないのよ?苦労して念願のプリーストになってみんなの手助けが
もっとできるって喜んだのに…何よ!この扱いは!!私は物じゃないんだ!!」

「分かる分かる…。」

「アンタはいい奴ねぇ私の愚痴をここまで聞いてくれるアンタは苦労して捕まえた甲斐があったわ。」

「うんうん、でご主人様。」

「何かな?デビルチ君。」

「解放してくれぇぇぇえええ!!!(号泣)」

「駄目よ!何の為に捕まえたと思ってるのよこうやって愚痴を延々と聞いてもらうためじゃない!
さあもっとあるわよぉ〜中には……。」

「誰か助けてくれ……。」


今の私は一人じゃない、嫌々ながらでもこうやって一緒にいてくれるペットがいる。
有難うねデビルチ君w(天使な微笑み)
114紅花 :2003/01/09(木) 16:33 ID:ZbxmmzcU
申し訳ない皆様俺もついつい書いてみたくなってしまった。

面白いかどうかは皆様の感性次第だが、萌えあるいは燃えに当てはまるかが
問題になってしまった…誠に申し訳ない。

寂しい、孤独そういう感情を胸に抱いて冒険している者達は数多いと思う俺もその中の一人だ。
このペットシステムがそれを少しは和らげてくれるかもしれないと思うと楽しみだ。
これでその時の楽しみを表現したつもりではあるが…いかせんまだ修行不足だと実感しておる
急いで書いたものだから仕方ないとも受け取ってくれたらこれ幸いだ。

もしよろしければこれからも書かせて頂きたい、よろしくお願い申し上げる。
115名無したんsage :2003/01/11(土) 20:06 ID:lHeDQ8dM
そういや♂ハンタって全然萌えSSに出てこないよね・・・・
そりゃ見た目アレだけどさ・・・(´・ω・`)
116名無しさんsage :2003/01/11(土) 23:43 ID:N5Jvb/OI
本家のほうの小説スレがdj?
スレッド一覧にはないし、ゾヌで見てもdat落ちを示すし…。
117名無しさんsage :2003/01/13(月) 20:43 ID:Dl2TDL4U
>>私は転職もしてない、ただのちびっこだから
61歳アサシンでよければ、話し相手になりませう。GJです。
118名無しさんsage :2003/01/15(水) 20:37 ID:Py/SZtm2
>>113
イイ!そしてデビルチたんはぁはぁ
119そして始まりから続く道sage :2003/01/19(日) 12:38 ID:Ogx04K8M
朝。
いつも通りの朝。
太陽は眩しく、空は高くどこまでも青い。
小鳥のさえずり、木々のざわめき、全てが生の喜びに満ちあふれている。
私はゆっくり伸びをすると、借宿の木陰から立ち上がった。
傍らに立てかけていたチェインを腰に差し、そう多くはない荷物を肩に掛ける。
さて、この辺りに小川か泉はあったろうか。
発つ前に、まだ少し熱を持っているこの瞼と頬をスッキリさせねば。

ともすれば蝶の羽音にさえかき消されるほどに、小さなせせらぎ。
私はそこに手を浸し、何度も何度も顔を洗った。
澄んだ水に清められていく、その感覚がひどく心地よい。
(…あながち、悪いことばかりでもなかったのかもしれない)
ふいに私を襲う悪い夢、それは思い出したくもない記憶のコラージュ。
だが、こうして私は生きている。それも、今までの自分がばからしく思えるほどきちんと前を見て。
(だからって、あんな目に合うのは金輪際ゴメンだがな)
手ぬぐいの下で苦い笑いを噛み殺すと、私は街を目指すべく立ち上がり、歩き出した。


魔法都市ゲフェン。
さほど大きな街ではないが、整然と整えられた町並みと、何より中央にそびえ立つ魔法塔が見る者を厳粛な気持ちにさせる知の都だ。
…と言っても、魔法士でない人間にはあまり関係のないこと。
中央は露天を営む商人や、塔地下のダンジョンに挑む冒険者達でごった返している。
全く、世は事も無しとはよく言ったものだ。
私は人混みの中をくぐり抜け、宿を目指した。
120そして始まりから続く道sage :2003/01/19(日) 12:38 ID:Ogx04K8M
「あは、来てくれたんだ」
人懐こい、というよりはいささか脳天気とも思える笑顔が私を出迎えた。
さらさらと癖のない黒髪を高いところで結んだ、私と同じアコライトの娘。
今はこの宿で治癒士を営んでいる、私のかつての旅仲間だ。
「すいませーん、ヒールお願いしまーす」
「はあい、今いきまぁす!」
挨拶したかと思うと、ぱたぱたとせわしなくそちらへすっ飛んでいく。
相変わらず落ち着きがない…というよりは、やはり元気がいいと言ってやるべきだろうか?
愛くるしい笑顔と、誰にでも分け隔てなく振りまかれる愛想。そのどちらも私には無いもので、よくからかわれたものだ。

………。

「どーおしたのっ?」
気が付くと、件の娘の顔が鼻先にあった。
慌てて離れると、きょとんと見つめていた顔がにんまりと笑う。
「そゆとこも変わってないねー。っと、こっち。来て」
相変わらずの強引さで、私は宿の一室へと連れ込まれた。
「ふー。あっちにいるとお話できないもんねー。…ごめんね、待たせちゃって」
ぱふん、とベッドに腰掛けて、花のように微笑む。
「構わない。仕事の方はいいのか?」
「あー、へーきへーき。ちょっとくらいの怪我なんてね、舐めてなおしとけばいーの」
今度はさもおかしそうにころころと笑う。…全く、治癒士失格だぞ、お前。
「でさ、お願いなんだけど」
「ああ。一体何なのだ?」
「………これ」
普段は陽気すぎるほどの表情をひどく神妙にさせ、胸元から小さな白い宝石を取り出すと私にそっと手渡した。
「これは」
「オパールよ」
乳白色の中に淡い虹を閉じこめた神秘の宝石。
「これをね、届けて欲しいの、お師様に」
121そして始まりから続く道sage :2003/01/19(日) 12:39 ID:Ogx04K8M
かつて私たちは共に旅をした。
その頃の私たちは何もできない子供同然だったが、自らの成長を欲して旅をしていた。
小さなナイフを片手に草むらを駆け回り、拾ったゼロピのきらめきにさえ心躍らせたかつての日々。
そんな幼い私たちを導いてくれたのがお師様、ゴンザロルバルカバラ神父だ。

「お師様、きっと今もあの場所にお一人でいらっしゃるだろうし…」
昔を懐かしむように、眼差しが揺れる。
「これ、お客様からいただいたのだけれど、私はもうここを動く気はないから」
「………」
「だから、お願い。この不義理な弟子の代わりに、これをお師様に」


そして翌朝。
「よろしくお願いします。…ほんと、ごめんね?」
本気で申し訳ないなどとは微塵も思っていなさそうな笑顔で宿屋の娘が笑う。
そう、この娘はもはや「宿屋の娘」だ。
…私もいつか、こんな風に笑えるだろうか?
「了解した。私も随分ご無沙汰しているからな…良い機会だ、きちんと詫びてくる」
お師様は、暖かな教会ではなく、旅の冷たい風に祈りを捧げることの苦難を説いた。
そしてこの娘は風の向こうに安らぎの地を見いだした。だが私は未だに迷っている。
一度振り返ってみよう。お師様の元に還り、あの場所からもう一度始めてみよう。
「………こちらからも礼を言わせてもらうぞ」
「ん?ん??」
丸い顔をきょとんとさせている娘に小さく手を振り、別れを告げる。
「あ、あ、気をつけて!怪我しないようにね!またね!!」
慌てて手を振り返す、そんな姿も少し歩くだけで人混みに紛れて見えなくなった。

さあ、行こう。
僅かな人恋しさが弱くなってしまった心にしみたが、踏まれた麦が強くなるように、私の心も強くなろう。
大丈夫。誰に頼らずとも進んでいける。
私は折れた心の欠片を振り払うように、太陽の方角へと一歩を踏み出した。
122そして始まりから続く道sage :2003/01/19(日) 12:43 ID:Ogx04K8M
救いの神に報いるべく続きを書いてみました。
神の手による美しく余韻ある結末が台無しぽですが、書きたい気持ちになってしまったので。
書けば書くほど寂しい気持ちになっていくこの物語。多少なりともお楽しんでいただければいいのですが。

しかし…エロがないのでこちらに貼り付けましたが、萌えというにも微妙でしょうか。(;´Д`)アアン。
いえ、ゴンザロルバルカバラ神父萌え小説なので大丈夫です。∧||∧スミマセン フカシコキマシタ…
123名無しさんsage :2003/01/23(木) 11:56 ID:6lSBUyjE
にゅ缶小説スレより転載。

648 :るー :03/01/20 21:17 ID:KirB5Ri2
はじめまして。

先日お世話になったシーフの西風さん(仮)を題材に初めてSSを書いてみました。
私的感情と脳内補完で突っ走ってますが、よかったら読んでみてください。
感想なんかもいただけたら嬉しいです。

ttp://moetaro.virtualave.net/ragnarok/cgi-bin/ss_up/rag_ss/ROSS.txt

西風さん、読んでましたら…ネタにしてすいません(汗

いい出会いしてやがるなぁ…ウラマヤスィ…
12426 :2003/01/23(木) 14:17 ID:6L8Uysvw
プロンテラ北、迷いの森最深部 早朝

男のハンターが一人、さまよっていた。
「参ったなぁ、薬草は見つけたんだけど、出口どこなんだろう…?」
迷いの森…ベテランの狩人さえも迷わせる、魔性の森、そして…
(ほほぅ、また命知らずが来たか…)
「誰?」
頭の中に響くような声、そしてそれは、決して見てはいけないもの。
(我の領域に踏み入るとは…限度を知れ!人間!!)

同時刻、プロンテラ中央広場

大きなリボンがゆれている。プリーストの頭には、いつもそれがついていた。
人気の少ない早朝。女プリーストと二人の男、騎士とアサシンはそこで彼女を待っていた。
「遅いな。まぁいつもの事だが」
アサシンの言葉を軽く流すと、プリーストは女ハンターを連れてきた。
「あ、あのっ、おかげで転職する事ができましたっ!」
まだ新米なのか、初々しさの残るハンターだ。
「まあ、挨拶はそれくらいで、記念にどっかいかないか?」
アサシンの提案に、騎士は出発の準備を進める。プリーストはしばらく考え込むと、
「そうね…迷いの森はどうかしら?」
そんな事を口走った。
「OK、ま、俺はどこでも良いさ」
旅立つ前に一言、騎士がプリーストに呟いた。
「迷うなよ、方向音痴」
プリーストはそんな騎士を、手持ちのチェインで殴ると、足早に去っていった。
12526 :2003/01/23(木) 14:29 ID:6L8Uysvw
「くっ…」
次々を襲いかかる「悪魔」に、彼、ハンターは矢をはなつ。
命中し、倒れる悪魔。しかしその数は無尽蔵だ。
(ほほぅ、なかなか粘るな…いつまで持つ物か…)
余裕たっぷりのその声は、今だ姿を見せない。
「くそう…」
彼は弓を取り出すと、力の限り引いた。
「死ねない。まだ死ぬわけにはっ!」

プロンテラ外れ、鍛冶屋の住まい 早朝
「おはよう、いるかしら?」
朗々とした女性の声が響き渡る。彼女は足を踏み入れない。『彼』がそれを嫌うからだ。
「……ああ」
無愛想に出てきた男ブラックスミス。ここのところ仕事はしていなかった。
「おはよう。ちょっと今日は行きたいとこがあるのよ」
BSは荷物をまとめ始める。
「ありがとう。場所は迷いの森よ」

プロンテラ北、迷いの森入口 同時刻
「さて、お前はここで待ってろ」
「キュィ」
騎士はペコペコから降りると、森の中に足を踏み入れる。
「ま、まってくれよ」
後ろから追いかける剣士は、息を切らせてそれを追う。
「今日はあんたに付き合って良いって言うから、沈没船引き上げてきたんだぜ? 少しくらい休ませてくれよー」
文句を言いながらその後を追う剣士、更にその後ろからアコライトがついてきているとも知らず。
「あの人…迷いの森で箱をさがすの…?」
12626 :2003/01/23(木) 14:38 ID:6L8Uysvw
迷いの森最深部 昼
戦いは終わろうとしていた。
「はぁ…はぁ…」
弓を引く手に力が入らない。足も方膝立ての状態になっているハンターがいた。
(なかなか面白かった。人間…)
周りの悪魔は消えていた。罠の後などが、その激戦を物語っていた。
(だが、我が僕はこの程度ではない…)
ふたたび姿をあらわす悪魔達。ハンターは弓を引き絞るが、力が入らない。
(ここまでか…!)
悪魔の鎌が襲いかかる瞬間、ハンターは目を閉じた。
…衝撃は襲ってこなかった。
目をあけると、二本の矢に貫かれた悪魔が横たわっている。
「あのっ、大丈夫ですかっ!」
自分と同じハンター、女がそこにいた。
同時に、騎士とアサシンが彼の前に走り出る。
「すげえな、まさかこんな大物とは!」
「…こいつのおかげで、災難には良く巻き込まれる」
その言葉を無視して、大きなリボンをつけた女プリーストが現れた。
「まったく、無茶も良いとこね」
彼女はハンターの腕を掴むと、静かに精神を集中し始めた。
「あの…」
「黙って、治療が先。それと…」
プリーストの目が宙を睨む。
「これをどうにかしなきゃ。大悪魔、バフォメット…」
12726 :2003/01/23(木) 14:50 ID:6L8Uysvw
(人間がいくら来た所で、変わらぬ!)
魔物の攻勢はむしろ増していくようだった。
「無茶だ、逃げてくれ!」
しかし二人は引かない。
「まぁ、見てろよ…」
アサシンは飛びこむと、片っ端からきりつけていく。
「死ね…ソニックブロー!!」
その気合と共に、悪魔は細切れに刻まれていく。
「ま、なかなかだ」
騎士は槍を構えると、ペコペコと共に突っ込んでいく。
「食らえ、ブランディッシュスピア!!!」
裂帛の気合と共に、槍から凄まじいエネルギーが発射される。それに吹き飛ばされる悪魔たち。
事態は一気に逆転していった。
(なるほど…人間、私を怒らせたいと言う事か…)
闇が形を取る。そこには山羊の頭を持った狡猾な悪魔がいた。
「バフォメット…やっと大将のお出まし?」
プリーストは腰の道具袋に手を忍ばせる。
(無駄だ人間。私には勝てぬ)
「やってみなくちゃ…分からないでしょ!!」
その言葉と共に、女ハンターが弓をはなった。
バフォメットが消える。
(無駄だ…)
プリーストの背後から、声が聞こえると同時に鎌が襲いかかる。
「マグヌス・エクソーシズム!!!」
青いジェムストーンを投げつけると共に、プリーストは力強い言葉を投げかける。
(くぅ!)
バフォメットが少し怯んだその隙に、彼女は体制を立て直した。
「あまり…人間をなめてもらっては困るわ…」
12826 :2003/01/23(木) 15:05 ID:6L8Uysvw
(なるほど…ならばこちらとて容赦はせぬ!!!)
バフォメットはその巨体に似合わず、すばやく迫る。鎌が大地を凪いだ。
「っ!!」
どうにか避けきったプリーストを、執拗に鎌が襲いかかる。
「援護を!!」
アサシンの言葉空しく、そこには先ほど倒したはずの悪魔達がふたたび現れた。
「死んだフリかよ! きたねえな…」
「…おまえほどではない…」
騎士の突込みに耳を傾ける暇もなく、悪魔達は群がってくる。
プリーストは後ろに下がろうとすると、そこには大木がそびえたっていた。
「しまった…」
(終わりだ…!)
鎌が振り下ろされる。
「はっ!!」
その鎌を、一太刀で弾いた者がいた。
「危ないわね…レディに刃物向ける男は最低よ?」
女騎士は剣を構えるとバフォメットに向き直る。
(また人間か…ここを我が領域と知っての狼藉か…?)
「あなたとことを起こす気はないけど…仕方ないじゃない?」
剣を持つ手に力を入れる。バフォメットも少しづつ近づいてきた。
(思いあがるな! 人間!)
すばやい鎌の連撃を、騎士はそれを上回るスピードで弾く。
ツーハンド・クイックン。その速さは神速とも言うべき速さになっていた。
「あなたこそ、人間をバカにし過ぎじゃない? 嫌われるわよ?」
傍らにいた鍛冶屋は、近寄る悪魔をすばや連撃で撃退していく。
アドレナリン・ラッシュである。この戦いに横槍を入れることの出来るものはいなかった。
(ふふふ…楽しませてくれる…いいぞ! この調子だ!!!)
バフォメットの連撃は、更に激しくなっていった。
12926 :2003/01/23(木) 15:18 ID:6L8Uysvw
その速さは、既に太刀打ちできる者はないくらい、すばやくなっていた。
「つ…!」
女騎士も、既に何箇所か傷を受け始めていた。
(どうした? もっと楽しませてくれ!)
鎌の先端を避けた女騎士の体制が崩れる。そこに柄で強烈な一撃が入った。大きく後ろへと吹っ飛ばされる女騎士。
「う…」
意識を失ってしまった。プリーストとブラックスミスが近寄ろうとするが、悪魔に阻まれ近づく事ができない。
(終わりだな…)
しかし、そこに割ってはいる者がいた。片手剣を持った騎士である。
「…勝負の邪魔をするぞ…?」
(ふ、人間とはおもしろいものだ! 楽しくなってきたなぁ!!!)
すばやい連撃を軽がるとかわす騎士。反撃の機会をうかがう。
(どうした? かわすだけでは勝てぬ。何かして見せろ!)
「うるさい奴だ…」
騎士は何度目かの鎌を潜り抜けると、その機会を見出した。
「食らえ!! はぁぁ!!」
バッシュ。それは剣士の基本的な技、しかし、その騎士はそれを3度同じところへ決めたのだった。
(ぐう…!)
さすがに堪えたのか、バフォメットの顔が苦痛に歪む。
「言葉など飾りに過ぎぬ。これが俺の答えだ」
130名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/01/24(金) 12:34 ID:62nXz0hk
3連バッシュカコ(・∀・)イイ!
131名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/01/25(土) 22:56 ID:2q.USfsY
私はしがないアコライト。今日は司祭さまに頼まれてお使いに行くのです。
そんな私に、司祭さまはこの服を着てくようにおっしゃいました。

って、なんでこんなに短いスカートなんですか!?…しかも生地もすごくうすいし、
へそはでてるしなんかマジシャンさんみたいな服です。

「はっはっは!それはとっても信仰心の強い人だけが着られる法衣なんだぞ」

と司祭さまはおっしゃられましたが…これで町に行くのは恥ずかしいです。

「さぁ、アコたん、よくお聞き。君には町に行って中央の広場にいってもらいたい。
そこには私の知り合いの鍛冶屋が店を開いているはずだ。
そこで、メモに書いてあるものを買ってくるんだよ。わかったね?」

わかりますけど…白ポ、ベト液、にんじん、触手を買って来いって…いったい何に使うのですか?

道を歩いていると、いつもは気にならなかった町の人の視線が気になります。
みんなこっちを見てるみたい…。剣士さんはニヤニヤしてるし、商人のお姉さん
なんか明らかに視線そらしてるし…恥ずかしいよう…。

広場につくと、司祭さまの言ったとおり、鍛冶屋さんが店を開いていました。

「すみません、えと、白ポとベト液とにんじんと、それから触手ください」

鍛冶屋さんは驚いたような顔をした後笑ってこう言いました。
「あっはっは、あの生臭坊主も羞恥プレイとは考えたな」
132名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/01/25(土) 22:57 ID:2q.USfsY
「しゅうちぷれい」っていったい何なんでしょう?。聞いたこともない言葉です。
でも、周りの人がクスクス笑い出したのでとても恥ずかしくなって、商品を受け取ったあと、
走って修道院まで帰りました。

「司祭さま、言われたもの買ってきましたよー」
「ああ、お疲れさん。その服は汚れるといけないから、元の服に着替えなさい。」
「わかりました。あ、そういえば鍛冶屋さんが言ってましたけど『しゅうちぷれい』ってなんですか?」

司祭さまはこっちを見てにやりといたずらっぽい笑みをうかべると、落ち着いてこうおっしゃいました。

「そうか、アコたん、君にも話さねばならないようだな…。いいかい?我々聖職者の仕事はなんだい?」

いきなり抜き打ち試験なんて卑怯だよう…。

「え、神の愛を皆に教えることですか?」

「そうだ、そのとおり。偉大なる神の愛を皆に教えること。周りに知らせると書いて『周知』。
これは我々聖職者にとってとても大切なことなんだ。そして、我々はお祈りを欠かしてはいけ
ないだろう?。「祈り」は異国の言葉で"pray"だ。賢い君ならもうわかっただろう?。
周りに知らせて祈ること。これが『周知pray』なんだよ。」

「えと、『しゅうちぷれい』というのは一種の宗教活動なんですか?」

「そのとおりだよ。君は全くもって優秀だな。これからも、君に『周知pray』をやって
もらうことがあるかもしれないが、徳の高い聖職者になるためには必要なことだ。
そのときはがんばるんだよ。」

大切だってことはわかったけど…やっぱり恥ずかしいです。
133名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/02/08(土) 08:26 ID:6v7i.wRI
アコたん、騙されてるぞw
134名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/08(土) 12:12 ID:WL2GdzuE
天然なアコたんに(*´Д`)ハァハァ
135名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/24(月) 00:54 ID:IFSXonPc
>>85の続きは一体どうなったんだろうな?
136名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/02/24(月) 17:05 ID:OO013pxg
>>85を確認!!
俺も凄い気になった
137名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/02/24(月) 17:41 ID:MC5iOJ0.
電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
138名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/02/24(月) 17:41 ID:MC5iOJ0.
電波キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
139名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/25(火) 14:49 ID:CjLX9MpE
『プリーストに重大な案内があるので、大聖堂に来るように』
 人づてにそんな話を聞いて、修行の途中から首都に戻ってみると、何故か大聖堂の周辺には、多くの男性が肩を落として車座になっていた。
 男性たちの表情は暗いものが多く、よほど深刻な悩みを持っているに違いない。プリーストとして、これは看過できない。そう思ったけれど、わたしは先に「重大な案内」と言うものを確認しなければいけなかった。
(あなた方の表情を暗くするものを少しでも取り払えますように…)
 心の中でそっと彼らと、わたしが信じる神に向かって祈りを捧げていると、暗い車座の中でも幾人かが明るい表情をしていたことに気づいた。
 これなら大丈夫だろう。わたしはそう思って、少しでも早く用件を済ませるために大聖堂の中へと急ぎ足で向かった。

 大聖堂の中の一室で待っていると、転職の際に世話をしてくれるシスターが数人やってきた。彼女たちの表情は堅く、どこか外に座っていた男性たちと通じるものがあるようにも思えた。
「一体何があったのですか?」
 シスターたちが何かを言う前に、わたしは彼女たちに問い掛けた。
「…このたび、教会内部でわずかばかり悶着がありまして、その結果がようやく出されたのです」
「悶着? いまの教会で権力闘争みたいなものは無縁だと思ってましたが…」
「いえ、権力闘争などではありません。これはその……つまり……」
 深刻そうなシスターの表情に、少しだけ苦みが入っている。一体何なのだろう。
「?」
 わたしがわずかに首を傾げてみせると、シスターの一人が視線をやや下側に向けながら、口を開いた。
「問題になったのは、あなたの…あなた方女性プリーストの……」
 だが、そこで言葉が止まる。
「わたしたちの問題、なのですか?」
「あ、いえ、そうであるような、ないような……」
「そうですね。あなただけの問題ではないし……」
 どのシスターも歯切れが悪い言い方を続けている。教会内部で問題になり、シスターたちをこれだけ言いよどませていることが、わたしの問題である、と?
「一体何があるんですか? はっきりと言ってください!」
「……分かりました」
 一際強い口調でわたしが言った後、一人のシスターがわたしをまっすぐに見つめて、静かに切り出した。
「問題となったのは、あなたの服装なのです。もちろんこれは教会で定められた服装なので、あなたのせいではないのですが、殿方を惑わすものだとして一部の方から強く変更を求められていたもので、今回それが実現したのです」
「はぁ?」
 思わずわたしはため息とも驚嘆ともとれるような声を上げてしまった。と同時に、瞬時に納得もしていた。
 なにせこの服装──制服とは言え、確かに……恥ずかしい面があった。深すぎるスリットと言い、そこから見える……ガーターと言い、まして……戦闘中に裾がどうなるか、それを周りがどう見てるのかなんて、想像するのは容易なことだった。
 それでも、わたしはこれも神の与えた試練の一つと受け止め、これまで頑張ってきた。わたしが力尽きて倒れたとき、動けない状態でありながら自らの隠すべき部分を晒していること……それも神の試練だと…そう思って、ひたすら耐えてきたのだ。
「それで、これからは下着の上にこれを──」
 言葉を続けてるシスターがわたしに見せたものは、短いスパッツのようなものだった。「着けるようにという上からの指示です。なお、それ以外の変更はありません」
「え……」
 わたしは思わず絶句した。
 下着を晒すことが無くなるのは、いいことかも知れない。けれど、「それ以外の変更はない」と言うことは、つまり?
「あ、あの……」
「何でしょうか?」
「あの……ガーターは…どうなりますか?」
「そのままです」
「は?……」
「それで、どうやって……」
「あなたもプリーストとして、神にご奉仕する身。思い悩むことも、また辛いこともあるでしょうが、これも神の与えたもうた試練なのです」
 わたしの質問をさえぎるように、シスターは静かにそして強い口調で語った後、わたしとその「新しい制服」だけを残して部屋から出て行ってしまった。
 しばらくの間、わたしは「それ」を見つめて、悩んでいた。
 はたして、どう着けるのが正しいのか。
 いや、そもそも、ガーターとスパッツと言う組み合わせは存在しないのではないか?
 穿くとしたら、これまでの下着同様にガーターの上に? いや、それではものすごくおかしくないだろうか?
 でも、ガーターごと隠すように穿いてしまうと……用足しが……ものすごいことになりはしないだろうか?
 あぁぁ、神よ。どうしてあなたはわたしにこれほどの試練を?
 教会に籍を置く身として、定められた服装を自分で勝手に替えるわけにはいかない。となれば……。
 いやいや、でも、これは、ちょっと……さすがにわたしとしても嬉々として受け入れるのは容易なことではない。今までの服装が殿方を惑わすと言われても、それはわたしのせいではないのに。
 あ、そうか、そうなのか。
 外で暗くなっていた男性たちは、このことを知って嘆いてたのに違いない……。
 わたしは教会の人間であり、定められた制服は守らねばならない。
 けれど。
 思い悩む人がいる。
 わたしは教会の人間だけど、思い悩む人を救うことも、また神への奉仕につながること。
 そうなのだ。
 わたしは組織の一員として、教会上層部に仕えるではなくて、神に仕えるのだから。

 わたしの心は決まった。
 先ほどシスターたちが持ってきた「それ」を、部屋に備え付けの机の上に置くと、わたしは力強く歩き出した。
 ささやかな抵抗。そんな気持ちがあったのかも知れない。でも、これも神の試練の一つなのだ。
 この先、いつまでこの「抵抗」を続けることが出来るか分からないけれど。
 それでも、わたしは自分の恥じらいと周囲の視線と言う、モンスター相手とは違った戦いを続けていくことだろう。それらもわたしを成長させる糧になっていると信じて。

(本音? 見せパンはイヤだったけど、あれはもっとイヤって感じなんだけど……)
140名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/25(火) 14:51 ID:CjLX9MpE
萌えなしで、長文スマソ
141名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/25(火) 16:43 ID:HAhtZLOE
>>139
激しく同意&ぐっじょぶ(*´Д`)
14249sage :2003/02/27(木) 00:35 ID:33T0FG2Y
ミナサマオハヨウゴザイマス
気になっちゃうような状態で止めてしまって申し訳ないデス
書き忘れていたわけじゃありません、決して!決して!スランプトカヒゴロノツカレトカゴニョゴニョゴニョ
というわけで久しぶりに♀アサ行きます。ごー
【ちなみに>>85の続きです】
14349sage :2003/02/27(木) 00:36 ID:33T0FG2Y
私は…♀アサ。今、私はひたすらに泣いている。
どうして。自分でもよくはわからなかった。
そんな私を嘲笑うかのように、止め処なく涙は流れつづける。
対したことではないはずだ。私は感情を殺した人間だ。この程度でどうして泣かなくてはいけない。

♂騎士は、唐突に強く(でも、優しく)私の肩を押した。
自然、唇と唇が離れることとなった。
一瞬戸惑う表情をする私。何が起こったのか分からなくなってしまったらしい。
現状を把握し、無邪気な微笑を取り戻してからリーダーに声をかける。
「ぅふ、ごちそうさまっ。」
彼はうつむいたまま。右手で服の上から胸を掴み、息を乱して動かない。
さすがの私も異変に気がついたのだろうか。下から覗き込むようにして彼を見つめた。
その途端、バッとリーダーは後ろを向いた。
手は強く握り締められ、体全体が震えている。あからさまに取り乱している。
…こんな彼は見たことがない。
絞りだすような声が出されたのはその時だった。
「…ごめんっ。」
そのままリーダーは駆け出し、部屋の扉を開け、外へ走っていった。
少しずつ彼の背中が見えなくなる。
彼は騎士だ。体中をくまなく鍛えているため、当然足も非常に早い。
にもかかわらず、その姿が見えなくなるまでの時間がとても長いように感じられた。
どうしてかは分からない。声もかける暇はなかった。ゆっくりと彼の背中は遠ざかっていった。
その内、視界から彼が消えて、時間の流れを取り戻す。
両手で胸を抑えた。微かに…いや、寒さに凍えるように大きくその手が震えている。
私は、気付いてしまったのだ。
彼が去った後に訪れたのは静寂と沈黙。
そして、孤独。
寂しさと愛しさ。襲い掛かるように訪れた静寂と、独りということへの恐れ。
様々な感情が入り乱れた結果、私の目頭は燃えるように熱くなり、止まらなかった。
14449sage :2003/02/27(木) 00:37 ID:33T0FG2Y
私は♀アサ。盗賊を生業と決めた時から泣いたことなどはなかった。
それが、声を張り上げて泣いている。
始めは頬を涙が伝う程度だった。だが、時間が経つに連れて私の顔はびしょびしょになっていった。
叫び、体を震わせ、頭を抱えて。まるで、親を見失ってしまった子供のように泣き続ける。
感情は次第に膨れ上がる。叫びが雄叫びになり、体を床に突っ伏す。
とにかく私は感情の捌け口が欲しかった。
涙を受け止めてくれる何か、抑えてくれる何かが。
狂ったように左右に首を振り、あるはずもない何かを探す。
そこにあるのは欲しくない、今はいらない窓ガラスやタンス、ベットや花瓶。
「うぁ…。」
何でこんな物がここにある。私が欲しい物はこんなものじゃないのに。
いらない。そんな物いらない。いらない物はなくなればいい。
憎悪が私の中に巡る。
「…ぁあああぁああぁぁっ!」
金属の砕ける音、硝子の弾ける音、木が拉げる音。
拳を振り回し、いらない物を全て無くす。
心地よくなんかない。でも、いらないから壊す。
欲しい物だけあればいい。欲しい物は、どこ?
ふと、リーダーの笑顔が頭に浮かぶ。
純粋な、少し頼りなさそうな、でも本当はとても強い、彼の笑顔。
幾度となく向けてくれた。何度も、何度も、何度も。
その度に私の気持ちは和らいだ。癒された。嬉しくなった。
でも、いない。走って行った。私の前からいなくなった。
黒い、青い感情が胸から全身へ伝わる。
独り。孤独。
いらない物はひとしきり破壊した。でも、欲しい何かは見つからない。
もう、だめ。疲れた。泣きつかれた。
両手で壁を叩く。拳が赤い。でも痛くない。叩く、何度も叩く。
その内、手が疲れてだらりと落ちる。それに合わせて尻を床についた。頭もうなだれ、壁につく。
「ぁ…ぅぁぁん。」
それでも涙は流れ続けた。止め処なく、いつまでも。
14549sage :2003/02/27(木) 00:38 ID:33T0FG2Y
私は♀アサ。最早時間の感覚は無くなっていた。
今、何時なんだろう。リーダーがいなくなってからどれだけの時間が経ったのだろう。
孤独を噛みしめ、私は再度床に突っ伏して、泣いた。
「どうしたの!?」
勢いよく駆け込んで来たのは♀アコだった。
髪を振り乱して私の元へ駆け寄る。
「大丈夫?何があったの?」
優しく声をかけてくる彼女。その表情は緊張はしながらも、微かな微笑みを含んでいる。
その笑顔に私は救われた。
何も言わずに♀アコの胸に飛び込む。
彼女は一瞬戸惑ったようだが、すぐに私を受け入れてくれた。
私は、もう一度。彼女の抱擁の中で長時間涙を流した。

ある程度時間が経って、私は客観的に自分を見る私を取り戻していた。
自分のしたことに激しい後悔が生まれる。いい大人が一体何をやっていたんだ。
家具を壊し、窓ガラスを割り…ああ、こんなにも周りに迷惑をかけてしまったのは初めてだ。
♀アコと一緒に宿屋の主人に謝り(常連客、ということで今回は一応許して貰えた)、弁償代を払った。
部屋をできうる限り掃除した後、私達二人は広場のベンチで話をすることにした。
「…ごめんなさい。」
二人でベンチに座った後、少し時間をおいて私は謝罪の言葉を♀アコに向けた。
またしても目頭が熱くなる。多少は落ち着いたと思ったが、まだ体の方の私は駄目なようだ。
「いいのよぉ。ほら、宿屋のおじさんも許してくれたんだし、大丈夫♪ね?」
「うん…。」
♀アコは自分の袖で私の涙を拭ってくれた。絹の布が頬にこすれて気持ちが良い。
先ほどそうしてくれたように、また、彼女に抱き締められた。
彼女の体温と、私の頭を撫でる手が私の心と体を落ち着かせる。
ハタから見たらどう思われるんだろう…しつこいようだが、私のイメージには合わないはずだ。
でも、暖かい。落ち着く。気が少しずつ楽になる。
少し眠りそうになりながらも私は目をこすり、♀アコに促されながら事のあらましを説明した。
146名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/02/27(木) 05:02 ID:zrmCV80A
まってました!読んでてずっとドキドキです。
続きもがんばってください!
147女騎士⇔女プリーストsage :2003/03/06(木) 21:07 ID:Tq8aiL0Q
「ねー、プリーストの衣装貸して」
姉さんがこう言うことを言うのは何も今日に限った事ではない
女騎士である姉さんはたまに思いつきだけで発言することがある
「・・・いきなり何を言ってますか」
私は心持うんざりしたようにそう言った
「いいじゃない、私たち双子なんだし、たまにはイメチェンイメチェン」
「・・・この制服は教会から配られた大切なー」「はいはい、相変わらずお堅いなー、1回くらいいいじゃん」
強引に話を区切られて私はやや不満げな顔をする
「・・・まったく、1回だけですよ」
私は渋々そう言って姉さんと衣装を変えた


「武器どうしよっか?」
私の服を着た姉さんが問い掛ける
「私は剣は使えませんよ」
・・・しかし女騎士のスカートは丈が短い・・・恥ずかしいなぁ・・・
「だよねぇ、私も本とか杖とか使えないし・・・いつも通りでいっか」
「そうですね、それで、姉さんはこの後どこに?」
「んー、スフィンクスダンジョンで青箱でも狙ってくるよ、そっちは?」
「私はオークダンジョンで経験を積んできます」
「OK、ポータルよろしく〜」
「はい、お気をつけて」
そう言うと私は姉さんの足元にワープポータルを開いた
「さて、私も行きますか」
私はそう言うと自分の足元にもポータルを開いた


(んー・・・しかしプリーストの服装って動き辛いんだなぁ・・・)
(しかも、胸のとこぶかぶかだ・・・)
微妙に敗北感を味わいながら慣れない妹の服装で剣を振るう私、そこに
「?君は女プリーストの服装をしているのに何故剣を使ってるんだ?」
通りすがりらしい男騎士が私に向かってそう言った
「ん?、いやだって私騎士だし」
「騎士なのに何故女プリーストの服装をしてるんだ?」
「いや・・・妹と交換しただけなんだけど・・・」
「妹と交換!?君は騎士の服装を何だと思ってるんだ!」
「え、いやだってたまにはイメチェー」「大体、最近の騎士はろくなのがいない、親のすねかじりで騎士になった奴とかetc」
「え、いや、おーい」
「君もそうだ騎士という職業に誇りを(なんたらかんたら)」
「・・・助けて〜・・・」
男騎士はその後も騎士とは何かを延々と私に向かって喋り続けた


(姉さんいつもこんな短いスカートで戦ってるんだ・・・よく恥ずかしくないな・・・)
(うぅ、しかも胸のところがきつい・・・)
私は慣れない女騎士のスカートを気にしつつ、沸いたモンスターをバイブルで殴る、そこに
「すいません、何故貴方は女騎士の服装なのにバイブルを?」
女プリーストと同じく修行に来ているのであろう男プリーストがそう尋ねた
「あ、いえ私は聖職者なので・・・」
「聖職者!?、何故女騎士の服装を?」
「いえ、姉と交換したんですが・・・」
「姉と交換!?、嘆かわしい!貴方には聖職者として誇りはないんですか!?」
「え、その、私はー」「大体、神に仕える聖職者が衆目に足を晒す等言語道断!」
「あの、いえそうなのですが・・・」
「そもそも女プリーストの、あのスリットを廃止すべき(なんたらかんたら)」
「あぅ・・・」
男プリーストはその後も聖職者の在るべき姿を私に向かって延々と喋り続けた


「ただいま・・・」
沈んだ声持ちで姉さんが部屋に入ってきた
「おかえりなさい・・・」
私は沈んだ声で返事をした
私たちは顔を見合わせて同時にため息をつき、同時に言った
「「やっぱり騎士(プリースト)の服装がいい・・・」」

モエカナァ?トリアエズツッテキマス∧‖∧
148接近に失敗しました接近に失敗しました :接近に失敗しました
接近に失敗しました
149名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/07(金) 21:39 ID:zbf6ZsF2
削除依頼してきました。
150エロなし :2003/03/08(土) 12:10 ID:gnC5FNTY
エロなしの作ってみました
改造するなり感想言うなり好きにしてください


今こうして私はフェイヨンの地下に来ている
ルーンミッドガル大陸で起きているさまざまな異常現象
かつての王国の主とグラストヘイムの亡霊
魔法としゲフェン塔でのモンスター異常発生
そしてたびたび首都を襲うモンスターたち
その調査のため法王は我々を各地に派遣した
そのひとつ「フェイヨン地下ダンジョン」・・・
ここではかつて捨てれられた死者たちや
生贄にささげられた少女たちが
蘇っているのだという
ここの調査に私が派遣されたわけであるが
正直私はここには出来るだけ訪れたくはなかった
私の幼いころのあの悪夢がよみがえってくる
そう、私がまだこの大陸を出てゆく前のこと

私には姉がいた

もともとあまり動きが早くなく
この村の中でも貧しい家庭に生まれた私は
いつもいじめられていた・・・
そんな私をいつもかばい守ってくれた姉
私は姉が大好きだった
姉の笑顔は貧しい我が家を明るくしてくれた
しかしその本の小さな幸運さえ私達には許されなかったようだ
そうあれは忘れもしない18年前の今日
大凶作にみまわれたこの村は
生贄として私の姉を選んだ
4歳だった私の目にはっきり残っている
あの記憶・・・
洞窟の暗闇の中に消えて言った姉・・・
しかし法王直々の命令なのだから調査はしなければならない
洞窟の前で迷っていた私は思い切って中へ入って言った
1Fは以外に人が多かった
ゾンビがたくさんいる、先祖だろうか
襲ってくる敵を殴り倒しながら
私は2Fへ進んでいった
そして3F
1Fと2Fではゾンビなどしかいなかったが
ここはなぜか人がぐっと少なくなった
しばらく進むとそこには廃墟らしき集落があった
そこを調査しだす私
その家にはいくつか部屋があり
不思議なことに整理されていた
なぜかわからないがとても懐かしい感じがした
――ガタッ――

何か音がした
誰だろうか?

とりあえず確認しようと外へでた
私はこの部屋の調査に気をとられ敵に囲まれていたのに気づかなかった
いくらなんでもこの数の敵ではかなわない
魂亡き彼らはじりじりと迫ってくる
そしてこれらがいっそうに襲い掛かろうとしてきた!
「もうここまでか・・・」
死を覚悟し目をつぶったそのとき!
――まって!
何か誰かの声が聞こえた
その声に反応して亡霊たちは襲ってこない
何とか危機は過ぎたように思えた
緊張かほぐれてか意識が一気にうすれて行く
そして私はその場に倒れてしまった
・・・次の瞬間私は部屋の中にいた
さっき調査していた部屋だ
どうやらあのモンスターを制止(?)した人が運んでくれたようだ
そしてそのひとらしきこえがきこえてきた
「大丈夫でしたか?」
「あの子達には心がないの」
「生贄にささげれて、悲しみや裏煮の詰まった魂路悪魔に食われて」
「こころをなくしてしまったの」
「でも大丈夫、私のことは聞いてくれるから」
「それにここに来る人たちはみんな私達を殺しに来る人たちばかりだから私達も攻撃しないとやられてしまうの」
・・・私は放心状態だった。彼女の話も耳には入っていたが
ほかの事を考えていてほとんど聞いていなかった
この目の前にいる、この少女はまぎれもなく
生贄にされた私の姉だった・・・。
話し方、声、容姿そのすべてがあのころの姉のままであった
ただひとつ違うのは
とても悲しい顔をしていた
顔は青白くなっておりそのかぶっている帽子には封印のおふだがしてあった
――ねぇさん!!――
そう叫びたかった
しかし声が出ない
やっと声が出るようになりだした第一声は
「…なんで私を助けたのですか?」
だった
違う!こんなことを聞きたいんじゃない!
心でいくら叫ぼうとも声に換ることは出来なかった
「あなたはここに来る人、いつも来る人とは違った雰囲気がした」
「それに…」
「あなたはたった一人の私の肉親にそっくりなの…」
「私を慕ってくれた…私の心の支えだった弟に」
「・・・・」
「弟はとろくて・・・弱虫で・・いつも私のそばにくっついて泣いていたわ」
「でもね、私が笑いかけてあげると泣きやんで私に笑いかけてくれたの」
「私が生贄に行くとき弟は決して私を離そうとしなかった」
「私が洞窟の中に入っていくとき」
光がどんどん遠くなっていくとき
涙が止まらなかった
「そう、もし生きていればあなたくらいの歳になるわね」
「だか・・・!!」
姉が最後に何か言おうとしたとき、急に後ろに剣士が現れ私の姉を背後から切
切りつけた!
「―――!」
私に持たれかかる姉。
「大丈夫ですか!!牧師様!」
その剣士は私を助けに来てくれたのだろう
普通ならお礼を言ってその場を立ち去るのが普通だろう
しかし彼が切りつけたムナックは私の姉なのである
私にはもう理性で判断する余裕などなかった・・・目の前で姉を切りつけられてしまったことで理性が完全に吹っ飛んでしまった
「きさまぁぁぁぁ!!何をする!」
怒りの化身とかした私はその剣士に攻撃を仕掛ける
「ホーリーナイト!速度減少!インベナム!!!!!」
「―――!!?」
その剣士は何が起きたのかわからずその私の攻撃をもろに受けてしまった
その場に崩れ落ちる剣士
「ぼ、牧師様・・・・なぜです・・・?」
「貴様が!今さっき斬り付けたのは私の唯一の肉親の姉なんだよっ!」
もう剣士は絶命していた
その剣士のことを気にする余裕など私にはない・・
姉を抱きかかえる・・・
「ねぇさん!ねぇさん!!」
「やっぱり…クロラットね・・・?」
「強くなりましたね…あのころの泣き虫クロちゃんじゃないんだね・・・?」
「そうだよ・・・僕プリーストになったんだよ?牧師様になったんだよ?おねぇちゃんの・・・こんな傷なんかすぐに・・・!!」
私は絵寝のその傷口にヒールをかけようとして愕然とした
生贄にささげられ死者となっていた姉にはヒールはけけられないのだ!
流れていく冷たいその血液を私は止める事が出来ない!
あぁ!神よ!なぜあなたはそこまで私達を呪うのですか!?
なぜ私は大切な人を助けれないのですか!
「クロ・・・最後にあなたの顔をよく見せて…」
弱ってゆく中で姉が呟いた
「分かったよ…おねぇちゃんだから行かないでよ…また僕を一人にしないでよ…おいてかないでよ」
「ふふ・・まだまだ甘えん坊ね…でもそれは無理よ貴方はもう過去のみを見つめないで…未来に向かって歩いていって…おねぇちゃんね・・・最後に・・・あな・・たに逢えて…よかった…」
「お姉ちゃん――――!!」
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

神を信じていくら祈ろうともその願いはかなえられることはなかった…


駄文ですみません…吊って来ます∧‖∧
151名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/08(土) 15:02 ID:iBf5v9y.
>>150

いやはや、GJです
152名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/08(土) 15:45 ID:SyMuGIe.
「ありがとうございました〜」

 よく晴れた午後。ゲフェン東門の外で、私はリンゴ売りの露店をしていた。
 転職のために修行中のノービスや、転職したてのマジシャンを対象とした、
儲け一切なしの仕入れ値売り。もちろん、彼らにはまだまとまったお金がないので、
収集品24%UPの買取りサービスつき。物々交換も可と、いたれりつくせり。
 儲けがないどころか、手間や仕入れのための移動費を考えればまったくの赤字。
ハッキリ言って、ただの趣味だ。
 儲けることこそ商人の為すべきことだというのなら、彼らが冒険者として育つことで、
また私に利益が帰ってくるのだとでも考えよう。
もちろん、ライバルも増やすことになるんだろうけど、それはまたそれで。
 新米マジシャンが休憩のひと時に、私を雑談の相手に誘う。
そこにノービスが、またお願いしますと、集めた収集品を持って声をかけてくる。
 変わらない日々。だが、私の店を訪れるのはいつも違う姿。違う声。
初心者の期間は長いようで、とても短い。
彼らは新たな地を求めて、この場所を去っていく。
 私はお別れの言葉を聴いたことさえない。いつの間にか、彼らは旅立っている。
出会いから別れまでは、ほんの刹那の間しかない。
 それでいい。と、私は思う。
 ゲフェンの街を取り囲む湖から、少し冷たい風が吹く。
それは、冒険者たちに遥かな世界を思い描かせる、不思議な風だ。
 目の前に大きな希望が広がっているのに、ここに留まる必要なんてない。
いろんな世界に羽ばたいてこその、冒険者なのだから。

 今日も湖畔の草原には風が吹き、目の前を人々が通り過ぎる。
ゆっくりと、けれど決して退屈ではない時間が過ぎていく。
 私がここで露店をしているのは、そんな日々を感じていたいから、なのかもしれない。


 売行きは少量ずつではあるけれど人の出入りも多いので、次第に店じまいの時は近づく。
 売り物のリンゴがあとわずかになったところで、いつもの口上。

「さぁ、閉店間近のサービスタイム。リンゴひとつ2z。早いもの勝ちだよー!」

 私の声で、周りの人々が一斉に集まってくる。あっという間に売り切れ。
 こんなことをしているとさらに赤字がかさむのだが、当然気にはしていない。
本気で儲けようと思えば、プロンテラなら1日で何十万というお金が稼げる。
もちろん、それなりのテクニックは必要なのだけれど。

「ごめんなさい。もう売り切れなんです。またのお越しをお待ちしておりますね」

 サービスタイムに間に合わなかった人たちに頭を下げ、替わりに笑顔のサービス。
最後のひとりに手を振って見送ると、私はひとつ息を吐いた。
そして、空になったカートに目をやると、

「へ?」

 そこに女の子がいた。


「こんにちは」

「こ……、こんにちは……」

 カートの中の女の子が、笑顔で挨拶をしてくる。私もそれに笑顔で……
いや、きっと引きつった笑顔だったろうけど……挨拶を返した。
 なんか、すごく微妙な空気が流れている気がする……。
 とりあえず、私は脳みそを高速回転させて、現状把握に努めることにした。
 私のカートに女の子が入っている。格好からしてマジシャン。
狭いカートの中に、三角座りでちょこんとしている姿は、なぜか妙に似合っていて。
首を少し傾けて、私を見上げる笑顔はだいぶ可愛い。
そういえば、マジシャンの服装って布地が少なく肌が多く露出しているから、
金属製のカートに直に座っていると寒そうな気がするけど、大丈夫なのだろうか。
 ……いけない。かなり冷静じゃないや、私……。

「えっと……、何を、されているのですか?」

 一応、お客様の残りということも考えられるので、丁寧語で訊く。
かなり間抜けな質問だというのは、この際気にしない方向で……。
 私の質問に女の子は一瞬、きょとんした表情を見せ、それからまた笑顔で

「箱入り娘、なんちゃって」

 ……急に体中の力が抜ける感覚がして、ずんと肩に重いものが乗ってきた……。

「そんなことを言いたいがために、私のカートの中に入った……と?」

「えへへ」

 女の子は変わらぬ笑顔で、私を見上げている。素直に、可愛いと思える笑顔。
けれど、それに自分のペースを乱されてはいけない。

「とにかく」

 私は切り返しを図るために、また口を開いた。

「このカートは商品や預かり物など、大事な物を入れているものなんです。
申し訳ありませんけど、すぐに出て頂けませんか」

 優しく諭す。
 だが、女の子から返ってきた言葉は

「それじゃあ、私のこと大切にしてくださいね」

 な……、そうくるか……。それなら、こっちだって。

「なるほど。つまりあなたは、私の持ち物ということですね?」

「はい」

「では……、
本日最後の大売出し! こちらのマジシャンさんが、今ならたったの3z!」

「安っ!」

 売られることについてはどうでもいいんだろうか。

「商品の値段をいくらにしようと、私の勝手ですよね?」

「けど、ゼロピーと同じ値段は……」

「ゼロピーは買うと6zですよ、ふふふ……」

「せ、せめてもう一声」

「では10z」

「OK♪」

 いいんだ。

「現品限りですよー」

「ぴっちぴちですよー☆」

「……」

「……」


 くだらないネタの出し合いをした後、私たちはなぜか意気投合し
今度は他愛もない話題で盛り上がった。
 周りの人たちはきっとあきれ返っていたんだろうけど、私たちは気にもならなかった。
彼女とのおしゃべりは本当に楽しかったから。
 彼女はまだ、私のカートの中にいた。彼女は当たり前のようにそこに座っているし、
私も、彼女がそこにいることに何の疑問も湧かなくなった。
 その姿が似合っているから? 可愛いから? ううん、それだけじゃなくて。

 カートの中から私を見上げる彼女。カートの中の彼女を見下ろす私。
ふたりの関係は、なぜかそれが一番しっくりくるようで……。

「明日は朝一でプロンテラに仕入れに行くんだけど、一緒に来る?」

「はい♪」


 草原に吹く風が、その向きを変え始めた。
それは、やがて訪れる夜を感じさせるもの。
それは、やがて訪れる変化を思い起こさせるもの。
 ひとりじゃなくなった私。広がっていく世界。

 私にも、湖の風に導かれる時が来たのかもしれない。

 夕凪の中、笑顔の彼女を見ながら、そんなことを思った。
153名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/08(土) 15:55 ID:SyMuGIe.
このスレッドには初めましてなのですが……
えっとまぁなんてゆーか
もうちょっとSS書きの修行積んできます(;´Д`)
ていうか、タイトルくらいつけた方がよかったですか……

そうそう、これ体験談が元になってます
ベータ1当時の話なので、現在でも1日で100kも稼げるのかは知りません
このマチャ子さんは、アコたんの青ジェム購入係に成り下がっているので……
体験談を元にお話作るのはおもしろいので、また何か書けたらいいなと
154名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/08(土) 19:32 ID:v4dmrcj6
>>150
せつねえ…
>>152
ほのぼの〜。

こんな感想しか書けない俺って…
15549sage :2003/03/09(日) 01:11 ID:L0K7ys0.
私は♀アサ。甘えるようにして♀アコに抱きついている。う、うーん。
とにもかくにも、私はゆっくりと彼女に説明を始めた。
再度♂騎士の唇を奪ったこと、彼が走って去って行ったこと、それが原因で泣いていたこと。
体の方の私の言葉はたどたどしかったが…何とか伝わったようだった。
「あたし、嫌われちゃったの。リーダーに…きら、われ…ぇぅっ。」
「あゃゃゃゃ。よしよし!大丈夫!大丈夫よぉ。」
焦った様子で私をなだめる♀アコ。何度も何度も頭を撫で、私を落ち着かせようとする。
…なんだか慣れてきてしまった。あぁ…これはこれでまずい気が。
「…えっとね。これは私がリーダーを見てて思ったことなんだけどね。」
「うん…。」
「リーダーって、優しいでしょう?すごく。私達にも、赤の他人でも、誰にでも。」
「うん。」
「それでいて、熱血で、純粋で…絵に描いたような良い人、って感じじゃない?」
「うんうんっ。」
何故だか口調に力が入る私。
「だからアナタは彼を大好き!…そうよね?」
「うんっ!」
わーわーわーわーわーきゃーきゃー!
…叫べども喚けども私の声で私の声を遮れない。とほほ。
そんな事を大っぴらに言ってしまう。一体何を考えているんだ、私は。全く…。
ほんの少し間を置いてから、♀アコは私を抱き寄せて続ける。
「…ほむっ。」
「かーわいっ。」
やーめーてー。
「でね。唐突な質問になっちゃうけど…リーダーはどうして走ってっちゃったんだと思う?」
ビクン、と私の肩が震えた。現状の私には禁句とも思える言葉。
案の定私の震えはだんだんと強くなり、嗚咽へと変わる。
だが、彼女は聖職者。その言葉に何の意味も無いことはありえないことを私はちゃんと分かっていた。
「ぇ…ぅ、ぁ…あたしが、嫌いになっちゃったっ、から…。」
…体の私はそうでもないらしいが。
15649sage :2003/03/09(日) 01:12 ID:L0K7ys0.
私は♀アサ。今日何度めになるか分からない涙は、♀アコの一言から収まり始めた。
「それは違うよ。」
優しく、心に溶け込むような声で私を包む。
「彼はね、さっきも言ったけど本当に純粋なの。聖職者の私から見てもそう。
 とにかく純粋で、人に何度騙されようが酷く扱われようが人を信じちゃうのよね。
 徹底的に信じて、笑って、笑わせて。それで知らず知らずの内に周りの人を惹きつけてる。
 それが彼のとりえだし、一番良い所でもあるわ。」
…同感だ。だが、言葉として聞いてみて初めてリーダーのカリスマ性の本質が分かった。
私は彼自信の強さと統率力のレベルの高さを評価し、彼をPTのリーダーとして認めた。
だが、本当はそれだけではなかった。それは何となく分かってはいたのだが。
信じる事。それが彼の最大の力なのだろうか。だから、惹かれるのだろうか。
「これは多分…って話なんだけど。アサちゃん、リーダーにキスしちゃったんでしょ?」
「うん。思いっきり。」
ゎー。
「きっと混乱しちゃったんじゃないかな。アナタじゃあんまりそういうことをしなさそうだし、
 そもそも彼は純粋でそういうことにも奥手なんだと思うの。言っちゃえば、ノービス級のウブ。」
結構酷い言い様である。
「ただ照れちゃったんだと思うよ。恥ずかしくなってつい走り出しちゃったのよ、きっと。」
「そうかなぁ…。」
「うん。…私はリーダーが好き―恋愛とかそういうのじゃなくてね―だし、♀アサもそうでしょ?
 もちろん♂BSもそうだろうし、逆にリーダーも私達皆の事を好きなはず。
 人を嫌うって事を知らない人みたいなものなんだから。
 だから、ね?そんなに心配することはないと思うよ。」
「…うん。」
私はその一言を最後に黙って俯いてしまった。
確かに気持ちの整理をつけることは難しいだろう。何せあまり物を考えられない体の私なのだ。
でもそれでも私は私。時間さえあれば何か一つの答えが見出せるはず。
いつもそうして数々の死線を乗り越えてきたのである。
「リーダー、探そう。お姉ちゃんも手伝って…。」
15749sage :2003/03/09(日) 01:13 ID:L0K7ys0.
私は♀アサ。唐突ではあるが、私は風呂に入っているの時間が好きだ。
体を全身くまなく洗ってから溜めておいた湯に長い時間浸かる。
疲れが取れて頭はぼーっとしてしまうが、孤独を感じない独りの時間は様々な事を考えられる。
それは私の癖であり、同時に習慣でもあるのだ。

「あったかーい。」
私がそんな独り言を漏らす。
宿屋の一室に設置されている、そう大きいとは言えないバスルーム。
日が暮れ、夜も深くなった頃私はいつものように湯浴みを始めた。
やはり習慣は習慣だ。体の私も風呂好きであることに変わりはないらしい。
♀アコは毎晩シャワーだけで済ませているが、私に言わせてみればそれは邪道である。邪道。
「…はぅ。」
湯の中に体を沈めてから、溜息一つ。
私はあの後リーダーをプロンテラ中探し回った。
中央広場に始まり、北広場、大聖堂、内壁通り、南の交差点、南門近く、元剣士ギルド…。
騎士団の詰所にも行った。首都内の酒場は全て入った。武器屋、道具屋、精錬所…。
どこにも居ない。リーダーの姿は無かった。
何度も何度も泣いては、何度も何度も♀アコに頭を撫でてもらった。
それでも、いない。
こんなことは初めてだ。ちゃんとした別れをせずにリーダーが去り、そのまま居なくなるなんて。
…この解釈の仕方は私のエゴかもしれないが。
「ぶくぶくぶく。」
こらこら。汚いからやめなさい。
「ぷく〜っ。」
タオルを湯船に入れて空気をためて海坊主とか作らない。
「ごっくん。」
やめなさいってのに!まるで子供である。
とにかく、風呂に入って私はすっかり落ち着いてしまったようだ。
そろそろ♂BSが帰ってくる、という情報が入ったのはついさっき。
リーダーが帰ってくることを信じ、3人で作戦を立てることになるだろう。
せっかく精神が安定したのだから私には頑張ってもらいたい。
15849sage :2003/03/09(日) 01:38 ID:7QXbr7CQ
後書きその他書くの忘れてた…
この小説は続き物でございます
遅筆ですががんばってますっ!…頑張れているのでせうか

>>150
悲しい物語です。ぐす
>>152
実際にRO内であってもおかしくないようなやりとりですね〜
楽しげでまたーり

またーりをRO内で求める49でしたー
頑張って書きます。遅いですガ
159名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/09(日) 08:25 ID:XLZw469c
またーり&萌えは重要な要素だ。
しばらくぶりにスレも覗いたら…
キテル━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!

