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【18歳未満進入禁止】みんなで創る18禁小説Ragnarok ♀×♀ 第6巻【百合】

[264:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2012/12/03(月) 16:07:37 ID:zRtOvqhM)]
 誰でも裏の顔がある。人によって接する態度が違うのは、当然。それを『騙された』なんていうのは、自分勝手な証拠、なんだと思う。

 私こと、アリア・アーシィは冒険者をやっている、それも成功した部類に入るだろう。職業は暗殺者――と言っても人を殺したことなどない――だが、今の世の中ではどちらかという単に技能特性のみを指すから、アサシンクロスのほうが適切だ。

 冒険者のお決まり(テンプレート)通り、私もまた貧しい環境から冒険者を志し、幾度もの危機や冒険を乗り越え、やがて力をつけ、腕前ひとつで財を成した。
我ながら教科書に載せたいような立身出世だと思う。同期の冒険者の多くがむなしく骸を晒したことを思えば、その幸運は驚くばかりだ。

 けれど私は一人だった。ずっとずっと、少しでも強くなることに執着していたため、自分が天涯孤独であることについ最近まで気づくことはなかった。

 そして強くなった私は、暇をもて余した。


 プロンテラはルーンミッドガッツの首都だ。ここは全ての交易の起点であり、また終着点でもある。
多少なりとも経験を積んだ冒険者であれば、敢えてここ以外に拠点を構えることはないだろう。
私もまたその一人だ。路地裏のスラムからスタートし、数年経った今ではメイドつきの屋敷に拠点を置き、お抱えの商人が何も指示しなくても買い取りと転売を繰り返し、財が増す。正直なところ最早狩りに出る必要すらない。
パトロンとして私兵とでもいうべき冒険者を多く抱え、不測の事態に備えて資産も分割している。
私とて社会の暗部はたくさん見てきた。王室への献金と政治的パイプ作り、実力としての私兵、武力と財力を背景とした数々の特権。ここまで来れば立派なお貴族様だ。スラム生まれの卑しい平民に、今や貴顕の身がおべっかを使いすりより、私もまたそれに応える。気づけば随分黒くなっていた。

だからだろうか。退廃的な、一時の快楽に身を委ねたくなったのは。私はローブを纏い、スラムに足を向けた。


 スラムは何も変わっていなかった。当然だ。国も、そして成功した私たちもここを省みることなどないのだから。
輝きを増す首都プロンテラとは対照的に、冒険者ブームで人口ばかり増大した煽りを受けて急速に拡大したスラムは、路地の端々や城壁の外のバラック街、果ては下水路にまで広がり、その規模たるやプロンテラそのものをも凌いでいる。
身なりのいいものがここを訪れれば殺されても文句は言えない。治安当局の目もここには届かない、まさしく無法地帯なのだ。

(ぼろを纏うのも、久々だな)

複数ある盗賊ギルドの有力なパトロンである私は、本来ならば無害通行権が与えられている。どれだけきらびやかな姿で来ようとも絶対に害されることもないし、仮にあったとしても返り討ちにするのはいとも容易い。だが、この日は敢えてぼろを纏ってきていた。

「そこのお兄さん、どうだい。安くしておくよ」

 男装した私に、客引きの声がかかる。見れば、顔馴染みの業者だった。自らの目論みが成功したことに内心笑いつつ、目配せひとつで関わるな、と告げる。男は嗅覚に優れているのだろう。それだけですごすごと引っ込んでいった。

 娼街。都市であれば必ず形成されるそこに、私はいた。
世界都市の様相を呈するプロンテラではこの手の施設は行政に嫌われ、街区浄化政策によって表の首都からは一掃されたものの、地下に潜った後は当局の手が届かないのをいいことにやりたい放題であり、無秩序にして乱雑な発展を遂げていた。
今では裏のプロンテラとしてガイドブックが出回り、やんごとなき身分の者すら夜になれば女を抱き、男に抱かれ、ご禁制のクスリを吸い、博打に興じる。退廃の魔都がそこにはあった。笑える話だが、パトロンである私はこの街で『黒の女伯』と呼ばれているらしい。


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