【殺し合いに】バトルROワイアル 十一冊目【終劇を】
[14:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2012/03/04(日) 11:28:48 ID:iOvhlWSs)]
304.Time is money(三日目・夕方直前)
「いい? 私がどんなにすぐれた頭脳の持ち主でも、一応はアルケミストなのよ。
でもって、あなたがどんなに強いオーラWIZでも、あなたはWIZでしかないの」
「けれど!」
至極当たり前の事を話す悪ケミに、悲鳴のような声を出す。
「聞き分けなさい! これはもう決定事項!
尽くせる手は尽くしたし、後はもうあなたの自己回復に賭けるしかないんだから。
興奮しちゃって無駄な体力使ってないで、きちんと大人しくしててちょうだい」
そんな♀WIZを、まるで小さな子をとがめる様にピシャリと言い放つ。
理屈では既に♀WIZも理解しているのかもしれない。
それでも、声を荒げずにはいられない。
「けれど…!」
「もうー。心配性な人ねえ。
じゃあ何? あなたは私が信じられないって言うの?」
ともすれば泣き出しそうなまでに感情を乱す♀WIZにずいと顔を近付けて、正面からその瞳を覗き込む。
彼女らは今、地図で言えばD-5に当たる民家の中にいた。
南寄りでD-6に比較的近いこの一帯からは見えないが、もう少し北へ進んだ先には、昨晩♀WIZが生死の境を彷徨い、♂プリーストらによって治療を施された民家の焼け跡がある。
幾度もの戦闘を経て、黄泉路の縁にまで足を踏み入れた彼女がこうして生きていられるのは、ひとえに彼女が出会った大切な仲間たちのおかげだった。
これが一体どれほどの幸運か。♀WIZは、それを痛いほどよく知っている。
悪ケミもそうだ。
意識不明だった♀WIZを背負い、安全な場所まで避難してくれた上に、出来得る限りの最高の処置を施してくれた。
けれど、だからこそ。
「…納得、しかねます…!」
悪ケミと♀WIZの間には、一枚のテーブルクロスが広がっている。
子供の落書きにしては味気ない印象を受ける、黒一色の文字模様―最初は端から書き連ねられていった彼女らの『落書き』は、縦に横にと向きを変え、無地だった生地をすっかり埋め尽くすほどだった。
その『落書き』の一つ。余地を無くした布地が避けられ、皺の波に飲まれてゆく中で、今まさに手を加えられている余白地。
そこには、縦2×横4マスの方眼線と、数字とアルファベット。そして幾つかの箇条書きが添えられていた。
縦のマスには『05』と『06』。
横のマスには左から『A』『B』『C』『D』。
そして、強調するようにぐるりと円で囲まれた『D-5』と『A-6』のポイント。
黒く塗り潰された『A-5』『C-6』。
―それらは地図の抜き出し。彼女たちの現在地であるD-5区域と、本来♀WIZと♂シーフが調査に向かうはずだった、東端にあたる亀の『手』の区域。
現時点で禁止区域となっている区域を黒で。
そして。二本の線が交差する三ヶ所のポイント―大きな×印が押された『B-5』『C-5』『B-6』区域。
カーテンの向こうから透ける日の光はまだ明るい。だが、じきに日は色を変え、島の全てをオレンジへと染め始めるだろう。
もし、今この場所から。装置の在り処を探して行動を開始するとすれば?
箇条書きは以下の五つ。
1.一区画を抜けるには、短くても一時間善後の時間を要する。
(全力失踪を三区画もはお互いに無理)
2.=目標達成まで、探索次官も入れて四時間は見ておくべき。
3.次の丁字包装で禁止区域が追加された時、A-6に居たとすれば、×印のどれか一つでも師弟がくれば以降の坑道が詰む。
4.そんな危険な場所に向かうメリットが私たちにはない(GM支店)。
今後の動向を考えれば、四つ目の文章も決して無視は出来ない意見だった。
無論制御装置の探索は、BR法の進行に抗う彼女たちにとって必須事項だ。けれど、それをGMたちに気取られる可能性は極力避けるべきで。
…今はまだ時間がある。しかし、移動する内にも時間は刻一刻と過ぎていく。
わざわざ手詰まりの袋小路に向かうという不自然な行動で、GMの関心を引くリスクは避けるべきなのだ。
だからこそ、前回の放送の直後に、♀WIZと仲間たちは別れた。気取られぬよう、迅速に装置の在り処を探るために。
時間が有限であるということを、どうしてもっと強く認識しなかったのか…!
「こーら。そこは黙って『信じます』って言いなさい」
呆れた表情と声をもらして♀WIZを小突く。
ほとんど仕草だけで、額に触れた悪ケミの拳。それが、一層強く彼女の気遣いを伝えてくるようで。
だからこそ、必死で食い下がろうとする♀WIZを、その口が開かれる前に人差し指を突きつけて黙らせた。
そして、
「私だってあなたを信じてやるんだから。
大人しく休んで、とっとと元気になってちょうだい」
悪戯を企む子供のような、無邪気な笑顔を見せてやった。
箇条書きの最後の文章は、上述の問題点に対する悪ケミの解答で締められていた。
⇒解決策。
・地図をあなたに預ける。
人っ走り行って帰ってくるから、その間十分に休むこと。
GMたちには、彼女らの口論は『失った体力回復のために休息を取るべき』という悪ケミと、『引き返して仲間と合流するべき』という♀WIZの主張のぶつかり合いとして解釈されたはずだ。
そうなるよう、ぎりぎりのところで言葉を選んだ。
そして今―この民家に、悪ケミの姿はない。
残された彼女の地図を握る指先に、歯痒さから強い力がこもる。
(本当に―)
キツく瞼を閉じ、彼女の記した言葉を振り返る。
本当に、彼女には驚かされた。
首輪に関する推測、その仕組み。盗聴と生死判定。
複数の制御装置の存在と、内一つの在り処。地図のカラクリに―首輪の爆破を回避し得る具体案。
GMらが制御装置の効果を免れるためのアイテムを所持する可能性と、それの奪取計画。
ほとんどゼロの状態から、彼女はそれらのすべてに辿り着いていた。リスクは伴えど、挑戦心を失くさない賞賛に足る脱出計画。
比べて、私はどうだ?
工務大臣の口から情報を得、悪夢の『私』から記憶の断片を垣間見ていながら。
それを活かすこともできずに、こうしてここでじっとしているだけだなんて。
(―私は、助けられてばかりね)
彼女にも、彼らにも。
瞼を開く。眼に映るのは、悪ケミの居場所をGMに報せる地図。彼女はここにいないが、赤い光は位置を変えることはない。
そして、この光がある限り、悪ケミの首輪も起動している―BAN執行はされていないということだ。
GMにとって、この地図が悪ケミの居場所を報せる装置なら、♀WIZにとっては、悪ケミの命を報せる装置だ。
今の彼女は、迂闊な発言はもちろん、ろくに戦闘も取れない状態にある。
地図を握る片側の指を離し、自身の肩をさする。
「…おやすみなさい。悪ケミさん」
今、ここにないクローキングマフラーが、せめて彼女を守ってくれますように。
<♀WIZ>
現在地:D-5(D-6寄り)
所持品:未挿sロザリオ
ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HP/SP中回復
後頭部の負傷は処置済。悪ケミの地図を預かり、民家内にて待機。
<悪ケミ>
現在地:D-5(C-5寄り)
所持品:クローキングマフラー グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目
状 態:♀WIZに地図を預け、単身A-6を目指す。東部制御装置狙い。
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