>49
ありがとう!最高っす!
アサ萌え者のおいらにとって貴方様は神に等しいですよ!
160名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/10(月) 00:07 ID:0tsnZZRM
神に等しいだぁ!?
お前、変な事いってると天誅食らわすぞ!?

神 な ん だ よ !!


ってわけで続き頑張ってください。まったり待ってます
161♂マジ×♂ウィズ :2003/03/11(火) 23:50 ID:hFe5BJgs
「いいかっもっと集中しろっ、杖の先に意識を集めろ!」
うっそうと茂る人気のない森の中にウィザードのよく通る声だけが響いていた。
ぽかぽかとした春の陽気とは裏腹に若いマジシャンの息だけは荒く額に汗がにじんでいた。

「ファイヤーボールなんて基礎中の基礎だぞ。お前マジに向いてないんじゃないか?」

お前マジに向いてないんじゃないか?という言葉がマジシャンの頭の中で何度もこだまする。
確かに職業紹介所でも性格判断でもマジ向きだと診断されたわけではない・・・。

ノービスの頃に一目見たウィザードの勇姿が彼の視線を一瞬で魅了し、その映像は頭の中に深く刻まれたのだった。
「いいかぁ俺の手本をよく見てろよ。ファイヤーーーボールッ!!」
ウィザードが呪文を唱えると炎の煙が杖の先に集まり球体化して数メートル離れた的へと狂いもなく当たった。
得意げな顔で若いマジシャンを見下ろす。
「どーだよく見ろ!完璧だろ!さっお前もやってみ」
何回も唱えたはずのファイヤーボールの見事さに火ウィザードは子供のような顔で笑う。
もう何時間も練習しているのに火ウィズって熱血だ。
「はぁ・・はぁちょ ちょっと休ませてくださいよー、僕もうへとへとで・・。」
「そんなんじゃいつまでたってもできないぞ。でもまぁ・・そうだな休憩してお茶にしよう。」
あきれたようにマジシャンの横に座ると優しくぶどうを差し出した。


「さぁ練習再開。集中してイメージを具現化して」
火ウィズの視線が痛いように感じる。緊張してきた。
すぅっっと短く息を吸い杖先に意識を向け呪文を唱えた。
「ファイヤァーボールッ」
炎色のもやが杖先に集まるが球体化しないでもやは消えてしまった・・。

「さっきよりまぁまぁだな。さっきなんか湯気しか出なかったもんなぁー(笑)」
ウィズはその様子を思い出してお腹を抱えて笑い出した。
「もうっ茶化さないで下さいよぉ、これでも一生懸命なんですからっ!!」
赤い顔をして反論する。

「まぁまぁもう陽が落ちるし今日はもう終わりだな。ったくファイヤーボールぐらい覚えてくれないと
 俺がいつまでも狩りに行けないんだぜ・・・・?」

振り返るウィズの顔を見てマジの顔はますます赤くなった。
162♂マジ×♂ウィズsage :2003/03/11(火) 23:52 ID:hFe5BJgs
ごめんなさい、あげちまいました。
ってか文書くのなんて作文以来(*´Д`)
萌えがまだわかってなくてお目汚しスマソ
163##〜今度はBSだ!!〜sage :2003/03/17(月) 21:30 ID:mCezrge2
 プロンテラから少し離れた林の中、どこかで煙が上がっている。
 木が燃えるような匂いはない。
 周辺の人間はいつもより少しばかり空気に湿り気を感じていた。

 むっとする熱気、飛び散る火花、彼女はそれを体に浴びるように炉を見つめている。
 キッと睨みつけるような鋭い眼差しは炉の中で暴れまわるソイツを見つめている。
 絶好の瞬間−−ソイツが一番良い瞬間−−を見出すため、ただのひとときも逸らされずに炉に向けられている。
 一瞬だった、彼女が瞬きをしたかと思うと、彼女はすでに炉の中身から元の形状をとどめていないソイツを取り出す。
 金敷の上に広げられたソイツを一打ち一打ち、強すぎず、弱すぎず、より強度を高めるために。
 力任せに叩くのではない、一打ち一打ちに己の魂を込めるように丁寧かつ大胆に、そして踊るかのように、打ち込む。
 それを遠くからみると、まるでゆっくりとリズムを刻むかのようであった。
 彼女は腰を下ろし、鞄から取り出した刃物でソイツの形を整える。
 切り取られたソイツの欠片は、もったいないのだが取っておいても使い道がない。
 どうしたものか、と思いながら出来上がったソイツを見る。
 たちまち、その整った顔立ちが幼さを感じさせるほどに、破顔した。
 彼女は邪魔になるから、と結い上げた長い髪を下ろす。
 まるで鳥が翼を広げるかのように、髪は宙を舞う。
 そして、使い物にならなくなった炉を埋める、出来上がったソイツの欠片も一緒に。
「ありがとうね。」
 そうつぶやいて大事に埋めている彼女、その姿に何か美しい者を感じるものがいた。
「どうしたんですか。」とソレは問い掛ける。
 彼女はハッと驚きながらも、−−なんでもない、ただ使い物にならなくなった炉に感謝を込めながら埋めただけ−−と答える。
「優しい人ですね。」とソレは言葉を続けると、彼女は少し日に焼けた頬をまるで果物かと思えるほどに赤らめてしまう。
「そ、そんなことっ、ボ、ボクは優しい訳じゃないよっ。」
 その様にソレはクスクスと笑みを零し、彼女を祝福した。
「きっと、偉大なる父があなたをしっかりと見ていてくれています。いつかあなた自身の最高のモノを作ってくださいね。」
 とソレは笑顔で去っていった。

 彼女は、はわぁ、と情けない声をあげながらその場にヘタり込む。
 瞳が潤み、さながら恋する乙女といった様になっている彼女だが、すぐに我に戻り、首都への道でカートを転がしていた。

 首都の中央にある泉から少し東に離れた街角、そこが彼女の“いつもの場所”だ。
 そこで自慢のできのソイツの入っているカートの中身整理しながら、商売用の看板を準備すると、
 なじみの顔である同業者が次々と声をかけてくる。
 彼女は笑顔で答える。
 さぁ、今日もどんな人が私の自慢の鋼鉄を買っていくのかな、とウキウキした表情で店を開けた。
「今日のボクの鋼鉄は最高の出来だよ!皆買っていってね!!」と声高に放った言葉は、
 早朝の澄み切った空にゆっくりと染み込んでいった。
164##sage :2003/03/18(火) 00:01 ID:m8V81orU
ごめん、コレだけだったりする  ∧||∧

多分どこかでこんな感じのが既出かもしれないと思うと…
吊るしか…

      ||
      ||
    _||○___
     \_| |_/
     (@`ノノ| |))  ぴぃ。
     ノハ-|__|ノゝ
    .ζ(ヽilヽ
   ζ  )u u
      ヽハノ

      -━-
>>32さん、借用させていただきました(;´Д`)人
165名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/18(火) 12:35 ID:.rsg5fxw
ちょっとそこのあなた、
アイテム移動をやらずに独りでポリンを狩ってるINTノビが
そんなに珍しいですか?
壁とか、やってもらいたくないんですよ。
自分の力で成長したいじゃないですか。

わ、そこのナイトさん、
わざわざプパにプロボックかけなくていのに。
どうせ、倒すのに1分かかるのが50秒になる程度なんだから。

うわ、そこのWizさん、
プパにQMなんていりませんよ。
やっぱり外れるときは外れるんですから。

うわわ、そこのプリさん、
ヒールなんて要りませんって。
ちょっと痛くても、1分もプパ殴ってたら回復しちゃうんだから。
あ、私なんかに増速とブレスまでかけないでよ・・・
・・・あんまり強くなったから、
うかれてカエルにも手を出してみたくなっちゃったじゃないですか。

やった!
カエル倒した!
初めてカエル倒したよ!
見た?見てた?見てた?

え?
リボンくれるって?
いいよ、要らないよ、いいってば!
「拾わないと消えちゃうよ」って!?
そんな、待ってよ、もったいないじゃないの、ちょっと!
あぁ、私って貧乏性なのよ、勘弁してよもう。

うぅ・・・受け取っちゃった・・・。
私、リボンとかそういうの似合わないのに。
『似合ってるジャン』
って、誰ですかそこ!
声のした木陰には、確かに気配はあるのに姿は見えず。
アサシンの人でしょうか。
いつから尾行されてたのやら。

もう、嫌なっちゃう。
私は独りでがんばるの!
誰かに頼ってたら、別れる時に悲しくなっちゃうでしょ!


季節はまだ春の初め。
けどちょっと暖かい。
166名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/28(金) 19:22 ID:3IpAXhf2
『師匠と弟子』

カァァン、カァァン
ゴォゥゥ

 金属同士がぶつかりあう叫ぶような音。熱気。部屋の中で炉の炎が踊る。振り下ろされる鎚。真っ赤な鉄の悲鳴。赤い火花が舞うように消えていく。
 午後の穏やかな光と風が入り口から差し込んでいく。薄暗い部屋の床に写る、鋭角的な白と黒のコントラスト。秋のさわやかな風も、どうやらこの部屋には敵わないらしい。戸口に寄りかかっているだけなのに、まだ夏の名残のようなやたら暑苦しい熱気が顔に当たる。薄暗い小屋の中に、あの人はいつもここにいる。一心不乱に鎚を振るい、少しずつ形になっていくあの人の魂達・・・。

 ベシッ
 「いたっ」
 一瞬視界が縦に揺れた。ちょっと涙目で頭を擦ろうとすると誰かの手がおいてある。
 「おそかったな」
 あの人が口を開くのと、同時に見上げた私と目が合う。効果音でいったら「ボンッ」とかそんな感じが一番はまってたと思う。さっきまで鉄の塊を叩いていたはずのあの人が、いきなり自分の目の前にいる。心臓はもうバクバクいってるし、顔にまで血が上ってきた。すぐ視線を外し下を向くと、なにやら頭の上が痛い。拳固でぐりぐりやられてる。
 「帰ってきたなら、ただいまとか返事しやがれ。入り口にぼさっと突っ立ってないで、こっちはやること死ぬほどあるんだ。たかが石炭と鉄の買出し程度に二時間もかけやがって・・」
 グリグリグリグリ
 初めは軽くだったのが、だんだんと強くなってくる。だめだ、視界がぼやけてくる。
 「・・・いつまでも子供じゃないんだ。買出しくらい、しゃきしゃきやってもらわんと。・・・・・・・ん?」
 「・・・・・・・・」
 もう限界だ。せっかくここまで粘ったのに。ぎりぎりで溜まっていた涙がとうとうこぼれてきた。一度流れ出すともうとまらない。頬を伝う熱い涙が、次から次へと私の顔をぐしゃにぐしゃにしていく。
 「う、ぐすっ、う、うう、ぐすっ・・」
 「うおっ!?ぐはっ!あぁー悪かった。言い過ぎた。すまんっ。だから泣き止め。たのむっ」
 あの人が涙を流しっぱなしの私を抱きしめる。さっきまで炉の前にいたせいか、焼けた鉄のにおいと汗のにおいがする。やっぱりこの人の腕の中だと安心する。筋肉質の腕。節くれだった手が私の背中をぽんぽんと優しくたたく。
 「・・・・・・・・・・・・・・・落ち着いたか?」
 「・・・・・・・・・うん」
 もう涙は止まっていた。あの人の腕の中は私の一番好きな場所。でも、いつまでもこうしてはいられない。すぐ袖で泣き顔隠すと、くるりと反転してバッグからハンカチと鏡をを取り出す。
 はぁ、またやってしまった。鏡に映る自分は泣いたおかげで目が赤く、できそこないのお化けみたいにひどい顔をしている。なんとかなんないかな、これ。「発作」と呼ぶのがいいんだろうか。私には驚いたり怒ったりして感情が高ぶると、すぐ泣いてしまう癖がある。おかげでよく人から心配されたり、これが原因で喧嘩とか、・・・・他にもいろいろと。ともかく人と付き合うのに私の「発作」はマイナスにしか働かない。

以上、未完。
お目汚し失礼しました。
167名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/03/30(日) 01:38 ID:YeLxEpCA
ぐ、ぐああ。ここまでですか、ここまでですかー、ここまでですかぁぁぁ!!!
168名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/04/07(月) 20:39 ID:XVy.ZGVc
♀BS萌えってすくないから貴重だよね、うん。
でもシャオアさんネタの続きを書いてくれない>>164こと##氏にはもうちょっと吊っといてもらおう…

そしてその##氏を晒すが如くage

もっとエロ無しのママーリ萌えなものが読みたいので、文神様方がんばってくらさいっ!
169SiteMaster ★ :2003/04/08(火) 00:23 ID:???
テスト
170SiteMaster ★ :2003/04/08(火) 00:41 ID:???
テスト2
171SiteMaster ★ :2003/04/08(火) 00:44 ID:???
テスト3
172SiteMaster ★ :2003/04/08(火) 00:53 ID:???
こちらのオペレーションミスで削除してしまいました。
かちゅのログから復旧させましたが、もしかすると文字化けなどおかしい部分があるかもしれません。
致命的なものに関しては確認次第修正しますので、気づいた方は連絡をお願いします。
173どこかの687sage :2003/04/08(火) 14:19 ID:MiFqtUk6
 ∧||∧
(  ⌒ つttp://acolyte.s7.xrea.com/
 ∪  ノ
  ∪∪

小説スレの文神様方、初めまして。
どこぞの687と申します。
半月遅れの作品をどなたか罵倒してやってください……
お願いします。

>>管理人様
お疲れさまです。
適当に読んだところ、特に異常はありませんです。(かちゅ使用
174名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/04/16(水) 09:12 ID:qo62Gr/E
>>129
↑の続きが気になるけどどうなったんだろう・・・
日付みると3ヶ月以上も前だし >>172 のミスで消えてしまったのだろうか。

なんとなく、ROのDemo動画を思い出した。PTプレイ カコ (・∀・) イイ !!
175名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/04/25(金) 17:08 ID:XrD6nGeg
「あ、BSさん代売りお願いします」
 そう声をかけてきたのは、馴染みのプリさんだった。
「おっけ」
 露店を閉じて、取引の準備をする。
 ……普通に返事はできただろうか? 急ぎすぎてない? ちょっと馴れ馴れしかったかもしれない……
 次々にならべられる戦利品の数々を上の空で眺めながら(それでも頭の片隅では相場を踏まえて計算しつつ)、頭の中ではそんなことを考えていた。
 彼と知り合ったのはオークダンジョン行きの臨時PTだった。
 殴りプリの彼と、半製造BSの私がちょうどあぶれた者どうしで組んだのだ。
 いつごろから惹かれていたのかは覚えていない。
 始めに「よろしくおねがいします」と挨拶した時かもしれないし、「がんばって」とブレスを貰った時かも知れない、ピンチにヒールを貰った時かも知れない。
 それとも「BSさんと組むと違いますね」と言ってくれたときかも知れない。
 狩りが終わって精算する頃には、私はもうめろめろだった。
 最後に「また」と言って彼が去ろうとするときに、普段露店を出してる場所と「代購・代売歓迎だから、いつでもおいで」と伝えられた私を褒めてやりたい。
 そのおかげで、彼はたびたび私の所に代売りを頼みに来てくれるようになったのだから。
「ん?」
 蕩けかけた頭を現実に引き戻す。ならべられた物の中に、珍しい物が混じっていたのだ。
「これ……」
「ああ、大リボンですか。デカトード倒したら出たんですよ」
 ちょっとつけてみたけどやっぱり似合いませんしね、と苦笑しながら、露店で売って欲しいと頼まれた。
 その場に居合わせることが出来なかった巡り合わせを呪いつつ、そうかもね、などと言って受けとる。
「相場高めだし、趣味装備だから捌けるのに時間かかると思うけど」
「あ、全然構いませんよ。お金に困ってるわけじゃないですし。安めでも使ってくれる人が買ってくれると嬉しいんですけど……BSさんのギルドとかに居ません?」
 確かにこういうの好きそうなの居るな……
「やっぱりこういうのは女の子がつけてこそ可愛いもんですしね」
 !!!!
「そ、そう?」
 サングラスがあって良かった。今きっと、目の回り真っ赤だ。
「そう思いますよ」
「ふーん、そうなんだ……」
 そうこうしながらも収集品の精算は済ませている。
「やっぱり手際いいですねぇ。じゃ、売れたら連絡くださいね〜」
 いつもなら「また」がある約束だけで浮き上がっているところだが、今の私はそれどころではなかった。
「可愛い、か……」


 結局。自分の財布からお金を出して『売れた』ことにして……Wisを送る決心までに三日を要した。
 いつもの場所で露店を出す。
 頭の上には……


元ネタ:萌えスレLv13の767
176何処かの丸帽sage :2003/05/05(月) 10:20 ID:q8pAT3NQ
--アサ子の三時間クッキング

「痛っ!」

滑ったナイフが指先をかすめ、線が赤くにじむ。
アサシンとして普段あれほど使い慣れていた刃物。その刃物を前にして私は苦戦している。

「ニンジンの皮をむくとはこれほどまでに難しいことなのか…」

 彼が普段何気なくやっていた皮むきは非常に難しいものだった。自分の絶望的な不器用さを前に
すると、花嫁修業の代わりに暗殺修行をやってきて、正直正解だと思える。
 しかし、料理担当であるパートナーが倒れて二日。私自身は外食が出来るから良いものの、
病人用の食事を作ってくれる人などいない。だから私はナイフと、ひいては絶望的な不器用さと
格闘している。

 ぐぃ、と力を込めると、刃がニンジンの中程まで食い込んだ。自棄になって刃をこじるとニンジン
にV字型の切り込みが出来た。三角形の「身」が付いたニンジンの皮がまな板の横に落ちている。
バラバラにしてやりたい衝動を抑え込み、深呼吸をする。
 私はもう一度、ナイフを握った。

あれからどれだけ時間がたっただろう。私の傷だらけの手に、いびつな形のニンジンが握られていた。
 まな板の上には同じようにいびつな形に剥かれた芋と、少々ひからびかけた各種野菜がのっている。
その横にニンジンを並べると、私は額の汗をぬぐった。
 一呼吸をおいて、ザックザックとナイフを振り下ろす。私をあれほどの時間拘束し、苛んだ野菜達が
バラバラになっていく。何とも小気味の良い光景だった。

 竈の上に置かれた鍋の蓋を開けると、良い匂いと共に湯気が天井へと上っていく。その湯気の向こうに
野菜達を放り込んだ。お前達なんか地獄の釜の底に沈んでしまえ、と野菜に対する呪詛の言葉をつぶやく。
 水面に浮き上がってくる灰汁とのにらめっこを終えると、私は椅子に座った。
177何処かの丸帽sage :2003/05/05(月) 10:21 ID:q8pAT3NQ
ヘアバンドを外すと、風が汗と水蒸気で湿った額に気持ちよい。こんなに疲れたのは何日ぶりだろう。
 壁越しに、咳き込む声が聞こえた。果たして彼は良くなるだろうか。そんなことを考えながら首を巡らすと、
鏡に映った自分が見えた。ずいぶんと焦燥した顔をして、似合わないエプロンを着けている。
 暗紫色のシーフクロースの上に掛けられた、花柄のエプロン。そのアンバランスさが可笑しかった。
でも、何より可笑しかったのは、そこまで必死になっている、自分。傷だらけになって、長い時間を掛けて
そこまでして彼のために料理を作っている自分だった。


 窓から差し込んだ夕日が、長い影を落とす。本当は彼の昼食になるはずだったスープを私は器によそった。
盆の上にスープと、パン、そしてリンゴを置いた。こぼさないように盆を水平に保ちながら、私は
彼の部屋のドアを開ける。彼は半身をベッドから起こして本を読んでいた。ドアを開ける音に反応して彼がこちらを向く。
何か呆気にとられた、というか驚いたような顔をしている。
 やっぱり、ダメだ。慣れない格好が恥ずかしい。
それに、こんなに必死になっている自分を見られるのが恥ずかしい。
視線が合うと何か心を読まれそうな気がして、私は盆を持ったまま、目を斜め下に背けた。

「食事を…作ってきた…」

冷静を装い、震える声で出来るだけぶっきらぼうに答える。
そして、ベッドの横のテーブルに盆を置いた。勿論、視線を床に向けたまま。
不意に、彼の手が私の手に触れる。心臓が高鳴るのが、自分でもわかった。
手の傷を…見られたかもしれない。

「作ってくれてありがとう。慣れないことをさせてゴメン。」
「い、いや…当然だ。病気で倒れた相棒を、見捨てるわけには…いかない…」

落ち着け、落ち着くんだ。何を焦ってるんだ。何を戸惑ってるんだ。あふれ出そうな感情の波をせき止め、
私はあくまで事務的に答えた。
178何処かの丸帽sage :2003/05/05(月) 10:22 ID:q8pAT3NQ
「せっかく傷だらけになってまで作ってくれたんだ。君に感謝して、美味しくいただくことにするよ。
 じゃ、いただきまーす。」

━━やっぱり、わかってたんだ。
耳がじーんと熱くなって、背中が汗ばんでくる。
スプーンが不揃いな形のニンジンをすくい上げ、彼の口へと運んでいく。

「んー、旨いなぁ。おぉ、そういえばそのエプロン姿。とっても似合ってるぞ。」

突沸したように、血が頭に上りきる。視線を動かそうにも、首が震えて動かない。

「あ、ありがと…」

 目線を反らしたまま、そう答えるのが精一杯だった。それ以上何か言おうとしても、喉のところで
止まってしまった。
 気まずい沈黙が部屋の中を支配して、彼がスープを啜る音だけが響いた。
ほんの十分か十五分、大した時間ではなかったけれどひどく長く、ゆっくりと時が流れているようだった。

「ふぅ…おいしかった、ごちそうさま。これで明日には元気になれそうだ。」

彼の手が盆の上にあるリンゴを、すっ、と掴んだ。私とは違う慣れた手つきでナイフの刃が走り、
リンゴの皮が一本につながって皿の上へと落ちていく。細い皮が踊るようにして動いているのをぼーっと
見つめていると、ふと、目の前にリンゴを差し出された。

「え?」
「はい。今日はどうもお疲れ様。食べなよ。」

リンゴを受け取って、おそるおそる視線を上げる。今日、初めて彼と目を合わせた。
その優しさに満ちた瞳を細めて、彼は頷いた。
 囓ってみると、優しい甘さが口の中に広がった。彼もまた、リンゴをほおばっている。
179何処かの丸帽sage :2003/05/05(月) 10:25 ID:q8pAT3NQ
「いやぁ、あのスープ本当に美味しかったよ。愛情は最大の調味料って奴かな?」
「ば…馬鹿」

再び、背中が熱くなってくる。どうしてこの人の前だと私はこんなに不安定になるのだろう。

 傷だらけになるし、疲れるし、恥ずかしいし…やっぱり私は料理に向いていない。
でも、これからは少し料理を作ってもいいかな、と思えた。
食べてくれる人が、いるのだから。

-End

------------8<--キリトリ---8<-----------
最萌えのアサシン支援も兼ねて書いてみました。
スレ汚し失礼しました。
180名無したん(*´Д`)ハァハァ :2003/05/05(月) 20:58 ID:iGwllb8s
活性化祈ってage。

>>176
(*´Д`)b 不器用でも一生懸命なアサ娘たんGJ!! 連休最後の日にいいもの見させてもらいますた(*´ω`*)

時に、このスレって続き物の長文は貼り付けてもいいのでしょうか……? 現在まーちゃんと♂プリの話を書こうかと考えているのですが。
181180age :2003/05/05(月) 21:00 ID:iGwllb8s
しまった上がってない_| ̄|○

連カキすまそ。
182駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:41 ID:jToJRrAE
「レックスエーテルナ!」
・・・今日もわたしは一人で戦っている。
「ヒール!」
崩れ落ちる亡骸。
周りに敵がいなくなった事を確認して、わたしは座り込んだ。
(ふぅ・・・)

グラストヘイム修道院の地下にある、墳状墓群(カタコンベ)。
この世の理を無視し、不死の者達が闊歩する場所。
そんな場所でわたしは一人で戦っている。


 「お前、使えないんだよなぁ」
 「さっさとキリエかけろよ使えねぇ」
 「マグヌスないの?使えないねw」
 「SP切れ?使え


いけない、ほんの少し眠ってしまったみたい。
慌てて顔を揺すると、一筋だけ涙がこぼれた。慌てて拭い取る。

・・・わたしは誰かを助けたくて聖職者になった。
そのために多くの秘儀もマスターしてきた。
けれど。
共に戦ったたくさんの人達は、わたしの助けなんていらなかった。
「使えない支援プリ」それがわたし。
だからわたしは一人で戦っている。

こうして座っている脇を、今日も多くの冒険者達が通り過ぎていく。
わたしにもあんな頃があったんだなぁ、と感慨深げに見ていると
ふと珍しい姿が視線の隅をよぎった。
(へぇ・・・珍しい、ソロ騎士さんかぁ)
ギルドのエンブレムも付けていないその騎士さん、
どうやら生粋のソロプレイヤーらしい。
上で一暴れしてきたらしく、
小ぶりの片手剣を鞘にしまうと座り込んでそのまま目を閉じてしまった。
(わたしと同じ、かぁ・・・)

ふと、遠くで悲鳴が聞こえた。
ばたばたという足音。
「た、助けてえっ」
見ると、何人かのアコライト達がこちら目指して一目散に駆けてくる。
その後ろには、ふわふわと浮かぶ黒い布きれ。
「違う!」
その隙間から見える髑髏の顔。腹部に付いた巨大な口。
ここの主とも言える存在、レイスだ。
目の前でアコライト達が次々と倒されていく。一撃で。
183駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:43 ID:jToJRrAE
あらかたの獲物を狩り尽くした不死の王は、目ざとくこちらに向かってきた。
(やってやろうじゃないっ・・・)
呪文の詠唱に入るため、私は立ち上がった。その時だ。
足元の地面がふと盛り上がった。
そして中から鎖に繋がれた死体。ゾンビプリズナー。
そして、悪いことは重なる物。
こちらに向かってくるレイスの後ろには、骸骨の囚人スケルプリズナー。
(うわ、マズイっ)
3体ともに、まっすぐ私を狙ってくる。
距離のある内にLA・ヒールをレイスに叩き込んだものの、
一撃ではビクともしない。
あっという間に取り囲まれた、その時だ。
肩口をぐいと強い力で引っ張られて、わたしは後ろに倒れ込んだ。
「マグナムブレイク!」
「きゃっ」
さっきの騎士さんだ。
剣から立ち上った爆風が3体の敵を包み込んだ。
奴らの視線が騎士さんへ切り替わる。
しかし騎士さんは攻撃もせず、ぼぅっと突っ立っている
「危ないっ!」
剣が光った。
目にも止まらぬ早さで3体の敵に斬りつける。
騎士さんは無傷だ。
(オートカウンター・・・3体相手に!?)
この人、強い。わたしは息を飲んだ。
そしてそのまま、敵の攻撃を許すことなくカウンターアタックが続く。
しかし、戦闘に感づいたのか
周囲の動く死体、ゾンビやグール達がわらわらと集まってきた。
あの数では騎士さんも相手にしきれないだろう。

(支援・・・しなきゃ)
わたしは意を決した。へこんで怖じ気づいてる場合じゃない。
こんな時のためのわたしなんだ!
以前の勘を取り戻すように、瞬時に思考する。
(アスペルシオ・・・駄目。
 騎士さんきっと火武器使ってるからあまり意味がない)
(速度減少・・・駄目。
 ACのタイミングが狂っちゃう)
(だったら・・・)
わたしは素早く詠唱に移った。
「ブレッシング!彼の者に神の祝福を!」
騎士さんにブレス、それが最良の選択だと思った。

空から天使の羽根が舞い降りる。

・・・レイスめがけて。
184駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:45 ID:jToJRrAE
・・・やってしまった。
焦っていたせいで、対象を間違ってしまったんだ。
(やっぱりわたしは、使えないプリーストなんだ)
わたしはへなへなとその場に座り込んでしまった。

しかしその時、騎士さんが不意に構えを変えた。
カウンターの為のノーガードの構えではなく、
剣を持った右手を大きく後ろ手に回した溜めの構え。
強烈な敵の攻撃を左手の大きな楯で凌ぐと、
そのまま右手を大きく振るった。
狙いは正面のレイスだ。
「ボーリングバッシュ!!」
騎士だけが使いこなせる最高の剣技。
遙か後ろに吹き飛ぶレイス。
衝撃の余波で砕け散る囚人達。
剣風がわたしのスカートをたなびかせる。
そのまま騎士さんは走った。
そしてレイスとゾンビやらグールやらがわやくちゃになってる所めがけて
「かあぁぁぁっ!!」
ボーリングバッシュをもう一撃。
死体の群れは、原形をとどめぬほどバラバラになって砕けた。

(すごい・・・)
その光景をわたしはぼっと見ていた。
余りに爽快な殲滅っぷりに見惚れてしまったのだ。
ふと。
戦いを終えた騎士さんが一直線にわたし目指して歩いてくる。
や、やっぱり怒ってるのかな?
そして騎士さんはわたしの真正面で仁王立ちになった。
たまらず、わたしはペコリと頭を下げた。
「ご、ごめんなさいっ!
 よけいな手出しをしてしまってあのその」
「・・・ありがとう」

とても予想外の声が聞こえた(気がした)わたしは、
おおるおそる顔を上げてみた。
すると騎士さん、少し気恥ずかしそうに私に右手を差し出していた。
わたしは一瞬きょとんとしながらも、笑ってその手を握り返した。

騎士さんが言うには、
「一般的な騎士のDexでは、レイスには結構当てにくい。
 ブレスカースで弱体化したからこそ、
 自信を持ってBBを打ち込めた」
との事。
そして。
「最高の支援だった。ありがとう」
「わ、わたしの方こそお礼をしないと・・・
 助けてくれて、ありがとうございまひた」
喜びと興奮と緊張で声が少し裏返ってしまったけど、気にしない。
185駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:49 ID:jToJRrAE
それから、その騎士さんといっぱい話をした。
プリーストの事。騎士の事。ソロの辛さ。愚痴。自慢話。どうしようもない笑い話。
最初は舞い上がった私が一方的に話していたけど、
騎士さんも最初は照れくさそうに、だけど率直にあれこれと話してくれた。
もちろん、その間にも敵はやって来る。
それは二人で倒していった。
時にはそれぞれ独力で。強い敵には二人で。
私の支援と呼ぶにはおこがましいような支援も、
騎士さんはいちいち喜んでくれた。
私にはそれが何より嬉しかった。
そういえば、支援についても色々と話した。
騎士さんはずっとソロなのでどんな支援でもありがたい、と言っていたけど
同じ騎士でも求められる支援はやはり違うらしい。
目の前の騎士さんはSTR>VIT型と言うらしい。
攻撃を受ける事を前提にした高DEF・VITなので
キリエよりグロリアより何よりブレス。
ヒールなどは戦闘終了後余裕があったらかけてくれれば充分、との事。
ううん、奥が深いなぁ。

会話のネタも尽きた頃、切り出したのはわたしからだった。
「少しの間で良いんですけど・・・
 わたしと臨公を組んでもらえませんか?」
騎士さんのレベルは79。ぎりぎりで公平が組める。
おこがましいと思いながらも、わたしはお願いしてみた。
「・・・ありがとう。どこに行こうか?」
いともあっさりとOKして貰えた。
何だか、とても新鮮な気分だった。
「普段行った事ない所に行ってみたいです!
 海底神殿とか・・・ゲフェン3Fとか・・・」
「城2とか?」
二人して、その場で向かい合ったまま大笑いしてしまった。

一日、あっという間に過ぎた。色んな場所に行った。
本気で城2に行くとは思わなかった。
オーガトゥースをやっとの思いで倒したと思ったら、
直後に二人ともやられていた。
海底神殿では、誰かの結婚式の真っ最中だった。
わたし始めたくさんのプリースト達がエンジェラスで鐘を鳴らしていた。

そして、ゲフェンダンジョンの奥深くで騎士さんのレベルが上がった。
それは同時に公平が切れる事を意味していた。
「レベルアップおめでとうございます〜」
「・・・ありがとう」
嘘。
本当は、もっとこの人と一緒に狩りをしたい。
離れたくない。
でも。
「丁度良い時間なので、わたし街に帰りますね」
「ん・・・そう、か」
主よ、懺悔します。
わたしは嘘をついてしまいました。
でも、そうする他にはできませんでした。
「今日はとても楽しかったです・・・
 ありがとうございました!ワープポータル!」
「え・・・待っ」
逃げるようにワープポータルでプロンテラに戻ったわたし。
そのまま大聖堂に駆け込んで、小部屋に鍵をかけて。
その晩はずっと涙が止まりませんでした。
(騎士さんにも、見られちゃったかな・・・)
186駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:52 ID:jToJRrAE
次の日からまた、わたしはカタコンに籠もっている。
あれから一週間ほどたったが、
あの騎士さんの姿を見る事はなかった。
やっぱり、わたしは一人で戦っている。
でも、どうしてだろう。
こうして座っていると、自然に涙が落ちてしまいそうだ。
そんな中、わたしに向かってくる影一つ。レイスだ。
丁度良い。
わたしだってあれから強くなったんだ。
一人でやってみせる!
憂さを晴らすかのように、わたしはレイスに向かっていった。
キリエエルレイソンの加護の下、LA+ヒールでレイスを葬る。
(あれ・・・何か落した)
それを拾って頭を上げると、そこには。
「え・・・」
見間違う事はない。あの時の騎士さんが、そこに立っていた。
「・・・久しぶり」
「え、どうして、ここに?」

話によると、
騎士さんはあれからずっとオークダンジョン1Fに籠もっていたそうだ。
「どうして、そんな所に?」
LV80にもなれば、もっといい狩り場はたくさんあるはずなのに。
そんな疑問に応えるように、
騎士さんはごそごそと懐をまさぐった後、
小さな石を手の平に乗せて見せてくれた。
「エンペリウム・・・」
「そう。これが欲しかった。それに」
それに?
「あそこで戦っていれば、レベル差も縮まると思って」
「あ・・・」
騎士さんのレベルは80のまま。
わたしの方は77。
「それじゃあ、また臨公を組んでもらえるんですか?」
期待してそう言ってみたけれど、
帰ってきた言葉は・・・

「いや、そうじゃない」
187駄文な上に長文失礼sage :2003/05/06(火) 00:55 ID:jToJRrAE
そう・・・だよね。
何を期待していたんだろう、わたし。
「そうですよ、ね」
無理矢理笑顔を作って見せた。
でも、きっと強張ってる。
「そうじゃないんだ」
そんなわたしに目もくれず、
騎士さんは手の平のエンペリウムに集中している。
ふと、エンペリウムが青い光を放ち始めた。
優しい、不思議な光。
とても暖かい光。
光はゆっくりと強くなり、
そしてゆっくりと弱まっていった。
「・・・?」
わたしはわけがわからずきょとんとしていた。
「今、ギルドを作った」
騎士さんの視線がわたしに向いた。
そして。

 『ギルド加入要請』

「最初で最後の、ギルドメンバーになって欲しい」
言うだけ言って騎士さんはふいと視線を逸らしてしまった。
そしてわたしは・・・

『はい』

無骨な騎士さんの胸元に飛び込みました。
主よ、こんな時ぐらい思いっきり泣いて甘えても許してくれますよね?


---そして、私たちは今日も二人で戦っている。
---「あっ、フォーマルドレス!」
---「・・・これで、全部揃ったか」
---フォーマルドレスとウェディングドレス。
---そして金の指輪と銀の指輪。
---これでやっと、結婚式の準備が出来た。
---あの時ゲットしたヴェールを被って、
---あの人を驚かせよう。
---二人で行った海底神殿で。
---これからも、ずっとずっと、二人で。

                           Fin
188名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/06(火) 01:06 ID:jToJRrAE
いやもうホントに駄文な上に長文で申し訳ないです・・・

182-187
コレにはタイトルがありません。
読んだあなたが付けて下さい。
そして、
そのタイトルを二人のギルド名にしてあげて下さい。

最後に。
♀プリタソヽ(`Д´)ノマンセー!
189名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/07(水) 16:42 ID:6ChnL0IQ
>>188
感動しますた。MyPCに永久保存させていただきまする。
幸せっていいよね、(´д`*)
190名無しさん(*´Д`)ハァハァsageアサプリ :2003/05/07(水) 20:20 ID:nf4KFUm.
暖かい昼下がりの日差しの中、教会の鐘の音が響く。
その音に、今まで目を伏せて木に寄りかかっていた男アサシンが、静かに目を開く。
道を行く人の中に紛れ込み、彼は教会に向かって歩き出した。
ただし、正面の入り口に向けてではなく、裏庭へ。
人のいない裏庭から、彼は教会を見渡した。
少し高い位置に、開いたままの窓を見つけると、アサシンはその下に歩み寄った。
高さを目測で測り、軽く息を吐いて飛び上がる。
難なく窓枠に手をかけてぶら下がると、後は壁を蹴り上げる勢いで体を持ち上げる。
音も立てずに窓から入り込むと、彼は微笑んだ。
彼の目の前で、一人の女プリーストが机の上に本を広げていた。
彼女は、急に机の上に現れた男アサシンに驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうな表情になった。
「お久しぶりです」
プリーストはそう言って本を閉じた。
「ああ」
アサシンはそう答えると、先程と変わらない軽やかさで、プリーストの机から飛び降りた。
「ちょっと待っててください。今、お茶を淹れてきますから」
そう言って立ち上がったプリーストに、アサシンは首を横に振る。
「いや、またすぐに出て行くから」
その言葉に、プリーストが微かに表情を歪める。
おや、と思ったアサシンの前で、彼女はすぐに元の笑顔になると、首を横に振った。
「だったら尚更です」
短い時間で疲れを取って、と付け加えると、彼女は小走りで部屋の外に行ってしまった。
後に残されたアサシンは、しばらく彼女の姿を見送っていたが、
やがて困ったように頭を掻いて、プリーストの机に寄りかかった。
窓から入り込む日差しに、彼は目を細めた。
こうやって、誰にも見つからないように彼女の元を訪れたのは何度目だろう。
小さい頃からプリーストになるために育てられた彼女は、教会から遠く離れた世界の事にひどく疎い。
男アサシンの話すちょっとした出来事や、町の周囲では見かけない凶悪な魔物、珍しい物等のひとつひとつに、
彼女は不思議そうな顔をしたり、驚いたりする。
そんな女プリースト愛おしさに、彼は暇ができる度に彼女の元を訊ねているのだった。
191名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/07(水) 20:22 ID:nf4KFUm.
ふと、彼女が読んでいた本を手にとってみる。
分厚いそれは、アサシンの趣味や生活からは程遠い内容のものであった。
彼は中身も見ずに、それを机の上に戻そうとした。
その途中で、本から少しだけ頭を出す、ページの途中に挟まれたしおりに目が留まる。
抜いてしまわないように気を付けて、アサシンはしおりを少しだけ引き出した。
それは押し花のしおりだった。
どこかで見覚えのある花のような気がして、彼は微かに目を細めた。
それが、以前女プリーストの元を訪れた時に、自分が持ってきた花だという事に気が付くと、アサシンは苦笑を浮かべた。
「こんな物のどこがいいのか」
そう呟くと、彼はしおりを元に戻して、本を机の上に置いた。
それとほぼ同時に、湯気の立つティーカップを二つお盆に乗せたプリーストが戻ってきた。
アサシンは差し出されたティーカップを受け取って口つけると、ふっと表情を和らげた。
「美味い」
小さな呟きを、しかしプリーストはしっかりと聞き取り、安堵の微笑みを浮かべた。
「お茶菓子もあれば良かったんですが」
「ん、お茶菓子は無いが……」
アサシンはそう言うと、懐から薄い紙包みを取り出した。
「大した物じゃないんだがな」
そう言って彼はプリーストにそれを手渡した。
不思議そうな顔で、彼女は紙包みを開いた。
中には、乾燥した緑色の草があった。
「こんな植物、見たこと無い……」
プリーストは草を手に取り、角度を変えながら見つめた。
「それはね、苦い草なんだ」
アサシンの言葉に、プリーストが視線を戻す。
「薬草の一種ですか?」
「いや、違う」
でも苦いんだ、と付け加えると、プリーストが真面目な表情で聞いた。
「どのくらい、苦いんですか?」
あまりに真面目な表情に、アサシンに悪戯心が起こる。
「えーと、凄く」
「凄く?」
聞き返すプリーストに、アサシンは笑いを噛み殺しながら頷いた。
「どのくらい苦いか知りたかったら……そうだね、少し先っぽでも齧ってみれば……」
「え」
アサシンの言葉に、プリーストは困ったような表情を浮かべる。
手に取った緑色の草を、彼女はしばらくじっと見つめていたが、やがて意を決したように口元に運んだ。
そして、先を小さくひと齧り。
途端に彼女は草を紙に乗せ、慌ててカップの中身を口に流し込んだ。
とうとう限界に達したアサシンが、声を上げて笑いだした。
192名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/07(水) 20:23 ID:nf4KFUm.
あまりの苦さに涙目になったプリーストが、ようやく落ち着いた様子で息をついた。
「あそこまで笑わなくてもいいじゃないですか……」
不満そうな彼女に、アサシンはごめんと呟いた。
「あれはポポリンの好物でね。人間の食べるような物じゃないんだよ」
そう言うと、彼は緑色の草を手に取った。
「これを使えば、上手くいけばポポリンを懐かせる事が出来る」
その言葉に、不満そうだったプリーストの表情が、好奇心に満ちたものに変わる。
「いつだったか、ペットにしているのを見たことがあるが、なかなか騒がしかったぞ」
「へえ……」
プリーストは先程まで笑われていたことも忘れたようだ。興味津々といった顔つきで彼の話を聞いている。
「餌もハーブでいいし。問題は捕獲場所か……」
アサシンがそう言うと、プリーストは少し困ったような顔になった。
「司祭様の許可が出て、上手く休みが取れれば、ポリン島辺りまではいけると思いますけど……」
しばらくは忙しくて無理そうだ、と呟くプリーストに、アサシンは眉をひそめた。
「面倒だな……許可なしで抜け出せないか?」
彼の言葉に、プリーストは慌てて首を横に振る。
「そんな、信用してくれる人を裏切るわけにはいきません!」
「そう言うと思った……」
彼は困ったように頭を掻くと、ならば、と付け加えた。
「俺が誘拐すれば良い」
唐突な言葉に、プリーストが言葉を失う。
アサシンは続ける。
「誘拐されたならば、お前のせいじゃない。
今の仕事が終われば、少しは暇ができる。その時にでも連れ出せるぞ」
彼はそう言うと、一旦カップの中身に口をつけた。
「別にポリン島じゃなくても良い。どこか行ってみたい所があるなら、そこまで連れて行こう。
俺が話したよりも、もっと沢山の物が見れるはずだ」
そこで区切ると、彼は真っ直ぐにプリーストを見つめ、優しく微笑んだ。
「お前が望むなら、一生誘拐し続けてやる」
193名無しさん(*´Д`)ハァハァsageおしまい :2003/05/07(水) 20:24 ID:nf4KFUm.
あまりに優しく、残酷な申し出に、プリーストは泣きそうになった。
それは、何度も望んだ事ではあった。
知らない世界を旅して、沢山の人に会ってみたい。
いつまでもアサシンの傍にいたい。
けれども、そんな自分の意思に従うには、教会の人達は優しすぎたのだ。
今まで自分を大事に思ってくれていた人たちを裏切ってまで、
自分の望みを叶えられるほど、彼女は強くなかったのだ。
小さく俯いて必死に涙をこらえると、彼女は首を横に振った。
アサシンが驚く気配が伝わってくる。
「きっと、私がいなくなったら、司祭様も両親も心配します。彼らにも、貴方にも迷惑は掛けたくないんです」
それに、と彼女は顔を上げて微笑んだ。
「私はこうやって貴方と話が出来るだけで、十分幸せですから」
本当に、幸せそうな表情だった。
アサシンはしばらく黙って彼女を見つめていたが、やがて諦めたように息を吐いた。
「そうか……気が変わったら、いつでも言ってくれ」
彼は静かに呟くと、カップの中身を飲み干した。
彼女の気持ちは、痛いほどに伝わっていた。
このお茶だって、できる限り自分と一緒にいたいと思って考えた、彼女なりの手段なのだろう。
もちろん、純粋にくつろいでもらいたいという気持ちもあるだろうが。
自分だって、彼女の傍にいたい。
けれども、彼女の意志を曲げてまで、彼女を連れ出す事は出来なかった。
「……そろそろ、仕事があるから」
彼はそう言うと、空になったカップをお盆に乗せた。
「……はい」
掠れる様な呟きが、彼の耳に届いた。
最初に入り込んできた窓の枠に足をかけ、彼は小さく息を吐いた。
「お茶、美味かった」
そう言って、彼は室内を振り返った。
悲しそうな表情で自分を見つめる女プリーストを安心させるように、彼は微笑みかけた。
「次に来る時には、ちゃんとしたお茶菓子を持ってくるよ。だから……」
今度はもっと長く傍にいよう。
口には出さなかった言葉を、プリーストはしっかりと受け取った。
「はい」
彼女が微笑みを浮かべて頷いたのを確かめると、アサシンは宙に向かって飛び出した。
プリーストが外を見たときには、すでに彼の姿はなかった。
194名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/07(水) 22:23 ID:qnBItJjY
>>190-193
一言だけ。
GJ!
195名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/08(木) 18:39 ID:GtAvA7Bw
>>190-193
渋い・・ アサシンが渋い・・・
かっこいいぜ・・・
196♀ノビ×♀プリ 小説初挑戦sage :2003/05/08(木) 20:37 ID:AOl/g0lo
「はぁ・・・どうしよう・・・」
1人のノービスが肩を落としてふらふらと歩いている。
彼女はコットンシャツただ1枚しか身に付けていない。
武器を落としてしまったのである。

「でも、こんなことであきらめちゃいけない。私はマジシャンになるんだから、武器なんていらない」
彼女は素手のまま、ポリンに近づく。
「やぁっ!うりゃぁっ!」
ぽくっ、ぽくっ・・・
しかし、彼女の力では十分なダメージを与えることができない。
ポリンも負けじと反撃をする。
どかっ!ぼこっ!
「くっ・・!ま、負けないっ!てやぁっ!」
ぽくっ、ぽくっ・・・
ばきっ!どすっ!
「ぐっ・・・い、いたいよぉ・・・こんなやつにすら勝てないの・・・?」

次第に彼女の意識がなくなりはじめる・・・

「ヒール!」

「!?」
彼女は何をされたのかもわからずにうろたえる。
しかし、体は戦う前の状態と同じく、元気になっていた。
「な、なんだかわからないけど、痛くない・・・」
どすっ!ぼこっ!
「ぐっ・・・お前なんかに、負けないっ!」
ぽくっ!ぽくっ!ぽくっ!
ぽこんっと音を立ててポリンが砕け散る。

「はぁ・・はぁ・・」

「大丈夫?」
「え、あ・・あなたは・・?」
「私はただの通りがかりのプリーストよ。危なそうだったから助けたんだけど、お邪魔だったかしら?」
「・・・」
「それよりもあなた、どうして素手で戦ってたの?見たところそれほど力があるようにも見えないけど」
「そ、それは・・・・その・・(武器をなくしたなんて、恥ずかしくて言えないよ・・・)」
「ふーん、武器なくしたのね?」
「ち、ちがいます!これはえっと・・・その・・・く、訓練のために!」
「じゃあ、今持ってる武器見せてみて」
「・・・・・・・・・」
「もう、そんな強がり言わなくても・・・ほら、これあげるから」

プリーストが差し出したのは、ブレイド。しかも幾度となく磨き上げられたように見える。

「え、これは・・・?」
「初心者に最適よ。あなたレベルは?」
「・・・3です」

彼女は嘘をついた。本当はレベルはまだ1だったが、初心者と思われたくなかったのだ。

「じゃあ大丈夫。これ使えばレベルなんてすぐに・・」
「余計なことしないで下さい!」

そう言って、彼女は走り去っていった・・・
彼女は、悔しかった。武器がなければ何もできない。そう思われるのが嫌だった。

「ふふ・・・あの子、昔の私にそっくり・・・」
そう言って、プリーストは気づかれないよう、こっそりノービスを追いかける・・・
197名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/09(金) 12:58 ID:GXAEeY9k
久し振りに来てみたら・・・GJ小説連発ですか!!
楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。
196さんは続くのかな?楽しみにしてます。
198名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:13 ID:tlkNaqG2
「生きるってのは、死ぬまでの暇つぶしやろ?」

 皆さんは、この台詞を聞いてどう思うだろうか?
”仕事”に疲れた暗殺者の台詞?
未来に何の希望もない、ノービスの台詞?
戦いに疲れ、自分の存在理由を疑う騎士の台詞?

