【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】
[13:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2007/03/27(火) 17:21:13 ID:FthaQscI)]
>>11
そんなに速く仲間が合流できるのかという疑問が残りますがGJ
むしろパピヨンつえーよつえー。
というわけで俺もNGっぽいですが置いていきますね
264.ハプニング(三日目・午前)
「♀Wizさん、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
来た道を戻る形で北に向かう途中、♂シーフが♀Wizに問いかける。
勿論、これは♀Wizの指示であり『立ち止まる口実を作ってください』という事である。
イグドラシルの実の半分をもらい、かなり体力が回復しているが、それでも本調子には程遠いらしく、♂シーフの判断はごく自然なものであろう。
ただ、♂シーフは♀Wizがしんどそうにしているのを察し、少し体力を回復させた方が良いかもしれない、という判断もあったであろう。
さて、何故♀Wizがそんな指示を出したか、であるが。
至極、単純な事である。気になる廃屋を見つけただけである。
移動中であれば、気にも留めなかっただろうが、少しでも手掛かりが欲しい現状では、すがる思いであった。
――何か重要な情報が手にはいるかもしれない
確率的には低いとしても、その可能性を試したかったのだ。
そして、二人は『休憩』を取るためにその廃屋に入っていった。
(うわ……何だこの変な臭い……)
廃屋に立ちこめる酷い臭いは、二人の嗅覚を刺激した。
が、面目上は『休憩』であるから、変な声を上げるわけにはいかない。
♀Wizが地面を指して、口紅で文字を書く。
『これは腐敗臭です。死体があるかもしれません』
それを見て、♂シーフは体を震わした。
まさか、マーダラーの手が?
だが、その考えはすぐにかき消えた。
もし、このゲームでの死体であれば、ここまで酷い臭いになるはずがないからである。
じゃあ誰が?
♂シーフは近くにあったナイフ――それがグラディウスだと分かる――を手に取り、床に文字を掘り始めた。
「少し臭いですね……外で休みますか?」
『以前にここでゲームが行われ、その時のもの?』
♂シーフはカモフラージュとして喋りながら、本題を床に掘った。
「大丈夫ですよ。この程度なら、あまり気になりませんから。それより、シーフ君も休んだ方がいいのではないかしら?」
『かもしれません。調べてみる必要があります』
♂シーフの問いに答えつつ、本題に答えを出す。
『会話を途切らせない程度にお願いしますね』
(どうやら、ここは長い間使われていないらしいわね……)
♀Wizはそう思いつつ、寝室と思われる部屋を調べていた。
と言うのも、所々埃を被っていて、布団を調べた時なんかはあまりに埃が立ちこめてその場から離れたぐらいである。
家具なんかも使われてないのか、埃を被っているし、金属部品は錆びてる箇所も見受けられた。
(この腐敗臭はもう一つ向こうの部屋かしら……)
寝室には見るべきところはなく、もう一つ向こうの部屋に移動する。
ドアを開け、その瞬間酷い臭いに思わず咽せそうになった。
(酷い臭い……恐らく、死体はここにあるわね)
衣類を鼻にあて、廊下の窓を開けて息を吸い込んだ後、その部屋に入った。
書斎、だろうか。本棚がたくさんある。
案の場、そこに死体があった。
だが、♀Wizはその死体を見て思わず声を上げそうになった。
白を基調とした、威厳のある衣装――ぼろぼろになって威厳こそ失われているが――それは、あのGMジョーカーと同じ衣装であった。
細かい箇所は違うが、同じに違いない。
ならば、これは誰?
「♀Wizさん、大丈夫ですか?」
♂シーフの問いかけにはっとなり、先ほどの♂シーフが床に書いた問いを思い出した。
それと同時に、「大丈夫ですよ」と♀Wizが答える。
♀Wizは死体に近づき、調べてみることにした。
とは言っても、かなり日が経っているらしく、近づく事すら苦痛であった。
(恐らく、この死体はGMで間違いないでしょうね……)
ならば何故死体が?
(反乱があった?或いは、他のGM処分された?)
可能性としては、前者の方が高い。
GM同士で争うメリットは無いだろうし、何より死体を残す意味が分からない。
となれば――
そこで、♀Wizはある物に目を留めた。
金色に光る、大きい杖――
(これは……ウィザードスタッフ!?)
――ウィザードスタッフ――書物でしか見たことは無いが、吸血鬼や古の大魔導師が持っていたと言われる、とてつもない能力を秘めた秘宝、魔術師の神器とも呼ばれる物である。
恐らく、このGMは魔術師型。死体が腐っているので傷跡までは分からないが、衣服の状態からして、刃物による切傷、その大きさと床の黒ずんだ血からして出血多量、或いはショック死であろう。
♀Wizはウィザードスタッフを持ち、辺りを見渡し――♂シーフが手招きで呼んでいるのが見えた。
「♀Wizさん、これでも食べてください」
と、しかし本題は書棚の方を指していた。
何やら、空きスペースがあり、そこに小さいレバーがある。
『引いてみますか?』
適当な本に掘られた文章は、それである。
♀Wizはとっさに近くの本を手に取り、それに口紅でこう書いた。
「ありがとう。シーフ君も食べたらどう?」
『調べてから考えます』
と。
だが、ここで誤算が生じる。
偶然、レバーの隣にあった本が倒れ――不運にもレバーが入ってしまったのだ。
がちゃん。
「……!!」
二人はレバーの方を振り向いた。
これから、何かが起こるであろう事態に備えるために、準備している。
だが、やってきたのは敵ではない。
突然、床が抜けたのだ。
「え……!?」
「うわっ!?」
同時に声を上げ、逃げるように体を捻ったが、もう遅い。
二人の姿は床に吸い込まれるように消え、絶叫とともに、次第にその絶叫も消えていく。
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