残念ながら全て違う。この台詞を言ったのは…。
神に仕え、人生を布教と教化に生きるプリーストの台詞なのだ。

今日は、その罰当たりなプリーストの話を聞いて貰いたい。
199名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:14 ID:tlkNaqG2
「…は?何言ってんのアンタ?」
プロンテラ南門前の、広場での突然の発言に驚く私。
「いや、だから人生は暇つぶしやって…。」
私の気迫に驚いたのか、急に弱腰になるプリースト。
「暇つぶしって…、あんた自分の職業分かってるの?」
「んなもん関係ないがな。じゃあ、自分に聞くけどな死後の世界って
どんなんかわかるんか?」
「そんなの分かる訳ないじゃない!」
「やろ?だから、皆生きてる内に自分が正しいと思うことをやる訳や。
 あるもんは、知識を求め。また、あるもんは金を儲ける事に人生をかける。」
そこで彼は少し深呼吸。
「や・け・ど・や。」
チッチッチと私の眼前で、指を振り、
「その生きてる間にやった事が、死後の世界に引き継げんのか?
 確かに引き継げるかもしれん。が、その保障は無い訳や。
 …何かに似てへんか?」

このやり合いを見て思われた方がいるだろうが、
私と彼は別に付き合っている訳ではなかった。
唯、同じ臨時PTに一緒に入る事が多いだけの単なる知り合いだった。

「ちょ、ちょっと…。アンタどう思う?この不良プリーストの事」
「え、いや その…」
気弱で神経質そうなウィザード。
コレに倉庫に行っているBSを混ぜて、今回の臨時PTとなる。
「人の考え方はそれぞれですから…」
「はぁ?コイツよコイツ?プリーストが言う台詞だと思うの?」
「そんな疑問符を連続でつけられて」
台詞を言い終わらないうちに、BSがカートを引いてこちらに向かってくる。
「お待た〜♪赤ポに青。カートに詰め込んだから今回は結構いけるよ〜」
「あら、早かったのね。じゃあ、話はココまでにして…
 ほら、不良プリ!さっさとポタを出す!」
「へいへ〜い。騎士様の命令に従わせて頂きます〜」
と、その台詞が終わるかどうかの直前で青い閃光が天を突く。
ポタ屋で鍛えた…。と言うのは冗談ではなかったらしい。
「…さて、それではGHへれっつごー!」
200名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:14 ID:tlkNaqG2
「さて… と。修道院で良いんだよね?」
「おう。何かあったら浄化できるしな。」
「って言うかあんた…」
閃光を抜けると、そこは階段。修道院入り口前だった。
「もしかして…。他の所に行くの面倒なの?」
あきれながらも、一応確認する私。
「勿論や!ポタを抜ければ目的地前!我がアラ… ゲフッ」
ポタ屋時代の癖か、口上を述べようとする口を塞ぎ
私達は中へ入っていく。
「ほら、さっさと行くよ?」
「ちょ、ちょ待ってぇや」
他の二人は呆れたのか一言も口を聞かない。
アイツといるといつもこうなるんだよなぁ…。


「あの、こんなに奥で大丈夫なんですか…?」
入り口からかなり離れ、深部へと到達。
ここで定点狩りをしようと言う提案に、ウィザードが呟く。
「だ〜いじょうぶだって。いざとなればさ、蝶持ってるでしょ?」
「青と赤で一杯だから…」
明らかに不釣合いな大きさの荷物袋を担ぐウィザード。
さっき、BSと話してたのはこれだったのか…。
「あ、あんたは?」
「ん?わいにはテレポがあるからもってへん。」
「… び、BSちゃ〜ん?」
「え?わ、私はぁ… 皆持ってるとばかり…」
「…グァ」
思わず突っ伏してしまう私。何で誰も持っていなかったのだろう…。
「なぁ、自分。これは一度戻ったほうがええんちゃうんか?」
「そ、そうは言っても…」
私達の周りには、他のPTは見えない。
「私が盾で、ウィザードが殲滅。BSとプリは回復支援…。
 私の完全かつ、繊細な作戦が…」
「ほう。で、自分が死んでもうたらどうなるんかな?」
静かな怒り口調で呟くプリ。BSとウィズも心配そうな顔で
私を見ている。
「仕方ない… 一度戻りますか…」
と、言った刹那。私達の死角から、一つのPTが突然現れ…
「ごめん!」
と言う台詞を残して消えて行った。
「…何?あれ」
「新手の宗教か、挨拶なんですかね…」
「あれが流行ってるのかぁ… 覚えとこうっと」
「…自分らはほんっまに平和やね。」
険しい顔で呟き、何かの詠唱を始めるプリ。
その視線の先には…。 大量のモンスターが…。
201名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:14 ID:tlkNaqG2
「何でこんな目にあうのよぉぉぉお!」
剣を振り、突き、薙ぎ払い私は叫ぶ。
「知らないってぇ!!」
BSもARを連続で詠唱し、敵を食い止める。
「だ、駄目だ…。気力が…」
ウィズもそろそろ限界そうだ。
先ほどのPTに押し付けられたモンスターとの先頭を皮切りに、
私達は三十分以上も混戦を続けていた。
「おい、自分。大魔法を後何発打てる?」
突然口を開くプリースト。彼も支援魔法をかけ続けたせいか
フラフラで、顔から血の気が引いている。
「二発が限界です!」
「BSのねーちゃん!青はあといくつ残っとるんや!?」
「手持ちは0… カートさえ使えれば…」
全員が全滅を予想していただろう。それだけ皆疲労していた。
「…終わりやね」
プリーストが呟く。確かに正論だ。が、その言葉は私の逆鱗に触れた。
「ちょっと!どう言う事よ!まだまだ先が分からないのに!」
勿論相手の顔を見る暇などない。その為、彼がどんな表情をしながら
呟いたか私には確認出来なかった。
「いやいや、私事や。さて、ウィズのにーちゃん。最後に
 大魔法一発やったってや!」
その言葉を皮切りに、また詠唱を始めるウィズ。
残った精神力を振り絞るのか、目を閉じ集中している。
「んじゃあ、最後のお仕事始めますか…」
202名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:15 ID:tlkNaqG2
プリーストの呟きと同時に、閃光に包まれるウィザード。
と、同時にプリーストが叫び始めた。
「当、アラン転送屋は!本日ただいまを持って閉店いたします!」
「な、何を言ってるんですか?ウィズさんをどこ…」
困惑の台詞の途中で、同じく閃光に包まれるBS。
「当店はぁ!お客様の安全を第一目標に!これまで頑張って
 参りました!」
負担が増えた為、喋る事すらままならない私を尻目に
彼の口上は続く。
「が!我がポタを利用されたお客様が、危険に晒されております!
 この様な状況を放っておく訳には参りません!」
そして、私へのヒールとブレス。
「最後まで残して悪かったなぁ。体の丈夫さから自分を
残すしかなかったんや。堪忍な?」
いつもの調子で喋り掛ける彼。が、私にはわかる。
その声にいつもの覇気が無い事を。無理やり大丈夫そうにみせようと
している事が。
「ま、これでワイの暇つぶしも終わりや。アラン転送屋の最後の
 客として、無事に帰ってや?」
「アンタは!?」
「ざんね〜ん。気力が足りなくて、後ポタ一発出したら
 終わりで〜す。」
耐え切れず振り向く私。しかし、無常にも私の足元にも閃光が走り…。
私が最後に見聞きした事は、
「それでは、これにてアランの暇つぶし終了〜」
と呟きながら倒れる彼と、彼に向かっていくモンスターの群れだけだった…。
203名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:16 ID:tlkNaqG2
気づくと、私はプロンテラの南門に立っていた。
困惑しているであろう二人が私に問いかけてくる。

何故、私達はココにいるのか。
あのモンスターの大群はどうなったのか。
そして…、彼はどうなったのか。

その質問に私は全て答えた。
ポタ屋の目標の為、勝手に飛ばされた事。
勝手に飛ばした罰が当たって、その大群に囲まれた事。
そして、彼は多分帰ってこないであろう… と。

「…酷くないですか?その言い草。」
「そ、そうだよ!あの人は私たちを守る為にやったんだよ!?」
私の原因が全て彼にある と言う話し方が、彼らを怒らせたのだろう。
「しょうがないじゃない…」
二人とも、私を見つめる。
「アイツは全部勝手にやった。勝手に危険だと思い込んで、
 勝手に私たちを飛ばして、勝手に死ぬ事を望んだ。」
極めて冷静に話す私に、ウィズが詰め寄る。
「あ、あの人を!そんな風に言うのは許しません!」
「だってそうじゃない!」
詰め寄る体を突き飛ばし、私は叫ぶ。
「全部アイツが勝手にやったんだよ!?それで、勝手に
 お礼も何も言えない所に行ったんだよ!?
 そ、そんな勝手な奴に…」
耐え切れず、詰まってしまう。
「だ、第一… グスッ ア、アイツの名前聞いたのが スンッ
 お別れの時だけだって…」
その後は、私は唯泣き続けるだけだった。
204名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 01:16 ID:tlkNaqG2
さて、これで不良プリーストのお話はおしまい。
付け加えておくと、しばらくの間念話で生存を確認しようとしたが
繋がらなかった事をつけくわえ

「ほいほ〜い。ただ今。今日の晩飯は〜 って自分何しとん?」
「ちょ、ちょっと見ないでって!アラン!」
「いや、名前で呼ぶん止めてや…」
少し嫌そうな顔をする彼。
「えー… 何々、『生きるってのは、死ぬまでの暇つぶしやろ?』…
 コレ、ワイの座右の銘やないか!何書いてんねん自分!」
「い、いや 面白い話だったからつい…」
最後まで読み続ける彼。
「何やコレ。ワイ死ぬんかいな」
「事実に少し脚色を加えた方が面白いでしょ?」
そう、この不良プリーストは無事生き残っていた。
アレから半月程して、プロンテラでポタ屋をしているのを発見したのだ。
どうやら、ウィズがこぼした青を発見しなんとかテレポで帰ってきたらしい…。
尚、念話については…。
「ん?あぁ、面倒やったから放っておいた。」
だ、そうである。
その罰として、彼は私と一緒に生活をしている。
ポタ屋の売り上げを生活費に当て… ま、同棲していると言えば早いか。
が、私は一生彼を許さない。死ぬまでこき使って、子供の面倒もみさせてやる!
205↑を書いたうすら馬鹿sage :2003/05/14(水) 01:33 ID:tlkNaqG2
ゴメンね。長文駄文乱文で。
でも、コレだけ言わせてくれ。

こんなプリになりてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!!
  ∧_∧  \_WWWWWWWWWWW/
 (`Д´# ノヽ≫ 尻にしかれてぇ! ≪
⊂    ノ /MMMMMMMMMMM、\
  人  Y
 し (_)

それでぃわノシ

んじゃ!
206名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/14(水) 23:54 ID:gDEoaqmc
>205
おおおお…同じく尻にしかれてえぇっ!!
グッジョブです。プリさん生きてて良かった……。
207名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/15(木) 13:08 ID:KTxk/v2o
テレポートには青ジェムはいらないんだけどね。
無粋なツッコミで申し訳ない。

「生きるってのは、死ぬまでの暇つぶしやろ?」って
むしろものすごくポジティブに感じてしまうのは、自分がひねくれものだからかな…。
208うすら(略sage :2003/05/15(木) 16:30 ID:gPx2mp1E
>>207
ごめんな…。青ポって ポ を入れるのを忘れてたんだ…
吊って来る。

  __||__
  |  ||  |
  |_/⌒ヽ| キュウ
   ∪  ノ
    ∪∪
209名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/15(木) 19:01 ID:KTxk/v2o
>>208
いや、こっちこそ、ごめんなさい。
よく考えたら、青ジェムそんなにかかえきれなくなるほど持たないよね…。
210名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/15(木) 19:44 ID:IkSEeT5I
うす(略氏、良い仕事してますな〜
最初少しだけ読みにくかったけど後半は凄く良かったかと。
次回作に期待しております。
211うすら(略sage :2003/05/16(金) 00:54 ID:YC69Kdvg
>>211
あの、出来れば前半どのように読みにくかったか教えて頂けないでしょうか?
こう言う物は、他人に指摘されてやっと分かる物だと思うので…。

尚、次回作… と言うか、次に書きたいのは
今回の話の続き(と言うか、騎士とプリが会った時の話)
萌えスレで大見得きった、ショタアルケミ姐さんとハンタの話を考えておりまする…。
2121/4sage :2003/05/16(金) 18:08 ID:.aLt2rWw
「あー!よくも言ったわね!」
「お?何度でも言ってやろうか?このマグヌスオンリープリースト!」
「何よ、槍騎士のあんたがよくいえるわね!」
「「はみ出し物のくせにっ!」」
「「・・・・っ!」」

ピラミッド・・・古の王を初めとする死者が眠り、その怨念がさまよう墓場、その最上階・・・
しかし、今そこは死者も飛び起きかねないほどの凄まじいまでの口喧嘩の
合戦場と成り果てていた。

「大体あんたね、毎回毎回良くもバカみたいに敵連れてきて私に押し付けるわね!
詠唱中は寄らないでって言ってるでしょ!?回復する魔法力だって無限じゃないんだから!」
「んだとぉ?時々ちょこっとマミーをこぼしたぐらいでピーピー騒ぐなっての!第一3匹4匹のどこが
バカみたいな量だってんだ!」
「あーらご免なさい。バカなのは敵の量じゃなくってその頭でした?」
「っなっ!俺のシールド持ち上げることもできないてめえの腕力を棚に上げやがって!
大量のジェム、誰が持ってやってると思ってやがんだ!?」
「っこの・・・!」
「にゃろ・・・!」
片手間に寄ってくるマミーを、イシスを、グールを、ミミックを突き、癒殺し、
薙ぎ払いながらも一向に口論は止む気配は無かった。

「な・・・何なんですか?あの2人、止めたほうがいいんじゃ・・・」
「ああ、ほっとけほっとけ。どうせいつものエイミーとジェムスの口喧嘩だろ。
原因はいつも違うがやってるこたいつも同じ。ここじゃ名物だからな、お前も慣れとけよ。」
「は、はぁ・・・」
「大体このあと、2人が喧嘩別れをすると目論んでエイミーのほうにナンパしに行く
命知らずが沸いて来るんだよな、エイミーは見た目美人だし、スタイルもいいからな。
お、ほら、あっちから来た来た・・・」

そんな新米騎士とベテラン騎士の修行中の雑談など耳に届くはずも無く、
2人の口論は激しさを増すばかりであった。
2132/4sage :2003/05/16(金) 18:10 ID:.aLt2rWw
「大体お前だってヒールでバカスカ攻撃しすぎだろーが!そのヒールちったぁ
俺に回せ!何度死にかけたと思ってんだ!」
「何よ人を考えなしのヒール砲バカみたいに!大体鎧で固めた上に
私があげたエルニュムで精錬に精錬重ねてるんだしちょっとやそっとで
死ぬはず無いでしょ!?無駄に体力だけは多いんだから!」
「無駄とはなんだ無駄とは!鍛練の賜物といえこの頭でっかち!」
「言ったわねこの筋肉バカ!のーみそペコペコ並みのくせに!」

「ああ、もしもし?お嬢さん。」

「誰がペコペコ並みだ!これでも昔は近所の奥様たちに『物知りジェムスくん』の異名で知られてたんだぞ!」
「ノービスの頃の話でしょうが!その頃からちっとも進歩して無いくせに!」

「そっちの彼とは、ウマが合わないみたいだけど・・・良かったらボクと組んでみないかい?
モッキングマントと精錬ジュエルヘルムで固めたこの華麗なる・・・」

「ってめ、昔は蟻の生態しか知らなかったけどな、蜂のこともわかるようになったんだぞ!」
「どっちも似たようなもんじゃないの!大体そんなことマジシャン志望のノービスでもわかるわよ!」

「このペコペコもね、いわゆる血統種って言うのかな、とにかく元からが違って、その毛並みは
プロンテラの品評会でも賞を・・・ってキミ聞いて」

「「やかましい黙ってろ!」なさい!」

ゴシャッ!ガガンッ!
「おごぶっ!!?」
ジェムスのランスの柄がジュエルヘルムを打ち、エイミーの投げた2つのブルージェムストーンが
寸分たがわず鼻と眉間を打ち据え、あえなくナンパ騎士は鼻血を吹きつつノックアウトされた。
2143/4sage :2003/05/16(金) 18:11 ID:.aLt2rWw
「・・・ちっ、白けちまった、帰るか。」
「・・・ふんっ。」
「決着は、いつもどおり部屋でつけるからな。」
「今日は・・・負けないからね。」
エイミーはむくれながらもマグヌスを詠唱し、それほど間をおかずに
白い絨毯のような聖域が足元に広がる。
同時に帰還の邪魔になりそうな回りの敵をある程度かき集たジェムスが聖域へと駆け込むと、
追いかけてきた死者や悪魔は一瞬にして光に焼かれ灰と化す。
「掃除」が終わった瞬間、、すぐにワープポータルを詠唱、2つのポータルを出し、
一方にさっきの騎士を放り込み、その騎士が乗っていたペコペコを追い立てて
もう一方にジェムスとエイミーが入った。
そして・・・墓場に静寂が戻る。

「・・・凄いですね・・・」
それは、喧嘩の内容と撤退する際の手際の良さ、両方に向けられたものだった。
が、ベテラン騎士は前者だけを言っていると理解したようだった。
「まあな、年がら年中あの調子でどこでもケンカだよ。この数ヶ月、
ピラミッドを中心に通ってるみたいだけどな。おかげでここらの名物になっちまった。」
「にしても、あれだけ仲が悪い人たち・・・始めてみましたよ」
「・・・あん?誰が仲が悪いって?」
「え?だからあの2人が・・・」
「あ〜・・・えっとな、俺は昔から剣術を教えてたんだが・・・今のお前みたいにな。
やかましい剣士とアコライトの2人組を教えたことがあったんだ。
俺が守れないぞとか死ぬかもしれないとか脅しても絶対についてきたよ。
口を硬く結んで相棒の剣士のベルトを力いっぱい握って、な。
まぁその後は大体森に行こうが洞窟に行こうが大喧嘩しながらの戦闘だったが・・・。」
「え、じゃぁ・・・」
「ま、そういうことだ。無駄口叩いてないでカウンターの練習、再開するぞ!
今度はタイミングつかめよ!」
「はいっ!」
そうして、今日もピラミッドの午後は過ぎていく・・・
そんな変わらない日常。
2153/4sage :2003/05/16(金) 18:13 ID:.aLt2rWw
そして次の日・・・ピラミッド最上階。
「・・・で、何で勝ち取ろうとするまで3カラットダイヤなんて欲しがったのよ、あんた・・・」
「ん?ああ、ほらよ。」
ジェムスが投げ、エイミーが受け取ったものは・・・ガラスのように輝き、しかし
ガラスよりも美しく貴重な鉱石だった。
「やる。」
「え?ちょっと!私にくれるんなら最初っから私に出た時にくれればよかったじゃない!」
「あー、なんて言うかな、それじゃダメなんだよ。」
「・・・?」
言ってる意味が解からず、眉根を寄せるエイミー。
「『俺が』、『お前に』、『俺のダイヤをやる』ことが重要なんだよ!」
「はぁ・・・・?」
「誕生日を迎える本人との共同名義じゃプレゼントになんねーだろうが、そんなもん・・・」
「・・・覚えててくれたんだ。」
「何回祝ってやったと思ってんだ?もう染み付いてんだよ、脳みそにな。」
「にしても・・・もうちょっと上手くやるなり安い宝石買っちゃうなりしちゃえば良かったのに。」
「うるせ。俺の頭じゃこれが精一杯だ。」
「ふふん、ばーか。」
「お、お前なっ・・・!」
ジェムスが振り向いた瞬間、そこで声が途切れる。
まあ口で口をふさがれれば当然なのだが。
「ありがと。」
一瞬というにはちょっと長い接触の後、エイミーに耳元で囁かれ
ジェムスの顔はポリンよりも赤くなる。
「っしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いつもよりさらに凄まじい勢いで迫る敵を撃破しつづけるジェムス。
「もう、恥ずかしいからはしゃがないでよ!」
言いながらもしっかりとヒールと自衛を怠らないエイミー。
そんな二人の耳に、声が響く。地面を震わせるかのような低くうなる声が。

「我ノ復活マデノ眠リ妨ゲシ者ヨ・・・裁キヲ受ケ」

「おるぃゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「消えなさいっ!」
轟音を発して回転する槍がお供の大量のイシスとこの巨大な墓の主の怨念を
言葉すら終らぬうちに弾き飛ばし、白き光が焼き尽くす。
一瞬で何もなくなった後に地面の上に見えたのは・・・宝石をちりばめた王冠。
「「クラウンっ!?」」
「お、おい・・・これ・・・」
「ね、ねえ・・・ジェムス・・・これもプレゼントでくれない?」
「おいおい、イシスを倒してオシリスの足止めをしたのは俺なんだし3:2が妥当だろうが。」
「ちょっと、なによそれ。さっきのは冗談だとしても普通こういうときは均等に分けるべきでしょ?」
「ダイヤやったじゃねーか。我慢しろ。」
「なっ、そういうこと言う!?ケチンボ鳥頭!」
「ケチたぁなんだ!こっそり白ポ飲んで回復してたんだぞ!」
「知らないわよ!大体・・・!」
「言いやがったなこの・・・!」

「先輩・・・」
「ん、どしたの?」
「いえ、あの人たち、止めたほうが・・・」
「ああ、あれはね・・・」
修行中の新米のプリーストと引率のプリーストが2人について話し始める。
昨日と似たような喧嘩、似たような会話・・・
2人の距離は昨日よりは遠くはない・・・はずである。多分。
216書いてみた中の人sage :2003/05/16(金) 18:16 ID:.aLt2rWw
うぁ、番号振りまちがってる・・・
ベタな展開でスイマセンデシタ。
217偉そうな210sage :2003/05/16(金) 19:05 ID:Qey1OWWI
>>211
これ、オレへのレス、かしらん…?
前半というか出だし(>>199)の引き込み具合、といいますか
物語を読みたい!と思う感情が乏しかったのですヨ
読み始めて程なくすると勢いが出てくるというか、引き込まれていったのですが…

偉そうでごめんなさい、主観だから適当に流して貰えれば∧||∧
218名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/16(金) 23:54 ID:i9Gm1Kyo
>>212-215
ぐっじょぶ…。

あーこれ見てたら俺も小説書きたくなった…w
219名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/29(木) 10:58 ID:xirwtxbA
>214
「決着は部屋でつけるわよ」

決着・・・?
部屋で・・・?

・・・ナルホド!!
220名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/30(金) 19:55 ID:ue4XzxsM
全く、女性と言う生き物は、何故こんなにも買い物が好きなんだ。
あっちの露店を見ては、こっちの露店へふらふら。
特に買うわけでもなく、店を覗いてはあちこち見て回る。
ひやかしかよ、と思いきや、これがウィンドウショッピングと言うヤツらしく。
欲しいものは店に行く前にきちんと決めて、安い露店を探せるか、どれだけ安く値切れるか、それが俺の買い物のスタイルだった。
それを根本から覆す、女性の買い物。

「女の人は大抵そうだと思うよ」
悩めるプリーストを振り回している張本人のアーチャーが、楽しそうににこにこと微笑みながら言った。
プロンテラは首都だけあって、物の流通が激しい。探せば欲しいものが見付かる、というほどである。
彼女の場合はそうではない。欲しい物は特にない。
ただ、こうして当てもなく露店を回ることが、楽しみの一つなのだ。
「そうか…」
溜め息を一つ吐いて、プリーストは人ごみでアーチャーを見失わないように後をつける。
女性は逞しい。
午前中に狩りに出かけ、昼食を取り、午後の狩りに出掛ける前に、露店が見たいと言うのでついて来たらこの始末だ。
「いやだわぁ、もしかして、プリィストサマってばぁ、女の人とデェトしたことないんですのぉ?」
意地悪な笑みを浮かべながら、アーチャーは皮肉たっぷりの嫌味を一つ。プリーストは否定する気も起こらなかった。
それにしても、この人ごみでよくあんなに元気が出るものだ。
本当に、女性は逞しい。
「無理について来なくていいよ。疲れてるんでしょ」
げんなりとしているプリーストに、アーチャーはその場に止まって声を掛ける。
これ以上先に行っては、完全にはぐれてしまう。
プリーストは法衣の裾で額の汗をぐいと拭った。
「大丈夫だ。ちゃんと見てないと変な男にふらふらついて行きそうだからな」
「平気平気。もう変な男がふらふらついて来てるから」
そのアーチャーの言葉に、プリーストはばっと後ろを振り返った。こちらの様子を伺っているものは誰もいない。
「いや、違うって。あなたのこと」
人の悪い笑顔を浮かべたまま、アーチャーは目の前のプリーストを指差した。
見てわかるほどプリーストの肩が下がり、足元に視線を落としうな垂れる。
アーチャーは言い過ぎたかなと思いつつ、冗談よ、とフォローを入れた。
狩りより何より、女性との買い物は疲れる。プリーストはそう思った。
「あ、あの露店行こ」
そんなプリーストの気持ちなど露知らず、アーチャーは次なる露店へ走り出した。
221名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/05/30(金) 19:55 ID:ue4XzxsM
人と人の間をするりと掻い潜り、もう露店の店主と和気藹々と話をしている。
プリーストは人知れず盛大な溜め息を付き、人ごみを再び掻き分け、彼女の元へ向かった。
「お嬢ちゃん、可愛いねえ。これなんか、似合うんじゃない」
近付くと店主の声がプリーストの耳に入り、アーチャーの隣に不機嫌そうに座り込んだ。
店主はプリーストに気付き、彼にもわかるように宝石のついた指輪を指してみせる。
「彼女に一つどうだい」
「やだ、彼女じゃないですよ」
店主の言葉をアーチャーは即時に否定した。プリーストはますます不機嫌になる。
だが、アーチャーがその指輪を真剣に眺めていることに気付き、いま手持ちがいくらあるのか考えた。
「この指輪、いくらだ?」
プリーストが店主に尋ねると、アーチャーは唖然と彼の顔を見つめた。彼は飄々としながら、欲しいんだろ?と言った。
「40000ゼニーだよ」
「ぐ…」
今月の生活費と照らし合わせると、痛い出費だ。唸りながらプリーストは値切ろうとすると、アーチャーが違う指輪を指した。
「こっちのほうがいい」
花の飾りをした、簡素だが清楚な少女の雰囲気が漂う可愛らしい指輪だった。
先程のダイヤの指輪と比べると、随分と見劣りするその指輪。
「遠慮、しなくていいから」
プリーストがそう言うと、アーチャーは首を勢いよく振るった。
「私、まだまだ若いから。こんなごっついダイヤなんて似合わないよ。こっちなら、ほら」
売り物の花の指輪を、右手の薬指にはめた。
確かに、可愛らしくてそっちのほうが似合うかもしれない。プリーストは指輪をはめた指を確認しないで、店主に向き直った。
「こっちは1200ゼニーだね」
プリーストは法衣のポケットから財布を取り出し、お金を店主に渡した。店主はまいど、と微笑んだ。
二人は立ち上がり、露店を後にする。
その指輪に甚く満足したようで、アーチャーは嬉しそうに薬指に頬擦りをした。
女性のウィンドウショッピングに付き合うのも、いいかもしれないな、とプリーストは思った。
「安物だけど、気に入ってくれたなら嬉しいよ」
「うん」
「それじゃ、遅くなったけど午後の狩りに行くか」
「よし、頑張るぞ」
プリーストは、指輪の位置に気付かないままだった。
そんな彼がおかしくて、アーチャーはくすくすと微笑みを零した。
222名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/01(日) 01:03 ID:7NsgpmFY
>>220-221
楽しませてもらいました。
初めの>女性は逞しい。
ってのが続けられてるとこがテンポがよくて面白かったです。
ちよっと疑問なのが、プリーストについて
値切りが得意な割りにおとなしめな性格?なのと
「彼女発言」の否定に、不機嫌になる程度にはアーチャーに好意があるのに
>指輪の位置に気付かない
ってのが、自分の中で繋がらないんです。

私は文章力、読解力とも無いもので、勘違いの部分もあることだと思います。
これを見て、お気を悪くされないことを願います。
駄レス失礼しました。
223名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 05:32 ID:2oYpPoxo
アーチャーが彼女と言われたのを表向き否定しつつ、指輪の位置は(多分)薬指
プリーストがその意味に気が付いてない。ってことでは?
224名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:02 ID:dKbhAERE
ある良く晴れて、空を行く雲が羊のようにぷかぷかしていた日の事です。
マンナちゃん10歳がピッキやポリンと戦いつづけてようやく一人前の
マーチャントに転職することが出来るようになりました。
マンナは、ギルドのお兄さんお姉さん代りのメンバー達から、これからの
育ち方の勉強や、攻撃方法そして有効な装備や道具の使い方、そろえ方を
習い最低限装備のプレゼントを貰っていました。

マンナの妹のテトちゃん4歳ノービスはそれはそれはとても喜び、
お姉ちゃんのマンナちゃんに何かしたいと思いました。
テトは、何をあげたらいいか何をしてあげられるかお母さん代りの
副ギルマス♀Wizのディーナに相談すると、ディーナは
「テトちゃんが出来る限りのこと、例えばファブルやポリンを叩いて
お花やクローバーを集めて花束を作ったら喜ぶんじゃない?」
と言い、テトはそれなら自分も出来る!と喜んでプロンテラの西門を飛び出していきました。
ディーナはちょっと心配してテトの後ろからついて行こうとすると、
お父さん代りで無口でちょっと怖いギルマスの♂アサシンのソカベが
「過保護にするな」の一言に、また仕方なく腰をおろしてテトの帰りを待つことにしました。
225名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:06 ID:dKbhAERE
テトは悪戦苦闘してポリンやファブルを叩きます。
お花やクローバーが出ると喜んで手に握り締め、リンゴやニンジンが出たら
それを食べつつ数を集めようと必死です。
リンゴやニンジンが無くなった時は、この間マンナちゃんから習って
ようやく出来るようになった座るスキルで回復して頑張ります。
まだこの世に生まれて間もないテトには、お店で売っている花束1500zというのは
大金で手が届きません。

マンナの転職式の時間が近くなり、ディーナはもう座っていられなくなりソワソワと
西門を見ながらウロウロしだしました。
(まさかどこかで倒れたまま起き上がれていないのかしら?それともお花が集まらなかったとか・・・
あんな提案しなければ良かったかしら?まさかあの子、この間言っていたプロンテラで
セーブしておきなさいと言った事をしていなくて、どこか他の街に戻されちゃったとか?
どうしようどうしよう?ソカベさんは私が迎えに行ったら怒るかしら?)
と見た目にも良く判る位の不安顔です。
ソカベは仕方ないという顔をして、
「判った。俺が迎えに行く。ディーナはマンナと皆を連れて先にアルベルタに行っててくれ。
イズから船ですぐ行けるだろう」
と言うと、ディーナが「でも」と言うとソカベはディーナに目線で後ろを促します。
ディーナが振り返ると、マンナがいつも傍にいる筈のテトがいない事とディーナの不安に何があったのかと、
更に不安な顔をしています。
「今日はマンナのお祝いの日だ。あんな顔をさせて良い事は無いだろう。不安を無くさせるのは俺より
お前の方が向いている。俺はチビ達には怖がられているからな。」
その一言で、ディーナは自分のすべきことを即座に理解してマンナに笑顔で何でもないよと伝えると、背中を押して
皆を連れて南門へ向かいました。
226名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:10 ID:dKbhAERE
「まったく世話の焼ける・・・だから俺はチビ達をギルドに入れるのは反対してたんだ」
と紫のマスクの下で呟きながら、ソカベは西門へ向かいました。
西門を出てすぐ、通りすがりに一瞬見間違いかと思い歩き去りながらも気になり、門入り口に戻ると
入り口の木の陰でテトが隠れるように後ろを向いていました。
ソカベは「何してんだ!まったく!時間を忘れたのか!」と怒鳴ると、テトの体がビクッ!っと跳ね上がりました。
テトが恐る恐る振り返ると、いつも怖いソカベがより怖い顔で怒っています。
ソカベがテトの泣き顔を見ると、今の怒鳴り声で泣いたのでなくずいぶん前からテトが泣いていたのかまぶたや
ほっぺが真っ赤になってヒックヒックとしゃくりあげています。
「なんだ?花が集まらなかったのか?」
とたずねると、テトは頭を振りながら背中のリュックから花を15本とクローバーを10本出しました。
「なんだ。集まっているじゃないか。何で泣いているんだ?」
と聞くと、テトはリュックの中に入れた手を出さずに顔を真っ赤にして更に涙と鼻水を出して
声を出して泣き出します。
ソカベもこれにはまいりました。
テトを落ち着かせるために背中を何度も優しく撫でると、テトはだんだん落ち着いてきて、
泣き声がちゃんとした言葉になっていきます。
「あ゛ あ゛の゛ね゛ てどぢゃ゛ん、頑張ったのね。そしたらね、お花よりいい物が出て、
でもテトちゃんあげたくなくなっちゃったの」
とまた泣き出します。
ソカベがテトの頭を撫でながら、リュックの中を見るとそこにはぽりん人形が入っています。
花を集めていたところに、この人形が出て最初はマンナにあげようと大喜びしたものの、持っているうちに
どんどん愛着が湧いてしまい手放すのが惜しくなって、どうしたら良いかわからずに不安になって
泣いてしまっていたんだとソカベは瞬時に納得しました。
「まったくバカな事を・・・」と呆れながらソカベはテトを抱いて泣きあやす為に少し歩き出しました。
227名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:13 ID:dKbhAERE
「じゃあ俺がポリン人形をテトに買ってやるから」というとテトは
「テトちゃんはこのポリンがいいの!!!」と言い、
「ならマンナにはその花束で良いじゃないか」と言うとテトちゃんは泣き出します。
テトはマンナに、自分が出したこの人形を見せたいのです。
でもこの人形を見せるときっとマンナも欲しがって、ケンカになったりして嫌われたらと思うと
それが怖くて泣いてしまうでした。
ソカベがもう本当にしょうがないなと思ったとき、ふと思いついて
「おい、時間ギリギリまで俺が壁をするからテト、お前が叩け。またドロップさせりゃいいんだろう」と言いました。

ソカベは元々壁支援などが嫌いで、ギルメン達がお互いが納得しているならあえて不問にしていましたが、
とりあえず壁禁止を打ち出しているギルドでした。
だからテトはびっくりしましたが、ソカベはそう言うとさっさとポリンに向かって行き、
慌てて後を追いかけます。
ソカベが適当なポリンを見つけたらしく、「いいか、今日は特別なだけだからな」と言って座り込みました。
見ると毒が入って赤紫になったポリン、テトは必死でナイフで叩きます。
1体倒すと、ソカベはテトのリュックをまた覗き、さっきテトが一人で頑張っていたときに
ルナティックから出した刃物に虫眼鏡を使って鑑定してソードにしてくれました。
そのソードを使うと今までよりも強く、あっという間にポリンを倒すことが出来ました。
4〜5体目になった時、おもむろに倒したポリンが砕けて小さいポリンになりました。
ポリンぬいぐるみがとうとう出たのです。
テトは興奮して上気した顔で顔を上げると、下水前まできていました。
ソカベは近くにいたアコプリさん達に、アルベルタポタは無いかと尋ね回った所、運良く一人のアコさんが
幸運にもアルベルタポタを持っていました。
ソカベはテトを肩車して、二人分の料金とおまけにジェム3つ分くらいのチップをつけて払うと
アコさんは♪〜と喜びながらポタを出してくれました。
テトは初めてポタに乗って、また大喜びです。
228名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:19 ID:dKbhAERE
アルベルタの町の入り口に到着したソカベはそのままダッシュで南の商人組合まで走りました。
いつもは閑散としている商人組合前で、ソカベのギルメン達が二人の帰りはまだかとソワソワと待っていました。
今日の主役のマンナが不安がらないように、ディーナやその他のメンバーがここアルベルタで行われる
蚤の市の話などをして待っていると走ってくるソカベの姿を見つけ、そしてその上で喜びながら
はしゃいでいるテトを見て安心しました。
予定よりちょっと後れましたが、マンナが暗証番号を組合の人に告げると、商人に認定して貰え
マーチャントの服がプレゼントされ、着替えた瞬間にギルメン達からの祝砲代わりの魔法がマンナに降り注がれます。
そしてそのマンナの後ろから、テトが恥ずかしそうに近付き、マンナにお祝いのポリン人形を渡しました。
マンナはとても大喜びして、「テト、ありがとう!」と言うとテトは恥ずかしそうにまたリュックからポリン人形を出して
「あのね、ふたっつ出たからマンナちゃんとお揃いなの」というと、マンナちゃんはまた喜びました。
そして拾ったお花とクローバーの花たばを渡すと、みんなもマンナちゃんを祝いそしてそのプレゼントを
用意したテトちゃんを誉めました。

その列の一方後ろで、ディーナがソカベに「あれ・・・前にあなたに私があげたものでしょ?」とみんなに
ばれないように小声でソカベに微笑みながら言いました。
「だってあの人形の後ろ斜め下にある傷、見覚えがあるから」と笑うとソカベは「すまん」と謝りました。
「テトが自分で出したものを渡したいって気持ち、判るから。買ったりでも良かったのかもしれないけれどテトはまだ買うって・・・」
としどろもどろになって言っている途中でディーナは
「んーん。いいの。もうだいぶ前に渡したものだし、今まで持っていてくれたことが嬉かったんですよ」
と笑うと、ソカベは赤くなってティーダに見られないように顔をそむけました。

今日はおめでたい1日でした。
229名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:24 ID:dKbhAERE
ここを読んでいたらなんとなく書きたくなって・・・。
あ、私は別に幼女好きってわけではありません(汗一応リアル性別♀なので。
ちっちゃい子が頑張ったりするのがいじらしくかわいいなぁと思ったので
こんなのを想像してみました。
スレ汚しでしたらすいません。
230名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:45 ID:d7DnTVQQ
偶然ながらリアルタイムで読ませていただきました。
絵本みたいなほのぼのした展開がすごく(・∀・)イイ!! ポリン人形渡すか渡すまいかで悩む♀ノビたんも可愛いいですヽ(´ー`)ノ

いきなり出だしに十歳と四歳とあったので「実年齢か!?( Д )」と思ったのは内緒ですが(ぉ
231名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 20:49 ID:xkoevcZw
安易にエロと萌えをイコールでくくる風潮が強い中、
見事なりコドモ萌えの御技よな。
232名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 21:35 ID:dKbhAERE
>>230さん
早速読んでいただきありがとうございます!
一応年齢はその頃・・・と思ったりしているのですが、でもそれだと
一応脳内設定ソカベさんやディーナさんは廃クラス?なのでパパママってより
曾爺さん曾婆さんになってしまう・・・ガクガクブルブル

>>231さん いえいえ、なんか逆に私のような書き込みこそが間違いなのかもです(汗
でも読んでいただいてありがとうございました。
はじめてのお使い的な内容ですね。

もしこんなんでも良かったらまた書き込みに来させてください。
233名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/02(月) 23:58 ID:G2gSTG9Q
>>223さん
その通りなんですが、
アーチャーが彼女発言を否定したところで、プリーストが不機嫌になってる
=プリーストはアーチャーにそれなりに好意があるのでは?と考えると、
プレゼントが指輪ならその意味も(多少は)意識するだろうし、
どこにはめるかも気になるのでは?と思った次第です。
あまり文章は書かないもので、やっぱり私の文は分かりにくいですね。(^^;すみません。
遅くなりましたがレスありがとうございました。
234223sage :2003/06/03(火) 02:20 ID:CUkZSEeE
>>224さん
久々にいい話読めましたー。ありがとう。今の私にはまぶしいお話でした。
そしてソカベさん萌え(*´Д`)

>>233さん
なるほど、確かに指輪プレゼントすればどこにはめるかも気にしますよね。
そこには気が付きませんでした。文分かりにくいってことはなかったですよー。
235名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/04(水) 07:02 ID:dxchzs7M
>>233
だからこそアチャ娘たんはくすくすと笑ったのではなかろうか?
まぁ、その辺は受け取り手によって違うモンですヨ。
つわけで猫線。
―――にゃーにゃ―――

>>224
絵本風味萌え。萌え。
アサシンのしどろもどろもイイ!
236名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/04(水) 14:12 ID:Kg4luD1c
>>234
女なら気になるが、男だったらそんなに細かい所は気にしない(がつかない)人もいる。
237名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/06(金) 12:50 ID:aQmizpKY
>>224
最後の最後でFF10の主人公出てきてません?
238220sage :2003/06/06(金) 13:30 ID:f8sp8LGo
みなさまご意見ありがとうございました。
書き手と読み手、そして読み手でも各々の受け取り方はそれぞれあるので、こういうつもりで書いた!とは言いません。
表現が拙いせいでこのような作品を深読みしていただいて嬉しい限りです。
もっとボキャブラリーを増やして出直してきます(つД`)
239名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/07(土) 04:26 ID:9g58IZwI
>237
気づいたのは俺だけかと思っていたが…w

しかし絵本風(・∀・)イイ!!これからもがんばってくだちい
240224sage :2003/06/08(日) 13:17 ID:4goSlvus
>237-239
え・・・嘘・・・・本当だ!ギャー(汗
こっ恥ずかしい!!!!
ヒィィィィィィィィィィィィィイイ

すいません。名前全部適当に身の回りにあるものからつけたので
つい間違ってしまいました。(TT
うわー。めちゃくちゃ恥ずかしい・・・。
これから気をつけます。ご指摘ありがとうございました。
241224sage :2003/06/08(日) 13:26 ID:4goSlvus
>235(223さん
いえいえる前のほうの小説や、223さんのぷちラブストーリーを見ていいなぁって
思って私も書いてみたんですから。
微妙な女心と男心の象徴の花の指輪が(・∀・)イイ!!

>235
絵本風って書き出しがわからなかったのでこんな風にしてみました。(汗
お褒め頂きありがとうございます!(そこまででもない?
242未だ名無しsage :2003/06/14(土) 06:37 ID:saYNkwXg
 首都プロンテラ――――その中央通りは今日も煩わしいほど活気が溢れている。
『牛乳22 青石460 蝿50』
『属性武器入荷しました』
『アコタンの脱ぎたて(*´Д`)ハァハァ』
 歩くのに難儀する程開かれた露店と、その看板に関連性が見いだせないのも、まあいつも通りといえ
ばいつも通り。
――――足りないモノはあっただろうか。
 歩きながら倉庫の消耗品の残数を計算。結論は『買い物の必要性あり』。そこでクワッ、とペコペコ
が一鳴き、その背にくくられた麻袋に目をやる。その声は「重さに耐えかねます」そう主張しているか
のよう、無論気のせいだろうが。自分に比べればそれはとても軽い。けれど、まあ何となく考え直す…
…アイテムを上納、ペコペコ返してからでもいいか、と。噴水前、ポタ広場を通過。そのままプロンテ
ラ城、ある一室に向かいまっすぐ歩を進める。

――――人口密度なら外に並ぶ露店とそう変わらないな。
「《戦車》のBSさん来ましたよー、属性クレイモアの件だそうです」
「……《死神》の者だが要請を受け参上した。長殿に面会をお願いしたい」
「すいませーん。《魔術師》の者ですが、頼んどいたモノ受け取りにきました」
 ひとつ違いを挙げるとすれば、人の行き交い多さ、だろう。外を雨とするなら、此処のあわただしさ
は嵐といったところか。あいもかわらず修羅場とい形容が似合う場所だ。
 マントに刺したウィスパーCの威力を十二分発揮、人の間を縫いながら最奥を目指す。
 紫檀の机とそこに座る人物の元に辿り着くのに、そう時間は掛からなかった。

「――――報告します。『星』のGM以下5名、これよりGH騎士団2F探索に向かうそうです。それにあた
り、臨時にプリースト1名を回して欲しいと連絡がありました」
「ふむ……今なら『制約』に暇してるプリがいるね。連絡は君に任せるよ」
「かしこまりました」
 妖精耳の♀Wizは騎士に深々と会釈すると、そこでこちらに気づきやはり深々と会釈、彼女はそのま
ま自分が歩いて来た通路を通り、喧噪の中に消えていった。机の周りには自分と、目の前の人物の2人
だけになる。
 男はにこやかに笑い、おもむろに口を開いた。
「ふはははは、お帰り我が息子よ!」「…………ただいま戻りました」
 目の前の♂を一言で表すなら間違いなく『変人』だろう。
 二言で表すと『年中サンタ帽の変人』、三言目……やめよう、何かとても心が悲しい。
 彼を特徴を表すであろう言葉を幾つか上げるなら『美青年』。それをぶち壊しにする『サンタ帽+蝶
の仮面+ひげ』。『一応廃騎士、STR-INT型』。『割と大きなギルド連合の長』。そして不本意な事に
『自分の義父』……こんなところか。
「頼まれていたエルニウム・オリデオコン以下の品、確認お願いします。それからこちらは今月分の上
納金です。こちらも確認お願いします」
「……うんうん、相変わらずいい仕事するねー。おとーさんは嬉しいよ!」
「恐悦です。失礼します」
「あああああ、待って、ウェイト!スットプあんどリターン!!」
243未だ名無しsage :2003/06/14(土) 06:40 ID:saYNkwXg
「………………何でしょうか」
――――正直、一秒でも早くこの場から去りたいんですが。
「つれない、つれないよマイサン!久しぶりにあったんだ、少しはゆっくり親子の会話をというやつを
ムチムチと楽しもーじゃないか。あ、そうだアイスあるけど食べるかい?」
「いえ……コモドで食べましたから」
「アイスって愛巣って書くとかなり卑猥だよね、イヤン」
「話は終わりのようですね、帰ります」
「うわあああああぁぁぁ……」

 …………。
 腰にすがりつき、凄まじい表情でわめく義父をひきはがし、何事かとこちらを見る皆様に「いつもの
ことですから」と目配せすると、皆様はあっさりと仕事に戻った。皆様馴れているらしい。
「親子の会話に飢えてるんだよぅ……つき合ってよぅ……」
「……真面目な会話なら幾らでもつき合います」
 何時も思う。何故この人にギルマスがつとまってる?……周囲の人達がかなり優秀なんだなろうな、
と自分の中で勝手に結論付け、めそめそと机に戻る父を生暖かい目で眺めた。

「しかたない、真面目な話をするよ」
 最初からそうしてください、という言葉は、義父の真面目な表情(といっても装備はつけたままだか
らかなりシュール)を見て生じた嫌な予感に押さえ込まれ、吐き出される事はなかった。
「――――そろそろ、固定PT作らないか?」
「……何故ですか」
「んー、正直ソロじゃ狩れないモンスターが最近増えたと思うんだよ」
「自らを鍛え、その上で常に細心の注意をはらい状況を判断すれば、対応もできましょう」
 しょうがないなぁ、といった感じでこちら眺める義父。
「集団行動がそんなに嫌いかい?」
「一人で行動するのが性にあっているだけです、誤解無きよう。それに、そちらからの要請は全て受理
しています、ソロで活動する事の免罪符としての、ギルドの仕事は十二分にこなしているはずです。そ
ちらの勧めで臨公PTにも数え切れないほど行きました」
「うん、評判もいいよー」
「だったら────」
「私はね、本当に実力ある人間が、組織の中で相応の地位につかないのは嫌なんだよ」
「…………」
「実は今度、また新しくギルド作ろうかと思ってね。出来ればそこのギルマスを君にやってもらいたい
んだ。だから、君には今のうちに色々と馴れてもらおうと思ってる」
「……俺に拒否権はありますか?」
「上の命令は聞くもの。それは組織に属する者が、組織に効率よく最大限に貢献するために、生じる義
務だ、とまあ他人にならそういうだろうね。だけど君は私の息子――――形式上もいいところだけどね
――――親は子供の意志を出来る限り尊重するものだって思ってるし、私もそうしたいよ。
 だからこれはあくまでお願い。『や ら な い か ?』ってね」
 何がおかしいのか義父はふはははは、と笑う。
 お願い、と言っているけどたぶん形だけだ。この卑怯な義父は自分がこういった時に拒否しない人間
だと分かった上で、あえてこういう言い方をしている。
 俺が受けた恩は必ず返す性分だと知っていて言ってる。
 緩やかなあきらめが、速度減少かけられるより体と気分が重くした。
244未だ名無しsage :2003/06/14(土) 06:41 ID:saYNkwXg
「……分かりました」
「お?」
「固定PTの件お受けします」
「おおおおおおおぉぉぉぉ、ウホッ、いい男!流石だよマイサン!」
 承諾はしたものの――――
 いやー君ならやってくれると思っていたよー、などとほざきながら机の上でふんぞり返っている、目
の前のこれを見ていると、FD3Fでヒドラの群を見た時と同じ衝動に駆られる。
「ん?どうしたんだい、一瞬君の周りに六亡星が?」
「かすみ目ですか、気をつけて下さい。特に月の無い夜は外を出歩かない事をお勧めします」
「ふははははは!いやー、息子が父の心配をしてくれて嬉しいなー、嬉しいなー」
 この直後、先程の♀Wizさんが戻って来てくれた事は心底ありがたかった。――――インデュア使っ
てもBBの衝動に耐えらるか微妙だったから。
「――――お楽しみ邪魔して申し訳ありません、《死神》のアサシンの方が面会に見えております」
「えー」
「……じゃあ自分はこれで失礼します」
 一刻も早くこの状況から解放されたい、ここは自分の精神衛生上大変よろしくない。というか、かな
り悪い。その一心で早足に外に向かう。そして、歩きながら思考を迅速に切り替える。
 腐っても意味は無い。後悔はもっと意味が無い。経緯はどうあれ、目の前にやるべき事があるなら、
全力でそれを為すべきだと。しかし、
「あ、そうそうPTメンバーの事なんだけど────」
 出ていく前、義父に背中越し懸けられた言葉を聞いて、俺は思った。心底思った。

――――やめときゃよかった、と。
245未だ名無しsage :2003/06/14(土) 06:51 ID:saYNkwXg
――――やめときゃよかった、と。

それは当に今のお前の心境じゃねーか
寝不足の頭と勢いで、何書いてるんだお前。まともな文章なんて
小学校の読書感想文以来じゃねーか。そもそもブラインドタッチ
も出来ない遅筆ヤローが小説スレにカキコかよ(藁

……今、まさにそんな感じです_| ̄|○
このスレの皆さん、小目汚し申し訳ありません……収集つくのか自分
246未だ名無しsage :2003/06/14(土) 07:41 ID:saYNkwXg
一応つづきは書きます。UPは今週中に出来ればと考えています……
247名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/14(土) 14:49 ID:b3OzgOfE
楽しみにしてますのでいつかぜひ続きを。
おなか痛くなったよママン。
248名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/14(土) 23:46 ID:hSj6O6vg
>>245のオチに腹抱えますた。
小説スレはこういうのも醍醐味ですな。
続きも楽しみにさせて頂きますハァハァ。
249未だ名無し :2003/06/15(日) 16:46 ID:X16VaZLk
 辺境の都市モロクも、夜はそれなりに賑やかだ。

 王国の管理があまり行き届かず、地域を治める太守が無能なこの都市の夜のにぎわいは、人の欲望と
それを利用した何かが大半だとしても、酒場の喧噪と楽しげな様子は、他の都市とそう変わらなかった。
もっとも今の自分に、そんな祭りめいた空気を楽しむ余裕は無い。
 カウンターでひとり肉を無表情に噛み千切りながら、葡萄ジュースを胃に流し込む。仕事の後、自分
へのささやかな褒美も今日に限って、あまり美味くない。理由は分かりきっているが。
「――――何が分かりきってるんだ?」
「……クマ」
 俺がクマと呼んだ人物は、がっちりとした体型と愛嬌のあるヒゲ面、こげ茶色の髪を逆立てた中年の
騎士、この酒場の常連客だ。
 クマという名前はおそらく本名では無いが、皆そう呼んでいるので自分もそれに習っている。
 年上なのに敬語を使われるのが嫌いで、気さくな性格の割にソロ志向が強く、なんとなく自分と馬が
合い、話しやすい。
 彼は隣の席に腰掛けて、酒と肴を注文すると、本当の熊の様に大口を開けてそれらを平らげ始めた。
「で、どうした不景気な面して」「いや……」「ま、大方父親の無茶なお願いに頭を悩ませているってと
ころか」「何故分かる」「んにゃ、ただの勘。というよりお前さんが不景気な面している時は大抵そうだ
ろう。しかし珍しいな」「……何が」「リアルLuk激高のお前さんなら、多少、無茶な注文でも何とかな
ると思うんだがね」
 リアルLuk−敵からのレアアイテムやカードのドロップ率の事だろうか、俺は別に高くないと思う。
「今回のはそういうので何とかなる問題じゃない」「んじゃ、どういう問題よ?」
 しばらく躊躇う――――まあ、いいか。
「一週間以内に《タロット》の活動を補助する、固定PTのメンバーを捜すこと。最低2人ね。それが
出来ない場合、君、一年間BOTの取り締まりに《悪魔》に送るから、だそうだ」
「あー……」

 BOT────絶対禁止呪文とも、不法薬物による限定催眠とも呼ばれているが、人をリビングデッド
にする謎の現象、或いは行為。発祥はこの世界の開闢と同時ともされる。
 焦点の合っていない虚ろな目、壁にがりがり肩と頭を擦り付る奇妙な歩き方、話しかけてもまともな
言葉は返さない。
『こんにちは』『……(無反応)』『いい天気ですね』『……(無反応)』
『BOT使ってますか?』
『何ですかそれ、失礼な事言わないでください!』
『BOTAMOTI好きなんですよ、俺』
『何ですかそれ、失礼な事言わないでください!』
『BOTTON便所』
『何ですかそれ、失(以下同文』
 微妙な差異はあっても、疲れを知らずに周囲のモンスター(人が攻撃しているのも含む)を狩り続け
るという特徴は一致している。以前、劣悪なBOTを使用しているであろう♀騎士をダンジョン内で見
かけた事があるが、壁に向かって延々と体をぶつけ続け、頭から血を流しているそれを見た時は、流石
に背筋が寒くなった。

「あれと付き合うのは嫌だわな、不気味だし、正気に戻ったとこ注意すれば逆恨みされる事もあるし、
取り締まったところで『監理者』どもは仕事しないから意味なさげだし。俺はあれの取り締まりをする
くらいなら、半日懸けて穴を掘って、半日懸けて穴を埋めていた方がましだね」
「……彼らは今日もキムチパーティだろうか?」
「さあね。まあ、あいつらもある意味BOTだ『癌崩頑張ってます!』ってな」
 びしり、と立てられた親指にはある種の魔力がある。
「やめてくれ。それ見てると、気分悪い」
250未だ名無し :2003/06/15(日) 16:48 ID:X16VaZLk
「何にせよ、俺の後任がすでに《死神》から派遣された。逃げ道、無し」
「んー、でも大して難しくないんじゃないか、最低2人を一週間でだろう?愛想悪いお前さんでもすぐ
集められそうなもんだけどな」
「マッタリ系、楽しさ重視のPTだったらすぐメンバー集まると思う。けれど《タロット》はそういっ
た場所じゃないから」
 今回作るPTは仕事に従事しているという感覚が強いと思う。そういった事情を説明した上でPTに入
ってくれるのは、よほどもの好きか、勘違いバカだけだろう。
「お前、この際女装でもしとくか?髪解いて、スカートでもはけば、すぐ集まるぞ?」
「……それで、有能な人間が集まるなら幾らでもしてやる」
 カウンターに額を擦り付けながら、思わずそう答える。
 いっそ女だったら下心丸出しの馬鹿を簡単に集める事が出来たのだろうか。その中にはそれなりに使
えるヤツもいるかもしれない、この際本当に女装でも――――いかん、俺かなり疲れてる?
 自分の思考の愚かさに、精神的疲労を再確認してしまった。
「ま、そんな状態だってのに、すぐ隣にいる極めて優秀なVIT騎士を誘わないあたり、まだ余裕はあり
そうだな」
「何を言ってる。 あんたは、自分が嫌な事を他人に勧めるのか。冗談じゃない」
「はっは、なるほど一理も二理もある。全く、お前さんのそういうところは本当に好ましい」
 クマは何かに納得して、うんうん、と頷いている。馬鹿にしているのだろうか。彼はおもむろに立ち
上がりこう言った。
「よっしゃ、行こう!」
「は?」
「少し付き合えや、息抜きに行こう!」
「いや、俺は」
「いいからいいから。金入って懐ほくほく何だよ、奢ってやるって」
「だから」
「あーもーうるせぇなあ。お前、今どんな顔してるか分かってんの?眉間にしわなんか寄せちゃって、
そんなんじゃPT勧誘上手くいきっこないって」
「……」
「な、たまには年上の言うこと聞いときなよ。少しはリラックスせんと、うまく行くもんも行かなくな
っちまうって」
――――まるで、引きそうに無いな。……それにクマの言う事は、先のクマじゃないが一理あると思う。
 仕方ない。
「……分かりました。分かったよ、付き合う」
「うーし、そうと決まれば早速行こう!おやっさん、お勘定ー」
 金貨を一枚カウンターに置いて、俺とクマは店を後にした。

「で、何処に」
 道を歩きながら、先導するクマに声を懸ける。
「息抜きって言えばきまってんだろ?前々から思っていたんだが、お前さんの息抜きは健全すぎる!」
「そうかな」
「そうです。酒は飲まない博打はしない。全くしょうのない男だ、女なのは顔だけにしとけー」
「うるさい黙れ馬鹿、ほろ酔い気分でいい感じに頭わいてんじゃねえ、こっちの質問に答えろ」
「はっは、決まってるじゃないか。さて此処で問題です!『飲み』『打ち』ときて最後につづくのは
何でしょうー?」
「………………まさか」
 クマは、場所が場所ならそれだけでセクハラが確定するような、好色な笑みを浮かべた。
――――嫌な予感が止まらない、というか今日はこんなのばっかか!?
「残念、時間切れです!さー着いたぞー、正解はこちら!!」

 そういわれて最初に入ったのは――――
 魔法で原色にぴかぴかと輝く『にこにこまーちゃん(*´Д`)b』の文字だった。
251未だ名無しsage :2003/06/15(日) 17:02 ID:X16VaZLk
こんにちは、未だ名無しで……ってsage忘れたー!?
他のスレの皆さんゴメンナサイ。カナブンよりゴメンナサイ、ゴメンナサイ……_| ̄|○

ところで萌えが悲しい程ないですね、上のあれ。本当なら今回の更新で
♀が2人出てくる予定だったんですけど、そこまで書けませんでした。
まだ、続きます。お付き合い下さい。

>>247>>248
ありがとうございます。
こんなカナブンよりあれな香具師の文章に、そんなありがたい感想いただ
けて嬉しいです。もう少し頑張ってみます。
252sage :2003/06/15(日) 17:10 ID:5Uz4Zims
長くなるようならあぷろだがあるからそっち使ってもいいかもね
253名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/15(日) 18:25 ID:WEC0JPFE
BOTの描写ワロタ
254名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/17(火) 23:14 ID:bngflEy2
俺もBOTの描写が秀逸だと感じた
255名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/17(火) 23:28 ID:eKvpmgkU
自分はコマ切れに書き込まれるのは正直ちょっとウザいと思った。
せめて1部でも完結してから書き込んで欲しいな。
最後の文末が、何か期待をもたせたまま引きで終わっているのが、
やらせガチンコファイトクラブ系のいやらしさを感じさせて素直に絶賛できねぇ。
256未だ名無しsage :2003/06/18(水) 08:18 ID:zAqhLSxY
『ピンクアロー アチャ子・ハンター専門店!!』
『モロク式マッサージ そにっく・ぶろー』
『スパッツは悪魔の使者、禁止です 聖☆プリースト学院』
 目がちかちかする、魔法で原色に輝く看板。
 その通りには、他にも何をいっているのか半分くらい理解不能な客引きとか、見た事のないものばか
りが並ぶ露店とか、やたらフェロモンが出てる女性とかが立っていたりして、ある意味グラストヘイム。
 とてもストレインジで、どこかデンジャーな雰囲気を醸し出していた。
「ふむ……」
 しばし黙考。ぽん、と手を打つ。なるほどなるほど、此処がそうか。噂には聞いていたたが実際見て
みると趣が違うものだな、うんうん一つ勉強になった────
「じゃ、俺はこれで」
 手をシュタ、と上げ、素早く踵を返す俺の襟首を、さらに素早く掴むクマ。
「はっはっはっ、――――何処へ行こうとゆうのかね?」
「いやいやクマ殿、本日は良い気分転換になり申した。これで明日からの仕事も順調に進みましょう」
「ほほう、それはよかった」
「なればこそ、この掴んでいる手を。とっとと離していただけぬか?」
「――――流行りの店は嫌いですか?」
 俺の襟首を掴んだまま、中へ進んでいくクマ。ちなみにSTRはクマのが高い。
「止めろ!今すぐこの手を離しやがれ、このエロエロ怪人クマ男!」
「てれるなてれるな、○ピュタへの道は開けたのだ、来い!」
「何訳の分からないことをほざいてる!俺は一片たりとも照れてない!!」
「やかましいな、これは僅かだが心ばかりのお礼だ、とっておきたまえ」
 周囲の人間が何事かと此方を見るているが、気にしている余裕は無かった。
「俺はまだ嘘を楽しめる程大人じゃないんだ!離せぇぇぇぇー!!」
――――ガシャン、
 その音は不思議な事にこんな状況の中のあっても、俺の耳に一際大きく響いた。

「んぁ?」
 間抜けな声をあげるクマ。
 襟を引かれて空をを見上げる体勢だった俺は、この通りの誰よりも速く、その状況を認識出来た。
 建物・2階・壊れた窓・飛び出した影・落ちてくる・2人・女
――――まずい
 一瞬でクマの手首の関節を取り、ひねり上げ外し、彼女達の落下地点に向かってクマを投げ飛ばす。
間にあうか? 轟音が上がった。
 一瞬上がった土煙のその先――――
 体に纏う福音の鐘Angelusの光と、月光を反射してキラキラと輝くガラスの粉、そして彼女達は互い
を強く抱きしめて座りこんでいる。
 その風景はこの歓楽街にあっても、さながら教会の壁に掛かる一枚の絵のよう。(下でだらしなく伸
びるクマのせいで、それはぶち壊しだったけれど)
 息を吐く。
――――上手く、いった。
257未だ名無しsage :2003/06/18(水) 08:21 ID:zAqhLSxY
 空から落ちてきたのは2人の娘、聖職者アコライトの制服を身につけた少女達だった。
 恐る恐る、といった感じで少女(抱きしめている方)はゆっくりと顔を上げ、不思議そうに、きょろ
きょろと周りを見ている。2階から落ちて無傷な自分達、状況が分からないらしい。
 俺は静かに歩み寄り、その背に声を懸けた。
「馬鹿かお前――――」
 ビクリ、と体を震わせる、のろのろと首を回して此方を見る少女。
「…………あ」
「AngelusをかけてVIT上げれば落ちても平気だと思ったのか?愚かしい、無謀もいいところだ。人間
2人がそんな姿勢であの高さから落ちたら、普通はどちらかが骨折する」
「……ご、ごめんなさい」
「俺に謝ったって意味は無いだろう、もう一人は平気なのか」
 はっ、として慌ててもう一人を確かめようとする少女を、もう一人の手が押しとどめる。
「お姉ちゃん、私は大丈夫だから……」
 少女はゆっくり顔を上げる。きっ、と強気そうな光を目にたたえて俺を睨む。
「お姉ちゃんを――――いじめないで」
「……別にいじめてないが」
 そう言い放った少女と、不安そうに此方を見る姉と呼ばれた少女。
 全く同じ顔立ちをした2人。
――――双子か。
 よく見れば、整った顔立ちをしていた。何年かすれば待ち行く人が振り返る程にはなるだろう。いや、
今でも十分なくらいか、だからこんな場違いな所にいる?
「無事よ、連れ戻しなさい!」
 上から女の声が降った。
 見上げると、はすっぱそうな♀プリーストが割れた窓から頭を出して、信じられない、という顔をし
ていた。俺と目が合うとすぐに顔を引っ込る。
 少女達の降ってきた建物から感じる、慌ただしい気配。
「お姉ちゃん!」
「うん。大丈夫だから。お姉ちゃんがついてるからね」
 優しい声。足下のおぼつかない妹を支えて立ちあがり、俺に丁寧に頭を下げると、妹の手を取って俺
と反対方向に駆けだした。
 しかし、すぐに建物の入り口から現れた影に行く手を遮られる。
「――――こんな時間に鬼ごっこかい?」
 マスク越しでも分かるニヤニヤした笑みを浮かべた♂アサシン。
「ほら、早く逃げないと捕まえちまうぜ?」
「…………!」
 慌てて反転する二人。
「ばーか、本当に逃がすわけねぇだろ」
 アサシンはくるり、と後ろを向いて「ふははははー」どっかの誰かさんにそっくりな笑い声をあげな
がら、エビみたいに高速移動――キモイ――あっさり2人を追い抜いて前に回り込む。必死に反転して
逃げようとするが、今度はアサシンも逃がさない。後ろから2人を片手で羽交い締めにする。
「楽しんだろう?鬼ごっこはおしまーい」
258未だ名無しsage :2003/06/18(水) 08:23 ID:zAqhLSxY
「離して!」妹がの方がわめく
「そういえば離してもらえると思ってンの?おめでてぇな」
「…………どうしてですか」「ん?」
 姉がうつむきながら言葉を紡ぐ。
「約束が……違うじゃ、ないですか……。私達の……じゅ、純潔だけは保証するって…………」
「何だマジで信じてたの?おねぇちゃんの方は妹よりおめでてぇな、そんなもん最初からちょっと人気
が出てきたら、高く売るつもりだったよ」
「そんな……」
「悪い話じゃねえだろ。本番なしじゃ稼ぎがワリィと思った姉さんが、わざわざお前達のためを思って
客を用意してくれたんだぜ?」

――――くだらない茶番。
 目の前で繰り広げられる会話を聞いて思った。大方、この2人は騙され(あるいは上手い話しに乗せ
られて)連れてこらて、むりやり客の相手を、やらされそうになって、逃げ出したのだろう。どこにで
もありそうな話だ。

「嘘つき!」 妹が叫ぶ。
「ああ?」
「変態、最低!あんた達なんか盗虫より最ッ低な下水野郎よ、死んじゃえバカー!」
「おーおー、威勢がいい事で」
 ニヤニヤ笑っていたアサシンは、ふっ、と笑みを消し――――妹の頬を殴りつけた。
「あぅっ」
 小さな体が壁までふっとばされて、地面に倒れる。

――――それを哀れだと思わなくも無いが、自分の身に降りかかる災いは、自分の責任、関わりあう気
はない。そもそも、この場面で俺がしゃしゃり出ても解決にはならないだろう。

「やめてっ!!」
 アサシンは腕の中で暴れる姉を引きずり。壁まで歩いていく、ドスの利いた声で蕩々と語る。
「調子こいてんじゃねぇよ糞ガキが、お前らは商品なんだよ。いい加減てめぇの立場を自覚しとけ。そ
れとも何か、処女でさえいれば私は汚れてないとか思っちゃってんの?勘違いしちゃってるわけ?頭わ
りいな、てめぇらはもう十分すぎるくらい汚れて――――」

「不浄を祓う禊ぎの風 BowlingBash」

――――夜空に綺麗な放物線を描くアサシン。
 彼は体をくの字に曲げたまま、突然自分の身をおそった苦痛に顔を曲げ、空をグシャリと顔面から着
地し(落下といった方が正しいが)、ごろごろと地面を転がった後、動かなくなった。

「――――おや?」
 刀を振るった姿勢のまま硬直し、思わず呟く。
「…………」
視線を巡らすと、頬を押さえた妹も、突然自由が戻った姉も、目を見開いて此方を見ている。
「……ああ、なるほど」
 どうやらアサシンにBowling Bashを叩きこんだのは俺らしい。
 そう、理解は出来ても実感があまりなかった。なにしろ半ば無意識、手に残る感触と、転がるアサシ
ンが見える事で、かろうじて自分の行いを実感できた。
 ついでに言えば傍観していた通りの人間も、姉妹と似たような表情で此方を見ている。
――――そんな目で見るな。
 一番驚いてるのは、多分俺だから。
259未だ名無しsage :2003/06/18(水) 09:00 ID:zAqhLSxY
おはようございます。未だ名無しです。
これが3回目の更新になります。やっと女キャラが出せました。
例のごとく萌えは少ないですが、それは次回に期待してください。

予定では次回の更新で一区切りになります。

ところで少し真面目な話しを書こうとすると、文章の稚拙さが際だ
ちますね。まるで○かほりさ○るのよう、とか思ったのは君と僕だ
けの秘密です_| ̄|○


>>252
この話が一区切りしたら、ちょっと考えてみます。

>>253-254
ありがとうございます。BOT描写は自分の経験から書きおこしました。

>>255
目が、目があぁぁぁぁ!
全面的に同意。おっしゃる通りです……_| ̄|○

自分でも細かく区切るのはどうかと思いました。そもそも最初の
カキコする前にどうして、全部書き上げてから投稿しなかったのか
小一時間(略
自分に発破かける意味があったんだと思います。
『うざいと思われるだろうから、思われる前に書き上げよう』的な。

終わり方についてですが、あれは意図的なものです。
全部一片に更新出来ないのならせめて、読んでくださる方が次回
の更新を楽しみにしてくれそうな引き方にしたい、と考え、ああ
いった引き方にしていました。
なんにせよ、次回からは読んでくださる方にストレスが溜まらな
い程度書き上げてから書き込もうと思います。


このスレの皆様。
すこし変な主人公と、弱気な姉と強気な妹の金髪双子アコの話しに
今しばらくお付き合い下さい。
260未だ名無しsage :2003/06/18(水) 09:05 ID:zAqhLSxY
全部一片→全部一遍だよ……

双子についてはこういう事をして欲しいというリクエストがあれば
カキコお願いします。組み込めるモノは組み込もうと思いますので。
261名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/18(水) 16:25 ID:Os2NynP.
お、続編が更新されてる。
とても読みやすくて文才あるなぁと思いますよ。
ここの所あんまり他の文神様が少ないけれど、未完の状態の途切れupは
他の人が話を書き込みにくくなるから止めて欲しいかとは思いまする。
書いていってて感想がその度につくのは嬉しいでしょうが。
262未だ名無しsage :2003/06/19(木) 11:51 ID:fTVZnx2o
>>261
自分に文才があるかどうかは分かりませんが、ありがとうございます。
とぎれ状態でのupについては頭下げるしかないです……(´・ω・`)
次回の更新で終わりなんで今回だけは勘弁してください。

>>文神さま
自分のカキコがupのさまたげになっているようなら、ここで謝罪しときます_| ̄|○
ホント、頭下げてばっかだな自分……
263名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/19(木) 13:37 ID:mfMs6x5c
さて、一通り261さんの文章を読んでみましたが、キャラもキチンと立
っていてとても読みやすいと思いました。(^^;A確かに萌え要素は少な
さそうだなとは思いましたが。私としては性格の違う双子の姉と妹
とが登場したところですでに(*´Д`)ハァハァでしたが ヽ(´ー`)ノ。私が
おもうに、文神様の書き込みがあってこそ、このスレの意味がある
わけで、否定意見を書いて雰囲気を悪くしては元も子もありません。
れいせいになって「文神未だ名無し様」の作品を素直に楽しみましょう。
264名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/26(木) 00:21 ID:uq8OxvPU
ハァハァするもしないも、全てはオノレの想像力しだいだと俺は思うので、文の神様たち
の贈り物は、想像力をかきたてる時に使う触媒のような物と思っておりまする。
よって、賛否両論あろうかというお話一つとっても、自分の中に入れたときにアレ
ンジさえ出来れば自分で楽しめると思うのですな。

何が言いたいのかと申しますと、いい材料を用意してくれてありがとう!ということです。
存分にハァハァ・・・くまさんにハァハァしてきたいと思います。それでは。
265花のHBsage :2003/06/26(木) 15:00 ID:3wt.IXko
「ねえ……お兄さん、私と勝負しない?」

 突然、街中で一人の女ハンターに声をかけられた。

「……はぁ?」

 声をかけられた相手……暗殺者のスレイは、周囲が聞いても自分から考えても、かなり気が
抜けた返事を返した。

「だからぁ……私と勝負しない?って言ってるの」

 スレイは、相手を良く見た。

 日の光のようなオレンジがかった金色の長い髪で花のヘアバンドをつけた淡い紫色の瞳の女。
 たぶん、自分より何歳か年下で……まだ二十歳はこえていないだろう。
 鷹を連れてはいるが、その鷹が彼女にあまりなついていないのはすぐに見て取れた。
 装備も新しい物ばかりで、成り立ての新米ハンターであることは間違いない。

「……あんた……俺のレベルがわかってて、声かけてるのか?」

 白に近い銀色の長めの髪と、濃い灰色の瞳。
 頭装備は天使のヘアバンド。そして腰に輝くトリプルクリティカルジュル。
 そして、使い込まれた装備達……戦いを幾度もくぐり抜けてきた証。
 成り立ての新米ハンター如きが勝てる相手ではない。

「ん……もちろんよ? 私より遥かに強いでしょ?」
「自分とのレベル差……どれだけあるのかもか?」
「ええ、そうよ」

 スレイはその返事に呆れた。
 何を考えて勝負を挑んできているのか……
 少なくとも瞬殺……というか、すぐに気絶させられるのは目に見えているだろうに。

「ばかばかしい……俺はそこまで暇じゃないんだよ。勝ちがわかってる勝負なんてつまらない」
「ふーん……私に勝ったら……私を一日好きにしても良いって言う条件でも?」
「……なにぃっ?!」
「好きにしていいのよー? 話し相手にしてもいいし、狩の手伝いさせてもいいし、使い走り
にしてもいいし……もちろん……ベッドの相手をしろっていうのでもね」

 クスクス笑いながら、そのハンターは自分の大きめの胸を更に強調するように腕を組んだ。
 その胸に目が釘付けになりながら、スレイは思わず唾を飲み込んだ。
266花のHBsage :2003/06/26(木) 15:01 ID:3wt.IXko
「……え……どう言うこと……?」
「……だから、他に好きな人ができたんだって言ってるだろ」

 プロンテラの街の片隅で、アーチャーとプリーストが話をしている。

「……どうして……? どうしてなの……?」
「俺を彼女は必要としてくれたし……お前と違って、常にそばにいてくれたからな」

 白に近い銀色の長めの髪を鬱陶しそうにかきあげてから、プリーストはタバコに火をつけて、
紫煙を吐き出した。

「いやだよ……別れたくないよ……」

 日の光のようなオレンジがかった金色の長い髪で、淡い紫色の瞳のアーチャーは泣きながら
抱きついたが、それをプリーストは冷たく振り払ってサングラス越しに見た。

「俺には、お前はもう必要ないから」
「そ、そんなっ……?!」
「じゃあな」

 手をひらひらと振って、プリーストは背を向け振り返りもせずに歩いて行く。
 それを待ちかねたように、道の角からプリーストと同じ髪の色の長い髪のかわいらしい
アコライトがプリーストに駆け寄って行くのも見えた。

 そして、そのアコライトをプリーストが抱きしめて、キスをする姿も……

 アーチャーは、ただ泣き崩れるしかなかった。


「ねえ……イスフィ……ほんとに、ギルド抜けちゃうの? ……ハンターになったのに」

 仲が良かった女商人が心配そうに、ハンターを見上げた。

「ルル……。色々ありがとね」
「……イスフィがいなくなっちゃうと寂しいよう……」

 下を向いて、涙をこらえているスミレ色のショートカットのルルの頭を撫でて落ち着かせて、
イスフィは部屋の片付けの続きを始めた。

「ねえ……やっぱり、ギルド抜ける必要なんてないよっ ここにいてよ」
「ううん、だめだよ。ギルド人数いっぱいで……新しい人は、入れないの知ってるよね?」
「ん……」

 手伝いをするために本類をまとめて紐で縛りながら、ルルはイスフィの話に耳を傾ける。

「マスターの恋人のアコライトが新しく入るんだよ。だから、居残っちゃまずいの」

 走馬灯のように、ギルド内での出来事を思い出す。
 告白して受け入れてもらった時のこと。
 ギルド狩りで、迷子になった自分を必死に探しに来てくれたこと。

 初めてキスした時のこと

 ……幸せだったころのこと。

「っ!? そんな……そんなの、ギルマスの横暴じゃないっ」

 ――バンッ
 ルルは、驚いてまとめた本を床に落としてしまう。

「……私が提案したんだよ。別ギルドに恋人がいるよりは、同じギルドにいた方がいいよって」
「イスフィ……それでいいの……?」
「ん? ……うん。二人に幸せになって欲しいから……ね」

 ウソツキ

「だから、邪魔者になりそうな私はいなくなるの」

 オオウソツキ

「…それって……辛くないの……?」
「まー……いい加減、ふらふらしたい病も出てきたし、いい機会だから抜けるんよ」

 ギゼンシャ

「大丈夫。私は強いんだよー? これぐらいのことで凹んでなんていられないってば」

 別れ話の直後に……キスをしていたあの二人を思い出してしまい、イスフィは思わず頭を
振って、その姿をかき消した。
267花のHBsage :2003/06/26(木) 15:02 ID:3wt.IXko
「そっかぁ……んー……あたしも一緒にギルド抜けちゃおっかなあ……」
「あう……だめだよー。もうすぐ転職でしょう?」
「んー……あたし、ジョブ50までがんばることにしたんだ。だから、もしかしたらブラック
スミスにはならないかもしれない。アルケミストになるかも……ね」
「そっか……がんばってね」
「だから、転職した姿……イスフィに見てもらいたかったなー」
「じゃあ、転職するときには連絡頂戴♪ お祝い持ってどこにいても、駆けつけてあげる」
「あー、そっか……そうだよね。ギルド抜けたからって、会えなくなっちゃうわけじゃ
ないもんね」
「そうそう。深く考えすぎだって」
「ん♪ じゃあ、あたしちゃん、片付けのお手伝いがんばっちゃうぞーっ」

 ニコニコとかわいい微笑みを浮かべて、ルルは鼻歌混じりに散らばっているゴミや荷物を
手際よくまとめていく。

 その後姿を見ながらイスフィは少し良心が咎めた。
 たぶん、彼女が転職を迎えるときには自分はここにはいない。

 ごめんね……新世界に、自分は行くから。

 この世界を司る神が、新たな世界を創造することを神の御使いたちがふれまわっている。
 その世界にこの世界から希望する者を連れて行ってくれるのだと言う。

 それを知ったイスフィは……ただ漠然と街で過ごしていた生活を改めた。

 財産をわずかな身の回りの物と装備以外を全てをお金に変えて、ただひたすら……狂った
ようにモンスターを撃ち殺して、返り血を浴びながら赤ポーションをがぶ飲みして狩り続ける。

 そうして……アーチャーからハンターに転職した。
 しかし、転職したことはこうやって手伝いに来ているルルにしか知らせなかった。

「……よし……きれいになったー」

 ぴかぴかに磨き上げられた床と壁。
 イスフィが使っていた痕跡はほとんどなくなった。

 もちろん、片付けの際に出てきた使わなくなったり、いらなくなった物はルルに渡した。

「売れたら、連絡するね…?」
「んー……いいよ。あげるから、お小遣いの足しにして」
「え、いいの? ありがとー」

 ルルは素直に喜ぶ。

「あ……そうだ。これ渡そうと思ってたんだー」

 ごそごそと、肩からかけている鞄を漁って、どうやってその鞄の中に入っていたのか、
小一時間くらい問い詰めたい程大きな包みを取り出した。
 そして、更に部屋の端に置きっぱなしにしていたカートに歩み寄り、その中から細長い
包みも取り出した。

「ハンター転職おめでとー♪」
「え?!」
「ふふ……たいしたものじゃないけど、受け取ってー。店売り品最強くらいしか、揃え
られなかったけど」

 中には、ハンターボウと新品の装備一式。そして花のヘアバンドが入っていた。

「こんなに……貰えないよっ」
「んー? 何、あたしちゃんからのプレゼントは受け取れないってわけ?」
「あぅ……そう言うわけではー……」
「ハンターボウは、最後まで使う物だって聞いたから。あたしだと思ってそばに置いておいて」

 ルルはそう言って笑った。
268花のHBsage :2003/06/26(木) 15:02 ID:3wt.IXko
お相手募集スレで見かけたある募集が題材です。
エロスレと迷ったのですが、多分エロ薄いから
こちらへこそこそと・・・・また後で続きを。
___ __________________________________________________
|/
||・・)
269名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/26(木) 22:27 ID:..qXP.xU
またこの手の終わり方か…
後で続きが出てから読むことにするわ
てかさ、ここで完結させていないヤツはリレーじゃないのに完結させて
いないってわけなのか?
最初の頃のシャオアさんの話の時はみんなリレー小説で面白かったけれど
今の続きはまた後で形式ははっきり言ってウザい
270名無したん(*´Д`)ハァハァ :2003/06/26(木) 22:58 ID:zY/ujiYM
>>269
このかき方は、普通です。
普通に小説が書いてあるスレって見たことないわけ?
完結した小説ばかりがあるスレなんてそっちの方が見たことないよ。
にゅ缶の小説スレだってこういう連続小説だったんだよ。
それがわかんないなら、あんたはこなければいいでしよ。
こういうやつが一番むかつく。
271名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/26(木) 23:49 ID:vSIBPXAo
投稿する人側で、読み手が分かりやすいようにメール欄に題名をつけているものは
区別がしやすいので読みやすくていいと思います。
読みにくい読みやすいなんて、結局は自分で改良すれば済む問題ですからね。
コピー&ペーストでメモ帳に保存しておけば、後でまとめて読む時にも便利ですし、
管理もしやすいです。
それくらいのことくらい、誰だって出来るでしょう?
自分に出来ることを何一つしようとしないで、文句ばかり垂れてる前に、そういう
改善をすべきだと思います。

あと、自分の意見をいうのは大切なことだとは思いますけど、誰が読んでも不快感
を覚えないような工夫くらいはした方がいいと思います。
反応して悪口合戦になっていくのが一番性質が悪いので。
272名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/27(金) 00:06 ID:e31swYUo
また
       か
            い
    て
           話            面白
                     い


  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //

また書いて、話面白い!
つまり>>269は素直になれない小説スレ住人だったんだ!
273名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/27(金) 01:30 ID:Bi9Axe.2
>>268たん続きをお待ちしております。

>>269
>ここで完結させていないヤツはリレーじゃないのに完結させていないってわけなのか?
「ここ」と「ヤツ」が何を指してるのか分からないから答えようが無いんで、テキトーに答えると、
この「花のHB」は作者が後で続きを書くから今のところリレーじゃない。
あと、作者が続きを誰かが書く事には何も言ってないから、
自分で萌えストーリ作って終わらせても問題ない。
ヽ(´ー`)ノままーりヽ(´ー`)ノ
274名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/27(金) 02:36 ID:tMDhW78U
まぁ、確かにシャオアさんネタは皆が楽しんでたっぽいね〜
つーわけで、
続き書いてよシャオアさんネタの偉い人〜ヽ(´ー`)ノ

漏れ?漏れは萌えネタを書けない読者サイドの住人ですから…
書けるのがうらやましいよママン_| ̄|○|||
275フリートさんsage :2003/06/27(金) 08:20 ID:e31swYUo
 たまにある事ですが、今日はシャオアさんが非常に不機嫌なので、私ことフリートが(♀プリなりた
て)が代理を務めさせてもらいます。
 シャオアさんから対応マニュアルを渡されているので困った子羊さんも安心です。
 前回は彷徨く者の人が来て大変でした。ぶっちゃけ死ぬかと思いましたが、古城2の人間(?)関係
に悩んでいたので、親身になって相談に乗っていたら、満足して帰ってしまいました。誰かに愚痴を言
いたかったみたいです。
 今日は困ったさんでもいいですから、人間が来てほしいです。
 あ、お客さんが来ました。

「すいません、実は困っているんです……」
 その人はフードを目深に被り、大きなマントで体を隠していました。表情は見えません。
「はい、まずはあなたの犯した罪を告白して下さい」
「自分、よくピラミッドで戦ってるんですが、最近仲間とケンカしてしまって……」
「原因は何なんですか?」
「あそこって沸きが激しい上に、敵が連携してくるんで、それに対抗するにはこっちも連携組まないと
まずいと思ったんですよ……」
「ふむふむ、続けてください」
「それで仲間集めて連携の練習したんですけど、今までソロだった連中ばかりなので、なかなか上手く
いかなくて。それでつい、きつい言葉を……。売り言葉に買い言葉でお互いヒートアップしちゃって」
「なるほど……」
「悪いと思ってるんですよ。それで仲直りしたいと思ってるんですが、こういう事初めてで、どうした
ら分からなくて」
――――ああ、よかった珍しく普通の相談です。
 わたしはにっこり笑って答えました。
「簡単ですよ、思い切って『ごめん、きついこと言っちゃって』と謝ってみてください。それで仲直り
できますよ」
「本当ですか……?そんな簡単に」
「ええ、こういう時は早めにあやまったもん勝ちです。素直に自分の気持ちを伝えて下さい。案外、仲
間の方も『言い過ぎたかな』って思っているかもしれませんよ」
「そうでしょうか……?」
「はい、行動を起こすのは難しいことですが、頑張ってみてください。きっと上手くいきますよ」
「……何だかそう言われると、元気が出てきましたよ。分かりました!さっそくこれから謝りに行こう
と思います!」
「影ながら応援してます」
「ありがとう!」
 そう言って彼は懺悔室を出ていきました。
 よかった上手くいったようです。これで少しはわたしもシャオアさんに近づけたでしょうか?


 その日の夜――――ピラミッド2F
「あ、あのさ、この前ごめんな。きついこと言っちゃって」
「いや……ボクも悪かったよ。上手くいかなかったからついイライラしちゃって」
「うん、俺もだよ。ごめんな」
「……もう一度頑張ってみようか?」
「おう!じゃあ、みんな連れてきてくれ」
「なんか、今なら上手くいく気がするよ」
「俺もだ、やっぱり相談しにいってよかったな」
「ん?なんの話?」
「いや、実は――――」
276フリートさんsage :2003/06/27(金) 08:20 ID:e31swYUo
――――次の日。

 機嫌がなおったシャオアさんに懺悔室はお返しして、わたしは聖堂前をほうきで掃いていました。
 昨日はあの後も何事もなく終わって本当に良かったです。
 おや?向こうから誰か来ます、ずいぶんぼろぼろですね。最初は分からなかったのですが、その人は
よくシャオアさんのところにくる商人の方でした。
「…………シャオアさぁぁぁ〜〜ん、ひぃるぅぅ〜〜〜」
 ……呻いています。とりあえず今穴から落とされたら死んでしまいそうだったので呼び止めます。
「商人さん、回復したいんだったら牛乳でも飲んでください」
「嗚呼、このさい君でもいい〜。ひぃるるぅぅ〜〜」
 腹立たしいものを感じましたが、鬱陶しかったので取りあえずヒールをかけます。
 元気になると商人さんは(聞いてもいないのに)事情を話し始めました。
「いや〜、ピラミッドに臨公で行ってきたんだけど、危うく死にかけたよ」
「そうですか。背伸びしないで、適正狩り場でちまちま雑魚を相手にしてください」
「いや、いつもは大したことないんよ。でも今日に限ってなんか敵が強くて。あれはまるで敵が連携く
んでるみたいだったなー」
「…………連携?」
 何でしょう、妙に引っかかります。
「そうそう、こっちがソルスケ相手にして、後衛が魔法で一掃しようとするとアチャスケがマジ攻撃す
るし、アコたんがヒール砲打とうとすれば赤蝙蝠がタゲとるし、おかげで、みんなボロボロだよー」
「…………そうですか」
「あ、座っていたら全快した。シャ〜オアさ〜〜ん」
 懺悔室に走っていく商人さん。ガコン、程なく床が開く音と悲鳴が聞こえました。
「ピラミッドに連携……」
 思い出すのは昨日懺悔室にきた、フードの人。
「ぐ、偶然ですよね。あはははは。うん、きっとそうよ」
「あ、フリートさ〜ん」
 突然わたしを呼ぶ声が聞こえました、声の方向を見て――――!昨日のフードの人!?
 今日は一人でなくて、同じ格好をした人が隣にいました。
「こ、こんにちは」
「こんにちは!昨日はありがとうございます。おかげでこいつと仲直りできました」
「そ、そうですか、それはよかったですね」
「いやー、彷徨きの旦那が言っていた事は本当だったなー」
「……………………え?」
 ウロツキノダンナ?
「とぼけないでくださいよー。彷徨きの旦那の悩み、フリートさん親身になって聞いてあげたんでしょ
う?私達の間で噂になってますよー」
 すいません、私達の間ってどの間ですか?
「────時に質問ですが、お二方ご職業は?」
「あ、俺ソルジャーです」「ボクはアーチャーですよ」
「――――――――下にスケルトンってつきませんか?」
「やだなー当たり前じゃないですか。あ、俺達はそろそろ行きますから。買い物もすませましたんで」
 硬直するわたしに、追い打ちがかかる。
「今度は他の仲間が、相談に来ると思うんで、その時はよろしくお願いします。ではー ノシ」


 たっぷり5分は硬直したと思います――――

「い、いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!?」

 昼下がりのプロンテラにわたしの悲鳴が響き渡りました。
277未だ名無しsage :2003/06/27(金) 08:28 ID:e31swYUo
おはようございます、未だ名無しです。
騎士と双子の話が書き終わらないのでお茶を濁してみました
モウスコシマッテネ_| ̄|○

>>82さん
フリートさんがいい味出していたんお借しました。
おいおい、おめでてーな事後承諾かよ、という場合は削除します
278名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/27(金) 15:27 ID:.vxOcwJ.
>>275-276
Good job!モンスターに好かれるフリートさんハァハァ
ところでこれ続きもの?
279未だ名無しsage :2003/06/27(金) 19:09 ID:89xkdk1E
>>278
(これはつづきものと)ちゃうねん。続きは誰か書いて下さい。
個人的にはムナックやイシスたんが出てくる萌えな展開を希望
280名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/27(金) 23:30 ID:SpH3Sl/M
フリートさんイイ!!!!
そうか。だから最近ピラ2に滞在できる時間がどんどん短縮されていたのか・・・w
281イレギュラー1sage :2003/06/28(土) 04:14 ID:o.y7oOSk
「うぅ……」
わかってた事でした。単独(ソロ)で砂漠越えが愚かな事だなんて。
でも、私は戦士。16歳の女で成り立てでも、運動神経無くとも立派な戦士です。
―――ちょっと自分で言ってて凹みましたが、事実なので耐えます。
女ながらにプロンテラ騎士団に憧れ、周囲の反対を押し切って戦士になりました。
友人や親に、やれ「向いてない」「やめれ」だのボロボロに言われましたが……。

私は戦士になってから以前よりも鍛えて、ずっと強くなったと思ってました。
そんな時、良く通う鍛冶屋さんにモロクまで手紙を届けてくれと頼まれたのです。
皆に私の成長した力を見せ付けてやろうと、私は単独で家を飛び出しました。

のですが……

暑い……熱い……喉が……
出掛けの朝市で買った人参は萎びてしまい、口が渇いて噛む事すら出来ません。
こんな事なら、ちょっと贅沢しても赤いポーションを購入するべきでした。

私の動きが緩慢になったのに気づいたのか、頭上でコンドル達が輪を描きます。
歩けど歩けど変わらぬ周囲の砂丘が、ぐにゃりと歪んで見えてきました。
それは決してギラギラと照る太陽による陽炎のせいだけでは無いのでしょう。

支えにしていた鞘入りのカタナが砂漠の砂に縺れ、私はとうとう倒れました。
唐突で、理不尽で、あまりにも情けない最後。
それが私の頭の中で、ハッキリと理解できてしまいます。
普通なら涙の一つも零れる所ですが、そんな水分も残ってないみたい。
もう……いし、き…が………

「君!……事を……だ!」

この声は……夢…………?

「ッ……!仕方ない、ワープ――――」

あ……身体、浮いて……私、天に召されるの……?
282イレギュラー2sage :2003/06/28(土) 04:53 ID:o.y7oOSk
「ハッ!!」
ふわもこな柔らかい毛のベッドの上で、私は目を覚ましました。
周囲を見渡せば、様々な小物でごった返した生活感のあるお部屋。
それに何やら良い匂い……
「ん……目、覚めたみたいだね」
匂いのする方向から、スープ椀を持った男の子が入ってきました。
「あ、あなたは?」
「僕?僕は……ライファス=アジー。ライでいいよ」
ライさんは気さくで、私より少し年下位……でしょうか。
頭に乗せただけの小さな伊達メガネとロザリオが印象的です。
「あ、私はアステアです。アステア=サンダース」
「ん」
頷くライさんは、何だか見かけよりずっと落ち着いてます。
ひょっとしたら若作りな方なのでしょうか。
「あなた……ライさんが私を助けてくれたんでしょうか?」
「ん〜……正確には、僕の一部……かな」
……正直よくわかりません(・ω・`)と、
クゥゥ
「ひゃ」
「…ク、あはは。ごめん、お腹空いてたよね。ハイどうぞ」
ム〜、レディのお腹の音を聞いて笑うなんて失礼です。
でも、良い匂いのスープです…食欲をそそります。パク
「お、お、美味しいです>w<」
「嬉しいよ。カニニッパで出汁を取ってみたんだけど」
「カニニッパで?」
「うん。遠くはイズルードの特製海鮮スタミナスープ。
 三日間も寝てたお嬢さんの空腹もこれでバッチリさw」
冗談交じりに話すライさんは、ちょっと得意げで笑顔が可愛いです。
……って
「三日間?遠くは?こ、ここは何処なんです」
「何処って、ゲフェン」

「―――ゲフェン?」
「モロクが良かったかな?」
「そ、そうなんです!私手紙届けないと……!」
私は柔らかい毛のベッドから這い出し、立ち上がろうと
「わ!」
「え?」
ライさんが急に小さな悲鳴を上げて、自分の顔を手で覆いました。
私はそれが気になってライさんの顔を覗き込むのですが……。
よ〜く見ると、指の股の間で私を見ています。頬は紅潮してますね。
彼の目線は、確かに私を見てます。私、何処もおかしくな……ぃ……

なんというか、その、Tシャツ一枚でした。
283イレギュラー3sage :2003/06/28(土) 05:31 ID:o.y7oOSk
「ホントにごめんなさい……(T_T」
肩を落としてしょぼんとするライさん……というか、ライ君=B
あの、そんなに必死で謝られると、ホント可愛かったり……
「ううん、私がバカなだけですよ(^^;」
あ〜、ちょっと心が良くない方向に飛びそうです。

「それにしてもアステアさん、ソグラト砂漠を単独でなんて無茶にも程があります。
 熟練した冒険者でも躊躇して然るべき難所が、結構あるって聞きますし」
今度は私がしょんぼりとする番です。
その間にもライ君は、手馴れた手際で燻製の肉を切ってくれました。
「これは……?」
「サベージベベです。成長しちゃうと肉が硬くなっちゃいますから。
 で、コボルド平原で取れた青ハとマステラの果実のソース。
 後は……スタミナ回復用にアロエベラとローヤルゼリーを少々、かな」
超テキパキです。
正直、驚きました。料理も巧いですが、冒険の場数もハンパでないみたいです。
コボルドなんて、中央通の学術館の文献でしか見た事ありません(>_<;
「お肉……柔らかくて熱い」
「火スチレですから。食べる時期はこうした道具で合わせます」

ご馳走様でしたー <♪

「えと……日焼けや血行とかが回復するまでは、泊まってゆきます?」
「ふえ?」
お、思わず丸々聞き返してしまいました。
「だ、だから…その……もう少しゆっくりしてゆきませんか?」

心無しかライさんの頬は先ほど私の裸を見てた時みたく赤いです。
と言うか真っ赤です。三倍です。エルダーウィローもここまで行かない。
なんというか、今のライさんの心境は私でも何となくわかります。
胸の前で手をモジモジしてるライさんは、とてもいじらしく感じました。
ひょっとしたら、それは私の思い上がりかも知れませんが(^^;

「では……もう少しだけお邪魔しても良いでしょうか?」
「あ…!は、はいっ!!」

ともあれ、私とライさんの生活はこうして始まったのでした。
284イレギュラーsage :2003/06/28(土) 05:46 ID:o.y7oOSk
♂萌えスレ向きだっただろうか、と思わずにはおれん。
めっさデムパですが勘弁してください、とりあえずここまでで。
レスついて調子乗ったら続いてしまうかも知れません。
つか、全然♀戦士のナイスなトコ書いて無いしでハンパ気分。

さて、神の作品と自分の駄作を見比べてたら朝日が('A`)ノ
285名無しさん(*´Д`)ハァハァage :2003/06/28(土) 20:02 ID:ogpcV4Xg
>>284
文神さんいらっしゃい。かににっぱスープ美味しそうw
カキコはこっちでいいと思いますよ。気になるなら♂萌えスレの方からリンクはったらどうでしょうか?

スレ活性化&期待age
286イレギュラー4sage :2003/06/29(日) 02:43 ID:T3EZMJH.
例えば。

もしもこの暮らしが、この世界が、この自分が。
全ての出来事が釈迦の手のひらの上≠ナの出来事だったら。
……私なら。こんなにも楽しく、平和で、
夢現の様な生活をさせて頂いている事に、最大限の感謝をしなければ。

――――それまでは、そんな風に思ってたのです。

「アステアさん、それじゃあ仕込みの間に」
「はい♪ 釜にくべる木屑と……人参、イモ、ベベ肉を適量ですねっ」
あれから数日、私こと♀戦士アステアは職業不詳のライさんと一緒に暮らしてます。
今はお昼前だと言うことで、庭先でライさんに御使いを頼まれたトコなのです。

身体も随分調子良くなったと言う事で、リハビリついででもあったり。
御使いがリハビリ?と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、
木屑って結構かさばるし、数が多いとそこ等の武器なんかよりも重いんですよ。

「ん〜、惜しいd>w< 隠し味のハチミツと香辛料の赤ハーブもね」
「たははー すいません……」
これはチェックミスです。頭によぉく情報を叩き込んでおきます。ハチミツ……っと。
人差し指を立ててニコっと笑い、ライさんはオタマを持った手を振って送ってくれるのでした。
「いってきま〜す!」

 〜ゲフェン中央通〜
大通りに出ると爽やかな風と燦燦とした太陽が私を迎えてくれました。

ミッドガッツの代表的な大自然であるミョルニル山脈からの清流は、
ゲフェン北東部の山上湖を経て、この町を囲う下流へとなるそうです。
王都プロンテラには水質悪化があったり、大規模な下水設備が出来たり、
近年旧下水にモンスターが蔓延ったりと上層部を悩ます問題があったりします。
……見た感じ、水も綺麗でゲフェンにはその様な問題はなさそうですね…。
田舎だと言ってしまえばそれまでですが、なんとも、羨ましい事だと思いました。
287イレギュラー5sage :2003/06/29(日) 03:58 ID:T3EZMJH.
「ゲフェンダンジョン4階って、何時開放されるんだろうなぁ?」
「つーかマジ忘れられてんじゃね?」
「カード0……透明な布……ついに……5000ッッ!」
「売れよや」
「竜平原でもビーオーティー感染者が見つかったらしいわ」
『我々ラグナトライブは珍走族絶滅運動を実施中でございます!!』
「あらあら、足元がお留守ですよ(ワープポータル)」

古くからマジシャンの力発祥の地として有名な都市ゲフェンでは、
魔術師同盟による独自の政治により今も平穏が続いていると聞いていました。
権力の象徴である中央塔を囲んで、活気のあるバザーが私の目を惹きます。

「プロンテラとはまた違った雰囲気ですね」
私みたいなまだ子供で下っ端で弱くて成り立て戦士でも、
首都の中央通りの欲≠フ圧力くらいは感じた事があります。
一目には活気のある足の踏み場すら無い大盛況と言った感覚を覚えますが、
その実看板だけ立て掛けて石畳に雑魚寝している方も少なくは無く、
良い物を安く買って高く自らが売りつけるといった方も居たりするのも事実です。

このゲフェンの露天商の方々からは、欲≠謔閧熈実≠感じました。
力ある冒険者達が一度は夢見る秘境、グラストヘイムが近いためか、
ここで休息を取ったり談話をしている方々は強そうな方が多いみたいです。

「おっし嬢ちゃん、これ位で良いかい?しっかし若いのに関心だね〜」
「いえいえ、作るのは私じゃないですから。まだ未熟で、見てるだけなんです」
商人さんにカゴに生物を詰めてもらいながら、軽く世間話をしてみます。
「御袋の味に敵う味なんて、子供でも生まなきゃ出せないもんさ!」
「あ、いえ……母では無く――――」
ここで私は言葉に詰まりました。
今のライさんの関係を、なんと言葉にしたら良いかわからなかったからです。
たははと軽く苦笑してそれ以上の追求を逃れようとしましたが
「ふむ!だとしたら嬢ちゃんは新婚さんか!?幼な妻か!?いいねェいいねェ」
快活そうに肩を震わせて笑う商人さん。
私はと言えばその言葉に逆に肩をすくませて、
顔を真っ赤にしてその場から離れる事しか出来ませんでした……。
重い荷物を両手で持って、帰路を行きます。なんというか、頬が、熱いです。
何故だか、早くライさんに会いたくなりました。
288名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/29(日) 18:46 ID:30JBCNcU
馬鹿だなあ、シズマは
 それは、いつもの兄の言葉だった。
しかたないよ、僕は兄ちゃんみたいに賢くもないし強くもないし…
 そして、いつも通りに、俺はそう答える。
そんなことないさ。お前はきっと強くなる。騎士になりたいんだろう?
 優しく微笑みかける笑顔と、俺の頭におかける、大きい手。
 それが、俺はとても好きだった。
でも、確かに兄ちゃんみたいな騎士になりたいけど…無理だよ僕じゃ
 そういう俺に、兄は困ったように笑う。
馬鹿だなあ。駄目だと思ってちゃ、なれるものもなれないぞ?
うん…
――よし。こうしよう。お前ががんばれるように

シズマ。お前が、騎士になれたら。お祝いに、この武器をやるよ
 それは、兄の愛用の巨大な剣。
 クレイモアよりも大きく、強く、鋭く。
 あらゆる局面で汎用性の高く、そして稀少な名剣だった。
そんな! いいよ、だってそれ――
 そう。それは兄にとって、命の次に――いや、おそらくは命より大切なもの。
 よく話してくれていた。
 伝説の魔剣を探す旅の中で手に入れた、友との絆だと。
そう。だからこそ、お前が本当に強くなったら。その時こそ、お前にやるんだ
 兄は、優しく笑う。
約束だ。男と男の。いいかい、お前は強くなる。僕の弟だからな
――うん、うん
 きっと。
 その時、俺は泣いていたのだろう。
馬鹿だなあ、シズマは。男が泣くんじゃない
 そうやって、兄はいつものように、大きな手で優しく俺を撫でてくれる。
 いつか。
 俺は、この人のように。優しく、強く、立派な騎士になりたいと。
 そう思った。


 ――後に。
 約束は、果たされないこととなる。

 兄の、死によって。


「…まっ」
 まどろみの中、俺は懐かしい夢を見ていた。
「…さまっ」
 はるか追憶の彼方の、果たされることのなかった約束。
「…ろ〜っ」
 あれから何年になるだろうか。何故今更…
「起きろって言ってるのよご主人様ぁあ〜〜っ!!」
「ごぶろぉあっ!?」
 どごすっ!! と、みぞおちににぶい、いやすごい衝撃。
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!!」
 俺は、悶絶して転げまわる。そりゃそーだ、寝ている時にみぞおちに強烈な一撃。
 確かに目覚めの効果は抜群だ。眠気を吹っ飛ばしてあの世に行くかと思ったほどに、痛い。
「お、お前…あにすんだいきなりっ!!」
「起きないのが悪い。もう朝、つまり朝ごはんの時間」
 目の前に立つ少女は、指をびっ! と立てて、形のいい眉を怒りの形によせつつ、
「というわけで、えさよこせ」
 と、言い放つ。
 ――これがほんとに死体かと、毎度ながら疑いたくなる。
 まあ、ようするに。ムナックである。一般にはペットモンスターと呼ばれる、モンスターのくせに人間に懐き行動を共にする、変り種というやつだ。
「えさ。あたしお腹すいてるのよ、早く」
「……」
 しかし。この態度見てると、本当に俺が「ご主人様」なのか疑わしくなってくるのだが。
「・・・ったく。ほら、ペットフードでいいよな?」
「えー。熊の足の裏が食べたーい」
 …前言撤回。疑わしいどころか、こいつぁ絶対俺をご主人様と思ってないに100z賭けてもいい。
「…ニンジンで我慢しとけ」
 えー、と文句ぶーたれるムナックを尻目に、俺は痛むみぞおちを押さえつつ支度をする。
 まだ朝が白み始めたばかりの早朝なので、時間はたっぷりあるが。
 そう、今日は大切な日だ。俺が、ようやく騎士になれる日。
「――だってのに。いや、だからかな」
 あんな夢を見たのは。
「なーにがでつか?」
 俺の思考を遮り、小さな鳥が頭に乗っかる。
「ぼきにもえさくれでつ。ムナたんばかりえさやるのは不公平臨時でつよ」
「またわけわからんことを…」
 このちいさな鳥、ピッキもまあ、俺のペットモンスター、だろう。
 だろうというのは…まあこいつもまた、俺をご主人様なんて微塵も思ってないということで。
 むしろ戦闘中にいろいろと口出ししたり、あげく「もうぼきの教えることはないね!!」と言い出す始末。
 俺を弟子扱いしてる、困った鳥だ。まあ、それで別段こちらに不利があるわけでもないから放置しているが。
「でも、うかない顔してるね。やっと騎士になれるんだから、もっとしっかりしないと師匠のぼきがハジをかくでつよ」
「それはすみませんね師匠。でも、まだ慣れると決まったわけじゃない。資格を得ただけだ」
「まあ、それでも三角よりはマシでつよ」
 わけわからん。
「そーそー、お師匠様の言うとおりよー。というわけで、あとでパーっと美味しいものでも…」
「ムナたんたちの胃袋は全員そろって宇宙でちか…」
「あー。ひどいアルよお師匠様。これでもあたしはムナックの中では小食のほうなんだから」
 ふたりがわけわからん言い合いをする。
 まあ、これも俺を元気付けようとする、こいつらなりの激励なんだろう。たぶん。
「そうだな。騎士になれたら、知り合いとかも誘ってみんなでパーっとやるか」
「さっすがぼきの弟子、話せるでつ!」
「ご主人様、凛々しい…」
「おまいら現金すぎ…」
 俺は苦笑しつつ、装備を整える。
 やっと。やっと、兄さんとの約束を果たすことが出来る。
 もはや一方通行の約束だけど。
 それでも俺は。
 その遠い日の約束を果たすためだけに、今まで生きてきたんだから。


「ゲフェン?」
「そう。そこの地下ダンジョンに潜り、そこに現れる悪魔を退治すること。それが君達の、騎士になるための条件だ」
 騎士団に到着した俺を待っていたのは、悪魔退治の指令だった。
 それをクリアすれば、晴れて騎士叙勲を受けることが出来るという。
 騎士志望の7名の剣士と、大聖堂から派遣されてきた援護のためのアコライト3名。
 それが、ゲフェン悪魔討伐隊の面々だった。

「なんかヘンじゃないでつか?」
 俺のバンダナに身を滑らせている「師匠」が、声をかけてきた。
「何が?」
「このPTでち。転職のクエストって、普通は個人でやるもんでつ。なのにPT組んで討伐隊なんて…」
「二次職だからだろ?」
「それにしても…」
「ま、考えたって始まらないだろ。やるだけのことはやらないと」
「そりゃそうでつが…なんかよくない予感がするでつ。気をつけるでつよ」
「ああ。わかってる」
 そう話してるうちに、アコライトのひとりがワープポータルを開き、ゲフェンへの道が開かれた。

続く
289名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/06/30(月) 08:59 ID:ZGCcgj8.
>>288
この先どうなるのか楽しみにしてまつよ〜(*´Д`)ムナタンカワイイネ
個人的にはDQ4の様な展開を勝手に妄想してみたり。
290名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/01(火) 08:31 ID:A5oz4OFg
「バッシュ!!」
 渾身の一撃が悪魔…じゃなく。アルゴスを吹き飛ばす。
 ゲフェンダンジョン。しかしそこには、俺たちが騎士になるために必要な、
 悪魔≠ヘいなかった。
 いや、厳密にはいるのだろうが…少なくとも、俺はいまだご対面してはいなかった。
「いないねー、ご主人様。その悪魔…」
「いねぇな…出るのは虫にお化けに毒キノコだけかよ…」
 ニンジン(ちなみに俺のぶん)をぽりぽりと食いながら、俺の後ろでムナックが言う。
 うん、なんか無性に腹が立ってくるのは、目的の獲物が出ないのが理由だけではないはずだ。
「で、ご主人様ー。その悪魔って、どんなの? ばふぉ?」
 ンなもん、一流のパーティーが総出でかからんと倒せんわい。剣士が勝てる相手か…。
「こいつだとさ。このカボチャ頭」
 俺は、引率の試験官から配られた紙を広げて見せた。
 そこに描かれているモンスターは、かぼちゃの頭にタキシードという姿の、ジャックという悪魔だ。
「あら、美味しそう♪」
 ……。
 とりあえず。このタワゴトは聞き流しておくことにする。
「で、ご主人様。このかぼちゃを倒せばいいの?」
「ああ。そして証拠として、こいつの首を持ち帰る。持ち帰った奴が、無事騎士になれる、んだとさ」
「ふーん…」
 しかし。それにしても、出ない。
 それでもすでに騎士志願者の数名は、ジャックを倒してかぼちゃの頭を手に入れている。まあ、大抵はみんなで集団リンチして、出た首をそのうちのひとりが手にする、という方法を取っているのだが。
 いかんせん、数が少ないのだ。
 需要と供給のバランスがどうのこうのとは、こういうことを言うのだろう。
 このままみんなで仲良く、なんてことをしていたら、いつまでたっても目的を達成できないかもしれない。
「こうなったら…」
 そう。
 集団で倒すから、分け前が減るのであって。
 一対一で倒せば、どこからも文句なく、自分の分は手に入れられるのだ。
「やるか…」
 そう、考えてみれば至極単純な話ではある。
 今まで何匹かと戦ったが、今の俺だと決して倒せない相手ではないと思う。
 そう考えて、俺は討伐隊の陣地から離れた。


「ちょっと、何をしてるんですか! 固まって行動するのが基本でしょう!」
 俺が隊から離れたのを目ざとく見つけたのは、支援用に随伴してきたアコライトのひとりだった。
「何をって…」
 まずいのに見つかった、と俺は思う。
「あー、なんだ、その。いまいち沸きが少ないから、ちょっと見て回ろうかな、と」
「その必要はありません。拠点から離れずに、近くにきたモンスターを各個撃破、それが作戦でしょう」
「あのな、世の中そう作戦通りに進んだら苦労ないって。臨機応変も立派な戦術だろ?」
「だめです。いいですか、そもそも・・・」
 いかん。長くなりそうだ…。失敗か。
 俺がそう思っていたとき、
「話し長いアル。いこ、ご主人様」
 ムナックが、俺の手を掴んでずんずんと俺を引っ張っていく。
「あ、ちょっと! まだ話は…!」
「あたし、嫌いアル」
 慌てて追いかけるアコライトを、ムナックは手で制して、きっぱりと言い放った。
「わるいけど、聖職者、大嫌いなの。だから、聞く耳も話す口も持ち合わせていないから。さ、いこ」
「・・・」
 さすがにこれには、ふたりとも呆然。なんというか強引というか。
 そしてそのまま、ムナックの怪力でずるずると引きずられていく俺。
 うーむ、なんというか。ひょっとしてかっこわるいというかまぬけというか、そんな格好なのではないだろうか。今の俺。
 そうやって引きずられていく俺を、数テンポ遅れて我に返ったアコライトが、怒りながら追っかけてきた。
 ――訂正。ひょっとしてもなにも、確実に今の状況は間抜け以外の何者でもないだろう。


 ずんずん。
 びょんびょん。
 とことこ。
 三者三様の足音が、不協和音を奏でまくる。
 結局。
 本隊には、偵察の役をするとアコライトが通達し、認可されることとなった。
 まあ、それでも襲い掛かる火の粉は払わねばならないから、少なくともジャック一匹なら先に倒せるだろう。
 そうなれば、抜け駆けしてかぼちゃの頭を手に入れるという目的も達せられるわけだが…。
「……」
「……」
 雰囲気が重かったりするのは何故だろうか。
(雰囲気が重かったりするのはなんででちょうね…)
 あたまの上の師匠も、同意見らしい。流石は自称俺の師匠といったところか。
「ご主人様。右にいこ」
「剣士様、この場合は左ですよね」
「偽善者がなにか言ってるけど気にする必要ないアル」
「不浄な不死者の戯言に耳を貸さないでくださいね」
「あんですって…」
「なんですか…」
 ……。
 どうやら気のせいではないっぽい。
 まあ、確かにアコライトとムナックが一緒にいるなんていうのは、相性最悪なんだろうが…。
 なんか胃が痛い。
「し、しかしなかなか敵がでないなあ、どっかで誰かが溜め込みでもしてんじゃないかな?」
 とりあえず雰囲気に耐えられないので、なにか話題を振ってみた。
「そうアルね。きっと聖職者とかがノーマナー行為でも繰り返してるに違いないよね」
「さすがアンデッドですね、脳が腐ってるだけあって思考がとても短絡的でうらやましいですよ」
「ふっふっふ」
「あっはっは」
 ――はい、状況悪化。
(ぼきにはこの雰囲気耐えられそうにないでつ…卵に戻っていいでつか?)
(逃げるな師匠。あとで赤ハブどころか白ハブやるから…)
 ちょっとくじけそうだったりする。
 本当に、せめて毒キノコでも蝙蝠でもいいから出てくれれば、まだ……。
 ……?
 そういえば…。
「変だな、いくら何でも…」
「なにがアルか?」
「静かすぎる。ジャックどころか、蝙蝠すらいねぇ…」
「確かにそうですね。本隊と連絡をとってみ……」
 その時、視界の隅で影が動いた。
「あぶないっ!」
 白い影。ウィスパーだ。
 ざん、と水カタナで斬りつける。
「バッシュ!」
 返す一撃で、ウィスパーは布を残して消える。だが、それだけでは終わらなかった。
「きたでつよ!!」
 頭の上で師匠が叫ぶ。
 その声の示す通り、モンスターたちが襲ってくる。
 眼で数を確認する。蝙蝠3匹、ウィスパー1匹、アルゴス一匹、そしてジャック一匹。
 なるほど。さすがにちとヤバイ数ではある。
「支援頼む!」
 俺はそう叫び、敵陣へと突っ込む。
 この場合、囲まれるよりも先に一体ずつ撃破していくのが最も効果的だ。
 特に俺の場合、速さを活かして戦うタイプだ。囲まれてしまってはその速さを活かせない。
「速度増加!」
 支援の魔法がかかり、足も一段と速くなる。風のよう身体が軽い。
 その脚で一気に地を駆け迂回し、回り込む。
 ざんざんざん、と蝙蝠を三匹斬り落とす。
「ブレッシング!!」
 支援魔法が飛ぶ。
 身体に力がみなぎるのが感じられた。
 ――いける!
 本隊に援護を頼む必要なんてない。
 この程度、俺なら。今の俺なら。
 簡単に、殲滅させることが出来る。
 アルゴスの腹にカタナを突き刺し、そのまま一気に切り裂く。
 飛び散る体液が、ウィスパーの布を濡らす。
 下から逆袈裟懸けに、カタナを浴びせ、上で刃を返し、叩き斬る。
 それでウィスパーも霧散した。
 残るは、本命の悪魔、ジャック。
 だが、今の俺の敵じゃない。
 殴りかかるステッキをさばき、切り裂き、そして、
「バッシュ!!」
 首を落とした。
291名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/01(火) 08:31 ID:A5oz4OFg
「ふう…モンハウになってるかと思いきや、そこまででもなかったな…」
「さすが、ご主人様つよい」
「お疲れ様です」
 ふたりが、声をかける。ジャックの首を拾いながら、手をあげて応える。
「さて、しかし本隊にそろそろ戻らないとさすがに…」
「? あそこに人が…」
 その方向を見ると、確かに人影がいた。
 剣を持っているのを見ると、冒険者だろう。顔にはオペラ仮面を被っている。
 その人影は、俺たちの方へと歩いてきて…。
 刹那。
 人影が消えた。否、跳躍んだ。
「な――!」
 直後。重い衝撃。
 支援魔法効果により、身体能力の向上がなければ、反応できずに頭蓋を叩き割られていたかもしれない。
 なんとか剣で受け止めたものの、それほどに速く、重い一撃だった。
「ぐ…っ!」
 その男は、無言で二度、三度と剣戟を繰り出してくる。
 その全てが強力な一撃だった。俺のバッシュ同等、いやそれ以上の一撃。
「な、なんだこいつはっ!!」
 防ぐのが精一杯だ。
 そして、攻撃を受け続けるうちに、妙な感覚を俺は覚えた。
 知っている。
 どこかで、俺はこいつを知っている――と。
「ぐっ!」
 だが、そうこうしているうちに、俺はいとも簡単においつめられた。
 男の剣が大きく振りあがる。だがその時、
「ホーリーライト!」
 魔法が飛び、男を射貫いた。
「――!」
 だが。大したダメージは与えられていない。男はゆっくりと、アコライトの方へと振り向く。
「バカヤロウ! 逃げろっ!」
 俺は叫んだ。
「でも!」
「いいから逃げろっ! お前まで死ぬ気かっ!!」
 そう、こいつは――強い。強すぎる。このままでは全滅するのがおちだ。
 剣士程度では、何人たばになっても――勝てっこない。
「ご主人様っ!」
「ムナック、そのアコライトをつれて逃げろっ! 速く!!」
 叫びながら、俺は男に切りかかる。
 だが、いとも簡単に受け止められる。
「速くしろぉおおっ!!」
 嘲笑するかのように、俺の剣を軽くあしらう。
 くそ。クソ、糞!
 なんだってこんな…。
 俺が先行したからか。
 手柄を焦ったからか。
 規則を破ったからか。
 だから――あいつらを危険にさらしたのか。
 くそ、くそ・・・
「くそおおおおおおっ!!」
 がむしゃらに剣を振るう。だが、その全てが。まるで子供を相手にするかのようにあしらわれる。
「――っ、わ…ワープポータルっ!」
 アコライトが、魔法を唱えた。
 それでいい。あとは、こいつが追わないように、ギリギリまで引きつける。
「バアアアアッシュ!!」
 渾身の一撃。
 その一撃は、俺自身が想像していたよりも強く。
 男の仮面を、叩き割った。


 ――そこには。
 信じられない、いや、信じたくないものがあった。


「兄…さん…?」

 忘れられるはずもない。
 砕け散った仮面の欠片が飛び散る、緩慢なスローモーションの景色の中、
 その男の顔は、
 紛れもなく。
 兄さんの顔だった。

 ああ、そうか。あの不思議な既知感。
 なんのことはない、単純な答え。
 兄さんの剣なら。知っていて当然だ。
 そして――勝てないのも当然。俺の剣は、兄さんに習ったものだから。
 剣が煌く。
 間違いない。その剣は――巨大な両手剣は、確かに兄さんの愛用の剣だ。
 冷たく輝く刃が、ふたりの顔を映し出した。


 ――ざん。


 肉の裂け、血の噴き出る音が。
 やけに遠く聞こえた。
「なん…で」
 その声は、果たして俺の口から出たものだったのか。
 左肩から右脇腹へと大きく切り裂かれた俺の身体は、壊れた人形のように、
 崖から、落ちた。

「剣士さまっ!」
「ご主人様あああああああっ!!」

 ふたりの声が、やけに遠く聞こえた。
 最後に見たのは、ポータルの光の中に消えていくアコライトと、
 崖から身を投げ出したムナックの姿、
 そして、冷たい瞳で俺を見下ろす、兄さんの姿だった。


続く
292花のHBsage :2003/07/01(火) 19:35 ID:.yyzTgZs
「……で……勝負してくれるの? してくれないの?」

 その声で、スレイは現実に引き戻された。

「それとも……女に興味ないのかな? それじゃ、仕方ないよねえ。そう言うアサシンとか
プリーストって最近多いしー」

 イスフィは、嘲りにも取れる笑みを浮かべてから、軽くため息をついた。

「……じゃ、別の人に声かけることにするわ。さよなら」
「待った!」

 軽く手を振って歩き出そうとしたイスフィの左腕をつかんで、スレイは強引に立ち止まらせた。

「ん……? 何? 放してよ。勝負してくれないなら、あなたに用はない」
「あんた……何考えてそんなことしてるんだ?! 同程度の相手ならともかく……格上の相
手を選ぶなんて、まるで自分を犯してくださいって言ってるようなものじゃないか」

 イスフィは下を向いたまま、その言葉に震える。

「俺が相手で良かったな……バカな考えはしないことだ。そんなに誰かに抱かれたかったら、
普通にナンパするか、適当に娼婦にでもなればいいだろ」

 パシンッ!
 小気味良い音と共に、スレイの顔にイスフィの平手打ちが決まった。

「そう言うつもりでやってるわけじゃないっ……あなたに何がわかるって言うのよっ」

 避けようと思えば避けられたはずの平手打ちだが……スレイは、なぜか避けることができなかった。
 イスフィが今にも零れ落ちそうなくらい、涙で潤んだ瞳でこちらを睨んでいたからだ。
293花のHBsage :2003/07/01(火) 19:35 ID:.yyzTgZs
「じゃ、どういうつもりなんだよ?」
「……説明したくない……」
「説明ないなら、普通そう思うが?」
「……もういい。犯されたがりの淫乱バカ女だと思ってて。別な人を探すわ」

 あきれた表情をしているスレイの手を振り解いて、イスフィは人込みの中に走り去っていった。

「何だ……あいつ……」

 残されたスレイは、歩き出そうとして足元に花のヘアバンドが落ちていることに気が付いた。

「これ、あのハンターがつけてたヤツ……だよな」

 拾い上げて、ハンターの走り去った後を見つめた。


 泣きながら走ってきて、人込みを避けて。
 大通りからかなりはなれた小道の木陰にイスフィは座りこんだ。

「……理由なんて……言えないよね、ソラ」

 肩に降りてきたファルコンに、声をかけてその頭を撫でる。
 そして、ソラは気持ちよさそうに一声鳴く。

「………後……5日かぁ……」

 空を見上げて、ため息混じりにつぶやいた。

 新世界へのゲートが開くまで後5日。
 世界を司る神が今日から5日の間を全ての出来事を夢とする幻想祭にしてしまうのだ。

 ある者は、普段作れないような高額の武器を製造したり……
 ある者は、普段狩ることはできないモンスターに挑んだり……
 ある者は、まだ夢を見ている上級職へと一時的に転職したり……

 全てが儚い幻。
 淡い幻想のかなたに消える。

 全てが無に帰すけれど……自分がしたいことができる幻想祭。

「……よぉ。姉ちゃん、勝負で勝ったら好きにさせてくれるんだって?w」
「さっき、天使HBのアサシンに声かけてたよねー? 僕達で良ければ相手になるよ」
「三対一はお好みじゃなければ、サシでいいぜ? ……まあ、最終的には三対一になってもらうけどな」

 声の方向に振り向くと、赤い逆毛のアサシンとまだ幼い感じが抜けきれていないウィザード、騎士崩れ
らしい緑の長い髪の男が立っていた。

「悪いけど……勝負したい相手は自分で選ぶから、他あたってくれる?」

 そっけない返事をすると、イスフィはまたソラの頭を撫でた。
294花のHBsage :2003/07/01(火) 19:36 ID:.yyzTgZs
「あん……? 折角声かけてやってるんじゃねーかw ヤラレたいんだろ?w」
「そうそう、三人も相手できるんだよー。いいじゃん」
「俺達が、足腰立たないくらいまでヤッテやるよ」

 その言葉に、深くため息をついてイスフィは立ち上がった。

「……逆毛と騎士は、虫唾が走るくらい大っ嫌いなのっ。それに……そこのウィズさんは、年いくつ?
 まだ、成人してないでしょ? 悪いけどお子様はお家にお帰り」

 遠慮も何もあったものではない言葉をずけずけとイスフィは言う。
 その上で、お呼びじゃないからさっさとどこかに消えろとでも言いたそうに、気だるそうに手を振った。

「てめぇっ……折角、紳士的に声かけてやってるってのに」
「ぐ……確かに僕はまだ成人はしてないけど……」
「淫乱の癖に、選り好みすんじゃねえよっ」

 ……まあ、あそこまで言えば……普通は頭に血が上る……よねえ。

 今の自分の立場を棚上げ状態で、イスフィは考えていた。

 思案した所で、答えが出るわけでもなく。

 高レベルのハンターならともかく。
 成り立ての自分では、三人を相手に倒すことはたぶん無理だ。
 そう……どうせ、5日後には自分はこの世界にはいない。
 この世界で汚れ果てても、新世界では無かったことにできる。

 あの人と一緒にいられない世界なんて要らない。

 この世界なんて、大嫌いだ。
 何もかも壊れてしまえばいい。
 自分も壊れてしまえ。

 ……そう思っていても……本当は……
 せめて、あの人に似ている……強い人に自分を壊して欲しかった。

 こんな……馬鹿な連中じゃなくて……

「……好きにすれば? 勝てればね」

 なぜか、涙がこぼれた。
295花のHBsage :2003/07/01(火) 20:06 ID:.yyzTgZs
やっぱり、エロスレのがよかったかなとちょっと後悔しつつ
また後ほど・・・・
__ _________________________________________
|/
|ー゚)
296名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/01(火) 20:21 ID:A5oz4OFg
>>295
ぐっじょぶ。
297名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/06(日) 19:16 ID:LlCmGOnc
>>295
続き楽しみにしています。
頑張れイスフィ…!!(TдT)←何か色んな事が自分と重なるヤツ。
298名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/07/10(木) 21:57 ID:FhLVdyZY
>>288
亀レスだけど、続き楽しみにしてますぜぃ。
299288sage :2003/07/11(金) 08:49 ID:I9v5Z9OI
 ごーん、ごーん。
 主のいない棺桶が運ばれる。
 大聖堂の鐘が、弔いの音色を響かせる。
「狩りの途中で…」
「仲間を逃がすためにひとりで…」
「かわいそうに…」
 大人たちが、話している。
 子供の俺でも、わかる。
 目の前に兄はいない。
 そして、もうどこにも。
 残ったのは、残されたものは。
 約束だけ。ただひとつの、約束だけ。

 
 でも、何故。
 俺は、騎士になりたかったのだろう。
 憧れていたから。
 兄の背中に。
 何故、憧れていた?
 強さに?
 違う――と思う。
 では、なんだったのだろう、俺が憧れていた、兄さんの姿は。
 何故、思い出せないのだろう。
 ああ、そこまで考えて、やっと理解した。
 求めていた兄さんの姿と、今の俺は。
 あまりにも、かけはなれていたから。
 だから――思い出せない。

 だってそうだろう。
 俺のせいで…仲間を危険な目にあわせた。
 忠告を聞かずに突き進み、
 そして、結果がこれ――か。
 俺は、もう死ぬのかな。
 でも、それもいいかもしれない。
 だってそうだろう。
 もう、俺には何もない。
 ただひとつ残っていた、約束ももはや砕けた。
 生きる理由も、目的も、意志も、俺には――――。

 …ま、…い!

 ――?
 誰だよ、俺を呼ぶのは。
 もういい、頼む、休ませてくれよ。


 …ください、…さま!!
 …死なないで、ご主人様っ!!

 その声が、あまりにうるさかったからだろうか。
 目が、覚めた。
「――! ご主人様あっ!!」
 そこは洞窟のようだった。
 目の前には、目尻に涙を浮かべたムナックと、ピッキの姿がある。
「――なんだ、お前たちか…ぐ!!」
 身体に劇痛が走る。
 傷口は塞がっているのだが、それでも傷ついた筋肉や神経はそう一朝一夕に回復するものでは

ないらしい。
 ――?
 傷が、塞がっている――?
 俺は、自分の手で胸の傷口に触れる。
 痛い。しかし、それでも出血は止まっている。明らかに、自然治癒で治るような怪我ではなか

ったのに。
「なん、で…?」
「不本意ですが、そこの不死者に感謝してくださいね」
 俺の口から漏れた言葉に答えたのは、洞窟の奥から包帯を持って来たアコライトだった。
「無事、だったのか…」
「な――! それはこっちのせりふです!!」
 俺の言葉に、怒りをあらわにする。
「あんなの相手にひとりで立ち向かおうとするなんて、何を考えてるんですか! もっと自分の

命を大切にしないと! そもそも…」
「わかった、わかったから。傷口に触る」
「…もう」
「それより、感謝しろって…」
「それはですね。あの不死者、剣士さまをこの洞窟まで連れてきたあと、あろう事か回復の術の

使える聖職者を探して、このダンジョンの中をひとりで走り回ったんですよ」
 …ああ、それでか。彼女の服がボロボロなのは。
「まったく、ダンジョンの中を不死者が徘徊すると、冒険者に追いまわされる事ぐらいわかるで

しょうに…私が探しに来てなかったら大変でしたよ」
「そ、か…」
「まったく、しかし無事でよかったでつよ」
「ああ、ごめんな…そしてありがとう」
 驚くほど素直に、謝礼の言葉が出た。
「あ、あははは。気にすることないアルよ、無事でなりよりアル」
「そうですよ、本当に…」
「きみも、俺を探しに来てくれたんだってな。ありがとう」
「あ、アコライトとして当然の事をしたまでです、うん」
「ついでに、師匠も」
「ついでってなんでちか…」
「冗談だよ。ほんとに、すまなかった…」
「落ちたときに頭でも打った? なんかいやに素直でつね・・・」
 師匠がなんかヘンなモノでも見るような顔で言う。
「兄さん・・・」
「?」
「あれは、兄さんだった……」
 思い出す。
 あの顔、間違いない。忘れるはずがない。
 しかし、何故…。
「ドッペルゲンガー」
 俺の言葉に、アコライトが答える。
「なにアルか? それ」
「悪魔です。ドッペルゲンガー、空蝉の悪魔∞影の魔人≠ニも呼ばれる、人の姿を写した悪

魔」
「聞いたことあるでつよ、ぼきもエドガから」
「あたしは聞いたことないアル…」
「大聖堂にあった文献からの知識なので正確ではないかもしれませんが…。
 彼らは本来、決った性格・性質を持たない、不定形の霊質と言われます。
 生きている人間を目標として、まずその姿を真似、そして本人を殺してからその人間の魂、記

憶などを喰らい、人間に成りすます、と。
 そのために「ドッペルゲンガーを見たものは死ぬ」という話も…」
 そこまで話を聞き、俺は上半身を起こして掴みかかる。
「――じゃあ! あれは、兄さんは・・・ぐっ!」
「落ち着いてください、まだ完全に傷は癒えてるわけでは…!」
 胸の劇痛に耐え、なんとか身体を支える。
 つまり、あれは。
「兄さんの魂を喰らい、姿を乗っ取った、悪魔――」
「――だと、思われます。一度人の姿を成したDOPは、その姿を利用して人に近づき、殺戮を

繰り返すと…」
 兄さんの姿で、殺戮を…。
 そこまで聞いて、俺は大切なことを思い出した。
「そうだ、他の…他の騎士志願者は、みんなは!?」
「まだ、無事だと思います。DOPの出現地点と拠点地はかなり離れていますから」
 だけど、とアコライトは続ける。
「一刻も早く、このダンジョンから撤退しないといけません。今の私たちでは、DOPには勝て

ません」
 ――確かにそうだ。あの力は、騎士志望の剣士で勝てるような代物ではない。
 ましてや、俺ごときでは。
「そうだ、な」
「とにかく、一度戻りましょう。かぼちゃの頭も無事確保していることですし、このまま戻れば――」
 その言葉が言い終わる前に。
 俺は、拳で、かぼちゃの頭を叩き砕いていた。
「な――」
「ご主人様!?」
「俺は」
 吐き出すように、俺は言う。

「――騎士になんか、なれない」


続く
300名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/11(金) 12:30 ID:F9owFV8Q
gj。エロに汚れた俺の心にも確かに燃えが宿った。
3011/3sage :2003/07/12(土) 22:22 ID:EAbXEE9U
お初です。なんかとりとめなく書いてみました。
色気無くてすいません。でも自分はこれくらいが萌えるんです。
----------------------------------------------------------
 お気に入りの場所だった。
 ちょっと遠いけど誰も居なくて、景色がすごく綺麗で。
 嫌なことがあった時なんかは、よくそこに行って海を見ていたんだ。
 あの人に会ったのもそこだった。

 あの日は知らない人に口汚く罵られて、半べそでそこに向かってた。
 マンドラゴラを避けて森を抜けて、お猿さんに気をつけながら
もう一つ森を抜ける。
 その場所へ行く道を歩いていると、転職した時の新鮮な気持ちを
思い出して落ち着くんだ。それも気に入ってる理由の一つ。

 昔お世話になった神父さんに会釈したら、神父さんは優しい目で
会釈を返してくれた。
 私の真っ赤な目に気付いているんだろうけど、神父さんはいつも何も
言わずに笑顔で会釈するだけ。私にはそれがありがたい。
 そういう時って、何か言われたら絶対に泣いてしまうから。
3022/3sage :2003/07/12(土) 22:23 ID:EAbXEE9U
 神父さんの横を通り過ぎれば、そこは私のお気に入りの場所だ。
 私の知らない何かの遺跡を抜けて、海の見える場所へ急ぐ。
 嫌な事なんてもう頭にない。あの壁を回り込めば海が見える。
 最後は少し小走りに───
「あ…」
 思わず声が漏れた。いつもの場所に、人がいたから。
 最初はなんだか自分の場所を汚されたような気持ちになって、
次に自分を戒める。ここは私だけの場所じゃないんだから。
──うん。
 知らず、下を向いていた自分を情けなく思いながら顔を上げる。
「こんにちは」
 上げた顔に降りかかる言葉。
 いつのまにか振り返っていた先客の女性。その挨拶は、その時の私には
この上ない見事な奇襲で、私はみっともなく慌ててしまったと思う。
 ……よく覚えていない。
 どう返事したのかもうろ覚えだけど、その人はにっこり笑ってくれて、
その笑顔に私は見とれてしまった。海風になびく金髪が陽光にきらきらと
光って、少しハスキーな声もすごく素敵で、青い神官服もしっくり馴染んでいて、
多分私は熱にうかされたような顔で、馬鹿みたいに口を開けてたんじゃないだろうか。
 今思い出しても顔から火が出そう。
3033/3sage :2003/07/12(土) 22:23 ID:EAbXEE9U
「たまにこの場所で、初心を思い出すことにしてるの」
「そうなんですか」
──こんな素敵な人も、私なんかと同じ事を考えるんだ。
「こんな景色を見ていると、落ち着くよね」
「その台詞、かっこいいですね」
──こんな綺麗な世界が、ちっぽけな私という穢れを飲み込んで浄化してくれるような、
そんな気がするから。
「たまに一人でぼーっとするのも、悪くないし……ああ、邪魔って意味じゃないけど。
私はもう十分ぼーっとしたから」
「あはは」
──自分と他人を比較しなくていいから。醜く妬む自分を忘れられるから。
 違う、駄目だ。私なんかと一緒にしちゃだめ。
「じゃあ、私は行くね」
「はい」
 その人は、私に何も聞かなかった。何か言われたらどうしよう、と思っていたから
ほっとする。きっと彼女も涙の痕に気付いていたから。
 ばいばい、と手を振って、彼女は少し照れたように笑って、一瞬後にテレポートした。
 どんくさい私は彼女が消えた後で手を振って、一人で照れて、少しだけ笑った。
 やっぱりここは素敵な場所。

 しばらく一人で海を見て、最後に全く具体的な形をとらない、方向さえも漠然とした
曖昧な祈りを捧げた。
 しあわせになれますように。
304301sage :2003/07/12(土) 22:27 ID:EAbXEE9U
駄文失礼しました。
蛇足と知りつつも補足させていただくと、神父はルバルカバラという
アコライトの転職イベントNPCです。
これを読んだ方が、何かしら感じるところがあれば幸いです。
305名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/13(日) 14:42 ID:GRi8isvs
GJ
こういう何気ない感じのSSは好きです、短くまとまってるのも(・∀・)イイ!
306no dream agesage :2003/07/13(日) 21:29 ID:90OB4cTg
はじめまして、こんばんに。いつもロムラーをしているのですが、
ここ最近カートが気になってしょうもないので突貫しにきました。
ママーリ書いていきたいなと思っています。お目汚し失礼します。

>>>>>>>>>>>>>>>>

 no dream age


 僕らの時代には夢がない。
 だのに大人は決まって言う。
 「夢を見ろ」だなんて、じゃぁ聞こう、アンタ達は夢を見ているの?
 大人に聞こう、大人だから夢を見ないの?
 大人になると夢をみないものなのかい?
 アンタ達は子供の頃夢を見ていましたか?

 ここはモロク。
 夏近し。
 暑さばかりがうだるような気温、そうまさに季節は暦でいうならもう夏!
 僕の個人的判断でいうなら、梅雨明けお見舞い申し上げたいですの季節だろうか。
 定期郵便屋のお兄さんなんか、ほらみてごらんよ、あの汗の量。

 僕の名前はルーレイ。
 御年十七歳、職業はアーチャ、趣味は商人さんのカートに黙ってもぐりこむこと。
 今のところの記録は五時間!すごいでしょう?
 まぁ、この記録に関しては少し例外で、潜り込んだ先が僕の保護者だったってこともある。
 僕の二親は先の世界大戦において、首都襲撃の際に倒れた。
 所謂英雄ってやつだ、でもさ、死んだらおしまいでしょ、人生。

 馬鹿馬鹿しいにもほどがアルってもんさ?

 生きてこそのモノダネだからね。

 「でェ、おまぃさんは何時まで俺のカートに居るつもりなンだい?」

 薄青がかった銀色が僕を見下ろしている、このカートの持ち主さんだ。
 たまたま昼ねしている彼のカートに僕が入ったのは二時間前、彼はその合間全くもって、
 僕には気づかなかったらしい。
 まぁ、僕は気配を絶つ事に関してはお墨付きですから!
 なにせ本業は森に生きる民ですからねー

 「僕の気がすむまで!」

 彼は僕の答えをきくなり、曇り空みたいな前髪をぐしゃりとかきあげて小さく、参ったなと呟いた。

 「一つ、交渉しようじゃねェか、おじょーちゃん」
 「交渉?」

 言い出した彼の言葉に僕は一瞬の間をあける。

 「そうそう、こっちもここで商売をするために来てるってわけな?
  はるばる砂漠を越えて、行商をしながらここまでき」
 「カプラのお姉さんの転移装置使えばはやいと思いますが、お兄さん」

 言い出した言葉が全て終わらないうちにそう返してやれば、一瞬の間の後、彼は軽くひくりっと眉を
 ゆがめると肩をおとすなりこう言った。

 「夢が、ねェ」

 僕は不快感を露にして睨み返してやる。と、彼は幾分意外そうな顔をして、顎をしゃくった。

 「図星かい?」

 例えばそういう時の表情が気に食わないとか、相手のことに対して何か特別な感情を抱くのに理由は
 いらない。僕の場合これはそう、直結的に苦手なタイプの人間だった。

 図星かい、と聞いた後、彼は僕の頭を撫でくりまわしたあと、そりゃもう満面の笑みでいってのけた
 のだ。

 「よし、決めた。お前さん名前は?」

 「  は?…普通名前聞くときはじ」

 「俺の名前はダーシェン・クレイア。元はイズルートのギルドに居たんだが、この不況でねェ、リー
  ダーの奴が賭け事に手を出して失敗……と、今は散り散りで俺も一人でちーっと寂しかったところ
  だしな! …、良かったら、こねェかい?」

 カートを陣取る僕に手を伸ばしてくる、彼、ダーシェ(以下略)は人攫いのようなひとのいい笑顔で、
 そう言ってのけた。僕はここのところの不穏な事件と、なにせ、こいつ自体が不穏だった。初対面の
 僕に向かって、大体僕は未成年だ。

 僕は精一杯の不快感を示した笑顔で、

 「人攫い」

 「ちがうっつーの!」

 即否定してくる、テンポに少し僕は面くらった。こいつぁ…突込み慣れてる!

 「んー……、なんつーかだねェ、放っておけねェのよ。夢がないってのは」

 「…なぜ?」

 僕の言葉にダーシェは小首を傾けると、苦笑いのようなはにかみ笑いのような複雑な笑みを浮かべた。
 ただ何も言わず僕の乗ったカートをよっこらせと、手前にひくと振り返り、

 「人攫い上等。俺のカートにのったのが運のツキってなー」

 鼻歌交じりこれでもかってくらいの速度で、路地裏から駆け出すと、僕はあまりの勢いにカートのへり
 につかまるはめになった。文句の一つでも言おうかと顔をあげれば、まともに息もできやしない。

 「まぁ、のーんびりいこうや、おじょーちゃん」

 名前すら名乗ってないのに、ダーシェは僕が言葉を返せないのをいいことに、そのままモロクの北門へ
 と走り抜けて行くのだった。
307名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/13(日) 23:04 ID:PNujYSuM
(・∀・)イイ
308未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:10 ID:VLQIPRq2
これが最後の更新……ではありません_| ̄|○ゴメンヨ
今日から試験期間に入ってしまい、次に何時書き込めるか分からないので
書き上げた分だけUPさせてください。

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「て……、めぇ…………」
 のろのろ、と顔を上げるアサシン。ああ、生きてるのか。
 鼻の軟骨が折れたのか、口と鼻を覆っている布に内側から赤い染みが広がって、滑稽だった。
「ぶっ……殺して……やる…………」
 地の底から響くような声。
「あー、すまん、違うんだ悪気はない」
 手をぱたぱた、と無意味に振ってみる。
「昼間理不尽な事があって虫の居所が悪くて、そのせいであんたの笑い声が、誰かと被ってむかついた
とか、エビみたいなバックステップがキモかったとことか、品性感じない言葉が不快だった事とか、小
悪党的な商売なんかしてんじゃねーよと思った事とか、女なぐって嗜虐心満たしてるなんて無様な真似
してるじゃねーよバーカと思った事とか、そもそも何故かこんな場所にいる俺とか――――」
 言葉を句切る。そして、やる気無く言った。
「全部まとめて不幸な偶然。許してくれ」


 この後に起きた出来事を簡潔に説明するなら、私の殊勝かつ誠実な態度で熱心に試みた説得は、真に
遺憾ながら失敗に終わった。
 彼のアサシンは極めて小規模な戦力を自分に対し展開、武力行使を試みるものの直後投入された、ア
サシンの上官であろうことが予測される♀プリーストの命令で、戦力の一時撤退を余儀なくされた。
 先に私が彼女に感じた第一印象は「はすっぱそうな」だったが、改めて相対してみるとその印象が、
自分の判断能力の未熟さによるものだということを、自覚せざるおえない。
 私は彼女の人柄を表すであろう単語に「はすっぱそうな」に付け加え「胡散臭い」「不愉快な」とい
う修飾語を加える事がやぶさかでなかった。


 ♀プリーストはまず、謝罪の言葉を述べた。
 次にアコライト二人を命の危険から救ってくれた事、俺がアサシンの先走った行動(『商品』対し危
害を加える事)を中断した事に対し、礼を言った。
 この女にしてみれば俺の行動は『商品』に大きな傷が付く事と、この界隈における♀プリ達の評判が
どん底まで落ちる事を未前に防いだ、という形になるらしい。
 そして、彼女は自分の横で抱き合うアコライト二人を指し、自分が多額の金を2人に貸している事、
2人は借金を返済するまで自分の店で働く契約である事、そして借金はまだ残っている事を簡潔に説明
した。その上で女は俺に頼む。
「2人をこちらに引き渡して頂けないでしょうか?」
 その全てが聖職者に相応しい、優しげな表情と態度で説かれたものだった。
 周囲の人間から見れば、口にした言葉の内容と、この場にいる事を差し引いても、誠実で純朴なプリ
ーストにしか見えないだろう。
 しかし俺には、この女の口元に終始張り付いた笑みが人を小馬鹿にしたものであること、丁寧な言葉
は只の慇懃無礼だということが、少女2人の態度と、♀プリの瞳の奥の光を見て分かった。
────それは不快だったので敵対しようと決めた。
「…………1つ訪ねるんだが、この二人の借金って今幾ら位なんだ?」
 『恩人』の立場を利用し、借金と契約についてしつこく尋ねた後、具体的な金額を♀プリに提示させ
る、金額は――Mだった。それはおそらく此方の何かを警戒して、ふっかけた金額なのだろが、何にせ
よ口に出させてしまえばこちらのもの。皮袋を♀プリに放り投げる。
「――Mだ、これで借金返済完了だな」
 女があからさまに顔をしかめる。
「……その娘達は貴方と無関係ではないのですか?」
「おかしな事を言うな。『汝が隣人を愛せ、貧しいものに施せ』はあんたら聖職者の十八番だろう。ま
さかプリーストにもなって聖書に目を通していない、という事もあるまい」
 無感情に言い放つ────唇を噛む♀プリ。
「金額を確かめろ。そして、確かめたら借用書をとっとと持って来い」
309未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:14 ID:VLQIPRq2
 そして今、俺はモロク中央の噴水の縁に腰を懸けている。傍らにはいつの間にか復活したクマと、双
子のアコライトが居る。
「しばらく、あの辺りには近づかない方がいいな」
「元より近づく気は無いがな」
「で、お前さんはこれからどうするんだ」
「――――別に、どうも」
 クマは、先程から手を繋ぎ、うつむいたまま口を開かない双子をちらりと見る、
「そうか、んじゃそろそろ俺は行くよ。しばらくはプロンテラを拠点にするつもりだから、何かあった
ら連絡よろ」そう言い残してクマは帰った。
 ポケットから借用書を取り出す。そして無造作に破り捨てる。びりびり、という紙を破く音が意外に
大きく響く。これ以上ないほど細かく破られた紙片は、モロクの夜風に乗って砂漠に消えて行った。
 ふぅ、と息を吐く。
 これで一段落、けれど何となく釈然としない。自分のした事は端的に言うなら暴行と人身売買か?人
目には金持ちの道楽、或いは気紛れに写った事だろう。みっともない、らしくない、無様だ。
 本当、衝動に任せて色々とらしくない事をしてしまった。
 この胸のもやもやは、さしずめ自分を御せなかった代償か。
 ……帰ろう、今日はもうさっさと帰って眠りたい。
「これでお前達2人は自由の身だ」
「あいつらには借金の金額より多く握らせた、これから先お前達につきまとう確率は低い思う」
「後は2人で何処へなりとも行けばいい」
 言い残し立ち上がる。彫像のように動かない2人に背を向けて、歩き出した。

「――――行くところがっ!!」

 突然の絶叫。歩みを止めゆっくり振り返る。
「行くところが…あれば……」
 それが姉か妹かは分からなかったが、
「最初からあんな所にいません…………」
 俯いたまま絞り出すような訴え。
 なるほど、それはそうだ。しかしそれが俺に何の関係がある?
 先のだってただの気紛れだ。それ以上のものを俺に求めたって無駄────
 双子が顔を上げた。目が合う。
「────」


 15分後、魔法都市ゲフェン。無人の家。
「…………此処が俺の寝床」
 ドライになりきれない自分はただ無様だった。


「適当に座ってくれ」
 簡素なベット、テーブルと椅子、必要最低限の家具で構成された殺風景な部屋。
 この町には似た様な無人の家が多々あるが、普通、入り口は固く閉ざされ入ることが出来ない。何故、
自分が此処を使えるかと言えば、どこから入手したのかは知らないが、父が鍵をくれたからだ。父が色
々と理不尽なのはいつもの事なので、一々疑問は抱かない。ただ、使えるものは使わせて貰ってる。
 双子は椅子に神妙な面持ちで座る。俺は自宅に着いた事で気が緩んだのか、空腹感を感じた。
「腹は減ってるか」
 そう2人に尋ねるとおずおず、と首を縦に振る。
 俺は即席で、すごいピッキの香草焼きを作り、野菜と一緒にカンパーニョ挟んで適当な大きさに切っ
て、きれいなお皿に乗せる。鍋にミルクと砂糖を一匙入れて、火に掛ける。適度に暖まったところでコ
ップに移す。ほどなくテーブルの上には、3人分の食事が用意された。
「味の保証は無いが、とりあえず人間が口に出来るものだ。食べたければ食べろ、いらないなら食べな
くていい、俺が処理する」
310未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:23 ID:VLQIPRq2
 そう言って俺は勝手に食べる。――――ん、悪くない味。
 双子はしばらく、目の前の食べ物と俺を見比べた後、ホットミルクに手を伸ばした。流石、双子とい
うか。行動のタイミングが呆れる程一緒だった。2人はミルクに軽く口をつけると、今度は皿に手を伸
ばし、ちっちゃな口を開けてパクッ、とパンにかぶりつく。一度口にすると、食事を取る動きに淀みは
無くなった。
「……ひっく……ひっく…ううっ」「えぐっ……えっ、え……」
 双子は食べながらぽろぽろ、と大粒の涙を流した。理由は知らない。「不味いか」と聞くと、ぶんぶ
ん、と髪の毛が揺れる程首を横に振った。
「……おい…しい……」「とっても、…ひっく……おいしいです……」
 俺は「そうか」とだけ言って、他には何も聞かなかった。「それは良かった」そういうと2人は大声
で泣きだした。部屋にはしばらくの間、食べ物を咀嚼する音と、双子の嗚咽だけが響いた。
 双子は食事を全て平らげた。そして、ベットに潜るとすぐに寝てしまった。
 小動物の様にくっついて丸まり、すーすー、と息をする2人の顔には涙の跡が残っていたが、その顔
は穏やかだった。

                   ◇

 翌日、首都プロンテラ南門。
『求)固定PTメンバー 詳細は中で』
 看板を立てて所在なさげに座る自分。
 まだ眠る双子に書き置きを残し、朝早く家を出てからこうしてずっと座っている。そろそろ正午を回
ろうという頃だが人はなかなか来ない。周りを見ていると似たような募集は多々あり、それらを見てい
ると退屈はしなかったが。
 何人か話を聞きに来てはくれたものの、ギルドの詳細を説明すると決まって「そういのは一寸……出
来ればマッタリして楽しいところに入りたいので」などと断られた。
 この日メンバーは見つからなかった。

 夕飯を首都で取り、ポタ屋利用でゲフェンに戻る頃には日はとっくに沈んでいた。
 自宅の前につく、窓に明かりは灯っていない――――あいつらはに行ったか。ドアノブに手を掛ける
と中に人の気配を感じた。まだ居るらしい、ドアを開ける。
『あ…………』
「――――明かり、つけないのか」
 かって知ったる自分の家、暗くても何処に何があるかは分かる。
 ランプに灯を点すと、暗がりの中、ベットの上に肩身を寄せ合い座る双子の姿が浮き上がった。
「寝ていたわけじゃないよな。書き置きは読んだか?」
 小さく肯定の言葉。
「じゃあ、そこに書いた通り、ここはそっちの自由に使って良いんだ、明かりくらいつければいい」
 荷物を放り投げ、鎧を外す。刀を抜いて日課の修練をした後、汗を流して着替える。
 毛布を床に敷いてその上に寝転がる。────寝よう、明日も早い。
 睡魔が此方を襲いかけた時に、声は懸けられた。
「――――あ、あの騎士さん!」
「…………何」
 眠りを邪魔されて少し堅い声が出た。双子は互いに一瞬の目配せの後、
「昨日、言えなかった事、言わせて欲しいの」
「私と妹。助けて頂いてありがとうございました」
 そう言って双子は2人で神妙に頭を下げる。――――なるほど、どっちが姉でどっちが妹か分かった。
「助けたつもりはないから、頭を下げられても困る」
「でも」
「昨日の事は俺の勝手、そっちに頼まれたわけじゃない。だから礼も不要、恩を感じる必要も無い」
「……」「……でも」
 ふぅ、と息を吐く。まあ、逆の立場なら納得しないだろう。
「もし、どうしても気になるなら、いずれ何らかの形で返してくれれば良いから」
 妹と姉はしばらく無言でうつむいた後、妹が顔を上げる。
「……じゃあ、お礼させて」
「……あ?」
「――――お姉ちゃん」「うん……」
 そう言って2人は服に手を掛けた。――――ちょっと待て。
「……何をするつもりだ」
「私達が出来る事って、これくらいしか無いから」「何かお礼がしたいんです」
 止める間もなく、アコライトの制服がパサリ、と落ちた。
311未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:27 ID:VLQIPRq2
「あんまり胸とか大きくないけど」「汚れてますがこんな体でよければ……」
 ランプの光が未発達な少女の体の凹凸を、強調するかの様に陰影をつける。肌はこの小さな明かりで
も分かる程白い。双子は十分に『女』としての魅力を備えていた。正直に言えば少しそそる。
 しかし、今の自分の中にある感情は、欲望、それ以上の苛立ちだった。
 それが何に対しての苛立ちかは分からなかったけれど。
「それは『体を自由にしても良い』という意味か」
――――双子は首肯
「あっ、そ。じゃあそうさせてもらう。…………目を瞑れ」
 神妙に目を瞑る2人。立ち上がりベットに近づく。傍らにしゃがみ込み、両手の突き出した親指に曲
げた人差し指を固定。ぐっ、と人差し指に力を込める。
 そのまま2人の額に持っていき――――指をはじいた。ばちんっ、と乾いた音が部屋に響く。
「いったーーーーーーー!?」「っう〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「……ふむ、やたらいい音がしたな」
 姉が「何するんですか」、妹が「何しやがんだこのヤロー」といった目でこちらを睨む。
 俺はそれを叩き潰すかのように正面から睨みをつけた。
「まずは服を着ろ。話はそれからだ」
 双子は見た目にひるんでいそいそと服を着る。2人が服を着たのを見計らい言葉を紡ぐ。
 自然、低い声が出た。
「馬鹿か、子供が妙な考え起こしてんじゃねぇ。甘く見るな、そんなことを期待して助けた訳じゃない」
「……だって」「……」
「気持ちは買う。が、方法が間違ってる。俺はそんな『お礼』嬉しくない」
 怒られた子供の様に、というかそのままだが、頭を垂れる2人。
「それから姉の方」
「……はい」
「――――自分の体が汚れている、などと言うな。卑下は聞いていて不快だ」
 顔を上げて、かすかに驚いた顔をする姉。此方をじっ、と見るその目に涙が浮かんだ。
「ごめんなさい……」
 ……神妙にされると、とたん落ち着かなくなる。がりがり、と頭を掻いた。
「……もう、いい。俺は明日早いんだ、寝かせてくれ」
 背を向けて、すたすたと毛布まで歩く。
「あ、ベット……」
 それは微妙な声のトーンの違いで妹と分かった。
「そのベットは俺には柔らか過ぎる。堅い床の方が寝心地が良い。ベットは2人で使え」
 ナチュラルに嘘だが、変に気を使われるよりましだった。ばふっ、と毛布に倒れ込む。
「ありがとう、ございます。それから…………ごめんなさい」
 これは姉か。
「別に怒ってはいない。だから、謝るな」
「はい、じゃあ――――」
 二重奏のように綺麗に双子の声が重なった。
『おやすみなさい』
「――――ああ、おやすみ」
 そう答えた後で、ふと気付く。
 おやすみ、なんて言葉を紡ぐのは久しぶりだ、と。
312未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:29 ID:VLQIPRq2
 2日目(締め切りまで後4日)
 昨日と同じように双子が起きる前に家を出て、同じ場所で募集を掛ける。
 しかし、今日の看板は一味違う。
『求)ミッドガルズの平和維持に興味のある方』
 自分ではなかなか募集内容が分かりやすくて良いと思ったのだが、昼に冷やかしにきたクマに大笑い
され「こんな看板で来るのは馬鹿ぐらいだ」と言われた。(無論その後でMBを叩き込んでおいた)微
妙に周囲から感じる視線も気になったが、何となく意地になって看板の内容は変えなかった。その甲斐
があったかどうかは知らないが、馬鹿は来た。
「すいません、お話うかがいたいのですか――――」
 転職して間もない栗毛の♂騎士。
 話してみると正義感が妙に強く、《タロット》の活動内容を告げても嫌な顔一つせず、
「私の力がこの世界の役に立つのなら」
 そう言って二つ返事でギルド入りを了承した。軽く剣を合わせてもみたが、腕もそれなりだった。
 騎士とは次の日の昼に待ち合わせをして、この日は別れた。
 日が沈むと酒場で一人で祝杯を挙げた。
 そうこうしているうちに夜も更けてしまい、この日はプロンテラで宿を取った。

 3日目(締め切りまで後3日)正午過ぎ。
「……入れなくなった、というのはどういう事なんだ」
 会うと、騎士は唐突に「PTに入れなくなりました」と渋面で告げた。
 問いただしても「申し訳ありません」の一点張り。
 埒が明かない、そう思っていると、どこからか知らない♀アコライトがやってきて、
「こんにちはー、それじゃあ今日も公平お願いしーます」
 そう言いながら騎士に腕を絡める。それで何となく理解した。
「…………行っていい」
 首都の雑踏に消えていく2人。
 あれが噂の養殖アコだろうか。何となく瞳の奥に計算高い光を見ないでもない。 騎士は何らかの手
段で『堕とされた』か、あるいは単に、男と組むよりは女と組んだ方がイイ、と思ったのか。
────何にせよ幸運。約束を反故する無責任な男とPT組まずにすんだ。
 そう思ってみるものも、締め切りまで後三日で誰もつかまってないという現実は、変わることなく、
自分の上に重くのしかかっていた。
 今日は何となくアコライトを見る気がしなかったので、この日も首都で宿を取った。

 4日目(締め切りまで後2日)
 今日は人が来なかった、やはり朝から座ってはいたがさっぱり人が来なかった。この2,3日で、臨
公広場でPTを募集している製造BSや、装備の揃っていないアシシンの気持ちが少し理解できた気がす
る。慣れない勧誘活動が精神を疲弊させていた。
 ジュースを飲みながら、流れ行く雲を眺める。日は傾きかけ雲が進むんでいく空は茜色。
────このまま行くと一年間BOTとお付き合い、か
「クソっ……」
 苛立ちが募る、焦燥感が沸き立つ。
 クマが自分の処に訪れたのはそんな時だった。
「おい〜っす、その顔じゃ一人も捕まってないだろう、捕まってないよな、むしろ捕まえるなよ、俺は
お前さんが一人も捕まらえられないに500k賭けてるんだからな!酒場の連中と」
「帰れ!!!」
 とりあえず叫んだ。
313未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:33 ID:VLQIPRq2
「まあ、それはおいといてだ――――時にお前さん、あの双子はどうしたんだ?」
「……いきなり何だ。結局あの後連れて帰った、今はゲフェンの家を貸してる」
「お前さんの寝床は」
「ここ2・3日はプロンテラの宿屋」
「そか。ところで俺今日GDに行ったんだ、ウィスパC狙いで。……闇リンピが出たけどな」
「おめでとう」
「ありがとうファッキン坊主。で、ヤケ酒しようと街に繰り出したら、何か美味そうな匂いがしたんよ」
「何が言いたい」
「まあ、聞けって、それに釣られて歩いていたら目の前に一軒の家があってさ、裏手回って窓から中見
たら、この前の双子がいるじゃん。思わず中入って俺は聞いたね『こんなところで何してるの?』って。
そしたらこう答えたよ『────夕飯の支度をしています』」
「話しにオチが無い」
「テーブルの上に三人分の食器が並んでいても?」
「…………」
「今日は帰ってやったらどうよ?」
「……そんな事わざわざ言いに来たのか。ご苦労だな。話が終わりなら何処かいってくれ、勧誘の邪魔」
「まだやるのかい、もう日が落ちるぞ。――――それに、帰るなら早めにした方がいいと思うが」
「締め切りまで時間が無い、夜も看板出して勧誘は続ける。それから帰る気も無い。
……そもそも俺はあの2人と何の約束していない、あいつらの都合に付き合う義理もない、一々つきあ
ってられるか。――――くそったれ、どうして俺が他人の思惑に振り回されなければいけないんだ、冗
談じゃない」
 言ってクマに愚痴っている事を自覚した。そんな自分の無様さには嫌悪すら覚える。
「……もう、いいだろう。行ってくれ」
 クマは分かった、と言い踵を返す。が、途中で何を思ったのか戻ってきてこう言った。
「お前さんが、家に帰って苛立ちをあの2人にぶつける事を心配しているのだとしたら、それは、多分
杞憂だと思うぞ」
「お前が何を言っているのか理解できない」
 クマの言葉が、自分の知らない心情を見透かされて告げられたものなのか、ただの見当違いなものな
のか、自分には判別はつかなかった。

 日は落ちた――――
 首都は夜でも人通りが激しい。道の脇に座り込み、ただ無心に道行く人々を眺めた。
 どれ位そうしていたのか、白い月が落ち始めた頃、おもむろに腰を上げる。
「……腹が減った、それだけの話」
 誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。


「…………」
 妹は口の前に人差し指を一本立てた。
 双子はテーブルをはさみ椅子に座っている。妹は起きていたが、姉はテーブルに顔を伏せていた。
 音を立てぬようゆっくりとドアを閉め、部屋に入る。
「さっき、眠ったところ」
「そうか」
 テーブルの上には、なるほど3人分の食器が並んでいる。
「ごはんは食べたの?」
「いや、まだ」
 妹は無言で立ち上がり台所に向かう。
 15分後。
「……すごいな」
 カボチャのポタージュ、海鮮サラダ・イズルード風、サージぺぺのソテー温野菜添え、ピッキと黒い
キノコのパテ、など……。次々にテーブルに運ばれては目の前に並べられる品々。それらは自分が作る
モノと違い、盛りつけからして、いかにも料理然としている。ちょっとした料亭気分だ。
 一通り料理を運ぶと妹も席に座った。その目がじー、と此方の挙動を見ている。
「食べて」
 言われるままに口をつけた。
314未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:36 ID:VLQIPRq2
「──────」
 機械の様な動作で一通り全ての品に口をつける。そして、つい分かり切った事を聞く。
「……これ全部おまえが作ったの?」
「スープサラダと、下ごしらえはお姉ちゃんと一緒に。火を使ったのがわたし」
「ものすごく――――美味い。何だこれ」
「!」
 頬をピンクに染め、花が開くように顔を綻ばせた後、はっ、と表情を戻してうつむく。
「〜〜〜〜。お世辞いっても何もでないわよぅ……」
――――あ、モジモジしている。
「世辞は言わない主義、本当に美味しいんだ。特にこのパテとソテーのソースは絶品、これは?」
 小さく手を上げる妹。よく見ると、ふせた顔は耳まで真っ赤だ。
「よく作るのか?」
「……し、しばらく作って無かったけど、ここに来て3回目だから――――あ」
 慌てて口を押さえた。それでその意味を悟る。……そうか、昨日も一昨日も作ったのか。
 テーブルに顔を乗せて寝ている姉を見る。もしかして、その時もこうやって遅くまで待っていたのだろうか。
 もっと早く帰ってくればよかったかな。いや、帰らなくてもその旨伝える事くらいはしておけば、
「悪い」
「あ……、あやまる必要なんてないでしょ」
 そうかもしれない。けれど、この小さな親切に報いる事が出来ない程、余裕を失っていた自分の未熟
さを恥じたら、自然口をついていた。
「そうだな、悪い」
「またあやまってる」
 くすり、と笑う妹。なんとなくばつが悪くなって頭を掻く。
「――――こうやって話してみると、あなた、お姉ちゃんみたいね」
「…………は?」
「うん、なんか似てる」
「どこが」
「いろいろ〜」
 妹は先程とは打って変わってニコニコしだした。何だというんだ。

 その後、食事の匂いで目を覚ました姉と3人で遅めの夕食を取った。俺が料理の感想を口にするたび
に、やたらと照れる双子の様子は面白かった。出された食事を全て平らげ、デザートのキャロットケー
キと紅茶に舌鼓を打ち、一息つく。ああ、言い忘れている言葉があった。
「ごちそうさま。ありがとう、美味かったよ」
 不思議だ、ここ数日体に巣くっていた陰鬱な気分が雲散霧消、綺麗さっぱり消えている。
315未だ名無しsage :2003/07/14(月) 02:44 ID:VLQIPRq2
「そ、そんな風に言われると困ります……」「そうよ、これはお礼なんだから」
「お礼?」
「この前の夜に、あの…服を脱いで……その、お礼をしようとしたら、たいそうご立腹されましたから。
あ!いえ、もちろんそれはわたし共が悪いんですが……」
「だから、何か別の方法でお礼をしようと思って」
「――――それで料理か?」
 コクリと頷く。
「こんな事で、騎士さんに受けた大恩が返せるとは思ってませんが、少しでも何かできればと……」
「……大げさなだな」
「そんな!いくらわたし共が無知でも騎士さんがはらったお金がとても大きいと言うことは分かります」
「……わたし達の借金、普通の人にはとても出せない金額だったんでしょう?」
「とりあえず、その話はやめてくれ」
 俺にとっては恥ずべき恥部だ。
「あのな、前にも言ったよな。あれは俺が勝手にやった事、恩に着せるつもりもないし、ましてや金返
せ何て言わないから」
「で、でも」
「まあ聞け。かと言ってお前達が納得できないというもの十分に分かる。だからこうしよう、お前達が
此処に居る間は、朝食と夕食を作ってくれ。後はこの家の掃除でもしてくれればいい。それでチャラに
しよう」
「でも……」「そんなことだけじゃお礼にならないよ……」
「お礼になるかならないか、それを決めるのは少なくともお前達じゃない」
『…………』
「俺は妥協した、できればお前達も妥協して欲しい。俺に対して感謝の念が少しでもあるなら」
「……わかりました」「うん……わかった」
 ふぅ、と息を吐く。
「じゃあ、とっとと寝よう。俺は明日も朝早い」

---------------------------------------ここまで--------------------------------------
316名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/14(月) 02:47 ID:tknynPqo
ホノボーノ(・∀・)e!
317名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/14(月) 23:14 ID:nEG40Oag
しゅじんこうがいーせいかくしてるとおもいました
でも、すえぜんをたべないのはへたれだなとおもいました(・∀・)
318古城にてsage :2003/07/16(水) 01:04 ID:JkIfNHKs
 アーチ状の石門を通った先は、奥が闇に消え行くような大広間だった。淡い光の揺らめきが、床を幽かに浮かび上がらせている。目の前の石床には大きな鷲の紋章が描かれ、今にも飛び上がろうかという翼を広げていた。――それは、グラストヘイムと呼ばれた巨人達の王国の紋章。
「ここが、そうなの?」
 フレイは、手に持った杖の骸骨装飾をシャンと鳴らし、辺りを見渡す。
「ふうん……。案外素っ気無いものね、もっと大歓迎かと――――」
「しっ」
 2歩後ろを歩いていたアルが、フレイに注意を促す。しかし同時に彼女も気付いていた。
「……アル」
「うん、そうだね」
「大歓迎?」
 アルの返答は無い。フレイのものとは比べ物にならないような安っぽいロッドを慎重に構え、彼は小さく息を吸う。
 コツ、とフレイの杖が、半歩先の地面を叩いた。
 次の瞬間。
「7!」
 けたたましい叫びや唸りの中、フレイの言葉が何よりも早く闇にこだました。敵の総数は8匹、フレイには訂正する暇は与えられていない。しかしそれを無視し、彼女は、彼女の頼もしいパートナーへと振り返る。背に迫る異形の者達の吐息を聞きながら、小さく囁くように、フレイはアルへと手を差し伸べた。
 一瞬の視線の交錯。
「サフラギウム」
 横薙ぎに、アルのロッドが水色の光で闇を切り裂く。
「ガストッ!!」
 その威力に相応しい魔力の奔流が、まさに溢れ出すようにして場を制圧する。フレイの躰にその剣先を届かせようとしていた2体の徘徊する者は、その吹雪に押し返され、悲壮な呻き声を上げる。
 大魔法“ストームガスト”は、詠唱のみならず、その魔法名までも短縮されて一瞬のうちに撃ち出された。基本的に6秒ほどかかると言われているストームガストの詠唱だが、この2人のコンビでは1秒とかからない。
 氷の飛礫に叩き付けられ、ライドワードやレイドリックといったモンスターが一様に氷像と化す。しかし、これで終わりでは無い。凍った先からその戒めは溶かれようとしている。蠢く氷像に囲まれた光景は生きた心地のしないものだが、2人はそれに慣れているのだった。
「セイフティウォール」
 フレイの詠唱によって、光の壁が地面に立つ。アルは無言でそれに入ると、マントを広げて――小さく微笑んだ。
「さ、どうぞ」
「……ん」
 面白くなさそうに、しかしフレイは黙ってアルに寄り添った。駆け抜ける氷の群れと恐ろしい程の殺意の中、互いの体温がゆっくりと移り伝わってゆく。フレイが僅かに顔を上げると、アルの真剣な表情が間近にあった。
 アルはフレイの肩を強く抱くと、もう一方の手でロッドを掲げる。
 吹雪が止み始め、辺りには静寂と、氷の軋みが広がる。放出していた魔力がアルに戻ってゆく。モンスターの群れが氷を割るまであと3秒、とフレイは推測した。

 (あと3秒、私が黙っていたら、私と彼はここで死ぬのだろうか。)

 ――ふと過ぎったそんな考えを、フレイは一笑に付した。
「サフラギウム」
 祝福は成された。
 赤い光が目前で舞う。アルのロッドは、詠唱の高まりと共に素早く宙に印を描く。赤い古代文字が形を取り、まるで血のように闇に崩れる。
「メテオストーム……!」
 詠唱の完成とほぼ同時に、氷が次々に割れる。
 直上に具現化された“扉”から、灼熱の火球が唐突に姿を現す。
 薄い光の壁の向こう側に、モンスターが殺到する。剣撃を弾き返された徘徊する者は、怒りに身を震わせてさらに剣を振りかざす。しかしその瞬間、火球が一帯を直撃した。轟音と爆風を乗せた灼熱の炎が、無造作にその躰を包み込んだ。そしてすぐ次弾が落下する。闇に沸いた地獄のような光景が、アルとフレイのすぐ傍で猛り狂っていた。
 アルのマントが、フレイの顔をゆっくりと包んだ。彼女はその腕に頬を寄せ、そのまま動かなかった。
 火球の創り出した炎海に火球が落ち、周囲は白い炎に染まる。圧縮された爆風が一斉に空気を押し出し、臨界を突破したと同時に辺りに凄まじい勢いで霧散した。光が溢れ、闇も炎も、2人の姿も飲み込んでゆく。
 白の中で、フレイはただじっとアルに寄り添っていた。
319318sage :2003/07/16(水) 01:05 ID:JkIfNHKs
即興で書いてみました。
スレ汚し失礼。
320no dream agesage :2003/07/17(木) 20:27 ID:Ka8Iw8qU
セカンドこんばんに。318様の物語の空気がすきです(ひそーり。
また投稿させていただきますですてす。
>>>>>>>>>>>>>

 神様が居るかどうか信じた事があるかい?
 僕は居やしないって思ってる。
 もし神様がいるなら、僕らはどうして平等ではないのだろう。
 それが神様の課せられた僕達への試練というなら、
 僕らの神様は無慈悲に違いない。

 僕の目の前に、子供が死んでいる。

 僕の、せいでは、ない。

 街中で暴れていたオークの一人にばっさりと斬られたのだ。
 僕の打った矢が、オークの眉間に突き刺さりあぁ、僕も殺されると思ったら、
 少し細い背の高い影が僕の目の前に立ちはだかって、斧を振り回してオーク
 を倒した。

 ダーシェ、彼の名前を呼んで僕が彼に頭を撫でられて、僕はようやく気づい
 た。僕の手は弓を持つことすらままならないほど震えていて、慣れたはずの
 あの時のあれ以来、のことなのに、どうしてもその震えはやんでくれなかっ
 ったのだった。


 モロクから砂漠へと出て、キャラバンに交じるようにしながら数日。
 ソグラド砂漠の途中にできたオアシスにある小さな町。
 そこにはカプラさんはいなかったけれど、人の集まりが町を作り上げていた。

 そんな場所へやってきて数時間もたたないうちにさっきの騒ぎ。

 休むことすらままならないよと、愚痴をこぼせば、ダーシェが僕に苦笑いを
 一つ返した。

 「仕入れの作業は終わっちまったし、後はあれだねェ、腹を満たすだけっと」

 軽い冗談を言うように彼が言うのを聞きながら、僕は使い古した弓を握り締
 めて、まだ収まらない震えをとめることに専念していた。
 相変わらず僕の定位置は彼のカートのなかで、カートに揺らされながら通り
 の一角での一休み。

 少し首をかしげたあと、ダーシェは曇り空みたいな目の色で青空を見上げた。

 「いい天気だねェ」

 言われて空を見上げると、鼻につく湿るにおい。
 風の中にも水のざわめきを感じる、僕は小さく。

 「雨がくるよ」

 彼は瞬いて晴れているのに?と視線で問うと、そのくせ僕の言葉を信じるよ
 うに、早々と露店を切り上げた。
321no dream agesage :2003/07/17(木) 20:28 ID:Ka8Iw8qU
 指先に弦をひっかけて矢をひく。

 きりきりという音のあとにぴんとはった弦が弾く様にひっくり返る。
 そのまま矢は放たれて何処までも真っ直ぐと進んでいく。

 僕の爪みたいなものだ。

 「お嬢ちゃんに似合うからかぶっとけー?」

 ケラケラ笑いながら彼が僕の頭にかぶせたのは、猫の耳をモチーフにしたカチュー
 シャ。こんなものもらえないと言葉を返せば、彼は苦笑いのあとに、気にするな。

 とだけ。

 「猫みたいなんだよねェ、こう、野良猫みてェになついてくれない」

 つれないよと短く言うのに、僕が冷ややかに視線を向けるとわざとらしく身震い
 をしてみせて、何処までも青い空を見上げている。

 僕が猫なら、アンタは風だ。

 そう言いかけた言葉を飲み込んで、

 「ダーシェは知り合いが多いね」
 「おう、こう見えて色々回ってっからさぁ…」

 折角だから猫耳をつけてみせると、ダーシェがはにかみながら似合うよと言ってく
 れた。僕は思ったより、自分が嬉しいだなんて思ってるのに気づいて、少しおかし
 かった。人浚いなのにね。


 それから案の定、夕暮れ時ソグラドに闇がおりるころ、雨が降り始めてきた。おち
 てくる雫の数々にうたれながら、砂漠の砂の上に斑模様ができていく。
 そのうえをペコペコの足跡が残っていて、その先にもう動かない剣士が倒れている。
 ペコペコはかわれていたのか、その隣にくっついたまま動こうとしない。

 もう、起きないんだよ。

 僕が小さく言うと、ペコペコは一瞥してからそれでも離れようとしなかった。
 なんだか僕はそれが、何時かの僕みたいにみえて無性にやるせなかった。


 翌朝。

 剣士の隣にはオレンジ色の塊が冷たくなっていた。


 やっぱり、神様なんていない。
 いるとしたら、きっと無慈悲なんだ。
322名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/07/18(金) 10:58 ID:/S7teeMg
>>318さん
おぉぉ。なんか戦いながら凄いクールだ。
INT高い同士の戦いってそんな感じなんでしょうね。

>>320さん
せつねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ
・゚・(ノД`)・゚・。
323名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/07/28(月) 23:13 ID:r.tr0foM
>>308
(・∀・)イイ、ツヅキマダー?(・∀・)ウズウズ

途中、あれ、ここってエロスレだったか?と
スレタイを見直したのはオレだけじゃないはず
324名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/08(金) 09:32 ID:/j3g5bQM
 わたしは今日も道ばたに座ってお店を開く。
 あつかうのは赤いお薬と牛乳。どこにでもあるお店。
 でも、値段は安めにしてあるからよく売れる。
 毎日こうしてお店を出して、お金もずいぶんたまった。
 だけど、わたしが使っていいお金は1zもない。

 わたしにはお姉ちゃんがいる。
 お姉ちゃんは剣士さまで、もうすぐ騎士さまになるらしい。
 お姉ちゃんはとっても強くて、どんなモンスターでもやっつけちゃうんだ。
 お店を出せるようになってからは街の外に出たこともないわたしとはぜんぜんちがう。
 お姉ちゃんとわたしはいっしょにはいられない。
 しかたないと思う。わたしは弱いから、戦いではお姉ちゃんの足手まといにしかならないもの。
 でも、わたしにも手伝えることはある。
 もっとよく切れる剣を、もっとじょうぶな盾を買うためのお金をためるんだ。
 お姉ちゃんのために。

 お友だちができた。
 わたしとおんなじ商人で、わたしとおんなじようにお姉ちゃんのためにお金をためてる、まーちゃん。
 わたしのとなりでブルージェムストーンを売りながら、まーちゃんは言った。
「あたしたち、お姉ちゃんのお財布みたいだね」
 すごくさみしそうにそう言った。まーちゃんはお姉ちゃんのこときらいなの?
「そんなことないよ。ただ、うらやましいの」
 うらやましい?
「お姉ちゃんたちは世界中を冒険できるでしょ?
 あたしたちは多分、この先ずっとこの街から出られないから、うらやましいの」

 牛乳がぜんぶ売れたから、わたしは立ち上がって新しい牛乳を仕入れにいく。
 そのとちゅうで、カプラさんのところによる。
 思ったとおり、お姉ちゃんからの荷物がとどいてた。
 海の音がきこえる貝がら。どんぐり。きれいな何かの結晶。
 お姉ちゃんが拾いあつめたいろんなものは、わたしのしらない場所のおみやげ。
 これも売らなくちゃいけないものなんだけど、そのまえに見てたのしむ。
「収集品とは別に、こちらが届いています」
 カプラさんはそう言って、わたしにぼうしをくれた。
 今までお姉ちゃんがつけていた、ちょっとくたびれたキャップ。
 お姉ちゃんがわたしに送ってくれた、何度めかのプレゼント。
 これもきっとわたしの宝物になる。

 ただのお財布でもいいの。
 わたしはこの街から出られなくても。
 だいすきなお姉ちゃんと、つながってるなら。
325名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/08(金) 09:34 ID:/j3g5bQM
お抱え商人に愛を。

なんだろうこの話。
326名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/08(金) 17:53 ID:iMfKVsgc
>>324
私の商人もプロンテラからミョルニル山脈までしか知らなかったり。
あの子もこんなこと考えてたりするのかな、なんて共感しました。

処で相談。ここのスレ読んでて自分も参加したくなりました。
暫く前に一人称で書いた日記っぽいのがあるけど載せていい?
327名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/10(日) 08:28 ID:e9X37HA.
>>326
聞くまでもなかろうよ!うぴょろ
328名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/10(日) 18:52 ID:Htrwh6KE
は…花のHBの作者様は何処へー??
329名無したん(*´Д`)ハァハァ :2003/08/10(日) 23:14 ID:OPakJpxc
>>328
漏れも続きが気になるんだが<花のHB
作者様に続きをお願いしたい・・・
330名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/11(月) 01:27 ID:ZAs731Ys
書き込みテスト
331名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/11(月) 09:53 ID:2/kCuxYM
イズルードダンジョン第3層、通路からは大きく外れた小さな島。
ここに辿り着くまでの戦闘で、HPもSPも底を尽き掛けている。
ポニーテールにした髪もじっとり湿って重たい。
蝿羽も既にない。SP回復剤なんて始めから持ってきてもいない。
残っているのは人参ばかり何十本か。後はドロップアイテムだけ。

せめて第2層への階段に辿り着けるだけでも回復したい。
私は剣を支えに膝を着いた。その姿勢で今来た橋の向こうを見やる。
うん、追って来るモンスターはいないみたい。
この島ならモンスターが発生しても分かりやすいだろう。
しばらく休憩できるかな……

6時の方向、島への橋にヒドラが発生した。
ヒドラを相手にする気力は、未だないなぁ。
まぁいいや、この距離なら触手も届かないだろうし。

残念、運命の女神様は私にそっぽ向いたらしい。
続いて8時の方向に、オボンヌ発生。未だこちらには気付かない。
もう暫く放って置いてくれると助かるのだけど……

そうこうするうちに3時の方向にオボンヌ2体。
もう一つの橋の方向だ。退路は経たれた。
こちらに気付くのも時間の問題かな。
3体同時に相手して勝てる気はしないんだけど…

ダメ、諦めたら勝てる相手にも負けちゃう。
ウインドブレイドでのオボンヌへの与ダメージは200前後。
盾が使えるから3体でも次の攻撃する間に食らっても大体60*3、
大丈夫、人参は未だあるから計算では負けない。
落ち着け、私。震えてても勝てない……

Go!
--
お目汚し失礼。
萌え・・・ませんよね?_/ ̄|○
不定期にじわじわ続くかも。
332名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/11(月) 18:10 ID:WqRMpNuU
ROやっててふと思いついたので、お目汚しながらカキコさせていただきます。
--------------------------------------------------

「はぁ〜? ビタタカードが欲しいだぁ?」
 煙草をふかしながら新聞を読んでいたBSがあからさまに邪険に聞き返した。
 まだ20代だろうか、かなり若い茶髪のブラックスミスだ。
「んなもん、欲しけりゃ取ってくれば良いだろうが」
 面倒お断り、とでも書いてありそうな表情でまた紙面に視線を戻す。
「いや、ほら…だって蟻穴って蝙蝠がうるさいし、万が一魔法誤爆して蟻に囲まれたらヤバイし、
なによりもBOTが沢山で精神衛生上良くないなと思った次第であります」
 対して頼み込んでいるのは栗毛のウィザード少年。まだ若い―と言うよりは幼い感じだ。
「蝙蝠うるさいのは誰でも一緒だろうが。囲まれたら俺も死ねる、俺は製造型だぞ。
BOTウザイのはみんな一緒、俺だってあんなところ居たらストレス溜まるわ。
BOTが嫌なら『上』にでもしつこく言えばいいだろ? 無駄だろうけどな。
そんな訳で行ってらっしゃい、がんばってな」
 もうこの話は終わり。と手をひらひら振りながらBSは机の上のコーヒーを啜る。
「兄ちゃぁぁ〜ん、お願いだよー。僕の一生のお願い、ね?
お願いします! もうここ数日蟻穴篭っていい加減変になりそうなんだよぉ〜」
「うおっ! 危ねぇって馬鹿!」
 Wizの少年はいきなり涙目になったかと思うとBSに抱きついた。
 ……コーヒーを丁度飲んでいる彼に。
「あ、ごめん」
「ごめんじゃないって、あ〜もう……危うく火傷するところだったろうが」
「うぅ、ごめんなさい」
 Wizの少年は心底申し訳なさそうに俯いた……抱きついたままだったが。
「わかったから、もう行けって。怒ってねぇから」
「…………」
「……行けって」
「びたたかーど…」
 腰に抱きついたまま涙目でじっとBSを見る。
 ど〜する、B〜S〜? と、某CMの声が聞こえた……ような気がした。
「む、むぅ……って、だーまーさーれーるーもーのーかー!!
ええい、離れろ! 俺は弟に抱きつかれて喜ぶ趣味はない!」
 思いっきり振りほどこうとしたがWizの次の言葉で動きを止めてしまった。
 いや、止めざるをえなかったのか……
「鋼鉄400個って兄ちゃんの頼みは果たしたのに……」
「うっ……」
「属性ソードメイスはさぞかし強かったんだろうねぇ」
「あ……いや……まぁ……」
「用が済んだらポイなんだ……この両刀使い、兄ちゃんの彼女のまちゃ子たんに言いつけてやる」
「ほべらっ!」
 ついには床に倒れこんだ。
「わ、わかった……ど、どうにかかんがえよう……」
「ありがと〜♪」
 Wizはとたんにパァっと明るい顔になり喜んだ。
「でもなぁ、しばらくプロンテラから動けないんだよなぁ……」
「え〜、なんでぇ〜?」
「なんでって……色々あるんだよ。だから俺はしばらくビタタ狩りは無理だ」
「色々って……まさか路地裏でまちゃ子たんとの公開露出プレイ!?
さすが10歳も下の女の子に手を出した鬼畜野r――ぐあっ!!」
 危ない方向の話をしようとした弟を製造用の金槌で黙らせた。
「黙れ耳年増、ここは18禁スレじゃねぇんだぞ。用事ってのは
姉さんが取ってきた村正とジョーカーカードを売らなくちゃならん」
 スレの利用はモラルを守りましょう。
「まぁ、ともかくだ。俺はビタタ狩り無理だけど、手は打つから」
「手って?……ぉ〜痛ぇ〜」
 殴られた頭をさすりながらハテナ顔のWiz。
「うむ、俺の暇を潰したその姉さんに頼もうかと思う」
「まじ? 騎士姉ぇか……忙しくて頼み聞いてくれないんじゃない?
時間さえあればダンジョン篭ってるような人だし。今さら蟻穴なんて行ってくれるかなぁ?」
「ああ、その点は大丈夫だ。念願のトリプルクリティカルサーベルを作ったらしいんだが
思ったよりも使えなかったらしく、狩りする気が起きんと言って寝てるぞ」
 ……なんか身に覚えありすぎて痛いのは気のせいだろうか。
「んじゃ、その方向でヨロ」
「おう、任せとけ」
「それじゃ、僕は狩り行って来るね〜」
「おう、気ぃつけてな」
 いつの間にか身支度を整えたWizは出かけていった。
「さて……ダメ騎士でも起こしてくるか……」
 なんだかんだで可愛い弟のためにBSは動き出す。
 最初の使命は騎士子を起こすことだ。頑張れBS。負けるなBS。
 寝ぼけた騎士子にマグナムブレイクをくらわない事を祈ろう。

---------------------------------------------
今回はここまで。全く萌えませんね。
一番の問題は男しか出てないって事ですね……自分は男萌えじゃナイヨーヽ(`Д´)ノ
次回! 「騎士子、大地に立つ!?」
……ごめんなさい、タイトル嘘です。_| ̄|○
333名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/20(水) 12:47 ID:7Adkp20o
とある人から「GMって消えるしステルス迷彩?まるでメタルギアだね」というせりふから
思いついたネタ
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gm.ソリッドスネーク「こちらスネーク、スニーキングポイントに到着、オタコン。聞こえるか?」
gm.ハル エミリッヒ「聞こえるよ、スネーク、今回はこんな仕事を任せてしまってすまないね、スネーク」
gm.ソリッドスネーク「いいってことだ。気にするなオタコン」
gm.ハル エミリッヒ「でもなんでステルス迷彩が急に使えなくなってしまったんだろう?まぁあの馬鹿社長の管理では仕方がないか」
gm.ソリッドスネーク「言うな、オタコン」
侵入のプロのgm.ソリッドスネークはBOTの報告を受けたユーザーの調査に来ている、仕事中のgmは普段ステルス迷彩でROのユーザーに姿を
見られないようにしているのだがステルス迷彩が急に故障してしまった為侵入のプロ、ソリッドスネークが今回ステルス迷彩無しの
BOT調査という大役を任せられたのだった、仕事中のgmはユーザーに見られてはいけないのである。そして彼はピラミッド2Fに来て
いた。
gm.ソリッドスネーク「オタコン、今回のBOTターゲットについての詳細を教えてくれ」
gm.ハル エミリッヒ「OKスネーク、今そっちにデータを送るよ」
ピピピピピピピピピピ
gm.ハル エミリッヒ「ボット ウマー。ソルスケC狙いのペコ騎士、噂だとRMTの容疑もあるらしい、えらヘルムに天使かぶとを装備しているらしい」
gm.ソリッドスネーク「なるほど、BOTなだけにかなり金を稼いでいるようだな、天使かぶとならみればすぐにわかりそうだ」
gm.ハル エミリッヒ「!?気をつけてスネーク!二人のユーザーがそっちにあるいて行くよ!」
gm.ソリッドスネーク「ムッ、任せろ。完全変形ダンボール!」
+4ダンボールを装備しました
♂アサシン「ん?なんでこんなところにダンボールが?(つんつん)」
♂プリ  「そんなもんほっとけ、拾っても高く売れない、早くソルスケC出しに行こうぜ」
♂アサシン「ああ、そうだったな、悪い」
二人は去っていった
gm.ソリッドスネーク「ふう、やり過ごせたようだな」
+4ダンボールアイテムを装備解除しました
gm.ハルエミリッヒ「さすがスネーク、でもここからが本番だよ」
gm.ソリッドスネーク「ああ、わかっている」
334名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/20(水) 12:47 ID:7Adkp20o
gm.ハル エミリッヒ「スネーク、操作中のBOTがONしたと情報が入ったよ、気をつけて見てて」
gm.ソリッドスネーク「了解した、引き続き調査を開始する」
♂ハンター 「あ、あれはまさかGM?」
gm.ソリッドスネーク「!?」
スネークはくるっと反転して走り出した
gm.ソリッドスネーク「まずいオタコン、出会い頭に見つかってしまった」
gm.ハル エミリッヒ「存在が公にならなければ大丈夫だ!なんとか逃げ切ってくれ」
gm.ソリッドスネーク「わかった」
♂ハンター「あ、逃げる」
♂ハンターは野次馬心でスネークを追いかけていった
gm.ソリッドスネーク「まずい、オタコン、行き止まりだ、このままでは発見される」
gm.ハル エミリッヒ「むむむ、ここまできたら仕方がないか」
gm.ソリッドスネーク「そうだな、仕事のためだ、彼には犠牲になってもらおう」
そしてスネークは角で待ち構えファマスを構えた
♂ハンター「あっ、やはりGMだったのかっっ!?」
(ぱらららららららららららららららららららら)>ファマスで蜂の巣
♂ハンターは息絶えた
gm.ソリッドスネーク「オタコン、大丈夫だ、死者を出してしまったが存在はバレていない」
gm.ハル エミリッヒ「この場合仕方がないよね」
何も悪いことをしてないのに殺された♂ハンター、人はこれを免罪BANという事は言うまでもない
gm.ソリッドスネーク「そうだオタコン、このハンターの衣装を借りれないか?」
gm.ハル エミリッヒ「え?どうして?」
gm.ソリッドスネーク「今の格好では見つかった瞬間GMとばれてしまうだろう、だがハンターの衣装を着ていれば普通のユーザーになりすませるのではないか?」
gm.ハル エミリッヒ「それはいい考えだね、調査もしやすくなるよ」
スネークはハンターの服を剥ぎアリーナへ送った
335名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/20(水) 12:48 ID:7Adkp20o
ハンターに成りすましたスネークはユーザーに紛れ狩りをしながらBOT調査をすることにした
gm.ハル エミリッヒ「そういえばスネークは武器を持っているの?」
gm.ソリッドスネーク「ハンターボウと銀矢残り120本だな」
gm.ハル エミリッヒ「すこし矢の残りが少なくないかい?」
gm.ソリッドスネーク「大丈夫だ、俺にはこれがある」
ムゲンと書かれたバンダナ、ではなく曙親方の名前の書かれたフンドシを頭に巻いていた
gm.ソリッドスネーク「しまった、俺としたことが巻いて来るバンダナを間違えた」
gm.ハル エミリッヒ「それにそれバンダナじゃないよ・・そんなの何処から持ってきたんだよ」
+7ムゲンバンダナ・・・ではなく曙親方のフンドシアイテムを解除しました
gm.ソリッドスネーク「不潔だからはずすことにした」
gm.ハル エミリッヒ「そんなことよりスネーク、前!モンハウだよ!」
スネークの前にソルスケ4対アチャスケ4対赤こうもり3匹がたちはばかった
gm.ソリッドスネーク「ムッ、この数は少しきつそうだな。ダブルストレイフィング!」
スネークはダブルストレイフィングを連打した、すると
♀プリ「キリエエレイソン。速度増加!」
gm.ソリッドスネーク「ムッ、誰かが支援してくれたようだ」
支援のおかげであっという間にMHを掃討できたスネーク
♀プリ「大丈夫ですか?ヒール」
gm.ソリッドスネーク「ああ・・・ありがとう」
♀プリ「♪」
gm.ハル エミリッヒ「どうしたの!?なにがあったの!?スネーク!」
gm.ソリッドスネーク「心配するなオタコン、俺は無事だ・・・それより」
gm.ハル エミリッヒ「よかった、無事だったんだね、それより?」
gm.ソリッドスネーク「♀プリたん・・・激しく萌え・・・・ハァ・・・ハァ」
gm.ハル エミリッヒ「もう、スネーク、仕事中だぞ!」
gm.ソリッドスネーク「そ、そうだったな」
スネークは♀プリに挨拶を交わし別れBOT調査に戻った

続く・・・・のか?
336名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/20(水) 15:48 ID:dkpqKle6
ごめん、鬱陶しいとは思うけど見逃せなかったので一言。
免罪(めんざい):罪を許すこと
冤罪(えんざい):罪がないのに疑われたり罰せられたりすること
337名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/21(木) 03:28 ID:0zQtsonc
+4ダンボールほしいw
338名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/08/23(土) 21:33 ID:w8upZCTU
クールな女アサの話しの続きが読みたいよ・・・
双子アコを助けた騎士の続きが読みたいよ・・・
ヽ(`Д´)ノ
続編楽しみにお待ちしています。
339名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/09(火) 13:15 ID:ARk5O4wA
初投稿〜(・ω・)
中途半端な終わり方してすいません(;´Д`)人
しかも続き物でごめんなさい(;´Д`)人
小説の書き方ヘタレでごめんなさい(;´Д`)人
生きててすいません(;´Д`)人

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
いつも木の下で眠っているアサシン。

いつもうさぎのヘアバンド。

いつも一緒にお腹の上で眠っているルナティック。

いつもいない時は何をしてるかわからない。

いつも気付けばそこに寝てる。

いつも私の事を赤面させてくるような事しかしてくれない。

いつもどこでもおかまいなし。

だけど私だけのアサシンじゃない。

だけど私だけのアサシン。


プロンテラ南。ある者はPTを組むために、ある者は同じ志を持つ者を探し、ある者は談笑に勤しむ為に。
そんなプロンテラの一角に、昔からここの場所で談笑している一つの女性プリーストのグループがあった。

「この前の臨時最悪だったよ〜・・・。なんでウィザードが敵を引っ張ってくるのよ!!もう!!」

早速愚痴を言っているのが、このグループの中でも一番Lvの高いシルビア。
ちなみにこの愚痴は毎回会う度に始まる。相当運がないというか・・・。

「まぁまぁ、そう言わないの。この前なんか私に敵を引っ張って来いって言う騎士さんすらいたのよ?その騎士さんにはあとから色々教えてあげましたけども。」

そしてそれを笑顔でなだめているのが、ここのリーダー格のセレナ。一部では姐(あね)さんとも呼ばれているとか・・・。
どちらかというとシルビアの方が姐御肌なのだが、噂によるとPTでの仕切りっぷりが非常に的確で誰も逆らえないという理由かららしい。
最近、昔からの相方であったハンターのイーシュと結婚。よく二人で出掛けている。

「姉さん、一体何したのよ・・・。その騎士さん、南無・・・。そしてイーシュ義兄さんの苦労が目に浮かぶ・・・。」

セレナの実妹のセレスが的確な突っ込みを入れる。尚Lvはこのグループの中で一番低い新米プリースト。姉は2番手。
今は必死に姉に追いつこうと必死らしい。
余談だがセレスは姉であるセレナとの痴話喧嘩に今だかつて勝てた事がない。

「でもいいじゃないですか、皆さん。PT狩りとか私にはうらやましい限りですよ。」

と、大人しめの口調で普段はソロで行動を起こしているフィーラ。本編のヒロインだったりする。

「それはあんたが自分からプリースト募集の所に入っていかないからでしょうが。大体おかしいわよ?プリーストに転職してから4、5回しか臨時に行った事ないなんて。」

ちょっといつもより怒り気味なシルビアがキツめにフィーラに突っ込む。

「だって私ってそこまで支援うまくないですし・・・。それに守れない時があったりすると・・・。」

「フィー、それは誰しも通る道だから言いっこなしですよ。今からでも遅くないから覚えてみたら?それとシルビア、少しは落ち着きなさい。」

「毎回毎回イーシュ義兄さんボロボロになって帰ってきたからね・・・、あの頃・・・。」

「あら、イーシュはいいんですよ。私も確かにGH騎士団に行って練習したいだなんて多少の無茶は言いましたけど。」

ちょっと場の空気が固まる。
おそらくここに居るセレナを除いた人間が、GH騎士団で多少の無茶って何?と思うと同時に、イーシュのすさまじいまでの苦労を想像し同情したに違いない。
そして何より、一番固まったのはフィーラである。

「そ、そんなボロボロだなんて!!私にはとてもそこまでして貰って覚えようなんて気にはなれませんよぅ・・・。」

「そこまでしてって事は、やって貰おうとはしてたって事かなぁ〜?どうなのかなぁ〜、フィーラちゃん?」

からかうような口調で話かけるシルビア。

「え?え?え?」

そして多少の確信をつかれて困惑するフィーラ。

「あ〜、あのアサさんの事ね〜。頼んで見たら?きっとやってくれるハズだよ〜。」

やっぱりセレスもニヤつきながらからかってくる。
ちなみにさっきからセレナの方は旦那であるイーシュからのWISにかかりっきりになっていた。

「ち、違いますよ!!クールはいっつも寝てるかどっかに行っちゃってるかだしきっと無理ですってば!!」

「へ〜、誰もまだクールさんとは言ってないんだけどね〜。あたしはアサさんって言っただけですよ〜?」

顔がじょじょに赤くなっていく。何か反論したいのに何も言えない・・・。そんな表情。

「ほら、噂をすればなんとやらね。クールさん来た見たいよ?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

お目汚し申し訳ない(;´Д`)人
息吸ってごめんなさい(;´Д`)人
340名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/10(水) 18:12 ID:fWQetYqg
>>339
(;´Д`)b<GJ
続きお願いします(;´Д`)人
341別れの言葉 1/2sage :2003/09/14(日) 02:37 ID:Hp3w1RMs
もう、終わりにしよう。

 甲冑を身にまとった男がそうつぶやく。その男の表情は疲れ果て、やつれていた。
 彼の名前はクローフ、砂漠の街モロクを中心に活動している。
 プロンテラ騎士団に登録はしているものの、騎士団のルールを嫌い、抜け出し、地方に回っては、人々に害を為すモンスターを駆逐し、生計を立てていた。
 …ある日までは…。

 多くの騎士は騎士団からの命を受け、洞窟に潜り、膨大な数のモンスターを駆逐し、寸暇を惜しみ、自らを鍛え上げるのに対し、彼はまったく自由に行動していた、それだけに騎士団では異端と扱われ、また自身の生活も楽ではなかった。
 だが、そんな彼だからこそ、騎士団以上に人々に慕われていた、それと同時に嫌われもしていたが…。

 半年以上前のある日彼はアルベルタで一人のプリーストと出会う。名前はリーン、容姿はさほど美しい部類には入るわけではなかった。
 だが、クローフとリーンが恋に落ちるのはそれからすぐの事だった。
 二人で色々なところへ行き、二人で語らい、二人で、二人で…。
 二人を見るものは、あのクローフが。と驚きながらも、仲睦まじい二人にどこか暖かい物を感じていた。
 それと同じくして、クローフは少しずつ変わってゆく。
 騎士団を離れた位置で、騎士として、人の為に、と闘いつづけてきた彼は、いつしか思う事は、リーンを守る為、リーンに何かをプレゼントしたいんだ。
 そう、リーンを大事にしたい。していきたい。そう変わっていった。

「クローフ、危険になったら帰ってきてね。怪我しないでね。生きて帰ってきて。」
「リーン、キミがいるから僕は頑張れる、キミがいるからボクは…。」

 そうして、幾つもの日々が過ぎていったある日、クローフは騎士団から出向命令を受ける。
 クローフはそれに従う、一月以上にもなる過酷な任務だ。
 だが、彼は、これが終わればリーンに会える。リーンとまた過ごす事が出来る。

 命令された任務を終え、彼を待っていたのは、どこかよそよそしい笑みを浮かべ、彼を労わるリーンだった。
 彼はリーンに再び会えた事を喜ぶ事で精一杯だった。
 彼女の持つよそよそしさに気付くことは無かった。
342別れの言葉 2/2sage :2003/09/14(日) 02:38 ID:Hp3w1RMs
 そしてある日、死刑宣告にも似た話を彼は聴く事になる。
 リーンは、彼に聴いて欲しいことがあると、その内容は…
「あの、ね…、今ね、私ね、付き合ってる人が…いるんだ…。ゴメンネ。でね、その人とね、け、結婚しようかな…って…。祝福して…よね。」

 途端、彼の体が崩れ落ちそうになる、何故、どうして、それが彼の心の中で渦巻き、それが彼自身を責める。
 意識の奔流、それに押し流されそうにながらも、彼はなんとかよろけた体を立ち上げる。

「ゴメン、できそうにないよ…。」
 顔面を手で覆い、何かを隠すように俯き答える。
「そっか、そう、だよね…、ゴメン、ね…。」
 リーンは俯き、涙を顔に浮かべながる。

「そう、だよな、僕が悪い、一月以上…、長かったよね。」
「うん、うん…。でも、クローフが悪いわけじゃないよ…一月、待ち続けれなかったんだもの…。多分私は繰り返すよ…。」

 そうして、その後、二人は別の道を歩む。
 その後二人が街中で顔を合わしたとしても一言も言葉を交わす事は無かった。

 それがあったのが先々週あたりの事だ。

 人の為と闘いつづけた彼はいつしかリーンとともにあるために闘っていた。
 だが、彼は今闘いつづける意味を無くした、騎士としての熟練もその歳にして相応以上のものであった、上には上がいる、そう思い体を奮い立たせようとも、心が奮う事はなく、次第に彼の世界は色あせていった。

 もう、騎士である事をやめよう。

 再度彼は呟き、色あせていった世界を眺め、カプラ職員にプロンテラへの転送を願い出た。
 次第に体を包み込む光の中で彼は呟いた。

「さよなら、リーン。さよなら、愛し切れなかった世界よ…。」

 光に包まれ消えてゆく彼の顔はどこか清清しく、晴れやかだった。
 だが、その後彼をプロンテラで見た者も、彼を別なところで見た、という人は誰一人としていなかった。
343あとがきsage ##、といって通じる人は何人いるのか。 :2003/09/14(日) 02:55 ID:Hp3w1RMs
とりあえず、気分で一気に書き上げてしまってみたりしたわけで。
時間軸がわかりにくい…。

現在→過去→少し過去→現在に戻る、とまぁ、ちょっと難解な時間軸。

勢いで書いたため、ちょっとグチャグチャかもしれませんが、ゴメンナサイ。
つーか、あまり萌えないね、ゴメンナサイ。
燃えでもないね、ゴメンナサイ。
生きていてゴメンナサイ。

      ||
      ||
    _||○___
     \_| |_/
     (@`ノノ| |))  ぴぃ。
     ノハ-|__|ノゝ
    .ζ(ヽilヽ
   ζ  )u u
      ヽハノ

      -━-

さて、もう一本書くぞー。
tu-ka、今書いてますが、コッチは…まぁ、皆さんお待たせしました、って事で。
出来上がったらすぐにでもー。
344名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/14(日) 04:58 ID:EODgdosU
せつねえええ(つД`)
ちょっと泣きそうになったよ。

GJ
345名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/14(日) 20:46 ID:LQD22o9c
せつねぇぇぇぇ・。・゚(ノд`)゚・。・
同じく、ちょっと泣きそうになった。
(,_ノ`)b GJ
346名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/15(月) 06:16 ID:pcZJhWdA
せつない(ノ_・。
泣けるよ‥‥
GJです
347御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 06:39 ID:XgsDkz7o
 今年も、たった一本の桜が華やかに、賑わい、そして散っていく。
 それは幾年も繰り返され、そしてこれからも繰り返される。
 その下を幾人もの人が通り、時に懸命に咲き乱れる花を愛で、賑やかに生い茂る葉を鬱陶しげに見上げ、
静かに舞い降りる葉を悲しげに見つめ、寂しげに佇む古木をお構いなしに通り過ぎる。

 それを幾年も繰り返し、その桜は近くを通る人達をただ、眺めていた。
 たとえ飢饉があろうとも、ひとつの王朝が終わりを告げようとも。
 その桜はただ、そこに佇み、人を見守ってきた。

 そう、彼らの事も見守っていた。
 フェイヨンに済む、三人の少年達の姿も見守っていた。

---------------------------------------------------------------------------------------------------

 フェイヨン、ミドガルツ王国の東に位置し、独特の文化を持つ都会。
 この町には一人の少年がいた、名前を龍飛(ロンフェイ)という、龍飛は二人の幼馴染とともに家族のように過ごし、育ち、この街を愛した少年。
 少年にとっての二人幼馴染は二人とも少女である。
 一方は小亞(シャオア)という。小亞の家は得に変哲もなく、かといって取り上げるべき点もない。だが、どの家よりも暖かい家族である、
小亞はその家に生まれた極々普通の少女であった。
 そして、もう一方過去の慣例に習う家に生まれた少女である。
 それほど遠くない昔、この街には金がなく、街の最奥にある洞窟へと死者を埋葬しなければならない事があった。
 そして、それが慣例化し、今でも洞窟の奥へと埋葬する家もあるという。
 そのような家に生まれた少女、神露(シェンルー)。彼女は幼いころから病魔に犯されていた。
 決して直る事の無い病にその幼い心と体で抵抗し続け、幼いその命の灯火は人よりも強く輝く。
 その強く輝く灯火は悲しい結末を迎えてしまう。
 十二歳、そのあまりもの幼さで神露は逝ってしまったのだ。
 幼き龍飛、小亞の胸に、受け止めきれないこの出来事は癒える事のない傷として深く刻み込まれる。

 神露の家族は家の教えにならい、通夜を済ませ、その翌日の朝、
自警団を率いてフェイヨンの奥に位置する弓手の村にある洞へと神露を葬りに向かう。
 道中蝙蝠や蛇に脅かされるも、滞ることはなく、無事埋葬し、フェイヨンへと戻ってきた。

 龍飛、小亞、神露には約束があった。
 三人で冒険者になり、この世界を旅しようという、幼心ならではの大きな夢であり、また無謀な約束があった。
 だが、これで約束は果たされる事はなくなった。

 六年後に起きる、とある出来事がなければ…。
348御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 06:40 ID:XgsDkz7o
 六年前には幼く小さかった少年。
 今その少年はすっかりと成長し、あの頃には見えなかった物が見えるようになり、見えていた物のいくつかを見ることができなくなっていた。
 それこそが少年、いや、もう彼と言うべきだろう。
 彼が成長した証なのだ、得た物の代わりに失う物もある。そうして彼は今まで成長してきたのだ。たとえ、彼がそれを望まなくとも。

 がやがやと賑わう首都の雑踏をくぐりぬけ、彼は北へと向かう、久しぶりの帰郷のために。
 衆道、ではない、修道に付いている少年と一言二言かわし、いくつかの寄付を彼は少年に渡す、すると少年はにっこりと微笑み印を宙に切る、
すると、彼の足元は光を帯びはじめ、その光は彼を包みあげる。
 光が消えると、そこにいたはずの彼は、遠く離れた彼の故郷、フェイヨンの手前へと飛んでいた。
 少年は彼が飛んだのを確認すると、誰にも聞こえないような声で、いってらっしゃい、とつぶやく。

 フェイヨンへの橋を目前に控えた彼を最初に見つけたのは、彼に弓を多少手ほどきし、彼に師匠と呼ばれていた青年だった。

 彼に声を掛ける青年。
 成長した彼に少年だった頃の面影は薄く、彼がその少年かどうかは疑わしいほどであり、青年はどこか不安げになっている。
 彼は青年の顔を見るとすぐに誰だかを思い出す。
「師匠、お久しぶりです。」
「あぁ、龍飛だよな、よかった。別人かと思ったよ。」
 そういって師匠は彼の頭を軽くなでるが、彼はそれをくすぐったそうに軽く身を捩りかわしてしまう。
「師匠、お変わりなくて何よりです。」
「あぁ、龍飛こそ。
 だが、獲物を弓ではなく、剣に変えてしまったんだね、どうだい。問題ないかい。」
 心配そうな顔で師匠は聴くが彼は笑顔でコッチの方が手に馴染む、と答える。
 その答えに師匠の顔は一瞬寂しさが浮かんだのを彼は気づかなかった。
「まぁ、ここで立ち話もなんだし、行こうか。」
 彼はフェイヨンへの橋を渡る師匠の背中を追うように歩き出した。

「小亞は元気にしてるのかね?」
「あぁ…、元気といえば元気なんでしょうけど、どうなんでしょう。アイツは協会、コッチは騎士団。
 同じプロンテラですが、そうこまめに連絡は取り合ってないですからねぇ。」
 師匠は龍飛の答えにいくらか要領がつかめなかった。

 そして、龍飛の実家につき、一通りの挨拶を済ませたあと、龍飛の自室に移り、なぜ急にフェイヨンに戻ってきたかについて説明した。
「さて、弓手村の洞窟を調査探索の命令を受けてきた、と…。」
「えぇ、本当はパーティーで来るはずだったんですけど、第三層に存在するモンスターの量とか、その程度なんで、自分一人で充分だろう、と。」
「なるほどねぇ、確かに騎士であるなら第三層程度なら問題は無いかもしれんが…。装備の方は整ってるのかい。」
「えぇ、騎士団から特別に支給品が出ました。火属性を持ったブロードソードと、いくらか精錬された防具一式ですね、
 カードスロットも見当たりませんし、差し込まれた様子も無いですが。」
「まぁ、それほどであれば充分だろう。」
「えぇ。強く、なれましたから…。」
 一瞬の沈黙。懐かしい何かを思い出そうとする龍飛の表情。
「六年か、早いもんだな。」
「そうですね。早いです、でもやっぱり長かった気もしますが。」
 再度沈黙。師匠は知っていた。六年前の三人の仲が良かったこと、そしてあの時の約束。

 結局その後二言三言言葉を交わし、師匠は帰宅した。
 予定は明後日から。久しぶりにアイツの母さんの顔でも見てこよう。
 そう思いながら龍飛は眠りについた。
349御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 06:41 ID:XgsDkz7o
 今、龍飛は洞窟の第三層にいる。
 騎士団より借り受けた装備をまとい、道具袋を腰に下げ、そして、その手には一つの袋を握りしめている。

 昨日のことだ。
 眠りから冷めた龍飛は久々に帰ってきた故郷をゆっくりと眺めながら、今は亡き幼馴染の家へと向かう。
 道すがら、幼馴染が無くなった頃の自分が重なり会うような少年と少女の組み合わせを見つけ、顔がほころんだりもした。
 それを見てはアイツ──聖堂で一人書物に埋もれるのを好むもう一人の幼馴染──に声を掛けて、
連れて来た方が良かったか、などと思ったりもする。

 しかし、変わらない、何一つ変わらない。
 あの頃の故郷のままだということに涙さえ毀れそうになる。
 そんな思いを振り払うかのように頭を振ると目的の家は目前となっていた。

「龍飛じゃないか、久しぶりだねぇ。」
 思いもよらないところから、真後ろから声をかけられる。
 目的の家の御夫人、神露の母だ。
 お久しぶりです。と挨拶を返し深く頭を下げる。
 そして龍飛は家へと招きいれられる。

 盛大な馳走を施され、会話はあの時の事を主軸に進んでいく。
 一通り会話も終わった頃に、そうだ、ちょっと待ってなさいな。と言い席を立つ。
 一人取り残された龍飛は部屋を見渡す。
 ここもあの頃とは変わりない。
 神露と小亞と一緒にままごとやらなんやらに興じた時の雰囲気がそのままに残っている。
 そう思い見渡していると、御夫人が帰ってきた。
「久しぶりにあの娘の部屋を整理してたら、こんなものが見つかってねぇ。
 多分龍飛に宛てた物だと思うんだけど…。よかったら貰ってあげて。」
 そう手渡されたのは、少し古びた紙が丸められ赤い紐で留められた物だ。
「中身は読んでも…?」
 龍飛の問いに御夫人はうなづいたのを確認すると、龍飛は慣れた手つきでそれを開く。
 龍飛はその紙に書かれた少し稚拙な感のある文字の群を目で追う。
 その内容を単純に言うと少女が好ましいと思える異性、つまりは男に宛てて書くそれだ。
 その文字の群の端々に神露と龍飛自身にしかしらない──おそらくは神露が御夫人に話したのかもしれない──
 そんなことが見受けられた。
 それを目で追い続ける内に、龍飛の胸の内には穏やかで暖かくて、けれども突き刺さるような物があった。
「多分、コレは自分に対して、でしょうね。」
 龍飛が何かを噛み殺すように言葉を吐き出す。
「そうだろうと思ったよ。あの頃のウチの娘ったら口を開けば龍飛の事ばかりだったからねぇ。
 さ、そいつはうちの娘からの土産だと思って受け取ってちょうだいな。」
「えぇ、そうします。」

 その後、またしばらく会話が続き、日は暮れていった。
 そんな風に、昨日を過ごした。

 今龍飛が握りしめている袋には、昨日受け取った手紙──神露から宛てられた「宛名のない手紙」──が入っている。
 龍飛はそれを取り出し見つめ、ふっと軽く笑うと騎士団からの任務についた
350御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 06:42 ID:XgsDkz7o
 龍飛は第三層にある泉の前に腰を下ろしている。
 ここにたどりつくまでの間、いくつかのムナックやボンゴンに囲まれながらも、辛々に切り抜けてきた。
 その先に見つけたのがこの泉だが、チラホラとヒドラを見かけるが触手が届く距離─つまりはヒドラからの攻撃を受ける距離─ではないのを理解して少し休憩している。
 龍飛は第三層には初めてくる。
 神露が埋葬されたのもここ。昔疫病で幼くして死んだ人達もここに埋葬されている。
 そして、その年頃の娘達はムナックとして、少年はボンゴンとしてこの第三層を徘徊している、という噂だからだ。
 ただ、神露はムナックと化した少女達よりはいくらか年が上なのだが…。

 龍飛が第三層に、いや、この洞窟にこなかった理由は、ここで神露を見るかもしれなかったから。
 死んでしまい、還ってくる事はなく、出会えば殺しあう相手となってしまう幼馴染を見るのが、剣士だった頃の龍飛にはたまらなく嫌だった。
 いくらかの年月を経て、騎士として成長した龍飛にはそのような感慨よりも、任務だからやらなきゃならない、という気の方が強くなっていた。

 もう一度龍飛は袋の中の手紙に目を通す。
 目を通し終えるともう一度最初から目を通す。
 それをニ度三度繰り返していると、龍飛の手紙を覗きこむように座っているムナックがいた。
 龍飛はそれに気付くと後ろに飛び退る。
 ─コイツはなんなんだ…、攻撃してこない…。─
 本来ムナックは魂の入れ物である亡骸の安息の地としての第三層を守ろうと侵入者に自発的に攻撃をかける。
 だが、どうした事かこのムナックは攻撃してこない。
 少し距離の離れた龍飛の持つ手紙を精気の無い眼で見つめつづけている。

 ジリッ

 足を軽く地面の上を滑らせ、少し近づく。だが、そのムナックの視線はやはり手紙にのみ注がれている。

 一歩、一歩。近づけどもムナックの視線の先はやはり手紙だ。

 もう一歩…、手を伸ばせばムナックに触れられるほどの距離だ。
 ようやくムナックが動いた。

 手を上げる、攻撃するような振りかざす動きではなく、何かを受け取るかのように手を伸ばす。
 そこで龍飛は気付く、このムナックが他のムナックよりはいくらか大きいことに、死んだ者にこう言うのは少し間違っているが、いくらか歳が上の少女だという事に。
 何より、顔立ちが神露そのものだと言う事に。
 龍飛はムナックの手に手紙を載せる、元の持ち主に返すため。

 ムナック──いや、神露だった者──はその手紙を開き、読み始める。声には出さずかみ締めるかのように。
 途端に体が床に崩れ落ちる。
 ドサッと音を立てて床に倒れる。

 手紙は消えていた。
 ムナックの体は土へと還る、死者として、灰となって。

---------------------------------------------------------------------------------------------------

 数日後、龍飛はフェイヨンに別れを告げ首都プロンテラへと帰ってきていた。
 その時には大きな──少年、もしくは少女でも閉じ込めれそうなほどの──卵のような物を抱えていた。
351御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 06:43 ID:XgsDkz7o
 龍飛は今聖堂の中にいる。
 先日、帰ってきた時に抱えていた卵とそれを孵化させるための機会を持って、聖堂の書庫へと向かっている。

「小亞〜、いるか〜。」
 書庫の中で大きすぎず、けれど、中にいる人──といっても一人しかいないが──にはちゃんと聞き取れる声で。
「うるさいわね、静かにしてよ。こんなところにいるの私だけなの知ってるでしょう。」
 本を小脇に携え本棚の置くから一人の女が現れる。
 どこから入ってきたのかわからない小鳥が彼女の近くを飛び回っている。
「あぁ、すまない。まぁ、それよりも、コイツみてくれよ。」
「…コイツっていうのは、あなたのバカ面?それともよりバカっぽく見せてるその卵?
 それともその孵化機?」
 呆れた顔で女──小亞──は龍飛を見つめている。
「バカ面は無いんじゃないか?
 まぁ、いいや。この卵さ。」
 ふぅ、と一息つきながら卵と孵化機を床に下ろす。
「ふぅん、この卵は…ムナックね。あなた、そんな趣味あったっんだ。」
 ケダモノ、とでも言わんばかりの表情だ。
「これから、持つのも悪くないかもしれないな。」
 龍飛がボソりと呟く。
「変態…。で、この卵がどうしたの。」
「まぁ、孵化させればわかるさ。」
 そうして、龍飛は卵を孵化機にセットし、うきうきした表情で見守る。
 小亞は何が何だか、と余計に呆れた表情で本を読むのを再開する。

 数分後、卵が割れ、中から一人の──フェイヨンの洞窟第三層にいた頃とは違い、顔の色もよく、
少しばかり他より大きめの──ムナックが現れた。
 丁度その時、龍飛はトイレへと向かっていていなかった。一方小亞は本を読むのに集中していたため、
卵が割れた事にまったく気が付いていない。
 そのムナックはあたりを見回すと不思議そうに首を傾げる。
 誰もいない。書庫の中は少し暗い。途端にムナックは寂しさを覚えてくる。

 カチッ。

 ムナックはドアの開いた音にビクッと身を竦め、ドアを凝視する。
 ドアがゆっくりと開き龍飛が顔を出す。
 龍飛とムナックの視線が交差する。

「しぇ、シェンル…?」
「ろんふぇ…?」

 二人の表情がパッと華やぐ。
 シャオアも二人の声に気付き、顔を上げる。
 その後、聖堂内に二つの音が響きわたる。
 ムナック、いや、神露の喜びの声と、神露に飛びつかれ押し倒されるロンフェイが床に強打される音だ。
352御霊之器─約束をもう一度。─ 後日談。sage :2003/09/17(水) 06:54 ID:XgsDkz7o
「はぁ、災難だったわ。ほんとに…。」
 シャオアが顔を顰めながらロンフェイをにらみつける。
「ゴメンゴメン。
 でも、いいだろ、懐かしの対面だったんだから。」
「そーそー。」
 ロンフェイとムナック、いやシェンルーが晴れやかな笑顔で返す。

「まあ、確かにそうなんだけど…、納得いかないわ…。」
 この一人と一匹─いや、二人というべきかどうか─にはシャオアも形無しになっている。
「なんで、いいじゃないか。」
「うんうん。」
 ロンフェイの言葉にシェンルーがうなづく。
「あー、もうっ。
 いい、ロンフェイ。貴方が来ると、私はね、見習の子達に変な事聴かれるんだからっ!
 それにっ!!…あ、あー…。いや、やっぱりいいわ…。」
 真夏に雪が降るほどに珍しくシャオアが怒号を上げるが、何かに気付いたかのように言葉を濁す。
「なんだよ、気になるな。」
「そだよ、シャオ、ちゃんと話しなよ。」
 シェンルーの言葉に連られて、シャオアは言葉を発しそうになるが、その言葉の内容に赤面してしまい、
言葉が出なくなる。
「変なの。」
「んーぅ…。」
 ロンフェイは呆れ、シェンルーは困った表情になっている。

 シャオアにとって、昔の思い出を変な形で掘り起こされたようなものだ。
 さらには、昔の想い、─ロンフェイがすこし気になっていた、いや、どちらかというと好きだった、異性として。
 けれどシェンルーがロンフェイの事を好きだという事を知っていたから、強引に蓋をした──
 それさえも掘りおこされたように感じていた。

 そして、シェンルーはそんなシャオアに気付いている。

 さて、ロンフェイはというと…
「まぁ、これであの頃の約束、果たせそうじゃないか?
 ほら、三人で冒険者〜ってやつ。」

 知らぬは男ばかりなり、この後どうなることやら。
353御霊之器─約束をもう一度。─sage :2003/09/17(水) 07:06 ID:XgsDkz7o
あ"〜〜〜書き終わった〜〜

ってことで、シャオアさんモノ一丁上がり。
コレにて本家シャオアの物語は終了しようかな、とか思ったり思わなかったり。
今見ると通し番号付けわすれてますね、ゴメンナサイ。

言い訳:いつものシャオアさんモノの文体じゃないのは、主人公はロンフェイにしたから、です。
    後日談だけ名前がカタカナなのは作品の持つ空気を変えれるか、っていう実験です。

とまぁ、これでシャオアの特徴は全部書いた(はずだ)から、後はやってくれる人に頑張ってもらえたらなぁ、と思ってたりします。

結局三つぐらいしか書いてないのかな・・・?まぁ、いいか。

これからシャオアネタは誰かに継承されるのかを楽しみにしつつ、この辺でぇ〜〜 (゚¬゚)ノシ
354花のHBsage :2003/09/17(水) 19:24 ID:ZzuDHJWs
「オラオラ、もっと無様に逃げろよw」

 アサシンの短剣がイスフィの服を切り裂いて行く。

「くっ……このぉっ! ダブルスト……」
「遅ぇよ、見切れるぜw」

 人も少ない、PVPルームの特殊装置で作られた仮想のアルベルタの町。
 ルームに入るときに配られる自動順位カウント装置にも、イスフィとあの三人以外の気配すらない。

 ……私、何やってるんだろう……

 イスフィは必死になって弓に矢をつがえながら思った。

 ハンターになって、まだ日も浅いイスフィには足止めにも攻撃にも使える罠の数々もまだ使いこなせない。
 かたや少なくとも修練を積んでいるアサシンは動きが早く、やすやすと弓での攻撃を避け、遊びのように
イスフィの服だけを切り裂く。

「うわー……エロイ格好になってきたね」
「後はほとんど下着だけだもんな。俺達が相手しなくてもヤツが倒してくれそうだ」

 騎士とウィザードがニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら、その様子を見ていた。
 事実、ハンターの動きやすい服装が仇となり、元々少ない布地は裂かれて下着があらわになっている。

 ……なんで、後悔してるの?
 自分で望んだ結果でしょう……?
 それとも、あの人が助けに来てくれるとでも思ったの?

 自問自答して、涙が出てくる。

「期待してろよw 丸裸にしてやるからよー」

 余裕の笑みを浮かべて、アサシンが二人に振り向いた瞬間。
355花のHBsage :2003/09/17(水) 19:25 ID:ZzuDHJWs
 突然カウント装置が点滅して、目の前に人が現れた。
 と同時に素晴らしい速さで、懐に迫り込みクリティカルを叩き込まれる。

「……っ?!」

 何が起きたのかわからない表情で、アサシンはひざをついた。

「あ……!」

 銀色の髪の毛が逆光できらめいた。

「……丸裸になるのはどちらだろうな」

 天使のヘアバンドを身につけたアサシンが、ジュルを持った手を交差させるようにして立ち、
冷たい瞳で見下ろしていた。

「……な……なんで……?」
「あんた、これ落として行っただろ?」

 イスフィの質問に、スレイは花のヘアバンドを傍らに落とした。

「届けにきただけのつもりだったんだけどな……気が変わった」

 スッ……と周囲の空気が冷たくなる。
 スレイの表情も、それに伴って能面のように冷たくなっていった。

「クソ……いいところで、邪魔すんじゃねえよ!! この格好だけのアサシンがぁぁっっっ!!!」

 スレイの背後から、騎士が渾身の力で斬りかかる。
 それをまるで風でしなる柳のように優美に避けて、バックステップで逆に騎士の背後をとった。

「そういうセリフは、100年早いね」

 囁くように耳元で言い、素早く自分の腰から短剣を抜き放つ。

「お前らにはハンデに、カタールじゃなくて短剣使ってやるよ。ありがたく思いな」

 嘲笑をこめたその言葉に、ひざを付いていたアサシンが激怒した。

「二刀をなめるんじゃねぇっっっっっ」

 しかし、その攻撃も空を切る。

 レベルが……違いすぎるんだ……

 イスフィは、改めてスレイのレベルを考えてゾッとした。
 自分がアレだけ苦戦していたアサシンがまるで子供にしか見えない。
 その上、スレイは騎士とアサシンの二人からの攻撃を難なくかわし、冷たい笑みすら浮かべている。

「………氷の精霊王フェンリルよ、汝に願うは凍える空間! 今、盟約の元に『ストーム・ガスト!』」
 
 魔法陣が現れ、凍結の大魔法が周囲を覆った。

「アハハ……アハハハハハッ…!! 僕を放っておくから悪いんだよー?
 凍った後にじっくり始末してあげるよ!!  アハハハハハハッ」

 狂気じみたウィザードの笑い声が響くなか、大魔法が消える。

「……残念だったな。俺には魔法は無効だ」

 イスフィを庇う様に抱きかかえたスレイが凍ることもなく、現れた。

「なっ……なんでさっっ!! 魔法が……魔法が無効だなんて……そんなばかなっ?!」
「黄金盗蟲カード。その名前と効果ぐらい知ってるだろ?」

 その言葉を最後に張り詰めた糸のようにイスフィの意識は途切れた。
356花のHBsage :2003/09/17(水) 19:29 ID:ZzuDHJWs
お久しぶりです。続き遅くなっちゃってゴメンナサイ。
待っててくれた人ありがとう。

とはいえ、金ゴキカードの効果間違ってるかもしれないけど、
そこはそれ、見逃して下され・・・・・・・

では、また後ほど。
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357名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/17(水) 20:48 ID:83/4HHpQ
>>356
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

続きが気になってた一人です
これまた続きが気になるところで・・・
気長に待ってますんで、頑張ってください〜(´∀`)ノ
358名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/18(木) 13:12 ID:8g2SyS0I
キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
まってました(´д`;)続き期待してますー
359さよなら埼玉また来て四国sage :2003/09/20(土) 18:16 ID:D8w07oj2
少女が歩いている。

大きな砂色の外套に身を包んだ少女。外套の下には、少女の身には不似合いな
シーフクロースと呼ばれる闇の色の戦闘服。
伏目勝ちの瞳の奥にある決意を抱き、ルーンミドガッツの大地と風と日の光を
愛しむように、ゆっくりと歩いている。

雑踏と闇の世界、そして、それらをつなぐワープポータル・・・
この三つが少女の日常であった。

彼女に友達は居ない。

時の流れとともに、かつての友達は消えていった。
あるものは、この世界を見限り去っていった。
あるものは、別に、自分の居場所を見つけていった。

友達が去ってゆくたびに、彼女は力を求めるようになった。

「一緒に歩くには、君の足は速すぎる。」

また一人、友達は去った。

乾きを癒すために力を求め、力を手に入れる度に乾きは強くなっていった。

孤独。そして決心。

夢を追いかけて冒険に出たあのころを、友達に囲まれて楽しかったあのころを
なぞるように、彼女は日の光の下を歩く。

彼女の、最後の冒険。

****************************************************

首都を出て、南西へ歩く。
暑い砂漠。わたしの旅立ちの地も暑い砂漠の中にある街だった。
特に目的地はなかったけれども、私の足は思い出をなぞるように南西へと向かった。

ペコペコと死闘を繰り広げているノービス、その一生懸命さが可愛かったのでヒール。
こんなこと、一度もしたことなかったけど、今日は特別。

「ありあgとう」

舌足らずなお礼が、また可愛い。でもちょっと恥ずかしかったので、足早に逃げる。

改めて思う。わたしはこの世界が好きなのだ、と。
例えそれが、過去の思い出にすがっているだけだとしても。
でも、つらい。孤独が、つらい。孤独なこの世界が、つらい。

だから・・・わたしは決心した。
この世界を去ることを・・・。

わたしの足は西に向かう。
灼熱の大気の向こう、薄く揺らめく黒い森。
ちっぽけな力を高めるために一生懸命がんばった場所。
鍛錬に疲れたみんなが、休憩しながら笑いあった場所。
そこに行けば、いつも友達の誰かが居た場所。
そして、あの時のみんなはもう居ない場所。

埃が入ったっぽいので、目元をちょっとぬぐった。

****************************************************
360359 血液中のアンフェタミンsage :2003/09/20(土) 18:19 ID:D8w07oj2
少年が走っている。

だぶついた制服は修道院のアコライトが身に付ける一般的なものだろう。
気が動転しているのか、もともと運動が得意でないのか、滅茶苦茶な呼吸で
森の中を走っている。

夢とか希望とかに満ち溢れた、少しばかり世間知らずな普段の少年の姿はそこにはない。
少年は、彼に迫る具現化した「死」から逃げているのだった。

****************************************************

「なんでだよぅ・・・」

涙目になりながらボクは呟く。
理不尽な運命への呪詛の言葉だ。
クールな大人なら「糞っ」とか言ったりするんだろうけど、ボクにはちょっと抵抗がある。

そもそもは、無茶せずのんびり修行しよう、というコンセプトでここに来たはずだった。
兄さんが作った水チェイン、エルダーウィローで鍛えるはずだったのに。

誰だ古木の枝を使ったのは。
ボク怒らないから出てきて正座しなさい。煮え湯を飲ませてやる。

耳鳴りがする。酸欠だろうか。思考がまとまらない。でもとまれない。あいつはあの図体だ。
木々の間を縫うように逃げれば。ってか木々を紙くずみたいに吹き飛ばさないで。環境を大切に。
見たことの無いモンスター。闇色の馬にまたがり闇色の甲冑に身を包んだ闇色の巨人。
黒くて硬くて大きくて初めてのボクにも決してやさしくない。そして、多分、きっととても痛い。

壊れかけていた思考が急に一つにまとまる。
ボクが木の根に足を取られて転んだから。

・・・確実な死が目の前にあることがわかってしまったから。

****************************************************

かつての溜まり場、憩いの場。
そこは閑散としていた。

少女は一つため息をつき、目を閉じる。
彼女のまぶたの裏にはいったい何が映っているのだろう。

丸太に座る剣士だろうか。
剣士の小さな冒険譚に聞き入るアコライトの少女だろうか。
魔法のコツを教えあっている仲良しのマジシャンだろうか。
あるいは、そんな彼らの輪に入るべく、精一杯の勇気を振り絞って声をかけようとしている
シーフの少女だろうか。

彼女の思考はそこで一時中断される。
だれも居ない憩いの場、現実がよみがえる。

彼女が嗅ぎ取ったのは、闇の匂い。
彼女は、砂色の外套の下で、そっと武器を握った。

****************************************************
361359 そしてラブコメへ・・・行けたらいいなぁsage :2003/09/20(土) 18:23 ID:D8w07oj2
鳥肌が立つような金属音。

目を開けてみた。闇色の巨人が居た。見知らぬ女の子が居た。
巨人の一撃をそらしたのは、女の子が両手に持っている奇妙な短剣らしい。
前におとぎ話で読んだことがある。きっと、カタールとか呼ばれる類の武器だ。

ボクはまだ生きている。生きていることが不思議。
そして、ボクと同じくらいの年の女の子が闇色の巨人と相対しているのが不思議。

女の子の連撃が巨人の生命力を確実に奪ってゆく。
巨人が剣を振るう。
ボクの身長の3倍以上ある剣。空気の爆ぜる音と共に薙いだのは女の子の影。
再び巨人が剣を振るう。
耳障りな金属音と共に女の子が吹き飛ぶ。
即座に立ち上がる女の子。とっさに致命傷を防いだのだろうけど、額から細いあごまで赤い流れが
伝わっている。





「・・・だいじょうぶ?」

その女の子に声をかけられて、ボクは自分が呆けたように座り込んでいたことに気づいた。
巨人は力尽きると、空気の中へ溶けるように霧散して行った。

「だいじょうぶ?」

もう一度、問われる。

「は、はい」

「・・・そう・・・」

そう、と確認した彼女がボクに突然倒れこんでくる。ボクでも苦も無く支えられる軽い体。
外套越しに感じる細い肩。

そして・・・べったりと濡れた感触と、血に染まったボクの手を見て・・・
ボクは、自分の愚鈍さを呪った。

ボクを助けてくれた人が死ぬ。
ボクが本当に力を使うべきところで何もできなかったから死ぬ。
ボクと同じくらいの年で、この子は全てを終えてしまう。ボクのせいで。ボクのせいで・・・

遅すぎたヒールをかけ続ける。
傍から見た人は、ボクの事を「半狂乱」というのだろうか。
自分の死をすぐ目の前に感じ、そして他人の死を目の当たりにし、ボクはおかしくなっていた。
真の手遅れにはまだなっていない。・・・なっていない・・はず・・・。

****************************************************

いや、死んでないって

泣きじゃくりながら「死なないで」とヒールをかけ続ける男の子に冷静につっこむ。
でも、口が動かない。声が出ない。
・・・しこたま頭を打ったからなぁ・・・
彼には気の毒だけど、このまま寝ちゃおう。すごく疲れたし。
彼も落ち着けば、わたしが大丈夫なことがわかるだろうし。

・・・埋葬はしないでね^^;・・・

今日はいろいろなことがあった。
いつもの、時計塔やグラストヘイムで適当に敵を解体し、入手したアイテムを売るという作業。
もう習慣になってしまったわたしの日常からは考えられないくらい、こころをつかった。

こんなにいい気持ちになったのは何時ぶりだろう?
わたしに他人と関わる心が残っていたことが嬉しかった。
わたしの手にした力で誰かを助けることができて嬉しかった。
わたしのことを心配してくれる人がいて嬉しかった。
微笑み、心配、照れ、安堵、当たり前の感情が当たり前のように残っていて嬉しかった。

・・・まだ、わたしはこの世界に居たいんだ・・・

あの、アコライトの男の子はこの後どうするんだろう。
また会えたら、お話とかしたい・・・。前に、他人と普通のお話をしたのって何時だっただろう。
でも、口下手の私がどうやって話題を振るんだろう・・・。
まあいいや、おやすみなさい。

睡魔に身を任せ、私の意識は闇へと沈んで行った。

****************************************************

寝息だ・・・

彼女が寝息を立てているとわかった。
なんで気づかなかったのだろう。
また、涙がでる。男のくせに格好悪い・・・。

でも・・・生きていて良かった・・・。

そして・・・ボクも・・・とても・・・ねむ・・・い

****************************************************
362359 ですよろしくsage :2003/09/20(土) 18:33 ID:D8w07oj2
えーと、なんとなく書いてみました。

ラブコメが書きたかったのですが、ラブコメ力が圧倒的に足らず、
よくわからん文になってしまいました。
気が向いたら、続きも書かせてください。
363名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/09/20(土) 23:12 ID:dgRKOBs2
>>##の人
出直して来い。

>>花のHB
多分、金ゴキCつけても、SGだと一時的に凍るんじゃないかなぁ、と思ってみたり。
効果としてはそれすらもできないような感じになってるけど、おそらくは凍る…。
マルクCつけてた人が何かで凍ったっつー情報がどこかで流れてたことがあったから。
とりあえず、感想は全部出来あがらないとかけないかも…。

>>359
…えと…何が書きたかったんだろう?ていうのが最初に思った事。
ラブコメならもっとぶっ壊れて書かないと難しいかも。
364名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/21(日) 03:24 ID:xTcOYe5U
>>363
##の人って誰?
365名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/09/21(日) 09:16 ID:3ILNznMQ
>>364
シャオアさん、いや、小亞さんと書くべきか?
まぁ、とりあえず、シャオアさんの一番エロい人
366名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/21(日) 13:51 ID:9hPPZVuU
>>363
そうかなぁ。>>359氏のも面白かったですよ。
最近一時職をまた育ててるんだけど、みんなスキルも装備もステータスも
そろってないから、臨時でもそういうのに拘る人があまりいなくて、
子供がわーわー言ってるみたいで、たのしいなって思ったり。

でもそろそろ二次の人もまじって来る年頃で、
そうすると、二次職のスペックの高さにほれぼれしたりします。
自分が二次職やってみるときは、まだまだだって思うんだけどね。

一時職の二次職に対するあこがれ、
二次職の一時職に対する懐かしい気持ち
そういうのを感じられました。
367名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/21(日) 15:38 ID:g1Zon6Fw
>>363
というか、批判するならせめて「ここが駄目」とか書こうや
「出直して来い」だけじゃアレ過ぎるだろ
368花のHBsage :2003/09/21(日) 17:54 ID:J4gwKNAk
「………ぅ……ん……」

 宿屋の枕ではなく、地面の堅い感じでもない。
 何かに包まれて……誰かに抱きかかえられているような……。

 ああ……そういえば。
 私、ストーム・ガストで気を失って……

 イスフィは、ぼーっとする頭のまま目を開いた。

「……ん? 気が付いたか?」

 真っ先に目に入った、濃い灰色の瞳。
 続いて、光に揺れる銀の長い髪。

 自分を抱えているのが、スレイであることに気がついてイスフィは気が動転した。

「ご……ごめんなさいっ! 貴方があんなに……すごい人だなんて思わなくて……
余計な時間とらせてしまって、ごめんなさいっっ」

 突き飛ばすように離れて、震えて泣きながら謝る。

「謝らなくていいよ。元々、俺はPVPの常連だから……馬鹿なことはもうするんじゃない。少しは懲りただろ?」
「うぅ……ごめんなさい…」

 イスフィは泣くばかりで、話にならない。

「だー……もう、泣くな! どうすればいいかわかんねえだろっ!!」
「あぅ……」
「だいたいなぁ……あんたが、どのフィールドに居るかわからなくて全部のフィールド探し回ったんだぞ。
だから、気にするくらいなら、もう馬鹿なことはするな」

 ぽん…と軽くイスフィの頭に手を置く。

「他人のことだから、気にしないでいるつもりだったんだけどな」
「あ……ありがとうです……」
「だーかーらー。最初のときの口調はどうしたんだよ。デスマス調なんて勘弁してくれ」
「そう言われても……」


 身体を包んでいたものは、自分よりもかなり大き目のマントで、膝を抱え込んだイスフィをすっぽりと覆っている。
 その様子に、スレイはため息をついた。
369花のHBsage :2003/09/21(日) 17:55 ID:J4gwKNAk
「たしかに俺は、もう冒険者認定レベルカンストしてるし、廃とも揶揄されてるよ。だからといって、あんたらとたいして差はないはずなんだが」
「れ……レベルカンスト……!?」

 それを聞いて思わず、自分が包まっているマントの精錬値を見てイスフィは目眩がしそうになった。
 +8モッキングマント。一体いくつのスロットつきマントを破壊してできたものなのか想像すらつかない。

「うわ……な……なんてものに私ってば……」

 慌てて、マントをはずそうとするとスレイに止められた。

「わ、ばかっ! お前自分の格好考えろ。いくらなんでも目のやり場に困るだろうがっっ」

 スレイが、やや赤い顔で怒鳴りつけた。
 たしかに、先程のアサシンとの戦闘で、イスフィの姿は正視して見られたものではなかった。
 ほとんど裸に近い姿だったから。

 そして、問題のアサシンやウィザード、騎士たちの姿は見えない。
 不安げに目を泳がせるイスフィにスレイは何かを思い出したように笑いながら

「安心しろよ。あいつらなら退場させたから」

 ほっとして、イスフィは少し笑みを浮かべた。

「まあ、数日は歩くことも立つことも無理だろうな」
「え……」

 何をしたんですか?

 と聞こうかとイスフィ思ったが、答えは決まっているような気がして怖くて聞けなかった。

「だいたい、あんたみたいなのが、どうしてあんな真似したんだ? 何か理由があるんだろ?」
「えと……私、新世界に移住するから……最後に無茶してみたくて。結局、無理でしたけどねー」

 笑みを浮かべて、イスフィは気楽そうに話す。

 新世界に移住するから、多少無茶をしてもこの世界から私という痕跡は消えること。
 この世界に生きていたという証のように、自分を抱いてくれる強い人を探していたこと。
 スレイは、自分よりも強いと思ったから声をかけたこと。

 そんなイスフィを見透かすようにじっとスレイは見つめてから静かに言った。

「それ……半分は嘘だろ?」
370花のHBsage :2003/09/21(日) 18:08 ID:J4gwKNAk
ども。今回は早めに……次か、その次位で終わりです。
待っててくれた人、本当にありがとう。

>>363の人
たぶん凍りますねえ。
アンフローズンがないと凍っちゃうかと……。
でも、まあ、演出ということで……
(とはいえ、もうちょっと調べてから書けばよかったんですけど)


では、また後ほど。
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371名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/09/21(日) 23:06 ID:3ILNznMQ
>>370
もうちょいで完結ですか…、頑張ってください。
期待してます。

>>366
そっか、そういう見方もあり、か。
でもなんだか、全体的に空回りな印象を受けたからかな、
自分はそう思った、と。

>>367
ふむ…。
##の人って結構書けてる人っぽだから、文体を見て、だけど。
出直して来いの一言で何が足りないか、何が余計か、自分で考えるんじゃねーかな、と。
なんだかんだでまだまだ書いてくれそうだし、期待も込めてちゅーことで。
言い訳はこれぐらいにして。
シャオアさんモノのはずがシャオアさんネタっぽくないのが違和感あり。
説明的な文章が多すぎ、というかしつこい感じがしたかな。
そのせいで話の流れに間を置きすぎてる感じ。

後日談ではシャオアさんの意外な側面が見れて良かったです。と。


でも、このスレって作品投下→GJ、キター→作品投下→(ry
…突っ込みも何も入らないのって色々とすごいな、ってチョト思った。
372名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/22(月) 04:39 ID:Tbl8dpnc
脊髄反射レスでスマソ

>>371
>でも、このスレって作品投下→GJ、キター→作品投下→(ry
>…突っ込みも何も入らないのって色々とすごいな、ってチョト思った。
ほとんど同じ流れで、「ツッコミ入る→荒れる→駄スレ化」という例ができてしまっている。
ヒント1.AA系。
ヒント2.にゅ缶→作品、らいぶろ→感想。
なんというか、楽しければいいじゃん。楽しもうぜ?( ´・ω・)ノ旦オチャイル?

>all
感想とか苦手なので書きこみしないけど、(・∀・)ニヤニヤしながら見てます。
このスレ好きなので、議論とかしないよう、グッと我慢してください(´・ω・`)
373名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/22(月) 08:32 ID:W6/Iw.ds
なかなか良い脊椎で…。

感想が増えるのは書き手にとって良いことなんだけどね。
それが建設的であれば殊更に…。

そうあってほしいな、と。

でもまぁ、>>372が上手く反応してくれたので効果はあったと思って良いかしらん?
374名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/22(月) 08:37 ID:W6/Iw.ds
書き忘れ書き忘れ
読み手から、こんなの読みたい〜っていうアクションを起こすのも良いかもよ。
気が向いたら書いてもらえるかも、だしね。

ちなみに>>371は釣りのつもりで書いたわけじゃあらんせん。あしからず。
375名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/22(月) 17:56 ID:rd.oecC2
花のHB様、お待ちしております(´д`;
376名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/24(水) 23:02 ID:vpSS.Npg
殴りアコはもういいんだ・・・誰か、殴りアチャ子で俺に力を分けてくれ
377名無しさん(*´Д`)ハァハァ :2003/09/26(金) 05:19 ID:IVnInzRk
未だ名無しさん・・続きはまだでしょうか・・まったり待つか・・。(そわそわ
378世界忍者アサシンsage :2003/09/28(日) 09:19 ID:KnPQEvJc
 ――それは諸苦影忍者軍の伝説。

 闇夜の砂漠を駆けるはひとつの影。
 足音は風の音に消え、姿は夜の闇に覆われて。
 影は―ー追っていた。何を?
 駆ける先を見据える。
「……刃!」
 そこにいたのは。
 深き深淵より目覚めし魔物、プリオニ。
 多くの分解者を従えし、かつては蟻の巣にいたものだが、ジュノーという世界の異変が彼奴を解き放ったのだった。
 影は向かい合う――次の瞬間。
 プリオニが、その下僕と共に大地を揺らした。
「翔!」
 影は、飛ぶ。それと刹那、影の立っていたところは削れ、砂埃が舞いあがる。
 そして一瞬にプリオニの下僕たちが、悲鳴を上げた。その身は濃紫に染まり。
 刃物が構えられる音。
「は、斬っ!」
 二撃と二度の攻撃。風が裂ける。そしてその刃に宿った炎が燃え上がり、下僕たる分解者を滅ぼした。
 影は炎に照らされて。
 それは、まだ若い女の顔をしていた。
「……ゆくぞ」
 プリオニと向かい合う。僕をなくしたプリオニだが、まだその力は衰えたわけではない。
 ひゅん、と大きな口が開くと、瞬きする間もあればこそ。女はふき飛ばされた。
 だが、一度二度。それは物理を超越した速度で敵の身体を引き裂いている、
 女は空中で白の薬を瓶ごと口に放り込むと、噛み砕き、再びプリオニへと立ち向かう。
 空なる人と地の魔物の激突。互いに血を舞い踊らせながら続く連撃を受け止める。
 女の身体が一段高く飛び上がった――プリオニはニヤ、と笑いその巨体の三倍ほどの距離を、跳躍。
 女は炎の刃を握り締める。疾風が。女を満たす。
 そして互いの奥義――プリオニは落下。その巨躯が地に叩きつけられれば辺りはひび割れ、大地が歪むだろう。
「臨」
 女は印を切り。そして、その炎と風とがプリオニへと吸い込まれる。
 八連打。
 「兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!!」
 もはや目で追うことはできぬ。
 それはプリオニの身体を宙にとどめ、女が地に着地する時間すらも音に消えるほどの瞬打。
 そしてプリオニはそのまま宙に留まり……。
 女が刃をおさめたとき、その身体を霧散させた。そう、跡形もなく。
 あたりには砂漠の砂煙が舞うのみ。
 女の姿は、やがて砂の彼方へと消えた。
379名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/09/28(日) 09:22 ID:KnPQEvJc
なんとなく書いてみたり・・。
続くかもです。
380名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/04(土) 11:32 ID:OP3oXkpw
>>378
描写が回りくどい上に何度か同じこと繰り返してるところがある。

な ぜ 二 回 言 う 。

って感想が浮かびました。
それだけです。
381名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/05(日) 23:02 ID:PVsTXZRQ
白ポを瓶ごと噛み砕いたら、口の中が大変な事になりそうですな。
戦闘続行不可能。

あ、水に溶ける瓶?それじゃ袋か・・・
382名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/06(月) 19:25 ID:h3.AIpQs
>>343はまだ現れないのかね?
早く読みたいんだ!!藻前さんが書いたモノを!!
383名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/10(金) 13:35 ID:lEW1Bgtg
>378
うへえ…格好いいアサ子たん…。
そういや白ポって使った後瓶残らないよな。
やっぱり噛み砕いてるのか…w

私は淡々とした描写と繰り返し好きだけどなー。
てか別に批評しなくてもいいんだよね?(;´Д`)
384僕はアルケミスト。sage 1/2 :2003/10/15(水) 22:02 ID:yYm4C6cw
僕はアルケミスト。
騎士のお兄ちゃんと魔導士のお兄ちゃんがいる。
騎士のお兄ちゃんにがよく言ってた、僕にはもう一人商人のお兄ちゃんがいたらしい。

商人のお兄ちゃんは、僕が生まれる前にこの世界を去ってしまったらしい。
ブラックスミスに為りたかったけど、僕の為に諦めないといけなかったらしい。
なんで僕の為に諦めないといけなかったんだろう?

魔導師のお兄ちゃんは、よく僕にファイアピラーと言う綺麗な魔法を見せてくれた。お願いしたら空から隕石も落としてくれた。
だけど、お兄ちゃんはもう一度修業し直してくると、家から出ていった。
帰ってきたのは二週間後だった、カチカチに凍らせる魔法を見せてもらえた、雪を降らせる魔法も見せてもらった。隕石も落としてくれた


ただ、どんなにお願いしてもファイアピラーと言う魔法だけは見せてもらえなかった。

僕は、お父さんに、ホムンクルス使いになれと言われた。
がんばって、遂にアルケミストになった。
だけど、ホムンクルスの研究をする事はぼくたちには認められなかった。
アルケミストに為ったけど・・・何も出来ない・・・・・
お父さんに言ったら、簡単なポーションの研究をする事なら許してもらえた。
でも、材料がない、集めないといけない。一人じゃ集めれない・・・
友達のセージみたいに頭よくないし、モンクみたいに力も無い、クルセイダーみたいに体力もない僕は誘われなかった。

友達がいろんな所に行くのを遠くに行くのを眺めていたら、お兄ちゃん達が材料をくれた。
貰った時僕は騎士のお兄ちゃんに言った。
『なんでお兄ちゃんや僕の友達は外にいけるのに僕は行けないの?』
すると、お兄ちゃんは、
『外に行きたいのか、分かった、親父に話してみよう』
と言ってくれた。

この日の夜、騎士のお兄ちゃんが部屋に入ってきた。
『起きてるか?渡す物がある。』
『何?お兄ちゃん?』
お兄ちゃんから手渡された物は風の魔力が篭ったツルギだった。
『俺が剣士の時に使ってたものだ、使えよ。』
一瞬耳を疑った。この剣をお兄ちゃんはとても大事にしていた物だ。そんな物をくれるなんて。
そういうとお兄ちゃんは出て行った。ただ・・・少し寂しそうな表情をしていた。

次の日の朝、起きてみると、体が身軽になってた。
お兄ちゃんから貰った剣を抜いて、素振りしてみた。
『ブンッ』
気持ちよい音がした
僕は、居間に行き、体が物凄く身軽になった事をお父さんに告げた。
『ほう、よかったな。そうそう、ポーションの研究に専念してもいいぞ。』
僕は驚いた、お兄ちゃんが話してくれたお陰だ。
お兄ちゃんにお礼を言おうと、お兄ちゃんの部屋をノックして開けた。

そこに居たのは・・・・僕より年下の男の子だった・・・・・・・
僕と同じカートが部屋の隅に置いてある。
僕はその瞬間、騎士のお兄ちゃんがどうなったのか・・・そしていたと言う商人のお兄ちゃんが去った理由というのが分かったような気が

した。
後ろからお父さんがやってくる・・・
『おっと・・言うのを忘れていた・・・・彼はお前の・・・・・・・』


***************************************************************
騎士と魔導師とアルケミは実際のROの私のキャラです(^^;
最初の方はノンフィクション入ってます
商人を消したのも本当です。Wizも作りなおしました○| ̄|_キャラノアイチャクタリナイッテイワナイデ
物語では騎士が消えてますが、実際には消えてませんし消すつもりは微塵ともありません。β2カラノ相棒ダシネ
書き方メチャクチャなのは見逃してください(つ
お願い(つ
385名無しさん(*´Д`)ハァハァsakage :2003/10/16(木) 00:16 ID:I31jLO.E
>384
も、物足りない…。

書き方云々についてはまぁ、…ガンガレ

話の筋がただの自己満足…まぁ、自己満足で書くのがフツーなんだけど、
読み手を考えるとそうも行かないわけで。
もうちょっとそこらへん考えて欲しかったな…。

最大の問題は、萌えなの?燃えなの?どこらへんで萌えなの?どこらへんで燃えなの?
という問題だけど、シチュ萌えって事で解釈させていただきますた。

メル欄に1/2ってあるけど、続くのかな…?
だとしてもしなくても、今後に期待!!
ががーれ!!
386なんとなく(1/2)sage :2003/10/17(金) 16:04 ID:HFdJCJQM
クェ。
ペコペコが思い出したかのように小さな声で鳴く。

「ねぇ。あんた。なんで私になんか付いて来るの?」

ペコペコに跨った騎士が、ペコペコに寄り掛かるように
座り込んでいるプリーストを睨み付け、苛立たしげにたずねる。

「んー。面白いじゃん?」

金色のショートの髪に、厳しく周囲を警戒する瞳。
いつ敵が出てきても対処できるように身構える騎士とは対照的に、
同じく金色のボサボサ頭をしたプリーストはのん気に、
そして面倒くさそうにそれだけ答えた。

敵の来ない間の休憩とはいえ、こいつはのん気すぎる。
ここはお前の部屋のベットではなくてダンジョンの片隅なんだぞ。
そう、その瞳は語っていたが、プリーストは知ってか知らずか、
ペコペコの羽毛の柔らかさに身を任せるかのように、静かに目を閉じている。
騎士がたまに頭を小突かないと本気で寝てしまうかもしれない。

カシャ。

何度目かの軽い蹴りがプリーストの頭にあたる。
鎧が擦れ微かに鳴る音に、ペコペコが視線だけを送る。

「だって、お前が殲滅力無いし、すぐ敵に囲まれてあまり長い間潜ってられない。
 そう、この間愚痴っていただろ?」

プリーストは身を起こしてボサボサ頭をかき回し。そう口にした。
だからどうしたと言うのだろうか? 騎士は眉間にしわを寄せた。

「あのねー。だからどうしたの?」

騎士の声は明らかに、鳴り響く稲妻のような迫力を持っていたが、
プリーストは何事もなかったようにきょとんと騎士を見つめて言った。

「オレはプリーストだぞ?
 支援魔法も使えるし、人を癒す手段だってある。」

俺がいれば少しは長い間潜っていられるだろ。そう付け加えて、
再びペコペコの体に身を沈める。

ポフ。

ペコペコは少し身震いをしたが、再び何事もなかったかのように、
プリーストが自分の体に身を預けるのを許していた。

だからどうしたのだろう。そう騎士はマジマジとプリーストを見つめる。
全くわけがわからない。ついて来る理由も判然としない。
まさか・・・同情からだろうか。そう頭に浮かんだ瞬間。
騎士はカッとなってプリーストを怒鳴りつけた。

「あんたねー。私が殲滅力が無いのとあなたが付いて来るのとは、
 全く関係ないでしょ!
 第一! あなたが付いて来ると私の仕事が二倍になるじゃない!」

同情なんていらないわよ。吐き捨てるように騎士が呟く。
387なんとなく(2/2)sage :2003/10/17(金) 16:05 ID:HFdJCJQM
クェーェ。

ペコペコが騎士を見上げて心配そうな声を上げる。
騎士はハッとしてペコペコの首筋を静かに撫でる。
ごめんね。ぺこぺこを見つめながらそう優しそうに呟いた。

「同情・・・でついて来ている分けじゃないんだがな。
 それにオレだって自分の身ぐらい自分で一応守れるぞ?」

プリーストは手にしたチェーンをカチャカチャ揺らし、
ペコペコに跨る騎士を見上げた。
確かにプリーストは一応は身を守れる強さを身に付けてはいる。
特に、このダンジョンに多く住まうスケルトンワーカーのほとんどは、
彼の魔法で倒されている。
しかし、ここではそれと同等数のミストというガス状の化け物まで沸くのだ。
一体二体は対処してはいるのだが、それ以上になると対処できず、
倒れそうになるプリーストを騎士は何度も救っている。
それに・・・だ。自分の回復より私の回復を優先するとはどういう事だろうか?
騎士から見れば、結局は仕事を増やしているだけにしか見えないのだ。

騎士が再び口を開こうとしたとき、プリーストがそれを遮る様に呟く。

「それに言ったはずだ。面白いから付いて来ている・・・と。」

真剣だったり、怒ったり、優しかったり、考え込んだり・・・その表情の変化が面白い。
再びペコペコの寄り掛かって目を閉じ、
口の端に子供のような笑みを浮かべながらそう付け加えた。

騎士はそんなプリーストをマジマジと見つめた。
何か言おうとしても言葉がつながらない。

ぽかんとプリーストを見つめていると、
プリーストが急に立ち上がってチェーンを構える。

クェワ。

ペコが警戒の声を上げ素早く立ち上がる。
その急な動作に騎士は危うく転げ落ちそうになる。

トサ。

そんな騎士をプリーストは何事もなかったように支え、ニヤリと笑う。

「頼りにしてるぜ。俺の騎士様。」

ブレス。IM。IA。そしてキリエ・・・・。
素早く数々の魔法を唱えあげるプリーストの背中を見つめ・・・。
まぁ。いいか・・・そう騎士はため息をついた。

「あんた。足手まといになったら容赦なく見捨てるわよ」

気を引き締め、剣を引き抜き、周囲に視線をめぐらせ騎士はそう口にする。
プリーストは肩をすくめる。そしてただ一言呟く。聞こえないように。

「そういって毎度見捨てないから、面倒が増えるんじゃない?」

プリーストは周囲を見回す。敵の数はそうは多くは無い。
ただ、のんびりとした休息時間は終わりを告げたようだ。

「わかりましたよ。せいぜい気をつけます。」

プリーストは今度は聞こえる声で騎士に語りかけた。

「そ。あんたは私の後ろで隠れてなさい。
 無駄なことをする必要はありません!」

騎士が敵を睨み付けながら高らかに宣言する。
迫りくる敵の不気味な音と騎士の気合の声が重なる・・・。


・・・数刻後、同じようにペコペコに寄り掛かるプリースト。
騎乗の騎士。何事もない時間の流れ。

クェ。

ペコがのん気に声を上げる。
388名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/17(金) 16:32 ID:yBWdJqoU
>>385
妹がでるはずでした○| ̄|_
続くはずでした○| ̄|_
カケナイヨママン・・・・
389名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/17(金) 16:49 ID:rYxuc5Wk
ほのぼのしてて良いかと思いますよー。
騎士子たん燃え、プリ君萌え(・∀・)イイヨイイヨー
390名無しさん(*´Д`)ハァハァsakage :2003/10/18(土) 03:20 ID:UdWq.zkk
>>387
ペコに萌え(・∀・)イイネ!!
中身は良かったよー。

あとは外郭…文章、文体のことだけど、そっちを磨けば言う事なしじゃないかな、っと。
今後に期待〜
391名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/20(月) 16:38 ID:q1SwdWy6
>>389-390
かなり返答遅れましたが、
面白いという評価ありがとうございます。

この頃このスレに活気がなくてヘタレ文でも投付ければ、
誰か続くだろうかと思った次第でございます。
しかもこういうの書くの初めてなのです。

>あとは外郭…文章、文体のことだけど、そっちを磨けば言う事なしじゃないかな、っと。

うぉぉ。確かに読み返してみると・・・恥ずかしい。
勢いで書いて勢いで書き込むものじゃないですね。。

文がうまい人は才能なんだろうか・・・_| ̄|○|||
なんか巧くなる方法があるなら知りたい・・・。
392名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/20(月) 17:47 ID:d./1ZYZg
純粋に小説書きたいって思うなら、そういうサイトがたしか数件あったかな。
〜〜大賞などに応募された作品を選考する側の人のサイトで、こうした方が評価が高い、というサイト。

私も良く読み直したりする時にソレを参考に書いてます。
まだまだヘタれですけどねぇ〜
393名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/22(水) 03:40 ID:gRCJcgaU
 今日も風は吹く。
 目を覚ますと、プロンテラの宿屋。身支度を整え、下に降りる。
 「おはよう。いやぁ、よい天気だね」
 「そうだねー、冒険にはもってこいだ」
 「ははっ。散歩でもいいけどね」
 二本のバスタードソードを背中に括り付けながら、彼は外に出て行く。
 「今日はどこいくんだいー?」
 走りながら、振り返ると、彼は叫ぶ。
 「風が吹くところへ!」


 今日の風はフェイヨン方面に吹いてるらしい。いつのまにか森の中。
 「…迷った!」
 断言する。当然聞く人はいない。
 「まぁ…いっか〜」
 立ち直りの早いのも彼の性格。当然見ている者もいないが。
 「今日は野宿かね〜」
 言うが早いが、既にキャンプの用意をしている辺り、毎度のことではあるらしい。だが、それも彼にとっては冒険のひとつ。
 マントの下に背負った袋から出したのは、干し肉と、水の入った皮袋。干し肉は水で煮ればそこそこ味わい深い。
 火を起こし、煮詰める。ついでにそこらへんのモンスターから手に入れた野菜も入れる。
 「いただきます」
 独り言が耐えないが、ほとんど一人旅ゆえ、癖になってしまっている。その時、
 「誰?」
 彼の後ろの茂みからなにやら音がする。
 「誰かいるんかい?」
 茂みに近づくと、そこにはへろへろになったノービスが一人。
 「あらら…おーい、大丈夫か〜」
 ノービスの第一声は
 「すいません・・・モロクってこっちですか…?」
 どうやら同じ迷子のようだ。
 「あ〜…実は俺も迷ってたりする」
 がっくりとうなだれるノービスに、彼は食べていたものを薦める。
 「まぁ、お腹減ってるとろくなことないから、とりあえず食べる?」
394名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/10/22(水) 03:56 ID:gRCJcgaU
 二人で黙々と食べる夕食。しかしながら二人ゆえ、何気なく身の上話をしてみたり。
 「へ〜、モロクへ荷物運びね〜」
 「はい。商人になるために、がんばらなきゃいけないんですが…」
 その途中で迷ってしまったらしい。
 「俺は宛てもないから…まー、これも目的かな?」
 「目的?」
 とたん、彼は少しだけ遠い目をする。
 「うん…俺小さいころ体弱くてね〜…。みんなと一緒に走り回りたかったんだけど、それもできなくてね〜…」
 彼はいつも一人だった。プロンテラの外、皆がポリンやらファブルやらを叩いていても、彼はそれに参加せず、じっとみつめていた。
 「で、両親からも将来は立派なマジシャンとか、ウィザードとかセージになってくれれば良いって言われたんだけどね」
 「はぁ…でもあなたは…」
 そのとき、唸り声が聞こえた。
 「しっ…。静かにして」
 彼はノービスの口に手を当てると、火に薪を入れた。
 「お・・・狼ですか・・?」
 「狼は狼でも…さすらい狼だね…しまったな、そんなとこに迷い込んじゃったか」
 さすらい狼。フェイヨン近郊に出没する、並みの狼とは比較にならないほど強い狼である。
 「ん〜…打って出た方がいいかな〜…ちょっと火の番を頼むね」
 「え!」
 言うが早いが、彼は駆け出していた。あっけにとられたノービスだったが、火がなくなると襲われるかもしれない。薪の番をしていた。
 しばらくして、彼が戻ってきた。

 狼を引き連れて。

 「ごめーん! 逃げてくれー!」
 「うわーーーーーーーーーーーーー!」
 二人とも死に物狂いで走り出す。さすらい狼はその特性上、集団の「群れ」で行動する。
 「た、倒してくれるんじゃなかったんですかー!」
 「いやぁ、そのつもりだったんだけど…ついつい、てへ」
 「てへ、じゃないですーーーーーーーーーー!」
 走って走って、気がつけば二人は砂漠の都市、モロクについていた。
 「うわ…かなり走ったね〜…。牛に引かれて大聖堂、みたいな?」
 「…いやな大聖堂巡りですね・・・それ」
 二人とも息を整えながら、しかし同時に大笑い。
 「貴重な体験でしたよー。二度とごめんですけど」
 「まったくだね〜」
 別れのとき。お互いの目的を果たすため、二人は分かれる。
 「どうもでした。スープ、おいしかったです」
 「あぁ、楽しかったよ」
 なんのことはない。二人で道に迷って、食事をして、ボスに追いかけられて、目的地に着いた。ただ、それだけ。

 それでも。

 「これがあるから、冒険はやめられないんだよねぇ」
 道を間違えたと言われ、弱いと言われ、それでも彼は歩きつづける。
 「Int騎士だからこそ、面白いこともあるんだよ、ね」
395とあるスレの577sage :2003/10/23(木) 17:24 ID:UbRqgcdI
(「ギャバンの歌」のリズムで)
「漢なんだろう? ぐずぐずするなよ♪
胸の筋肉に 火をつけろー♪
おれはここだぜ ひと足お先♪
光の速さで あしたへダッシュさー(残影っ!)♪
若さ 若さってなんだ ふりむかないことさ♪
愛ってなんだ ためらわないことさ♪
ジャブ!! あばよ涙♪
アッパー! よろしく勇気♪
この世の闇をー 断つー!♪」

今日俺は船に優しく揺られながら
瞑想・・・というか、うつらうつらとしていた
時計の音が聞こえる此処は
アルデバランの時計前
俺は水路につないだままの船上で
食後のひと時をゆっくりと過ごしていた
水路から吹き上げる風が頬に心地よい・・・
(ちなみに今日の昼飯は赤いも虫のソテーだ
グロいけど結構美味しいんだ・・・)

しばらく休んでから立ち上がる
「・・・協力してくれる人がいるかな・・・」つぶやく俺
今日はカビをじゃんじゃん狩ってみたくてきたんだが
やはり地フィストだけじゃ中々当らない
クァグマイア使えるWIZ(出来れば女♪)が居れば・・・

そんなことを考えながら時計前に来ると
何人かWIZが腰掛けている
・・・んと、協力してもらうには・・・最初の一言が肝心だって
あのローグは喋ってたな・・・
ここはひとつカッコイイところをみせるか・・・

「お嬢さん」俺は手近なWIZに声をかける
「はい?なにか?」
「アラームの筋肉なんかより俺の筋肉と付き合わないか?」(←意味不明です;;)

・・・

ばこっ!

かじりかけの林檎を投げつけて
彼女は「変態だー!」といいながら去っていった・・・
・・・何がいけないのだろうか?説明くらい聞けよ
そう思っていると
「アハハハ、それナンパのつもり?」
という愉快そうな声が芝生の方から聞こえてきた
「いやそんなつもりじゃない!」
そこで俺は反論する
好きな人に釣り合う位強くなりたいということ
カビに攻撃が当りにくいのでクァグマイアが欲しいということ
こっちよりレベルうんと低くてもいいということ
なんなら収集品も7割くらい持っていってもいいということ
すると芝生から立ち上がったのは
金色の長い髪をした、サークレットをつけたWIZの女の子だった
「・・・なら、協力してもいいよ・・・」彼女はそういうと
小刻みに肩を震わせ
「・・・でも・・・あの言い方は・・・アハハハ・・・」
俺の目の前で大きな声で笑い出した・・・
はあ・・・

彼女とともに時計に入る
カチカチと規則正しく歯車が回る音が
呼吸のタイミングを合わせやすいので
俺は此処の雰囲気は嫌いじゃない
WIZ嬢はあたりを慎重そうに見まわしている
遠距離から攻撃する職業の性だろう
遠くと近くをリズミカルに視線のみでチェックして
5歩ごとくらいの間隔で立ち止まっていく
ふむ・・・見習うべきところも多いな
そんなことを考えながら俺は前方に現れた
ふらふら舞うカビに向かって
気合をこめて拳を突き出していった・・・

結構真剣に長時間狩りをして
俺は重くなったバックパックを担ぎ直し
おしゃぶりを投げ捨てた(いらん・・・)
WIZ嬢もJOBが2つほど上がったらしい
話を聞いてみると転職してからまだ間もないらしい
「へー、じゃあ時計篭りって感じかい」
「うん、危険になるとハエって感じかな・・・
倒れて捜索隊のお世話になるのはカッコ悪いからね
でもこっちはやられやすくって」
そういうと彼女はぺロっと舌を出した
なかなか可愛い・・・しかし俺の女神様には敵わんよな
そんなことを考えていた矢先・・・
「きゃーっ!」
彼女の悲鳴で俺は現実に引き戻された
そこにはバフォjrが彼女に襲い掛かる姿が!
彼女のスカートが鎌で切り裂かれ、太ももに血がにじんでいく
「・・・(白いパンツか・・・めずらしいな)」
その白さを目に焼き付けながら俺は一気に・・・
「残影!」
彼女とバフォの間に割り込むが
そのとたん横からバフォjr・・・そしてまた彼女の横に
カビの姿が幾つかと現れ、WIZのマントに噛み付き始めた!
・・・くっ!
既にこっちは5体の敵に囲まれているが
WIZはカビ一体から逃げようと必死だ
・・・仕方ない
俺は覚悟を決めるとWIZをタゲって居るカビを叩き始めた
カビがこっちに向かって襲ってくる
バフォjr達も鎌を振りかざしておそってくる
「イーーーー、イーーーー」
おのれジョッカー・・・いや・・・ジュニア・・・
俺は精一杯相手の攻撃をかわし、数発喰らいながら
しゃがみ込むWIZ嬢にヒールをかけた
淡い光が彼女を包むのを横目で確認して
思い切って相手のまっただなかに飛び込んでいく・・・

しかしいきなり奴らの動きが遅くなる
「クァグマイア!」
続いて地面から無数のスパイクが突き出る
「ヘヴンズドライブ!」
囲まれていてもこれなら何とかなる
俺は自慢の拳を振りかざし
連打を浴びせて一体一体敵を殲滅していった・・・

「ところでなぜ逃げなかったんだ?ハエあるだろ?」
俺達は精神力を回復するために
時計の歯車の陰にしゃがみ込みながら話し始める
「うーん・・・アンタが囲まれてるのしってたし・・・
無理してヒールしてくれたし・・・まあ・・・そんなとこかな・・・」
なぜかそっぽを向いて話すWIZを横目に
俺は曖昧に納得しながら干し肉を齧る
「・・・(まあ・・・WIZってのは不思議な力を使うぶん
わけわからんところもあるしな・・・)」
「さ・・・もうすこしいこうか・・・ね・・・」
「いいのか?これくらいでも十分だぞ」
「うん・・・でも高効率目指してみない?」
そういうとWIZ嬢は一寸赤くなった顔をこちらに向けて
少しだけ笑って先に歩き出した・・・

結局狩りの分け前は半分づつにすることになった
彼女は「いいのいいの」といって取り合わない
とりあえず必要な分を換金してカプラに預けると
彼女のほうから俺に声をかけて来た
「楽しかったよ・・・経験かせげたしね・・・えっとお・・・」
そこで彼女は一旦言葉を切ってから俯いたまま
「んと・・・しばらくは時計にいるから・・・よかったら・・・」
「おお、有難う、じゃあ時計塔ではキミと握手って感じだな!」
そう答えると俺はプロンテラに向かって歩き出した
後ろからWIZ嬢の視線が追ってくる
それを背中で受けながら、俺は夕陽に向かって歩をすすめた・・・
WIZ嬢は夕陽を浴びながらつぶやきます
「へへ・・・ちょっといい男だったかも・・・
でも好きな人居るって言っていたな・・・
うーん、ふられたら・・・こっちで貰っちゃおうかな?
・・・必中の魔法のように・・・私も当ててみせるよ・・・」
そんなことをつぶやきながらモンクの背中を見送る彼女の視界に
衛兵をよけ損ねて・・・バランスを崩す彼の姿が

「あーーーーーれーーーーーーー!!!」(だっぱーん!)

・・・モンクはアルデの水路へと
頭からまっさかさまに落ちていきました・・・

無理に格好つけなきゃ、いい男なんですがねえ・・・
396SiteMaster ★sage :2003/10/26(日) 22:55 ID:???
【まず】板のルール、お約束、各スレのテンプレ【読め】
のスレを導入しました。

板のルールや、テンプレの確認などに使用してください。
397名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/03(月) 12:28 ID:noHsinPo
花HBのさんは何処へ・゚・(ノД`)・゚・
続き読みたいよぅ(´・ω・`)
398397sage :2003/11/03(月) 13:51 ID:/ca7oHio
花HBのさんって何だ・・・_| ̄|○
花のHBさんでした(つД`)
399名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/03(月) 21:27 ID:D9zpg.MI
花のHBさんも良いっちゃ良いけど、
シャオアさんのエラい人のが読みたいなぁ。

ぶっちゃけ、シャオアさんのエラい人の作品が一番読みなれてるし、安心して読める希ガス。
400とあるスレの577sage :2003/11/03(月) 22:56 ID:Wu3TyVAM
>>399
読んで見ましたがシャオアさんって面白いですね
こんな感じでいいのかな?

----------------------------

えと・・・
たまーにあることのようなんですが
本日はシャオアさんが風邪をひいてしまって声が出ないと言うことで
先輩プリーストさんからの依頼で
私、アコライト(女)が代理を務めさせてもらいます
よろしくお願いします

かなり困った方が多くいらっしゃるそうですが
それこそやりがいのあるお仕事だとおもいます
マニュアルも頂いていますし
未熟な私でもここで働けば
いずれは立派なプリーストになれるとおもいます
頑張らせていただきますね

さて本日のお悩みは・・・

「えと・・・いいでしょうか
私は売り物のポーションに細工をしたくてたまりません」

おっと、いきなりいらっしゃいましたね

「はいはい、それはどういったことでしょうか」

「女の方!!!!でも正直に話します
実は私は商人なのですが、いつも妄想が私を苦しめるのです!
どうしても白ポーションに・・・その・・・私の精をまぜて・・・」

「・・・」

「そして清純そうな顔をする女たちに飲ませたいのですががががが!!!!!」

・・・えっとマニュアル確認
“この世に居ては為にならないと思う方が来たらこの紐を引きなさい”
うん
引きます

ガコン

「うわああああーーーーーー!なんでこんなところに兄貴が・・・ああ!そこはまだはじめてなのにイイイイーーーーー!!!」

気を取り直して次の方どーぞ

「あ、あの俺ダメなんです!女ローグの網タイツを見ると
どうしてもどうしてもダメで・・・履きたくなってしまうんですあああん♪」

ガコン

「うわああああーーーーーー!なんでここに兄貴と商人さん・・・うわダブルの責めエエエエエエーーーーーーーー!!!!」

・・・さて、お茶の時間にしましょうか
仕事って大変ですね
ふう
401名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/04(火) 22:28 ID:s/X8i232
シャオアさんのエラい人(##の人)のを読みたいのであって、
シャオアさん物を読みたいわけではなく…。

>>400
シャオアさん物としてはそれで良いんじゃない…かなぁ?
402名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/04(火) 23:59 ID:M4SnzrTY
>>400
面白いよー(・ω・)
ワラタ。GJ!
403名無したん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/05(水) 07:55 ID:SI1qkrnE
シャオアさんモノは基本パターンがしっかり出来てるからね。
料理の仕方によって書き手の個性が出る…と。

>401
書き方悪いよw
404花のHBsage :2003/11/05(水) 18:51 ID:glVNmDO.
次か、その次位で終わりですといっていたのですが、終わんなさそうです。
どうしましょう。

……でも、がんばります。ごめんよ、待っててくれる人。

では、少しだけですが投下
___ __________________________________________________
|/
||・・)
405花のHBsage :2003/11/05(水) 18:51 ID:glVNmDO.
 イスフィは下を向いて押し黙った。
 やがて、イスフィは意を決したように顔を上げると、スレイの首にかけられた冒険者認識票に手を伸ばした。

「スレイフォード……スレイさん……でいいのかな?」

 認識票の名前をつぶやくように読み上げる。

「私は、イスフィール。友達はイスフィって呼びます」

 自分の認識票も手でもてあそびながら、イスフィは答えた。

「あのね……私……スレイさんと良く似てる恋人がいたんだ……」

 ぽつりぽつりと、ゆっくりイスフィは話し始めた。

 アーチャー時代に恋人だったギルドマスターに振られたこと。
 新世界への移住の話を聞いて、移住して全てを忘れるために無茶をして転職したこと。
 そして、ギルドを脱退したこと。
 それでも……忘れられなくて、街中をふらふらしていてスレイを見かけたこと。

「あの人と一緒にいられないなら……こんな自分いらない……こんな世界もいらない。だから……壊して欲しかったんです……あの人に似てる貴方に」

 瞳に涙を溜めて、イスフィは微笑んだ。

「これが本当の話……。ごめんなさい、つまらないことで」

 涙が止まらなくて、後から後から溢れてくる。
 スレイは、思わずイスフィを抱きしめた。

「えっ!?」
「……悪かったな。無理に話させて」

 抱きしめたまま、静かにスレイはイスフィに語りかけた。

「ううん……自分が悪いから」
「もう少し、自分を大切にしろ。恋人に振られたくらいなんだよ。そんなやつのことは忘れちまえ」
「無理……忘れられるなら、こんなに辛い思いしないもん」
「……そうか……なら……今すぐに忘れろなんて言わない」

 横抱きに……いわゆる姫抱きにイスフィを抱えあげると、スレイは立ち上がった。

「移住する前に、この世界でもっと良い想い出を持っていけよ。壊すとか……そう考えるのはそれからでもいいと思うぜ?」
「……ちょ…ちょっと、スレイさん?!」
「まあ。とりあえず、まずは街に戻って服を何とかするとしようかね」
「えと……その、あの歩けますから、おろしてくださいぃっっ」
「だめだね。挑発的なそんな格好で歩かれたら、つれて歩くこっちのほうが困るんでね♪」
「あぅぅ……」

 困り果てているイスフィの意思など無視して、スレイはそのまま歩き出した。
406花のHBsage :2003/11/05(水) 18:57 ID:glVNmDO.
 街に戻って、イスフィはスレイの家に連れ込まれた。
 ……もちろん、いかがわしい真似をするつもりでスレイは連れて来たわけではない。

 自分の家に付くとスレイはクローゼットの中から自分の服を取り出してイスフィに放り投げて、それを着るように伝えるとWISで誰かと話を始めた。
 時折、会話を思わず口走っていたのを掻い摘むとどうやら知り合いに何か頼みごとをしているようだった。

 そして、しばらくすると赤い逆毛に頭巾をつけ、サングラスにひげ面のブラックスミスがやってきた。

「え……これ……いいんですか?」

 イスフィの前には装備一式が置いてある。
 スキルフルタイツ、ブーツオブヘルメス、モッキングマフラー、そしてニンブルクリップが二つ。
 もちろん、クリップ以外は+5まで精錬してあるし、イスフィが身につけていた装備など足元にも及ばない高価なものだ。

「かまへん。かまへん。どうせ、今は幻想祭の期間中やから」
「リーに俺からも礼を言ってたと伝えといてくれよ。主装備ほとんど借りちまうことになるから」
「あいよ。まあ、大丈夫やろ? 幻想祭の間は狩りはしないと言うてたし」

 ブラックスミスは豪快に笑いながら言った。

「しかし、なんちゅーか……やっとスレイにも春が来たんやなー」

 しみじみとイスフィとスレイを見つめて、そのブラックスミスはつぶやく。

「お前、無駄口が過ぎるぞ」
「えーやんか。シェナがいなくなってからのあんさんは、見てられへんかったんやし」
「シェナ……??」

 その言葉を聴くと、いきなりスレイは壁を拳で思い切り叩いた。

「……あいつの話はするなって言ったよな……?……」

 殺気ばしった目でブラックスミスを睨み付けている。

「あー……すまなんだ。ちゅーても、そんな殺気出さへんでもええやろに……」

 スレイは、押し黙ったまま窓の外に視線を向けた。
 その様子にブラックスミスはほっとしたように息をついた。

「事情はスレイから聞いとるよ。とりあえず、その装備があれば大概の所にいけるやろ。あんさんが無理なところでもスレイがつれてってくれるやろうし」
「あ、ありがとうございます」
「あー、礼を言うならわしやのうてその装備を貸してくれたヤツに言うんやな。わしは持ってきただけやから」
「はい……」
「ほな、これで失礼するわ。良い想い出をな」
407花のHBsage :2003/11/05(水) 19:00 ID:glVNmDO.
予定では、次の次くらいに終わりそう……たぶん。
長いことひっぱっててごめんなさい。


では、また後ほど。
___ __________________________________________________
|/
||・・)
408397sage :2003/11/05(水) 20:49 ID:rPoE9EiE
>>花のHBの方
お疲れ様です〜。
初めの頃からこの作品読んでる者です。
続きが気になって気になって_| ̄|○
完結してから読んだほうが苦しまずにすんだかも(ぁ
409某スレ住人sage :2003/11/05(水) 22:52 ID:0AJ5eOj6
シャオアさん人気ですね。
原作者たる##氏が起用(?)を認められているからでしょうか。
ここでふとした疑問が…

仮にシャオアさんの話を書くとして、例えばそれが百合ネタなら百合スレに、と
カテゴリ専用スレに書くべきなのでしょうか…
(18禁指定に関しては自動的にスレ決定でしょうけど)
410名無しさん(*´Д`)ハァハァsage さて、そろそろ新作作ろうかしら… :2003/11/06(木) 00:47 ID:Qd6cns02
百合ネタなら百合スレかもしくは18禁スレ。


と言うわけではなく、ココでも良いです。
基本的に各種萌えスレにあるSSは電波キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! って場合においてのみであるべきで、
こういう萌えSS、萌え小説を書こう、と思って書いた物は本来このスレに投下されるべきであるわけですし・・・。
そもそも、どこに投下するかは、作成者の判断が一番重要かと。
ただ、最低限のルールとして存在するのが一般と18禁と♂萌えの分別のみ、と捕らえるべきでしょうか…。
拙作(どれかは秘密。)だって萌えスレに投下されてそのまま消えていってもおかしくないものですし。

このスレの場合、読み手が少ないせいなのか、書き手へのアクションが少ないせいなのかなんなのか。
いまいち盛り上がりに欠ける感があるのは寂しいですよね。
盛り上げるための原動力として、書き手、読み手を随時募集中です。

等とSitemaster★様でもないのに偉い事を言ってしまってすいません。
411とあるスレの577sage :2003/11/06(木) 10:12 ID:pUEyiFiU
また投稿

--------------------

えと・・・
本日もシャオアさんが風邪が治りきらないと言うことで
先輩プリーストさんからの依頼で
私、アコライト(女)が代理を務めさせてもらいます
よろしくお願いします

たしかに困った方が多くいらっしゃりますが
真剣に悩んでいる方もいらっしゃいますし
これ自体は
立派なお仕事だとおもいます
マニュアルも頂いていますし
まだまだ慣れないこともありますが
頑張らせていただきますね

さて本日のお悩みは・・・

「フフフ・・・聞いてくれるかな?」

「はい・・・どうぞ」

「フフフ私は遂に神となったのだよ」

「はい???(何ですかこの人は・・・)」

「私の“アブラカタブラ”にかかればどんな生物の生死も思うが
ままだ!ボスとて例外ではない!全ての人間は私に従うべきだ!
そうだ私は神なのだフハハハハ」

・・・紐、紐っと

ガコン

「のおおお!ヒドラかしかしこんな者はオーラバトラーの敵では
ないわ!!!」

あらら
じゃあ次のボタンを押しましょう
ポチッとな

「ふごお!ベノメナ!?しかし私は神ダアーーー!!!」

べきべきどこーん

「ふはは小癪なアコライトめ、待ってろよーーー!!!」

「・・・(ちょっとマズイかも・・・えっと次のボタンは・・・)」

ぽちん
かぱっ
ぶーぶー

「ぬお!サベージベベ???なんだこんなもの一捻りに・・・」

「ぶーぶー、ご主人ちゃまでちゅか?」

「・・・」

30分後・・・

「ううう、私が悪かったよベベちゃん・・・もう一度人生やり直す!
立派なご主人さまになるから見守ってくれよ・・・ううう;;」

ほっ
どうやら悔い改めてくれたようです
可愛いものにはかないませんね・・・
ベベちゃん元気でね

「うーんと、お前に名前が必要だな、お腹へってないか?
“キャサリン”、”ジュリエット”
うーん、悩むなあ・・・ぶつぶつ・・・」

セージさんとベベちゃんは
仲良く大聖堂から出て行きました
神様、有難うございました
ふう
お茶の時間にしましょうか
いいことするとお茶が美味しいですね
412409且つ百合スレ505sage :2003/11/07(金) 08:49 ID:H7ukw.ao
>>410
素早いお返事ありがとうございます。

というわけで、シャオアさんの話を書いてみました。
試作と言いつつ殆ど即興…いや、難しいですね(汗
このスレに書けるように頑張ってみましたが…


試作4
------------------------------------------------------------------------

ごきげんよう、皆さん。シャオアと申します。
私は、一プリーストとして、協会の懺悔室で迷える子羊となった方々の告白を聞き、
苦悩を克服なさるお手伝いをする役を任されています。
普段の訪問者は日に数名と言ったところなのですが、何故か最近人気があるようです。
ちょっと困ったちゃんが多い様ですが…
さて、今日もまた一人、懺悔室の扉を叩く方がいらっしゃるようです。


「どうぞ、お入りください」
「失礼します…」
「あら、あなたは…」

扉を開けて入ってきたのは、新米アコライトの男の子でした。

「申し訳ありません、シャオア様。その、アコライトの身でありながら懺悔など…」

開口一番にこんな事を言ってきました。

「誰とて時に迷える子羊となる事があります。恥じる事はありませんよ」
「そう、ですね…」

僅かな間を置いて、彼はまた話し出します。

「シャオア様、僕は、僕には本当にアコライトたる資格があるのでしょうか」

むむっ?

「僕は、自分には到底その資格が無いように思えるのです…」

これは穏やかではありませんね…

「あなたが神の前で誓いをたててから一月余り…最初は戸惑う事もあると思いますが、
 結論を出すにはまだ早いのでは無いでしょうか。」
「ですが…」
「どうしてそう思うのですか?」


暫くの沈黙の後、彼は何度か深呼吸をすると、意を決したように話し始めました。

「実は…最近邪念がっ…そのせいで夜も良く眠れなくなって、朝のお祈りに遅れそうに
 なったり、そればかりかお祈りの最中にまで…っ」
「邪念、ですか」

新米アコさんの邪念とは…一体なんでしょうか

「はい、その…ある方のことが頭から離れないのです」

…む?

「最初は、その方に憧れているのだと思っていました。自分もその方のようになりたいと。
 でも、その方を見る度に胸が高鳴って、立っている事がやっとのような…」

ええと、これはもしかして…

「そればかりか、あらぬ想像までするように…。こんな僕が神に仕えるなどとても…
 シャオア様、僕は一体どうすれば…っ」

彼は俯いてそれきり黙ってしまいました。
なるほど、そういう事ですか。

「きっと、あなたはその方に恋をしているのですね」
「そ、そんな、恋だなんてっ」

顔を上げて否定するも、狼狽しています。

「その方の事が好きで、愛しくてたまらないのでしょう?」

私の言葉に、彼はぴくっと小さく震えると、僅かな沈黙の後、
消え入りそうなほど小さ声でしたけれど、「はい」と答えてくれました。


「人が人を好きになる…素晴らしい事では無いでしょうか。」
「えっ…」
「慈愛、友愛、恋愛…それぞれ形は違っても、愛する事はとても大切な事だと思いますよ。」
「ですが、僕達は神に仕える身で…」
驚いた様子ですが、構わず続けます
「確かに、私達は神に使える身です。ですが、私達もまた人の子です。
 どうして誰かを愛する事を咎められましょう。むしろ、人に愛を説くような立場に居るのですから、
 神様も、暖かく見守っていて下さる事でしょう。」

彼はまだ驚いている様でしたが、顔からは曇りが引いています。
そして私自身もまた、驚いています。自分にこんな事が言えるなんて…
あと一息です。頑張れ、シャオア。

「では、僕は神に背いて居た訳では無いのですね。この気持ちも、抑えこむ事は無いのですね。」
「そうですね。神様はきっとあなたの愛を見守っていて下さるでしょう。」
嬉しそうに言う新米アコさん。微笑ましい光景です。

「もう迷いは晴れました。早速、自分の気持ちを打ち明けてみようと思います。」

おや、今度は随分と大胆になりましたね…

「自分の気持ちを伝えるというのは、とても大切な事ですが、とても難しい事でもあります。
 相手の気持ちも考えなければいけませんからね。」
「はい、ではシャオア様…」
「はい、頑張って下さいね。」
「いえ、その、あの…」
「なんでしょうか?」

悩みは解決して、退室するのではないの…?

「実は、その、僕の好きな方というのは…」

顔を真っ赤にしながらも、こちらを見つめるアコさん。
え…?

「シャオア様の事なんですっ!」

え、えっえっ!?
「わ、私…ですか?」
「はいっ、シャオア様。お慕いしています。」
「えっ、あ、ありがとう…」

なんとも予想外の展開に、そう言うのがやっとでした。
なんで私っ…そんなの聞いてません。いや、今聞きましたが…
アコさんは、キラキラとした瞳でこちらを見つめています。
か、かか可愛いではないですかっ。
勇気を出して告白出来て嬉しいのでしょう…ってそんな事を分析している場合ではなくてー
えーと、えーと、こんな時はどうすればー(汗

「シャオア様?」

真っ直ぐで無垢な視線。
そ、そんなに見つめないで…っ
あうあうあー……

…ぐいっ

ガコン

「うわっ」

あああごめんなさいぃ。気まずさに耐え切れずつい紐を引いてしまいました…

「っきゃあ!?シャオア様、なんですかこれーって何か居るー!?」

えーとえーと…

「シャオア様ー、もしやこれがシャオア様のお気持ちなのですかーー!?」

いえ、決してそんな訳では…

「わあっ、シャオア様ぁーーー…」

……ふぅ。やはり私も向き合わなければなりませんね。
今回は私も落ちるとしましょう。深呼吸をして、心の準備は完了。いざっ!


……神様、どうやら私も困ったちゃんのようです。
413409sage :2003/11/07(金) 21:40 ID:H7ukw.ao
一応412のみでこの話は完結しています。
これだと文章が途中で途切れているようにも見えるかもしれませんね。
今頃気がついた訳ですが…

しかし、見直すとぼろが目立つ…(汗
勢いがあるのは良いんですが内容が…っ
414397sage :2003/11/11(火) 16:21 ID:nWHTMxME
花のHBの続きに餓えて、
発狂しそうなキモヲタヒキーがここに一人('A`)ノ
415こんな日常sage :2003/11/12(水) 10:15 ID:2eP34uZ2
魔術師の町ゲフェンの片隅のベンチに、タバコふかしながらやる気なさげ〜に座る男の騎士が1人。
なんともまぁやる気なさげ〜〜〜に、そこにいる事すらもめんどくさそ〜にタバコをプッハーとふかしている。
そんなベンチのそばにやってきた人が。
「おぃーっす。何してんの?」
そんな彼に気さくに話しかけるハンターの女性。
「うーっす。やー、なーにすっかなーと思って」
タバコ咥えながらだるそーに応える。知り合いらしい。
「こっちもてきとーにぶらついてみたんだけど、どーにもやる気が出ない」
騎士の隣に座って空を見上げる。
そのまま、何か話すでもなくだらける2人。
始めに口を開いたのは騎士だった。
「なー、お前、金稼ぐならどこいくよ?」
「スフィンクスで青い箱」
「…あっこは皆の目がギラついてて好きじゃねぇ」
「とはいってもねぇ、他にキッチリ稼ぐとなるとピラミッド頂上付近?」
「7回行って全部が全部、振り向けばオシリスな場面遭遇してイヤんなった」
「ならどっかてきとーにぐるぐる走り回ってくれば?」
「…だりぃ」
そこで会話はまた途切れる。
「とは言うものの、稼がないと話にならんしな…」
よっ、と騎士が立ちあがる。
「ちょいそのへんブラついてくんわ」そう言って持ってるタバコを投げて渡す。
「ほーい。いってらっさーい。」
てれてれと歩いて行く騎士の背中を見送ったハンターは、受け取ったタバコに火をつける。
スパァーっと豪快に煙を吐き、一言。
「たるいなぁ…」

そんな、どうでもいい日常がここで綴られている物語の裏で、確かに存在している。
416その1sage :2003/11/12(水) 11:56 ID:nkh52/z2
萌えスレからの派生なのですがちょっと鬼長くなったので借りまする・・。
ちゃんと萌えで燃えな物だと思うのですが・・。
一応元ネタ。
ttp://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi/ROMoe/1066433704/846,847

--------以下本文-------
金を受け取り、一晩の食事と宿を求め裏路地を歩く悪騎士。
纏まった収入を得たその表情はしかし豊かな懐とは逆に沈鬱なものに包まれていた。
『仕事』の後はいつもこうだった。
遥か昔、家族を失い生きるために悪に身を窶(やつ)したその時から
捨て去ったはずの正義感に苦しめられるのだ。
悪によって手にした汚れた金を使い、上等ではない
ただ強いだけの酒で渦巻く暗雲を払う。
それもいつものこと・・だが・・・。
足が止まる。
今、確かにあのノビは仮初めの平和に包まれ暖かなベッドで眠っていることであろう。
しかし、それでいいのだろうか?
汚れた金を手にして仮初めの平和を手にした自分は幸せだなどとはとてもいえない。
あの子には自分と同じ思いをさせたくない。それが偽らざる本心だった。
それに・・。
(妹が生きていたらあのこと同じくらいの年であろうか・・)
そう考えたら止まらなかった。
悪騎士は踵を返すと再び正義騎士の家へと戻っていった。
417その2sage :2003/11/12(水) 11:57 ID:nkh52/z2
ノビを起こさないように正義騎士を呼び出す。
話をしても大丈夫なように家から離れた所に辿り着くと
悪騎士はようやく口を開いた。
「もう、この仕事はこれっきりにしようと思うんです」
正義騎士は申し出に幾分か驚いたようだがすぐにいつもの人を見下すような表情に戻る。
おどけて言う。
「・・それで、俺を騎士団に告発でもしようってのかい?」
「いえ、そういうわけではないです。ただ・・・この金を使ってあの子の為になることをしてやってください」
そう言って先ほど受け取った金を騎士に渡そうとする。
しかし騎士はそれを制すと、
「いや、そういうことならいい。それと同額の金を使ってあの子の為になることをしてやろうじゃないか。
 その金は口止め料を兼ねた手切れ金ということにでもしておいてくれ」
悪騎士は僅かに逡巡したが、そういうことならと金を受け取った。
精神的なものだろう。口止め料を握らせておけばより安全であると思っているのだ。
「ありがとうございます。それじゃ、俺はこれで・・・」
「あぁ、もう会うことも無いだろう」
そっけなく言い放つ正義騎士に悪騎士はその場を立ち去るために背を向けた。
「・・・永遠に、な!!」
ガキン!!
後ろを向いた悪騎士に向かって容赦なく振り下ろされた白刃は
悪騎士の剣により防がれ金属特有の悲鳴をあげた。
こうなることは充分に予想がついていた。
完全な口止めのために正義騎士が自分を殺そうとする、と・・だがしかし・・・。
「ほぉ・・よく止めたな。やる気か?貴様といえど身の程と俺の腕を知らぬわけではないだろう」
「えぇ、確かに勝てないでしょうね」
悔しいが正義騎士の言うとおりだった。
奴の剣と自分の剣。
決定的な差があるわけでもなかったが自分の勝てる見込みはまず無かった。
「でもね・・勝てないとわかっていても引き下がれないこともあると思うんですよ!!」
自分にあって奴に無いもの、それは覚悟だ。
今、この瞬間悪騎士は確かに覚悟を決めていた。
正義騎士の斬激が容赦なく降りかかる。
それをかろうじて捌く悪騎士。
しかし誰の目にもその決着がそれほど遠い未来にはならないことは明らかだった。
そして早くもその瞬間は訪れる。
振り下ろされた正義騎士の剣を押し上げる様に跳ね返した。
腕を振り上げた状態の悪騎士、それは決定的な隙だった。
すかさず突きこまれた正義騎士の剣は狙い違わず
悪騎士の腹部に突き刺さり、そして背中に抜けた。
致命傷だった。
しかし苦痛にゆがむ悪騎士の表情はすぐに笑みへと取って代わる。
「・・・これで、あなたの剣は使えないッッ!!」
突き立てられた剣はそう簡単に抜けはしない。
瞬時にそれは正義騎士にとっての絶対的な隙となっていた。
悪騎士の剣が正確に正義騎士の額を貫く。
「ば、馬鹿な・・・」
即死だった。くず折れる正義騎士だったモノ。
勝てないならば相討ちに持ち込む、それが悪騎士の決めた覚悟だった。
418その3sage :2003/11/12(水) 11:58 ID:nkh52/z2
すぐに治療をすれば何とかなるかもしれない。
一縷の望みに願をかけ立ち上がると医者を求め歩き出した。
しかしそれはすぐに徒労に終わった。
こんな深夜に開いている医者があるはずも無い。
大量の血と共に気力を失い倒れる悪騎士。
だがしかしその表情は場違いなほど安らかなものであった。
ゆっくりと目を閉じ永遠の闇へと堕ちようとした・・・その時、
「・・もし!大丈夫ですか!?」
耳元での叫び声に一時的に現実に引き戻される意識。
教会の神父であろうか。
悪騎士の傷口に手をあてヒールをかけているようだ。
しかし傷口は一向に塞がらない。
致命傷にヒールは効かないのだ、せいぜいが延命程度にとどまる。
それでもその僅かな時間が悪騎士に与えられた真の報酬だったのかもしれない。
「神父様。俺はもう助からない。俺の残った命、懺悔に使わせてもらえないか?」
「・・・・わかりました。神は全ての存在に平等に懺悔の機会を与えられます。
 さぁ告白しなさい。神の御子よ。それで救われることがあるならば。」
「ありがとうございます・・」
悪騎士は語った。
幼い頃家族を事故で無くしたこと。
生きるため、やむなく悪に手を染めたこと。
正義騎士と手を組み許されざる行いを繰り返していたこと。
そして、先ほどの出来事・・。
全てを話し終えると悪騎士は懐から金を取り出しそれを神父に渡した。
「この金を使ってあの子の為になることをしてやってください」
今日2度目の台詞。しかしこちらの台詞は先ほどとは違い確実に叶えられるのだ。
それで充分だった。自分は自分の人生に満足し逝く事が出来る。
悪騎士にとってそれは何より幸福な1日の終わりであった。
「確かに承りました。貴方の願いはきっと叶えられましょう」
悪騎士は満足げに微笑むと目を閉じ「ありがとうございます」と呟いた。
急速に失われていく意識・・その縁で聞こえたのは神父の呟き、そして高等魔法の詠唱だった。
「貴方の願いは聞き届けました・・ここからは私の我侭に少し付き合ってもらいましょうか・・。」
そして悪騎士の意識は闇へと堕ちた。
419その4sage :2003/11/12(水) 11:59 ID:nkh52/z2
目が覚めるとそこは部屋だった。
言うことを効かない体を引き起こし回りを見渡す。
余分な家具などほとんど無い。
しかしそれ以上に清潔感のあふれる部屋だった。
しばらくすると扉が開き一人の若い神父が姿をあらわした。
「やあ、目が覚めましたね。体調は問題無いですか?」
「はい、大丈夫です。それでここは・・?」
体を軽くひねり体調に問題が無いことを確かめるとたずねた。
「ここは教会ですよ」
愚問だった、神父が居るのだから間違いは無いであろう。
「それにしても貴方、1週間も眠りつづけていたのですよ
 まぁ生きていたのですからすばらしい生命力と言えますが・・」
神父は自分の服を捲りあげると腹部の傷を見てうんうんと頷く。
「大分よくなりましたね。ところでまだ名前を聞いていませんでしたね。御教え願えますか?」
「はい。私の名は・・・名は・・・」
・・・思い出せなかった。
実際先ほどの傷すら何時何処でつけたものなのかわからなかった。
「・・・思い出せないのですか?」
コクリと頷く。
「なるほど・・血を失いすぎたことの後遺症でしょうか。これは面白いですね」
うんうんと頷きながら一人微笑む神父。なんとなく置いていかれたような気がしてたまらずたずねた。
「あの、私に何があったのでしょう?」
神父はしばし考えると答えた。
「一週間前の夜、腹部に傷を受け倒れていた貴方を私が見つけた、それだけですよ」
その言い回しに明らかな含みがあるようだったが追求する気は起きなかった。
そんな状況ではどうせロクでもないことに決まっている。
「さて、それでは何か食べ物を持ってきましょう。一週間も何も食べてないのですからね」
その問いには私の口より先に腹が豪快な自己主張をした。
「ははは、しばらくは此処に滞在すると良いです。
 これから一人のものに食事を持ってこさせますが、記憶が戻るまでは不便極まりないでしょうし、
 それを貴方の世話係としてつけましょう。異論は無いですね?」
異論も何も状況がわからないのだ。ただ頷くだけだ。
「では、少し待っていてください」

神父が部屋を出てしばらくすると再び扉が開けられた。
食事のトレイを持った一人の少女だった。
真新しく少し大きめの服装から察するに
なりたてアコライトといったところであろうか。
「神父様から貴方の御世話を申し付かってきました、宜しく御願いしますね」
トレイを渡すなり深々と御辞儀をするアコライト。
「・・・どうしました?」
怪訝な表情で問いを返される。
腹が減ってるはずなのにそれに手をつけずじっとその子を見つづけていたのだから
当然の疑問であろう。
「あの・・・」
「はい」
「あのさ、もしかして前に何処かであったこと無いかな?それもつい最近な気がする」
疑問が口をついていた。
考え込むその子、頭を抱えるその姿から真剣に思い出そうとしてくれていることがわかる。
「うーん、私に覚えは無いですね・・・あ、もしかして口説かれてるんですか?困ったな〜、
 まだ初対面だって言うのに。」
「ち、違うってば!」
「むぅ・・そう全力で否定されるのも悲しいですが・・記憶無いんですもんね、
 どんな小さいことでも思うことがあったらドンドン仰って下さい。」
満面の笑みを浮かべるその子。
その笑みに照れを覚えた俺は誤魔化すように食事に手をつけることにした。
本当に美味かった・・そう、知らずうち涙が零れるほどに・・。
「わわ、何で泣いちゃってるんですか?もしかして美味しくなかったとか!?」
滑稽なほどに慌てるその子を見ると笑いがこみ上げてくるのが押さえられなかった。

部屋の外、壁に背を任せ聞き耳を立てる一人の神父。
室内の喧騒に満足したのか歩き出す。
「確かに約束は果たしましたよ、騎士殿・・。
 ただ一人の騎士となりただ一人のために命を落とした。
 そしてゼロからの再会・・私は神の御子としてゆっくりとその結末を見届けるとしましょう」
誰に向けられたでもないその呟きはやはり誰の耳にも届かず足音に紛れ消えていった。

----------ここまで本文-------------

以上、御邪魔しますた。
職場| λ....
420名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/12(水) 15:46 ID:1eeFA0Go
>416
GJ。でも一個だけ気になるんで突っ込ませてくれ。
(;´Д`)悪騎士の記憶がdでるのはわかるんだが、元ノビのアコたんは覚えてるんじゃないのか?
本ヌレの方での芝居で、悪騎士はノビ子に迫ってたよーな・・・
421名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/12(水) 17:12 ID:nkh52/z2
>>420
レスdクス。
それに関しては書きながら考えてたんだが
数通り選択肢が残ったので有耶無耶のままにしてみた。

1.騎士の代名詞エラヘルムケインで見た目の容姿なんざわからないよベイベー
2.神父暗躍、記憶操作なんてお手の物さ
3.神父様に全てを話してもらった上でノビ(アコ)たんは知らない振りをしつつ御世話係

RO的には1、萌えスレ的には3かな・・?(私的にも3が萌えるな)

自己ツッコミであれだが、ひとつ補完しておきたいのが
神父が悪騎士の記憶喪失を予想外の点としている箇所。
神父がいぢわるな人で改心した悪騎士が苦しむ様を見て楽しもうとしてたAパターンと
神父様はやはりいい人、割る騎士が本当に改心したか、
また更正出来るかどうかを見守ろうとしていたBパターンを妄想していたんだけど
今更だけどこの部分もボカしたほうが後の物語に幅が出たような気もするな・・。

まぁどちらのパターンでも記憶が戻った暁には悪騎士は自己葛藤に苦しみます、多分狽пi´・ω・`)
422名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/13(木) 01:33 ID:9VQVcWCk
流れを断ち切ってすみませんが、投稿させてもらいます。
少し、この掲示板の別所に書き込みさせてもらったものですが、諸般の事情によりそちらの投稿は断念。
で、恐らく可であろう代物があったので、こちらに投下させていただきます。
もっとも、こちらもこちらで長い上に使い古された話ですが_| ̄|○

ちょっと、参加してみたかったですので、投稿してみます。
423422sage :2003/11/13(木) 01:36 ID:9VQVcWCk
 それはきっと、この世界には“よくある”不幸の一つだったのだと思います。
 この世界では、度々予期せぬ不幸が舞い降りることがあります。古い樹木に宿る力が魔物を呼び寄せ、時に都市機能さえ麻痺することもあれば、神隠し(キャラロスト)やそれまで発現していた力の失効(下方修正)などがあるのです……。これらはごく稀でありながらも、けれど決して零になることはなく、この世界に確実に存在していました。
 だから、今わたしが置かれている状況もまた、この世界によくある不幸の一端だったのかもしれません……。

「あのっ……! な、何の……用……」
 何の用ですか? と、そのノービスの少女は聞こうとしたのだろう。しかし、彼女の喉は震え、言葉は最後まで出てはこなかった。
「あん……? 用も何も……なあ?」「だな。こいつ何言ってんだろな?」「……」
 少女は今、薄暗い路地で、目の前を三人の男に。そして背中を冷たい壁に囲まれていた。
 そこは、ルーンミドガッツ王国の首都・プロンテラの、とある裏路地であった。人通りはほとんど皆無で、活気溢れる大通りとのギャップからどことなく恐ろしげの感じられる場所である。
「あの! こんな、困ります……」
 そこに少女は連れ込まれ、成す術のないままに彼らの勝手に任されていた。この時になってようやく、少女は自分の身が危険に晒されている事に気づいたようだった。
「困る!? 勝手に困ってんなよ。それは俺らの方だろうがよお!」
「だな。どうすんだよ? 君にぶつかったのが相当堪えたんだろな。こいつ、さっきから一言も喋らねえじゃん。どうしてくれんだよ?」
「……」
「! だから……」
 男たちが聞き分けるわけないと知りつつも、少女は必死に言葉を繋いでいった。だがそれは逆に男たちを喜ばせるだけのようだった。
 そうしてしばらくのらくらとした会話が続き、男たちの顔からは笑みが薄くなっていった。少女はそれをこちらの話に理解を示してくれたのだと自分に言い聞かせて、更に言葉を重ねようとした。が―――
「あー、俺もう飽きた」「……だな」「……」
 男たちはここで、その視線を交わし合った。彼らが少女の言葉を全く聞いていないことは、間違えようのないことだった。
「いいよな、もう?」「な? 十分楽しんだだろ? 構わないよな?」
 と、シーフと剣士の二人が商人へと問いを投げかける。その言葉の意味を理解してか、少女の体はここにきて大きく撥ねた。今までも小さく震えていたのだが、賢明に謝ろうとしていたためにそれは極力意識の外に追いやられていた。だが、今は全く違った。
 頭の中が、恐怖一色で染められていく。もう、何も考えられなくなる。ただ、体の感じることだけが、彼女の心を揺さぶる。
 そして。少女のそんな心境を知らず、初めて商人の口が開かれた。
「……ああ。やっちまえ」
 低く、恐ろしく深い声だった。そんな声音を少女は生まれてこの方聞いたことがなかった。思わず、叫んでしまう。
「誰か! 誰か、助けてください……!!」
 ここは路地裏で、人通りはほとんど皆無で、その叫びが大通りまで届くことはない。そんなことももう分からない。
「へっへー、俺これ久々なんだよねー。近頃あいつ、乗り気じゃなかったし」
「だよなー、俺もだよ。ま、今回のはあんまり唐突だったから驚いたけどな」
 彼女の言葉に臆することもなく、男たち二人の手が伸びてくる。少女も抵抗するが、すぐにその腕を捕まえられてしまう。そしてあっさりと、唯一の持ち物であった鞄を取り上げられてしまった。
「は、はなして……! あっ……」
 その中には、彼女が故郷から持ってきた幾つかの品物が入っていた。今まで通ってきた修練場で渡されたなけなしのお金に、食料(回復剤)。そして、その修練場で初めて手にして、使い方を覚えてきたナイフもまた、その中に仕舞ってあった。
 これから冒険者になろうとする少女の、これまでの全ては、あっさりと奪われてしまった。
 絶望感に、少女は立ち尽くしてしまった。一瞬だけ抗うことを忘れて、彼女は路地裏に放り捨てられた鞄を眺めていた。だがそれも、一人彼女を捕まえるのに加わらない商人の手によって、拾われようとしていた。そして絶望を噛み締める間もなく、男たちの言葉で無理やりに現実に引き戻される。
「んー……いい香り」「それにうまそーw」
 腕を掴んで彼女を逃げられないようして、シーフが少女の髪の匂いを嗅ぎ回る。まるで犬のようなその行動に、彼女はこれまで経験したことのない嫌悪感に襲われた。
「ひっ……」
 そしてその直後に、それに倍する嫌悪感に襲われた。剣士が横手から、彼女の首筋を嘗め回したのである。これには少女も悲鳴を上げてしまった。咄嗟に目を閉じて、少しでも恐怖を頭から締め出そうとする。だが体の震えは一層激しくなって恐怖を体現し、更なる恐怖を彼女に呼び込んだ。
「やだ、やだよ……!!」
 もう、彼女自身が抵抗することは不可能だった。だから、彼女は心の中で叫んだ。
(神様……!!)
 この地に、彼女の頼れる人間は誰一人として居ない。縋れるのは、いるのかいないのかも判然としないものでしかなかった。はっきり言ってしまえば、幸運とさほども変わらない、人が祈るべき存在。
 だが、それはもしかしたら。もしかしたら、それは、確かにこの時祈るのであれば、的確な存在だったのかもしれない。
神はいないかもしれない。だがこの世界には、「神の代行者」はいるのだから。
424422sage :2003/11/13(木) 01:42 ID:9VQVcWCk
(神様……!!)
そう少女が祈りを上げた瞬間に、唐突に、闖入者は現れた。あまりに突然のことであり、またそれは事に集中していた二人の男には認識できていない出来事だった。
 唯一、気づいたのは商人だけだった。だが彼はその時、路地に屈み込んでいた。一陣の風のような速さで現れた何者かは、そうして手にした武器をその脳天に突き込んだ。
―――ドガァッ!! 派手な音と共に商人の体が横飛びに吹っ飛んだ。少しの間だけ路地を転がると、手近な壁に頭をぶつけて、停止する。
「な、なんだあ!?」
青天の霹靂とは、まさにこのことだろう。ようやくシーフがその闖入者に気づき、狼狽した声を上げる。剣士も剣士で、慌てふためいている。
 少女もまた、驚いていた。最初など、自分が殴られたのかと思ったのだ。だがそれならば、来るべき痛みが自分を襲っていたはずだった。それなのに一向にやってこない痛みに誘われて、少女は恐る恐る瞼を開けた。
 その時、それは偶然だったのだろうが、彼女はその闖入者の姿を捉えていた。彼女が祈りを捧げた神は、確かに使いを寄越してくれたようだった。今なお素早く駆けるその姿は視界の端にしか映らなかったが、それでも彼が何者であるかを理解するには十分だった。
 白い聖衣をはためかせ、ソードメイスを携えた神の服従者……アコライトだった。彼はまるで獣のように恐ろしく低い重心で路地を駆けていた。こうまで体勢を低くされると、例え居場所が把握できても対応は厄介だったろう。
(……なぜ?)
 だが、そんなことよりも、少女を愕然とさせてしまったことがあった。と、彼の姿を少女も見失う。それくらいの早さだった。
 男たちはまだ彼を捉えることができていないようだった。うろたえたように、きょろきょろと周りを見回しながら、シーフが呻いた。
「な、なんだよ、おい!?」
 と、そこに意外な事だったが……返事があった。
「何だ。と言われてもね。ボクさ」
「なっ……!?」
 それはそのシーフを驚かせるには十分だったが、同時に彼の居場所を報せることにもなる。ようやく敵の位置を把握して、シーフは自分の得物である短剣を引き抜き、迎え撃とうとしたのだろう、が。
「……へ?」
逆に、それは闖入者の狙った通りの結果に終わったらしい。
 シーフは、闖入者の姿に間の抜けた声を上げて、脱力してしまっていた。武器を構えることも忘れて、呆気に取られている。
 彼の見つめた先には、馬鹿らしいほどにこにことした笑顔があったからだ。
―――まあもっとも、言葉のあやもなく、それは作り笑顔だった。作り物の笑顔、“スマイルマスク”が、じっとシーフを見つめ返していた。
 もっとも、こちらは思い切りソードメイスを振りかぶりながらであったが。
「撥ァッ!!」
笑顔とは裏腹の堂に入った気息を乗せて、闖入者のソードメイスがシーフの横腹に打ち込まれた。これまた先ほどの商人に似て、「く」の字のような姿で吹き飛んでいく。
「なっ!? おい、大丈夫かよ!!」
 今にも泣き出しそうな声で、剣士が二人に声を掛ける。もはや、少女を拘束している余裕はなさそうだった。それを見て取ったのだろう。闖入者は剣士を避けるようにして、少女の方へと駆け寄ってきた。囁く。
「さっ、走るよ」
「え、あのっ……!?」
 そうして彼女の手を取って、闖入者であるアコライトは走り出した。少女の足はまだ震えていたが、何とかそれに引きずられていくようにしてついていく。
「あっ! コラ!! てめえぇーーー!」
 背後に剣士の罵声を上げながら、二人は裏路地を駆けていった。だが……いつまでたっても、罵声は遠ざからない。仲間を見捨てて、未練がましくも剣士が追いかけているらしい。先ほど見せていた彼の足の速さなら、とっくに撒けているはずだった。しかしそれができないのは、ひとえに……
「ハァ……ハァ……」
 手を引いている少女の足が遅すぎたからだった。まあ、あんなことがあった後なのだから仕方ないだろうが、走ってなおカートを引き始めた頃の商人とさほど速さが変わらないのでは、いずれ追いつかれるだろう。
「仕方がないな」
 彼はごく小さな決心をすると、急に足を止めた。今まで走り続けて息が上がりっぱなしだった少女は、その途端に大きく喘ぐ様にして息をつぎはじめる。こうなれば、もう一度走り出すことは無理だろう。
 闖入者であるアコライトは仮面を剥ぎ取り、今居る分かれ道の一つに適当に投げ捨てた。その下にあるのは、怜悧な瞳と全体的に細めの造形だった。だがその表情はどこか穏やかで、人を安心させる“雰囲気”を持っていた。
425422sage :2003/11/13(木) 01:42 ID:9VQVcWCk
 少女は予告もなく素顔をさらした彼の顔に思わず見入っていた。しかしその視線を気にすることなく、彼は短く神に奇跡を願っていた。
「主よ・聞き入れ給え・祝福の施しを・我に賜らんことを! そして、疾風の如き・疾く駆け抜ける迅速さ(はやさ)を・我に!」
 よく聞く祈りの言葉とは異なる、恐らく彼のものだけであろう力強い祈りが捧げられ、一瞬、彼の周りを天使が踊るような光で包まれる。
 その光景に、少女は思わず感嘆の息を漏らした。何のことはないようにしながらも、それは彼が修行を積んだアコライトである印でもあった。そして、少女はそれらを実際に見るのは初めてだったのだ。
 だから。次の言葉を掛けられた時も、咄嗟に彼女は反応できなかった。
「失礼しますよ、お姫様」
「えっ? ええ……!?」
 そういって彼は、あっさりと少女を両の腕に抱きかかえた。じたばたと両手を回して慌てふためくが、抵抗は無駄だった。場違いだが恥ずかしさに、少女の顔が上気する。
 しかし……不思議と怖いとか、不快だとかいう気持ちはなかった。
「こうした方が、君も疲れないしね。首に掴ってくれるならボクも疲れなくて、嬉しいんだけどな」
 そう言って、彼は屈託のない笑いを浮かべた。まるで軽口のようなその台詞はしかし、表情と相まって彼女の緊張をかなり氷解させていた。不思議と、息もかなり楽になった気がする。
「はいっ……!」
 まだ少しだけ声は上擦っていたが、少女は言われた通りに彼の首に手を回した。
「さっ、行くよ」
 トンッ、と一度だけ靴を鳴らして、彼が走り出す。
それまでの鈍さとは打って変わって、風景の流れは恐ろしく早いものだった。ブレスで強化されているとはいえ、とても人一人抱えているとは思えない。彼の腕の中で、少女は驚き半分、恥ずかしさ半分で俯いてしまった。それは、自分のノロマさに気づいてしまったからであった。それほどまでに、彼は早かった。
裏路地を抜けると、もう罵声は聞こえなくなっていた。だが彼はまだ止まるつもりはないようで、人通りの多い通りへと向かって走っていた。彼女は知るよしもなかったが、彼の向かっているのはプロンテラで最も商人たちの交易が盛んな、中央通りだった。
人の少ない通りであれば苦にはならないだろうが、中央通りに近くなれば、当然人は圧倒的な数になる。だが、彼は通り過ぎる雑踏の中を器用に、誰ともぶつかることなく走り抜けていった。その体捌きに驚くと共に、しかし少女は今度はまた別の意味で俯いてしまっていた。
「は、恥ずかしいです……」
「あはは。だろうねえ」
 それはまあ、お姫様抱っこされていれば視線が集まるのは当然だった。二人は道行く人々たちから好奇の視線に突き刺されていた。その多さに、少女はまたも赤面してしまう。だが彼の方はさっぱり気にしていないらしい。
そうして彼は、南門までやってきた。立派な外壁こそ作られているものの、この街はとても外に開かれており、人の行き来を妨げるような狭い面通しのようなものはない。が、勿論のこと衛視はしっかりと門を見張っているから、このままですんなり通り抜けられるとは限らなかった。少女はその事に気づいて、彼に何か言おうと顔を上げた、が。
「ま、なるようになるさ」
 と、正面から視線がぶつかってしまった上に、機先を制されてしまった。なぜか、言い返すことができず、もじもじとしてしまう。だが、それで逆に決心がついた。
 そうして二人は、ついに門まで差し掛かろうとした。予想通り、衛視がこちらに目をやっていた。二人を呼び止めようと定位置からこちらへと一歩を踏み出したところで―――
(でも、これでなんとかできます)
 少女は、先ほど決めた通りに行動した。彼の腕の中で、衛視に向かってぺこりとお辞儀をする。
 すると思った通りに、衛視はちょっと困ったような顔をしながらも、一歩後退った。それは見咎めるとかいうよりは「やれやれ、最近の若者は」みたいな反応であった。周りの商人たちも、やれやれと肩をすくめる者、「おあついね〜w」とはやすもの、様々だった。
そうして、彼ら二人はプロンテラの南へと姿を消していったのだった。
426422sage :2003/11/13(木) 01:50 ID:9VQVcWCk
_| ̄|○ すいません、駄文でスレの容量がピンチのようです……。
初めての投稿で、こうなるとは思いもよりませんでした。
そして皆さんと違って型ズレ起きてる……_| ̄|○
読みにくくてごめんさい。精進したいです……。

とりあえず、前半部分ぎりぎり投下完了……
萌え分が全く不足してますが、この後、
お決まりの転職お手伝いの話が残ってます……
が。容量が……すみません、恐らく封印かと思います……。
皆様、お騒がせしました。失礼します。
寝床| λ....
427名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/13(木) 06:17 ID:YHWS9VYE
封印勿体無いのでうpして欲しいとおもた。
h ttp://tfc55.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/ss_up/cbbs.cgi
続ききぼーん。
428名無しさんsage :2003/11/13(木) 20:36 ID:u6w9db.I
スレの容量ってあるんだ・・・・?

ここ読んでたら私もSS書きたくなってきた・・・。
まだ書き途中なんですが、書き終えたらうpしていいですか?

そして>>422さんGJ!
アコかこいー
429名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/14(金) 00:55 ID:q83j76lk
容量がマズくなったら次スレを立てれば良いだけなんだよ?
管理人はそんなん禁止しちゃいませんしね。
容量不足は、SSスレの定番だから、気にせず次スレ立てましょうよ。

っていうか立てた。はい。立てました。
次スレ
【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第2巻【燃え】
http://www.ragnarokonlinejpportal.net/bbs2/test/read.cgi?bbs=ROMoe&key=1068803664&ls=50
430えべんはsage :2003/11/16(日) 16:35 ID:jv8UUIHc
萌えでも燃えでもないような気がして不安なのですが、
埋め代わりってことで許していただけるかも、と下心を抱きながら投下。


「お願いしますよっ。しくじったら弁償、成功しても手数料無し!」
「だから?」
「過剰精錬! ……やらないか?」
 ギャラリー連中が「ウホッ、いい武器研究!」と茶化す。

 いつもは静かな山岳都市フェイヨン。先ほどからこの地の名物たる大きな橋の欄干で、ちょ
っとした見世物が繰り広げられていた。ひとりの鍛冶士が、アサシンの腰にすがりついている。
「本当に損はさせませんからっ」
 鍛冶士は随分とアサシンにご執心なようだった。「私とのことは遊びだったのね!」そう叫
んでもおかしくないほどの剣幕でアサシンに引っ付いている。男と女のどろどろとした、別離
の場面のようにしか見えない。いっそ、本当にそうならば憐れみでも誘えたかもしれない。
 しかし、二人は男同士だった。奇異の視線や、同好の士を応援するような熱く異様な雰囲気
で周囲には満ちていた。
「暑苦しい! いいから離れろ!」
 アサシンは居心地の悪さを感じているらしく、鍛冶士を力まかせに剥がした。「あーれー」
と演技臭い悲鳴をあげて鍛冶士は転がった。
「大体。弁償するっていくらだよ? 属性宿したスティレットだぞ」
 鍛冶士は非人間的な動作で跳ねるようにアサシンに詰め寄り、満面の笑みで言い放った。
「そりゃあもう! 一律三百万で!」
 人だかりから驚きの声があがる。三百万というのは、属性付きのダマスカスに手が届く値だ
った。アサシンはひきつるような表情を浮かべ、鍛冶士に問う。
「……マジ?」
「マジもマジですよ! そりゃもう、ウィザードに転職寸前のマジくらいマジですって!」
 よく分からない例えをほざきながら、鍛冶士はウィンクと共に右手の親指を立てた。さわや
かな笑みが異様なほどに胡散臭い。

 最後の一本のはずだった。
「これ、弁償金です。本当にすみませんでした!」
 首尾良くファイアスティレットを折った後、鍛冶士はカートから皮袋を取り出して、アサシ
ンに手渡した。中身は鋼鉄や鉄を売り捌いて貯めた三百万ゼニーだ。しがらみを残さぬように
謝罪の言葉も忘れず、丁寧かつはっきりと。
「いや、いいっていいって」
 苦笑いをうかべながら、アサシンは皮袋を受け取った。彼のスティレットには、既にエンベ
ルタコンが七つ叩き込まれていた。それに加えて二つ叩きこむと、スティレットは限界を超え
て砕けてしまった。
「またの機会がありました、ぜひともご用命ください!」
 二度と会うことはないだろうが、と鍛冶士は醒めた意識でそう思う。
「おう、また次があったらな」
 内心にやけが止まらないであろうアサシンは、そう残して去った。鍛冶士は頭を下げたまま、
しばらく動かなかった。口の中だけで、鍛冶士は言葉を紡ぐ。
「これで許してくれるかな……」
431えべんはsage :2003/11/16(日) 18:23 ID:jv8UUIHc
 彼は腕利きの鍛冶士だった。
 一級の武器を造らせたとしても、四割もの高い成功率を誇っていたし、三級ともなれば失敗
するほうが難しいくらいだった。
 それほどの腕を持つまでには、それなりの苦労もあった。くじけそうになったとき、支えて
くれたのは商人のころから一緒に居てくれた剣士だった。
「俺、鍛冶士になりたい。それで、武器を造って……」
 お前に使ってほしい、という彼の消え入りそうなつぶやきは聞こえなかったようだった。剣
士は小馬鹿にしたように笑う。
「本気かリック? 私より不器用なのに?」
「なるったらなるんだ。悪いかよ」
 むきになって言い返す商人に、剣士は眩しそうな目を向ける。
「いいや。期待しておこう」
「任せとけってんだ」

 やがて商人は鍛冶士になったが、彼の造る武器はひどい出来だった。
「なんだこれは。バランスというものがまるでない」
 剣らしき鋼の塊を振りながら、剣士はあきれたように言う。直線的な刀身の切っ先に、斧の
ように無骨な刃が取り付けられている。
「先端を重くしてみたんだ。それなら自重で非力なヤツでも素晴らしい威力がっ」
 拳を握り、鍛冶士は熱く語る。剣士は辟易した様子で斧もどきの片手剣を鍛冶士に返す。そ
の目はどこか眩しそうに細められていた。
「おまえは馬鹿か。自重で勝負するなら斧なり両手剣を使えばいい。これはただ重いだけだ」
「そ、そうなのか?」
「そうだ。やっぱり無理なのではないか?」
 剣士は鼻で笑うと、踵を返して雑踏に紛れてしまう。ぽつりと残された鍛冶士は斧もどきを
カートに仕舞いながら、ぎりっと歯を軋ませる。あいつに使ってもらうにはどうしたらいい。
「ちくしょう、見てろよ……。ぜったい、ぜったいに」

 二人で狩った鉱石は、すべて彼の武器製造に充てられた。おそらく、彼が鉄屑にしてしまっ
てきた分の材料があれば、彼女はもっといい装備を整えることができたはずだった。しかし、
彼女はそれについては何も言わなかった。
「今度は自信作だ。この軽量ならまさに風を切るかの如き剣捌きがっ」
 オーバートラストしそうなほどの熱弁を振るう鍛冶士を放置して、剣士はその剣を日にかざ
したり、軽く振ってみたり、刀身をなぞったりと仔細に検分する。レイピアよりもさらにほっ
そりとした刀身。
「さあ、使ってみてくれ」
 剣士はめんどうくさげに振り返って彼に訊いた。
「いいのか? やめたほうがいいと思うが」
 彼は嬉しくなった。きっと、使うのもためらわれるほど素晴らしい出来なのだ。そうに違い
ない。そう思った。自信たっぷりに彼は言う。
「遠慮するなよ」
「……悪く思うな」
 剣士はポリンに向かって、横薙ぎに剣を払う。桃色の体躯に食い込んだ刃は、そのゼリー状
の柔らかな体を通り抜ける前に、根元からへし折れた。
「な、なんだってー!」
 切りつけられて怒ったポリンが剣士の足に体当たりをぶちかます。剣士はそれを踏み潰しな
がら冷淡な口調で鍛冶士に告げた。
「おまえは加減というものを知らないのか。こんな細身ではなにも斬れないし、刺せない。い
い加減に諦めたらどうだ?」
「うるせぇっ、次だ、次!」
 残骸を手早く拾い集めて、鍛冶士は駆け出した。目からこぼれるものを見られたくなかった
からだ。走り去る彼の姿を、眩しそうに剣士は眺めていた。

 幾本もの失敗作を造り続けながら、それでも鍛冶士は造るのをやめなかった。そのおかげか、
それなりに彼の名も売れはじめていた。
 剣士の誕生日、鍛冶士はそれまで貯めていた材料をすべて使って、一振りの剣を仕上げた。
「ほれ」
「ふむ」
 もう何度繰り返してきたかわからない。鍛冶士が造った武器はすべて、剣士が試してきた。
そのたびに剣士からぶつけられた意見を、彼はすべて吸収してきた。
 小奇麗な布に包まれたそれを受け取ると、剣士はほう、と驚いたように息を吐いた。
「どうだ……?」
「ん。ま、まあ振ってみないことにはな」
 布を取り払い、今度は確かに剣士は息を呑んだ。大振りで両刃の剣が現れる。両手で扱わな
ければとても使いこなせそうにない。
「どうしたんだこれは?」
「両手剣使いになりたいんだろ?」
 剣士は驚きに目をむいた。
「なっ」
「夜な夜なスレイヤー振ってるんだもんなあ。気付かないほうがどうかしてるぜ。だからそれ
は俺からのささやかな贈り物だ」
 してやったり、といった笑いを浮かべ、鍛冶士は心底楽しそうに言った。剣士は頬を染めな
がら、ぶっきらぼうに言う。
「す、すまんな……」
「いいって。それより振ってくれよ、まだ重さのバランス整えてないからさ」
「いいや。その必要はない」
 怪訝そうに鍛冶士は首をかしげる。剣士は今まで見たことのない笑みを浮かべる。
「完璧の出来だよ、リック」
432えべんはsage :2003/11/16(日) 19:12 ID:jv8UUIHc
「また苦情か」
 彼を睨みつけて立ち去った女鍛冶士の後ろ姿を眺めてため息をつき、鍛冶士が剣士に贈った
両手剣を抱えながら座り込む。
「まあな」
 鍛冶士はめんどうくさそうに吐き捨て、カートから大振りの槍を取り出した。
「今度はこれ頼むわ」
「……もう充分じゃないか? 少し造る本数を減らしたらどうだ」
 うつむいた剣士の悲しそうな顔を鍛冶士は見ていなかった。鋼鉄を造りながら彼は憎々しげ
に言う。
「なんでだよ、べつに悪事働いてるわけじゃない。リーズナブルにいい武器を、ナイトやアサ
シンからは感謝されてるぜ? だいたい、今まで苦労してきたんだ。培ったスキルを活かして
何が悪い。みんな妬んでるんだよ、俺の腕をな」
「だが──」
 剣士がいたたまれなさそうに発した言葉を、鍛冶士はぴしゃりと遮った。
「いいだろべつに。俺がなんて言われてたって、おまえにゃ関係ないんだからさ。さっさと試
してくれ」
 まるで魔法のように、鉄と石炭は鋼鉄へと姿を変える。失敗する気配は微塵もない。剣士は
立ち上がって、槍を数回しごく。ひゅん、ひゅん、と空気を切り裂く音を聞きながら、鍛冶士
は黙々と鋼鉄を造り続ける。やがて空気を裂く音が消え、視線を金床と金槌に向けたまま、鍛
冶士は訊ねた。
「どうよ?」
 剣士は黙り込んでいた。槍を両手で持ちながらうつむいて。鍛冶士は少々いらついたような
声で、もう一度訊いた。剣士はゆっくりと口を開いた。
「完璧の出来だよ、リック」

 翌日、剣士は鍛冶士の前から姿を消した。

 よくある話だ。そのとき、鍛冶士はそう思った。何を誰に吹き込まれたか知らないが、あい
つは俺を見限ったのだろう。数日間は何も手につかなかったが、まあ長い付き合いだったから
しばらくは仕方あるまい。彼は醒めた思いで酒を呷る。
 一週間もすると、再び仕事を再開することができた。露店の準備をしながら、彼は思う。依
頼を受けて武器を造り、手隙になれば在庫の鋼材を使って武器を造る。一本造る材料に困って
いた頃もあったが、今は手持ちの材料を武器にして転がせば、材料費に加えて黒字まで鍛冶士
の手に残るのだ。何も問題はない。
 顔なじみのマジシャンが鍛冶士に訊ねた。マジシャンはべつに肉弾戦に特化した奇特なタイ
プではなく、ふつうに魔法を駆使するタイプだった。鍛冶士のところに来るのは武器を造って
もらうためではなく、マジシャンが集めた材料を譲るためと、くだらない雑談をするためだっ
た。
「やあ大将」
「大将はやめろって言ってるだろが」
 頭に赤い花を咲かせ、のほほんとマジシャンは手を振る。鍛冶士は数日来のささくれた気分
がいくぶんやわらいだように感じた。
「どうしたのさ、しばらく見なかったけど」
 マジシャンは懐から石炭やオリデオコンを取り出して、鍛冶士に手渡しながら周囲をきょろ
きょろと見渡す。
「ちょっと体調が、な」
「ふうん。ときに大将、いつものおねーさんは?」
「さてね、どっかふらついてるんじゃないか?」
「ふうん……」
 じっとマジシャンに見つめられ、鍛冶士はなんとなく居心地が悪くなる。
「なんだよ」
「僕がここに来る楽しみの少なからぬ部分を彼女が占めていたわけで、ちょっと残念なのさ」
「そりゃ残念でした」
 マジシャンはしばらく鍛冶士の横顔を眺めてから、他の他愛もない話題をはじめた。鍛冶士
は内心ほっとしながら相槌をうち、鉄鉱石を打った。
 今朝、姿が見えなくなってから鍛冶士は剣士にウィスを送った。しかし、拒否されているの
か、単に繋がらないだけなのか、はたまたこの世界から消えてしまったのか、剣士にウィスは
繋がらなかった。
433えべんはsage :2003/11/16(日) 19:12 ID:jv8UUIHc
 昼過ぎに、ひとりの騎士が武器の製造を依頼しにきた。大量の鋼鉄を鍛冶士は受け取り、料
金の説明をする。マジシャンは横でにこにこしながら鉄鉱石でお手玉をしていた。
「それじゃあ、出来たら呼びますんで、適当に時間潰しててください」
「おう、よろしくな」
 頼まれた物はアイスバスタードソードだった。成功させるのは、彼にとって難しくないこと
だった。グローブを装着し、手先の器用さを向上させる仕事着に袖を通す。
 つつがなく製造は成功した。鋼鉄の塊は氷の属性を付与されたアイスバスタードソードにな
り、冷たく澄んだ輝きを放った。鍛冶士は出来を検分する。
 見た目には特に問題はなかったが、それだけではわからないことがある。重量のバランスや、
握りの感触は実際に振ってみなければ詳しくはわからないのだ。鍛冶士はいつものように出来
上がった武器を渡しながら言った。

「試してくれ」

 製造過程でどうしても出来てしまう鉄屑を片付けながら、鍛冶士はいつまで経っても反応が
ないことにいらついた。空気を裂く小気味いい音も、人を食ったような皮肉げな声も、なにも
しなかった。
「おい、さっさと試してくれよ。今回は依頼なんだからよ」
「僕は剣の使い方なんて知らないよ?」
 マジシャンが困ったように出来たばかりの剣を両手で重そうに持っていた。鍛冶士は呆けた
ようにマジシャンを見る。
「あ……」
「いつ見ても惚れ惚れするねぇ。僕も剣習おうかな。ほら、いつものおねーさんに個人レッス
ンとか素敵だと思わない?」
 危なっかしく剣を持ち替えながら、マジシャンはしげしげと刀身を観察する。固まっていた
鍛冶士は唐突に動き出し、
「寄越せ」
 乱暴に剣を掴もうとした。マジシャンは慌てて剣の向きを変える。そのまま手を伸ばしてい
たら、刃を掴んでずたずたになってしまうからだ。
「危ないなぁ。商売道具なんだから大事にしないと」
 店をたたみ、鍛冶士は中央広場のほうへと歩き出す。マジシャンは不可解な様子でその後に
続き、やがて精錬所にたどり着いた。
「あれ、精錬サービスなんてやってたっけ?」
 鍛冶士は無言で建物の中に入り、マジシャンは何事か文句を言いながらそれに倣う。エンベ
ルタコンを買い込み、精錬士に武器と一緒に渡す。カンカンと硬質の音が響き、エンベルタコ
ンが刀身に打ち込まれていく。こうすることで、硬度や耐久性を格段に向上させることができ
るのだ。精錬士は一通り打ち終えると、鍛冶士に訊いた。
「これやれば折れる可能性があるが、どうする?」
「やってくれ」
 建物内をぼんやりと眺めていたマジシャンが頓狂な声をあげた。
「え。それ依頼品じゃないの?」
 鍛冶士はそれも無視して、狂おしい光を灯した瞳で剣を注視した。
 エンベルタコンが打ち込まれる。びき、と耳障りな音がして、アイスバスタードソードの刀
身に大きなひびが入る。
「あーあー、もったいない……」
「クホホホホ、だから言っただろう」
「悪いがそれはそっちで始末してくれ」
 鍛冶士は言い捨てて、建物を出た。

「ねえ、いったいどうしたんだよ。わざわざ依頼品折るなんて」
「ちょっと黙ってろ、もう来るから」
 マジシャンはドスの利いた言葉に口をつぐむ。やがて先刻の騎士が、顔に期待感をみなぎら
せながらやってきた。
「どうだ、うまくいったか?」
「申し訳ありません。失敗してしまいました」
 どこか機械的に鍛冶士は頭を下げた。
「あー、そっか。そっか、うん……」
 あからさまにがっかりしながら騎士は頭を掻いた。鍛冶士は妙に醒めた目つきで皮袋を取り
出して騎士に握らせる。
「これ、材料分の弁償です」
「え、マジ? い、いいのか?」
「いいですよ」
 踊りだしそうなステップで騎士が立ち去ると、マジシャンが鍛冶士を見据える。説明しろ、
と言っているかのようだった。
「俺はもう武器を造るのをやめる」
「……は?」
「それで、落とし前をつける。今まで造った分、全部折ってやる」
「いや、わけわかんないよ。どうしてそうなるのさ」
「せめて一本、一本だけ……」
「だからわからないって……」

 よくある話だ。そのとき、鍛冶士はそう思った。真実を求めて道を踏み外した純粋すぎた男
の話、誰かを守るために強さを求めそれに溺れた哀れな男の話。
 そう、よくある話だ。
 喜ばせてやりたかったのに悲しませてしまった、愚かな男の話。
434えべんはsage :2003/11/16(日) 19:17 ID:jv8UUIHc
ひとつ目からふたつ目の時間が空いてるのは即興だからです。
;y=-( ゚д゚)・∵:.ターン

まあ埋めだし目につかないでしょう、たぶn ( 葬);y=-  ( ゚д゚)・∵:.
435名無しさん(*´Д`)ハァハァsage :2003/11/16(日) 21:00 ID:q7VlERPc
>430-433
切ない……(。´д⊂)
でもこういう話、好きです
436えべんはsage :2003/11/17(月) 01:46 ID:MCVtcSRs
レスついてるΣ(゚Д゚ )
ありがたやありがたや( ´∀`)人マリガトー

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